A.第1実施例:
A−1.継電器の構成:
図1は、第1実施例における継電器5を備えた電気回路1の構成を示す説明図である。本実施例の電気回路1は、例えばハイブリッドカーや電気自動車といった車両に搭載される。電気回路1は、直流電源(蓄電池)2と、継電器5と、電流変換装置3と、負荷としてのモータ4とを備える。電流変換装置3は、インバータおよびコンバータとしての機能を有する。直流電源2からモータ4に電力が供給される電力供給時(直流電源2の放電時)には、電流変換装置3により変換された交流電流がモータ4に供給されてモータ4が駆動される。また、モータ4で回生されたエネルギーを直流電源2に充電する充電時には、電流変換装置3により変換された直流電流が直流電源2に蓄電される。継電器5は、直流電源2と電流変換装置3との間に設けられ、直流大電流(例えば、数十から数百アンペア)の通電のオン/オフ制御を行う。例えば、車両に異常が発生した場合には、継電器5によって直流電源2と電流変換装置3との電気的接続を遮断する。
図2は、継電器5の外観斜視図である。図3は、継電器5の上面外観図である。図4は、継電器5の断面図である。図5は、継電器5の断面斜視図である。各図には、方向を特定するためにXYZ軸が図示されている。本明細書では、継電器5の構成をわかりやすく説明するため、便宜的に、Z軸正方向(後述の可動接触子50の可動接点58が固定端子10の固定接点18に近づく方向であり、請求項における第1の方向に相当する)を上方向と呼び、Z軸負方向(後述の可動接触子50の可動接点58が固定端子10の固定接点18から遠ざかる方向であり、請求項における第2の方向に相当する)を下方向とも呼ぶものとする。継電器5の設置態様に応じて、各軸に対応する方向は変化し得る。
図2および図3に示すように、継電器5は、継電器本体6と、継電器本体6(より詳細には後述の固定接点18および可動接点58)を挟むように設置された一対の永久磁石800とを備える。継電器本体6は、樹脂製のケース(図示しない)に収容されている。
図2ないし図5に示すように、継電器本体6は、一対の固定端子10と、可動接触子50と、駆動機構90と、第1の容器20と、接合部材30と、ベース部32と、鉄心用容器80とを備える。なお、本明細書では、接合部材30とベース部32と鉄心用容器80とをまとめて第2の容器92とも呼ぶ。
固定端子10は、底部を有する略円筒形状の部材であり、導電性を有する材料(例えば銅を含む金属材料)により形成されている。固定端子10は、中心軸TLがZ軸方向となり、底部が下側(Z軸負方向側)に位置するように配置されている。本実施例では、一対の固定端子10の中心軸TL間を結ぶ方向がY軸方向である。固定端子10は、電気回路1(図1)の各配線を接続するための接続口12を有する。以下では、一対の固定端子10のうち、直流電源2からモータ4に電流が供給される際(電力供給時)に電流が流入する側をプラス固定端子10Wとも呼び、電流が流出する側をマイナス固定端子10Xとも呼ぶ。固定端子10は、底部の下側に配置された固定接触部19を有する。固定接触部19は、固定端子10の他の部分と同じ材料により形成されていてもよいし、アークによる損傷をより効果的に抑制するために耐熱性のより高い材料(例えばタングステン)により形成されているとしてもよい。固定接触部19における可動接触子50と対向する側の端面(下側の端面)には、固定接点18が形成される。固定端子10における上側(Z軸正方向側)には、略円筒形状の本体部から径方向外側に広がるフランジ部13が形成されている。
第1の容器20は、底部を有する箱形状の部材であり、絶縁性を有する材料(例えばアルミナやジルコニア等のセラミック)により形成された耐熱性に優れた部材である。第1の容器20は、上側に位置する底部24と、第1の容器20の側面(Z軸方向に略平行な面)を形成する側面部22とを有する。第1の容器20における底部24と対向する側(すなわち下側)は開口している。第1の容器20の底部24には、2つの固定端子10が挿入される2つの貫通孔26が形成されている。第1の容器20の貫通孔26に固定端子10が挿入された状態で、各固定端子10のフランジ部13は、第1の容器20の底部24の外側表面(上側の表面)に気密に接合されている。より詳細には、以下の構成により、固定端子10が第1の容器20に接合されている。固定端子10のフランジ部13における第1の容器20の底部24と対向する部分には、固定端子10と第1の容器20との接合部分の破損を抑制するためのダイヤフラム部17が形成されている。ダイヤフラム部17は、固定端子10と第1の容器20との材質の違いによる熱膨張差によって生じる接合部分の応力を緩和する。ダイヤフラム部17は、貫通孔26よりも内径が大きい円筒形状であり、例えばコバール等の合金により形成されている。ダイヤフラム部17は、固定端子10のフランジ部13にろう付け(例えば銀ろう)により接合されている。また、ダイヤフラム部17は、第1の容器20の底部24にろう付けにより接合される。なお、ダイヤフラム部17と固定端子10は一体の部材であってもよい。
接合部材30は、下端部と上端部とに開口が形成された略環状の部材であり、例えば金属材料により形成されている。また、ベース部32は、略矩形状の部材であり、例えば鉄といった金属磁性材料により形成されている。ベース部32の略中央には、後述するロッド60の軸部60aが挿通される貫通孔が形成されている。接合部材30の上端部(開口の周囲の縁部)は、第1の容器20の下端部(開口の周囲の縁部)とろう付けにより気密に接合されている。また、接合部材30の下端部は、ベース部32とレーザー溶接等により気密に接合されている。なお、接合部材30の側面は、下側から上側に向かう方向(Z軸正方向)において、一部分がY軸方向に屈曲している。こうすることで、接合部材30が全体としてZ軸方向に沿って容易に弾性変形可能となり、接合部材30と第1の容器20との熱膨張差により発生する応力が緩和される。
鉄心用容器80は、下端部に底部を有し上端部に開口を有する円筒形状の部材であり、非磁性体で形成されている。鉄心用容器80の上端部は、全周に亘ってベース部32の貫通孔周縁とレーザー溶接等により気密に接合されている。
このように、上述した各部材(固定端子10、第1の容器20、接合部材30、ベース部32、鉄心用容器80)が互いに気密に接合されることで、継電器本体6の内部に、固定端子10の固定接触部19(固定接点18)と可動接触子50とが収容される気密空間100が形成される。気密空間100には、アーク発生による固定接触部19や可動接触子50の発熱を抑制するために、例えば水素又は水素を主体とするガスが大気圧以上(例えば、2気圧)で封入されている。すなわち、上述の各部材の接合後、気密空間100の内側と外側とを連通する通気パイプ69を介して気密空間100内が真空引きされ、その後、通気パイプ69を介して気密空間100内に水素等のガスが所定圧になるまで封入される。水素等のガスが所定圧封入された後、水素等のガスが気密空間100から外側に漏れ出さないように、通気パイプ69が加締められる。
可動接触子50は、略平板形状の部材であり、導電性を有する材料(例えば銅を含む金属材料)により形成されている。可動接触子50は、後述するロッド60の軸部60aが挿通される貫通孔55が形成された中央部52と、中央部52から一対の固定端子10W,10Xが対向する対向方向(Y軸方向)に延びる可動接触部57とを有する。可動接触部57における固定端子10の固定接触部19と対向する部分には、可動接点58が形成されている。可動接点58は、可動接触子50が上方向(Z軸正方向)に移動した際に固定端子10と接触する可動接触部57の部分である。
可動接触子50の下方向(Z軸負方向)側には、凹部が形成されている。すなわち、図4に示した断面において、Z軸方向に沿った中央部52の厚さは可動接触部57の厚さより薄くなっている。可動接触子50の凹部には、例えば鉄やステンレスといった磁性体により形成された第2の磁性体部材140が固定されている。第2の磁性体部材140を可動接触子50に固定する方法としては、例えば圧入による方法や接着による方法といった任意の公知の方法が採用可能である。第2の磁性体部材140の中心付近には、後述するロッド60の軸部60aが貫通する貫通孔が形成されている。
駆動機構90は、可動接触子50を上下方向(Z軸方向)に移動させて、継電器5のオン状態とオフ状態とを切り替える。駆動機構90は、ロッド60と、ベース部32と、固定鉄心70と、可動鉄心72と、鉄心用容器80と、コイル44と、コイルボビン42と、コイル用容器40と、ばね64とを有する。コイル44は、中空円筒状の樹脂製のコイルボビン42に巻き付けられている。コイル用容器40は、磁性体であり、例えば鉄等の金属磁性材料により形成されている。コイル用容器40は直方体状であり、内側にコイル44を収容する。鉄心用容器80は、上述のごとく有底筒状であり、底部にはゴム86が配置されている。固定鉄心70は、円柱状であり、上端から下端に亘って貫通孔70hが形成されている。固定鉄心70の一部は鉄心用容器80の内側に収容されている。固定鉄心70は、ベース部32に溶接等により固定されている。可動鉄心72は、円柱状であり、貫通孔72hが上端から下端近傍に亘って形成されている。可動鉄心72は、鉄心用容器80の底部上にゴム86を介して収容されている。また、可動鉄心72の上端面は、固定鉄心70の下端面と対向するように配置されている。コイル44に通電することで、可動鉄心72は固定鉄心70に吸引され上方向に移動する。ばね64は、可動鉄心72と固定鉄心70との間に配置され、互いに離間する方向に両部材70,72を付勢する。ロッド60は、非磁性体である。ロッド60は円柱状の軸部60aと、軸部60aの上端に設けられた円板状の一端部60bと、軸部60aの下端に設けられた円弧状の他端部60cとを有する。軸部60aは、上下方向(可動接触子50の移動方向)に移動自在となるように可動接触子50に挿通されている。一端部60bは、コイル44に電流を流していない状態において、可動接触子50の中央部52における上側(固定端子10対向する側)の面上に配置されている。他端部60cは、溶接等により可動鉄心72に取り付けられている。一端部60bは、駆動機構90が動作していない状態において、可動接触子50における上側(固定端子10対向する側)の表面に当接し、可動接触子50が固定端子10の方向に移動することを規制する。一端部60bは、請求項における規制部に相当する。
ロッド60の軸部60aには、圧縮コイルばね62を配置するための取付部材67が配置されている。圧縮コイルばね62は、一端が取付部材67に当接し、他端が可動接触子50の下側表面(正確には、可動接触子50に固定された第2の磁性体部材140の表面)に当接している。圧縮コイルばね62は、可動接点58と固定接点18とが近づく方向(Z軸正方向、上方向)に可動接触子50を付勢する。
A−2.継電器の切り替え動作:
次に、継電器5におけるオン状態とオフ状態との切り替え動作について説明する。コイル44に通電し駆動機構90を動作させると、可動鉄心72が固定鉄心70に吸引される。すなわち、可動鉄心72がばね64の付勢力に抗して固定鉄心70に近づき、固定鉄心70に当接する。可動鉄心72が上方向に移動すると、可動鉄心72に固定されたロッド60も上方向に移動する。これによりロッド60の一端部60bも上方向に移動する。これにより、可動接触子50の可動接点58と対応する固定端子10の固定接点18とが接触し、2つの固定端子10W,10Xが可動接触子50を介して互いに導通して、継電器5がオン状態となる。オン状態の継電器5は、電気回路(図1)において、直流電源2と電流変換装置3とを電気的に接続する。なお、可動接点58と対応する固定端子10の固定接点18との間の距離(接点間距離)を、可動鉄心72と固定鉄心70との間の距離(鉄心間距離)より所定距離だけ短く設定することにより、可動接点58と固定接点18との接触後、圧縮コイルばね62が圧縮され、接点に対して適正な接圧力をかけることができる。
一方、コイル44への通電を遮断し駆動機構90が非動作状態となると、主にばね64の付勢力により可動鉄心72が固定鉄心70から離れるように下方向に移動する。これにより、ロッド60の一端部60bに押されて可動接触子50も下方向(固定接点18から離れる方向)に移動する。そのため、可動接触子50の可動接点58と対応する固定端子10の固定接点18とが非接触状態となり、2つの固定端子10間の導通が遮断されて、継電器5がオフ状態となる。オフ状態の継電器5は、電気回路1において、直流電源2と電流変換装置3とを電気的に遮断する。
このように、本実施例の駆動機構90は、駆動用部材(ロッド60や圧縮コイルばね62、可動鉄心72)を介して可動接触子50を固定端子10に近づく方向および固定端子10から遠ざかる方向に移動させることにより継電器5のオフ状態とオン状態とを切り替える。より具体的には、駆動機構90は、駆動用部材の移動(例えばロッド60の移動)と変形(例えば圧縮コイルばね62の変形)との少なくとも一方を介して可動接触子50を移動させることにより継電器5のオフ状態とオン状態とを切り替える。
なお、可動接点58が固定接点18から引き離される際には、接点間や固定端子10の表面でアークが発生する場合があるが、発生したアークは、継電器本体6の可動接点58および固定接点18を挟むように設置された永久磁石800によってY軸方向(固定端子10の中心軸TL間を結ぶ方向)に沿って引き伸ばされ、消弧が促進される。
A−3.磁性体部材について:
図4および図5に示すように、継電器本体6は、気密空間100内における可動接触子50より上側の位置に、例えば鉄やステンレスといった磁性体により形成された磁性体部材130を備えている。図6ないし図8は、磁性体部材130周辺の詳細構成を示す説明図である。図6は、磁性体部材130周辺の断面図(図4に示す断面に直交するXZ断面図)であり、図7および図8は、磁性体部材130周辺の一部断面斜視図である。図8は、図7から保護カバー150の図示を省略した図である。
図6および図8に示すように、磁性体部材130は略平板形状であり、Z軸方向に沿って貫通する貫通孔131を有する。磁性体部材130は、貫通孔131にロッド60の一端部60bが圧入されることによって、ロッド60に固定されている。そのため、磁性体部材130は、ロッド60の一端部60bと一体となって上下方向に移動する。なお、磁性体部材130をロッド60に固定する方法として、圧入による方法に代えて、例えば接着、溶接等の他の任意の公知の方法を採用してもよい。
また、本実施例では、Z軸方向に垂直な第1の平面(XY平面)への磁性体部材130の投影は、上記第1の平面(XY平面)への可動接触子50の投影と重なっており、また、2つの固定端子10の中心軸TLを含む第2の平面(YZ平面)への磁性体部材130の投影の少なくとも一部は、2つの固定端子10の中心軸TL間に位置する。
図6および図7に示すように、継電器本体6は、絶縁性材料により形成された保護カバー150を備えている。保護カバー150は、略平板形状の基部152と、基部152の四辺から基部152の面方向に対して略垂直に延伸した側壁部154とを有する。すなわち、保護カバー150は、一面が開口した略箱形形状である。なお、保護カバー150の形成に使用される絶縁性材料としては、例えば、樹脂(メラミン樹脂やナイロン)やセラミックを採用可能である。例えば、保護カバー150をメラミン樹脂で形成すると、保護カバー150にアークがあたってもカーボンが発生しないため、絶縁性能の低下を抑制できるため、好ましい。
保護カバー150は、保護カバー150の上記開口面から磁性体部材130が圧入されることによって、磁性体部材130に固定されている。そのため、保護カバー150は、磁性体部材130を介して、ロッド60の一端部60bに固定され、ロッド60の一端部60bと一体となって上下方向に移動する。
図6および図7に示すように、保護カバー150の4つの側壁部154の内、X軸正方向側およびX軸負方向側の側壁部154は、他の2つの側壁部154より高さ(Z軸方向に沿った大きさ)が高い。より具体的には、保護カバー150が磁性体部材130に固定された状態において、上記高さの高い2つの側壁部154は、可動接触子50のレベルまで伸びている。そのため、保護カバー150の上記2つの側壁部154は、可動接触子50と干渉することによって、可動接触子50のXY面内での回転を規制する。なお、保護カバー150を磁性体部材130に固定する方法として、圧入による方法に代えて、例えば接着、溶着、一体成形、ねじ止め等の他の任意の公知の方法を採用してもよい。また、保護カバー150は、磁性体部材130ではなく、ロッド60の一端部60bや可動接触子50といった他の部品に固定されているとしてもよい。
保護カバー150は、磁性体部材130の上面(Z軸正方向表面)と、4つの側面(X軸正方向表面、X軸負方向表面、Y軸正方向表面、Y軸負方向表面)とを覆っている。すなわち、保護カバー150は、固定接点18と可動接点58とが接触していない状態において、磁性体部材130の表面の内、各固定端子10における気密空間100内に位置する表面上の任意の点から直視できる部分で構成される表面領域(請求項における第2の表面領域に相当し、以下、第2の表面領域と呼ぶ)のすべてを覆っていると言える。
また、本実施例では、保護カバー150は、磁性体部材130の貫通孔131から露出したロッド60の一端部60bの上面も覆っている。すなわち、保護カバー150は、固定接点18と可動接点58とが接触していない状態において、一端部60bの表面の内、各固定接点18から直視できる部分で構成される表面領域のすべてを覆っていると言える。
本実施例の継電器5は、可動接触子50より上側の位置に設置された磁性体部材130を備えるため、以下に説明するように、可動接点58と固定接点18との間の接圧の低下や、可動接点58と固定接点18との開離の発生を抑制することができる。図9は、磁性体部材130の存在による効果を説明する図である。図9には、ロッド60および可動接触子50と磁性体部材130とを模式的に示している。図9に示すように、継電器5のオン状態では、可動接触子50に電流が流れる。この電流の方向を奥側から手前側に向かう方向(Y軸正方向)であるものとする。可動接触子50に電流が流れると、この電流を中心に反時計回りの磁束Baが発生する。ここで、可動接触子50より上側に磁性体部材130が配置されていると、磁束Baが磁性体部材130側に引き寄せられる。これにより、可動接触子50を通る磁束Baのうち、左向き(X軸正方向向き)の磁束Baの磁束密度は減少し、右向き(X軸負方向向き)の磁束Baの磁束密度は増加する。右向きの磁束Baの磁束密度が増加することにより、可動接触子50を流れる電流に対し上向きのローレンツ力Fp(「吸着力Fp」とも呼ぶ)が発生する。この吸着力Fpは、可動接触子50を上方向、すなわち固定端子10の固定接点18に近づける方向に作用する。そのため、本実施例の継電器5では、例えば可動接触子50に大電流(例えば、5000アンペア以上の電流)が流れて可動接触子50に大きな電磁反発力が作用する場合にも、駆動機構90の駆動力(例えばコイルばね62の付勢力)を必要以上に大きくすることなく、接点間の接圧の低下や接点開離の発生を抑制することができる。
また、本実施例における継電器5では、磁性体部材130がロッド60の一端部60bに固定されているため、磁性体部材130と可動接触子50との距離を極めて小さくすることができ、磁性体部材130の存在により可動接触子50に作用する吸着力Fpの大きさを大きくして、接点間の接圧の低下や接点開離の発生をより確実に抑制することができる。
さらに、本実施例の継電器5では、絶縁材料で形成された保護カバー150が、固定接点18と可動接点58とが接触していない状態において、磁性体部材130の表面の内、各固定端子10における気密空間100内に位置する表面上の任意の点から直視できる部分で構成される第2の表面領域のすべてを覆っている。そのため、電流遮断時に各接点間や各固定端子10の表面において発生したアークの引き伸ばし方向が互いに近づく方向である場合(逆方向遮断時)であっても、一方の接点間や固定端子10の表面において発生したアークが、固定端子10間に配置された磁性体部材130を介して他方の接点間や固定端子10の表面において発生したアークとつながり、正常な遮断ができなくなる、という事態の発生を確実に回避することができる。
また、本実施例の継電器5では、保護カバー150が、さらに、固定接点18と可動接点58とが接触していない状態において、ロッド60の一端部60bの表面の内、各固定接点18から直視できる部分で構成される表面領域のすべてを覆っている。そのため、一方の接点間や固定端子10の表面において発生したアークが、ロッド60の一端部60bを介して他方の接点間や固定端子10の表面において発生したアークとつながり、正常な遮断ができなくなる、という事態の発生を回避することができる。
また、本実施例の継電器5では、保護カバー150の2つの側壁部154が、ロッド60に対する可動接触子50の回転(XY面内での回転)を規制する回転規制部として機能する。そのため、保護カバー150とは別に可動接触子50の回転を規制するための部品を設ける場合と比較して、部品点数の削減による構成の単純化、装置の小型化、製造の容易化、コスト低減を実現することができる。
図10は、第1実施例の変形例における継電器5aの断面図である。また、図11は、第1実施例の変形例における継電器5aの断面斜視図である。図10および図11に示した第1実施例の変形例における継電器5aは、主として継電器本体6aにおける第1の容器20、可動接触子50、接合部材30の構成が、上述した第1実施例における継電器5と相違している。第1実施例の変形例の継電器5aのその他の構成は、第1実施例の継電器5と同様であるため、第1実施例と同じ符号を付すと共に説明を省略する。
第1実施例の変形例の継電器5aは、継電器本体6aが、2つの固定端子10に対応して2つの第1の容器20を備えている。各第1の容器20は、底部を有する円筒形状の部材である。より具体的には、第1の容器20は、上側に位置する底部24と、第1の容器20の側面(Z軸方向に略平行な面)を形成する側面部22とを有する。各第1の容器20における底部24と対向する側(すなわち下側)は開口している。各第1の容器20の底部24には、1つの固定端子10が挿入される1つの貫通孔26が形成されている。各第1の容器20の貫通孔26に対応する固定端子10が挿入された状態で、各固定端子10のフランジ部13は、各第1の容器20の底部24の外側表面(上側の表面)に気密に接合されている。
接合部材30の上端部には2つの開口が形成されている。接合部材30の上端部において、各開口を規定する周縁部は、対応する第1の容器20の下端部の開口を規定する端面に例えばろう付けにより気密に接合されている。このような構成の第1の容器20および接合部材30と、固定端子10、ベース部32、鉄心用容器80とが互いに気密に接合されることで、固定端子10の固定接触部19(固定接点18)と可動接触子50とが収容される気密空間100が形成される。
可動接触子50は、上記第1実施例と同様に、中央部52と可動接触部57とを有する。上記第1実施例では、可動接触部57に可動接点58が形成されていたが、第1実施例の変形例においては、可動接触子50が、可動接触部57から上方に伸びる略円柱形状の延伸部48を有しており、延伸部48における固定端子10の固定接触部19と対向する部分(より詳細には、可動接触子50が上方向(Z軸正方向)に移動した際に固定端子10と接触する延伸部48の部分)に、可動接点58が形成されている。
磁性体部材130は、上記第1実施例と同様に、気密空間100内における可動接触子50より上側の位置に設けられている。磁性体部材130は、Z軸方向に沿って貫通する貫通孔131を有しており、貫通孔131にロッド60の一端部60bが圧入、接着、溶接等されることによってロッド60に固定されている。また、保護カバー150は、固定接点18と可動接点58とが接触していない状態において、磁性体部材130の表面の内、各固定端子10における気密空間100内に位置する表面上の任意の点から直視できる部分で構成される表面領域(第2の表面領域)のすべてを覆っていると共に、ロッド60の一端部60bの表面の内、各固定接点18から直視できる部分で構成される表面領域のすべてを覆っている。そのため、第1実施例の変形例における継電器5aは、上述した第1実施例における継電器5と同様の効果を奏する。
また、第1実施例の変形例における継電器5aでは、2つの固定端子10にそれぞれ対応して2つの第1の容器20が設けられているため、2つの固定端子10に対して1つの第1の容器が設けられる場合に比べ、第1の容器20の耐圧性を向上でき、継電器5aが破損する可能性を低減できる。また、第1実施例の変形例における継電器5aでは、固定接点18及び可動接点58は、気密空間100のうち第1の容器20の内側に配置されているため、第1の容器20が障壁となることで、固定接触部19や可動接触子50の飛散粒子が原因で一対の固定端子10間が導通する可能性をより低減できる。
B.第2実施例:
図12は、第2実施例における継電器5bの断面図である。図12に示した第2実施例における継電器5bは、主として継電器本体6bにおける磁性体部材130b周辺の構成が、上述した第1実施例における継電器5と相違している。第2実施例の継電器5bのその他の構成は、第1実施例の継電器5と同様であるため、第1実施例と同じ符号を付すと共に説明を省略する。
第2実施例における継電器5bでは、第1実施例と同様に、磁性体部材130bは、気密空間100内における可動接触子50より上側の位置に設けられている。ただし、第2実施例では、継電器本体6bは、磁性体部材130bの表面を覆う保護カバーを有していない。
図13は、第2実施例における磁性体部材130b周辺の詳細構成を示す説明図である。図13(a)には、磁性体部材130b周辺の平面構成(上面の構成)を示しており、図13(b)には、磁性体部材130b周辺の断面構成(図13(a)のB−B断面の構成)を示している。第2実施例における磁性体部材130bは、互いに絶縁された第1の磁性体片134と第2の磁性体片135とから構成されている。すなわち、第1の磁性体片134および第2の磁性体片135は、Y軸方向に沿って間隔を空けて配置されており、第1の磁性体片134と第2の磁性体片135との間には、絶縁材料(例えば樹脂材料)で形成された絶縁部139が配置されている。絶縁部139は、第1の磁性体片134および第2の磁性体片135と、例えば接着や一体射出成形といった接合方法により接合されている。また、絶縁部139は、Z軸方向に沿って貫通する貫通孔131を有しており、貫通孔131にロッド60の一端部60bが圧入されることによって、ロッド60に固定されている。そのため、磁性体部材130b(第1の磁性体片134および第2の磁性体片135)は、絶縁部139を介して間接的にロッド60の一端部60bに固定される。絶縁部139をロッド60に固定する方法として、圧入による方法に代えて、例えば接着等の他の任意の公知の方法を採用してもよい。このように、第2実施形態における磁性体部材130bは、図8に示した第1実施例における磁性体部材130におけるY軸方向に沿った中央の帯状部分が絶縁部139によって置換されたような構成である。
上記のように構成された第2実施例の磁性体部材130bでは、第1の磁性体片134と第2の磁性体片135とのそれぞれは、2つの固定接点18を含むと共に上下方向(Z軸方向)に平行な平面(すなわちYZ平面)と交差する部分を有している。これらの部分とは、具体的には、図13(b)においてハッチングが付された第1の磁性体片134および第2の磁性体片135の部分である。このことは、一方の固定接点18については、第1の磁性体片134より第2の磁性体片135の方がより近くに位置し、他方の固定接点18については、反対に、第2の磁性体片135より第1の磁性体片134の方がより近くに位置することを意味する。
このように、第2実施例の継電器5bでは、磁性体部材130bが、互いに絶縁された第1の磁性体片134と第2の磁性体片135とから構成されており、第1の磁性体片134と第2の磁性体片135とのそれぞれは、2つの固定接点18を含むと共に上下方向に平行な平面と交差する部分を有している。そのため、第2実施例の継電器5bでは、例えば電流遮断時に各接点間や各固定端子10の表面において発生したアークの引き伸ばし方向が互いに近づく方向である場合(逆方向遮断時)に、一方の接点間や固定端子10の表面において発生したアークは当該接点により近い磁性体片(例えば第1の磁性体片134)に当たる可能性があり、他方の接点間や固定端子10の表面において発生したアークは当該接点により近い磁性体片(例えば第2の磁性体片135)に当たる可能性があるが、第1の磁性体片134および第2の磁性体片135は互いに絶縁されていることから、各アークが磁性体部材130bを介してつながり、正常な遮断ができなくなる、という事態の発生を、保護カバー等の部品を設けることなく回避することができる。
図14は、第2実施例の第1の変形例における磁性体部材130c周辺の構成を示す説明図である。図14(a)には、磁性体部材130c周辺の平面構成(上面の構成)を示しており、図14(b)には、磁性体部材130c周辺の断面構成(図14(a)のC−C断面の構成)を示している。図14に示した第2実施例の第1の変形例における磁性体部材130cは、その断面構成が、上述した第2実施例における磁性体部材130bと相違している。
第2実施例の第1の変形例では、図14(b)に示すように、絶縁部139が、Y軸方向に沿った両端面(第1の磁性体片134および第2の磁性体片135に対向する端面)に、凸部141を有している。また、第1の磁性体片134および第2の磁性体片135のそれぞれは、Y軸方向に沿った端面(絶縁部139に対向する端面)に、凹部142を有している。絶縁部139の凸部141と第1の磁性体片134および第2の磁性体片135のそれぞれの凹部142とが嵌合することにより、第1の磁性体片134および第2の磁性体片135は絶縁部139に接合される。
第2実施例の第1の変形例では、上述した第2実施例と同様に、磁性体部材130cが、互いに絶縁された第1の磁性体片134と第2の磁性体片135とから構成されており、第1の磁性体片134と第2の磁性体片135とのそれぞれが、2つの固定接点18を含むと共に上下方向に平行な平面と交差する部分を有しているため、一方の接点間や固定端子10の表面において発生したアークが磁性体部材130cを介して他方の接点間や固定端子10の表面において発生したアークとつながり、正常な遮断ができなくなる、という事態の発生を回避することができる。また、第2実施例の第1の変形例では、第1の磁性体片134および第2の磁性体片135と絶縁部139とを、容易にかつ強固に接合することができる。
図15は、第2実施例の第2の変形例における磁性体部材130d周辺の構成を示す説明図である。図15(a)には、磁性体部材130d周辺の平面構成(上面の構成)を示しており、図15(b)には、磁性体部材130d周辺の断面構成(図15(a)のD−D断面の構成)を示している。図15に示した第2実施例の第2の変形例における磁性体部材130dは、その平面構成が、上述した第2実施例における磁性体部材130bと相違している。
第2実施例の第2の変形例では、図15(a)に示すように、第1の磁性体片134および第2の磁性体片135が、絶縁部139に対向する側およびその反対側の縁部に、切り欠き部144を有している。切り欠き部144は、第1の磁性体片134および第2の磁性体片135におけるX軸方向に沿った中央付近に位置している。絶縁部139の平面形状は、第1の磁性体片134および第2の磁性体片135の切り欠き部144に整合するような形状となっている。すなわち、絶縁部139のY軸方向に沿った幅は、X軸方向に沿った中央付近(貫通孔131が形成された部分)において大きく、その他の部分において小さくなっている。
第2実施例の第2の変形例では、上述した第2実施例と同様に、磁性体部材130dが、互いに絶縁された第1の磁性体片134と第2の磁性体片135とから構成されており、第1の磁性体片134と第2の磁性体片135とのそれぞれが、2つの固定接点18を含むと共に上下方向に平行な平面と交差する部分を有しているため、一方の接点間や固定端子10の表面において発生したアークが磁性体部材130dを介して他方の接点間や固定端子10の表面において発生したアークとつながり、正常な遮断ができなくなる、という事態の発生を回避することができる。また、第2実施例の第2の変形例では、第1の磁性体片134および第2の磁性体片135が切り欠き部144を有するため、絶縁部139に貫通孔131の形成領域を確保すると共に磁性体部材130dと固定端子10との干渉や極端な接近を回避しつつ、磁性体部材130dの大きさ(XY平面への投影面積)をより大きくすることができ、磁性体部材130dの存在により可動接触子50に作用する吸着力Fpの大きさをより大きくして、接点間の接圧の低下や接点開離の発生をより確実に抑制することができる。
図16は、第2実施例の第3の変形例における磁性体部材130e周辺の構成を示す説明図である。図16(a)には、磁性体部材130e周辺の平面構成(上面の構成)を示しており、図16(b)には、磁性体部材130e周辺の断面構成(図16(a)のE−E断面の構成)を示している。図16に示した第2実施例の第3の変形例における磁性体部材130eは、その平面構成が、上述した第2実施例における磁性体部材130bと相違している。
第2実施例の第3の変形例では、図16(a)に示すように、第1の磁性体片134の平面形状は略凸型形状であり、第2の磁性体片135の平面形状は、絶縁部139を介して第1の磁性体片134の略凸型形状に嵌合するような略凹型形状である。また、貫通孔131は、絶縁部139ではなく、第1の磁性体片134に形成されている。そのため、第1の磁性体片134は、ロッド60の一端部60bに直接固定され、第2の磁性体片135は、絶縁部139および第1の磁性体片134を介してロッド60の一端部60bに固定される。
第2実施例の第3の変形例では、上述した第2実施例と同様に、磁性体部材130eが、互いに絶縁された第1の磁性体片134と第2の磁性体片135とから構成されており、第1の磁性体片134と第2の磁性体片135とのそれぞれが、2つの固定接点18を含むと共に上下方向に平行な平面と交差する部分を有しているため、一方の接点間や固定端子10の表面において発生したアークが磁性体部材130eを介して他方の接点間や固定端子10の表面において発生したアークとつながり、正常な遮断ができなくなる、という事態の発生を回避することができる。また、第2実施例の第3の変形例では、第1の磁性体片134がロッド60の一端部60bに直接固定されるため、磁性体部材130eをロッド60の一端部60bに対して容易にかつ強固に固定することができる。
図17は、第2実施例の第4の変形例における磁性体部材130f周辺の構成を示す説明図である。図17(a)には、磁性体部材130f周辺の平面構成(上面の構成)を示しており、図17(b)には、磁性体部材130f周辺の断面構成(図17(a)のF−F断面の構成)を示している。図17に示した第2実施例の第4の変形例における磁性体部材130fは、その平面構成が、上述した第2実施例における磁性体部材130bと相違している。
第2実施例の第4の変形例では、図17(a)に示すように、磁性体部材130fが、第1の磁性体片134と第2の磁性体片135と第3の磁性体片136とにより構成されている。第3の磁性体片136は、絶縁部139の中央付近に形成された貫通孔内に挿入された状態で、絶縁部139に接合されている。そのため、第3の磁性体片136は、第1の磁性体片134および第2の磁性体片135から絶縁される。また、第3の磁性体片136は、貫通孔131を有しており、貫通孔131にロッド60の一端部60bが圧入されることによって、ロッド60に直接固定されている。第1の磁性体片134および第2の磁性体片135は、第3の磁性体片136および絶縁部139を介してロッド60の一端部60bに固定される。
第2実施例の第4の変形例では、磁性体部材130fが、互いに絶縁された第1の磁性体片134と第2の磁性体片135と第3の磁性体片136とから構成されており、第1の磁性体片134と第2の磁性体片135と第3の磁性体片136とのそれぞれが、2つの固定接点18を含むと共に上下方向に平行な平面と交差する部分を有しているため、一方の接点間や固定端子10の表面において発生したアークが磁性体部材130fを介して他方の接点間や固定端子10の表面において発生したアークとつながり、正常な遮断ができなくなる、という事態の発生を回避することができる。また、第2実施例の第4の変形例では、第3の磁性体片136がロッド60の一端部60bに直接固定されるため、磁性体部材130fをロッド60の一端部60bに対して強固に固定することができる。
図18は、第2実施例の第5の変形例における磁性体部材130g周辺の構成を示す説明図である。図18(a)には、磁性体部材130g周辺の平面構成(上面の構成)を示しており、図18(b)には、磁性体部材130g周辺の断面構成(図18(a)のG−G断面の構成)を示している。図18に示した第2実施例の第5の変形例における磁性体部材130gは、その平面構成および断面構成が、上述した第2実施例における磁性体部材130bと相違している。
第2実施例の第5の変形例では、図18(b)に示すように、第1の磁性体片134が、基部145と、基部145より厚さの薄い薄肉部146とから構成されており、薄肉部146には貫通孔147が形成されている。第2の磁性体片135も同様の構成である。また、絶縁部139は、貫通孔131を有する円筒部161と、円筒部161の高さ方向(Z軸方向)中央付近からXY平面に平行な方向に伸びる延伸部162とから構成されている。円筒部161の外径は、第1の磁性体片134および第2の磁性体片135の貫通孔147の内径と略同一である。第1の磁性体片134と第2の磁性体片135と絶縁部139とは、絶縁部139の円筒部161が第1の磁性体片134および第2の磁性体片135の貫通孔147内に挿入され、第1の磁性体片134および第2の磁性体片135のそれぞれの薄肉部146が絶縁部139の延伸部162を介して対向するように、組み合わされて一体化されている。そのため、第1の磁性体片134と第2の磁性体片135とは、絶縁部139によって互いに絶縁される。
第2実施例の第5の変形例では、上述した第2実施例と同様に、磁性体部材130gが、互いに絶縁された第1の磁性体片134と第2の磁性体片135とから構成されており、第1の磁性体片134と第2の磁性体片135とのそれぞれが、2つの固定接点18を含むと共に上下方向に平行な平面と交差する部分を有しているため、一方の接点間や固定端子10の表面において発生したアークが磁性体部材130gを介して他方の接点間や固定端子10の表面において発生したアークとつながり、正常な遮断ができなくなる、という事態の発生を回避することができる。また、第2実施例の第5の変形例では、第1の磁性体片134および第2の磁性体片135と絶縁部139とを、容易にかつ強固に接合することができる。
C.その他の変形例:
なお、本発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態として実現することが可能であり、例えば次のような変形例としても実現可能である。
C1.変形例1:
上記実施例において、継電器5が使用される電気回路1の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、電気回路1は、さらにコンデンサやヒューズを備えているとしてもよい。また、上記実施例では、継電器5はハイブリッドカーや電気自動車に搭載される電気回路1用に使用されるとしているが、継電器5は他の用途(例えば太陽光発電装置用)にも使用可能である。
C2.変形例2:
上記実施例における継電器5の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記実施例では、磁性体部材130は平板形状であるとしているが、磁性体部材130は任意の形状に変形可能である。ただし、磁性体部材130が平板形状であると、可動接触子50回りの磁束の偏りを効果的に発生させることができるため好ましい。また、第1の平面(XY平面)への磁性体部材130の投影は、必ずしも第1の平面への可動接触子50の投影と重なる必要はない。ただし、第1の平面(XY平面)への磁性体部材130の投影が第1の平面への可動接触子50の投影と重なると、磁性体部材130の存在により可動接触子50に作用する吸着力Fpの大きさをより大きく、かつ、吸着力Fpの向きを上方向に近づけることができるため、好ましい。また、各固定端子10の中心軸TLを含む第2の平面への磁性体部材130の投影の少なくとも一部は、必ずしも各固定端子10の中心軸TL間に位置する必要はない。ただし、各固定端子10の中心軸TLを含む第2の平面への磁性体部材130の投影の少なくとも一部が各固定端子10の中心軸TL間に位置すると、磁性体部材130の存在により可動接触子50に作用する吸着力Fpの大きさをより大きく、かつ、吸着力Fpの向きを上方向に近づけることができるため、好ましい。
また、上記実施例では、駆動機構90として、可動鉄心72を磁力により移動させる機構を用いたが、これに限られるものではなく、可動接触子50を移動させるための他の機構を用いてもよい。例えば、可動接触子50に外部から伸縮自在に操作可能なリフト部を設置し、リフト部の伸縮により可動接触子50を移動させる機構を採用してもよい。この場合にも、磁性体部材130を駆動用部材としてのリフト部と機械的に接続されないように設けることにより、接点間の接圧の低下や接点開離の発生をより効果的に抑制することができる。また、上記実施例の駆動機構90において、ロッド60の一端部60bを可動接触子50に接合してもよい。こうすることで、ばね62を設けなくても可動鉄心72の移動に連動して可動接触子50も移動させることができる。また、上記実施例において、必ずしも可動接点58の数に対応したばね62を用いる必要はなく、各可動接点58に共通して1つのばね62が用いられるとしてもよい。また、上記実施例におけるばね62の代わりに、皿ばねや板ばね等の各種ばね部材やゴムといった弾性変形可能な他の部材を採用することもできる。また、上記実施例において、各部材の形状や、各部材間の接合位置および接合方法は、任意に設定可能である。また、上記実施例において、第2の磁性体部材140は省略可能である。
また、上記実施例において、ロッド60の一端部60bが磁性体部材130として機能するとしてもよい。図19は、変形例における磁性体部材130周辺の断面構成を示す説明図である。図19に示す変形例では、ロッド60の一端部60bは磁性体材料で形成されており、ロッド60の軸部60aは非磁性体材料で形成されている。また、ロッド60の一端部60bは、保護カバー150により覆われている。図19に示した変形例においても、上記実施例と同様に、ロッド60の一端部60bが磁性体部材130として機能することにより、駆動機構90の駆動力を必要以上に大きくすることなく、接点間の接圧の低下や接点開離の発生を抑制することができると共に、一方の接点間や固定端子10の表面において発生したアークがロッド60の一端部60bを介して他方の接点間や固定端子10の表面において発生したアークとつながり、正常な遮断ができなくなる、という事態の発生を回避することができる。
また、上記実施例では、発生したアークが永久磁石800によってY軸方向(固定端子10の中心軸TL間を結ぶ方向)に沿って引き伸ばされ、消弧が促進されるとしているが、永久磁石800の配置を変更して、アークが永久磁石800によってX軸方向(固定端子10の中心軸TL間を結ぶ方向と可動接点58が固定接点18に近づく方向との両方に略直交する方向)に沿って引き伸ばされ、消弧が促進されるとしてもよい。
なお、アークの引き伸ばし方向がY軸方向であってもX軸方向であっても、上記実施例の保護カバー150は、アーク発生後の熱で接点材料が溶融して飛散するスパッタがロッド60と磁性体部材130との間や磁性体部材130と可動接触子50との間に入り込んで継電器5の駆動を妨げることを防止することができる。
C3.変形例3:
上記第1実施例(およびその変形例、以下同様)において、保護カバー150は、磁性体部材130の表面の内、各固定端子10における気密空間100内に位置する表面上の任意の点から直視できる部分で構成される表面領域(第2の表面領域)の少なくとも一部を覆っているとしてもよい。このようにしても、各接点間や各固定端子10の表面において発生したアークが磁性体部材130を介してつながり、正常な遮断ができなくなる、という事態の発生の可能性を抑制することができる。あるいは、保護カバー150は、第2の表面領域のすべてを覆ってはいないが、磁性体部材130の表面の内、各固定接点18から直視できる部分で構成される表面領域(請求項における第1の表面領域に相当し、以下、第1の表面領域と呼ぶ)のすべてを覆っているとしてもよい。磁性体部材130の表面の内、各固定接点18から直視できる部分で構成される第1の表面領域は、各接点間において発生したアークが接触しやすい部分であるため、第1の表面領域のすべてを保護カバー150によって覆うことにより、上記事態の発生の可能性を有効に抑制することができる。あるいは、保護カバー150は、第1の表面領域の少なくとも一部を覆っているとしてもよい。このようにしても、上記事態の発生の可能性を抑制することができる。あるいは、保護カバー150は、第1の表面領域のすべてを覆っていると共に、第2の表面領域のすべてを覆っているとしてもよい。このようにすると、各接点間や各固定端子10の表面において発生したアークが磁性体部材130を介してつながり、正常な遮断ができなくなる、という事態の発生の可能性を確実に抑制することができる。
また、上記第1実施例において、保護カバー150は、必ずしもロッド60の一端部60bの表面を覆っている必要はない。
C4.変形例4:
上記第2実施例(およびその変形例、以下同様)において、磁性体部材130が、互いに絶縁された3つ以上の磁性体片により構成されているとしてもよい。この場合にも、各磁性体片が2つの固定接点18を含むと共に上下方向に平行な平面と交差する部分を有するとすれば、正常な遮断ができなくなるという事態の発生を回避することができる。また、第2実施例において、継電器5が、第1実施例と同様に、磁性体部材130の表面を覆う保護カバーを有しているとしてもよい。この場合に、保護カバーは、第1実施例のように、磁性体部材130の第2の表面領域のすべてを覆っているとしてもよいし、第2の表面領域の少なくとも一部を覆っているとしてもよい。あるいは、保護カバーは、磁性体部材130の第1の表面領域の全部を覆っているとしてもよいし、第1の表面領域の少なくとも一部を覆っているとしてもよい。あるいは、保護カバーは、第1の表面領域のすべてを覆っていると共に、第2の表面領域のすべてを覆っているとしてもよい。