JP6044605B2 - 触媒付パティキュレートフィルタ及びその製造方法 - Google Patents
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Description
本発明は触媒付パティキュレートフィルタ及びその製造方法に関する。
ディーゼルエンジンやリーンバーンガソリンエンジンの排気ガス中には炭素を主成分とするパティキュレート(微粒子状のパティキュレートマター)が含まれている。そこで、排気ガス通路にフィルタを配置してパティキュレートを捕集するとともに、その捕集量が多くなったときに、パティキュレートを燃焼させてフィルタから除去することにより、フィルタを再生することが行なわれている。そして、パティキュレートの燃焼を促進するためにフィルタ本体に触媒が担持されている。
上記触媒としてはアルミナにPtを担持させたPt/アルミナ触媒が知られている。特許文献1には、所定の粒径分布をもつ粒状材料をフィルタ本体に担持させた後、その粒状材料にPt溶液を含浸させてPtを担持することが記載されている。その粒状材料としてはγ−アルミナ、セリア等があげられ、また、その粒状材料は、NOxの吸収還元能を付与するために、アルカリ土類金属を含有してもよいことが当該文献に記載されている。
アルカリ土類金属は排気ガス中のNOxを吸蔵して、硝酸塩を生成する。このアルカリ土類金属をフィルタ本体に担持させると、NOxを吸蔵して生成した硝酸塩の分解に伴って放出される活性な酸素によってパティキュレートが酸化され、この反応によりパティキュレートの燃焼が促進されると考えられる。
本発明者は、Ptを担持した活性アルミナと活性酸素放出材(排気ガス中の酸素を取り込み該酸素を活性な酸素として放出する酸化物)を混合してフィルタ本体にコーティングした後、アルカリ土類金属塩を水溶液にしてコーティング層に含浸させて担持させた。そして、パティキュレートの燃焼試験を行ったところ、アルカリ土類金属の使用によってパティキュレート燃焼性能の改善が認められたが、その燃焼改善効果は予想に反して低かった。
本発明者は、アルカリ土類金属によるパティキュレートの燃焼改善効果が予想に反して小さい原因を調べるべく実験を重ねた。その結果、上述のアルカリ土類金属の担持方法では、アルカリ土類金属が活性アルミナと活性酸素放出材に略均等に担持されるところ、活性酸素放出材に担持されたアルカリ土類金属がパティキュレートの燃焼に関してマイナス効果を生んでいると認められた。すなわち、活性酸素放出材に対するアルカリ土類金属の担持量が多くなると、活性酸素放出材の活性酸素放出量が少なくなり、或いは活性酸素放出材表面の活性点が覆われ、その結果、アルカリ土類金属がパティキュレートの燃焼改善効果が思ったより低くなっていると認められた。
そこで、本発明は、アルカリ土類金属がパティキュレートの燃焼促進に効果的に働くように触媒を調製し、Pt等の触媒金属の使用量を抑え、触媒の低コスト化を図ることを課題とする。
本発明は、上記課題を解決するために、触媒のバインダにアルカリ土類金属を積極的に担持させるようにした。
ここに提示する触媒付パティキュレートフィルタは、排気ガス中のパティキュレートを捕集するフィルタ本体の排気ガス通路壁に、パティキュレート燃焼用の触媒が設けられたものであり、
上記触媒は、活性アルミナと、排気ガス中の酸素を取り込み該酸素を活性酸素として放出する1種又は2種以上の酸化物よりなる活性酸素放出材と、触媒金属と、アルカリ土類金属と、上記活性アルミナの粒子よりも微細なバインダを含有し、
上記活性アルミナ及び上記バインダ各々に上記アルカリ土類金属が担持されており、
上記活性アルミナ及び上記バインダ各々に担持された上記アルカリ土類金属の合計量が上記触媒に含まれる全アルカリ土類金属量の90質量%以上であることを特徴とする。
上記触媒は、活性アルミナと、排気ガス中の酸素を取り込み該酸素を活性酸素として放出する1種又は2種以上の酸化物よりなる活性酸素放出材と、触媒金属と、アルカリ土類金属と、上記活性アルミナの粒子よりも微細なバインダを含有し、
上記活性アルミナ及び上記バインダ各々に上記アルカリ土類金属が担持されており、
上記活性アルミナ及び上記バインダ各々に担持された上記アルカリ土類金属の合計量が上記触媒に含まれる全アルカリ土類金属量の90質量%以上であることを特徴とする。
上記触媒付パティキュレートフィルタでは、活性アルミナ及びバインダ各々に担持されたアルカリ土類金属が排気ガス中のNOxをトラップする。このとき、アルカリ土類金属は炭酸塩から硝酸塩になる。フィルタの再生時(パティキュレートの燃焼除去時)には排気ガス温度の上昇に伴って、当該硝酸塩が分解され、この硝酸塩の分解で放出される活性な酸素と、活性酸素放出材から放出される活性な酸素とが酸化剤となって触媒金属によるパティキュレートの燃焼が促進される。
ここに、上記触媒のアルカリ土類金属量が多くなると、それだけ硝酸塩の分解で放出される活性な酸素量が多くなるから、パティキュレートの燃焼促進に有利になる。しかし、先に説明したように、活性酸素放出材は、そのアルカリ土類金属担持量が多くなると、活性な酸素の放出が抑えられ、パティキュレートの燃焼促進に不利になる。また、活性アルミナの場合は、活性な酸素を放出するものではないが、アルカリ土類金属の担持量が多くなると、活性アルミナに担持されている触媒金属がアルカリ土類金属で覆われ、触媒活性が低くなる。
そこで、本発明では、アルカリ土類金属の全量の90質量%以上を活性アルミナとバインダに分けて担持するようにしている。これにより、活性アルミナに対するアルカリ土類金属の担持量を抑えながら、バインダへのアルカリ土類金属の担持によって、触媒全体としてアルカリ土類金属量を多くすることが可能になり、パティキュレートの燃焼促進に有利になる。
上記バインダとしては、アルミナバインダやジルコニアバインダを好ましく用いることができる。
触媒付パティキュレートフィルタの好ましい態様は、上記活性アルミナに対する上記アルカリ土類金属の担持割合が2質量%以上7.8質量%以下であり、上記バインダに対する上記アルカリ土類金属の担持割合が1.1質量%以上17.1質量%以下であることを特徴とする。これにより、アルカリ土類金属をパティキュレートの燃焼促進に効果的に利用することができる。
触媒付パティキュレートフィルタの好ましい態様は、上記活性アルミナ及び上記バインダ各々に担持された上記アルカリ土類金属の合計量に占める上記活性アルミナに担持された上記アルカリ土類金属量の割合が24質量%以上95質量%以下であることを特徴とする。これにより、アルカリ土類金属をパティキュレートの燃焼促進に効果的に利用することができる。上記割合に関し、より好ましいのは48質量%以上85質量%以下である。
触媒付パティキュレートフィルタの好ましい態様は、上記活性酸素放出材として、Ce含有複合酸化物とCe非含有Zr系複合酸化物とを備えていることを特徴とする。ここに、Ce含有複合酸化物は、Ceの価数変化を伴う反応が可逆的に進行することによって排気ガス中の酸素を吸蔵して活性な酸素として放出し、Ce非含有Zr系複合酸化物は、高いイオン伝導性を持ち、酸素交換反応によって周囲から酸素を内部に取り込んで活性な酸素を放出する。
また、ここに提示する、排気ガス中のパティキュレートを捕集するフィルタ本体の排気ガス通路壁に、パティキュレート燃焼用の触媒が設けられている触媒付パティキュレートフィルタの製造方法は、
活性アルミナ、排気ガス中の酸素を取り込み該酸素を活性な酸素として放出する一種又は二種以上の酸化物よりなる活性酸素放出材、アルカリ土類金属、触媒金属及び上記活性アルミナの粒子よりも微細なバインダを準備する工程と、
上記アルカリ土類金属の全量を上記活性アルミナと上記バインダに分けて担持する工程と、
上記アルカリ土類金属を担持した上記活性アルミナと、上記アルカリ土類金属を担持した上記バインダと、上記活性酸素放出材とを混合したスラリーを形成する工程と、
上記スラリーを上記フィルタ本体にコーティングする工程と、
上記触媒金属を、上記スラリーを形成する前に上記活性アルミナ及び上記活性酸素放出材に担持し、又は上記スラリーを上記フィルタ本体にコーティングした後に当該コーティング層に担持する工程とを備えていることを特徴とする。
活性アルミナ、排気ガス中の酸素を取り込み該酸素を活性な酸素として放出する一種又は二種以上の酸化物よりなる活性酸素放出材、アルカリ土類金属、触媒金属及び上記活性アルミナの粒子よりも微細なバインダを準備する工程と、
上記アルカリ土類金属の全量を上記活性アルミナと上記バインダに分けて担持する工程と、
上記アルカリ土類金属を担持した上記活性アルミナと、上記アルカリ土類金属を担持した上記バインダと、上記活性酸素放出材とを混合したスラリーを形成する工程と、
上記スラリーを上記フィルタ本体にコーティングする工程と、
上記触媒金属を、上記スラリーを形成する前に上記活性アルミナ及び上記活性酸素放出材に担持し、又は上記スラリーを上記フィルタ本体にコーティングした後に当該コーティング層に担持する工程とを備えていることを特徴とする。
これにより、活性アルミナ及びバインダの各々にアルカリ土類金属が担持されてなる触媒付パティキュレートフィルタが得られる。また、予めアルカリ土類金属の全量を活性アルミナと上記バインダに分けて担持するから、それらアルカリ土類金属の一部が上記スラリーに溶出したとしても、当該全量の90質量%以上は活性アルミナ及びバインダに残る。よって、所期の触媒付パティキュレートフィルタが得られる。
本発明の触媒付パティキュレートフィルタによれば、触媒が、活性アルミナと、活性酸素放出材と、触媒金属と、アルカリ土類金属と、微細なバインダを含有し、上記アルカリ土類金属の全量の90質量%以上を活性アルミナとバインダに分けて担持されているから、アルカリ土類金属からなる硝酸塩の分解で放出される活性な酸素によって、パティキュレートの燃焼を促進することができ、フィルタの再生に要する時間の短縮、ひいてはエンジンの燃費の改善に有利になる。また、触媒金属の使用量を減らすことが可能になり、コスト低減に有利になる。
本発明の触媒付パティキュレートフィルタの製造方法によれば、アルカリ土類金属の全量を活性アルミナとバインダに分けて担持しておき、このアルカリ土類金属を担持した活性アルミナと、アルカリ土類金属を担持したバインダと、活性酸素放出材とを混合してスラリー化し、このスラリーをフィルタ本体にコーティングするようにしたから、アルカリ土類金属の全量の90質量%以上が活性アルミナとバインダに分散して担持された触媒付パティキュレートフィルタを得ることができる。
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
図1に示すように、触媒付パティキュレートフィルタ(以下、単に「触媒付フィルタ」という。)10は、ディーゼルエンジン等の排気ガス通路11に配置され、排気ガス中のパティキュレート(以下、「PM」という。)を捕集する。フィルタ10よりも排気ガス流の上流側の排気ガス通路11には、酸化物等からなるサポート材にPt等の触媒金属を担持した酸化触媒(図示省略)を配置することができる。
[フィルタの構造]
図2及び図3に模式的に示すように、触媒付フィルタ10は、ハニカム構造をなしており、互いに平行に延びる多数の排気ガス通路12、13を備えている。下流端が栓14により閉塞された排気ガス流入路12と、上流端が栓14により閉塞された排気ガス流出路13とが交互に設けられ、排気ガス流入路12と排気ガス流出路13とは薄肉の隔壁15を介して隔てられている。図2においてハッチングを付した部分は排気ガス流出路13の上流端の栓14を示している。
図2及び図3に模式的に示すように、触媒付フィルタ10は、ハニカム構造をなしており、互いに平行に延びる多数の排気ガス通路12、13を備えている。下流端が栓14により閉塞された排気ガス流入路12と、上流端が栓14により閉塞された排気ガス流出路13とが交互に設けられ、排気ガス流入路12と排気ガス流出路13とは薄肉の隔壁15を介して隔てられている。図2においてハッチングを付した部分は排気ガス流出路13の上流端の栓14を示している。
触媒付フィルタ10は、隔壁15を含むフィルタ本体がコージェライト、SiC、Si3N4、サイアロン、AlTiO3のような無機多孔質材料から形成されている。排気ガス流入路12内に流入した排気ガスは図3に矢印で示したように周囲の隔壁15を通って隣接する排気ガス流出路13内に流出する。図4に示すように、隔壁15は排気ガス流入路12と排気ガス流出路13とを連通する微小な細孔(排気ガス通路)16を有し、この細孔16を排気ガスが通る。PMは主に排気ガス流入路12及び細孔16の壁部に捕捉され堆積する。
上記フィルタ本体の排気ガス通路(排気ガス流入路12、排気ガス流出路13及び細孔16)を形成する壁面には触媒20がコーティングされている。なお、排気ガス流出路13側の壁面に触媒を設けることは必ずしも要しない。
[触媒について]
次に、触媒20の構成について説明する。
次に、触媒20の構成について説明する。
図5に模式的に示すように、触媒20は、複数種の活性アルミナ21,22と排気ガス中の酸素を取り込み該酸素を活性な酸素として放出する複数種の活性酸素放出材23,24を含有する。以下、具体的に説明する。
本実施形態は、2種類の活性アルミナ21,22を有し、それらは共にγ−アルミナを主成分とし、それらのうちの一方は添加物を含まない純アルミナ(第1アルミナ)21であり、他方は添加物としてのLaを約4質量%含有するLa含有アルミナ(第2アルミナ)22である。純アルミナ21及びLa含有アルミナ22には、それぞれ触媒金属としてのPt25とアルカリ土類金属26が担持されている。
触媒金属としては、Pt25に限らず、Pd等の他の触媒金属を用いてもよく、或いは複数種の触媒金属を担持させるようにしてもよい。本実施形態において、触媒20は、Pt25を担持した活性アルミナ21,22を含有するため、NOを高効率でNO2に酸化でき、PMの燃焼促進に有利になる。また、本実施形態では、活性アルミナとして、嵩高いLa含有アルミナ22だけでなく純アルミナ21も用いているため、La含有アルミナ22のみを用いる場合に比べて、トータルの嵩高さを抑えることができ、触媒付フィルタの排気ガス通路の目詰まり防止に有利になる。
本実施形態は、2種類の活性酸素放出材23,24を有する。一方の活性酸素放出材23はCe含有複合酸化物よりなり、他方の活性酸素放出材24はCe非含有Zr系複合酸化物よりなる。本実施形態では、一方の活性酸素放出材23として、CeZrNd複合酸化物の結晶格子又は格子間にRhが固溶したRhドープCeZrNd複合酸化物(RhドープCeZrNdOX)を採用し、他方の活性酸素放出材24として、ZrNdPr複合酸化物(ZrNdPrOX)を採用している。活性酸素放出材23,24にもPt25が担持されている。
Ce非含有のZr系複合酸化物よりなる活性酸素放出材24は、平均細孔径が20nm以上60nm以下のものを用いることが好ましい。触媒付フィルタ10では触媒重量当たりのガス空間速度が非常に大きくなるが、細孔径が比較的に大きい活性酸素放出材24を用いると、その表面に排気ガスが接触するだけでなく、排気ガスが細孔部にも接触し易くなるから、活性な酸素を効率良く発生できる。その結果、PMの燃焼促進に有利になる。
上記触媒20では、サポート材(活性アルミナ21,22及び活性酸素放出材23,24)同士を結合し、また、触媒20を隔壁15に保持するバインダ27にもアルカリ土類金属26が担持されている。バインダ27は、活性アルミナ21,22の粒子よりも微細な酸化物粒子よりなる。
好ましい態様では、上記複数種の活性アルミナ21,22の総担持量が4g/L以上10g/L以下、Ce系複合酸化物よりなる活性酸素放出材23の担持量が4g/L以上10g/L以下、Ce非含有Zr系複合酸化物よりなる活性酸素放出材24の担持量が6g/L以上15g/L以下である。
複数の活性アルミナ21,22として上記純アルミナとLa含有アルミナを用いるとき、両者の質量比は純アルミナ/La含有アルミナ=1/8以上4/1以下とすることが好ましい。混合された複数種の活性アルミナ21,22に対するPt25の総担持量は0.3g/L以上0.4g/L以下とすることが好ましい。活性酸素放出材23,24各々に対するPtの担持量は0.07g/L以上1.0g/L以下とすることが好ましい。活性アルミナ21,22及びバインダ27に対するアルカリ土類金属の担持量については後述する。
[PM燃焼促進のメカニズムの推測等]
排気ガス温度が高くなると、フィルタ本体に捕集されたPMは、活性アルミナ21,22や活性酸素放出材23,24に担持されているPt25の触媒作用によって燃焼する。活性アルミナ21,22にPtが担持されてなるPt担持アルミナは、排気ガス中のNOをNO2に酸化する機能を有し、このNO2がPMを燃焼させる酸化剤となるため、PMの燃焼が促進される。
排気ガス温度が高くなると、フィルタ本体に捕集されたPMは、活性アルミナ21,22や活性酸素放出材23,24に担持されているPt25の触媒作用によって燃焼する。活性アルミナ21,22にPtが担持されてなるPt担持アルミナは、排気ガス中のNOをNO2に酸化する機能を有し、このNO2がPMを燃焼させる酸化剤となるため、PMの燃焼が促進される。
活性酸素放出材23,24は活性な酸素を放出することによってPMの燃焼を促進する。ここに、Ce非含有Zr系複合酸化物24は、酸素交換反応によって周囲から酸素を内部に取り込んで活性な酸素を放出する。よって、このZr含有複合酸化物24に担持されたPtは活性の高い酸化状態に保たれ、優れたPM燃焼性能を有することとなる。一方、Ce含有複合酸化物23は、高い酸素吸蔵放出能を有し、PMの燃焼に伴ってその燃焼部位の酸素が局部的に消費されても、このCe含有複合酸化物23によって酸素が速やかに補われてPM燃焼が維持される。
活性アルミナ21,22やバインダ27に担持されているアルカリ土類金属26は、NOxを吸蔵していないときは炭酸塩になっており、排気ガス中のNOxを硝酸塩の形態で吸蔵し(例えばSrの場合、SrCO3←→Sr(NO3)2)、又はNOxを吸着する。そして、排気ガス温度の上昇に伴って、その硝酸塩が分解され、この硝酸塩の分解で放出される活性な酸素によって、パティキュレートの燃焼が促進される。
また、触媒付フィルタは、活性アルミナとして、純アルミナ21とLa含有アルミナ22を混合して用いたことにより次の特徴を有する。
図6に純アルミナ21及びLa含有アルミナ22の細孔分布の測定結果(SIMADZU,micrometrics TriStar3000を使用)を示すように、純アルミナ21の細孔分布は細孔径10nm付近にシャープなピークがある。一方、La含有アルミナ22の細孔分布は10nm付近からそれ以上の大きさにわたるブロードなピークを有し、径が10nmを超える細孔が多く含まれている。図6の例では、純アルミナ21の平均細孔径は10.07nmであり、その平均細孔容積は0.537cm3/gであり、La含有アルミナ22の平均細孔径は13.15nmであり、その平均細孔容積は0.822cm3/gである。
このように純アルミナ21の場合、La含有アルミナ22に比べて細孔径が小さいから、その表面に担持されるPt25が多くなる。その結果、純アルミナ21によれば、排気ガスがPt25に接触し易くなってNO2が多く生成されるため、PMの燃焼促進に有利である。また、純アルミナ21は、La含有アルミナ22(塩基性)とは違って、両性であって酸点を有するから、Pt25を結合する力が強い。そのため、Pt25が高温排ガスに晒されても凝集し難く、良好なPM燃焼性が長期間維持されることになる。
一方、La含有アルミナ22は純アルミナ21に比べて、嵩比重が小さい、つまり嵩高であるが、耐熱性が高いという特性を有する。また、嵩高であるということは、ガス拡散性が良く、排気ガスとの接触が良好であることを意味する。
従って、純アルミナ21とLa含有アルミナ22の混合により、La含有アルミナ22によって触媒の耐熱性、ガス拡散性を確保しながら、純アルミナ21によってPM燃焼性を高めることができる。しかも、純アルミナ21の使用により、活性アルミナ全体としての嵩高さが抑えられる。つまり、触媒ボリュームが大きくなることが避けられ、ひいてはフィルタの排気ガス通路が狭くなることが避けられる。よって、触媒付フィルタによるエンジンの背圧上昇が抑えられるため、また、フィルタの目詰まりを生じ難くなってフィルタ再生処理の頻度が低くなるため、燃費の悪化が避けられる。
[触媒付フィルタの製造方法]
La含有アルミナ及び純アルミナ等の活性アルミナとしては、それぞれ市販されている粉末を用いることができる。また、活性酸素放出材23としてのRhドープCeZrNd複合酸化物及び活性酸素放出材24としてのZrNdPr複合酸化物は、以下の調製方法により得ることができる。
La含有アルミナ及び純アルミナ等の活性アルミナとしては、それぞれ市販されている粉末を用いることができる。また、活性酸素放出材23としてのRhドープCeZrNd複合酸化物及び活性酸素放出材24としてのZrNdPr複合酸化物は、以下の調製方法により得ることができる。
−RhドープCeZrNd複合酸化物の調製−
硝酸セリウム6水和物とオキシ硝酸ジルコニル溶液と硝酸ネオジム6水和物と硝酸ロジウム溶液をイオン交換水に溶かす。この硝酸塩溶液に28質量%アンモニア水の8倍希釈液を混合して中和させることにより、共沈物を得る。この共沈物を含む溶液を遠心分離器にかけて上澄み液を除去する脱水操作と、イオン交換水を加えて撹拌する水洗操作とを交互に必要回数繰り返す。最終的に脱水を行った後の共沈物を、大気中において150℃で一昼夜乾燥させた後、ボールミルにより粉砕する。その後、大気中において500℃で2時間焼成することによりRhドープCeZrNd複合酸化物粒子材を得ることができる。
硝酸セリウム6水和物とオキシ硝酸ジルコニル溶液と硝酸ネオジム6水和物と硝酸ロジウム溶液をイオン交換水に溶かす。この硝酸塩溶液に28質量%アンモニア水の8倍希釈液を混合して中和させることにより、共沈物を得る。この共沈物を含む溶液を遠心分離器にかけて上澄み液を除去する脱水操作と、イオン交換水を加えて撹拌する水洗操作とを交互に必要回数繰り返す。最終的に脱水を行った後の共沈物を、大気中において150℃で一昼夜乾燥させた後、ボールミルにより粉砕する。その後、大気中において500℃で2時間焼成することによりRhドープCeZrNd複合酸化物粒子材を得ることができる。
−ZrNdPr複合酸化物の調製−
硝酸プラセオジウム6水和物とオキシ硝酸ジルコニル溶液と硝酸ネオジム6水和物をイオン交換水に溶かす。この硝酸塩溶液に28質量%アンモニア水の8倍希釈液を混合して中和させることにより、共沈物を得る。この共沈物を含む溶液を遠心分離器にかけて上澄み液を除去する脱水操作と、イオン交換水を加えて撹拌する水洗操作とを交互に必要回数繰り返す。最終的に脱水を行った後の共沈物を、大気中において150℃で一昼夜乾燥させた後、ボールミルにより粉砕する。その後、大気中において500℃で2時間焼成することによりZrNdPr複合酸化物を得ることができる。
硝酸プラセオジウム6水和物とオキシ硝酸ジルコニル溶液と硝酸ネオジム6水和物をイオン交換水に溶かす。この硝酸塩溶液に28質量%アンモニア水の8倍希釈液を混合して中和させることにより、共沈物を得る。この共沈物を含む溶液を遠心分離器にかけて上澄み液を除去する脱水操作と、イオン交換水を加えて撹拌する水洗操作とを交互に必要回数繰り返す。最終的に脱水を行った後の共沈物を、大気中において150℃で一昼夜乾燥させた後、ボールミルにより粉砕する。その後、大気中において500℃で2時間焼成することによりZrNdPr複合酸化物を得ることができる。
−活性酸素放出材へのPtの担持−
RhドープCeZrNd複合酸化物とZrNdPr複合酸化物を混合し、これにイオン交換水を加えてスラリー状にし、これをスターラー等により十分に攪拌する。この攪拌を続けながら、そのスラリーに所定量エタノールアミンPt(ヘキサヒドロキソ白金(IV)酸エタノールアミン溶液)を滴下し、十分に攪拌する。その後、加熱しながらさらに攪拌を続け、水分を完全に蒸発させる。蒸発後、得られた乾固物を粉砕し、大気中において500℃で2時間焼成する。これにより、Ptがそれぞれの複合酸化物粒子材に担持されてなる触媒粉末が得られる。
RhドープCeZrNd複合酸化物とZrNdPr複合酸化物を混合し、これにイオン交換水を加えてスラリー状にし、これをスターラー等により十分に攪拌する。この攪拌を続けながら、そのスラリーに所定量エタノールアミンPt(ヘキサヒドロキソ白金(IV)酸エタノールアミン溶液)を滴下し、十分に攪拌する。その後、加熱しながらさらに攪拌を続け、水分を完全に蒸発させる。蒸発後、得られた乾固物を粉砕し、大気中において500℃で2時間焼成する。これにより、Ptがそれぞれの複合酸化物粒子材に担持されてなる触媒粉末が得られる。
−活性アルミナへのPt及びアルカリ土類金属の担持−
複数種の活性アルミナ(純アルミナ及びLa含有アルミナ)を混合し、イオン交換水を加えてスラリー状にし、それをスターラー等により十分に撹拌する。続いて、撹拌しながらそのスラリーに所定量のエタノールアミンPtを滴下し、さらに、攪拌しながらそのスラリーに所定量のアルカリ土類金属塩の溶液(アルカリ土類金属の酢酸塩をイオン交換水に溶かした液)を滴下し、十分に撹拌する。その後、加熱しながらさらに撹拌を続けて、水分を完全に蒸発させる。蒸発後、得られた乾固物を粉砕し、大気中において500℃で2時間焼成する。これにより、Pt及びアルカリ土類金属の炭酸塩がそれぞれの活性アルミナに担持された触媒粉末が得られる。
複数種の活性アルミナ(純アルミナ及びLa含有アルミナ)を混合し、イオン交換水を加えてスラリー状にし、それをスターラー等により十分に撹拌する。続いて、撹拌しながらそのスラリーに所定量のエタノールアミンPtを滴下し、さらに、攪拌しながらそのスラリーに所定量のアルカリ土類金属塩の溶液(アルカリ土類金属の酢酸塩をイオン交換水に溶かした液)を滴下し、十分に撹拌する。その後、加熱しながらさらに撹拌を続けて、水分を完全に蒸発させる。蒸発後、得られた乾固物を粉砕し、大気中において500℃で2時間焼成する。これにより、Pt及びアルカリ土類金属の炭酸塩がそれぞれの活性アルミナに担持された触媒粉末が得られる。
ここに、エタノールアミンPtは、エタノールアミンとPtとの錯体であり、ニトロ基とアミン基とがPtを中心として配位する平面四角形分子構造のPt原料(Pt−Pソルト)と比較して、ヒドロキシル基がPtを中心として配位する八面体形分子構造をとる。加えて、エタノールアミンが(NH3C2H5OH)が上記Pt−ヒドロキシル基錯体の周囲に存在するため、錯体が大きい。従って、エタノールアミンPtを用いるとその錯体の多くが活性アルミナや活性酸素放出材の細孔内に入り込むことなく、それらの表面上に担持される。すなわち、多くのPtをそれらサポート材の表面に配置することができる。その結果、Ptと排気ガスとの接触率を大きくでき、Ptによる排気ガス中のNOの酸化効率を向上できてNO2生成量を増大できる。その結果、PM燃焼効率を向上できる。
−バインダへのアルカリ土類金属の担持−
バインダ(例えばアルミナゾル)をイオン交換水に溶かし、スターラー等で十分に攪拌した後、所定量のアルカリ土類金属塩(例えばアルカリ土類金属の酢酸塩)を溶かす。その後、加熱しながらさらに撹拌を続けて、水分を完全に蒸発させる。蒸発後、得られた乾固物を粉砕し、大気中において500℃で2時間焼成する。これにより、アルカリ土類金属の炭酸塩がバインダに担持される。これをボールミルによって個数平均粒径が30nm以上150nm以下程度となるように粉砕する。そして、これにイオン交換水を加えることによってアルカリ土類金属担持バインダが得られる。
バインダ(例えばアルミナゾル)をイオン交換水に溶かし、スターラー等で十分に攪拌した後、所定量のアルカリ土類金属塩(例えばアルカリ土類金属の酢酸塩)を溶かす。その後、加熱しながらさらに撹拌を続けて、水分を完全に蒸発させる。蒸発後、得られた乾固物を粉砕し、大気中において500℃で2時間焼成する。これにより、アルカリ土類金属の炭酸塩がバインダに担持される。これをボールミルによって個数平均粒径が30nm以上150nm以下程度となるように粉砕する。そして、これにイオン交換水を加えることによってアルカリ土類金属担持バインダが得られる。
バインダへのアルカリ土類金属の担持には次の方法を採用することもできる。すなわち、バインダを含むイオン交換水に上記アルカリ土類金属塩を溶かした後、スターラー等で十分に攪拌し、次にpH調整を目的としてアンモニウム水溶液をpHが7〜8になるように滴下する。そして、スターラー等で攪拌することによって、バインダ粒子にアルカリ土類金属化合物の前駆体を析出させる。その後、先の担持方法と同様に、水分を完全に蒸発させ、得られた乾固物を粉砕して焼成し、しかる後にボールミルによって所定の平均粒径になるように粉砕し、これにイオン交換水を加えることによってアルカリ土類金属担持バインダを得ることができる。
−フィルタ本体への触媒粉末のコーティング−
活性アルミナ触媒粉末(純アルミナ及びLa含有アルミナ各々にPt及びアルカリ土類金属を担持してなる粉末)と活性酸素放出材粉末(RhドープCeZrNd複合酸化物及びZrNdPr複合酸化物各々にPtを担持してなる粉末)とアルカリ土類金属を担持させたバインダを混合する。得られた混合粉末にイオン交換水を加え、混合してスラリー状にする。そして、ボールミルによって個数平均粒径200nm以上400nm以下程度(好ましくは300nm程度)になるまで粉砕し、このスラリーをフィルタ本体にコーティングする。そして、大気中において150℃で乾燥させた後、大気中において500℃で2時間の焼成を行なう。これにより、触媒付フィルタが得られる。
活性アルミナ触媒粉末(純アルミナ及びLa含有アルミナ各々にPt及びアルカリ土類金属を担持してなる粉末)と活性酸素放出材粉末(RhドープCeZrNd複合酸化物及びZrNdPr複合酸化物各々にPtを担持してなる粉末)とアルカリ土類金属を担持させたバインダを混合する。得られた混合粉末にイオン交換水を加え、混合してスラリー状にする。そして、ボールミルによって個数平均粒径200nm以上400nm以下程度(好ましくは300nm程度)になるまで粉砕し、このスラリーをフィルタ本体にコーティングする。そして、大気中において150℃で乾燥させた後、大気中において500℃で2時間の焼成を行なう。これにより、触媒付フィルタが得られる。
[参考例]
アルカリ土類金属としてSrを採用し、表1に示すように活性アルミナに対するSr担持量が異なる参考例1−5の各フィルタを調製した。使用したフィルタ本体、活性アルミナ、活性酸素放出材の諸元は表2のとおりである。
アルカリ土類金属としてSrを採用し、表1に示すように活性アルミナに対するSr担持量が異なる参考例1−5の各フィルタを調製した。使用したフィルタ本体、活性アルミナ、活性酸素放出材の諸元は表2のとおりである。
参考例1−3は、バインダとしてアルカリ土類金属を担持していないジルコニアバインダを用い、他は上述の触媒付フィルタの製造方法と同じ方法で調製したものである。ここに、活性アルミナ触媒粉末及び活性酸素放出材を混合したスラリーを形成したときに、活性アルミナからSrの一部がスラリーに溶出して活性酸素放出材(RhドープCeZrNd複合酸化物及びZrNdPr複合酸化物)に少量担持される。表1の参考例1−3の活性アルミナに対するSr担持量及び活性酸素放出材に対するSr担持量は、予め活性アルミナに担持させたSr総量の90質量%が活性アルミナに残り、Sr総量の8%がスラリーを介して活性酸素放出材に担持されるとみなして計算した値である。
参考例4は、そのコーティング層にSr溶液を含浸させることによって、Srを活性アルミナと活性酸素放出材に担持させるようにしたものである。その具体的な調製方法は次のとおりである。
すなわち、複数種の活性アルミナ(純アルミナ及びLa含有アルミナ)を混合し、イオン交換水を加えてスラリー状にし、それをスターラー等により十分に撹拌する。続いて、撹拌しながらそのスラリーに所定量のエタノールアミンPtを滴下し、十分に撹拌する。その後、加熱しながらさらに撹拌を続けて、水分を完全に蒸発させる。蒸発後、得られた乾固物を粉砕し、大気中において500℃で2時間焼成する。これにより、Ptがそれぞれの活性アルミナに担持された触媒粉末を得る。
この活性アルミナ(純アルミナ及びLa含有アルミナ)にPtのみを担持した触媒粉末と上述の活性酸素放出材粉末(RhドープCeZrNd複合酸化物及びZrNdPr複合酸化物各々にPtを担持してなる粉末)を混合し、この混合粉末にジルコニアバインダ溶液及びイオン交換水を加え、混合してスラリー状にする。このスラリーをフィルタ本体にコーティングし、大気中において150℃で乾燥させる。そして、フィルタ本体の上記コーティング層に所定量のSr溶液(Srの酢酸塩をイオン交換水に溶かした液)を含浸させ、大気中において500℃で2時間の焼成を行なう。
参考例4の場合、Srを含浸させて活性アルミナと活性酸素放出材に担持させるから、活性アルミナに対するSrの質量比と活性酸素放出材に対するSrの質量比は同じになる。
参考例5は、活性アルミナにPtのみを担持し、このPtを担持した活性アルミナとPtを担持した活性酸素放出材とを混合してフィルタ本体にコーティングしたものである。
[参考例のPM燃焼性能評価]
参考例の各フィルタに大気中で800℃の温度に24時間保持するエージングを行なった後、各フィルタのPM燃焼性能を調べた。
参考例の各フィルタに大気中で800℃の温度に24時間保持するエージングを行なった後、各フィルタのPM燃焼性能を調べた。
まず、5g/L相当のカーボンブラックにイオン交換水を加え、スターラーを用いて攪拌することによりカーボンブラックを充分に分散させた。得られたスラリーに上記エージング処理したフィルタの入口端部を浸漬させるとともに、出口端部からアスピレータによる吸引を行なった。この吸引により除去できない水分は、当該フィルタのスラリーに浸漬させた側の端面からのエアーブローで除去した。そして、150℃の温度で2時間保持することによりフィルタを乾燥させた。
得られた各フィルタを固定床式のモデルガス流通装置に取り付け、N2ガスをフィルタに流しながらフィルタ入口のガス温度を常温から580℃まで上昇させた。温度が580℃で安定した後、その温度を維持した状態で、ガス組成を「7.5%O2+300ppmNO+N2(バランスガス)」に切り換え、当該モデルガスの空間速度を40000/hとしてフィルタに流した。そして、カーボンの燃焼により生成されるCO及びCO2のモデルガス中の濃度を測定することにより、フィルタにおけるカーボン燃焼量の経時変化を測定した。そして、カーボンが30%燃焼するまで、50%燃焼するまで、70%燃焼するまで、並びに90%燃焼するまでに要した各時間を求めた。
結果を図7に示す。Srを含有する参考例1−4は概ねSrを含有しない参考例5よりもPM燃焼性能が良いことがわかる。参考例1−3をみると、活性アルミナに対するSrの担持量が多くなるに従って、PM燃焼性能が低下する傾向が見られる。これは、Srの担持量が多くなるに従って、活性アルミナ上の活性点がSr化合物によって覆われる割合が多くなった結果と認められる。参考例1と参考例4は活性アルミナ上のSr担持量は同じであるが、参考例1の方がPM燃焼性能が良い。これは、参考例4は活性酸素放出材にSrが多く担持されており、そのため、Sr化合物によって活性な酸素の放出性能が低下し、また、活性酸素放出材の活性点がSrによって覆われたためと認められる。
[実施例及び比較例]
以上の参考例を踏まえ、アルカリ土類金属としてSrを採用し、バインダとしてアルミナバインダを採用し、上記触媒付フィルタの製造方法によって、実施例1−8及び比較例1,2の各フィルタを調製した。実施例及び比較例で使用したフィルタ本体、活性アルミナ、活性酸素放出材の諸元は表2のとおりである。
以上の参考例を踏まえ、アルカリ土類金属としてSrを採用し、バインダとしてアルミナバインダを採用し、上記触媒付フィルタの製造方法によって、実施例1−8及び比較例1,2の各フィルタを調製した。実施例及び比較例で使用したフィルタ本体、活性アルミナ、活性酸素放出材の諸元は表2のとおりである。
ここに、実施例1−8及び比較例1,2は、触媒が含有するSrの総量は0.58g/Lで同じであるが、表3に示すようにバインダに対するSr担持量が異なる。比較例1はSrの全量をバインダに担持させて触媒付フィルタを調製したケースである。比較例2はSrの全量を活性アルミナに担持させて触媒付フィルタを調製したケースである。実施例1−8はSrを活性アルミナとバインダとに分けて担持させて触媒付フィルタを調製したケースである。
[実施例及び比較例のPM燃焼性能評価]
実施例1−8及び比較例1,2の各フィルタに大気中で800℃の温度に24時間保持するエージングを行なった後、各フィルタのPM燃焼性能(カーボンが90%燃焼するまでに要した時間)を先に説明したPM燃焼性能評価方法によって調べた。結果を図8−10に示す。図8−10の各グラフにおいて、左端のプロットが比較例1、右端のプロットが比較例2、中間の8つのプロットが左から順に実施例1−8である。
実施例1−8及び比較例1,2の各フィルタに大気中で800℃の温度に24時間保持するエージングを行なった後、各フィルタのPM燃焼性能(カーボンが90%燃焼するまでに要した時間)を先に説明したPM燃焼性能評価方法によって調べた。結果を図8−10に示す。図8−10の各グラフにおいて、左端のプロットが比較例1、右端のプロットが比較例2、中間の8つのプロットが左から順に実施例1−8である。
図8−10から明らかなように、実施例のようにSrを活性アルミナとバインダに分散して担持させると、カーボン燃焼時間が短くなる傾向が見られる。
比較例2(Srの全量を活性アルミナに担持)の場合、活性アルミナの活性点がSrによって覆われ、Sr硝酸塩の分解で放出される活性な酸素によるカーボン燃焼の促進効果よりも、活性点の減少によるカーボン燃焼性の低下効果が大きくなったために、カーボン燃焼時間が長くなっていると認められる。
これに対して、実施例の場合、Srの一部をバインダに担持させたことにより、活性アルミナの活性点がSrで覆われる割合が少なくなり、活性アルミナに担持されたPtがカーボン燃焼に有効に働き、加えて、バインダ及び活性アルミナに担持されたSr硝酸塩の分解で放出される活性な酸素によってカーボンの燃焼が促進されたと認められる。
但し、活性アルミナに対するSrの担持割合が少なくなり、相対的に、バインダに対するSrの担持割合が多くなると、カーボン燃焼性の低下が見られる。活性アルミナに担持されたPtは排気ガス中のNOxのSrへの吸蔵を促すところ、バインダに担持されたSrには当該NOxの吸蔵を促す効果が及びにくい。その結果、バインダに対するSrが多くなるほどトータルではパティキュレートの燃焼を促す硝酸塩の分解で放出される活性な酸素量が少なくなるためと認められる。
なお、先の参考例の説明から明らかなように、上記触媒付フィルタにおいては、活性アルミナやバインダからスラリーに溶出したSrが活性酸素放出材に少量担持されている。
Srを活性アルミナとバインダに分散担持させる場合、図8によれば、活性アルミナに対するSrの担持割合は2質量%以上7.8質量%以下とすることが好ましく、4質量%以上7質量%以下とすることがさらに好ましいということができる。また、当該分散担持の場合、図9によれば、バインダに対するSrの担持割合は1.1質量%以上17.1質量%以下とすることが好ましく、2.8質量%以上11.4質量%以下とすることがさらに好ましいということができる。また、当該分散担持の場合、図10によれば、活性アルミナとバインダに担持させるSrの合計量に占める、活性アルミナに担持させるSr量の割合は24質量%以上95質量%以下とすることが好ましく、48質量%以上85質量%以下とすることがさらに好ましいということができる。
[他のアルカリ土類金属]
Ptを担持させた活性アルミナ粉末試料と、各々Pt及び1種類のアルカリ土類金属の炭酸塩を担持した4種類の活性アルミナ粉末試料を準備した。各試料とカーボンブラック20mgをめのう乳鉢の自重だけで1分間混合(タイトコンタクト)した。各混合粉末を5mg秤量し、アルミナパンを用いてDTA熱分析装置に設置した。「20%O2+500ppmNO2/N2」の気流(トータル流量100cc/分)で10℃/分にて昇温試験を行なった。DTA分析におけるリファレンスには市販のα−アルミナ粉末を使用した。カーボンの燃焼に伴う発熱ピークのピークトップ温度を読み取った。
Ptを担持させた活性アルミナ粉末試料と、各々Pt及び1種類のアルカリ土類金属の炭酸塩を担持した4種類の活性アルミナ粉末試料を準備した。各試料とカーボンブラック20mgをめのう乳鉢の自重だけで1分間混合(タイトコンタクト)した。各混合粉末を5mg秤量し、アルミナパンを用いてDTA熱分析装置に設置した。「20%O2+500ppmNO2/N2」の気流(トータル流量100cc/分)で10℃/分にて昇温試験を行なった。DTA分析におけるリファレンスには市販のα−アルミナ粉末を使用した。カーボンの燃焼に伴う発熱ピークのピークトップ温度を読み取った。
結果を図11に示す。アルカリ土類金属を担持した試料はアルカリ土類金属非担持の試料よりもDTAピークトップ温度が低くなっており、アルカリ土類金属の担持によってPMの燃焼性が良くなることがわかる。DTAピークトップ温度は、Mg→Sr→Ca→Baの順で低くなっており、Baを担持させたときにPMの燃焼開始温度が最も低くなることがわかる。
上記実施形態では活性アルミナ及びバインダに1種類のアルカリ土類金属を担持するようにしたが、2種以上のアルカリ土類金属を担持させるようにしてもよい。
10 触媒付フィルタ
11 排気ガス通路
12 排気ガス流入路(フィルタの排気ガス通路)
13 排気ガス流出路(フィルタの排気ガス通路)
14 栓
15 隔壁(排気ガス通路壁)
16 細孔(フィルタの排気ガス通路)
20 触媒
21 純アルミナ(活性アルミナ)
22 La含有アルミナ(活性アルミナ)
23 Ce非含有Zr系複合酸化物
24 Ce含有複合酸化物
25 Pt(白金)
26 アルカリ土類金属
27 バインダ
11 排気ガス通路
12 排気ガス流入路(フィルタの排気ガス通路)
13 排気ガス流出路(フィルタの排気ガス通路)
14 栓
15 隔壁(排気ガス通路壁)
16 細孔(フィルタの排気ガス通路)
20 触媒
21 純アルミナ(活性アルミナ)
22 La含有アルミナ(活性アルミナ)
23 Ce非含有Zr系複合酸化物
24 Ce含有複合酸化物
25 Pt(白金)
26 アルカリ土類金属
27 バインダ
Claims (4)
- 排気ガス中のパティキュレートを捕集するフィルタ本体の排気ガス通路壁に、パティキュレート燃焼用の触媒が設けられている触媒付パティキュレートフィルタであって、
上記触媒は、活性アルミナと、排気ガス中の酸素を取り込み該酸素を活性な酸素として放出する1種又は2種以上の酸化物よりなる活性酸素放出材と、触媒金属と、アルカリ土類金属と、上記活性アルミナの粒子よりも微細なバインダを含有し、
上記活性アルミナ及び上記バインダ各々に上記アルカリ土類金属が担持されており、
上記活性アルミナ及び上記バインダ各々に担持された上記アルカリ土類金属の合計量が上記触媒に含まれる全アルカリ土類金属量の90質量%以上であることを特徴とする触媒付パティキュレートフィルタ。 - 請求項1において、
上記活性アルミナに対する上記アルカリ土類金属の担持割合が2質量%以上7.8質量%以下であり、
上記バインダに対する上記アルカリ土類金属の担持割合が1.1質量%以上17.1質量%以下であることを特徴とする触媒付パティキュレートフィルタ。 - 請求項1又は請求項2において、
上記活性アルミナ及び上記バインダ各々に担持された上記アルカリ土類金属の合計量に占める上記活性アルミナに担持された上記アルカリ土類金属量の割合が24質量%以上95質量%以下であることを特徴とする触媒付パティキュレートフィルタ。 - 排気ガス中のパティキュレートを捕集するフィルタ本体の排気ガス通路壁に、パティキュレート燃焼用の触媒が設けられている触媒付パティキュレートフィルタの製造方法であって、
活性アルミナ、排気ガス中の酸素を取り込み該酸素を活性な酸素として放出する一種又は二種以上の酸化物よりなる活性酸素放出材、アルカリ土類金属、触媒金属及び上記活性アルミナの粒子よりも微細なバインダを準備する工程と、
上記アルカリ土類金属の全量を上記活性アルミナと上記バインダに分けて担持する工程と、
上記アルカリ土類金属を担持した上記活性アルミナと、上記アルカリ土類金属を担持した上記バインダと、上記活性酸素放出材とを混合したスラリーを形成する工程と、
上記スラリーを上記フィルタ本体にコーティングする工程と、
上記触媒金属を、上記スラリーを形成する前に上記活性アルミナ及び上記活性酸素放出材に担持し、又は上記スラリーを上記フィルタ本体にコーティングした後に当該コーティング層に担持する工程とを備えていることを特徴とする触媒付パティキュレートフィルタの製造方法。
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