以下、本発明を具体化した実施例1〜6を図面を参照しつつ説明する。実施例1〜6のベーン型圧縮機は、いずれも車両に搭載されており、車両用空調装置の冷凍回路を構成している。
(実施例1)
実施例1のベーン型圧縮機は、図1に示すハウジング1と、フロントサイドプレート3と、リヤサイドプレート5と、駆動軸7と、ロータ9と、図2に示す五個のベーン11と、図3に示す背圧供給機構13aとを備えている。
図1に示すように、ハウジング1は、フロントハウジング15と、リヤハウジング17と、シリンダブロック19とによって構成されている。
フロントハウジング15は、ベーン型圧縮機の前方に位置している。このフロントハウジング15には、内部に第1収容空間15aが凹設されている。また、フロントハウジング15には、吸入口15bとボス15cとが形成されている。吸入口15bは、第1収容空間15aと連通しており、ベーン型圧縮機の外部に向かって開いている。ボス15cは、フロントハウジング15の前方に向かって突出している。このボス15cには、第1収容空間15a内に連通する軸孔15dが貫設されている。また、第1収容空間15a内には、軸封装置21が設けられている。
リヤハウジング17は、ベーン型圧縮機の後方に位置しており、図示しない複数のボルトによってフロントハウジング15と接合されている。このリヤハウジング17には、内部に第2収容空間17aが凹設されている。また、リヤハウジング17には、第2収容空間17aと連通し、ベーン型圧縮機の外部に向かって開く吐出口17bが形成されている。
シリンダブロック19は、第2収納空間17aの前方側に収納されており、第2収納空間17a内に固定されている。これにより、シリンダブロック19は、フロントハウジング15とリヤハウジング17との間に位置している。
図2に示すように、シリンダブロック19には、軸直角方向で楕円状のシリンダ室19aが形成されている。また、シリンダブロック19には二つの吸入空間19bと、複数の吸入ポート19cとが形成されている。吸入空間19bと吸入ポート19cとは連通している。
さらに、シリンダブロック19の外周面には、二つの凹部19dが形成されている。これらの各凹部19dにより、シリンダブロック19とリヤハウジング17との間に、二つの吐出空間19eが形成されている。また、シリンダブロック19には、吐出空間19eと連通する複数の吐出ポート19fが形成されている。
各吐出空間19e内には、各吐出ポート19fを閉鎖する複数の吐出弁21と、各吐出弁21のリフト量を規制する複数のリテーナ23とが設けられている。
図1に示すように、フロントサイドプレート3は、第1収容空間15a内に固定されており、シリンダブロック19の前方に位置している。このフロントサイドプレート3の後端面3aにより、シリンダ室19aの前端が閉鎖されている。このように、第1収容空間15a内にフロントサイドプレート3が設けられることにより、第1収容空間15a内、つまり、フロントハウジング15内に吸入室25が形成されている。この吸入室25は吸入口15bと連通している。
また、フロントサイドプレート3には、円筒状の軸受面3bと二つの吸入孔3cとが貫設されている。この軸受面3bとフロントサイドプレート3の後端面3aとには、それぞれスズめっきからなる摺動層27aが形成されている。
各吸入孔3cは吸入室25と各吸入空間19bとに連通している。これにより、各吸入空間19bはそれぞれ吸入室25と連通している。なお、図1では、一方の吸入孔3cのみを図示している。
リヤサイドプレート5は、第2収容空間17a内に固定されており、シリンダブロック19の後方に位置している。このリヤサイドプレート5の前端面5aにより、シリンダ室19aの後端が閉鎖されている。このように、第2収容空間17a内にリヤサイドプレート5が設けられることにより、第2収容空間17a内、つまり、リヤハウジング17内に吐出室29が形成されている。この吐出室29は吐出口17bと連通している。
また、図3に示すように、リヤサイドプレート5には、ボス5bと、円筒状の軸受面5cと、上流路5dと、二つの供給孔5eと、一対の排油溝5fと、第1吐出孔31aとが形成されている。ボス5bは、リヤサイドプレート5の後端面5gの中央に位置しており、リヤサイドプレート5の後方に向かって突出している。軸受面5cは、ボス5bからリヤサイドプレート5の前方に向かって延びている。この軸受面5c及びリヤサイドプレート5の前端面5aにもスズめっきからなる摺動層27b、27cが形成されている。
上流路5dは、リヤサイドプレート5の下方から軸受面5cに向かって、リヤサイドプレート5の上下方向に延びている。この上流路5dの下端は吐出室29内に開いており、上端は軸受面5cに開いている。つまり、上流路5dは、吐出室29から軸受面5cまで延びている。
各供給孔5eは、それぞれボス5bからリヤサイドプレート5の前端側に向かって、リヤサイドプレート5の前後方向に延びている。図4に示すように、各排油溝5fは、略扇状に形成されている。各排油溝5fは、リヤサイドプレート5の前端側に形成されている。なお、図4では、説明を容易にするため、後述する弁ケース47等の図示を省略している。図10についても同様である。
図3に示すように、第1吐出孔31aは、リヤサイドプレート5の前端面5aから後端面5gまで延びている。この第1吐出孔31aの前端は吐出空間19eに開いている。
さらに、リヤサイドプレート5の後端には、遠心分離セパレータ33が固定されている。これにより、遠心分離セパレータ33は吐出室29内に位置している。この遠心分離セパレータ33は、エンドフレーム35と分離筒37とからなる。
エンドフレーム35は、リヤサイドプレート5の後端面5gに接合されている。この際、エンドフレーム35に凹設された凹部35a内にリヤサイドプレート5のボス5bが挿入された状態となる。これにより、ボス5bと凹部35aとの間、すなわち、リヤサイドプレート5とエンドフレーム35との間に供給室39が形成されている。この供給室39は、各供給孔5eと連通している。
また、エンドフレーム35には、案内空間35bと、案内空間35bに連通する油分離室35cと、連通孔35dと、第2吐出孔31bとが形成されている。案内空間35b及び油分離室35cは、エンドフレーム35の上下方向で円筒状に延びている。案内空間35bは、後述する圧縮室43から吐出された冷媒ガスを自己の壁面に沿って周回させる。連通孔35dは、エンドフレーム35の下端に位置している。この連通孔35dにより、油分離室35cと吐出室29とが連通している。第2吐出孔31bは、前端側で第1吐出孔31aと連通しており、後端側で案内空間35bと連通している。これらの第1、2吐出孔31a、31bにより、吐出空間19eと案内空間35bとが連通している。
分離筒37は、案内空間35bと同軸に形成されており、案内空間35b内に圧入されている。また、分離筒37の上端には、吐出室29に向かって開く開口37aが形成されている。分離筒37は、自己の外周面で冷媒ガスを周回させるとともに、潤滑油を分離した冷媒ガスを自己の内部に導くことが可能となっている。
図1に示すように、駆動軸7は、ベーン型圧縮機の前方から後方に向かって、軸孔15dからハウジング1内に挿通されている。この駆動軸7は、ハウジング1内において、軸封装置21及び軸受面3b、5cによって軸支されている。これにより、駆動軸7は、軸心O周りで回転可能となっている。
図3に示すように、駆動軸7の後端は、軸封装置21及び軸受面3b、5cによって軸支された状態でリヤサイドプレート5から突出し、供給室39内に位置している。また、図5に示すように、駆動軸7の後端側には、センタ孔7aと径孔7bと収納室7cとが形成されている。このセンタ孔7aが本発明の軸孔に相当する。そして、これらのセンタ孔7a及び径孔7bによって、本発明の回転路が構成されている。さらに、駆動軸7には、軸受面5cと対面する第1軸周面7dと、図1に示す軸受面3bと対面する第2軸周面7eとが形成されている。この第1軸周面7dが本発明における周面に相当する。
図5に示すように、センタ孔7aは、駆動軸7の軸心Oを通りつつ、駆動軸7の後端面から駆動軸7の前端側に向かって延びている。径孔7bは、センタ孔7aに連通し、センタ孔7aの前端側から駆動軸7の軸方向と直交する方向で第1軸周面7dまで延びており、第1軸周面7dに開口している。この径孔7bは、センタ孔7aと同径に形成されている。収納室7cは、センタ孔7aと同軸で、駆動軸7の後端面から駆動軸7の前端側に向かう円筒状に凹設されている。これにより、収納室7cは、センタ孔7a及び径孔7bと連通している。また、この収納室7cは、センタ孔7a及び径孔7bよりも大径に形成されている。
これらのセンタ孔7aと径孔7bと収納室7cとにより、上流路5dと供給室39とが連通している。つまり、これらのセンタ孔7aと径孔7bと収納室7cとを通じて、吐出室29と各供給孔5eとが連通している。そして、これらの径孔7b、センタ孔7a、収納室7c、供給室39、上流路5d及び各供給孔5eによって間欠機構100が形成されている。
一方、図1に示すように、駆動軸7の前端はボス15cからベーン型圧縮機の外部に露出した状態となっている。これにより、駆動軸7の前端には図示しない電磁クラッチ又はプーリを固定可能となっている。電磁クラッチやプーリには車両のエンジンやモータ等によって駆動力が伝達されるようになっている。
ロータ9はシリンダ室19a内に配置されている。このロータ9に対して駆動軸7が圧入されている。これにより、シリンダ室19a内において、ロータ9は駆動軸7と同期回転可能となっている。
図2に示すように、ロータ9は断面が円形となる円筒状に形成されている。また、ロータ9の外周面には、五つのベーン溝9aが放射方向に凹設されている。各ベーン溝9aは駆動軸7の軸心O周りで等角度隔てられている。また、各ベーン溝9aには、それぞれベーン11が収納されている。なお、ベーン溝9a及びベーン11における個数や大きさ等は適宜設定することが可能である。
各ベーン溝9aに収納された各ベーン11の底面と、各ベーン溝9aの底面との間は背圧室41とされている。図4に示すように、各背圧室41のうち、圧縮行程等にある背圧室41は、各排油溝5fを通じて各供給孔5eと連通可能となっている。これにより、圧縮行程等にある背圧室41は、各供給孔5e等を通じて吐出室29とが連通可能となっている。こうして、圧縮行程等にある背圧室41に対して、高圧の冷媒ガスと共に潤滑油を供給可能となっている。各ベーン11は、各背圧室41内の圧力変化により、各ベーン溝9aに対して出没可能となっている。
フロントサイドプレート3及びリヤサイドプレート5により前後が閉鎖されたシリンダ室19aと、五個のベーン11と、ロータ7の外周面とにより、五個の圧縮室43が形成されている。各圧縮室43のうち、吸入行程にある圧縮室43は、吸入ポート19cと連通するようになっている。一方、吐出行程にある圧縮室43は、吐出ポート19fと連通するようになっている。
図3に示すように、背圧供給機構13aは、背圧流路200と、収納室7cと、弁ケース47と、上記の間欠機構100とによって構成されている。
図5及び図6に示すように、弁ケース47内には、スプールバルブ49と、コイルばね51とが内蔵されている。この弁ケース47が本発明における弁装置に相当する。また、スプールバルブ49が本発明における弁体に相当し、コイルばね51が本発明における付勢手段に相当する。
弁ケース47は樹脂からなる。この弁ケース47は、収納室7cとほぼ同形に形成されており、収納室7c内に固定されている。弁ケース47には、軸方向に延びる連絡路47aと、連絡路47aと直交して径方向に延びるガイド孔47bと、切欠き部47cとが形成されている。連絡路47aは第1連絡路471と第2連絡路472とからなる。第1連絡路471は、センタ孔7aと連通している。第1連絡路471と第2連絡路472とは、ガイド孔47bを通じて互いに連通している。また、第2連絡路472の後端は駆動軸7の後端面、すなわち供給室39内に開いている。つまり、弁ケース47が収納室7c内に固定されることで、第1連絡路471及び第2連絡路472は、本発明における軸孔、ひいては回転路の一部を構成する。
ガイド孔47bは連絡路47aと連通している。ガイド孔47bは、弁ケース47が収納室7c内に固定された状態で、収納室7cの内壁と対向している。これにより、ガイド孔47bの両端は、収納室7cの内壁によって閉鎖されている。このガイド孔47b内には、ばね座47dが形成されている。なお、弁ケース47は、アルミニウム合金等で形成されても良い。
スプールバルブ49とコイルばね51とは、それぞれガイド孔47b内に収納されている。スプールバルブ49は、頭部49aと、軸部49bと、スカート部49cと、座部49dとを有している。頭部49aと軸部49bとは一体で形成されている。軸部49bはスカート部49cを貫通しつつ、座部49dに固定されている。これにより、頭部49aとスカート部49cとの間に弁体内通路49eが形成されている。コイルばね51は、ばね座47dとスプールバルブ49の座部49dとの間に設けられている。このコイルばね51の付勢力により、スプールバルブ49は頭部49が駆動軸7の軸心Oに近接する状態で付勢されている。そして、スプールバルブ49は、コイルばね51の付勢力に抗することで、ガイド孔47b内を径方向に移動することが可能となっている。つまり、この弁ケース47内では、図5に示すように、スプールバルブ49の頭部49aが駆動軸7の軸心Oに近接した状態となったり、図6に示すように、頭部49aが駆動軸7の軸心Oから遠隔した状態となったりすることが可能となっている。
ここで、このスプールバルブ49では、頭部49aが駆動軸7の軸心Oに最も近接した状態となれば、図5に示すように、スカート部49cがばね座47dと当接する。この状態では、第1、2連絡路471、472の各位置と弁体内通路49eの位置とが整合する。
背圧流路200は、上記の上流路5d、径孔7b、センタ孔7a、収納室7c、連絡路47a、弁体内通路49e、供給室39、各供給孔5e及び各排油溝5fによって形成されている。
このベーン型圧縮機において、図1に示す吐出口17bは配管によって凝縮器に接続されている。また、凝縮器は配管によって膨張弁に接続されている。さらに、膨張弁は配管によって蒸発器に接続されている。そして、蒸発器は配管によって吸入口15bに接続されている。このように、各配管によってベーン型圧縮機、凝縮器、膨張弁及び蒸発器が接続されることにより、車両用空調装置の冷凍回路が構成されている。なお、各配管、凝縮器、膨張弁及び蒸発器は、いずれも図示を省略する。
以上のように構成されたベーン型圧縮機では、エンジン等によって駆動軸7が回転されると、ロータ9が駆動軸7と同期回転する。このため、各圧縮室43に容積変化が生じる。また、蒸発器を経た低圧の冷媒ガスが吸入口15bから吸入室25内に吸入される。この吸入室25内の冷媒ガスは、各吸入孔3c、各吸入空間19b及び吸入ポート19cを経て吸入行程にある圧縮室43に吸入され、圧縮される。圧縮室43で圧縮されて高圧となった冷媒ガスは、吐出ポート19fを経て各吐出空間19eに吐出される。各吐出空間19eに吐出された冷媒ガスは、第1、2吐出孔31a、31bを経て、分離筒37の外周面とエンドプレート35の間の案内空間35bに至る。そして、セパレータ33において、冷媒ガスから潤滑油が遠心分離される。潤滑油を分離した冷媒ガスは、分離筒37の開口37aから吐出室29内に流入する。一方、冷媒ガスから分離された潤滑油は、油分離室35cから連通孔35dを経て吐出室29の下方に貯留される。吐出室29内の冷媒ガスは吐出口17dから凝縮器に向けて吐出される。
また、吐出室29内の一部の冷媒ガスは、背圧流路200を通じて潤滑油と共に各背圧室41内に供給される(以下、各背圧室41内に供給される高圧の冷媒ガスと、その冷媒ガス中に潤滑油とを総称して潤滑油等という。)。具体的には、各背圧室41内に供給される潤滑油等は、図3に示すように、吐出室29から上流路5d、径孔7b、センタ孔7aを流通し、図5に示す収納室7c内の弁ケース47における第1連絡路471、弁体内通路49e、第2連絡路472を経て供給室39に至る。そして、潤滑油等は、供給室39内から図3に示す各供給孔5e及び各排油溝5fを経て圧縮行程等にある背圧室41内に供給される。
さらに、このベーン型圧縮機では、背圧供給機構13aが間欠機構100を有している。これにより、このベーン型圧縮機では、駆動軸7が回転し、図4の(A)に示すように、径孔7bが上流路5dと連通する位置まで移動すれば、吐出室29と供給室39、ひいては各背圧室41とが連通し、上流路5d内の潤滑油等が径孔7bを経て供給室39に流入可能となる。これにより、このベーン型圧縮機では、供給室39内の潤滑油等を各背圧室41に供給することが可能となる。
一方、駆動軸7の回転により、同図の(B)に示すように、径孔7bが移動して上流路5dと非連通となれば、上流路5dと供給室39とが非連通となり、上流路5d内の潤滑油等が供給室39に流入しなくなる。このため、このベーン型圧縮機では、各背圧室41に潤滑油等が供給されなくなる。
そして、このベーン型圧縮機では、収納室7c内に固定された弁ケース47が駆動軸7と同期回転する。これにより、このベーン型圧縮機では、弁ケース47に対して遠心力が作用する。このため、図5、6に示すように、弁ケース47内において、スプールバルブ49がガイド孔47b内を径方向に移動する。
すなわち、このベーン型圧縮機において、駆動軸7の回転数が低い状態では、弁ケース47に作用する遠心力が小さいことから、図5に示すように、コイルばね51の付勢力によって、スプールバルブ49の頭部49aが駆動軸7の軸心Oに近接する。これにより、弁ケース47では、連絡路47aの位置と弁体内通路49e位置とが整合する状態に近づき、第1、2連絡路471、472と弁体内通路49eとの連通面積が大きくなる。このため、径孔7bに至った潤滑油等が連絡路47a及び弁体内通路49eを好適に流通し、供給室39に流入する。つまり、このベーン型圧縮機において、駆動軸7の回転数が低い状態では、第1、2連絡路471、472と弁体内通路49eとの連通面積が大きくなることで、回転路の連通面積が大きくなる。これにより、このベーン型圧縮機では、供給室39内に流入する潤滑油等の流量が多くなり、背圧室41内に供給される潤滑油等の流量が多くなる。
一方、駆動軸7の回転数が上昇すれば、弁ケース47に作用する遠心力が次第に大きくなることから、図6に示すように、コイルばね53の付勢力に抗してスプールバルブ49の頭部49aが駆動軸7の軸心Oから遠隔する。このため、第1、2連絡路471、472の各位置と弁体内通路49eと位置とが遠隔し、両者の位置が径方向にずれる。これにより、弁ケース47において、第1、2連絡路471、472と弁体内通路49eとの連通面積が減少し、径孔7bに至った潤滑油等が連絡路49a及び弁体内通路49eを流通し難くなる。このため、駆動軸7の回転数が低い場合と比較して、第1、2連絡路471、472と弁体内通路49eとの連通面積が小さくなることで、回転路の連通面積が小さくなる。これにより、このベーン型圧縮機では、供給室39に流入する潤滑油等の流量が減少する。このように、このベーン型圧縮機では、駆動軸7の回転数が上昇するにつれて、各背圧室41内に供給される潤滑油等の流量を減少させることが可能となっている。ここで、上記のように、ガイド孔47bの両端が収納室7cの内壁によって閉鎖されていることから、弁ケース47内で、頭部49aが駆動軸7の軸心Oに近接した状態となったり、遠隔した状態となったりしても、スプールバルブ49が弁ケース47の外に飛び出すことはない。
このように、このベーン型圧縮機では、弁ケース47におけるスプールバルブ49の移動と、間欠機構100の作用とが組み合わさることで、図7の(A)に示すように、駆動軸7の回転数が低く、かつ、径孔7bが上流路5dと連通する位置まで移動した場合に、供給室39に流入する潤滑油等の流量が多くなる。そして、図8の(A)に示すように、駆動軸7の回転数が高く、かつ、径孔7bが上流路5dと連通する位置まで移動した場合には、供給室39に潤滑油等が流入可能であるものの、その流量は少なくなる。
一方、図7の(B)及び図8の(B)に示すように、このベーン型圧縮機では、駆動軸7の回転によって径孔7bが上流路5dと非連通となる位置まで移動すれば、駆動軸7の回転数の如何にかかわらず、供給室39に潤滑油が流入しなくなる。
これにより、このベーン型圧縮機では、駆動軸7の回転数に応じて背圧室41内の圧力を好適に調整することが可能となっている。このため、このベーン型圧縮機では、駆動軸7の回転数が上昇した場合であっても、ベーン11に対してシリンダ室19aの内面に向かう過度の押し付け力が作用しなくなる。このため、このベーン型圧縮機では、各ベーン11及びシリンダ室19aの内面が摩耗し難くなっており、耐久性が高くなっている。また、このベーン型圧縮機では、動力損失を低減できるため、搭載した車両の燃費を向上させることが可能となっている。
そして、このベーン型圧縮機では、背圧供給機構13aのうち、間欠機構100や背圧流路200を構成するセンタ孔7a、径孔7b及び収納室7cがいずれも駆動軸7に形成されている。そして、収納室7c内に弁ケース47が収納されることにより、弁ケース47が駆動軸7内に設けられる。ここで、弁ケース47が駆動軸7内に設けられることで、連絡路47a及び弁体内通路49eも駆動軸7内に位置することとなる。このように、このベーン型圧縮機では、センタ孔7a、径孔7b及び収納室7c及び弁ケース47を設けても大型化しない。
また、このベーン型圧縮機では、弁ケース47内にスプールバルブ49とコイルばね51とが内蔵されることで、これらが一体化されている。これにより、このベーン型圧縮機では、弁装置の構成の簡素化を実現している。さらに、このベーン型圧縮機では、収納室7c内に弁ケース47を固定するだけで、駆動軸7に対して、弁ケース47を同期回転可能に設けることが可能となっている。ここで、弁ケース47にガイド孔47bが形成されているため、このベーン型圧縮機では、駆動軸7にガイド孔47bを貫設する必要がなく、第1軸周面7dにガイド孔47dが開口することがない。このため、このベーン型圧縮機では、軸受面5cが第1軸周面7dを好適に軸支することが可能となっている。
また、このベーン型圧縮機では、フロントサイドプレート3に摺動層27aが形成されており、リヤサイドプレート5に摺動層27b、27cが形成されている。これにより、このベーン型圧縮機では、軸受面3bと第2軸周面7eとにおける滑り抵抗が低減されているとともに、軸受面5cと第1軸周面7dとにおける滑り抵抗が低減されている。このように、このベーン型圧縮機では、軸受面5cと第1軸周面7dとにおける滑り抵抗や軸受面3bと第2軸周面7eとにおける滑り抵抗を低減するに当たって、滑り軸受や転がり軸受等を設ける必要がない。これにより、このベーン式圧縮では、大型化を抑制するとともに、部品点数の削減も実現している。
さらに、このベーン型圧縮機構では、摺動層27aによって、フロントサイドプレート3の後端面3aとロータ9とにおける滑り抵抗も軽減されている他、摺動層27cによって、リヤサイドプレート5の前端面5aとロータ9とにおける滑り抵抗も軽減されている。
また、各摺動層27a〜27cは、いずれもスズめっきによって形成されているため、このベーン型圧縮機では、各摺動層27a〜27cの形成が容易となっている。
さらに、このベーン型圧縮機では、上流路5dが吐出室29からリヤサイドプレート5の軸受面5cまで延びている。このため、このベーン型圧縮機では、上流路5dの構成を簡素化しつつ、吐出室29から軸受面5cまで潤滑油等を好適に導くことが可能となっている。
また、このベーン型圧縮機では、センタ孔7aが回転路における構成の一部、すなわち、間欠機構100及び背圧流路200における構成の一部となっている。このため、このベーン型圧縮機では、間欠機構100及び背圧流路200を形成するに当たって、部品点数の増加や製造時の工程数の増大化を抑止することが可能となっている。これにより、このベーン型圧縮機では、間欠機構100及び背圧流路200を容易に形成することが可能となっている。
また、収納室7cをセンタ孔7aと同軸とすることで、このベーン型圧縮機では、駆動軸7に対して収納室7cを容易に凹設することが可能となっている。
したがって、実施例1のベーン型圧縮機によれば、製造コストの低廉化と小型化とを実現可能である。
特に、このベーン型圧縮機では、背圧供給機構13aが間欠機構100を有しているため、圧縮行程の間、高圧の潤滑油等が間欠的に各背圧室41に供給される。このため、このベーン型圧縮機では、各ベーン11がシリンダ室19aの内面に間欠的に押し付けられることとなる。このため、このベーン型圧縮機では、各ベーン11は各ベーン溝9a内で潤滑されるとともにチャタリングが防止され、かつ圧縮室43からの冷媒ガスの漏れが防止されることで、作動効率が高くなっている。また、このベーン型圧縮機では、駆動軸7の回転数に従った背圧供給に加えて、間欠機構100を更に設けることにより、作動状況に合わせて、シリンダ室19aの内面に対する各ベーン11の押し付け力をより適切に調整することが可能となっている。
そして、このベーン型圧縮機では、駆動軸7の回転が停止され、この状態で吐出室29と各背圧室41とが連通していなければ、潤滑油等の逆流と駆動軸7の逆転とが生じない。また、このベーン型圧縮機では、吐出室29と各背圧室41とが連通した状態で駆動軸7の回転が停止されたとしても、僅かに潤滑油等の逆流と駆動軸7の逆転とが生じれば、それによって駆動軸7の位相、つまり、径孔7bと上流路5dとの位相がずれるため、すぐに吐出室29と各背圧室41とが非連通となり、それ以上の潤滑油等の逆流と駆動軸7の逆転とが生じない。このため、このベーン型圧縮機は、確実かつ早期に潤滑油等の逆流と駆動軸7の逆転とを防止することが可能となっている。
また、このベーン型圧縮機では、弁ケース47が収納室7cに固定されることで、ガイド孔47bが収納室7cの内壁と対向し、ガイド孔47bの両端が収納室7cの内壁によって閉鎖される。このため、このベーン型圧縮機では、コイルばね51によるスプールバルブ49の移動、つまり、ガイド孔47bにおけるスプールバルブ49の移動量を規制するための専用の部材が不要となっている。
(実施例2)
実施例2のベーン型圧縮機では、実施例1のベーン型圧縮機構における背圧供給機構13aに換えて、図9に示すように、背圧供給機構13bを備えている。また、このベーン型圧縮機では、実施例1のベーン型圧縮機構におけるリヤサイドプレート5に換えて、リヤサイドプレート55を有している。
リヤサイドプレート5と同様、リヤサイドプレート55は、リヤハウジング17の第2収納空間17a内に固定されている。また、リヤサイドプレート55にも、後方に向かって突出するボス55aと、円筒状の軸受面55bと、第1吐出孔31aとが形成されている。これらの軸受面55b及びリヤサイドプレート55の前端面55cとには、摺動層27b、27cが形成されている。さらに、リヤサイドプレート55の後端面55dには、遠心分離セパレータ33のエンドフレーム35が接合されている。これにより、リヤサイドプレート55とエンドフレーム35との間にも供給室39が形成されている。
また、リヤサイドプレート55には、第1上流路55eと、第2上流路55fと、一対の供給溝55g、55hと、一対の供給孔55i、55jと、一対の排油溝55kとが形成されている。
第1上流路55eは、リヤサイドプレート55の上下方向に延びている。この第1上流路55eの下端は吐出室29内に開いている。第2上流路55eは、リヤサイドプレート55の前後方向に延びている。この第2上流路55fの前端は、第1上流路55eの上端と連通している。一方、第2上流路55fの後端は供給室39内に開いている。
図10に示すように、各供給溝55g、55hは、軸受面55bに対して凹設されている。また、各供給溝55g、55hは、駆動軸7を挟んで互いに対向して配置されている。図9に示すように、各供給孔55i、55jは、それぞれ背圧室41に向かって、リヤサイドプレート55の前後方向に延びている。供給孔55iの後端は供給溝55g内に開いている。供給孔55jの後端は供給溝55h内に開いている。各排油溝55kは、実施例1のベーン型圧縮機における各排油溝5fと同様の構成である。
このベーン型圧縮機では、センタ孔7aと径孔7bと収納室7c内の弁ケース47とを通じて、供給室39と各供給溝55g、55hが連通している。これにより、吐出室29と各供給孔55i、55jとが連通している。そして、このベーン型圧縮機では、これらの第1、2上流路55e、55f、径孔7b、センタ孔7a、収納室7c、弁ケース47、供給室39、各供給溝55g、55h及び各供給孔55i、55jによって間欠機構101が形成されている。
また、このベーン型圧縮機では、第1、2上流路55e、55f、径孔7b、センタ孔7a、連絡路47a、弁体内通路49e、供給室39、各供給溝55g、55h、各供給孔55i、55j及び各排油溝55kによって背圧流路201が形成されている。
背圧供給機構13bは、背圧流路201と、収納室7cと、弁ケース47と、間欠機構路101とによって構成されている。このベーン型圧縮機における他の構成は実施例1のベーン型圧縮機と同様であり、同一の構成については同一の符号を付して構成に関する詳細な説明を省略する。
このベーン型圧縮機では、間欠機構101により、吐出室29内の潤滑油等が以下のようにして各背圧室41内に供給される。すなわち、このベーン型圧縮機では、吐出室29内の潤滑油等が第1、2上流路55e、55fを流通して、供給室39内に流入する。そして、供給室39内の潤滑油等は、連絡路47a、弁体内通路49e、センタ孔7aを経て径孔7bに至る。ここで、駆動軸7が回転し、図9に示すように、径孔7bが供給溝55gと連通する位置まで移動すれば、径孔7b内に至った潤滑油等が供給孔55i及び各排油溝55kを経て各背圧室41に供給される。同様に、径孔7bが供給溝55hと連通する位置まで移動すれば、径孔7b内に至った潤滑油等が供給孔55j及び各排油溝55kを経て各背圧室41に供給される。
一方、駆動軸7の回転により、図10に示すように、径孔7bが移動して供給溝55g及び供給溝55hのいずれとも非連通となれば、各背圧室41に潤滑油等が供給されなくなる。
このような間欠機構101の作用と、上記の弁ケース47おけるスプールバルブ49の移動とが組み合わさることで、このベーン型圧縮機における背圧供給機構13bは、実施例1のベーン型圧縮機における背圧供給機構13aと同様の効果を奏することが可能となる。このベーン型圧縮機における他の作用は実施例1のベーン型圧縮機と同様である。
(実施例3)
実施例3のベーン型圧縮機は、実施例1のベーン型圧縮機における駆動軸7及び背圧供給機構13aに換えて、図11に示すように、駆動軸57及び背圧供給機構13cを備えている。
駆動軸57には、互いに連通する軸孔57aと径孔57bとガイド孔57cとが形成されている。これらの軸孔57aと、径孔57bと、ガイド孔57cとにより、本発明における回転路が構成されている。また、駆動軸57には、第1軸周面57dの他、第2軸周面(図示略)が形成されている。この第1軸周面57dが本発明における周面に相当する。
軸孔57aは、後端が駆動軸57の後端面、すなわち、供給室39内に開いており、駆動軸57の軸心Oと平行で駆動軸57の前端側に向かって延びている。径孔57bは、軸孔57aと直交する方向で第1軸周面57dまで延びており、第1軸周面57dに開口している。ガイド孔57cは、駆動軸57の後端側から前端側に向かって次第に駆動軸57の軸心Oから離れるように形成されている。また、ガイド孔57cは、駆動軸57の後端側から前端側に向かって次第に縮径するように形成されている。このガイド孔57cは後端で軸孔57aと連通しており、前端で径孔57bと連通している。
また、ガイド孔57c内には、ボールバルブ59とコイルばね61とが設けられている。ボールバルブ59は、ガイド孔57c内を移動可能であり、ガイド孔57c内における自身の位置によって、ガイド孔57cと軸孔57aとの連通面積を変更可能となっている。コイルばね61は、ガイド孔57cの後端側に向けてボールバルブ59を付勢している。つまり、コイルばね61は、ガイド孔57cと軸孔57aとの連通面積を大きくさせる方向でボールバルブ59を付勢している。これらのボールバルブ59及びコイルばね61がそれぞれ本発明における弁体及び付勢手段に相当する。また、ガイド孔57c、ボールバルブ59及びコイルばね61が本発明における弁装置に相当する。
さらに、駆動軸57には、サークリップ62aが嵌合されている。このサークリップ62aは、軸孔57aとガイド孔57cとの間に位置している。サークリップ62aは、ボールバルブ59と当接することでボールバルブ59が軸孔57a内に進入すること規制している。
このベーン型圧縮機では、軸孔57aと径孔57bとガイド孔57cとを通じて、上流路5dと供給室39とが連通している。つまり、これらの軸孔57aと径孔57bとガイド孔57cとを通じて、吐出室29と各供給孔5eとが連通している。そして、これらの軸孔57a、径孔57b、ガイド孔57c、供給室39、上流路5d及び各供給孔5eによって間欠機構102が形成されている。
また、このベーン型圧縮機では、上流路5d、軸孔57a、径孔57b、ガイド孔57c、供給室39、各供給孔5e及び各排油溝5fによって背圧流路202が形成されている。
背圧供給機構13cは、背圧流路202と、ガイド孔57cと、ボールバルブ59と、コイルばね61と、間欠機構102とで構成されている。このベーン型圧縮機における他の構成は、実施例1のベーン型圧縮機と同様である。
このベーン型圧縮機では、上流路5d内の潤滑油等が径孔57b、ガイド孔57c及び軸孔57aの順に流通して供給室39内に流入する。そして、このベーン型圧縮機では、駆動軸57が回転することにより、ボールバルブ59に対して遠心力が作用する。このため、図11及び図12に示すように、ガイド孔57c内でボールバルブ59が移動する。
すなわち、このベーン型圧縮機において、駆動軸57の回転数が低い状態では、ボールバルブ59に作用する遠心力が小さいことから、図11に示すように、コイルばね61の付勢力によって、ボールバルブ59が駆動軸57の軸心Oに近接する。これにより、軸孔57aとガイド孔57cとの連通面積、すなわち、回転路の連通面積が大きくなる。このため、このベーン型圧縮機においても、背圧室41内に供給される潤滑油等の流量が多くなる。
一方、駆動軸57の回転数が上昇すれば、ボールバルブ59に作用する遠心力が次第に大きくなることから、図12に示すように、コイルばね61の付勢力に抗してボールバルブ59が駆動軸7の軸心Oから遠隔し、ガイド孔57cの前端側に移動する。ここで、上記のようにガイド孔57cが前端側に向かって縮径する形状であるため、ガイド孔57cの前端側にボールバルブ59が移動するにつれて、軸孔57aとガイド孔57cとの連通面積、すなわち、回転路の連通面積が次第に減少する。こうして、このベーン型圧縮機においても、駆動軸57の回転数が上昇するにつれて、各背圧室41内に供給される潤滑油等の流量を減少させることが可能となっている。
また、このベーン型圧縮機構において、間欠機構102は、実施例1における間欠機構100と同様に作用する。
さらに、このベーン型圧縮機では、軸孔57aと径孔57bと、ガイド孔57cとによって回転路が形成されているため、駆動軸57に対して容易に回転路を形成することが可能となっている。このベーン型圧縮機における他の作用は実施例1と同様である。
(実施例4)
実施例4のベーン型圧縮機は、実施例1のベーン型圧縮機における駆動軸7及び背圧供給機構13aに換えて、図13に示すように、駆動軸63及び背圧供給機構13dを備えている。
駆動軸63には、ガイド孔63aと径孔63bとが形成されている。このガイド孔63aは軸孔として機能することで、これらのガイド孔63aと径孔63bとにより本発明の回転路が構成されている。また、駆動軸63には、第1軸周面63cの他、第2軸周面(図示略)が形成されている。この第1軸周面63cが本発明における周面に相当する。
ガイド孔63aは、後端が駆動軸63の後端面、すなわち、供給室39内に開いており、駆動軸63の軸心Oと平行で駆動軸63の前端側に向かって延びている。また、ガイド孔63aは、径孔63bよりも大径に形成されている。径孔63bは、ガイド孔63aと直交する方向で第1軸周面63cまで延びており、第1軸周面63cに開口している。この径孔63bは、ガイド孔63aの前端側に連通している。
また、ガイド孔63a内には、遠心バルブ65とコイルばね67とが設けられている。これらの遠心バルブ65及びコイルばね67がそれぞれ本発明における弁体及び付勢手段に相当する。また、ガイド孔63a、遠心バルブ65及びコイルばね67が本発明における弁装置に相当する。
遠心バルブ65は、第1、2カム板65a、65bと、固定体65cと、第1、2可動体65d、65eとからなる。第1、2カム板65a、65bは、断面が略三角形状をなしており、それぞれ傾斜面651、652が形成されている。これらの第1、2カム板65a、65bは、ガイド孔63aの前方側に配置されている。固定体65cは、駆動軸63の径方向に垂直に延びる垂直壁653と、垂直壁653と直交して駆動軸63の軸方向に延びる水平壁654とを有している。また、固定体65cには、固定体内通路65fが形成されている。この固定体65cは、ガイド孔63aの後端に固定されている。第1、2可動体65d、65eは略矩形状に形成されている。これらの第1、2可動体65d、65eは、第1、2カム板65a、65bの傾斜面651、652と平行な傾斜面655、656がそれぞれ形成されている。第1、2可動体65d、65eは、ガイド孔63a内において、第1、2カム板65a、65bと固定体65cとの間に配置されている。また、第1可動体65dと第2可動体65eとは、水平壁654を挟んで配置されている。
コイルばね67は、ガイド孔63aの前端側であって、ガイド孔63aの壁面と第1、2カム板65a、65bとの間に配置されている。コイルばね67は、第1、2カム板65a、65bをガイド孔63aの後端側に向けて付勢している。
このベーン型圧縮機では、ガイド孔63aと径孔63bと固定体内通路65fとを通じて、上流路5dと供給室39とが連通している。つまり、これらのガイド孔63aと径孔63bと固定体内通路65fとを通じて、吐出室29と各供給孔5eとが連通している。そして、これらのガイド孔63aと径孔63bと固定体内通路65f、供給室39、上流路5d及び各供給孔5eによって間欠機構103が形成されている。
また、このベーン型圧縮機では、上流路5d、ガイド孔63a、径孔63b、固定体内通路65f、供給室39、各供給孔5e及び各排油溝5fによって背圧流路203が形成されている。
背圧供給機構13dは、背圧流路203と、ガイド孔63aと、遠心バルブ65と、コイルばね67と、間欠機構103とで構成されている。このベーン型圧縮機における他の構成は、実施例1のベーン型圧縮機と同様である。
このベーン型圧縮機では、上流路5d内の潤滑油等が径孔63b、ガイド孔63a及び固定体内通路65fの順に流通して供給室39内に流入する。そして、このベーン型圧縮機では、駆動軸63が回転することにより、遠心バルブ65に対して遠心力が作用する。このため、図13及び図14に示すように、ガイド孔63c内で遠心バルブ65が移動する。
すなわち、このベーン型圧縮機において、駆動軸63の回転数が低い状態では、遠心バルブ65に作用する遠心力が小さいことから、図13に示すように、第1、2可動体65d、65eが共に駆動軸63の軸心Oに近接する。これにより、コイルばね67の付勢力によって、第1カム板65aが第1可動体65dの傾斜面655に沿いつつ、ガイド孔63aの後端側に向かって移動する。同様に、第2カム板65bが第2可動体65eの傾斜面656に沿いつつ、ガイド孔63aの後端側に向かって移動する。これらにより、ガイド孔63aと径孔63bとの連通面積が大きくなる。このため、このベーン型圧縮機においても、背圧室41内に供給される潤滑油等の流量が多くなる。
一方、駆動軸63の回転数が上昇すれば、遠心バルブ65に作用する遠心力が次第に大きくなることから、図14に示すように、第1、2可動体65d、65eがそれぞれ駆動軸7の軸心Oから遠隔する方向に移動する。このため、コイルばね67の付勢力に抗しつつ、第1カム板65aが第1可動体65dの傾斜面655に沿って、ガイド孔63aの前端側に向かって移動する。同様に、第2カム板65bが第2可動体65eの傾斜面656に沿って、ガイド孔63aの前端側に向かって移動する。これらにより、ガイド孔63aと径孔63bとの連通面積が次第に減少する。こうして、このベーン型圧縮機においても、駆動軸63の回転数が上昇するにつれて、各背圧室41内に供給される潤滑油等の流量を減少させることが可能となっている。なお、この遠心バルブ65では、駆動軸63の回転数の上昇に応じて、ガイド孔63aと径孔63bとを非連通、すなわち、ガイド孔63aと径孔63bとの連通面積をゼロとすることが可能となっている。
また、このベーン型圧縮機において、間欠機構103は、実施例1における間欠機構100と同様に作用する。このベーン型圧縮機における他の作用は実施例1と同様である。
(実施例5)
実施例5のベーン型圧縮機は、実施例1のベーン型圧縮機における駆動軸7及び背圧供給機構13aに換えて、図15に示すように、駆動軸69及び背圧供給機構13eを備えている。
駆動軸69には、軸孔69aと径孔69bとガイド孔69cとが形成されている。これらの軸孔69a及び径孔69bが本発明における回転路に相当する。また、駆動軸69には、第1軸周面69dの他、第2軸周面(図示略)が形成されている。この第1軸周面69dが本発明における周面に相当する。
軸孔69aは、後端が駆動軸69の後端面、すなわち、供給室39内に開いており、駆動軸69の軸心Oと平行で駆動軸69の前端側に向かって延びている。径孔69bは、軸孔69aと直交する方向で第1軸周面69dまで延びており、第1軸周面69dに開口している。この径孔69bは軸孔69aの前端側と連通している。ガイド孔69cは、駆動軸69の軸孔69aと直交する方向に延び、軸孔69aを前端側と後端側とに分断しつつ、駆動軸69を径方向に貫通している。このガイド孔69cは軸孔69aの後端側と連通している。また、ガイド孔69c内には、ばね座69dが形成されている。
ガイド孔69c内には、実施例1のベーン型圧縮機におけるスプールバルブ49とコイルばね51とが設けられている。これらのガイド孔69c、スプールバルブ49及びコイルばね51が本発明における弁装置に相当する。
さらに、ガイド孔69c内には、一対のサークリップ62b、62cが嵌合されている。各サークリップ62b、62cは、スプールバルブ49の頭部49aと座部49dとにそれぞれ当接することにより、ガイド孔69c内におけるスプールバルブ49の移動量を規制している。
このベーン型圧縮機では、軸孔69aと径孔69bと弁体内通路49eとを通じて、上流路5dと供給室39とが連通している。つまり、これらの軸孔69aと径孔69bと弁体内通路49eとを通じて、吐出室29と各供給孔5eとが連通している。そして、これらの軸孔69aと径孔69bと弁体内通路49e、供給室39、上流路5d及び各供給孔5eによって間欠機構104が形成されている。
また、このベーン型圧縮機では、上流路5d、軸孔69aと径孔69bと弁体内通路49e、供給室39、各供給孔5e及び各排油溝5fによって背圧流路204が形成されている。
背圧供給機構13eは、背圧流路204と、ガイド孔69cと、スプールバルブ49と、コイルばね51と、間欠機構104とで構成されている。このベーン型圧縮機における他の構成は、実施例1のベーン型圧縮機と同様である。
このベーン型圧縮機では、上流路5d内の潤滑油等が径孔69b、軸孔69aの前端側、弁体内通路49e及び軸孔69aの後端側の順に流通して供給室39内に流入する。そして、このベーン型圧縮機では、駆動軸69が回転することにより、実施例1のベーン型圧縮機と同様に、ガイド孔69c内でスプールバルブ49が移動する。
これにより、このベーン型圧縮機において、駆動軸57の回転数が低い状態では、軸孔69aの前端側と、弁体内通路49eと、軸孔69aの後端側とが連通しており、軸孔69aと弁体内通路49eとの連通面積が大きくなる。このため、このベーン型圧縮機では、軸孔69aの連通面積が大きくなることで、回転路の連通面積が大きくなり、背圧室41内に供給される潤滑油等の流量が多くなる。一方、駆動軸69の回転数が上昇すれば、軸孔69aと弁体内通路49eとの連通面積が次第に減少する。こうして、このベーン型圧縮機では、駆動軸69の回転数が上昇するにつれて、軸孔69aと弁体内通路49eとの連通面積が小さくなることで、回転路の連通面積が小さくなり、各背圧室41内に供給される潤滑油等の流量を減少させることが可能となっている。
また、このベーン型圧縮機構において、間欠機構104は、実施例1における間欠機構100と同様に作用する。このベーン型圧縮機における他の作用は実施例1と同様である。
このベーン型圧縮機構では、実施例1のベーン型圧縮機よりも構成を簡素化することが可能であり、製造コストの更なる低廉化が可能となっている。
(実施例6)
実施例6のベーン型圧縮機では、実施例1のベーン型圧縮機構における背圧供給機構13aに換えて、図16に示すように、背圧供給機構13fを備えている。また、このベーン型圧縮機では、実施例1のベーン型圧縮機構におけるリヤサイドプレート5に換えて、リヤサイドプレート71を有している。
リヤサイドプレート71も、リヤハウジング17の第2収納空間17a内に固定されている。また、リヤサイドプレート71についても、リヤサイドプレート5と同様、後方に向かって突出するボス71aや円筒状の軸受面71b等が形成されている。さらに、図示を省略するものの、リヤサイドプレート71の後端面71gには、遠心分離セパレータ33のエンドフレーム35が接合されている。これにより、リヤサイドプレート71とエンドフレーム35との間にも供給室39が形成されている。
また、リヤサイドプレート71には、上流路71cと、供給溝71dと、一対の供給孔71eと、一対の排油溝71fとが形成されている。上流路71cは、リヤサイドプレート71の上下方向に延びている。この上流路71cの上端は供給溝71d内に開いている。また、図示を省略するものの、この上流路71cの下端は吐出室29内に開いている。供給溝71dは、駆動軸7の第1軸周面7dに沿いつつ、軸受面71bと同軸で環状に形成されている。各供給孔71eは、それぞれボス71aからリヤサイドプレート71の前端側に向かって、リヤサイドプレート71の前後方向に延びている。各排油溝71fは、実施例1のベーン型圧縮機における各排油溝5fと同様の構成である。
このベーン型圧縮機では、上流路71c、供給溝71d、径孔7b、センタ孔7a、収納室7c、連絡路47a、弁体内通路49e、供給室39、各供給孔71e及び各排油溝71fによって背圧流路205が形成されている。
背圧供給機構13fは、背圧流路205と、収納室7cと、弁ケース47とで構成されている。このベーン型圧縮機における他の構成は、実施例1のベーン型圧縮機と同様である。
このベーン型圧縮機では、潤滑油等が上流路71c内を流通して供給溝71dに至る。ここで、供給溝71dは駆動軸7の第1軸周面7dに沿って環状に形成されているため、駆動軸7の回転に伴って径孔7bがいずれの位置に移動しても、供給溝71dと径孔7bとが連通する。このため、供給溝71dの潤滑油等は、常に、径孔7b、センタ孔7a、連絡路47a及び弁体内通路49eを流通し、供給室39内に流入する。これにより、このベーン型圧縮機では、吐出室29内の潤滑油等を常に各背圧室41に供給することが可能となっている。
つまり、このベーン型圧縮機では、駆動軸69の回転数に応じて、吐出室29内から各背圧室41に供給される潤滑油等の流量のみを調整することが可能となっている。このベーン型圧縮機における他の作用は実施例1と同様である。
以上において、本発明を実施例1〜6に即して説明したが、本発明は上記実施例1〜6に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
例えば、実施例1のベーン型圧縮機において、駆動軸7の回転数の上昇に応じて、連絡路47aと弁体内通路49eとが非連通、つまり、連絡路47aと弁体内通路49eとの流路面積がゼロとなるようにスプールバルブ49等を構成しても良い。実施例5のベーン型圧縮機についても同様である。一方、実施例4のベーン型圧縮機において、第1、2可動体65d、65eが最も遠隔した状態であっても、ガイド孔65aと径孔65bとの連通面積が一定程度確保されるように遠心バルブ65を構成しても良い。
また、実施例4のベーン型圧縮機において、遠心バルブ65に作用する遠心力が最大となった場合であっても、ガイド孔63aと径孔63bの連通面積が一定程度確保されるように第1、2カム板65a、65b等を構成しても良い。
さらに、実施例1〜5のベーン型圧縮機において、間欠機構100〜104を設けずに構成しても良い。
また、実施例1のベーン型圧縮機において、駆動軸7の第1、2軸周面7d、7eに対してスズめっきを施すことによって、第1、2軸周面7d、7eに摺動層を形成しても良い。実施例3〜5のベーン型圧縮機についても同様である。