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JP6056450B2 - ホットスタンプ用溶融Alめっき鋼板およびその製造方法、ならびにホットスタンプ製品 - Google Patents

ホットスタンプ用溶融Alめっき鋼板およびその製造方法、ならびにホットスタンプ製品 Download PDF

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Description

本発明は、ホットスタンプ用溶融Alめっき鋼板およびその製造方法ならびにホットスタンプ製品に関し、特にホットスタンプ後にホットスタンプ製品の母材鋼板に脱炭層やスケールが発生するのを抑制できるホットスタンプ用溶融Alめっき鋼板およびその製造方法、並びに、その鋼板を用いて製造したホットスタンプ製品に関する。
近年、自動車用鋼板の用途(例えば、自動車のピラー、ドアインパクトビーム、バンパービーム等)などにおいて、高強度と高成形性を両立する鋼板が望まれており、これに対応するものの1つとして、残留オーステナイトのマルテンサイト変態を利用したTRIP(Transformation Induced Plasticity)鋼がある。このTRIP鋼により、成形性の優れた1000MPa級程度の強度を有する高強度鋼板を製造することは可能であるが、さらに高強度、例えば1500MPa以上といった超高強度鋼で成形性を確保することは困難である。このような状況で、高強度及び高成形性を両立するものとして最近注目を浴びているのが、ホットスタンプ(熱間プレス、ホットスタンプ、ダイクエンチ、プレスクエンチ等とも呼称される。)である。このホットスタンプは、鋼板を800℃以上のオーステナイト域で加熱した後に熱間で成形することにより高強度鋼板の成形性を向上させ、成形後の冷却により焼きを入れて所望の材質を得るというものである。
ホットスタンプは、超高強度の部材を成形する方法として有望であるが、通常は大気中で鋼板を加熱する工程を有しており、この際、鋼板表面に酸化物(スケール)が生成するため、スケールを除去する工程が必要であった。ところが、このような後工程には、スケールの除去能や環境負荷等の観点からの対応策の必要性等の問題があった。
これを改善する技術として、ホットスタンプ用の鋼板としてAlめっき鋼板を使用することにより、加熱時のスケールの生成を抑制する技術が提案されている(例えば、特許文献1、2を参照)。
ところが、ホットスタンプのために、局部的な急速加熱を行った後のアルミめっき層は表面まで金属間化合物に変化しており、この化合物は非常に脆い材料であり、加工時にクラックを生じやすいという欠点を有しており、厳しい成形をした後には、これらクラックを起点として腐食が開始するため、塗装後耐食性が低下するという問題があった。この問題を回避するには、この金属間化合物中にMnを添加する技術が提案されている(例えば、特許文献3を参照)が、ホットスタンプ製品の母材鋼板に脱炭層やスケールが発生するのを抑制する技術ではない。
特開2003−181549号公報 特開2003−49256号公報 特開2003−34855号公報
本発明者らは、ホットスタンプ製品のAlめっき層に生じる微小なクラックを抑制することについて鋭意研究を進めたしたところ、溶融Alめっき鋼板のめっき層にクラックがあるとホットスタンプ前の加熱で雰囲気中の酸素や水蒸気がクラックから侵入し、母材鋼板に脱炭層やスケールが形成されることにより、ホットスタンプ製品の溶接性や耐食性を劣化させると共に、最表面に硬度不良が生じるという問題があることを新たに見出した。
そこで、本発明は、ホットスタンプ製品の母材鋼板に脱炭層やスケールが生成することを抑制することが出来る溶融Alめっき鋼板およびその製造方法、ならびに母材鋼板に脱炭層やスケールの生成することを抑制したホットスタンプ製品を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく、ホットスタンプ製品の母材鋼板に脱炭層やスケールが生成するのを抑制することについて鋭意研究をした、その結果、ホットスタンプ前の溶融Alめっき鋼板のめっき層と母材鋼板との間に生成する金属間化合物層の厚み、および金属間化合物層でないAl−Si層のめっき厚みを制限し、かつ金属間化合物層へのC方向のクラック幅を制限した溶融Alめっき鋼板を用いてホットスタンプすると、ホットスタンプ製品の母材鋼板に脱炭層やスケールが生成することを抑制できることを見出し、本発明を完成した。
本発明の要旨は、次の通りである。
(1) 母材鋼板とめっき層との境界面に3〜12μm厚みのFe−Al−Si金属間化合物層および該金属間化合物層上に8〜50μm厚みのAl−Siめっき層を有するホットスタンプ用溶融Alめっき鋼板であって、前記金属間化合物層厚みが3〜7μmの場合には、該金属間化合物層のC方向のクラック幅が0.6μm以下、かつAl−Siめっき層の厚みが8〜50μmであり、前記金属間化合物層厚みが7超〜12μmの場合には、該金属間化合物層のC方向のクラック幅が1μm未満、かつAl−Siめっき層の厚みが14〜50μmであることを特徴とするホットスタンプ用溶融Alめっき鋼板。
(2) 前記母材鋼板が、質量%で、C:0.15〜0.4%、Si:0.3%以下、Mn:0.8〜1.55%、Cr:0.1〜0.5%、B:0.0015〜0.005%、Al:0.04%以下、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼板、または、さらに、Ti、Nb、Mo、V、Ni、Cu、Wの1種または2種以上を0.05%以下含有する鋼板であることを特徴とする上記(1)に記載のホットスタンプ用溶融Alめっき鋼板。
上記(1)又は(2)に記載のホットスタンプ用溶融Alめっき鋼板を製造する際、鋼板を溶融Alめっきするに当り、浴温が620〜675℃のAl−Siめっき浴に、浴内への浸漬時間が5〜10秒、侵入板温が浴温±20℃の条件で溶融Alめっきした後、圧下率0.5%未満のスキンパス圧延を行なうことを特徴とする上記(1)又は請(2)に記載のホットスタンプ用溶融Alめっき鋼板の製造方法。
)上記(1)又は(2)に記載のホットスタンプ用溶融Alめっき鋼板を用いてホットスタンプしたホットスタンプ製品であって、ホットスタンプ製品の母材鋼板表層に形成された脱炭層の厚みが1μm未満であることを特徴とするホットスタンプ製品。
本発明によれば、ホットスタンプ製品用の母材鋼板に脱炭層やスケールが生成することを抑制したので、溶接性、耐食性にすぐれ、表面性状に優れたホットスタンプ製品を得ることができる。
ホットスタンプ製品の母材鋼板に脱炭層やスケールが形成され状態を示す顕微鏡写真である。 ホットスタンプ用溶融Alめっき鋼板の合金層(金属間化合物層)厚(μm)とAl−Siめっき厚(μm)及びホットスタンプ製品のスケール評点との関係を示す図である。
以下本発明を詳細に説明する。
本発明に係るホットスタンプ用めっき鋼板は、鋼板表面に溶融Alめっきが施されたAlめっき鋼板であって、鋼材表面に形成される溶融Alめっき層は、その組成が質量%で、Al:80〜95%、Si:5〜15%からなるAlめっき層と鋼板の境界面に金属間化合物層(以降合金層と称する)であるFe−Al−Si層が形成されている。Fe−Al−Si合金層の組成は、通常Al:35〜65%、Si:5〜15%、残部はFeおよび不可避不純物からなる。
この溶融Alめっきの組成および合金層の組成は公知のものである。この合金層は一般に極めて硬質でかつ脆性であるために加工した場合にクラックが生じ破壊の起点となり、かつこの起点よりAlめっき層の割れが惹き起こされる。ひどい場合は、めっき後のスキンパス圧延やレベラーをかけた時に割れるものがある。また、ホットスタンプ前の加熱をすると母材鋼板にスケールが発生したり、加熱後のホットスタンプ時に合金層にクラックが発生し、このクラックを起点としてAlめっき層の割れが惹き起こされたりことがある。
そして、このようなクラックが母材鋼板まで貫通して発生すると、クラックにより露出した母材鋼板は腐食の際のカソードとして作用するため腐食起点として作用し、まためっき割れに沿って腐食が伝播するため耐食性が著しく劣化する。さらに、本発明者らは、ホットスタンプ前の加熱で雰囲気中の酸素や水蒸気がクラックから侵入し、母材鋼板に脱炭層やスケールが形成される。例えば、図1の脱炭層(脱炭層硬度:ビッカース硬度260)が生成したときの断面組織の顕微鏡写真に示すように、母材鋼板に脱炭層やスケールが形成されて、ホットスタンプ製品の溶接性や耐食性を劣化させると共に、最表面に硬度不良が生じるという問題があることを新たに見出した。
そして、本発明者らは、ホットスタンプ製品の母材鋼板に生じる脱炭層やスケールを抑制するためには、ホットスタンプ用溶融Alめっき鋼板のめっき層のAl−Si層とFe−Al−Si合金層の厚さを所定の厚み以下に制限し、所定の圧下率以下のスキンパス圧延をして製造した溶融Alめっき鋼板を用いてホットスタンプすれば、製造されたホットスタンプ製品の母材鋼板に形成される脱炭層やスケールを抑制できることを見出し、本発明をなした。
図2は、ホットスタンプ用溶融Alめっき鋼板の合金層厚(μm)と合金層を除くAl−Si層の厚み(μm)及びホットスタンプ製品のスケール評点との関係を示す図である。
スケール評点は、下記表1に示すようにめっき層内スケールを100倍の顕微鏡組織観察により、それらの発生状況によって評点付けをした。表1に示すように、スケール評点0、1は良好であるが、スケール評点2、3ではスケール発生が広範囲で、脱炭層も生じている状態である。







Figure 0006056450
図2に示すように、ホットスタンプ用溶融Alめっき鋼板の合金層厚が3〜7μm、好ましくは3〜6.5μm、合金層のクラック幅0.6μm以下ではAl−Si層厚が8μm以上でないとホットスタンプ製品に評点2(◇)のスケール、脱炭層が発生し好ましくない。また、合金層厚が7超〜12μm、合金層のクラック幅1μm未満ではAl−Si層厚14μm以上でないと評点2(◇)のスケール、脱炭層の発生の懸念がある。図2中において、評点0(めっき層内スケールなし)を○、評点1を□、評点2を◇、そして、評点3を△で示している。
なお、合金層の上部に存在するAl−Si層の厚みの上限は、特に限定するものではないが、厚すぎるとホットスタンプの加熱時に合金化させるために長時間が必要となることからAl−Si層の厚みの上限を50μmとした。また、合金層厚およびAl−Si層厚はめっき鋼板の断面から光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡等を用いて測定することができる。
したがって、本発明では、ホットスタンプ製品の母材鋼板に脱炭層やスケールが生成することを抑制することができるようにするために、ホットスタンプ用溶融Alめっき鋼板の合金層厚みが3〜7μm、かつ合金層でないAl−Si層の厚みが8〜50μm、または、合金層厚みが7超〜12μm、かつ合金層でないAl−Si層の厚みが14〜50μmとした。
本発明では、ホットスタンプ用めっき鋼板の鋼板成分は特に限定するものではないが、ホットスタンプ製品では金型を用いてプレスと焼入を同時に行い引張強さ:780MPa以上の高強度とするもので、焼入れ性に富む組成を有する鋼板とすることが好ましく、鋼中C量を質量%で0.15〜0.4%の水準となる。C量が0.15%未満では十分な焼入れ強度が得られず、また、C量が0.4質量%を超えると鋼板の靭性の低下が著しくなる。したがって、本発明では鋼中C量0.15〜0.4質量%の高強度鋼板であれば用いることができる。
このような鋼板としては、例えば、質量%で、C:0.15〜0.4%、Si:0.3%以下、Mn:0.8〜1.55%、Cr:0.1〜0.5%、B:0.0015〜0.005%、Al:0.04%以下を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する鋼板が例示できる。なお、必要に応じて、Ti、Nb、Mo、V、Ni、Cu、Wを1種または2種以上をそれぞれ0.05%以下含有してもよい。
本発明でのホットスタンプでの加熱方式については特に限定するものではない。通常の炉加熱や輻射熱を用いる赤外線方式の加熱方式を使用することも可能であるが、昇温速度50℃/秒以上の急速加熱を行うことが可能な、通電加熱や高周波誘導加熱等の電気を用いる加熱方式を使用することも可能である。但しこのときには電磁気的な相互作用により溶融したAlが局部的に盛り上がる現象(寄り)が発生する可能性がある。昇温速度の上限は特に規定しないが、上記の通電加熱や高周波誘導加熱等の加熱方式を使用する場合には、その装置の性能上、300℃/秒程度が上限である。
また、この加熱工程において、最高到達板温を850℃以上とすることが好ましい。最高到達板温をこの温度とするのは、鋼板をオーステナイト域まで加熱するとともに、表面まで十分に合金化を進行させるためである。
本発明では、ホットスタンプ後の脱炭層の厚みを1μm未満に限定する。ホットスタンプ後の脱炭層の厚みが1μm以上となると、最表面に硬度不良を生じさせ、疲労強度が低下する懸念があるためである。
なお、本発明でいう脱炭層は、硬度(Hv)が350以下で母材鋼板表層(鋼板内)に生成する層と定義する。そして、脱炭層は、断面研磨後、3vol.%ナイタールエッチング後、観察することができる。本発明では、倍率100倍で3つの視野を観察し、スケール及び脱炭層の有無を判定後、脱炭層があるものについては、1000倍に拡大し、脱炭層の厚みを測定した。
ホットスタンプ製品の母材鋼板表層に生成する脱炭層の厚みを1μm以下とするためには、溶融Alめっき鋼板の合金層のC方向のクラック幅を制御することが好ましい。すなわち、合金層の厚みが3〜7μmの場合には、合金層のC方向のクラック幅が0.6μm以下、合金層厚みが7超〜12μmと厚い場合には、クラックの許容幅はより大きくなり、1μm未満とすることが好ましい。先述したように合金層は金属間化合物で延性に乏しいため母材にスキンパス等の加工を加えると合金層にクラックが生成する。一旦クラックが生成した後は、新たなクラックも生成するがそれよりも既に生成したクラックがその幅を広げる場合が多い。クラック幅が大きいと、ホットスタンプ時に当該クラックを起点として母材鋼板に発生する脱炭層やスケールが形成されやすくなる。
したがって、本発明では母材鋼板表層(鋼板内)に生成するC方向のクラック幅を合金層の厚みに応じて0.6μm以下、あるいは1μm未満とした。なお、クラック幅は、幅の最大値とする。
なお、クラック幅の測定は、溶融Alめっき鋼板のAl−Siめっき層を電解剥離等の手法で除去して合金層表面を電子顕微鏡で観察することで行う。観察視野において特定されたクラックの幅を計数する。観察像でクラックは線状に観察され、観察視野におけるクラック幅の最大のものを計測する。電解剥離は例えば3%NaOHと1%AlCl・6HO溶液を用い、電流密度20mA/cmで定電流電解することによってできる。
次に、本発明に係るホットスタンプ用溶融Alめっき鋼板の製造方法について説明する。
鋼板の熱延、冷延条件については特に限定せず、通常の製造条件で行うものとする。
本発明に係る溶融Alめっき鋼板の製造方法は、浴温が620〜675℃のAl−Siめっき浴に、浴内への浸漬時間が2〜10秒、侵入板温が浴温±20℃の条件で溶融Alめっきした後、圧下率0.5%未満のスキンパス圧延を行なうことによって製造する。
溶融Alめっき浴としては、Alに3質量%〜15質量%のSiを含有する浴組成のものを使用することができ、これに不可避的不純物のFe等が混入している。これ以外の添加元素として、Mn、Cr、Mg、Ti、Zn、Sb、Sn、Cu、Ni、Co、In、Bi、ミッシュメタル等があり得るが、めっき層がAlを主体とする限り、どの添加元素も適用可能である。浴中のSiはAlめっき時の合金層成長を抑制する働きがあり、合金層厚みを12μm以下とするためには3質量%以上のSiが必要である。一方、Si量が多すぎるとめっき層中に粗大結晶として晶出し、耐食性やめっきの加工性を阻害するので、Si量は15質量%以下であることが好ましい。
溶融Alめっきの浴温は、めっき層中の合金層厚と密接な関係があり、浴温が高くなると合金層が厚くなる。合金層厚を12μm以下とするためには、浴温を675℃以下とする必要がある。そして、浴温の下限は浴組成の融点で定まり、620℃が下限である。浴の融点はAl−10%Siで約600℃である。620℃未満では浴内の温度バラツキを考慮すると部分的に凝固してしまうため操業ができない。したがって、本発明では浴温を620〜675℃とした。また、合金層厚は、めっき浴内への浸漬時間によっても影響を受けるので、合金層厚を3〜12μmとするためには浸漬時間が3〜10秒であることが好ましい。また、鋼板の侵入温度が低すぎるとAlめっき浴との反応性が損なわれ、高すぎると合金層が成長しやすくなるので、良好なめっき層を得るためには浴温と侵入板温がほぼ一致していることが好ましく、浸漬時間が3〜10秒でめっき不良がなく良好なめっき層を形成するためには、めっき浴への侵入板温を浴温±20℃とする必要がある。侵入板温が高すぎると浴内での反応が進行して合金層が厚く成長し、また低すぎると浴内で局部的に温度差がついてドロスと呼ばれるAl−Fe化合物が鋼板上に晶出して外観品位を損ない、程度によっては鋼板への押疵となる。したがって、合金層厚やめっき厚は、溶融Alめっきの浴温、めっき浴内への浸漬時間、鋼板の侵入温度によって調整をすることができる。
また、溶融Alめっき後には、鋼板の形状矯正や表面平滑性を確保するために、従来と同様なスキンパス圧延(調質圧延)を実施することが望ましい。そして、その際の圧下率は0.5%未満とする。圧下率が0.5%以上となると一旦生成したクラック部位へ応力集中し、合金層のC方向クラック幅が1μmを超えて大きくなりやすく、圧下率が低く、合金厚みが薄い方が合金層のC方向クラック幅を小さくすることができる。合金層のC方向クラック幅が大きくなると、続く加熱工程においてその部位より雰囲気中の酸素や水蒸気が侵入し、母材鋼板に脱炭層やスケールが形成されることとなる。したがって、スキンパス圧下率は0.5%未満とするが0.4%以下とすることが好ましい。さらに好ましくは0.3%以下である。なお、圧下率の下限は特に限定する必要がないものであるが、0.05%以上とすることが好ましい。
以下実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。
質量%で、C:0.23%、Si:0.21%、Mn:1.2%、P:0.01%、S:0.003%、Cr:0.2%、B:0.0027%、Al:0.03%、Ti:0.03%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分を有する板厚1.6mmの冷延鋼板を用いて溶融Al−Siめっきを施した。Si濃度9質量%とし、浴温、侵入板温及び浸漬時間を変更することで種々の合金層厚みとした。めっき浴から引き上げた後にNガスワイピングを行うことでAl−Siめっき付着量(Al−Si厚み)を調節し、その後スキンパス圧延を行なってホットスタンプ用溶融Alめっき鋼板を作製した。
この鋼板の合金層厚、Al−Si層厚(合金層厚を含まず)、C方向クラック幅を測定した。合金層厚、Al−Si層厚は、断面からの光学顕微鏡により、またクラック幅はAl−Si層を3%NaOH−1%AlCl・6HO中で定電流電解剥離することで合金層を露出させ、その表面を二次電子像5000倍で観察することで行った。
この鋼板をホットスタンプに相当する条件で処理した。大気中で電気炉内に挿入することで900℃に加熱した後に1分間保定し、約700℃の温度まで大気中で冷却して、その後、厚さ50mmの金型間で圧着することで急冷した。
上記の加熱−急冷処理を施した後に、めっき層の断面を観察した。断面研磨後、ナイタールでエッチングすることでめっき層−鋼板界面が観察され、鋼板の焼入組織も観察できる。このとき、図1に示すように、合金化しためっき層内部にスケール、つまりFeの酸化物が観察された。スケールが発生した部位の鋼板最表層には脱炭層も観察された。
浴温、進入板温、浸漬時間、めっき付着量を変えた時の合金層厚みとAl−Si層厚みを表2に示す。またスキンパス圧下率とスケール生成の評点も記載している。スケール評点は表1に示した基準である。








































Figure 0006056450
表2に示すように、合金層厚みとAl−Si厚み及び合金層のクラック幅によりスケールの発生状と脱炭の状況が変化する。本発明例は、いずれもスケール評点は0、1と良好であった。
これに対して、番号9、14、19、24の比較例に示すようにAl−Si厚が5μmと非常に薄い場合、あるいは番号5〜7の比較例に示すようにAl−Si層が10μmと薄い(14μm未満)場合に合金層の厚みが8.5〜11.5μmの範囲で7μm超であると、スケールの発生を抑制できない(スケール評点2、3となっていた)。
また合金層の厚みが13μmと非常に厚い場合には番号8のようにAl−Si層が10μmと厚くてもスケール発生を抑制できない(スケール評点3となっていた)。
スキンパスの圧下率が高い場合(番号36、37)や侵入板温が高い場合(番号38)にもスケールが発生しやすい。
以上の試験結果よりして、ホットスタンプ用溶融Alめっき鋼板の合金層の厚み、合金層のC方向のクラック幅、Al−Siめっき層の厚みの条件を適切に制御することによってホットスタンプ製品の母材鋼板に脱炭層やスケールの発生を抑制できることが分った。

Claims (4)

  1. 母材鋼板とめっき層との境界面に3〜12μm厚みのFe−Al−Si金属間化合物層および該金属間化合物層上に8〜50μm厚みのAl−Siめっき層を有するホットスタンプ用溶融Alめっき鋼板であって、前記金属間化合物層厚みが3〜7μmの場合には、該金属間化合物層のC方向のクラック幅が0.6μm以下、かつAl−Siめっき層の厚みが8〜50μmであり、前記金属間化合物層厚みが7超〜12μmの場合には、該金属間化合物層のC方向のクラック幅が1μm未満、かつAl−Siめっき層の厚みが14〜50μmであることを特徴とするホットスタンプ用溶融Alめっき鋼板。
  2. 前記母材鋼板が、質量%で、C:0.15〜0.4%、Si:0.3%以下、Mn:0.8〜1.55%、Cr:0.1〜0.5%、B:0.0015〜0.005%、Al:0.04%以下、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼板、または、さらに、Ti、Nb、Mo、V、Ni、Cu、Wの1種または2種以上を0.05%以下含有する鋼板であることを特徴とする請求項1に記載のホットスタンプ用溶融Alめっき鋼板。
  3. 請求項1又は請求項2に記載のホットスタンプ用溶融Alめっき鋼板を製造する際、鋼板を溶融Alめっきするに当り、浴温が620〜675℃のAl−Siめっき浴に、浴内への浸漬時間が3〜10秒、侵入板温が浴温±20℃の条件で溶融Alめっきした後、圧下率0.5%未満のスキンパス圧延を行なうことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のホットスタンプ用溶融Alめっき鋼板の製造方法。
  4. 請求項1又は請求項2に記載のホットスタンプ用溶融Alめっき鋼板を用いてホットスタンプしたホットスタンプ製品であって、ホットスタンプ製品の母材鋼板表層に形成された脱炭層の厚みが1μm未満であることを特徴とするホットスタンプ製品。
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