本明細書で提供されるのは、PSGL−1に特異的に結合する抗体である。さらに提供されるのは、かかる抗体をコードする単離された核酸である。さらに提供されるのは、かかる抗体またはその抗原結合断片をコードする核酸を含む、ベクターおよび宿主細胞である。さらに提供されるのは、かかる抗体、細胞、例えばCHO細胞を作製する方法、かかる細胞により産生された抗体および産生された抗体の精製である。本明細書でまた提供されるのは、本明細書に記載の障害または疾患(例えば炎症性状態)を処置および/または予防する方法であって、PSGL−1に免疫特異的に結合する、本明細書に記載の抗体または抗体由来抗原結合断片を投与することを含む、前記方法である。特定の態様において、抗体は、以下の例1〜4に記載されているIgG4モノクローナル抗体15A7Hである。
6.1 抗体
本明細書で提供されるのは、ヒトP−セレクチン糖タンパク質リガンド−1(PSGL−1)に免疫特異的に結合するモノクローナル抗体である。特定の態様において本明細書で提供されるのは、ヒトPSGL−1に免疫特異的に結合するモノクローナル抗体であって、(i)配列番号3のアミノ酸配列を含む可変軽(「VL」)鎖領域;(ii)配列番号4のアミノ酸配列を含む可変重(「VH」)鎖領域を含む重鎖;および(iii)EUインデックスの番号付けによる重鎖のアミノ酸228においてセリンからプロリンへの置換を含むヒトIgG4定常領域、を含む、前記モノクローナル抗体である。ヒト定常領域の非限定的な例は当分野で記載されており、例えばKabat et al. (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242を参照のこと。好ましくは、抗体はPSGL−1に結合し、(PSGL−1を発現する他の細胞と比較して)活性化T細胞のアポトーシスを選択的に誘導する。特定の態様において、抗体のPSGL−1への結合は、P−セレクチンのPSGL−1との相互作用を妨害せず、この作用はPSGL−1に付随する機能であって、活性化T細胞および好中球の標的組織への効率的な局在化のための要件である。
特定の態様において、PSGL−1に免疫特異的に結合する抗体は、クラス4の完全長免疫グロブリンG(IgG4)であり、好ましくは配列番号2の重鎖配列を含み、さらに好ましくは配列番号2の重鎖配列および配列番号1の軽鎖配列を含む(後者は、モノクローナル抗体15A7Hである)。
本明細書でさらに提供されるのは、抗体の抗原結合断片であって、配列番号3と配列番号4の可変領域配列および、EUインデックスの番号付けによるヒト重鎖のアミノ酸228においてセリンからプロリンへの置換を含んだヒトIgG4ヒンジ領域を含む、ヒト重鎖定常領域の少なくとも一部を含むものである。特定の態様において、本明細書の抗体由来の抗原結合断片は、F(ab’)2断片である。
本明細書に記載の抗体または抗体由来抗原結合断片は、好ましくは単離されており、最も好ましくは精製されている。
本明細書において、特に別の指定がない限り、用語「免疫特異的に結合する」、「免疫特異的に認識する」、「特異的に結合する」、および「特異的に認識する」は、抗体および抗体由来抗原結合断片の文脈において類似の用語であり、本明細書において互換的に使用され、当業者によって理解されるように、抗体または抗体由来抗原結合断片の、その抗原結合部位を介したそのエピトープへの結合を意味する。特定の一態様において、抗原に特異的に結合する抗体または抗体由来抗原結合断片はまた、他のペプチドまたはポリペプチドにも結合することができるが、ただし一般的に、例えば免疫測定法、Biacore(登録商標)、KinExA 3000機器(Sapidyne Instruments, Boise, ID)、または当分野に知られている他のアッセイによって決定されるように、より低い親和性においてである。特定の態様において、抗原に免疫特異的に結合する抗体または抗体由来抗原結合断片は、抗体に対して、該抗体または抗体由来抗原結合断片が他の抗原に結合する場合のKaよりも少なくとも2logs、2.5logs、3logs、4logsまたはそれ以上のKaで結合する。別の特定の態様において、抗原に免疫特異的に結合する抗体または抗体由来抗原結合断片は、他のタンパク質との結合によって交差反応を起こさない。特定の態様において、本明細書に記載の抗体または抗体由来抗原結合断片は、PSGL−1の天然のアイソフォームまたは天然の変異体(これは、好ましくはヒトである動物から単離可能な、動物におけるPSGL−1の天然のアイソフォームまたは変異体である)に特異的に結合する。特定の態様において、本明細書に記載の抗体または抗体由来抗原結合断片は、ヒトPSGL−1またはその断片に免疫特異的に結合する。特定の態様において、本明細書に記載の抗体または抗体由来抗原結合断片は、ヒトPSGL−1および/またはカニクイザルPSGL−1またはその断片に、特異的に結合する。
配列番号11のアミノ酸配列は、全長ヒトPSGL−1、GenBank(登録商標)受託番号AAA74577.1、GI: 902797を表す。特定の態様において、本明細書に記載の抗体は、例えばELISAまたはその他の当分野に知られている抗原結合アッセイにより、または本明細書に記載のようにして決定されるように、PSGL−1に免疫特異的に結合する。
特定の側面において、本明細書で提供されるのは、ヒトおよび/またはカニクイザルのPSGL−1に特異的に結合する抗体であって、これは、それぞれが重鎖および軽鎖を含む2つの同一のジスルフィド結合二量体の四量体であるクラス4(IgG4)の免疫グロブリンG(ガンマ−重領域を有する)である。抗体は、好ましくは配列番号2の重鎖を含む。より好ましくは、抗体は、配列番号2の重鎖および配列番号1の軽鎖を含む。軽鎖については、特定の態様において、本明細書に記載の抗体の軽鎖は、カッパ軽鎖である。
特定の態様において、本明細書に記載の抗体は、配列番号2のアミノ酸配列を含むかこれからなる重鎖を含む。特定の態様において、本明細書に記載の抗体は、配列番号1のアミノ酸配列を含むかこれからなる軽鎖を含み、配列番号2のアミノ酸配列を含むかこれからなる重鎖を含む。特定の態様において、本明細書に記載の抗体は、配列番号1のアミノ酸配列を含むかこれからなる軽鎖を含む。特定の態様において、本明細書に記載の抗体は、配列番号2のアミノ酸配列を含むかこれからなる重鎖を含む。
特定の態様において、本明細書に記載の抗体は、PSGL−1に特異的に結合するIgG4モノクローナル抗体である。IgG4抗体は、IgG4シャフリングとしても知られている、Fabアーム交換と呼ばれるプロセスを経ることが知られており、ここで、天然のIgG4ヒンジジスルフィド結合の、還元に対する感受性の増加により、重鎖が分離してランダムに再度結合し、IgG4分子とランダム化された重鎖および軽鎖の対の混合集団が生成されることが可能となる(Aalberse et al., 1999. Int Arch Allergy Immunol 118:187-189;Labrijn, et al., 2009, Nat Biotechnol 27:767-771;Schuurman et al., 2001. Mol Immunol 38:1-8;van der Neut Kolfschoten et al., 2007. Science 317:1554-1557)。
ヒトIgG4のヒンジ領域における、Kabat番号付を用いた241位(Kabat et al. 1991, Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242)、またはEUインデックスを用いた228位(Edelman et al., 1969, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 63(1): 78-85)でのセリンからプロリンへの変異が、鎖内のジスルフィド結合形成の相当な減少をもたらし、これによりIgG4「半抗体」分子の減少およびIgG4分子の異質性/シャフリングの減少をもたらすことが実証されている(Bloom et al. 1997, Protein Sci, 6:407-415;Angal et al., 1993, Molecular Immunology, 30(1): 105-108)。このヒンジの変異は、IgG4シャフリングを低減し、in vivoでのIgG4分子の半減期を増加させ得ることも報告されている(Labrijn, et al., 2009, Nat Biotechnol 27:767-771;Stubenrauch, et al., 2010, Drug Metab Dispos 38:84-91)。Van der Neut Kolfschotenらは、コアヒンジではなくIgG4のCH3ドメインが、Fabアーム交換反応に主に関与していることを報告した(Van der Neut Kolfschoten et al, 2007, Science, 317:1554-1557(“Van der Neut Kolfschoten”)の1555ページ、col. 2を参照)。Van der Neut Kolfschotenは、IgG1のCH3ドメインをIgG4のCH3ドメインに交換することにより、IgG1のFabアーム交換を活性化し、一方でIgG4のCH3ドメインの交換が、IgG4に対するFabアーム交換を阻害することを報告した(1555ページおよび図2Dを参照)。
特定の態様において本明細書で提供されるのは、PSGL−1に特異的に結合し、IgG4ヒンジ領域において1または2以上のアミノ酸置換を含むIgG4抗体またはその抗原結合断片であって、ここで、前記抗体またはその抗原結合断片は、前記PSGL−1に対する特異的結合を保持し、およびここでIgG4シャフリングは、前記1または2以上のアミノ酸置換を含まないIgG4ヒンジ領域を含む抗体と比較して低減されている。特定の態様において、IgG4ヒンジ領域は、単一のアミノ酸置換のみを含む。「ヒトIgG4ヒンジ領域」の例としては、Angal et al., 1993, Molecular Immunology, 30(1): 105-108に記載されている、配列番号12のアミノ酸からなるCH1およびCH2ドメインの間のIgG4抗体の重鎖上の領域である。
特定の態様において、IgG4シャフリングの低減の決定は、1または2以上のアミノ酸置換を含まないIgG4ヒンジ領域を含むIgG4分子から産生される半抗体分子またはアーム交換の量と比較して、ヒンジ領域における1または2以上のアミノ酸置換を含んでいる本明細書に記載の抗体から産生された半抗体分子またはアーム交換の低い量を検出することにより、行われる。当技術分野でよく知られている任意のアッセイを、半抗体の産生および二重特異性抗体分子を検出するために使用することができる。二重特異性抗体の産生を検出するアッセイの例としては、例えば、Van der Neut Kolfschoten et al, 2007, Science, 317:1554-1557を参照されたい。
特定の態様において本明細書で提供されるのは、PSGL−1に特異的に結合するIgG4モノクローナル抗体であって、EUインデックスの番号付けによる重鎖のアミノ酸位置228において、セリンからプロリンへのアミノ酸置換を含む、前記抗体である。
特定の態様において、本明細書に記載の抗体は、配列番号1のアミノ酸配列を有する軽鎖、およびEUインデックスの番号付けによる重鎖の位置228においてプロリンを含む重鎖を含む。
特定の態様において、ヒトPSGL−1に免疫特異的に結合するモノクローナル抗体は、以下を含む:(i)配列番号1のアミノ酸配列を有する軽鎖;および(ii)IgG4ヒンジ領域における1または2以上のアミノ酸置換を含むヒトIgG4定常領域を含む重鎖、ここで前記抗体は、前記PSGL−1に対する特異的結合を保持し、ここでIgG4シャフリングは、前記1または2以上のアミノ酸置換を含まないIgG4ヒンジ領域を含む抗体に比べて低減されている。
特定の態様において、ヒトPSGL−1に免疫特異的に結合するモノクローナル抗体は、以下を含む:(i)配列番号1のアミノ酸配列を有する軽鎖;および(ii)EUインデックスの番号付けによる重鎖のアミノ酸位置228、またはKabat番号付けによる位置241(Kabat et al. 1991, Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242、およびEdelman et al., 1969, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 63(1): 78-85)でのセリンからプロリンへのアミノ酸置換を含むヒトIgG4定常領域を含む重鎖。
特定の態様において、ヒトPSGL−1に免疫特異的に結合するモノクローナル抗体は、以下を含む:(i)配列番号3のアミノ酸配列を含むVL鎖領域;(ii)配列番号4のアミノ酸配列を含むVH鎖領域;および(iii)ヒンジ領域における1または2以上のアミノ酸置換を含むIgG4ヒンジ領域を含むヒトIgG4定常領域、ここで前記抗体は、PSGL−1に対する特異的結合を保持し、ここでIgG4シャフリングは、前記1または2以上のアミノ酸置換を含まないIgG4ヒンジ領域を含む抗体に比べて低減されている。
特定の態様において、ヒトPSGL−1に免疫特異的に結合するモノクローナル抗体は、以下を含む:(i)配列番号4のアミノ酸配列を含むVH鎖領域を含む重鎖;および(ii)EUインデックスの番号付けによる重鎖のアミノ酸位置228でのセリンからプロリンへのアミノ酸置換を含むヒトIgG4重鎖定常領域。
特定の態様において、ヒトPSGL−1に免疫特異的に結合するモノクローナル抗体は、以下を含む:(i)配列番号3のアミノ酸配列を含むVL鎖領域;(ii)配列番号4のアミノ酸配列を含むVH鎖領域を含む重鎖;および(iii)EUインデックスの番号付けによる重鎖のアミノ酸位置228でのセリンからプロリンへのアミノ酸置換を含むヒトIgG4重鎖定常領域。
一定の態様において、本明細書に記載のIgG4モノクローナル抗体は、本明細書に記載のアミノ酸配列を有するVH CDR(例えば表3参照)および本明細書に記載のアミノ酸配列を有するVL CDR(例えば表2参照)を含み、ここで抗体は、PSGL−1に免疫特異的に結合し、かつIgG4シャフリングを低減するヒンジ領域変異(例えば、EUインデックスの番号付けによる重鎖のアミノ酸位置228でのセリンからプロリンへのアミノ酸置換)を有する。特定の態様において、IgG4モノクローナル抗体はPSGL−1に免疫特異的に結合し、以下を含む重鎖を含む:(a)配列番号8、9、および10を含むVH鎖領域;および(b)EUインデックスの番号付けによる重鎖のアミノ酸228において、セリンからプロリンへのアミノ酸置換を含む、ヒトIgG4重鎖定常領域。さらに好ましくは、抗体は、配列番号5、6、および7を含むVL鎖領域を含む軽鎖をさらに含む。
以下の表2は、15A7Hのアミノ酸配列のVL CDR(特に、VL CDR1、VL CDR2、およびVL CDR3)を示す。以下の表3は、15A7Hのアミノ酸配列のVH CDR(特に、VH CDR1、VH CDR2、およびVH CDR3)を示す。特定の態様において、ヒトPSGL−1(配列番号11)に免疫特異的に結合する本明細書に記載のモノクローナル抗体は、表2のVL CDR配列を含む。特定の態様において、ヒトPSGL−1(配列番号11)に免疫特異的に結合する本明細書に記載のモノクローナル抗体は、表3のものから選択されるVH CDR配列を含む。
特定の態様において、本明細書に記載の抗体はヒトPSGL−1に免疫特異的に結合し、以下を含む:(i)配列番号5、配列番号6、および配列番号7のアミノ酸配列をそれぞれ有するVL CDR1、VL CDR2、およびVL CDR3を含む、可変軽(「VL」)鎖領域;(ii)配列番号8、配列番号9、および配列番号10のアミノ酸配列をそれぞれ有するVH CDR1、VH CDR2、およびVH CDR3を含む、可変重(「VH」)鎖領域;および(iii)ヒンジ領域における1または2以上のアミノ酸置換を含むIgGヒンジ領域を含むヒトIgG4重鎖定常領域、ここで前記抗体は、前記PSGL−1に対する特異的結合を保持し、ここでIgG4シャフリングは、前記1または2以上のアミノ酸置換を含まないIgG4ヒンジ領域を含む抗体に比べて低減されている。
特定の態様において、本明細書に記載の抗体はヒトPSGL−1に免疫特異的に結合し、かつ以下を含む:(i)配列番号3のアミノ酸配列を含むVL鎖領域;(ii)配列番号8、配列番号9、および配列番号10のアミノ酸配列をそれぞれ有するVH CDR1、VH CDR2、およびVH CDR3を含む、VH鎖領域;および(iii)ヒンジ領域における1または2以上のアミノ酸置換を含むIgG4ヒンジ領域を含むヒトIgG4重鎖定常領域、ここで前記抗体は、前記PSGL−1に対する特異的結合を保持し、ここでIgG4シャフリングは、前記1または2以上のアミノ酸置換を含まないIgG4ヒンジ領域を含む抗体に比べて低減されている。
特定の態様において、本明細書に記載の抗体はヒトPSGL−1に免疫特異的に結合し、かつ以下を含む:(i)配列番号3のアミノ酸配列を含むVL鎖領域;(ii)配列番号8、配列番号9、および配列番号10のアミノ酸配列をそれぞれ有するVH CDR1、VH CDR2、およびVH CDR3を含むVH鎖領域を含む重鎖;および(iii)EUインデックスの番号付けによる重鎖のアミノ酸位置228において、セリンからプロリンへのアミノ酸置換を含む、ヒトIgG4重鎖定常領域。
特定の態様において、本明細書に記載の抗体はヒトPSGL−1に免疫特異的に結合し、かつ以下を含む:(i)配列番号5、配列番号6、および配列番号7のアミノ酸配列をそれぞれ有するVL CDR1、VL CDR2、およびVL CDR3を含む、VL鎖領域;(ii)配列番号4のアミノ酸配列を含むVH鎖領域;および(iii)ヒンジ領域における1または2以上のアミノ酸置換を含むIgG4ヒンジ領域を含むヒトIgG4重鎖定常領域、ここで前記抗体は、前記PSGL−1に対する特異的結合を保持し、ここでIgG4シャフリングは、前記1または2以上のアミノ酸置換を含まないIgG4ヒンジ領域を含む抗体に比べて低減されている。
特定の態様において、本明細書に記載の抗体はヒトPSGL−1に免疫特異的に結合し、かつ以下を含む:(i)配列番号5、配列番号6、および配列番号7のアミノ酸配列をそれぞれ有するVL CDR1、VL CDR2、およびVL CDR3を含む、VL鎖領域;(ii)配列番号4のアミノ酸配列を含むVH鎖領域を含む重鎖;および(iii)EUインデックスの番号付けによる重鎖のアミノ酸位置228において、セリンからプロリンへのアミノ酸置換を含む、ヒトIgG4重鎖定常領域。
特定の態様において、PSGL−1、例えば配列番号11のヒトPSGL−1ポリペプチドに免疫特異的に結合する本明細書に記載の抗体は、フレームワーク領域(例えばVLドメインおよびVHドメインのフレームワーク領域)を含む。ヒトフレームワーク領域の非限定的例は、当分野に記載されており、例えばKabat et al. (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242を参照のこと。
以下の表4は、抗体15A7HのVLフレームワーク(FR)アミノ酸配列(特に、VL FR1、VL FR2、VL FR3、およびVL FR4配列)を示す。以下の表5は、抗体15A7HのVH FRアミノ酸配列(特に、VH FR1、VH FR2、VH FR3、およびVH FR4配列)を示す。
一定の態様において、IgG4シャフリングを低減するヒンジ領域における変異を有する上記のIgG4抗体は、本明細書に記載のアミノ酸配列を有するVL FRを含む(表4参照)。特定の態様において、本明細書に記載の抗体は、表1および3のFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、およびFR4を含むVL鎖領域を含む。
一定の態様において、IgG4シャフリングを低減するヒンジ領域における変異を有する上記のIgG4抗体は、本明細書に記載のアミノ酸配列を有するVH FRを含む(表5参照)。特定の態様において、抗体は、表2および4のFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、およびFR4を含むVH鎖領域を含む。
別の特定の態様において、本明細書に記載のIgG4モノクローナル抗体は、以下:(i)アミノ酸配列13、14、15、および16をそれぞれ有するVL FR1、VL FR2、VL FR3、およびVL FR4を含むVL鎖領域;および(ii)アミノ酸配列17、18、19、および20をそれぞれ有するVH FR1、VH FR2、VH FR3、およびVH FR4を含むVH鎖領域、を含み、かつIgG4シャフリングを低減するヒンジ領域における変異を有する。特定の態様において、本明細書に記載の抗体は、アミノ酸配列13、14、15、および16をそれぞれ有するVL FR1、VL FR2、VL FR3、およびVL FR4を含むVL鎖領域を含む。別の特定の態様において、本明細書に記載の抗体は、アミノ酸配列17、18、19、および20をそれぞれ有するVH FR1、VH FR2、VH FR3、およびVH FR4を含むVH鎖領域を含む。
特定の態様において、本明細書に記載の抗体の定常領域のグリコシル化は修飾することができる。例えば、抗体の非グリコシル化(aglycosylated)された定常領域を作ることができ(すなわち、抗体定常領域はグリコシル化を欠いている)、または、1または2以上のグリコシル化部位におけるグリコシル化を取り除くために、1または2以上のグリコシル化部位における変異または置換を含む抗体の定常領域を作ることができる。
グリコシル化は、N−結合型(またはアスパラギン結合型)グリコシル化またはO−結合型グリコシル化を介して行うことができる。N−結合型グリコシル化は、ポリペプチド中のアスパラギンアミノ酸の側鎖NH2基における炭水化物修飾を含む。O−結合型グリコシル化は、セリン、スレオニン、またはヒドロキシリシンアミノ酸の側鎖のヒドロキシル基における炭水化物修飾を含む。
特定の態様において、非グリコシル化抗体は、必要なグリコシル化機構を欠いた細菌細胞で産生することができる。改変グリコシル化機構を有する細胞は当技術分野において記載されており、本明細書に記載の組換え抗体を発現し、これにより変化したグリコシル化を有する抗体を産生するための宿主細胞として、使用することができる。例えば、Shields, R.L. et al. (2002) J. Biol. Chem. 277:26733-26740;Umana et al. (1999) Nat. Biotech. 17:176-1;および欧州特許第EP 1,176,195号;PCT公開WO 03/035835;WO 99/54342を参照。
一定の態様において、1または2以上の修飾を本明細書に記載の抗体のFc領域に作り、一般に、抗体の1または2以上の機能的特性、例えば血清半減期、補体結合、Fc受容体結合、および/または抗原依存性細胞障害性などを変化させることができる。これらの修飾は当技術分野において公知であり、例えば、国際特許出願公開WO 2008/153926 A2に記載されている。かかる修飾の例としては、限定することなく以下が挙げられる:1)ヒンジ領域におけるシステイン残基の数を変化させて、軽鎖および重鎖の組み立てを容易にし、または抗体の安定性を増加もしくは減少させること;2)抗体のFc−ヒンジ断片のCH2−CH3ドメイン境界領域における1または2以上のアミノ酸を変異させて、抗体の生物学的半減期を減少させること;3)KabatのEUインデックスに従ったアミノ酸残基234、235、236、237、297、318、320および322から選択される1または2以上のアミノ酸を、異なるアミノ酸残基により置き換えて、抗体がエフェクターリガンドに対して改変された親和性を有するが、親抗体の抗原結合能を保持するようにすること;および/または4)KabatのEUインデックスに従った次の位置:238、239、248、249、252、254、255、256、258、265、267、268、269、270、272、276、278、280、283、285、286、289、290、292、293、294、295、296、298、301、303、305、307、309、312、315、320、322、324、326、327、329、330、331、333、334、335、337、338、340、360、373、376、378、382、388、389、398、414、416、419、430、434、435、437、438または439の、1または2以上のアミノ酸を修飾して、抗体依存性細胞障害(ADCC)を媒介する抗体の能力を増加させ、および/またはFcγ受容体に対する抗体の親和性を増大させること。本明細書で提供されるのは、PSGL−1に免疫特異的に結合し、PSGL−1活性を調節することができる、抗体および抗体由来抗原結合断片である。一定の態様において、本明細書で提供される抗体および抗体由来抗原結合断片は、PSGL−1のP−セレクチンへの結合を阻害することなくPSGL−1に免疫特異的に結合し、活性化T細胞のアポトーシスを誘導する。PSGL−1活性は、当分野で知られているか記載されているPSGL−1の任意の活性に関連することができ、例えば、炎症反応の間のT細胞の活性化である。PSGL−1活性またはPSGL−1機能は、本明細書において互換的に使用される。一定の態様において、PSGL−1活性は、PSGL−1に結合するPSGL−1リガンド(例えば、P−セレクチン)によって誘導される。
一定の態様において、本明細書に記載の抗PSGL−1抗体または抗体由来抗原結合断片は、P−セレクチンのPSGL−1への結合をブロックまたは阻害しない。
特定の態様において、本明細書に記載の抗体または抗体由来抗原結合断片は、炎症反応の間の白血球動員を低減する。
一定の側面において、本明細書に記載の抗体または抗体由来抗原結合断片は、PSGL−1を発現しPSGL−1活性シグナル伝達に応答する細胞(例えば、PSGL−1リガンド刺激、PSGL−1シグナル伝達またはセレクチン結合に応答して増殖する細胞)の生存を低減または阻害し、例えば、活性化T細胞のアポトーシスを誘導する。細胞生存アッセイは当該分野において記載されており、当業者により容易に行うことができる。例えば細胞生存率は、当該技術分野で知られているトリパンブルー染色またはその他の細胞死もしくは生存マーカーを用いて評価することができる(例えば、アネキシン−1、プロピジウムヨウ素(PI)または7−AAD;Gerber A, Bohne M, Rasch J, Struy H, Ansorge S, Gollnick H., 2000. Investigation of annexin V binding to lymphocytes after extracorporeal photoimmunotherapy as an early marker of apoptosis. Dermatology. 2000;201(2):111-7;Coder, D. M. 2001. Assessment of Cell Viability. Current Protocols in Cytometry. 9.2.1-9.2.14およびMuppidi, J., Porter, M. and Siegel, R. M. 2004. Measurement of Apoptosis and Other Forms of Cell Death. Current Protocols in Immunology. 59:3.17.1-3.17.36を参照)。
特定の態様において、本明細書に記載の抗体は、PSGL−1に特異的に結合し、本明細書に記載のまたは当業者に知られている方法(例えば、トリパンブルー排除アッセイ、Coder, D. M. 2001. Assessment of Cell Viability. Current Protocols in Cytometry. 9.2.1-9.2.14を参照)により評価されるように、活性化T細胞の生存を阻害する(例えば、部分的または完全に阻害する)。いくつかの態様において、用語「阻害する」または「阻害」は、活性化T細胞の生存の低減または防止を意味する。活性化T細胞の生存率は、対照(例えば、本明細書に記載の抗体の不在における、または非特異的抗体の存在下での、T細胞の生存)と比較して、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約100%、約125%、約150%またはそれ以上、低減することができる。
一定の側面において、本明細書に記載の抗PSGL−1抗体は、PSGL−1を発現する活性化T細胞のアポトーシス(すなわち、プログラムされた細胞死)を誘導することができる。アポトーシスアッセイは当該分野で記載されており、当業者が容易に行うことができる(例えば、Muppidi, J., Porter, M. and Siegel, R. M. 2004. Measurement of Apoptosis and Other Forms of Cell Death. Current Protocols in Immunology. 59:3.17.1-3.17.36を参照)。用語「誘導する」または「誘導すること」は、アポトーシスの開始または対照レベルを上回るアポトーシスの増加を意味する。活性化T細胞のアポトーシスは、対照(例えば、本明細書に記載の抗体の不在における、または非特異的抗体の存在下での、活性化T細胞のアポトーシス)と比較して、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約100%、約125%、約150%またはそれ以上、誘導することができる。
PSGL−1活性と関連する、本明細書に記載のアッセイでの使用に適したT細胞およびT細胞株は、容易に利用可能であり(例えば、ARR、DU.528、Jarkat、H−SB2、RPMI8402、CML−T1、Karpas45、KE−37/SKW−3、SUP−T1、SUP−T3、MOLT3/4、P12−Ichikawa、PF−382、CCRF−CEM、HPB−ALL、K−T1、TALL−1、 MOLT 16/17、TALL−104、DND−41、Loucy、MOLT 13、Peer/Be13、HUT78/H9、HUT102、MT−1、DEL、JB6、Karpas299、SU−DHL1、12H5、3DO54.8、3DO11.10、8DO51.15、または3DO18.3)、または、当分野で公知の方法を用いて容易に同定することができる(例えば、Thornton, A. M. 2003. Fractionation of T and B Cells Using Magnetic Beads. Current Protocols in Immunology. 55:3.5A.1-3.5A.11;Hathcock, K. 2001. T Cell Enrichment by Cytotoxic Elimination of B Cells and Accessory Cells. Current Protocols in Immunology. 00:3.3.1-3.3.5;Horgan, K., Shaw, S. and Boirivant, M. 2009. Immunomagnetic Purification of T Cell Subpopulations. Current Protocols in Immunology. 85:7.4.1-7.4.9;Kanof, M. E. 2001. Purification of T Cell Subpopulations. Current Protocols in Immunology. 00:7.3.1-7.3.5参照)。特定の態様において、細胞増殖アッセイにおける使用のための細胞または細胞株は、内因的にまたは組換えによって、PSGL−1を発現することができる。細胞生存アッセイに使用する細胞または細胞株は、内因的にまたは組換えによってPSGL−1を発現し、PSGL−1リガンドまたは抗PSGL−1抗体結合に応答して、細胞生存率の変化を示すことができる。アポトーシスアッセイにおける使用のための細胞または細胞株は、内因的にまたは組換えによってPSGL−1を発現し、PSGL−1リガンドまたは抗PSGL−1抗体結合に応答して、アポトーシスに変化を及ぼすことができる。好ましくは、細胞または細胞株はヒトのものである(例えば、ARR、DU.528、Jurkat、H−SB2、RPMI8402、CML−T1、Karpas45、KE−37/SKW−3、SUP−T1、SUP−T3、MOLT3/4、P12−Ichikawa、PF−382、CCRF−CEM、HPB−ALL、K−T1、TALL−1、MOLT16/17、TALL−104、DND−41、Loucy、MOLT13、Peer/Be13、HUT78/H9、HUT102、MT−1、DEL、JB6、Karpas299、またはSU−DHL1)。
抗体の、その標的抗原に対する免疫特異的結合を決定するための方法は、容易に利用可能であり、当該分野で記載されている。例えば、抗体の、その標的抗原に対する親和性および結合特性は、当該分野で公知の種々のin vitroのアッセイ方法(生化学または免疫学ベースのアッセイ)により決定することができ、例えば平衡法(例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、またはラジオイムノアッセイ(RIA))、または動力学(例えば、Biacore(登録商標)分析)、および間接的結合アッセイ、競合阻害アッセイ、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)、免疫沈降、ゲル電気泳動およびクロマトグラフィー(例えば、ゲル濾過)などのその他の方法である。これらの方法および他の方法は、試験する1または2以上の成分上の標識を利用し、および/または、発色性、蛍光、発光または同位体標識を含むがこれに限定されない種々の検出法を用いることができる。一定の態様においては、標識の使用は必要ではなく、例えばBiacore(登録商標)システムは、表面プラズモン共鳴(SPR)の自然現象を利用して、標識を使用することなくリアルタイムでデータを送達する。
特定の態様において、本明細書に記載の抗体は単離されている。特定の態様において、本明細書に記載の抗体は精製される。特定の態様において、本明細書に記載の抗体は、組換えモノクローナル抗体である。
特定の態様において、本明細書で提供されるのは、大規模な製造のための適切な方法で修飾された抗体または抗体由来抗原結合断片である。これには、1または2以上のCDRまたはFRなどの、抗PSGL−1抗体の必要なドメインをコードするポリヌクレオチド配列の、これもまた好適な定常領域をコードするポリヌクレオチド配列を含む好適な発現ベクター中へのクローニングを含むことができ、こうして抗体全体が産生される。発現ベクターによって提供されるポリヌクレオチド配列は、抗体の収率および細胞培養の製造条件および精製プロセスのための安定性を最大にするように最適化することができる、ヌクレオチド配列である。
6.2 ポリヌクレオチド
一定の側面において、本明細書で提供されるのは、PSGL−1抗原に免疫特異的に結合する本明細書に記載の抗体または抗体由来抗原結合断片をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、および宿主細胞内(例えば、大腸菌などの微生物、およびマウスハイブリドーマ細胞、CHO細胞、および3T3線維芽細胞などの哺乳動物細胞)での組換え発現のためのかかるポリヌクレオチドを含むベクターである。本明細書で提供されるのは、本明細書で提供される任意の抗体またはその抗体由来抗原結合断片をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、ならびに、かかるポリヌクレオチド配列を含むベクター、例えば哺乳動物細胞などの宿主細胞内でのそれらの効率的発現のための発現ベクターである。特定の態様において、本明細書に記載の抗体または抗体由来抗原結合断片のいずれかをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドは、単離または精製されている。
特定の側面において、本明細書で提供されるのは、PSGL−1に免疫特異的に結合し、本明細書に記載のアミノ酸配列を含む、抗体または抗体由来抗原結合断片をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドである。
特定の態様において、本明細書に記載のポリヌクレオチドは、配列番号2のアミノ酸配列を有する重鎖をコードする。
ポリヌクレオチドは、本明細書に記載の抗体のVH FRおよびCDRを含む重鎖をコードするヌクレオチド配列を含み(例えば表2および4を参照)、さらに、IgG4シャフリングを低減するヒンジ領域における変異をさらに含むことができる。
本明細書でさらに提供されるのは、配列番号2を含む抗体重鎖をコードするポリヌクレオチドであって、例えばコドン/RNAの最適化、異種シグナル配列による置き換え、およびmRNAの不安定要素の除去によって、最適化されているものである。本明細書でさらに提供されるのは、配列番号1を含む抗体軽鎖をコードするポリヌクレオチドであって、例えばコドン/RNAの最適化、異種シグナル配列による置き換え、およびmRNAの不安定要素の除去によって、最適化されているものである。組換え発現のための、抗体または抗体由来抗原結合断片をコードする最適化核酸を生成するための方法であって、コドン変化を導入および/またはmRNA中の阻害領域を排除することによる前記方法は、例えば米国特許第5,965,726号;第6,174,666号;第6,291,664号;第6,414,132号;および第6,794,498号に記載の最適化方法を適合させることにより行うことができる。例えば、RNA内の潜在的スプライス部位および不安定要素(例えば、A/TまたはA/Uリッチ要素)は、組換え発現のためのRNAの安定性を増加させるために、核酸配列によってコードされるアミノ酸を変更することなく、変異させることができる。改変は、例えば同一のアミノ酸のための代替のコドンを用いて、遺伝コードの縮重などを利用する。いくつかの態様では、1または2以上のコドンを改変して保存的変異をコードすることが、例えば、元のアミノ酸と同様の化学構造および特性および/または機能を有する類似のアミノ酸をコードすることが、望ましい場合もある。かかる方法は、最適化されていないポリヌクレオチドによりコードされる抗PSGL−1抗体の発現と比べて、抗PSGL−1抗体またはその抗原結合断片の発現を増加させることができる。また、ポリヌクレオチド配列は、宿主細胞における好ましいコドンの使用、例えば、大腸菌コドンの使用またはCHOコドンの使用と適合するように、設計することができる。
本明細書に記載の抗体または抗体由来抗原結合断片をコードする最適化されたポリヌクレオチド配列は、本明細書に記載の抗体または抗体由来抗原結合断片をコードする最適化されていないポリヌクレオチド配列に、ハイブリダイズすることができる。特定の態様において、本明細書に記載の抗体または抗体由来抗原結合断片をコードする最適化されたヌクレオチド配列は、本明細書に記載の抗体または抗体由来抗原結合断片をコードする最適化されていないポリヌクレオチド配列に、高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズする。特定の態様において、本明細書に記載の抗体または抗体由来抗原結合断片をコードする最適化されたヌクレオチド配列は、本明細書に記載の抗体または抗体由来抗原結合断片をコードする最適化されていないヌクレオチド配列に、高ストリンジェンシー、中間または低ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件下で、ハイブリダイズする。ハイブリダイゼーション条件に関する情報は記載されており、例えば米国特許出願公開US 2005/0048549(例えば段落72〜73)を参照;これはその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
当技術分野で公知の任意の方法により、ポリヌクレオチドを得ることができ、ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列を決定することができる。本明細書に記載の抗体または抗体由来抗原結合断片、およびこれら抗体または抗体由来抗原結合断片の修飾バージョンをコードするヌクレオチド配列は、当技術分野で周知の方法を用いて決定することができ、すなわち、特定のアミノ酸をコードすることが知られているヌクレオチドコドンを、抗体または抗体由来抗原結合断片をコードする核酸を生成するようなやり方で、作ることができる。抗体をコードするかかるポリヌクレオチドは、化学合成されたオリゴヌクレオチドから作ることができ(例えばKutmeier et al., 1994, BioTechniques 17:242に記載のようにして)、これには例えば、抗体または抗体由来の抗原結合断片をコードする配列の部分を含有する重複オリゴヌクレオチドの合成、それらオリゴヌクレオチドのアニーリングおよびライゲーション、次いでライゲートされたオリゴヌクレオチドのPCRによる増幅が関与する。オリゴヌクレオチドから合成遺伝子を生成するための種々の方法は、当技術分野で知られている。
代替的に、本明細書に記載の抗体または抗体由来抗原結合断片をコードするポリヌクレオチドは、適切な供給源(例えば、ハイブリドーマ)からの核酸から、当該分野で知られた方法を用いて(例えば、PCRおよび他の分子クローニング法)、生成することができる。例えば、既知の配列の3’および5’末端にハイブリダイズ可能な合成プライマーを用いたPCR増幅を、目的の抗体を産生する細胞、たとえばハイブリドーマ細胞から得たゲノムDNAを用いて行うことができる。かかるPCR増幅法を用いて、抗体の軽鎖および/または重鎖をコードする配列を含む核酸を得ることができる。かかるPCR増幅法を用いて、抗体の可変軽鎖領域および/または可変重鎖領域をコードする配列を含む核酸を得ることができる。増幅された核酸は、宿主細胞における発現のため、およびさらなるクローニングのためにベクターにクローニングして、例えばキメラ抗体およびヒト化抗体を生成することができる。定常鎖は、通常は抗体軽鎖のためのカッパまたはラムダであり、抗体重鎖のためには、限定はされないが、任意のIgGアイソタイプ(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4)、または対立遺伝子変異体を含むその他の免疫グロブリンであることができる。
特定の抗体をコードする核酸を含むクローンは入手できないが、抗体分子の配列が既知である場合、免疫グロブリンをコードする核酸は、当分野で知られている任意の方法を用いて、化学的に合成して複製可能なクローニングベクターにクローニングすることができる。
本明細書に記載の抗体または抗体由来抗原結合断片をコードするDNAは、従来の手順を用いて容易に単離して配列決定することができる(例えば、抗体の重鎖および軽鎖をコードする核酸に特異的に結合できるオリゴヌクレオチドプローブを用いることにより)。一旦単離されると、DNAは発現ベクター中に導入され、次いで、 大腸菌細胞、酵母(Pichia, Saccharomyces)、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、骨髄腫細胞(NS0)、それ以外では免疫グロブリンタンパク質を産生しない昆虫細胞または植物細胞などの、原核生物または真核生物の宿主細胞にトランスフェクトされて、組換え宿主細胞における抗体または抗体由来抗原結合断片の合成を得ることができる。
6.3 宿主細胞および抗体の組み換え発現
一定の側面において、本明細書で提供されるのは、本明細書に記載の抗体または抗体由来抗原結合断片および関連する発現ベクターを、組換えにより発現する宿主細胞である。本明細書で提供されるのは、原核生物および真核生物宿主細胞、好ましくは哺乳動物細胞における組換え発現のための、本明細書に記載の抗体または抗体由来抗原結合断片をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを含む発現ベクターである。本明細書でさらに提供されるのは、本明細書に記載の抗体または抗体由来抗原結合断片を組換えにより発現するための、かかる発現ベクターを含む宿主細胞である。特定の側面において、本明細書で提供されるのは、本明細書に記載の抗体または抗体由来抗原結合断片を産生するための方法であって、かかる抗体または抗体由来抗原結合断片を宿主細胞から発現することを含む、前記方法である。
PSGL−1抗原に免疫特異的に結合する、本明細書に記載の抗体または抗体由来抗原結合断片の組み換え発現には、抗体または抗体由来抗原結合断片をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターの構築が関与する。本明細書に記載の抗体または抗体由来抗原結合断片をコードするポリヌクレオチドが得られれば、該抗体または抗体由来抗原結合断片の産生のためのベクターを、当分野で周知の技術を用いて、組換えDNA技術によって産生することができる。したがって、抗体または抗体由来抗原結合断片を、ヌクレオチド配列(単数または複数)をコードする抗体または抗体由来抗原結合断片を含有するポリヌクレオチドを発現することにより調製する方法が、本明細書に記載される。当業者に周知の方法を用いて、抗体をコードする配列または抗体由来抗原結合断片をコードする配列ならびに適切な転写および翻訳制御シグナルを含む発現ベクターを、構築することができる。これらの方法としては、例えば、in vitro組換えDNA技術、合成技術、およびin vivo遺伝子組換えが挙げられる。さらに提供されるのは、本明細書に記載の抗体、抗体の重鎖もしくは軽鎖、抗体の重鎖もしくは軽鎖可変ドメイン、または抗体由来の抗原結合断片をコードするヌクレオチド配列を含む、複製可能なベクターであって、プロモーターに、特に哺乳動物細胞での発現のために提供されたプロモーターに、作動可能に連結されているものである。かかるベクターは、抗体分子の定常領域をコードするヌクレオチド配列を含むことができ(例えば、国際公開WO 86/05807およびWO 89/01036;および米国特許第5,122,464号を参照)、抗体の可変ドメインを、全重鎖、全軽鎖、または全重鎖および軽鎖の両方の発現のために、かかるベクターにクローニングすることができる。発現ベクターとしては、プラスミド、レトロウイルス、コスミド、EBV由来エピソーム、人工染色体などが挙げられる。発現ベクターおよび発現制御配列は、宿主細胞に適合するように選択される。組換え発現ベクターはまた、宿主細胞からの抗体鎖の分泌を促進するシグナルペプチドをコードしてもよい。シグナルペプチドは、免疫グロブリンシグナルペプチド、非免疫グロブリンタンパク質からの異種ペプチド、または人工ペプチドであってよい。
発現ベクターは、当技術分野で知られている従来の技術によって宿主細胞に移行され(例えば、リポソーム媒介トランスフェクション、ポリカチオン媒介トランスフェクション、プロトプラスト融合、マイクロインジェクション、リン酸カルシウム析出、エレクトロポレーション、ウイルスベクターによる移行)、次いでトランスフェクトされた細胞を従来の技術によって培養して、本明細書に記載の抗体または抗体由来抗原結合断片を産生する。したがって、本明細書で提供されるのは、異種プロモーターに作動可能に連結された、本明細書に記載の抗体または抗体由来抗原結合断片をコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞である。二本鎖抗体の発現のための一定の態様において、重鎖および軽鎖の両方をコードするベクターは、以下に詳述するように、免疫グロブリン分子全体の発現のために宿主細胞中で同時発現させることができる。一定の態様において、宿主細胞は、本明細書に記載の抗体またはその抗原結合断片の重鎖および軽鎖の両方をコードするポリヌクレオチドを含む、ベクターを含む。特定の態様において、宿主細胞は、2つの異なるベクター、すなわち本明細書に記載の抗体またはその断片(例えばその抗原結合断片)の重鎖をコードするポリヌクレオチドを含む第1のベクター、および本明細書に記載の抗体またはその断片(例えばその抗原結合断片)の軽鎖をコードするポリヌクレオチドを含む第2のベクターを含む。別の態様において、第1の宿主細胞は、本明細書に記載の抗体またはその断片の重鎖をコードするポリヌクレオチドを含む第1のベクターを含み、第2の宿主細胞は、本明細書に記載の抗体の軽鎖をコードするポリヌクレオチドを含む第2のベクターを含む。
種々の宿主発現ベクター系を用いて、本明細書に記載の抗体分子または抗体由来抗原結合断片を発現することができる(例えば、米国特許第5,807,715号および米国特許第7604800号を参照)。かかる宿主発現系は、これによって関心のあるコード配列が産生され続いて精製されるところのビヒクルを表すのみでなく、適切なヌクレオチドコード配列で形質転換またはトランスフェクトされた場合、本明細書に記載の抗体分子または抗体由来抗原結合断片をin situで発現し得る細胞も表すことができる。これらには、限定はされないが以下が挙げられる:抗体コード配列または抗体由来抗原結合断片コード配列を含む組換えバクテリオファージDNA、プラスミドDNAまたはコスミドDNA発現ベクターで形質転換された、細菌(例えば、大腸菌および枯草菌)などの微生物;抗体コード配列または抗体由来抗原結合断片コード配列を含む組換え酵母発現ベクターで形質転換された、酵母(例えばSaccharomyces、Pichia);抗体コード配列または抗体由来抗原結合断片コード配列を含む組換えウイルス発現ベクター(例えばバキュロウイルス)に感染した、昆虫細胞系;抗体コード配列または抗体由来抗原結合断片コード配列を含む組換えウイルス発現ベクター(例えばカリフラワーモザイクウイルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)に感染したか、または組換えプラスミド発現ベクター(例えばTiプラスミド)で形質転換された、植物細胞系(例えばChlamydomonas reinhardtiiなどの緑藻類);または、哺乳動物細胞のゲノム(例えば、メタロチオネインプロモーター、免疫グロブリンプロモーター、アクチンプロモーター)または哺乳動物ウイルス(アデノウイルス後期プロモーター;ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター、CMV、サルウイルス40)に由来するプロモーターおよび/またはエンハンサーを含む組換え発現コンストラクトを保有する、哺乳動物細胞系(例えば、COS、CHO、BHK、MDCK、HEK293、NS0、PER.C6、VERO、CRL7O3O、HsS78Bst、HeLa、およびNIH3T3細胞)。真核細胞における発現のための他の調節要素は、BGHポリA、SV40後期または初期ポリAなどのポリアデニル化シグナルである。あるいは、免疫グロブリンまたは他の遺伝子のポリアデニル化シグナルを使用することができる。別の特定の態様では、真核細胞は、特に本明細書に記載のIgG4モノクローナル抗体の発現のために、本明細書に記載の抗体またはその抗原結合断片の発現のために使用される。例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞などの哺乳動物細胞は、ヒトサイトメガロウイルス由来の主要中間初期遺伝子プロモーターエレメントなどのベクターと併せて、抗体の有効な発現系である(Foecking et al., 1986, Gene 45:101; and Cockett et al., 1990, Bio/Technology 8:2)。一定の態様において、本明細書に記載の抗体は、CHO細胞またはNS0細胞により産生される。一定の態様において、PSGL−1抗原に免疫特異的に結合する本明細書に記載の抗体または抗体由来抗原結合断片をコードするヌクレオチド配列の発現は、構成的プロモーター、誘導性プロモーターまたは組織特異的プロモーターによって調節される。
細菌系において、多くの発現ベクターを、発現が意図される抗体分子の用途に応じて有利に選択することができる。例えば、大量のかかる抗体または抗体由来抗原結合断片を、抗体分子または抗体由来抗原結合断片の医薬組成物を生成するために産生する場合には、容易に精製される融合タンパク質産物の高レベルの発現を導くベクターが望ましい。
さらに、宿主細胞株は、挿入された配列の発現を調節し、または、所望の特定の様式で遺伝子産物を修飾および処理するように、選択することができる。かかる修飾(例えば、グリコシル化)およびタンパク質産物のプロセシングは、タンパク質の機能にとって重要であり得る。異なる宿主細胞は、タンパク質および遺伝子産物の翻訳後プロセシングおよび修飾に対して、特徴的かつ特異的な機構を有する。適切な細胞株または宿主細胞を、発現される外来タンパク質の正しい修飾およびプロセシングを確実にするように選択することができる。この目的のために、一次転写物の適切なプロセシング、グリコシル化、および遺伝子産物のリン酸化のための細胞機構を有する真核宿主細胞を用いることができる。かかる哺乳動物宿主細胞としては、限定することなく以下を含む:CHO、VERO、BHK、Hela、COS、MDCK、HEK293、NIH3T3、W138、BT483、Hs578T、HTB2、BT2OおよびT47D、NS09(いかなる免疫グロブリン鎖も内因的に産生しないマウス骨髄腫細胞株)、CRL7O3OおよびHsS78Bs細胞。一定の態様において、本明細書に記載の抗体またはその抗体由来抗原結合性断片は、CHO細胞などの哺乳動物細胞において産生される。
組換え抗体または抗体由来抗原結合断片の長期の高収率産生のためには、安定な発現が好ましい。例えば、安定に抗体分子または抗体由来抗原結合断片を発現する哺乳動物細胞株を、操作することができる。ウイルス起源の複製を含む発現ベクターを用いるよりも、宿主細胞を、適切な発現制御エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサー、配列、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位など)により制御されるDNAおよび選択マーカーで形質転換することができる。外来DNAの導入後、操作された細胞は、非選択培地中で1〜2日間増殖させることができ、次いで選択培地に切り替える。組換えプラスミド中の選択可能なマーカーは、選択に対する耐性を付与し、細胞が安定的にその染色体にプラスミドを統合することを可能とする。単一細胞クローニング後、細胞を産生細胞株に拡張する。この方法は、有利には、抗体分子または抗体由来抗原結合断片を発現する細胞株を操作するために使用することができる。かかる操作された細胞株は、抗体分子と直接的または間接的に相互作用する組成物のスクリーニングおよび評価において、特に有用であり得る。
多くの選択系を用いることができ、これには限定することなく以下を含む:単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(Wigler et al., 1977, Cell 11:223)、ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(S Szybalska & Szybalski, 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 48:202)、およびアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Lowy et al., 1980, Cell 22:8-17)遺伝子を、それぞれtk−、hgprt−またはaprt−細胞において使用することができる。また、代謝拮抗物質耐性を、以下の遺伝子の選択の基礎として使用することができる:dhfr、これはメトトレキサートに対する耐性を付与する(Wigler et al., 1980, Natl. Acad. Sci. USA 77:357;O’Hare et al., 1981, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:1527);gpt、これはミコフェノール酸に対する耐性を付与する(Mulligan & Berg, 1981, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:2072);neo、これはアミノグリコシドG−418に対する耐性を付与する(Wu and Wu, 1991, Biotherapy 3:87-95;Tolstoshev, 1993, Ann. Rev. Pharmacol. Toxicol. 32:573-596;Mulligan, 1993, Science 260:926-932;およびMorgan and Anderson, 1993, Ann. Rev. Biochem. 62:191-217; May, 1993, TIB TECH 11(5):l55-2 15);およびhygro、これはハイグロマイシンに対する耐性を付与する(Santerre et al., 1984, Gene 30:147)。組換えDNA技術の分野で一般に知られている方法を、所望の組換えクローンを選択するためにルーチンに適用することができ、かかる方法は、例えば以下に記載されている:Ausubel et al. (eds.), Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, NY (1993);Kriegler, Gene Transfer and Expression, A Laboratory Manual, Stockton Press, NY (1990);およびDracopoli et al. (eds.), Current Protocols in Human Genetics, John Wiley & Sons, NY (1994) の12,13章、;Colberre-Garapin et al., 1981, J. Mol. Biol. 150:1;これらはその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
抗体分子または抗体由来抗原結合断片の発現レベルは、ベクター増幅により増加させることができる(概説として、Bebbington and Hentschel, The use of vectors based on gene amplification for the expression of cloned genes in mammalian cells in DNA cloning, Vol. 3 (Academic Press, New York, 1987)を参照)。抗体または抗体由来抗原結合断片を発現するベクター系中のマーカーが増幅可能な場合、宿主細胞の培養物中に存在する阻害剤のレベルの増加は、マーカー遺伝子のコピー数を増加させる。増幅された領域は、抗体または抗体由来抗原結合断片遺伝子と関連しているため、抗体または抗体由来抗原結合断片の産生もまた増加する(Crouse et al., 1983, Mol. Cell. Biol. 3:257)。
宿主細胞は、本明細書に記載の1または2以上の発現ベクターにより同時トランスフェクトすることができ、ここで第1のベクターは重鎖由来のポリペプチドをコードし、第2のベクターは軽鎖由来ポリペプチドをコードする。2つのベクターは、同一の選択可能マーカーまたは異なる選択マーカーを含有することができ、これにより、重鎖および軽鎖ポリペプチドの十分な発現を可能にする。宿主細胞は、異なる量の2または3以上の発現ベクターで同時トランスフェクトすることができる。
代替的に、重鎖および軽鎖ポリペプチドの両方をコードして発現することができる、単一のベクターを用いることができる。重鎖および軽鎖のコード配列は、cDNAまたはゲノムDNAを含むことができる。発現ベクターは、モノシストロン性またはマルチシストロン性であることができる。例えば、2シストロン性核酸コンストラクトは、次の順序で、プロモーター、本明細書に記載の抗体の重鎖、および本明細書に記載の抗体の軽鎖を含むことができる。かかる発現ベクターにおいて、両方の鎖の転写はプロモーターによって駆動することができ、一方で、重鎖からのmRNAの翻訳はキャップ依存性の走査機構によることができるのに対し、軽鎖からのmRNAの翻訳はキャップ非依存性の機構によって、例えばIRESによって行うことができる。
いくつかの態様において、抗体分子または抗体由来抗原結合断片は、宿主細胞内の分子の高発現を可能にするのに十分な期間、宿主細胞を培養することによって産生される。いくつかの態様において、分子は哺乳動物細胞において、例えば無血清培地中または化学的に明確な培地中のCHO細胞において、発現される。いくつかの態様において、抗体分子または抗体由来抗原結合性断片は、培養培地から分泌ポリペプチドとして回収されるか、または、例えば分泌シグナルなしで発現させた場合には、宿主細胞溶解物から回収することができる。
本明細書に記載の抗体分子または抗体由来抗原結合断片が、組換え発現により一旦産生されると、それは、当該分野で免疫グロブリン分子の精製のために知られている任意の方法によって精製することができ、例えばクロマトグラフィー(例えば、イオン交換、アフィニティー、特にプロテインA後の特異的抗原に対するアフィニティー、およびサイジングカラムクロマトグラフィー)、遠心分離、溶解度差、沈殿、濾過、逆相HPLC、または分子の実質的に均質で生物学的に活性な製剤を得るためのタンパク質の精製のための任意の他の標準的な技術によって、精製することができる。さらに、本明細書に記載の抗体または抗体由来抗原結合断片は、異種ポリペプチド配列に融合させて、精製を容易にすることができる。
特定の態様において、本明細書に記載の抗体または抗体由来抗原結合断片は、単離または精製されている。例えば、特定の態様において、本明細書に記載の抗体または抗体由来抗原結合断片の製剤は、細胞物質、培地成分および/または化学的前駆体を実質的に含まない。「細胞物質を実質的に含まない」という言葉は、抗体または抗体由来抗原結合断片の製剤であって、該抗体または抗体由来抗原結合断片が、これが単離または組み換え的に産生されたところの細胞の細胞成分から分離されている前記製剤を含む。抗体または抗体由来抗原結合断片が組換え的に産生される場合、これは一般的に、培養培地を実質的に含まず、すなわち培養培地は、タンパク質製剤の体積の約20%、10%、2%、1%、0.5%または0.1%未満である。抗体または抗体由来抗原結合断片が化学合成により製造される場合、それは一般的に化学的前駆体または他の化学物質を実質的に含まず、すなわち、タンパク質の合成に関与する化学的前駆体または他の化学物質から分離されている。したがって、抗体または抗体由来抗原結合断片のかかる製剤は、目的の抗体または目的の抗体由来抗原結合断片以外の化学的前駆体または化合物を、約30%、20%、10%、5%未満(乾燥重量で)で有する。
6.4 医薬組成物
本明細書で提供されるのは、本明細書に記載の抗体または抗体由来抗原結合断片を含む、組成物、医薬組成物である。特定の側面において、本明細書に記載の組成物は、in vitro、in vivo、またはex vivoで使用することができる。特定の態様において本明細書で提供されるのは、本明細書に記載の抗体または抗体由来抗原結合断片および薬学的に許容し得る担体または賦形剤を含む、医薬組成物である。
本明細書で提供される抗体または抗体由来抗原結合断片を含む治療用組成物は、所望の純度を有する抗体を、任意の生理学的に許容し得る担体、賦形剤または安定剤と混合することによって、凍結乾燥製剤または水溶液の形態において、貯蔵用に調製することができる(Remington’s Pharmaceutical Sciences (1990) Mack Publishing Co., Easton, PA;Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 21st ed. (2006) Lippincott Williams & Wilkins, Baltimore, MD)。許容し得る担体、賦形剤、または安定剤は、用いられる用量および濃度で受容者に非毒性であり、リン酸塩、クエン酸塩、無水クエン酸ナトリウム、および他の有機酸などの緩衝液;および/またはTWEEN(登録商標)、PLURONICS(登録商標)等の非イオン性界面活性剤またはポリエチレングリコール(PEG)を含む。
本明細書に記載のものなどの組成物はまた、処置される特定の徴候の必要に応じて、1より多くの活性化合物(例えば、分子、例えば本明細書に記載の1つの抗体または複数抗体)を含むことができる。一定の態様において、製剤は、本明細書で提供される抗体または抗体由来抗原結合断片および、互いに悪影響を及ぼさない相補的活性を有する1または2以上の活性化合物を含む。かかる分子は、意図する目的に有効な量において組み合わせて適切に存在する。例えば、本明細書に記載の抗体または抗体由来抗原結合断片は、1または2以上の他の治療剤と組み合わせることができる。かかる併用療法は、患者に対して、連続的に、または同時にまたは順番に投与することができる。
in vivo投与に使用される組成物は、無菌であることができる。これは、例えば滅菌濾過膜を通す濾過などによって容易に達成される。
特定の側面において、本明細書で提供される医薬組成物は、治療有効量の本明細書で提供される抗体または抗体由来抗原結合断片、および任意に1または2以上の追加の予防剤または治療剤を、薬学的に許容される担体中に含む。かかる医薬組成物は、乾癬などの本明細書に記載の障害または疾患、またはその1もしくは2以上の症状の、予防および/または処置に有用である。「治療有効量」という用語は、安全で、疾患を予防または処置するのに十分な量を指す。本明細書で用いる場合、用語「処置する」、「処置された」または「処置すること」または「処置」は、疾患を有する対象に、有益または所望の臨床結果をもたらすことを意味するために使用される。有益または所望の臨床結果としては、限定はされないが、症状の緩和、疾患の程度の減少、疾患の安定な状態(すなわち、悪化しない)、疾患進行の遅延または緩徐、疾患状態の改善または緩和、および寛解(部分的または全体的を問わず)を含み、検出可能または検出不可能かどうかは問わない。「処置」はまた、処置を受けない場合に予測される生存と比較して、生存期間の延長を意味することができる。
本明細書で提供される抗体または抗体由来抗原結合断片の投与に適した医薬担体は、投与の特定の様式に適することが当業者に知られている、任意のかかる担体を含む。一態様において、抗体または抗体由来抗原結合断片は、例えば非経口投与用の無菌液剤または懸濁剤などの、適当な医薬製剤に製剤化される。
また、本明細書に記載の抗体または抗体由来抗原結合断片は、組成物中の唯一の薬学的活性成分として製剤化することができ、または他の活性成分(1または2以上の他の予防剤または治療剤など)と組み合わせることができる。
組成物において、本明細書で提供される抗体または抗体由来抗原結合断片は、好適な医薬担体と混合される。組成物中の抗体または抗体由来抗原結合断片の濃度は、例えば、投与されると、本明細書に記載の障害または疾患(例えば炎症性障害)またはその症状を予防および/または処置する量を送達するのに、有効であることができる。
一態様において、組成物は、単回投与用に製剤化される。組成物を製剤化するために、化合物の重量分率は、障害を緩和、処置し、または1もしくは2以上の症状を改善するような有効濃度で、選択された担体中に溶解、懸濁、分散され、または他の方法で混合される。
一定の側面において、本明細書で提供される抗体または抗体由来抗原結合断片は、処置する患者に対して望ましくない副作用がないか、または副作用が最小限もしくは無視できる状態で、治療的に有用な効果を発揮するのに十分な有効量において、薬学的に許容される担体に含有される。治療有効濃度は、経験的に、ルーチンの方法を用いてin vitroおよびin vivo系において化合物を試験し、次にこれからヒトへの投与量について外挿することによって、決定することができる。
医薬組成物中の抗体または抗体由来抗原結合断片の濃度は、例えば、抗体または抗体由来抗原結合断片の物理化学的特性、投与スケジュール、および投与する量ならびに当業者に公知の他の因子に依存するであろう。
別の態様において医薬組成物は、1日体重1kgあたり、約0.001mg〜約100mgの抗体または抗体由来抗原結合断片の用量を提供する。医薬投与単位形態は、約0.001mgから約100mgを、および/または投与単位形態当たり他の任意の必須成分との組み合わせで提供するように調製することができる。特定の態様において、抗体または抗体由来抗原結合断片は、40mg/mLの濃度で製剤化される。
抗体または抗体由来抗原結合断片は、1度に投与することができ、または時間間隔をあけて投与される多数のより少ない用量に分割することができる。正確な投与量および処置の期間は、処置される本明細書に記載の疾患または障害の関数であり、既知の試験プロトコルを用いて経験的に、またはin vivoもしくはin vitro試験データからの外挿によって、決定できることが理解される。濃度および投与量の値は、緩和すべき疾患または障害の重症度によっても変化し得ることに留意すべきである。さらに、任意の特定の対象について、具体的な投与レジメンは、個々のニーズと組成物の投与を管理または監督する人の専門的判断に従って、経時的に調整できることを理解すべきである。
医薬組成物は、ヒトおよび動物への投与のために単位剤形で、例えば、本明細書に記載の抗体または抗体由来抗原結合断片の好適な量を含む無菌非経口液剤または懸濁剤として提供される。一態様において、抗体または抗体由来抗原結合断片を製剤化し、単位剤形または複数の剤形で投与する。本明細書において単位用量形態は、ヒトおよび動物対象に適しかつ当該技術分野で知られているように個別に包装された、物理的に別個の単位を指す。各単位用量は、所望の治療効果を生じるのに十分な抗体または抗体由来抗原結合断片の所定の量を、必要な医薬担体、ビヒクルまたは希釈剤と共に含有する。単位用量形態の例としては、アンプルおよび注射器が挙げられる。単位用量形態は、その一部または複数を投与することができる。複数用量形態は、分離された単位投与形態で投与される、一つの容器に包装された複数の同一の単位剤形である。複数用量形態の例としては、バイアル、またはパイントもしくはガロンのボトルを含む。したがって、複数用量形態は、包装で分離されていない、複数の単位用量である。
一定の態様において、本明細書に記載の抗体または抗体由来抗原結合断片は、液体医薬組成物である。液体の薬学的に投与可能な組成物は、本明細書に記載の抗体を、例えば、水、生理食塩水、水性デキストロース、グリセロール、グリコール、エタノールなどの担体中に、溶解、分散、またはそれ以外で混合することにより調製することができ、それによって液剤または懸濁剤を形成する。所望であれば、投与される医薬組成物はまた、湿潤剤、乳化剤、可溶化剤、およびpH緩衝剤などの非毒性補助物質を少量含有することができる。
かかる剤形を調製する実際の方法は当業者に知られているか、または明らかである;例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences (1990) Mack Publishing Co., Easton, PA;Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 21st ed. (2006) Lippincott Williams & Wilkins, Baltimore, MDを参照。
抗体を、非毒性担体から構成されるバランスにおいて0.005%〜99.9%の範囲で含有する、剤形または組成物を調製することができる。これらの組成物の調製のための方法は当業者に知られている。
一態様において、非経口投与は注入を特徴とし、皮下、筋肉内または静脈内のいずれもが本明細書中で意図される。注射剤は、液体の液剤または懸濁剤、液体中の液剤もしくは懸濁剤に適した注射前の固体形態、またはエマルジョンのいずれかとして、従来の形態で調製することができる。注射剤、液剤およびエマルジョンは、1または2以上の賦形剤も含む。適当な賦形剤は、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロールまたはエタノールである。さらに、必要に応じて、投与される医薬組成物はまた、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤、安定剤、溶解促進剤、および他のかかる薬剤などの非毒性補助物質を、少量含有することができる。他の投与経路としては、腸内投与、脳内投与、経鼻投与、動脈内投与、心臓内投与、骨内注入、髄腔内投与、静脈内注入、皮下移植または注射、筋肉内投与、直腸内投与、膣内投与、胃内投与、気管内投与、肺内投与および腹腔内投与を含んでよい。
非経口投与のための製剤は、すぐに注射できる無菌液剤、使用直前に溶媒と組み合わせることができる、例えば凍結乾燥粉末などの無菌乾燥可溶性産物であって、すぐに注射できる無菌懸濁剤、使用直前にビヒクルと組み合わせることができる無菌乾燥不溶性産物、および無菌エマルジョンを含む。液剤は、水性または非水性のいずれかであり得る。
静脈内に投与する場合、好適な担体には、生理食塩水またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、水、および、例えばグルコース、ポリエチレングリコール、およびポリプロピレングリコールおよびそれらの混合物などの増粘剤および可溶化剤を含有する溶液が挙げられる。
非経口製剤に使用される薬学的に許容し得る担体としては、水性ビヒクル、非水性ビヒクル、抗菌剤、等張化剤、緩衝剤、酸化防止剤、局所麻酔剤、懸濁剤および分散剤、乳化剤、金属イオン封鎖剤またはキレート剤および他の薬学的に許容し得る物質が含まれる。医薬担体にはまた、水混和性ビヒクルのためのエチルアルコール、ポリエチレングリコールおよびプロピレングリコール;およびpH調整のための水酸化ナトリウム、塩酸、クエン酸または乳酸も含まれる。
一例として、抗体を含有する無菌水性液剤の静脈内または動脈内注入は、投与の効果的な様式である。別の態様は、所望の薬理学的効果をもたらすために必要に応じて注射される、活性物質を含む無菌の水性または油性液剤または懸濁剤である。
特定の態様において、医薬製剤は、クエン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、クエン酸、ポリソルベート80、および水を含む。特定の態様において、医薬製剤は、クエン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、およびクエン酸を含む。特定の態様において、医薬製剤は、9.1mMのクエン酸ナトリウム、150mMの塩化ナトリウム、および0.9mMのクエン酸を含む。特定の態様において、医薬製剤は、本明細書に記載の抗体またはそのコンジュゲートを、0.267mMの濃度で含む。特定の態様において、医薬製剤は、2.676g/Lのクエン酸ナトリウム、8.766g/Lの塩化ナトリウム、0.2g/Lのポリソルベート80、および0.189g/Lのクエン酸を含む。特定の態様において、医薬製剤は、本明細書に記載の抗体または抗体由来抗原結合断片を、40g/Lの濃度で含む。好ましくは、前述の医薬製剤はpH6.0である。
別の態様において、医薬組成物は、液剤、エマルジョンおよび他の混合物として投与するために再構成することができる、凍結乾燥粉末である。それらはまた、固体またはゲル剤として再構成および製剤化することができる。
凍結乾燥粉末は、適当な溶媒中に、本明細書で提供される抗体を溶解することによって調製される。いくつかの態様において、凍結乾燥粉末は無菌である。溶媒は、粉末または粉末から調製された再構成溶液の安定性やその他の薬理学的な成分を改善する、賦形剤を含むことができる。使用できる賦形剤としては、デキストロース、ソルビタール、フルクトース、コーンシロップ、キシリトール、グリセリン、グルコース、スクロースまたは他の適切な薬剤を含むが、これらに限定されるものではない。溶媒はまた、例えばクエン酸、リン酸ナトリウムまたはカリウム、または当業者に公知の他のかかる緩衝液などの緩衝液を、一態様においてはほぼ中性のpHにおいて、含むことができる。溶液のその後の滅菌濾過と、当業者に公知の標準条件下での凍結乾燥により、所望の製剤が提供される。一態様において、得られた溶液は、凍結乾燥のためにバイアルに分配される。各バイアルは、化合物の単回投与量または複数回投与量を含む。凍結乾燥粉末は、例えば約4℃から室温などの、適切な条件下で保存することができる。
注射用のこの凍結乾燥粉末の水による再構成は、非経口投与のための製剤を提供する。再構成のために、凍結乾燥粉末を滅菌水または他の適当な担体に添加する。正確な量は、選択された化合物に依存する。かかる量は、経験的に決定することができる。
6.5 治療法
本明細書に記載の抗体および抗体由来抗原結合断片は、健常な個体または特定の障害または疾患を有しない個体において見出される活性化T細胞の増殖および/または数と比較して、活性化T細胞の増殖および/または数の増加に関連付けられているかこれに(全体的または部分的に)起因する障害および疾患を処置するのに有用である。かかる疾患および障害は、当業者に知られているか、または当業者によって確認することができる。特定の態様において、本明細書に記載の抗体および抗体由来抗原結合断片は、炎症性疾患または障害を処置するのに有用である。一態様において、炎症性疾患は自己免疫疾患である。特定の態様において、炎症性疾患または障害は、乾癬、尋常性乾癬、乾癬性関節炎、関節リウマチ、クローン病および強直性脊椎炎である。
本明細書に記載の抗体および抗体由来抗原結合断片を用いて処置することができる障害および疾患の非限定的な例としては、以下である:乾癬、クローン病、強直性脊椎炎、関節炎(関節リウマチ、若年性関節リウマチ、変形性関節症、および乾癬性関節炎を含む)、糖尿病、多発性硬化症、脳脊髄炎、重症筋無力症、全身性エリテマトーデス、自己免疫性甲状腺炎、皮膚炎(アトピー性皮膚炎および湿疹性皮膚炎を含む)、シェーグレン症候群、アフタ性潰瘍、虹彩炎、結膜炎、角結膜炎、I型糖尿病、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、喘息、アレルギー性喘息、皮膚エリテマトーデス、強皮症、膣炎、直腸炎、薬疹、ハンセン病リバーサル反応、癩性結節性紅斑、自己免疫性ブドウ膜炎、アレルギー性脳脊髄炎、急性壊死性出血性脳症、特発性両側性進行性感音難聴、再生不良性貧血、純粋な赤血球貧血、特発性血小板減少症、多発性軟骨炎、ウェゲナー肉芽腫症、慢性活動性肝炎、スティーブンス・ジョンソン症候群、特発性スプルー、扁平苔癬、グレーブス病、サルコイドーシス、原発性胆汁性肝硬変、後部ブドウ膜炎、間質性肺線維症、アトピー性アレルギーなどのアレルギー、AIDS、および白血病またはリンパ腫などのT細胞腫瘍(T cell neoplasms)。
さらに、抗体および抗体由来抗原結合断片は、健常な個体または特定の障害または疾患を有しない個体において見出される活性化T細胞の増殖および/または数と比較して、活性化T細胞の増殖および/または数の増加に関連付けられているかこれに(全体的または部分的に)起因する一定の障害および疾患を、予防および/または処置するのに有用である。本明細書に記載の抗体および抗体由来抗原結合断片を用いて予防および/または処置することができる障害および疾患の非限定的例としては、例えば骨髄移植、肝移植、腎移植、または任意の器官または組織の移植などの、移植片対宿主病および移植拒絶反応の症例(同種または異種組織を用いた移植拒絶反応を含む)が挙げられる。
したがって、本明細書で提供されるのは、本明細書に記載の抗体または抗体由来抗原結合断片を用いて、本明細書に記載の疾患および障害を予防および処置するための方法である。特定の態様において、かかる方法は、それを必要とする対象に対して、本明細書に記載の抗体または抗体由来抗原結合断片の治療有効量を投与することを含む。特定の態様において、本明細書に記載の疾患または障害を処置するために投与される抗体は、15A7Hである。
一態様において、疾患または障害の「処置」、または「処置すること」とは、疾患または障害、またはその少なくとも一つの識別可能な症状の改善を意味する。別の態様において、「処置」または「処置すること」は、必ずしも対象によって認識可能ではない、疾患または障害に関連する少なくとも1つの測定可能な物理的パラメータの改善を指す。さらに別の態様において、「処置」または「処置すること」は、疾患または障害の進行を、物理的に(例えば、識別可能な症状の安定化)、生理学的に(例えば、物理的パラメータの安定化)、またはその両方で、阻害することを指す。
特定の態様において、本明細書に記載の処置方法は、本明細書に記載の疾患または障害の進行、重症度、および/または持続期間の低減または改善を提供する。さらなる特定の態様において、本明細書に記載の処置方法は、本明細書に記載の疾患または障害の1または2以上の症状を軽減する。
特定の態様において、本明細書に記載の障害または疾患を処置するための方法は、本明細書に記載の抗体または抗体由来抗原結合断片の治療有効量の投与により、以下の効果の少なくとも1、2、3、4またはそれ以上を達成することができる:(i)障害または疾患、および/またはこれに関連する1または2以上の症状の、重症度の軽減または改善;(ii)障害または疾患に関連する1または2以上の症状の持続時間の低減;(iii)障害または疾患の再発の予防;(iv)障害または疾患、および/またはこれに関連する1または2以上の症状の退行;(v)対象の入院の減少;(vi)入院期間の減少;(vii)対象の生存の増加;(viii)障害または疾患、および/またはこれに関連する1または2以上の症状の進行の阻害;(ix)別の治療の治療効果の増強または改善;(x)障害または疾患の減少または排除;(xi)死亡率の減少;(xii)入院率の減少;(xiii)障害または疾患に関連する1または2以上の症状の発達または発症の予防。
一態様において、障害または疾患の「予防」または「予防すること」とは、障害または疾患の発症または発達の、完全または部分的な阻害を意味する。
特定の態様において、本明細書に記載の方法に従って処置される疾患または障害は、乾癬である。一般に、Tリンパ球は乾癬の病因において重要な役割を果たすことが認められている。特定の態様において、乾癬を処置する方法は、これを必要とする対象に対して、本明細書に記載の抗体または抗体由来抗原結合断片の治療有効量を投与することを含む。別の特定の態様において、乾癬の1または2以上の症状を改善または予防するための方法は、これを必要とする対象に対して、本明細書に記載の抗体または抗体由来抗原結合断片の治療有効量を投与することを含む。乾癬の症状としては、限定することなく、銀白色の鱗屑で覆われた皮膚の紅斑、皮膚の隆起変色部、皮膚の小さな落屑性斑点、乾燥肌、ひび割れた肌が挙げられ、膿疱、かゆみ肌、および肥厚した、へこんだ、または隆起した爪、腫れてこわばった関節なども含む。
別の態様において、本明細書に記載の方法に従って処置される疾患または障害は、尋常性乾癬である。尋常性乾癬(plaque psoriasis)または尋常性乾癬(psoriasis vulgaris)は乾癬の最も一般的な形態であり、銀白色の鱗屑で覆われた、境界が明確で盛り上がった紅斑性皮膚斑を特徴としている。四肢、腰仙部、および頭皮の伸筋表面が関与する病変の好発が存在する。対応する病理組織学的所見としては、真皮と表皮の顕著な炎症性細胞浸潤、拡張した血管の数の増加、およびケラチノサイトが無秩序に分化した表皮の大幅な肥厚、および過角化症が挙げられる。尋常性乾癬の患者の約3分の1は、中程度または重度の疾患を有すると分類され、結果的に、単なる局所治療を越えた治療の候補である。
特定の態様において、尋常性乾癬を処置する方法は、これを必要とする対象に対して、本明細書に記載の抗体または抗体由来抗原結合断片の治療有効量を投与することを含む。別の特定の態様において、尋常性乾癬の1または2以上の症状を改善または予防するための方法は、これを必要とする対象に対して、本明細書に記載の抗体または抗体由来抗原結合断片の治療有効量を投与することを含む。尋常性乾癬の症状としては、限定することなく、銀白色の鱗屑で覆われた皮膚の紅斑、皮膚の隆起した変色部、皮膚の小さな落屑性斑点、乾燥肌、ひび割れた肌が挙げられ、膿疱、かゆみ肌、および肥厚した、へこんだ、または隆起した爪、腫れてこわばった関節なども含む。
別の態様において、本明細書に記載の方法に従って処置される障害は、慢性尋常性乾癬である。特定の態様において、慢性尋常性乾癬を処置する方法は、これを必要とする対象に対して、本明細書に記載の抗体または抗体由来抗原結合断片の治療有効量を投与することを含む。別の特定の態様において、慢性尋常性乾癬の1または2以上の症状を改善または予防するための本明細書に記載の方法は、これを必要とする対象に対して、本明細書に記載の抗体または抗体由来抗原結合断片の治療有効量を投与することを含む。慢性尋常性乾癬の症状としては、限定することなく、膝、肘、腰仙領域、頭皮、および爪を含むがこれに限定されない身体の任意の部分の上の、硬貨サイズからそれより大きいサイズの、単一または複数の隆起して赤くなった皮膚の変色部を含む。
別の態様において、本明細書に記載の方法に従って処置される障害は、滴状乾癬である。別の特定の態様において、滴状乾癬を処置する方法は、これを必要とする対象に対して、本明細書に記載の抗体または抗体由来抗原結合断片の治療有効量を投与することを含む。別の特定の態様において、滴状乾癬の1または2以上の症状を改善または予防するための方法は、これを必要とする対象に対して、本明細書に記載の抗体または抗体由来抗原結合断片の治療有効量を投与することを含む。滴状乾癬の症状としては、限定することなく、皮膚の上の水滴形状の鱗状プラークのフレア(発赤)と、続く連鎖球菌咽頭感染などの感染である。
別の態様において、本明細書に記載の方法に従って処置される疾患または障害は、逆位乾癬(inverse psoriasis)である。特定の態様において、逆位乾癬(intertiginous psoriasisおよびflexural psoriasisとも呼ばれる)を処置する方法は、これを必要とする対象に対して、本明細書に記載の抗体または抗体由来抗原結合断片の治療有効量を投与することを含む。別の特定の態様において、逆位乾癬の1または2以上の症状を改善または予防するための方法は、これを必要とする対象に対して、本明細書に記載の抗体または抗体由来抗原結合断片の治療有効量を投与することを含む。逆位乾癬の症状としては、限定することなく、尋常性乾癬に関連する落屑とは異なり、以下の身体の部分:脇の下、鼠蹊部、胸の下、および性器や臀部周辺のその他の皮膚のひだの1または2以上における、滑らかで通常は湿った皮膚の領域が赤くなり炎症を起こしているものを含む。
別の態様において、本明細書に記載の方法に従って処置される疾患または障害は、膿疱性乾癬である。特定の態様において、膿疱性乾癬を処置する方法は、これを必要とする対象に対して、本明細書に記載の抗体または抗体由来抗原結合断片の治療有効量を投与することを含む。別の特定の態様において、本明細書に記載の膿疱性乾癬の1または2以上の症状を改善または予防する方法は、これを必要とする対象に対して、本明細書に記載の抗体または抗体由来抗原結合断片の治療有効量を投与することを含む。膿疱性乾癬の症状としては、限定することなく、大きさや位置が異なるが多くは手と足の、膿のたまった膿疱を含む。
別の態様において、本明細書に記載の方法に従って処置される疾患または障害は、乾癬性紅皮症である。特定の態様において、乾癬性紅皮症を処置する方法は、これを必要とする対象に対して、本明細書に記載の抗体または抗体由来抗原結合断片の治療有効量を投与することを含む。別の特定の態様において、本明細書に記載の乾癬性紅皮症の1または2以上の症状を改善または予防する方法は、これを必要とする対象に対して、本明細書に記載の抗体または抗体由来抗原結合断片の治療有効量を投与することを含む。乾癬性紅皮症の症状としては、限定することなく、皮膚の周期的な広範で燃えるような発赤および、小さな薄片というよりシート状の、鱗屑の脱落が挙げられる。皮膚の発赤および脱落には、多くの場合、激しいかゆみや痛み、心拍数増加、および体温の変動を伴う。
別の態様において、本明細書に記載の方法に従って処置される疾患または障害は、関節リウマチである。特定の態様において、関節リウマチを処置する方法は、これを必要とする対象に対して、本明細書に記載の抗体または抗体由来抗原結合断片の治療有効量を投与することを含む。別の特定の態様において、本明細書に記載の関節リウマチの1または2以上の症状を改善または予防する方法は、これを必要とする対象に対して、本明細書に記載の抗体または抗体由来抗原結合断片の治療有効量を投与することを含む。関節リウマチの症状としては、限定することなく以下が挙げられる:疲労、食欲不振、微熱、腺の腫れ、脱力;手首、肘、肩、腰、膝、足首、つま先、顎、手、足、指、および/または首の関節痛;朝のこわばり、呼吸時の胸痛(胸膜炎)、目の灼熱感、かゆみ、および目脂、皮膚の下の結節、しびれ、うずき、または手や足の灼熱感。
別の態様において、本明細書に記載の方法に従って処置される疾患または障害は、クローン病である。特定の態様において、クローン病を処置する方法は、これを必要とする対象に対して、本明細書に記載の抗体または抗体由来抗原結合断片の治療有効量を投与することを含む。別の特定の態様において、本明細書に記載のクローン病の1または2以上の症状を改善または予防する方法は、これを必要とする対象に対して、本明細書に記載の抗体または抗体由来抗原結合断片の治療有効量を投与することを含む。クローン病の症状としては、限定することなく以下が挙げられる:痙攣性腹部(腹部領域)疼痛、発熱、疲労、食欲不振、便通時の疼痛(しぶり)、持続性の水様性下痢、意図的でない体重減少、便秘、眼の炎症、瘻孔(通常、直腸領域の周りで、膿、粘液、または便の排出を引き起こし得る)、関節痛、肝臓の炎症、口内炎、直腸出血および血便、皮膚のしこりまたはただれ(潰瘍)、腫れた歯茎。
別の態様において、本明細書に記載の方法に従って処置される疾患または障害は、強直性脊椎炎である。特定の態様において、強直性脊椎炎を処置する方法は、これを必要とする対象に対して、本明細書に記載の抗体または抗体由来抗原結合断片の治療有効量を投与することを含む。別の特定の態様において、強直性脊椎炎の1または2以上の症状を改善または予防する方法は、これを必要とする対象に対して、本明細書に記載の抗体または抗体由来抗原結合断片の治療有効量を投与することを含む。強直性脊椎炎の症状としては、限定することなく以下が挙げられる:腰部および臀部、脊椎、および/または首の頻繁な痛みや凝り;および、肋骨、肩甲骨、腰、大腿やかかとに広がる疼痛および圧痛;眼の炎症(虹彩毛様体炎およびブドウ膜炎)に起因する、赤い眼、眼痛、視力低下、飛蚊症および羞明(まぶしがり症);疲労;および吐気。
別の態様において、本明細書に記載の方法に従って処置される疾患または障害は、糖尿病である。特定の態様において、糖尿病を処置する方法は、これを必要とする対象に対して、本明細書に記載の抗体または抗体由来抗原結合断片の治療有効量を投与することを含む。別の特定の態様において、糖尿病の1または2以上の症状を改善または予防する方法は、これを必要とする対象に対して、本明細書に記載の抗体または抗体由来抗原結合断片の治療有効量を投与することを含む。糖尿病の症状としては、限定することなく以下が挙げられる:体重減少、多尿(頻尿)、多飲症(渇きの増加)、多食(飢餓の増加)、心血管疾患、糖尿病性網膜症、糖尿病性神経障害、高浸透圧性非ケトン性状態、および糖尿病性ケトアシドーシス。
特定の態様において、本明細書に記載の抗体または抗体由来抗原結合断片は、1または2以上の別の治療を以前に受けたか、または現在受けている患者に投与される。
特定の態様において、本明細書に記載の抗体または抗体由来抗原結合断片は、1または2以上の別の治療を以前に受けたか、または現在受けている患者に投与される。他の特定の態様において、本明細書に記載の抗体または抗体由来抗原結合断片は、抗炎症療法に対して抵抗性または難治性であるか、またはそれが疑われる患者に投与される。
一定の側面において、本明細書で提供されるのは、必要とする個体においてT細胞を死滅させるための方法であって、ここで前記方法は、前記個体に対して、本明細書に記載の抗体または抗体由来抗原結合断片の有効量を投与することを含む。一定の側面において、本明細書で提供されるのは、必要とする個体において活性化T細胞のアポトーシスを誘導する方法であって、ここで前記方法は、前記個体に対して、本明細書に記載の抗体または抗体由来抗原結合断片の有効量を投与することを含む。
一定の側面において、本明細書に記載の抗体または抗体由来抗原結合断片またはその医薬組成物は、任意の好適な方法により、必要とする対象に投与することができる。投与法の非限定的例としては、以下を含む:静脈内注入、皮下注射または移植、筋肉内、髄腔内、腹腔内、直腸内、膣内、鼻腔内、胃内、気管内、または肺内送達、および/または、本明細書に記載されたかまたは当技術分野で知られている、任意の他の物理的送達。一態様において、抗体または抗体由来抗原結合断片またはその医薬組成物は、それを必要とする対象に全身的に(例えば、非経口で)投与される。別の態様において、抗体またはその医薬組成物は、それを必要とする対象に局所的に(例えば、腫瘍内に)投与される。各用量は、同一の投与経路によって投与されてもされなくてもよい。いくつかの態様において、本明細書に記載の抗体または抗体由来抗原結合断片は、複数の投与経路を介して同時に、または本明細書に記載の同一もしくは異なる抗体の別の用量に続いて、投与することができる。
疾患またはその症状が処置されている場合、抗体または抗体由来抗原結合断片の投与は、典型的には、疾患またはその症状の発症後に行う。疾患の症状を予防する場合は、抗体または抗体由来抗原結合断片の投与は、典型的には症状の発症前に行う。
本明細書に記載の抗体または抗体由来抗原結合断片またはその医薬組成物の投与量および投与頻度は、副作用を最小限に抑えつつ、予防および/または処置する方法に従って投与される。特定の対象に投与される本明細書に記載の抗体または抗体由来抗原結合断片またはその医薬組成物の正確な投与量は、その処置を必要とする対象に関連する因子に照らして、医師により決定することができる。考慮され得る要因は、疾患状態の重症度、対象の一般的健康状態、対象の年齢および体重、食事、投与の時間および頻度、他の治療剤または薬物との組み合わせ、反応感受性、および治療に対する耐性/応答を含む。本明細書に記載の抗体または抗体由来抗原結合断片またはその医薬組成物の投与量および投与頻度は、抗体または抗体由来抗原結合断片の十分なレベルを提供するため、または所望の効果を維持するために、経時的に調整することができる。
製剤に使用する正確な用量はまた、投与経路、および炎症性障害または疾患の重症度に依存し、医師の判断および各患者の状況に従って決定されるべきである。
有効用量は、in vitro試験または動物モデル試験系に由来する用量反応曲線から外挿することができる。
一態様において、本明細書に記載の疾患または障害を予防および/または処置するために患者に投与される、本明細書に記載の抗体または抗体由来抗原結合断片の投与量は、典型的には患者の体重1kg当たり、0.001mg/kg〜100mg/kgの範囲である。別の態様において、本明細書に記載の疾患または障害の予防および/または処置のために治療的に有効な抗体または抗体由来抗原結合断片の適切な投与量は、患者の体重1kg当たり、0.01mg/kg〜100mg/kgの範囲である。
特定の態様において、本明細書に記載の抗体または抗体由来抗原結合断片の「有効量」は、以下の効果の少なくとも1、2、3、4、または5以上を達成するのに十分な、本明細書に記載の抗体または抗体由来抗原結合断片の量を言う:(i)本明細書に記載の疾患または障害および/またはこれに関連する1または2以上の症状の重症度の低減または改善:(ii)本明細書に記載の疾患または障害に関連する1または2以上の症状の持続時間の低減;(iii)疾患または障害の再発予防;(iv)疾患または障害および/またはこれに関連する1または2以上の症状の後退;(v)対象の入院の低減;(vi)入院期間の低減;(vii)対象の生存の増加;(viii)疾患または障害および/またはこれに関連する1または2以上の症状の進行の阻害;(ix)別の治療の治療効果の増強または改善;(x)疾患または障害の低減または消失;(xi)死亡率の減少;(xii)入院率の低下;(xiii)疾患または障害に関連する1または2以上の症状の発達または発症の予防;および(xiv)例えばアンケートなどの当該分野で周知の方法により評価された、生活の質の改善。いくつかの態様において、本明細書で使用する「有効量」は、本明細書に記載の抗体の、下記第6節に記載された特定の結果を達成する量を指す。一定の態様において、抗体または抗体由来抗原結合断片の有効量は、約0.01mg〜約1,000mgである。
いくつかの態様において、本明細書に記載の抗体または抗体由来抗原結合断片の単回用量は、本明細書に記載の障害または疾患を予防および/または処置するために、患者に対して1または2回以上投与される。
特定の態様において、抗体または抗体由来抗原結合断片またはその医薬組成物は、対象に対して、本明細書に提示される障害または疾患を予防および/または処置するための方法に従って周期的に投与され、ここで該抗体または抗体由来抗原結合断片または医薬組成物は、一定の期間投与され、その後休止の期間が続く(すなわち、抗体または抗体由来抗原結合断片または医薬組成物は、ある期間は投与されない)。
本明細書で提供される抗体または抗体由来抗原結合断片は、本明細書に記載の障害または疾患を予防および/または処置するために、1または2以上の追加の療法(例えば、薬剤)の投与の前に、これと当時に、またはその後に、投与することができる。「組み合わせて」という用語の使用は、抗体または抗体由来抗原結合断片および1または2以上の追加の療法が対象に投与される順序を制限しない。特定の態様において、療法は、連続的にまたは順番に投与することができる。
別の特定の態様において、本明細書に記載の抗体または抗体由来抗原結合断片は、別の療法(例えば、抗炎症剤)のある量と組み合わせて用いて、本明細書に記載の障害または疾患を予防および/または処置する。特定の態様において、かかる併用療法は相乗効果を有する。別の態様において、かかる組み合わせは相加効果を有する。
特定の態様において、抗体または抗体由来抗原結合断片および追加の療法は、対象に対して、抗体または抗体由来抗原結合断片および/または追加の療法のより低い投与量(例えば、最適以下の用量)の使用を可能にし、および/または、本明細書に記載の抗体または抗体由来抗原結合断片または追加の療法のより少ない投与頻度を可能にする。一定の態様において、本明細書に記載の抗体または抗体由来抗原結合断片および/または追加の療法のより低い投与量を利用する能力、および/または、本明細書に記載の抗体または抗体由来抗原結合断片または前記追加の療法をより少ない頻度で投与する能力は、本明細書に記載の障害または疾患の予防および/または処置において、対象に対する抗体または抗体由来抗原結合断片、または前記追加の療法に関連するそれぞれの毒性を、抗体または追加の療法それぞれの有効性を低減することなく、低下させる。いくつかの態様において、追加の療法と組み合わせた本明細書に記載の抗体または抗体由来抗原結合断片の投与は、本明細書に記載の障害または疾患の予防および/または処置における、本明細書に記載の抗体または抗体由来抗原結合断片および/または前記追加の療法の有効性の改善をもたらす。いくつかの態様において、本明細書に記載の抗体または抗体由来抗原結合断片の投与および/または1または2以上の追加の療法は、任意の単一療法の使用に関連する有害または望ましくない副作用を、回避または低減する。
特定の態様において、本明細書に記載の抗体または抗体由来抗原結合断片を投与される対象は、動物(例えば、カニクイザルまたはヒト対象)である。好ましい態様において、本明細書に記載の抗体または抗体由来抗原結合断片を投与される対象は、ヒトである。特定の態様において、抗体または抗体由来抗原結合断片を投与される対象は、本明細書に記載の疾患または障害の1または2以上の症状を示す。
6.6 細胞に基づく方法
本明細書で提供されるのは、PSGL−1を発現する細胞においてアポトーシスを誘導または増強するための、細胞を本明細書に記載の抗体の有効量と接触させることを含む、方法である。一態様において、細胞は免疫細胞である。特定の態様において、細胞はT細胞である。さらに特定の態様において、細胞は、活性化T細胞である。アポトーシスを検出するための方法は当技術分野において記載されており、当業者により容易に行うことができる。特定の態様において、PSGL−1を発現する活性化T細胞のアポトーシスを誘導または増強するための方法は、細胞を、本明細書に記載の抗体の有効量と接触させることを含み、ここで有効量は、当業者に知られている方法によって評価された場合に、アポトーシスを誘導または増強するのに十分な量である。
本明細書で提供されるのは、PSGL−1を発現する細胞の生存を低減または阻害するための、細胞を本明細書に記載の抗体の有効量と接触させることを含む、方法である。一態様において、細胞は免疫細胞である。特定の態様において、細胞はT細胞である。さらに特定の態様において、細胞は、活性化T細胞である。細胞生存アッセイは当技術分野において記載されており、当業者により容易に行うことができる。例えば、細胞生存率は、当分野で知られている、トリパンブルー染色または他の細胞死マーカー(例えば、アネキシン−5染色)、または生存マーカー(例えば、プロピジウムヨウ素または7−AAD除外)を用いて、評価することができる。特定の態様において、PSGL−1を発現する活性化T細胞の生存を低減または阻害する方法は、細胞を、本明細書に記載の抗体の有効量と接触させることを含み、ここで有効量は、当業者に知られた方法(例えば、トリパンブルー除外アッセイまたはプロピジウムヨウ素または7−AAD除外)によって評価された場合に、アポトーシスを低減または阻害するのに十分な量である。
6.7 キット
本明細書で提供されるのは、例えば本明細書で提供される抗体または抗体由来抗原結合断片などの本明細書に記載の医薬組成物の1または2以上の成分を充填した1または2以上の容器を含む、医薬パックまたはキットである。任意に、かかる1または2以上の容器に付随するのは、医薬品または生物学的製品の製造、使用または販売を規制する政府機関によって規定された形式の通知であることができ、この通知は、ヒトへの投与用の製造、使用または販売についての機関による承認を反映するものである。
特定の態様において、本明細書で提供されるのは、本明細書に記載の抗体または抗体由来抗原結合断片を含む第1の容器を含むキットである。特定の態様において、キットは、抗体または抗体由来抗原結合断片を真空下で凍結乾燥された無菌粉末として含むバイアルである、第1の容器を含み、キットはさらに、薬学的に許容し得る流体を含む第2の容器を含む。
特定の態様において、本明細書で提供されるのは、本明細書に記載の抗体または抗体由来抗原結合断片を含む注入装置である。特定の態様において、注入装置は、無菌溶液中の抗体を含む。特定の態様において、本明細書で提供されるのは、注射器である。
本明細書でさらに提供されるのは、上記の方法に使用することができるキットである。一態様において、キットは、本明細書に記載の抗体または抗体由来抗原結合断片、好ましくは精製抗体を、1または2以上の容器内に含む。特定の態様において、本明細書に記載のキットは、実質的に単離されたPSGL−1を対照として含む。別の特定の態様において、本明細書に記載のキットはさらに、PSGL−1と反応しない対照抗体を含む。別の特定の態様において、本明細書に記載のキットは、抗体または抗体由来抗原結合断片の、PSGL−1への結合を検出する、1または2以上の要素を含む(例えば、抗体または抗体由来抗原結合断片は、蛍光化合物、酵素基質、放射性化合物または発光化合物などの検出可能な基質にコンジュゲートすることができ、または、第1の抗体または抗体由来抗原結合断片を認識する第2抗体が、検出可能な基質にコンジュゲートすることができる)。特定の態様において、キットは、組換え的に産生されたかまたは化学的に合成されたPSGL−1を含むことができる。キットで提供されるPSGL−1はまた、固体支持体に結合させることができる。さらに特定の態様において、上述のキットの検出手段は、PSGL−1が付着している固体支持体を含む。かかるキットはまた、付着していないレポーター標識抗ヒト抗体を含むことができる。この態様において、抗体または抗体由来抗原結合断片のPSGL−1への結合は、前記レポーター標識抗体の結合により検出することができる。
7.例
この節(すなわち、6節)の例は例示のために提供されており、限定するものではない 。
7.1 例1:抗PSGL−1モノクローナル抗体を生成する
抗体h15A7は、2005年11月24日に公開された国際出願公開WO 2005/110475に記載のヒト化15A7重鎖および軽鎖の可変領域を含んでおり、この文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。h15A7抗体は、カッパ型軽鎖を有するIgG4アイソタイプの抗体である。Ser228→Pro228変異は、h15A7のヒンジ領域に変異原性プライマーを用いるPCRによって導入した。得られたh15A7のヒンジ変異体は、本明細書において15A7Hと呼ばれる。15A7Hの残りのタンパク質配列はh15A7と同一である。15A7Hのアミノ酸配列は、図7A〜Bに配列番号1および2として示されている:重鎖および軽鎖についての抗体をコードする遺伝子配列は、ベクターpAD−CMV1に由来する真核生物発現ベクターに導入した(EP 393 438に記載されている)。
15A7Hは、当技術分野で公知の方法を用いて生成した。簡単に述べると、15A7Hの重鎖および軽鎖をコードすることに加えて、それぞれジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)およびネオマイシンホスホトランスフェラーゼ選択マーカーをコードする組換え発現ベクターを、CHO−DG44宿主細胞に適合した懸濁液中に同時トランスフェクトした。安定的にトランスフェクトされた細胞の選択は、ヒポキサンチン/チミジン非含有の選択培地でのトランスフェクションおよび抗生物質G418の添加の2日後に行った。細胞を最初の選択から回収した後、DHFRベースの遺伝子増幅を、メトトレキサートの添加によって誘導した。単一細胞堆積により、CHO−DG44宿主細胞を用いてのモノクローナル抗体産生細胞株が、15A7Hのために開発された。 15A7H抗体の産生のために、細胞を、生産バイオリアクターの接種用に増殖させた。生産バイオリアクターは、8〜14日間供給バッチモードで実行した。抗体の産生を支援し、細胞培養物の産生期間を延長するために、栄養補給培地を産生段階中に添加した。細胞培養液を遠心分離およびデッドエンド濾過により回収して、細胞を効率的に除去し、生成物のさらなる精製のために細胞を含まない培養液(CCF)を提供した。収穫中に細胞を除去した後、タンパク質を、プロテインAアフィニティクロマトグラフィーおよび陰イオンおよび陽イオン交換クロマトグラフィーで精製した。さらに、2つの堅固なウイルス除去工程、低pHウイルス不活化工程およびウイルス除去用のナノ濾過工程が含まれていた。
15A7Hの純度を、キャピラリーゲル電気泳動法により決定した。試料は、SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)を用いて変性させ、ふるい媒体として作用するゲル緩衝液が充填されたキャピラリー中で、サイズに基づいて分離した。還元試料において、ジスルフィド結合は2−メルカプトエタノールで還元され、抗体の重鎖および軽鎖の別個のピークが得られる。非還元試料ではアルキル化剤のヨードアセトアミドを添加して、試料調製により誘導される任意の断片化を回避し、主要なIgGピークが無傷のままであることを保証する。
試料を界面動電的に注入し、動員されたタンパク質を、UV検出器を用いて200nmでのUV吸光度により検出した。還元試料については、重鎖および軽鎖の合計(LC+HC%)の時間補正された面積パーセント(TCA%)を報告する。非還元試料についての報告可能な値は、IgG主要ピークのTCA%である。
半抗体分子の低い量は、非還元キャピラリーゲル電気泳動(CGE)により検出され(図1)、Ser228→Pro228変異が、ヒンジ領域における鎖内ジスルフィド結合の形成を大幅に低下させたことを示す。半抗体分子の量は、 h15A7についての〜8〜10%から、15A7Hについての1%未満に低下した。
15A7Hの製剤を表6に示す。
製剤のpHは6.0である。
7.2 例2:15A7H抗体の活性化初代ヒトT細胞上の結合
15A7Hを、初代活性化ヒトCD4+T細胞における結合について試験した。
7.2.1 材料および方法
細胞培養およびT細胞活性化:末梢血のCD4+T細胞を、37℃にてRPMI完全培地中1×106で培養し、20ug/mlのPHA−L(Sigma, Catalog#L2769)を加えて2日間刺激した。細胞を、20ng/mlのIL−2(R&D systems, Catalog #RD202-IL)でさらに4〜5日間インキュベートして、「活性化CD4+T細胞」を産生した。
細胞結合アッセイ:活性化ヒトCD4+T細胞を計数し、v底の96ウェル培養プレート(Falcon BD, Catalog # 353263)内のFACS緩衝液中、1×105細胞/100μlでプレートし、氷上で30分間インキュベートした。
抗リゾチームIgG4アイソタイプ対照、h15A7、および15A7Hを、丸底希釈プレート内(Falcon, Catalog # 353077)のFACS緩衝液中で90ug/mlに希釈した。11個の、抗体調製物の3倍連続希釈液を、各抗体用にプレート全体にわたって30ug/mlの開始濃度で作製した。
デュプリケートの細胞試料をペレット化し、30μg/mlの初期開始濃度で、各抗体希釈100μl中に再懸濁した。細胞を氷上で60分間インキュベートした。細胞をペレット化し、洗浄緩衝液で洗浄し、続いて100μlの希釈した二次ヤギF(ab)2抗ヒトIgのR−PEコンジュゲート抗体を加えた。二次ヤギF(ab’)2抗ヒトIgのR−PEコンジュゲート抗体(BD Biosciences, Catalog # 554655;1.05mg/mlのストック)を、予めFACS緩衝液で1:800に希釈した。細胞を氷上で暗所で30分インキュベートし、その後ペレット化し、洗浄緩衝液で数回洗浄した。細胞を150μlの洗浄緩衝液に再懸濁し、50μlの BD Cytofix/Cytoperm固定バッファー(BD Biosciences, Catalog# 554655)を加えて固定した。
試料は、BD FACSアレイ・バイオアナライザで分析した。SSCおよびFSCに応じて設定した「リンパ球」ゲートおよび、各試料について決定された平均蛍光により、BD FACSアレイフローサイトメーターを用いて約5000のイベントが得られた。
データ分析:抗リゾチームIgG4、h15A7、および15A7H抗体の、活性化CD4+T細胞への結合親和性を、XLfit(モデル:用量応答1部位、205)を用いて、デュプリケートの各試料についての平均蛍光指数(MFI)に対する抗体濃度をプロットすることにより決定した。EC50値は、各結合曲線について決定した。
7.2.2 結果:
活性化ヒトT細胞への結合:フローサイトメトリーを用いて、15A7Hの活性化ヒトCD4+T細胞への結合を決定した。図2は、15A7Hが0.22nMのEC50で結合していることを示す。
複数のドナーから総合した結合データは、15A7Hが活性化CD4+T細胞に0.22±0.02の平均EC50で結合したことを示す。4ドナーからのEC50値を用いて、平均±SEMを計算した。抗体h15A7は同じ条件下で試験し、活性化CD4+T細胞に0.27±0.05の平均EC50で結合した。したがって、15A7Hとh15A7は、活性化T細胞に対して同等の結合を示した(表7参照)。
7.3 例3:ヒトにおける15A7Hのin vivo活性
trans vivo遅延型過敏症マウスモデル
15A7Hを、雌C57BL/6マウスのtrans vivo遅延型過敏症(DTH)モデルで試験した。用量0.03、0.10、0.3、1および10mg/kgの15A7Hを、製剤緩衝液中にて腹腔内投与した。h15A7抗体は、同じ条件下で試験した。
7.3.1 材料および方法
trans vivoアッセイ:雌C57BL/6マウスは、6〜8週齢でHarlan Sprague Dawley, Inc. (Indianapolis, Indiana)より購入し、到着の4週間以内に使用した。全てのマウスは病原体を含まない環境に収容され、NIHのガイドラインに従って処理した。全ての動物実験は、施設内動物管理および使用委員会(IACUC)により審査・承認され、NIHのガイドライン「動物と人間が関与する研究のための基本理念」に準拠して実施した。
血液は、破傷風に良好に応答することが知られている正常なヒトのドナーから、静脈穿刺により収集した。100mlの全血をCPT Vacutainer管(Becton Dickinson, Franklin Lakes, NJ)に入れ、1800RCFで30分間回転させた。単核細胞および血小板を含有するバフィー層を分離し、3回洗浄し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中に再懸濁して計数した。血小板の混入は、PBSでの複数回の洗浄によって最小化した。1:1を超えない血小板:PBMC比率が許容された。細胞は直ちにマウスの足蹠に注射した。
リン酸アルミニウム吸着破傷風トキソイド(TT- Tetguard)は、注射部位当たり0.25Lfの濃度で使用した(Lf単位は凝集値であり、1国際単位の抗毒素と混合した時に最適な凝集混合物を産生するトキソイドの量である)。
総体積50μl中、0.25LF単位のTTと混合した7〜10×106のPBMCを、マウスの後肢足蹠に注射した。足蹠の厚さは、ダイヤル厚みゲージ(Mitutoyo, Aurora, IL)を用いて、注射前および注射の24時間後に測定した。注射前の厚さは、足の厚さの変化を得るために、24時間の時点での注射後の厚さから差し引いた。全ての測定はインチで行った。
15A7Hおよびh15A7の試験:15A7Hおよびh15A7(10mg/mlのストック)を、25mMのクエン酸ナトリウムおよび115mMの塩化ナトリウムと0.04%のTween 80を含有する、pH5.97のビヒクルに溶解した。マウスに、0.2mlのビヒクル、または15A7Hもしくはh15A7を0.03、0.10、0.3、1および10mg/kgで、TTを有するか有しないPBMCの足蹠への注射の1時間前に腹腔内注射した。15A7Hおよびh15A7抗体の各用量は、4人の異なるドナーからのPBMC上で試験され、1ドナーの1処置当たり1匹のマウスを用いた。15A7H処置群およびh15A7処置群を、ビヒクル処置群と比較した。
統計:特記のない限り、すべての値は平均±SEMで報告される。薬物処置群における足蹠の厚さの変化は、ビヒクル処置群と比較した。4人の個別ドナーの実験からのΔ足の厚さをプールし、平均±SEMを計算した。足の厚さの阻害パーセントを、次のように算出した:100×(Δ足の厚さveh−Δ足の厚さdrug)/(Δ足の厚さveh−Δ足の厚さPBMC)。阻害効果の有為性は、ランクに対するクラスカル・ウォリスの一元配置分散分析(ANOVA)を用いて試験した。0.05未満のp値を、統計学的に有意とみなした。
C57BL/6マウスにおける15A7Hとh15A7の血漿レベル:雌C57BL/6マウスにおける、0.03、0.1、0.3、1および10mg/kgでの腹腔内注射後24時間における、15A7Hとh15A7の血漿レベルを決定した。血漿サンプルは、実験の終了時に、trans vivoDTH実験動物から採取した。生物分析は、全ての試料について行った。
15A7Hのサテライト薬物動態試験:15A7Hの腹腔内投与を受けたサテライト雌C57BL/6マウス(上記と同じ用量レベル)を用い、15A7H血漿濃度についてより集中的なデータを収集した。これらのマウスは、ヒトPBMCまたは破傷風トキソイドで処理しなかった。これらの「PK」マウスについてのサンプリング時間は、投与後1、3、5、および24時間であった。PKマウスの各用量群は6匹のマウスから構成された。各用量群内で、3匹のマウスのサブグループを1および5時間でのサンプリングのために使用し、別の3匹のマウスのサブグループを3および24時間でのサンプリングのために使用した。
15A7Hおよびh15A7の生物分析:サンドイッチELISAを用いて、マウス血漿中のh15A7または15A7Hの濃度を定量した。簡潔には、PSGL−1で被覆した96ウェルマイクロタイタープレートを、希釈した血漿試料中のh15A7または15A7Hのいずれかへの結合のために使用した。洗浄後、結合したh15A7または15A7Hを、ビオチン標識モノクローナル抗ヒトIgG4抗体および酵素(HRP)標識ストレプトアビジンにより検出した。基質反応の間に形成された着色生成物の量を光度的に測定し、これは試料中のh15A7または15A7Hの濃度の増加と共に増加した。測定された吸光度に対応するh15A7または15A7Hの濃度は、非線形の標準曲線のデータ適合により算出した。較正試料の範囲は0.04〜1.2ng/mLであった。試料は、少なくとも1:100に希釈した。したがって、全血漿中のh15A7または15A7Hの定量の下限は4ng/mLであった。高い希釈係数を用いることにより、定量の上限は、2.4mg/mL(1:2000000 )まで増加させることができる。
ELISAにおけるh15A7と15A7Hの基準物質の反応性のわずかな違いにより、2つの較正曲線および2セットの品質対照を使用した。h15A7で処置した動物からの試料をh15A7較正曲線に対して分析し、15A7Hで処置した動物からの試料を15A7H較正曲線に対して分析した。
7.3.2 結果
trans vivoDTH:図3は、4人のドナーのPBMCのtrans vivoDTHにおける15A7H抗体のプールした用量反応を、15A7Hで処理した後のDTHの阻害パーセントで示したものである。マウスに、h15A7と15A7Hを0.03、0.1、0.3、1および10mg/kgで腹腔に投与した場合、h15A7および15A7Hの両方が用量依存的にtrans vivoDTHを阻害した。表8は、trans vivoDTHにおける、15A7Hおよびh15A7の用量反応および阻害パーセントを示す。0.3mg/kg以上の15A7Hまたはh15A7の単回投与は、trans vivoDTHの顕著な阻害を示した。このアッセイにおけるh15A7および15A7HのED
50は、n=4ドナーにてそれぞれ0.09および0.1mg/kgであった。
化合物の血漿濃度:サテライトPKおよびDTHマウスの両方についての15A7Hの血漿濃度を、図5にまとめる。図4に、24時間プールした15A7Hの血漿濃度を、DTHの阻害%に対してプロットしたものを示す。PKおよびDTHマウスに対して与えられた用量レベルにつき、投与後24時間の平均濃度が非常に類似していたことに注意すべきである。これは、PKおよびDTHマウスは異なって処置されたにも関わらず(DTHマウスのみがPBMCおよび破傷風トキソイドを受領した)、2つのケースにおける15A7Hの薬物動態は、非常に類似していたことを示唆している。h15A7および15A7H両方の血漿濃度は、試験の時間経過とともにかなり狭い範囲内でのみ変動した(投与後1〜24時間の間の濃度測定値)。
PK−PD:表9および表10は、h15A7および15A7H抗体の24時間の血漿濃度(PK)および、同一の用量での、trans vivoDTHの対応する阻害%(PD)を示す。図4は、trans vivoDTHモデルにおける15A7HのPK−PDの関係を比較する。h15A7および15A7HのED
50は、n=4ドナーにてそれぞれ687および770ng/kgであった。
7.3.3 結論
0.3mg/kg以上の15A7Hまたはh15A7の単回投与は、trans vivoDTHの顕著な阻害%を示した。trans vivoDTHアッセイにおけるh15A7および15A7HのED50は、それぞれ0.09および0.1mg/kgであった。h15A7および15A7H両方の血漿濃度は、試験の時間経過とともにかなり狭い範囲内でのみ変動した。
7.4 例4:補体依存性の細胞障害性の評価(CDC)
15A7HがCDC活性を有するかどうかを決定するため、乳酸デヒドロゲナーゼ放出アッセイを用いて、種々の濃度でCDC活性を測定した。
7.4.1 材料および方法
Ramos細胞(取得したATCC;cat# CRL-1596)を標的細胞として使用し、完全DMEM培地(Invitrogen, Carlsbad, CA; Catalog number 11995)で0.5mg/mlのジェネティシン((Invitrogen, Carlsbad, CA; Catalog number 10131)と共に培養した。ウサギ補体を補体タンパク質の供給源として使用した(Accurate Chemical &Scientific Corp., Westbury, NY; catalog number: AIC4000-1)。Cedarlane細胞障害性培地をアッセイ培地として用いた(Accurate Chemical &Scientific Corp., Westbury, NY; Catalog Number: CL95100)。
CDC活性は、細胞障害性検出キットPLUS(LDH)(Roche Applied Science, Indianapolis, IN; Catalog Number: 04 744 934 001)を使用して、標的細胞のLDH放出により決定した。1F5ハイブリドーマ(ATCC), Birmingham, AL; Catalog Number: 6140-01)から精製したマウス抗ヒトCD20を用いて、補体を、アッセイにおける陽性対照抗体として活性化した。ヒトIgG4κ(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO; Catalog Number: I4639)を、アイソタイプ対照として使用した。試料および対照は以下のように設定した(すべての試料はデュプリケートで用いる)。
・試料:100μlの標準ウサギ補体(アッセイ培地中1:6に希釈)+50μlの標的細胞(アッセイ培地中のRamos細胞)+50μlの抗体希釈
・バックグラウンド対照:200μlのアッセイ培地
・最大放出制御:50μlの標的細胞+100μlの標準ウサギ補体+50μlのアッセイ培地
・自然放出制御:50μlの標的細胞+100μlの標準ウサギ補体+50μlのアッセイ培地
プレートを37℃で多湿のCO2インキュベーター内で、3時間インキュベートした。インキュベーション終了の30分前に(2.5時間のインキュベーションの後)、10μlの溶解溶液(細胞障害性検出キットに付属)を最大放出対照試料に添加した。インキュベーションの終わりに、プレートを200gにて室温で10分間遠心分離し、100μlの細胞を含まない上清を、LDH検出用の96ウェル平底プレートの対応するウェルに移した。100μlの反応混合物(細胞障害性検出キットに付属)を各ウェルに添加し、プレートを室温で暗所で15〜30分間インキュベートした。2回目のインキュベーションの終わりに、この反応を停止溶液50μl(細胞障害性検出キットに付属)を添加することにより停止させた。吸光度をSpectramax Plusプレートリーダー(Molecular Devices, Sunnyvale, CA)上で490〜492nmの波長で測定した。CDC%は、次式により算出した:([抗体誘導による放出]−[自然放出対照])/([最大放出]−[自然放出対照])×100%。
7.4.2 結果
15A7HのCDC活性は、Ramos細胞を用いて、抗CD20のCDC応答に対して最適化された条件下で試験した。図6および表11に示すように、異なる濃度の抗体を、1:12の固定された補体希釈にてCDC活性について試験した。15A7H、h15A7またはIgG4陰性対照については、CDC活性は検出されなかった。マウス抗ヒトCD20は、明確な抗体用量反応を示した。
7.4.3 結論
15A7Hは、Ramos細胞で実施されたアッセイにおいて、1:12の補体希釈にて5μg/mlの抗体濃度まで、CDC活性を示さなかった。
7.5 臨床研究
15A7Hは、ある複数対象に対しては125μg/kg、500μg/kg、1000μg/kg、および2000μg/kgの単回の増加用量の静脈内投与によって与え、別の複数対象に対しては、500μg/kgおよび1000μg/kgの単回の皮下投与で与えた。投与は適応される。表6に記載の、製剤中に再懸濁させた15A7Hが用いられる。投与後、臨床検査(例えば、血液学、臨床化学および尿検査)を、当該分野で知られている方法を用いて、例えば週単位で実施する。薬物動態学的パラメータも、当該分野で知られている方法を用いて、例えば週単位で決定する。
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