以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
本発明は、例えば図1のブロック図に示すような構成の変位検出装置100に適用される。
この変位検出装置100は、測定方向Zとは垂直な方向Xに相対移動可能な被測定部材1の被測定面1aの変位を該被測定面1aにより反射される測定光L1に基づいて検出するものであって、光源10と、この光源10から出射される測定光L0を2つの光束L1,L2に分割する光束分割部12と、回折格子15と、反射鏡18と、上記被測定部材1の被測定面1aにより反射される測定光L1に基づいて、上記測定方向Zの相対位置と絶対位置を光学的に検出する相対位置検出部20と絶対位置検出部30を備える。
光源10には、例えば半導体レーザダイオードやスーパールミネッセンスダイオード、ガスレーザ、固体レーザ、発光ダイオード等が挙げられる。
光源10として、可干渉距離が長い光源を用いると、被測定部材1の被測定面1aのチルト等による物体光と参照光の光路長差の影響を受けにくくチルト許容範囲が広くなる。また、光源10の可干渉距離が短くなるほど、不要な迷光の干渉によるノイズを防ぐことができ、高精度な計測をすることができる。
さらに、光源10として、シングルモードのレーザを用いると、波長を安定させるために、光源10の温度をコントロールすることが望ましい。また、シングルモードのレーザの光に、高周波重畳などを付加して、光の可干渉性を低下させてもよい。さらに、マルチモードのレーザを用いる場合も、ペルチェ素子等で光源10の温度をコントロールすることで、不要な迷光の干渉によるノイズを防ぎ、さらに安定した計測が可能になる。
この光源10から出射された測定光L0は、コリメートレンズ等からなるレンズ11を介して光束分割部12に入射されている。レンズ11は、光源10から出射された測定光L0を平行光にコリメートする。そのため、光束分割部12には、レンズ11により平行光にコリメートされた測定光L0が入射される。
光束分割部12は、コリメートされた測定光L0を物体光である第1の光束L1と、参照光である第2の光束L2に分割する。第1の光束L1は、物体光として、第1の位相板13と対物レンズ14を介して被測定部材1に照射され、第2の光束L2は、参照光として、第2の位相板16と集光レンズ17を介して反射鏡18に照射される。また、光束分割部12は、例えば、光源10から入射される測定光L0のうち、s偏光を反射し、p偏光を透過する偏光ビームスプリッタからなる。
光束分割部12では、測定光L0が第1の光束L1と第2の光束L2に分割されるが、その光量比率は、相対位置検出部20の受光部20Aに入射する際に被測定部材1側と反射鏡18側でそれぞれが同じ光量になるような比率にすることが好ましい。
また、光源10と光束分割部12との間に偏光板を設けてもよい。これにより、それぞれの偏光に対して直行した偏光成分としてわずかに存在する漏れ光、ノイズを除去することができる。
また、第1の位相板13及び第2の位相板16は、それぞれ1/4波長板等から構成されている。
さらに、対物レンズ14及び集光レンズ17は、第1の光束L1及び第2の光束L2を集光させて、回折格子15に収束する収束光とする。
これにより、被測定部材1の被測定面1aがチルトした(傾いた)際に生じる干渉信号の振幅の低下を抑制することができる。また、光束L2を被測定部材1の被測定面1a上に集光させるなど、使用目的に応じて被測定部材1の被測定面1a上に照射されるビーム径を調整してもよい。
被測定部材1は、第1の光束L1を回折格子15に反射させる。なお、被測定部材1としては、被測定面1aを鏡面としたミラー等が用いられる。被測定部材1の詳細な構成例については、後述する。
回折格子15は、入射した光を反射させ、かつ回折させる反射型の回折格子である。
そして、被測定部材1は、回折格子15によって回折された第1の光束L1を反射して、再び光束分割部12へ戻す。回折格子15は、被測定部材1の被測定面1aに対して略直角、すなわち回折格子15の回折面と被測定部材1の被測定面1aで形成される角度がほぼ90°となるように配置されている。
なお、回折格子15における被測定部材1に対する配置する精度は、変位検出装置100に要求する測定精度によって種々設定されるものである。すなわち、変位検出装置100に高い精度を要求する場合、回折格子18を被測定部材1の被測定面1aに対して90°±0.5°の範囲に配置することが好ましい。これに対し、回折格子15を被測定部材1の被測定面1aに対して90°から±2°の範囲で配置しても、変位検出装置100を工作機械等の低精度の測定に用いる場合には、十分である。
また、回折格子15に入射した第1の光束L1は、回折格子15によって反射し、かつ回折される。この回折格子15の格子ピッチΛは、回折角が回折格子15への入射角とほぼ等しくなるように設定される。すなわち、回折格子15の格子ピッチΛは、被測定面1aへの入射角をθ、光の波長をλとすると、次の式1を満たす値に設定することが好ましい。なお、上述したように、回折格子15が被測定部材1の被測定面1aに対して直角に配置されているため、回折格子15への入射角は、π/2−θとなる。
Λ=λ/(2sin(π/2−θ)) ・・・式1
そのため、回折格子15によって反射し、かつ回折されて再び被測定部材1の被測定面1aに入射するときの光路が、光束分割部12によって分割された第1の光束L1が被測定部材1の被測定面1aによって反射されて回折格子15に入射するときの光路に重なり合う。その結果、回折格子15よって回折された第1の光束L1は、光束分割部12から被測定部材1の被測定面1aに照射された照射スポットP1と同じ点に戻る。そして、第1の光束L1は、被測定部材1の被測定面1aで再び反射され、光束分割部12から照射されたときの光路と同じ光路を通って光束分割部12に戻る。
なお、回折格子15としては、例えば図2の側面図に一例を示すような構造の回折格子15Aが用いられる。
この回折格子15Aは、溝の断面形状を鋸歯状に形成した、いわゆるブレーズド回折格子である。この回折格子15Aによれば、被測定部材1の被測定面1aで反射された物体光である第1の光束L1や、反射鏡18で反射された参照光である第2の光束L2の回折効率を高めることができ、信号のノイズを低下させることができる。
また、反射鏡18は、図1に示すように、光束分割部12によって分割された第2の光束L2を回折格子15に反射するものである。この反射鏡18は、回折格子15を間に挟んで被測定部材1と対向する位置に設けられている。そして、反射鏡18の反射面は、被測定部材1の被測定面1aと略平行に配置される。そのため、反射鏡18及び回折格子15は、反射鏡18の反射面と回折格子15の回折面で形成される角度がほぼ90°となるように配置される。
また、反射鏡18は、回折格子15によって回折された第2の光束L2を再び反射して光束分割部3に戻す。なお、反射鏡18によって反射され、かつ回折格子15によって回折された第2の光束L2も、第1の光束L1と同様に、光束分割部12から照射されたときの光路と同じ光路を通って光束分割部12に戻る。
この反射鏡18は、第1の光束L1における光束分割部12から回折格子15までの光路長と、第2の光束L2における光束分割部12から回折格子15までの光路長が等しくなるように配置される。反射鏡18を設けたことで、この変位検出装置100を製造する際に、第1の光束L1の光路長と第2の光束L2の光路長や光軸の角度を調整し易くすることができる。その結果、気圧や湿度や温度の変化による光源10の波長変動の影響を受けにくくすることができる。
上述したように、反射鏡18の反射面と回折格子15の回折面は、被測定部材1の被測定面1aと回折格子15の関係と同様に、略直角に配置することが好ましい。これにより、回折格子15によって回折されて再び反射鏡18の反射面に入射するときの光路が、反射鏡18によって反射されて回折格子15に入射するときの光路に重なり合う。
また、光束分割部12は、被測定部材1及び反射鏡18から反射されて戻ってきた第1の光束L1及び第2の光束L2を重ね合わせて、相対位置検出部20の受光部20Aに照射する。すなわち、この変位検出装置100における光束分割部12は、測定光L0を第1の光束L1と第2の光束L2に分割する光束分割部としての役割と、第1の光束L1と第2の光束L2を重ね合わせる光束結合部としての役割を有している。
ここで、光束分割部12から被測定部材1及び回折格子15を介して光束分割部12に戻るまでの長さと、光束分割部12から反射鏡18及び回折格子15を介して光束分割部12に戻るまでの長さは、略等しく設定されている。すなわち、第1の光束L1と第2の光束L2の光路長を等しく設定したため、気圧や湿度、温度の変化による光源の波長変動があったとしても、第1の光束L1及び第2の光束L2が受ける影響を等しくすることができる。その結果、気圧補正や湿度補正、温度補正を行う必要がなく、周囲環境に関わらず安定した測定を行うことができる。
相対位置検出部20は、受光部20Aと相対位置情報出力部20Bからなる。
相対位置検出部20の受光部20Aは、光束分割部12により重ね合わされた第1の光束L1と第2の光束L2が入射される集光レンズ21と、この集光レンズ21により集光された第1の光束L1と第2の光束L2すなわち入射光を分割するハーフミラー22と、このハーフミラー22により分割された入射光が入射される第1の偏光ビームスプリッタ23と、上記ハーフミラー22により分割された入射光が例えば1/4波長板等からなる受光側位相板24を介して入射される第2の偏光ビームスプリッタ25を備える。
これら第1の偏光ビームスプリッタ23及び第2の偏光ビームスプリッタ25は、s偏光成分を有する干渉光を反射させ、p偏光成分を有する干渉光を透過させて、第1の光束L1と第2の光束L2との干渉光を分割するものである。
第1の偏光ビームスプリッタ23は、入射される光束の偏光方向が入射面に対して45度傾くように配置されている。この第1の偏光ビームスプリッタ23における光の出射口側には、第1の受光素子26と、第2の受光素子27が設けられている。また、第2の偏光ビームスプリッタ25における光の出射口側には、第3の受光素子28と、第4の受光素子29が設けられている。
また、相対位置検出部20の相対位置情報出力部20Bは、図3に示すように、第1の差動増幅器61aと、第2の差動増幅器61bと、第1のA/D変換器62aと、第2のA/D変換器62bと、波形補正処理部63と、インクリメンタル信号発生器64とを有している。
第1の差動増幅器61aは、受光部20Aの第1の受光素子26及び第2の受光素子27が入力端に接続され、出力端に第2のA/D変換器62bが接続されている。また、第2の差動増幅器61bは、受光部20Aの第3の受光素子28及び第4の受光素子29が入力端に接続され、出力端に第2のA/D変換器62bが接続されている。そして、第1のA/D変換器62a及び第2のA/D変換器62bは、波形補正処理部63に接続されている。波形補正処理部63は、インクリメンタル信号発生器64に接続されている。
また、絶対位置検出部30は、図1に示すように、回折格子15と対向するように設けられた受光部31とこの受光部31に接続された絶対位置情報出力部32からなる。
絶対位置検出部30の受光部31は、回折格子15に入射した第1の光束L1のうち回折格子面から反射した反射光(0次光)を受光する。
この受光部31は、例えば、図4に示すように、第5の受光素子31Aと第6の受光素子31Bを有する2分割受光部からなる。
この2分割受光部31は、被測定部材1の被測定面1aが高さ方向に変位した際に、反射光のビームスポットが移動(シフト)する方向に沿って第5の受光素子31A及び第6の受光素子31Bを並べて配置してある。第5の受光素子31A及び第6の受光素子31Bは、絶対位置情報出力部32を構成する差動比較器32Aに接続されている。
そして、絶対位置検出部30の受光部31では、第5の受光素子31A及び第6の受光素子31Bにより検出した光を電気エネルギーに変換(光電変換)して出力信号を生成し、差動比較器32Aに出力する。
被測定部材1の被測定面1aが高さ方向に変位すると、第1の光束L1の反射光は、例えば第5の受光素子31Aから第6の受光素子31Bにシフトする。そして、光電変換した信号を差動比較器32Aに通すと、図5に示すような信号出力の変化が得られる。この図5に示す信号出力の変化におけるゼロクロス位置を絶対位置として、相対位置情報と比較することで被測定部材1の被測定面1aの高さ方向の絶対位置検出が可能となる。
ここで、この変位検出装置100における被測定部材1について説明する。
一般に光源10からの光を反射させる被測定部材1としては、ミラー等が用いられる。図6に示すように、被測定部材1は、基板2と、基板2上に積層された反射膜3とを有している。この反射膜3は、極めて平坦に加工されている。また、表面を平坦化することで、より正確な高さ方向の変位を検出することが可能となる。さらに、反射膜3は、測定光L1の波長を含む特定の波長のみを反射するようにしてもよい。
そして、この変位検出装置100において、被測定部材1は、その移動方向の両端部に上記測定光L1の光軸を移動させる傾斜した反射面4Aが形成された絶対位置検出領域4を有する。
この変位検出装置100における絶対位置検出部30は、上記被測定部材1の絶対位置検出領域4において、傾斜した反射面4Aにより上記測定光L1の光軸が移動されることにより絶対位置検出を行うことができる。
このような構成の変位検出装置100において、光束分割部12により重ね合わされて、相対位置検出部20の受光部20Aに入射される第1の光束L1と第2の光束L2は、第1の偏光ビームスプリッタ23に対してそれぞれp偏光成分とs偏光成分を有することになる。したがって、第1の偏光ビームスプリッタ23を透過した第1の光束L1及び第2の光束L2は、同じ偏光方向を有する偏光同士が干渉する。よって、第1の光束L1と第2の光束L2を第1の偏光ビームスプリッタ23によって干渉させることができる。
同様に、第1の偏光ビームスプリッタ23によって反射される第1の光束L1及び第2の光束L2は、第1の偏光ビームスプリッタ23に対して同じ偏光方向を有する偏光同士が干渉する。そのため、第1の偏光ビームスプリッタ23によって干渉させることができる。
第1の偏光ビームスプリッタ23によって反射された第1の光束L1及び第2の光束L2との干渉光は、第1の受光素子26によって受光される。また、第1の偏光ビームスプリッタ23を透過した第1の光束L1及び第2の光束L2との干渉光は、第2の受光素子27によって受光される。ここで、第1の受光素子26と第2の受光素子27とによって光電変換される信号は、180度位相の異なる信号となる。
したがって、第1の受光素子26と第2の受光素子27によって、Acos(Kz+δ)の干渉信号が得られる。Aは、干渉の振幅であり、Kは2π/Λで示される波数である。また、zは、回折格子15上における第1の光束L1の移動量を示しており、δは、初期位相を示している。Λは、回折格子4における格子のピッチである。
ここで、図7に示すように、被測定部材1が高さ方向にz/2だけ移動すると、被測定部材1の被測定面1aに照射される第1の光束L1は、照射スポットP1から照射スポットP2に移動する。また、被測定部材1の被測定面1aで反射された第1の光束L1は、回折格子15の回折位置T1から回折位置T2に移動する。ここで、回折格子15は、被測定部材1の被測定面1aに対して略直角に配置されているため、回折位置T1と回折位置T2の間隔は、照射スポットP1と照射スポットP2の間隔の2倍のzとなる。すなわち、回折格子15上を移動する第1の光束L1の移動量は、被測定部材1を移動した際の2倍のzとなる。
また、回折格子15が被測定部材1の被測定面1aに対して略直角に配置されているため、被測定部材1が高さ方向に変位しても、P2−T2間の距離と、P2−P1−T1間の距離が一定であることから、第1の光束L1の光路長は常に一定となることが分かる。すなわち、第1の光束L1の波長は、変化しない。そして、被測定部材1が高さ方向に変位すると、回折格子15に入射する位置だけが変化する。
よって、回折された第1の光束L1には、Kzの位相が加わる。つまり、被測定部材1が高さ方向に対してz/2だけ移動すると、第1の光束L1は回折格子15上ではzだけ移動する。そのため、第1の光束L1には、Kzの位相が加わり、1周期の光の明暗が生じる干渉光が第1の受光素子26、第2の受光素子27によって受光される。
ここで、第1の受光素子26及び第2の受光素子27によって得られる干渉信号には、光源10の波長に関する成分が含まれていない。よって、気圧や湿度、温度の変化による光源の波長に変動が起きても干渉強度には、影響を受けない。
一方、ハーフミラー22を透過した光束Laは、受光側位相板24を介して第2の偏光ビームスプリッタ25に入射される。互いに偏光方向が90度異なる直線偏光である第1の光束L1及び第2の光束L2からなる光束Laは、受光側位相板24を透過することにより、互いに逆回りの円偏光となる。そして、この互いに逆回りの円偏光は同一光路上にあるので、重ね合わされることにより直線偏光となって、第2の偏光ビームスプリッタ25に入射される。
この直線偏光のs偏光成分は第2の偏光ビームスプリッタ25によって反射され、第3の受光素子28に受光される。また、p偏光成分は、第2の偏光ビームスプリッタ25を透過し、第4の受光素子29によって受光される。
上述したように、第2の偏光ビームスプリッタ25に入射する直線偏光は、互いに逆回りの円偏光の重ね合わせによって生じている。そして、第2の偏光ビームスプリッタ25に入射される直線偏光の偏光方向は、被測定部材1が高さ方向にΛ/2だけ移動すると1/2回転する。したがって、第3の受光素子28と第4の受光素子29でも同様に、Acos(Kz+δ’)の干渉信号が得られる。δ’は初期位相である。
また、第3の受光素子28と第4の受光素子29とで光電変換される信号は、180度位相が異なる。
なお、この変位検出装置100では、第1の偏光ビームスプリッタ23に対して、第3の受光素子28と第4の受光素子29に受光される光束を分割する第2の偏光ビームスプリッタ26を45度傾けて配置している。このため、第3の受光素子28と第4の受光素子29において得られる信号は、第1の受光素子26と第2の受光素子27において得られる信号に対し、90度位相がずれている。
したがって、例えば第1の受光素子26と第2の受光素子27で得られる信号をsin信号、第3の受光素子28と第4の受光素子29において得られる信号をcos信号として用いることによりリサージュ信号を取得することができる。
これらの受光素子26〜29によって得られる信号は、相対位置情報出力部20Bによって演算され、被測定面1aの変位量がカウントされる。
相対位置情報出力部20Bでは、まず、受光部20Aの第1の受光素子26と第2の受光素子27で得られた位相が互いに180度異なる信号を第1の差動増幅器61aによって差動増幅し、干渉信号の直流成分をキャンセルする。
そして、この信号は、第1のA/D変換器62aによってA/D変換され、波形補正処理部63によって信号振幅とオフセットと位相が補正される。この信号は、例えばA相のインクリメンタル信号としてインクリメンタル信号発生器64から出力される。
また同様に、第3の受光素子35及び第4の受光素子36で得られた信号は、第2の差動増幅器61bによって差動増幅され、第2のA/D変換器62bによってA/D変換される。そして、波形補正処理部63により信号振幅とオフセットと位相とが補正され、A相と位相が90度異なるB相のインクリメンタル信号としてインクリメンタル信号発生器64から出力される。
こうして得られた2相のインクリメンタル信号は、図示しないパルス弁別回路等により正逆の判別が行われ、これにより、被測定部材1の被測定面1aの高さ方向の変位量が、プラス方向であるかマイナス方向であるかを検出できる。
また、図示しないカウンタによってインクリメンタル信号のパルス数をカウントすることにより、第1の光束L1と第2の光束L2の干渉光強度が上述の周期の何周期分変化したのかを計測できる。これにより、被測定部材1の被測定面1aの変位量が検出される。
なお、この変位検出装置100における相対位置情報出力部20Bの出力する相対位置情報は、上述の2相のインクリメンタル信号であってもよいし、それから算出された変位量、変位方向を含む信号であってもよい。
そして、この変位検出装置100では、被測定部材1の移動方向Xの両端部に測定光L1の光軸を移動させる傾斜した反射面4Aが形成された絶対位置検出領域4を有するので、絶対位置検出部30は、上記絶対位置検出領域4において上記測定光L1の光軸を移動させることにより絶対位置検出を行うことができ、被測定部材1が検出範囲から外れてしまった際に、被測定部材1を検出範囲に戻すだけで、絶対位置を高速で検出し、相対位置情報検出部20により得られる相対位置情報をリセットあるいはプリセットして原点復帰させることができる。
ここで、被測定部材1の表面を平坦面とする必要がある場合には、例えば、図8の(A)に示す被測定部材1Aの示すように、被測定部材1の両端部の傾斜した反射面4Aにより測定光L1の光軸を移動させる絶対位置検出領域4を光透過性のある部材5でシールすることにより平坦面とすることができる。
また、図8の(B)に示す被測定部材1Bの示すように、被測定部材1の両端部の傾斜した反射面4Aにより測定光L1の光軸を移動させる絶対位置検出領域4を含む被測定面1a全面を光透過性のある部材5でシールすることにより平坦面とすることができる。
また、被測定部材1の両端部の絶対位置検出領域4に形成する傾斜した反射面4Aにより、傾斜方向は逆であってもよく、図8の(C)に示す被測定部材1Cのように、登り傾斜の反射面4Bを両端部の絶対位置検出領域4に形成してもよい。
また、上記被測定部材1の移動方向Xの両端部の絶対位置検出領域4は、上記測定光L1の光軸を移動させる機能を有する領域であればよく、図9に示す被測定部材1Dのように、屈折率の変化により上記測定光L1の光軸を移動させる機能を有する絶対位置検出領域4Dを被測定部材1の移動方向Xの両端部に設けるようにすることができる。
このように 屈折率の変化により上記測定光L1の光軸を移動させる機能を有する絶対位置検出領域4Dは、被測定部材のエッジ部のシール部材の屈折率が他の部分と違う構成としたり、イオン交換法によるガラスの屈折率分布に変化をもたせた領域とすることができる。
さらに、上記測定光L1の光軸を移動させる機能を有する絶対位置検出領域4は、例えば、図10に示す被測定部材1Eのように、回折格子による回折光を利用して測定光L1の光軸を移動させるものとすることができる。
この被測定部材1Eのように、被測定部材の外周に回折格子4eを配置した絶対位置検出領域4Eを備える。
この被測定部材1Eでは、図11に示すように、外周の絶対位置検出領域4Eに測定光L1が入射されるとき、測定光L1の反射光L11以外に回折光L12が得られる。回折光L12の回折角θ12は、sinθ11+sinθ12=nλ/dで与えられ、nは次数、λは入射波長、dは格子ピッチである。
したがって、この変位検出装置100では、絶対位置情報検出部30の2分割受光部31を、第5の受光素子31Aに反射光L11が入射され、第6の受光素子31Bに回折光L12が入射されるように配置し、被測定部材1Eの回折格子1e上での反射光が、L11<L12であれば、差動比較器32Aにより得られる第5の受光素子31Aと第6の受光素子31Bの差動出力は、被測定部材1Eの回折格子1eを配置した部分絶対位置検出領域4Eと回折格子のない部分の境界でゼロクロスすることになる。
すなわち、反射光L11が第5の受光素子31Aにθ1で入射しているため、図12、図13に示すように、z方向の位置により、ゼロクロス位置xは、変化する。このゼロクロス位置xとz位置の相関を事前に取得しておくことで、ゼロクロス信号をトリガーにしてゼロクロス位置xのずれ量からz位置を割り出すことができる。
また、上記変位検出装置100において、相対位置情報検出部20は、上記被測定部材1の被測定面1aにより反射される測定光L1を反射型回折格子18を介して受光する受光部20Aを備え、上記受光部20Aにより得られる光検出出力に基づいて上記被測定面1aの上記測定方向Zの相対位置情報を相対位置情報出力部20Bから出力するものとしたが、例えば図14に示す変位検出装置100Aのように、被測定部材1の被測定面1aにより反射される測定光L1を透過型回折格子15Aを介して受光する受光部20Aを備え、上記受光部20Aにより得られる光検出出力に基づいて上記被測定面1aの上記測定方向Zの相対位置情報を相対位置情報出力部20Bから出力するものとすることができる。
すなわち、図14に示す変位検出装置100Aは、上記変位検出装置100と同様に、測定方向Zとは垂直な方向Xに相対移動可能な被測定部材1の被測定面1aの変位を該被測定面1aにより反射される測定光L1に基づいて検出するものであって、光源10と、この光源10から出射される測定光L0を2つの光束L1,L2に分割する光束分割部12と、透過型の回折格子15Aと、反射鏡18と、戻り用反射鏡ブロック19と、上記被測定部材1の被測定面1aにより反射される測定光L1に基づいて、上記測定方向Zの相対位置と絶対位置を光学的に検出する相対位置検出部20と絶対位置検出部30を備える。
なお、この変位検出装置100Aにおいて、上記変位検出装置100と共通する構成要素については、図中に同一の符号を付して重複した説明を省略する。
この変位検出装置100Aでは、光源10から出射された測定光L0がレンズ11Aにより収束光として光束分割部12に入射され、光束分割部12により物体光である第1の光束L1と、参照光である第2の光束L2に分割される。
光束分割部12で分割された第1の光束L1は、第1の位相板13を介して被測定部材1の被測定面1aにおける第1の照射スポットPc1に入射され、この被測定面1aで反射されて透過型の回折格子15Aに入射される。
回折格子15Aは、入射された光を透過させ、かつ回折する透過型の回折格子である。
この変位検出装置100Aでは、上記変位検出装置100における反射型の回折格子18に替えて上記透過型の回折格子15Aが設けられている。
そして、この透過型の回折格子15Aに入射された第1の光束L1は、当該透過型の回折格子15Aを透過し、かつ1回回折されて、被測定部材1の被測定面1aにおける上記第1の照射スポットPc1と異なる第2の照射スポットPd1に入射され、この被測定面1aで反射されて戻り用反射鏡ブロック19の第1の反射面19Aに入射される。
また、上記透過型の回折格子15Aに入射された第1の光束L1は、当該透過型の回折格子15Aを透過し、絶対位置検出部30の受光部31に入射される。
絶対位置検出部30では、上記透過型の回折格子15Aを透過して入射される第1の光束L1を受光部31で受光して、第5の受光素子31Aと第6の受光素子31Bにより光電変換して得られる検出信号に基づいて、差動比較器32Aにより得られる差動出力のゼロクロス位置を絶対位置として、相対位置情報と比較することで被測定部材1の被測定面1aの高さ方向Zの絶対位置検出を行う。
また、光束分割部12で分割された第2の光束L2は、第2の位相板16を介して反射鏡18に入射され、この反射鏡18を介して被測定部材1の被測定面1aにおける第1の照射スポットSc1に入射され、この被測定面1aで反射されて透過型の回折格子15Aに入射される。
そして、この透過型の回折格子15Aに入射された第2の光束L2は、当該透過型の回折格子15Aを透過し、かつ1回回折されて、反射鏡18の反射面における上記第1の照射スポットSc1と異なる第2の照射スポットSd1に入射され、この反射面で反射されて戻り用反射鏡ブロック19の第2の反射面19Bに入射される。
ここで、上記レンズ11Aは、光束分割部12で分割された第1の光束L1及び第2の光束L2が上記戻り用反射鏡ブロック19の第1の反射面19A及び第2の反射面19B、上記絶対位置検出部30の受光部31において収束するように、上記光源10から出射された上記測定光L0を収束させた収束光として光束分割部12に入射させる。
戻り用反射鏡ブロック19は、第1の反射面19Aと第2の反射面19Bとを有する略三角形状のミラーである。第1の反射面19Aは、被測定部材1の被測定面1aで反射されて入射された第1の光束L1を反射して入射したときと同じ光路で被測定部材1の被測定面1aと透過型の回折格子15Aを介して光束分割部12に戻す。また、第2の反射面19Bは、反射鏡18の反射面で反射されて入射された第2の光束L2を反射して入射したときと同じ光路で反射鏡18の反射面と透過型の回折格子15Aを介して光束分割部12に戻す。
そして、この変位検出装置100Aでは、被測定部材1及び反射鏡18から反射されて光束分割部3に戻ってきた重ね合わせされた第1の光束L1及び第2の光束L2を相対位置検出部20の受光部20Aで受光することにより、上記変位検出装置100と同様に、上記受光部20Aにより得られる光検出出力に基づいて上記被測定面1aの上記測定方向Zの相対位置情報を相対位置情報出力部20Bから出力する。
ここで、この変位検出装置100Aにおいて、透過型の回折格子15Aは、被測定部材1の被測定面1aに対して略垂直に配置されており、図15に示すように、被測定面1aにおける第1の照射スポットPc1に入射角θ1で入射した第1の光束L1が入射角π/2−θ1で入射される。さらに、第1の光束L1は、被測定部材1の被測定面1aにおける第2の照射スポットPd1に入射角θ2で入射される。
また、回折格子15Aの格子ピッチΛは、回折角が回折格子15Aへの入射角とほぼ等しくなるように設定されることが好ましい。すなわち、回折格子15Aの格子ピッチΛは、上述したように被測定部材1の被測定面1aの一回目の入射角をθ1、二回目の入射角をθ2、波長λとすると、次の式2を満たす。
Λ=nλ/(sin(π/2−θ1)+sin(π/2−θ2)) ・・・式2
なお、nは、正の次数である。
回折格子15Aへの入射角と回折角が等しくなる場合、第1の照射スポットPc1と第2の照射スポットPd1は、回折格子15Aに対して対称に構成することができる。そして、式2は、次の式3にて示すことができる。
2Λsinθ=nλ ・・・式3
なお、θは、回折格子15Aの入射角及び回折角である。
すなわち、ブラッグ条件を満たすことができ、回折格子15Aによって回折される回折光を強めることが可能となる。
また、角度θ2で被測定部材1の被測定面1aに入射した第1の光束L1は、被測定部材1の被測定面1aにより反射され、戻り用反射鏡ブロック19の第1の反射面19Aに入射し、この第1の反射面19Aで反射されて、行きと同じ光路をたどり、再び被測定部材1の被測定面1aの第2の照射スポットPd1に入射角θ2で入射される。
さらに、被測定部材1の被測定面1aによって反射した第1の光束L1は、回折格子15Aに角度π/2−θ2で再び入射される。なお、第1の光束L1における2回目の回折は、式1の条件により回折角π/2−θ1で回折される。そして、回折格子15Aによって回折された第1の光束L1は、再び被測定部材1の被測定面1aの第1の照射スポットPc1に入射角θ1で入射される。そのため、被測定部材1の被測定面1aによって反射された戻りの第1の光束L1の光路が、光束分割部12によって分割された行きの第1の光束L1の光路と重なり合う。
また、被測定部材1の被測定面1aが高さ方向にz/2だけ移動すると、被測定部材1の被測定面1aに照射される第1の光束L1は、第1の照射スポットPc1から第1の照射スポットPc2に移動する。また、被測定部材1の被測定面1aにおける第1の照射スポットPc1,Pc2で反射された第1の光束L1は、回折格子15Aの回折位置T1から回折位置T2に移動する。さらに、回折格子15Aによって1回目の回折が行われた第1の光束L1は、被測定部材1の被測定面1aにおける第2の照射スポットPd1から第2の照射スポットPd2に移動する。
ここで、回折格子15Aは、被測定部材1の被測定面1aに対して略直角に配置されており、回折位置T1と回折位置T2の間隔は、第1の照射スポットPc1と第1の照射スポットPc2の間隔の2倍のzとなる。すなわち、回折格子15A上を移動する第1の光束L1の移動量は、被測定部材1を移動した際の2倍のzとなる。
また、回折格子15Aが被測定部材1の被測定面1aに対して略直角に配置されており、第1の光束L1の光路長は、被測定部材1が高さ方向に変位しても、常に一定となる。すなわち、第1の光束L1の波長は、変化しない。そして、被測定部材1が高さ方向に変位すると、回折格子15Aに入射する位置だけが変化する。
なお、反射鏡18に照射された第2の光束L2においても、第1の光束L1と同様であるため、その説明は省略する。
この変位検出装置100Aでは、第1の光束L1を2回回折している。そのため、2回回折された第1の光束L1には、2Kzの位相が加わる。Kは、2π/Λで示される波数である。また、zは、回折格子15A上における第1の光束L1の移動量を示している。つまり、被測定部材1が高さ方向に対してz/2だけ移動すると、第1の光束L1は回折格子15A上では2倍のzだけ移動する。さらに、2回回折することで、第1の光束L1には、2Kzの位相が加わり、2周期分の光の明暗が生じる干渉光が相対位置検出部20の受光部20Aによって受光される。
すなわち、上記受光部20Aの第1の受光素子26と第2の受光素子27では、Acos(2Kz+δ)の干渉信号を得ることができる。また、第3の受光素子28と第4の受光素子29では、Acos(2Kz+δ’)の干渉信号を得ることができる。
よって、この変位検出装置100Aでは、回折格子15Aの格子ピッチと上述の変位検出装置100における回折格子15の格子ピッチが同じ場合、上記変位検出装置100よりも2倍の分解能とすることができる。
例えば、回折格子15Aの格子ピッチΛを0.5515μm、波長λを780nm、回折格子15Aの入射角及び回折角を45°に設定したとき、被測定部材1の被測定面1aを高さ方向に0.5515μmだけ移動した場合、第1の光束L1は、回折格子15A上を0.5515μmの2倍、すなわち2ピッチ分移動する。さらに、第1の光束L1は、2回回折されるため、4回の光の明暗を相対位置検出部20の受光部20Aによって得ることができる。すなわち、得られる信号の1周期は、0.5515μm/4=0.1379μmとなる。
また、この変位検出装置100Aでは、一台の光学系で第1の光束L1を被測定部材1の被測定面1aにおける第1の照射スポットPc1と第2の照射スポットPd1の2箇所に照射しているので、1台の光学系で、測定ポイントをキャンセルすることができる。
さらに、上述したような構成にすることで、被測定部材1の被測定面1aがチルトしても、第1の照射スポットPc1に照射するときと第2の照射スポットPd1に照射するときによってチルトを打ち消すことができる。そのため、第1の光束L1の光路長に変化が生じ難くなり、第1の光束L1の光路長と、第2の光束L2の光路長との差を小さくすることができる。
この変位検出装置100Aにおいても、移動方向Xの両端部に測定光L1の光軸を移動させる絶対位置検出領域4を有する被測定部材1が検出範囲から外れてしまった際に、被測定部材1を検出範囲に戻すだけで、相対位置情報検出部30により検出される絶対位置情報を用いて、相対位置情報検出部20により得られる相対位置情報をリセットあるいはプリセットして原点復帰させることができる。
また、上記変位検出装置100,100Aでは、第5の受光素子31Aと第6の受光素子31Bを有する2分割受光部31を備える絶対位置検出部30により検出される絶対位置情報を用いて、相対位置情報検出部20により得られる相対位置情報をリセットあるいはプリセットして原点復帰させるものとしたが、本発明は、上記変位検出装置100,100Aのみに限定されるものでなく、例えば図16に示す変位検出装置200のように、非点収差法を利用した変位検出装置に適用することもできる。
この図16に示す変位検出装置200は、上記変位検出装置100,100Aと同様に、測定方向Zとは垂直な方向Xに相対移動可能な被測定部材1の被測定面1aの変位を該被測定面1aにより反射される測定光L1に基づいて検出するものであって、光源210と、この光源210から出射される測定光L0を2つの光束L1,L2に分割する光束分割部212と、反射鏡217と、被測定部材1の被測定面1aにより反射される測定光L1に基づいて、上記測定方向Zの相対位置と絶対位置を光学的に検出する相対位置検出部220と絶対位置検出部230を備え、上記光束分割部212と相対位置検出部220及び絶対位置検出部230との間に非点収差発生部240が設けられている。
この変位検出装置200において、光源210は、例えば半導体レーザダイオードやスーパールミネッセンスダイオード、発光ダイオード等によって構成される。なお、後述するように、この変位検出装置200では、光源210からの測定光の干渉光を用いて計測を行うので、光源210から発せられる測定光の可干渉距離が長い程、計測範囲が広くなる。
この光源210から出射された測定光L0は、コリメートレンズ等からなるレンズ211を介して光束分割部212に入射されている。レンズ211は、光源210から出射された測定光L0を平行光にコリメートする。
光束分割部212は、コリメートされた測定光L0を物体光である第1の光束L1と、参照光である第2の光束L2に分割する。第1の光束L1は、物体光として、第1の位相板213と対物レンズ214を介して被測定部材1に照射され、第2の光束L2は、参照光として、第2の位相板215と集光レンズ216を介して反射鏡217に照射される。また、光束分割部212は、例えば、光源210から入射される測定光L0のうち、s偏光を反射し、p偏光を透過する偏光ビームスプリッタからなる。
光束分割部212を透過したp偏光による第1の光束L1は、1/4波長板等の第1の位相板213を透過することによって円偏光となり、対物レンズ214によって被測定部材1の被測定面1aに集光される。この対物レンズ214のNA値が高い程解像度が高くなり、逆にNA値が低い程、被測定面1aの測定範囲が広くなる。
なお、対物レンズ214によって集光された第1の光束L1は、被測定面1a上に必ずしも結像される必要はない。結像位置を被測定面1aからずらし、被測定面1a上でのスポット径を大きくすることにより、被測定面1aの面粗度や異物等による測定誤差の影響を低減できる。
この変位検出装置200において、対物レンズ214は固定されている。
したがって、この変位検出装置200では、対物レンズ214によって第1の光束L1を結像させようとする位置は、被測定面1aの凹凸に関わらず変動しない。このため、非測定面1aの絶対変位を求めるための基準点とすることができる。
物体光として被測定面1aに入射された第1の光束L1は、この被測定面1aによって反射され、再び対物レンズ214を経由して1/4波長板等の第1の位相板213に入射される。
すなわち、第1の光束分割部212と被測定部材1の被測定面1aの間の光路上には、例えば1/4波長板等の第2の位相板215が配置されているので、物体光として被測定面1aに入射された第1の光束L1は、被測定面1aへ向かう往路と第1の光束分割部212に戻る復路において第1の位相板213を2回透過することにより、偏光方向が90度回転してs偏光となる。そして、s偏光となった第1の光束L1は、第1の光束分割部212により反射され、非点収差発生部240に入射される。
また、参照光として反射鏡217に入射された第2の光束L2は、この反射鏡217によって反射されて、再び集光レンズ216を経由して1/4波長板等の第2の位相板215に入射される。
すなわち、第1の光束分割部212と反射鏡217の間の光路上には、例えば1/4波長板等の第2の位相板215が配置されているので、第2の光束L2は、反射鏡217へ向かう往路と第1の光束分割部212に戻る復路において第2の位相板215を2回透過することにより、偏光方向が90度回転してp偏光となる。そして、p偏光となった第2の光束L2は、第1の光束分割部212を透過し、非点収差発生部240に入射される。
なお、第1の光束分割部212から反射鏡217までの光路長と、第1の光束分割部212から対物レンズ214による第1の光束L1の焦点位置、すなわち絶対変位を計測する基準点までの光路長は等しくすることが好ましい。
これにより、気圧や湿度、温度の変化による光源の波長変動があったとしても、第1の光束L1および第2の光束L2が受ける影響を等しくすることができる。したがって、相対位置情報検出部220の受光部220Aによって受光する第1の光束L1と第2の光束L2の干渉光強度を、周囲環境に関わらず安定させることができ、より正確な計測を行うことができる。
光束分割部212は、被測定部材1及び反射鏡217から反射されて戻ってきた第1の光束L1及び第2の光束L2を重ね合わせて、非点収差発生部240に入射させる。
この変位検出装置200において、非点収差発生部240は、光束分割部212からの入射光、すなわち、光束分割部212により重ね合わせて入射される第1の光束L1及び第2の光束L2を2方向に分割して、相対位置情報検出部220の受光部221と絶対位置情報検出部230の受光部231に入射させるとともに、絶対位置情報検出部230の受光部231に入射させる光束に非点収差を発生させるものであって、集光レンズ241とビームスプリッタ242と偏光板243からなる。
非点収差発生部240では、集光レンズ241により集光された入射光、すなわち、第1の光束L1及び第2の光束L2は、ビームスプリッタ242によって反射されて相対位置情報検出部220の受光部220Aに入射される。また、ビームスプリッタ242を透過した入射光、すなわち、第1の光束L1及び第2の光束L2は、偏光板243を透過することにより、被測定部材1の被測定面1aからの反射光である第1の光束L1のみが絶対位置情報検出部230の受光部231に入射される。
すなわち、偏光板243は、非点収差発生部240のビームスプリッタ242を透過した第1の光束L1と第2の光束L2の光路上に配置されており、第1の光束L1のみを透過させる。これにより、被測定物1の被測定面1aからの反射光である第1の光束L1のみが取り出され、オフセット光量が除去されて絶対位置情報検出部230の受光部231に入射される。
この非点収差発生部240において、絶対位置情報検出部230の受光部231に入射される第1の光束L1には、ビームスプリッタ242を透過することにより非点収差が発生される。
シリンドリカルレンズを配置することによって非点収差を発生させてもよいが、この非点収差発生部240では、ビームスプリッタ242は、光束を2方向に分割すると同時に非点収差も発生させており、部品点数を削減できるので好ましい。
なお、この偏光板243上に例えばクロム膜または誘電体多層膜等を形成することにより、非点収差発生部240のビームスプリッタ242としての機能を兼ね沿わせることも可能である。この場合には、ビームスプリッタ242と偏光板243の作用を一つの部品にて成立させるため、部品点数の削減が図られる。
この変位検出装置200において、相対位置情報検出部220は、受光部220Aと相対位置情報出力部220Bからなる。
相対位置情報検出部220の受光部220Aは、非点収差発生部240のビームスプリッタ242によって反射された第1の光束L1及び第2の光束L2を2つの光束に分割するハーフミラー221と、このハーフミラー221によって分割された第1の光束L1及び第2の光束L2を分割する第1の偏光ビームスプリッタ222と、上記ハーフミラー221により分割された入射光が例えば1/4波長板等からなる位相板223を介して入射される第2の偏光ビームスプリッタ224を備える。
これら第1の偏光ビームスプリッタ222及び第2の偏光ビームスプリッタ224は、s偏光成分を有する干渉光を反射させ、p偏光成分を有する干渉光を透過させて、第1の光束L1と第2の光束L2との干渉光を分割するものである。
第1の偏光ビームスプリッタ222は、入射される光束の偏光方向が入射面に対して45度傾くように配置されている。この第1の偏光ビームスプリッタ222における光の出射口側には、第1の受光素子226と、第2の受光素子227が設けられている。また、第2の偏光ビームスプリッタ224における光の出射口側には、第3の受光素子228と、第4の受光素子229が設けられている。
相対位置情報検出部220の受光部220Aにおいて、ハーフミラー221に入射された第1の光束L1及び第2の光束L2は、共にそれぞれ分割される。
ハーフミラー221を透過した第1の光束L1及び第2の光束L2が入射される第1の偏光ビームスプリッタ222は、互いに偏光方向が90度異なる第1の光束L1及び第2の光束L2の偏光方向が、当該第1の偏光ビームスプリッタ222の入射面に対してそれぞれ偏光方向が45度傾くように傾けて配置されている。これにより、第1の光束L1及び第2の光束L2の両方の光束は、第1の偏光ビームスプリッタ222に対してそれぞれp偏光成分及びs偏光成分を有することになる。したがって、この第1の偏光ビームスプリッタ222を透過した第1の光束L1及び第2の光束L2は、例えば同じ偏光方向を有するp偏光となるので、第1の光束L1及び第2の光束L2とを干渉させることができる。
また同様に、第1の偏光ビームスプリッタ222によって反射される第1の光束L1及び第2の光束L2は、当該第1の偏光ビームスプリッタ222に対するs偏光であり、同じ偏光方向を有しているので干渉させることができる。
第1の偏光ビームスプリッタ222を透過した第1の光束L1及び第2の光束L2との干渉光は、第1の受光素子226によって受光される。また、第1の偏光ビームスプリッタ222によって反射された第1の光束L1及び第2の光束L2との干渉光は、第2の受光素子227によって受光される。
また、第1の受光素子226と第2の受光素子227とによって光電変換される信号は、180度位相の異なる信号となる。
第1の受光素子226と第2の受光素子227では、Acos(Kz+δ)の干渉信号が得られる。Aは干渉の振幅であり、Kは2π/Λによって示される波数であり、Λは光源210から出射される測定光L0の波長である。
また、zは、被測定部材1の被測定面1aによって反射された第1の光束L1の、被測定面1aの形状に応じて変化する光路長の変化量である。
反射鏡217は固定されているので、第2の光束L2の光路長は変化しない。
したがって、第1の受光素子226及び第2の受光素子227では、被測定面1aの形状に応じて第1の光束の光路長がΛ/2変化するごとに、1周期の光の明暗が生じる干渉光が受光される。
一方、ハーフミラー221によって反射された第1の光束L1と第2の光束L2は、1/4波長板等の位相板223に入射される。互いに偏光方向が90度異なる直線偏光である第1の光束L1と第2の光束L2は、位相板223を透過することにより、互いに逆回りの円偏光となる。そして、この互いに逆回りの円偏光は同一光路上にあるので、重ね合わされることにより直線偏光となって、第2の偏光ビームスプリッタ224に入射される。
この直線偏光のs偏光成分は第2の偏光ビームスプリッタ224によって反射され、第3の受光素子228に受光される。また、p偏光成分は、第2の偏光ビームスプリッタ224を透過し、第4の受光素子229によって受光される。
上述したように、第2の偏光ビームスプリッタ224に入射する直線偏光は、互いに逆回りの円偏光の重ね合わせによって生じている。したがって、第1の光束L1の光路長が変化し、第1の光束L1と第2の光束L2の位相がずれると、重ね合わされた直線偏光の偏光方向は回転する。
第2の偏光ビームスプリッタ224に入射される直線偏光の偏光方向は、被測定部材1が高さ方向に移動して第1の光束L1の光路長がΛ/2だけ変化すると、180度すなわち1/2回転する。
したがって、第3の受光素子228と第4の受光素子229では、第1の光束L1の光路長がΛ/2変化するごとに、1周期の光の明暗が生じる干渉光が受光される。第3の受光素子228と第4の受光素子229により光電変換される信号は、Acos(Kz+δ’)によって表される。δ’は初期位相である。また、第3の受光素子28と第4の受光素子29とで光電変換される信号は、180度位相が異なる。
この干渉光を光電変換することによってAcos(Kz+δ’)にて表される干渉信号が得られる。δ’は初期位相である。
なお、この相対位置情報検出部220の受光部220Aでは、第1の受光素子226と第2の受光素子227に受光される光束を分割する第1の偏光ビームスプリッタ222に対して、第3の受光素子228と第4の受光素子229に受光される光束を分割する第2の偏光ビームスプリッタ224は45度傾けて配置されている。このため、第3の受光素子227と第4の受光素子228において得られる信号は、第1の受光素子226と第2の受光素子227において得られる信号に対し、90度位相がずれている。
したがって、例えば第1の受光素子226と第2の受光素子227で得られる信号をsin信号、第3の受光素子228と第4の受光素子229において得られる信号をcos信号として用いることによりリサージュ信号を取得することができる。
これらの受光素子226〜229によって得られる信号は、相対位置情報出力部220Bによって演算され、被測定面1aの変位量がカウントされる。
この相対位置情報出力部220Bは、上記変位検出装置100における相対位置情報検出部220に備えられた相対位置情報出力部20Bと同様に構成されている。
相対位置情報出力部220Bにおいて、第1の受光素子226と第2の受光素子227で得られた位相が互いに180度異なる信号は、差動増幅器によって差動増幅して干渉信号の直流成分をキャンセルしてからA/D変換器によってA/D変換され、波形補正処理部によって信号振幅とオフセットと位相が補正され、例えばA相のインクリメンタル信号としてインクリメンタル信号発生器から出力される。また同様に、第3の受光素子228及び第4の受光素子229で得られた信号は、差動増幅器によって差動増幅してからA/D変換器によってA/D変換され、波形補正処理部により信号振幅とオフセットと位相とが補正され、A相と位相が90度異なるB相のインクリメンタル信号としてインクリメンタル信号発生器から出力される。
こうして得られた2相のインクリメンタル信号は、図示しないパルス弁別回路等により正逆の判別が行われ、これにより、被測定面1aの高さ方向の変位量が、プラス方向であるかマイナス方向であるかを検出できる。
また、図示しないカウンタによってインクリメンタル信号の単位時間の位相変化をカウントすることにより、第1の光束と第2の光束との干渉光強度が上述の周期の何周期分変化したのかを計測できる。したがって、これにより被測定面1aの高さ方向の変位量が検出される。
なお、相対位置情報出力部220Bの出力する相対位置情報は、上述の2相のインクリメンタル信号であってもよいし、それから算出された変位量、変位方向を含む信号であってもよい。
また、この変位検出装置200において、絶対位置情報検出部230は、受光部231と絶対位置情報出力部232からなる。
絶対位置情報検出部230の受光部231は、図17に示すように、第5〜第8の受光素子231A,231B、231C,231Dの4つの受光素子を有する4分割受光部からなる。
この4分割受光部231上に形成される第2の光束L1のスポットは、被測定面1aの高さ方向の位置によって外形が変化する。
すなわち、4分割受光部231に入射する第1の光束L1には、非点収差発生部240により非点収差が付与されるので、例えば、被測定面1a上に照射される第1の光束L1の焦点が、被測定面1aよりも上側にある場合は、図18の(A)に示すように、4分割受光部231上の第1の光束L1のスポットA1は楕円形となる。
また、被測定面1a上に照射される第1の光束L1の焦点が被測定面1a上にある場合には、例えば図18の(B)に示すように、そのスポットA2は略円形となる。
また、被測定面1a上に照射される第1の光束L1の焦点が被測定面1aよりも下方にある場合には、図18の(C)に示すように、そのスポットA3は、スポットA1と比べて長軸方向が90度回転した楕円形となる。
第5〜第8の受光素子231A,231B、231C,231Dから出力される出力信号を、それぞれ受光素子231Aから順にA,B,C,Dとすると、被測定面1a上に照射される第1の光束L1の焦点位置からのずれを示すフォーカスエラー信号SFEは次の式4によって表される。
SFE=(A+C)―(B+D) ・・・式4
図19に、この式4によって求められるフォーカスエラー信号の特性を示す。横軸は被測定面1aの高さ方向の位置であり、縦軸はフォーカスエラー信号である。
点Bに示すように、例えば被測定面1a上に照射される第2の光束の焦点が被測定面1a上にあるとき、フォーカスエラー信号はゼロとなる。
この変位検出装置200において、上記の如く対物レンズ214は固定されているので、被測定面1a上に照射される第1の光束L1の焦点位置は、一定である。したがって、フォーカスエラー信号がゼロとなるときにおける被測定面1aの高さも常に同じであり、フォーカスエラー信号がゼロとなる位置を変位検出における基準点として用いることができる。
このフォーカスエラー信号を求める演算部は、受光部231に内蔵されていてもよいし、絶対位置情報出力部232に設けてもよい。また、絶対位置情報出力部232は、フォーカスエラー信号をA/D変換し、値を出力する。
なお、非点収差発生部240と絶対位置検出部230の受光部231との間の光路上に例えばくもりガラス等の光散乱体を配置してもよい。これにより、受光部231に入射する第1の光束L1の光軸方向に垂直な断面内において均一な光強度分布が得られる。したがって、被測定面1a上の微細な傷や異物等が検出されるのを抑制でき、面粗度の影響が低減されるので、被測定面1aの平均的な高さを計測することができる。
また、こうした光散乱体を例えば1KHz以上で振動させ、散乱方向を様々に変化させると、受光素子41〜44上でのスペックルが平均化され、スペックルコントラストが低減される。
また、対物レンズ214と絶対位置検出部230の受光部231との間の第1の光束L1の光路上に、所定の開口形状を有するアパーチャを配置し、特定の入射角度及び入射位置で対物レンズ214内に再入射する被測定面1aからの反射光を遮断してもよい。これにより、被測定面1a上の異物や凹凸による回折光が迷光として受光部231に受光されるのを防止できる。
また、相対位置検出部220や絶対位置検出部230における受光素子には、光ファイバを用いて干渉光や、非点収差を発生させた光を受光させるようにしてもよい。光ファイバを用いることにより、これら受光素子を変位検出装置200の光学系から離れた箇所に配置することが可能となる。
したがって、受光素子を絶対位置情報出力部50や相対位置情報出力部60の近傍に配置することにより、受光素子からこれら出力部までの電気通信距離が短縮され、応答速度の向上が図れる。
以上説明したように、この変位検出装置200では、光源210から出射された測定光L0を2つの光束L1,L2に分割し、第1の光束L1を被測定部材1の被測定面1aに入射させ、第2の光束L2を反射鏡217に入射させる。
そして、被測定面1aからの反射光を用いてフォーカスエラー信号を求めることにより、絶対位置情報を検出し、固定された反射鏡217による反射光と被測定面1aからの反射光の干渉光により相対位置情報を求めている。
干渉光の強度は被測定面1aの変位量に応じて周期的に変化するので、干渉光の強度の変化をスケールとして用いることにより、信号の線形性を確保することができる。干渉光の強度変化の周期は、光の波長によって決まるため、正確かつ微細なスケールとして用いることができる。
また、干渉光の強度の変化によって得られるスケールの基準点は、被測定面1aからの反射光によって得られるフォーカスエラー信号により取得することができる。
したがって、この変位検出装置200では、例えばフォーカスエラー信号がゼロとなる位置を基準とし、相対位置情報出力部220Bによって生成されるパルス、すなわち位相情報をカウントすることで、正確に変位を検出できる。
この変位検出装置200では、フォーカスエラー信号から基準点となる絶対位置を取得するので、対物レンズ214を固定してあり、被測定面1aに追随させて対物レンズ214を上下運動させる必要がない。したがって、対物レンズ214を駆動させるための駆動機構が不要となり、熱の発生が抑制される。また、駆動機構の応答周波数による使用条件の制約もない。
そして、この変位検出装置200においても、移動方向Xの両端部に測定光L1の光軸を移動させる絶対位置検出領域4を有する被測定部材1が検出範囲から外れてしまった際に、被測定部材1を検出範囲に戻すだけで、絶対位置情報検出部230により検出される絶対位置情報を用いて、相対位置情報検出部220により得られる相対位置情報をリセットあるいはプリセットして原点復帰させることができる。