例えばアルミニウムダイカスト装置によりアルミニウム鋳造物を製造する場合、アルミニウムのインゴットを溶融炉である溶融金属槽に入れて溶融した後、機械的給湯手段、空圧利用の給湯手段、電磁誘導による給湯手段等によりダイカストマシンの型内キャビティに溶融金属を充填し、アルミニウム鋳造物を鋳造する。
ダイカストマシンにおいては、金型に溶融金属を充填する前段階として、一旦シリンダー状のスリーブに所定量の溶融金属を充填し、これをプランジャで金型に押し込むことにより、金型内に予め定められた一定量の溶融金属を供給する供給方式が使用されている。この場合にスリーブへの溶融金属の供給手段としては、例えば特開平05−177329号公報、特開2001−18053公報、特開2004−154825号公報に記載されたように、誘導電磁ポンプが多く使用されている。電磁ポンプに加え、前記特開平05−177329号公報では、溶融金属槽側に設けた空圧装置が溶融金属供給手段として併用されている。ここに先行文献を挙げてはいないが、溶融金属槽側に設けた前記加圧装置に替えて又は併用して金型側に減圧装置を接続して減圧吸引することもある。
前述の通り、従来のダイカストマシンのスリーブへの溶融金属供給装置では、スリーブへの溶融金属供給手段として電磁ポンプが使用され、加圧装置や減圧装置が併用されている。これらの溶融金属供給手段では、誘導電磁ポンプの駆動やその停止により溶融金属の供給−停止の制御がなされ、これにより定量の溶融金属を電磁ポンプのノズルの出口に取付けられた配管を通じてスリーブへ供給するよう図られている。
どのようなダイカストマシンでも、シリンダー状のスリーブに所定量の溶融金属を一旦充填し、これをプランジャで金型に押し込むことにより、金型に定量の溶融金属を充填し、その金型で一定重量、容積の鋳造物を鋳造する。従って、スリーブへは給湯動作毎に予め定められた一定量の溶融金属を送り込むことが必要となる。
現在、ダイカストマシンと溶融金属槽との間にストークを接続して、スリーブや金型のキャビティを減圧して、溶融金属槽内の溶湯を吸引して鋳造する真空ダイカストはすでに市販されていて、ドイツのメーカのバキュラル法が有名である。真空ダイカストに於いて金型のキャビティやスリーブを高真空の−1.0kg/cm2Gにすると比重2.5g/cm3のアルミ溶湯は4mも上昇してしまうので溶融金属槽を密閉炉にして差圧で1m程度しか上がらない様にするなどの対策をしないとスリーブと溶融金属槽との間に4mの高さのストークが必要になってしまう。
この様な密閉炉を必要としない方式として、電磁ポンプをブレーキとして使いダイカストマシンのスリーブと保持炉との間に直接接続したものが提案されている。
従来の真空ダイカストマシンのスリーブへの溶融金属供給装置では、スリーブへの溶融金属供給手段として電磁ポンプが使用され、金型側に加圧装置や減圧装置が併用されている。これらの溶融金属供給手段では、誘導電磁ポンプの駆動やその停止により溶融金属の供給−停止の制御がなされ、これにより定量の溶融金属を電磁ポンプのノズルの出口に取付けられた配管を通じてスリーブへ供給するよう図られている。これに拠って溶融金属を酸化させずにスリーブに供給し、酸化物やガスの入らない鋳造品を作ることが出来る。
一般に、電磁ポンプは、ダクトの軸方向に移動磁界を発生させて、その移動磁界がダクト内の溶融金属を通過することによって溶融金属内に誘導電流が誘起され、この誘導電流と移動磁界との相互作用に拠って移動磁界方向に推力が誘発され、この推力によって溶融金属を駆動したり制動したりするものである。
電磁ポンプのノズルとダイカストマシンのスリーブとを密閉配管を介して直接接続し、金型側に取付けられた減圧装置で金型内とスリーブ内を減圧装置で真空にしていく時、その減圧してゆく圧力に拠って電磁ポンプが取付けられた溶融金属の溶融金属槽から電磁ポンプのダクト内を溶融金属が立ち上がって来ないように、電磁ポンプに逆電磁力を掛けて、溶融金属を制動して置かなければ成らない。電磁ポンプのダクト内に制動された溶融金属を電磁ポンプの制動力を弱める事に依って、スリーブ内に溶融金属を定量給湯し、定量給湯された溶融金属をスリーブ内のプランジャにて金型内に溶融金属を押しこみ、酸化物やガスの入らない鋳造品を作ることが出来る。
電磁ポンプはダクト内に溶融金属が存在して初めて推力が発生する事になるから、予め電磁ポンプに溶融金属を供給する方向と反対方向に移動磁界を発生させていたとしても、減圧装置が動作してダクトに溶融金属が吸い上げられて行く途中で制動力が働いていくので、ダクト内の流動慣性によって、動いている溶融金属をすぐに制動することは出来ない。従って、予め電磁ポンプに溶融金属を供給する方向と反対方向に移動磁界を発生させておいてゆっくり真空にするか、電磁ポンプの出力を大気との圧力差を十分超える状態にして吸い上げられる溶湯を制動するしか無い。しかし、ゆっくり真空にする方法は、時間が数十秒も掛かり、1分程度の鋳造サイクルのダイカストマシンでは、コスト上昇をもたらすので、短時間制動が可能な後者が優れている。
前述の通り、減圧装置を併用しダクト内に溶融金属が無い状態の誘導電磁ポンプには、大気との圧力差を十分超える出力が発生し得る磁束密度の移動磁界を下向きに発生させておいて、溶融金属がダクト内を上昇している途中で溶融金属に発生する制動力で溶融金属を素早く制動できる環状流路型電磁ポンプを使用し、更にその電磁ポンプの出湯口であるノズルにおいて湯切れを良くするためダクトと共に斜めに設置されるノズル出湯口を重力方向に鉛直に鋭く切断したノズル先端を用いることによって、溶融金属がノズル先端から乗り越えて所定の出湯が終わろうとする時に、ノズル先端において電磁ポンプダクト側へ戻る溶融金属とダイカストスリーブ側へ落ちてゆく溶融金属が別れ別れに湯切りが行われる様にする。この様なスリーブへの溶融金属の定量供給を正確に行う装置において、電磁ポンプノズル先端からダイカストスリーブに繋がる密閉金属製ダクトは、ダイカストマシンのスリーブがプランジャの動きによって激しく振動するので、連動して振動することになる。この密閉金属製ダクトの振動は、電磁ポンプダクトの全てのパッキンを緩め、パッキンの気密性を損なう事になる。従って、密閉金属製ダクトの振動を抑えるために、密閉金属製ダクトの途中に金属ベローズを設けて、その振動を吸収し電磁ポンプのパッキンに過大な振動が掛かって破損しない様にしなければならない。一般に金属は溶融金属によって徐々に腐食してしまうので、金属製ダクトが溶融金属で腐食しない様に密閉金属製ダクト内面にセラミックコートを行っている。しかし、密閉金属製ダクト内面にセラミックコートをしても、金属とセラミックコートとの熱膨張の差からそのセラミックコートが徐々に剥がれ溶融金属によって腐食してしまっていた。
本発明では、予め定められた所定の溶融金属12がスリーブ27に供給される前に、減圧手段により溶融金属12がスリーブ27内に吸引されるのと反対方向にポンプ側ダクト1、中間ダクト1’内の溶融金属12に溶融金属電磁ポンプで推力を与えることによりポンプ側ダクト1、中間ダクト1’内に一旦溶融金属12を短時間で振動もなく保持し、その下向きの保持推力を給湯に見合った時間弱めると給湯側金属製ダクト1”側に溶融金属12が吸い上げられて行き、給湯が終わるとそのときノズル管45の先端において、鋭く鉛直にカットされたノズル管45の楕円流路の下半分の鋭い端面に於いて溶融金属12が下がるに従って自然に溶融金属12が切れてスリーブ27側に供給されるものと中間ダクト1’に戻ってくるものに分かれ、所定の溶融金属12がスリーブ27側へ給湯されて、スリーブ27への給湯が完了する。この給湯側金属製ダクト1”のスリーブ27までの流路に溶融金属12で腐食しないセラミック内管61が内蔵され、そのセラミック内管61がノズル管45に差し込まれ、その差し込まれた隙間はセラミック内管61の内側に行くほど狭くなるテーパー穴63になっており、そこにテーパーパッキン59が嵌合されるのでテーパーパッキン59はセラミック内管61内部に押し出されることがなく、さらにこのテーパーパッキン59がずれ落ちないようにノズル管45の細く段差の付いた部分に差し込まれたマウスピース62によってテーパーパッキン59が支えられており、さらにこのテーパーパッキン59が確実に押さえられる様に、セラミック内管61のノズル管45近傍の両側にクッション材60が巻き付けられセラミック内管61が給湯側金属製ダクト1”の中でガタつかない様な構造になっている。これによって溶融金属12による腐食しない給湯側金属製ダクト1”ができる。給湯側金属製ダクト1”には、自分自身の熱膨張とスリーブからの振動を同時に吸収するベローズ52があることに拠って、熱膨張や振動で壊れない気密性の高い金属製ダクト1”になり、真空状態で給湯するので綺麗で酸化されない溶融金属12がスリーブ27へ供給され、さらにメンテナンスの少ない高品質鋳造品を可能とする電磁ポンプ式真空溶融金属供給装置を実現するものである。
以下、本発明を実施するための最良の形態について、実施例をあげて詳細に説明する。
図1は、本発明による溶融金属供給装置の一実施例である。この溶融金属供給装置は、スリーブ27の上側から溶融金属を給湯する例であり、図2は、同ダイカストスリーブ溶融金属供給装置のダクトからダイカストスリーブ27に接続する部分を示す要部拡大図である。この溶融金属供給装置は、上側の給湯誘導子14と下側の立上誘導子24との2段の誘導子を有する。
ポンプ側ダクト1が斜めに配置され、溶融金属槽11に収納された溶融金属12の液面に前記ポンプ側ダクト1の下端が差し込まれている。ポンプ側ダクト1の溶融金属12の液面より上にある部分の周囲には、磁性体製のヨーク15にコイル16を巻回した給湯誘導子14が配置されている。ヨーク15は、ポンプ側ダクト1の溶融金属12の液面より上にある部分を囲むようにその外周側に嵌め込まれており、このヨーク15に三相コイルを構成するコイル16が巻回されている。この給湯誘導子14には、冷却器10が設けられ、駆動時に冷却される。
さらに前記ポンプ側ダクト1には、前記給湯誘導子14より下側の部分の周囲に立上誘導子24が配置されている。この立上誘導子24は、前記の給湯誘導子14と同様に、前記ポンプ側ダクト1の給湯誘導子14より下側の部分の外周に嵌め込まれた磁性体製のヨーク25にコイル26を巻回したものである。この立上誘導子24のコイル26は耐熱性を有する無機絶縁ケーブルにより巻回されている。無機絶縁ケーブルは、ステンレスチューブ等からなるシースの中に導電線を収納し、この導電線とシースとを、それらの間にマグネシア粉末等の無機絶縁粉末を充填して絶縁した構造を有する。いわゆるシースケーブルと呼ばれるものである。このような無機絶縁ケーブルは、耐熱性が高く、800℃の温度にも耐えることが出来る。このため立上用誘導子24は、冷却手段を有しない無冷却としながら、大きな電流を通電するのに適しており、その分だけ給湯誘導子14のコイル16に比べて立上誘導子24のコイル26の巻数は少なくすることが出来る。
この立上誘導子24は、耐熱性を有するセラミック等からなる筒状の保護ケース17で囲まれている。この保護ケース17の上端開口部は、上側の給湯誘導子14の下端面に固定されている。また、この保護ケース17の下端の開口部は、前記ポンプ側ダクト1の下端と図示していないパッキンを介して密に接合されており、この接合部に囲まれた内側は、ポンプ側ダクト1の下端の溶融金属12の導入口18となっている。
給湯誘導子14と立上誘導子24とは、それぞれインバータを含む駆動電源31、32により駆動される。これら駆動電源31、32からはそれぞれ給湯誘導子14と立上誘導子24にインバータで変換された三相交流が通電され、これら給湯誘導子14、立上誘導子24に移動磁界を発生させ、この移動する磁界による電磁誘導により、導電体であるポンプ側ダクト1内の溶融金属12に推力を与える。
前記ポンプ側ダクト1の上端には、中間ダクト1’が断熱材を介して押さえ金具42とバネ44を用いて取付けられている。さらに先端が下方に曲がったL字形のエルボ管である給湯側金属製ダクト1”と先端が鉛直カットされたノズル管45とが断熱材を介して押さえ金具42’とバネ44’を用いて前記中間ダクト1’に密に接続されている。保護管3の中間ダクト1’に近い一端部の周囲にスペーサ7が設けられ、このスペーサ7を介して保護管3並びにその中のコア2、22がポンプ側ダクト1の中心に位置するよう保持されている。この状態で先端が鉛直カットされた前記ノズル管45は、給湯側金属製ダクト1”の中間ダクト1’側の中に内蔵されている。また、ポンプ側ダクト1、中間ダクト1’、給湯側金属製ダクト1”及びノズル管45の接続部は何れも気密性が確保されるようパッキンや溶接等により接続されている。
これらポンプ側ダクト1と中間ダクト1’と先端鉛直カットのノズル管45は、セラミック等の耐熱性、耐蝕性のある材料で作られており、その外周に設けた保温用のマイクロヒータ等からなるヒータ9、9’、9”により溶融金属12の融点以上の温度に加熱され、溶融金属12の凝固を防いでいる。L字形の給湯側金属製ダクト1”は、ステンレス鋼等で出来ており内面にセラミック内管61が内蔵され、その外周に設けた保温用のマイクロヒータ等からなるヒータ9”により溶融金属12の融点以上の温度に加熱され、溶融金属12の凝固を防いでいる。
ノズル管45とセラミック内管61とはセラミック内管61のノズル管45に近い側にテーパー穴63が開けられ、そのテーパー穴63にノズル管45が刺さっており、セラミック内管61のテーパー穴63は内側に向かって細くなる穴であり、そのテーパー穴63部にテーパーパッキン59が嵌合され、刺さったノズル管45には僅かに細くなって段差がついたところにマウスピース62が刺さっていてテーパーパッキン59がずり落ちないようにしている。このテーパーパッキン59がセラミック内管61のテーパー穴63と刺さったノズル管45によって出来る隙間に嵌合されマウスピース62によって支えられているので、この隙間から溶融金属12が金属製の給湯側金属製ダクト1”側に漏れることはない。セラミック内管61が給湯側金属製ダクト1”の中でガタつかないように、セラミック内管61の支持用にセラミック繊維の帯状のクッション材60がセラミック内管61のノズル管45が刺さった付近の両脇に巻きつけられている。セラミック内管61の支持用にセラミック繊維製帯のクッション材60がセラミック内管61のノズル管45の両脇側に巻きつけられているので、給湯側金属製ダクト1”の熱膨張はスリーブ27側に自由に伸びてゆくことができ、セラミック内管61に過大な熱応力を発生させる事はない。
給湯側金属製ダクト1”とスリーブ27の間にベローズ54を図示していないOリングを内在するカップリング56を介して密に取付けられているので、給湯側金属製ダクト1”自身の熱膨張とスリーブ27内のプランジャ28の始動停止に伴う振動をこのベローズ52が吸収できて、さらに真空をも維持できる。これに拠って、給湯側金属製ダクト1”にも過大な熱応力も発生せず、カップリング56を外せば、電磁ポンプやポンプ側ダクト1、中間ダクト1’、給湯側金属製ダクト1”のメンテナンスとダイカストマシンのスリーブ27のメンテナンスができる。
溶融金属槽11の中の溶融金属12に液面センサ13が設けられ、これにより溶融金属槽11の中の溶融金属12の液位が検知される。前記立上誘導子24は、このセンサ13で検知される溶融金属12の液面より下に挿入される。
他方、中間ダクト1’に電磁誘導により溶融金属12の存在を検知する形式の誘導式液面センサ等のノズルレベルセンサー19が設けられ、これにより中間ダクト1’の中の液位が検知される。
給湯側金属製ダクト1”の先端はスリーブ27の上部にベローズ54を介して接続され、セラミック内管61を内蔵する給湯側金属製ダクト1”から溶融金属12をスリーブ27に供給することが出来る。スリーブ27は、シリンダー状の円筒部材で、この中にはプランジャ28が配置されている。このプランジャ28は、スリーブ27の中を図1において左右に移動し、スリーブ27内に供給された溶融金属12を押し出す。このプランジャ28には熱電対列埋め込み式や誘導式等の溶融金属センサ36が内蔵され、スリーブ27内に供給された溶融金属12を検知する。
さらにスリーブ27の先には、金型29が接続され、前記プランジャ28の動作により、スリーブ27に給湯された溶融金属12がそのスリーブ27の先端からこの金型29に充填される。この金型29は図示してない金型駆動機構により駆動され、組み立てと脱型が行われる。
この金型29には、電磁バルブ33を介して減圧ポンプ35が、電磁バルブ39を介して真空タンク50がそれぞれ接続されている。金型29のキャビティ46やスリーブ27を瞬時に真空にするためには非常に排気容量の大きい減圧ポンプ35が必要になり、減圧ポンプ35の排気容量には限界があるので、あらかじめ減圧ポンプ35で真空タンク50を真空にしておき、電磁バルブ39と電磁バルブ33を同時に開くと減圧ポンプ35と真空タンク50とで大容量の排気ポンプができたことになり、電磁バルブ40も同時に開くとこれによって金型29のキャビティ46とスリーブ27内を短時間でほぼ真空にできる。真空タンク50の大きさで決まるが3秒前後で金型29のキャビティ46とスリーブ27内を短時間でほぼ真空にできる。このままの状態でキャビティ46とスリーブ27内をさらなる高真空にするためには真空タンク50とキャビティ46とスリーブ27内を同時に減圧ポンプ35だけで高真空にすることになり、これでは時間が掛かるので、真空タンク50側の電磁バルブ39を止めることによって電磁バルブ40と電磁バルブ33を通して減圧ポンプ35だけにより金型29内とスリーブ27内が高真空に減圧される。これにより、金型29内とスリーブ27の空気が排除された状態で、溶融金属12がスリーブ27内に給湯され、給湯後前記プランジャ28の動作により、スリーブ27から金型29に溶融金属が円滑に且つ隅々にまで充填することが出来る。
しかしながら、溶融金属12がアルミニウム合金の場合その比重が約2.5g/cm3であるから、金型29を真空近く(約−1.0kg/cm2G)まで減圧すると、大気圧が掛かった溶融金属槽11に収納された溶融金属12は約4m汲み上げられる事になるので、プランジャ28の動作が無くても溶融金属12はスリーブ27から金型29内まで全ての空間に充填されてしまう。金型29の減圧が大気圧の約半分の気圧(約−0.5kg/cm2G)であっても、溶融金属12を大気圧で約2m汲み上げることが出来るので、やはり溶融金属12はスリーブ27から金型29内まで全ての空間に充填されてしまう。従って、金型29内の空圧を一挙に真空(−1.0kg/cm2G)にしてこの差圧を上回る出力の出せる電磁ポンプに給湯方向と逆の推力を発生させることによって、溶融金属12をポンプ側ダクト1、中間ダクト1’に制動保持して、制御しやすい電気的な力を発生させる溶融金属電磁ポンプの電磁力を弱くしたり強めたりの調整を行い、制動保持された溶融金属12をスリーブ27に定量給湯する。
ところが、単に金型29を真空にする時に電磁ポンプに給湯と反対方向に推力が発生する様に移動磁界を発生させておくだけでは、大気圧が掛かった溶融金属槽11に収納された溶融金属12は、ポンプ側ダクト1を駆け上がっている最中の溶融金属12に制動力が発生し、中間ダクト1’の所定の設定レベル30にバランスする逆推力を掛けていても溶融金属12の流体慣性により溶融金属12が前記の所定の設定レベル30を通り過ぎてしまう。そしてその湯面は流体慣性により上下に揺動し、この揺動が止まるのに時間が掛かる。更に中間ダクト1’の所定の設定レベル30と鉛直カットしたノズル管45との距離が近いために給湯前にスリーブ27に溶融金属12が乗り越えて垂れてしまう。これではスリーブ27への定量給湯は望めない。
従って、最も簡単な方法としては、給湯誘導子14に減圧手段による吸引力に見合った給湯方向と逆方向に推力が発生する様に電力を加えておき、徐々に金型29とスリーブ27をゆっくり真空にすることである。そうするとポンプ側ダクト1内をゆっくり上昇する溶融金属12に逆磁力が発生し、ポンプ側ダクト1、中間ダクト1’内に一旦溶融金属12を保持し、その後スリーブ27への正確且つ迅速な溶融金属の供給制御を行う。このため、減圧手段による吸引力に見合った逆方向推力をパターン通りに僅かに弱めたり強めたりする事に拠って、スリーブ27へ脈動無く給湯することが出来る。
これは制御が非常に簡単で良いが、真空から給湯するまでに数分を要し、1分程度で運転されるダイカスト鋳造法にとってはサイクル時間が掛かってしまいコスト上昇に繋がり実用的では無い。更にポンプ側ダクト1、中間ダクト1’内を溶融金属12が駆け上がってノズルレベルセンサー19を用いて所定の設定レベル30に湯面を設定しても溶融金属12中の水素が湯面でガス化して湯面変動と飛沫を発生し、鉛直カットしたノズル管45を溶融金属12が乗り越えて給湯精度を低下させてしまう。
この溶融金属12の飛沫が中間ダクト1’や鉛直カットしたノズル管45の内面に付着しているので、金型29が開いているときにポンプ側ダクト1に空気が流入するので、ポンプ側ダクト1、中間ダクト1’内面に付着した溶融金属12は空気に触れて酸化してしまう。これでは内面に付着した溶融金属12の酸化膜が次の給湯時に給湯されてしまうので、出来るだけ酸化物を含まない溶融金属12を金型29に充?して、品質の良い鋳造品を作るという真空ダイカスト法の目的と合致しなくなる。従って、スリーブ27に給湯完了後プランジャが動いてスリーブ27の開口部を過ぎてから、プランジャ28の進行方向と反対の背後に不活性ガスタンク38から電磁バルブ37を通して窒素ガス等の不活性ガスを注入し、電磁ポンプ側のL字形の給湯側金属製ダクト1”や先端鉛直カットのノズル管45、中間ダクト1’、ポンプ側ダクト1にも不活性ガスが自然と注入されてゆく機構が必要となる。
今回用いる環状リニア誘導電磁ポンプのポンプ側ダクト1にはコア2、22を内在する保護管3があり、この保護管3とポンプ側ダクト1の環状の流路ギャップを小さくする事に依って、ポンプ側ダクト1はオリフィスの様な流路絞り効果が有って、ポンプ側ダクト1の下端の溶融金属12の導入口18から立ち上がろうとする溶融金属12にブレーキが掛かる。実験によれば流路ギャップを10mm以下にすると慣性で上昇する高さも少なく、数秒で安定することが分かった。数秒よりはわずかに長い5秒前後はかかるが流路ギャップを15mm以下にすれば、比較的短時間で安定する。この様に流路ギャップを狭めることでポンプ側ダクト1、中間ダクト1’、鉛直カットノズル管45を含む給湯側金属製ダクト1”内部を真空にする時、ポンプ側ダクト1を駆け上がる溶融金属12を中間ダクト1’の設定レベル30に短時間で保持することが出来るように成った。
この様に設定レベル30設定しようとしても、大気圧力は変動し、1%変動しても真空中で立ち上がる高さは約4cm変化するので、真空時には設定レベル30より5cmから10cm下げ、ノズルレベルセンサー19により電磁ポンプの逆推力を短時間の内に調整して真空時の設定レベル30に設定するのが良い。更に、溶融金属12に含まれる水素がガス化して湯面変動や飛沫が発生し鉛直カットしたノズル管45から溶融金属12があふれてしまうので、実験によると溶融金属12に含まれる水素量にもよるが、水素が少ない場合には鉛直カットしたノズル管45の下側出口から5cm下の高さに設定レベル30を設けなければならない。100gの溶融金属12に含まれる水素量が数cc/100gにもなると鉛直カットしたノズル管45の下側出口から10cm以上下に設定レベル30を設ける必要がある。溶融金属12に含まれる水素量が多ければ多いほど設定レベル30を下げる必要がある。これはノズルレベルセンサー19がノズル管45の鉛直カット面よりどんどん下に下がって行くことになる。一般にノズル管45の太さはφ50〜φ80程度であり、従ってノズル管45の外側の取り付けられるノズルレベルセンサーの太さはφ70〜φ100である。誘導式のノズルレベルセンサー19のダクト軸方向の測定範囲は、上下方向共にノズルレベルセンサー19のコイル径と同じ距離までである。従って、水素ガスの影響で設定レベルが鉛直カットしたノズル管45の下側出口から10cm以上に下がって同時にノズルレベルセンサー19も下がるということは、ノズルレベルセンサー19でノズル管45の鉛直カット面を越流してゆく溶融金属12の深さΔh、更には越流の有無すらノズルレベルセンサー19では判定できないことになる。従って、真空の溶融金属給湯装置の場合、ノズル管45の鉛直カット面を越流してゆく溶融金属12の有無や溶融金属12の深さΔhの確認には、新たなる越流レベルセンサー55が必要になる。これによってノズル管45の鉛直カット面を越流してゆく溶融金属12の有無の確認と溶融金属12の深さΔhを確実に測定できるので、精度の良い給湯ができるようになる。
設定レベル30に溶融金属12の湯面を設定後、一般の電磁ポンプとは方向性は逆であるが、出力をレベル30から給湯側金属製ダクト1”の最上部を越流するに必要な高さFLまで、即ち設定レベル30とノズル管45の上部出湯口の下端との高さHとレベル差Δhまでの高さを加えた高さFLまで湯面が上昇するように弱め、さらに必要な給湯量を得る時間だけ保持する事によって、所定の給湯量を確保する。この給湯を終わろうとするときL字形の給湯側金属製ダクト1”を通ってスリーブ27側に流れてゆく溶融金属12と中間ダクト1’側に戻ってくる溶融金属12が鉛直カットされたノズル管45切断されるように分かれてゆくことによって精度良い給湯ができる。
越流高さFLとノズル管45の上部出湯口の下端とのレベル差Δh上部の高さまで溶融金属12を上げるには、保持炉11のレベル計13の測定値と設定レベル30の高さから自動的に演算され、流量算出に必要なレベル差Δhに相当する電磁力の低減量も演算し、この演算値から給湯誘導子14への逆電磁力低減量を駆動電源31に与えることで成し遂げられる。しかし、実際に溶融金属12がΔhの高さに達し、確実に給湯が行われたかを判定するには、越流レベルセンサー55を出来るだけノズル管45の先端側に配置することが良い。もしも越流レベルセンサー55が無く、プランジャ28の溶融金属センサ36が故障したままあるいは無いまま運転し、ノズル管45内部で目詰まりが何等かの原因で発生すると、溶融金属12がスリーブ27へ給湯されないまま空の状態で、プランジャ28が図示していないアキュムレータを含む油圧機構によって高速で金型29側に移動して衝突する可能性も出てくるので、越流レベルセンサー55による溶融金属12の越流の有無の判定も重要である。
以上の説明でも分かる事ではあるが、鉛直カットのノズル管45を越流してゆく溶融金属12への力は、溶融金属槽11の溶融金属12の湯面に掛かる大気圧である。この圧力は密閉蓋が無い開放炉の溶融金属12に対する静圧であって、密閉炉に流し込むまでに時間が掛かるクッション性の有る動圧でもないので溶融金属12の動作に遅れを生じさせることはない。従って、この様な動圧問題を避けるためには電磁ポンプ用の炉はオープンウエル(開放炉)でなければならない。オープンウエル(開放炉)は、コスト低減やメンテナンス性を向上するので望ましい事である。
スリーブ27は、プランジャが動き出すときや型開きや型締めの時かなりの振動と変位が有るので、給湯側金属製ダクト1”、中間ダクト1’及びポンプ側ダクト1の接続部のパッキン等にダメージを与える。スリーブ27の変位に至っては1mmから2mmもの変位があり、この変位を吸収し、L字型の給湯側金属製ダクト1”の熱膨張も吸収しなければならない。このため図1には、スリーブ27と給湯側金属製ダクト1”との間にベローズ52を入れてこれら振動と熱膨張を吸収し、かつスリーブ27と給湯側金属製ダクト1”と中間ダクト1’やポンプ側ダクト1までを密閉空間にすべくステンレス鋼製の給湯側金属製ダクト1”とベローズ52は溶接構造とする。ベローズ52とスリーブ分岐管57とは、図示なしシール用Oリング内蔵のカップリング56で接合する構造にした。このカップリング56を外すことに拠ってスリーブ27側と電磁ポンプ側ダクト1、中間ダクト1’、給湯側金属製1”側をメンテナンス出来るようにした。また、スリーブ27の給湯口の上にスリーブ27の内部のプランジャの潤滑のため、潤滑油タンク49から電磁バルブ51をとして潤滑剤を注入可能としたスプレーノズル53が密閉状態を保ちつつ上下出来るようにベローズ34を通して挿入する構造とした。またこのベローズ34内には、不活性ガスタンク47が電磁バルブ48を介して接続されている。ベローズ34、52は、スリーブ27のメンテナンスを容易に行うためにクイックカップリング構造とした。
次に、最良の本案の運転方法を以下に示す。この溶融金属供給装置を運転するときは、まず立上誘導子24への通電によりポンプ側ダクト1の中の溶融金属12を給湯誘導子14の電磁力が作用する高さまで汲み上げた後、誘導式等のノズルレベルセンサー19の信号を基に給湯誘導子14に三相交流を通電調整し、ポンプ側ダクト1、中間ダクト1’の中の溶融金属12を適当なレベル、例えば図1に実線で示す設定レベル30に維持する。この設定レベル30で溶融金属12の供給の待機状態とする。その後、金型29とスリーブ27を直線的に減圧してゆき、それと同時に給湯誘導子14の給湯方向の電磁力を下げて行き、電磁力が零になっても減圧圧力が設定レベル30の位置に相当する液圧力、例えば溶融金属12の比重を2.5g/cm3とし溶融金属槽11に収納された溶融金属12の湯面とダクト1、中間ダクト1’内の溶融金属12の設定レベル30との高さが1mだとするとその液圧は約0.25kg/cm2Gに相当するので、減圧圧力を約−0.25kg/cm2Gになった時点でも設定レベル30は維持され、その時に給湯誘導子14への電力の位相反転を行い給湯方向と反対方向の逆推力を与えながら金型29の減圧を継続して行く。金型29の減圧圧力が真空状態(約−1.0kg/cm2G)になった時点での給湯誘導子14の逆圧力は、溶融金属槽11に収納された溶融金属12の湯面とポンプ側ダクト1、中間ダクト1’内の溶融金属12の設定レベル30との高さが1mに相当する液圧は約0.25kg/cm2Gが加わるので約0.75kg/cm2Gで図1に実線で示すレベル30の位置が十分に維持される。給湯誘導子14に通電する三相交流の逆推力を図1の二点鎖線で示すように給湯側金属製ダクト1”を越流するに必要な高さFLに相当する逆推力を弱めると、溶融金属12が図1の二点鎖線で示すように給湯側金属製ダクト1”内のノズル管45の鉛直カットされた楕円開口部を越流して溶融金属12の供給先であるスリーブ27に給湯される。
給湯後この様に中間ダクト1’の中の湯面保持設定レベル30を維持する制御は難しいので、溶融金属12の給湯動作が完了しプランジャが移動を開始してスリーブ27の開口部をプランジャが通り過ぎてから、給湯側金属製ダクト1”のベローズ34の近傍に電磁バルブ48を通して不活性ガスタンク47から不活性ガスを注入して、同時に電磁ポンプの逆推力も零にして中間ダクト1’やポンプ側ダクト1内の湯面を溶融金属槽の湯面と同じ湯面に戻してやることでも良い。この様にポンプ側ダクト1内の湯面が溶融金属槽の湯面と同じになり、且つポンプ側ダクト1,中間ダクト1’、給湯側金属製ダクト1”側に不活性ガスが充填されているので、溶融金属12が酸化することはない。また、ポンプ側ダクト1,中間ダクト1’、給湯側金属製ダクト1”側に不活性ガスが充填されているので初めから立上誘導子24を用いて溶融金属12を湯面保持設定レベル30に維持する制御をやめて、簡単に給湯誘導子14だけに金型29側の真空圧力−1.0kg/cm2Gに耐えるだけの逆電磁力を掛けておいて、金型29側減圧時にポンプ側ダクト1中で溶融金属12を制動し、中間ダクト1’の湯面保持設定レベル30に溶融金属12を維持する制御でも良い。この方式は、ポンプ側ダクト1,中間ダクト1’の中を溶融金属12が上下するが、不活性ガスの注入系を設けることで溶融金属12の酸化が押さえられているので、当初の目的である綺麗な酸化しない溶融金属12を鋳造するという目的にかなった一番簡単な制御方式である。本特許明細は、簡単な本方式とポンプ側ダクト1,中間ダクト1’の中を溶融金属12が上下しない最良方式についても記載している。
この様に減圧手段による吸引力に見合った逆方向推力をパターン通りに僅かに弱めたり強めたりする事によって、スリーブ27へ脈動無く給湯することが出来る。この給湯時と給湯待機時との溶融金属12のレベル差は、給湯側金属製ダクト1”を越流するに必要な高さFLであり、図1においてノズル管45の上部出湯口の下端とのレベル差をΔhで示す。このΔhと鉛直カットしたノズル管45の楕円出湯口のΔhの流路面積を考慮しつつ堰流量計の原理に基づく流量計算式に当てはめることで流量が計算できる。HとΔhを合計した高さに相当する電磁ポンプの逆推力の弱める電力は、電磁ポンプの出力特性から計算できる。これによって給湯誘導子14に通電する三相交流の逆電力の差と給湯時間から給湯量が分かり、スリーブ27に鋳造に必要な供給量が供給される。さらに前述したΔhを誘導式等の越流レベルセンサー55で測定できるので、必要なΔhに成るように給湯誘導子14を制御して、給湯時間とΔhから堰流量計の計算式を用いて供給量が分かるので、更に精度良く給湯量が把握できる。
以上の説明で明らかなようにスリーブ27には、予め定められた一定量の溶融金属12、すなわち金型29に充填すべき1回量分の溶融金属12が供給される。その量は、図1において二点鎖線Lで示すように、通常スリーブ27の最大容積(プランジャ28が最も後退した時の容積)の半分程である。このスリーブ27への溶融金属12の供給量は、前記プランジャ28に内蔵した溶融金属センサ36でも検知することが出来る。
このように、スリーブ27に予め定められた一定量の溶融金属12が供給されると同時に、給湯誘導子14の出力調整により溶融金属12のレベルを図1に実線で示す設定レベル30に戻す。前述した通り、この給湯時と給湯待機時との溶融金属12のレベル差は図1にΔh+Hで示された高さである。スリーブ27への給湯を完了した時点で、電磁バルブ33と電磁バルブ32を閉止後、プランジャ28がゆっくり動き出し、図示していないプランジャ28の移動位置検知器の信号によってプランジャ28が、L字型の給湯側金属製ダクト1”からスリーブ27につながる給湯側金属製ダクト1”のスリーブ分岐管57の下部開口部を塞いだ時点で給湯誘導子14の給湯方向と反対方向の逆推力を瞬時に零にして位相を反転しておく。その後もプランジャ28がゆっくり動いて行くので、供給側金属製ダクト1”のスリーブ27内の開口部はプランジャ28の移動方向に対してプランジャ28の背面側になってしまう。一般のダイカストマシンのプランジャ28の背面は、大気開放であるから急激に大気が流入して、ポンプ側ダクト1、中間ダクト1’内の溶融金属12が瞬時にして溶融金属槽11に戻ってしまう。大気が入るとポンプ側ダクト1、中間ダクト1’内の設定レベル30が維持できなくなるばかりか、溶融金属12が酸化してしまうので、ポンプ側ダクト1、中間ダクト1’内の設定レベル30が下がらず、溶融金属12が酸化しないように、図1の様に、プランジャ28の背面をポンプ側ダクト1、中間ダクト1’内の設定レベル30を維持する圧力、例えば溶融金属槽11に収納された溶融金属12の湯面とダクト1、中間ダクト1’内の溶融金属12の設定レベル30との高さが1mだとすると、約−0.25kg/cm2Gに維持する。出来ればこの背圧ガスは不活性ガスが望ましく、不活性ガスタンク38からバルブ37を介して供給される。更にその後もプランジャ28がゆっくり動いて行き、スリーブ27が溶融金属12で満たされた時点でプランジャ28は通常のダイカストマシンと同様に図示しないアキュムレータを含む油圧機構により高速で動き、金型29に溶融金属12が充填され、充?完了後更にゆっくりプランジャ28を押し込んで溶融金属12の凝固収縮分を補って鋳造が完了する。
改めて言うべきことではないが装置を簡単にするため、ここで説明した電磁ポンプ側の給湯側金属製ダクト1”、中間ダクト1’、ポンプ側ダクト1内を約−0.25kg/cm2Gに維持するのには新たな減圧供給系が必要なので、電磁ポンプの出力を切って、不活性ガスだけを大気圧まで供給して、中間ダクト1’内の設定レベル30を維持せず、溶融金属槽11に収納された溶融金属12の湯面と同じレベルまで下げても良い。この様にポンプ側ダクト1内の湯面が溶融金属槽の湯面と同じなり、且つポンプ側ダクト1,中間ダクト1’、給湯側金属製ダクト1”側に不活性ガスが充填されていれば、立上誘導子24を用いて溶融金属12を湯面保持設定レベル30に維持する制御をやめて、簡単に給湯誘導子14だけに金型29側の真空圧力−1.0kg/cm2Gに耐えるだけの逆電磁力を掛けておいて、金型29側減圧時にポンプ側ダクト1中で溶融金属12を制動し、中間ダクト1’の湯面保持レベル30に溶融金属12を維持する制御でも良い。
鋳造が完了し、金型29が開いて図示していない鋳造品を取り出した後、プランジャ28がスリーブ27内部を戻ってくるが、プランジャ28がスリーブ27の給湯側ダクト1”との繋ぎ開口部を過ぎると急激に金型29側から電磁ポンプのダクト1側に空気が流入してしまうので、予めプランジャ28が戻り始める前に大気圧と同じ圧力の不活性ガスタンク47の電磁バルブ48を開いて電磁ポンプのダクト1側に窒素ガスを充填しておく。このガス注入前の時点ではポンプ側ダクト1,中間ダクト1’,給湯側金属製ダクト1”の内部は、不活性ガスタンク38からバルブ37を介して約−0.25kg/cm2Gに維持して、溶融金属12が設定レベル30に保持されているので、溶融金属12をレベル30に保持するには、プランジャ28が戻り始める時に不活性ガスタンク47の電磁バルブ48を開いてポンプ側ダクト1,中間ダクト1’,給湯側金属製ダクト1”に直線的にガス供給をしながら給湯誘導子14の出力を上方向に上げて設定レベル30を維持する。プランジャ28が戻り始める時にはポンプ側ダクト1,中間ダクト1’,給湯側金属製ダクト1”内部は大気圧と同圧の不活性ガスで満たされているものの、金型29は開いているので金型29側から空気を引き連れてプランジャ28が戻って来るので、スリーブ27の給湯側金属製ダクト1”の開口部の前でプランジャ28の速度をゆっくり戻し、更にプランジャ28をゆっくり動かして金型29側からの空気流入が一挙に起こらないようにしながら、中間ダクト1’に取り付けたノズルレベルセンサー19の指示値に基づいて、給湯方向に給湯誘導子14の電磁力を上昇させ設定レベル30を維持するように駆動電源31を調節する。
前に説明した通り、装置も操作も簡単にするため、プランジャ28が戻り始める前に大気と同圧の不活性ガスタンク47の電磁バルブ48を開いて電磁ポンプの側の給湯側金属製ダクト1”、中間ダクト1’、ポンプ側ダクト1内をすでに窒素ガスなどの不活性ガスで充填してしまえば、ダクト1のレベルセンサー19で中間ダクト1’内のレベル30に湯面を保持しなければならない事でもない。ただし、プランジャ28が戻って来る時、金型29側から空気を引き連れてので、電磁ポンプの側の給湯側金属製ダクト1”や給湯金属製側ダクト1”、中間ダクト1’、ポンプ側ダクト1内に空気が徐々に入ってくるので、レベル30に湯面を保持する制御方法は、酸化物をできるだけ発生しない様にする効果はある。
この溶融金属12の給湯と制動の最適動作、即ちポンプ側ダクト1,中間ダクト1’の中を溶融金属12が上下しない最良方式について、図3に模式的に示し、その内容を以下に示す。溶融金属槽11に収納された溶融金属12をポンプ側ダクト1、中間ダクト1’内の所定の設定レベル30に達するまでの給湯誘導子14の出力は、重力と逆らう方向への給湯出力を正(+)として記載し、金型29を減圧し真空に至るまでの間に正(+)から重力方向の負(−)に切り替わり、溶融金属12をスリーブ27に送り出すようポンプ側ダクト1、中間ダクト1’内の溶融金属12への推力を弱めて先端鉛直カットのノズル管45内を越流しスリーブ27へ給湯する。スリーブ27内の溶融金属12が所定のレベルLに達すると、誘導子14の出力は、ポンプ側ダクト1、中間ダクト1’内の設定レベル30に戻す様に負(−)の出力を強め溶融金属12に給湯と反対方向に逆方向の推力を与え、制動する。こうすることにより、前記減圧ポンプ35や真空タンク34等の減圧手段によりポンプ側ダクト1、中間ダクト1’内の溶融金属12に加えられる溶融金属槽11側からの大気圧と拮抗するような制動力が働き、適切な流路ギャップを持つ環状リニア誘導電磁ポンプ型の溶融金属電磁ポンプは溶融金属12の流動慣性が抑えられる。これにより、溶融金属12の制動途中で発生するスリーブ27への過剰な溶融金属12の供給や、急激な溶融金属12の停止によるポンプ側ダクト1、中間ダクト1’内での溶融金属12の脈動等が抑えられる。
金型29から鋳物が取り出された後、金型29内面に図示していない専用のスプレーにて離型剤を塗布する。更にプランジャ28がスリーブ27の給湯側金属製ダクト1”の開口部を過ぎて元の位置に戻ってきたら、スリーブ27内用潤滑剤を塗布するためのスプレーノズル53をスリーブ27の中心部に押し下げた後に、潤滑剤をスリーブ27内にスプレーする。これに依ってプランジャ28がスリーブ27内面とかじらない様にし、且つスリーブ27の内面が溶融金属12に依って腐食しないようにする。
スリーブ27に供給された予め定められた一定量の溶融金属12は、その後プランジャ28のストローク動作によりスリーブ27から金型29に押し出され、充填され、鋳造が行われる。このとき、予め前記減圧ポンプ35や真空タンク34等の減圧手段により金型29内の空気は排除されているので、ガスを巻き込む事なく一定量の溶融金属12が金型29に完全に充填される。これによってダイカスト鋳造品は、ガスや鬆のない良質な製品となる。