以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、本実施の形態は本発明を限定するものではない。
[第1の実施の形態]
本実施の形態の放射線検出装置は、被写体を通過した放射線を受けて被写体の放射線画像を示す画像情報を出力する機能を有する。放射線検出装置は、光電変換基板と、放射線を受けて光を発するシンチレータである蛍光体層と、を備えている。
図1には、本実施の形態の放射線検出装置の具体的な構成の一例を示す。
放射線検出装置10は、光電変換基板12を備えており、光電変換基板12は、複数の画素20が形成されたTFT(Thin Film Transistor)基板14を含んでいる。図1に示すように、光電変換基板12のTFT基板14は、センサ部24及びスイッチ素子22を含む複数の画素20を有する。センサ部24は、蛍光体層で発生した光を受けて電荷を発生する。スイッチ素子22は、センサ部24にて蓄積された電荷を読み出す。スイッチ素子22の具体例としては、薄膜トランジスタ等が挙げられる。以下では、スイッチ素子を「TFT」という。
複数の画素20は、一方向(図1の横方向に対応する走査配線方向、以下「行方向」という)及び行方向に対する交差方向(図1の縦方向に対応する信号配線方向、以下「列方向」という)にマトリクス状に配置されている。図1では、画素20の配列を簡略化して示しているが、例えば、画素20は行方向及び列方向に1024個×1024個配置される。
また、放射線検出装置10には、TFT22のオン/オフを制御するための複数の走査配線28(G1〜G4)と、画素20の列毎に備えられた、センサ部24に蓄積された電荷が読み出される複数の信号配線26(D1〜D4)と、が互いに交差して設けられている。
なお、各画素20のセンサ部24には、各画素20にバイアス電圧を印加するために、共通配線29が信号配線26の配線方向に設けられている。共通配線29を介して図示を省略した電源からバイアス電圧が印加される。
図2には、図1に示した放射線検出装置10の平面図を示す。また、図3には、図2に示した放射線検出装置10のA−A線断面図を示す。なお、図2では、蛍光体層82の記載は省略している。
図3に示すように、放射線検出装置10の画素20は、無アルカリガラス等からなる絶縁性の基板40上に、走査配線28、ゲート電極42、及び画素20が形成されている。TFT22のゲート電極42は、走査配線28に接続されている(図2参照)。走査配線28、及びゲート電極42が形成された配線層(以下、この配線層を「第1信号配線層」ともいう)は、Al若しくはCu、又はAl若しくはCuを主体とした積層膜を用いて形成されているが、これらに限定されるものではない。
この第1信号配線層上には、一面に絶縁膜44が形成されており、ゲート電極42上に位置する部位がTFT22におけるゲート絶縁膜として作用する。この絶縁膜44は、例えば、SiNX等からなっており、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)成膜により形成される。
絶縁膜44上のゲート電極42上には、半導体活性層46が島状に形成されている。この半導体活性層46は、TFT22のチャネル部であり、例えば、アモルファスシリコン膜からなる。
これらの上層には、ソース電極48及びドレイン電極50が形成されている。このソース電極48及びドレイン電極50が形成された配線層には、ソース電極48及びドレイン電極50とともに、信号配線26が形成されている。画素20のTFT22のソース電極48は信号配線26に接続されている。ソース電極48、ドレイン電極50、及び信号配線26が形成された配線層(以下、この配線層を「第2信号配線層」ともいう)は、Al若しくはCu、又はAl若しくはCuを主体とした積層膜が用いて形成されるが、これらに限定されるものではない。ソース電極48及びドレイン電極50と半導体活性層46との間には不純物添加アモルファスシリコン等による不純物添加半導体層(図示省略)が形成されている。なお、TFT22は後述する下部電極58により収集、蓄積される電荷の極性によってソース電極48とドレイン電極50とが逆になる。
なお、以下では、第1信号配線層及び第2信号配線層を総称する場合は、TFT配線層90という。
これら第2信号配線層を覆い、基板40上の画素20が設けられた領域のほぼ全面(ほぼ全領域)には、TFT22や信号配線26を保護するために、TFT保護膜層52が形成されている。このTFT保護膜層52は、例えば、SiNX等からなっており、例えば、CVD成膜により形成される。
このTFT保護膜層52上には、塗布型の第1平坦化膜54が形成されている。この第1平坦化膜54は、低誘電率(比誘電率εr=2〜4)の感光性の有機材料により例えば、1μm〜10μm、好ましくは、1μm〜5μmの膜厚で形成されている。このような有機材料としては、例えば、ポジ型感光性アクリル系樹脂:メタクリル酸とグリシジルメタクリレートとの共重合体からなるベースポリマーに、ナフトキノンジアジド系ポジ型感光剤を混合した材料等が挙げられる。
第1平坦化膜54は、平坦化膜としての機能を有しており、下層の段差が平坦化される効果を有する。また、第1平坦化膜54は、第1平坦化膜54上層と下層に配置される金属間の容量を低く抑える効果も有する。第1平坦化膜54には、コンタクトホール59が形成されている。
第1平坦化膜54上には、コンタクトホール59を埋めつつ、画素20が形成された画素領域を覆う状態にセンサ部24の下部電極58が形成されている。下部電極58は、コンタクトホール59を介して、TFT22のドレイン電極50と接続されている。下部電極58は、後述する半導体層60が1μm前後と厚い場合には導電性があれば材料に制限がほとんどない。このため、Al系材料、及びITO(Indium Tin Oxide:酸化インジウムスズ)等導電性の金属を用いて形成すればよい。
一方、半導体層60の膜厚が薄い場合(0.2μm〜0.5μm前後)、半導体層60で光の吸収が十分でないため、TFT22への光照射によるリーク電流の増加を防ぐため、遮光性メタルを主体とする合金、もしくは積層膜とすることが好ましい。
下部電極58上には、フォトダイオードとして機能する半導体層60が形成されている。本実施の形態では、半導体層60として、基板側からn+層、i層、及びp+層(n+アモルファスシリコン、アモルファスシリコン、p+アモルファスシリコン、いずれも図示省略)を積層したPIN構造のフォトダイオードを採用している。i層は、光が照射されることにより電荷(一対の自由電子と自由正孔)が発生する。n+層及びp+層は、コンタクト層として機能し、下部電極58及び後述する上部電極62とi層を電気的に接続する。
各半導体層60上には、それぞれ個別に上部電極62が形成されている。上部電極62には、例えば、ITOやIZO(Indium Zinc Oxide:酸化亜鉛インジウム)などの光透過性の高い材料を用いている。本実施の形態の放射線検出装置10のセンサ部24は、上部電極62や半導体層60、及び下部電極58を含んでいる。
第1平坦化膜54上には、半導体層60により形成された凹凸を平坦化するための第2平坦化膜64が形成されている。本実施の形態では、第2平坦化膜64は、第1平坦化膜54と同じ材料、かつ同じ厚さで形成している。これに限らず、第2平坦化膜64は、第1平坦化膜54と異なる材料、及び厚さであってもよい。なお、第2平坦化膜64の材質、及び厚さは、第1平坦化膜54と同様のものを適用することができる。
本実施の形態の放射線検出装置10では、第2平坦化膜64上に、センサ部24の側面及び上部電極62の端部を覆う状態に、保護膜66が形成されている。
このようにして形成されたTFT基板14が開示の技術の基板の一例に対応している。TFT基板14上には、開示の技術の第1の保護層の一例である、表面有機膜70が形成されている。表面有機膜70は、例えば、ポリイミドが好適に用いられる。表面有機膜70の膜厚は、例えば、1μm〜100μmが好ましい。
本実施の形態では、TFT基板14上に表面有機膜70が形成されたものを光電変換基板12という。
光電変換基板12上には、蛍光体層82が形成されている。本実施の形態では、蛍光体層82としてシンチレータを用いている。シンチレータとしては、吸収可能な波長領域の光を発生できるような、比較的広範囲の波長領域を有した蛍光を発生するシンチレータが望ましい。このようなシンチレータとしては、CsI:Na、CaWO4、YTaO4:Nb、BaFX:Eu(XはBrまたはCl)、または、LaOBr:Tm、及びGOS(Gd2O2S:Pr)等がある。具体的には、放射線としてX線を用いて撮像する場合、ヨウ化セシウム(CsI)を含むものが好ましく、X線照射時の発光スペクトルが400nm〜700nmにあるCsI:Tl(タリウムが添加されたヨウ化セシウム)やCsI:Naを用いることが特に好ましい。なお、CsI:Tlの可視光域における発光ピーク波長は565nmである。また、シンチレータとしてCsIを含むシンチレータを用いる場合、真空蒸着法で短冊状の柱状結晶構造として形成したものを用いることが好ましい。また、蛍光体層82の厚さとしては、100μm〜800μmが好ましい。
蛍光体層82上には、開示の技術の樹脂の一例である接着層84を介して、開示の技術の第2の保護層の一例である防湿保護層86が形成されている。接着層84は、流動性を有する状態からストレス(刺激)を与えることにより硬化する樹脂であれが限定されないが、光硬化樹脂や、ホットメルト樹脂を用いることが好ましい。光硬化樹脂としては、通常は流動性を有する状態であり、可視光もしくは紫外線等の不可視光により硬化する樹脂を用いることができる。具体例としては、ウレタンアクリレート、アクリル樹脂アクリレート、及びエポキシアクリレート等が挙げられる。
また、ホットメルト樹脂としては、通常は固体であり、熱を加えることにより流動性を有する状態に変化する樹脂を用いることができる。具体例としては、EVA(エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂)、EAA(エチレンとアクリル酸の共重合樹脂)、EEA(エチレン−エチルアクリレート共重合樹脂)、及びEMMA(エチレン−メタクリル酸メチル共重合体)等の熱可塑性プラスチックが挙げられる。
また、光硬化樹脂やホットメルト樹脂に限らず、流動性を有する状態を経て硬化するものであればよい。例えば、熱硬化性樹脂であってもよい。なお、流動性を有する状態における粘度としては、100Pa・S〜10000Pa・Sが好ましい。
接着層84の厚さとしては、5μm〜50μmが好ましい。
防湿保護層86は、放射線検出装置10を湿気等から保護する機能を有する。図3では、防湿保護層86を単層で記載したが、本実施の形態では、具体例として、有機膜による保護層と反射層とを有する二層の防湿保護層86を用いている。接着層84に接する側に保護層が設けられている。保護層としては、接着層84よりも融点が高い有機膜を用いることができる。具体例としては、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、OPP(二軸延伸ポリプロピレン)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PI(ポリイミド)等を用いることができる。
また、放射線検出装置10の最上層となる反射層は、Alや、Alの合金、及びAg等を用いることができる。
防湿保護層86の厚さとしては、10μm〜200μmが好ましい。
図4に、放射線検出装置10を、蛍光体層82が設けられた側から平面視した平面図を示す。また、図5に、図4に示した放射線検出装置10のB−B断面図を示す。
光電変換基板12(TFT基板14)上の中央の一部の領域に蛍光体層82が設けられている。蛍光体層82は、TFT基板14の画素20が形成された領域(画素領域)を覆う状態に形成されている。蛍光体層82の大きさ(光電変換基板12表面上の大きさ)は、具体的には、43.2cm×43.2cm、35.6cm×43.2cm、27.9cm×30.5cm、及び25.4cm×30.5cm等が挙げられる。
光電変換基板12上の蛍光体層82の外縁端部から光電変換基板12の端部までの間に、封止領域92が設けられている。封止領域92は、蛍光体層82の周囲を取り囲んでいる。封止領域92は、蛍光体層82を防湿保護層86により封止するために防湿保護層86が覆う光電変換基板12上の領域をいう。なお、封止領域92は例えば、設計上予め定めておく場合に加えて、防湿保護層86による封止を行う際に、接着層84及び防湿保護層86が流動したことにより実質的に設けられた領域も含む。また、以下では、封止領域92の、蛍光体層82に近い端部を内周といい、光電変換基板12(TFT基板14)の端部に近い端部を外周という。
溝部80は、封止領域92内に設けられている。蛍光体層82端部の接着層84により形成される液だまりを抑制する観点から、溝部80は、蛍光体層82外縁(以下、端部という)に近い位置に設けられていることが好ましい。より好ましくは、光電変換基板12の端部よりも、蛍光体層82の端部に近い位置に設けられていることが好ましい。さらに好ましくは、封止領域92の外周よりも封止領域92の内周に近い位置に設けられていることが好ましい。
なお、溝部80が封止領域92外に設けられている場合、接着層84が外部(外気)に接する領域が増加してしまい、外部に接する領域から水分が侵入する懸念がある。そのため、溝部80は、封止領域92内に設けられている。
また、溝部80は、光電変換基板12の端部と平行に設けられている。なお、ここで平行とは、設計上の誤差等によるずれは無視するものとしている。光電変換基板12の端部と交差する方向に溝部80が設けられている場合、溝部80部分の防湿性能が悪化する場合がある。その結果、放射線検出装置10の防湿性能が悪化する懸念がある。そのため、溝部80は、光電変換基板12の端部と平行であることが好ましい。
蛍光体層82の端部から封止領域92の外周までの距離(幅)の具体例としては、1mm〜10mmが挙げられる。溝部80の幅としては、封止領域92の幅の25%〜75%であることが好ましい。より好ましくは、封止領域92の幅の50%前後である。
本実施の形態の溝部80は、図5に示すように、表面有機膜70に設けられている。より詳しくは、溝部80は、表面有機膜70を貫通し、第2平坦化膜64の表面に達している。
次に、放射線検出装置10の製造方法について説明する。
図6は、放射線検出装置10の製造工程の流れの一例を説明したフローチャートである。
まず、ステップS100では、基板準備工程を行う。基板準備工程では、TFT基板14を準備する。予め製造されている放射線検出装置10を準備してもよいし、基板40を用いて以下のように製造してもよい。
TFT基板14を製造する場合は、まず、基板40上に、TFT22を形成する。
次に、TFT22が形成された基板40上に、TFT保護膜層52を形成し、さらに第1平坦化膜54を形成する。
次に、第1平坦化膜54にコンタクトホール59を形成する。コンタクトホール59を埋めつつ下部電極58を形成し、さらに半導体層60、及び上部電極62を形成する。このようにして、センサ部24を形成する。
次に、下部電極58、半導体層60、及び上部電極62により形成された凹凸を平坦化するために、第2平坦化膜64を形成する。
次に、上部電極62上に共通配線29を形成する。
次に、第2平坦化膜64、上部電極62、及び共通配線29の全面に保護膜66を形成する。
TFT基板14が準備できると、次のステップS102では、表面有機膜形成工程により、TFT基板14上に、表面有機膜70を形成する。なお、ステップS102の工程を省略し、予め製造されている光電変換基板12を準備してもよい。なお、ステップS100及びS102が開示の技術の準備工程の一例に対応している。
次のステップS104では、溝部形成工程により、溝部80を形成する。本実施の形態では、溝部80は、表面有機膜70を加工することにより形成する。例えば、表面有機膜70の加工は、フォトリソグラフィ工程を用いることにより数μm単位で精度良く加工することができる。
具体的方法としては、予め溝部80をカッティングした表面有機膜70(ポリイミド等のフィルム)を貼り合わせる方法が挙げられる。また例えば、該当部分をマスキングした後に、結晶性ポリマー等による表面保護プロセスを実施後、エッチングを行う方法等が挙げられる。
次のステップS106では、蛍光体層形成工程により、光電変換基板12上に、蛍光体層82を形成する。蛍光体層82の形成方法としては、真空蒸着が挙げられる。
次のステップS108では、防湿保護層形成工程により、蛍光体層82及び封止領域92を覆う状態に、接着層84を介して防湿保護層86を形成する。
接着層84が光硬化樹脂の場合は、蛍光体層82及び封止領域92に接着層84を塗布後、TFT基板14の基板40側から光を照射することにより、接着層84を硬化させて、防湿保護層86を接着させる。また、接着層84がホットメルト樹脂の場合は、蛍光体層82を接着層84及び防湿保護層86で覆った後、加熱及び加圧を行い、接着層84を溶融させ、防湿保護層86を接着させる。
いずれにしても、接着層84により防湿保護層86を接着する際に、接着層84が流動性を有する状態になることで溝部80内に接着層84が流れ込み、溝部80内部を埋める。なお、溝部80内部全体を埋めなくてもよく、少なくとも溝部80内部に接着層84が入りこめばよい。接着層84は、例えば溝部80内部の一部を埋めている状態でもよい。溝部80内部に接着層84が入り込むことにより、蛍光体層82端部に接着層84の液だまりが形成されてしまうことを抑制することができる。
このようにして、本実施の形態の放射線検出装置10が製造される。
なお、本実施の形態では、表面有機膜70を貫通し、表面有機膜70の表面に達するまで溝部80を形成しているが、これに限らない。例えば、図7に示すように、表面有機膜70、第2平坦化膜64、及び第1平坦化膜54を貫通し、TFT保護膜層52の表面に達するまで、溝部80を形成してもよい。このように形成する場合は、上記ステップS104の溝部形成工程において、TFT保護膜層52の表面に至るまで、エッチングを行えばよい。
図7に示した放射線検出装置10では、溝部80の深さが、図5に示した放射線検出装置10よりも深くなる。溝部80の幅は、封止領域92の幅により制限を受けるが、溝部80の幅を図5に比べて広げることなく、溝部80内部の大きさを大きくすることができるため、溝部80内部に流れ込む接着層84の量を多くすることができる。そのため、本実施の形態の放射線検出装置10は、蛍光体層82端部の接着層84をより薄くすることができる。
[第2の実施の形態]
次に、第2の実施の形態について説明する。なお、本実施の形態の放射線検出装置10は溝部80が第1の実施の形態と異なるため、溝部80について説明する。なお第1の実施の形態に係る放射線検出装置10と同様の部分については、同一符号を付して、詳細な説明を省略する。
図8には、第1の実施の形態の図4のB−B断面に対応する断面図を示す。図8に示した本実施の形態の放射線検出装置10では、溝部80が、表面有機膜70、第2平坦化膜64、及び第1平坦化膜54を貫通し、TFT保護膜層52の表面に達している。また、表面有機膜70は、第2平坦化膜64の上及び溝部80内側の側壁を覆う状態に形成されている。
このように溝部80を形成する場合は、放射線検出装置10の製造工程のステップS102の表面有機膜形成工程において、第1平坦化膜54及び第2平坦化膜64の溝部80に対応する部分にエッチングを行い第1平坦化膜54及び第2平坦化膜64を除去する。その後、光電変換基板12上に表面有機膜70を形成する。次に、溝部80の底部にあたる部分にエッチングを行って表面有機膜70を除去し、TFT保護膜層52表面を露出させるとよい。
なお、製造方法はこれに限らない。例えば、第1平坦化膜54及び第2平坦化膜64を形成する毎に、順次、エッチングにより溝部80に対応する部分を形成してもよい。具体的には、第1平坦化膜54の形成後に溝部80に対応する部分にエッチングを行って第1平坦化膜54を除去する。さらに、第2平坦化膜64を形成し、第2平坦化膜64の形成後、溝部80に対応する部分にエッチングを行って、第2平坦化膜64を除去する。
図8に示した放射線検出装置10では、溝部80の深さが、図5に示した放射線検出装置10よりも深くなるため、図7に示した放射線検出装置10と同様に、溝部80内部に流れ込む接着層84の量を多くすることができる。そのため、本実施の形態の放射線検出装置10は、蛍光体層82端部の接着層84をより薄くすることができる。また、本実施の形態の放射線検出装置10は、図7に示した放射線検出装置10に比べて、第1平坦化膜54及び第2平坦化膜64の表面を表面有機膜70により保護することができる。
[第3の実施の形態]
次に、第3の実施の形態について説明する。なお、本実施の形態の放射線検出装置10は溝部80が上記各実施の形態と異なるため、溝部80について説明する。なお第1の実施の形態に係る放射線検出装置10と同様の部分については、同一符号を付して、詳細な説明を省略する。
図9には、第1の実施の形態の図4のB−B断面に対応する断面図を示す。図9に示した本実施の形態の放射線検出装置10では、溝部80が、表面有機膜70、第2平坦化膜64、及び第1平坦化膜54を貫通し、TFT保護膜層52の表面に達している。
また、本実施の形態の放射線検出装置10では、光電変換基板12の封止領域92外、より具体的には、溝部80から光電変換基板12の端部までの構成が、第1の実施の形態と異なっている。
図9に示すように、本実施の形態の放射線検出装置10では、溝部80から光電変換基板12の端部には、第1平坦化膜54及び第2平坦化膜64が設けられておらず、TFT保護膜層52上には、表面有機膜70が形成されている。
すなわち、本実施の形態の放射線検出装置10では、表面有機膜70は、溝部80を境界とし、蛍光体層82が設けられた一部領域では、第1平坦化膜54及び第2平坦化膜64を覆う状態に形成されている。また、表面有機膜70は、溝部80からTFT基板14端部までの領域では、TFT保護膜層52を覆う状態に形成されている。
このように溝部80を形成する場合は、放射線検出装置10の製造工程のステップS102の表面有機膜形成工程において、封止領域92及び封止領域92から光電変換基板12の端部までの領域に対応する部分にエッチングを行い第1平坦化膜54及び第2平坦化膜64を除去する。その後、光電変換基板12上に表面有機膜70を形成する。次に、溝部80の底部にあたる部分にエッチングを行い、TFT保護膜層52表面を露出させるとよい。
なお、製造方法はこれに限らない。例えば、第1平坦化膜54及び第2平坦化膜64を形成する毎に、順次、エッチングにより封止領域92及び封止領域92から光電変換基板12の端部までの領域に対応する部分を除去してもよい。具体的には、第1平坦化膜54の形成後に、封止領域92及び封止領域92から光電変換基板12の端部までに対応する部分にエッチングを行い、第1平坦化膜54を除去する。さらに、第2平坦化膜64を形成し、第2平坦化膜64の形成後に、封止領域92及び封止領域92から光電変換基板12の端部までに対応する部分にエッチングを行い、第2平坦化膜64を除去する。
なお、図9に示した放射線検出装置10では、溝部80から光電変換基板12の端部には第1平坦化膜54及び第2平坦化膜64を設けていないがこれに限らない。第1平坦化膜54及び第2平坦化膜64の一方のみを設けなくても(除去しても)よい。
図9に示した放射線検出装置10では、表面有機膜70の、蛍光体層82の下部に対応する領域と封止領域92との間で段差が生じることになり、溝部80の蛍光体層82側の部分が、上記各実施の形態に比べて傾斜を有する。この傾斜を接着層84を介して防湿保護層86で封止するため、傾斜の部分における接着層84をより薄くすることができる。これにより、本実施の形態の放射線検出装置10は、水分の侵入をより抑制し、防湿保護層86による封止をより確実にすることができる。
[第4の実施の形態]
次に、第4の実施の形態について説明する。なお、本実施の形態の放射線検出装置10は溝部80の形状が上記各実施の形態と異なるため、溝部80について説明する。なお第1の実施の形態に係る放射線検出装置10と同様の部分については、同一符号を付して、詳細な説明を省略する。
図10には、本実施の形態の放射線検出装置10を、蛍光体層82が設けられた側から平面視した平面図を示す。第1の実施の形態の放射線検出装置10では、溝部80は、蛍光体層82を取り囲んでいた(図4参照)。これに対して本実施の形態の放射線検出装置10では、溝部80が、蛍光体層82の外周の辺に沿って、光電変換基板12の端部と平行に形成されている。具体的には、図10に示すように蛍光体層82が、矩形状であるため、蛍光体層82の4つの辺に沿って4つの溝部80が、光電変換基板12の端部と平行に設けられている。なお、ここで平行とは、設計上の誤差等によるずれは無視するものとしている。
溝部80の蛍光体層82の辺に沿った長さは、蛍光体層82の辺と同様であることが好ましい。また、蛍光体層82の封止領域92の幅方向の位置は、第1の実施の形態(図4参照)と同様である。一方、蛍光体層82の辺に沿った方向の位置は、各蛍光体層82の辺と溝部80の端部の辺が面一になることが好ましい(図10の破線参照)。なお、蛍光体層82の辺と溝部80の端部が面一になるとは、設計上の誤差等によるずれは無視するものとしている。
図10に示すように放射線検出装置10を形成することにより、溝部80を設ける光電変換基板12上の領域の大きさを上記各実施の形態の放射線検出装置10に比べて小さくすることができる。
以上説明したように、上記各実施の形態の放射線検出装置10では、光電変換基板12上の封止領域92内に、溝部80が設けられている。溝部80は、光電変換基板12上に形成された蛍光体層82の周囲、または外縁の周に沿った位置に設けられている。防湿保護層86は、接着層84を介して蛍光体層82及び封止領域92を覆う状態に設けられている。
接着層84は、流動性を有する状態を経て硬化することにより、接着剤として機能する。防湿保護層86を接着する場合に、流動性を有する状態を経るため、溝部80の内部に流れ込み、溝部80内部の少なくとも一部を埋める。
これにより、蛍光体層82の端部に、接着層84による液だまりが発生し、蛍光体層82の端部部分の接着層84層が厚くなることを抑制することができる。上記各実施の形態の放射線検出装置10に対する比較例として、図11に、溝部が設けられていない放射線検出装置における、蛍光体層の端部を含む断面図を示す。図11に示した比較例の放射線検出装置100では、上記各実施の形態の放射線検出装置10と同様に、光電変換基板112上に表面有機膜170が形成され、光電変換基板112上に蛍光体層182が設けられている。また、比較例の放射線検出装置100において、蛍光体層182及び封止領域192を覆う状態に接着層184を介して防湿保護層186が設けられている点は、上記各実施の形態の放射線検出装置10と同様である。しかしながら、図11の放射線検出装置100と、上記各実施の形態の放射線検出装置10(図5、7、8、9参照)を比較するとわかるように、比較例の放射線検出装置100では、溝部80が設けられていないため、蛍光体層182端部に、接着層184の液だまりが生じている。比較例の放射線検出装置100では、このように液だまりが生じることにより、接着層184の厚さがますため、外部から水分が侵入しやすくなる。そのため、比較例の放射線検出装置100の耐久性能が悪化する懸念がある。
これに対して、上記各実施の形態の放射線検出装置10では、光電変換基板12の封止領域92内に溝部80が設けられている。接着層84を介して防湿保護層86を接着する場合に、流動性を有する状態を経るため溝部80の内部に流れ込むので、蛍光体層82の端部に接着層84による液だまりが発生するのを抑制することができる。また、溝部80内部に接着層84が流れ込むことにより、封止領域92における接着層84の厚さを薄くすることができる。従って、放射線検出装置10外部からの水分の侵入を抑制することができ、放射線検出装置10の耐久性能を向上させることができる。
なお、上記各実施の形態では、図1に示したように画素20がマトリクス上に2次元配列されている場合について説明したが画素20の配列はこれに限らず、例えば、1次元配列であってもよいし、ハニカム配列であってもよい。また、画素の形状も限定されず、矩形であってもよいし、六角形等の多角形であってもよい。
また、蛍光体層82の形状等も上記各実施の形態に限らない。上記各実施の形態では、矩形状である場合について説明したが、例えば、その他の多角形状であってもよいし、円形状であってもよい。蛍光体層82は、光電変換基板12の画素20が設けられた領域(画素領域)上面を覆う状態に設けられていればよい。
また、表面有機膜70の材料も上記各実施の形態に限らない。例えば、表面有機膜70の材料は、ポリパラキシリレン(パリレン:ユニオンカーバイト商標名)、ポリ尿素、ポリアミド等の結晶性ポリマー材料でも互換性はある。
その他、上記各実施の形態で説明した放射線検出装置10等の構成及び動作等は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において状況に応じて変更可能であることはいうまでもない。
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