本発明は、以下に説明する複数の発明を包含する発明群に属する発明であり、以下に、その発明群の実施の形態として、第1ないし第5の実施の形態について説明するが、そのうち、第1、第4および第5の実施の形態が、本出願人が特許請求の範囲に記載した発明に対応するものである。
以下、本発明の実施の形態によるソレノイドを、例えば減衰力調整式油圧緩衝器の減衰力可変アクチュエータに適用した場合を例に挙げ、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1および図2は本発明の第1の実施の形態を示している。まず、本実施の形態によるソレノイド33が組込まれた減衰力調整式油圧緩衝器1(以下、油圧緩衝器1とする)について、図1を参照しつつ説明する。
油圧緩衝器1の外殻をなす有底筒状の外筒2は、下端側がボトムキャップ3により溶接手段等を用いて閉塞され、上端側は、径方向内側に屈曲されたかしめ部2Aとなっている。かしめ部2Aと内筒4との間には、ロッドガイド9とシール部材10が設けられている。一方、外筒2の下部側には、後述する中間筒12の接続口12Cと同心に開口2Bが形成され、該開口2Bと対向して後述する減衰力調整装置17が取付けられている。また、ボトムキャップ3には、例えば車両の車輪側に取付けられる取付アイ3Aが設けられている。
外筒2内には、該外筒2と同軸上に内筒4が設けられている。内筒4は、下端側がボトムバルブ13に嵌合して取付けられ、上端側はロッドガイド9に嵌合して取付けられている。内筒4内には作動液としての油液が封入されている。作動液としては油液、オイルに限らず、例えば添加剤を混在させた水等でもよい。
内筒4と外筒2との間には、環状のリザーバ室Aが形成され、このリザーバ室A内には、前記油液と共にガスが封入されている。このガスは、大気圧状態の空気であってもよく、また圧縮された窒素ガス等の気体を用いてもよい。また、内筒4の長さ方向(軸方向)の途中位置には、ロッド側油室Bを環状油室Dに常時連通させる油穴4Aが径方向に穿設されている。
ピストン5は、内筒4内に摺動可能に挿嵌されている。ピストン5は、内筒4内をロッド側油室Bとボトム側油室Cとに画成している。ピストン5には、ロッド側油室Bとボトム側油室Cとを連通可能とする油路5A,5Bがそれぞれ複数個、周方向に離間して形成されている。
ここで、ピストン5の下端面には、伸長側のディスクバルブ6が設けられている。この伸長側のディスクバルブ6は、ピストンロッド8の伸長行程でピストン5が上向きに摺動変位するときに、ロッド側油室B内の圧力がリリーフ設定圧を越えると開弁し、このときの圧力を各油路5Aを介してボトム側油室C側にリリーフする。このリリーフ設定圧は、後述の減衰力調整装置17がハードに設定されたときの開弁圧より高い圧に設定される。
ピストン5の上端面には、ピストンロッド8の縮小行程でピストン5が下向きに摺動変位するときに開弁し、これ以外のときには閉弁する縮み側逆止弁7が設けられている。この逆止弁7は、ボトム側油室C内の油液がロッド側油室Bに向けて各油路5B内を流通するのを許し、これとは逆向きに油液が流れるのを阻止するものである。この逆止弁7の開弁圧は、後述の減衰力調整装置17がソフトに設定されたときの開弁圧より低い圧に設定され、実質的に減衰力を発生しない。この実質的に減衰力を発生しないとは、ピストン5やシール部材10のフリクション以下の力であり、車の運動に対し影響しないものである。
内筒4内を軸方向に延びるピストンロッド8は、下端側が内筒4内に挿入され、ナット8A等によりピストン5に固着して設けられている。また、ピストンロッド8の上端側は、ロッドガイド9を介して外筒2および内筒4の外部に突出している。なお、ピストンロッド8の下端をさらに延ばしてボトム部(例えば、ボトムキャップ3)側から外向きに突出させ、所謂、両ロッドとしてもよい。
内筒4の上端側には、段付円筒状のロッドガイド9が設けられている。ロッドガイド9は、内筒4の上側部分を外筒2の中央に位置決めすると共に、その内周側でピストンロッド8を軸方向に摺動可能にガイドしている。また、ロッドガイド9と外筒2のかしめ部2Aとの間には、環状のシール部材10が設けられている。シール部材10は、中心にピストンロッド8が挿通される孔が設けられた金属性の円輪板にゴム等の弾性材料を焼き付けたもので、内周がピストンロッド8の外周側に摺接することによりピストンロッド8との間をシールするものである。
また、シール部材10は、下面側にロッドガイド9と接触するように延びるチェック弁としてのリップシール10Aが形成されている。リップシール10Aは、油溜め室11とリザーバ室Aとの間に配置され、油溜め室11内の油液等がロッドガイド9の戻し通路9Aを介してリザーバ室A側に向け流通するのを許し、逆向きの流れを阻止するものである。
外筒2と内筒4との間には、中間筒12が配設されている。中間筒は、例えば、内筒4の外周側に上,下の筒状シール12A,12Bを介して取付けられている。中間筒12は、内筒4の外周側を全周にわたって取囲むように延びた環状油室Dを内部に形成し、環状油室Dはリザーバ室Aとは独立した油室となっている。環状油室Dは、内筒4に形成した径方向の油穴4Aによりロッド側油室Bと常時連通している。また、中間筒12の下端側には、後述する減衰力調整バルブ18の筒形ホルダ20が取付けられる接続口12Cが設けられている。
ボトムバルブ13は、内筒4の下端側に位置してボトムキャップ3と内筒4との間に設けられている。ボトムバルブ13は、ボトムキャップ3と内筒4との間でリザーバ室Aとボトム側油室Cとを画成するバルブボディ14と、バルブボディ14の下面側に設けられた縮小側のディスクバルブ15と、バルブボディ14の上面側に設けられた伸び側逆止弁16とにより構成されている。バルブボディ14には、リザーバ室Aとボトム側油室Cとを連通可能する油路14A,14Bがそれぞれ周方向に間隔をあけて形成されている。
縮小側のディスクバルブ15は、ピストンロッド8の縮小行程でピストン5が下向きに摺動変位するときに、ボトム側油室C内の圧力がリリーフ設定圧を越えると開弁し、このときの圧力を各油路14Aを介してリザーバ室A側にリリーフする。このリリーフ設定圧は、後述の減衰力調整装置17がハードに設定されたときの開弁圧より高い圧に設定される。
伸び側逆止弁16は、ピストンロッド8の伸長行程でピストン5が上向きに摺動変位するときに開弁し、これ以外のときには閉弁する。この逆止弁16は、リザーバ室A内の油液がボトム側油室Cに向けて各油路14B内を流通するのを許し、これとは逆向きに油液が流れるのを阻止するものである。この逆止弁16の開弁圧は、後述の減衰力調整装置17がソフトに設定されたときの開弁圧より低い圧に設定され、実質的に減衰力を発生しない。
次に、油圧緩衝器1の発生減衰力を可変に調整するための減衰力調整装置17について説明する。
図1中に示すように、減衰力調整装置17は、その基端側(図1の左端側)がリザーバ室Aと環状油室Dとの間に介在して配置され、先端側(図1の右端側)が外筒2の下部側から径方向外向きに突出するように設けられている。減衰力調整装置17は、環状油室Dからリザーバ室Aへの油液の流通を、減衰力調整バルブ18により制御することで、減衰力を発生する。また、減衰力調整バルブ18の開弁圧を、減衰力可変アクチュエータとして用いられる後述のソレノイド33で調整することにより、発生減衰力を可変に調整する。
ここで、減衰力調整バルブ18は、その基端側が外筒2の開口2Bの周囲に固着され先端側が外筒2から径方向外向に突出するように設けられた略円筒状のバルブケース19、基端側が中間筒12の接続口12Cに固定されると共に先端側が環状のフランジ部20Aとなってバルブケース19の内側に隙間をもって配設された筒形ホルダ20、該筒形ホルダ20のフランジ部20Aに当接するバルブ部材21等を含んで構成されている。
バルブケース19の基端側は、径方向内側に向けて突出する内側フランジ部19Aとなり、バルブケース19の先端側には、後述するソレノイド33のカバー部材48をかしめ結合するための係合リング49を装着する全周溝19Bが形成されている。バルブケース19の内周面と後述するバルブ部材21、パイロットボディ26等の外周面との間は、リザーバ室Aに通じる環状の油室19Cとなっている。
筒形ホルダ20の内側は、一方側が環状油室Dに連通し、他方側がバルブ部材21の位置まで延びる油路20Bとなっている。また、筒形ホルダ20のフランジ部20Aとバルブケース19の内側フランジ部19Aとの間には、油路となる切欠き22Aが形成されたスペーサ22が挟持されている。なお、本実施の形態では切欠き22Aが形成されるスペーサ22を設ける構成としたが、スペーサ22に替えて内側フランジ部19Aに油路を形成するための切欠きを放射状の形成するようにしてもよい。このように構成することにより1部品減らすことができる。
バルブ部材21には、径方向の中心に位置して軸方向に延びる中心孔21Aが設けられている。また、バルブ部材21には、中心孔21Aの周囲に周方向に離間して複数の油路21Bが設けられ、これら各油路21Bは、その一方側(図1および図2の左側)が筒形ホルダ20の油路20B側に常時連通している。また、バルブ部材21の他方側(図1および図2の右側)の端面には、油路21Bの他側開口を取囲むように形成された環状凹部21Cと、該環状凹部21Cの径方向外側に位置して後述するメインディスクバルブ23が離着座する環状弁座21Dとが設けられている。ここで、バルブ部材21の油路21Bは、環状油室D側(となる油路20B)とリザーバ室A側(となる油室19C)との間でメインディスクバルブ23を介して油液を流通させるものである。
メインバルブを構成するメインディスクバルブ23は、内周側がバルブ部材21と後述するパイロットピン24の大径部24Aとの間に挟持され、外周側がバルブ部材21の環状弁座21Dに着座している。メインディスクバルブ23の背面側の外周部には、弾性シール部材23Aが固着されている。メインディスクバルブ23は、バルブ部材21の油路21B側(環状油室D側)の圧力を受けて環状弁座21Dから離座することにより開弁し、バルブ部材21の油路21B(環状油室D側)を油室19C(リザーバ室A側)に連通させる。
パイロットピン24は、軸方向中間部に大径部24Aを有すると共に径方向中央部に軸方向に延びる中心孔24Bを有する段付円筒状に形成され、中心孔24Bの一端部には、オリフィス24Cが形成されている。パイロットピン24は、一端側(図1および図2の左端側)がバルブ部材21の中心孔21Aに圧入され、大径部24Aとバルブ部材21との間でメインディスクバルブ23を挟持している。パイロットピン24の他端側(図1および図2の右端側)は、後述するパイロットボディ26の中心孔26Cに嵌合している。この状態で、パイロットボディ26の中心孔26Cとパイロットピン24の他端側との間には、軸方向に延びる油路25が形成され、該油路25を通じてメインディスクバルブ23とパイロットボディ26との間に形成される背圧室27に接続されている。言い換えると、パイロットピン24の他端側の側面には、軸方向に延びる油路25が周方向に複数設けられ、その他の周方向位置は、パイロットボディ26の中心孔26Cに圧入されている。
パイロットボディ26は、内側に段付き穴が形成された円筒部26Aと該円筒部26Aを塞ぐ底部26Bとを有する略有底筒状に形成され、底部26Bの中央部には、パイロットピン24の他端側が嵌合される中心孔26Cが設けられている。パイロットボディ26の底部26Bの一端側(図1および図2の左端側)には、外径側に位置して全周にわたってバルブ部材21側に突出する突出筒部26Dが設けられている。この突出筒部26Dの内周面には、メインディスクバルブ23の弾性シール部材23Aが液密に嵌合し、メインディスクバルブ23とパイロットボディ26との間に背圧室27を形成している。背圧室27の内圧は、メインディスクバルブ23に対して閉弁方向、即ち、メインディスクバルブ23をバルブ部材21の環状弁座21Dに着座させる方向に作用する。
パイロットボディ26の底部26Bの他端側(図1および図2の右端側)には、後述するパイロット弁部材32が離着座する弁座部26Eが、中心孔26Cを囲むように設けられている。また、パイロットボディ26の円筒部26Aの内側には、パイロット弁部材32をパイロットボディ26の弁座部26Eからから離れる方向に付勢するリターンばね28、後述するソレノイド33が非通電状態のとき(パイロット弁部材32が弁座部26Eから最も離れたとき)のフェールセーフバルブを構成するディスクバルブ29、中心側に油路30Aが形成された保持プレート30等が配設されている。
パイロットボディ26の円筒部26Aの開口端には、該円筒部26Aの内側にリターンばね28、ディスクバルブ29、保持プレート30等を配設した状態で、キャップ31が嵌合固定される。このキャップ31には、保持プレート30の油路30Aを通じてソレノイド33側に流れた油液を油室19C(リザーバ室A側)に流通させる流路となる切欠き31Aが例えば円周方向4箇所位置に形成されている。
パイロットバルブを構成するパイロット弁部材32は、略円筒状に形成され、パイロットボディ26の弁座部26Eに離着座する先端部は、先細りのテーパ状となっている。パイロット弁部材32の内側には、後述するソレノイド33の作動ピン44が嵌合固定され、該ソレノイド33への通電に応じて、パイロット弁部材32の開弁圧が調節される構成となっている。パイロット弁部材32の基端側には、ばね受となるフランジ部32Aが全周にわたって形成されている。フランジ部32Aは、ソレノイド33が非通電状態のとき、即ち、図2に示すようにパイロット弁部材32が弁座部26Eから最も離れたときに、ディスクバルブ29と当接することにより、フェールセーフバルブを構成するものである。
次に、減衰力調整バルブ18と共に減衰力調整装置17を構成するソレノイド33に就いて説明する。
減衰力調整装置17の減衰力可変アクチュエータとして用いられるソレノイド33は、モールドコイル34と、ステータコア36と、可動鉄心43と、作動ピン44と、環状部材45と、カバー部材48とにより大略構成されている。
モールドコイル34は、コイル34Aを熱硬化性樹脂等の樹脂部材34Bで一体的に覆う(モールド成形する)ことにより略円筒状に形成され、その周方向の一部は、径方向外側に突出してケーブル34Cが接続されたケーブル取出部34Dとなっている。コイル34Aは、ケーブル34Cを通じた電力の供給(通電)により、磁力を発生するものである。樹脂部材34Bのうち後述のカバー部材48と対向する側面には、シールリング35が装着されるシール溝34Eが全周にわたって形成され、シールリング35によりモールドコイル34とカバー部材48とが液密に封止されている。これにより、雨や泥などがカバー部材48とモールドコイル34の間を介して減衰力調整バルブ18内に侵入することを防止することができる。
ステータコア36は、コイル34Aの内周側に配置され、磁性体により有底筒状に形成されている。具体的には、ステータコア36は、内側に段付穴を有する円筒状の筒部37Aと該筒部37Aの一端側(図1ないし図3の右端側)を閉塞する底部37Bとを有する有底筒状のステータコア本体37と、該ステータコア本体37の筒部37Aの他端側(図1ないし図3の左端側)に嵌着されるアンカ部材38とにより大略構成されている。ステータコア本体37とアンカ部材38は、別体の部品として形成されている。
ステータコア本体37の筒部37Aには、その他端側に位置して径方向外側に全周にわたって突出するフランジ部37Cが設けられている。フランジ部37Cの外周側は、後述するカバー部材48の筒部48A(小径筒部48A2)と当接している。また、フランジ部37Cのうちモールドコイル34と対面する側面には、シールリング39が装着されるシール溝37C1が全周にわたって形成され、シールリング39によりモールドコイル34とフランジ部37Cとが液密に封止されている。これにより、雨や泥などがフランジ部37Cとモールドコイル34との間を介して減衰力調整バルブ18内に侵入することを防止することができる。また、フランジ部37Cの外径側には、減衰力調整バルブ18側に向けて突出する筒状の嵌合部37Dが設けられている。
嵌合部37Dの内径側には、減衰力調整バルブ18のキャップ31が嵌合され、嵌合部37Dの外径側には、減衰力調整バルブ18のバルブケース19が嵌合されている。ここで、嵌合部37Dの外周面には、減衰力調整バルブ18側から順にシール溝37Eと係合溝37Fがそれぞれ全周にわたって設けられている。シール溝37Eには、シールリング40が装着され、該シールリング40によりステータコア36と減衰力調整バルブ18のバルブケース19との間が油密に封止されている。係合溝37Fには、バルブケース19の開口端縁がかしめ付けられている。
ステータコア本体37の筒部37Aのうち後述の可動鉄心43と径方向に対向する部位には、軸方向部分的に磁路断面積を低減する薄肉部37Gが設けられている。この薄肉部37Gは、ステータコア本体37の筒部37Aの内周側に環状の凹部37Hを設けることにより形成している。即ち、ステータコア本体37の筒部37Aは、後述の環状部材45が嵌合される嵌合筒部37A1と該嵌合筒部37A1よりも外径寸法が大きい大径筒部37A2とを段差面37A3を介して連続する構成としている。
そして、ステータコア本体37の筒部37Aの内周側には、開口側から順に、アンカ部材38のフランジ部38Bが位置決めされる環状の位置決め凹部37Jと、アンカ部材38の筒部38Aが嵌合される環状の凹部37Hと、後述の可動鉄心43に径方向の微小な隙間を介して対向する対向面部37Kと、後述の作動ピン44の一端側を支持するブッシュ41が嵌着されるブッシュ取付部37Lが設けられている。この場合、筒部37Aの内側に凹部37Hを、筒部37Aの軸方向に関し、嵌合筒部37A1と径方向に重なる部位まで形成することにより、嵌合筒部37A1の基端側を径方向の厚さが薄くなった薄肉部37Gとしている。コイル34Aが発生した磁界は、薄肉部37Gの磁気抵抗が大きいことで飽和し、後述の可動鉄心43とアンカ部材38の間に誘導されてソレノイド推力として機能する。
ステータコア本体37の底部37Bは、筒部37Aとの連続部から先細り形状となり、その端面は、後述する環状部材45の底部47Bに対し隙間S(図3参照)をもって対向している。これにより、後述するカバー部材48から環状部材45の底部47Bを介してステータコア本体37に軸方向の力が直接加わることを抑制している。
ステータコア本体37と共にステータコア36を構成するアンカ部材38は、コイル34Aにより磁力を発生したときに後述の可動鉄心43を吸着するもの(固定鉄心)で、内側に作動ピン44が挿通される筒部38Aと、該筒部38Aの外周面から径方向に突出するフランジ部38Bとを有する段付き円筒状に形成されている。筒部38Aうち可動鉄心43と対向する端面には、該可動鉄心43が吸着したときに該可動鉄心43が入り込む穴部38Cが設けられている。また、アンカ部材38の内側には、後述の作動ピン44を支持するブッシュ42が嵌着されるブッシュ取付部38Dが設けられている。
この場合、ステータコア本体37とアンカ部材38は機械加工により高精度に作製(成形)することができるため、これらステータコア本体37とアンカ部材38とにそれぞれ装着される各ブッシュ41,42の位置決めを高精度で行うことができる。このため、作動ピン44に一体的に固定された可動鉄心43は、ステータコア36に対する同軸度を確保することができ、可動鉄心43に発生する磁気による横力を低減することができる。この結果、各ブッシュ41,42と作動ピン44との摩擦力を低減することができ、可動鉄心43の可動効率(機械効率)の向上、ヒステリシス特性の向上を図ることができる。
プランジャと呼ばれる鉄心としての可動鉄心43は、ステータコア36の内側に配置され、軸方向へ移動可能に設けられている。このために、可動鉄心43は、後述の作動ピン44に一体的に固定され、該作動ピン44は、ステータコア本体37とアンカ部材38とにそれぞれブッシュ41,42を介して支持されている。可動鉄心43は、鉄系の磁性体により略円筒状に形成され、コイル34Aにより磁力を発生したときに、ステータコア36のアンカ部材38に吸着されることにより推力を発生するものである。可動鉄心43には、可動鉄心43の変位に対してステータコア36内の油液が過度の抵抗とならないように連通路43Aが形成されている。
可動鉄心43の推力を伝達する部材である作動ピン44は、その中間部に可動鉄心43が一体的に固定(サブアッセンブリ)されている。作動ピン44の軸方向の両側は、ステータコア36にブッシュ41,42を介して軸方向の変位を可能に支持されている。作動ピン44の一端側(図1ないし図3の左側)は、ステータコア36から突出すると共に、その突出端には、減衰力調整バルブ18のパイロット弁部材32が固定されている。従って、パイロット弁部材32は、可動鉄心43と作動ピン44と共に一体的に移動(変位)する。換言すれば、パイロット弁部材32の開弁圧は、コイル34Aへの通電に基づく可動鉄心43の推力に対応したものとなる。
環状部材45は、ステータコア本体37の筒部37A(嵌合筒部37A1)に嵌着されている。環状部材45は、ステータコア36(ステータコア本体37)の薄肉部37Gに外周側から当接すると共に、その一端(図1ないし図3の左端)がステータコア36の段差面37A3に当接し、その他端(図1ないし図3の右端)が後述のカバー部材48に当接するものである。そして、環状部材45のうちステータコア36の薄肉部37Gと当接する部分は、非磁性体としている。
このために、環状部材45は、全体として有底であり、非磁性環状部材としてのリング部材46と、強磁性環状部材としてのキャップ部材47との2部材から構成している。即ち、環状部材45は、ステータコア36の薄肉部37Gと径方向に当接する部分となる非磁性体とした筒状のリング部材46と、当該当接する部分より他側となる強磁性体とした有底筒状のキャップ部材47とにより構成されている。
環状部材45は、ステータコア36、特に薄肉部37Gの保護(補強)を図る機能を有している。即ち、ステータコア36の内部には、減衰力調整バルブ18の油圧が作用し、これにより、薄肉部37Gには径方向に大きな圧力(内圧)が加わる。環状部材45は、リング部材46が薄肉部37Gの外周側に当接することにより、薄肉部37Gが圧力で損傷するのを防止するものである。この場合、リング部材46は非磁性体により形成することにより、薄肉部37Gでの磁束の飽和を確保しつつ薄肉部37Gの保護を図っている。
一方、キャップ部材47は強磁性体により形成することにより、ステータコア36のうち薄肉部37Gから外れた部分の磁気抵抗が増加することを抑制している。即ち、キャップ部材47は、筒部47Aと底部47Bとを有する有底筒状に形成され、このうちの筒部47Aをステータコア本体37の筒部37A(嵌合筒部37A1)に、例えば軽圧入により嵌合している。これにより、キャップ部材47の筒部47Aを、磁束の受け渡しの抵抗にならない十分な接触面積をもってステータコア本体37と当接させている。そして、キャップ部材47の底部47Bの外側(図1ないし図3の右側)、即ち、底部47Bのうち後述するカバー部材48と対面する外側面は、該カバー部材48と当接している。これにより、カバー部材48は、キャップ部材47と共にリング部材46が軸方向に変位しないように押さえ付けると共に、カバー部材48とキャップ部材47との間で磁束の受け渡しを効率よく行うことができる構成となっている。
一方、キャップ部材47の底部47Bの内側(図1ないし図3の左側)とステータコア36との間には、隙間S(図3参照)を形成している。即ち、キャップ部材47の底部47Bのうちステータコア本体37の底部37Bと対面する内側面は、該ステータコア本体37の底部37Bに対し、ある程度の磁束の受け渡しが可能な微小な隙間(ギャップ)Sを持って対向させている。これにより、カバー部材48からキャップ部材47の底部47Bを介してステータコア36に(軸方向の)力が直接加わることを抑制している。
カバー部材48は、コイル34Aの外周を覆うものである。カバー部材48は、磁性体を用いたヨークとして形成され、モールドコイル34(コイル34A)の外周側で磁気回路(磁気経路)を形成するものである。ここで、カバー部材48は、略有底筒状に形成されたもので、大径筒部48A1と小径筒部48A2とを有する段付き円筒状の筒部48Aと、該筒部48Aの一端側を閉塞する底部48Bとにより大略構成されている。筒部48Aの周方向の一部でモールドコイル34のケーブル取出部34Dと対応する部位には、開口端側から底部48Bまで達する切欠き48Cが形成されている。
カバー部材48の筒部48A(小径筒部48A2)の内周面は、モールドコイル34の外周面に対して隙間を持って対向している。これにより、カバー部材48に加わる径方向の力がモールドコイル34に直接加わらないように構成している。一方、ステータコア本体37のフランジ部37Cの外周面は、カバー部材48の筒部48A(小径筒部48A2)の内周面に対して例えば軽圧入により当接し、カバー部材48とステータコア36との間で磁束の受け渡しを行うことができるように構成している。
カバー部材48の筒部48A(大径筒部48A1)の開口端には、径方向内側に塑性変形させたかしめ部48Dが設けられている。即ち、筒部48Aの開口端は、減衰力調整バルブ18のバルブケース19の全周溝19Bに係合リング49を装着した状態でバルブケース19の外周面にかしめ付けられている。これにより、減衰力調整バルブ18とソレノイド33とを一体的に結合する構成となっている。
カバー部材48の底部48Bには、キャップ部材47の底部47Bと対応する位置に、環状部材45(キャップ部材47)の筒部47Aおよび底部47Bの外径寸法よりも大きい内径寸法を有する当接凹部48B1が設けられている。そして、カバー部材48の底部48Bは、当接凹部48B1の位置でキャップ部材47の底部47Bと軸方向に当接し、カバー部材48とキャップ部材47との間で磁束の受け渡しを行うことができるように構成している。この場合、キャップ部材47の底部47Bとステータコア本体37の底部37Bとの間に隙間Sを形成することにより、ステータコア36の底部37Bとカバー部材48との間に軸方向の隙間Sが形成される構成となっている。これにより、カバー部材48からステータコア36に(軸方向の)力が直接加わることを抑制することができる。これにより、ステータコア36の薄肉部37Gに過大な力が加わることを抑制することができ、ソレノイド33の耐圧性、耐衝撃性を向上することができる。
コイル34Aにより発生した磁束は、ステータコア本体37のフランジ部37C、該フランジ部37Cとカバー部材48の筒部48A(小径筒部48A2)との当接部、カバー部材48、カバー部材48の底部48Bとキャップ部材47の底部47Bとの当接部、キャップ部材47、キャップ部材47の筒部47Aとステータコア36の筒部37A(嵌合筒部37A1)との当接部、筒部37Aから可動鉄心43、可動鉄心43からアンカ部材38、アンカ部材38とステータコア本体37の嵌合部(当接部)の順に周る。この場合、摺動抵抗を嫌う可動鉄心43とステータコア36との間の磁束の受け渡し以外は、全て当接部(面接触した部位)により磁束の受け渡しを行うことができ、高い磁気効率を確保することができる。
また、カバー部材48に径方向(図1〜図3の上,下方向)の外力が加わった場合は、その力(荷重は)、カバー部材48の開口端側のかしめ部48Dないしその近傍、カバー部材48と当接するステータコア36のフランジ部37Cおよび嵌合部37Dを介して強固なバルブケース19に伝達される。また、モールドコイル34の外周面は、カバー部材48の筒部48A(小径筒部48A2)の内周面に対して隙間を介して対向しているため、径方向の外力がモールドコイル34を介してステータコア36の薄肉部37Gに曲げモーメントとして加わることを抑制することができる。これにより、カバー部材48に加わる径方向の外力によって薄肉部37Gが損傷することを抑制することができる。
一方、カバー部材48に軸方向(図1〜3の左,右方向)、特にカバー部材48の底部48B側から減衰力調整バルブ18に向かう方向(左方向)の外力が加わった場合は、その力(荷重)は、カバー部材48と当接している環状部材45のキャップ部材47からリング部材46、ステータコア36の段差面37A3を介して、ステータコア36の大径筒部37A2側に伝達される。即ち、軸方向の外力は、薄肉部37Gを経由せずに環状部材45を介してステータコア36のフランジ部37C側に伝達される。この場合、キャップ部材47の底部47Bとステータコア36の底部37Bは当接していない(隙間Sを介して対向している)ため、薄肉部37Gに軸方向の外力が加わることを抑制することができる。これにより、カバー部材48に加わる径方向の外力だけでなく、軸方向の外力からも、薄肉部37Gを損傷しにくくすることができる。
さらに、カバー部材48によりモールドコイル34およびステータコア36を全体にわたって覆うと共に、モールドコイル34とカバー部材48との間を、シールリング40によりシールしている。このため、ソレノイド33内に流入する油液に対するシール性を十分に確保することができる。
本実施の形態によるソレノイド33および該ソレノイド33が組込まれた油圧緩衝器1は、上述の如き構成を有するもので、次にその作動について説明する。
まず、油圧緩衝器1を自動車等の車両に実装するときには、例えば、ピストンロッド8の上端側が車両の車体側に取付けられ、ボトムキャップ3に設けられた取付アイ3A側が車輪側に取付けられる。また、ソレノイド33のケーブル34Cは、車両のコントローラ等に接続される。
車両の走行時には、路面の凹凸等により、上,下方向の振動が発生すると、ピストンロッド8が外筒2から伸長、縮小するように変位し、減衰力調整装置17等により減衰力を発生することができ、車両の振動を緩衝することができる。このとき、コントローラによりソレノイド33のコイル34Aへの電流値を制御し、パイロット弁部材32の開弁圧を調整することにより、油圧緩衝器1の発生減衰力を可変に調整することができる。
例えば、ピストンロッド8の伸び行程時には、内筒4内のピストン5の移動によってピストン5の縮み側逆止弁7が閉じる。ピストン5のディスクバルブ6の開弁前には、ロッド側油室Bの油液が加圧され、内筒4の油穴4A、環状油室D、中間筒12の接続口12Cを通じて減衰力調整バルブ18の筒形ホルダ20の油路20Bに流入する。このとき、ピストン5が移動した分の油液は、リザーバ室Aからボトムバルブ13の伸び側逆止弁16を開いてボトム側油室Cに流入する。なお、ロッド側油室Bの圧力がディスクバルブ6の開弁圧力に達すると、該ディスクバルブ6が開き、ロッド側油室Bの圧力をボトム側油室Cにリリーフする。
減衰力調整装置17では、筒形ホルダ20の油路20Bに流入した油液は、メインディスクバルブ23の開弁前(ピストン速度低速域)においては、図2に矢印Xで示すように、バルブ部材21の中心孔21A、パイロットピン24の中心孔24B、パイロットボディ26の中心孔26Cを通り、パイロット弁部材32を押し開き、パイロットボディ26の内側に流入する。そして、パイロットボディ26の内側に流入した油液は、パイロット弁部材32のフランジ部32Aとディスクバルブ29との間、保持プレート30の油路30A、キャップ31の切欠き31A、バルブケース19の油室19Cを通ってリザーバ室Aへ流れる。ピストン速度の上昇に伴って、筒形ホルダ20の油路20Bの圧力、即ち、ロッド側油室Bの圧力が、メインディスクバルブ23の開弁圧力に達すると、筒形ホルダ20の油路20Bに流入した油液は、図2に矢印Yで示すように、バルブ部材21の油路21Bを通り、メインディスクバルブ23を押し開き、バルブケース19の油室19Cを通ってリザーバ室Aへ流れる。
一方、ピストンロッド8の縮み行程時には、内筒4内のピストン5の移動によってピストン5の縮み側逆止弁7が開き、ボトムバルブ13の伸び側逆止弁16が閉じる。ボトムバルブ13(ディスクバルブ15)の開弁前には、ボトム側油室Cの油液がロッド側油室Bに流入する。これと共に、ピストンロッド8が内筒4内に浸入した分に相当する油液が、ロッド側油室Bから減衰力調整バルブ18を介してリザーバ室Aに、伸び行程時と同様の経路で流れる。なお、ボトム側油室C内の圧力がボトムバルブ13(ディスクバルブ15)の開弁圧力に達すると、ボトムバルブ13(ディスクバルブ15)が開き、ボトム側油室Cの圧力をリザーバ室Aにリリーフする。
これにより、ピストンロッド8の伸び行程時と縮み行程時に、減衰力調整バルブ18のメインディスクバルブ23の開弁前は、パイロットピン24のオリフィス24Cとパイロット弁部材32の開弁圧力とによって減衰力が発生し、メインディスクバルブ23の開弁後は、該メインディスクバルブ23の開度に応じて減衰力が発生する。この場合、ソレノイド33のコイル34Aへの通電によってパイロット弁部材32の開弁圧力を調整することにより、ピストン速度に拘わらず、減衰力を直接制御することができる。
具体的には、コイル34Aへの通電電流を小さくして可動鉄心43の推力を小さくすると、パイロット弁部材32の開弁圧力が低下し、ソフト側の減衰力が発生する。一方、コイル34Aへの通電電流を大きくして可動鉄心43の推力を大きくすると、パイロット弁部材32の開弁圧力が上昇し、ハード側の減衰力が発生する。このとき、パイロット弁部材32の開弁圧力によって、その上流側の油路25を介して連通する背圧室27の内圧が変化する。これにより、パイロット弁部材32の開弁圧力を制御することにより、メインディスクバルブ23の開弁圧力を同時に調整することができ、減衰力特性の調整範囲を広くすることができる。
なお、コイル34Aの断線等により可動鉄心43の推力が失われた場合には、パイロット弁部材32がリターンばね28により後退(弁座部26Eから離れる方向に変位)し、パイロット弁部材32のフランジ部32Aとディスクバルブ29とが当接する。この状態では、ディスクバルブ29の開弁圧によって減衰力を発生することができ、コイルの断線等の不調時にも、必要な減衰力を得ることができる。
ところで、特許文献1によるソレノイドは、ステータコアを構成するベースとスリーブとの間で非磁性体のギャップ(ギャップ埋設体)を挟み込むことにより、ステータコアと鉄心(プランジャ)との間で磁束の受け渡しを行うように構成している。この場合、鉄心(プランジャ)が一体的に固定された作動ピン(シャフト)は、その中間部がベースに支持されると共にその一端部がスリーブに支持される構成となっている。
ここで、ステータコアを構成するベースとスリーブは、非磁性体のギャップ挟んで軸方向に離間して配置されているため、作動ピン(シャフト)のステータコアに対する同軸度を確保しにくくなる。これにより、鉄心(プランジャ)が軸方向に変位するときの摩擦の増大、ヒステリシスの増大を招く虞がある。
一方、特許文献2によるソレノイドは、ステータコア(コイルボビン)の軸方向の一部に磁路断面積を低減する薄肉部を設けることにより、ステータコアと鉄心(プランジャ)との間で磁束の受け渡しを行うように構成している。この場合、磁気効率を上げるべく薄肉部の厚みを薄くする程、該薄肉部の強度を確保しにくくなり、薄肉部の強度を確保すべく薄肉部の厚みを厚くする程、磁気効率が低下するという問題がある。
これに対し、本実施の形態では、ステータコア36の薄肉部37Gの外周側に該薄肉部37Gと当接する状態で環状部材45を設ける構成としているので、ステータコア36の薄肉部37Gの厚さ方向(径方向)に加わる力を環状部材45(特にリング部材46)により受けることができる。また、ステータコア36の底部37Bとカバー部材48の底部48Bとの間(より具体的には、ステータコア36の底部37Bと環状部材45の底部47Bとの間)には、軸方向に隙間Sを形成する構成としているので、カバー部材48から(環状部材45の底部47Bを介して)ステータコア36の底部37Bに(軸方向の)力が直接加わることを抑制することができる。
これにより、ステータコア36の薄肉部37Gに過大な力が加わることを抑制することができ、ソレノイド33の耐圧性、耐衝撃性を向上することができる。この結果、大きな力、例えば油液による圧力(内圧)や、飛び石、縁石等との衝突による力(衝突力)が加わる環境でソレノイド33を用いる場合でも、ステータコア36の薄肉部37Gの厚さを薄くすることができ、その分、薄肉部37Gの磁気抵抗を大きくすることができる。これにより、磁気効率を向上することができる。
この場合、本実施の形態によれば、有底筒状に形成された環状部材45の底部47Bの外側をカバー部材48と当接させると共に、該底部47Bの内側とステータコア36との間に隙間Sを形成する構成としている。これにより、環状部材45の底部47Bとカバー部材48との間で磁束の受け渡しを効率よく行うことができると共に、カバー部材48から環状部材45の底部47Bを介してステータコア36に(軸方向の)力が直接加わることを抑制することができる。このため、ステータコア36の薄肉部37Gに過大な力が加わることの抑制と磁気効率の向上とを高次元で両立することができる。
本実施の形態によれば、ステータコア36の薄肉部37Gを、該ステータコア36の内周側に環状の凹部37Hを設けることにより形成しているので、薄肉部37Gの外周側を凹凸のない円滑な外周面にすることができ、該薄肉部37Gの外周側に環状部材45の内周面を安定して当接させることができる。これにより、薄肉部37Gの厚さ方向(径方向)に加わる力、例えば油液による圧力(内圧)を、薄肉部37Gを介して環状部材45により安定して受けることができる。
本実施の形態によれば、環状部材45のうちステータコア36の薄肉部37Gと当接する部分、即ち、環状部材45を構成するリング部材46を、非磁性体としているので、薄肉部37Gの外周側で環状部材45による磁路が形成されることを抑制することができ、磁気効率の向上を図ることができる。
本実施の形態によれば、環状部材45を、非磁性環状部材としてのリング部材46と強磁性環状部材としてのキャップ部材47との2部材から構成している。このため、リング部材46により薄肉部37Gの外周側で磁路が形成されることを抑制することができると共に、キャップ部材47を介してカバー部材48とステータコア36との磁束の受け渡しを効率よく行うことができる。これにより、磁気効率のさらなる向上を図ることができる。
本実施の形態によれば、カバー部材48を、磁性体を用いたヨークにより構成しているので、カバー部材48と環状部材45との間で磁束の受け渡しを効率よく行うことができる。これにより、この面からも、磁気効率の向上を図ることができる。
次に、図4は本発明の第2の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、環状部材を構成する強磁性環状部材を軸方向両端が開口する筒状部材により構成したことにある。なお、本実施の形態では、上述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
環状部材51は、非磁性環状部材としての第1のリング部材52と、強磁性環状部材としての第2のリング部材53との2部材から構成している。ここで、第2のリング部材53は、上述した第1の実施の形態のキャップ部材47に代えて本実施の形態で用いるもので、軸方向両端が開口する円筒状形成されている。即ち、本実施の形態では、有底円筒状に形成されたキャップ部材47に代えて、有底でない円筒状に形成された第2のリング部材53を用いる構成としている。この場合、カバー部材48の底部48Bには、第1の実施の形態で設けられていた当接凹部48B1は設けていない(平坦面となっている)。
本実施の形態では、第2のリング部材53の開口端縁をカバー部材48の底部48Bに当接させることにより、カバー部材48と第2のリング部材53との間で磁束の受け渡しを行うことができるように構成している。この場合、第2のリング部材53の開口端縁の位置を、ステータコア本体37の底部37Bよりもカバー部材48の底部48B側(図4の右側)に突出する位置に規制することにより、ステータコア36の底部37Bとカバー部材48との間に軸方向の隙間Sを形成している。これにより、カバー部材48からステータコア36に(軸方向の)力が底部37Bに直接加わることを抑制することができる。
かくして、このように構成される第2の実施の形態においても、上述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。即ち、本実施の形態の場合も、ステータコア36の薄肉部37Gに過大な力が加わることを抑制することができ、その分、ステータコア36の薄肉部37Gの厚さを薄くすることができる。これにより、磁気効率を向上することができる。
次に、図5は本発明の第3の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、環状部材を構成する強磁性環状部材を筒状部材により構成すると共に、カバー部材を内側部材と外側部材との2部材により構成したことにある。なお、本実施の形態では、上述した第1の実施の形態および第2の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
環状部材61は、非磁性環状部材としての第1のリング部材62と、強磁性環状部材としての第2のリング部材63との2部材から構成している。ここで、第2のリング部材63は、上述した第2の実施の形態で用いた第2のリング部材53と同様に、軸方向両端が開口する円筒状形成されている。この場合、本実施の形態では、第2のリング部材53の開口端縁を、後述するカバー部材64を構成する内側部材65の底部65Bから外側(図5の右側)に突出する位置まで延ばし、後述する外側部材66の底部66Bに当接する構成となっている。
カバー部材64は、コイル34Aの外周を覆うもので、磁性体を用いたヨークとして形成され磁気経路を構成する内側部材65と、該内側部材65を覆うように設けられ合成樹脂等により形成されたプロテクタの如き外側部材66との2部材により構成している。内側部材65は、単一円筒状に形成されモールドコイル34のケーブル取出部34Dと対応する位置に切欠き65A1が設けられた筒部65Aと、該筒部65Aの一端側を閉塞する底部65Bとにより大略構成されている。
ここで、内側部材65の底部65Bには、第2のリング部材63と嵌合する嵌合孔65B1が設けられ、第2のリング部材63を嵌合孔65B1に例えば軽圧入により嵌合させている。これにより、内側部材65と第2のリング部材63とが径方向に当接し、内側部材65と第2のリング部材63との間で磁束の受け渡しを行うことができるように構成している。また、内側部材65の筒部65Aには、ステータコア本体37のフランジ部37Cが、例えば軽圧入により当接し、内側部材65とステータコア36との間で磁束の受け渡しを行うことができるように構成している。これにより、内側部材65は、モールドコイル34(コイル34A)の外周側で磁気回路(磁気経路)を構成している。
内側部材65と共にカバー部材64を構成する外側部材66は、単一円筒状に形成されモールドコイル34のケーブル取出部34Dと対応する位置に切欠き66A1が設けられた筒部66Aと、該筒部66Aの一端側を閉塞する底部66Bとにより大略構成されている。外側部材66の筒部66Aの内周面は、内側部材65の外周面に対して隙間を持って対向している。これにより、外側部材66に加わった径方向の力が、内側部材65に直接加わらないように構成している。外側部材66の筒部66Aの開口端には、径方向内側に突出する突起状の係合部66A2が設けられている。即ち、外側部材66の係合部66A2を、減衰力調整バルブ18のバルブケース19の全周溝19Bに装着した係合リング49に係合させることにより、減衰力調整バルブ18とソレノイド33とを一体的に結合する構成となっている。
外側部材66の底部66Bは、第2のリング部材63の開口端縁と軸方向に当接している。これにより、外側部材66は、第2のリング部材63および第1のリング部材62が軸方向に変位しないように押さえ付けている。また、外側部材66の底部66Bとステータコア36の底部37Bとの間には、軸方向の隙間Sが形成されている。これにより、カバー部材48の外側部材66からステータコア36に(軸方向の)力が底部37Bに直接加わることを抑制することができる。
かくして、このように構成される第3の実施の形態においても、上述した第1の実施の形態および第2の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。即ち、本実施の形態の場合も、ステータコア36の薄肉部37Gに過大な力が加わることを抑制することができ、その分、ステータコア36の薄肉部37Gの厚さを薄くすることができる。これにより、磁気効率を向上することができる。
次に、図6は本発明の第4の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、環状部材を1部材、即ち、非磁性環状部材のみにより構成したことにある。なお、本実施の形態では、上述した第1の実施の形態ないし第3の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
環状部材71は、全体が有底筒状で非磁性体とした非磁性環状部材の1部材により構成している。即ち、環状部材71は、非磁性体により有底円筒状に形成され、円筒状の筒部71Aと、該筒部71Aの一端側を閉塞する底部71Bとにより構成されている。環状部材71は、ステータコア本体37の筒部37Aに嵌着され、筒部71Aの開口端側がステータコア36(ステータコア本体37)の薄肉部37Gに外周側から当接すると共に、筒部71Aの開口端縁がステータコア36の段差面37A3に当接し、底部71Bがカバー部材48の底部48Bに当接する。
このように構成される第4の実施の形態においても、上述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。この場合、環状部材71を1部材により構成しているため、部品点数の低減によるコストの低減を図ることができる。なお、環状部材71全体を非磁性体で形成する場合、環状部材71がカバー部材48とステータコア36との磁束の受け渡しの抵抗となり、上述した第1の実施の形態ないし第3の実施の形態と比較して磁気効率が低下する虞がある。このため、第4の実施の形態の構成は、例えば磁気効率の低下とコストの低減とを勘案し、磁気効率の低下を許容できる範囲で採用することができる。
次に、図7は本発明の第5の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、ステータコアを、アンカ部材(固定鉄心)と一体となったステータコア本体と、該ステータコア本体に取付けられる蓋体とにより構成したことにある。なお、本実施の形態では、上述した第1の実施の形態ないし第4の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
ステータコア81は、コイル34Aの内周側に配置され、磁性体により有底筒状に形成されている。具体的には、ステータコア81は、筒部82Aとフランジ部82Bと嵌合部82Cとを有するステータコア本体82と、該ステータコア本体82の筒部82Aに嵌着される蓋体83とにより大略構成されている。ステータコア本体82と蓋体83は、別体の部材として形成されている。
ステータコア本体82のフランジ部82Bのうちモールドコイル34と対面する側面には、シール溝82B1が全周にわたって形成されている。ステータコア本体の嵌合部82Cの外周面には、シール溝82C1と係合溝82C2がそれぞれ設けられている。ステータコア本体82の内側には、ブッシュ取付部82Dが設けられている。
ステータコア本体82の筒部82Aのうち可動鉄心43と径方向に対向する部位には薄肉部82Eが設けられている。この薄肉部82Eは、ステータコア本体82の筒部82Aの内周側に環状の凹部82Fを設けることにより形成している。また、筒部82Aの内周側で凹部82Fよりも減衰力調整バルブ18側(図7の左側)は、コイル34Aにより磁力を発生したときに可動鉄心43が入り込む穴部82Gとなっている。これにより、ステータコア本体82側にアンカ部材(固定鉄心)が一体的に形成される構成となっている。
ステータコア本体82と共にステータコア81を構成する蓋体83は、有底筒状に形成され、ステータコア本体82の筒部82Aに嵌合固定されている。蓋体83は、略円筒状に形成され内側にブッシュ取付部83A1が設けられた筒部83Aと、該筒部83Aの一端側を閉塞する底部83Bとにより大略構成されている。本実施の形態の場合は、蓋体83の底部83Bがステータコア81の底部に対応するもので、この蓋体83の底部83Bを、環状部材45の底部47Bに対し隙間Sをもって対向させている。
これにより、カバー部材48から環状部材45を介してステータコア81の蓋体83に軸方向の力が直接加わることを抑制している。また、蓋体83の底部83Bの外径側は、筒部83Aよりも外径側に突出するフランジ部83Cとなっている。このフランジ部83Cは、蓋体83をステータコア本体82の筒部82Aに嵌合した状態で該筒部82Aの開口端縁と当接することにより、蓋体83の位置決めを図るものである。
このように構成される第5の実施の形態においても、上述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。この場合、ステータコア本体82と蓋体83は機械加工により高精度に成形(加工)することができるため、これらステータコア本体82と蓋体83とにそれぞれ装着される各ブッシュ41,42の位置決めを高精度で行うことができる。このため、本実施の形態の場合も、上述した各実施の形態と同様に、各ブッシュ41,42と作動ピン44との摩擦力を低減することができ、可動鉄心43の可動効率(機械効率)の向上、ヒステリシス特性の向上を図ることができる。
なお、上述した第1の実施の形態では、環状部材45のうちステータコア36の薄肉部37Gと当接する部分の全部、即ち、リング部材46を非磁性体により構成した場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、リング部材の軸方向寸法を薄肉部の寸法よりも小さく(短く)する等により、ステータコアの薄肉部と当接する部分の少なくとも一部を非磁性体とする構成としてもよい。このことは、上述した第2の実施の形態ないし第5の実施の形態の場合も同様である。
上述した第1の実施の形態では、環状部材45を、ステータコア36の薄肉部37Gと当接する部分の全部を非磁性体とした非磁性環状部材であるリング部材46と、当該当接する部分より他端側を強磁性体とした強磁性環状部材であるキャップ部材47とにより構成した場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、リング部材の軸方向寸法を薄肉部よりも一端側に大きく(長く)する等により、非磁性環状部材を、ステータコアの薄肉部と当接する部分および当該当接する部分より一端側を非磁性体とした構成としてもよい。このことは、上述した第2の実施の形態ないし第5の実施の形態の場合も同様である。
上述した第1の実施の形態では、カバー部材48をヨーク(磁性体)により構成した場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、カバー部材を非磁性体により構成することにより、ヨークのないコイル開放型のソレノイドとしてもよい。このことは、上述した第2の実施の形態ないし第5の実施の形態の場合も同様である。
上述した第1の実施の形態では、ソレノイド33を比例ソレノイドとして構成した場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、ON/OFFソレノイドとして構成してもよい。このことは、上述した第2の実施の形態ないし第5の実施の形態の場合も同様である。
上述した各実施の形態では、ソレノイド33を油圧緩衝器1の減衰力可変アクチュエータとして用いる場合、即ち、減衰力調整バルブ18のパイロットバルブを構成するパイロット弁部材32を駆動対象物とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、油圧回路に用いるバルブ等の各種機械装置に組み込まれるアクチュエータ、即ち、直線的に駆動すべき駆動対象物を駆動する駆動装置として広く用いることができる。
以上の実施の形態によれば、ステータコアの薄肉部を保護することができ、ソレノイドの磁気効率を向上することができる。
即ち、ステータコアの薄肉部の外周側には、該薄肉部と当接する状態で環状部材を設ける構成としているので、ステータコアの薄肉部の厚さ方向(径方向)に加わる力を環状部材により受けることができる。また、ステータコアの底部とカバー部材との間には、軸方向に隙間を形成する構成としているので、カバー部材からステータコアの底部に(軸方向の)力が直接加わることを抑制することができる。これにより、ステータコアの薄肉部に過大な力が加わることを抑制することができ、ソレノイドの耐圧性、耐衝撃性を向上することができる。この結果、大きな力が加わる環境でソレノイドを用いる場合でも、ステータコアの薄肉部の厚さを薄くすることができ、その分、薄肉部の磁気抵抗を大きくすることができる。これにより、磁気効率を向上することができる。
実施の形態によれば、ステータコアの薄肉部を、該ステータコアの内周側に環状の凹部を設けることにより形成しているので、薄肉部の外周側を凹凸のない円滑な外周面にすることができ、該薄肉部の外周側に環状部材の内周面を安定して当接させることができる。これにより、薄肉部の厚さ方向(径方向)に加わる力を環状部材により安定して受けることができる。
実施の形態によれば、環状部材のうちステータコアの薄肉部と当接する部分の少なくとも一部を非磁性体としているので、薄肉部の外周側で環状部材による磁路が形成されることを抑制することができ、磁気効率の向上を図ることができる。
実施の形態によれば、環状部材を非磁性環状部材と強磁性環状部材の2部材から構成している。このため、非磁性環状部材により薄肉部の外周側で磁路が形成されることを抑制することができると共に、強磁性環状部材を介してカバー部材とステータコアとの磁束の受け渡しを効率よく行うことができる。これにより、磁気効率のさらなる向上を図ることができる。
実施の形態によれば、有底の環状部材の底部の外側をカバー部材と当接させると共に、該底部の内側とステータコアとの間に隙間を形成する構成としている。これにより、環状部材の底部とカバー部材との間で磁束の受け渡しを効率よく行うことができると共に、カバー部材から環状部材の底部を介してステータコアに(軸方向の)力が直接加わることを抑制することができる。このため、ステータコアの薄肉部に過大な力が加わることの抑制と磁気効率の向上とを高次元で両立することができる。
実施の形態によれば、カバー部材を、磁性体を用いたヨークにより構成しているので、カバー部材と環状部材との間で磁束の受け渡しを効率よく行うことができる。これにより、この面からも、磁気効率の向上を図ることができる。