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JP6182993B2 - 記憶素子、記憶装置、記憶素子の製造方法、磁気ヘッド - Google Patents

記憶素子、記憶装置、記憶素子の製造方法、磁気ヘッド Download PDF

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Description

本技術は、複数の磁性層を有し、スピントルク磁化反転を利用して記録を行う記憶素子とその記憶素子を備えた記憶装置、記憶素子の製造方法、さらには記憶素子を備えた磁気ヘッドに関する。
特開2012−59906号公報
コンピュータなどの情報機器ではランダム・アクセス・メモリとして、動作が高速で、高密度なDRAM(Dynamic Random Access Memory)が広く使われているが、揮発性メモリであるDRAMに代わるメモリ、或いはDRAM等と併用するメモリとして不揮発性メモリの需要は大きい。不揮発性メモリの候補として、磁性体の磁化で情報を記録する磁気ランダム・アクセス・メモリ(MRAM:Magnetic Random Access Memory)が注目され、開発が進められている。
MRAMの記憶方式としては、電流磁場によって磁化を反転させる手法や、スピン分極した電子を直接記憶層に注入して磁化反転を起こさせる方法があるが、素子のサイズが小さくなるのに伴い記録電流を小さくできるスピン注入磁化反転が注目されている。
さらに、素子を微細化するために磁性体の磁化方向を垂直方向に向けた垂直磁化膜を用いた方法が検討されている。
そして垂直磁化膜を形成するために、FeやCoと酸化物層の間に働く界面磁気異方性を利用して垂直磁化膜を得る方法が利用されている。
また強い垂直磁気異方性を得るための手法も例えば上記特許文献1に開示されている。即ちトンネルバリア層と記憶層との間に働く界面磁気異方性だけでなく、記憶層のトンネルバリア層側とは反対側にもう一つ酸化物層(スピンバリア層)を形成し、より強い界面磁気異方性を得るようにすることが開示されている。
しかしながら、トンネルバリア層とスピンバリア層の二つの層は、磁気記憶素子の抵抗として作用する。このためスピンバリア層を設けることで素子の抵抗が上昇して、動作電圧の範囲での記憶動作が難しくなる。さらに、スピンバリア層は磁気抵抗を有しないので、素子の磁気抵抗比が小さくなり情報を読み出す際に支障をきたす。
そこで本技術では、トンネルバリア層とスピンバリア層の二つの酸化物膜を有する記憶素子において、保持特性の低下や記録電流の上昇を抑えながら、素子抵抗を下げ、低い書き込み電圧、および大きな磁気抵抗変化が得られるようにすることを目的とする。
第1に、本技術に係る記憶素子は、膜面に垂直な磁化を有し、情報に対応して磁化の向きが変化される記憶層と、前記記憶層に記憶された情報の基準となる、膜面に垂直な磁化を有する磁化固定層と、前記記憶層と前記磁化固定層の間に設けられる酸化物によるトンネルバリア層と、前記記憶層の、前記トンネルバリア層に接する面とは反対側の面に接して設けられる酸化物によるスピンバリア層と、を有する層構造を備える。そして前記層構造の積層方向に電流を流すことで前記記憶層の磁化の向きが変化して前記記憶層に情報の記憶が行われるとともに、所定の設定膜厚値で形成される前記スピンバリア層内には、その一部に低抵抗領域が形成されているものである。
これにより設定膜厚値としてある程度の十分な厚みでスピンバリア層を形成して、界面磁気異方性エネルギーが得られるようにしつつ、一部に低抵抗領域を形成してスピンバリア層の抵抗値を下げる。
第2に、上記した本技術に係る記憶素子においては、前記スピンバリア層は、一部の膜厚値が前記設定膜厚値よりも小さい値(膜厚ゼロも含む)となるように形成されて前記低抵抗領域とされていることが望ましい。
つまりスピンバリア層の一部を、設定膜厚値よりも薄い膜厚か、もしくは膜厚ゼロ(つまり除去)として抵抗値の低い領域を形成する。
第3に、上記した本技術に係る記憶素子においては、前記スピンバリア層の、前記記憶層に接する面とは反対の面側に電極層が設けられており、前記電極層の一部が、前記スピンバリア層に対して膜厚方向に進入するように形成され、当該進入部分の前記スピンバリア層の膜厚値が、前記設定膜厚値よりも小さい値となるように形成されていることが望ましい。このように形成することで、スピンバリア層の一部を設定膜厚値よりも薄膜化する。
第4に、上記した本技術に係る記憶素子においては、前記電極層は、前記スピンバリア層側から順に積層される第1電極層と第2電極層を含む複数の層で形成されており、前記第2電極層の一部が前記第1電極層を膜厚方向に通過したうえで前記スピンバリア層に対して膜厚方向に進入するように形成されていることが望ましい。
第1電極層の一部を除去し、さらにスピンバリア層の一部を薄膜化したうえで第2電極層を積層するという手法で、電極層がスピンバリア層に進入する層構造を得ることができる。
第5に、上記した本技術に係る記憶素子においては、前記スピンバリア層の、前記記憶層に接する面とは反対の面側に電極層が設けられており、前記電極層の一部が、前記スピンバリア層を膜厚方向に通過して前記記憶層に接するように形成され、当該通過部分の前記スピンバリア層の膜厚値が、前記設定膜厚値よりも小さい値となるように形成されていることが望ましい。つまりスピンバリア層の一部を除去して(膜厚ゼロとして)、電極層の一部が記憶層に接するように形成する。
第6に、上記した本技術に係る記憶素子においては、前記電極層は、前記スピンバリア層側から順に積層される第1電極層と第2電極層を含む複数の層で形成されており、前記第2電極層の一部が前記第1電極層を膜厚方向に通過したうえで前記スピンバリア層を膜厚方向に通過して前記記憶層に接するように形成されていることが望ましい。
第1電極層の一部を除去し、さらにスピンバリア層の一部を除去したうえで第2電極層を積層するという手法で、電極層がスピンバリア層を通過して記憶層に接する層構造を得ることができる。
第7に、上記した本技術に係る記憶素子においては、前記スピンバリア層は、膜面の中央領域又は周縁領域の一方又は両方において、膜厚値が前記設定膜厚値よりも小さい値となるように形成されて前記低抵抗領域とされていることが望ましい。
膜面の中央領域、又は周縁領域は、例えば斜め方向からのエッチング等により薄膜化が容易となる。
第8に、上記した本技術に係る記憶素子においては、前記スピンバリア層は、その一部領域の酸化物が還元されて前記低抵抗領域が形成されていることが望ましい。
スピンバリア層を構成する酸化物の一部を還元させることで抵抗値の小さい領域を生成できる。
第9に、上記した本技術に係る記憶素子においては、前記スピンバリア層の、前記記憶層に接する面とは反対の面側に、前記スピンバリア層側から順に異なる材料で積層される第1電極層と第2電極層を含む複数の層からなる電極層が設けられており、前記第2電極層は前記第1電極層よりも酸化物との反応性が高い材料とされ、前記第2電極層の一部が前記第1電極層を膜厚方向に通過又は進入して前記スピンバリア層に接触又は近接することで、前記スピンバリア層における一部領域の酸化物が還元されて前記低抵抗領域が形成されていることが望ましい。
第2電極層をイオン化傾向が高い材料など、酸化物との反応性が高い材料とし、スピンバリア層の一部に接触又は近接するようにすれば、スピンバリア層の一部領域を酸化物が還元された低抵抗領域とすることができる。
第10に、上記した本技術に係る記憶素子においては、前記第1電極層はRu,Cu,W,Pt,Pd,Cr,TiN,TaN,TiC,ITOのうちの少なくとも1種を用いて形成され、前記第2電極層はTi,Ta,Nb,Zr,Hf,Yのうちの少なくとも1種を用いて形成されていることが望ましい。
これらの材料により、スピンバリア層において第1電極層に接する部分は酸化物が還元されにくく、一方第2電極層に接触又は近接する部分で酸化物を還元させることができる。
第11に、上記した本技術に係る記憶素子においては、前記スピンバリア層は、MgO、Al23、SiO2の少なくとも1種を用いて形成されていることが望ましい。
これらの材料でスピンバリア層を形成することで記憶層に作用する界面磁気異方性を良好に得る。
第12に、上記した本技術に係る記憶素子においては、前記設定膜厚値は0.6nm以上、0.7nm以下とされることが望ましい。
スピンバリア層を0.6〜0.7nmの膜厚とすることで界面磁気異方性エネルギーを確保し、記憶層における保磁力を良好にする。
第13に、上記した本技術に係る記憶素子においては、上記記憶層は、FeCoB,FeNiB,FeCoC,FeCoSiB,FeAlSi,CoMnSi,MnAlのうち少なくとも1種を用いて形成されていることが望ましい。
これらの材料が記憶層の垂直磁化に好適である。
本技術に係る記憶装置は、情報を磁性体の磁化状態により保持する上述の記憶素子と、互いに交差する2種類の配線とを備える。そして前記2種類の配線の間に前記記憶素子が配置され、前記2種類の配線を通じて、前記記憶素子に前記積層方向の電流が流れる記憶装置である。
また本技術に係る磁気ヘッドは、上述の記憶素子を有する磁気ヘッドである。
本技術に係る記憶素子の製造方法は、上述の記憶素子の製造方法として、前記磁化固定層、前記トンネルバリア層、前記記憶層、前記スピンバリア層を順に積層する第1工程と、前記スピンバリア層上に第1電極層を積層する第2工程と、当該積層による構造体の周囲に絶縁材を充填し、前記第1電極層と前記絶縁材の上面が略平坦、もしくは前記絶縁材の上面が前記第1電極層の上面よりも突出した状態に加工する第3工程と、前記第1電極層の一部を除去又は薄膜化する第4工程と、一部が除去又は薄膜化された前記第1電極層上に第2電極層を積層する第5工程とを有する。
第4工程で第1電極層の一部を加工した後、第5工程で第2電極層を積層することで上述の構造の記憶素子の構造を比較的容易に製造できる。
また上記した本技術に係る製造方法においては、前記第4工程では、前記第1電極層の一部を除去したうえで、さらに前記スピンバリア層の一部を薄膜化又は除去することで、前記スピンバリア層は、一部の膜厚値が前記設定膜厚値よりも小さい値とされて前記低抵抗領域が形成されるようにすることが望ましい。
これにより電極層がスピンバリア層に進入する層構造を得ることができる。
また上記した本技術に係る製造方法においては、前記第2電極層には前記第1電極層よりも酸化物との反応性が高い材料を用い、前記第5工程で積層される前記第2電極層の一部が、前記第4工程で一部を除去又は薄膜化された前記第1電極層を膜厚方向に通過又は進入して前記スピンバリア層に接触又は近接することで、前記スピンバリア層における一部領域の酸化物が還元されて前記低抵抗領域が形成されるようにすることが望ましい。
これにより、スピンバリア層の一部として抵抗値の小さい領域を生成できる。
本技術によれば、記憶層の両面側にトンネルバリア層とスピンバリア層の二つの酸化物膜を有する記憶素子において、スピンバリア層による界面磁気異方性を有効に機能させつつ素子の抵抗を下げることができ、保持特性が優れ、低電力で動作可能な記憶素子を実現できる。
本技術の実施の形態の記憶装置の説明図である。 実施の形態の記憶装置及び記憶素子の説明図である。 第1の実施の形態としての記憶素子の説明図である。 第2,第3の実施の形態としての記憶素子の説明図である。 第4,第5の実施の形態としての記憶素子の説明図である。 第6,第7,第8,第9の実施の形態としての記憶素子の説明図である。 第10,第11,第12の実施の形態としての記憶素子の説明図である。 第13の実施の形態としての製造方法の説明図である。 第14の実施の形態としての製造方法の説明図である。 第14の実施の形態としての製造方法の説明図である。 第15の実施の形態としての製造方法の説明図である。 第16の実施の形態としての製造方法の説明図である。 第17の実施の形態としての製造方法の説明図である。 第17の実施の形態としての製造方法の説明図である。 実験試料の構造の説明図である。 実験試料の測定結果の説明図である。 実施試料の構造の説明図である。 実施の形態の電極材料の例の説明図である。 磁気ヘッドの実施の形態の説明図である。
以下、実施の形態を次の順序で説明する。
<1.実施の形態の記憶装置の構成及び記憶素子の概要>
<2.実施の形態の記憶素子(第1〜第12の実施の形態)>
<3.実施の形態の製造方法(第13〜第17の実施の形態)>
<4.実験>
<5.まとめ>
<6.変形例>
<1.実施の形態の記憶装置の構成及び記憶素子の概要>
まず、本開示の実施の形態となる記憶装置の構成について説明する。
実施の形態の記憶装置の模式図を、図1及び図2に示す。図1は斜視図、図2は概略断面図である。
図1に示すように、実施の形態の記憶装置は、互いに直交する2種類のアドレス配線(例えばワード線とビット線)の交点付近に、磁化状態で情報を保持することができるMRAM(磁気ランダム・アクセス・メモリ)による記憶素子3が配置されて成る。
即ち、シリコン基板等の半導体基体10の素子分離層2により分離された部分に、各記憶装置を選択するための選択用トランジスタを構成する、ドレイン領域8、ソース領域7、並びにゲート電極1が、それぞれ形成されている。このうち、ゲート電極1は、図中前後方向に延びる一方のアドレス配線(ワード線)を兼ねている。
ドレイン領域8は、図1中左右の選択用トランジスタに共通して形成されており、このドレイン領域8には、配線9が接続されている。
そして、ソース領域7と、上方に配置された、図1中左右方向に延びるビット線6との間に、スピントルク磁化反転により磁化の向きが反転する記憶層を有する記憶素子3が配置されている。この記憶素子3は、例えば磁気トンネル接合素子(MTJ(Magnetic Tunnel Junction)素子)により構成される。
図2に示すように、記憶素子3は2つの磁性層15、17を有する。なお、記憶素子3の詳細な層構造については後述する。
この2層の磁性層15、17のうち、一方の磁性層を磁化M15の向きが固定された磁化固定層15として、他方の磁性層を磁化M17の向きが変化する磁化自由層即ち記憶層17とする。
また、記憶素子3は、ビット線6と、ソース領域7とに、それぞれ上下のコンタクト層4を介して接続されている。
これにより、2種類のアドレス配線1、6を通じて、記憶素子3に上下方向の電流を流して、スピントルク磁化反転により記憶層17の磁化M17の向きを反転させることができる。
記憶層17の磁化M17と磁化固定層15の磁化M15の相対的な角度によって情報の「0」「1」を規定している。
このような記憶装置では、選択トランジスタの飽和電流以下の電流で書き込みを行う必要があり、トランジスタの飽和電流は微細化に伴って低下することが知られているため、記憶装置の微細化のためには、スピントランスファの効率を改善して、記憶素子3に流す電流を低減させることが好適である。
また、読み出し信号を大きくするためには、大きな磁気抵抗変化率を確保する必要があり、そのためには上述のようなMTJ構造を採用すること、すなわち2層の磁性層15、17の間に中間層をトンネル絶縁層(トンネルバリア層)とした記憶素子3の構成にすることが効果的である。
このように中間層としてトンネルバリア層を用いた場合には、トンネルバリア層が絶縁破壊することを防ぐために、記憶素子3に流す電流量に制限が生じる。すなわち記憶素子3の繰り返し書き込みに対する信頼性の確保の観点からも、スピントルク磁化反転に必要な電流を抑制することが好ましい。なお、スピントルク磁化反転に必要な電流は、反転電流、記憶電流などと呼ばれることがある。
また記憶装置は不揮発メモリ装置であるから、電流によって書き込まれた情報を安定に記憶する必要がある。つまり、記憶層17の磁化の熱揺らぎに対する安定性(熱安定性)を確保する必要がある。
記憶層17の熱安定性が確保されていないと、反転した磁化の向きが、熱(動作環境における温度)により再反転する場合があり、書き込みエラーとなってしまう。
本記憶装置における記憶素子3は、従来のMRAMと比較して、スケーリングにおいて有利、すなわち体積を小さくすることは可能であるが、体積が小さくなることは、他の特性が同一であるならば、熱安定性を低下させる方向にある。
MRAMの大容量化を進めた場合、記憶素子3の体積は一層小さくなるので、熱安定性の確保は重要な課題となる。
そのため、ST−MRAMにおける記憶素子3において、熱安定性は非常に重要な特性であり、体積を減少させてもこの熱安定性が確保されるように設計する必要がある。
次に実施の形態の記憶素子3の概要について説明する。
実施の形態の記憶素子3は、前述したスピントルク磁化反転により、記憶層17の磁化の向きを反転させて、情報の記録を行うものである。
記憶層17は、強磁性層を含む磁性体により構成され、情報を磁性体の磁化状態(磁化の向き)により保持するものである。
なお実施の形態の記憶素子3の層構造は図3A、図4〜図10で各種述べるが(第1〜第12の実施の形態)、理解のしやすさを考慮して、まず実施の形態の基本となる層構造を図3Bに示し、これにより実施の形態で想定する記憶素子3の概要を説明する。以下、図3Bの層構造のモデルを参照して説明する事項は、第1〜第12の実施の形態の記憶素子3においても共通の事項であると理解されたい。
記憶素子3は例えば図3Bに示す層構造とされ、少なくとも2つの強磁性体層としての記憶層17、磁化固定層15を備え、またその2つの磁性層の間の中間層としてトンネルバリア層16を備える。
磁化固定層15は下地層14上に積層されている。
また記憶層17のトンネルバリア層16の反対面側にはスピンバリア層18が設けられ、さらにその上面に電極層19が設けられる。
記憶層17は、膜面に垂直な磁化を有し、情報に対応して磁化の向きが変化される。
磁化固定層15は、記憶層17に記憶された情報の基準となる膜面に垂直な磁化を有する。
トンネルバリア層16は、非磁性体であって、記憶層17と磁化固定層15の間に設けられる。
そして記憶層17、トンネルバリア層16、磁化固定層15を有する層構造の積層方向にスピン偏極した電子を注入することにより、記憶層17の磁化の向きが変化して、記憶層17に対して情報の記録が行われる。
ここでスピントルク磁化反転について簡単に説明する。
電子は2種類のスピン角運動量をもつ。仮にこれを上向き、下向きと定義する。非磁性体内部では両者が同数であり、強磁性体内部では両者の数に差がある。ST−MRAMを構成する2層の強磁性体である磁化固定層15及び記憶層17において、互いの磁気モーメントの向きが反方向状態のときに、電子を磁化固定層15から記憶層17への移動させた場合について考える。
磁化固定層15は、高い保磁力のために磁気モーメントの向きが固定された固定磁性層である。
磁化固定層15を通過した電子はスピン偏極、すなわち上向きと下向きの数に差が生じる。非磁性層であるトンネルバリア層16の厚さが充分に薄く構成されていると、磁化固定層15の通過によるスピン偏極が緩和して通常の非磁性体における非偏極(上向きと下向きが同数)状態になる前に他方の磁性体、すなわち記憶層17に電子が達する。
記憶層17では、スピン偏極度の符号が逆になっていることにより、系のエネルギーを下げるために一部の電子は反転、すなわちスピン角運動量の向きがかえさせられる。このとき、系の全角運動量は保存されなくてはならないため、向きを変えた電子による角運動量変化の合計と等価な反作用が記憶層17の磁気モーメントにも与えられる。
電流すなわち単位時間に通過する電子の数が少ない場合には、向きを変える電子の総数も少ないために記憶層17の磁気モーメントに発生する角運動量変化も小さいが、電流が増えると多くの角運動量変化を単位時間内に与えることができる。
角運動量の時間変化はトルクであり、トルクがあるしきい値を超えると記憶層17の磁気モーメントは歳差運動を開始し、その一軸異方性により180度回転したところで安定となる。すなわち反方向状態から同方向状態への反転が起こる。
磁化が同方向状態にあるとき、電流を逆に記憶層17から磁化固定層15へ電子を送る向きに流すと、今度は磁化固定層15で反射される際にスピン反転した電子が記憶層17に進入する際にトルクを与え、反方向状態へと磁気モーメントを反転させることができる。ただしこの際、反転を起こすのに必要な電流量は、反方向状態から同方向状態へと反転させる場合よりも多くなる。
磁気モーメントの同方向状態から反方向状態への反転は直感的な理解が困難であるが、磁化固定層15が固定されているために磁気モーメントが反転できず、系全体の角運動量を保存するために記憶層17が反転する、と考えてもよい。このように、0/1の記録は、磁化固定層15から記憶層17の方向またはその逆向きに、それぞれの極性に対応する、あるしきい値以上の電流を流すことによって行われる。
情報の読み出しは、従来型のMRAMと同様、磁気抵抗効果を用いて行われる。すなわち上述の記録の場合と同様に膜面垂直方向に電流を流す。そして、記憶層17の磁気モーメントが、磁化固定層15の磁気モーメントに対して同方向であるか反方向であるかに従い、素子の示す電気抵抗が変化する現象を利用する。
磁化固定層15と記憶層17の間のトンネルバリア層16として用いる材料は金属でも絶縁体でも構わないが、より高い読み出し信号(抵抗の変化率)が得られ、かつより低い電流によって記録が可能とされるのは、トンネルバリア層16として絶縁体を用いた場合である。このときの素子を強磁性トンネル接合(Magnetic Tunnel Junction:MTJ)と呼ぶ。
スピントルク磁化反転によって、磁性層の磁化の向きを反転させるときに、必要となる電流の閾値Icは、磁性層の磁化容易軸が面内方向であるか、垂直方向であるかによって異なる。
本実施の形態の記憶素子3は垂直磁化型であるが、従前の面内磁化型の記憶素子の場合における磁性層の磁化の向きを反転させる反転電流をIc_paraとする。
同方向から逆方向に反転させる場合、
Ic_para=(A・α・Ms・V/g(0)/P)(Hk+2πMs)
となり、逆方向から同方向に反転させる場合、
Ic_para=−(A・α・Ms・V/g(π)/P)(Hk+2πMs)
となる。
なお、同方向、逆方向とは、磁化固定層15の磁化方向を基準としてみた記憶層17の磁化方向である。平行、反平行とも呼ばれる。
一方、本実施の形態のような垂直磁化型の記憶素子3の反転電流をIc_perpとすると、同方向から逆方向に反転させる場合、
Ic_perp=(A・α・Ms・V/g(0)/P)(Hk−4πMs)
となり、逆方向から同方向に反転させる場合、
Ic_perp=−(A・α・Ms・V/g(π)/P)(Hk−4πMs)
となる。
ただし、Aは定数、αはダンピング定数、Msは飽和磁化、Vは素子体積、Pはスピン分極率、g(0)、g(π)はそれぞれ同方向時、逆方向時にスピントルクが相手の磁性層に伝達される効率に対応する係数、Hkは磁気異方性である。
上記各式において、垂直磁化型の場合の(Hk−4πMs)と面内磁化型の場合の(Hk+2πMs)とを比較すると、垂直磁化型が低記憶電流化により適していることが理解できる。
ここで、反転電流Ic0は熱安定性の指標Δとの関係で表すと次の(数1)により表される。
Figure 0006182993
但しeは電子の電荷、ηはスピン注入効率、バー付きのhは換算プランク定数、αはダンピング定数、kBはボルツマン定数、Tは温度である。
また、メモリデバイスとして存在し得るためには、書き込まれた情報を保持することができなければならない。情報を保持する能力の指標として、熱安定性の指標Δ(=KV/kBT)の値で判断される。このΔは(数2)により表される。
Figure 0006182993
ここで、Hkは実効的な異方性磁界、kBはボルツマン定数、Tは温度、Msは飽和磁化量、Vは記憶層の体積、Kは異方性エネルギーである。
実効的な異方性磁界Hkには、形状磁気異方性、誘導磁気異方性、結晶磁気異方性等の影響が取り込まれており、単磁区の一斉回転モデルを仮定した場合、これは保磁力と同等となる。
熱安定性の指標Δと電流の閾値Icとは、トレードオフの関係になることが多い。そのため、メモリ特性を維持するには、これらの両立が課題となることが多い。
記憶層の磁化状態を変化させる電流の閾値は、実際には、例えば記憶層17の厚さが2nmであり、平面パターンが直径100nm円形のTMR(Tunneling Magneto Resistance)素子において、百〜数百μA程度である。
これに対して、電流磁場により磁化反転を行う通常のMRAMでは、書き込み電流が数mA以上必要となる。
従って、実施の形態のスピントルク磁化反転型のMRAMの場合には、上述のように書き込み電流の閾値が充分に小さくなるため、集積回路の消費電力を低減させるために有効であることが分かる。
また通常のMRAMで必要とされる、電流磁界発生用の配線が不要となるため、集積度においても通常のMRAMに比較して有利である。
そして、スピントルク磁化反転を行う場合には、記憶素子に直接電流を流して情報の書き込み(記録)を行うことから、書き込みを行うメモリセルを選択するために、記憶素子を選択トランジスタと接続してメモリセルを構成する。
この場合、記憶素子に流れる電流は、選択トランジスタで流すことが可能な電流(選択トランジスタの飽和電流)の大きさによって制限される。
記録電流を低減させるためには、上述のように垂直磁化型を採用することが望ましい。また垂直磁化膜は一般に面内磁化膜よりも高い磁気異方性を持たせることが可能であるため、上述のΔを大きく保つ点でも好ましい。
垂直異方性を有する磁性材料には希土類−遷移金属合金(TbCoFeなど)、金属多層膜(Co/Pd多層膜など)、規則合金(FePtなど)、酸化物と磁性金属の間の界面異方性の利用(Co/MgOなど)等いくつかの種類があるが、希土類−遷移金属合金は加熱により拡散、結晶化すると垂直磁気異方性を失うため、本実施の形態のMRAM用材料としては好ましくない。
また金属多層膜も加熱により拡散し、垂直磁気異方性が劣化することが知られており、さらに垂直磁気異方性が発現するのは面心立方の(111)配向となっている場合であるため、MgOやそれに隣接して配置するFe、CoFe、CoFeBなどの高分極率層に要求される(001)配向を実現させることが困難となる。L10規則合金は高温でも安定であり、かつ(001)配向時に垂直磁気異方性を示すことから、上述のような問題は起こらないものの、製造時に500℃以上の十分に高い温度で加熱する、あるいは製造後に500℃以上の高温で熱処理を行うことで原子を規則配列させる必要があり、トンネルバリア等積層膜の他の部分における好ましくない拡散や界面粗さの増大を引き起こす可能性がある。
これに対し、界面磁気異方性を利用した材料、すなわちトンネルバリア層16であるMgO上に記憶層17としてCo系あるいはFe系材料を積層させたものは上記いずれの問題も起こり難く、このため記憶層材料として有望視されている。
そこで実施の形態の記憶素子3は、Co系あるいはFe系材料と酸化物層の間に働く界面異方性を利用して垂直磁化膜を得るようにしている。
また強い垂直磁気異方性を得るために、トンネルバリア層16と記憶層17との間に働く界面磁気異方性だけでなく、記憶層17のトンネルバリア層16側とは反対側にもう一つ酸化物層(例えばMgOによるスピンバリア層18)を形成する。
即ちCo系あるいはFe系材料による記憶層17は、その両面で酸化膜に接する構成とする。
例えば記憶層17にはFeCoBを用いる。記憶層17のFeCoBがMgO膜に接し、FeCoB膜の膜厚がある一定の範囲内にあるとき、FeCoB膜は垂直磁化膜となる。
この垂直磁気異方性の起源は、FeCoB膜とMgO膜の界面において発生する界面磁気異方性エネルギーである。記憶層17のCoFeB膜が上下両面でMgO膜と接するようにし、上下両面で界面磁気異方性エネルギーが得られるようにすれば、記憶層17の垂直磁気異方性を倍増させることができる。
一方で、界面磁気異方性を有する垂直磁化磁性材料は磁化固定層15に用いることも有望である。特に、大きな読み出し信号を与えるために、トンネルバリア層16(例えばMgO層)下に、CoもしくはFeを含む磁性材料を積層させたものが有望である。
磁化固定層15の構造は単層でも、2層以上の強磁性層と非磁性層から成る積層フェリピン構造を用いても良いが、通常、2層の強磁性層と非磁性層(Ru)から成る積層フェリピン構造を用いる場合が多い。
磁化固定層15を積層フェリピン構造にすることのメリットは、熱安定性の情報書き込み方向に対する非対称性を容易にキャンセルできることや、スピントルクに対する安定性を向上できることが挙げられる。
また本実施の形態では、選択トランジスタの飽和電流値を考慮して、記憶層17と磁化固定層15との間の非磁性絶縁体のトンネルバリア層16を用いて磁気トンネル接合(MTJ)素子を構成する。
トンネル絶縁層を用いて磁気トンネル接合(MTJ)素子を構成することにより、非磁性導電層を用いて巨大磁気抵抗効果(GMR)素子を構成した場合と比較して、磁気抵抗変化率(MR比)を大きくすることができ、読み出し信号強度を大きくすることができるためである。
そして、特に、このトンネル絶縁層16の材料として、酸化マグネシウム(MgO)を用いることにより、磁気抵抗変化率(MR比)を大きくすることができる。
また、一般に、スピントランスファの効率はMR比に依存し、MR比が大きいほど、スピントランスファの効率が向上し、磁化反転電流密度を低減することができる。
従って、トンネル絶縁層の材料として酸化マグネシウムを用い、同時にFeCoB等の記憶層17を用いることにより、スピントルク磁化反転による書き込み閾値電流を低減することができ、少ない電流で情報の書き込み(記録)を行うことができる。また、読み出し信号強度を大きくすることができる。
これにより、MR比(TMR比)を確保して、スピントルク磁化反転による書き込み閾値電流を低減することができ、少ない電流で情報の書き込み(記録)を行うことができる。また、読み出し信号強度を大きくすることができる。
このようにトンネル絶縁層を酸化マグネシウム(MgO)膜により形成する場合には、MgO膜が結晶化していて、001方向に結晶配向性を維持していることがより望ましい。
本実施の形態において、記憶層17としては FeCoB,FeNiB,FeCoC,FeCoSiB,FeAlSi,CoMnSi,MnAl等の単一材料で形成してもよいし、これらを組み合わせて記憶層17を形成しても良い。さらにはこれらと、Ta、V、Nb、Cr、W、Mo、Ti、Zr、Hf等の非磁性材料と組み合わせて記憶層17を形成してもよい。
磁化固定層15としては、磁化が動きにくくなるようにPtMn,RhMn,IrMnなどの反強磁性体と強磁性体との磁気的交換結合によって磁化を一方向に向けたCoFe等の磁性体、あるいはCoPt,FePt,TbFeCo,SmCo、MnAlなど保磁力の大きな磁性体を用いることが適切である。また、これらと磁気抵抗効果の大きなCoFe,FeCoB,CoMnSi,CrMnSi等をRu,Re,Rh等の非磁性体を介して働く磁気結合によって反平行に磁化結合させて用いても良い。
トンネルバリア層16およびスピンバリア層18としてはMgO、Al23、SiO2等が利用可能である。
トンネルバリア層16の面積抵抗値は、スピントルク磁化反転により記憶層17の磁化の向きを反転させるために必要な電流密度を得る観点から、数十Ωμm2程度以下に制御することが望ましい。そして、例えばMgO膜から成るトンネルバリア層16では、面積抵抗値を上述の範囲とするために、MgO膜の膜厚を1.5nm以下に設定することが望ましい。
電極層19としてはTa,Ru,W,TiN,Cu等が利用可能である。
下地層148としては、Ta、Ti、W、Ru等各種金属およびTiN等の導電性窒化物を用いることができる。また、下地層14は単層で用いても良いし、異なる材料を複数積層しても良い。
素子の形状は面内磁化の場合は楕円形が好ましいが、本例のような垂直磁化の場合は円形が好ましい。
また、記憶層17の磁化の向きを、小さい電流で容易に反転できるように、記憶素子を小さくすることが望ましい。従って、好ましくは、記憶素子の面積を0.01μm2以下とする。
素子を形成するためのエッチング方法としてはイオンミリングを用いても良いし、リアクティブイオンエッチングによって形成しても良いし、それらを組み合わせても良い。
以上のような記憶素子3の形成後は記憶素子3の周囲をAl23,SiO2,AlN等の絶縁体で埋め込み、上部配線を形成し、素子の垂直方向に電流を流して書き込みおよび読み出しを行う。
<2.実施の形態の記憶素子(第1〜第12の実施の形態)>
続いて、実施の形態の記憶素子3の具体的構成を第1〜第12の実施の形態として説明する。
第1〜第12の実施の形態の記憶素子3は、基本的には図3Bに示した層構造と同様に、下地層14,磁化固定層15,トンネルバリア層16,記憶層17,スピンバリア層18、電極層19を有する。特に記憶層17の両側に酸化物層としてのトンネルバリア層16とスピンバリア層18が配置されることで、強い界面磁気異方性を得る構成である。
スピンバリア層18によっては、記憶層17の保磁力を向上させ情報の保持特性を向上させる効果、およびスピントルクの効率を向上させる効果がある。このため高密度で低消費電力の磁気メモリを作製するためにはスピンバリア層18は有効である。
ところがこのように形成された記憶素子3に電流を流した場合、トンネルバリア層16およびスピンバリア層18の二つの層が電気抵抗に寄与し抵抗が増加する。またスピンバリア層18は磁気抵抗を有しないので磁気抵抗の減少を生じてしまう。
つまり記憶素子3の抵抗が上昇して動作電圧の範囲での記録が難しくなり、さらに、記憶素子3の磁気抵抗比が小さくなり情報を読み出す際に支障をきたす。
そこで、第1〜第12の実施の形態の記憶素子3は、図3Bの基本的な層構造の考え方に立脚してスピンバリア層18による界面磁気異方性効果を得つつ、スピンバリア層18による素子抵抗の上昇を抑えるようにするものである。具体的には、スピンバリア層18の一部の電気抵抗を下げて、スピンバリアの効果をある程度維持しながら電気抵抗を下げ、磁気抵抗比を上げる。
スピンバリア層18の一部の電気抵抗を下げるためには、スピンバリア層18の一部を薄くするか、あるいはスピンバリア層18の一部を還元するという手法を採る。
[第1、第2、第3の実施の形態の記憶素子]
第1の実施の形態の記憶素子3の層構造を図3Aに示す。図示の通り、下地層14,磁化固定層15,トンネルバリア層16,記憶層17,スピンバリア層18、電極層19を有する。電極層19は、例えば異なる材料による第1電極層19Aと第2電極層19Bにより構成されている。
この場合において、スピンバリア層18は所定の設定膜厚値(例えば0.6nm以上、0.7nm以下の膜厚値)で形成されるが、スピンバリア層18内には、その一部(膜面の中央領域)に低抵抗領域30が形成されている。
この場合、低抵抗領域30は、スピンバリア層18の一部(中央領域)の膜厚値が、設定膜厚値よりも小さい値となっている領域であり、具体的には膜厚が薄くなっている領域である。
この低抵抗領域30としての薄膜領域には、図のように、電極層19の一部が、スピンバリア層18に対して膜厚方向に進入する状態となっている。具体的には、第2電極層19Bの一部が第1電極層19Aを膜厚方向に通過したうえでスピンバリア層18の膜面の中央領域に対して膜厚方向に進入するように各層が形成されて、スピンバリア層18の中央領域が薄膜の低抵抗領域30とされている。
第2の実施の形態の記憶素子3の層構造を図4Aに示す。
この場合もスピンバリア層18は所定の設定膜厚値(例えば0.6nm以上、0.7nm以下の膜厚値)で形成されるが、スピンバリア層18内には、その一部(膜面の周縁領域)に低抵抗領域30が形成されている。第1の実施の形態と同様、低抵抗領域30は、スピンバリア層18の一部であって膜厚値が設定膜厚値よりも小さい値となる薄膜領域である。
そしてこの低抵抗領域30としての薄膜領域には、図のように、電極層19の一部が、スピンバリア層18に対して膜厚方向に進入するように形成されている。具体的には第2電極層19Bの一部(周縁領域)が第1電極層19Aを膜厚方向に通過したうえでスピンバリア層18の膜面の周縁領域に対して膜厚方向に進入するように各層が形成される。これによりスピンバリア層18の周縁領域が低抵抗領域30とされている。
第3の実施の形態の記憶素子3の層構造を図4Bに示す。
この場合もスピンバリア層18は所定の設定膜厚値で形成されるが、スピンバリア層18内には、その一部(例えば膜面の中央領域と周縁領域)に設定膜厚値よりも薄膜化された低抵抗領域30が形成されている。
図のようにこの低抵抗領域30としての薄膜領域には、電極層19の一部が、スピンバリア層18に対して膜厚方向に進入するように形成されている。つまり第2電極層19Bの一部(中央領域と周縁領域)が第1電極層19Aを膜厚方向に通過したうえでスピンバリア層18の膜面の中央領域と周縁領域に対して膜厚方向に進入するように各層が形成される。これによりスピンバリア層18の中央領域と周縁領域が低抵抗領域30とされている。
以上の第1,第2,第3の実施の形態の場合は、スピンバリア層18の一部が薄膜化された低抵抗領域30とされていることで、スピンバリア層18による界面磁気異方性効果を得つつ、スピンバリア層18の抵抗値を下げることができる。
なお、以上の第1,第2,第3の実施の形態は、スピンバリア層18の一部が薄膜化される例である。低抵抗領域30としての位置や数は、上記例以外にも想定される。
[第4、第5の実施の形態の記憶素子]
第4の実施の形態の記憶素子3の層構造を図5Aに示す。
この場合もスピンバリア層18は所定の設定膜厚値(例えば0.6nm以上、0.7nm以下の膜厚値)で形成されるが、スピンバリア層18内には、その一部(膜面の中央領域)に低抵抗領域31が形成されている。
この場合、低抵抗領域31は、スピンバリア層18の一部(中央領域)の膜厚値が設定膜厚値よりも小さい値となっている領域であり、具体的には膜厚値がゼロとなっている領域である。
そして図のように、電極層19の一部が、スピンバリア層18に対して膜厚方向に通過して記憶層17に接する。具体的には、第2電極層19Bの一部(中央領域)が第1電極層19Aを膜厚方向に通過したうえで、スピンバリア層18の膜面の中央領域を膜厚方向に通過して記憶層17に接する。つまりスピンバリア層18の中央領域が除去されて低抵抗領域31が形成されている。
第5の実施の形態の記憶素子3の層構造を図5Bに示す。
この場合もスピンバリア層18は所定の設定膜厚値で形成されるが、スピンバリア層18内には、その一部(膜面の周縁領域)に低抵抗領域31が形成されている。
この場合、低抵抗領域31は、スピンバリア層18の一部(周縁領域)の膜厚値が設定膜厚値よりも小さい値(膜厚値がゼロ)となっている領域である。
そして図のように、電極層19の一部が、スピンバリア層18に対して膜厚方向に通過して記憶層17に接する。具体的には、第2電極層19Bの一部(周縁領域)が第1電極層19Aを膜厚方向に通過したうえで、スピンバリア層18の膜面の中央周縁を膜厚方向に通過して記憶層17に接する。つまりスピンバリア層18の周縁領域が除去されて低抵抗領域31が形成されている。
以上の第4,第5の実施の形態の場合は、スピンバリア層18の一部が除去された低抵抗領域31とされていることで、除去されていない部分でスピンバリア層18による界面磁気異方性効果を得つつ、スピンバリア層18の抵抗値を下げることができる。
なお、以上の第4,第5の実施の形態のようにスピンバリア層18の一部の膜厚値がゼロとされる例であるが、低抵抗領域31としての位置や数は、上記例以外にも想定される。
[第6、第7、第8、第9の実施の形態の記憶素子]
第6の実施の形態の記憶素子3の層構造を図6Aに示す。これは上述の第1の実施の形態と同様にスピンバリア層18の中央領域に薄膜の低抵抗領域30が形成される例であるが、電極層19A、19Bが区別されず、同一材料の1つの電極層19とした例である。
第7の実施の形態の記憶素子3の層構造を図6Bに示す。これは上述の第2の実施の形態と同様にスピンバリア層18の周縁領域に薄膜の低抵抗領域30が形成される例であるが、電極層19A、19Bが区別されず、同一材料の1つの電極層19とした例である。
第8の実施の形態の記憶素子3の層構造を図6Cに示す。これは上述の第4の実施の形態と同様にスピンバリア層18の中央領域に膜厚ゼロの低抵抗領域31が形成される例であるが、電極層19A、19Bが区別されず、同一材料の1つの電極層19とした例である。
第9の実施の形態の記憶素子3の層構造を図6Dに示す。これは上述の第5の実施の形態と同様にスピンバリア層18の周縁領域に膜厚ゼロの低抵抗領域31が形成される例であるが、電極層19A、19Bが区別されず、同一材料の1つの電極層19とした例である。
この第6〜第9の実施の形態のように、電極層19は、必ずしも異なる材料により第1電極層19A、第2電極層19Bを設ける必要はない。
即ち、スピンバリア層18の一部に、膜厚値を設定膜厚値よりも小さい値とした低抵抗領域30又は31を設ける構成の場合、第1〜第5の実施の形態のように、異なる材料で第1電極層19A、第2電極層19Bを形成してもよいし、第6〜第9の実施の形態のように同一材料の1つの電極層19としてもよい。
なお第1〜第5の実施の形態のように第1電極層19A、第2電極層19Bを形成する場合、第1電極層19Aに導電性は必須ではなく、半導体あるいは絶縁体でもかまわない。
[第10、第11、第12の実施の形態の記憶素子]
第10、第11、第12の実施の形態の記憶素子は、例えばMgO等の酸化物層であるスピンバリア層18の一部を還元させることで、スピンバリア層18の一部の電気抵抗を下げる例である。なおスピンバリア層18の一部を還元させるということは、スピンバリア層18の一部で実効的な膜厚が薄くなっていると考えることもできる。
第10の実施の形態の記憶素子3の層構造を図7Aに示す。
スピンバリア層18は所定の設定膜厚値(例えば0.6nm以上、0.7nm以下の膜厚値)で形成される。そしてスピンバリア層18内には、その一部(膜面の中央領域)に低抵抗領域32が形成されている。
この低抵抗領域32は、スピンバリア層18の一部(中央領域)において酸化物が還元されることで抵抗値が低くされている領域である。
図のように、第2電極層19Bの一部(中央領域)が第1電極層19Aを膜厚方向に通過してスピンバリア層18に接触している。
この場合に、第1電極層19Aには、酸化物との反応性が低い材料を用い、第2電極層19Bには酸化物との反応性の高い材料を用いるようにする。このような材料を用いることで、熱処理後に第2電極層19Bの材料とスピンバリア層18の酸化物との反応によってスピンバリア層18の一部を変質(還元)させて低抵抗領域32を得ることができる。
上述のようにスピンバリア層18は、MgO、Al23、SiO2等の酸化物材料を用いている。このような酸化物材料との反応性の違いは、主に材料のイオン化傾向の違いによる。そこで第1電極層19AをRu,Cu,W,Pt,Pd,Cr,TiN,TaN,TiC,ITO等のイオン化傾向の小さな材料、あるいはSi34,TiO2,MgO,Al23等の安定な酸化物もしくは窒化物を用いる。一方で、第2電極層19Bには、Ta,Nb,Zr,Hf,Y等のイオン化傾向の大きな材料を用いればよい。これにより、図7Aに示すようにスピンバリア層18において第2電極層19Bと接する中央領域の酸化物を還元させ、低抵抗領域32を形成することができる。
第11の実施の形態の記憶素子3の層構造を図7Bに示す。
この場合もスピンバリア層18は所定の設定膜厚値で形成されるが、スピンバリア層18内には、その一部(膜面の周縁領域)に酸化物が還元されることで抵抗値が低くされた低抵抗領域32が形成されている。
図のように、第2電極層19Bの一部(周縁領域)が第1電極層19Aを膜厚方向に通過したうえでスピンバリア層18の膜面の周縁領域に接する。第1,第2電極層19A、19Bが上述の材料であることで、低抵抗領域32が形成される。
第12の実施の形態の記憶素子3の層構造を図7Cに示す。
この場合もスピンバリア層18は所定の設定膜厚値で形成されるが、スピンバリア層18内には、その一部(例えば膜面の中央領域と周縁領域)に酸化物が還元されることで抵抗値が低くされた低抵抗領域32が形成されている。
図のように、第2電極層19Bの一部(中央領域と周縁領域)が第1電極層19Aを膜厚方向に通過したうえでスピンバリア層18の膜面の中央領域と周縁領域に接する。第1,第2電極層19A、19Bが上述の材料であることで、低抵抗領域32が形成される。
以上の第10,第11,第12の実施の形態の場合は、スピンバリア層18の酸化物の一部が還元されて低抵抗領域32とされていることで、スピンバリア層18による界面磁気異方性効果を得つつ、スピンバリア層18の抵抗値を下げることができる。
なお、以上の第10,第11,第12の実施の形態は、第2電極層19Bの一部がスピンバリア層18の一部に接触する層構造で示したが、第2電極層19Bとスピンバリア層18が直接接していなくとも、第1電極層19Aが薄膜化されて第2電極層19Bとスピンバリア層18が近接する領域が形成されれば、その部分において原子の拡散によって同様に低抵抗領域32を形成することもできる。つまり、第2電極層19Bの一部が第1電極層19Aを膜厚方向に進入して(通過せずに)、スピンバリア層18に近接することで、スピンバリア層18における一部領域の酸化物が還元されて低抵抗領域32が形成されるようにしてもよい。
また記憶素子3に流れる電流は第2電極層19Bからスピンバリア層18の一部(低抵抗領域32)を通って記憶層17に流れるので、第1電極層19Aに導電性は必須ではなく、半導体あるいは絶縁体でもかまわない。
またここまで第1〜第9の実施の形態として、スピンバリア層18の一部を薄膜化又は除去して低抵抗領域30、31を形成する例と、第10〜第12の実施の形態として、スピンバリア層18の一部を還元して低抵抗領域32を形成する例を述べたが、これらを複合的に適用してもよい。
例えば図3A、図4A、図4B、図5A、図5Bのようにスピンバリア層18の一部を薄膜化又は除去して低抵抗領域30、31を形成する場合に、第1電極層19Aには酸化物との反応性が低い材料を用い、第2電極層19Bには酸化物との反応性の高い材料を用いるようにすれば、薄膜化又は除去による低抵抗化作用と還元による低抵抗化作用を複合的に得て低抵抗領域を形成することができる。
<3.実施の形態の製造方法(第13〜第17の実施の形態)>
続いて以上のような層構造の記憶素子3の製造方法を第13〜第18の実施の形態として説明する。
なお説明に図8〜図14を用いるが、これらの図において下地層14の図示は省略している。
[第13の実施の形態の製造方法]
図8に第13の実施の形態の製造方法の手順を示す。
図8Aは、下地層14(図示省略)、磁化固定層15、トンネルバリア層16、記憶層17、スピンバリア層18を順に積層し、さらに第1電極層19Aを積層(成膜)した後、記憶素子3の形状を形成した状態を示している。なお図8〜図14の各図は記憶素子3の断面を示すものとしており、記憶素子3は例えば円柱状の形状とされる。記憶装置としてはこのような記憶素子3が多数配列されたものである。図では製造過程の記憶素子3については「3P」の符号を付している。
図8Aの状態まで成膜した後、図8Bに示すように、記憶素子3P間の空間を埋めるための絶縁材20を充填する。絶縁材はスパッタ法などの成膜手法によって記憶素子3Pが十分埋まるように形成する。
次に図8Cに示すように、第1電極層19Aが露出するように研磨によって段差をなくする。
次に図8Dのように斜め方向からエッチングのためのイオンビームを照射する。エッチングの方法は第1電極層19Aがエッチングされやすく、絶縁材20がエッチングされにくい方法を用いることが望ましい。このためには、材料選択性のあるリアクティブイオンエッチングを用いるのがよいが、第1電極層19AがCu,Al等のエッチング率が高いものであればイオンミリングなどの物理エッチングでも良い。
この第1電極層19Aのエッチングについては、基板を回しながら行う。するとエッチング率の低い絶縁材20の遮蔽効果で第1電極層19Aの周縁領域はエッチングされにくく、中央領域はエッチングされやすくなる。このため図示のように中央領域が窪んだ形状に加工されていく。
エッチングは、第1電極層19Aの中央領域がなくなるまで、或いはさらにスピンバリア層18の一部が窪むまでエッチングしても良いし、第1電極層19Aが薄膜状に残っていても良い。さらにスピンバリア層18の一部が除去されるまでエッチングしてもよい。
例えば上述の第1の実施の形態(図3A)の記憶素子3を形成する場合は、スピンバリア層18の中央領域が窪むまでエッチングする。
また第4の実施の形態の(図5A)の記憶素子3を形成する場合は、スピンバリア層18の中央領域が除去されるまでエッチングする。
また第10の実施の形態(図7A)の記憶素子3を形成する場合は、第1電極層19Aの中央領域がなくなるまで、或いは薄膜状に残る程度のエッチングを行う。
次に図8Eのように、エッチングで窪んだ第1電極層19Aを埋めるように第2電極層19Bの材料を積層する。
そして図8Fのように表面を研磨し、平坦にする。これにより第2電極層19Bまでの層構造の記憶素子3(例えば図3Aの層構造)が形成される。
この後必要に応じて、追加の加工や配線を形成して記憶装置を作製する。以上により図3A、図5A、図7Aのような記憶素子3が製造できる。
以上の工程において、第1電極層19Aを加工するときのイオンビームの入射角度は記憶素子3(3P)の直径と第1電極層19Aの厚さに依存する。第1電極層19Aの厚さが厚く、記憶素子3の直径が小さい方がイオンビームの入射角度がより膜面垂直に近くなり作製しやすくなる。
しかしながら、第1電極層19Aの厚さを厚くするとエッチングによる加工時間が長くなり、素子中央領域のエッチング状態を制御するのが難しくなる。
これを改善する方法としては第1電極層19Aの上に電極保護層を形成し、図8Cの状態になった後、電極保護層を選択的エッチングによって除去し、その下の第1電極層を露出させて加工する方法が有効である。
電極保護層としてはTi,Ta、W等の金属膜でも良いし、TiN,Si3N4,C等でもよく、素子のエッチング用のハードマスクを電極保護膜として使用しても良い。
以下、ハードマスクを用いる手法を第14の実施の形態として説明する。
[第14の実施の形態の製造方法]
図9、図10を参照して、ハードマスク21を用いて第1電極層19Aの中央領域を薄くする第14の実施の形態の製造方法を説明する。
図9Aは、下地層14(図示省略)、磁化固定層15、トンネルバリア層16、記憶層17、スピンバリア層18を順に積層し、さらに第1電極層19Aを積層(成膜)した後、ハードマスク21を成膜した状態を示している。
これに続いて、図9Bのように、記憶素子3の形状を作るためのフォトマスク22をフォトプロセスによって作製する。
次に図9Cのようにハードマスク21を選択的にエッチングし、ハードマスクパターンを形成する。これによりハードマスク21は記憶素子3となる円形の領域に残される。
そしてフォトマスク22を除去し、ハードマスクパターンに従って図9Dのように素子形状を形成する。
次にハードマスクパターンに従ってエッチングされた部分を絶縁材20で充填し、図9Eのように平坦化する。
そして図9Fのようにハードマスク21を選択エッチングによって除去する。
この図9Fの状態では、図8で述べたハードマスクを用いない方法に比べて第1電極層19Aを深い位置に形成できる。従ってエッチングを行うイオンビームの角度をより垂直に近づけることが出来る。
そして図10Aのように斜め上方からのイオンビーム照射によるエッチングを行い、第1電極層19を、中央領域が窪んだ形状に加工していく。エッチングは、第1電極層19Aの中央領域がなくなるまで、或いはさらにスピンバリア層18の一部が窪むまで、もしくは一部が除去されるまでエッチングしても良いし、第1電極層19Aが薄膜状に残る程度でもよい。
その後図10Bのように、エッチングで窪んだ第1電極層19Aを埋めるように第2電極層19Bの材料を積層する。
そして図10Cのように表面を研磨し、平坦にする。これにより第2電極層19Bまでの層構造の記憶素子3(例えば図3A等の層構造)が形成される。
この後必要に応じて、追加の加工や配線を形成して記憶装置を作製する。
以上により、図3A、図5A、図7Aのような記憶素子3が製造できる。
なお、第13、第14の実施の形態の製造方法において、第1電極層19A、第2電極層19Bの材料を同じものとすれば、図6A、図6Cのような記憶素子3が製造できる。
[第15の実施の形態の製造方法]
第15の実施の形態の製造方法として、図4A、図5B、図7Bのような記憶素子3の製造方法を説明する。
なお第14の実施の形態として図9A〜図9Fに示した工程は同様であるのでは説明は省略する。
図9Fの状態とした後、図11Aのようにイオンビーム照射によりエッチングを行う。この場合、イオンビームの入射角度を、図10Aの場合よりも基板面に平行に近い角度とする。すると、第1電極層19Aの中央領域は陰になるので、エッチングされにくく、周縁領域がより多くエッチングされる。これによって第1電極の周縁領域が薄く加工される。
エッチングは、第1電極層19Aの周縁領域がなくなるまで、或いはさらにスピンバリア層18の一部が窪むまでエッチングしても良いし、第1電極層19Aが薄膜状に残っていても良い。さらにスピンバリア層18の一部が除去されるまでエッチングしてもよい。
例えば上述の第2の実施の形態(図4A)の記憶素子3を形成する場合は、スピンバリア層18の周縁領域が窪むまでエッチングする。
また第5の実施の形態の(図5B)の記憶素子3を形成する場合は、スピンバリア層18の周縁領域が除去されるまでエッチングする。
また第11の実施の形態(図7B)の記憶素子3を形成する場合は、第1電極層19Aの周縁領域がなくなるまで、或いは薄膜状に残る程度のエッチングを行う。
その後図11Bのように、エッチングで窪んだ第1電極層19Aを埋めるように第2電極層19Bの材料を積層する。
そして図11Cのように表面を研磨し、平坦にする。これにより第2電極層19Bまでの層構造の記憶素子3(例えば図4A等の層構造)が形成される。
この後必要に応じて、追加の加工や配線を形成して記憶装置を作製する。
以上により、図4A、図5B、図7Bのような記憶素子3が製造できる。なお、この第15の実施の形態の製造方法において、第1電極層19A、第2電極層19Bの材料を同じものとすれば、図6B、図6Dのような記憶素子3が製造できる。
また、例えば図11Aの工程でエッチング角度を途中で代えることで、周縁領域と中央領域の両方が窪むようなエッチングも可能である。従って、図4Bや図7Cのような記憶素子3を製造することもできる。
[第16の実施の形態の製造方法]
次に第1電極層19Aのエッチング後にスピンバリア層18をエッチングで形成する第16の実施の形態の製造方法を図12で説明する。
なお第14の実施の形態として図9A〜図9Fに示した工程は同様であるのでは説明は省略する。
図9Fの状態とした後、図12Aのように斜め方向からのイオンビーム照射によりエッチングを行う。
このとき、第1電極層19Aの材料を選択的にエッチングするようにエッチング方法やガスの種類条件などを選べば、スピンバリア層18をあまり削ることなく第1電極層19Aの端部を削ることができ、スピンバリア層18を露出させることができる。
次に図12Bのように上方からイオンビーム照射によりエッチングを行う。この場合に第1電極層19Aのエッチング率が小さく、スピンバリア層18のエッチング率が大きな条件でエッチングすれば、第1電極層19Aがマスクになりスピンバリア層18の端部がエッチングされる。
次に図12Cのように第2電極層19Bの材料を埋め込み、第2電極層19Bが記憶層17と直接、あるいは薄いスピンバリア層18を介して、周縁領域で接続するようにする。その後図12Dのように表面を研磨し、平坦にする。
この後必要に応じて、追加の加工や配線を形成して記憶装置を作製する。
以上により、図4A、図5B、図7Bのような記憶素子3が製造できる。第1電極層19A、第2電極層19Bの材料を同じものとすれば、図6B、図6Dのような記憶素子3も製造できる。
この第16の実施の形態は、スピンバリア層18の周縁領域をエッチングする例で説明したが、図12Aのエッチング角度を適当にとれば、スピンバリア層18の中央領域をエッチングすることもできる。
[第17の実施の形態の製造方法]
以上は斜め方向からのエッチングが必要な製造方法であるが、次に斜め方向からのエッチングが必須ではない第17の実施の形態の製造方法を図13、図14で説明する。
なお第14の実施の形態として図9A〜図9Fに示した工程は同様であるのでは説明は省略する。但し、ハードマスク除去後の図9Fの窪みの深さは、第14の実施の形態の場合よりも浅くても良い。
図9Fの状態とした後、図13Aのように第1補助マスク層23と第2補助マスク層24を形成する。2つの補助マスク層23,24は、エッチング率が大きく異なるものが好ましく、第1補助マスク層23のエッチング率が第2補助マスク層24のエッチング率より大きいものが好ましい。第1、第2補助マスク層23,24の材料は金属でもセラミックスでも有機物でもよい。
次に図13Bのように表面を研磨する。研磨は絶縁材20が露出するまで行っても良いが、最低限第1補助マスク層23の一部が露出すればよい。
また、研磨が終了した状態で第2補助マスク層24が絶縁材20と同じ高さでも良いし、第2補助マスク層24が窪んでいても良い。
次に図13Cのように第1補助マスク層23のエッチングを行う。
ここでは第1補助マスク層23のエッチング率が第2補助マスク層24のエッチング率より大きい条件でエッチングを行うのがよい。エッチング方法はイオンミリングでも良いし、リアクティブイオンエッチングでも良いし、化学的な方法でも良い。またこれらを組み合わせても良い。エッチングのためのイオンビーム照射の角度は細い溝に十分にエッチング粒子が入り込むように、膜面に垂直に近い角度で行うのが好ましい。
さらに図13Dのようにイオンビーム照射を継続し、第1電極層19Aのエッチングを引き続き行う。第1電極層19Aと第1補助マスク層23が同じ材料あるいは同じエッチング条件でエッチングできるなら、図13Cの工程と図13Dの工程は同時に行えばよい。
続いて図14Aのようにスピンバリア層18のエッチングを行う。
エッチング条件は第1補助マスク層23および第1電極層19Aのエッチング条件と同じもよく、スピンバリア層18のエッチング率が大きい条件でも良い。またスピンバリア層18のエッチングの際に第1補助マスク層23、第2補助マスク層24および第1電極層19Aがエッチングされてもかまわない。即ち周縁流域以外のスピンバリア層18が十分機能する厚さで残っていればよい。
図14Aではスピンバリア層18の周縁領域とともに第2補助マスク層24のみが除去された状態で示しているが、第1補助マスク層23、さらには第1電極層19Aまでもが除去されてもよい。或いは第1,第2補助マスク層23、24が残された状態でもかまわない。
スピンバリア層18の周縁領域は除去されるまでエッチングしてもよいし(図5Bの記憶素子3を形成する場合)、薄膜状態で残されてもよい(図4Aの記憶素子3を形成する場合)。またスピンバリア層18のエッチングは第2電極層19Bの材料によっては行わなくても良い(図7Bのように還元による低抵抗領域32を形成する場合)。
次に図14Bのように第2電極層19Bを形成する。第2電極層19Bの形成はスパッタ法などでも良いが、細い溝に十分な充填を行うためには化学気相成長などの方法が適している。その後図14Cのように表面を研磨し、平坦にする。この後必要に応じて、追加の加工や配線を形成して記憶装置を作製する。
以上により、図4A、図5B、図7Bのような記憶素子3が、斜め方向からのエッチングを行わずに製造できる。
<4.実験>
以下、実施の形態の記憶素子3についての実験結果を説明する。
実験には比較例としての試料1と、第10の実施の形態に相当する試料2、第11の実施の形態の相当する試料3を用いた。試料1,2,3の層構造を図15A、図15B、図15Cに示している。
試料1,2,3の共通の層構造は、次の通りである。( )の値は膜厚である。
・下地層14:Ta(5nm)
・磁化固定層15:Ru(3nm)/CoPt(2nm)/Ru(0.7nm)/FeCoB(1nm)の積層フェリピン構造
・トンネルバリア層16:MgO(0.7nm)
・記憶層17:FeCoB(1.2nm)/Ta(0.2nm)/FeCoB(1.2nm)の3層構造
・スピンバリア層18:MgO(0.6nm)
・第1電極層19A:Ru(3nm)
各試料の素子形状は直径50nmの円板状に形成した。
素子を形成する方法は、上記の層構造にハードマスクとして10nmのTiN膜を成膜した膜を用いた。比較例としての試料1は、TiNをハードマスクとしてイオンミリングで素子を形成し、絶縁材20としてのSiO2を埋め込み平坦化した後、そのまま上部配線を形成したものを用いた。TiNが第2電極層19Bとされている。
実施の形態に相当する試料2,3では、絶縁材20で埋め込み平坦化した後、TiNをリアクティブイオンエッチング(RIE)で除去し、素子表面のRu(第1電極層19A)を露出させた。
さらにイオンミリングで膜面から30度および10度の角度から第1電極層19AのRuの一部が除去されるまでエッチングを行った。エッチング角度30度は第1電極層19Aの中央領域を薄くしていく条件で、10度は第1電極層19Aの周縁領域を薄くしていく条件である。30度としたものが試料2、10度としたものが試料3である。
そしてエッチングで形成した窪みをTaで埋めて、平坦化を行い、上部配線を形成した。Taが第2電極層19Bとなる。
図16Cに、試料1,2,3の記憶素子の抵抗値、保磁力、反転電圧および磁気抵抗比(MR比)を示す。
実施の形態に相当する試料2,3の場合、スピンバリア層18による抵抗の増加が少ないので、抵抗値が比較例(試料1)に比べて小さい。
また保磁力は試料1,2,3において顕著な違いはないことから、実施の形態においてスピンバリア層18による保磁力増強効果は維持されているといえる。
また試料2,3の記憶素子ではいずれも比較例(試料1)に比べて素子抵抗が低下し、反転電圧が小さくなっている。
また、MR比も試料2,3は試料1に対して増加している。
図16A、図16Bにスピンバリア層厚に対する保磁力Hcと面抵抗RAの変化を試料1(比較例)および試料3(実施の形態)について示した。
図16Aのように、比較例ではスピンバリア層厚が薄い場合、保磁力Hcが小さく、厚い場合、面抵抗RAが大きくなる。つまり保磁力Hcが大きく面抵抗RAが小さい最適なスピンバリア層厚の最適条件を見いだすことが難しい。
一方で、実施の形態の試料3では図16Bのように、面抵抗RAがスピンバリア層厚にあまり依存しなくなる。このため保磁力Hcの十分大きなスピンバリア層厚に設定することが容易となる。具体的にはスピンバリア層厚は0.6nm〜0.7nmの範囲が好適である。
次に第10、第11,第12の実施の形態、つまりスピンバリア層18の一部を還元させることで、スピンバリア層18の一部の電気抵抗を下げる構成を想定して、各種元素あるいは化合物材料をスピンバリア層上に配置した場合のスピンバリア層の素子抵抗への影響を調べた。
図17に示すように、Cu(10nm)/Ta(5nm)/FeCoB(1.2nm)/MgO(0.7nm)/X(5nm)/Ru(3nm)の層構造の複数種類の試料4を用いた。複数種類の試料4としては、Xの層を図示する各種元素あるいは化合物材料としたものである。MgO層がスピンバリア層18に相当する。
これらの複数種類の試料4について、それぞれ12端子CIPT法により求めたトンネルバリアの抵抗(RA)と磁化測定から求めた垂直保磁力(Hc)を図18に示す。
面抵抗RAが大きく、垂直保磁力Hcも大きいな材料は、MgO層(トンネルバリア層)との反応が少なく、トンネルバリア層の劣化が少ない。このため実施の形態の第1電極層19Aに適している。
一方、面抵抗RAが小さく、垂直保磁力Hcが小さいあるいは面内磁化となる材料は、MgO層と反応し、MgOの実効的な膜厚が薄くなっているので、第2電極層19Bに適している。
図18から、第1電極層19Aとして適している材料はRu,Cu,W,Pt,Pd,Cr,TiN,TaN,TiC,ITOで、第2電極層19Bとして適している材料はTi,Ta,Nb,Zr,Hf,Yであるといえる。
また、絶縁体であるがSi34,TiO2,MgO,Al23等の安定な酸化物もしく
は窒化物は、MgOトンネルバリア層を劣化させないので、第1電極層19Aとして用いることができる。
<5.まとめ>
以上、実施の形態について説明してきたが、実施の形態の記憶素子、記憶装置、記憶素子の製造方法によれば、以下のような効果が得られる。
第1〜第12の実施の形態としての記憶素子3は、膜面に垂直な磁化を有し、情報に対応して磁化の向きが変化される記憶層17と、記憶層17に記憶された情報の基準となる膜面に垂直な磁化を有する磁化固定層15を有する。また記憶層17と磁化固定層15の間に設けられる酸化物によるトンネルバリア層16と、記憶層17の、トンネルバリア層16に接する面とは反対側の面に接して設けられる酸化物によるスピンバリア層18とを有する。即ち記憶層17の両面側に酸化物層(トンネルバリア層16とスピンバリア層18)が接している層構造である。このような層構造の積層方向に電流を流すことで記憶層17の磁化の向きが変化して記憶層17に情報の記憶が行われる。そして所定の設定膜厚値で形成されるスピンバリア層18内には、その一部に低抵抗領域(30,31,32)が形成されている。
即ち設定膜厚値としてある程度の十分な厚みでスピンバリア層18を形成して、界面磁気異方性エネルギーが得られるようにしつつ、一部に低抵抗領域(30,31,32)を形成してスピンバリア層18の抵抗値を下げることができる。従って、保磁特性に優れ、少ない電圧、電流で動作可能な不揮発メモリを実現できる。
また実施の形態の記憶素子3は、記憶層17が垂直磁化膜であるため、記憶層17の磁化M17の向きを反転させるために必要となる書き込み電流量を低減することができる。
また情報保持能力である熱安定性を充分に確保することができるため、特性バランスに優れた記憶素子3を構成することができる。
これにより、動作エラーをなくして、記憶素子3の動作マージンを充分に得ることができ、記憶素子3を安定して動作させることができる。
従って、安定して動作する、信頼性の高いメモリを実現することができる。
第1〜第9の実施の形態の記憶素子3は、スピンバリア層18が、一部の膜厚値が設定膜厚値よりも小さい値(膜厚ゼロも含む)とされて低抵抗領域30(又は31)が形成されている。つまりスピンバリア層18の一部を、設定膜厚値よりも薄い膜厚か、もしくは膜厚ゼロ(つまり除去)とすることで、物理的に低抵抗領域30、31を実現することができる。
第1〜第3、第6,第7の実施の形態の記憶素子3は、電極層19の一部が、スピンバリア層18に対して膜厚方向に進入するように形成されていることで、当該進入部分の膜厚値が、設定膜厚値よりも小さい値となるように形成されている。これによりスピンバリア層の一部を電極層19からみて薄膜の低抵抗領域として形成できる。
第1〜第3の実施の形態の記憶素子3は、第2電極層19Bの一部が第1電極層19Aを膜厚方向に通過したうえでスピンバリア層18に対して膜厚方向に進入するように形成されている。この場合、エッチングで第1電極層19Aの一部を除去し、さらにスピンバリア層18の一部を薄膜化したうえで第2電極層を充填するという手法で、電極層19がスピンバリア層18に進入する層構造を容易に実現することができる。
第4,第5,第8,第9の実施の形態の記憶素子3は、電極層19の一部が、スピンバリア層18を膜厚方向に通過して記憶層17に接するように形成されていることで、当該通過部分の膜厚値が、設定膜厚値よりも小さい値の低抵抗領域31とされている。
つまり電極層19の一部がスピンバリア層18を通過して記憶層に接するように形成することで、スピンバリア層18の一部を除去し、スピンバリア層18による抵抗をきわめて小さくできる。
第4,第5の実施の形態の記憶素子3は、第2電極層19Bの一部が第1電極層19Aを膜厚方向に通過したうえでスピンバリア層18を膜厚方向に通過して記憶層17に接するように形成されている。この場合、エッチングで第1電極層19Aの一部を除去し、さらにスピンバリア層18の一部を除去したうえで第2電極層19Bを充填するという手法で、電極層19がスピンバリア層18を通過して記憶層17に接する層構造を容易に実現することができる。
第1〜第9の実施の形態の記憶素子3は、スピンバリア層18が、膜面の中央領域又は周縁領域の一方又は両方において、膜厚値が設定膜厚値よりも小さい値となるように形成されて低抵抗領域30(又は31)とされている。
膜面の中央領域、又は周縁領域は、例えば斜め方向からのエッチング等により薄膜化が容易に実現でき、低抵抗領域30、31を備えた記憶素子3の製造に適している。
第10〜第12の実施の形態の記憶素子3は、スピンバリア層18の一部領域の酸化物が還元されて低抵抗領域32が形成されている。スピンバリア層18を構成する酸化物の一部を還元させることで抵抗値の小さい領域を生成でき、物理的な薄膜化によらない方法でも低抵抗領域32を形成することができる。
第10〜第12の実施の形態の記憶素子3は、第2電極層19Bは第1電極層19Aよりも酸化物との反応性が高い材料とされ、第2電極層19Bの一部が第1電極層19Aを膜厚方向に通過又は進入してスピンバリア層18に接触又は近接することで、スピンバリア層18における一部領域の酸化物が還元されて低抵抗領域32が形成されている。
第2電極層19Bをイオン化傾向が高い材料など、酸化物との反応性が高い材料とし、スピンバリア層18の一部に接触又は近接するようにすれば、スピンバリア層18の一部領域を酸化物が還元された低抵抗領域32Aとすることができ、低抵抗領域32を有する記憶素子3の製造に適している。
第10〜第12の実施の形態の記憶素子3は、第1電極層19AはRu,Cu,W,Pt,Pd,Cr,TiN,TaN,TiC,ITOのうちの少なくとも1種を用いて形成され、第2電極層19BはTi,Ta,Nb,Zr,Hf,Yのうちの少なくとも1種を用いて形成されている。これらの材料により、スピンバリア層18において第1電極層19Aに接する部分は酸化物が還元されにくく、第2電極層19Bに接触又は近接する部分で酸化物が還元されて低抵抗領域32を形成できる。
第1〜第12の実施の形態の記憶素子3は、スピンバリア層18は、MgO、Al23、SiO2の少なくとも1種を用いて形成されている。これにより記憶層17との間で界面磁気異方性効果を良好に得ることができる。
第1〜第12の実施の形態の記憶素子3は、スピンバリア層18の設定膜厚値は0.6nm以上、0.7nm以下とされる。これにより面抵抗が小さく保磁力の良好な記憶素子3を実現できる。
第1〜第12の実施の形態の記憶素子3は、記憶層17がFeCoB,FeNiB,FeCoC,FeCoSiB,FeAlSi,CoMnSi,MnAlのうち少なくとも1種を用いて形成されている。これらの材料が記憶層17の垂直磁化型に好適である。
実施の形態の記憶装置は、情報を磁性体の磁化状態により保持する上述の記憶素子3と、互いに交差する2種類の配線(1、6)とを備える。そして2種類の配線(1、6)の間に記憶素子3が配置され、2種類の配線(1、6)を通じて、記憶素子3に積層方向の電流が流れる構成である。
上述の通り記憶素子3が保磁特性に優れ、少ない電圧、電流で動作可能な不揮発メモリとされている。従って、実施の形態の記憶装置は、書き込み電流を低減して、記憶素子3に書き込みを行う際の消費電力を低減することが可能になる。また記憶素子3によりメモリセルを構成した、メモリ全体の消費電力を低減することが可能になる。
これらのことから、情報保持特性が優れ、低消費電力で安定して動作する信頼性の高い記憶装置を実現できる。
また、第1〜第12の実施の形態として説明した記憶素子3を備え、図1に示した構成の記憶装置は、一般の半導体MOS形成プロセスを適用して製造できるという利点を有している。本実施の形態の記憶装置を、汎用メモリとして適用することにも好適である。
第13〜第17の実施の形態の製造方法は、次の工程を有する。
・磁化固定層15、トンネルバリア層16、記憶層17、スピンバリア層18を順に積層する第1工程(図8A、図9A)
・スピンバリア層18上に第1電極層19Aを積層する第2工程(図8A、図9A)
・以上の積層構造体の周囲に絶縁材20を充填し、第1電極層19Aと絶縁材20の上面が略平坦、もしくは絶縁材20の上面が第1電極層19Aの上面よりも突出した状態に加工する第3工程(図8B〜図8C、図9E〜図9F)
・第1電極層19Aの一部を除去又は薄膜化する第4工程(図8D、図10A、図11A、図12A、図13D)
・一部が除去又は薄膜化された第1電極層19A上に第2電極層19Bを積層する第5工程(図8E〜図8F、図10B〜図10C、図11B〜図11C、図12C〜図12D、図14B〜図14C)
この場合、第4工程で第1電極層19Aの一部を加工した後、第5工程で第2電極層19Bを積層することで第1〜第12の実施の形態の記憶素子3の構造を比較的容易に製造できる。
また第4工程において、第1電極層19Aの一部を除去したうえで、さらにスピンバリア層18の一部を薄膜化することで、スピンバリア層18は、一部の膜厚値が設定膜厚値よりも小さい値とされて低抵抗領域30(又は31)が形成される。これにより電極層19がスピンバリア層18に進入する層構造を得ることができ、例えば第1〜第9の実施の形態の記憶素子3の製造に適している。
また第2電極層19Bには第1電極層19Aよりも酸化物との反応性が高い材料を用い、第5工程で積層される第2電極層19Bの一部が、第4工程で一部を除去又は薄膜化された第1電極層19Aを膜厚方向に通過又は進入してスピンバリア層18に接触又は近接させ、スピンバリア層18における一部領域の酸化物が還元されて低抵抗領域32が形成されるようにすることができる。これにより、スピンバリア層18の一部として抵抗値の小さい領域を生成でき、例えば第10〜第12の実施の形態の記憶素子3の製造に適している。
<6.変形例>
以上実施の形態について説明してきたが、本開示の技術は、上述の実施の形態で示した記憶素子3の層構成に限らず、様々な層構成を採用することが可能である。
例えば電極層19を異なる材料による3層以上の構成としてもよい。
記憶層17や磁化固定層15は、例えばFeCoB等の強磁性体による単層としてもよいし、図15の試料のように複層構造としてもよい。
また、下地層14は、単一材料でも複数材料の積層構造でも良い。
なお本開示の記憶素子3の構造は、TMR(Tunneling Magneto Resistance)素子等の磁気抵抗効果素子の構成となるが、このTMR素子としての磁気抵抗効果素子は、上述の記憶装置のみならず、磁気ヘッド及びこの磁気ヘッドを搭載したハードディスクドライブ、集積回路チップ、さらにはパーソナルコンピュータ、携帯端末、携帯電話、磁気センサ機器をはじめとする各種電子機器、電気機器等に適用することが可能である。
一例として図19A、図19Bに、上記記憶素子3の構造の磁気抵抗効果素子101を複合型磁気ヘッド100に適用した例を示す。なお、図19Aは、複合型磁気ヘッド100について、その内部構造が分かるように一部を切り欠いて示した斜視図であり、図19Bは複合型磁気ヘッド100の断面図である。
複合型磁気ヘッド100は、ハードディスク装置等に用いられる磁気ヘッドであり、基板122上に、本開示の技術を適用した磁気抵抗効果型磁気ヘッドが形成されてなるとともに、当該磁気抵抗効果型磁気ヘッド上にインダクティブ型磁気ヘッドが積層形成されてなる。ここで、磁気抵抗効果型磁気ヘッドは、再生用ヘッドとして動作するものであり、インダクティブ型磁気ヘッドは、記録用ヘッドとして動作する。すなわち、この複合型磁気ヘッド100は、再生用ヘッドと記録用ヘッドを複合して構成されている。
複合型磁気ヘッド100に搭載されている磁気抵抗効果型磁気ヘッドは、いわゆるシールド型MRヘッドであり、基板122上に絶縁層123を介して形成された第1の磁気シールド125と、第1の磁気シールド125上に絶縁層123を介して形成された磁気抵抗効果素子101と、磁気抵抗効果素子101上に絶縁層123を介して形成された第2の磁気シールド127とを備えている。絶縁層123は、Al23やSiO2等のような絶縁材料からなる。
第1の磁気シールド125は、磁気抵抗効果素子101の下層側を磁気的にシールドするためのものであり、Ni−Fe等のような軟磁性材からなる。この第1の磁気シールド125上に、絶縁層123を介して磁気抵抗効果素子101が形成されている。
磁気抵抗効果素子101は、この磁気抵抗効果型磁気ヘッドにおいて、磁気記録媒体からの磁気信号を検出する感磁素子として機能する。そして、この磁気抵抗効果素子101は、上述した記憶素子3と同様な膜構成とされる。
この磁気抵抗効果素子101は、略矩形状に形成されてなり、その一側面が磁気記録媒体対向面に露呈するようになされている。そして、この磁気抵抗効果素子101の両端にはバイアス層128,129が配されている。またバイアス層128,129と接続されている接続端子130,131が形成されている。接続端子130,131を介して磁気抵抗効果素子101にセンス電流が供給される。
さらにバイアス層128,129の上部には、絶縁層123を介して第2の磁気シールド層127が設けられている。
以上のような磁気抵抗効果型磁気ヘッドの上に積層形成されたインダクティブ型磁気ヘッドは、第2の磁気シールド127及び上層コア132によって構成される磁気コアと、当該磁気コアを巻回するように形成された薄膜コイル133とを備えている。
上層コア132は、第2の磁気シールド122と共に閉磁路を形成して、このインダクティブ型磁気ヘッドの磁気コアとなるものであり、Ni−Fe等のような軟磁性材からなる。ここで、第2の磁気シールド127及び上層コア132は、それらの前端部が磁気記録媒体対向面に露呈し、且つ、それらの後端部において第2の磁気シールド127及び上層コア132が互いに接するように形成されている。ここで、第2の磁気シールド127及び上層コア132の前端部は、磁気記録媒体対向面において、第2の磁気シールド127及び上層コア132が所定の間隙gをもって離間するように形成されている。
すなわち、この複合型磁気ヘッド100において、第2の磁気シールド127は、磁気抵抗効果素子126の上層側を磁気的にシールドするだけでなく、インダクティブ型磁気ヘッドの磁気コアも兼ねており、第2の磁気シールド127と上層コア132によってインダクティブ型磁気ヘッドの磁気コアが構成されている。そして間隙gが、インダクティブ型磁気ヘッドの記録用磁気ギャップとなる。
また、第2の磁気シールド127上には、絶縁層123に埋設された薄膜コイル133が形成されている。ここで、薄膜コイル133は、第2の磁気シールド127及び上層コア132からなる磁気コアを巻回するように形成されている。図示していないが、この薄膜コイル133の両端部は、外部に露呈するようになされ、薄膜コイル133の両端に形成された端子が、このインダクティブ型磁気ヘッドの外部接続用端子となる。すなわち、磁気記録媒体への磁気信号の記録時には、これらの外部接続用端子から薄膜コイル133に記録電流が供給されることとなる。
以上のような複合型磁気ヘッド100は、再生用ヘッドとして磁気抵抗効果型磁気ヘッドを搭載しているが、当該磁気抵抗効果型磁気ヘッドは、磁気記録媒体からの磁気信号を検出する感磁素子として、本開示の技術を適用した磁気抵抗効果素子101を備えている。そして、本開示の技術を適用した磁気抵抗効果素子101は、上述したように非常に優れた特性を示すので、この磁気抵抗効果型磁気ヘッドは、磁気記録の更なる高記録密度化に対応することができる。
なお本技術は以下のような構成も採ることができる。
(1)膜面に垂直な磁化を有し、情報に対応して磁化の向きが変化される記憶層と、
前記記憶層に記憶された情報の基準となる、膜面に垂直な磁化を有する磁化固定層と、
前記記憶層と前記磁化固定層の間に設けられる酸化物によるトンネルバリア層と、
前記記憶層の、前記トンネルバリア層に接する面とは反対側の面に接して設けられる酸化物によるスピンバリア層と、
を有する層構造を備え、
前記層構造の積層方向に電流を流すことで前記記憶層の磁化の向きが変化して前記記憶層に情報の記憶が行われるとともに、
所定の設定膜厚値で形成される前記スピンバリア層内には、その一部に低抵抗領域が形成されている
記憶素子。
(2)前記スピンバリア層は、一部の膜厚値が前記設定膜厚値よりも小さい値となるように形成されて前記低抵抗領域とされている
上記(1)に記載の記憶素子。
(3)前記スピンバリア層の、前記記憶層に接する面とは反対の面側に電極層が設けられており、前記電極層の一部が、前記スピンバリア層に対して膜厚方向に進入するように形成され、当該進入部分の前記スピンバリア層の膜厚値が、前記設定膜厚値よりも小さい値となるように形成されている
上記(2)に記載の記憶素子。
(4)前記電極層は、前記スピンバリア層側から順に積層される第1電極層と第2電極層を含む複数の層で形成されており、前記第2電極層の一部が前記第1電極層を膜厚方向に通過したうえで前記スピンバリア層に対して膜厚方向に進入するように形成されている
上記(3)に記載の記憶素子。
(5)前記スピンバリア層の、前記記憶層に接する面とは反対の面側に電極層が設けられており、前記電極層の一部が、前記スピンバリア層を膜厚方向に通過して前記記憶層に接するように形成され、当該通過部分の前記スピンバリア層の膜厚値が、前記設定膜厚値よりも小さい値となるように形成されている
上記(2)に記載の記憶素子。
(6)前記電極層は、前記スピンバリア層側から順に積層される第1電極層と第2電極層を含む複数の層で形成されており、前記第2電極層の一部が前記第1電極層を膜厚方向に通過したうえで前記スピンバリア層を膜厚方向に通過して前記記憶層に接するように形成されている
上記(5)に記載の記憶素子。
(7)前記スピンバリア層は、膜面の中央領域又は周縁領域の一方又は両方において、膜厚値が前記設定膜厚値よりも小さい値となるように形成されて前記低抵抗領域とされている
上記(2)乃至(6)のいずれかに記載の記憶素子。
(8)前記スピンバリア層は、その一部領域の酸化物が還元されて前記低抵抗領域が形成されている
上記(1)に記載の記憶素子。
(9)前記スピンバリア層の、前記記憶層に接する面とは反対の面側に、前記スピンバリア層側から順に異なる材料で積層される第1電極層と第2電極層を含む複数の層からなる電極層が設けられており、
前記第2電極層は前記第1電極層よりも酸化物との反応性が高い材料とされ、
前記第2電極層の一部が前記第1電極層を膜厚方向に通過又は進入して前記スピンバリア層に接触又は近接することで、前記スピンバリア層における一部領域の酸化物が還元されて前記低抵抗領域が形成されている
上記(8)に記載の記憶素子。
(10)前記第1電極層はRu,Cu,W,Pt,Pd,Cr,TiN,TaN,TiC,ITOのうちの少なくとも1種を用いて形成され、
前記第2電極層はTi,Ta,Nb,Zr,Hf,Yのうちの少なくとも1種を用いて形成されている
上記(9)に記載の記憶素子。
(11)前記スピンバリア層は、MgO、Al23、SiO2の少なくとも1種を用いて形成されている
上記(1)乃至(10)のいずれかに記載の記憶素子。
(12)前記設定膜厚値は0.6nm以上、0.7nm以下とされる
上記(1)乃至(11)のいずれかに記載の記憶素子。
(13)上記記憶層は、FeCoB,FeNiB,FeCoC,FeCoSiB,FeAlSi,CoMnSi,MnAlのうち少なくとも1種を用いて形成されている
上記(1)乃至(12)のいずれかに記載の記憶素子。
(14)情報を磁性体の磁化状態により保持する記憶素子と、
互いに交差する2種類の配線とを備え、
前記記憶素子は、
膜面に垂直な磁化を有し、情報に対応して磁化の向きが変化される記憶層と、
前記記憶層に記憶された情報の基準となる、膜面に垂直な磁化を有する磁化固定層と、
前記記憶層と前記磁化固定層の間に設けられる酸化物によるトンネルバリア層と、
前記記憶層の、前記トンネルバリア層に接する面とは反対側の面に接して設けられる酸化物によるスピンバリア層と、
を有する層構造を備え、
前記層構造の積層方向に電流を流すことで前記記憶層の磁化の向きが変化して前記記憶層に情報の記憶が行われるとともに、
所定の設定膜厚値で形成される前記スピンバリア層内には、その一部に低抵抗領域が形成されている構成とされており、
前記2種類の配線の間に前記記憶素子が配置され、
前記2種類の配線を通じて、前記記憶素子に前記積層方向の電流が流れる
記憶装置。
(15)膜面に垂直な磁化を有し、情報に対応して磁化の向きが変化される記憶層と、
前記記憶層に記憶された情報の基準となる、膜面に垂直な磁化を有する磁化固定層と、
前記記憶層と前記磁化固定層の間に設けられる酸化物によるトンネルバリア層と、
前記記憶層の、前記トンネルバリア層に接する面とは反対側の面に接して設けられる酸化物によるスピンバリア層と、
を有する層構造を備え、
前記層構造の積層方向に電流を流すことで前記記憶層の磁化の向きが変化して前記記憶層に情報の記憶が行われるとともに、
所定の設定膜厚値で形成される前記スピンバリア層内には、その一部に低抵抗領域が形成されている記憶素子の製造方法として、
前記磁化固定層、前記トンネルバリア層、前記記憶層、前記スピンバリア層を順に積層する第1工程と、
前記スピンバリア層上に第1電極層を積層する第2工程と、
当該積層による構造体の周囲に絶縁材を充填し、前記第1電極層と前記絶縁材の上面が略平坦、もしくは前記絶縁材の上面が前記第1電極層の上面よりも突出した状態に加工する第3工程と、
前記第1電極層の一部を除去又は薄膜化する第4工程と、
一部が除去又は薄膜化された前記第1電極層上に第2電極層を積層する第5工程と、
を有する記憶素子の製造方法。
(16)前記第4工程では、前記第1電極層の一部を除去したうえで、さらに前記スピンバリア層の一部を薄膜化又は除去することで、
前記スピンバリア層は、一部の膜厚値が前記設定膜厚値よりも小さい値とされて前記低抵抗領域が形成されるようにした
上記(15)に記載の記憶素子の製造方法。
(17)前記第2電極層には前記第1電極層よりも酸化物との反応性が高い材料を用い、
前記第5工程で積層される前記第2電極層の一部が、前記第4工程で一部を除去又は薄膜化された前記第1電極層を膜厚方向に通過又は進入して前記スピンバリア層に接触又は近接することで、前記スピンバリア層における一部領域の酸化物が還元されて前記低抵抗領域が形成されるようにした
上記(15)に記載の記憶素子の製造方法。
(18)記憶素子を有し、
上記記憶素子は、
膜面に垂直な磁化を有し、情報に対応して磁化の向きが変化される記憶層と、
前記記憶層に記憶された情報の基準となる、膜面に垂直な磁化を有する磁化固定層と、
前記記憶層と前記磁化固定層の間に設けられる酸化物によるトンネルバリア層と、
前記記憶層の、前記トンネルバリア層に接する面とは反対側の面に接して設けられる酸化物によるスピンバリア層と、
を有する層構造を備え、
所定の設定膜厚値で形成される前記スピンバリア層内には、その一部に低抵抗領域が形成されている
磁気ヘッド
3…記憶素子、14…下地層、15…磁化固定層、16…トンネルバリア層、17…記憶層、18…スピンバリア層、19…電極層、19A…第1電極層、19B…第2電極層

Claims (17)

  1. 膜面に垂直な磁化を有し、情報に対応して磁化の向きが変化される記憶層と、
    前記記憶層に記憶された情報の基準となる、膜面に垂直な磁化を有する磁化固定層と、
    前記記憶層と前記磁化固定層の間に設けられる酸化物によるトンネルバリア層と、
    前記記憶層の、前記トンネルバリア層に接する面とは反対側の面に接して設けられる酸化物によるスピンバリア層と、
    を有する層構造を備え、
    前記層構造の積層方向に電流を流すことで前記記憶層の磁化の向きが変化して前記記憶層に情報の記憶が行われるとともに、
    所定の設定膜厚値で形成される前記スピンバリア層内には、その一部領域の酸化物が還元されて低抵抗領域が形成されている
    記憶素子。
  2. 前記スピンバリア層は、一部の膜厚値が前記設定膜厚値よりも小さい値となるように形成されて前記低抵抗領域とされている
    請求項1に記載の記憶素子。
  3. 前記スピンバリア層の、前記記憶層に接する面とは反対の面側に電極層が設けられており、前記電極層の一部が、前記スピンバリア層に対して膜厚方向に進入するように形成され、当該進入部分の前記スピンバリア層の膜厚値が、前記設定膜厚値よりも小さい値となるように形成されている
    請求項2に記載の記憶素子。
  4. 前記電極層は、前記スピンバリア層側から順に積層される第1電極層と第2電極層を含む複数の層で形成されており、前記第2電極層の一部が前記第1電極層を膜厚方向に通過したうえで前記スピンバリア層に対して膜厚方向に進入するように形成されている
    請求項3に記載の記憶素子。
  5. 前記スピンバリア層の、前記記憶層に接する面とは反対の面側に電極層が設けられており、前記電極層の一部が、前記スピンバリア層を膜厚方向に通過して前記記憶層に接するように形成され、当該通過部分の前記スピンバリア層の膜厚値が、前記設定膜厚値よりも小さい値となるように形成されている
    請求項2に記載の記憶素子。
  6. 前記電極層は、前記スピンバリア層側から順に積層される第1電極層と第2電極層を含む複数の層で形成されており、前記第2電極層の一部が前記第1電極層を膜厚方向に通過したうえで前記スピンバリア層を膜厚方向に通過して前記記憶層に接するように形成されている
    請求項5に記載の記憶素子。
  7. 前記スピンバリア層は、膜面の中央領域又は周縁領域の一方又は両方において、膜厚値が前記設定膜厚値よりも小さい値となるように形成されて前記低抵抗領域とされている
    請求項2に記載の記憶素子。
  8. 前記スピンバリア層の、前記記憶層に接する面とは反対の面側に、前記スピンバリア層側から順に異なる材料で積層される第1電極層と第2電極層を含む複数の層からなる電極層が設けられており、
    前記第2電極層は前記第1電極層よりも酸化物との反応性が高い材料とされ、
    前記第2電極層の一部が前記第1電極層を膜厚方向に通過又は進入して前記スピンバリア層に接触又は近接することで、前記スピンバリア層における一部領域の酸化物が還元されて前記低抵抗領域が形成されている
    請求項1に記載の記憶素子。
  9. 前記第1電極層はRu,Cu,W,Pt,Pd,Cr,TiN,TaN,TiC,ITOのうちの少なくとも1種を用いて形成され、
    前記第2電極層はTi,Ta,Nb,Zr,Hf,Yのうちの少なくとも1種を用いて形成されている
    請求項8に記載の記憶素子。
  10. 前記スピンバリア層は、MgO、Al23、SiO2の少なくとも1種を用いて形成されている
    請求項1に記載の記憶素子。
  11. 前記設定膜厚値は0.6nm以上、0.7nm以下とされる
    請求項1に記載の記憶素子。
  12. 上記記憶層は、FeCoB,FeNiB,FeCoC,FeCoSiB,FeAlSi,CoMnSi,MnAlのうち少なくとも1種を用いて形成されている
    請求項1に記載の記憶素子。
  13. 情報を磁性体の磁化状態により保持する記憶素子と、
    互いに交差する2種類の配線とを備え、
    前記記憶素子は、
    膜面に垂直な磁化を有し、情報に対応して磁化の向きが変化される記憶層と、
    前記記憶層に記憶された情報の基準となる、膜面に垂直な磁化を有する磁化固定層と、
    前記記憶層と前記磁化固定層の間に設けられる酸化物によるトンネルバリア層と、
    前記記憶層の、前記トンネルバリア層に接する面とは反対側の面に接して設けられる酸化物によるスピンバリア層と、
    を有する層構造を備え、
    前記層構造の積層方向に電流を流すことで前記記憶層の磁化の向きが変化して前記記憶層に情報の記憶が行われるとともに、
    所定の設定膜厚値で形成される前記スピンバリア層内には、その一部領域の酸化物が還元されて低抵抗領域が形成されている構成とされており、
    前記2種類の配線の間に前記記憶素子が配置され、
    前記2種類の配線を通じて、前記記憶素子に前記積層方向の電流が流れる
    記憶装置。
  14. 膜面に垂直な磁化を有し、情報に対応して磁化の向きが変化される記憶層と、
    前記記憶層に記憶された情報の基準となる、膜面に垂直な磁化を有する磁化固定層と、
    前記記憶層と前記磁化固定層の間に設けられる酸化物によるトンネルバリア層と、
    前記記憶層の、前記トンネルバリア層に接する面とは反対側の面に接して設けられる酸化物によるスピンバリア層と、
    を有する層構造を備え、
    前記層構造の積層方向に電流を流すことで前記記憶層の磁化の向きが変化して前記記憶層に情報の記憶が行われるとともに、
    所定の設定膜厚値で形成される前記スピンバリア層内には、その一部に低抵抗領域が形成されている記憶素子の製造方法として、
    前記磁化固定層、前記トンネルバリア層、前記記憶層、前記スピンバリア層を順に積層する第1工程と、
    前記スピンバリア層上に第1電極層を積層する第2工程と、
    当該積層による構造体の周囲に絶縁材を充填し、前記第1電極層と前記絶縁材の上面が略平坦、もしくは前記絶縁材の上面が前記第1電極層の上面よりも突出した状態に加工する第3工程と、
    前記第1電極層の一部を除去又は薄膜化する第4工程と、
    一部が除去又は薄膜化された前記第1電極層上に第2電極層を積層する第5工程と、
    を有する記憶素子の製造方法。
  15. 前記第4工程では、前記第1電極層の一部を除去したうえで、さらに前記スピンバリア層の一部を薄膜化又は除去することで、
    前記スピンバリア層は、一部の膜厚値が前記設定膜厚値よりも小さい値とされて前記低抵抗領域が形成されるようにした
    請求項14に記載の記憶素子の製造方法。
  16. 前記第2電極層には前記第1電極層よりも酸化物との反応性が高い材料を用い、
    前記第5工程で積層される前記第2電極層の一部が、前記第4工程で一部を除去又は薄膜化された前記第1電極層を膜厚方向に通過又は進入して前記スピンバリア層に接触又は近接することで、前記スピンバリア層における一部領域の酸化物が還元されて前記低抵抗領域が形成されるようにした
    請求項14に記載の記憶素子の製造方法。
  17. 記憶素子を有し、
    上記記憶素子は、
    膜面に垂直な磁化を有し、情報に対応して磁化の向きが変化される記憶層と、
    前記記憶層に記憶された情報の基準となる、膜面に垂直な磁化を有する磁化固定層と、
    前記記憶層と前記磁化固定層の間に設けられる酸化物によるトンネルバリア層と、
    前記記憶層の、前記トンネルバリア層に接する面とは反対側の面に接して設けられる酸化物によるスピンバリア層と、
    を有する層構造を備え、
    所定の設定膜厚値で形成される前記スピンバリア層内には、その一部領域の酸化物が還元されて低抵抗領域が形成されている
    磁気ヘッド
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