以下、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の発明を実施するための形態(以下実施形態という)により本発明が限定されるものではない。また、下記の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記の実施形態における構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
(実施形態1)
図1は、燃料電池の概念図である。図1を用いて、燃料電池の一般的な動作原理を説明する。本実施形態で対象とする燃料電池FCは固体酸化物形燃料電池(以下、「SOFC(Solid Oxide Fuel Cell)」という)である。燃料電池FCは、水の電気分解とは逆に、燃料中の水素と空気中の酸素とを電気化学的に反応させ、燃料のもつ化学的なエネルギーを直接電気エネルギーに変換する発電装置である。カソード(空気極)Caでは、酸素(空気)Aが外部回路から電子e− を受け取り、酸素イオンO2−となって電解質Eを伝ってアノード(燃料極)Anへ移動する。アノードAnでは、酸素イオンO2−と外部から供給された燃料F(水素H2 )とが反応して、2個の電子e− を電極へ送り出す。この電子e− は、負荷Lを通って反対側のカソードCaに流れる。電子e− の流れる方向と反対方向に電流Iが流れる。そして、水素H2 は、負の電荷を帯びた酸素イオンO2−と結合し、水となる。これを化学式で示せば、
カソード:(1/2)O2 +2e− →O2−
アノード:O2−+H2 →H2 O+2e−
全体:(1/2)O2 +H2 →H2 O
となる。なお、SOFCは、H2 以外(例えば、CO)も燃料として使用できる。
SOFCは、他の方式の燃料電池に比べて発電効率が高いという特徴がある。SOFCは、電流を十分に取り出すためには電極有効面積の増加及び固体電解質の薄層化が必要とされている。本実施形態に係るSOFCは、単位体積あたりの電極有効面積を従来の平板型及び円筒型のSOFCと比較して大きくすることにより、大きな電流を取り出そうとするものである。
このため、本実施形態に係るSOFCは、電極(アノード又はカソード)と固体電解質とを交互に積層して一体とした積層構造とすることにより、単位体積あたりの電極有効面積を増加させて単位体積あたりの発電効率を向上させるとともに、小型化を図るものである。さらに、本実施形態に係るSOFCは、電極(アノードとカソードとの少なくとも一方)が、SOFCの素子本体の表面における異なる位置の間で素子本体の内部を貫通させている。
これにより、新鮮なガスを導入し、水や窒素など不要なガスを排出する、すなわち、燃料の少なくなったガスと燃料の多いガスとの交換、及び酸素の少なくなったガスと酸素の多いガスとの交換(以下、ガス交換という)を促進して、単位体積あたりの発電効率を向上させるものである。次に、本実施形態に係るSOFCについて詳細に説明する。
図2Aおよび図2Bは、それぞれ実施形態1に係るSOFCの斜視図および一部切り欠き斜視図である。図3は、実施形態1に係るSOFCの平面図である。図4は、実施形態1に係るSOFCの正面図である。
SOFC1は、アノード用内部電極層2とカソード用内部電極層3と固体電解質層4とが交互に積層された積層構造である。SOFC1の内部の構造は後に詳述する。SOFC1が有する複数のアノード用内部電極層2と複数のカソード用内部電極層3とが積層される方向をZ方向、Z方向と直交する方向をX方向及びY方向という。この実施形態では、X方向は酸素(本実施形態では空気、以下同様)の流れる方向と平行な方向であり、Y方向はX方向と直交する方向である。図2A中の矢印Aは、SOFC1に供給される空気(酸素)の流れを概念的に示し、同図中の矢印Fは、SOFC1に供給される燃料(水素)の流れを概念的に示す。図示する矢印Aおよび矢印Fの向きは、酸素及び燃料の流れる向きの一例を見かけ上示すものであって、すべてが同じ方向に流れるものではなく、逆方向に流れる場合や内部電極層内を反転する場合もある。
SOFC1では上述したような反応が起きている。アノード用内部電極層2に燃料(水素)ガスを導入すると固体電解質層4を挟んだ反対側のカソード用内部電極層3との間に酸素ポテンシャル勾配が生じる。この状態になると、カソード用内部電極層3内の空気中の酸素が酸素イオンとなって固体電解質層4を通過してアノード用内部電極層2側に移動する。酸素の選択的移動によって、カソード用内部電極層3内では大気中より酸素濃度が低い状態になり、同時に負圧が生じる。この状態になると、新鮮な空気(大気)が外部から流れ込んでくる。併せて酸素の選択的移動により、カソード用内部電極層3内の空気は大気中よりも窒素濃度が高い状態になって窒素富化する。これによって、カソード用内部電極層3内の窒素富化した空気と外から流入した新鮮な空気との拡散作用により酸素導入され、カソード用内部電極層3内で富化した窒素は見かけ上SOFC1の外部に排出される。
一方、アノード用内部電極層2では導入された燃料(水素)ガスが固体電解質層4を通過した酸素イオンと接触し酸化して酸化ガス(水蒸気)を生成する。併せて電子を放出する。ここで生じた酸化ガスは継続して燃料ガスが導入されることによりSOFC1の外部に排出される。したがって、取り入れられる空気の成分とSOFC1を介して排出される空気の成分とはそれぞれ異なっている。同様に、取り入れられる燃料の成分とSOFC1を介して排出される燃料の成分とはそれぞれ異なっている。このアノード用内部電極層2とカソード用内部電極層3の双方でのガス交換が連動・循環することで継続的に発電される。
SOFC1は、複数のアノード用内部電極層2と複数のカソード用内部電極層3とを、両者の間に固体電解質層4を介在させて交互に積層してから一体化して焼成した素子本体10を含む。また、素子本体10は、複数のアノード用内部電極層2に電気的に接続される第1外部電極11と、複数のカソード用内部電極層3に電気的に接続される第2外部電極12とを有する。
SOFC1が発生した電力は、第1外部電極11と第2外部電極12とから取り出される。ここで、第1外部電極11及び第2外部電極12は、いずれも多孔質の導電体であり、気体を通過させることができる。SOFC1は、第1外部電極11側から燃料(例えば、水素)が供給され、また、第2外部電極12側から酸素(本実施形態では空気)が供給されることにより作動して、電力を発生する。発生した電力は、負荷に供給される。
図3及び図4に示すように、本実施形態のSOFC1が有する素子本体10は、互いに直交する6個の外表面となる面10A、10B、10C、10D、10E、10Fを有し、各面が長方形(正方形を含む)形状である六面体(すなわち直方体)の形状を持つ。6個の面10A、10B、10C、10D、10E、10Fは、素子本体10の外表面となる。
第1外部電極11は、素子本体10の面10Bに設けられ、第2外部電極12は、素子本体10の面10Aに設けられる。
図2Bに示すように、第1外部電極11は複数のアノード用内部電極層2の第1端2TBに電気的に接続してある。第1外部電極11は、素子本体10の表面のうち、複数のアノード用内部電極層2が露出している表面に設けることができる。本実施形態において、面10Bと対向する面10Dにも複数のアノード用内部電極層2の第2端2TDが露出している。なお、第1外部電極11は、面10Dにも設けられていてもよい。
第2外部電極12は、複数のカソード用内部電極層3の第1端3TAに電気的に接続してある。第2外部電極12は、素子本体10の表面のうち、複数のカソード用内部電極層3が露出している表面に設けることができる。本実施形態において、面10Aと対向する面10Cにも複数のカソード用内部電極層3の第2端3TCが露出している。第2外部電極12は、面10Cにも設けられていてもよい。
素子本体10は、対向する面10B、10D及び対向する面10A、10Cにそれぞれ直交するとともに、対向する面10E、10Fを備える。面10E、10Fの形状は、たとえば長方形であり、素子本体10が有する複数のアノード用内部電極層2及び複数のカソード用内部電極層3と平行な表面である。対向する面10E、10Fの形状はこれに限定されるものではなく、例えば、平行四辺形又は台形又は菱形であってもよい。次に、素子本体10の内部の構造を詳細に説明する。
図5は、図2AのB−B断面図である。図6は、図2AのC−C断面図である。図7は、本実施形態に係るSOFCのアノード用内部電極層とカソード用内部電極層との重なり状態を示す透視図である。
図5および図6に示すように、SOFC1の素子本体10は、複数のアノード用内部電極層2と、複数のカソード用内部電極層3と、少なくともアノード用内部電極層2とカソード用内部電極層3との間に配置される固体電解質層4と、積層方向に隣接する固体電解質層4同士の間に配置される仕切り部5とを含む。仕切り部5は、電子を絶縁し、ガスタイト(気体を透過させないこと)であればよい。素子本体10において、積層方向の最も外側には、最外層としての固体電解質層(最外固体電解質層)4が積層される。最外層は、仕切り部5と同様に、電子を絶縁し、ガスタイト(気体を透過させないこと)であればよく、固体電解質材料でなくても良い。
本実施形態において、複数のアノード用内部電極層2と、複数のカソード用内部電極層3と、固体電解質層4と、仕切り部5とは、一体で焼成されてSOFC1の素子本体10を構成する。本実施形態において、SOFC1は、複数のアノード用内部電極層2と電気的に接続される第1外部電極11と、複数のカソード用内部電極層3と電気的に接続される第2外部電極12とをさらに有する。このように、SOFC1は、素子本体10の表面に第1外部電極11及び第2外部電極12をさらに含んでいてもよい。アノード用内部電極層2及びカソード用内部電極層3は、いずれも多孔質の導電体であり、気体を通過させることができる。
図5および図6に示すように、SOFC1の素子本体10が有する複数のアノード用内部電極層2及び複数のカソード用内部電極層3は、それぞれ固体電解質層4の厚みに由来する所定間隔を設けて対向して配置される。また、アノード用内部電極層2とカソード用内部電極層3とは、交差するように配置される。これにより、アノード用内部電極層2とカソード用内部電極層3とは、互いにそれぞれの一部が(積層方向から見て)重ならない非重なり部6を有する。
図5および図6に示すように、固体電解質層4は、少なくともアノード用内部電極層2とカソード用内部電極層3との間に配置される。また、非重なり部6において、積層方向に隣接する固体電解質層4同士の間に仕切り部5が設けられる。隣接して配置される固体電解質層4と仕切り部5とによって、アノード用内部電極層2又はカソード用内部電極層3は取り囲まれて、分離されている。
図7に示すように、アノード用内部電極層2は、素子本体10の対向する面10B,10Dの間で素子本体10を貫通する。また、カソード用内部電極層3は、面10B、10Dと直交する素子本体10の対向する面10A、10Cの間で素子本体10を貫通する。
このため、アノード用内部電極層2が素子本体10を貫通する方向と、カソード用内部電極層3が素子本体10を貫通する方向とは直交する。この場合、アノード用内部電極層2を通過する燃料の進行方向と、カソード用内部電極層3を通過する酸素の進行方向は直交する。
なお、アノード用内部電極層2が素子本体10を貫通する方向と、カソード用内部電極層3が素子本体10を貫通する方向とは交差(立体交差)していればよく、必ずしも直交していなくてもよい。この場合、複数のアノード用内部電極層2と複数のカソード用内部電極層3とは、それぞれ交差して積層される。
複数のアノード用内部電極層2と複数のカソード用内部電極層3との少なくとも一方は、素子本体10の表面の所定位置からこの所定位置とは異なる位置の間で、素子本体10の内部を貫通している。すなわち、複数のアノード用内部電極層2と複数のカソード用内部電極層3との少なくとも一方は、その一端(第1端)のそれぞれと他端(第2端)のそれぞれとが、素子本体10の外表面の異なる位置に引き出され、素子本体10の内部を貫通している。
より具体的には、図5に示すように、複数のカソード用内部電極層3は、素子本体10の表面の一部である、対向する面10Aと面10Cとの間で、素子本体10を貫通している。こうすることにより、カソード用内部電極層3の両端(第1端および第2端)3TAおよび3TCが、面10A、10Cにそれぞれ露出する。複数のカソード用内部電極層3は、一方の第1端(本実施形態では面10Aに露出する端縁)3TAが第2外部電極12に電気的に接続されている。
また、図6に示すように、複数のアノード用内部電極層2は、素子本体10の表面の一部である、対向する面10Bと面10Dとの間で素子本体10を貫通している。こうすることにより、アノード用内部電極層2の両端(第1端および第2端)2TBおよび2TDが、面10Bおよび10Dにそれぞれ露出する。複数のアノード用内部電極層2は、一方の第1端(本実施形態では面10Bに露出する端縁)2TBが第1外部電極11に電気的に接続されている。
このように、本実施形態では、複数のアノード用内部電極層2と複数のカソード用内部電極層3との両方が、素子本体10の表面の異なる位置(本実施形態では異なる面)で、素子本体10を貫通している。すなわち、面10Bと面10Dとが、あるいは面10Aと面10Cとが素子本体10の表面の異なる位置に相当する。しかし、複数のアノード用内部電極層2又は複数のカソード用内部電極層3のいずれかのみが、素子本体10の表面の異なる位置間で、素子本体10を貫通していてもよい。
また、本実施形態では、素子本体10の表面のうち、異なる2つの面の間でアノード用内部電極層2とカソード用内部電極層3との少なくとも一方が貫通している。アノード用内部電極層2とカソード用内部電極層3との少なくとも一方は、素子本体10の表面の異なる位置であれば、同じ面に引き出されるように、素子本体10の内部を貫通していてもよい。
SOFC1は、複数のアノード用内部電極層2と複数のカソード用内部電極層3とが、それぞれ素子本体10の表面の異なる位置の間で、素子本体10を貫通する。そして、複数のアノード用内部電極層2の両端2TB,2TDはそれぞれ面10B,10Dに露出し、複数のカソード用内部電極層3の両端3TA,3TCは、それぞれ面10A、10Cに露出する。
複数のアノード用内部電極層2を電気的に接続する第1外部電極11と、複数のカソード用内部電極層3を電気的に接続する第2外部電極12とは、いずれも気体を通過させることができる多孔質の導電体である。このため、複数のアノード用内部電極層2は、第1外部電極11の側(面10B側)と、一方の端縁(第2端)2TDが露出している面10D側とのいずれからでも、燃料を取り込むこと又は排出することができる。また、複数のカソード用内部電極層3は、第2外部電極12の側(面10A側)と、一方の端縁(第2端)3TCが露出している面10C側とのいずれからでも、酸素を取り込むこと又は排出することができる。
図8Aは、本実施形態に係るSOFCの燃料及び酸素の流れの一例を示す模式図である。図8Bは、本実施形態に係るSOFCの燃料及び酸素の流れの一例を示す要部断面図である。このような構造により、図8Aおよび図8Bに示すように、SOFC1の素子本体10内において、アノード用内部電極層2に供給された燃料は、図示する矢印Fのように燃料ガスの供給側の端縁から、前記端縁とは反対側の端縁へ向かって移動する。一方、カソード用内部電極層3に供給された空気は、酸素成分がSOFC1の素体本体10内で消費され、負圧となりSOFC1の素子本体10の周囲に存在する大気から供給されることになるため、図示する矢印Aのように両端縁から新鮮な空気が流入する。
そして酸素成分が消費され窒素富化した空気と新鮮な空気とのガス拡散あるいは対流により窒素成分が見かけ上逆流するようにSOFC1の外へ排出される。空気の流れは、すべてが矢印Aのみではなく、一端から他端への流れやその逆方向の流れも想定できる。このとき、アノード用内部電極層2及びカソード用内部電極層3は、それらの両端が素子本体10の表面に解放されて、取り込むガス及び排出するガスの入口および出口となる。このため、燃料及び酸素が移動しやすくなる。
ここで、先に提案したようなアノード用内部電極層及びカソード用内部電極層の一方の端縁が素子本体の表面に露出していない(すなわち、異なる表面の間を貫通していない)SOFCの場合には、ガスの入口のみで出口がなく行き止まりになっているため、残存ガスを排出するようなガスの流れが生じ難く、ガス交換は気体成分の拡散のみに依存する。
しかしながら本実施形態のSOFC1では、アノード用内部電極層2及びカソード用内部電極層3の両端が素子本体10の表面に露出して解放されている。このためガスの流れが生じ易く、ガス交換は気体成分の拡散のみではなくなる。その結果、本実施形態のSOFC1では、ガス交換が促進されるので、単位体積あたりの発電効率が向上する。
図8Aは、本実施形態に係るSOFCの燃料及び酸素の供給状態(流れの一例)を示す平面図である。この図は、SOFC1の素子本体10が有する第1外部電極11側から燃料が供給され、第2外部電極12側と面10C側の端縁から酸素が供給された例を示している。アノード用内部電極層2は、素子本体10の対向する面10B,10Dの間で素子本体10を貫通する。また、カソード用内部電極層3は、面10B、10Dと直交する素子本体10の対向する面10A、10Cの間で素子本体10を貫通する。
このため、アノード用内部電極層2が素子本体10を貫通する方向と、カソード用内部電極層3が素子本体10を貫通する方向とは直交する。この場合、図8Aに示すように、アノード用内部電極層2を通過する燃料の進行方向(矢印A)と、カソード用内部電極層3を通過する酸素の進行方向(矢印A)は直交する。図示する矢印Fおよび矢印Aは、燃料及び酸素の流れる向きを代表する一例であって、すべてが同じ方向に流れるものではない。
なお、アノード用内部電極層2が素子本体10を貫通する方向と、カソード用内部電極層3が素子本体10を貫通する方向とは交差(立体交差)していればよく、必ずしも直交していなくてもよい。この場合、複数のアノード用内部電極層2と複数のカソード用内部電極層3とは、それぞれ交差して積層される。
図9Aおよび図9Bは、本実施形態に係るSOFCがガスバーナー等の炎を燃料源として発電する例を示す模式図である。熱、振動、電磁波等、様々な形態で環境中に存在するエネルギーを電力に変換するエネルギーハーベスティングと呼ばれる手法がある。エネルギーハーベスティングにおいては、これまで利用が考えられてこなかったガスバーナー、ガスコンロ又はろうそく等、家庭やレジャーで使用される炎から電力を得ることができれば、これらもエネルギーハーベスティングとして利用することが可能である。例えば、ガスバーナー等の炎は単なる高熱の場ではなく、未燃焼の可燃性ガスが残存しており、安定して供給される燃料ガス源でもあるため、原理的にSOFCでの発電は十分可能である。
SOFC1は、発電する際に燃料及び酸素が必要である。燃料は炎の中にあり、その近傍には酸素を十分に含む新鮮な空気が存在している。SOFC1は小型であるため、ガスバーナー等の炎を燃料源として発電を行う際には好適である。例えば、図9Aおよび図9Bに示すように、第1外部電極11を下向き(鉛直方向)にした状態で、SOFC1をガスバーナーNの炎FL(内芯部が好ましい)に当てる。
この場合、未燃焼ガスを豊富に含む拡散炎を用いることが好ましい。酸素の入口となる第2外部電極12及び面10Cは、炎FLの外側に配置されることが好ましい。このようにすることで、第1外部電極11から燃料が、図5および図6に示すアノード用内部電極層2に供給され、第2外部電極12及び面10Cから酸素が、図5および図6に示すカソード用内部電極層3に供給されて、SOFC1が発電する。
本実施形態において、図7に示すように、SOFC1では、アノード用内部電極層2が素子本体10を貫通する方向と、カソード用内部電極層3が素子本体10を貫通する方向とは直交する。このため、燃料の取り入れ口又は排出口となる面10B,10Dと、酸素の取り入れ口又は排出口となる面10A,10Cとが直交する。そして、SOFC1は、アノード用内部電極層2が素子本体10を貫通する方向の両側に、カソード用内部電極層3の酸素の取り入れ口又は排出口となる面10A,10Cが配置される。また、SOFC1は、カソード用内部電極層3が素子本体10を貫通する方向の両側に、アノード用内部電極層2の燃料の取り入れ口又は排出口となる面10B,10Dが配置される。
このような構造により、SOFC1は、燃料の取り入れ口から炎FLの未燃焼ガスを取り入れ、さらに炎FLの上昇気流に乗ってアノード用内部電極層2の内部へのガスの流入と拡散が促される。この配置は、SOFC1の上部を開放状態としているので、よりガスの流入と拡散が促される。このように、SOFC1は、炎FLを利用した発電に有用である(以下の実施形態でも同様)。
なお、SOFC1は、小型化、高耐熱性、単位体積あたりの発電効率が高い等の特徴を有していることから、エネルギーハーベスティング的な活用以外の用途、例えば、複数のSOFC1を組み合わせた燃料電池モジュールを用いた発電システム等にも極めて有用である(以下の実施形態でも同様)。
次に、SOFC1のアノード用内部電極層2、カソード用内部電極層3、固体電解質層4及び仕切り部5の材料について説明する。
本実施形態において、固体電解質層4は、Ce0.85Sm0.15O2−δ に示すようなサマリアドープセリア(SDC)等のセリア系、Zr0.81Y0.19O2−δ に示すようなイットリア安定化ジルコニア(YSZ)等の安定化ジルコニア系、La0.8 Sr0.2 Ga0.8 Mg0.2 O3−δに示すようなLSGM等のペロブスカイト型酸化物系の材料を用いることができる。なお、固体電解質層4の材料は、上述したものに限定されるものではなく、SOFCの固体電解質として適用可能な材料全般を使用できる。
本実施形態において、アノード用内部電極層2及びカソード用内部電極層3の材料は、電子伝導材料となる白金(Pt)である。好ましくは電子伝導材料と固体電解質、例えば上述したYSZとのコンポジット材である。電子伝導材料だけでは固体電解質層4とアノード用内部電極層2またはカソード用内部電極層3との界面にしか三相界面を形成できない。コンポジット材とすることによりアノード用内部電極層2またはカソード用内部電極層3の内部にも三相界面を形成することが出来るようになる。
アノード用内部電極層2及びカソード用内部電極層3は、たとえば白金とYSZとのコンポジット材であり、かつ、多孔質体で構成してある。また、第1外部電極11及び第2外部電極12の材料は、アノード用内部電極層2及びカソード用内部電極層3と同じ電子伝導材料となる、白金と固体電解質(例えばYSZ)とのコンポジット材である。
第1外部電極11及び第2外部電極12は、三相界面を形成する必要が無く、必ずしも固体電解質とのコンポジット材である必要はない。上述したように、第1外部電極11及びアノード用内部電極層2、第2外部電極12及びカソード用内部電極層3は、いずれも多孔質体であることが好ましい。
このようにすることで、第1外部電極11側から供給された燃料及び第2外部電極12側から供給された酸素をアノード用内部電極層2及びカソード用内部電極層3の内部に行き渡らせることができる。そして、燃料及び酸素がアノード用内部電極層2及びカソード用内部電極層3の全体に行き渡って反応するので、より多くの電力が取り出される。
また、アノード用内部電極層2及びカソード用内部電極層3は、SOFC1の素子本体10の異なる表面の間で素子本体10を貫通しているので、ガス交換が促進されて、さらに多くの電力を取り出すことができる。なお、アノード用内部電極層2又はカソード用内部電極層3のいずれかが、素子本体10の異なる表面の間で素子本体10を貫通していれば、ガス交換が促進される効果は得られる。好ましくは両方が貫通することにより、前記効果はより大きくなる。
アノード用内部電極層2は、白金の他、高温還元雰囲気で電子伝導性を示すものが使用できる。このような材料としては、ニッケル(Ni)、上述したSDCやYSZ等の固体電解質とニッケル(Ni)とのサーメット等がある。ここで、SDCとは、Ce0.85Sm0.15O2−δ に示すような材料であり、YSZとは、Zr0.81Y0.19O2−δに示すような材料である。また、カソード用内部電極層3は、白金の他、高温酸化雰囲気で電子伝導性を示すものが使用できる。
このような材料としては、例えば、CoFe2 O4 、MnFe2 O4 、NiFe2 O4 、BSCF等がある。ここで、BSCFとは、バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)、コバルト(Co)、鉄(Fe)の酸化物である。なお、アノード用内部電極層2及びカソード用内部電極層3の材料は、上述したものに限定されるものではなく、SOFC1のアノード用内部電極層2、カソード用内部電極層3として適用可能な材料全般を使用することができる。
なお、アノード用内部電極層2は燃料を、カソード用内部電極層3は酸素をそれぞれの内部に行き渡らせ、固体電解質層4まで到達させる機能を有していればよく、このような機能を有していれば、アノード用内部電極層2及びカソード用内部電極層3は多孔質でなくてもよい。例えば、アノード用内部電極層2又はカソード用内部電極層3が気体通路を持つ構造とすることができる。この場合、アノード用内部電極層2又はカソード用内部電極層3のいずれか一方には気体通路を持つ構造を用い、他方に多孔質材料を用いてもよい。
また、本実施形態では、アノード用内部電極層2とカソード用内部電極層3とを同じ材料(多孔質の白金とYSZのコンポジット材)としたが、アノード用内部電極層2とカソード用内部電極層3とは異なる材料であってもよい。さらに、第1外部電極11は、複数のアノード用内部電極層2を電気的に接続していればよく、第2外部電極12は、複数のカソード用内部電極層3を電気的に接続していればよい。このため、第1外部電極11とアノード用内部電極層2とを異なる材料とし、第2外部電極12とカソード用内部電極層3とを異なる材料としてもよい。これによって、アノード用内部電極層2や第1外部電極11等に、より適切な材料を用いることができる。
図5および図6に示したように、本実施形態において、仕切り部5は、積層方向に隣接する固体電解質層4同士の間に設けられて、固体電解質層4同士を接続する。このようにすることで、SOFC1に第1外部電極11及び第2外部電極12が形成されると、それぞれのカソード用内部電極層3と第1外部電極11との間及びアノード用内部電極層2と第2外部電極12との間に仕切り部5が配置されることになる。
ここで、アノード用内部電極層2とカソード用内部電極層3との間で電子や気体(燃料や酸素)の漏れが発生すると、SOFC1の単位体積あたりの発電効率が低下する。このため、アノード用内部電極層2とカソード用内部電極層3との間にある固体電解質層4及び仕切り部5は、電子を絶縁し、ガスタイト(気体を透過させないこと)であることが好ましい。
本実施形態では、仕切り部5を、それぞれのカソード用内部電極層3と第1外部電極11との間及びそれぞれのアノード用内部電極層2と第2外部電極12との間に配置するとともに、仕切り部5が、隣接する固体電解質層4を接続する。このような構造により、SOFC1は、アノード用内部電極層2とカソード用内部電極層3との間における電子の絶縁及びガスタイトが確保される。仕切り部5は、電子の絶縁及びガスタイトを確保できる材料で構成される。本実施形態において、仕切り部5は、固体電解質層4と同じ材料である。このようにすることで、電子の絶縁及びガスタイトを確保して、SOFC1の性能低下を抑制している。
固体電解質層4と仕切り部5とを同じ材料とすることにより、SOFC1の製造が容易になるという利点がある。これによって、より電子の絶縁やガスタイトを確保しやすい材料を用いて、SOFC1の性能低下をさらに効果的に抑制することも可能である。なお、固体電解質層4と仕切り部5とは異なる材料であってもよい。
仕切り部5に用いることができる材料としては、固体電解質層4よりも電子伝導度が低い材料とすることが単位体積当たりの発電効率を向上させる観点から好ましい。例えば、ジルコニア(二酸化ジルコニウム、ZrO2 )、アルミナ(酸化アルミニウム、Al2 O3 )、シリカ(二酸化ケイ素、SiO2)、マグネシア(酸化マグネシウム、MgO)を用いることができ、このような材料のなかでも、ジルコニアが好ましい。これらの材料は素子本体10の最外層の材料として使用しても良い。
固体電解質層4の厚みは、できる限り小さい方が好ましく、1μm〜50μm程度が好ましく、5μm〜35μm程度とすることができる。後述する評価例で作製したサンプルにおいては、25μmとした。また、アノード用内部電極層2の厚み及びカソード用内部電極層3の厚みは、燃料や酸素を通過させることから、あまり小さくすることができないため、10μm〜150μm程度が好ましく、25μm〜50μm程度とすることができる。後述する評価例で作製したサンプルにおいては、40μmとした。さらに、仕切り部5は、アノード用内部電極層2の厚み及びカソード用内部電極層2の厚みと同等にすればよい。
SOFC1は、例えば、固体電解質層4のグリーンシート表面上に、アノード用内部電極層2又はカソード用内部電極層3を印刷し、仕切り部5をアノード用内部電極層2又はカソード用内部電極層3の余白部(非重なり部6)に印刷し、これらを必要数積層した後、焼成することにより得られる。したがって、固体電解質層4の厚み、アノード用内部電極層2の厚み及びカソード用内部電極層3の厚みの制御及び薄膜化は比較的容易である。なお、このような製造プロセスにより、固体電解質層4はアノード用内部電極層2及びカソード用内部電極層3と密着し、一体となっている。
SOFC1では、一つのアノード用内部電極層2と、一つのカソード用内部電極層3と、両者の間の固体電解質層4との組み合わせ(以下、発電単位という)で電力を発生する。この発電単位の理論起電力は1.14Vである。本実施形態において、SOFC1は、複数のアノード用内部電極層2及び複数のカソード用内部電極層3を備える。それぞれのアノード用内部電極層2は第1外部電極11で電気的に接続され、それぞれのカソード用内部電極層3は第2外部電極12で電気的に接続される。すなわち、SOFC1は、複数の発電単位を並列に接続したものとみなすことができる。
このため、SOFC1での理論起電力は1.14Vとなる。なお、SOFC1全体は、第1外部電極11で電気的に接続された複数のアノード用内部電極層2と、第2外部電極12で電気的に接続された複数のカソード用内部電極層3との1ペアで構成されており、複数の発電単位間で、いわゆるインターコネクタに相当するものは有していない。このため、SOFC1は、一般的な燃料電池でいう単セル構造と見なすことができる。
SOFC1は、一つの発電単位において発電に寄与する面積(電極有効面積という)は、アノード用内部電極層2とカソード用内部電極層3とが重なり合う部分の面積である。SOFC1は、発電単位を複数(図5および図6に示す例では3個)有する。このため、重なり合う部分の面積をS2とすると、SOFC1の電極有効面積は、n×S2となる。ここで、nは、SOFC1が有する発電単位の個数で、図5および図6に示す例ではn=3となる。
SOFC1は、複数の発電単位を積層した構造である。このような構造によって、SOFC1全体の電極有効面積を大きくすることができるので、SOFC1の体積に対して、SOFC1全体からは大きな電流(電力)を得ることができる。すなわち、SOFC1は、同じ体積であれば、平板型や円筒型等のSOFCと比較して、高い電力密度を実現できる。このため、SOFC1は、小型化を実現しつつ、単位体積あたりの発電効率を向上させることが可能になる。
また、SOFC1は、それぞれ厚さが数十μmのアノード用内部電極層2と、カソード用内部電極層3と、固体電解質層4とを積層したものである。したがって、SOFC1は、積層数を増加させても積層方向における寸法の増加は比較的小さい。このため、SOFC1は、平板型のSOFCや円筒型のSOFCと比較して、単位体積あたりにおける電極有効面積を大きくできるので、単位体積あたりの電力密度も大きくなる。その結果、SOFC1全体としての発電効率も向上する。
また、SOFC1は、アノード用内部電極層2と、カソード用内部電極層3と、固体電解質層4とが一体となって全体の強度を受け持つので、変形に対して強い構造となる。このため、固体電解質層4を薄くしたとしても、複数のアノード用内部電極層2及びカソード用内部電極層3により、SOFC1全体の強度を確保できる。このように、SOFC1は、固体電解質層4を薄くしやすい特性を有しているため、より大きな電流を取り出しやすい構造であるといえる。その結果、SOFC1は、全体の強度を確保しつつ固体電解質層4を薄くすることにより、作動温度を低下させることができるという効果も得られる。
また、SOFC1において、アノード用内部電極層2及びカソード用内部電極層3を多孔質とした場合には、加熱時において、空隙が熱膨張を吸収し、固体電解質層4を介してアノード用内部電極層2とカソード用内部電極層3との間に働く応力を緩和する。ゆえに、アノード用内部電極層2及びカソード用内部電極層3を多孔質とした場合、アノード用内部電極層2と、カソード用内部電極層3と、固体電解質層4とのそれぞれの材料の線膨張係数がある程度ばらついていても、アノード用内部電極層2、カソード用内部電極層3、および固体電解質層4の割れ等を抑制できる。
さらに、SOFC1は、アノード用内部電極層2と、カソード用内部電極層3と、固体電解質層4とをそれぞれ複数層積層させた構造なので、加熱時において、素子本体10は、全体的には均一に熱膨張し、局所的に大きな変形が発生しにくくなる。このような構造によって、熱膨張を均一化できるので、全体の反りを抑制できる。これらの作用によって、SOFC1は、耐熱衝撃性に優れるという利点がある。このように、SOFC1は、耐熱衝撃性に優れるため、急な温度上昇に曝すことが可能となり、迅速な起動が可能になるという利点もある。次に、本実施形態に係るSOFCの製造方法を説明する。
図10は、本実施形態に係るSOFCの製造方法の工程例を示すフローチャートである。図11〜図18は、本実施形態に係るSOFCの製造方法の説明図である。いずれも部品単位での説明となる。図12は、図11のD−D断面図であり、図14は、図13のE−E断面図である。図15は、単位シートをアノード用内部電極層102の端が露出する側から見た状態を示し、図16は、単位シートをカソード用内部電極層103の端が露出する側から見た状態を示している。
図2Aに示すSOFC1を製造する場合、まず、図2Aに示す固体電解質層4を形成するための固体電解質グリーンシートに、アノード用内部電極層2及びカソード用内部電極層3を形成するための電極層及び仕切り部5を形成するための余白層を形成した単位シートを作製する。
複数のSOFC1を同時に作製するために、この単位シートには所定の形状の電極層を縦横に複数個並ぶように間隔をおいて形成する。余白層はこれら電極層の間隙に形成する。そして、アノード用内部電極層2とカソード用内部電極層3とが交互に交差するように向きを整えながらこの単位シートを複数枚積層して積層体を形成した後、部品単位に積層体を切断する。そして、脱バインダー処理後の積層体を焼成することにより、SOFC1が作製される。
まず、固体電解質層4を形成するためのスラリー(固体電解質用スラリー)と、アノード用内部電極層2及びカソード用内部電極層3を形成するためのスラリー(電極用スラリー)とを作製する(ステップS101)。固体電解質用スラリーは、固体電解質層4の原料となる粉末を粉砕用ボールとともにナイロン製ポットに入れ、これに溶剤、バインダー及び可塑剤を添加して10時間〜20時間混合して得られる。
溶剤、バインダー及び可塑剤の含有量には制限はないが、例えば、溶剤の含有量は10質量%以上50質量%以下、バインダーの含有量は1質量%以上10質量%以下程度の範囲で設定することができる。スラリー中には、必要に応じて分散剤等を10質量%以下の範囲で含有させてもよい。
電極用スラリーは、導電性粉末粒子及び空隙形成剤を混合し、これに溶剤及びバインダーを添加して作製する。溶剤及びバインダーの含有量には制限はないが、例えば、溶剤の含有量は10質量%以上50質量%以下、バインダーの含有量は1質量%以上10質量%以下程度の範囲で設定することができる。電極用スラリー中には、必要に応じて分散剤等を10質量%以下の範囲で含有させてもよい。アノード用内部電極層2およびカソード用内部電極層3の内部に三相界面を形成するためには、導電性粉末粒子だけでなく、固体電解質の原料粉末を混合したコンポジット材料とするとよい。この場合には導電性粉末粒子と固体電解質の原料粉末との体積比を30体積%〜70体積%対70体積%〜30体積%とするとよい。
固体電解質用スラリー及び電極用スラリーの作製に用いる溶剤としては、例えば、アセトン、トルエン、イソブチルアルコール、メチルエチルケトン、ターピネオール等の有機溶剤を用いることができる。また、バインダーとしては、例えば、ブチラール系樹脂、アクリル系樹脂等を用いることができる。固体電解質の原料となる粉末は、上述した固体電解質層4の材料粉末であり、導電性粉末粒子は、上述したアノード用内部電極層2及びカソード用内部電極層3の材料粉末である。
本実施形態では、固体電解質層4には固体電解質の原料となる粉末としてYSZの粉末を用い、アノード用内部電極層2、カソード用内部電極層3には共に、導電性粉末粒子として白金の粉末と固体電解質としてYSZの粉末とのコンポジット粉末(体積比としてPt:YSZ=70:30)を用いた。また、電極用スラリーに用いる空隙形成剤には、例えば、アクリル系のポリマー等、焼成時に消失するものを用いることができる。このように、焼成時に消失する空隙形成剤を用いることにより、多孔質のアノード用内部電極層2やカソード用内部電極層3を簡単に作製できる。
固体電解質用スラリー及び電極用スラリーが得られたら、固体電解質用スラリーを用いて図12および図14に示す固体電解質グリーンシート(未焼成シート)104を作製する(ステップS102)。例えば、固体電解質用スラリーをポリエステルフィルム等の支持体上に、例えば、ドクターブレード法等で塗布した後乾燥させることにより、厚さ1μm〜100μmの固体電解質グリーンシート104を作製することができる。
次に、得られた固体電解質グリーンシート104上に、両端縁を残して電極層、すなわち図11および図12に示すカソード用内部電極層103を形成するとともに、図13および図14に示すアノード用内部電極層102を形成する(ステップS103)。例えば、固体電解質グリーンシート104の表面に電極用スラリーをスクリーン印刷等で印刷した後乾燥させて、厚さ10μm〜200μmのアノード用内部電極層102及びカソード用内部電極層103を作製する。固体電解質グリーンシート104上にアノード用内部電極層102、またはカソード用内部電極層103が形成されていない部分が余白部分になる。
次に、図11および図12に示すように、固体電解質グリーンシート104上であってカソード用内部電極層103の両側に、余白層105を形成する。この余白層105は、図5に示す第2外部電極12側(面10A側)と面10C側とにある非重なり部6となる部分である。同時に、または別のタイミングで、図13および図14に示すように、固体電解質グリーンシート104上であってアノード用内部電極層102の両側に、余白層105を形成する(ステップS104)。この余白層105は、図6に示す第1外部電極1側(面10B側)と面10D側とにある非重なり部6となる部分である。
これらの余白層105は、図5および図6に示す仕切り部5を形成するとともに、アノード用内部電極層102とカソード用内部電極層103との段差を減少させるために設けられる。余白層105は、余白層用スラリーをスクリーン印刷等で印刷し乾燥させることにより形成される。
本実施形態において、仕切り部5が、図5および図6に示す固体電解質層4と同じ材料で構成される場合には、余白層用スラリーは、固体電解質用スラリーを用いる。余白部分への印刷においては、余白層105として必要な厚さに応じて、余白用スラリーの粘度やスクリーン印刷の製版や印刷回数等を調整することができる。
このようにして図11〜図14に示すように、固体電解質グリーンシート104上にカソード用内部電極層103及び余白層105が形成された単位シート101Cと、固体電解質グリーンシート104上にアノード用内部電極層102及び余白層105が形成された単位シート101Aとが作製される。単位シート101Cと単位シート101Aとは、それぞれ複数枚作製される(ステップS105)。
次に、図15および図16に示すように、単位シート101Cと単位シート101Aとを交互に積層して、最後に固体電解質グリーンシート104のみを積層して、図17に示す積層体100を作製する(ステップS106)。本実施形態のSOFC1を作製するために、アノード用内部電極層2とカソード用内部電極層3とが交互に交差するように向きを整えながら単位シート101Aと101Cとを複数枚積層する。
図17に示すように、積層体100では、2つの面に複数のアノード用内部電極層102の端縁が露出し、アノード用内部電極層102の端縁が露出した面と直交する2つの面に複数のカソード用内部電極層103の端縁が露出している。そして、アノード用内部電極層102とカソード用内部電極層103との間には固体電解質グリーンシート104が介在するとともに、積層方向に隣接する固体電解質グリーンシート104の間には余白層105が配置される。アノード用内部電極層102及びカソード用内部電極層103は、それぞれ積層体100に露出している2つの端縁を除いて、積層方向に隣接する固体電解質グリーンシート104と余白層105とで囲まれる。
次に、図17に示す積層体100を積層方向(図17の矢印Kで示す方向)に向かって加圧する(ステップS107)。この処理によって、複数の単位シート101Cと単位シート101Aとを圧着して一体化させる。加圧後の積層体100は、部品単位に切断される(ステップS108)。
次に、切断後の積層体100に脱バインダー処理を施す(ステップS109)。そして、脱バインダー処理をした積層体100を焼成することにより(ステップS110)、積層体100の焼結体が得られる。積層体100は、アノード用内部電極層、カソード用内部電極層、固体電解質層、仕切り部が焼結されて一体となった焼結体である。
積層体100の脱バインダー処理及び焼成の条件は、使用する固体電解質の材料やアノード用内部電極及びカソード用内部電極の材料で異なる。例えば、アノード用内部電極層102及びカソード用内部電極層103に含まれる導電性粒子を白金の粒子とした場合、積層体100を大気中で400℃〜600℃の温度範囲で1時間から2時間加熱保持すればよい。このような条件で、積層体100からバインダーを除去することができる。
その後、大気中で1200℃〜1500℃で3時間〜5時間、積層体100を焼成し、焼結体を得る。積層体100の焼結体は、必要に応じて後処理が施される(ステップS111)。後処理は、ニッケル(Ni)の粒子を用いた場合には、例えば、還元雰囲気中における電極還元処理である。なお、白金の粒子を用いた場合には、後処理を必要としない。
このような手順で、図18に示すように、アノード用内部電極層2と固体電解質層4とカソード用内部電極層3とが交互に積層され、かつこれらと隣接する固体電解質層4の間に設けられる仕切り部5とが焼結によって一体化された積層構造を有する素子本体10(SOFC1)が完成する(ステップS112)。
なお、上記手順では、図2Aに示す第1外部電極11及び第2外部電極12は形成されないので、素子本体10のアノード用内部電極層2が露出している面10Bとカソード用内部電極層3が露出している面10Aとに、それぞれ第1外部電極11及び第2外部電極12を形成する。これは、例えば、上述した電極用スラリーを素子本体10の面10A、10Bに塗布して、乾燥及び脱バインダー処理を施した後、所定の条件で焼成することで得られる。
この場合、面10Aと面10Bとは互いに隣接しているので、第1外部電極11と第2外部電極12とが互いに接続しないように注意する。このような処理によって、複数のアノード用内部電極層2を電気的に接続する第1外部電極11と、複数のカソード用内部電極層3を電気的に接続する第2外部電極12とが焼結によって一体化されて、第1外部電極11と第2外部電極12とをさらに有するSOFC1が完成する。本実施形態に係るSOFCの製造方法によれば、製造プロセスが比較的簡単であり、また、小さいデバイスでも製造しやすいので、低コストで小型のSOFC1を作製できる。
(実施形態2)
図19は、実施形態2に係るSOFCのアノード用内部電極層とカソード用内部電極層との重なり状態を示す透視図である。図20は、実施形態2に係るSOFCが有するカソード用内部電極層の平面図である。図21は、実施形態2に係るSOFCにおける燃料及び酸素の流れを示す模式図である。
本実施形態のSOFC1aは、実施形態1のSOFC1(図2A、図2B、図5、図6等参照)と同様である。しかしながら、複数のカソード用内部電極層3aの形状が異なる点で相違する。本実施形態では、アノード用内部電極層2aが素子本体10aの異なる2箇所の外表面間で素子本体10aを貫通し、カソード用内部電極層3aが素子本体10aの異なる3箇所の外表面間で素子本体10aを貫通する点に特徴がある。
すなわち、本実施形態では、アノード用内部電極層2aが素子本体10aの対向する2箇所の外表面である面10Baおよび10Daで端縁(第1端および第2端)が露出し、カソード用内部電極層3aが素子本体10aの隣接する3箇所の外表面である面10Aa,10Da,10Caで端縁(2つの第1端と1つの第2端)が露出している。
本実施形態において、アノード用内部電極層2aは、実施形態1のSOFC1と同様に、素子本体10aの面10Baと面10Daとの間で素子本体10aを貫通している。このように、アノード用内部電極層2aは、素子本体10aの異なる2箇所の外表面の間で素子本体10aを貫通している。
図20に示すように、カソード用内部電極層3aは、平面視が凸形状であり、素子本体10aの面10Aaと面10Caと面10Daとの間とを貫通している。このように、カソード用内部電極層3aは、素子本体10aの異なる3箇所の外表面の間で素子本体10aを貫通している。
第1外部電極11は、素子本体10aの面10Baに設けられ、第2外部電極12は、素子本体10aの面10Aaに設けられる。なお、第2外部電極12は、素子本体10aの面10Caに設けてもよいし、面10Aaおよび10Caの両方に設けてもよい。ただし、面10Daでは、アノード用内部電極層2aの一方の端縁(たとえば第2端)が、カソード用内部電極層3aの端縁(たとえば第2端)と重なる面となるので、第2外部電極12を形成しない。
図19に示すように、このSOFC1aでは、第1外部電極11側(面10Ba側)と面10Da側とに非重なり部6が形成される。また、第2外部電極12側(面10Aa側)と面10Ca側とに非重なり部6が形成される。そこで、図20においては、平面視でカソード用内部電極層3aの第1外部電極11側(面10Ba側)と面10Da側とに仕切り部5を形成する。
第1外部電極11側の仕切り部5は、面10Aaから面10Caまで連続しているのに対し、面10Da側の仕切り部5は、カソード用内部電極層3aの凸状の部分で分断されている。また、実施形態1のSOFC1と同様にアノード用内部電極層2aの第2外部電極12側(面10Aa側)と面10Ca側とに仕切り部5が形成される。この仕切り部5は、それぞれ面10Baから面10Daまで連続している。
このような構造により、SOFC1aは、図21に示すように、燃料の入出口が第1外部電極11(面10Ba)と、面10Daとの2箇所となり、酸素の入出口が第2外部電極12(面10Aa)と、面10Caと、面10Daとの3箇所となる。SOFC1aを用いて炎から電力を得ようとする場合、第1外部電極11(面10Ba)を下方に向けて炎の内芯に当て、カソード用内部電極層3a側の第2外部電極12(面10Aa)と面10Baとを炎の外に配置する。
このようにすると、図21に示すように、燃料は、第1外部電極11(面10Ba)からアノード用内部電極層2a内に流入し、面10Daから排出される(矢印F)。酸素は、第2外部電極12(面10Aa)及び面10Caからカソード用内部電極層3a内に流入し、面10Daから排出される(矢印A)。
このようにすることで、2箇所から酸素がカソード用内部電極層3aに供給されるので、SOFC1aには十分な酸素が供給される。また、酸素の出口となる面10Daは、上方(炎から離れる方向)になるので、対流を利用して酸素を効率的にカソード用内部電極層3a内に導入することができる。
(実施形態3)
図22は、実施形態3に係るSOFCのアノード用内部電極層とカソード用内部電極層との重なり状態を示す透視図である。図23は、実施形態3に係るSOFCが有するアノード用内部電極層の平面図である。図24は、実施形態3に係るSOFCが有するカソード用内部電極層の平面図である。図25Aおよび図25Bは、実施形態3に係るSOFCにおける燃料及び酸素の流れを示す模式図である。
本実施形態のSOFC1bは、実施形態2のSOFC1a(図19参照)と同様である。しかしながら、複数のアノード用内部電極層2bと複数のカソード用内部電極層3bとは、いずれも素子本体10bの異なる3箇所の外表面間で素子本体10bを貫通する点で異なる。
すなわち、本実施形態では、アノード用内部電極層2bが素子本体10bの隣接する3つの外表面である面10Ab,10Baおよび10Caで端縁(第1端と第2端のいずれかが2つ)が露出し、カソード用内部電極層3bが素子本体10bの隣接する3つの外表面である面10Ab,10Db,10Cbで端縁(第1端と第2端のいずれかが2つ)が露出している。
本実施形態において、アノード用内部電極層2bは、図23に示すように、平面視が凸形状であり、素子本体10bの面10Bbと面10Abと面10Cbとの間で素子本体10bを貫通している。このように、アノード用内部電極層2bは、素子本体10bの異なる3箇所の間で素子本体10bを貫通している。
図24に示すように、カソード用内部電極層3bは、平面視が凸形状であり、素子本体10bの面10Abと面10Cbと面10Dbとで素子本体10bを貫通している。このように、カソード用内部電極層3bは、素子本体10bの異なる3箇所の外表面の間で素子本体10bを貫通している。
第1外部電極11は、素子本体10bの面10Bbに設けられ、第2外部電極12は、素子本体10bの面10Dbに設けられる。第1外部電極11と第2外部電極12とは、素子本体10bの相互に対向する面に設けられる。このSOFC1bでは、第1外部電極11側(面10Bb側)及び第2外部電極12側(面10Db側)に非重なり部6が形成される。そこで、図23、図24においては、アノード用内部電極層2bあるいはカソード用内部電極層3bが存在しない部分に仕切り部5が現れている。
すなわち、図24に示すように、平面視でカソード用内部電極層3bの第1外部電極11側(面10Bb側)と第2外部電極12側(面10Db側)とに仕切り部5が形成される。第1外部電極11側の仕切り部5は、面10Abから面10Bbまで連続しているのに対し、第2外部電極12側(面10Db側)の仕切り部5は、カソード用内部電極層3bの凸状の部分で分断されている。
また、同様に図23に示すように、アノード用内部電極層2bの第1外部電極11側(面10Bb側)と第2外部電極12側(面10Db側)に仕切り部5が形成される。第2外部電極12側(面10Db側)の仕切り部5は、面10Abから面10Bbまで連続しているのに対し、第1外部電極11側(面10Bb側)の仕切り部5は、アノード用内部電極層2bの凸状の部分で分断されている。
このような構造により、SOFC1bでは、図25Aに示すように、燃料の入口が第1外部電極11(面10Bb)となり、出口が面10Abと面10Cbとの2箇所となる。また、酸素の入口が面10Abと面10Cbとの2箇所となり、出口が第2外部電極12(面10Ab)となる。SOFC1bを用いて炎から電力を得ようとする場合、アノード用内部電極層2b側の第1外部電極11(面10Bb)を下方に向けて炎の内芯に当て、カソード用内部電極層3b側の面10Ab、10Cbを炎の外に配置する。
このようにすると、図25Aに示すように、燃料は、第1外部電極11(面10Bb)からアノード用内部電極層2b内に流入し、面10Ab及び面10Cbから排出される(矢印F)。酸素は、面10Ab、10Cbからカソード用内部電極層3b内に流入し、第2外部電極12(面10Ab)から排出される(矢印A)。このようにすることで、2箇所から酸素がカソード用内部電極層3bに供給されるので、SOFC1bには十分な酸素が供給される。また、酸素の出口となる面10Dbは、上方になるので、対流を利用して酸素を効率的にカソード用内部電極層3b内に導入することができる。
また、本実施形態では、その他のガスの流れになることも考えられる。たとえば図25Bに示すように、燃料の入口が第1外部電極11(面10Bb)となり、出口が面10Abと面10Cbとの2箇所となる。また、酸素の入口が第2外部電極12(面10Ab)となり、出口が面10Cbと面10Dbとの2箇所となってもよい。
このようにすると、図25Bに示すように、燃料は、第1外部電極11(面10Bb)からアノード用内部電極層2b内に流入し、面10Ab及び面10Cbから排出される(矢印F)。酸素は、面10Dbからカソード用内部電極層3b内に流入し、第2外部電極12(面10Ab)及び面10Cbから排出される(矢印A)。このようにすることで、燃料の排出面と、酸素の排出面とを同じ面にすることができ、ガスの流れが良くなる。
(実施形態4)
図26は、実施形態4に係るSOFCのアノード用内部電極層とカソード用内部電極層との重なり状態を示す透視図である。図27は、実施形態4に係るSOFCが有するアノード用内部電極層の平面図である。図28は、実施形態4に係るSOFCが有するカソード用内部電極層の平面図である。図29は、実施形態4に係るSOFCにおける燃料及び酸素の流れを示す模式図である。図30は、実施形態4に係る別のSOFCにおける燃料及び酸素の流れを示す模式図である。
本実施形態のSOFC1cでは、複数のアノード用内部電極層2cが、素子本体10cの隣接する2つの外表面の間で素子本体10cを貫通し、複数のカソード用内部電極層3cが、複数のアノード用内部電極層2cが引き出される面とは別の隣接する2つの外表面の間で素子本体10cを貫通する。
すなわち、本実施形態では、アノード用内部電極層2cが、素子本体10cの隣接する2つの外表面である面10Bcおよび10Ccで端縁(第1端と第2端)が露出し、カソード用内部電極層3cが素子本体10cの隣接する2つの外表面である面10Ac,10Dcで端縁(第1端と第2端)が露出している。
本実施形態において、アノード用内部電極層2cは、図27に示すように、平面視が略L字形状であり、素子本体10cの面10Bcと面10Ccとの間で素子本体10cを貫通している。このように、アノード用内部電極層2cは、素子本体10cの異なる2つの外表面の間で素子本体10cを貫通している。
図28に示すように、カソード用内部電極層3cは、平面視が略L字形状であり、素子本体10cの面10Acと面10Dcとの間を貫通している。このように、カソード用内部電極層3cは、アノード用内部電極層2cの端縁が露出している面とは別の2つの面で素子本体10cを貫通している。
第1外部電極11は、素子本体10cの面10Bcに設けられ、第2外部電極12は、素子本体10cの面10Dcに設けられる。第1外部電極11と第2外部電極12とは、素子本体10cの異なる面に設けられる。
図26に示すように、このSOFC1cでは、第1外部電極11側(面10Bc側)と第2外部電極12側(面10Dc側)と面10Ac側と面10Cc側とに非重なり部6が形成される。そこで、図27および図28においては、アノード用内部電極層2cあるいはカソード用内部電極層3cの両方が存在しない部分に仕切り部5が現れている。
すなわち、図28に示すように、平面視でカソード用内部電極層3cの面Bcと面Cc側とに、略L字状に連続して仕切り部5が形成されている。これに対し、第2外部電極12側(面10Dc側)の仕切り部5は、カソード用内部電極層3cで分断されている。同様に、図27に示すように、アノード用内部電極層2cの面Acと面Dcとの両側に、略L字状に連続して仕切り部5が形成されている。これに対し、第1外部電極11側(面10Bc側)の仕切り部5は、アノード用内部電極層2cで分断されている。
このような構造により、SOFC1cは、燃料の入出口が第1外部電極11(面10Bc)と面10Ccとの2箇所となり、酸素の入出口が第2外部電極12(面10Dc)と面10Acとの2箇所となる。SOFC1cを用いて炎から電力を得ようとする場合、第1外部電極11(面10Bc)を下方に向けて炎の内芯に当て、カソード用内部電極層3c側の面10Acを炎の外に配置する。
燃料は、図29に示すように、第1外部電極11(面10Bc)からアノード用内部電極層2c内に流入し、面10Ccから排出される(矢印F)。酸素は、面10Acからカソード用内部電極層3c内に流入し、面10Dcから排出される(矢印A)。このようにすると、酸素の出口となる面10Dcは、上方になるので、対流を利用して酸素を効率的にカソード用内部電極層3c内に導入することができる。
また、本実施形態では、その他のガスの流れになることも考えられる。たとえば図30に示すように、SOFC1cの第1外部電極11が設けられている面10Bcと第2外部電極12が設けられている面10Dcとの間に、素子本体10cの外表面にガスの流れを遮断する仕切り20,21を設けてもよい。仕切り20,21は、SOFC1cとは異なる構造体で構成しても良い。このように、SOFC1cの外周部の3箇所を仕切ることで、燃料の導入通路23と、酸素の導入通路24とを形成することができる。
すなわち、素子本体10cの面10Bcから面10Dcへのガスの流れ(またはその逆の流れ)を遮断できるので、仕切り20と仕切り21とで囲まれる通路が燃料と酸素の両方の出口となる。この場合、燃料は、図30に示すように、第1外部電極11(面10Bc)からアノード用内部電極層2c内に流入し、面10Ccから排出される(矢印F)。酸素は、第2外部電極12(面10Dc)からカソード用内部電極層3c内に流入し、面10Acから排出される(矢印A)。
このように、SOFC1cは、比較的簡単な構造で燃料の導入通路23と、酸素の導入通路24とを設けることができるので、例えば、複数のSOFC1cを組み合わせ、燃料電池モジュールとして用いる場合には好適である。
(実施形態5)
図31Aは、実施形態5に係るSOFCの内部構造を示す断面図である。図31Bは、実施形態5に係るSOFCの内部構造を示す一部断面斜視図である。図32は、実施形態5に係るSOFCが有するアノード用内部電極層の平面図である。図33は、実施形態5に係るSOFCが有するカソード用内部電極層の平面図である。図34は、実施形態5に係るSOFCの平面図である。図35は、実施形態5に係るSOFCにおける燃料及び酸素の流れを示す模式図である。図36は、実施形態5に係るSOFCを用いて炎から電力を得る状態を示す模式図である。
実施形態5のSOFC1dでは、複数のアノード用内部電極層2dのうち素子本体10dの積層方向の外表面(面10Ed)に最も近いアノード用内部電極層2dは、アノード用内部電極層2dの平面に設けられて一端部が素子本体10dの積層方向の外表面(面10Ed)に引き出されるアノード用貫通体(柱状電極)2Cを有する。この一端部が他の実施形態と同様に端縁として機能する。また、複数のカソード用内部電極層3dのうち素子本体10dの積層方向の外表面(面10Fd)に最も近いカソード用内部電極層3dは、カソード用内部電極層3dの平面に設けられて一端部が素子本体10dの積層方向の外表面(面10Fd)に引き出されるカソード用貫通体(柱状電極)3Cを有する。この一端部が他の実施形態と同様に端縁として機能する。
図31Aに示すように、アノード用内部電極層2dとカソード用内部電極層3dとは、両者の一部が重ならない非重なり部6を有して交互に積層される。アノード用内部電極層2dとカソード用内部電極層3dとの間には、固体電解質層4が配置される。
複数のアノード用内部電極層2dの一端(たとえばガスの入口または出口となる第1端)は、素子本体10dの面10Cdに露出しており、面10Cdに設けられる第1外部電極11に電気的に接続されている。また、複数のカソード用内部電極層3dの一端(たとえばガスの入口または出口となる第1端)は、素子本体10dの面10Adに露出しており、面10Adに設けられる第2外部電極12によって電気的に接続されている。そして、第1外部電極11とカソード用内部電極層3dとの間及び第2外部電極12とアノード用内部電極層2dとの間に、仕切り部5が設けられる。
このような構造により、アノード用内部電極層2dの他端は第2外部電極12と絶縁され、カソード用内部電極層3dの他端は第1外部電極11と絶縁される。図32および図33に示すように、平面視においては、長方形形状のアノード用内部電極層2d及びカソード用内部電極層3dの3辺を、仕切り部5が取り囲むようになっている。
素子本体10dの表面に最も近いアノード用内部電極層2d及びカソード用内部電極層3dの表面には、最外層となる固体電解質層4が積層される。素子本体10dの積層方向の外表面(面10Ed)に最も近いアノード用内部電極層2dは、同一平面上に広がる主電極層と、素子本体10dの積層方向の最外層となる固体電解質層4を貫通する柱状電極2Cとを有し、柱状電極2Cが素子本体10dの外表面に露出する頂端が、たとえばガスの入口または出口となる第2端を構成してある。図34は、面10Edに露出したアノード用柱状電極2Cの頂端(第2端)を示している。この例では、6個のアノード用柱状電極2Cが面10Edに現れている。
また、素子本体10dの積層方向の外表面(面10Fd)に最も近いカソード用内部電極層3dは、同一平面上に広がる主電極層と、素子本体10dの積層方向の最外層となる固体電解質層4を貫通する柱状電極3Cとを有し、柱状電極3Cが素子本体10dの外表面に露出する頂端が、たとえばガスの入口または出口となる第2端を構成してある。
アノード用内部電極層2dにおける主電極層とアノード用柱状電極2Cとは、両者の間で少なくとも気体が通過するように接続されている。同様に、カソード用内部電極層3dにおける主電極層とカソード用柱状電極3Cとは、両者の間で少なくとも気体が通過するように接続されている。
図35に示すように、第1外部電極11からは供給された燃料は、図31Aに示す素子本体10dの積層方向の外表面(面10Ed)に最も近いアノード用内部電極層2d及びアノード用柱状電極2Cを通って、面10Edから排出される(矢印F)。また、第2外部電極12から供給された酸素は、図31Aに示す素子本体10dの積層方向の外表面(面10Fd)に最も近いカソード用内部電極層3d及びカソード用柱状電極3Cを通って、面10Edから排出される(矢印A)。なお、これ以外の(アノード用柱状電極2C又はカソード用柱状電極3Cが形成されていない)アノード用内部電極層2d又はカソード用内部電極層3dにおけるガス交換は、拡散のみによって行われる。
SOFC1dを用いて炎から電力を得ようとする場合、図36に示すように、図31Aに示すアノード用内部電極層2d側の第1外部電極11を炎の内芯に当て、図31Aに示すカソード用内部電極層3d側の第2外部電極12を炎の外に配置する。この場合、カソード用柱状電極3Cが上方を向くようにする。このようにすると、酸素の出口となるカソード用柱状電極3Cの端部は上方になるので、この端部が他の実施形態と同様に端縁として機能することとなり、対流を利用して酸素を効率的にカソード用内部電極層3d内から排出することができる。図示していないが、燃料の出口となるアノード用柱状電極2Cの端部は下方になる。これによって、燃料をアノード用内部電極層2d内から排出することができる。
(評価例)
上述した実施形態1〜実施形態5に係るSOFC1、1a、1b、1c、1dを製作し、発電性能を評価した。比較例として、アノード用内部電極層とカソード用内部電極層との各々の一方の端縁がSOFCの素子本体を貫通しない(露出していない)ものを作製し、発電性能を評価した。実施形態1〜実施形態5及び比較例のサンプルは、厚みが25μmの固体電解質を介在させながら、両内部電極層(アノード用内部電極層及びカソード用内部電極層)の厚みが40μmのものを交互に積層して作製した。両内部電極層は交互に2層ずつ4層と、それらの間に固体電解質層が3層となるようにした。両内部電極層の重なり合う面積、すなわち、電極有効面積は1層あたり6.7mm2 となるようにした。
図37は、比較例に係るSOFCの断面図である。比較例に係るSOFC200は、複数のアノード用内部電極層202と複数のカソード用内部電極層203とが固体電解質204を介して積層されている。複数のアノード用内部電極層202の一端は、素子本体210の外表面に露出して端縁となり、第1外部電極211に電気的に接続され、複数のカソード用内部電極層203の一端は、素子本体210の別の外表面に露出して端縁となり、第2外部電極212に電気的に接続される。
複数のアノード用内部電極層202の他端は、それぞれ第2外部電極212と向き合って絶縁され、複数のカソード用内部電極層203の他端は、それぞれ第1外部電極211と向き合って絶縁されている。すなわち、複数のアノード用内部電極層202及び複数のカソード用内部電極層203の他端は固体電解質層4内に埋め込まれるため、これらの両内部電極層202および203は、SOFC200の素子本体210を貫通しない。あるいは、これらの両内部電極層202および203は、それぞれ一端のみが素子本体210の外表面に露出していると言うこともできる。
図38は、評価方法の説明図である。外径3mm、内径2mmの銅パイプ31を燃料噴射口とし、燃料としてブタンガスを毎分4mL流して得られる拡散炎の炎FLに評価対象のSOFC1、1a、1b、1c、1d、200を配置した。このとき、評価対象のSOFC1、1a、1b、1c、1d、200は、これらのアノード用内部電極層と接続される第1外部電極11あるいは211が炎FLの内芯部に当たるように、かつこれらのカソード用内部電極層と接続される第2外部電極12あるいは212が炎の外部になるように保持させた。
そして、それぞれのSOFC1、1a、1b、1c、1d、200から最も高い電力が得られるようにこれらの位置を調整した。この状態で、SOFC1、1a、1b、1c、1d、200からの電流Iと端子電圧Vとを計測器(電力計)30で計測し、それぞれが発生した最大の電力(最大出力)を求めた。最大出力が大きいほど、SOFCの単位体積あたりの発電効率は高くなる。結果を表1に示す。
評価例1は実施形態1のSOFC1に対応し、評価例2は実施形態2のSOFC1aに対応し、評価例3は実施形態3のSOFC1bに対応し、評価例4は実施形態4のSOFC1cに対応し、評価例5は実施形態5のSOFCdに対応する。比較例は、上述したSOFC200に対応する。この評価結果から分かるように、アノード用内部電極層及びカソード用内部電極層をSOFCの素子本体の内部で貫通させるように配置させることで、貫通させない場合(比較例)に対して最大出力が増加することが確認できた。
最大出力を増減させる以下のような要因が考えられる。燃料ガス流れのドライビングフォースとして、火炎自体の上昇気流があげられ、アノードへの燃料ガスの流入の要因となる。また、空気流れのドライビングフォースとして、O2−イオン移動によるカソード内の負圧発生があげられ、周辺空気の引き込みの要因となる。あるいは、窒素富化空気のガス拡散が上げられ、新鮮な空気とのガス交換の要因となる。また、火炎の燃焼があげられ、周辺空気の対流(上昇気流)や周辺空気の引き込みの要因となる。さらに、ガス比重の違い(O2 =32:N2 =28)があげられ、低比重ガスの上昇(排出)の要因となる。そのほか、燃料と空気の分離として、出入口を近接させない等があげられる。
このような因子の組合せによって結果が得られた。評価例2、すなわち実施形態2(図19〜図21)のSOFC1aは、最大出力が最も大きい。これは、SOFC1aは、カソード用内部電極層3aの2箇所の端縁から酸素が供給されるので、酸素の入口が大きいからであると考えられる。また、酸素の出口となる面(端縁)が上方(炎から離れる方向)になるので、対流を利用して酸素を効率的にカソード用内部電極層3a内に導入できると考えられる。
評価例1、すなわち実施形態1のSOFC1は、評価例2に次いで最大電力が大きい。これは、SOFC1は、SOFC1aに次いで燃料及び酸素の出入口が大きいからであると考えられる。ただし、酸素の出口となる面(端縁)が上方(炎から離れる方向)に無く、対流を利用して酸素を導入しづらいと考えられる。
評価例4、すなわち実施形態4のSOFC1cは、最大出力が3番目である。これは、SOFC1cは、燃料及び酸素の通路が略L字形状であるため、曲がりによって燃料及び酸素の通過が抑制される傾向にあると考えられる。その結果、SOFC1cは、ガス交換の促進が他の実施形態と比較して抑制される傾向にあるためであると考えられる。
評価例5、すなわち実施形態5のSOFC1dは、4番目である。これは、SOFC1dは、素子本体10dを貫通しないアノード用内部電極層2d及びカソード用内部電極層3dを有しているため、燃料及び酸素の通過の促進が抑制される傾向は、SOFC1cよりもさらに低くなるからであると考えられる。
しかし、SOFC1dは、比較例に対しては高い最大出力である。これは、SOFC1dは、素子本体10dを貫通する柱状電極を備えるアノード用内部電極層2d及びカソード用内部電極層3dを有しているからであると考えられる。
評価例3、すなわち実施形態3のSOFC1bは、実施形態の中で最大出力が最も小さい。これは、燃料及び酸素の出入口が複数個所に設けられ開口面積が大きいながら、燃料の排出口と酸素の取り入れ口が同じ外表面に形成されており、燃料と空気の分離が十分に出来ないと考えられる。あるいは、酸素の取り入れ口が上方に配置されているため酸素の導入が難しいと考えられる。それでも、SOFC1bは、比較例に対しては高い最大出力である。これは、SOFC1bは、素子本体10bを貫通するアノード用内部電極層2b及びカソード用内部電極層3bを有しており、出入口が備わっているからであると考えられる。
これらの評価結果から、SOFCは、アノード用内部電極層とカソード用内部電極層とのいずれか一方が素子本体を貫通していれば、アノード用内部電極層及びカソード用内部電極層が素子本体を貫通していない場合と比較して、最大出力は大きくなると推定できる。
(実施形態6)
図39は、本発明の実施形態6に係るSOFCにおける燃料及び酸素の流れを示す模式図である。図39に示す実施形態6に係るSOFC1eは、以下に示す以外は、前述した実施形態1〜5のSOFCと同様である。この実施形態に係るSOFC1eの素子本体10eでは、アノード用内部電極層2eが素子本体10eの同一の外表面である面10Beに第1端2e1と第2端2e2とで露出している。また、カソード用内部電極層3eが素子本体10eの同一の外表面である面10Deに第1端3e1と第2端3e2とで露出している。
アノード用内部電極層2eの第1端2e1は、面10Beの一部に形成してある第1外部電極11の少なくとも一部で覆われ、それに接続してある。アノード用内部電極層2eの第2端2e2は、第1外部電極11で覆われておらず、面10Beに露出している。カソード用内部電極層3eの第2端3e2は、面10Deの一部に形成してある第2外部電極12の少なくとも一部で覆われ、それに接続してある。カソード用内部電極層3eの第1端3e1では、第2外部電極12で覆われておらず、面10Deに露出している。面10Beと面10Deは対向しており、面10Aeと面10Ceとも対向している。
効率を高めるために、アノード用内部電極層2eとカソード用内部電極層3eとは、実際には、互いにそれぞれの一部が積層方向から見て重なる面積が大きくなるように決定される。しかしながら、図39(ほかの図も同様)では、図示の容易化のために、必ずしもそうはなっていない。
本実施形態では、図39に示すように、第1外部電極11が炎の内芯部に当たるように、かつ第2外部電極12が炎の外部になるようにSOFC1eを保持する。燃料は、第1外部電極11(面10Be)からアノード用内部電極層2e内に流入し、同じ面10Beから排出される(矢印F)。酸素は、第2外部電極12(面10De)からカソード用内部電極層3e内に流入し、同じ面10Deから排出される(矢印A)。すなわち本実施形態では、燃料および酸素は、積層方向から見て相互に異なるU字形状の流れがそれぞれ形成され、電極層2eおよび3eの重複部においてガス交換がなされる。各電極層2eおよび3eは、素子本体10eの内部においてU字形状に貫通していると言うこともできる。
本実施形態では、第1端2e1と第2端2e2とは、素子本体10eの同一の外表面である面10Beで離れた位置に形成してある。これらの第1端2e1と第2端2e2とは、素子本体10eの同一の外表面である面10Beで連続して形成しても良い。第1端2e1と第2端2e2とを、素子本体10eの同一の外表面である面10Beで連続して形成する場合には、第1電極11で覆われ部分が第1端となり、覆われない部分が、第2端となる。
(実施形態7)
図40は、本発明の実施形態7に係るSOFCにおける燃料及び酸素の流れを示す模式図である。図40に示す実施形態7に係るSOFC1fは、以下に示す以外は、前述した実施形態1〜6のSOFCと同様である。この実施形態に係るSOFC1fの素子本体10fでは、アノード用内部電極層2fが素子本体10fの対向する2つの外表面である面10Bfおよび10Dfに、それぞれ第1端2f1と第2端2f2とで露出している。また、カソード用内部電極層3fが素子本体10fの対向する2つの外表面である面10Afおよび10Cfに、それぞれ第1端3f1と第2端3f2とで露出している。
アノード用内部電極層2fの第1端2f1は、面10Bfの一部に形成してある第1外部電極11の少なくとも一部で覆われ、それに接続してある。アノード用内部電極層2fの第2端2f2は、電極で覆われておらず、面10Dfに露出している。カソード用内部電極層3fの第1端3f1は、面10Afの一部に形成してある第2外部電極12の少なくとも一部で覆われ、それに接続してある。カソード用内部電極層3fの第2端3f2では、電極で覆われておらず、面10Cfに露出している。面10Bfと面10Dfは対向しており、面10Afと面10Cfとも対向している。
本実施形態では、図40に示すように、積層方向から見て、アノード用内部電極層2fとカソード用内部電極層3fとは斜めに交差している。
第1外部電極11が炎の内芯部に当たるように、かつ第2外部電極12が炎の外部になるようにSOFC1fを保持する。燃料は、第1外部電極11(面10Bf)からアノード用内部電極層2f内に流入し、対向する面10Dfから排出される(矢印F)。酸素は、第2外部電極12(面10Af)からカソード用内部電極層3f内に流入し、対向する面10Cfから排出される(矢印A)。
すなわち本実施形態では、燃料および酸素は、積層方向から見て相互に斜めに交差する流れがそれぞれ形成され、アノード用内部電極層2fおよびカソード用内部電極層3fの重複部においてガス交換がなされる。各内部電極層2fおよび3fは、素子本体10fの内部において相互に斜めに交差する方向に貫通していると言うこともできる。
(実施形態8)
図41は、本発明の実施形態8に係るSOFCにおける燃料及び酸素の流れを示す模式図である。図42は、本実施形態8の変形例に係るSOFCにおける燃料及び酸素の流れを示す模式図である。図43は、本実施形態8の別の変形例に係るSOFCにおける燃料及び酸素の流れを示す模式図である。図41に示す実施形態8に係るSOFC1gは、以下に示す以外は、前述した実施形態1〜7のSOFCと同様である。この実施形態に係るSOFC1gの素子本体10gでは、アノード用内部電極層2gが素子本体10gの隣接する3つの外表面である面10Bg、10Agおよび10Dgに、それぞれ単一の第1端2g1と2つの第2端2g2とで露出している。アノード用内部電極層2gは、面10Cgには露出しないようになっている。また、カソード用内部電極層3gは素子本体10gの隣接する3つの外表面である面10Cg、10Dgおよび10Agに、それぞれ単一の第1端3g1と2つの第2端3g2とで露出している。カソード用内部電極層3gは、面10Bgには露出しないようになっている。
アノード用内部電極層2gの第1端2g1は、面10Bgの少なくとも一部に形成してある第1外部電極11の少なくとも一部で覆われ、それに接続してある。アノード用内部電極層2gの2つの第2端2g2は、電極で覆われておらず、面10Agおよび10Dgに連続的に露出している。カソード用内部電極層3gの第1端3g1は、面10Cgの一部に形成してある第2外部電極12の少なくとも一部で覆われ、それに接続してある。カソード用内部電極層3gの2つの第2端3g2では、電極で覆われておらず、面10Dgおよび10Cgに連続的に露出している。面10Bgと面10Dgは対向しており、面10Agと面10Cgとも対向している。
本実施形態では、図41に示すように、積層方向から見て、アノード用内部電極層2gとカソード用内部電極層3gとは、隣接する2つの面10Agおよび10Dgに露出する第2端2g2および3g2を有するように相互に重複している。
第1外部電極11が炎の内芯部に当たるように、かつ第2外部電極12が炎の外部になるようにSOFC1gを保持する。燃料は、第1外部電極11(面10Bg)からアノード用内部電極層2g内に流入し、面10Bgと隣接する面10Agおよび対向する面10Dfから排出される(矢印F)。酸素は、第2外部電極12(面10Ag)からカソード用内部電極層3g内に流入し、面10Cgと隣接する面10Dgおよび対向する面10Afから排出される(矢印A)。
すなわち本実施形態では、燃料および酸素は、積層方向から見て相互に隣接する面10Bgおよび10Cgから入り込み、それらの外表面とは異なる隣接する2つの面10Agおよび10Dgの2箇所から排出される流れがそれぞれ形成され、各電極層2gおよび3gの重複部においてガス交換がなされる。各電極層2gおよび3gは、素子本体10gの内部において相互に直交する2つの方向に排出される方向に貫通していると言うこともできる。
上述の実施形態では、アノード用内部電極層2gおよびカソード用内部電極層3gがそれぞれ、3つの外表面に露出している。
本実施形態の変形例として別の内部電極層との組合せが考えられる。実施形態2のアノード用内部電極層2aと同様に、図42に示すように、アノード用内部電極層2hは2つの外表面である面10Bhおよび10Dhに露出させてもよい。この場合、アノード用内部電極層2hは、面10Ahおよび10Chには露出しない。
こうすることによって、実施形態2と同様に、燃料は、第1外部電極11(面10Bh)からアノード用内部電極層2h内に流入し、面10Dhから排出される。酸素は、第2外部電極12(面10Ch)及び面10Ahからカソード用内部電極層3h内に流入し、面10Dhから排出される。したがって、2箇所から酸素がカソード用内部電極層3hに供給されるので、SOFC1hには十分な酸素が供給される。また、酸素の出口となる面10Dhは、上方(炎から離れる方向)になるので、対流を利用して酸素を効率的にカソード用内部電極層3h内に導入することができる。
本実施形態の別の変形例としてさらに別の内部電極層との組合せが考えられる。図43に示すように、アノード用内部電極層2iは2つの外表面である面10Aiおよび10Biに露出してもよい。この場合、アノード用内部電極層2iは、面10Ciおよび10Diには露出しない。一方、カソード用内部電極層3iは2つの外表面である面10Ciおよび10Diに露出してもよい。この場合、カソード用内部電極層3iは、面10Aiおよび10Biには露出しない。
こうすることによって、燃料は、第1外部電極11(面10Bi)からアノード用内部電極層2i内に流入し、面10Aiから排出される。酸素は、第2外部電極12(面10Ci)からカソード用内部電極層3i内に流入し、面10Diから排出される。したがって、酸素の入口を燃料の入口並びに出口と分離できるので、SOFC1iには十分な酸素が供給できる。また、酸素の出口となる面10Diは、上方(炎から離れる方向)になるので、対流を利用して酸素を効率的にカソード用内部電極層3i内に導入することができる。
本発明は、上述した実施形態に限定されず、本発明の範囲内で種々に改変することができる。たとえば上述した実施形態では、素子本体10〜10iの内部において、X−Y平面に広がる電極層2〜2iおよび3〜3iが単一である。相互に絶縁されている2以上の電極層2〜2iおよび3〜3iとしても良い。また、素子本体10〜10iの形状は、直方体、円柱に限らず、角柱、楕円柱、その他の多角体であっても良く、素子本体10〜10iの内部に固体電解質層4を介して積層される各電極層2〜2iおよび3〜3iの形状や寸法などは、素子本体10〜10iの形状に合わせて種々に変形することが可能である。
上述した実施形態においては、各電極層2〜2iおよび3〜3iの第1端の側から燃料または酸素が入り込み、第2端の側から排出されるように構成してある。その逆の構成であっても良い。また、外部電極11、12は、第1端の側に形成するように構成してあるが、第2端の側に形成しても良く、第1端および第2端の双方に形成しても良い。