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JP6180754B2 - 酸化物触媒及びその製造方法、並びに不飽和アルデヒドの製造方法 - Google Patents

酸化物触媒及びその製造方法、並びに不飽和アルデヒドの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、酸化物触媒及びその製造方法、並びに酸化物触媒を用いた不飽和アルデヒドの製造方法に関する。
プロピレン及びイソブチレンからなる群より選ばれる少なくとも1種、及び/又は、t−ブチルアルコール及びイソブタノールからなる群より選ばれる少なくとも1種、を原料とし、不飽和アルデヒドを中間体として、酸化的エステル化反応によって、アクリル酸メチル、又はメタクリル酸メチルを製造する方法としては、直接メタクロレイン法(以下、「直メタ法」)と呼ばれる2つの反応工程からなる方法と、直接メタクリル酸法(以下、「直酸法」)と呼ばれる3つの反応工程からなる方法とが知られている。
「石油化学プロセス」(石油学会編、第172〜176頁、講談社サイエンティフィク)によると、直酸法は、第1酸化工程、第2酸化工程、及びエステル化工程の3つの工程でアクリル酸メチル、又はメタクリル酸メチルを製造するプロセスである。第1酸化工程はプロピレン、イソブチレン、及びt−ブチルアルコールからなる群より選ばれる少なくとも一つの出発物質と、分子状酸素と、を触媒の存在下で気相接触酸化反応させて、アクロレイン、又はメタクロレインを製造する工程である。第2酸化工程は、第1酸化工程で得られたアクロレイン、又はメタクロレインと、分子状酸素と、を触媒の存在下で気相接触酸化反応させて、アクリル酸、又はメタクリル酸を製造する工程である。エステル化工程は、第2酸化工程で得られたアクリル酸、又はメタクリル酸をさらにエステル化して、その際にアルコールとしてメタノールを用いた場合には、アクリル酸メチル、又はメタクリル酸メチルを得る工程である。
これに対し、直メタ法は、プロピレン、イソブチレン、及び/又はt−ブチルアルコールを原料とし、分子状酸素含有ガスを用いて気相接触酸化反応させてアクロレイン、又はメタクロレインを製造する第1反応工程と、得られたアクロレイン、又はメタクロレインと、例えばアルコールとしてメタノールと、分子状酸素と、を反応させて、一挙にアクリル酸メチル、又はメタクリル酸メチルを製造する第2反応工程と、の2つの触媒反応工程からなる方法である。
上記のように、直酸法も直メタ法もその過程で不飽和アルデヒドを製造する。このような不飽和アルデヒドを主成分として製造するために用いる触媒は、これまでに数多くの報告があり、例えば、古くはソハイオ社によって見出された、必須成分としてMo、Biを含む複合酸化物触媒等が報告されている。また、特許文献1には、触媒を構成する金属として、Mo、Bi、Ce、K、Fe、Co、Mg、Cs、Rbに着目した触媒が記載されている。
このような触媒の構造の高度な解析が、大型放射光施設SPring−8を利用したX線吸収連続微細構造(XAFS)の測定技術の進歩によって、可能になってきている。XAFSはそのエネルギー領域によってX線吸収近傍微細構造(XANES)、X線吸収広域連続微細構造(EXAFS)に分けられる。非特許文献1によると、物質のX線吸収スペクトルには、その物質に含まれている各元素に固有の波長ごとに吸収係数が鋭く立ち上がり、短波長側にすそを引いたくさび形の吸収帯が現れる。一般に吸収帯の近傍には鋭い構造が、また吸収端から光子エネルギーにして50〜1000eVの範囲には緩やかな波打ちが観測され、前者がXANES、後者がEXAFSであると記載がある。
XANESは内殻電子が不連続準位へ励起される過程に関連して生じたものであり、得られる情報は中心金属周りの配位子原子配置の対称性や、中心金属の酸化数の平均値である。EXAFSは連続準位への確率が周囲の原子による散乱で変調されることによって生じたもので、得られる情報は中心金属周りの周辺元素や結合距離等の周辺構造である。例えば、特許文献2にはXAFSを利用してMo、P、Cuに着目したメタクリル酸製造用触媒が記載されている。
国際公開95/35273号パンフレット 特開2012−30212号公報
「固体触媒のキャラクタリゼーション」触媒学会編、第124〜132頁、講談社サイエンティフィク
上記のように、直酸法も直メタ法もその過程で不飽和アルデヒドを製造するが、直酸法と直メタ法とではそれぞれ触媒に求める要求が異なる。直酸法では、最終酸化生成物が不飽和カルボン酸であるため、中間体の不飽和アルデヒドを得る工程においてメタクリル酸を減らすことのメリットは小さく、メタクロレインとメタクリル酸の合計収率が高いほど望ましい触媒といえる。これに対し、直メタ法は第1反応工程で不飽和アルデヒドを生成させた後、第2反応工程でいきなり不飽和カルボン酸エステルを生成させるので、不飽和カルボン酸を目的化合物とする工程がない。そのため、触媒による酸化工程において、生成が望まれるのは不飽和アルデヒドのみであって、不飽和カルボン酸の生成は好ましいものではない。
このように、直メタ法の第1反応工程用の触媒を最適化することを目指す場合、直酸法用の触媒とは明確に方向性が異なる。直メタ法では、不飽和アルデヒドと不飽和カルボン酸の合計収率を上げることを目標とするのではなく、不飽和アルデヒドの収率が高く、且つ、不飽和カルボン酸の収率は低い触媒が望ましいことになる。
不飽和アルデヒドの収率が高く、且つ、不飽和カルボン酸の収率は低い触媒という観点で、直メタ法の分野で利用されているビスマス−モリブデン系触媒(Bi−Mo)や、特許文献1に記載されているような、これに鉄、セリウム等を加えた不飽和アルデヒド製造用触媒を検討した。その結果、このような従来の触媒に含まれる鉄の価数は3価であることが、鉄のK吸収端X線吸収微細構造解析から分かった。そして、この3価の鉄を含む酸化物触媒は、比較的酸化力が強いために、目的化合物(不飽和アルデヒド)をさらに酸化して、不飽和カルボン酸や二酸化炭素を生成させてしまい、不飽和アルデヒドの選択率を下げてしまうという問題がある。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、オレフィン及び/又はアルコールを原料とする不飽和アルデヒドの製造において、不飽和カルボン酸の生成が少なく、不飽和アルデヒドの選択率の高い酸化物触媒及びその製造方法、並びに酸化物触媒を用いた不飽和アルデヒドの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記問題点を解決すべく鋭意検討した。その結果、鉄のK吸収端X線吸収微細構造スペクトルを1階微分して得られるパターンにおいて、所定の第一変曲点を有する酸化物触媒であれば、不飽和アルデヒドを生成するのに適切な酸化力を有し、上記問題点を解決できることを見出して、本発明に至った。
また、焼成を不活性ガス雰囲気下で行い、かつ仮焼成体の酸化還元度を制御することにより、最終的に得られる酸化物触媒の3価の鉄化合物の生成を抑制し、且つ、2価の鉄化合物の生成も抑制することができ、これにより上記問題点を解決できる酸化物触媒を製造できることを見出して、本発明に至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
〔1〕
モリブデン、ビスマス、鉄、コバルト、及びセリウムを含有し、
前記モリブデンと複合化した前記鉄のK吸収端X線吸収微細構造スペクトルを1階微分して得られるパターンにおける第一変曲点が、7125.5〜7127.0eVのX線エネルギーに現れる、オレフィン及び/又はアルコールを原料とする不飽和アルデヒドの製造用酸化物触媒。
〔2〕
下記組成式(1)で表される組成を有する、〔1〕に記載の酸化物触媒。
Mo12BiaFebCocCedefg (1)
(式(1)中、Moはモリブデン、Biはビスマス、Feは鉄、Coはコバルト、Ceはセリウムを示し、
Aはカリウム、セシウム、及びルビジウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を示し、
Bはニッケル、マンガン、銅、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、錫、鉛、ランタン、プラセオジウム、ネオジム、及びユウロピウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を示し、
a〜fは、Mo12原子に対する各元素の原子比を示し、1.5≦a≦6、2≦b≦6、2≦c≦8、0.5≦d≦6、0.01≦e≦2、及び0≦f<2を満たし、
gは酸素以外の構成元素の原子価によって決まる酸素の原子数である。)
〔3〕
〔1〕又は〔2〕に記載の酸化物触媒の製造方法であって、
モリブデン、ビスマス、鉄、コバルト、及びセリウムを含む原料と、酸化剤及び還元剤と、を混合して原料スラリーを得る混合工程と、
前記原料スラリーを乾燥して乾燥体を得る乾燥工程と、
前記乾燥体を仮焼成して仮焼成体を得る仮焼成工程と、
前記仮焼成体を本焼成して酸化物触媒を得る本焼成工程と、
を含み、
前記仮焼成工程及び前記本焼成工程は、不活性ガス雰囲気で行い、
前記仮焼成工程において、前記仮焼成体の還元率を10%以上100%未満になるよう制御する、酸化物触媒の製造方法。
〔4〕
前記原料スラリーを20℃以上の温度で熟成させる熟成工程をさらに含む、〔3〕に記載の酸化物触媒の製造方法。
〔5〕
前記還元剤を、前記原料に対して、1〜40質量%添加する、〔3〕又は〔4〕に記載の酸化物触媒の製造方法。
〔6〕
〔1〕又は〔2〕に記載の酸化物触媒を用いて、プロピレン、及びイソブチレンからなる群より選ばれる少なくとも1種のオレフィン、及び/又は、イソブタノール、及びt−ブチルアルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種のアルコール、を酸化反応させる工程を含む、不飽和アルデヒドの製造方法。
本発明によれば、オレフィン及び/又はアルコールを原料とする不飽和アルデヒドの製造において、不飽和カルボン酸の生成が少なく、不飽和アルデヒドの選択率の高い酸化物触媒及びその製造方法、並びに酸化物触媒を用いた不飽和アルデヒドの製造方法を提供することができる。
実施例1、比較例1の触媒についての1階微分X線吸収スペクトルを示した図である。
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明はその要旨の範囲内で適宜変形して実施できる。
〔酸化物触媒〕
本実施形態に係る酸化物触媒は、モリブデン、ビスマス、鉄、コバルト及びセリウムを含有し、
前記モリブデンと複合化した前記鉄のK吸収端X線吸収微細構造スペクトルを1階微分して得られるパターンにおける第一変曲点が、7125.5〜7127.0eVのX線エネルギーに現れる。
(1)結晶構造
本実施形態に係る酸化物触媒は、モリブデン、ビスマス、鉄、コバルト及びセリウムを含有し、モリブデンと複合化した鉄のK吸収端X線吸収微細構造スペクトルを1階微分して得られるパターンにおける第1変曲点が7125.5〜7127.0eVのX線エネルギーに現れる。Feの価数と、鉄のK吸収端X線吸収微細構造スペクトルを1階微分して得られるパターンにおける第1変曲点との関係を表1に示す。
表1に示されるように、FeMo12のような完全なFe3+の状態では、第1変曲点が7127.8±0.1eVのX線エネルギーに現れる。一方、FeMoOのような完全なFe2+の状態では、第1変曲点が7125.3±0.1eVのX線エネルギーに現れる。ここで、本明細書中で言う「第一変曲点」とは、図1に示すような、X線吸収微細構造スペクトルを1階微分して得られるパターンにおいて、7100.0〜7150.0eVの範囲内で極大値をとる点を意味する。
上記のように第一変曲点が7125.5〜7127.0eVの範囲にあると酸化物触媒の不飽和アルデヒドの選択率が向上する。この理由は明らかでないが、第1変曲点がこの範囲にあると触媒中の鉄は3価でも2価でもない中間的な価数をとっていることが示唆される。したがって、触媒中の鉄は完全なFeMo12のようなFe3+の状態ではなく、一方、FeMoOのようなFe2+の状態でもなく、Fe3−δあるいは、Fe2+δの形で存在することを示唆している。X線エネルギーの値が前記範囲にあることにより、鉄原子が触媒のBi−Mo−O等の活性種やCo−Mo−Oに固溶し、鉄原子の酸化状態、Bi−Mo−O等の活性種やCo−Mo−Oへの鉄の配位状態が最適になる。これにより、反応中のレドックスでも不飽和カルボン酸や二酸化炭素を生成させる化合物であるFeMo12やFeの結晶が生成しないためと考えられる。
モリブデンと複合化した鉄のK吸収端X線吸収微細構造スペクトルを1階微分して得られるパターンにおける第1変曲点は7125.5〜7127.0eVのX線エネルギーに現れ、好ましくは、7125.5〜7126.5eVのX線エネルギーに現れ、より好ましくは7125.6〜7126.0eVのX線エネルギーに現れる。X線エネルギーが7125.3±0.1eVより小さいと鉄の価数は完全に2価となり、過還元状態となり、収率が低下する。一方、X線エネルギーが7127.0eVより高いと鉄は完全に3価で酸化状態になり、不飽和カルボン酸や二酸化炭素の生成が促進され、不飽和アルデヒドの選択率が低下する。
なお、上記表1のようにαF(酸化鉄(III))の第一変曲点は7126.1±0.1の範囲に表れることが知られているが、単純酸化物である酸化鉄(III)は、モリブデンと複合化していないため、不飽和アルデヒドの製造において有用な活性を示さない。また、金属鉄(0価)としてFe foilが存在し、2価の酸化鉄としてFeO(2価の酸化鉄)が存在する。どちらも7125.5〜7127.0eVの範囲から外れ、モリブデンと複合化していないため、不飽和アルデヒドの製造において有用な活性を示さない。
なお、本実施形態に係る酸化物触媒がモリブデンと複合化した鉄を有するかいなかは、XRDにより確認することができる。具体的には、CuKα線をX線源として得られるX線回折図における回折角(2θ)が、少なくとも12.99 °±0.3°、18.30 °±0.3°、23.02°±0.3°、28.20°±0.3°、33.65°±0.3°、46.15°±0.3°の範囲に回折ピークを有すれば、酸化物触媒がモリブデンと複合化した鉄を有すると判断する。
<Fe−K吸収端X線吸収微細構造(XAFS)スペクトルの測定方法>
鉄のK吸収端X線吸収微細構造の測定は、財団法人高輝度光科学研究センター 大型放射光施設 SPring−8のビームラインBL08B2において、下記条件により行うことが可能であるが、本発明の化合物のFe−K XAFSの測定は他の方法でも可能であり、測定方法を限定されない。
光学系及び検出器:Si(111)二結晶分光器を用いてX線エネルギーを分光し透過法によるXAFS測定を行う。検出器にはイオンチャンバーを用いる。入射X線(I0)側のイオンチャンバーにはN100%のガスを流通させ、サンプル透過後のX線(I1)側のイオンチャンバーにはAr25%及びN75%を含むガスを流通させる。イオンチャンバーの電極長は入射X線(I0)側のイオンチャンバーの電極長が140mmであり、サンプル透過後のX線(I1)側のイオンチャンバーの電極長が280mmである。また、それぞれのイオンチャンバーの電極における印加電圧は960Vである。X線(I0)及びX線(I1)のイオンチャンバーにおいて電流信号の電圧変換及び増幅を行うカレントアンプのゲイン設定は1E+8V/Aとして測定を行う。
エネルギー校正:3.4μm厚みのFe foilを用いて測定を行い、第一変曲点を求めてエネルギー値7110.08eVとする。本発明で使用するXAFS解析法では、鉄のK吸収端のX線吸収微細構造(XAFS:X−ray Absorption Fine Structure)の測定を行い、このうちのX線吸収近傍構造(XANES:X−ray Absorption Near Edge Structure)部分を解析することにより、金属の電子状態(価数や結合状態)の評価を行うことができる。上述のようなXAFSの測定方法は、「X線吸収微細構造−XAFSの測定と解析−、日本分光学会測定法シリーズ26、8−10頁」等に記載されている。
さらに具体的な測定方法を以下に示す。サンプルとなる酸化物触媒及び標準物質3−10mgをメノウ乳鉢を用いて充分に粉砕し、適量の窒化ホウ素を希釈剤として加え、さらに混合、粉砕して試料を得る。この試料をステンレス製の鋳型で厚さ1mm、直径10mmのペレット状にし、入射ビームがペレットのほぼ中心になるように試料を配置する。鉄原子が吸収する範囲のX線を照射し、試料前後のX線強度I0及びI1の値を計測して、X線のエネルギーを横軸に、吸光度μ=ln(I0/I1)を縦軸にプロットしたものをX線吸収スペクトルとする。このX線吸収スペクトルを「X線吸収分光法 −XAFSとその応用−、株式会社アイピーシー発行、59−60頁」に記載の方法により規格化し、さらに1階微分して得られるパターンを1階微分X線吸収スペクトルとする。
このX線吸収データから第一変曲点を読み取って吸収端のエネルギー値E0とする。XANESスペクトルの吸収端エネルギー位置は結合エネルギーに相当し、吸収原子の価数が大きくなるほど吸収端は高エネルギー側にシフトし、吸収原子の価数が小さくなるほど吸収端は低エネルギー側にシフトする。
(2)組成
本実施形態に係る酸化物触媒は、好ましくは、下記組成式(1)で表される組成を有する。このような組成を有することにより、オレフィン及び/又はアルコールを原料とする不飽和アルデヒドの製造において、不飽和カルボン酸の生成がより少なく、不飽和アルデヒドの選択率がより高い傾向にある。
Mo12BiFeCoCe (1)
(式(1)中、Moはモリブデン、Biはビスマス、Feは鉄、Coはコバルト、Ceはセリウムを示し、
Aは、カリウム、セシウム、及びルビジウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を示し、
Bは、ニッケル、マンガン、銅、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、錫、鉛、ランタン、プラセオジウム、ネオジム、及びユウロピウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を示し、
a〜fは、Mo12原子に対する各元素の原子比を示し、1.5≦a≦6、2≦b≦6、2≦c≦8、0.5≦d≦6、0.01≦e≦2、及び0≦f<2を満たし、
gは酸素以外の構成元素の原子価によって決まる酸素の原子数である。)
本実施形態に係る酸化物触媒は、Mo、Bi、Ce、Feを含む。これにより、Mo−Bi系の金属酸化物において各金属元素が複合化する。
また、BiとMoは、気相接触酸化、アンモ酸化反応等の活性種とされているBiMo12、BiMoO等の複合酸化物を形成しやすく、触媒活性は高いものの、一方でこれら複合酸化物は、融点が低く、耐熱性が低い。これに対して、CeとMoは、CeMo12等の複合酸化物を形成し難いが、これら複合酸化物は融点が高く、耐熱性が高い。そのため、本実施形態に係る酸化物触媒は、Mo、Bi、Ceを含み、これらを適切に複合化させることにより、耐熱性のあるCeMo12にBiが固溶して複合化された構造を有し、高い活性と耐熱性を併せ持つ複合酸化物が形成される。このような観点から、Mo12原子に対して、Biの原子比aは、1.5≦a≦6が好ましく、より好ましくは2≦a≦5であり、さらに好ましくは2≦a≦4である。原子比aが上記範囲内であることにより、不飽和アルデヒドの選択率がより高くなる傾向にある。また、Ceの原子比dは、0.5≦d≦6が好ましく、より好ましくは1≦d≦5、さらに好ましくは1≦d≦4である。原子比dが上記範囲内であることにより、耐熱性がより高くなる傾向にある。
本実施形態に係る酸化物触媒は、Feを含む。Feを含むことにより目的生成物の選択率を低下させることなく触媒活性を高めることができる。そのため、FeはMo、Biと同様に工業的に目的生成物を合成する上で必須元素である。しかしながら、上述のとおり、3価のFe含量が多くなるとFeが生成し、COやCO等の副生成物が増加し、目的生成物の選択率が低下する傾向にある。従来の酸化物触媒では、Feは3価の状態で存在しているため、Feは有効利用されていなかった。この点に関して、本発明者らは、従来よりも調製法と焼成法を工夫することで3価のFeを含む酸化物触媒中のFeの酸化状態を変えられることを見出し、所定の酸化状態であれば目的生成物(不飽和アルデヒド)の選択率をさらに高められることを見出した。具体的には、鉄のK吸収端X線吸収微細構造スペクトルを1階微分して得られるパターンにおける第1変曲点が7125.5〜7127.0eVのX線エネルギーに現れる酸化状態であれば、目的生成物(不飽和アルデヒド)の選択率をさらに高められることを見出した。
本実施形態に係る酸化物触媒のMo12原子に対するFeの原子比bは2≦b≦6であり、好ましくは2.5≦b≦5、さらに好ましくは、3≦b≦4.5である。このような範囲であることにより、目的生成物(不飽和アルデヒド)の選択率がより高くなる傾向にある。
本実施形態に係る酸化物触媒は、Coを含む。Coは、Mo、Bi、Feと同様に工業的に目的生成物を合成する上で必須元素であり、複合酸化物CoMoOを形成し、Bi−Mo−O等の活性種を高分散させるための担体としての役割と、気相から酸素を取り込み、Bi−Mo−O等に供給する役割を果たしている。不飽和アルデヒドを高収率で得るには、CoはMoと複合化させ、複合酸化物CoMoOを形成することが好ましい。Coの原子比cは2≦c≦8であることが好ましく、より好ましくは2.5≦c≦6、さらに好ましくは3≦c≦5である。原子比cが上記範囲であることにより、CoやCoO等の単独酸化物の形成をより少なくできる傾向にある。
本実施形態に係る酸化物触媒は、Aを含んでもよい。Aはカリウム、セシウム、及びルビジウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を示す。Aは、不飽和アルデヒド製造用触媒において、触媒で複合化されなかったMoO等の酸点を中和する役割を示すと考えられている。なお、カリウム、セシウム、及びルビジウムを酸化物触媒中に含有してもしなくても、鉄の価数には影響しない。Mo12原子に対するこれらの元素の原子比eは、触媒活性の観点から、0.01≦e≦2であることが好ましく、0.03≦e≦1であることがより好ましく、0.05≦e≦0.4であることがさらに好ましい。原子比eが上記範囲内であることにより、触媒が塩基性となりにくく、原料であるオレフィンやアルコールの酸化反応において触媒に吸着されやすくなり、触媒活性がより優れる傾向にある。
Bは、ニッケル、マンガン、銅、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、錫、鉛、ランタン、プラセオジウム、ネオジム、ユウロピウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を示す。このなかで、ニッケル、マンガン、銅、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、錫、及び鉛は酸化物中で一部のコバルトに置換し、触媒中のCoMoOの結晶構造を安定化させるものであると考えられている。また、ランタン、プラセオジウム、ネオジム、及びユウロピウムは、モリブデンと複合酸化物を形成し、活性を向上させる役割があると考えられている。Bの原子比fは、0≦f<2であることが好ましく、0.1≦f≦1.5であることがより好ましく、0.2≦f≦1であることがさらに好ましい。原子比fが上記範囲内であることにより、不飽和アルデヒドの収率がより向上する傾向にある。Bで示される元素は、触媒中のCoMoOの結晶構造を安定化させるもの、又は触媒の活性の向上させるものであり、鉄の価数には影響せず、含有量がゼロ(f=0)でもよい任意成分として位置づけられる。
(3)金属酸化物以外の成分
本実施形態に係る酸化物触媒は、上述の酸化物を担持するための担体を含有してもよい。担体を含むことにより、酸化物触媒を高分散化でき、担持された金属酸化物に高い耐摩耗性を与えることができる傾向にある。押し出し成型法により触媒を成型する場合には、担体成分を含むことが好ましい。
担体としては、特に限定されないが、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニアが挙げられる。このなかでもシリカは、他の担体に比べそれ自身不活性であり、目的生成物に対する選択性を減ずることなく、金属酸化物に対し良好なバインド作用を有する点で好ましい担体である。さらに、シリカ担体は担持された金属酸化物に、より高い耐摩耗性を与え易いという点でも好ましい。押し出し成型法により触媒を成型する場合、触媒全体に対する担体の含有量は5〜10質量%であることが好ましい。
流動床反応器で用いる触媒の場合も、前述と同じ観点から、シリカを担体として用いることが好ましい。触媒中の担体の含有量の上限は、触媒の全質量に対して80質量%以下が好ましく、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下である。担体の含有量の下限は、触媒の全質量に対して20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、40質量%以上がさらに好ましい。担体の含有量の上限が80質量%以下であることにより、Feの価数への影響を与えにくく、見掛比重を調整でき流動性がより向上する傾向にある。また、担体の含有量の下限が20質量%以上であることにより、流動床反応用のような強度を要する触媒の場合、耐破砕正や耐摩耗性等がより高くなる傾向にある。
なお、固定床反応器でメタクロレインを製造する際に、打錠成型した触媒にする場合には担体を含まなくてよい。
[3]〔酸化物触媒の製造方法〕
本実施形態に係る酸化物触媒の製造方法は、モリブデン、ビスマス、鉄、コバルト及びセリウムを含む酸化物触媒を形成する原料と、酸化剤及び/又は還元剤と、を混合して原料スラリーを得る混合工程と、
得られた原料スラリーを乾燥して乾燥体を得る乾燥工程と、
得られた乾燥体を仮焼成して仮焼成体を得る仮焼成工程と、
得られた仮焼成体を本焼成して酸化物触媒を得る本焼成工程と、
を含み、
前記仮焼成工程及び前記本焼成工程はする、不活性ガス雰囲気で行い、
前記仮焼成工程において、前記仮焼成体の還元率を10%以上100%未満になるよう制御する。
上述のように、本発明者らは、触媒中の鉄の価数が3価と2価の間の中間的な価数をとる結晶を得ることに着目し、その調製方法を総合的に検討した。しかしながら、単に、組成比を最適化しただけでは、本実施形態に係る酸化物触媒のような鉄が3価と2価の間の中間的な価数をとる結晶にはならない。
酸化物触媒中の酸化還元度を制御することによって、はじめて鉄が3価と2価の間で中間的な価数をとる結晶が得られることを見出した。また、驚くべきことに、本焼成後の酸化物触媒中の鉄を3価と2価の中間的な価数に制御し、なおかつ、酸化還元度を制御することによって、MoとBiとCeが複合酸化物Bi−Ce−Mo−Oを形成でき、上述のような酸化物触媒が得られることを見出した。
すなわち、(a)特定の構成元素と、(b)特定のスラリーの調製法、(c)特定の焼成方法の3条件を満たした新たな製造技術によって、鉄が3価と2価の間の中間的な価数をとる結晶を得ることができる
上記3条件を満たした新たな製造技術によって、酸化物触媒中の鉄の価数を、3価と2価の間の中間的な価数に制御することで、鉄のK吸収端X線吸収微細構造スペクトルを1階微分して得られるパターンにおける第1変曲点が7125.5〜7127.0eVのX線エネルギーに現れる。このように、鉄の価数を3価と2価の間の中間的な価数に制御すると、不飽和アルデヒドの収率がより向上する。
上述のように鉄の価数を3価と2価の間の中間的な価数に制御する制御し、なおかつ、MoとBiとCeがBi−Ce−Mo−Oを形成するよう酸化還元度を制御する酸化物触媒の設計コンセプトは従来には無い全く新しい知見である。本実施形態によって、従来の酸化物触媒には無い価数の鉄を多量に含む新規構造酸化物触媒の合成が可能になった。このような価数の鉄を多量に含む酸化物は、触媒として用いた場合、再酸化速度を上げ、より高活性となり、反応中の触媒のレドックスサイクルがより有利になるため、低酸素分圧下でも反応が進行する。このため、酸素付加化合物の副生を極力抑制することができる。
本実施形態に係る酸化物触媒の製造方法は、モリブデン、ビスマス、鉄、コバルト及びセリウムを含む酸化物触媒を形成する原料と、酸化剤及び/又は還元剤と、を混合して原料スラリーを得る混合工程と、得られた原料スラリーを乾燥して乾燥体を得る乾燥工程と、得られた乾燥体を仮焼成して仮焼成体を得る仮焼成工程と、得られた仮焼成体を本焼成して酸化物触媒を得る本焼成工程と、を含む。以下、各工程の好ましい態様について詳細に説明する。
(1)原料の調製〔混合工程〕
混合工程では、モリブデン、ビスマス、鉄、コバルト及びセリウムを含む酸化物触媒を形成する原料と、酸化剤及び/又は還元剤と、を混合して原料スラリーを得る。
なお必要に応じて、ニッケル、マンガン、銅、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、錫、鉛、ランタン、プラセオジウム、ネオジム、ユウロピウムの各元素源を原料スラリーに含めることもできる。これらは、水又は硝酸に可溶なアンモニウム塩、硝酸塩、塩酸塩、有機酸塩、酸化物、水酸化物、炭酸塩等として用いることができる。酸化物として用いる場合は、酸化物が水又は有機溶媒に分散された分散液が好ましく、より好ましくは酸化物が水に分散された分散液である。水に分散されている場合、酸化物の凝集を抑制し、高分散させるために高分子等の界面活性剤が含まれていてもよい。酸化物の粒子径は好ましくは1〜500nm、より好ましくは10〜80nmである。担体を含有する酸化物触媒を製造する場合は、原料スラリーにシリカ原料としてシリカゾルを添加することが好ましい。
鉄の価数を制御し、モリブデンとビスマスとセリウムを複合化させて、Bi−Ce−Mo−Oが形成されるように酸化還元度を制御するため、上記原料混合スラリーに酸化剤及び/又は還元剤を添加する。後述の仮焼成体の還元度をコントロールする観点から、還元剤は酸化剤よりも多いことが好ましい。鉄以外の元素まで還元され、他の金属まで過還元されないように還元剤と酸化剤を共に用いることが好ましい。
酸化剤としては、特に限定されないが、例えば、硝酸、過酸化水素、過塩素酸類が挙げられる。これら酸化剤は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
還元剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリカルボン酸、ポリアクリルアミド等の水溶性ポリマー;アミノカルボン酸類、マロン酸、コハク酸等の多価カルボン酸、ヒドラジン、エチレンジアミン、エチレンジアミン四酢酸等のアミン類;グリコール酸、りんご酸、しゅう酸、酒石酸、クエン酸等の有機酸が挙げられる。これら還元剤は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
なお、混合工程において各元素源として用いた原料に、最初から上記酸化剤及び還元剤が含まれてもよい。例えば、酸化物触媒を構成する原料を硝酸塩、塩酸塩、アンモニウム塩、有機酸塩、炭酸塩として用いることが挙げられる。
酸化剤の添加量は、金属酸化物に対して0.5〜50質量%の範囲で添加することが好ましく、10〜40質量%がより好ましく、20〜40質量%がさらに好ましい。添加量が上記範囲内であることにより、酸化及び還元度合の均一性が優れる傾向にある。
還元剤の添加量は、上記原料に対して1〜40質量%の範囲で添加することが好ましく、1〜30質量%がより好ましく、3〜20質量%がさらに好ましい。添加量が上記範囲内であることにより、酸化及び還元度をより制御しやすい傾向にある。また、添加量が40質量%以下であることにより、Feが完全に2価に過還元されたり、MoがMoOや金属Moに過還元されたり、Biは金属Biに過還元されたりすることを抑制できる傾向にある。
原料スラリーの調製方法は通常用いられる方法であれば、特に限定されないが、例えば、モリブデンのアンモニウム塩を温水に溶解させた溶液と、ビスマス、セリウム、鉄、コバルト、アルカリ金属を硝酸塩として水又は硝酸水溶液に溶解させた溶液とを混合することにより調製することができる。混合後のスラリー中の金属元素濃度は、好ましくは1〜50質量%であり、より好ましくは10〜40質量%であり、さらに好ましくは20〜40質量%である。金属元素濃度が上記範囲内であることにより、酸化及び還元度合の均一性が優れる傾向にある。
(熟成工程)
上記アンモニウム塩と硝酸塩とを混合すると沈殿を生じ、原料スラリーとなり易い。このような原料スラリー20℃以上の温度で熟成させる熟成工程をさらに含むことが好ましい。熟成工程を有することにより、より均一な原料スラリーとなる傾向にある。本明細書中、スラリーの「熟成」とはスラリーを懸濁させた状態で保持することを示す。懸濁させるためには、継続的及び/又は断続的にスラリーを攪拌するのが好ましく、この攪拌の工程で、固形分を粉砕し、触媒前駆体の生成を促し、より微細で均一なスラリーにすることができる。酸化剤と還元剤を混合した場合、スラリーの粘度が高くなり、均一なスラリーができず、後述する焼成工程で均一な還元ができにくくなることから、熟成を行うことが特に好ましい。
原料スラリーを熟成する場合、目的とする複合結晶及び/又はその前駆体を得るために、室温以上の温度であって、原料スラリーの媒体が液状を保つ温度に加熱することが望ましく、具体的には、20℃〜90℃が好ましく、より好ましくは30℃〜80℃、さらに好ましくは50℃〜70℃である。この温度範囲にあることにより、2価の鉄化合物と3価の鉄化合物が別々に生成せず、触媒中の鉄の価数が3価と2価の間の中間的な価数をとる複合結晶を得ることができる傾向にある。具体的には、熟成工程を行うとA−B−Fe(2価と3価の中間)−Mo−Oで表されるような複合酸化物が生じやすくなる傾向にある。一方で、熟成工程を行わない場合には、A−Fe(3価)−Mo−OとB−Fe(2価)−Mo−Oと表されるような2以上の複合酸化物が生じやすくなる傾向にある。このなかでも、不飽和アルデヒドの転化率の観点から、A−B−Fe(2価と3価の中間)−Mo−Oで表されるような複合酸化物が生じるほうが好ましい。
原料スラリーの攪拌には、攪拌羽根や攪拌子等、一般的な攪拌手段を使用することができ、原料スラリーの粘度等に応じて適宜選択可能であるが、攪拌速度は50〜3000rpmが好ましい。スラリーの温度や攪拌エネルギーに応じて、触媒前駆体の生成に必要な熟成時間は異なり、温度が高いほど、また攪拌エネルギーが大きいほど、適切な熟成時間は短くなる傾向にある。例えば、スラリー温度が20℃〜90℃で、スターラーを使って攪拌処理をする場合、熟成時間は生産性の観点から1〜24時間が好ましく、より好ましくは1〜20時間、さらに好ましくは1〜10時間である。
(2)乾燥〔乾燥工程〕
乾燥工程では、混合工程で得られた原料スラリーを乾燥して乾燥体(例えば、乾燥粒子)を得る。乾燥方法は、特に制限されず、一般に用いられている方法によって行うことができ、例えば、蒸発乾涸法、噴霧乾燥法、減圧乾燥法等の任意の方法で行なうことができる。噴霧乾燥法としては、通常工業的に実施される遠心方式、二流体ノズル方式及び高圧ノズル方式等を採用することができる。また、乾燥熱源としては、特に限定されないが、例えば、スチーム、電気ヒーター等によって加熱された空気を用いることが好ましい。この際、噴霧乾燥装置の乾燥機入口の温度は、好ましくは150〜400℃、より好ましくは180〜400℃、さらに好ましくは200〜350℃である。上記温度範囲であることにより、複合酸化物が形成されやすい傾向にある。
(3)焼成〔仮焼成工程〕
仮焼成工程では、乾燥工程で得られた乾燥体を仮焼成して仮焼成体を得る。仮焼成工程は、不活性ガス雰囲気で行なわれる。仮焼成の目的は、乾燥体中に残存している硝酸の除去と、アンモニウム塩である原料及び硝酸塩である原料に由来する硝酸アンモニウム及び含有酸化剤及び還元剤をおだやかに燃焼させ、鉄を3価から2価にならない程度に徐々に還元することにある。乾燥体に酸化剤及び還元剤の両方が含まれてい場合には、発熱を抑えるために酸化物触媒量は極力少量で行うことが好ましく、酸化及び還元のコントロールが精度よく実施できるようにすることが好ましい。なお、窒素等の不活性ガスではなく、窒素で希釈された酸素や空気でも酸化及び還元をコントロールすることは可能である。しかし、熱処理中に酸素が含まれていると還元剤が分解するときの発熱の制御や、焼成時間の正確なコントロールが難しくなるため、焼成は不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。不活性ガスとしては、特に限定されないが、例えば、ヘリウム、アルゴン、窒素が挙げられるが、経済的な面から窒素が好ましい。
上記仮焼成工程及び後述する本焼成工程は、特に限定されないが、例えば、回転炉、トンネル炉、マッフル炉等の焼成炉を用いて行うことができる。
仮焼成の温度範囲は、好ましくは120〜350℃、より好ましくは150℃〜350℃、さらに好ましくは200℃〜350℃である。また、仮焼成の時間は、0.1〜24時間が好ましく、より好ましくは1〜24時間、さらに好ましくは3〜10時間である。さらに、150℃以下の低温の場合、長時間の仮焼成を行うことが好ましく、330℃以上の高温の場合、2時間以下の短時間の仮焼成を行うことが好ましい。このような温度、時間とすることにより、仮焼成の段階で3価の鉄及びモリブデンからなる酸化物(FeMo12)の結晶が生成しにくくなる。その結果、後述の本焼成において3価と2価の間の中間的な価数をとる酸化物触媒が生成し易くなる傾向にある。よって仮焼成温度及び時間の上限は、3価の鉄及びモリブデンからなる酸化物(FeMo12)の結晶の生成が起こらない程度に設定するのが好ましい。
仮焼成の際、急激な燃焼反応を抑える観点から、昇温速度は遅い方が好ましい。本実施形態の製造方法において、得られる酸化剤は、多成分系である。それ故、原料を、例えば金属硝酸塩とした場合、各金属硝酸塩の分解温度が異なり、昇温中に硝酸が動くため、焼成後の酸化物組成が不均質になりやすい。また、還元剤が多い場合、急激な発熱が起こる場合がある。酸化還元度は熱によっても変化するため、酸化物触媒の製造において、鉄を3価から3価と2価の間の中間的な価数まで還元するためには、急激な発熱がないようにゆっくりと昇温し、硝酸や有機物等の燃焼や分解成分を除去することが好ましい。上記観点より、昇温速度は、好ましくは0.01℃/min〜100℃/minであり、より好ましくは0.01℃/min〜75℃/minであり、さらに好ましくは0.01℃/min〜50℃/minである。なお、「硝酸が動く」とは、硝酸塩を熱処理していくと分解し、硝酸が脱離し、仮焼成体を移動することをいう。この硝酸の移動によって触媒に含まれる元素が溶けて、元素も触媒粒子中を移動しうる。昇温速度が上記範囲であることにより、硝酸及び元素の移動が抑制され、焼成後の組成が均質になる傾向にある。
式で定義される。触媒を硫酸で酸処理することにより、触媒中の還元元素を殆ど酸化することなく還元状態で溶解することができる。これを過マンガン酸カリウムで滴定し、その滴定量より触媒の還元率を求める。
還元率(%)=x/n×100
MnO +5e+8H → Mn2++4H
Mn(n−x)→ Men+ + Xe
(式中、xは電子の数を示し、nは金属の酸化数を示し、Meは金属元素を示し、Xは電子の数を示す。)
還元率測定の一例を次に示す。ビーカーに酸化物触媒数百mgを秤量し、50%硫酸を20ml加え、180ml精製水を加え、60分間撹拌する。その後電位差自動滴定装置AT−510(京都電子工業)を用いて過マンガン酸カリウムにより滴定をする。触媒の酸化に消費された過マンガン酸カリウム量から還元率を算出する。
還元率が10%以上であることにより本焼成後の触媒中の鉄は3価になりにくい傾向にある。また過還元を防ぐため還元率がは100%未満が好ましい。還元率は、より好ましくは20%以上80%未満であり、さらに好ましくは30%以上60%未満である。還元率が上記範囲内であることにより、本焼成後に鉄が3価と2価の中間的な価数をとる結晶が生成しやすくなる傾向にある。
〔本焼成工程〕
本焼成工程では、仮焼成工程で得られた仮焼成体を本焼成して酸化物触媒を得る。本焼成工程の目的は、所望の結晶構造を形成し易くすることにある。本発明者らの知見によると、結晶構造は焼成温度と焼成時間との積の影響を受けるため、焼成温度と焼成時間とを適切に設定することが好ましい。本焼成の温度は、結晶を成長させる観点で仮焼成の温度より高くすることが好ましい。このような本焼成の焼成温度は、鉄が3価と2価の中間的な価数をとる結晶の生成し易さの観点で、400〜700℃が好ましく、より好ましくは400℃〜650℃、さらに好ましくは450℃〜600℃である。このような温度で焼成を行う場合、焼成温度と焼成時間との積を適切にすることで、鉄が3価と2価の中間的な価数をとる結晶生成を促すことができる。この観点から、本焼成の時間は、好ましくは0.1〜24時間であり、より好ましくは1〜24時間であり、さらに好ましくは3〜10時間である。結晶構造の生成のために焼成温度及び焼成時間を適切にする観点から、400℃以下の低温の場合、例えば24〜72時間程度の長時間の本焼成を行うことが好ましく、600℃以上の高温の場合、得られる酸化物の表面積が小さくなりすぎて触媒活性が下がってしまうのを防ぐ観点から、1時間以下の短時間の本焼成を行うことが好ましい。
以上の工程を全て行うことで、鉄が3価と2価の中間的な価数をとる結晶が形成され易くなる。
本焼成工程において、鉄が3価でも2価でもない中間的な価数をとる結晶が生成したか否かは、本焼成の後に得られる酸化物触媒のX線吸収微細構造解析を行うことによって確認できる。本焼成の後で酸化物触媒のX線吸収微細構造解析を行うと、鉄が3価と2価の中間的な価数をとる結晶が生成していれば、上述したとおり、鉄のK吸収端X線吸収微細構造スペクトルを1階微分して得られるパターンにおける第1変曲点が7125.5〜7127.0eVのX線エネルギーに観察される。3価の鉄及びモリブデンからなる酸化物(FeMo12)の結晶が生成する場合は7127.8±0.1eVにピークが現れ、2価の鉄及びモリブデンからなる酸化物(FeMoO)の結晶が生成する場合は7125.3±0.1eVにピークが現れるが、鉄が3価でも2価でもない中間的な価数をとる結晶の場合は7125.5〜7127.0eVにピークが現れる。このX線エネルギーを指標として、鉄が3価と2価の中間的な価数をとる結晶の生成を確認することができる。本実施形態においては、鉄のK吸収端X線吸収微細構造スペクトルを1階微分して得られるパターンにおける第1変曲点が7125.5〜7127.0eVのX線エネルギーに示していれば、鉄が3価と2価の中間的な価数をとる結晶が生成したと判断する。
〔不飽和アルデヒドの製造方法〕
本実施形態に係る不飽和アルデヒドの製造方法は、上記酸化物触媒を用いて、プロピレン、及びイソブチレンからなる群より選ばれる少なくとも1種のオレフィン、及び/又は、イソブタノール、及びt−ブチルアルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種のアルコール、を酸化反応させる工程を含む。これにより製造される不飽和アルデヒドとしては、特に限定されないが、例えば、メタクロレイン、アクロレインが挙げられる。以下、その具体例について説明するが、本実施形態の製造方法は、以下の具体例に限定されるものではない。
(1)メタクロレイン又はアクロレインの製造方法
上記メタクロレイン又はアクロレイは、例えば、本実施形態に係る酸化物触媒を用いて、プロピレン、イソブチレン、イソブタノール、及び/又はt−ブチルアルコールの気相接触酸化反応を行うことにより得ることができる。気相接触酸化反応は、固定床反応器内の触媒層に、1〜10容量%の、プロピレン、イソブチレン、イソブタノール、t−ブチルアルコール単独か、若しくはこれらの混合ガスに対して分子状酸素濃度が1〜20容量%になるように、分子状酸素含有ガスと希釈ガスを添加した混合ガスからなる原料ガスを導入する。プロピレン、イソブチレン、イソブタノール、t−ブチルアルコール、若しくはこれらの混合ガスの濃度は、通常1〜10容量%が好ましく、より好ましくは6〜10容量%、さらに好ましくは7〜9容量%である。反応温度は300〜480℃が好ましく、より好ましくは350℃〜450℃、さらに好ましくは400℃〜450℃である。圧力は、常圧〜5気圧であり、空間速度400〜4000/hr[Normal temperature pressure (NTP)条件下]で原料ガスを導入することで反応を行うことができる。酸素と、プロピレン、イソブチレン、イソブタノール、t−ブチルアルコール単独か、若しくはこれらの混合ガスのモル比は、不飽和アルデヒドの収率を向上させるために反応器の出口酸素濃度を制御する観点から、通常1.0〜2.0であり、好ましくは1.1〜1.8、より好ましくは1.2〜1.8である。
分子状酸素含有ガスとしては、特に限定されないが、例えば、純酸素ガス、及びNO、空気等の酸素を含むガスが挙げられる。このなかでも、工業的観点から空気が好ましい。希釈ガスとしては、特に限定されないが、例えば、窒素、二酸化炭素、水蒸気及びこれらの混合ガスが挙げられる。混合ガスにおける、分子状酸素含有ガスと希釈ガスの混合比は、体積比で下記不等式の条件を満足することが好ましい。さらに、原料ガスにおける分子状酸素の濃度は1〜20容量%であることが好ましい。
0.01<分子状酸素/(分子状酸素含有ガス+希釈ガス)<0.3
原料ガス中の水蒸気は、酸化物触媒へのコーキングを防ぐ観点からは含まれていてもよい。一方で、アクリル酸、メタクリル酸、酢酸等のカルボン酸の副生を抑制するために、できるだけ希釈ガス中の水蒸気濃度を下げることが好ましい。このような観点から原料ガス中の水蒸気は、通常0〜30容量%の範囲で使用されることが好ましく、2〜20容量%の範囲で使用されることがより好ましく、3〜10容量%の範囲で使用されることがさらに好ましい。
以下に実施例を示して、本実施形態をより詳細に説明するが、本実施形態は以下に記載の実施例によって限定されるものではない。
なお、酸化物触媒における酸素原子の原子比は、他の元素の原子価条件により決定されるものであり、実施例及び比較例においては、触媒の組成を表す式中、酸素原子の原子比は省略する。また、酸化物触媒における各元素の組成比は、仕込みの組成比から算出した。
〔Fe−K吸収端X線吸収微細構造(XAFS)スペクトルの測定方法〕
鉄のK吸収端X線吸収微細構造の測定は、財団法人高輝度光科学研究センター 大型放射光施設 SPring−8のビームラインBL08B2において、下記条件により行った。
光学系及び検出器:Si(111)二結晶分光器を用いてX線エネルギーを分光し透過法によるXAFS測定を行った。検出器にはイオンチャンバーを用いた。イオンチャンバーには入射X線(I0)にN100%、サンプル透過後のイオンチャンバーにAr25%+N75%のガスを流通させた。イオンチャンバーの電極長はI0が140mm、I1が280mmであり、印加電圧は960Vとした。I0及びI1について電流信号の電圧変換及び増幅を行うカレントアンプのゲイン設定は1E+8V/Aで測定を行った。
エネルギー校正:3.4μm厚みのFeフォイルを用いて測定を行い、第一変曲点を求めてエネルギー値7110.08eVとした。本発明で使用するXAFS解析法では、鉄のK吸収端のX線吸収微細構造(XAFS:X−ray Absorption Fine Structure)の測定を行い、このうちのX線吸収近傍構造(XANES:X−ray Absorption Near Edge Structure)部分を解析することにより、金属の電子状態(価数や結合状態)の評価を行った。
さらに具体的な測定方法を以下に示す。酸化物触媒及び標準物質3〜10mgをメノウ乳鉢を用いて充分に粉砕し、適量の窒化ホウ素を希釈剤として加え、さらに混合、粉砕して試料を得た。この試料をステンレス製の鋳型で厚さ1mm、直径10mmのペレット状にし、入射ビームがペレットのほぼ中心になるように試料を配置した。鉄原子が吸収する範囲のX線を照射し、試料前後のX線強度I0及びI1の値を計測して、X線のエネルギーを横軸に、吸光度μ=ln(I0/I1)を縦軸にプロットしたものをX線吸収スペクトルとした。このX線吸収スペクトルを「X線吸収分光法 −XAFSとその応用−、株式会社アイピーシー発行、59−60頁」に記載の方法により規格化し、さらに1階微分して得られるパターンを1階微分X線吸収スペクトルとした。この1階微分X線吸収スペクトルデータから第一変曲点を読み取った。
〔還元率〕
仮焼成工程の後、酸化物触媒を硫酸で酸処理し、触媒中の還元元素を溶解した。これを過マンガン酸カリウムで滴定し、その滴定量より触媒の還元率を求めた。還元率は次の式で表される。
還元率(%)=x/n×100
MnO +5e+8H → Mn2++4H
Mn(n−x) → Men++Xe
実施例及び比較例において、反応成績を示すために用いた転化率、選択率、及び収率はそれぞれ次式で定義される。
転化率=(反応した原料のモル数/供給した原料のモル数)×100
選択率=(生成した化合物のモル数/反応した原料のモル数)×100
収率=(生成した化合物のモル数/供給した原料のモル数)×100
[実施例1]
イオン交換水86.5gと、酸化剤として濃度30質量%の過酸化水素水128.0gとを含む混合液に、三酸化モリブデン53.6gを入れ、約70℃で攪拌混合し、溶解させて溶液(A液)を得た。また、10質量%の平均粒子径51nmの酸化ビスマス水分散液210.4g、10質量%の平均粒子径20nmの酸化セリウム水分散液101.5g、硝酸コバルト29.2g、15質量%の平均粒子径39nmの酸化鉄水分散液52.7g、及び10質量%の水酸化セシウム液3.72gを混合した液に、還元剤として酒石酸を4.36g添加して溶液(B液)を得た。
実施例1の酸化物触媒を得た。得られた酸化物触媒の組成を表2に示し、モリブデンと複合化した鉄のK吸収端X線吸収微細構造スペクトルを1階微分して得られるパターンにおける第一変曲点のX線エネルギーの値(以下、単に「第一変曲点のX線エネルギーの値」ともいう。)を表3に示す。
触媒の反応評価として、実施例1の酸化物触媒4.2gを直径14mmのジャケット付SUS製反応管に充填し、反応温度430℃でイソブチレン8容量%、酸素12.8容量%、水蒸気3.0容量%及び窒素76.2容量%からなる混合ガスを120mL/min(NTP)の流量で通気し、メタクロレイン合成反応を行った。反応評価結果を表4に示す。また、実施例1の酸化物触媒についての1階微分X線吸収スペクトルを図1に示す。
[実施例2]
イオン交換水89.8gと、酸化剤として濃度30質量%の過酸化水素水132.9gとの混合液に、三酸化モリブデン55.7gを入れ、約70℃で攪拌混合し、溶解させて溶液(A液)を得た。また、10質量%の平均粒子径51nmの酸化ビスマス水分散液173.3g、10質量%の平均粒子径20nmの酸化セリウム水分散液83.2g、硝酸コバルト42.6g、15質量%の平均粒子径39nmの酸化鉄水分散液51.3g、10質量%の水酸化セシウム液3.87g、及び10質量%の水酸化カリウム液1.81gを混合した液に、還元剤として酒石酸を4.57g添加して溶液(B液)を得た。
実施例2の酸化物触媒を得た。得られた酸化物触媒の組成を表2に示し、第一変曲点のX線エネルギーの値を表3に示す。
触媒の反応評価として、実施例2の酸化物触媒4.5gを反応管に充填し、実施例1と同じ条件で、メタクロレイン合成反応を行った。反応評価結果を表4に示す。
[実施例3]
イオン交換水78.7gと、酸化剤として濃度30質量%の過酸化水素水116.5gとを含む混合液に、三酸化モリブデン48.8gを入れ、約70℃で攪拌混合し、溶解させて溶液(A液)を得た。また、10質量%の平均粒子径51nmの酸化ビスマス水分散液297.2g、10質量%の平均粒子径20nmの酸化セリウム水分散液73.0g、硝酸コバルト22.4g、15質量%の平均粒子径39nmの酸化鉄水分散液57.0g、及び10質量%の水酸化セシウム液3.39gを混合した液に、還元剤として酒石酸を8.72g添加して溶液(B液)を得た。
A液及びB液の両液を混合して得られた混合液を65℃、撹拌速度2500rpmで、4h熟成し、原料スラリーを得た。この原料スラリーを用いて、実施例1と同様の操作を行い、仮焼成体を得た。この仮焼成体の還元率を表2に示す。得られた仮焼成体を窒素ガス雰囲気中、510℃で4時間本焼成し、実施例3の酸化物触媒を得た。得られた酸化物触媒の組成を表2に示し、第一変曲点のX線エネルギーの値を表3に示す。
触媒の反応評価として、実施例3の酸化物触媒5.6gを反応管に充填し、実施例1と同じ条件で、メタクロレイン合成反応を行った。反応評価結果を表4に示す。
[実施例4]
イオン交換水87.3gと、酸化剤として濃度30質量%の過酸化水素水129.2gとの混合液に、三酸化モリブデン54.1gを入れ、約70℃で攪拌混合し、溶解させて溶液(A液)を得た。また、10質量%の平均粒子径51nmの酸化ビスマス水分散液205.0g、10質量%の平均粒子径20nmの酸化セリウム水分散液97.1g、硝酸コバルト25.8g、15質量%の平均粒子径39nmの酸化鉄水分散液61.5g、及び10質量%の水酸化セシウム液3.76gを混合した液に、還元剤として酒石酸を4.38g添加して溶液(B液)を得た。
実施例4の酸化物触媒を得た。得られた酸化物触媒の組成を表2に示し、第一変曲点のX線エネルギーの値を表3に示す。
触媒の反応評価として、実施例4の酸化物触媒4.5gを反応管に充填し、実施例1と同じ条件で、メタクロレイン合成反応を行った。反応評価結果を表4に示す。
[実施例5]
イオン交換水83.0gと、酸化剤として濃度30質量%の過酸化水素水122.8gとの混合液に、三酸化モリブデン51.5gを入れ、約70℃で攪拌混合し、溶解させて溶液(A液)を得た。また、10質量%の平均粒子径51nmの酸化ビスマス水分散液236.7g、10質量%の平均粒子径20nmの酸化セリウム水分散液112.8g、硝酸コバルト26.3g、15質量%の平均粒子径39nmの酸化鉄水分散液47.4g、及び10質量%の水酸化セシウム液3.57gを混合した液に、還元剤として酒石酸を4.26g添加して溶液(B液)を得た。
A液及びB液の両液を混合して得られた混合液を65℃、撹拌速度2000rpmで4h熟成し、原料スラリーを得た。この原料スラリーを用いて、実施例1と同様の操作を行い、仮焼成体を得た。この仮焼成体の還元率を表2に示す。得られた仮焼成体を窒素ガス雰囲気中で510℃で4時間本焼成し、実施例5の酸化物触媒を得た。得られた酸化物触媒の組成を表2に示し、第一変曲点のX線エネルギーの値を表3に示す。
触媒の反応評価として、実施例5の酸化物触媒4.8gを反応管に充填し、実施例1と同じ条件で、メタクロレイン合成反応を行った。反応評価結果を表4に示す。
[実施例6]
約90℃の温水202.7gにヘプタモリブデン酸アンモニウム67.6gを溶解させて溶液(A液)を得た。また、硝酸ビスマス43.2g、硝酸セリウム22.0g、硝酸鉄42.3g、硝酸ルビジウム1.40g、硝酸ニッケル9.3g、硝酸マグネシウム4.0g、及び硝酸コバルト18.6gを18質量%の硝酸水溶液20.5gに溶解させ、約90℃の温水202.0gを混合した液に還元剤としてアスコルビン酸を13.1g添加して溶液(B液)を得た。
実施例6の酸化物触媒を得た。得られた酸化物触媒の組成を表2に示し、第一変曲点のX線エネルギーの値を表3に示す。
触媒の反応評価として、実施例6の酸化物触媒4.7gを反応管に充填し、実施例1と同じ条件で、メタクロレイン合成反応を行った。反応評価結果を表4に示す。
[比較例1]
還元剤である酒石酸を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、比較例1の酸化物触媒を得た。得られた酸化物触媒の組成を表2に示し、仮焼成体の還元率及び第一変曲点のX線エネルギーの値を表3に示す。
触媒の反応評価として、比較例1の酸化物触媒5.3gを反応管に充填し、実施例1と同じ条件で、メタクロレイン合成反応を行った。反応評価結果を表4に示す。また、比較例1の酸化物触媒についての1階微分X線吸収スペクトルを図1に示す。
[比較例2]
酸化剤である過酸化水素水を添加しなかったこと以外は実施例1と同様の操作を行い、比較例2の酸化物触媒を得た。得られた酸化物触媒の組成を表2に示し、仮焼成体の還元率及び第一変曲点のX線エネルギーの値を表3に示す。
触媒の反応評価として、比較例2の酸化物触媒5.8gを反応管に充填し、実施例1と同じ条件で、メタクロレイン合成反応を行った。反応評価結果を表4に示す。
[比較例3]
仮焼成と本焼成を空気雰囲気下で実施したこと以外は実施例1と同様の操作を行い、比較例3の酸化物触媒を得た。得られた酸化物触媒の組成を表2に示し、仮焼成体の還元率及び第一変曲点のX線エネルギーの値を表3に示す。
触媒の反応評価として、比較例3の酸化物触媒5.5gを反応管に充填し、実施例1と同じ条件で、メタクロレイン合成反応を行った。反応評価結果を表4に示す。
[比較例4]
約90℃の温水218.0gに、ヘプタモリブデン酸アンモニウム72.7g、酸化アンチモン3.9g、パラタングステンアンモニウム3.4g、硝酸セシウム3.30g、及び酸化ビスマス10.0gを溶解させて溶液(A液)を得た。また、硝酸鉛4.6g、硝酸鉄30.3g、硝酸ニッケル11.0g、リン酸0.67g、及び硝酸コバルト66.1gを18質量%の硝酸水溶液38.4gに溶解させ、約90℃の温水126.2gを添加して溶液(B液)を得た。
比較例4の酸化物触媒を得た。得られた酸化物触媒の組成を表2に示し、第一変曲点のX線エネルギーの値を表3に示す。
触媒の反応評価として、比較例4の酸化物触媒4.9gを反応管に充填し、実施例1と同じ条件で、メタクロレイン合成反応を行った。反応評価結果を表4に示す。
[実施例7]
(アクロレインの製造例)
イオン交換水86.7gと、酸化剤として濃度30質量%の過酸化水素水128.3gとの混合液に、三酸化モリブデン53.7gを入れ、約70℃で攪拌混合し、溶解させて溶液(A液)を得た。また、10質量%の平均粒子径51nmの酸化ビスマス水分散液210.8g、10質量%の平均粒子径20nmの酸化セリウム水分散液101.7g、硝酸コバルト29.3g、15質量%の平均粒子径39nmの酸化鉄水分散液52.8g、及び10質量%の水酸化セシウム液1.40gを混合した液に、還元剤として酒石酸を4.36g添加して溶液(B液)を得た。
A液及びB液の両液を混合して得られた混合液を65℃で撹拌速度2000rpmで4h熟成し、原料スラリーを得た。この原料スラリーを用いて、実施例1と同様の操作を行い、仮焼成体を得た。この仮焼成体の還元率を表2に示す。得られた仮焼成体を窒素ガス雰囲気中で520℃で4時間本焼成し、実施例7の酸化物触媒を得た。得られた酸化物触媒の組成を表2に示し、第一変曲点のX線エネルギーの値を表3に示す。
触媒の反応評価として、実施例7の酸化物触媒4.8gを直径14mmのジャケット付SUS製反応管に充填し、反応温度430℃でプロピレン8容量%、酸素12.8容量%、水蒸気3.0容量%、及び窒素76.2容量%からなる混合ガスを120mL/min(NTP)の流量で通気し、アクロレイン合成反応を行った。反応評価結果を表5に示す。
[比較例5]
仮焼成と本焼成を空気雰囲気下で実施したこと以外は実施例7と同様の操作を行い、比較例5の酸化物触媒を得た。得られた酸化物触媒の組成を表2に示し、仮焼成体の還元率及び第一変曲点のX線エネルギーの値を表3に示す。
触媒の反応評価として、比較例5の酸化物触媒4.9gを反応管に充填し、実施例7と同じ条件で、アクロレイン合成反応を行った。反応評価結果を表5に示す。
本発明は、オレフィン又はアルコールの気相接触酸化による不飽和アルデヒドの製造に用いる酸化物触媒として産業上の利用可能性を有する。

Claims (6)

  1. モリブデン、ビスマス、鉄、コバルト、及びセリウムを含有し、
    前記モリブデンと複合化した前記鉄のK吸収端X線吸収微細構造スペクトルを1階微分して得られるパターンにおける第一変曲点が、7125.5〜7127.0eVのX線エネルギーに現れる、オレフィン及び/又はアルコールを原料とする不飽和アルデヒドの製造用酸化物触媒。
  2. 下記組成式(1)で表される組成を有する、請求項1に記載の酸化物触媒。
    Mo12BiaFebCocCedefg (1)
    (式(1)中、Moはモリブデン、Biはビスマス、Feは鉄、Coはコバルト、Ceはセリウムを示し、
    Aはカリウム、セシウム、及びルビジウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を示し、
    Bはニッケル、マンガン、銅、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、錫、鉛、ランタン、プラセオジウム、ネオジム、及びユウロピウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を示し、
    a〜fは、Mo12原子に対する各元素の原子比を示し、1.5≦a≦6、2≦b≦6、2≦c≦8、0.5≦d≦6、0.01≦e≦2、及び0≦f<2を満たし、
    gは酸素以外の構成元素の原子価によって決まる酸素の原子数である。)
  3. 請求項1又は2に記載の酸化物触媒の製造方法であって、
    モリブデン、ビスマス、鉄、コバルト、及びセリウムを含む原料と、酸化剤及び還元剤と、を混合して原料スラリーを得る混合工程と、
    前記原料スラリーを乾燥して乾燥体を得る乾燥工程と、
    前記乾燥体を仮焼成して仮焼成体を得る仮焼成工程と、
    前記仮焼成体を本焼成して酸化物触媒を得る本焼成工程と、
    を含み、
    前記仮焼成工程及び前記本焼成工程は、不活性ガス雰囲気で行い、
    前記仮焼成工程において、前記仮焼成体の還元率を10%以上100%未満になるよう制御する、酸化物触媒の製造方法。
  4. 前記原料スラリーを20℃以上の温度で熟成させる熟成工程をさらに含む、請求項3に記載の酸化物触媒の製造方法。
  5. 前記還元剤を、前記原料に対して、1〜40質量%添加する、請求項3又は4に記載の酸化物触媒の製造方法。
  6. 請求項1又は2に記載の酸化物触媒を用いて、プロピレン、及びイソブチレンからなる群より選ばれる少なくとも1種のオレフィン、及び/又は、イソブタノール、及びt−ブチルアルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種のアルコール、を酸化反応させる工程を含む、不飽和アルデヒドの製造方法。
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