以下に説明する好ましい実施形態は、本発明を容易に理解するために用いられている。従って、当業者は、本発明が、以下に説明される実施形態によって不当に限定されないことを留意すべきである。なお、説明中、左右とは車両の乗員を基準として左右、前後とは車両の進行方向を基準として前後を指す。また、図中Frは前、Rrは後、Lは乗員から見て左、Rは乗員から見て右、Upは上、Dwは下を示している。
1.実施例1
1−1.二重ドア付き車両の構成
図1には、以下に説明されるバックドア40及びサブドア60を含む二重ドア70を備える二重ドア付き車両10(以下、単に「車両10」という。)の一例として、右ハンドルのワゴン車が示されている。車両10は、車室11の前方にエンジンルーム12が形成され、このエンジンルーム12には、走行用動力源としてのエンジン13が搭載されている。車室11内には、乗員が着座するための座席が3列に設けられている。
車室11の前部の右側には、運転席15が設けられ、この運転席15の隣に助手席16(他席16)が設けられている。車幅中心を通り前後方向に延びる中心線C1は、運転席15及び助手席16によって挟まれている。即ち、運転席15は、車幅中心C1に対して右側にオフセットした位置に配置され、助手席16は、車幅中心C1に対して、左側にオフセットした位置に配置されている。以下、適宜、車両右側を「運転席側」といい、車両左側を「助手席側」という。即ち、本実施例において、運転席側は車両右側ということができ、助手席側は車両左側ということができる。これらの運転席15及び助手席16は、車両10を側方から見た場合に、互いに重なっており、これらを纏めて、適宜、第1列シートという。
運転席15及び助手席16(第1列シート15,16)の後方には、3人が着座可能な第2列シート17が、車幅方向に亘って設けられている。この第2列シート17(中列シート17)の後方には、3人が着座可能な第3列シート18(後列シート18)が、車幅方向に亘って設けられている。第2列シート17は、2つのシートが車幅方向に連続して設けられることにより、1つのベンチ型のシートとされている。第2列シート17を構成する2つのシートは、それぞれ、折りたたみ可能に構成される。第3列シート18の構成も第2列シート17と同様であり、詳細な説明は省略する。
第1列シート15,16の車幅方向の車外側の双方には、車室11と車外とを隔てるサイドドア21、21が備えられている。また、第2列シート17の車幅方向の車外側の双方にも、車室11と車外とを隔てるサイドドア21、21が備えられている。各々のサイドドア21、21、21、21には、サイドドア用ドアロック装置22が設けられている。
図2、図3に示されるように、車体25の後部において、車幅方向及び上下方向の全体に亘って第1開口部である後部開口30が形成されている。この後部開口30を開閉可能に、バックドア40が取り付けられている。バックドア40の一部は、閉じ状態において車両の後面を構成する。
このバックドア40の車幅方向の一部には、高さ方向の全体に亘って第2開口部であるサブドア開口50が形成されている。サブドア開口50は、乗員の乗降のために形成されている開口であり、例えば、一例として、車両10の助手席側の端部から車幅中央(車幅中央において上下に延びる中心線C2参照。)を越える位置まで形成されている。このサブドア開口50(乗降用開口50)には、開閉可能にサブドア60(乗降用サブドア60)が取り付けられている。サブドア60は、バックドア40及びサブドア60の閉じ状態において、車両10の後面の一部を構成する。
以下、適宜、「車幅中央において上下に延びる中心線C2」を、「車幅中心C2」という。
車両10の後面に車幅方向に亘って後部窓パネル78が配置されている。後部窓パネル78は、バックドア40に固定されているバックドア側窓パネル48と、サブドア60に固定されているサブドア側窓パネル68とからなる。バックドア側窓パネル48及びサブドア側窓パネル68は、車幅方向に亘って連続的に設けられている。これらのバックドア側窓パネル48の後面と、サブドア側窓パネル68の後面とは、略面一に配置されている。
バックドア40の車外側パネル40aとサブドア60の車外側パネル60aとに跨って、ライセンスプレート28(ナンバープレート28)を配置するためのライセンス凹部72が、車室11に向かって凹状に形成されている。ライセンス凹部72は、バックドア40の車外側パネル40aに形成されているバックドア側凹部42と、サブドア60の車外側パネル60aに形成されているサブドア側凹部62とからなる。
ライセンス凹部72の上部は、凹部ガーニッシュ79によって覆われている。凹部ガーニッシュ79は、バックドア側凹部42の上部を覆っているバックドア側ガーニッシュ49と、サブドア側凹部62の上部を覆っているサブドア側ガーニッシュ69とからなる。バックドア側ガーニッシュ49及びサブドア側ガーニッシュ69は、連続して車幅方向に延びている。
後部開口30は、略矩形(略正方形を含む)を呈し、車体25のルーフ27近傍に幅方向に亘って形成されている上縁30aと、この上縁30aの両端から車体の車幅方向端部に沿って下げられる左右の側縁30b,30c(bは右側(運転席側)の側縁を示す添え字。cは左側(助手席側)の側縁を示す添え字。)と、これらの左右の側縁30b,30cの下端同士を結ぶ下縁30dとから形成されている。
バックドア40は、車体25の上部に水平方向に延びる第1開閉軸L1を中心にスイングするよう、車体25の後部に取り付けられている。バックドア40は、上下方向にスイングする。
バックドア40の下端には、バックドア40を係止するためのバックドア用ラッチ装置41が取り付けられている。バックドア用ラッチ装置41は、後部開口30の下縁30dの中央に取り付けられるバックドア用ストライカ31に係合するラッチ状態と、バックドア用ストライカ31に係合しないアンラッチ状態との2つの状態を切り替え可能である。バックドア用ラッチ装置41が、バックドア用ストライカ31に係合するラッチ状態となることで、バックドア40が閉状態となる。バックドア用ラッチ装置41は、電磁的にラッチ状態とアンラッチ状態が切り替わる電磁式機構で構成されている。
バックドア40の開放操作は、バックドア40に設けられているバックドア用開操作部43によって行われる。バックドア用開操作部43は、例えば、一例として、バックドア側凹部42の右端部に設けられているバックドアハンドル43である。バックドアハンドル43は、バックドア側ガーニッシュ49によって覆われていると共に、下方から掴むことができるよう、下方が開口している。
バックドアハンドル43には、バックドア40を開放可能状態にするバックドア用開放スイッチ46が設けられている。バックドア40の開放可能状態とは、バックドア用ラッチ装置41がラッチ状態からアンラッチ状態に切り替わった状態である。バックドア用開放スイッチ46は、一例として、例えば、タッチセンサ又は押しボタンスイッチ等で構成されている。
サブドア開口50は、略矩形を呈し、後部開口30の上縁30aに沿って形成されている上縁50aと、この上縁50aの右側の端部から下げられている右側縁50bと、上縁50aの左側の端部から下げられ後部開口30の側縁30cに沿って延びている左側縁50cと、これらの側縁50b,50cの下端同士を結ぶ下縁50dとから形成されている。
ピラー44には、サブドア60を水平方向に回転可能に支持する2つのヒンジ45,45が取り付けられている。サブドア60は、2つのヒンジ45,45を介してピラー44に支持されており、いわゆる横開きの構成とされている。2つのヒンジ45の中心を通り、鉛直方向に延びている軸を第2開閉軸L2といい、この第2開閉軸L2を中心にサブドア60はスイングする。サブドア60は、車体25の前後方向、且つ、水平方向にスイングする。このとき、サブドア60は、運転席側とは逆側の他端部(後部開口30の左側縁30c側)から開く。
サブドア60の助手席側の端部には、サブドア60を係止するための、サブドア用ラッチ装置61が取り付けられている。サブドア用ラッチ装置61は、サブドア開口50の左側縁50cに取り付けられるサブドア用ストライカ51に係合するラッチ状態と、サブドア用ストライカ51に係合しないアンラッチ状態との2つの状態を切り替え可能である。サブドア用ラッチ装置61が、サブドア用ストライカ51に係合するラッチ状態となることで、サブドア60が閉状態となる。サブドア用ラッチ装置61は、電磁的にラッチ状態とアンラッチ状態が切り替わる電磁式機構で構成されている。
サブドア60の開放操作は、サブドア60に設けられているサブドア用開操作部63によって行われる。サブドア用開操作部63は、例えば、一例として、サブドア60の助手席側の端部から車幅中心C2に向かって取り付けられているサブドア用アウタハンドル63である。
サブドア用アウタハンドル63には、サブドア60を開放可能状態にするサブドア用開放スイッチ66が設けられている。サブドア60の開放可能状態とは、サブドア用ラッチ装置61がラッチ状態からアンラッチ状態に切り替わった状態である。サブドア用開放スイッチ66は、一例として、例えば、タッチセンサ又は押しボタンスイッチ等で構成されている。
サブドア60の車内側面部には、サブドア60の開放操作を行うための図示されていないサブドア用インナハンドルが、さらに配置されている。即ち、サブドア60は、サブドア用アウタハンドル63及びサブドア用インナハンドルのいずれからもサブドア60の開放操作を行うことができる。サブドア用インナハンドルには、インナ開放スイッチが設けられ、インナ開放スイッチを操作することで、サブドア用ラッチ装置61がラッチ状態からアンラッチ状態に切り替わる。インナ開放スイッチは、一例として、例えば、タッチセンサ又は押しボタンスイッチ等で構成されている。
サブドア用アウタハンドル63は、バックドアハンドル43よりも上方に位置している。即ち、バックドアハンドル43及びサブドア用アウタハンドル63は、車幅方向にお互い離れた位置であって、高さ方向の異なる位置に取り付けられている。これにより、バックドアハンドル43とサブドア用アウタハンドル63の混同を防止し、操作性を高めることができる。
加えて、バックドアハンドル43がサブドア用アウタハンドル63よりも下方に位置していることにより、より小さな操作力によって、バックドア40を操作することができる。また、サブドア用アウタハンドル63がバックドアハンドル43よりも上方に位置していることにより、立った状態によってサブドア60を容易に操作することができる。
サブドア60のなかの、車幅方向においてサブドア用アウタハンドル63とバックドアハンドル43との間には、車両10が備える少なくとも1つのドアロック装置をロック状態にするロックスイッチ23が配置されている。ロックスイッチ23は、1つ配置されている。ロックスイッチ23は、一例として、例えば、タッチセンサ又は押しボタンスイッチ等で構成されている。
ロックスイッチ23は、車幅方向において、バックドアハンドル43とサブドア用アウタハンドル63との間であれば配置位置は限定されないが、乗員がバックドア40及びサブドア60を閉鎖操作したときに、ロックスイッチ23を操作し易い位置に配置されることが好ましい。なお、乗員が、バックドア用開放スイッチ46及びサブドア用開放スイッチ66と区別できるように、ロックスイッチ23は、バックドアハンドル43及びサブドア用アウタハンドル63以外の位置に設けられる。
バックドア40の車外側パネル40a又はサブドア60の車外側パネル60aには、車幅方向において、バックドア用開操作部43とサブドア用開操作部63との間の位置に、後述するスマートエントリシステム用のアンテナ81が取り付けられている。アンテナ81は、一例として、車幅方向において、バックドア用開操作部43とサブドア用開操作部63との略中間位置であって、高さ方向において、ライセンス凹部72より下の高さで、サブドア60の車外側パネル60aに取り付けられている。図2に示される例においては、アンテナ81は、車幅中心C2より左側にオフセットした位置に配置されている。
アンテナ81の配置位置を車幅中心C2上に限定したとすると、例えばサブドア60の幅によってはサブドア開口50の右側縁50b又はヒンジ45との関係で、或いはサブドア側ガーニッシュ69の取り付け形状の関係で、アンテナ81の配置が困難になる等、アンテナ81の配置に関する制約が多くなる。したがって、バックドア用開操作部43及びサブドア用開操作部63の位置との関係で適切な位置にアンテナ81を配置することができるように、アンテナ81の配置位置を車幅中心C2上に限定しないことが好ましい。
アンテナ81は、上述したように、可動するバックドア40の車外側パネル40a又はサブドア60の車外側パネル60aに配置されている。その結果、アンテナ81が可動しない例えばバンパーフェース等に配置される場合と比較して、後述するハードワイヤによる配線に係るコスト及びウェイトを低減することができる。また、後部開口30の拡大を実現するためにバンパーフェースにおける上下方向の長さがアンテナ81の上下方向の長さよりも小さく、バンパーフェースにアンテナ81を配置することができないときにも効果がある。
バックドア40の車外側パネル40aのライセンス凹部72より下の部分の車外側は、例えば、バックドア側樹脂部材39で覆われている。サブドア60の車外側パネル60aのライセンス凹部72より下の部分の車外側は、例えば、サブドア側樹脂部材59で覆われている。バックドア側樹脂部材39及びサブドア側樹脂部材59は、連続して車幅方向に延びている。すなわち、サブドア60の車外側パネル60aに取り付けられているアンテナ81は、サブドア側樹脂部材59によって車外側が覆われている。
図4には、サブドア60の車外側パネル60aに取り付けられて、サブドア側樹脂部材59によって車外側が覆われているスマートエントリシステム用のアンテナ81が示されている。アンテナ81が取り付けられている位置付近のサブドア60の車外側パネル60aは、車外側から見て凹状に形成されている。ステー73は、中央部が車外側に突き出すように形成され、ステー73の両端部には、丸ビス孔75、75が形成されている。丸ビス74が車外側から丸ビス孔75及び車外側パネル60aに形成された貫通孔76を貫通して、ナット77で固定されることによって、車外側パネル60aの凹状に形成された部分にステー73が取り付けられている。アンテナ81は、ステー73の中央部の平らな部分にビス止め、接着等で固定されることによって、サブドア60の車外側パネル60aに取り付けられる。サブドア側樹脂部材59は、アンテナ81及びアンテナ81が取り付けられたサブドア60の車外側パネル60aの車外側を覆っている。
アンテナ81及びアンテナ81が取り付けられたサブドア60の車外側パネル60aの車外側は、サブドア側樹脂部材59で覆われていることによって、アンテナ81の通信性能の確保と意匠性の向上が可能である。
1−2.スマートエントリシステムの構成と動作
図5に示されるように、車両10には、スマートエントリシステムが適用されている。スマートエントリシステムは、乗員に携帯される携帯機86と通信を行うためのアンテナ81とバックドア用開放スイッチ46とサブドア用開放スイッチ66とを含む。スマートエントリシステムは、ロックスイッチ23、サイドドア用ドアロック装置22、スマートECU83、二重ドアECU84及びドアロック制御ECU85等を更に含んでもよい。
スマートECU83、二重ドアECU84及びドアロック制御ECU85は、例えば、CAN91(Control Area Network)等の車載LANによって、互いに接続されている。スマートECU83、二重ドアECU84及びドアロック制御ECU85の全て又は少なくともスマートECU83を含む1つ以上がスマートエントリシステムの制御部82を構成する。
スマートECU83は、例えば、ハードワイヤ92aによって、バックドア用開放スイッチ46とサブドア用開放スイッチ66とロックスイッチ23とアンテナ81と接続されている。スマートECU83は、ハードワイヤ92aによって、さらに、サイドドア21、21、21、21の各々に設けられている図示されていないサイドドア用開放スイッチの少なくとも1つと接続されていてもよい。二重ドアECU84は、例えば、ハードワイヤ92bによって、バックドア用開放スイッチ46とサブドア用開放スイッチ66とバックドア用ラッチ装置41とサブドア用ラッチ装置61と接続されている。ドアロック制御ECU85は、例えば、ハードワイヤ92cによって、サイドドア21、21、21、21の各々に設けられているサイドドア用ドアロック装置22の少なくとも1つ(好ましくは全て)と接続されている。
ハードワイヤ92a、92b、92cによって接続されているECU、装置等間の信号の入出力は時間的に連続している。一方、CAN91によって接続されているECU間の信号の入出力は時間的に離散している。したがって、ハードワイヤ92a、92b、92cによって接続されているECU、装置等間の信号は、CAN91によって接続されているECU間の信号と比較して速く入出力される。その結果、全てのECU、装置等間をCAN91で接続する場合と比較して、以下に説明するスマートエントリシステムによる一連の動作を速めることができる。
バックドア用開放スイッチ46は、バックドア用開放スイッチ46に対する乗員による操作があったときに、ハードワイヤ92bを介して、例えばバックドア操作受付信号を二重ドアECU84に出力する。ここで、バックドア用開放スイッチ46に対する乗員による操作とは、例えば、乗員によってバックドア用開放スイッチ46を構成するタッチセンサへのタッチ又は押しボタンスイッチへの押下がされること等である。
サブドア用開放スイッチ66は、サブドア用開放スイッチ66に対する乗員による操作があったときに、ハードワイヤ92bを介して、例えばサブドア操作受付信号を二重ドアECU84に出力する。ここで、サブドア用開放スイッチ66に対する乗員による操作とは、例えば、乗員によってサブドア用開放スイッチ66を構成するタッチセンサへのタッチ又は押しボタンスイッチへの押下がされること等である。
二重ドアECU84は、バックドア操作受付信号又はサブドア操作受付信号を入力したときに、CAN91を介してスマートECU83にバックドア操作検知信号又はサブドア操作検知信号を出力する。
二重ドアECU84は、ハードワイヤ92bを介して、バックドア用ラッチ装置41及びサブドア用ラッチ装置61の状態を検出する。二重ドアECU84は、バックドア用ラッチ装置41及びサブドア用ラッチ装置61の双方の状態がラッチ状態であるときに、CAN91を介してスマートECU83にラッチ状態検出信号を出力する。また、二重ドアECU84は、バックドア用ラッチ装置41及びサブドア用ラッチ装置61の少なくとも一方の状態がアンラッチ状態であるときに、CAN91を介してスマートECU83にアンラッチ状態検出信号を出力する。
スマートECU83は、ラッチ状態検出信号を入力し、且つ、バックドア操作検知信号又はサブドア操作検知信号を入力したときに、アンテナ81から所定の信号を送信する。ここで、アンテナ81から送信される所定の信号とは、例えば、乗員が携帯する携帯機86に対するリクエスト信号である。スマートECU83は、アンラッチ状態検出信号を入力したときは、バックドア操作検知信号又はサブドア操作検知信号を入力したとしても、アンテナ81から所定の信号を送信しない。
バックドア用ラッチ装置41及びサブドア用ラッチ装置61の少なくとも一方の状態がアンラッチ状態であるときは、さらにバックドア用ラッチ装置41及びサブドア用ラッチ装置61の少なくとも一方の状態をアンラッチ状態にすることはありえない。したがって、スマートECU83は、アンラッチ状態検出信号を入力したときは、バックドア操作検知信号又はサブドア操作検知信号を入力したとしても、アンテナ81から所定の信号を送信しないことによって、所定の信号の送信に係る消費電力の浪費を防止できる。
携帯機86は、アンテナ81から送信されるリクエスト信号を受信すると、携帯機86が記憶するスマートECU83のID情報を含む応答信号を送信する。
スマートECU83は、アンテナ81を介して携帯機86から送信される応答信号を受信すると、応答信号に含まれるID情報が、自身のID情報と一致するか否かを判定する。スマートECU83は、バックドア操作検知信号又はサブドア操作検知信号を入力した後に、応答信号に含まれるID情報が、自身のID情報と一致すると判定したときに、CAN91を介してアンラッチ要求信号を二重ドアECU84に出力する。
二重ドアECU84は、アンラッチ要求信号を入力すると、乗員によって操作がなされた開放スイッチに対応する方のドアのラッチ装置の状態をラッチ状態からアンラッチ状態に切り替える。すなわち、乗員によって、バックドア用開放スイッチ46が操作されたときはバックドア用ラッチ装置41をラッチ状態からアンラッチ状態に切り替える一方で、サブドア用開放スイッチ66が操作されたときはサブドア用ラッチ装置61をラッチ状態からアンラッチ状態に切り替える。
二重ドアECU84は、アンラッチ要求信号を入力したとき、又は、サイドドア21、21、21、21の各々に設けられているサイドドア用ドアロック装置22の少なくとも1つの状態がアンロック状態であるとき、乗員によって操作がなされた開放スイッチに対応する方のドアのラッチ装置の状態をラッチ状態からアンラッチ状態に切り替える。したがって、サイドドア21、21、21、21の各々に設けられているサイドドア用ドアロック装置22の少なくとも1つの状態がロック状態であるときは、乗員が携帯機86を携帯しないでバックドア用開放スイッチ46又はサブドア用開放スイッチ66を操作したとしても、バックドア用ラッチ装置41及びサブドア用ラッチ装置61のいずれもラッチ状態からアンラッチ状態に切り替わることはない。同様に、携帯機86から送信される応答信号に含まれるID情報がスマートECU83のID情報と一致しないときも、バックドア用ラッチ装置41及びサブドア用ラッチ装置61のいずれもラッチ状態からアンラッチ状態に切り替わることはない。
なお、図示されていないサブドア用インナハンドルのインナ開放スイッチは、サブドア用ラッチ装置61と、例えば図示されていないハードワイヤによって接続されている。乗員によってインナ開放スイッチが操作されたときは、サブドア用ラッチ装置61の状態がスマートエントリシステムの制御部82による制御がされることなく、ラッチ状態からアンラッチ状態に切り替わる。ここで、インナ開放スイッチに対する乗員による操作とは、例えば、乗員によってインナ開放スイッチを構成するタッチセンサへのタッチ又は押しボタンスイッチへの押下がされること等である。
例えば、車両10が停止して、乗員が車外に出るために、車両10のエンジン13が駆動中であるときに、乗員によってインナ開放スイッチを操作する状況が発生し得る。乗員によってインナ開放スイッチが操作されたことによって、サブドア用ラッチ装置61がアンラッチ状態に切り替わった後に、サブドア用ラッチ装置61が再度ラッチ状態に切り替わったときに、携帯機86が車室内に存在するか否かの判定がなされる。この判定によって、携帯機86が車室内に存在しないと判定されたときは、例えば、警告がなされる。この判定はNOKEY検出とも呼ばれる。
携帯機86が車室内に存在するか否かの判定は、例えば、以下に示される方法で行われる。例えば、スマートECU83は、図示されていない車室内に取り付けられているアンテナから車室内を送信範囲としてリクエスト信号を送信する。スマートECU83は、所定時間が経過するまでの間に、自身のID情報と一致するID情報が含まれる応答信号を携帯機86から受信しないときに、携帯機86が車室内に存在しないと判定する。
NOKEY検出が行われることによって、例えば、エンジン13が駆動中であるときに2人以上の乗員の内車両10を運転しない乗員が携帯機86を携帯して車外に出たために、車室内に携帯機86が存在しない状況等が発生することが防止される。
また、スマートECU83は、バックドア操作検知信号又はサブドア操作検知信号を入力した後に、応答信号に含まれるID情報が、自身のID情報と一致すると判定したときに、さらに、CANを介してアンロック要求信号をドアロック制御ECU85に出力する。ドアロック制御ECU85は、アンロック要求信号を入力すると、サイドドア21、21、21、21の各々に設けられているサイドドア用ドアロック装置22の少なくとも1つ(好ましくは全て)の状態をロック状態からアンロック状態に切り替える。
バックドア用開操作部43であるバックドアハンドル43に、バックドア用開放スイッチ46が設けられている。また、サブドア用開操作部63であるサブドア用アウタハンドル63に、サブドア用開放スイッチ66が設けられている。そのため、乗員は、バックドア40又はサブドア60のうち所望のドアを開放可能状態した後に、手を移動させることなく当該ドアの開放操作をすることができることによって、ドアの開放操作をする際の一連の操作性が向上する。具体的に、バックドア用ラッチ装置41及びサブドア用ラッチ装置61は電磁式機構で構成されているので、乗員が、バックドア用開放スイッチ46又はサブドア用開放スイッチ66のいずれか一方を操作することで、バックドア40又はサブドア60のうち所望のドアの電磁式ラッチ機構による係止が解除される。その結果、ドアロック機構によるアンロック動作を待ってから改めてドアの機械的なラッチを解除するという操作の煩雑さを低減できることによって、ドアの開放操作をする際の一連の操作性がさらに向上する。
さらに、バックドア用開放スイッチ46とサブドア用開放スイッチ66は、アンロック機能も兼ねていることによって、新たにアンロックスイッチを設ける必要がなくなり、コスト低減が可能になる。
また、スマートECU83は、二重ドアECU84と同様に、ハードワイヤ92aを介してバックドア操作受付信号又はサブドア操作受付信号を入力してもよい。スマートECU83もバックドア用開放スイッチ46又はサブドア用開放スイッチ66から直接バックドア操作受付信号又はサブドア操作受付信号を入力することで、乗員による開放スイッチへの操作を早期に検出することができる。その結果、乗員による開放スイッチへの操作から、ラッチ装置のラッチ状態からアンラッチ状態への切り替わり及びサイドドア用ドアロック装置22のロック状態からアンロック状態への切り替わりの一連の動作を速めることができる。
ロックスイッチ23は、ロックスイッチ23に対する乗員による操作があったときに、ハードワイヤ92aを介して、例えば、ロック操作受付信号をスマートECU83に出力する。ここで、ロックスイッチ23に対する乗員による操作とは、例えば、乗員によってロックスイッチ23を構成するタッチセンサへのタッチ又は押しボタンスイッチへの押下がされること等である。
スマートECU83は、ラッチ状態検出信号を入力し、且つ、ロック操作受付信号を入力したときに、アンテナ81から所定の信号として、例えば、乗員が携帯する携帯機86に対するリクエスト信号を送信する。ここでのリクエスト信号は、スマートECU83が、バックドア操作検知信号又はサブドア操作検知信号を入力したときに、アンテナ81から送信するリクエスト信号と同じであっても異なってもよい。スマートECU83は、アンラッチ状態検出信号を入力したときは、ロック操作受付信号を入力したとしても、アンテナ81から所定の信号を送信しない。
バックドア用ラッチ装置41及びサブドア用ラッチ装置61の少なくとも一方の状態がアンラッチ状態であるときは、サイドドア用ドアロック装置22をロック状態にすることはありえない。したがって、スマートECU83は、アンラッチ状態検出信号を入力したときは、ロック操作受付信号を入力したとしても、アンテナ81から所定の信号を送信しないことによって、所定の信号の送信に係る消費電力の浪費を防止できる。
携帯機86は、アンテナ81から送信されるリクエスト信号を受信すると、携帯機86が記憶するスマートECU83のID情報を含む応答信号を送信する。
スマートECU83は、アンテナ81を介して携帯機86から送信される応答信号を受信すると、応答信号に含まれるID情報が、自身のID情報と一致するか否かを判定する。スマートECU83は、ロック操作受付信号を入力した後に、応答信号に含まれるID情報が、自身のID情報と一致すると判定したときに、CAN91を介してロック要求信号をドアロック制御ECU85に出力する。
ドアロック制御ECU85は、ロック要求信号を入力すると、サイドドア21、21、21、21の各々に設けられているサイドドア用ドアロック装置22の少なくとも1つ(好ましくは全て)の状態をアンロック状態からロック状態に切り替える。
図6を用いて、アンテナ81の配置とアンテナ81から送信される所定の信号の送信範囲との関係について説明する。図6には、領域A、領域B及び領域Cの3つの領域が示されている。領域Aは、アンテナ81から送信される所定の信号の送信範囲を示す領域である。領域Bは、バックドア用開操作部43を含む領域であって、バックドア用開放スイッチ46を操作するときに、乗員が位置する領域である。領域Cは、サブドア用開操作部63を含む領域であって、サブドア用開放スイッチ66を操作するときに、乗員が位置する領域である。
乗員がバックドア40の開放操作を行うときは、携帯機86を携帯してバックドア用開放スイッチ46を操作するため、携帯機86は領域Bに位置する。同様に、乗員がサブドア60の開放操作を行うときは、携帯機86を携帯してサブドア用開放スイッチ66を操作するため、携帯機86は領域Cに位置する。すなわち、領域B及び領域Cを含むように、アンテナ81から送信される所定の信号の送信範囲である領域Aが設定される必要がある。
領域A、すなわち、アンテナ81から送信される所定の信号の送信範囲は、所定の信号が送信される出力に応じた射程距離で定まる。したがって、図6に示されるような車両10の後部を上方から見下ろすような視点では、アンテナ81を中心として、所定の信号が送信される出力に応じた射程距離を半径とした略半円の内側が領域Aである。
アンテナ81は、上述したように、車幅方向において、バックドア用開操作部43とサブドア用開操作部63との間の位置に、1つ配置される。また、アンテナ81から送信される所定の信号の送信範囲は、バックドア用開操作部43とサブドア用開操作部63を含むように設定される。そうすると、バックドア40とサブドア60のそれぞれに1つずつアンテナを設ける必要がない。その結果、スマートエントリシステム適用に係るコスト、ウェイト及び車体の後部におけるアンテナ81の配置に必要なスペースを低減することができる。
アンテナ81は、上述したように、一例として、車幅方向において、バックドア用開操作部43とサブドア用開操作部63との略中間位置に取り付けられている。したがって、領域Bを含むように領域Aが設定されるときは、領域Cも領域Aに含まれる。このように、アンテナ81が、車幅方向において、バックドア用開操作部43とサブドア用開操作部63との略中間位置に取り付けられることで、所定の信号が送信される出力を最低限に抑えることができる。その結果、所定の信号の送信に係る消費電力の浪費防止と所定の法的要件の充足に貢献できる。また、乗員がバックドア用開操作部43を操作するときに、乗員が携帯する携帯機86がアンテナ81から送信される所定の信号を受信できる範囲と、乗員がサブドア用開操作部63を操作するときに、乗員が携帯する携帯機86がアンテナ81から送信される所定の信号を受信できる範囲とを均一に保つことが可能となる。これにより、1つのアンテナ81のみを用いながら、バックドア用開操作部43とサブドア用開操作部63のどちらを操作するときであっても、乗員にアンテナ81から送信される所定の信号の送信範囲の違いを感じさせることがないことによって、違和感の低減につながる。
また、ロックスイッチ23は、上述したように、車幅方向において、バックドア用開操作部43とサブドア用開操作部63との間の位置に、1つ配置される。バックドア用開操作部43とサブドア用開操作部63は、アンテナ81から送信される所定の信号の送信範囲である領域Aに含まれるので、ロックスイッチ23も必ず領域Aに含まれる。その結果、バックドア40とサブドア60の各々にロックスイッチを設ける必要がないことによって、更なるコスト低減が可能になる。
図7(A)、図7(B)及び図7(C)に示されるフローチャートを用いて、スマートエントリシステムを適用した車両10の動作を説明する。図7に示されるフローチャートの説明において、上述した内容と重複する部分は、詳細な説明を省略する。
図7(A)を用いて、乗員によって、バックドア用開放スイッチ46が操作されるときの動作フローを説明する。ステップS01では、スマートエントリシステムの制御部82は、乗員によってバックドア用開放スイッチ46が操作されたか否かを判定する。具体的には、スマートECU83が、二重ドアECU84からバックドア操作検知信号を入力したか否かを判定する。制御部82が、バックドア用開放スイッチ46が操作されたと判定したときは、フローはステップS02に進む。一方、制御部82が、バックドア用開放スイッチ46が操作されたと判定しないときは、動作フローは終了する。なお、スマートECU83は、バックドア操作検知信号の入力に代えて又はこれと併せてバックドア用開放スイッチ46から直接バックドア操作受付信号を入力したか否かを判定してもよい。
ステップS02では、スマートエントリシステムの制御部82は、バックドア40及びサブドア60が閉状態であるか否かを判定する。具体的には、スマートECU83が、ラッチ状態検出信号を入力したか否かを判定する。制御部82が、バックドア40及びサブドア60が閉状態であると判定したときは、フローはステップS03に進む。一方、制御部82が、バックドア40及びサブドア60の少なくとも一方が開状態であると判定したときは、動作フローは終了する。
ステップS03では、スマートエントリシステムの制御部82は、アンテナ81から所定の信号を送信する。具体的には、スマートECU83が、アンテナ81からリクエスト信号を送信する。リクエスト信号を受信した携帯機86から送信される応答信号をスマートECU83がアンテナ81を介して受信したときに、フローはステップS04に進む。ここで、スマートECU83がリクエスト信号を送信してから、所定時間が経過するまでに応答信号を受信しないときは、動作フローが終了してもよい。
ステップS04では、スマートエントリシステムの制御部82は、アンテナ81を介して受信する応答信号に含まれるID情報が自身のID情報と一致するか否かを判定する。具体的には、スマートECU83が、応答信号に含まれるID情報が自身のID情報と一致するか否かを判定する。制御部82が、応答信号に含まれるID情報が自身のID情報と一致すると判定したときは、フローはステップS05に進む。一方、制御部82が、応答信号に含まれるID情報が自身のID情報と一致すると判定しないときは、動作フローは終了する。
ステップS05では、スマートエントリシステムの制御部82は、バックドア用ラッチ装置41の状態をラッチ状態からアンラッチ状態に切り替える。具体的には、スマートECU83が二重ドアECU84にアンラッチ要求信号を出力し、二重ドアECU84がバックドア用ラッチ装置41をラッチ状態からアンラッチ状態に切り替える。
ステップS06では、スマートエントリシステムの制御部82は、サイドドア用ドアロック装置22の状態をロック状態からアンロック状態に切り替える。具体的には、スマートECU83がドアロック制御ECU85にアンロック要求信号を出力し、ドアロック制御ECU85がサイドドア21、21、21、21の各々に設けられているサイドドア用ドアロック装置22の少なくとも1つ(好ましくは全て)の状態をロック状態からアンロック状態に切り替える。
ステップS06が終了すると、動作フローは終了する。なお、ステップS05とステップS06は、順番が入れ替わってもよく、同時に行われてもよい。
図7(B)を用いて、乗員によって、サブドア用開放スイッチ66が操作されるときの動作フローを説明する。図7(B)に示される動作フローの各ステップのうち、上述した図7(A)に示される動作フローと同様のものは、その対応関係のみを説明し、詳細な説明を省略する。
ステップS11では、スマートエントリシステムの制御部82は、乗員によってサブドア用開放スイッチ66が操作されたか否かを判定する。具体的には、スマートECU83が、二重ドアECU84からサブドア操作検知信号を入力したか否かを判定する。制御部82が、サブドア用開放スイッチ66が操作されたと判定したときは、フローはステップS12に進む。一方、制御部82が、サブドア用開放スイッチ66が操作されたと判定しないときは、動作フローは終了する。なお、スマートECU83は、サブドア操作検知信号の入力に代えて又はこれと併せてサブドア用開放スイッチ66から直接サブドア操作受付信号を入力したか否かを判定してもよい。
ステップS12は図7(A)に示されるステップS02に対応し、ステップS13は図7(A)に示されるステップS03に対応し、ステップS14は図7(A)に示されるステップS04に対応する。
ステップS15では、スマートエントリシステムの制御部82は、サブドア用ラッチ装置61の状態をラッチ状態からアンラッチ状態に切り替える。具体的には、スマートECU83が二重ドアECU84にアンラッチ要求信号を出力し、二重ドアECU84がサブドア用ラッチ装置61をラッチ状態からアンラッチ状態に切り替える。
ステップS16は図7(A)に示されるステップS06に対応する。ステップS16が終了すると、動作フローは終了する。なお、ステップS15とステップS16は、順番が入れ替わってもよく、同時に行われてもよい。
図7(C)を用いて、乗員によって、ロックスイッチ23が操作されるときの動作フローを説明する。図7(C)に示される動作フローの各ステップのうち、上述した図7(A)又は図7(B)に示される動作フローと同様のものは、その対応関係のみを説明し、詳細な説明を省略する。
ステップS21では、スマートエントリシステムの制御部82は、乗員によってロックスイッチ23が操作されたか否かを判定する。具体的には、スマートECU83が、ロックスイッチ23からロック操作受付信号を入力したか否かを判定する。制御部82が、ロックスイッチ23が操作されたと判定したときは、フローはステップS22に進む。一方、制御部82が、ロックスイッチ23が操作されたと判定しないときは、動作フローは終了する。
ステップS22は図7(A)に示されるステップS02及び図7(B)に示されるステップS12に対応し、ステップS23は図7(A)に示されるステップS03及び図7(B)に示されるステップS13に対応し、ステップS24は図7(A)に示されるステップS04及び図7(B)に示されるステップS14に対応する。
ステップS25では、スマートエントリシステムの制御部82は、サイドドア用ドアロック装置22の状態をアンロック状態からロック状態に切り替える。具体的には、スマートECU83がドアロック制御ECU85にロック要求信号を出力し、ドアロック制御ECU85がサイドドア21、21、21、21の各々に設けられているサイドドア用ドアロック装置22の少なくとも1つ(好ましくは全て)の状態をアンロック状態からロック状態に切り替える。ステップS25が終了すると、動作フローは終了する。
図7(A)、図7(B)及び図7(C)に示される各々の動作フローは、別々に説明されたが、実際には、並行して動作フローが実行される。
2.実施例2
2−1.二重ドア付き車両の構成
実施例2は、実施例1で説明された車両10の二重ドア70にドアロック機構を追加した車両10Aである。すなわち、実施例2の説明においては、実施例1の車両10と異なる構成のみを説明し、実施例1の車両10と同じ構成については、符号を流用し、詳細な説明を省略する。以下、図8を参照して、車両10Aの構成を説明する。
実施例1の車両10では、バックドア用ラッチ装置41は、電磁的にラッチ状態とアンラッチ状態が切り替わる電磁式機構で構成されていたが、実施例2の車両10Aでは、機械的にラッチ状態とアンラッチ状態が切り替わる機械式機構で構成されていてもよい。
バックドア用ラッチ装置41が機械式機構で構成されているときは、バックドアハンドル43は、例えば、乗員によって回動されることによってバックドア用ラッチ装置41の状態がラッチ状態からアンラッチ状態に切り替え可能に、バックドア用ラッチ装置41と機械的に接続されている。
バックドア40は、ロック状態及びアンロック状態の2つの状態を切り替えるためにバックドア用ドアロック装置47をさらに備えている。ロック状態とは、バックドア用ラッチ装置41のラッチ状態からアンラッチ状態への切り替わりが禁止される状態である。アンロック状態とは、バックドア用ラッチ装置41のラッチ状態からアンラッチ状態への切り替わりが禁止されない状態である。
実施例2において、バックドア40の開放可能状態とは、バックドア用ラッチ装置41がラッチ状態からアンラッチ状態に切り替わった状態に加えて、バックドア用ドアロック装置47がロック状態からアンロック状態に切り替わった状態も含まれる。
実施例1の車両10では、サブドア用ラッチ装置61は、電磁的にラッチ状態とアンラッチ状態が切り替わる電磁式機構で構成されていたが、実施例2の車両10Aでは、機械的にラッチ状態とアンラッチ状態が切り替わる機械式機構で構成されていてもよい。
サブドア用ラッチ装置61が機械式機構で構成されているときは、サブドアアウタハンドル63及び図示されていないサブドアインナハンドルは、例えば、乗員によって回動されることによってサブドア用ラッチ装置61の状態がラッチ状態からアンラッチ状態に切り替え可能に、サブドア用ラッチ装置61と機械的に接続されている。
サブドア60は、ロック状態及びアンロック状態の2つの状態を切り替えるためにサブドア用ドアロック装置67を備えている。ロック状態とは、サブドア用ラッチ装置61のラッチ状態からアンラッチ状態への切り替わりが禁止される状態である。アンロック状態とは、サブドア用ラッチ装置61のラッチ状態からアンラッチ状態への切り替わりが禁止されない状態である。
実施例2において、サブドア60の開放可能状態とは、サブドア用ラッチ装置61がラッチ状態からアンラッチ状態に切り替わった状態に加えて、サブドア用ドアロック装置67がロック状態からアンロック状態に切り替わった状態である。
2−2.スマートエントリシステムの構成と動作
図9には、実施例2における車両10Aに適用されているスマートエントリシステムが示されている。実施例2における車両10Aのスマートエントリシステムは、二重ドアECU84を備えていなくてもよい。すなわち、バックドア用開放スイッチ46は、バックドア用開放スイッチ46に対する乗員による操作があったときに、ハードワイヤ92aを介して、例えばバックドア操作受付信号をスマートECU83に出力する。また、サブドア用開放スイッチ66は、サブドア用開放スイッチ66に対する乗員による操作があったときに、ハードワイヤ92aを介して、例えばサブドア操作受付信号をスマートECU83に出力する。
ドアロック制御ECU85は、例えばハードワイヤ92cによって、さらに、バックドア用ドアロック装置47及びサブドア用ドアロック装置67のうち少なくともいずれか一方(好ましくは双方)と接続されている。
実施例1では、二重ドアECU84が、バックドア用ラッチ装置41及びサブドア用ラッチ装置61の状態を検出していたが、実施例2では、ドアロック制御ECU85が、例えばハードワイヤ92cを介して、バックドア用ラッチ装置41及びサブドア用ラッチ装置61の状態を検出する。スマートECU83は、CAN91を介してドアロック制御ECU85からバックドア用ラッチ装置41及びサブドア用ラッチ装置61、並びにバックドア用ドアロック装置47及びサブドア用ドアロック装置67の状態を検出する。スマートECU83は、バックドア用ラッチ装置41及びサブドア用ラッチ装置61の状態がラッチ状態、並びにバックドア用ドアロック装置47及びサブドア用ドアロック装置67の状態がロック状態であり、且つ、バックドア操作受付信号又はサブドア操作受付信号を入力したときに、アンテナ81から所定の信号を送信する。
実施例1では、スマートECU83は、バックドア操作検知信号又はサブドア操作検知信号を入力した後に、応答信号に含まれるID情報が、自身のID情報と一致すると判定したときに、CAN91を介してアンラッチ要求信号を二重ドアECU84に出力する。しかし、実施例2では、スマートECU83は、バックドア操作受付信号又はサブドア操作受付信号を入力した後に、応答信号に含まれるID情報が、自身のID情報と一致すると判定したときに、CAN91を介してアンロック要求信号をドアロック制御ECU85に出力する。
ドアロック制御ECU85は、アンロック要求信号を入力すると、サイドドア21、21、21、21の各々に設けられているサイドドア用ドアロック装置22、バックドア用ドアロック装置47及びサブドア用ドアロック装置67の少なくとも1つ(好ましくは全て)の状態をロック状態からアンロック状態に切り替える。
乗員によってロックスイッチ23が操作されたときも同様に、スマートECU83は、バックドア用ラッチ装置41及びサブドア用ラッチ装置61の状態がラッチ状態であり、且つ、ロック操作受付信号を入力したときに、アンテナ81から所定の信号を送信する。
ドアロック制御ECU85は、ロック要求信号を入力すると、サイドドア21、21、21、21の各々に設けられているサイドドア用ドアロック装置22、バックドア用ドアロック装置47及びサブドア用ドアロック装置67の少なくとも1つ(好ましくは全て)の状態をアンロック状態からロック状態に切り替える。
バックドア用開放スイッチ46は、バックドア用ラッチ装置41とも、例えばハードワイヤ92dによって接続されている。バックドア用開放スイッチ46が乗員によって操作されると、スマートECU83に制御されることなくバックドア用ラッチ装置41の状態がラッチ状態からアンラッチ状態に切り替わる。しかし、バックドア用ドアロック装置47の状態がロック状態であるときは、バックドア用ラッチ装置41の状態がラッチ状態からアンラッチ状態に切り替わることが禁止される。
同様に、サブドア用開放スイッチ66は、サブドア用ラッチ装置61とも、例えばハードワイヤ92eによって接続されている。サブドア用開放スイッチ66が乗員によって操作されると、スマートECU83に制御されることなくサブドア用ラッチ装置61の状態がラッチ状態からアンラッチ状態に切り替わる。しかし、サブドア用ドアロック装置67の状態がロック状態であるときは、サブドア用ラッチ装置61の状態がラッチ状態からアンラッチ状態に切り替わることが禁止される。
ここで、実施例2においては、バックドア用開放スイッチ46とサブドア用開放スイッチ66の各々は、ロックスイッチ23の機能を有してもよい。しかし、車両10Aが図8に示されるように共用のロックスイッチ23を備えるとき、バックドア用開放スイッチ46とサブドア用開放スイッチ66の各々は、開放可能状態にする機能のみを有している。
図10(A)及び図10(B)に示されるフローチャートを用いて、スマートエントリシステムを適用した車両10Aの動作を説明する。図10(A)及び図10(B)に示されるフローチャートの説明において、図7(A)又は図7(B)又は図7(C)に示されるフローチャートの説明の内容と重複する部分は、詳細な説明を省略する。
図10(A)を用いて、乗員によって、バックドア用開放スイッチ46又はサブドア用開放スイッチ66が操作されるときの動作フローを説明する。ステップS101では、スマートエントリシステムの制御部82は、乗員によってバックドア用開放スイッチ46又はサブドア用開放スイッチ66が操作されたか否かを判定する。具体的には、スマートECU83が、バックドア用開放スイッチ46又はサブドア用開放スイッチ66から直接バックドア操作受付信号又はサブドア操作受付信号を入力したか否かを判定する。制御部82が、バックドア用開放スイッチ46又はサブドア用開放スイッチ66が操作されたと判定したときは、フローはステップS102に進む。一方、制御部82が、バックドア用開放スイッチ46又はサブドア用開放スイッチ66が操作されたと判定しないときは、動作フローは終了する。
ステップS102は、図7(A)に示される実施例1におけるステップS02に対応し、ステップS103は、図7(A)に示される実施例1におけるステップS03に対応し、ステップS104は、図7(A)に示される実施例1におけるステップS04に対応する。
ステップS105では、スマートエントリシステムの制御部82は、サイドドア用ドアロック装置22、バックドア用ドアロック装置47及びサブドア用ドアロック装置67の状態をロック状態からアンロック状態に切り替える。具体的には、スマートECU83がドアロック制御ECU85にアンロック要求信号を出力し、ドアロック制御ECU85がサイドドア21、21、21、21の各々に設けられているサイドドア用ドアロック装置22、バックドア用ドアロック装置47及びサブドア用ドアロック装置67の少なくとも1つ(好ましくは全て)の状態をロック状態からアンロック状態に切り替える。ステップS105が終了すると、動作フローは終了する。
図10(B)を用いて、乗員によって、ロックスイッチ23が操作されるときの動作フローを説明する。
ステップS111は、図7(C)に示される実施例1におけるステップS21に対応する。
ステップS112は、図10(A)に示されるステップS102に対応し、ステップS113は、図10(A)に示されるステップS103に対応し、ステップS114は、図10(A)に示されるステップS104に対応する。
ステップS115では、スマートエントリシステムの制御部82は、サイドドア用ドアロック装置22、バックドア用ドアロック装置47及びサブドア用ドアロック装置67の状態をアンロック状態からロック状態に切り替える。具体的には、スマートECU83がドアロック制御ECU85にロック要求信号を出力し、ドアロック制御ECU85がサイドドア21、21、21、21の各々に設けられているサイドドア用ドアロック装置22、バックドア用ドアロック装置47及びサブドア用ドアロック装置67の少なくとも1つ(好ましくは全て)の状態をアンロック状態からロック状態に切り替える。ステップS115が終了すると、動作フローは終了する。
図10(A)及び図10(B)に示される各々の動作フローは、別々に説明されたが、実際には、並行して動作フローが実行される。
尚、実施例1及び実施例2において、右ハンドルのワゴン車を例に説明したが、本発明は、左ハンドルのワゴン車や、バス等のワゴン車以外の車両にも適用可能である。また、実施例1及び実施例2において、エンジン駆動車両を例に説明したが、走行用動力源としてエンジン13の代わりに又はエンジン13と併せて電動モータが搭載されている電気自動車又はハイブリッド車両であってもよい。
また、アンテナ81は、車幅中心C2上に配置されてもよい。アンテナ81が車幅中心C2上に配置されるときは、バックドア用開操作部43とサブドア用開操作部63との略中間が車両10の車幅中心C2上となるように、バックドア用開操作部43及びサブドア用開操作部63が配置される。さらに、バックドア用開操作部43とサブドア用開操作部63との略中間が車両10の車幅中心C2上となるように、バックドア用開操作部43及びサブドア用開操作部63の配置に加えて又は代わりに、二重ドア70に占めるサブドア60の幅を変更してもよい。なお、実施例1及び実施例2において、説明したバックドア用開操作部43及びサブドア用開操作部63の配置と、二重ドア70に占めるサブドア60の幅及び高さ等は一例である。
アンテナ81が車幅中心C2上に配置されるときは、車幅中心C2上に対してアンテナ81から送信される所定の信号の送信範囲である領域Aが均等に設定できる。そのため、車両10の後部における左右どちら側も領域Aの端部の位置が車幅中心C2上から対称的な位置となることによって、乗員が領域Aを認識しやすく、違和感を低減することができる。
本発明は、上述の例示的な実施形態に限定されず、また、当業者は、上述の例示的な実施形態を特許請求の範囲に含まれる範囲まで、容易に変更することができるであろう。