以下、実施形態及び例示物を示して本発明について詳細に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施形態及び例示物に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
以下の識別媒体の説明においては、別に断らない限り、識別媒体は、その観察される面を上に向けて水平に置いたものとして説明する。従って、観察された際に相対的に観察者に近い側(平面図における手前側、断面図における上側)を単に上側、相対的に観察者から遠い側を単に下側と表現することがある。
また、以下の説明において、「偏光板」とは、剛直な部材だけでなく、例えば樹脂製のフィルムのように可撓性を有する部材も含む。
また、以下の説明において、ある層と別の層とが「重なる」とは、別に断らない限り、それらの層の厚み方向から見たときに、それらの層が同じ位置にあることを示す。
また、以下の説明において、「パターン」とは、別に断らない限り、空間的なものの形を指す。このパターンには、例えば文字、数字、図形などを含む。
また、以下の説明において、「可視光領域」とは、波長400nm以上800nm以下の波長範囲を示す。
また、以下の説明において、フィルム又は層の面内レターデーションは、(nx−ny)×dで表される値を示す。また、フィルム又は層の厚み方向のレターデーションは、{(nx+ny)/2−nz}×dで表される値を示す。ここで、nxは、そのフィルム又は層の厚み方向に垂直な方向(面内方向)であって最大の屈折率を与える方向の屈折率を示す。また、nyは、そのフィルム又は層の前記面内方向であってnxの方向に直交する方向の屈折率を示す。さらに、nzは、そのフィルム又は層の厚み方向の屈折率を示す。また、dは、そのフィルム又は層の厚みを示す。これらのレターデーションは、市販の位相差測定装置(例えば、フォトニックラティス社製「WPA−micro」)あるいはセナルモン法を用いて測定しうる。
また、以下の説明において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルの両方を包含する。また、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートの両方を包含する。また、「(チオ)エポキシ」とは、エポキシ及びチオエポキシの両方を包含する。また、「イソ(チオ)シアネート」とは、イソシアネート及びイソチオシアネートの両方を包含する。
[第一実施形態]
図1は、本発明の第一実施形態に係る識別媒体を、識別対象となる物品の表面に設けた様子を模式的に示す平面図である。また、図2は、図1に示す識別媒体を、図1中の一点鎖線IIに沿って切断した断面を模式的に示す断面図である。図2において、図示の便宜のため、幅方向の寸法に対する厚み方向の寸法の比率を、実際の識別媒体の比率より大きく示している。
図1及び図2に示すように、真正性識別用の識別媒体100は、偏光解消吸収層110、粘着層120及び光反射層130を備える。また、識別媒体100は、正反射性を有する表面11を有する物品10の、表面11に設けられている。さらに、この識別媒体100は、その偏光解消吸収層110において物品10の表面11に接触している。したがって、第一実施形態においては、物品10及び識別媒体100を備える積層構造体において、物品10の表面11、偏光解消吸収層110、粘着層120及び光反射層130が、この順に設けられている。
偏光解消吸収層110は、偏光を解消できる機能を有する。すなわち、右円偏光又は左円偏光は、偏光解消吸収層110を透過することにより、右円偏光及び左円偏光を両方を含む光(部分偏光又は非偏光)になる。偏光解消吸収層110の具体的な偏光解消度は、通常0.3以上、好ましくは0.35以上、より好ましくは0.4以上であり、通常0.7以下、好ましくは0.65以下、より好ましくは0.6以下である。偏光解消吸収層110の偏光解消度を前記の範囲に収めることにより、識別媒体を右円偏光板を通して観察した場合と左円偏光板を通して観察した場合とで、明確に異なる像を表示させることができる。
ここで、ある層の偏光解消度は、次のように定義される。
ある層に厚み方向から入射する左円偏光の強度をIiL、その左円偏光が前記層を透過した透過光の強度をIt、その透過光に含まれる右円偏光の強度をItR、その透過光に含まれる左円偏光の強度をItL、前記層の透過率をtとする。この場合、以下の関係が成立する。
It=ItR+ItL
ItR=IiL×α×t
ItL=IiL×(1−α)×t
これらの式において、符号αで表されるパラメータが、その層の偏光解消度となる。
また、偏光解消吸収層110は、可視光領域において光を部分的に吸収できる機能を有する。ここで、光を部分的に吸収するとは、光を完全に吸収するのではなく、少なくとも一部の光を透過させることを表す。可視光領域における偏光解消吸収層110の具体的な平均透過率は、好ましくは40%以上、より好ましくは42.5%以上、特に好ましくは45%以上であり、また、通常60%以下、好ましくは57.5%以下、より好ましくは55%以下である。ここで、ある波長における透過率とは、当該波長を有する非偏光の入射光の光束に対する、透過光の光束の割合である。偏光解消吸収層110の可視光領域における平均透過率を前記範囲の下限値以上にすることにより、識別媒体100を右円偏光板又は左円偏光板を通して観察した場合に、光反射層130が設けられた領域で検知される光と設けられていない領域で検知される光との光量比に差異が生じる。そのため、光反射層130が設けられた領域と設けられていない領域との間に大きなコントラストが生じるので、光反射層130によるパターンP1〜P3を表示できる。この場合、黒下地を用いていないため、識別媒体100のデザイン性を高めることができる。さらに、識別媒体100を非偏光で照らした場合に識別媒体100の前面で正反射に近い反射を行わせることが可能となり、識別媒体100が設けられていることを分かり難くできる。そのため、物品の偽造の難易度を上げることができる。また、前記範囲の上限値以下にすることにより、右円偏光板を通して観察した場合と左円偏光板を通して観察した場合とで観察される像の違いを明確に視認できるようになるので、真正性の識別性を向上させることができる。
本実施形態では、図2に示すように、偏光解消吸収層110が、光吸収層111、粘着層112及び偏光解消層113を備える複層構造の層となっている例を示して、説明する。ここで例示する偏光解消吸収層110では、光吸収層111が可視光領域において光を吸収する機能を有することにより、偏光解消吸収層110が前記の平均透過率を有し、また、偏光解消層113が当該偏光解消層113を透過する光の偏光を解消する機能を有することにより、偏光解消吸収層110が前記の偏光解消度を有している。
さらに、偏光解消吸収層110は、図1に示すように、物品10の表面11の矩形の領域に設けられている。そして、図2に示すように、粘着層120を介して、光反射層130が偏光解消吸収層110上に粘着している。
光反射層130は、可視光領域の少なくとも一部において右円偏光及び左円偏光の一方を反射し、それ以外の円偏光を透過させうる層である。光反射層130が右円偏光及び左円偏光の一方を反射しうる波長領域は、物品10の正反射性を有する面11の反射波長領域と、可視光領域において一致していることが好ましい。ここで、面11の反射波長領域とは、面11が光を反射できる波長領域を示す。
本実施形態においては、可視光領域の全体が物品10の面11の反射波長領域となっていて、且つ、光反射層130が、可視光領域の全体において右円偏光(右円偏光及び左円偏光の一方に相当。)を反射し、それ以外の円偏光を透過させる例を示して説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る光反射層130は、偏光解消吸収層110と光反射層130とが、偏光解消吸収層110の一部において重なるように設けられている。具体的には、この光反射層130は、偏光解消吸収層110上のアルファベット文字「A」、「B」及び「C」からなるパターンP1〜P3に対応する領域内のみ設けられている。すなわち、光反射層130を厚み方向から観察した形状は識別可能なパターンP1〜P3となっており、これらのパターンP1〜P3に対応した領域において偏光解消吸収層110の一部と光反射層130の全体とが重なっている。
本実施形態に係る識別媒体100による真正性の識別の作用を、図面を示して説明する。実際の識別媒体においては、下記に説明する以外にも、様々な吸収及び反射が発生しうるが、以下の説明では、作用の説明の便宜上、主な光の経路を概略的に説明する。
図3〜図6は、本発明の第一実施形態に係る識別媒体100を設けた物品10の表面11において、各層並びにそれらの層において反射する光の経路を模式的に示す分解断面図である。また、図3〜図6においては、偏光解消吸収層110に含まれる光吸収層111、粘着層112及び偏光解消層113は図示しない。さらに、図3〜図6においては、粘着層120の図示は省略し、且つ、各層はそれぞれ離して示す。
まず、図3及び図4に示すように、例えば右円偏光を透過させ且つ左円偏光を遮断できる右円偏光板20を用いて、識別媒体100の上面に右円偏光を照射した場合を説明する。
図3に示すように、自然光等の非偏光A1のうちで右円偏光板20を透過した右円偏光A1Rが、光反射層130が設けられた領域に入射すると、その右円偏光A1Rは光反射層130で反射する。反射した右円偏光A2Rは識別媒体100の外部に出射する。この右円偏光A2Rは、右円偏光板20を透過できる。
また、図4に示すように、右円偏光板20を透過した右円偏光A1Rが、光反射層130が設けられていない領域に入射すると、その右円偏光A1Rは偏光解消吸収層110に入射する。この右円偏光A1Rは偏光解消吸収層110を透過することによって偏光が解消して、右円偏光及び左円偏光の両方を含む光A1Nとなり、物品10の表面11に入射する。入射した光A1Nは、表面11で反射する。この反射光A2Nは、偏光解消吸収層110を透過することによって偏光が更に解消して、識別媒体100の外部に出射する。反射光A2Nに含まれる右円偏光A2Rは右円偏光板20を透過できるが、反射光A2Nに含まれる左円偏光は右円偏光板20で遮られる。
次に、図5及び図6に示すように、例えば左円偏光を透過させ且つ右円偏光を遮断できる左円偏光板30を用いて、識別媒体100の上面に左円偏光を照射した場合を説明する。
図5に示すように、自然光等の非偏光A1のうちで左円偏光板30を透過した左円偏光A1Lが、光反射層130が設けられた領域に入射すると、その左円偏光A1Lは光反射層130を透過して、偏光解消吸収層110に入射する。この左円偏光A1Lは偏光解消吸収層110を透過することによって偏光が解消して、右円偏光及び左円偏光の両方を含む光A1Nとなり、物品10の表面11に入射する。入射した光A1Nは、表面11で反射する。この反射光A2Nは、偏光解消吸収層110を透過することによって偏光が更に解消して、光反射層130に入射する。反射光A2Nに含まれる左円偏光A2Lは、光反射層130を透過して識別媒体100の外部に出射する。この左円偏光A2Lは、左円偏光板30を透過できる。他方、反射光A2Nに含まれる右円偏光A3Rは光反射層130で反射される。反射された右円偏光A3Rは、偏光解消吸収層110で全て吸収されるか、偏光が解消することによって光反射層130を透過できるようになるまで、光反射層130と物品10の表面11との間で反射を繰り返す。
また、図6に示すように、左円偏光板30を透過した左円偏光A1Lが、光反射層130が設けられていない領域に入射すると、その左円偏光A1Lは偏光解消吸収層110に入射する。この左円偏光A1Lは偏光解消吸収層110を透過することによって偏光が解消して、右円偏光及び左円偏光の両方を含む光A1Nとなり、物品10の表面11に入射する。入射した光A1Nは、表面11で反射する。この反射光A2Nは、偏光解消吸収層110を透過することによって偏光が更に解消して、識別媒体100の外部に出射する。反射光A2Nに含まれる左円偏光A2Lは左円偏光板30を透過できるが、反射光A2Nに含まれる右円偏光は左円偏光板30で遮られる。
このような作用を有する識別媒体100の、真正性の識別の操作の例としては、下記(I)の操作が挙げられる。
(I)入射光として、右円偏光及び左円偏光の両方を含む光を用い、
(I−R)識別媒体100を、右円偏光のみを透過させうる第一フィルタとしての右円偏光板20を通して観察した場合と、
(I−L)識別媒体100を、左円偏光のみを透過させうる第二フィルタとしての左円偏光板30を通して観察した場合と
での、観察される像を対比する。
上記(I)の操作において、入射光としては、自然光等の通常の非偏光を用いうる。
このような入射光に照らされた識別媒体100を、右円偏光板20を通して観察した場合((I−R)の場合)、図3に示すように、光反射層130が設けられた領域では、観察者は光反射層130での反射光である右円偏光A2Rを検知する。この右円偏光A2Rは強度が十分に強い。
また、図4に示すように、光反射層130が設けられていない領域では、観察者は物品10の表面11での反射光に含まれる右円偏光A2Rを検知する。ところが、この右円偏光A2Rは、偏光解消吸収層110を透過することにより減衰しているので、領域の形状を特定できるほど強くは検知できない。
したがって、右円偏光板20を通して観察される像においては、光反射層130が設けられた領域で検知される光と設けられていない領域で検知される光との間に大きな光量差が生じるので、像においては光反射層130が設けられた領域と設けられていない領域との間に大きいコントラストが生じる。そのため、光反射層130での反射光である右円偏光A2Rが検知できる領域の形状として、パターンP1〜P3が表示される。
他方、入射光に照らされた識別媒体100を、左円偏光板30を通して観察した場合((I−L)の場合)、図5に示すように、光反射層130が設けられた領域では、観察者は物品10の表面11での反射光である左円偏光A2Lを検知する。ところが、この左円偏光A2Lは、偏光解消吸収層110を透過することにより減衰しているので、領域の形状を特定できるほど強くは検知できない。
また、図6に示すように、光反射層130が設けられていない領域でも、観察者は物品10の表面11での反射光である左円偏光A2Lを検知する。ところが、この左円偏光A2Lも、偏光解消吸収層110を透過することにより減衰しているので、領域の形状を特定できるほど強くは検知できない。
したがって、左円偏光板30を通して観察される像において、光反射層130が設けられた領域で検知される光と設けられていない領域で検知される光との間に大きな光量差は生じないので、像においては光反射層130が設けられた領域と設けられていない領域との間に大きいコントラストを生じない。そのため、パターンP1〜P3は表示されない。
このように、識別媒体100の光反射層130が設けられた領域と設けられていない領域との間のコントラストは、右円偏光板20を通して観察された像と左円偏光板30を通して観察された像とでは差異がある。そのため、識別媒体100を右円偏光板20を通して観察した像と左円偏光板30を通して観察した像とは、異なる。したがって、右円偏光板20を通して観察された像と左円偏光板30を通して観察された像とが異なる場合、その識別媒体100を設けられた物品10は真正なものであると判断できる。また、前記の像が同じである場合、その識別媒体を設けられた物品は真正なものでないと判断できる。
以上のように、本発明の第一実施形態に係る識別媒体100を用いれば、物品10が真正なものであるか否かを識別できる。この際、前述の(I)の操作のように、識別媒体100は、右円偏光板を通して観察した場合と左円偏光板を通して観察した場合とで異なる像が観察されるので、真正性の識別精度が高い。また、このような識別媒体100は、単に位相差フィルムを貼り付けるだけでは製造できないため、偽造が困難である。
また、識別媒体100においては、光を透過させうる偏光解消吸収層110を用いている。また、識別媒体100においては、可視光領域の全体において右円偏光を反射し、それ以外の円偏光を透過させる光反射層130を用いている。そのため、識別媒体100の偏光解消吸収層110が形成された領域において、検知される光の色を黒色以外の無色にすることができる。ここで無色とは、反射スペクトルの全可視光領域に渡って、反射率の差が少ない色であり、白、黒及び灰色を含み、さらには銀色も含まれる。したがって、本発明の第一実施形態に係る識別媒体100では、パターンP1〜P3を黒色以外の色で表示できるので、パターンP1〜P3のデザイン性を高めることが可能である。
さらに、識別媒体100においては、非偏光で照らした場合にはパターンP1〜P3を視認できない。具体的には、非偏光で照らした場合には識別媒体100の全体において正反射に近い状態となるので、偏光解消吸収層110及び光反射層130が設けられていることが分かり難い。したがって、物品10の偽造の難易度を高めることが可能である。
[第二実施形態]
前述の第一実施形態に係る識別媒体100では、厚み方向から見て、偏光解消吸収層110の一部と光反射層130の全体とが重なる構成を採用した。これに対し、厚み方向から見て、偏光解消吸収層の全体と光反射層の一部とが重なる構成を採用してもよく、偏光解消吸収層の全体と光反射層の全体とが重なる構成を採用してもよく、偏光解消吸収層の一部と光反射層の一部とが重なる構成を採用してもよい。
図7は、本発明の第二実施形態に係る識別媒体を、識別対象となる物品の表面に設けた様子を模式的に示す平面図である。また、図8は、図7に示す識別媒体を、図7中の一点鎖線VIIIに沿って切断した断面を模式的に示す断面図である。図8において、図示の便宜のため、幅方向の寸法に対する厚み方向の寸法の比率を、実際の識別媒体の比率より大きく示している。
図7及び図8に示すように、真正性識別用の識別媒体200は、偏光解消吸収層210、粘着層220及び光反射層230を備える。また、識別媒体200は、正反射性を有する面11を有する物品10の、表面11に設けられている。さらに、この識別媒体200は、その偏光解消吸収層210において物品10の表面11に接触している。したがって、第二実施形態においては、物品10及び識別媒体200を備える積層構造体において、物品10の表面11、偏光解消吸収層210、粘着層220及び光反射層230が、この順に設けられている。また、偏光解消吸収層210は、物品10に近い順に、光吸収層211、粘着層212及び偏光解消層213を備える。
偏光解消吸収層210は、物品10の表面11上のアルファベット文字「A」、「B」及び「C」からなるパターンP1〜P3に対応する領域内のみ設けられていること以外は、第一実施形態に係る偏光解消吸収層110と同様である。そして、粘着層220を介して、光反射層230が偏光解消吸収層210及び物品10の表面11上に粘着している。
光反射層230は、物品10の表面11及び偏光解消吸収層210上の矩形の領域に設けられている。すなわち、偏光解消吸収層210を厚み方向から観察した形状は識別可能なパターンP1〜P3となっており、これらのパターンP1〜P3に対応した領域において偏光解消吸収層210の全体と光反射層230の一部とが重なっている。
本実施形態に係る識別媒体200による真正性の識別の作用を、図面を示して説明する。実際の識別媒体においては、下記に説明する以外にも、様々な吸収及び反射が発生しうるが、以下の説明では、作用の説明の便宜上、主な光の経路を概略的に説明する。
図9〜図12は、本発明の第二実施形態に係る識別媒体200を設けた物品10の表面11において、各層並びにそれらの層において反射する光の経路を模式的に示す分解断面図である。また、図9〜図12においては、偏光解消吸収層210に含まれる光吸収層211、粘着層212及び偏光解消層213は図示しない。さらに、図9〜図12においては、粘着層220の図示は省略し、且つ、各層はそれぞれ離して示す。
まず、図9及び図10に示すように、例えば右円偏光板20を用いて、識別媒体200の上面に右円偏光を照射した場合を説明する。
図9及び図10に示すように、自然光等の非偏光A1のうちで右円偏光板20を透過した右円偏光A1Rが、光反射層230に入射すると、偏光解消吸収層210が設けられた領域及び設けられていない領域の両方において、その右円偏光A1Rは光反射層230で反射する。反射した右円偏光A2Rは識別媒体200の外部に出射する。この右円偏光A2Rは、右円偏光板20を透過できる。
次に、図11及び図12に示すように、例えば左円偏光板30を用いて、識別媒体200の上面に左円偏光を照射した場合を説明する。
図11に示すように、自然光等の非偏光A1のうちで左円偏光板30を透過した左円偏光A1Lが、光反射層230が設けられた領域に入射すると、その左円偏光A1Lは光反射層230を透過して、偏光解消吸収層210に入射する。この左円偏光A1Lは偏光解消吸収層210を透過することによって偏光が解消して、右円偏光及び左円偏光の両方を含む光A1Nとなり、物品10の表面11に入射する。入射した光A1Nは、表面11で反射する。この反射光A2Nは、偏光解消吸収層210を透過することによって偏光が更に解消して、光反射層230に入射する。反射光A2Nに含まれる左円偏光A2Lは、光反射層230を透過して識別媒体200の外部に出射する。この左円偏光A2Lは、左円偏光板30を透過できる。他方、反射光A2Nに含まれる右円偏光A3Rは光反射層230で反射される。反射された右円偏光A3Rは、偏光解消吸収層210で全て吸収されるか、偏光が解消することによって光反射層230を透過できるようになるまで、光反射層230と物品10の表面11との間で反射を繰り返す。
また、図12に示すように、自然光等の非偏光A1のうちで左円偏光板30を透過した左円偏光A1Lが、偏光解消吸収層光210が設けられていない領域に入射すると、その左円偏光A1Lは光反射層230を透過して、物品10の表面11に入射する。表面11は正反射性を有するので、入射した左円偏光A1Lは、表面11で反射して右円偏光A2Rとなる。この右円偏光A2Rは、光反射層230に入射する。この右円偏光A2Rは光反射層230で反射し、その反射した右円偏光A3Rは物品10の表面11に入射する。入射した右円偏光A3Rは、表面11で反射して左円偏光A4Lとなる。この左円偏光A4Lは、光反射層230を透過して識別媒体200の外部に出射する。この左円偏光A4Lは、左円偏光板30を透過できる。
このような作用を有する識別媒体200の、真正性の識別の操作の例としては、第一実施形態に係る識別媒体100による操作(I)と同様の操作が挙げられる。
上記(I)の操作において、入射光に照らされた識別媒体200を、右円偏光板20を通して観察した場合((I−R)の場合)、図9及び図10に示すように、偏光解消吸収層210が設けられた領域及び設けられていない領域の両方において、観察者は光反射層230での反射光である右円偏光A2Rを検知する。この際、偏光解消吸収層210が設けられた領域及び設けられていない領域において、検知される右円偏光A2Rの強度は同様になる。したがって、右円偏光板20を通して観察される像においては、光反射層230が設けられた領域と設けられていない領域との間に大きいコントラストは生じないので、パターンP1〜P3が表示されない。
他方、入射光に照らされた識別媒体200を、左円偏光板30を通して観察した場合((I−L)の場合)、図11に示すように、偏光解消吸収層210が設けられた領域では、観察者は物品10の表面11での反射光に含まれる左円偏光A2Lを検知する。ところが、この左円偏光A2Lは、偏光解消吸収層210を透過することにより減衰しているので、強度が弱い。
また、図12に示すように、偏光解消吸収層210が設けられていない領域では、観察者は物品10の表面11での反射光である左円偏光A4Lを検知する。この左円偏光A4Lは、偏光解消吸収層210が設けられた領域で検知される左円偏光A2Lよりも強度が十分に強い。
したがって、左円偏光板30を通して観察される像においては、光反射層230が設けられた領域と設けられていない領域との間に大きいコントラストが生じるので、左円偏光A4Lを検知できない領域の形状として、パターンP1〜P3が表示される。
このように、識別媒体200の光反射層230が設けられた領域と設けられていない領域との間のコントラストは、右円偏光板20を通して観察された像と左円偏光板30を通して観察された像とでは差異がある。そのため、識別媒体200を右円偏光板20を通して観察した像と左円偏光板30を通して観察した像とは、異なる。したがって、右円偏光板20を通して観察された像と左円偏光板30を通して観察された像とが異なる場合、その識別媒体200を設けられた物品10は真正なものであると判断できる。また、前記の像が同じである場合、その識別媒体を設けられた物品は真正なものでないと判断できる。
以上のように、本発明の第二実施形態に係る識別媒体200を用いれば、物品10が真正なものであるか否かを識別できる。また、第一実施形態に係る識別媒体100と同様の利点を得ることができる。
[第三実施形態]
前述の第一実施形態及び第二実施形態では、識別媒体自体は正反射性を有する面を有していなかった。しかし、識別媒体として、正反射性を有する面を有するものを用いてもよい。
例えば、識別媒体が、正反射性を有する面を有する基材と、この面上に設けられ、可視光領域の少なくとも一部において右円偏光及び左円偏光の一方を反射し、それ以外の円偏光を透過させうる光反射層と、基材と光反射層との間に光反射層に重なるように設けられた偏光解消吸収層とを備えるようにしてもよい。
図13は、本発明の第三実施形態に係る識別媒体を、識別対象となる物品の表面に設けた様子を模式的に示す平面図である。また、図14は、図13に示す識別媒体を、図13中の一点鎖線XIVに沿って切断した断面を模式的に示す断面図である。図14において、図示の便宜のため、幅方向の寸法に対する厚み方向の寸法の比率を、実際の識別媒体の比率より大きく示している。
図13及び図14に示すように、真正性識別用の識別媒体300は、正反射性を有する上面341を有する基材340を備えること以外は、第一実施形態に係る識別媒体100と同様の構成を有する。第三実施形態においては、物品10及び識別媒体300を備える積層構造体において、物品10、基材340、偏光解消吸収層110、粘着層120及び光反射層130がこの順に設けられていて、基材340の上面341上に偏光解消吸収層110が設けられている。
このような識別媒体300においても、例えば、第一実施形態に係る識別媒体100による操作(I)と同様の操作を行うことにより、真正性の識別を行うことができる。
また、本発明の第三実施形態に係る識別媒体300では、物品10が正反射性を有する面を有さない場合でも、真正なものであるか否かを適切に識別できる。
さらに、本発明の第三実施形態に係る識別媒体300によれば、第一実施形態に係る識別媒体100と同様の利点を得ることができる。
[変形例]
本発明の識別媒体は、上述した実施形態に限定されるものではなく、更に変更して実施してもよい。
例えば、前述の第一実施形態〜第三実施形態では、可視光領域の全体において右円偏光(右円偏光及び左円偏光の一方に相当。)を反射し、それ以外の円偏光を透過させる光反射層を用いた例を示したが、光反射層としては、可視光領域の一部において右円偏光及び左円偏光の一方を反射し、それ以外の円偏光を透過させうる層を用いてもよい。これにより、パターンP1〜P3を無色以外の所望の色で表示することが可能となり、デザインの自由度を更に高めることができる。
また、前述の第一実施形態〜第三実施形態では、パターンP1〜P3のいずれにおいても同じ構成の光反射層を用いたが、光反射層としては、パターンP1〜P3のそれぞれで異なる構成を有する光反射層を用いてもよい。
例えば、可視光領域の一部において右円偏光及び左円偏光の一方を反射しそれ以外の円偏光を透過させうる光反射層と、可視光領域の全体において右円偏光及び左円偏光の一方を反射しそれ以外の円偏光を透過させうる光反射層とを、組み合わせて用いてもよい。
また、例えば、可視光領域の一部において右円偏光及び左円偏光の一方を反射しそれ以外の円偏光を透過させうる光反射層と、可視光領域の別の一部において右円偏光及び左円偏光の一方を反射しそれ以外の円偏光を透過させうる光反射層とを、組み合わせて用いてもよい。
また、例えば、可視光領域の少なくとも一部において右円偏光及び左円偏光の一方を反射しそれ以外の円偏光を透過させうる光反射層と、可視光領域の少なくとも一部において右円偏光及び左円偏光の他方を反射しそれ以外の円偏光を透過させうる光反射層とを、組み合わせて用いてもよい。
また、例えば、前記の実施形態に係る識別媒体は、1つのパターンに対応して光反射層を1層だけ備えるものを用いたが、1つのパターンに対応して2層以上の光反射層を備えるものを用いてもよい。
この場合、例えば、1つのパターンに対応して、可視光領域の一部において右円偏光及び左円偏光の一方を反射しそれ以外の円偏光を透過させうる2層以上の光反射層を、設けてもよい。これにより、光反射層による円偏光の反射の効率を高めて、当該パターンを表示する円偏光の強さを高めることができる。
また、例えば、1つのパターンに対応して、可視光領域の一部において右円偏光を反射しそれ以外の円偏光を透過させうる光反射層と、可視光領域の別の一部において左円偏光を反射しそれ以外の円偏光を透過させうる光反射層とを組み合わせて、設けてもよい。これにより、当該パターンを、右円偏光板を通して観察した場合と左円偏光板を通して観察した場合とで異なる色により表示することができるので、デザインの自由度を高めることができる。
また、前記の実施形態に係る識別媒体では、各パターンは厚み方向からみて重なっていなかったが、パターンの一部が重なっていてもよい。例えば、可視光領域の一部において右円偏光を反射しそれ以外の円偏光を透過させうる光反射層に対応するパターンと、可視光領域の別の一部において左円偏光を反射しそれ以外の円偏光を透過させうる光反射層に対応するパターンとが、厚み方向からみて一部重なるようにしてもよい。このような場合であっても、右円偏光板を通して観察した場合と左円偏光板を通して観察した場合とでそれぞれのパターンを表示することができるので、デザインの自由度を高めることができる。
また、識別媒体は、偏光解消吸収層、粘着層、光反射層及び基材以外に任意の層を備えていてもよい。
例えば、厚み方向から見て光反射層に重なるように、面内レターデーション又は厚み方向のレターデーションを有する位相差層を設けてもよい。具体例としては、前記の実施形態において1/2波長の面内レターデーションを有する位相差層を、光反射層の上面に設けてもよい。ここで、1/2波長の面内レターデーションとは、透過光の波長範囲の中心値の1/2の値から、通常±65nm、好ましくは±30nm、より好ましくは±10nmの範囲である。前記の透過光は通常は可視光であるため、透過光の波長範囲の中心値としては、通常、可視光の波長範囲の中心値である550nmを適用する。このような位相差層を透過すると、円偏光は、その円偏光の旋光方向が逆向きになる。したがって、このような位相差層を備える識別媒体では、右円偏光板を通して観察した場合に観察される像と左円偏光板を通して観察した場合に観察される像とが、上述した実施形態で説明した像とは逆にできる。
また、位相差層を備える識別媒体の別の具体例としては、前記の実施形態において厚み方向のレターデーションを有する位相差層を、光反射層の上面に設けてもよい。この場合、例えば位相差層が面内レターデーションを有していなければ、厚み方向から観測した像は位相差層の厚み方向のレターデーションの影響を受けない。しかし、斜め方向から観測した像は、観察する方向の極角に応じた影響を受ける。例えば、ある極角において1/2波長のレターデーションを有する位相差層を備える識別媒体をその極角で観察した場合には、右円偏光で照らした場合に観察される像と左円偏光で照らした場合に観察される像とが、上述した実施形態で説明した像とは逆になる。この際、通常は、観察される像は観察する方向の方位角には依存しない。他方、この識別媒体を厚み方向から観察した場合は、右円偏光で照らした場合に観察される像と左円偏光で照らした場合に観察される像とが上述した実施形態で説明した像と同じになる。
任意の層の別の例を挙げると、保護層が挙げられる。保護層は、通常、光反射層よりも上側の最外層として設けられる。保護層を設けることにより、識別媒体の傷つき、汚れ、紫外線による劣化等を防ぐことができる。この保護層は、当該保護層を透過する光の偏光状態を変化させないことが好ましい。
さらに、識別媒体には、任意の層として、例えば、易接着層、易滑層、ハードコート層、帯電防止層、耐摩耗性層、反射防止層、色補正層、紫外線吸収層、印刷層、金属層、透明導電層、ガスバリア層、ホログラム層、剥離層、エンボス層などの機能性層を設けてもよい。
また、識別媒体は、前述した光反射層及び偏光解消吸収層の組み合わせによる真正性識別手段に加えて、他の真正性識別手段を併せて備えてもよい。例えば、ホログラム、すかし、マイクロ文字、蛍光インキ、磁気インキおよび赤外線反射インキ等の特殊インキによる印刷等の他の真正性識別手段を併せて備えてもよい。
[各構成要素]
次に、本発明の識別媒体における必須及び任意の構成要素の好ましい例をより具体的に説明する。
〔光反射層〕
光反射層としては、例えば、コレステリック規則性を有する樹脂層(以下、適宜「コレステリック樹脂層」ということがある。)を用いうる。コレステリック規則性を有する樹脂層が有するコレステリック規則性とは、一平面上では分子軸が一定の方向に並んでいるが、それに重なる次の平面では分子軸の方向が少し角度をなしてずれ、さらに次の平面ではさらに角度がずれるというように、重なって配列している平面を順次透過して進むに従って当該平面中の分子軸の角度がずれて(ねじれて)いく構造である。このように分子軸の方向がねじれてゆく構造は光学的にカイラルな構造となる。
コレステリック樹脂層は、通常、円偏光分離機能を有する。すなわち、コレステリック樹脂層は、右円偏光及び左円偏光のうちの一方の円偏光を透過させ、他方の円偏光の一部又は全部を反射させる性質を有する。コレステリック樹脂層における反射は、円偏光を、そのキラリティを維持したまま反射する。コレステリック樹脂層は、なるべく高い反射率を有し、その結果、光反射層が反射すべき波長範囲における平均反射率が高いものが、真正性の識別が明確になり、且つ、デザインの自由度が高いため、好ましい。
円偏光分離機能を発揮する波長は、コレステリック樹脂層におけるらせん構造のピッチに依存する。らせん構造のピッチとは、らせん構造において分子軸の方向が平面を進むに従って少しずつ角度がずれていき、そして再びもとの分子軸方向に戻るまでの平面法線方向の距離である。このらせん構造のピッチの大きさを変えることによって、円偏光分離機能を発揮する波長を変えることができる。
コレステリック樹脂層は、例えば、樹脂層形成用の適切な基材上にコレステリック液晶組成物の膜を設け、前記コレステリック液晶組成物の膜を硬化して得ることができる。得られた層は、そのままコレステリック樹脂層として用いることができる。このコレステリック樹脂層は、可視光領域の少なくとも一部において右円偏光及び左円偏光の一方を反射しそれ以外の円偏光を透過させうる材料自体の膜からなる光反射層となる。よって、コレステリック樹脂層自体を、光反射層として用いうる。
または、得られたコレステリック樹脂層を粉砕してフレーク状の破砕物を得て、この破砕物を透明樹脂等の適切なバインダー中に分散し、この分散物を層状の形状にしたものを、光反射層として用いてもよい。すなわち、前記のコレステリック樹脂層の破砕物は、可視光領域の少なくとも一部において右円偏光及び左円偏光の一方を反射しそれ以外の円偏光を透過させうるフレークとして用いることができるので、このフレークと適切なバインダーとを含む層として光反射層を構成してもよい。
この場合、フレーク及びバインダーを含む分散物を層状の形状に形成する方法の例としては、例えば、押出成形法及び溶剤キャスト法等の、分散物をフィルム状に成形する方法が挙げられる。さらに、例えば、前記分散物を、フレーク状の粉砕物を顔料としたインキとして調製し、このインキを文字、模様等のパターンの形状またはべた状の形状に印刷し、当該形状の光反射層を得る方法が挙げられる。フレーク状の粉砕物を用いる場合には、その破砕物の粒径は、装飾性を得る上で1μm以上であることが好ましく、中でも、コレステリック樹脂層の膜厚以上であることがより好ましい(この場合、粒径としては、同面積の円にしたときの直径をいう)。これにより、粉砕物において厚み方向の寸法よりも面内方向の寸法が大きくなるので、各粉砕物を、粉砕物の面内方向と光反射層の面内方向とが平行又は鋭角をなすように配向させやすい。そのため、光反射層に入射する光を粉砕物が効果的に受光できるようになるので、光反射層の円偏光分離機能を高めることができる。また、フィルムの成形性や印刷適性を得る上で500μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましい。
コレステリック樹脂層を形成するためのコレステリック液晶組成物としては、例えば、液晶性化合物を含有し、基材上に膜を形成した際にコレステリック液晶相を呈しうる組成物を用いることができる。ここで液晶性化合物としては、高分子化合物である液晶性化合物、及び重合性液晶性化合物を用いることができる。高い熱安定性を得る上では、重合性液晶性化合物を用いることが好ましい。かかる重合性液晶性化合物を、コレステリック規則性を呈した状態で重合させることにより、コレステリック液晶組成物の膜を硬化させ、コレステリック規則性を呈したまま硬化した非液晶性の樹脂層を得ることができる。ここで便宜上「液晶組成物」と称する材料は、2以上の物質の混合物のみならず、単一の物質からなる材料をも包含する。
コレステリック樹脂層の固有複屈折値Δnは、好ましくは0.2以上であり、より好ましくは0.22以上である。このような高いΔn値を有することにより、厚みが薄いコレステリック樹脂層であっても広い波長範囲において円偏光分離機能を発揮できる。このような高いΔn値を有するコレステリック樹脂層は、後述するコレステリック液晶組成物(X)のようなコレステリック液晶組成物を用いることにより形成することができる。Δn値が0.30以上であると、紫外線吸収スペクトルの長波長側の吸収端が可視域に及ぶ場合があるが、該スペクトルの吸収端が可視域に及んでも所望する光学的性能に悪影響を及ぼさない限り、使用可能である。他方、可視光領域の一部において円偏光分離機能を発揮させる観点では、コレステリック樹脂層の固有複屈折値Δnは任意である。特に、所望の色の光を選択的に反射させうる光反射層において、コレステリック樹脂層の固有複屈折値Δnは小さいことが好ましい場合もありえる。
可視光領域において平均反射率が高い好適なコレステリック樹脂層としては、例えば、(i)らせん構造のピッチの大きさを段階的に変化させたコレステリック樹脂層、(ii)らせん構造のピッチの大きさを連続的に変化させたコレステリック樹脂層、などが挙げられる。
(i)らせん構造のピッチを段階的に変化させたコレステリック樹脂層は、らせん構造のピッチが異なる複数のコレステリック樹脂層を形成することによって得ることができる。具体例を挙げると、このようなコレステリック樹脂層は、予めらせん構造のピッチが異なる複数のコレステリック樹脂層を作製した後に、各層を粘着剤又は接着剤を介して固着することによって製造しうる。又は、あるコレステリック樹脂層を形成した上に、他のコレステリック樹脂層を順次形成していくことによって、製造しうる。
(ii)らせん構造のピッチの大きさを連続的に変化させたコレステリック樹脂層は、その製法によって特に制限されないが、このようなコレステリック樹脂層の製法の好ましい例としては、コレステリック樹脂層を形成するための重合性液晶性化合物を含有するコレステリック液晶組成物を、好ましくは配向膜等の他の層上に塗布して液晶組成物の層を得、次いで1回以上の、光照射及び/又は加温処理により、らせん構造のピッチを連続的に変化させた状態で当該層を硬化する方法が挙げられる。かかる操作は、コレステリック樹脂層の反射帯域を拡張する操作であるので、広帯域化処理と呼ばれる。広帯域化処理を行うことにより、例えば5μm以下という薄い厚みのコレステリック樹脂層であっても、広い反射帯域を実現できるので、好ましい。
このような広帯域化処理に供するコレステリック液晶組成物の好ましい態様としては、下記に詳述するコレステリック液晶組成物(X)を挙げることが出来る。
らせん構造のピッチの大きさを連続的に変化させたコレステリック樹脂層は、1層のみを単独で用いてもよく、複数層を重ねて用いてもよい。例えば、可視光領域のうちの一部の領域において円偏光分離機能を発揮するコレステリック樹脂層と、他の領域において円偏光分離機能を発揮するコレステリック樹脂層とを組み合わせ、可視光領域のうちの広い領域において円偏光分離機能を発揮する光反射層としたものを用いてもよい。
このように、コレステリック樹脂層は、1層のみからなる樹脂層でもよく、2層以上の層からなる樹脂層であってもよい。2層以上の層を備える場合、コレステリック樹脂層は、上記(i)のコレステリック樹脂層を2層以上備えていてもよく、上記(ii)のコレステリック樹脂層を2層以上備えていてもよく、これらの両方を組み合わせて2層以上備えていてもよい。コレステリック樹脂層を構成する層の数は、製造のし易さの観点から、1層〜100層であることが好ましく、1層〜20層であることがより好ましい。上に述べた広帯域化処理の結果、1層のみで高い可視光平均反射率を有するコレステリック樹脂層を得た場合、当該層1層のみを用いるだけでも、好ましい態様の識別媒体を得ることができる。
コレステリック液晶組成物(X)は、下記式(1)で表される化合物、及び特定の棒状液晶性化合物を含有する。また、式(1)で表される化合物及び棒状液晶性化合物は、それぞれ、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
以下、これら各成分について順次説明する。
R1−A1−B−A2−R2 (1)
式(1)において、R1及びR2は、それぞれ独立して、炭素原子数1個〜20個の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、炭素原子数1個〜20個の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレンオキサイド基、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、(メタ)アクリル基、エポキシ基、メルカプト基、イソシアネート基、アミノ基、及びシアノ基からなる群より選択される基である。
前記アルキル基及びアルキレンオキサイド基は、置換されていないか、若しくはハロゲン原子で1つ以上置換されていてもよい。さらに、前記ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、(メタ)アクリル基、エポキシ基、メルカプト基、イソシアネート基、アミノ基、及びシアノ基は、炭素原子数1〜2個のアルキル基、及びアルキレンオキサイド基と結合していてもよい。
R1及びR2として好ましい例としては、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、(メタ)アクリル基、エポキシ基、メルカプト基、イソシアネート基、アミノ基、及びシアノ基が挙げられる。
また、R1及びR2の少なくとも一方は、反応性基であることが好ましい。R1及びR2の少なくとも一方として反応性基を有することにより、前記式(1)で表される化合物が硬化時にコレステリック樹脂層中に固定され、より強固な層を形成することができる。ここで反応性基とは、例えば、カルボキシル基、(メタ)アクリル基、エポキシ基、メルカプト基、イソシアネート基、及びアミノ基を挙げることができる。
式(1)において、A1及びA2はそれぞれ独立して1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキセニル基、4,4’−ビフェニレン基、4,4’−ビシクロヘキシレン基、及び2,6−ナフチレン基からなる群より選択される基を表す。前記1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキセニル基、4,4’−ビフェニレン基、4,4’−ビシクロヘキシレン基、及び2,6−ナフチレン基は、置換されていないか、若しくはハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、シアノ基、アミノ基、炭素原子数1個〜10個のアルキル基、ハロゲン化アルキル基等の置換基で1つ以上置換されていてもよい。A1及びA2のそれぞれにおいて、2以上の置換基が存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
A1及びA2として特に好ましいものとしては、1,4−フェニレン基、4,4’−ビフェニレン基、及び2,6−ナフチレン基からなる群より選択される基が挙げられる。これらの芳香環骨格は脂環式骨格と比較して比較的剛直であり、棒状液晶性化合物のメソゲンとの親和性が高く、配向均一能がより高くなる。
式(1)において、Bは、単結合、−O−、−S−、−S−S−、−CO−、−CS−、−OCO−、−CH2−、−OCH2−、−CH=N−N=CH−、−NHCO−、−OCOO−、−CH2COO−、及び−CH2OCO−からなる群より選択される。
Bとして特に好ましいものとしては、単結合、−OCO−及び−CH=N−N=CH−が挙げられる。
式(1)の化合物は、少なくとも一種が液晶性を有することが好ましく、また、キラリティを有することが好ましい。また、コレステリック液晶組成物(X)は、式(1)の化合物として、複数の光学異性体の混合物を含有することが好ましい。例えば、複数種類のエナンチオマー及び/又はジアステレオマーの混合物を含有してもよい。式(1)の化合物の少なくとも一種は、その融点が、50℃〜150℃の範囲内であることが好ましい。
式(1)の化合物が液晶性を有する場合には、Δnが高いことが好ましい。Δnが高い液晶性化合物を式(1)の化合物として用いることによって、コレステリック液晶組成物(X)としてのΔnを向上させることができ、円偏光を反射可能な波長範囲が広いコレステリック樹脂層を作製することができる。式(1)の化合物の少なくとも一種のΔnは、好ましくは0.18以上、より好ましくは0.22以上である。
式(1)の化合物として特に好ましい具体例としては、例えば下記の化合物(A1)〜(A9)が挙げられる:
上記化合物(A3)において、「*」はキラル中心を表す。
前記コレステリック液晶組成物(X)は、通常、Δnが0.18以上であって、1分子中に少なくとも2つ以上の反応性基を有する棒状液晶性化合物を含有する。
前記棒状液晶性化合物としては、式(2)で表される化合物を挙げることができる。
R3−C3−D3−C5−M−C6−D4−C4−R4 式(2)
式(2)において、R3及びR4は、反応性基であり、それぞれ独立して、(メタ)アクリル基、(チオ)エポキシ基、オキセタン基、チエタニル基、アジリジニル基、ピロール基、ビニル基、アリル基、フマレート基、シンナモイル基、オキサゾリン基、メルカプト基、イソ(チオ)シアネート基、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、及びアルコキシシリル基からなる群より選択される基を表す。これらの反応性基を有することにより、コレステリック液晶組成物を硬化させた際に、実用に耐えうる膜強度を有した硬化物を得ることができる。ここで、実用に耐えうる膜強度とは、鉛筆硬度(JIS K5400)で、通常HB以上、好ましくはH以上である。膜強度をこのように高くすることにより、傷をつきにくくできるので、ハンドリング性を高めることができる。
式(2)において、D3及びD4は、単結合、炭素原子数1個〜20個の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、及び炭素原子数1〜20個の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレンオキサイド基からなる群より選択される基を表す。
式(2)において、C3〜C6は、単結合、−O−、−S−、−S−S−、−CO−、−CS−、−OCO−、−CH2−、−OCH2−、−CH=N−N=CH−、−NHCO−、−OCOO−、−CH2COO−、及び−CH2OCO−からなる群より選択される基を表す。
式(2)において、Mは、メソゲン基を表す。具体的には、Mは、非置換又は置換基を有していてもよい、アゾメチン類、アゾキシ類、フェニル類、ビフェニル類、ターフェニル類、ナフタレン類、アントラセン類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類、アルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類の群から選択された2〜4個の骨格を、−O−、−S−、−S−S−、−CO−、−CS−、−OCO−、−CH2−、−OCH2−、−CH=N−N=CH−、−NHCO−、−OCOO−、−CH2COO−、及び−CH2OCO−等の結合基によって結合された基を表す。
前記メソゲン基Mが有しうる置換基としては、例えば、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、−O−R5、−O−C(=O)−R5、−C(=O)−O−R5、−O−C(=O)−O−R5、−NR5−C(=O)−R5、−C(=O)−NR5R7、または−O−C(=O)−NR5R7が挙げられる。ここで、R5及びR7は、水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基を表す。R5及びR7がアルキル基である場合、当該アルキル基には、−O−、−S−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−O−、−NR6−C(=O)−、−C(=O)−NR6−、−NR6−、または−C(=O)−が介在していてもよい(ただし、−O−および−S−がそれぞれ2以上隣接して介在する場合を除く。)。ここで、R6は、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表す。
前記「置換基を有してもよい炭素数1〜10個のアルキル基」における置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、シアノ基、アミノ基、炭素原子数1〜6個のアルコキシ基、炭素原子数2〜8個のアルコキシアルコキシ基、炭素原子数3〜15個のアルコキシアルコキシアルコキシ基、炭素原子数2〜7個のアルコキシカルボニル基、炭素原子数2〜7個のアルキルカルボニルオキシ基、炭素原子数2〜7個のアルコキシカルボニルオキシ基等が挙げられる。
また、棒状液晶性化合物は、非対称構造であることが好ましい。ここで非対称構造とは、式(2)において、メソゲン基Mを中心として、R3−C3−D3−C5−と−C6−D4−C4−R4が異なる構造のことをいう。棒状液晶性化合物として非対称構造のものを用いることにより、配向均一性をより高めることができる。
棒状液晶性化合物のΔnは、好ましくは0.18以上、より好ましくは0.22以上である。Δn値が0.30以上の棒状液晶性化合物を用いると、紫外線吸収スペクトルの長波長側の吸収端が可視域に及ぶ場合があるが、該スペクトルの吸収端が可視域に及んでも所望する光学的性能に悪影響を及ぼさない限り、使用可能である。このような高いΔnを有する棒状液晶性化合物を用いることにより、高い光学的性能(例えば、円偏光の選択反射性能)を有するコレステリック樹脂層を得ることができる。
棒状液晶性化合物の好ましい具体例としては、以下の化合物(B1)〜(B9)が挙げられる。ただし、棒状液晶性化合物は、下記の化合物に限定されるものではない。
コレステリック液晶組成物(X)において、(式(1)の化合物の合計重量)/(棒状液晶性化合物の合計重量)の重量比は、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.1以上、特に好ましくは0.15以上であり、好ましくは1以下、より好ましくは0.65以下、特に好ましくは0.45以下である。前記の重量比を前記範囲の下限値以上にすることにより、配向均一性を高めることができる。また、上限値以下にすることにより、配向均一性を高くでき、液晶相の安定性を高くでき、さらには液晶組成物としてのΔnを高くして所望の光学的性能(例えば、円偏光を選択的に反射させる特性)を安定して得ることができる。ここで、合計重量とは、1種類を用いた場合にはその重量を示し、2種類以上を用いた場合には合計の重量を示す。
コレステリック液晶組成物(X)においては、式(1)の化合物の分子量が600未満であることが好ましく、棒状液晶性化合物の分子量が600以上であることが好ましい。これにより、式(1)の化合物がそれよりも分子量の大きい棒状液晶性化合物の隙間に入り込むことができ、配向均一性を向上させることができる。
コレステリック液晶組成物(X)等のコレステリック液晶組成物は、硬化後の膜強度向上及び耐久性向上のために、任意に架橋剤を含有しうる。架橋剤としては、コレステリック液晶組成物の膜の硬化時に同時に反応したり、硬化後に熱処理を行って反応を促進したり、又は湿気により自然に反応が進行して、コレステリック樹脂層の架橋密度を高めることができ、かつ配向均一性を悪化させないものを適宜選択し用いることができる。そのため、例えば、紫外線、熱、湿気等で硬化する任意の架橋剤を好適に使用できる。架橋剤としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルアクリレート等の多官能アクリレート化合物;グリシジル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル等のエポキシ化合物;2,2−ビスヒドロキシメチルブタノール−トリス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、4,4−ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート等のアジリジン化合物;ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートから誘導されるイソシアヌレート型イソシアネート、ビウレット型イソシアネート、アダクト型イソシアネート等のイソシアネート化合物;オキサゾリン基を側鎖に有するポリオキサゾリン化合物;ビニルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン等のアルコキシシラン化合物;が挙げられる。また、架橋剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。さらに、架橋剤の反応性に応じて公知の触媒を用いてもよい。触媒を用いることにより、コレステリック樹脂層の膜強度及び耐久性向上に加えて、生産性を向上させることができる。
架橋剤の量は、コレステリック液晶組成物の膜を硬化して得られる硬化膜中における架橋剤の量が0.1重量%〜15重量%となるようにすることが好ましい。架橋剤の量を前記範囲の下限値以上にすることにより、架橋密度を効果的に高めることができる。また、上限値以下にすることにより、コレステリック液晶組成物の膜の安定性を高めることができる。
コレステリック液晶組成物は、任意に光開始剤を含有しうる。光開始剤としては、例えば、紫外線又は可視光線によってラジカル又は酸を発生させる公知の化合物が使用できる。光開始剤の具体例としては、ベンゾイン、ベンジルメチルケタール、ベンゾフェノン、ビアセチル、アセトフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンジルイソブチルエーテル、テトラメチルチウラムモノ(ジ)スルフィド、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、メチルベンゾイルフォーメート、2,2−ジエトキシアセトフェノン、β−アイオノン、β−ブロモスチレン、ジアゾアミノベンゼン、α−アミルシンナックアルデヒド、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、2−クロロベンゾフェノン、pp’−ジクロロベンゾフェノン、pp’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn−プロピルエーテル、ベンゾインn−ブチルエーテル、ジフェニルスルフィド、ビス(2,6−メトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、アントラセンベンゾフェノン、α−クロロアントラキノン、ジフェニルジスルフィド、ヘキサクロルブタジエン、ペンタクロルブタジエン、オクタクロロブテン、1−クロルメチルナフタリン、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−2−(o−ベンゾイルオキシム)]や1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]エタノン1−(o−アセチルオキシム)などのカルバゾールオキシム化合物、(4−メチルフェニル)[4−(2−メチルプロピル)フェニル]ヨードニウムヘキサフルオロフォスフェート、3−メチル−2−ブチニルテトラメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニル−(p−フェニルチオフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート等が挙げられる。また、これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。さらに、必要に応じて公知の光増感剤又は重合促進剤としての三級アミン化合物を用いて、硬化性をコントロールしてもよい。
光開始剤の量は、コレステリック液晶組成物中0.03重量%〜7重量%であることが好ましい。光開始剤の量を前記範囲の下限値以上にすることにより、重合度を高くできるので、コレステリック樹脂層の膜強度を高めることができる。また、上限値以下にすることにより、液晶材料の配向を良好にできるので、コレステリック液晶組成物の液晶相を安定にできる。
コレステリック液晶組成物は、任意に界面活性剤を含有しうる。界面活性剤としては、例えば、配向を阻害しないものを適宜選択して使用しうる。このような界面活性剤としては、例えば、疎水基部分にシロキサン又はフッ化アルキル基を含有するノニオン系界面活性剤が好適に挙げられる。中でも、1分子中に2個以上の疎水基部分を持つオリゴマーが特に好適である。これらの界面活性剤の具体例としては、OMNOVA社のPolyFoxのPF−151N、PF−636、PF−6320、PF−656、PF−6520、PF−3320、PF−651、PF−652;ネオス社のフタージェントのFTX−209F、FTX−208G、FTX−204D;セイミケミカル社のサーフロンのKH−40;等を用いることができる。また、界面活性剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
界面活性剤の量は、コレステリック液晶組成物を硬化して得られる硬化膜中の界面活性剤の量が0.05重量%〜3重量%となるようにすることが好ましい。界面活性剤の量を前記範囲の下限値以上にすることにより、空気界面における配向規制力を高くできるので、配向欠陥を防止できる。また、上限値以下にすることにより、過剰の界面活性剤が液晶分子間に入り込むことによる配向均一性の低下を防止できる。
コレステリック液晶組成物は、任意にカイラル剤を含有しうる。通常、コレステリック樹脂層のねじれ方向は、使用するカイラル剤の種類及び構造により適宜選択できる。ねじれを右方向とする場合には、右旋性を付与するカイラル剤を用い、ねじれ方向を左方向とする場合には、左旋性を付与するカイラル剤を用いることで、実現できる。カイラル剤の具体例としては、特開2005−289881号公報、特開2004−115414号公報、特開2003−66214号公報、特開2003-313187号公報、特開2003−342219号公報、特開2000−290315号公報、特開平6−072962号公報、米国特許第6468444号公報、国際公開第98/00428号、特開2007−176870号公報、等に掲載されるものを適宜使用することができ、例えばBASF社パリオカラーのLC756として入手できる。また、カイラル剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
カイラル剤の量は、所望する光学的性能を低下させない範囲で任意に設定しうる。カイラル剤の具体的な量は、コレステリック液晶組成物中で、通常1重量%〜60重量%である。
コレステリック液晶組成物は、必要に応じてさらに他の任意成分を含有しうる。この任意成分としては、例えば、溶媒、ポットライフ向上のための重合禁止剤、耐久性向上のための酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤等を挙げることができる。また、これらの任意成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。これらの任意成分の量は、所望する光学的性能を低下させない範囲で任意に設定しうる。
コレステリック液晶組成物の製造方法は、特に限定されず、上記各成分を混合することにより製造することができる。
例えば、透明樹脂等のフィルムからなる基材の表面上に、必要に応じてコロナ放電処理及びラビング処理等の処理を施し、さらに必要に応じて配向膜を設け、さらにこの面上にコレステリック液晶組成物の膜を設け、さらに必要に応じて配向処理及び/又は硬化の処理を行うことにより、コレステリック樹脂層を得ることができる。
コレステリック樹脂層の形成に用いうる基材としては、製造工程上の観点から厚みが50μm以上で且つ全光透過率が80%以上のものが好ましい。基材としては、例えば、脂環式オレフィンポリマー、ポリエチレンやポリプロピレンなどの鎖状オレフィンポリマー、トリアセチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリイミド、ポリアリレート、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、変性アクリルポリマー、エポキシ樹脂、ポリスチレン、アクリル樹脂などの合成樹脂からなる単層又は積層のフィルムが挙げられる。これらの中でも、脂環式オレフィンポリマー又は鎖状オレフィンポリマーが好ましく、透明性、低吸湿性、寸法安定性、軽量性などの観点から、脂環式オレフィンポリマーが特に好ましい。
配向膜は、例えば、基材表面上に、必要に応じてコロナ放電処理等を施した後、配向膜の材料を溶媒に溶解させた溶液を塗布し、乾燥させ、その後ラビング処理を施すことにより形成することができる。
配向膜の材料としては、例えば、セルロース、シランカップリング剤、ポリイミド、ポリアミド、ポリビニルアルコール、エポキシアクリレート、シラノールオリゴマー、ポリアクリロニトリル、フェノール樹脂、ポリオキサゾール、環化ポリイソプレンなどを用いることができる。中でも、変性ポリアミドが特に好ましい。
変性ポリアミドとしては、例えば、芳香族ポリアミド又は脂肪族ポリアミドに変性を加えたものを挙げることができる。中でも、脂肪族ポリアミドに変性を加えたものが好ましい。具体例としては、ナイロン−6、ナイロン−66、ナイロン−12、3元ないし4元共重合ナイロン、脂肪酸系ポリアミド、又は脂肪酸系ブロック共重合体(例えばポリエーテルエステルアミド、ポリエステルアミド)に変性を加えたものを挙げることができる。当該変性としては、例えば、末端アミノ変性、カルボキシル変性、ヒドロキシル変性などの変性、並びにアミド基の一部をアルキルアミノ化又はN−アルコキシアルキル化する変性を挙げることができる。N−アルコキシアルキル化変性ポリアミドとしては、例えば、ナイロン−6、ナイロン−66、又はナイロン−12等の共重合ナイロンのアミド基の一部をN−メトキシメチル化したものが挙げられる。変性ポリアミドの重量平均分子量は、好ましくは5000〜500000、より好ましくは10000〜200000である。
また、配向膜の厚みは、所望するコレステリック液晶組成物の層の配向均一性が得られる厚みとしうる。具体的には、0.001μm以上が好ましく、0.01μm以上がより好ましく、また、5μm以下が好ましく、2μm以下がより好ましい。
基材上又は配向膜上へのコレステリック液晶組成物の塗布は、公知の方法、例えば押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法、バーコーティング法等により実施することができる。
配向処理は、例えばコレステリック液晶組成物の膜を50℃〜150℃で0.5分間〜10分間加温することにより行うことができる。配向処理を施すことにより、膜中のコレステリック液晶組成物を良好に配向させることができる。
硬化の処理は、1回以上の光照射と加温処理との組み合わせにより行うことができる。
加温条件は、例えば、通常40℃以上、好ましくは50℃以上、また、通常200℃以下、好ましくは140℃以下の温度において、通常1秒以上、好ましくは5秒以上、また、通常3分以下、好ましくは120秒以下の時間としうる。
また、光照射に用いる光とは、可視光のみならず紫外線及びその他の電磁波をも含む。光照射は、例えば、波長200nm〜500nmの光を0.01秒〜3分照射することにより行うことができる。
ここで、0.01mJ/cm2〜50mJ/cm2の微弱な紫外線照射と加温とを複数回交互に繰り返すことにより、らせん構造のピッチの大きさを連続的に大きく変化させた、反射帯域の広い円偏光分離機能を得ることができる。さらに、上記の微弱な紫外線照射等による反射帯域の拡張を行った後に、50mJ/cm2〜10,000mJ/cm2といった比較的強い紫外線を照射し、液晶性化合物を完全に重合させることにより、コレステリック樹脂層を得ることができる。上記の反射帯域の拡張及び強い紫外線の照射は、空気下で行ってもよく、又はその工程の一部又は全部を、酸素濃度を制御した雰囲気(例えば、窒素雰囲気下)中で行ってもよい。
配向膜等の他の層上へのコレステリック液晶組成物の塗布及び硬化の工程は、1回に限られず、塗布及び硬化を複数回繰り返して2層以上のコレステリック樹脂層を形成してもよい。ただし、コレステリック液晶組成物(X)等のコレステリック液晶組成物を用いることにより、1回のみのコレステリック液晶組成物の塗布及び硬化によっても、良好に配向したΔnが0.18以上の棒状液晶性化合物を含み、かつ5μm以上といった厚みのコレステリック樹脂層を容易に形成することができる。
得られたコレステリック樹脂層は、基材及び配向膜と共にそのまま光反射層として用いてもよく、必要に応じて基材等を剥離しコレステリック樹脂層のみを転写して光反射層として用いてもよい。
また、前述のように、得られたコレステリック樹脂層を粉砕し、その粉砕物からなるフレークとバインダーとを含む層を光反射層として用いてもよい。このような光反射層は、例えば、フレーク及びバインダーを含む組成物を、例えば押出成形法及び溶剤キャスト法等の成形方法によって層状に成形する方法により製造しうる。
また、光反射層は、例えば、コレステリック樹脂層の粉砕物からなるフレーク、溶媒、及びバインダー、並びに必要に応じて任意の成分を含むインキを基材上に塗布し、乾燥させることにより製造しうる。
溶媒としては、例えば水等の無機溶媒を用いてもよいが、通常は有機溶媒を用いる。有機溶媒の例を挙げると、ケトン類、アルキルハライド類、アミド類、スルホキシド類、ヘテロ環化合物、炭化水素類、エステル類、およびエーテル類などの有機溶媒が挙げられる。これらの中でも、環境への負荷を考慮した場合にはケトン類が好ましい。また、溶媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
溶媒の量は、コレステリック樹脂層の粉砕物100重量部に対して、通常40重量部以上、好ましくは60重量部以上、より好ましくは80重量部以上であり、通常1000重量部以下、好ましくは800重量部以下、より好ましくは600重量部以下である。溶媒の量を前記範囲とすることで、インキの塗布性を良好にできる。
バインダーとしては、通常、重合体を用いる。その重合体の例としては、ポリエステル系ポリマー、アクリル系ポリマー、ポリスチレン系ポリマー、ポリアミド系ポリマー、ポリウレタン系ポリマー、ポリオレフィン系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマー、ポリビニル系ポリマーなどが挙げられる。バインダーは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
バインダーの量は、コレステリック樹脂層の粉砕物100重量部に対して、通常20重量部以上、好ましくは40重量部以上、より好ましくは60重量部以上であり、通常1000重量部以下、好ましくは800重量部以下、より好ましくは600重量部以下である。バインダーの量を前記範囲とすることで、インキの塗布性を良好にできる。また、光反射層にコレステリック樹脂層の粉砕物を安定して固定することができる。
インキが含みうる任意の成分としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、ブルーイング剤等が挙げられる。また、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
前記のインキを基材に塗布し、乾燥させることにより、コレステリック樹脂層の粉砕物からなるフレークとバインダーとを含む層として光反射層が得られる。
また、前記のインキは、バインダーとしての重合体の代わりに、又は重合体と組み合わせて、その重合体の単量体を含んでいてもよい。この場合、インキを基材に塗布し、乾燥させた後で単量体を重合させることにより、コレステリック樹脂層の粉砕物からなるフレークとバインダーとを含む光反射層を製造できる。ただし、単量体を含む場合は、インキは、重合開始剤を含むことが好ましい。
光反射層の厚みは、十分な反射率を得る観点から、0.1μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましい。また、光反射層の透明性を得る観点から、20μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましく、5μm以下であることが特に好ましい。ここで、光反射層の厚みは、光反射層が2層以上の層である場合は、各層の厚みの合計を指し、光反射層が1層である場合にはその厚みを指す。
〔偏光解消吸収層〕
偏光解消吸収層としては、例えば、偏光を解消する機能を有する偏光解消層と、光を吸収する機能を有する光吸収層とを備える複層構造の層を用いうる。
(偏光解消層)
偏光解消層としては、液晶性化合物を含む層、又は、その層において液晶性化合物の配向状態を固定化した層を用いうる。また、この偏光解消層は、配向が揃った複数の液晶性化合物からなる肉眼で確認できない大きさの微小な液晶ドメインを多数含み、且つ、前記の液晶ドメインの配向性がランダムになっている。このように微小な液晶ドメインを多数含み、且つ、その液晶ドメインの配向性がランダムになっている配向状態は、「ポリドメイン配向」と呼ばれる。
ポリドメイン配向においては、液晶ドメインの配向性がランダムであるために、液晶ドメインの配向性が互いに打ち消される。そのため、ポリドメイン配向を示す液晶性化合物を含む層は、巨視的に見ると配向性を示さない。また、このポリドメイン配向を示す液晶性化合物を含む層において液晶性化合物を重合させた場合、通常は前記のポリドメイン配向が固定化されるので、同様に、巨視的に見ると配向性を示さない。
このようにポリドメイン配向を有する偏光解消層によれば、マクロ的には液晶性化合物の配向がランダム又はほぼランダムであるため、入射した偏光の一部または全部を非偏光に変換することができる。すなわち、偏光の電界成分の一部または全部にランダム性を付与することができる。このようなポリドメイン配向は、直線偏光を円偏光または楕円偏光に変換しうる1/4波長板のように液晶性化合物全体がある一方向に配向した配向状態とは明確に区別される。
このような偏光解消層は、例えば、配向処理されていない樹脂フィルムの表面に、液晶性化合物を含む液晶組成物を塗布した後、必要に応じて乾燥することにより、その液晶性化合物を含む層を形成する工程を経て好適に製造できる。また、こうして得られた液晶性化合物を含む層を偏光解消層として用いてもよいが、その層に含まれる液晶性化合物の配向状態を、液晶性化合物の重合により固定化することが好ましい。
液晶性化合物としては、例えば、ネマチック液晶性化合物を用いうる。その具体例を挙げると、特開2011−257479号公報に記載の液晶性化合物が挙げられる。特に、液晶性化合物の配向状態を固定化するべく重合を行う観点では、液晶性化合物として重合性基を有する液晶性化合物を用いることが好ましい。また、液晶性化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
また、液晶組成物は、溶媒を含んでいてもよい。溶媒としては、通常、液晶性化合物を溶解し得る溶媒であって、液晶性化合物の重合反応に不活性なものを用いる。溶媒の例としては、水;メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、乳酸エチル等のエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族溶媒;アセトニトリル等のニトリル系溶媒;テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒;およびクロロホルム、クロロベンゼン等の塩素化炭化水素溶媒などが挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
また、液晶組成物は、重合開始剤を含んでいてもよい。重合開始剤を用いることにより、液晶化合物を重合させて、液晶化合物のポリドメイン配向を固定化することができる。重合開始剤としては、熱重合開始剤を用いてもよく、光重合開始剤を用いてもよい。中でも、光重合の方が低温で安定的に重合することが可能であるので、光重合開始剤が好ましい。
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ベンジルケタール類、α−ヒドロキシケトン類、α−アミノケトン類、ヨードニウム塩およびスルホニウム塩等が挙げられる。より具体的には、いずれも商品名で、「イルガキュア(Irgacure)907」、「イルガキュア184」、「イルガキュア651」、「イルガキュア819」、「イルガキュア250」、「イルガキュア369」(以上、全てチバスペシャルティケミカルズ社製);「セイクオールBZ」、「セイクオールZ」、「セイクオールBEE」(以上、全て精工化学社製);「カヤキュアー(kayacure)BP100」(日本化薬社製);「カヤキュアーUVI−6992」(ダウ社製);「アデカオプトマーSP−152」、「アデカオプトマーSP−170」(以上、全て旭電化社製)などを挙げることができる。
熱重合開始剤としては、例えば、2、2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、4、4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)などのアゾ系開始剤;過酸化ベンゾイルなどの過酸化物などを挙げることができる。
また、重合開始剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
重合開始剤の量は、液晶性化合物の合計100重量部に対して、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは0.5重量部以上であり、好ましくは30重量部以下、より好ましくは10重量部以下である。これにより、液晶性化合物の配向を乱さないで重合することができる。
また、液晶組成物は、重合禁止剤を含んでいてもよい。重合禁止剤を用いることにより、液晶性化合物の重合を制御することができる。そのため、得られる偏光解消層の安定性を向上させたり、保存時における液晶組成物の安定性を向上させたりすることができる。
重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、アルキル基等の置換基を有するハイドロキノンなどのハイドロキノン類;アルキル基等の置換基を有するカテコール(ブチルカテコール等)などのカテコール類;ピロガロール類;2,2、6,6、−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシラジカル等のラジカル補足剤;チオフェノール類;β−ナフチルアミン類;およびβ−ナフトール類等を挙げることができる。また、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
重合禁止剤の量は、液晶性化合物の合計100重量部に対して、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは0.5重量部以上であり、好ましくは30重量部以下、より好ましくは10重量部以下である。これにより、液晶性化合物の配向を乱さないで重合することができる。
また、液晶組成物は、光増感剤を含んでいてもよい。光増感剤を用いることにより、光重合を行う場合に、液晶性化合物の重合を高感度化することができる。
光増感剤としては、例えば、キサントン、チオキサントン等のキサントン類;アントラセン、アルコキシ基等の置換基を有するアントラセンなどのアントラセン類;フェノチアジン;およびルブレンを挙げることができる。また、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
光増感剤の量は、液晶性化合物の合計100重量部に対して、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは0.5重量部以上であり、好ましくは30重量部以下、より好ましくは10重量部以下である。これにより、液晶性化合物の配向を乱さないで重合することができる。
さらに、液晶組成物は、所望の偏光解消層が得られる限り、上述した成分以外の任意の成分を含んでいてもよい。その例を挙げると、レベリング剤などが挙げられる。また、任意の成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
前記の液晶組成物を塗布される樹脂フィルムの表面には、例えば配向処理等の表面処理は施さない。すなわち、表面処理を施されていない未配向処理の表面上に、液晶組成物を塗布する。樹脂フィルムの表面の配向処理を実施すると、液晶性化合物の分子がすべて一方向に配向し、得られる偏光解消層は一般的な波長板又はこれに類似したものとなって偏光を解消する機能が低下する可能性がある。これに対し、未配向処理の表面上に液晶組成物を塗布することにより、ミクロな液晶ドメインのそれぞれにおいて液晶性化合物を一方向に配向させ、且つ、液晶ドメインの集合全体としては液晶性化合物の配向がランダム又はほぼランダムなポリドメイン配向構造を形成することができる。そして、このようなポリドメイン配向構造を実現することにより、偏光解消層に偏光を解消する機能を付与することが可能となる。この際、液晶組成物が界面活性剤を含んでいる場合には、偏光解消層を構成するミクロな液晶ドメインのサイズを制御することが可能である。
液晶組成物の塗布方法としては、例えば、マイクログラビアコート法、ダイコート法、カンマコート法、リップコート法、スピンコート法、バーコート法等を用いうる。
液晶組成物の塗布後、必要に応じて、得られた液晶組成物の層を乾燥させる。乾燥により、液晶組成物の層に含まれる溶媒が除去される。乾燥温度は、残存溶媒の低減の観点から、好ましくは30℃以上、より好ましくは50℃以上であり、また、樹脂フィルム及び液晶性化合物の熱劣化を防止する観点から、好ましくは250℃以下、より好ましくは180℃以下である。
このように液晶組成物を塗布し、必要に応じて乾燥することにより、液晶性化合物を含む層が得られる。この液晶性化合物を含む層を、そのまま偏光解消層として用いてもよい。しかし、通常は、この層に含まれる液晶性化合物を重合させることにより、液晶性化合物の配向状態を固定化させることが好ましい。液晶性化合物の重合は、光重合であってもよく、熱重合であってもよい。中でも、低温で安定的に重合することが可能であるため、光重合が好ましい。
光重合の場合、通常、光重合開始剤の開裂を可能とする波長の光を液晶性化合物を含む層に照射する。この際の光源は、使用する光重合開始剤の種類に応じて適宜選択しうる。光源の具体例を挙げると、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、フュージョンランプ等の紫外線ランプを好適に用いることができる。
他方、熱重合の場合は、通常、液晶性化合物を含む層を、熱重合開始剤が開裂して重合が開始される温度まで加熱する。
以上のような方法により、液晶性化合物を含む層、又は、その層において液晶性化合物の配向状態を固定化した層として、偏光解消層が得られる。通常は、この偏光解消層は、樹脂フィルムから剥がして使用される。特に、光吸収層上に偏光解消層を貼り合わせ、その後で樹脂フィルムを剥がすことにより、光吸収層上に偏光解消層を転写することが好ましい。このように転写により光吸収層上に偏光解消層を設けることによって、外部ヘイズや界面反射を低減させることができ、透明性が高くなり、パターンが表示されるときの像のコントラストを高めることができる。
前記の偏光解消層は、液晶組成物のコーティングにより製造しているの、厚みを薄くでき、また、透明性にも優れる。
具体的には、偏光解消層の厚みは、好ましくは5.0μm以下、より好ましくは3.0μm以下であり、また、十分な偏光解消機能を発揮する観点から、好ましくは0.2μm以上、より好ましくは0.5μm以上である。
また、偏光解消層のヘイズは、好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下である。ここで、ヘイズは、JIS K 7105 に従って、(拡散透過率/全光線透過率)×100(%)で定義される。
(光吸収層)
光吸収層は、例えば、光を吸収しうる光吸収剤と、バインダーとを含む層が挙げられる。
光吸収剤としては、顔料を用いることが好ましい。また、顔料と、この顔料の分光透過率曲線を補正しうる染料とを組み合わせて用いることが、より好ましい。
顔料としては、例えば、可視光領域に吸収をもつ顔料であって、可視光領域において均一な吸収をもつ顔料を用いうる。顔料の具体例としては、カーボンブラック;元素周期表の第4周期の3族〜11族に属する金属の酸化物、窒化物、および窒酸化物から選ばれる少なくとも1種以上の無機粒子が好ましい。また、無機粒子としては、粒子径が100nm以下の無機超微粒子であることがより好ましい。また、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
染料としては、可視光領域に吸収をもつ染料を用いうる。中でも、顔料の分光透過率曲線を補正する吸収を持つものが好ましい。このような染料の具体例としては、SDA4137、SDA4428、SDA9800、SDA9811、SDB3535(以上SANDS社製);KAYASORBシリーズ、Kayasetシリーズ(以上日本化薬社製)等が挙げられる。また、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
バインダーとしては、例えば、重合体が挙げられる。バインダーとして用いうる重合体の具体例を挙げると、エポキシ系重合体、オキセタン系重合体、シリコーン系重合体、メラミン系重合体、(メタ)アクリル系重合体が挙げられる。また、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
光吸収剤の量は、バインダー100重量部に対して、好ましくは0.01重量部以上、より好ましくは0.05重量部以上であり、好ましくは20重量部以下、より好ましくは10重量部以下である。光吸収剤の量を前記の範囲に収めることにより、光吸収層の光の平均透過率を所望の範囲に収めることができる。
光吸収層は、光吸収剤及びバインダー以外にも、必要に応じて任意の成分を含んでいてもよい。任意の成分の例を挙げると、酸化防止剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。また、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
光吸収層は、例えば、前記の光吸収剤及びバインダーを含む材料を層状に成形することにより、製造しうる。この際、成形方法としては、例えば、押出成形法及び溶剤キャスト法等が挙げられる。
また、例えば、前記の光吸収剤を含む硬化性樹脂を用意し、この硬化性樹脂をインキとして印刷し、必要に応じて乾燥及び硬化を行うことにより、光吸収層を製造してもよい。すなわち、例えば光吸収剤と、熱又は放射線により重合又は架橋を生じうる単量体又は重合体と、溶媒とを含む硬化性樹脂を用意する。中でも、放射線により重合又は架橋を生じうる単量体又は重合体、並びに必要に応じて重合開始剤又は架橋剤を含む放射線硬化性樹脂を用いることが好ましい。その後、用意した硬化性樹脂を印刷し、必要に応じて乾燥を行った後で、放射線の照射等の硬化処理によって硬化性樹脂を硬化させて、光吸収層を製造してもよい。
また、例えば、特開2010−156765号公報に記載の方法により、光吸収層を製造してもよい。
光吸収層における光の平均透過率は、例えば、光吸収層に含まれる光吸収剤の量を調整することにより、制御できる。
光吸収層の厚みは、特に制限はないが、所定の特性を保つ範囲で、できる限り薄くすることが好ましい。これにより、光学へイズを抑えることができ、パターンを鮮明に表示させることができる。具体的な光吸収層の厚みは、通常は0.1μm〜1000μmである。
〔粘着層〕
粘着層は、例えば、粘着性を発現するポリマー(以下において単に「主ポリマー」という場合がある。)を含む粘着性組成物の層を用いうる。また、前記の粘着性組成物は、必要に応じて硬化させておいてもよい。
主ポリマーとしては、例えば、アクリル系、ウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド、ポリビニルエーテル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルホルマール、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチレン−酢酸ビニル系、エチレン−アクリル酸エステル系、エチレン−塩化ビニル系、スチレン−ブタジエン−スチレン等の合成ゴム系、エポキシ系、シリコーン系のポリマーを使用することができる。また、主ポリマーは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。中でも、アクリル系、ウレタン系、エチレン−酢酸ビニル系が好ましく用いられる。
アクリル系ポリマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸のような不飽和カルボン酸;(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸とポリエチレングリジコール又はポリプロピレングリコールとのモノエステルなどのヒドロキシル基含有ビニル単量体;(メタ)アクリル酸グリシジルなどのエポキシ基含有ビニル単量体;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシプロピルなどの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル;(メタ)アクリルアミド、メチロール(メタ)アクリアミド、メトキシエチル(メタ)アクリルアミドなどのアミド基含有ビニル単量体;メタクリロキシプロピルメトキシシランなどのケイ素含有ビニル単量体;(メタ)アクリロイルアジリジンなどのアジリジン基含有ビニル単量体;(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、スチレン、メチルスチレンなどの芳香族基含有ビニル単量体;(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニルなどの脂環式アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル;エチレングリコールジ(メタ)アクリリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリロイル基を2個以上有する単量体;その他酢酸ビニル、塩化ビニル、マクロモノマー、ジビニルベンゼンなどの単一重合体ないし複数の単量体の共重合体を挙げることができる。
ウレタン系ポリマーとしては、例えば、一般的なポリオールとイソシアネート化合物との反応物を挙げることができる。
ポリオールとしては、例えば、メチレンオキサイド鎖、エチレオキサイド鎖、エチレンオキサイド鎖、プロピレンオキサイド鎖、ブチレンオキサイド鎖などのアルキレンオキサイド鎖の繰り返し構造を単独で、あるいは2種類以上有するポリエーテルポリオール;テレフタル酸、アジピン酸、セバチン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、トリメット酸などの酸化合物とエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ブチレングリコール、1,6−ヘキサングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3,3’−ジメチロールヘプタン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ブチルエチルペンタンジオールなどのグリコール成分とのエステル化反応により得られるポリエステルポリオール;上記酸化合物とグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどのポリオールとの反応で得られるポリエステルポリオール;ポリカプロラクトン、ポリ(β−メチル−γ−バレロラクトン)、ポリバレロラクトンなどのラクトン類の開環重合で得られるポリエステルポリオールなどを挙げることができる。
イソシアネート化合物としては、例えば、1,3−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニレンメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−トルイジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート;トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、ドデカンメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート;ω,ω’−ジイソシアネート−1,3−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,3−ジエチルベンゼン、1,4−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,3−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどの芳香族脂肪族ポリイソシアネート;3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネートメチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,4’−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンなどの脂環族ポリイソシアネートなどを挙げることができる。
エチレン−酢酸ビニル系共重合体としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体やエチレン−酢酸ビニル−カルボン酸共重合体が挙げられ、好ましくは酢酸ビニルの共重合率が10重量%〜46重量%のものを挙げることができる。
主ポリマーの重量平均分子量は、好ましくは10,000以上、より好ましくは50,000以上であり、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは500,000以下である。重量平均分子量を前記範囲の下限値以上にすることにより、粘着層の白化を防止できる。また、上限値以下とすることにより、ゲル化を防止でき、また、粘着性組成物の粘度を低くして取り扱い易くできる。
粘着性組成物は、主ポリマーに加えて、アセトフェノン含有化合物をさらに含有してもよい。アセトフェノン含有化合物は、主ポリマー100重量部に対して0.5重量部〜10重量部用いることが好ましい。アセトフェノン含有化合物とは、アセトフェノン及びアセトフェノンの水素原子の1以上が任意の基で置換された化合物である。アセトフェノン含有化合物としては、例えば、アセトフェノンの−CH3基が脂環式化合物又はその誘導体で置換された化合物(1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン等)、及びベンゾインエーテル含有化合物(ベンゾインの−OH基の水素原子が他の有機基で置換された構造を有するエーテル、及び当該エーテルの水素原子の1以上が任意の基で置換された化合物)を挙げることができる。
アセトフェノン含有化合物の具体例を挙げると、アセトフェノン、メトキシアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン(IRG651 チバスペシャリティケミカルズ社製)、α−ヒドロキシ−α,α’−ジメチルアセトフェノン(DAROCURE1173 チバスペシャリティケミカルズ社製)、2−ヒドロキシ−2−シクロヘキシルアセトフェノン(IRG184 チバスペシャリティケミカルズ社製)、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパノン−1−オン(IRG907 チバスペシャリティケミカルズ社製)、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(IRG2959チバスペシャリティケイミカルズ社製)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1−オン(IRG369 チバスペシャリティケミカルズ社製)などを挙げることができる。また、特にベンゾインエーテル含有化合物としては、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルブチルエーテルなどを挙げることができる。これらアセトフェノン含有化合物を含有することにより、粘着層としての性能をより良好にすることができる。
粘着性組成物には、主ポリマーの種類に応じて、さらに任意の配合剤を配合することができる。任意の配合剤としては、例えば、粘着付与剤、架橋剤又は硬化剤、酸化防止剤、消泡剤、安定剤等が挙げられる。また、配合剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
粘着付与剤は、軟らかくなりかつ固体表面が濡れやすくなった主ポリマーに、粘着力を付与できるものである。このような粘着付与剤としては、例えば、ロジンおよびロジン誘導体、ポリテルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、クマロン−インデン樹脂、石油樹脂、水素化石油樹脂などが挙げられる。これらの中でも、透明性や主ポリマーとの相溶性に優れる点で、石油樹脂、水素化石油樹脂、テルペンフェノール樹脂が好ましい。
粘着付与剤の量は、主ポリマー100重量部に対して、好ましくは2重量部以上、より好ましくは5重量部以上であり、好ましくは50重量部以下、より好ましくは20重量部以下である。粘着付与剤の量を前記範囲の下限値以上にすることにより、粘着付与剤の効果を安定して発現させることができる。また、上限値以下にすることにより、粘着剤の凝集力の低下を防止できる。
架橋剤又は硬化剤としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルアクリレート等の多官能アクリレート化合物;トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、トリメチロールプロパントリレンジイソシアネート、ジフェニルメタントリイソシアネートなどの多官能イソシアネート架橋剤又は硬化剤;エチレングリコールグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、などのエポキシ系架橋剤又は硬化剤;ビニルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン,2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン,N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシランなどのシラン系架橋剤又は硬化剤;メラミン樹脂系架橋剤;金属キレート系架橋剤;アミン系架橋剤が用いられる。
架橋剤又は硬化剤の量は、主ポリマー100重量部に対して、好ましくは0.001重量部以上、より好ましくは0.01重量部以上であり、好ましくは10重量部以下、より好ましくは3重量部以下である。架橋剤又は硬化剤の量を前記範囲の下限値以上にすることにより、架橋剤の効果を安定して発現させることができるので、耐候性試験での発泡及び剥離を防止できる。また、上限値以下にすることにより、粘着剤の応力緩和性を高め、識別媒体のソリを防止することができる。
酸化防止剤としては、例えば、テトラキス(メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタン等のフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤が挙げられる。酸化防止剤の量は、粘着層の透明性及び粘着力が低下しない範囲で任意に設定しうる。
粘着性組成物の温度23℃におけるせん断貯蔵弾性率は、0.1MPa〜10MPaであることが好ましい。かかる範囲のせん断貯蔵弾性率とすることにより、粘着性組成物が適度な粘着性を有し得る。ただし、これに限らずより高いせん断貯蔵弾性率を有する、いわゆるホットメルト型接着剤も、粘着性組成物として用いうる。
粘着性組成物の調製方法は、均一な混合および分散状態が得られる任意の方法を用いうる。例えば、上記各成分を加熱、攪拌、超音波処理等で混合することにより、粘着性組成物を調製しうる。
粘着層の厚みは、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上であり、好ましくは30μm以下、より好ましくは25μm以下である。粘着層の厚みを前記範囲の下限値以上にすることにより、高い接着強度が得られる。また、上限値以下にすることにより、透過率等の光学性能を良好にできる。
〔位相差層〕
位相差層としては、例えば、延伸フィルムを用いることができる。延伸フィルムの材料としては、例えば、樹脂を用いうる。この樹脂が含む重合体としては、例えば、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリビニルアルコール、ポリメチルメタクリレート、シクロオレフィン重合体等が挙げられる。また、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
また、位相差層としては、例えば、液晶性化合物を配向させた膜、又は、その膜において液晶性化合物を重合させた膜などを用いてもよい。このような膜は、例えば、重合性基を有する棒状液晶性化合物を含む液晶性組成物をフィルム上に塗布して液晶性組成物の層を得て、その棒状液晶性化合物を重合させることにより、製造しうる。また、この場合、必要に応じて、重合の前に液晶性組成物の層を乾燥させたり、液晶性組成物の層において棒状液晶性化合物を配向させたりしてもよい。
この場合、棒状液晶性化合物としては、ネマチック相又はスメクチック相を発現しうる棒状液晶化合物が好適に用いられ、より好ましくはネマチック相を発現しうる棒状液晶化合物が用いられる。その例を挙げると、例えば、特開2002−030042号公報、特開2004−204190号公報、特開2005−263789号公報、特開2007−119415号公報、特開2007−186430号公報などに記載された重合性基を有する棒状液晶化合物を用いることができる。また、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。さらに、液晶性組成物は、棒状液晶性化合物以外に、例えば溶媒、重合開始剤、界面活性剤、架橋剤等の任意の成分を含んでいてもよい。
〔基材〕
基材としては、例えば、正反射性を有する面を有するフィルムを用いうる。このような基材は、例えば、金属膜を有するフィルムが挙げられる。通常は、この金属膜の表面が、正反射性を有する面となっている。
前記の金属膜を形成する金属としては、例えば、アルミニウム、銀、チタン、亜鉛、クロム、ニッケル、鉄、等が挙げられる。また、金属膜を形成する金属は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
また、基材は、前記の金属膜に加え、任意の層を備えていてもよい。例えば、基材の機械的強度を向上させる観点から、紙又は樹脂の層を備えていてもよい。
[正反射性を有する面を有する物品]
前記の識別媒体は、正反射性を有する面を有する任意の物品に適用しうる。正反射性を有する面は、可視光領域において右円偏光が反射することにより左円偏光になり、また、左円偏光が反射することにより右円偏光になる面であれば、その形状及び材質は任意である。このような正反射性を有する面は、例えば、金属膜の表面などが挙げられる。
識別媒体を適用しうる物品の具体例としては、医薬品、化粧品、香水およびトナーなどの容器、開封シール、包装物、紙幣、証券、金券、旅券、電子機器、バッグ、衣服、布地、クレジットカード、セキュリティカード、情報を図形化したコード(例えばバーコード等の1次元のコード、並びにQRコード(登録商標)等の2次元のコード)を付した物品、並びに各種証明等に施す偽造防止のための識別標識等が挙げられる。
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、別に断らない限り重量基準である。また、以下の操作は、別に断らない限り、常温常圧大気中にて行った。
[評価方法]
〔フィルム又は層の厚みの測定方法〕
フィルム又は層の厚みは、光学干渉式膜厚計(フィルメトリクス社製「F20−EXR」)を用いて測定した。
〔偏光解消吸収層の偏光解消度の測定方法〕
右円偏光を透過させ左円偏光を吸収する右円偏光板と、左円偏光を透過させ右円偏光を吸収する左円偏光板とを用意した。右円偏光板及び左円偏光板で偏光解消吸収層を挟みこみ、(右円偏光板)/(偏光解消吸収層)/(左円偏光板)の層構造を有するサンプルを用意した。
用意したサンプルを分光光度計(日本分光社製「UV−VIS550)」に設置した。左円偏光板に厚み方向から波長560nmの光を照射して、左円偏光板、偏光解消吸収層及び右円偏光板をこの順に透過した光の強度を測定した。
また、リファレンスとして用いるため、分光光度計に左円偏光板を設置し、同様の条件で左円偏光板を透過する光の強度を測定した。
前記のようにサンプルを透過した光の強度を測定することにより、左円偏光板、偏光解消吸収層及び右円偏光板を透過した右円偏光の強度を測定できる。この右円偏光の強度ItRは、次の式で表される。
ItR=IiL×α×t
(IiLは、左円偏光板を透過し、偏光解消吸収層に入射する左円偏光の強度を表す。また、αは、偏光解消吸収層の偏光解消度を表す。さらに、tは、偏光解消吸収層の透過率を表す。)
前記式のパラメータのうち、偏光解消吸収層に入射する左円偏光の強度IiLとしては、リファレンスとして測定した左円偏光板を透過する光の強度を用いられる。また、偏光解消吸収層の透過率tは、その偏光解消吸収層が備える光吸収層の透過率を用いる。
前記の式に、サンプルを透過した右円偏光の強度ItRの値を代入して、偏光解消層の偏光解消度αを計算した。
〔平均反射率の測定方法〕
実施例及び比較例において、識別媒体の平均反射率は、分光光度計(日本分光社製「UV−VIS550」)を用いて測定した。
[比較例1]
〔1.1.偏光解消吸収層の製造〕
重合性を有する液晶性化合物(BASF社製「LC242」)100.00部、重合開始剤(チバスペシャルティケミカルズ社製「イルガキュアOXE02」)3.20部、界面活性剤(セイミケミカル社製「KH40」)0.11部、及び、メチルエチルケトン415.48部を混合して、液状のネマチック液晶性組成物を得た。
脂環式オレフィンポリマーからなるフィルム(オプテス社製「ゼオノアフィルムZF−14−100」)に、ラビング処理等の表面処理を行うことなく、前記のネマチック液晶性組成物を#10のワイヤーバーで塗布して、ネマチック液晶性組成物の層を得た。
得られたネマチック液晶性組成物の層を90℃で1分保持することにより配向処理を施して、その層に含まれる液晶性化合物の配向状態をポリドメイン配向にした。その後、ネマチック液晶性組成物の層に80mJ/cm2で5秒間UV照射をして硬化させて、脂環式ポリオレフィンポリマーからなるフィルム及び偏光解消層を備える複層フィルムを得た。
粘着剤として、無色透明の粘着剤からなるインキを用意した。このインキは、アクリル酸エステル共重合体の溶液(綜研化学社製「SKダイン2094」、固形分率25%、溶媒:酢酸エチル/2−ブタノン=93/7)400部と多官能エポキシ架橋剤(綜研化学社製「E−AX」)1.1部との混合物である。
また、光吸収層として、可視光領域における平均透過率が40%の市販のNDフィルターフィルム(エドモンド社製「ラミネートNDフィルターフィルム」)を用意した。
光吸収層上に粘着剤を塗布し、100℃2分間で乾燥させて、粘着層を形成した。この粘着層を介して、脂環式ポリオレフィンポリマーからなるフィルム及び偏光解消層を備える複層フィルムの偏光解消層と、前記の光吸収層とを貼り合わせた。その後、偏光解消層から脂環式ポリオレフィンポリマーからなるフィルムを剥がして、(偏光解消層)/(粘着層)/(光吸収層)の層構成を有する偏光解消吸収層を得た。
この偏光解消吸収層の偏光解消度を、上述した要領で測定した。
〔1.2.光反射層の形成〕
脂環式オレフィンポリマーからなるフィルム(株式会社オプテス製「ゼオノアフィルムZF14−100」)の両面にコロナ放電処理を施した。濃度5%のポリビニルアルコールの水溶液を当該フィルムの片面に塗布した。得られたポリビニルアルコール水溶液の膜を乾燥して、厚み0.1μmの配向膜を形成した。次いで、この配向膜をラビング処理し、配向膜を有する透明樹脂基材を製造した。
下記式(A)で示す重合性液晶性化合物22.5部、下記式(B)で示す重合性非液晶性化合物11部、カイラル剤(BASF社製「LC756」)2.3部、重合開始剤(チバスペシャルティケミカルズ社製「イルガキュアOXE02」)1.2部、界面活性剤(セイミケミカル社製「KH40」)0.04部、及び溶媒としてシクロペンタノン60部を混合し、コレステリック液晶組成物を調製した。
配向膜を有する透明樹脂基材の配向膜を有する面に、コレステリック液晶組成物を、♯10のワイヤーバー塗布した。得られたコレステリック液晶組成物の膜を100℃で5分間配向処理し、当該膜に対して0.1mJ/cm2〜45mJ/cm2の微弱な紫外線による照射処理と、それに続く100℃で1分間の加温処理からなるプロセスを2回繰り返した。その後、コレステリック液晶組成物の膜に、窒素雰囲気下で800mJ/cm2の紫外線を照射して、厚さ5.0μmのコレステリック樹脂層を光反射層として形成し、(光反射層)/(配向膜)/(透明樹脂基材)の層構成を有する複層物を得た。
〔1.3.粘着層の形成〕
粘着剤を、前記工程〔1.1〕で用意した偏光解消吸収層上の、厚み方向から見て所定のパターンとなる領域に印刷した。その後、100℃で2分間乾燥し、偏光解消吸収層上に粘着層を形成した。これにより、(粘着層)/(偏光解消層)/(粘着層)/(光吸収層)の層構成を有する複層物を得た。
〔1.4.光反射層の転写〕
前記工程〔1.3〕で得られた(粘着層)/(偏光解消層)/(粘着層)/(光吸収層)の層構成を有する複層物の、粘着層側の面に、前記工程〔1.2〕で得られた(光反射層)/(配向膜)/(透明樹脂基材)の層構成を有する複層物を貼り合わせた。この際、粘着層と光反射層とが接するように、貼り合わせを行った。その後、光反射層から配向膜及び透明樹脂基材を剥離することにより、粘着層を形成した領域に光反射層を転写して、(光反射層)/(粘着層)/(偏光解消層)/(粘着層)/(光吸収層)の層構成を有する識別媒体を得た。この識別媒体において光反射層は、粘着層を印刷したパターンに対応する領域にだけ設けられていて、厚み方向から見た形状は前記パターンとなっていた。
〔1.5.評価〕
正反射性を有する面を有する物品として、表面にアルミニウム層(厚み25μm)を有するシートを用意した。このシートのアルミニウム層側の面と、識別媒体の光吸収層側の面とを、前記の粘着剤を用いて貼り合わせ、サンプルを得た。
得られたサンプルを、光反射層が上向きになるように、水平に置いた。
光反射層上に、右円偏光を透過させ且つ左円偏光を遮断できる右円偏光板を置いた。そして、この右円偏光板に非偏光を照射し、光反射層が形成された領域及び形成されていない領域それぞれの、可視光領域における平均反射率を測定した。
さらに、前記の右円偏光板を、左円偏光を透過させ且つ右円偏光を遮断できる左円偏光板に取り替えた。そして、この左円偏光板に非偏光を照射し、光反射層が形成された領域及び形成されていない領域それぞれの、可視光領域における平均反射率を測定した。
[実施例1及び2、並びに比較例2及び3]
前記工程〔1.1〕において、ネマチック液晶性組成物を塗布する際のワイヤーバーを#2、#4、#6、#8のいずれかに変更することにより、偏光解消層の厚みを表1に示すように変更したこと以外は比較例1と同様にして、識別媒体を製造し、評価した。
[比較例4]
偏光解消吸収層の代わりに、可視光領域における平均透過率が40%の市販のNDフィルターフィルム自体を用いたこと以外は比較例1と同様にして、識別媒体を製造し、評価した。
[実施例3及び4、並びに比較例5〜7]
表1に示すように、光吸収層として、可視光領域における平均透過率が60%の市販のNDフィルターフィルム(エドモンド社製「ラミネートNDフィルターフィルム」)を用いたこと以外は実施例1及び2並びに比較例1〜3と同様にして、識別媒体を製造し、評価した。
[比較例8]
偏光解消吸収層の代わりに、可視光領域における平均透過率が60%の市販のNDフィルターフィルム自体を用いたこと以外は比較例1と同様にして、識別媒体を製造し、評価した。
[比較例9〜13]
表1に示すように、光吸収層として、可視光領域における平均透過率が80%の市販のNDフィルターフィルム(エドモンド社製「ラミネートNDフィルターフィルム」)を用いたこと以外は実施例1及び2並びに比較例1〜3と同様にして、識別媒体を製造し、評価した。
[比較例14]
偏光解消吸収層の代わりに、可視光領域における平均透過率が80%の市販のNDフィルターフィルム自体を用いたこと以外は比較例1と同様にして、識別媒体を製造し、評価した。
[比較例15〜19]
表1に示すように、光吸収層の代わりに、可視光領域における平均透過率が100%のフィルム(株式会社オプテス製「ゼオノアフィルムZF14−100」)を用いたこと以外は実施例1及び2並びに比較例1〜3と同様にして、識別媒体を製造し、評価した。
[比較例20]
偏光解消吸収層の代わりに、可視光領域における平均透過率が100%のフィルム自体を用いたこと以外は比較例1と同様にして、識別媒体を製造し、評価した。
[結果]
前記の実施例及び比較例において測定された、光反射層が設けられた領域に対する光反射層が設けられていない領域の光量比を、表1に示す。また、実施例1及び2並びに比較例1〜4の前記光量比と偏光解消吸収層の偏光解消度との関係を、図15に示す。また、実施例3及び4並びに比較例5〜8の前記光量比と偏光解消吸収層の偏光解消度との関係を、図16に示す。また、比較例9〜14の前記光量比と偏光解消吸収層の偏光解消度との関係を、図17に示す。さらに、比較例15〜20の前記光量比と偏光解消吸収層の偏光解消度との関係を、図18に示す。
表1及び図15〜図18において、「L110」は、左円偏光板を用いて測定された反射率であって、識別媒体の光反射層が設けられていない領域の反射率を表す。また、「L130」は、左円偏光板を用いて測定された反射率であって、識別媒体の光反射層が設けられた領域の反射率を表す。したがって、「L110/L130」は、左円偏光板を用いて測定された場合における、光反射層が設けられた領域に対する光反射層が設けられていない領域の光量比を表す。
表1及び図15〜図18において、「R110」は、右円偏光板を用いて測定された反射率であって、識別媒体の光反射層が設けられていない領域の反射率を表す。また、「R130」は、右円偏光板を用いて測定された反射率であって、識別媒体の光反射層が設けられた領域の反射率を表す。したがって、「R110/R130」は、右円偏光板を用いて測定された場合における、光反射層が設けられた領域に対する光反射層が設けられていない領域の光量比を表す。
[検討]
上述した実施例及び比較例の構成において真正性の適切な識別を行うためには、右円偏光板を通して観察した場合にパターンが表示され、左円偏光板を通して観察した場合にパターンが表示されないようにすることが求められる。
右円偏光板を通して目視で観察した場合にパターンが明確に表示されるには、右円偏光板を通して検知される光の強度が、光反射層が設けられた領域と設けられていない領域とで十分大きいコントラストを有することが求められる。具体的には、光量比R110/R130が、略0.2以下であることが好ましい。
また、左円偏光板を通して目視で観察した場合にパターンが表示されないようにするには、左円偏光板を通して検知される光の強度が、光反射層が設けられた領域と設けられていない領域とで十分小さいコントラストを有することが求められる。具体的には、光量比L110/L130が、略0.8以上であることが好ましい。
表1並びに図15〜図18から分かるように、実施例においては、光量比R110/R130が十分小さく、かつ、光量比L110/L130が十分に大きい。したがって、実施例に係る識別媒体においては、真正性を適切に識別できることが確認された。
また、比較例においては、光量比R110/R130が十分に小さくないか、または、光量比L110/L130が十分に大きくない。そのため、比較例に係る識別媒体においては、真正性を適切に識別できないことが確認された。