以下、図面を参照しながら、本発明に係る建物について説明する。なお、各図において、鉛直方向(上下方向)を矢印Zで示し、水平方向における直交する2方向を矢印X及び矢印Yで示す。また、以下の第1実施形態〜第6実施形態では、建物の一例としてのスタジアムに本発明を適用した実施例について説明するが、これに限らず、屋根構造物と観客席とを備えた他の建物に適用してもよい。例えば、アリーナ、コンサートホール、劇場、競馬場などに適用してもよい。
<第1実施形態>
図1に示されるように、本実施形態の建物10は、主として、屋根構造物12と、観客席14と、空間可変手段としての上下移動機構15とを含んで構成されている。また、観客席14は、一例として、建物10の内側より外側の方が高くなるように階段状に形成されており、建物10の中央の競技領域200に近い前部席16と、競技領域200から遠い後部席18とに分かれている。
なお、本実施形態では、図示しない通路などを挟んで前部席16と後部席18とが分かれているが、これに限らず、最前部から最後部まで一体に観客席14を形成してもよい。この場合は、観客席14における任意の席より競技領域200側(内側)を前部席16と設定し、任意の席より競技領域200から遠ざかる側(外側)を後部席18と設定すればよい。また、本実施形態では、競技領域200を取り囲むように観客席14を設けているが、これに限らず、競技領域200に沿った一部の領域のみに観客席14を設けてもよい。後述する第2実施形態〜第6実施形態についても同様である。
観客席14より外側、及び上側には、観客席14を囲むようにして屋根構造物12が設けられている。屋根構造物12は、主として、基礎202上に構築された支持体20と、支持体20に支持された屋根22とを備えており、この屋根22の下方に観客席14が配設されている。
屋根22は、建物10の中央に位置する中央屋根部22Aと、この中央屋根部22Aの外周に沿って複数設けられた上部外周屋根部22Bと、上部外周屋根部22Bの外周側に配設された下部外周屋根部22Cとを含んで構成されており、本実施形態では、一例として、鉄骨で略円弧状に屋根22が形成されている。ここで、中央屋根部22Aの下端部と上部外周屋根部22Bの上端部とは、上下移動機構15を構成する第1ヒンジ24によってヒンジ結合されている。
一方、上部外周屋根部22Bの下端部は、上下移動機構15を構成する第2ヒンジ26によって下部外周屋根部22Cの上端部とヒンジ結合されており、下部外周屋根部22Cの下端部は、上下移動機構15を構成する第3ヒンジ28によって支持体20とヒンジ接合されている。なお、本実施形態では、屋根22を鉄骨で形成したが、これに限らず、他の部材で形成してもよく、例えば、鉄筋コンクリートや木材などで形成してもよい。また、これらを組み合わせて形成してもよい。
本実施形態の建物10は、所謂パンタドーム工法によって施工されている。この工法では、まず、中央屋根部22A、上部外周屋根部22B、及び下部外周屋根部22Cをそれぞれ基礎202上、又は基礎202に近い位置で地組みする。そして、これらを第1ヒンジ24、第2ヒンジ26、及び第3ヒンジ28でヒンジ結合した後、上下移動機構15を構成する図示しない油圧ジャッキなどのジャッキ装置を用いて屋根22をプッシュアップすることにより施工される。
詳細には、第1ヒンジ24の下方に仮支柱を配設し、この仮支柱の下端部にジャッキ装置を配設する。そして、ジャッキ装置のロッドを伸ばして仮支柱を上昇させ、第1ヒンジ24を図中矢印Aで示されるようにプッシュアップする。続いて、仮支柱の長さより上方まで持ち上げた後、この仮支柱の下方に同軸となるように別の仮支柱を継ぎ足して、同様にジャッキ装置によって仮支柱を上昇させる。
以上の作業を繰り返すことによって、上部外周屋根部22Bが第2ヒンジ26回りに上方へ回動され、中央屋根部22Aが持ち上げられる。そして、任意の高さで第1ヒンジ24、第2ヒンジ26、第3ヒンジ28をそれぞれ固定し、さらにテンションリング等の鉄骨リングで周方向に連結することで屋根構造物12が構築される。この工法によれば、大規模の建物10を施工する場合であっても、屋根22を地組みすることができるため、ベント工法と比較して、仮受けベント(支保工)や足場を最小限にして工期の短縮を図ることができる。また、高所の作業量を削減することができる。
なお、本実施形態では、屋根22をプッシュアップした後に後部席18を構築したが、これに限らず、先に後部席18を構築し、この後部席18上にジャッキ装置を配設して屋根22をプッシュアップしてもよい。また、プッシュアップ後にジャッキ装置を撤去してもよいし、そのまま残しておいてもよい。さらに、本実施形態では、中央屋根部22Aで競技領域200を完全に覆っているが、これに限らず、中央屋根部22Aの一部が開口された構造としてもよい。
(作用並びに効果)
次に、本実施形態に係る建物10を施工した後、観客席14と屋根22とで形成される空間を減少又は増加させる方法について説明しつつ、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
初めに、空間を減少させる場合(減築する場合)は、図2(A)に示されるように、観客席14の後部席18を撤去する。このとき、予め後部席18として撤去が容易な座席を用いることにより、撤去の作業をスムーズに行うことができる。この一例として、例えば、前部席16側を鉄筋コンクリート造とし、後部席18側を鉄骨造とする方法や、単管を組んで後部席18を形成する方法などがある。
後部席18を撤去した後、後部席18を撤去した位置に支持体30を構築する。詳細には、第1ヒンジ24の下方に支持体30を構築する。ここで、この支持体30は、支持体20と同様の構造でもよく、別の構造でもよい。また、支持体30の高さは、支持体20と同じ高さとしてもよく、異なる高さで構築してもよい。
続いて、第1ヒンジ24、第2ヒンジ26、及び第3ヒンジ28を解放した上で、図示しないジャッキ装置(上下移動機構15の一例)を用いて、中央屋根部22Aをプッシュダウンさせる。このとき、中央屋根部22Aが下降されるに従って、第1ヒンジ24及び第2ヒンジ26が折れ曲がり、パンタドーム工法の逆の手順で中央屋根部22Aが下降される。そして、第1ヒンジ24を支持体30で支持させた後、この第1ヒンジ24を支持体30に連結させることで、観客席14(前部席16)と屋根22とで形成された空間を減少させることができる。最後に、第1ヒンジ24より外周側の上部外周屋根部22B、下部外周屋根部22C、及び支持体20を撤去すれば、図2(A)に示されるように、建物10の減築が完了する。
一方、空間を増加させる場合は、上記の方法と逆の手順で屋根22をプッシュアップすればよい。このとき、第1ヒンジ24より外側の部分を撤去せずに残しておけば、中央屋根部22Aを再度プッシュアップするだけで、観客席14と屋根22とで形成される空間を増加させることができる。そして、増加された空間に後部席18を設置すれば、イベントに備えて観客収容人数を増やすことができる。
なお、本実施形態では、後部席18を撤去した位置に、新たに支持体30を立設したが、これに限らず、予め支持体30を立設しておいてもよい。この一例として、観客席14の間に空間を設けておいて支持体30を立設してもよいし、後部席18の内部に支持体30を構築しておいてもよい。さらに、プッシュアップする際に用いた仮支柱を撤去せずに残しておいてもよい。
また、本実施形態では、後部席18を撤去したが、屋根22をプッシュダウンする量が小さい場合、すなわち、屋根22と後部席18とが干渉しない場合は、後部席18を撤去しなくもよいし、後部席18の一部のみを撤去してもよい。
以上のようにして、屋根22を下降させることにより、気積が減少するので、空調の費用を低減することができる。また、照明のコストなども低減することができる。さらに、周辺の景観や日照条件などを改善する効果も期待できる。これにより、例えば、オリンピックなどのビッグイベント用に建物10を施工し、イベント終了後に屋根22を下降して空間を減少させることで、上記のコストを削減することができ、日常的に使用する施設へ減築することができる。
なお、本実施形態では、屋根22を下降させることによって空間を減少させたが、これに限らず、図3に示される変形例のように屋根22を下降させずに空間を減少させる方法を適用してもよい。すなわち、図3に示される変形例では、後部席18を撤去した位置に、図2の支持体30よりも高さが高い支持体32を立設している。そして、この支持体32で第1ヒンジ24を支持すれば、支持体32より内側の空間が観客席14(前部席16)と屋根22とで形成された空間となる。これにより、屋根22を下降させることなく空間を減少させることができる。なお、屋根22をプッシュアップする際に用いた仮支柱を残しておき、この仮支柱を補強するなどして支持体32としてもよい。
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係る建物40について説明する。なお、第1実施形態と同様の構成については同じ符号を付し、適宜説明を省略する。図4に示されるように、本実施形態の建物40では、屋根構造物42の屋根44を構成する中央屋根部44Aと外周屋根部44Bとが別体として構築されており、パンタドーム工法ではなく、リフトアップ工法を適用している点で第1実施形態と異なっている。
本実施形態では、観客席14の外周側に屋根構造物42を構成する支持体20が複数立設されている。また、支持体20上には、外周屋根部44Bがベント工法などによって構築されている。外周屋根部44Bは、観客席14の一部を覆うように上方且つ内側へ向かって略円弧状又は略直線状に形成されている。また、外周屋根部44Bは、後述する中央屋根部44Aよりも剛性が高くなるように形成されている。この一例として、外周屋根部44Bを鉄筋コンクリート造として中央屋根部44Aを鉄骨造としてもよいし、外周屋根部44Bを鉄骨造として中央屋根部44Aを木造としてもよい。
外周屋根部44Bの間には、中央屋根部44Aが架設される。ここで、本実施形態では、中央屋根部44Aを基礎202上で地組みした後、ケーブルを繋いで揚重機(上下移動機構の一例)で中央屋根部44Aを吊り上げて図中矢印で示されるようにリフトアップしている。
そして、中央屋根部44Aを外周屋根部44Bの高さまでリフトアップした後、中央屋根部44Aの外周端部に設定した連結部46で外周屋根部44Bと中央屋根部44Aとをピン接合等によって固定することで屋根構造物42が構築される。このとき、固定部にテンションリング等の鉄骨リングを取り付けて中央屋根部44Aが広がるのを抑制してもよい。また、外周屋根部44Bと支持体20との固定部にも同様の鉄骨リングを取り付けてダブルテンションリング構造としてもよい。
なお、本実施形態では、揚重機を用いて中央屋根部44Aをリフトアップしたが、これに限らず、第1実施形態と同様に仮支柱を用いて中央屋根部44Aをジャッキアップしてもよい。また、本実施形態では、中央屋根部44Aより外周屋根部44Bの方が剛性が高くなるように形成したが、これに限らず、中央屋根部44Aと外周屋根部44Bの剛性を略同一の剛性としてもよい。
(作用並びに効果)
次に、本実施形態に係る建物40を施工した後、観客席14と屋根44とで形成される空間を減少又は増加させる方法について説明しつつ、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
初めに、空間を減少させる場合は、図5(A)に示されるように、観客席14の後部席18を撤去して新たな支持体30を構築する。ここで、支持体30は、連結部46の下方に構築する。その後、外周屋根部44Bと中央屋根部44Aとの固定状態を解除して、中央屋根部44Aをリフトダウンさせて支持体30に支持させる。そして、中央屋根部44Aと支持体30とを連結させることで、観客席14(前部席16)と屋根44とで形成される空間を減少させることができる。
また、中央屋根部44Aを下降させた後、支持体20及び外周屋根部44Bを撤去することにより、図5(B)に示されるように、建物40を減築することができる。一方、空間を増加させる場合は、上記の方法と逆の手順で中央屋根部44Aをリフトアップすればよい。このとき、支持体20及び外周屋根部44Bを残しておけば、中央屋根部44Aを再度リフトアップするだけで空間を増加させることができる。その他の作用について第1実施形態と同様である。
なお、本実施形態では、支持体30を構築して中央屋根部44Aを支持させたが、これに限らず、図6に示される変形例のように、支持体30を構築せずに減築する方法を適用してもよい。この方法では、図6(A)に示されるように、後部席18を撤去した後、支持体20と外周屋根部44Bとの固定状態を解除して外周屋根部44B及び中央屋根部44Aを持ち上げる。このとき、ジャッキ装置を用いてジャッキアップしてもよいし、揚重機などを用いて吊り上げてもよい。
外周屋根部44B及び中央屋根部44Aを持ち上げた後、外周屋根部44Bと中央屋根部44Aとの連結部46の固定状態を解除し、外周屋根部44Bを支持体として機能させることができる。この方法によれば、支持体30を新たに構築する必要がない。また、本実施形態では、中央屋根部44Aを支持するために外周屋根部44Bの剛性を中央屋根部44Aより高くしているので、支持体としての剛性を満足しており、この外周屋根部44Bを撤去せずに有効利用すれば、無駄のない減築を行うことができる。
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態に係る建物50について説明する。図8(A)に示されるように、本実施形態の建物50は、主として、屋根構造物52と、観客席14と、横方向移動機構としてのローラ58とを含んで構成されている。また、観客席14は、一例として、建物50の内側より外側の方が高くなるように階段状に形成されており、建物50の中央の競技領域200に近い前部席16と、競技領域200から遠い後部席18とに分かれている。また、図7(A)に示されるように、建物50は、平面視で略矩形状に形成されており、観客席14は、競技領域200を挟んで対向配置されている。ここで、観客席14は、それぞれY方向に間隔を開けて4つのブロックに分かれているが、観客席14の配置は特に限定せず、配置やブロック数を変更してもよい。
図8(A)に示されるように、観客席14の外側、及び上側には、屋根構造物52が設けられている。屋根構造物52は、主として、基礎202上に構築された支持体56と、支持体56に支持された屋根54とを備えており、この屋根54の下方に観客席14が配設されている。
屋根54は、妻側から見て断面略山型状に形成されており、水平に配置された頂部54Aと、この頂部54Aの両側から外側へ向かって斜め下方へ傾斜された傾斜部54Bとを含んで構成されている。
ここで、傾斜部54Bの下端部は、支持体56によって支持されている。支持体56は、図7(A)に示されるように、互いに対向するように一対設けられており、平面視で略コの字状(略U字状)に形成されている。また、図8(A)に示されるように、支持体56の上部は、内側へ向かって斜め上方へ屈曲された上部屈曲部56Aとされており、この上部屈曲部56Aの傾斜角度が傾斜部54Bの傾斜角度と略同一の角度に形成されて傾斜部54Bを支持している。なお、上部屈曲部56Aと傾斜部54Bとの間には、図示しない滑り支承又は転がり支承が介在されており、上部屈曲部56Aと傾斜部54Bとが相互にスライド可能に構成されている。また、普段はスライドしないように上部屈曲部56Aと傾斜部54Bとが固定されている。
ここで、支持体56の下部には、内側へ屈曲された下部屈曲部56Bが設けられており、この下部屈曲部56Bの下面には、複数のローラ58が取り付けられている。図7(A)に示されるように、下部屈曲部56Bは、隣り合う観客席14の間に配設されており、本実施形態では、一例として、Y方向に沿って5つの下部屈曲部56Bが設けられている。また、図8(A)に示されるように、ローラ58は、基礎202に形成された凹部202Aに入り込んでおり、移動範囲が制限されている。また、普段は支持体56が移動しないように図示しない固定手段で固定されている。
(作用並びに効果)
次に、本実施形態に係る建物50を施工した後、観客席14と屋根54とで形成される空間を減少又は増加させる方法について説明しつつ、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
初めに、図8(A)の状態から後部席18を撤去して図8(B)の状態とする。次に、ローラ58を固定している場合は、固定状態を解除し、傾斜部54Bと上部屈曲部56Aとの固定状態も解除する。そして、図8(C)に示されるように、両側の支持体56を建物50の内側へ向かって横方向に移動させる。これにより、屋根54と観客席14(前部席16)とで形成される空間を減少させることができる。ここで、傾斜部54Bの下端部を取外し可能な構成としている場合は、支持体56より外側へ出っ張った傾斜部54Bの下端部を撤去してもよい。
本実施形態によれば、屋根54に傾斜部54Bを設けていたため、支持体56が内側へ移動するにつれ、屋根を下方へ移動させることができ、効率よく空間を減少させることができる。一方、この状態から支持体56を建物50の外側へ向かって横方向に移動させれば、空間を増加させることができる。なお、増加した空間に後部席18を再度設置して観客収容人数を増やしてもよい。
なお、本実施形態では、横方向移動機構として、ローラ58を設けたが、これに限らず、リニアスライダ等の滑り支承としてもよい。この場合、基礎202の凹部202Aにリニアレールを配設し、支持体56の下部屈曲部56Bの下面に、リニアレールと係合するリニアブロックを取り付けることで、本実施形態と同様に支持体56を横方向に移動させることができる。
また、本実施形態では、支持体56を移動する場合を除いてローラ58を固定していたが、これに限らず、ローラ58の固定状態を解除しておいてもよい。この場合、ローラ58を転がり免震支承として機能させることで、免震化を図ることができる。また、ローラ58を固定した状態で、屋根54と支持体56との間に介在された滑り支承又は転がり支承を機能させて屋根免震構造としてもよい。
さらに、本実施形態では、屋根54を断面略山型状に形成したが、これに限らず、傾斜部54Bの無い平板状に屋根を形成してもよい。この場合、支持体56を横方向に移動させても屋根54の高さが変わらないため、一定の高さを必要とする競技を行う場合においては有効である。また、一方の支持体56だけを移動させても屋根54が傾きにくいので、支持体56を同時に移動させず済む。なお、図8で示された断面山型状の屋根54の場合は、揚重機などを用いて屋根54を一旦引き揚げ、支持体56を横方向に移動させた後に屋根54を降ろす方法を適用すれば、一対の支持体56を同時に移動させずに済む。
また、本実施形態では、後部席18を撤去して支持体56を移動させたが、これに限らうず、図9の変形例のように、前部席16を撤去してもよい。この方法では、図9(A)に示される状態から、前部席16を撤去して、図9(B)の状態とする。次に、ローラ58を固定している場合は、固定状態を解除し、傾斜部54Bと上部屈曲部56Aとの固定状態も解除する。そして、両側の支持体56を建物50の内側へ向かって横方向に移動させる。このとき、後部席18も一緒に横方向に移動させることで、図9(C)に示されるように、屋根54と観客席14(後部席18)とで形成される空間を減少させることができる。
なお、本実施形態の構成(後部席18を撤去する構成)と、上記の変形例の構成(前部席16を撤去する構成)とを組み合わせてもよい。この場合、競技領域200を挟んで一方側では後部席18を撤去し、他方側では前部席16を撤去すればよい。
<第4実施形態>
次に、本発明の第4実施形態に係る建物60について説明する。図10に示されるように、本実施形態の建物60は、平面視で略円形に形成されている点で、第3実施形態と異なる。
図10に示されるように、本実施形態では、競技領域200を取り囲むようにして観客席14が設けられている。観客席14は、中央の競技領域200に近い前部席16と、競技領域200から遠い後部席18とに分かれている。また、本実施形態では、観客席14は、競技領域200に沿って14のブロックに分けられている。
ここで、隣り合う後部席18の間には、横方向移動機構としての移動フレーム62が配設されている。移動フレーム62はそれぞれ、独立して配設されており、上下方向に延びて図示しない屋根を支持している。ここで、第3実施形態と同様に、移動フレーム62の下部には、内側へ屈曲された下部屈曲部62Aが設けられており、この下部屈曲部62Aの下面には、図示しない複数のローラが取り付けられている。
(作用並びに効果)
次に本実施形態の作用並びに効果について説明する。本実施形態によれば、図10(A)の状態から後部席18を撤去し、移動フレーム62を図中矢印で示すように内側へ移動させることにより、図10(B)の状態となる。このようにして、観客席14(前部席16)と屋根とで形成された空間を減少させることができる。特に、本実施形態のような移動フレーム62を用いることで、第3実施形態で説明した平面視略矩形状の建物50に限定されず、本実施形態のような平面視略円形状の建物60やドーム状の建物についても空間を減少することができる。また、平面視で略六角形状や略八角形状など多角形状の建物についても適用することができる。
一方、空間を増加する場合は、図10(B)の状態から移動フレーム62を外側へ移動させればよい。また、後部席18を設置すれば、収容観客人数を増やすことができる。なお、横方向移動機構として、ローラの代わりにリニアスライダ等の滑り支承を適用してもよい。
<第5実施形態>
次に、本発明の第5実施形態に係る建物70について説明する。図12(A)に示されるように、本実施形態の建物70は、主として、屋根構造物72と、観客席14と、横方向移動機構としてのローラ88を含んで構成されている。また、観客席14は、一例として、建物70の内側より外側の方が高くなるように階段状に形成されており、建物70の中央の競技領域200に近い前部席16と、競技領域200から遠い後部席18とに分かれている。
ここで、図11(A)に示されるように、本実施形態の屋根構造物72は、平面視で菱形の両端部の角を落としたような形状に形成されており、複数のフレームによって構成されている。詳細には、建物70の中央には、第1フレーム74が配設されており、この第1フレーム74の一端側(図中右側)には、第2フレーム76、第3フレーム78、第4フレーム80が順に連結されている。また、第1フレーム74の他端側(図中左側)には、第5フレーム82、第6フレーム84、第7フレーム86が順に連結されており、合計7つのフレームによって屋根構造物72が構成されている。
また、第2フレーム76〜第7フレーム86は、平面視で略台形状に形成されており、第2フレーム76と第5フレーム82は、第1フレーム74を挟んで対称に形成されている。同様にして、第3フレーム78と第6フレーム84は、第1フレーム74を挟んで対称に形成されており、第4フレーム80と第7フレーム86についても、第1フレーム74を挟んで対称に形成されている。
さらに、図12(A)に示されるように、第1フレーム74は、第1支持体74Bと、第1支持体74Bに支持された第1屋根74Aとを備えており、第1屋根74Aは、立面視で略山形状に形成されている。また、第2フレーム76は、第2支持体76Bと、第2支持体76Bに支持された第2屋根76Aとを備えている。ここで、第2支持体76Bは、第1支持体74Bの一端部に連結されており、第2屋根76Aは、第1屋根74Aと連続するように内側から外側へ向かって下方に傾斜されている。
第3フレーム78は、第3支持体78Bと、第3支持体78Bに支持された第3屋根78Aとを備えており、第3支持体78Bは、第2支持体76Bの一端部に連結されている。また、第3屋根78Aは、第1屋根74A及び第2屋根76Aと連続するように内側から外側へ向かって下方に傾斜されている。さらに、第3支持体78Bの一端部には、第4フレーム80の第4支持体80Bが連結されており、この第4支持体80Bには第3屋根78Aと連続するように傾斜された第4屋根80Aが支持されている。
一方、これと同様にして、第1支持体74Bの他端側には、第5支持体82B、第6支持体84B、第7支持体86Bが順に連結されており、第1屋根74Aの他端側には、第5屋根82A、第6屋根84A、第7屋根86Aが第1屋根74Aと連続するように内側から外側へ向かって下方に傾斜されている。なお、支持体及び屋根の材質は特に限定せず、例えば、支持体及び屋根を鉄骨造としてもよく、支持体を鉄筋コンクリート造として屋根を鉄骨造としてもよい。
また、第1フレーム74は、基礎202上に立設されて移動不能とされており、第2フレーム76〜第7フレーム86については、下部にローラ88が設けられて横方向(略水平方向)に移動可能に構成されている。なお、本実施形態では、横方向移動機構としてローラ88を適用したが、これに限らず、リニアスライダ等の滑り支承を適用してもよい。
ここで、観客席14は、第4フレーム80の内部の最外部分、及び第7フレーム86の内部の最外部分にそれぞれ構築されているが、これに限らず、観客席14の配置は自由に設定してもよく、例えば、中央の競技領域を囲むように観客席14を構築してもよい。この場合、第1フレーム74〜第7フレーム86の全てのフレームに観客席14が構築されることとなる。
(作用並びに効果)
次に、本実施形態に係る建物70を施工した後、観客席14と屋根74A〜86Aとで形成される空間を減少又は増加させる方法について説明しつつ、本実施形態の作用並びに効果について説明する。なお、以下の説明では、空間を多段階的に減少させる方法について説明するが、これに限らず、一気に空間を減少させてもよい。
初めに、図11(A)及び図12(A)の状態において、ローラ88を固定している場合は、固定状態を解除する。また、第1フレーム74と第2フレーム76との連結状態を解除し、第1フレーム74と第5フレーム82との連結状態についても解除する。その後、第2フレーム76、第3フレーム78、及び第4フレーム80を図11(A)の矢印で示される方向(内側)に向かって横方向に移動させる。また、これと同様にして、第5フレーム82、第6フレーム84、及び第7フレーム86を図11(A)の矢印で示される方向(内側)へ向かって横方向に移動させる。これにより、図11(B)及び図12(B)で示されるように、第2フレーム76と第5フレーム82が第1フレーム74の内側に入り込む。そして、第2フレーム76と第5フレーム82とを突き合わせて連結することにより、空間を一段階減少させることができる。このとき、競技領域を確保できない場合は、前部席16を撤去してもよく、競技領域を確保できる場合は、前部席16を撤去しなくてもよい。
次に、図11(B)及び図12(B)の状態から、さらに空間を減少させる場合は、まず、第2フレーム76と第3フレーム78との連結状態を解除し、第5フレーム82と第6フレーム84との連結状態についても解除する。その後、第3フレーム78と第4フレーム80を図11(B)の矢印で示される方向(内側)に向かって横方向に移動させる。また、これと同様にして、第6フレーム84と第7フレーム86を図11(B)の矢印で示される方向(内側)へ向かって横方向に移動させる。これにより、図11(C)及び図12(C)で示されるように、第3フレーム78が第2フレーム76の内側に入り込み、第6フレーム84が第5フレーム82の内側に入り込む。そして、第3フレーム78と第6フレーム84とを突き合わせて連結することにより、空間をさらに減少させることができる。なお、本実施形態では、横移動させる前に、第4フレーム80内の前部席16と第7フレーム86内の前部席16を撤去して競技領域を確保したが、これに限らず、競技領域を確保できる場合は、前部席16を撤去しなくてもよい。また、競技領域を囲むように観客席14を構築している場合は、フレームを移動する前に一部の観客席14を撤去すればよい。
以上のようにして、フレームを横方向に移動させることで、建物70の長さ、幅、高さの3方向を同時に縮めて空間を減少させることができる。また、減築後の建物70では、第1フレーム74の内側に第2フレーム76、第3フレーム78、第5フレーム82、及び第6フレーム84が入り込んでいるため、この建物70の中央部分で地震力を負担する構造とすれば、耐震性を向上させることができる。さらに、場合に応じて第4フレーム80及び第7フレーム86だけを外側へ移動させれば、建物70の屋根を開閉させることができる。
なお、本実施形態では、第1フレーム74の内側に他のフレームを入り込ませて空間を減少させたが、これに限らず、一部のフレームを撤去してもよい。すなわち、図12(A)の状態において、第1フレーム74を撤去した後、第2フレーム76と第5フレーム82とをそれぞれ移動させて連結してもよい。さらにこの状態から、第2フレーム76と第5フレーム82を撤去して、第3フレーム78と第6フレーム84とをそれぞれ移動させて連結することで空間を減少させてもよい。
また、建物70は、本実施形態の形状とは異なる形状としてもよく、例えば、平面視で略矩形状の建物としてもよい。この場合、各フレームの幅を若干異なる形状に形成すれば、横方向に移動させる際にフレーム同士が干渉しないようにできる。
さらに、本実施形態では、第1フレーム74の内側に他のフレームを完全に入り込ませていたが、これに限らず、図13に示される変形例のように、フレームの一部だけを入り込ませてもよい。図13(A)に示されるように、変形例の建物90は、屋根構造物92と、図示しない観客席とを備えており、平面視で略矩形状に形成されている。
また、建物90は、複数のフレームによって構成されている。詳細には、建物90の中央には、第1フレーム94が配設されており、この第1フレーム94の一端側(図中右側)には、第2フレーム96、第3フレーム98が順に連結されている。また、第1フレーム94の他端側(図中左側)には、第4フレーム100、第5フレーム102が順に連結されており、合計5つのフレームによって屋根構造物92が構成されている。
ここで、第1フレーム94、第3フレーム98、及び第5フレーム102は、平面視で略同一の大きさに形成されており、第2フレーム96と第4フレーム100は、上記3つのフレームよりY方向の幅寸法が小さく形成されている。また、第3フレーム98と第5フレーム102には、図示しないローラなどの横方向移動機構が設けられており、X方向に沿って横方向に移動可能に構成されている。
以上のように構成された変形例に係る建物90では、第3フレーム98、及び第5フレーム102を図13(B)の矢印で示される方向(内側)へ向かって横方向に移動させると、第2フレーム96が第3フレーム98の内側に入り込み、第4フレーム100が第5フレーム102の内側に入り込む。これによって、空間を減少させることができる。ここで、第3フレーム98及び第5フレーム102を内側へ移動させた移動量に応じて空間を減少させることができるため、例えば、図13(B)で示された位置で第3フレーム98及び第5フレーム102の移動を停止してローラを固定してもよく、第3フレーム98だけをさらに内側へ移動させてもよい。このようにして、気積を無段階に調整することができる。なお、競技領域を確保できない場合は、観客席の一部を撤去してもよい。
また、本変形例では、5つのフレームで建物90を構成したが、これに限らず、さらに多くのフレームで建物を構成してもよいし、4つ以下のフレームで建物を構成してもよい。また、本変形例では、第3フレーム98と第5フレーム102の2つのフレームのみを横方向に移動可能に構成したが、これに限らず、第2フレーム96と第4フレーム100についても横方向に移動可能に構成してもよい。
<第6実施形態>
次に、本発明の第6実施形態に係る建物110について説明する。図14(A)に示されるように、本実施形態に係る建物110は、主として、屋根構造物112と、観客席130と、を含んで構成されている。
屋根構造物112は、基礎202上に構築された支持体116と、この支持体116に支持された屋根114とを備えており、中央には、競技領域200が設けられている。また、競技領域200の周りには、この競技領域200に沿って観客席130が設けられている。ここで、観客席130は、1階(下階)に設けられた1階席120と2階(上階)に設けられた2階席118とに分かれており、2階席118は、支持体116から張り出した支持梁122上に構築されている。
(作用並びに効果)
次に、本実施形態に係る建物110を施工した後、観客席130と屋根114とで形成される空間を減少又は増加させる方法について説明しつつ、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
初めに、図14(B)に示されるように、1階席120を撤去する。そして、1階(下階)と2階(上階)との間に仕切部材としての仕切床124を架設して空間を仕切ることによって、観客席130と屋根114とで形成される空間を減少させることができる。なお、仕切床124を構築した後に、1階席120を撤去してもよく、同時に作業してもよい。
本実施形態の建物110によれば、1階の空間を別の用途で使用することができる。例えば、1階の空間をさらに間仕切り壁126、128によって区画し、スポーツジムや武道場などとして利用することで建物110の稼働率の向上を図ることができる。また、比較的規模が大きいイベントでは、2階の空間を利用し、1階を控室や練習場として利用してもよい。
さらに、2階の空間だけでは観客を収容できないビッグイベント時には、仕切床124を解体して空間を増加させることもできる。このとき、必要に応じて1階席120を構築したり、1階を立見席に設定してもよい。
なお、本実施形態では、2階建ての建物110としたが、これに限らず、3階以上の建物に本発明を適用してもよい。また、本実施形態では、1階席120を撤去したが、逆に2階席118を撤去して1階が競技領域200となるようにしてもよい。さらに、本実施形態では、競技領域200を取り囲むように観客席130を構築したが、これに限らず、競技領域200に沿った一部の領域にのみ観客席130を構築してもよい。
さらに、本実施形態では、1階席120と2階席118の勾配を略同一の勾配に設定したが、これに限らず、2階席118の勾配を1階席120の勾配より急勾配としてもよい。この場合、1階で行われている競技を2階席118から見やすくすることができる。
一方、2階席118の勾配を急勾配とした場合は、仕切床124を架設して1階と2階を仕切った後に、2階席118の勾配が緩やかになるように調整するのが好ましい。この調整方法の一例として図15に示されるような方法を適用してもよい。すなわち、図15に示される例では、2階席140の下部が引出可能に構成されている。詳細には、2階席140の下部は、階段状に形成された椅子142の設置部がそれぞれスライド可能に構成されており、図15(A)に示されるように、勾配を変える前の状態では、ラップ長Lだけオーバーラップするように構成されている。また、通常はスライド不能にロックされている。
以上のように構成された2階席140の勾配を変更する場合は、スライドのロック状態を解除して、椅子142の設置部を図15(B)の矢印の方向へ引き出す。これにより、椅子142の設置部がそれぞれスライドされ、ラップ長が短くなる。そして、引き出した状態でロックすれば、2階席140の勾配を緩やかにすることができる。また、ロック状態を解除して2階席140の下部を元の位置へスライドさせれば、2階席140の勾配を戻すことができる。
なお、本実施形態では、2階席140の下部のみがスライド可能に構成されていたが、これに限らず、2階席140の全体をスライド可能に構成してもよい。また、2階席140の下部を引き出して勾配を変化できる構成であれば、他の構成を採用してもよい。
以上、本発明の第1実施形態〜第6実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものでなく、実施形態及び各種の変形例を適宜組み合わせて用いても良いし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
例えば、一態様に係る建物は、支持体と該支持体に支持された屋根とを備えた屋根構造物と、前記屋根の下方に設けられた観客席と、前記観客席と前記屋根とで形成される空間を減少又は増加させる空間可変手段と、を有する。
一態様に係る建物によれば、支持体と屋根とを備えた屋根構造物の下方には、観客席が設けられている。また、空間可変手段によって観客席と屋根とで形成された空間を減少又は増加させることができるように構成されている。これにより、例えば、イベントの終了後に空間可変手段によって空間を減少させることで、建物の規模を縮小させて維持コストを低減することができる。
また、空間可変手段によって空間を増加させることで、建物の規模を大きくすることができる。これにより、イベントに備えて観客席と屋根とで形成された空間を増加させることができる。このとき、増加された空間に観客席を新設して観客収容人数を増やすことができる。
一態様に係る建物は、前記空間可変手段は、前記屋根を上下に移動させることによって前記空間を減少又は増加させる上下移動機構である。
一態様に係る建物によれば、上下移動機構を用いて屋根を下降(プッシュダウン又はリフトダウン)すれば、観客席と屋根とで形成された空間を減少させることができる。また、上下移動機構を用いて屋根を上昇(プッシュアップ又はリフトアップ)すれば、この空間を増加させることができる。
一態様に係る建物は、前記空間可変手段は、前記支持体を横方向に移動させる横方向移動機構であり、前記観客席の一部を撤去すると共に前記支持体を内側へ向かって横方向に移動することにより前記空間を減少させ、又は、前記支持体を外側へ向かって横方向に移動することにより前記空間を増加させる。
一態様に係る建物によれば、観客席の一部を撤去し、横方向移動機構によって支持体を建物の内側へ向かって横方向に移動させれば、観客席と屋根とで形成された空間を減少させることができる。また、横方向移動機構によって支持体を建物の外側へ向かって横方向に移動させれば、空間を増加させることができる。なお、増加した空間に観客席を新設すれば、観客収容人数を増やすことができる。
一態様に係る建物は、前記観客席は、上階及び下階に設けられ、前記空間可変手段は、下階と上階との間に構築されて前記空間を上下に仕切る仕切部材であり、前記上階又は下階の前記観客席を撤去すると共に前記仕切部材を構築することにより前記空間を減少させ、又は前記仕切部材を解体することにより前記空間を増加させる。
一態様に係る建物によれば、仕切部材を構築すると共に下階の観客席を撤去すれば、下階の空間を別の用途で使用することができる。また、仕切部材を構築すると共に上階の観客席を撤去すれば、上階の空間を別の用途で使用することができる。さらに、構築した仕切部材を解体すれば、空間を増加させることができる。