以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。本発明を適用する液体吐出ヘッドの一例について図1ないし図4を参照して説明する。図1は同ヘッドの外観斜視説明図、図2は図1のX−X線に沿うノズル配列方向と直交する方向の断面説明図、図3は図2のA−A線に沿う断面説明図である。
この液体吐出ヘッドでは、ノズル板2と、流路部材である流路板3と、振動板部材4とを接合している。
ノズル板2には、液滴を吐出する複数のノズル20が千鳥状に2列配列されている。このノズル板2は、例えば、ステンレス(ここでは、SUS316)を用いてプレス加工でノズル20を形成している。
流路板3は、ノズル20に連なって通じる個別液室である圧力室21を形成している。この流路板3は、例えばステンレス(ここではSUS304)を用いてプレス加工で形成し、プレスによる変形、バリは両面研磨によりほぼ平らとなるように後処理をした。
振動板部材4は、圧力室21の一部の壁面を変位可能な振動領域4aとして形成する。また、振動板部材4には、フィルタ下共通液室25に臨み、フィルタ下共通液室25と各圧力室21とを通じる液体供給路22が形成されている。この振動板部材4は、Ni電鋳で形成している。
そして、振動板部材4の圧力室21と反対側には、ダンパ室形成部材を兼ねる第2共通液室部材5、ダンパ部材を兼ねるフィルタダンパ部材6、第1共通液室部材を兼ねるこのヘッドのフレーム部材7を順次積層して接着剤で接合している。
フレーム部材7と第2共通液室部材5とによって各圧力室21に通じる共通液室10を形成する。共通液室10は、フィルタダンパ部材6の上流側のフィルタ上共通液室26と、下流側のフィルタ下共通液室25とで形成されている。
フィルタダンパ部材6には、多数のフィルタ孔を形成したフィルタ領域29が設けられ、フィルタ上共通液室26からフィルタ下共通液室25に流れる液体から異物を捕集(ろ過)する。また、フィルタダンパ部材6のノズル配列方向の両端部には、図示しないがフィルタ上共通液室26の一部の壁面を形成する変形可能な領域(ダンパ領域)を形成している。
フレーム部材7は、フィルタ上共通液室26を形成し、外部から液体を供給するための液体供給口部37が設けられている。液体供給口部37は、フィルタ上共通液室26の長手方向の両端にそれぞれ配置されている。
振動板部材4の振動領域4aの圧力室21とは反対側に圧電アクチュエータ8を配置している。圧電アクチュエータ8は、2列のノズル列に合わせて1つのベース部材33に例えばノズルピッチの半分のピッチで柱状の圧電素子(圧電柱)32Aを形成した2つの圧電部材32を接合している。圧電部材32の各圧電柱は振動板部材4の振動領域4aと接合されて、フレキシブル配線部材34に備えられる駆動IC81からフレキシブル配線部材34を介して駆動信号が与えられる。
また、フィルタ下共通液室25の壁面を形成する振動板部材4の部分の一部は変形可能な領域(ダンパ領域)24とし、流路板3にはダンパ領域24を挟んでフィルタ下共通液室25に対向するダンパ室35を形成している。
この液体吐出ヘッドでは、圧電アクチュエータ8を駆動することで振動板部材4の振動領域4aが変位して、圧力室21の液体が加圧されて、ノズル20から液滴が吐出される。
次に、本発明の第1実施形態について図4ないし図7も参照して説明する。図4は同実施形態の説明に供する液体吐出ヘッドの平面説明図、図5は同じく正面説明図、図6は同じく要部拡大正面図、図7は同じくノズルカバー部材の斜視説明図である。
本実施形態では、ノズル板2のノズル面2aの払拭方向(払拭方向)と直交する方向の二辺の周縁部をそれぞれ覆う2つのノズルカバー部材101,101を備えている。
ノズルカバー部材101は、1枚の弾性部材を折り曲げてカバー部102と支持部103とを形成し、支持部103に固定部を兼ねる補強部材104を溶接などで一体に連結している。
ここで、カバー部102は、ノズル板2のノズル面2aに接触して周縁部を覆っている。支持部103は、カバー部102から屈曲されて、ヘッド側面に対向する部分である。この支持部103に、カバー部102を形成する弾性部材よりも剛性の高い補強部材104を溶接などで一体に連結することで、支持部103の剛性をカバー部102の剛性よりも高くしている。
ここで、ノズルカバー部材101のヘッドへの取り付けについて図8を参照して説明する。図8は同説明に供する要部拡大正面説明図である。
まず、ノズルカバー部材101は、図8(a)に示すように、カバー部102と支持部103とがなす角度θが90°未満の鋭角になるまで折り曲げ加工が施されている。そして、取付け前においては、カバー部102の先端と補強部材104の固定面との間の寸法aと、ノズル面2aとフレーム部材7の取付け面7aとの間の寸法bとの関係を、寸法a≦寸法b、に形成している。
そして、図8(b)に示すように、ノズルカバー部材101のカバー部102をノズル面2aに接触させ、支持部103に連結した補強部材104をヘッドのフレーム部材7に締結部材であるねじ108で固定する。
これにより、カバー部102の少なくとも先端エッジ部が弾性変形でノズル面2aに押し付けられて密着する。
なお、ノズルカバー部材101の表面には撥インク性の撥水処理が施されていることが好ましい。撥水処理は、ワイパ部材と接触し、インクが接触する面(カバー部102の表面)においてなされているだけでも良い。ただし、支持部103の表面にもインクが伝わってくることも考えられるので、全領域に対して撥水処理されていることが好ましい。
また、ノズルカバー部材101は、硬質金属材料、例えばSUS材を使用することができる。上述したように、カバー部102を弾性変形させて押し付けるため、バネ材料にてノズルカバー部材101を形成することで、密着状態をメカ設計上、定量化することができる。また、取り付け時の変形量を管理することで、常に同等の密着状態を得ることができるので、信頼性を向上させることができる。
また、薄い材料であっても十分な押し付け力を得ることができるという利点もある。例えば、板厚は0.1mm以下のSUS304−CSP−H−TA材などを使用することが好ましい。
次に、このように構成した実施形態の作用について図9及び図10を参照して説明する。図9は比較例における払拭時のノズルカバー部材の状態の説明に供する説明図、図10は本実施形態における払拭時のノズルカバー部材の状態の説明に供する説明図である。
まず、比較例のノズルカバー部材1001は、一枚の弾性部材を屈曲させてカバー部1002と支持部1003を形成し、支持部1003と一体の固定部1004をねじ1008でフレーム部材7に固定したものである。
この比較例のノズルカバー部材1001では、図9(a)に示すように、ワイパ部材283がカバー部1002のエッジ部に接触した状態から、図9(b)に示すようにワイパ部材283が更に払拭方向(ワイピング方向)に移動するとき、ワイパ部材283から受ける力によって支持部1003が曲げ変形して、ノズル面2aとカバー部1002がずれて擦れが発生してしまう。
ここで、ノズルカバー部材1001全体の剛性を上げるために、ノズルカバー部材1001の板厚を十分に厚い部材とすることも可能である。
しかしながら、ノズルカバー部材1001の板厚を厚くすると、ワイパ部材283がカバー部1002のエッジを乗り越えるときの抵抗が大きくなり、ワイパ部材283が損傷することがある。例えば、ノズルカバー部材1001のカバー部1002の板厚は0.1mm以下程度であることが好ましく、ノズルカバー部材1001全体の厚みを厚くすることはできない。
これに対し、本実施形態のノズルカバー部材101は、支持部103の剛性が補強部材104によって高くなっている。
したがって、図10(a)に示すようにワイパ部材283がカバー部102のエッジ部に達した状態から、図10(b)に示すように更に払拭方向に移動するとき、カバー部102と支持部103とのつなぎ部分での変形が抑えられる。
これにより、払拭時にノズルカバー部材101に曲げ変形が生じることを抑制でき、ノズル面2aとの接触部がずれて擦れが発生することを防止できる。
なお、図9のような払拭によるノズルカバー部材1001の曲げ変形を防止するためには、ノズルカバー部材1001をフレーム部材7の側面の上部部分に固定することも考えられる。しかしながら、フレーム部材7の側面の上部部分にねじで固定する場合、ヘッド内部の流路との干渉を避ける必要がある。そのため、横方向に取り付けのためのスペースを確保する必要があり、ヘッドが不要に大きくなる。
また、接着剤等でノズル面2aなどに接合することもできるが、カバー部を弾性変形させてノズル面2aに押し付ける構成にあっては、固定部は常にその反力を受けることになるため、接着方式では信頼性に問題がある。そして、ノズルカバー部材が、はがれた場合には画像に影響を与えるばかりでなく、ノズル面を損傷するおそれもある。したがって、より確実なねじによる固定が好ましいが、比較例では上記のとおりねじによる固定が難しくなる。
このように、ノズル面の払拭方向と直交する方向の二辺の周縁部を各々覆う2つのノズルカバー部材を備え、ノズルカバー部材は、ノズル面に接触して周縁部を覆うカバー部と、カバー部から屈曲されて、カバー部を支持する支持部とを有し、支持部の剛性がカバー部の剛性よりも高い構成とすることによって、払拭時のノズルカバー部材の変形を防止することができる。
次に、本発明の第2実施形態について図11及び図12を参照して説明する。図11は同実施形態における液体吐出ヘッドの要部正面図、図12は同実施形態のノズルカバー部材の斜視説明図である。
本実施形態では、ノズルカバー部材101の支持部103には、払拭方向と直交する方向の両端部に、曲げ加工によって、払拭方向に沿う方向の曲げ部103a、103aが形成されている。これにより、支持部103の剛性がカバー部102の剛性よりも高くなる。
そして、ノズルカバー部材101は、支持部103をねじ108でフレーム部材7の側面に固定している。
一方、フレーム部材7には、ノズルカバー部材101の曲げ部103aが嵌り込む溝部110が形成されている。
これによって、ノズルカバー部材101の曲げ部103aがフレーム部材7の表面からはみ出さなくなり、ヘッドの取扱い性が向上する。
なお、ここでは、曲げ部103aは内側(ヘッド側面に対向する側)に向けて曲げているが、外側(ヘッドから離れる側)に向けて曲げることもできる。
次に、本発明の第3実施形態について図13及び図14を参照して説明する。図13は同実施形態における液体吐出ヘッドの要部正面図、図14は同実施形態のノズルカバー部材をヘッドから取り外した状態の要部正面説明図である。
本実施形態では、図14に示すように、ノズルカバー部材101は、支持部103の曲げ部103aのノズル面側端面とカバー部102までの距離hcを、フレーム部材7の溝部110のノズル面側端部とノズル面2aとの間の部分(これを「凸部100」とする。)の距離hfよりも狭く(hc<hf)としている。
これによって、図13に示すように、ノズルカバー部材101をヘッドに装着したときには、凸部100に曲げ部103aとカバー部102との間が嵌り込み、カバー部102の弾性復元力で、支持部103の曲げ部103aのノズル面側端面が凸部100の壁面(溝部110の壁面)に押し付けられる。
したがって、前記実施形態のようにノズルカバー部材101の支持部103をねじ108でフレーム部材7の側面に固定しなくともよくなる。つまり、前述したように、フレーム部材7の側面にねじで固定する場合にはヘッド内部の流路との干渉を避ける必要があり、ヘッドの大型化につながる。
そこで、本実施形態のように、ノズルカバー部材101をカバー部102と曲げ部103aとで凸部100を挟み込んで固定することで、フレーム部材7の側面にねじで固定をすることによる不都合をなくすることができる。
次に、本発明の第4実施形態について図15を参照して説明する。図15は同実施形態における液体吐出ヘッドの要部正面図である。
本実施形態では、ノズルカバー部材101の支持部103の曲げ部103aのノズル面側端面に切欠部111を形成し、フレーム部材7の溝部110の壁面に切欠部111に嵌り込む凸部112を形成している。これらの切欠部111と凸部112とで、互いに係わり合って、ノズルカバー部材101の払拭方向への移動を規制する規制手段を構成している。
これにより、ノズルカバー部材101の支持部103をフレーム部材7の側面にねじで固定しないでもノズルカバー部材101の移動を規制できる。上述したように、フレーム部材7の側面にねじで固定すると、内部の流路との干渉を避ける必要が生じることになるので好ましくない。
次に、本発明の第5実施形態について図16を参照して説明する。図16は同実施形態における液体吐出ヘッドの要部正面図である。
本実施形態では、ノズルカバー部材101の支持部103の曲げ部103aに貫通穴113を形成し、フレーム部材7の溝部110に貫通穴113に挿入される凸部114を形成している。これらの貫通穴113と凸部114とで、互いに係わり合って、ノズルカバー部材101の払拭方向への移動を規制する規制手段を構成している。
これにより、上記第4実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
次に、本発明の第6実施形態について図17を参照して説明する。図17は同実施形態における液体吐出ヘッドの要部正面図である。
本実施形態では、前記第3実施形態において、ノズルカバー部材101の支持部103をヘッド側面(フレーム部材7の側面に押し付けるL字型の押し付け部材115を設けている。
これにより、ヘッドの内部流路の構造の影響を受けることなく、ノズルカバー部材101を確実にヘッドの固定することができる。
次に、本発明の第7実施形態について図18ないし図20を参照して説明する。図18は同実施形態の説明に供する平面説明図、図19は同じく正面説明図、図20は同じく要部正面説明図である。
本実施形態では、ノズルカバー部材101の支持部103をフレーム部材7の側面(ヘッド側面)との間で保持する保持部材121を設けている。
ここで、保持部材121はフレーム部材7にねじ108にて固定されている。
そして、ノズルカバー部材101の支持部103に係わり合い部103bが設けられている。一方、保持部材121には係わり合い部121aが設けられている。これらノズルカバー部材101の係わり合い部103bと保持部材121の係わり合い部121aが係わり合うことで、ノズルカバー部材101が保持部材121に係り止められている。
これにより、ノズルカバー部材101がカバー部102の弾性復元力によって保持部材121から外れないように保持される。
本実施形態においても、ノズルカバー部材101は、図21(a)に示すように、カバー部102と支持部103とがなす角度θが90°未満の鋭角になるまで折り曲げ加工が施されている。ヘッドの側面と保持部材121との間の隙間に、ノズルカバー部材101を挿入し、図21(b)に示すように、ノズルカバー部材101のカバー部102をノズル面2aに接触させ、支持部103の係わり合い部103bを保持部材121の係わり合い部121aに係り止める。これにより、カバー部102の少なくとも先端エッジ部が弾性変形でノズル面2aに押し付けられて密着する。
ここで、図21(b)の例では、ノズルカバー部材の係わり合い部103bを凸形状とし、保持部材121の係わり合い部121aを凹形状としているが、ノズルカバー部材の係わり合い部103bを凹形状とし、保持部材121の係わり合い部121aを凸形状とすることもできる。
一方、保持部材121については、ノズルカバー部材101を固定するための部材であり、ノズルカバー部材101のように板厚を薄くする必要はない。したがって、保持部材121の厚みをノズルカバー部材101に比較して厚くする。これにより、ノズルカバー部材101を保持し、その曲げを防止する上で効果が大きくなる。
例えば、ノズルカバー部材101を厚さ0.1mmとした場合、保持部材121は厚さを0.5mmとすると、その部分の曲げに対する強度は125倍となる。
このように、保持部材121に十分な厚さがあることで、ノズルカバー部材101の板厚が薄くても、保持部材121とフレーム部材7との間に挟んで保持することにより、十分な強度を得ることができる。
このように構成したので、図22に示すように、ワイパ部材283で払拭するときに、ノズルカバー部材101の支持部103が保持部材121とフレーム部材7との間に挟んで保持されていることで、カバー部102と支持部103とのつなぎ部分での変形が抑えられる。
したがって、ワイパ部材283による払拭時にノズルカバー部材101に曲げ変形が生じることを抑制でき、ノズル面2aとの接触部がずれて擦れが発生することを防止できる。
このように、ノズル板のノズル面の払拭方向と直交する方向の二辺の周縁部を各々覆う2つのノズルカバー部材を備え、ノズルカバー部材は、ノズル面に接触して周縁部を覆うカバー部と、カバー部から屈曲されて、カバー部を支持する支持部とを有し、ノズルカバー部材の支持部を保持する保持部材を設けていることで、ノズルカバー部材による払拭時の抵抗を減らし、払拭によるノズルカバー部材の変形を防止することができる。
この第7実施形態と前記第1ないし第6実施形態とは、前記第1ないし第6実施形態ではノズルカバー部材101の支持部103自体の剛性を高くして変形を抑制していたのに対し、この第7実施形態では保持部材とフレーム部材との間にノズルカバー部材101の支持部103を挟み込んで変形を抑制するようにしている点である。
次に、本発明の第8実施形態について図23を参照して説明する。図23は同実施形態の説明に供する要部正面説明図である。
本実施形態では、ノズルカバー部材101のカバー部102の払拭方向の幅L、保持部材121の先端からノズル面2aまでの距離Hの関係を、H>0、かつ、L>H、としている。
すなわち、保持部材121とフレーム部材7でノズルカバー部材101の支持部103を挟み込むことで、ノズルカバー部材101を保持する構成においては、図24に示すように、保持部材121とフレーム部材7により支持部103の全体が挟まれている状態であると、曲げに対してもっとも強い構成となる。
しかしながら、図24に示すように、保持部材121の先端がノズル面2aを越えて突き出し、或いは、ノズル面2aと同じ位置まで来ている場合、保持部材121の先端のエッジが、ワイパ部材283の払拭動作時に、ワイパ部材283と接触することになる。ワイパ部材283はノズル面2aを清掃する必要があるため、ノズル面2aに対して食い込みが生じるように固定された状態で払拭動作を行っている。
その結果、保持部材121のエッジによりワイパ部材283がダメージを受けることになり、ノズルカバー部材101の機能(ノズル板2等の液室構成部品のエッジからワイパ部材を保護する)を果たせなくなる。
したがって、ワイパ部材283の先端が保持部材121の先端エッジに接触しないように、保持部材121の高さをノズル面2aより低くする必要がある。
一方、ノズルカバー部材101の支持部103で保持部材121により挟まれていない部分は、ワイパ部材283から受ける力によって変形してしまうことになるので、この部分の長さは短い方が好ましい。
そこで、本実施形態では、保持部材121の先端からノズル面までの距離Hが、ノズルカバー部材101のカバー部102の払拭方向の幅Lよりも短くなるようにしている。
このように構成することで、ワイパ部材の払拭動作によって受ける力によってカバー部がずれてノズル面から外れてしまうことを防止できる。
具体的には、カバー部102の幅Lを3mmとし、支持部103のうちの保持部材121により覆われていない部分の長さHを1.5mmとしている。このとき、ワイパ部材283の食い込み量は0.5mmとし、ワイパ部材283の払拭動作により、ワイパ部材283の先端が保持部材121の先端エッジと接触しない設定としている。
このようにすることで、ワイパ部材の先端が保持部材との接触により傷つくことを防止するとともに、ノズルカバー部材がワイパ部材の払拭動作により、変形してもノズル面から外れてしまうような大きなずれを生じることを防止できる。
次に、保持部材のヘッドへの固定方法について図25及び図26も参照して説明する。図25は同説明に供する要部拡大正面図、図26は同じく2つのヘッドを並列配置した場合の要部拡大正面図である。
ノズルカバー部材101をヘッドに取り付けた後にヘッドを交換する場合、ノズルカバー部材101が着脱可能であれば、再利用することができる。また、ノズルカバー部材101に傷等が生じた場合には、ノズルカバー部材101のみの交換で足りることが好ましい。
したがって、ノズルカバー部材101は、ヘッドに対して着脱可能であることが好ましいことから、ノズルカバー部材101を保持する保持部材121をフレーム部材7にねじ108で止めている。
この場合、図20に示すように、フレーム部材7のノズル面2aに垂直な方向から取り付けられるように、フレーム部材7に対して保持部材121を固定する固定面をノズル面2aと平行になるようにする。
これに対して、図25に示すように、保持部材121のフレーム部材7への取り付けをノズル面2aに対して垂直な面に行うと、フレーム部材7の側面方向からねじ止めの作業を行うことになり、ヘッド(フレーム部材)を装置に取り付けた状態での作業ができない。
これに対して、図20に示すように、ノズル面2aに垂直な方向からねじ止めする場合には、ヘッド取り付け状態での作業が可能である。特に、図26に示すように、ヘッドをノズル配列方向に複数個配列するような場合、ヘッド取り付け後にノズル面2aに直交する側面からねじ止めの作業を行うことは不可能であり、ノズル面2aに垂直な方向からねじ止めできるように、保持部材121の固定面を設定する必要がある。
次に、本発明の第9実施形態について図27を参照して説明する。図27は同実施形態に係るノズルカバー部材及び保持部材の説明に供する斜視説明図である。
本実施形態では、ノズルカバー部材101の支持部103には、ワイピング方向と直交する方向で、両端部にヘッド側と反対側折り曲げられた係わり合い部としての曲げ部103c、103cが設けられている。
一方、保持部材121には、ノズルカバー部材101の支持部103の曲げ部103cを係り止める切り欠き部121c、121cが設けられている。
そこで、ノズルカバー部材101を取り付ける場合に、フレーム部材7の側面と所定のギャップ(ノズルカバー部材101の厚さ程度)を持つように、保持部材121をフレーム部材7に固定する。
この状態で、フレーム部材7と保持部材121との間のギャップに、ノズルカバー部材101の支持部103を挿入するようにしてはめ込んで行く。これにより、ノズルカバー部材101の曲げ部103cが保持部材121の切り欠き部121cに引っ掛かり、抜けなくなる。
この場合、ノズルカバー部材101を取り外すには、先に保持部材121をフレーム部材7から外すことで、ノズルカバー部材101を外すことができる。
次に、本発明の第10実施形態について図28及び図29を参照して説明する。図28は同実施形態に係るノズルカバー部材及び保持部材の説明に供する斜視説明図、図29は同実施形態に係るノズルカバー部材及び保持部材のヘッドへの取り付けの説明に供する斜視説明図である。
本実施形態では、ノズルカバー部材101の支持部103には、ワイピング方向と直交する方向で、中央部に係わり合い部となる曲げ部103dが設けられ、両端部にヘッドと反対側折り曲げられた折り曲げ部103c、103cが設けられている。
一方、保持部材121には、ノズルカバー部材101の支持部103の曲げ部103dが嵌り込む貫通穴121dが設けられ、またノズルカバー部材101の支持部103の曲げ部103cを係り止める切り欠き部121c、121cが設けられている。
そこで、ノズルカバー部材101をヘッドに取り付けるときには、先に、ノズルカバー部材101の曲げ部103dを保持部材121の貫通穴121dに嵌め込み、ノズルカバー部材101の支持部103の曲げ部103cを保持部材121の切り欠き部121c、121cに嵌め合わせる。
これによって、ノズルカバー部材101が保持部材121に対して仮止め(仮固定)された状態になる。
そこで、図29に示すように、仮固定された状態で、保持部材121をフレーム部材7に図示しないねじで矢印方向からねじ止めして取付けることで、ノズルカバー部材101を固定する。なお、保持部材121を外すことで、ノズルカバー部材101を着脱することが可能となる。
このように、ノズルカバー部材101の中央部の曲げ部103dと両端部の曲げ部103e、121eの3点で、保持部材121にノズルカバー部材101を仮固定した状態でフレーム部材7に固定することができる。
このとき、中央部の曲げ部103dは、両端の曲げ部103cと切り欠き部121cを組み合わせたときに、曲げ部103dが若干上側に変形し、両端の曲げ部103cが切り欠き部121cと引っかかり、3点でノズルカバー部材101が保持部材121に一体化する。
そして、ノズルカバー部材101を保持部材121に仮固定した状態でフレーム部材7に固定できることで、組み付けの作業性が向上する。
次に、本発明に係る画像形成装置の一例について図30及び図31を参照して説明する。なお、図30は同装置の機構部の側面説明図、図31は同機構部の要部平面説明図である。
この画像形成装置はシリアル型画像形成装置であり、左右の側板221A、221Bに横架したガイド部材である主従のガイドロッド231、232でキャリッジ233を主走査方向に摺動自在に保持している。そして、図示しない主走査モータによってタイミングベルトを介して矢示方向(キャリッジ主走査方向)に移動走査する。
このキャリッジ233には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色のインク滴を吐出するための本発明に係る液体吐出ヘッドからなる記録ヘッド234を搭載している。記録ヘッド234は、複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
記録ヘッド234は、それぞれ2つのノズル列を有する液体吐出ヘッド234a、234bを1つのベース部材に取り付けて構成したものである。一方のヘッド234aの一方のノズル列はブラック(K)の液滴を、他方のノズル列はシアン(C)の液滴を吐出する。他方のヘッド234bの一方のノズル列はマゼンタ(M)の液滴を、他方のノズル列はイエロー(Y)の液滴を吐出する。なお、ここでは2ヘッド構成で4色の液滴を吐出する構成としているが、各色毎の液体吐出ヘッドを備えることもできる。
また、キャリッジ233には、記録ヘッド234のノズル列に対応して各色のインクを供給するためのサブタンク235a、235b(区別しないときは「サブタンク235」という。)を搭載している。このサブタンク235には各色の供給チューブ236を介して、供給ユニット224によって各色のインクカートリッジ210から各色のインクが補充供給される。
一方、給紙トレイ202の用紙積載部(圧板)241上に積載した用紙242を給紙するための給紙部として、用紙積載部241から用紙242を1枚ずつ分離給送する半月コロ(給紙コロ)243及び給紙コロ243に対向する分離パッド244を備えている。分離パッド244は給紙コロ243側に付勢されている。
そして、この給紙部から給紙された用紙242を記録ヘッド234の下方側に送り込むために、用紙242を案内するガイド部材245と、カウンタローラ246と、搬送ガイド部材247と、先端加圧コロ249を有する押さえ部材248とを備えている。そして、給送された用紙242を静電吸着して記録ヘッド234に対向する位置で搬送するための搬送手段である搬送ベルト251を備えている。
この搬送ベルト251は、無端状ベルトであり、搬送ローラ252とテンションローラ253との間に掛け渡されて、ベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成している。また、この搬送ベルト251の表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ256を備えている。この帯電ローラ256は、搬送ベルト251の表層に接触し、搬送ベルト251の回動に従動して回転するように配置されている。この搬送ベルト251は、図示しない副走査モータによってタイミングを介して搬送ローラ252が回転駆動されることによってベルト搬送方向に周回移動する。
さらに、記録ヘッド234で記録された用紙242を排紙するための排紙部として、搬送ベルト251から用紙242を分離するための分離爪261と、排紙ローラ262及び排紙コロ263とを備え、排紙ローラ262の下方に排紙トレイ203を備えている。
また、装置本体の背面部には両面ユニット271が着脱自在に装着されている。この両面ユニット271は搬送ベルト251の逆方向回転で戻される用紙242を取り込んで反転させて、再度、カウンタローラ246と搬送ベルト251との間に給紙する。また、この両面ユニット271の上面は手差しトレイ272としている。
さらに、キャリッジ233の走査方向一方側の非印字領域には、記録ヘッド234のノズルの状態を維持し、回復するための維持回復機構281を配置している。この維持回復機構281には、記録ヘッド234の各ノズル面をキャッピングするための各キャップ部材(以下「キャップ」という。)282a、282b(区別しないときは「キャップ282」という。)を備えている。また、維持回復機構281は、ノズル面を払拭するためのブレード部材であるワイパーブレード283を備えている。また、維持回復機構281は、増粘したインクを排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け284などを備えている。
また、キャリッジ233の走査方向他方側の非印字領域には、記録中などに増粘したインクを排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け288を配置している。この空吐出受け288には記録ヘッド234のノズル列方向に沿った開口部289などを備えている。
このように構成したこの画像形成装置においては、給紙トレイ202から用紙242が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙242はガイド部材245で案内され、搬送ベルト251とカウンタローラ246との間に挟まれて搬送される。更に、用紙242の先端が搬送ガイド237で案内されて先端加圧コロ249で搬送ベルト251に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
そして、帯電した搬送ベルト251上に用紙242が給送されると、用紙242が搬送ベルト251に吸着され、搬送ベルト251の周回移動によって用紙242が副走査方向に搬送される。
そこで、キャリッジ233を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド234を駆動することにより、停止している用紙242にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙242を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号又は用紙242の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙242を排紙トレイ203に排紙する。
このように、この画像形成装置では、本発明に係る液体吐出ヘッドを備えているので、払拭動作によるノズルカバー部材の変形が防止されて、高画質画像を安定して形成することができる。
なお、本願において、「用紙」とは材質を紙に限定するものではなく、OHP、布、ガラス、基板などを含み、インク滴、その他の液体などが付着可能なものの意味である。被記録媒体、記録媒体、記録紙、記録用紙などと称されるものを含む。また、画像形成、記録、印字、印写、印刷はいずれも同義語とする。
また、「画像形成装置」は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体に液体を吐出して画像形成を行う装置を意味する。また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与すること(単に液滴を媒体に着弾させること)をも意味する。
また、「インク」とは、特に限定しない限り、インクと称されるものに限らず、記録液、定着処理液、液体などと称されるものなど、画像形成を行うことができるすべての液体の総称として用いる。例えば、DNA試料、レジスト、パターン材料、樹脂なども含まれる。
また、「画像」とは平面的なものに限らず、立体的に形成されたものに付与された画像、また立体自体を三次元的に造形して形成された像も含まれる。
また、画像形成装置には、特に限定しない限り、シリアル型画像形成装置及びライン型画像形成装置のいずれも含まれる。