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JP6218640B2 - 潤滑剤組成物 - Google Patents

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JP6218640B2 JP2014038825A JP2014038825A JP6218640B2 JP 6218640 B2 JP6218640 B2 JP 6218640B2 JP 2014038825 A JP2014038825 A JP 2014038825A JP 2014038825 A JP2014038825 A JP 2014038825A JP 6218640 B2 JP6218640 B2 JP 6218640B2
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Description

本発明は潤滑剤組成物に関する。より詳しくは、特定の化合物を縮合したエステル又はアミドを含有する、高温および/または高圧といった過酷条件での潤滑性に優れる潤滑剤組成物に関する。
潤滑剤は、一般にベースオイルと種々の添加剤を含む。ベースオイルとしては、原油から得られる鉱物油、化学合成されるエステル系油、フッ素油、ポリαオレフィン系油などがある。これらの中でも、エステル系油は、低流動点、高粘度指数、高引火点、良好な潤滑性能、生分解性などから、ジェット機、自動車エンジン油、グリースなどに好適に用いられる。
エステル系油としては、脂肪族モノカルボン酸と一価アルコールとの反応から得られるモノエステル;脂肪族二塩基酸と一価アルコールとの反応から得られるジエステル;多価アルコールと脂肪族カルボン酸との反応から得られるエステル;及びポリオール、多塩基酸、脂肪族モノカルボン酸との反応から得られる複合エステル;等、様々なエステル類が開示されている(特許文献1〜9)。特許文献6〜9には、コハク酸や無水コハク酸を二塩基酸として用いてエステル系油を得ることが記載または示唆されている。
特開2002−097482号公報 特開2005−154726号公報 特開2005−232434号公報 特開2005−213377号公報 特開2005−232470号公報 特表2001−501989号公報 特表2001−500549号公報 特表2001−507334号公報 特表2002−530476号公報
しかしながら、これらエステル潤滑油においても、高圧および/または高温といった過酷な状況での潤滑性は十分といえず、さらに良好な潤滑性、特に低摩擦を有し、潤滑剤の基油として又は添加剤として有用な化合物が求められている。
本発明が解決しようとする課題は、高温および/または高圧といった過酷条件での潤滑性に優れる潤滑剤組成物を提供することである。
本発明者は、上記の課題を解決すべく、種々検討した結果、コハク酸や無水コハク酸などのコハク酸誘導体として炭素数4以上の置換基を有するコハク酸誘導体を用い、その他の特定の化合物と縮合したエステル又はアミドを含有する潤滑剤組成物が、高温および/または高圧といった過酷条件においても良好な潤滑性を発現し、低摩擦の潤滑油または潤滑油添加剤として好適に用いることができることを見出した。
すなわち、上記課題は、以下の構成の本発明によって解決される。
[1] 分子内に水酸基およびアミノ基のうち少なくとも一方を含み、かつ、分子内における水酸基の個数およびアミノ基の個数の合計が3個以上である化合物a1と、
炭素数4以上の置換基を有するコハク酸誘導体a2と、
1価アルコールa3と、
が少なくとも縮合した縮合物Aを少なくとも1種含有する潤滑剤組成物。
[2] [1]に記載の潤滑剤組成物は、化合物a1が、分子内に水酸基を3個以上有する多価アルコールまたはそのアルキレンオキサイド付加物であることが好ましい。
[3] [1]または[2]に記載の潤滑剤組成物は、化合物a1がトリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ジトリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールおよびこれらのアルキレンオキサイド付加物から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
[4] [1]〜[3]のいずれか一つに記載の潤滑剤組成物は、1価アルコールa3が、アルキレンオキシ構造を有することが好ましい。
[5] [1]〜[4]のいずれか一つに記載の潤滑剤組成物は、1価アルコールa3が、分岐アルキル基を有することが好ましい。
[6] [1]〜[5]のいずれか一つに記載の潤滑剤組成物は、1価アルコールa3が、炭素数5以上であることが好ましい。
[7] [1]〜[6]のいずれか一つに記載の潤滑剤組成物は、コハク酸誘導体a2の置換基が、炭素数4以上の脂肪族炭化水素基であることが好ましい。
[8] [1]〜[7]のいずれか一つに記載の潤滑剤組成物は、さらに媒体を含有し、
全潤滑剤組成物に対し、縮合物Aの割合が0.1〜20質量%、媒体の割合が70〜99.9質量%、上述の縮合物Aおよび上述の媒体以外の他の成分の割合が0〜29.9質量%であることが好ましい。
[9] [8]に記載の潤滑剤組成物は、媒体が、鉱油、ポリオレフィン油、エステル油およびエーテル油から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
[10] [8]または[9]に記載の潤滑剤組成物は、前記縮合物Aおよび前記媒体以外の他の成分が、亜鉛、モリブデン、硫黄およびリンのうち少なくとも1種を構成元素として有する化合物であることが好ましい。
[11] [1]〜[10]のいずれか一つに記載の潤滑剤組成物は、縮合物Aが、
化合物a1由来の構造が、炭素数4以上の置換基を有するコハク酸誘導体a2由来の構造を介して、1価アルコールa3由来の構造と結合した構造を有する純物質または混合物であることが好ましい。
[12] [1]〜[11]のいずれか一つに記載の潤滑剤組成物は、上述の縮合物Aが、縮合物Aがオリゴマー、またはポリマーであることが好ましい。
本発明によれば、高温および/または高圧といった過酷条件での潤滑性に優れる潤滑剤組成物を提供することができる。
以下、本発明の潤滑剤組成物について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本明細書中、アミノ基とは、アンモニアから水素を除去した1価の官能基(−NH2)、第一級アミンから水素を除去した1価の官能基(−NHR;Rは任意の置換基)または第二級アミンから水素を除去した1価の官能基(それぞれ−NRR’;RおよびR’は任意の置換基)を意味し、狭義のアンモニアから水素を除去した1価の官能基(−NH2)に限定されない。
本明細書中、コハク酸残基とは、コハク酸の2つのカルボキシル基からそれぞれ−OHを取り除いた構造のことを言う。コハク酸残基は、コハク酸の他、コハク酸無水物や、コハク酸ジクロリドなどのコハク酸誘導体が縮合反応した場合にも形成される。
本明細書中、縮合物とは縮合反応によって得られる反応生成物(reaction product)のことを言う。
本明細書中、縮合反応混合物(reaction mixture of condensation)とは、縮合反応によって得られる組成物のことを言う。ここで、縮合反応混合物は、後述の原料の縮合反応により得られるポリエステル、エステルオリゴマー、低分子エステルなどの種々の縮合物(縮合物Aを含む)、未反応のアルコール原料、カルボン酸原料の混合物を含んでいてもよい。
[潤滑剤組成物]
本発明の潤滑剤組成物は
分子内に水酸基およびアミノ基のうち少なくとも一方を含み、かつ、分子内における水酸基の個数およびアミノ基の個数の合計が3個以上である化合物a1(以下、(a1)成分とも言う)と、
炭素数4以上の置換基を有するコハク酸誘導体a2(以下、(a2)成分とも言う)と、
1価アルコールa3(以下、(a3)成分とも言う)と、
が少なくとも縮合した縮合物Aを少なくとも1種含有する。
このような構成を有するために本発明の潤滑剤組成物は、高温および/または高圧といった過酷条件での潤滑性に優れる。
ここで、特表2001−501989号公報、特表2001−500549号公報、特表2001−507334号公報および特表2002−530476号公報には、コハク酸や無水コハク酸を二塩基酸として用いて得られたエステル系油が記載または示唆されていたが、これらの文献には炭素数4以上の置換基を有するコハク酸誘導体を用いることは開示も示唆もされていなかった。本発明の潤滑剤組成物では、上述の化合物a1と、炭素数4以上の置換基を有するコハク酸誘導体a2と、1価アルコールa3とを縮合させた縮合物Aを用いることで、高温および/または高圧といった過酷条件での潤滑性に優れることとなった。
<縮合物A>
(縮合物Aの構造)
縮合物Aは、分子内に水酸基およびアミノ基のうち少なくとも一方を含み、かつ、分子内における水酸基の個数およびアミノ基の個数の合計が3個以上である化合物a1(以下、(a1)成分とも言う)と、
炭素数4以上の置換基を有するコハク酸誘導体a2(以下、(a2)成分とも言う)と、
1価アルコールa3(以下、(a3)成分とも言う)と、
が少なくとも縮合した縮合物である。
縮合物Aは好ましくは、
上述の化合物a1の水酸基及び/又はアミノ基と上述のコハク酸誘導体a2のコハク酸残基が縮合してエステル又はアミド結合を形成し、かつ、上述のコハク酸誘導体a2成分のコハク酸残基と1価アルコールa3の水酸基が縮合してエステル結合を形成している構造(a1−a2−a3);
を有する純物質または混合物であることが好ましい。縮合物Aは、上記の構造(a1−a2−a3)を含む同種または異種の複数の構造が連なりポリマー構造(本明細書中、ポリマー構造はオリゴマー構造を含む)を形成していてもよい。
上記の構造(a1−a2−a3)の複数の構造が連なりポリマー構造を形成した縮合物が、さらに上述の化合物a1の水酸基及び/又はアミノ基と上述のコハク酸誘導体a2のコハク酸残基が縮合してエステル又はアミド結合を形成している構造(a1−a2)、及び/又は、上述のコハク酸誘導体a2のコハク酸残基と1価アルコールa3の水酸基が縮合してエステル結合を形成している構造(a2−a3)をポリマーまたはオリゴマー構造の一部に含有していてもよい。
また、本発明の潤滑剤組成物は少なくとも1種の縮合物Aを含む。本発明の潤滑剤組成物に用いられる縮合物Aは、上記の構造の縮合物Aの純物質であっても混合物であってもよい。本発明の潤滑剤組成物に用いられる縮合物Aは、オリゴマーまたはポリマー化合物であることが、(a1)成分、(a2)成分および(a3)成分を一括で縮合して合成した縮合物Aを用いることができる観点から好ましい。
縮合物Aの構造に関して、縮合物Aを得るための縮合反応に用いられる上述の化合物a1、上述のコハク酸誘導a2および1価アルコールa3、ならびに、その他の成分について説明する。
(化合物a1)分子内に水酸基およびアミノ基のうち少なくとも一方を含み、かつ、分子内における水酸基の個数およびアミノ基の個数の合計が3個以上である化合物
縮合物Aを得るための縮合反応に用いられる成分である、分子内に水酸基およびアミノ基のうち少なくとも一方を含み、かつ、分子内における水酸基の個数およびアミノ基の個数の合計が3個以上である化合物a1について説明する。
上述の化合物a1としては、分子内にアミノ基を有さずに水酸基を3個以上有する化合物でもよいし、分子内に水酸基およびアミノ基を含み、かつ、分子内における水酸基の個数およびアミノ基の個数の合計が3個以上である化合物でもよいし、分子内に水酸基を有さずにアミノ基を3個以上有する化合物でもよい。
上述の化合物a1の分子内における水酸基/アミノ基の個数比は1/2以上であることが好ましく、1/1以上であることがより好ましく、1/0.5以上であることが更に好ましい。上述の化合物a1の分子内における水酸基/アミノ基の個数比の上限値は特に制限は無く、上述の化合物a1の分子内にアミノ基を含まないことが好ましい。
上述の化合物a1は、分子内に水酸基を少なくとも1つ有する化合物であることが好ましく、分子内に水酸基を3個以上有することがより好ましい。
これらの中でも、上述の化合物a1が、分子内にアミノ基を有さずに水酸基を3個以上有する3価以上の多価アルコールであることが特に好ましい。
第1に、上述の化合物a1がアミノ基を有さずに水酸基を3個以上有する化合物である場合について説明する。
この場合、上述の化合物a1が3価以上の多価アルコールであることが好ましい。3価以上の多価アルコールとしてはアルコール性水酸基及び/又はフェノール性水酸基を分子内に3つ以上含有する化合物であり、アルコール性水酸基を3つ以上含有する化合物が好ましく、アルコール性水酸基を3〜6個有する化合物がより好ましい。
好ましい3価以上の多価アルコールとしては下記一般式(a1−1)で表されるアルコールである。
一般式(a1−1)
Figure 0006218640
一般式(a1−1)中、Zはm1価の連結基を表し、m1は3以上の整数を表す。
一般式(a1−1)で表されるアルコールは、m1価のアルコールである。
一般式(a1−1)中、Zはm1価の連結基であり、Zは言い換えるとm1価のアルコールからm1個のヒドロキシル基を取り去ることで形成される多価アルコール母核を意味する。
Zは、少なくとも1つの3価以上の連結基を含むm1価の連結基である。3価以上の連結基としては特に制限はないが、例えば三級炭素原子を含む3価の連結基、四級炭素原子などを好ましく挙げることができる。
三級炭素原子を含む3価の連結基としては、以下の構造が好ましく、下記構造中のRcは水素原子または置換基を表す。
Figure 0006218640
四級炭素原子は、以下の構造である。
Figure 0006218640
Zとして好ましくはアルキレン基、アリーレン基およびこれらの複数が単結合、2価の連結基(好ましくは−O−、−C(=)O−、−OC(=)O−、−S−、−SO2−、−C(=O)−、−C(=O)NRb−(Rb:H、アルキル基、アリール基))または3価以上の連結基で結合した構造であり、かつ、少なくとも1つの3価以上の連結基を含むm1価の連結基である。
2価の連結基上に他の置換基を有していてもよい。
好ましいZは後述の3価以上の多価アルコールの好ましい例から水酸基を除いた残基である。
m1は3以上の整数であり好ましくは3〜6であり、より好ましくは3または4である。
3価以上の多価アルコールは、具体的には、グリセリン、1,2,3−ブタントリオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,3−ペンタントリオール、1,2,4−ペンタントリオール、2−メチル−1,2,3−プロパントリオール、2−メチル−2,3,4−ブタントリオール、2−エチル−1,2,3−ブタントリオール、2,3,4−ペンタントリオール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、2,4−ジメチル−2,3,4−ペンタントリオール、2,3,4−ヘキサントリオール、4−プロピル−3,4,5−ヘプタントリオール、1,3,5−シクロヘキサントリオール、ペンタメチルグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなどの3価のアルコール;
1,2,3,4−ブタンテトラオール、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、ソルビタン、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、ジトリメチロールエタン、ジトリメチロールプロパンなどの4価アルコール;
アラビトール、キシリトール、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、アロース、グロース、イドース、タロースなどの5価アルコール;
ジペンタエリスリトール、ソルビトール、ガラクチトール、マンニトール、アリトール、イジトール、タリトール、イノシトール、クエルシトールなどの6価アルコール;
トリペンタエリスリトールなどの8価のアルコールが好ましい。
これらの中でもトリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールエタン、ジトリメチロールプロパン、ジまたはトリペンタエリスリトールがより好ましく、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ジトリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールが特に好ましい。
上述の化合物a1としては上述の3価以上の多価アルコールが有するヒドロキシル基の少なくとも1つにアルキレンオキサイドが付加してなる化合物(すなわち、3価以上の多価アルコールのアルキレンオキサイド付加物)も好ましく用いることができる。付加しているアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドおよびこれらの複数の組合せが好ましく、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドがより好ましい。
3価以上の多価アルコールのアルキレンオキサイド付加物が、3価以上の多価アルコールが有するヒドロキシル基の全てにそれぞれ独立なアルキレンオキサイドが付加してなることが好ましい。
付加したアルキレンオキサイド(すなわち、アルキレンオキシ構造)の数としては上述の化合物a1中に平均で3〜200が好ましく、6〜100がより好ましい。より好ましいアルキレンオキサイドの付加数としては前記3価以上の多価アルコールの水酸基の数に対して平均で1〜20倍の数であり、更に好ましくは2〜10倍の数であり、特に好ましくは3〜7倍の数である。
上述の化合物a1が、3価以上の多価アルコールのアルキレンオキサイド付加物である場合、3価以上の多価アルコールのアルキレンオキサイド付加物として好ましくは下記一般式(a1−2)で表される化合物である。
一般式(a1−2)
Figure 0006218640
一般式(a1−2)中、Zはm1価の連結基を表し、m1は3以上の整数を表し、R11はアルキレン基を表し、n1は1〜100の整数を表す。
一般式(a1−2)中におけるZ、m1は、一般式(a1−1)中におけるZ、m1と同義である。好ましいZは前記3価以上の多価アルコールの好ましい例から水酸基を除いた残基である。
11はアルキレン基であり、好ましくはエチレン基、プロピレン基、ブチレン基であり、より好ましくはエチレン基、プロピレン基である。複数存在するR11は同一でも異なっていてもよい。
n1は1〜100であり、好ましくは1〜20、より好ましくは2〜10、特に好ましくは3〜7である。複数存在するn1は同一でも異なっていてもよい。
第2に、上述の化合物a1が、分子内に水酸基およびアミノ基を含み、かつ、分子内における水酸基の個数およびアミノ基の個数の合計が3個以上である化合物である場合について説明する。
この場合、上述の化合物a1として好ましくは、アミノ基を1または2個(より好ましくは1個)有し、かつ、水酸基を1〜6個(より好ましくは2〜5個)有する化合物である。
アミノ基としてはアンモニアから水素を除去した1価の官能基(−NH2)、第一級アミンから水素を除去した1価の官能基(−NHR;Rは任意の置換基)および第二級アミンから水素を除去した1価の官能基のいずれでもよいが、その中でもN−H結合を有するアンモニアから水素を除去した1価の官能基(−NH2)および第一級アミンから水素を除去した1価の官能基(−NHR;Rは任意の置換基)が上述のコハク酸誘導体a2と反応し、架橋構造を形成できるので好ましい。アミノ基の窒素原子に結合している全ての置換基が非芳香族基であることが酸化安定性の観点から好ましい。
上述の化合物a1が、分子内に水酸基およびアミノ基を含み、かつ、分子内における水酸基の個数およびアミノ基の個数の合計が3個以上である化合物である場合、化合物a1としては下記一般式(a1−3)で表される化合物が好ましい。
一般式(a1−3)
Figure 0006218640
一般式(a1−3)中、R91〜R95はそれぞれ独立に水素原子または置換基であり、R91〜R95のうち少なくとも1つは水酸基またはアミノ基を有する。
91〜R95として好ましくは水素原子、ヒドロキシアルキル基、アルキル基である。
91〜R95が連結基を介して2つ以上の一般式(a1−3)で表される構造が結合していてもよい。
一般式(a1−3)で表される化合物の好ましい例は、具体的には、下記に示す化合物である。
Figure 0006218640
第3に、上述の化合物a1が分子内に水酸基を有さずにアミノ基のみを3個以上有する化合物ある場合について説明する。
この場合、上述の化合物a1としては、アミノ基を3又は4個有する化合物が好ましく、脂肪族テトラミンおよび脂肪族トリアミンがより好ましい。
分子内に水酸基を有さずにアミノ基のみを3個以上有する化合物の好ましい例は、具体的には下記に示す化合物である。
Figure 0006218640
これらの中でも、分子内に水酸基およびアミノ基のうち少なくとも一方を含み、かつ、分子内における水酸基の個数およびアミノ基の個数の合計が3個以上である化合物a1は、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ジトリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールおよびこれらのアルキレンオキサイド付加物から選ばれる少なくとも1種であることが、高温および/または高圧といった過酷条件での潤滑性の観点から好ましい。
(a2)炭素数4以上の置換基を有するコハク酸誘導体
縮合物Aを得るための縮合反応に用いられる成分である、炭素数4以上の置換基を有するコハク酸誘導体a2について説明する。
炭素数4以上の置換基を有するコハク酸誘導体におけるコハク酸誘導体とは、上述の化合物a1の水酸基またはアミノ基、あるいは、1価アルコールa3の水酸基と反応して、エステル結合あるいはアミド結合を形成可能な官能基を有する化合物である。炭素数4以上の置換基を有するコハク酸誘導体としては、炭素数4以上の置換基を有するコハク酸、炭素数4以上の置換基を有するコハク酸無水物、炭素数4以上の置換基を有するコハク酸エステル、炭素数4以上の置換基を有するコハク酸ハライドが好ましく、炭素数4以上の置換基を有するコハク酸無水物がより好ましい。
のコハク酸誘導体a2は炭素数4以上の置換基を有する。炭素数4以上の置換基としては炭素数4以上の脂肪族炭化水素基、炭素数4以上の芳香族基を挙げることができ、炭素数4以上の脂肪族炭化水素基であることが好ましく、炭素数4以上のアルキル基または炭素数4以上のアルケニル基がより好ましい。コハク酸誘導体a2が有する置換基の炭素数は6以上であることが好ましく、8以上であることがより好ましい。一方、コハク酸誘導体a2が有する置換基の炭素数の上限値は特に制限はないが、例えば20以下が好ましく、16以下がより好ましい。
好ましい炭素数4以上の置換基を有するコハク酸誘導体a2としては下記一般式a2−1またはa2−2で表される化合物である。
Figure 0006218640
式中、R5154はそれぞれ独立に炭素数4以上の置換基、水素原子、他の置換基を表し、少なくとも1つが炭素数4以上の置換基である。
55、R56はそれぞれ独立に−OH、−O−R57(R57は有機基、好ましくはアルキル基)、ハロゲン原子を表す。
51〜R54が表す他の置換基は、「炭素数4以上の置換基」以外の置換基を意味し、特に限定はない。
51〜R54のうち1つが炭素数4以上のアルキル基または炭素数4以上のアルケニル基であり、かつ、残りが水素原子であることがより好ましい。R51〜R54のうち1つが炭素数4〜20のアルキル基または炭素数4〜20のアルケニル基であり、かつ、残りが水素原子であることが特に好ましい。
好ましい炭素数4以上の置換基を有するコハク酸誘導体a2の例を以下に示す。以下にはコハク酸無水物の例を示したが、これらコハク酸無水物の誘導体であるジカルボン酸、ジエステル、ジクロリド、モノエステルの構造も同様に好ましい例として挙げることができる。
Figure 0006218640
(a3)1価アルコール
縮合物Aを得るための縮合反応に用いられる成分である、1価アルコールa3について説明する。
1価アルコールa3は、一分子内に水酸基を1つ含む化合物である。1価アルコールa3は、R−OHで表される。Rは1価の脂肪族、脂環式又は芳香環基であり、R中の炭素原子の互いに隣接しない1以上の炭素原子が酸素原子に置換されていてもよい。Rの炭素数は4以上であることが好ましく、6以上であることがより好ましく、8以上であることが特に好ましく、10以上であることがさらに好ましい。1価アルコールの炭素数を上記範囲内とすることにより、各種基油への溶解性が向上し、さらに摩擦特性も改良され、縮合反応時に1価アルコールが揮散することを抑制することができる。
1価アルコールa3として更に好ましくは、炭素数10以上のアルキル基を有している及び/又は分岐アルキル基を有している、及び/又はアルキレンオキシ構造を有しているものである。
本発明に適する1価アルコールa3としては、例えば、ブタノール、イソブタノール、ペンタノール、プロパノール、ヘキサノール、2−エチルヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ヘキサデカノール、オクタデカノール、2−ヘプチルウンデカノール、エイコサデカノール、フィトステロール、イソステアリルアルコール、ステアロール、セトール、ベヘノール、あるいはこれら1価アルコールのアルキレンオキサイド付加物(アルキレンオキシ構造を有する化合物)等が挙げられる。
本発明で用いる1価アルコールa3は、下記一般式(3)で表されるものであることが好ましい。
一般式(3)
Figure 0006218640
ここで、一般式(3)中、Raは置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアリール基又は置換基を有してもよいヘテロアリール基であり、Xa1及びXa2はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基を表す。また、na1は2〜4の整数を表し、na2は1〜20の整数を表す。
aで表される置換基を有してもよいアルキル基のアルキル基部分の炭素数は、2〜25であることが好ましく、4〜22であることがより好ましく、6〜20であることがさらに好ましく、8〜18であることが好ましい。Raが表すアルキル基は直鎖であっても分岐であってもよいが、分岐であることが高温および/または高圧といった過酷条件での潤滑性の観点からも好ましく、また、基油への添加剤として用いる際、溶解性の観点から好ましい。
また、Raは置換基を有してもよいシクロアルキル基であってもよい。
aで表される置換基を有してもよいアルケニル基のアルケニル基部分の炭素数は、3〜22であることが好ましく、4〜18であることがより好ましく、8〜18であることがさらに好ましい。Raが表すアルキル基は直鎖であっても分岐であっても環状であってもよい。
aで表される置換基を有してもよいアリール基またはヘテロアリール基のアリール基部分の炭素数は、6〜17であることが好ましく、6〜12であることがより好ましい。Raが表すアリール基としては、フェニル基、ナフチル基などを挙げることができ、その中でもフェニル基が特に好ましい。また、Raが表すヘテロアリール基としては、例えば、イミダゾリル基、ピリジル基、キノリル基、フリル基、チエニル基、ベンズオキサゾリル基、インドリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基、カルバゾリル基、アゼピニル基を例示することができる。ヘテロアリール基に含まれるヘテロ原子は、酸素原子、硫黄原子、窒素原子であることが好ましく、中でも、酸素原子であることが好ましい。
中でも、一般式(3)において、Raは置換基を有してもよいアルキル基であることがより好ましい。
aが有し得る置換基の例には、置換もしくは無置換の炭素数1〜50のアルキル基(例えば、メチル、エチル、以後いずれも直鎖状もしくは分枝鎖状の、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、エイコシル、ヘンエイコシル、ドコシル、トリコシル、又はテトラコシル);炭素原子数2〜35のアルケニル基(例えば、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル、ウンデセニル、ドデセニル);炭素原子数3〜10のシクロアルキル基(例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル);炭素原子数6〜30の芳香族環基(例えば、フェニル、ナフチル、ビフェニル、フェナントリル、アントラセニル)、複素環基(窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子から選ばれる少なくとも1個のヘテロ原子を含む複素環の残基であるのが好ましく、例えば、ピリジル、ピリミジル、トリアジニル、チエニル、フリル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、トリアゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、チアジアリル、オキサジアゾリル、キノリル、イソキノリル);又はそれらの組み合わせからなる基を表す。これらの置換基は、可能な場合はさらに1以上の置換基を有してもよく、置換基の例には、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、エ−テル基、アルキルカルボニル基、シアノ基、チオエ−テル基、スルホキシド基、スルホニル基、アミド基などが挙げられる。
また、一般式(3)において、Xa1及びXa2はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基を表し、水素原子又はアルキル基であることがより好ましい。Xa1及びXa2が表すアルキル基の好ましい範囲は、Raで表される置換基を有してもよいアルキル基のアルキル基部分の好ましい範囲と同様である。
一般的(3)において、na1は2〜4の整数を表し、2又は3の整数であることがより好ましく、2であることがさらに好ましい。
また、na2は、1〜20の整数を表し、1〜15の整数であることがより好ましく、1〜10の整数であることがさらに好ましく、1〜7の整数であることが特に好ましい。
一般的(3)で表される1価アルコールの炭素数は、4以上であることが好ましく、6以上であることがより好ましく、8以上であることが特に好ましく、10以上であることがさらに好ましい。このような1価アルコールを用いることにより、各種基油への溶解性が向上し、さらに摩擦特性も改良され、縮合反応時に1価アルコールが揮散することを抑制することができる。
下記に本発明で用いることができる1価アルコールa3の具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
Figure 0006218640
縮合物Aは更に(a1)〜(a3)成分以外の成分が縮合していてもよい。このような成分としては、2価アルコール(好ましくは炭素数2〜50の脂肪族2価アルコール)、カルボン酸と縮合してアミド結合を形成可能な1価または多価アミン類、1価または(a2)成分以外の多価カルボン酸誘導体が挙げられる。
縮合物Aの好ましい構造としては、(a1)〜(a3)成分の説明で挙げた好ましい例示化合物の任意の組合せの縮合物であり、かつ、(a1)成分由来の構造、(a2)成分由来の構造および(a3)成分由来の構造とを少なくとも含む縮合物である。
縮合物Aに含まれる特に好ましい化合物としては下記一般式Axで表される化合物;
一般式Ax
Figure 0006218640
または、下記一般式Ay−1、一般式Ay−2または一般式Ay−3で表される部分構造単位が任意にエステル結合し、かつ、(a1)成分由来の構造、(a2)成分由来の構造および(a3)成分由来の構造とを少なくとも含むオリゴマーまたはポリマーAyである。
Figure 0006218640
一般式Ax、一般式Ay−1、一般式Ay−2および一般式Ay−3中、Zはm2価の連結基を表し、好ましい範囲は一般式(a1−1)におけるZの好ましい範囲と同様である。
一般式Ax、一般式Ay−1、一般式Ay−2および一般式Ay−3中、R11はアルキレン基を表し、好ましい範囲は一般式(a1−1)におけるR11の好ましい範囲と同様である。
一般式Ax、一般式Ay−1、一般式Ay−2および一般式Ay−3中、R51〜R54はそれぞれ独立に炭素数4以上の置換基、水素原子、他の置換基を表し、少なくとも1つが炭素数4以上の置換基であり、好ましい範囲は一般式a2−1またはa2−2におけるR51〜R54の好ましい範囲と同様である。
一般式Ax、一般式Ay−1、一般式Ay−2および一般式Ay−3中、n2は0〜100の整数であり、好ましい範囲は一般式(a1−2)におけるn1の好ましい範囲と同様である。
一般式Ax、一般式Ay−1、一般式Ay−2および一般式Ay−3中、m2は3〜6を表し、好ましい範囲は一般式(a1−2)におけるm1の好ましい範囲と同様である。
一般式Ax、一般式Ay−1、一般式Ay−2および一般式Ay−3中、−*はエステル結合を形成する結合手を表す。
本発明の潤滑剤組成物に含有される1種または2種以上の縮合物Aは、
上記一般式Axで表される化合物;
上記一般式Axで表される化合物と上記オリゴマーまたはポリマーAyを含む混合物;
上記オリゴマーまたはポリマーAy;
のいずれかであることがより特に好ましい。
このような構造の縮合物Aは、以下に示す製造方法などにより合成することができる。
(縮合物Aの製造方法、同定方法)
縮合物Aは少なくとも
分子内に水酸基およびアミノ基のうち少なくとも一方を含み、かつ、分子内における水酸基の個数およびアミノ基の個数の合計が3個以上である化合物a1と、
炭素数4以上の置換基を有するコハク酸誘導体a2と、
1価アルコールa3との縮合反応を行うことによって得られる。
縮合反応を行う際の仕込み比としては、少なくとも前記(a1)〜(a3)成分を、全カルボキシ基/全水酸基及び全アミノ基のmol比で2/1〜1/2で縮合させることが好ましく、より好ましくはmol比で1.5/1〜1/1.5、更に好ましくは1/1〜1/1.3、特に好ましくは1/1〜1/1.2である。アルコールを過剰に用いた方が縮合物の酸価を低くすることができ、潤滑剤として用いた際に部材へのダメージを抑制できる。
全アルコール中における(a1)成分/(a3)成分の比率は水酸基のmol比で1/0.5〜1/3が好ましく、1/0.7〜1/1.3が好ましく、1/0.8〜1/1.3がより好ましい。
(a1)成分〜(a3)成分を一括で仕込んで反応させてもよいし、(a1)成分と(a2)成分を反応させた後に(a3)成分を反応させてもよいし、(a2)成分と(a3)成分を反応させた後に(a1)成分を反応させてもよい。
上記のようにして仕込んだ混合物を、触媒または縮合剤存在下もしくは無触媒で、縮合反応をすることで、縮合物Aが得られる。
縮合の際は、加熱するか、水または低分子アルコールと共沸する溶媒を適量存在させることが望ましい。これにより生成物が着色することなく、反応もスムーズに進行する。この溶媒は沸点100〜200℃の炭化水素系溶媒が好ましく、100〜170℃の炭化水素系溶媒がさらに好ましく、110〜160℃の炭化水素系溶媒が最も好ましい。これらの溶媒として、例えばトルエン、キシレン、メシチレンなどがあげられる。添加する量は、多すぎると液温がその溶媒付近となり、縮合が進行しにくくなる。一方、少なすぎると、共沸がスムーズに行かない。したがって、添加量は、原料全量に対し、1〜25質量%が好ましく、2〜20質量%がさらに好ましく、3〜15質量%が特に好ましく、5〜12質量%も好ましい。
触媒を用いることで、反応が加速されるが、触媒除去の後処理が煩雑であり、生成物の着色の原因となることから、用いないことが望ましい。しかし、用いる場合は、通常の触媒で通常の条件と操作が使用される。これに関しては、特表2001−501989号公報、特表2001−500549号公報、特表2001−507334号公報、及び特表2002−509563号公報中の参考文献を参照することができる。
仕込み終了後、液温120〜250℃、好ましくは130〜230℃、さらに好ましくは150〜230℃、特に好ましくは170〜230℃で反応させる。これにより水または低分子アルコールを含む溶媒が共沸され、冷却部位で冷却され、液体となることで分離される。この水は除去されればよい。低温で反応した後に更に高温で反応させてもよい。
反応時間は、仕込みのモル数より理論発生水量が計算されるので、この水量が得られる時点まで反応を行うことが好ましいが、完全に反応を完結させることは困難である。理論水発生量が60〜90%の時点で反応を終了しても、得られた縮合物Aを含有する潤滑剤組成物の潤滑性は良好である。反応時間は1〜24時間であり、好ましくは3〜18時間、さらに好ましくは5〜18時間、最も好ましくは6〜15時間である。
このようにして得られた縮合反応混合物中には、a1とa2とa3の全てが反応した縮合物Aの他に、a1とa2のみが反応した縮合物、a2とa3のみが反応した縮合物、などの構成成分の一部のみが反応した縮合物A以外のその他の縮合物、未反応の原料も含まれていてもよい。
なお、縮合反応混合物から、縮合物Aを精製せずに、縮合物Aを主成分とする縮合反応混合物の全体を本発明の潤滑剤組成物に用いてもよい。縮合物Aを主成分とする縮合反応混合物全体を本発明の潤滑剤組成物に用いる場合、以下で説明する縮合物Aの好ましい特性、添加量範囲が縮合物Aを主成分とする縮合反応混合物全体の好ましい特性、添加量範囲となる。
ここで主成分とは50質量%以上含まれていることを言う。
縮合物Aの40℃における動粘度は、50〜2000mm2/sであることが好ましい。縮合物Aの40℃における動粘度は、50mm2/s以上であることが好ましく、70mm2/s以上であることがより好ましく、100mm2/s以上であることがさらに好ましい。また、縮合物Aの40℃における動粘度は、2000mm2/s以下であることが好ましく、1500mm2/s以下であることがより好ましく、1000mm2/s以下であることがさらに好ましい。縮合物Aの動粘度を上記範囲内とすることにより、組成物の摩擦係数を低く抑えることができ、これにより潤滑性能を高めることができる。本明細書中、縮合物Aの40℃における動粘度は具体的には、ウベローデ粘度計を用い,40.0℃に調整された恒温水槽中で測定した値を採用する。
縮合物Aの分子量はゲルパミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いた標準ポリスチレン換算の重量平均分子量で1000〜100000が好ましく、2000〜20000がより好ましく、3000〜10000が更に好ましい。分子量を適正範囲とすることで、低粘度で良好な潤滑特性が得られる。本明細書中、縮合物Aのポリスチレン換算の重量平均分子量は具体的には、以下の条件で測定した値を採用する。
「HLC−8220GPC(東ソー(株)社製)装置」。カラムは「TSKgel、SuperHZM−H(東ソー(株)社製、4.6mmID×15cm)」、「TSKgel、SuperHZ4000(東ソー(株)社製、4.6mmID×15cm)」、TSKgel、SuperHZ2000(東ソー(株)社製、4.6mmID×15cm)」を3本用いた。
GPCの条件としては、例えば、下記の条件を採用することができる。
・溶離液 THF
・流速 0.35ml/min
・測定温度 40℃(カラム、インレット、RI)
・分析時間 20分
・試料濃度 0.1%
・サンプル注入量 10μl
本発明では、縮合物Aには未反応のCOOHが残存していてもよく、また、OHが存在していてもよいが、OH及びCOOHが残存すると、水酸基価と酸価が上がり、用途によっては好ましくない場合もある。このような場合、別途アシル化、及び/又はエステル化処理により、OH及びCOOHを消失させ、水酸基価と酸価を低減することもできる。
縮合物Aの未反応のOH基の割合は、13C−NMRを測定することで判明する。潤滑剤の用途では、縮合物AのOH基の残存率は0〜40%であることが好ましく、0〜35%であることがより好ましく、0〜30%であることがさらに好ましい。
また、潤滑剤の用途では、縮合物Aの酸価(サンプル1gを中和するのに要するKOHのmg数)は、0〜50mg KOHであることが好ましく、0〜40mg KOHであることがより好ましく、0〜30mg KOHであることがさらに好ましい。但し、この範囲に制限されるものではない。本明細書中、縮合物Aの酸価(サンプル1gを中和するのに要するKOHのmg数)は具体的には、JISK2501法に従い測定した値を用いた。
反応及び反応後の処理が終了した後、ろ過を行い、ゴミなどを除去することが好ましい。なお、生成物が固体となった場合は、溶融してとりだすか、あるいは再沈殿により粉体として取り出すこともできる。
<潤滑剤組成物の縮合物A以外の成分>
本発明は、縮合物Aを少なくとも含有する潤滑剤組成物に関するものである。例えば、潤滑剤組成物には、縮合物Aと各種添加剤及び/または媒体を添加することができる。
縮合物Aは全潤滑剤組成物中、0.01〜100質量%が好ましく、0.1〜20質量%がより好ましく、0.3〜10質量%が更に好ましい。縮合物Aは媒体に少量添加するだけで良好な潤滑特性を発現する。
本発明の潤滑剤組成物の特に好ましい様態としては、全潤滑剤組成物に対し、縮合物Aの割合が0.1〜20質量%、媒体の割合が70〜99.9質量%、前記縮合物Aおよび前記媒体以外の他の成分の割合が0〜29.9質量%である、潤滑剤組成物である。
前記媒体以外の他の成分、すなわち添加剤としては、例えば、摩耗防止剤、粘度指数向上剤(好ましくはポリアルキル(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート−極性基を有する(メタ)アクリレート共重合体)、酸化防止剤(好ましくはフェノール化合物、アミン化合物)、清浄剤(好ましくはCaスルホネート、Caフェネート、Mgスルホネート、Caサリチレート、(ホウ酸変性)コハク酸イミド、コハク酸エステル)、分散剤、流動剤、硬化剤、腐食防止剤、シール適合剤、消泡剤(好ましくはポリジメチルシリコーン)、錆防止剤、腐食防止剤、摩擦調整剤、及び増ちょう剤から選択される1種又は2種以上を挙げることができる。
このような添加剤を添加することにより、摩耗抑制等の潤滑剤としての好ましい機能を付与することができる。本発明において用いることができる添加剤については、特開2011−89106号公報の段落〔0098〕〜〔0165〕の記載を参照することができる。
前記縮合物Aおよび前記媒体以外の他の成分として好ましい化合物、すなわち本発明の潤滑剤組成物への好ましい添加剤としては、亜鉛、モリブデン、硫黄およびリンのうち少なくとも1種を構成元素として有する化合物でる。このような化合物は、摩擦調整剤、磨耗防止剤、酸化防止剤などの機能を有する。亜鉛、モリブデン、硫黄およびリンのうち少なくとも1種を構成元素として有する化合物とは、化合物中に亜鉛、モリブデン、硫黄およびリンをいかなる状態で含んでもよい化合物を意味する。具体的には亜鉛、モリブデン、硫黄およびリンが、単体(酸化数0)、イオン、錯体などとして含まれる化合物を挙げることができる。
このような化合物としては、有機モリブデン化合物、無機モリブデン化合物、有機亜鉛化合物、リン酸誘導体、有機硫黄化合物などが挙げられる。その中でも有機モリブデン化合物および有機亜鉛化合物が好ましい。
また、亜鉛、モリブデン、硫黄およびリンのうち少なくとも1種を構成元素として有する化合物は、1種のみを本発明の潤滑剤組成物に添加してもよく、2種以上を組み合わせて本発明の潤滑剤組成物に添加してもよい。亜鉛、モリブデン、硫黄およびリンのうち少なくとも1種を構成元素として有する化合物を2種以上を組み合わせて本発明の潤滑剤組成物に添加する場合は、有機モリブデン化合物、無機モリブデン化合物、有機亜鉛化合物、リン酸誘導体および有機硫黄化合物のうち2種以上を組み合わせることが好ましく、有機モリブデン化合物および有機亜鉛化合物を組み合わせることがより好ましい。
以下、有機モリブデン化合物、無機モリブデン化合物、有機亜鉛化合物、リン酸誘導体、有機硫黄化合物のそれぞれの好ましい態様について説明する。
潤滑剤組成物に添加剤として用いられる有機モリブデン化合物としては、モリブデンジチオホスフェート(MoDTPと言われることもある)等のリンを含有する有機モリブデン化合物を挙げることができる。
別の有機モリブデン化合物としては、モリブデンジチオカーバメート(MoDTCと言われることもある)等の硫黄を含有する有機モリブデン化合物を挙げることができる。硫黄を含有する有機モリブデン化合物としては、例えば、硫化オキシモリブデン−N,N−ジ−オクチルジチオカルバメート(C8−Mo(DTC))、硫化オキシモリブデン−N,N−ジ−トリデシルジチオカルバメート(C16−Mo(DTC)などが好ましい。
その他の硫黄を含有する有機モリブデン化合物としては、無機モリブデン化合物と硫黄含有有機化合物との錯体を挙げることができる。無機モリブデン化合物と硫黄含有有機化合物との錯体である有機モリブデン化合物に用いられる無機モリブデン化合物としては、例えば、二酸化モリブデン、三酸化モリブデン等の酸化モリブデン、オルトモリブデン酸、パラモリブデン酸、(ポリ)硫化モリブデン酸等のモリブデン酸、これらモリブデン酸の金属塩、アンモニウム塩等のモリブデン酸塩、二硫化モリブデン、三硫化モリブデン、五硫化モリブデン、ポリ硫化モリブデン等の硫化モリブデン、硫化モリブデン酸、硫化モリブデン酸の金属塩またはアミン塩、塩化モリブデン等のハロゲン化モリブデン等を挙げることができる。また、無機モリブデン化合物と硫黄含有有機化合物との錯体である有機モリブデン化合物に用いられる硫黄含有有機化合物としては、例えば、アルキル(チオ)キサンテート、チアジアゾール、メルカプトチアジアゾール、チオカーボネート、テトラハイドロカルビルチウラムジスルフィド、ビス(ジ(チオ)ハイドロカルビルジチオホスホネート)ジスルフィド、有機(ポリ)サルファイド、硫化エステル等を挙げることができる。
その他の硫黄を含有する有機モリブデン化合物としては、硫化モリブデン、硫化モリブデン酸等の硫黄含有モリブデン化合物とアルケニルコハク酸イミドとの錯体等を挙げることができる。
有機モリブデン化合物としては、構成元素としてリンや硫黄を含まない有機モリブデン化合物を用いることができる。構成元素としてリンや硫黄を含まない有機モリブデン化合物としては、具体的には、モリブデン−アミン錯体、モリブデン−コハク酸イミド錯体、有機酸のモリブデン塩、アルコールのモリブデン塩などが挙げられ、中でも、モリブデン−アミン錯体、有機酸のモリブデン塩およびアルコールのモリブデン塩が好ましい。
潤滑剤組成物に添加剤として用いられる無機モリブデン化合物としては、無機モリブデン化合物と硫黄含有有機化合物との錯体である有機モリブデン化合物に用いられる無機モリブデン化合物の例として挙げたものと同様である。
潤滑剤組成物に添加剤として用いられる有機亜鉛化合物としては、下記一般式(4)で表わされるジンクジチオホスフェート(ZDTP)が好ましい。
一般式(4)
Figure 0006218640
一般式(4)中、Q1、Q2、Q3、Q4は各々同じでも異なっていてもよく、それぞれ独立にイソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、イソトリデシル基、ミスチル基、パルミチル基、ステアリル基等の炭素数8〜20のアルキル基を表す。
一般式(4)で表わされるジンクジチオホスフェートとしては、具体的にはn−ブチル−n−ペンチルジチオリン酸亜鉛(C4/C5 ZnDTP)、ジ−2−エチルヘキシルジチオリン酸亜鉛(C8 ZnDTP)又はイソプロピル−1−エチルブチルジチオリン酸亜鉛(C3/C6 ZnDTP)であることが好ましい。
本発明の潤滑剤組成物において、有機モリブデン化合物を用いる場合、その含有量は、潤滑剤組成物全質量に対して、10〜1000ppm含まれていることが好ましく、50〜800ppm含まれていることがより好ましく、100〜600ppm含まれていることがさらに好ましい。
また、有機亜鉛化合物を用いる場合、その含有量は潤滑剤組成物全質量に対して、0.01〜5質量%含まれていることが好ましく、0.01〜3質量%含まれていることがより好ましく、0.01〜1質量%含まれていることがさらに好ましい。
本発明の潤滑剤組成物中の有機モリブデン化合物や有機亜鉛化合物などの有機金属化合物の含有量を上記範囲内とすることにより、潤滑剤組成物の安定性を高めることができ、高温および/または高圧といった過酷条件での潤滑性を改善でき、より優れた潤滑性能、磨耗抑制能を発揮することができる。
また、媒体(基油とも呼ぶ)としては、鉱油、油脂化合物、ポリオレフィン油(例えばポリアルファオレフィン)、シリコーン油、パーフルオロポリエーテル油、エステル油(例えば芳香族エステル油、1価脂肪酸エステル、2価脂肪酸ジエステル、ポリオールエステル潤滑油)、ジフェニルエーテル誘導体から選択される1種又は2種以上を挙げることができる。
本発明において、「媒体」とは、一般的に「流動性液体」とよばれる媒体の全てを意味するものである。但し、室温又は使用される温度において、液状であることは必要とせず、液体以外にも固体及びゲル等のいずれの形態の材料も利用することができる。本発明において利用する媒体については特に制限はなく、用途に応じて種々の液体から選択することができる。本発明において用いることができる媒体については、特開2011−89106号公報の段落〔0067〕〜〔0096〕の記載を参照することができる。媒体の40℃における動粘度は1〜500mm2/sが好ましく、1.5〜200mm2/sがより好ましく、2〜50mm2/sが更に好ましい。
媒体の粘度指数は90以上であることが好ましく、より好ましくは105以上、更に好ましくは110以上である。また160以下であることが好ましい。粘度指数を上記範囲内とすることにより、粘度−温度特性および熱・酸化安定性、揮発防止性が良化し、摩耗防止性が向上する。
なお、本発明でいう粘度指数とは、JIS K 2283−1993に準拠して測定された粘度指数を意味する。
<潤滑剤組成物の性質>
本発明の潤滑剤組成物は、40℃での動粘度が2000mm2/s以下であるのが好ましく、1000mm2/s以下であることがより好ましく、200mm2/s以下であることがさらに好ましく、50mm2/s以下であることが特に好ましい。粘性は、使用環境により適正な粘性が求められるため、それに合わせることが必要である。本明細書中、潤滑剤組成物の40℃での動粘度は具体的には、ウベローデ粘度計を用い、40.0℃の恒温水槽中で測定した値を採用する。
本発明の潤滑剤組成物は、構成元素が、炭素、水素、酸素及び窒素だけからなることが好ましく、炭素、水素及び酸素のみからで構成することがさらに好ましい。また、油性媒体として用いる油も、炭素、水素及び酸素のみから構成される材料は種々ある。これらを組み合わせることにより、構成元素が、炭素、水素、酸素及び窒素だけからなる潤滑剤組成物を調製することができる。
なお、現行の潤滑油は、通常、リン、硫黄、重金属を含んでいる。燃料と共に潤滑油も燃焼する2ストロークエンジンに用いられる潤滑油は、環境負荷を配慮して、リンと重金属は含まれないが、硫黄は4ストロークエンジンに用いられる潤滑油の半分量程度含まれている。即ち、現行の潤滑技術では、最低でも硫黄分による境界潤滑膜の形成は必須であると推察されるが、硫黄元素を含んでいることによって、排気ガス浄化のための触媒への負荷は非常に大きい。この排気ガス浄化触媒には、プラチナやニッケルが使用されているが、リンや硫黄の被毒作用は大きな問題になっている。その点からも潤滑油の組成物を構成する元素が、炭素、水素、酸素及び窒素だけからなることのメリットは非常に大きい。さらに炭素、水素、酸素だけからなることはエンジンオイル以外の産業機械、特に食品製造関連機器の潤滑油には最適である。現行技術では、摩擦係数を犠牲にして環境に配慮した元素組成をとっている。これは、冷却のために大量の水を必要とする金属の切削・加工用潤滑油にも非常に好ましい技術である。
<潤滑剤組成物の調製方法>
本発明の潤滑剤組成物は、縮合物Aを、油性媒体中もしくは水性媒体中に添加し、溶解及び/又は分散させることで調製することができる。溶解及び/又は分散は、加温下で行ってもよい。
<潤滑剤組成物の用途>
本発明の潤滑剤組成物は、潤滑剤として有用である。すなわち、本発明は、上述した縮合物A又は上述した潤滑剤組成物を含む潤滑剤に関するものでもある。
本発明の潤滑剤組成物は、例えば、2つの摺動面間に供給され、摩擦を低減するために用いることができる。本発明の潤滑剤組成物は、摺動面に皮膜を形成し得る。摺動面の材質としては、鋼鉄では、具体的には、機械構造用炭素鋼、ニッケルクロム鋼材・ニッケルクロムモリブデン鋼材・クロム鋼材・クロムモリブデン鋼材・アルミニウムクロムモリブデン鋼材などの構造機械用合金鋼、ステンレス鋼、マルチエージング鋼などが挙げられる。
摺動面の材質としては、鋼鉄以外の各種金属、又は金属以外の無機もしくは有機材料も広く用いられる。金属以外の無機もしくは有機材料としては、各種プラスチック、セラミック、カーボン等、及びその混合体などが挙げられる。より具体的には、鋼鉄以外の金属材料としては、鋳鉄、銅・銅−鉛・アルミニウム合金、その鋳物及びホワイトメタルが挙げられる。
なお、摺動面の材質については、特開2011−89106号公報の段落〔0168〕〜〔0175〕の記載を参照することができる。
本発明の潤滑剤組成物は、種々の用途に利用できる。例えば、グリース用潤滑油、離型剤、内燃機関用エンジンオイル、金属加工用(切削用)オイル、軸受け用オイル、燃焼機関用燃料、車両エンジン油、ギヤ油、自動車用作動油、船舶・航空機用潤滑油、マシン油,タービン油、軸受用オイル、油圧作動油、圧縮機・真空ポンプ油、冷凍機油、金属加工用潤滑油剤、磁気記録媒体用潤滑剤、マイクロマシン用潤滑剤、人工骨用潤滑剤、ショックアブソーバ油又は圧延油として用いることができる。さらに、往復動式や回転式の密閉型圧縮機を有するエアコンや冷蔵庫、自動車用エアコンや除湿機、冷凍庫、冷凍冷蔵倉庫、自動販売機、ショーケース、化学プラント等の冷却装置などにも用いられる。
塩素系化合物を含まない金属加工用潤滑油剤として、例えば鉄鋼材料やAl合金などの金属材料を熱間圧延したり、切削等の加工を行ったりする際に、またアルミニウムの冷間圧延油、切削油、研削油、引き抜き加工油、プレス加工油等の金属加工油や金属の塑性加工油として、特に高速、高負荷加工時の摩耗、破損、表面あれの抑止剤として、またブローチ加工,ガンドリル加工のような低速・重切削に適用可能な金属加工油組成物としても有用である。
また各種グリース用潤滑油、磁気記録媒体用潤滑剤、マイクロマシン用潤滑剤や人工骨用潤滑剤等に利用することができる。また、組成物の元素組成を炭水化物とすることができるため、例えば、乳化、分散化、可溶化剤としてケーキミックス、サラダドレッシング、ショートニングオイル、チョコレート等に広く利用されている、ポリオキシエチレンエーテルを含むソルビタン脂肪酸エステルを食用油を基油とした組成物を潤滑油とすることで、全く人体に無害の高性能潤滑油を食品製造ラインの製造機器や医療機器部材の潤滑に用いることができる。
さらに、本発明の潤滑剤組成物を水系に乳化して分散したり、極性溶媒中や樹脂媒体中に分散したりすることで、切削油や圧延油として用いることができる。
また、本発明の潤滑剤組成物は離型剤としても、種々の用途に利用できる。例えば、ポリカーボネート樹脂、難燃性ポリカーボネート樹脂、電子写真装置や静電記録装置などで使用される画像形成用トナーの主成分である結晶性ポリエステル樹脂、各種成形用熱可塑性樹脂組成物及び半導体封し用エポキシ樹脂組成物などの離型剤として用いられる。離型剤の一態様は、ポリカーボネート樹脂等の樹脂100質量部に対して、縮合物Aを0.01〜10質量部(好ましくは0.1〜5質量部)含有する態様である。
また、衣料などの繊維製品に予め練り込んだり、塗布したりすることにより、該繊維製品に付着した汚れの離脱を促進して繊維製品の汚れを防止する防汚剤としても用いることができる。
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
[合成例]
(合成例1)縮合物A1の合成
2−デセニルコハク酸無水物、ペンタエリスリトールを4/1のモル比で混合し、窒素気流下150℃で4時間反応し、テトラカルボン酸を得た。反応物に塩化チオニルを加え、加熱反応することでテトラ酸クロリドとした後、トルエン溶媒、ピリジン塩基条件下、トリエチレングリコールモノエチルエーテル(ペンタエリスリトールに対し4倍mol)と反応させることにより、下記構造を主成分とする縮合物A1を得た。
Figure 0006218640
縮合物A1中、Ra1、Ra2のいずれか一方が−CH2CH=CH(CH26CH3、残りが水素原子を表す。
(合成例2)縮合物A2の合成
2−デセニルコハク酸無水物、ペンタエリスリトール、トリエチレングリコールモノエチルエーテルを4/1/5のモル比で混合し、窒素気流下150℃で4時間反応した。更に220℃で5時間反応することにより、重量平均分子量800〜10000程度のポリエステルオリゴマー混合物である縮合物A2を得た。縮合物A2を合成するときに得られた縮合反応混合物中には2−デセニルコハク酸のビス(トリエチレングリコールモノエチルエーテル)エステルが35%、未反応のトリエチレングリコールモノエチルエーテルが5%、残りが縮合物A2を含むポリマー成分であった。
(合成例3)縮合物A16の合成
窒素気流下2−デセニルコハク酸無水物、ジエチレントリアミンを反応させ、トリカルボン酸を合成した後、2−エチルヘキサノールを加え、200℃で8時間反応することにより、下記構造を主成分とする縮合物A16を得た。
Figure 0006218640
縮合物A16中、Ra1、Ra2のいずれか一方が−CH2CH=CH(CH26CH3、残りが水素原子を表す。
(合成例4)比較用化合物X1の合成
2−デセニルコハク酸無水物をコハク酸無水物に変えた他は合成例1と同じ手法を用い比較用化合物X1を得た。
(合成例5)比較用化合物X2の合成
2−デセニルコハク酸無水物をコハク酸無水物変えた他は合成例2と同じ手法を用い比較用化合物X2を得た。
(他の縮合物)
他の縮合物については下記表1に記載したa1〜a3を、下記表1に記載したmol比となるように混合した他は合成例2と同じ手法で他の縮合物を合成した。
このような合成方法を用いることで、各縮合物は、
上述の化合物a1由来の構造が、炭素数4以上の置換基を有するコハク酸誘導体a2由来の構造を介して、1価アルコールa3由来の構造と結合した構造を有する純物質、混合物となる。
エステルオリゴマーである縮合物A2〜A16及びX2〜X4のポリスチレン換算の重量平均分子量Mwは3000〜10000であった。各縮合物の酸価は20mgKOH/g以下であった。
また、各縮合物Aの合成に用いた材料を以下に示す。
本発明に用いられる分子内における水酸基の個数およびアミノ基の個数の合計が3個以上である化合物a1;
Figure 0006218640
a1eは、平均Mn=450、y11+y12+y13=平均で7の化合物である。
a1fは、平均Mn=797、y31+y32+y33+y34=平均で15の化合物である。
比較化合物用の分子内における水酸基の個数およびアミノ基の個数の合計が2個以上である化合物;
Figure 0006218640
本発明に用いられる炭素数4以上の置換基を有するコハク酸誘導体a2の前駆体;
Figure 0006218640
比較化合物用の無置換のコハク酸;
Figure 0006218640
1価アルコールa3;
Figure 0006218640
a3dは、y51=平均で5の化合物である。
a3eは、y52=平均で5の化合物である。
a3gは、y53=平均で5の化合物である。
Figure 0006218640
[実施例c101〜c121および比較例d101〜d105]
本発明の規定を満たす縮合物Aおよび比較化合物と、以下の媒体とを、下記表2の比率で混合し、更に金属系清浄剤としてカルシウムスルホネート1.0質量%を添加して80℃でよく攪拌し、潤滑剤組成物を調製した。
B1:鉱油(JX日鉱日石エネルギー社製 スーパーオイルN46)
B2:ポリαオレフィン油(ANDEROL社製 ANDEROL FGC 32)
B3:エステル油(ANDEROL社製 ANDEROL 495)
B4:エーテル油(モレスコ社製 モレスコハイルーブLB32)
得られた潤滑剤組成物を実施例c101〜c121および比較例d101〜d105の潤滑剤組成物とした。
なお、潤滑剤組成物は、媒体を用いない実施例c101、c102、比較例d102およびd103はいずれも40℃での動粘度が1000mm2/s以下であった。媒体を用いた潤滑剤組成物の40℃における動粘度は30mm2/s〜50mm2/sであることを、本明細書中に記載の方法で確認した。
[評価]
<摩擦係数評価>
各実施例および比較例の潤滑剤組成物について、振動型摩擦摩耗試験機(Optimol Instruments Prueftechnik GmbH社製、商品名:SRV 3)を用いて、振動数、荷重、温度は下記表2記載の条件で、振幅2.0mm、時間30分おける摩擦係数を測定した。上部試験片は10mmSUJ−2ボール、下部試験片24mmSUJ−2ディスクを用いた。観測した摩擦係数を以下の基準にしたがって評価した。その結果を下記表3に示した。
荷重が高いほど、また、温度が高いほど、移動速度が遅い、すなわち振動数が小さいほど油膜切れをおこしやすく境界潤滑領域の摩擦試験となり過酷な条件となる。
摩擦係数が小さいほど、良好な潤滑特性であることを表す。実用上、A、B、CまたはD評価であることが求められる。
Figure 0006218640
A:摩擦係数<0.10
B:0.10≦摩擦係数<0.15
C:0.15≦摩擦係数<0.20
D:0.20≦摩擦係数<0.25
E:摩擦係数≧0.25
<磨耗痕径評価>
また、条件3での摩擦磨耗試験後のボールの磨耗痕の直径を実施例d101の磨耗痕直径を100%として規格化、以下の基準にしたがって評価した。その結果を下記表3に示した。
値が小さいほど磨耗が少ないことを表す。a〜cは磨耗痕が小さく改良が見られた。dは実施例d101同等またはそれ以下で改良が見られなかったと判断した。実用上、a、bまたはc評価であることが求められる。
a:50%未満
b:50%以上、70%未満
c:70%以上、95%未満
d:95%以上
Figure 0006218640
上記表3より、本発明の潤滑剤組成物は比較例の組成物に比べ、より厳しい条件においても低い摩擦係数を示し、磨耗が少ないことが分かる。本発明の潤滑剤組成物は、高温および/または高圧といった過酷条件での潤滑性に優れることがわかった。
一方、比較例d101より、縮合物を添加せずに媒体としてのベースオイルのみを用いた潤滑剤組成物は、過酷条件での潤滑性に劣ることがわかった。
比較例d102〜d104より、無置換の無水コハク酸である点で本発明の範囲外であるコハク酸誘導体を縮合材料として用いた縮合物を含有する潤滑剤組成物は、過酷条件での潤滑性に劣ることがわかった。
比較例d105より、分子内における水酸基の個数およびアミノ基の個数の合計が本発明で規定する下限値を下回る多価アルコールを縮合材料として用いた縮合物を含有する潤滑剤組成物は、過酷条件での潤滑性に劣ることがわかった。
[実施例c201〜c203および比較例d201]
下記表4に記載の組成となるように実施例c201〜c203および比較例d201の潤滑剤組成物を調製した。
表4中、MoDTCは硫化オキシモリブデン−N,N−ジオクチルジチオカーバメートを表し、ZnDTPはイソプロピル−1−エチルブチルジチオリン酸亜鉛を表す。
なお、本発明の潤滑剤組成物はいずれも40℃での動粘度が30mm2/s〜50mm2/sであることを、本明細書中に記載の方法で確認した。
得られた各実施例および比較例の潤滑剤組成物についても前記手法により摩擦係数、磨耗痕径を観測した。得られた結果を下記表4に記載した。
Figure 0006218640
上記表4より、本発明の潤滑剤組成物は更に亜鉛、モリブデン、硫黄、リンのうち少なくとも1種を構成元素として有する化合物を添加することにより、更に磨耗を低減でき、過酷条件での潤滑性に優れることがわかった。
一方、比較例d201より、縮合物を添加せずに、媒体ならびに亜鉛、モリブデン、硫黄およびリンのうち少なくとも1種を構成元素として有する化合物のみを用いた潤滑剤組成物は、過酷条件での潤滑性に劣ることがわかった。

Claims (11)

  1. 分子内に水酸基およびアミノ基のうち少なくとも一方を含み、かつ、分子内における水酸基の個数およびアミノ基の個数の合計が3個以上である化合物a1と、
    炭素数4以上の置換基を有するコハク酸誘導体a2と、
    炭素数5以上の1価アルコールa3と、
    が少なくとも縮合した縮合物Aを少なくとも1種含有し、
    前記化合物a1/前記1価アルコールa3が水酸基のmol比で1/0.5〜1/3である、潤滑剤組成物。
  2. 化合物a1が、分子内に水酸基を3個以上の有する多価アルコールまたはそのアルキレンオキサイド付加物である、請求項1に記載の潤滑剤組成物。
  3. 化合物a1がトリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ジトリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールおよびこれらのアルキレンオキサイド付加物から選ばれる少なくとも1種である、請求項1または2に記載の潤滑剤組成物。
  4. 1価アルコールa3が、アルキレンオキシ構造を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物。
  5. 1価アルコールa3が、分岐アルキル基を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物。
  6. コハク酸誘導体a2の置換基が、炭素数4以上の脂肪族炭化水素基である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物。
  7. さらに媒体を含有し、
    全潤滑剤組成物に対し、縮合物Aの割合が0.1〜20質量%、媒体の割合が70〜99.9質量%、前記縮合物Aおよび前記媒体以外の他の成分の割合が0〜29.9質量%である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物。
  8. 媒体が、鉱油、ポリオレフィン油、エステル油およびエーテル油から選ばれる少なくとも1種である、請求項7に記載の潤滑剤組成物。
  9. 前記縮合物Aおよび前記媒体以外の他の成分として、亜鉛、モリブデン、硫黄およびリンのうち少なくとも1種を構成元素として有する化合物を含む、請求項7または8に記載の潤滑剤組成物。
  10. 前記縮合物Aが、
    化合物a1由来の構造が、炭素数4以上の置換基を有するコハク酸誘導体a2由来の構造を介して、1価アルコールa3由来の構造と結合した構造を有する純物質または混合物である請求項1〜9のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物。
  11. 前記縮合物Aがオリゴマー、またはポリマーである請求項1〜10のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物。
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