以下、電源制御回路の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
最初に、電源制御回路を備えた電源装置の構成について、図面を参照して説明する。図1に示す電源装置PS1は、一例として、DCDCコンバータ1および電源制御回路2を備えている。
DCDCコンバータ1は、電圧変換回路の一例である非絶縁型降圧型コンバータとして構成されている。このDCDCコンバータ1は、一対の入力端子11a,11b(以下、特に区別しないときには「入力端子11」ともいう)、メインスイッチ素子12,13、インダクタ14、出力コンデンサ15および一対の出力端子16a,16b(以下、特に区別しないときには「出力端子16」ともいう)を備えている。
具体的には、一対の入力端子11a,11b間には、基準電位(本例ではグランドG)に接続された入力端子11bを低電位側として、入力電圧(直流電圧)Vinが入力される。メインスイッチ素子12,13は、MOS型FETやバイポーラ型トランジスタなどの半導体スイッチ素子を用いてそれぞれ構成されている。また、メインスイッチ素子12,13の一端は、インダクタ14の一端に接続されている。メインスイッチ素子12の他端は、入力端子11aに接続され、メインスイッチ素子13の他端は、グランドGに接続されている。インダクタ14の他端は、出力コンデンサ15の一端に接続されている。出力コンデンサ15の両端は、一対の出力端子16a,16bにそれぞれ接続されている。
また、メインスイッチ素子12は、後述する駆動パルスSd1によってオン・オフ駆動されて、駆動パルスSd1がHレベルのときにはオン状態に移行し、駆動パルスSd1がLレベルのときにはオフ状態に移行する。一方、メインスイッチ素子13は、駆動パルスSd1とは逆位相の後述の駆動パルスSd2によってオン・オフ駆動されて、駆動パルスSd2がHレベルのとき(つまり、駆動パルスSd1がLレベルのとき)にはオン状態に移行し、駆動パルスSd2がLレベルのとき(つまり、駆動パルスSd1がHレベルのとき)にはオフ状態に移行する。
上述のように、メインスイッチ素子12,13は、駆動パルスSd1,Sd2により、交互にオン(スイッチング動作)するように制御される。つまり、メインスイッチ素子12がオン状態のときにメインスイッチ素子13がオフ状態になり、メインスイッチ素子12がオフ状態のときにメインスイッチ素子13がオン状態になる。インダクタ14を流れるインダクタ電流は、メインスイッチ素子12がオン状態のときに、メインスイッチ素子12を介して流れ、メインスイッチ素子13がオン状態のときに、メインスイッチ素子13を介して流れる。このインダクタ電流は、メインスイッチ素子12がオン状態のときに増加し、メインスイッチ素子13がオン状態のときに減少する。このインダクタ電流により出力コンデンサ15の両端子間に生じる電圧は、出力電圧(直流電圧)Voutとして出力端子16から出力される。
以上の構成により、DCDCコンバータ1は、上記したメインスイッチ素子12,13のスイッチング動作により、入力端子11に入力されている入力電圧(直流電圧)Vinを出力電圧(直流電圧)Voutに降圧すると共に、この出力電圧Voutを、出力端子16bを低電位側として出力端子16から出力する(具体的には、この出力端子16に接続されている不図示の負荷に出力する)。
電源制御回路2は、第1コンデンサ21、第1抵抗22、第2抵抗23、スイッチ素子24、第3抵抗25、第2コンデンサ26、コンパレータ27、パルス生成回路28および駆動信号生成回路29を備え、DCDCコンバータ1のスイッチング動作を制御する。この電源制御回路2では、パルス生成回路28が出力する制御パルスSp1に基づいて駆動信号生成回路29がメインスイッチ素子12,13を駆動する駆動パルスSd1,Sd2を生成する。パルス生成回路28はフリップフロップ回路等を用いて構成された回路である。このパルス生成回路28の出力は、クロックパルスSclkの立ち上がりまたは立ち下がりに同期して(本例では一例として、立ち上がりに同期して)セットされ、コンパレータ27の出力(後述するトリガパルスSp3)の立ち上がりまたは立ち下がりに同期して(本例では一例として、立ち上がりに同期して)セットされる。コンパレータ27には、第1コンデンサ21の充放電によって変化する電圧Vtrの交流成分(電圧Vtr1)が出力電圧Voutに重畳された電圧である比較電圧Vcmpと、指令電圧Vorとが入力される。そして、パルス生成回路28の出力は、比較電圧Vcmpが指令電圧Vorに到達したときに、コンパレータ27が出力するパルスによりリセットされる。以下、この動作を詳細に説明する。
まず、第1コンデンサ21の充放電に基づいて、一定の周期で上昇と降下を繰り返す電圧Vtrを生成するための回路について説明する。第1コンデンサ21の一端は、出力端子16aに接続され、その他端(接続点A)は、第1抵抗22の一端と第2抵抗23の一端に接続されている。第2抵抗23の他端は、第2抵抗23と共に第2直列回路を構成するスイッチ素子24を介して基準電位であるグランドGに接続されている。スイッチ素子24は、パルス生成回路28の反転出力端子(出力端子Qバー)から出力される制御パルスSp2によりオン・オフ駆動される。本例では、一例として、パルス入力端31としての第1抵抗22の他端はパルス生成回路28の非反転出力端子(出力端子Q)に接続されている。なお、第1コンデンサ21の静電容量値はC1に規定され、第1コンデンサ21と共に第1直列回路を構成する第1抵抗22の抵抗値はR1に規定され、第2抵抗23の抵抗値はR2に規定されている。なお、第2抵抗23とスイッチ素子24の接続順序は逆であってもよい。つまり、接続点Aにスイッチ素子24の一端が接続され、スイッチ素子24の他端が第2抵抗23を介してグランドGに接続されてもよい。そのとき、スイッチを駆動できない場合は、駆動回路を挿入することが必要となる。
パルス生成回路28の非反転出力端子(出力端子Q)から出力される制御パルスSp1は、2つの電圧値(第1電圧値および第2電圧値)を持ったパルスである。この電圧値のうちの一方(第1電圧値または第2電圧値)は、基準電位(グランドG)とほぼ等しい電圧値であり、他方(第2電圧値または第1電圧値)はこの基準電位(グランドG)よりも高い電圧値である。以下、基準電位(グランドG)とほぼ等しい電圧値をLレベルと言い、基準電位(グランドG)よりも高い電圧値をHレベルという。パルス生成回路28の反転出力端子(出力端子Qバー)から出力される制御パルスSp2は、非反転出力端子(出力端子Q)から出力される制御パルスSp1の電圧値を反転させたパルスである。つまり、制御パルスSp1がHレベルのときに制御パルスSp2はLレベルになり、制御パルスSp1がLレベルのときに制御パルスSp2はHレベルになる。
この電源制御回路2により制御されるDCDCコンバータ1の出力電圧Voutは、制御パルスSp1がHレベルのときの電圧値(第2電圧値または第1電圧値)よりも低い範囲で設定される。つまり、パルス生成回路28の非反転出力端子から出力される制御パルスSp1がHレベルのとき、出力端子16aの電圧(出力電圧Vout)は、非反転出力端子の電圧(Hレベル)よりも低くなる。そして、スイッチ素子24は、パルス生成回路28の反転出力端子から出力される制御パルスSp2が、Hレベルのときにオンし、Lレベルのときにオフする。
定常状態においては、第1コンデンサ21は、出力端子16a側の端子が高電位になるように充電されている。接続点Aの電圧Vtrは、出力電圧Voutから第1コンデンサ21の充電電圧Vc1を減算した電圧(Vout−Vc1)になるので、充電電圧Vc1が上昇したときに降下し、充電電圧Vc1が降下したときに上昇する。この第1コンデンサ21の充電電圧Vc1は、次のように変化する。制御パルスSp1がHレベルのときは、パルス生成回路28の非反転出力端子から出力端子16aに向かって電流が流れ、充電電圧Vc1は降下する。制御パルスSp1がLレベルのときは、制御パルスSp2がHレベルになり、スイッチ素子24がオンするため、出力端子16aからパルス生成回路28の非反転出力端子に向かって電流が流れると共に、出力端子16aからスイッチ素子24側に向かっても電流が流れることから、充電電圧Vc1は上昇する。
第1コンデンサ21の充電電圧Vc1が降下するとき、つまり、接続点Aの電圧Vtrが上昇するときは、第1抵抗22を流れる電流に基づいて充電電圧Vc1と電圧Vtrは変化する。一方、第1コンデンサ21の充電電圧Vc1が上昇するとき、つまり、接続点Aの電圧Vtrが降下するときは、第1抵抗22および第2抵抗23を流れる各電流に基づいて充電電圧Vc1と電圧Vtrは変化する。また、本例では、第2抵抗23の抵抗値R2は、第1抵抗22の抵抗値R1よりも十分に小さい値(R2≪R1)に設定されている。このように設定することにより、充電電圧Vc1が上昇するとき、つまり、電圧Vtrが降下するときの時定数が、充電電圧Vc1が降下するとき、つまり、電圧Vtrが上昇するときの時定数よりも小さくなるようにしている。
スイッチ素子24は、基本的にはアナログスイッチを採用する。MOS型FETやバイポーラ型トランジスタなどの半導体スイッチ素子を用いることも可能であり、その場合は、半導体スイッチ素子を駆動する駆動回路が必要になる。
次に、コンパレータ27の非反転入力端子に比較電圧Vcmpを入力するための回路(電圧重畳回路)について説明する。コンパレータ27の非反転入力端子には、接続点Aの電圧Vtrの交流成分(電圧Vtr1)を、出力電圧Voutまたは出力電圧Voutを分圧して得られる直流電圧成分に重畳した比較電圧Vcmpが入力される。本例では、電圧Vtrの交流成分(電圧Vtr1)を、出力電圧Voutに重畳した電圧を比較電圧Vcmpとしている。この比較電圧Vcmpをコンパレータ27の非反転入力端子に入力するために、非反転入力端子は、電圧重畳回路を構成する第3抵抗25を介して出力端子16aに接続されると共に、電圧重畳回路を構成する第2コンデンサ26を介して接続点Aに接続されている。このように接続することにより、出力電圧Vout(出力電圧Voutの直流成分)は第3抵抗25を介してコンパレータ27の非反転入力端子に供給され、接続点Aの電圧Vtrの交流成分(電圧Vtr1)は、第2コンデンサ26を介してコンパレータ27の非反転入力端子に供給される。更に、出力電圧Voutに生じる高周波領域での変動成分は、第1コンデンサ21および第2コンデンサ26を介してコンパレータ27の非反転入力端子に供給される。
なお、接続点Aの電圧Vtrの交流成分(電圧Vtr1)を、出力電圧Voutを分圧して得られる直流電圧に重畳したい場合には、例えば、第3抵抗25とコンパレータ27の非反転入力端子との接続点Bを、図示されていない第4抵抗を介してグランドGに接続する。この場合、出力電圧Voutは第3抵抗25と第4抵抗により分圧され、その分圧された電圧がコンパレータ27の非反転入力端子に供給される。このように、出力電圧Voutを分圧したい場合は、出力端子16aとグランドGとの間に複数の抵抗を接続すればよい。この際、出力電圧Voutを分圧するときの比率は固定されていても、調整可能であってもよい。例えば、抵抗値を変化させることができる素子を用いれば、出力電圧Voutの分圧比率が調整可能になる。出力電圧Voutの分圧比率が調整可能な場合、コンパレータ27に入力する後述の指令電圧Vorが一定であっても、分圧比率を変更することで出力電圧Voutを変更することが可能になる。
第2コンデンサ26は、第1コンデンサ21と共に、メインスイッチ素子12,13に対する駆動パルスSd1,Sd2についてのデューティ比を制御するフィードバックループの高速ループを構成している。つまり、この高速ループは、直流出力電圧Voutに発生する高周波領域での変動成分を、第1コンデンサ21と第2コンデンサ26を介してコンパレータ27の非反転入力端子に伝達するため、第3抵抗25を介するループよりも高速に高周波領域での変動成分を伝達することができる(フィードバックすることができる)。
また、第2コンデンサ26と第3抵抗25とで構成される直列回路は、第1コンデンサ21に対して並列に接続されている。この直列回路の合成インピーダンスは、メインスイッチ素子12,13のスイッチング周波数において、第1コンデンサ21のインピーダンスよりも十分に大きな値になるように設定されている。つまり、第1コンデンサ21のインピーダンスがこの直列回路の合成インピーダンスよりも十分に小さな値になるように、第2コンデンサ26の静電容量値、第3抵抗25の抵抗値、および第1コンデンサ21の静電容量値C1が決められる。
次に、コンパレータ27がパルス生成回路28の非反転出力端子の出力をリセットする動作について説明する。コンパレータ27は、出力電圧Voutに電圧Vtrの交流成分(電圧Vtr1)を重畳した電圧である比較電圧Vcmpが指令電圧Vorに達したときに、パルス生成回路28の非反転出力端子の出力をリセットする。コンパレータ27は、ヒステリシス特性を持たないコンパレータで構成されている。コンパレータ27の非反転入力端子には、比較電圧Vcmpが入力され、コンパレータ27の反転入力端子には、指令電圧Vorが入力される。したがって、比較電圧Vcmpが指令電圧Vorに達したときに、コンパレータ27の出力はLレベルからHレベルに移行する。この立ち上がりに同期して、パルス生成回路28の非反転出力端子の出力はリセットされる。パルス生成回路28の非反転出力端子の出力がリセットされると、制御パルスSp1がLレベルなると共に、スイッチ素子24がオンするため、接続点Aの電圧である電圧Vtrが降下する。この電圧Vtrの降下により、比較電圧Vcmpも降下するため、コンパレータ27の出力はHレベルからLレベルに移行する。このようにして、コンパレータ27は、パルス生成回路28の非反転出力端子の出力をリセットするためのトリガパルスSp3を生成する。
次に、パルス生成回路28が制御パルスSp1を生成する動作について説明する。パルス生成回路28には、予め決められた周波数(メインスイッチ素子12,13のスイッチング周波数f0)のクロックパルスSclkとトリガパルスSp3が入力される(クロックパルスSclkはセット入力端子(入力端子S)に入力され、トリガパルスSp3はリセット入力端子(入力端子R)に入力される)。パルス生成回路28の出力(非反転出力端子(出力端子Q)の出力)は、クロックパルスSclkの立ち上がりに同期してセットされる。つまり、パルス生成回路28の非反転出力端子(出力端子Q)から出力される制御パルスSp1は、クロックパルスSclkの立ち上がりに同期してHレベルに移行し、トリガパルスSp3の立ち上がりに同期してLレベルに移行する。また、パルス生成回路28は、この制御パルスSp1を反転したパルスである制御パルスSp2を生成して反転出力端子(出力端子Qバー)から出力する。
なお、制御パルスSp1がHレベルのときの電圧と、出力電圧Voutの関係は、次のように設定する。本例では、一例として、コンパレータ27、パルス生成回路28および駆動信号生成回路29は、入力電圧Vinよりも若干低い補助電源電圧Vccにより動作している。したがって、パルス生成回路28から出力される制御パルスSp1がHレベルのときの電圧は、補助電源電圧Vccにほぼ等しくなる。また、この補助電源電圧Vccは、定常状態において、入力電圧Vinを降圧して生成される出力電圧Voutよりも高い電圧に設定されている。なお、出力電圧Voutを補助電源電圧Vccよりも高い電圧に設定した場合、起動時に出力電圧Voutが上昇していく過程で、接続点Aの電圧Vtrと出力電圧Voutがほぼ等しくなる状態が発生し、第1コンデンサ21の充電電圧Vc1の変化が微小になってしまう。このような問題を回避するために、補助電源電圧Vccは、出力電圧Voutよりも高い電圧に設定される。
また、パルス生成回路28は、本例では、一例として、エッジトリガ機能を有するフリップフロップ(flip-flop)回路またはラッチ(latch)回路、(RS−フリップフロップ(ラッチ)およびJK−フリップフロップ(ラッチ)や、セット端子およびリセット端子を有するD−フリップフロップ(ラッチ)などのセット・リセット機能を有するフリップフロップ回路またはラッチ回路など)を使用して、クロックパルスSclkで出力がセットされ、トリガパルスSp3で出力がリセットされるように構成されている。
この構成により、パルス生成回路28は、クロックパルスSclkの立ち上がりに同期してセット状態に移行して、トリガパルスSp3の立ち上がりに同期してリセット状態に移行する。セット状態に移行したとき、出力端子Qから出力される制御パルスSp1はHレベルに移行し、出力端子Qバーから出力される制御パルスSp2はLレベルに移行する。リセット状態に移行したとき、制御パルスSp1はLレベルに移行し、制御パルスSp2はHレベルに移行する。
次に、駆動信号生成回路29によって生成される駆動パルスSd1,Sd2と、パルス生成回路28によって生成される制御パルスSp1の関係について説明する。駆動信号生成回路29は、制御パルスSp1に基づいて、メインスイッチ素子12,13の駆動に必要な電圧値の駆動パルスSd1,Sd2を生成する。駆動パルスSd1は、制御パルスSp1がHレベルの期間にメインスイッチ素子12をオンさせるためのパルスであり、駆動パルスSd2は、制御パルスSp1がLレベルの期間にメインスイッチ素子13をオンさせるためのパルスである。本例では、メインスイッチ素子12,13は駆動パルスSd1,Sd2がHレベルのときにオンし、Lレベルのときにオフするように設定されている。したがって、駆動パルスSd1は、制御パルスSp1がHレベルの期間にHレベルになり、制御パルスSp1がLレベルの期間にLレベルになる。一方、駆動パルスSd2は、制御パルスSp1がHレベルの期間にLレベルになり、制御パルスSp1がLレベルの期間にHレベルになる。
なお、本例では、一例として、駆動信号生成回路29が制御パルスSp1に基づいて駆動パルスSd1,Sd2を生成する構成を採用しているが、駆動パルスSd2については制御パルスSp2に基づいて生成する構成にしてもよい。また、制御パルスSp2に基づいて、駆動パルスSd1,Sd2を生成する構成を採用することもできる。さらには、メインスイッチ素子12,13が制御パルスSp1,Sp2の電圧値で十分に駆動可能なスイッチ素子であるときには、駆動信号生成回路29を省いて、パルス生成回路28がメインスイッチ素子12,13を直接駆動する構成を採用することもできる。
次いで、電源装置PS1の動作について、図1,3を参照して説明する。
最初に、定常状態での電源制御回路2の基本動作について説明する。なお、クロックパルスSclkは、図3に示すように、予め決められた一定の周期T0(予め決められた一定の周波数f0=1/T0)で入力されているものとする。
まず、期間P1における動作について説明する。この期間は、クロックパルスSclkの立ち上がりからトリガパルスSp3の立ち上がりまでの期間に対応する。パルス生成回路28は、クロックパルスSclkの立ち上がりに同期してセットされる。したがって、制御パルスSp1はHレベルに移行し、制御パルスSp2はLレベルに移行する。このとき、駆動信号生成回路29は、制御パルスSp1に基づいて、駆動パルスSd1をHレベルに移行させ、駆動パルスSd2をLレベルに移行させる。なお、DCDCコンバータ1においては、メインスイッチ素子12はオン状態になり、メインスイッチ素子13はオフ状態になるため、インダクタ14の入力側の端子に印加される電圧Vpは入力電圧Vinとほぼ等しくなり、インダクタ14から出力側に流れる電流は増加していく。
また、電源制御回路2では、制御パルスSp1がHレベルになり、制御パルスSp2がLレベルになるため、Hレベルの制御パルスSp1がパルス入力端31としての第1抵抗22の他端に印加され、スイッチ素子24がオフ状態に移行する。そして、パルス入力端31にHレベルの制御パルスSp1が印加されることにより、第1抵抗22を介して第1コンデンサ21に流れ込む電流が流れ、第1コンデンサ21の充電電圧Vc1が降下していく。この充電電圧Vc1の降下により、接続点Aの電圧である電圧Vtrは上昇していく。このとき、電圧Vtrは、第1抵抗22の抵抗値R1と第1コンデンサ21の静電容量値C1とで決まる傾き、つまり、時定数(R1×C1)によって決まる傾きで上昇する。なお、この時定数はクロックパルスSclkの周期T0よりも十分に大きくなるように設定されているため、電圧Vtrは期間P1においてほぼ直線的に上昇する。この電圧Vtrの傾きは、近似的に、以下の式で表される。
(Vcc−Vout)/(R1×C1)
なお、期間P1の開始時に、第1コンデンサ21の充電電圧Vc1は、出力電圧Voutに近い電圧値(出力電圧Voutよりも少し低い電圧値)になっている。したがって、期間P1の開始時の電圧Vtrの電圧である下限電圧Vmin(=Vout−Vc1)は、基準電位(グランドG)に近い電圧値(基準電位(グランドG)よりも少し高い電圧値)になっている。そして、期間P1においては、接続点Aから出力端子16aに向かって電流が流れ、第1コンデンサ21の充電電圧Vc1は、ほぼ直線的に降下する。その結果、電圧Vtrは、この下限電圧Vminからほぼ直線的に上昇する。
コンパレータ27は、出力電圧Voutに電圧Vtrの交流成分である電圧Vtr1を重畳した比較電圧Vcmp(Vout+Vtr1)と指令電圧Vorとを比較し、比較電圧Vcmpが指令電圧Vorに達したとき出力電圧をLレベルからHレベルに移行させる。つまり、コンパレータ27から出力されるトリガパルスSp3は、比較電圧Vcmpが指令電圧Vorに達したときにLレベルからHレベルに移行する。なお、期間P1は、トリガパルスSp3がLレベルからHレベルに移行するときに終了する。
次に、期間P2における動作について説明する。この期間は、トリガパルスSp3の立ち上がりからクロックパルスSclkの立ち上がりまでの期間に対応する。トリガパルスSp3の立ち上がりに同期して、パルス生成回路28がリセットされるため、パルスSp1はLレベルに移行し、制御パルスSp2はHレベルに移行する。このとき、駆動信号生成回路29は、制御パルスSp1に基づいて、駆動パルスSd1をLレベルに移行させ、駆動パルスSd2をHレベルに移行させる。なお、DCDCコンバータ1においては、メインスイッチ素子12はオフ状態になり、メインスイッチ素子13はオン状態になるため、インダクタ14の入力側の端子に印加される電圧Vpは基準電位(グランドG)とほぼ等しくなり、インダクタ14から出力側に流れる電流は減少していく。
また、電源制御回路2では、制御パルスSp1がLレベルになり、制御パルスSp2がHレベルになるため、Lレベルの制御パルスSp1がパルス入力端31としての第1抵抗22の他端に印加され、スイッチ素子24がオン状態に移行する。このため、第1コンデンサ21の接続点A側の端子は、互いに並列接続された第1抵抗22および第2抵抗23を介してグランドGに接続された状態になり、第1抵抗22および第2抵抗23を介して第1コンデンサ21からグランドGに向かう電流が流れ、第1コンデンサ21の充電電圧Vc1が上昇していく。
つまり、期間P2においては、第1コンデンサ21は、直流出力電圧Voutによって、出力端子16a側から充電される。この第1コンデンサ21の充電は、クロックパルスSclkがLレベルからHレベルに移行するときまで続けられる(つまり、この第1コンデンサ21の充電は、クロックパルスSclkの立ち上がりに同期して終了する)。この際、第1コンデンサ21の充電電圧Vc1は出力電圧Voutに近い電圧値(出力電圧Voutよりも少し低い電圧値)まで上昇していく。このため、電圧Vtr(=Vout−Vc1)は、図3に示すように、ゼロボルト軸を漸近線とする指数関数で表される曲線で降下していく。この曲線の形状は、第1抵抗22および第2抵抗23の並列合成抵抗値(R1//R2)と第1コンデンサ21の静電容量値C1とで決まる。つまり、この曲線の形状は、時定数((R1//R2)×C1)によって決まる。この時定数((R1//R2)×C1)は、第1抵抗22だけのときの時定数(R1×C1)と比較して小さいため、電圧Vtrは、第1抵抗22だけが第1コンデンサ21に接続される構成(第2抵抗23およびスイッチ素子24の直列回路を有しない構成)と比較して、早く降下する。なお、この期間P2での電圧Vtrの波形は、以下の式で表される。
Vmax×e−t/((R1//R2)×C1)
このようにして、この電源制御回路2では、メインスイッチ素子12,13に対するスイッチングの各周期T0内において、制御パルスSp1がHレベルのときには、第1抵抗22が第1コンデンサ21を放電させ(第1コンデンサ21の充電電圧Vc1を降下させ)、制御パルスSp1がLレベルのときには、第1抵抗22および第2抵抗23が第1コンデンサ21を充電させる(第1コンデンサ21の充電電圧Vc1を上昇させる)ことにより、接続点Aに上昇と降下を繰り返す電圧Vtrを発生させる。この電源制御回路2の動作では、第1コンデンサ21の放電時における電圧Vtrの波形についての時定数(R1×C1)に対して、第1コンデンサ21の充電時における電圧Vtrの波形についての時定数((R1//R2)×C1)が小さくなるように、充電時と放電時において、時定数がダイナミックに切り替えられる。このため、DCDCコンバータ1のフィードバックループ(負帰還回路)における位相余裕が十分に確保されている。
本例では、第1コンデンサ21の充電電圧Vc1が出力電圧Voutと同電圧になる前に、つまり、三角波状の電圧Vtrが基準電位(グランドG)に達する前に、パルス生成回路28はクロックパルスSclkによりセットされる。また、比較電圧Vcmp(Vout+Vtr1)が指令電圧Vorに達したときに立ち上がるトリガパルスSp3によりリセットされる。なお、比較電圧Vcmp(Vout+Vtr1)が指令電圧Vorに達したときにトリガパルスSp3はLレベルからHレベルに移行するが、トリガパルスSp3の立ち上がりに同期して電圧Vtrが降下を開始するため、トリガパルスSp3はLレベルからHレベルに移行した直後にHレベルからLレベルに移行する。
期間P3以降の動作については、期間P1または期間P2と同様の動作が繰り返される。つまり、期間P3および期間P5は期間P1と同様の動作になり、期間P4および期間P6は期間P2と同様の動作になる。
この電源制御回路2では、定常状態における出力電圧Voutは指令電圧Vorとほぼ等しくなる。ただし、実際には、出力電圧Voutは指令電圧Vorより多少低い電圧になる。厳密に言えば、出力電圧Voutは第1コンデンサ21の充電電圧Vc1の振幅に関係する。すなわち、最初にクロックパルスSclkの立ち上がりに同期してパルス生成回路28の非反転出力端子(出力端子Q)から出力される制御パルスSp1はHレベルに移行し、反転出力端子(出力端子Qバー)から出力される制御パルスSp2はLレベルに移行する。したがって、第1抵抗22が第1コンデンサ21を放電させ、接続点Aの電圧が上昇し、比較電圧Vcmp(Vout+Vtr1)も上昇する。その比較電圧Vcmpが指令電圧Vorに達したときには、パルス生成回路28の制御パルスSp1はLレベルに移行し、制御パルスSp2はHレベルに移行する。したがって、第1抵抗22と第2抵抗23の並列抵抗で第1コンデンサ21を充電させ、接続点Aの電圧が降下し、比較電圧Vcmp(Vout+Vtr1)も降下する。その充電時間は次のクロックパルスSclkの立ち上がり信号が来るまで続く。クロックパルスの1周期分T0において第1コンデンサ21に対する充電量および放電量が等しくなるように、第1コンデンサ21の充電電圧Vc1の振幅が自動的に調整され、これに伴い、電圧Vtrの交流成分(電圧Vtr1)の振幅も自動的に調整される。また、比較電圧Vcmpの平均値は、出力電圧Voutに一致した状態に維持される。このように出力電圧Voutは、指令電圧Vorに追従して、指令電圧Vorよりも多少低い電圧(指令電圧Vorよりも充電電圧Vc1の振幅(電圧Vtr1の振幅)の1/2の電圧だけ低い電圧)に安定して制御される。
次いで、直流出力電圧Voutや指令電圧Vorが変化したときの電源制御回路2の動作について説明する。
DCDCコンバータ1に対する上記のPWM制御を実行している状態において、例えば、負荷の急変などに起因して直流出力電圧Voutにオーバーシュートが発生し、この発生が期間P1における動作のようにメインスイッチ素子12がオン状態に維持されている期間中のときには、比較電圧Vcmpが指令電圧Vorに到達する時間が早まる。このため、電源制御回路2では、パルス生成回路28から出力されている制御パルスSp1がHレベルに維持されている期間が短縮され、メインスイッチ素子12がオン状態に維持されている期間も短縮される。したがって、DCDCコンバータ1において、入力端子11側からインダクタ14側に供給されるエネルギーが減少し、出力電圧Voutが降下する。このような動作により、出力電圧Voutのオーバーシュートに対する応答の遅延時間が短縮される。
また、このオーバーシュートの発生が期間P2における動作のようにメインスイッチ素子12がオフ状態に維持されている期間中のときには、この期間が終了するときの電圧Vtr(下限電圧Vmin)が、オーバーシュートが発生しなかった場合よりも高くなる。したがって、この期間が終了し、次の期間(この期間が期間P2であれば、期間P3)において比較電圧Vcmpが上昇を開始するときの電圧が高くなり、その結果、比較電圧Vcmpが指令電圧Vorに到達する時間が早くなる。このため、パルス生成回路28から出力される制御パルスSp1がHレベルに維持されている期間が短縮され、メインスイッチ素子12がオン状態に維持されている期間も短縮される。したがって、入力端子11側からインダクタ14側に供給されるエネルギーが減少し、出力電圧Voutが降下する。このような動作により、出力電圧Voutのオーバーシュートに対する応答の遅延時間が短縮される。
また、詳細な説明については省略するが、直流出力電圧Voutにアンダーシュートが発生した場合の電源制御回路2の動作は、オーバーシュートの発生時の動作と逆の動作になる。つまり、パルス生成回路28から出力される制御パルスSp1がHレベルに維持されている期間が長くなり、メインスイッチ素子12がオン状態に維持されている期間も長くなる。したがって、入力端子11側からインダクタ14側に供給されるエネルギーが増加し、出力電圧Voutが上昇する。この動作により、オーバーシュートの発生時と同様に、直流出力電圧Voutのアンダーシュートに対する応答の遅延時間も短縮される。
また、電源制御回路2では、指令電圧Vorがより低い電圧に変更され、この変更が期間P1における動作のようにメインスイッチ素子12がオン状態に維持されている期間中に行われた場合、比較電圧Vcmpが指令電圧Vorに到達する時間が早まる。このため、電源制御回路2では、パルス生成回路28から出力されている制御パルスSp1がHレベルに維持されている期間が短縮され、メインスイッチ素子12がオン状態に維持されている期間も短縮される。したがって、DCDCコンバータ1において入力端子11側からインダクタ14側に供給されるエネルギーが減少し、出力電圧Voutが降下する。このような動作により、出力電圧Voutは、短い遅延時間で指令電圧Vorの変化に追従して、降下する。
また、指令電圧Vorのこの変更が、期間P2における動作のようにメインスイッチ素子12がオフ状態に維持されている期間中に行われた場合、この期間の後にメインスイッチ素子12がオン状態に維持されている期間(この期間が期間P2であれば、期間P3)において、比較電圧Vcmpが指令電圧Vorに到達する時間が早まる。このため、パルス生成回路28から出力される制御パルスSp1がHレベルに維持されている期間が短縮され、メインスイッチ素子12がオン状態に維持されている期間も短縮される。このような動作により、出力電圧Voutは、短い遅延時間で指令電圧Vorに追従して、降下する。
また、詳細な説明については省略するが、指令電圧Vorがより高い電圧に変更された場合の電源制御回路2の動作は、指令電圧Vorがより低い電圧に変更されたときの動作と逆の動作になる。つまり、パルス生成回路28から出力される制御パルスSp1がHレベルに維持されている期間が長くなり、メインスイッチ素子12がオン状態に維持されている期間も長くなる。したがって、入力端子11側からインダクタ14側に供給されるエネルギーが増加し、出力電圧Voutが上昇する。このような動作により、出力電圧Voutは、短い遅延時間で指令電圧Vorに追従して、上昇する。
このように、この電源制御回路2によれば、コンパレータ27としてヒステリシス特性を持たないコンパレータを使用すると共に、このコンパレータ27に積分回路を介在させることなく指令電圧Vorを直接入力する構成を採用したことにより、指令電圧Vorに対する応答性を向上させることができる。
また、この電源制御回路2によれば、メインスイッチ素子12,13に対するスイッチングの各周期T0内において、第1コンデンサ21に対する放電時における時定数(R1×C1)に対して、第1コンデンサ21に対する充電時における時定数((R1//R2)×C1)が小さくなるように、時定数をダイナミックに切り替えることにより、ヒステリシス特性を持たないコンパレータをコンパレータ27として使用しつつ、DCDCコンバータ1のフィードバックループ(負帰還回路)を構成する電源制御回路2におけるスイッチング周波数f0での位相余裕を十分に確保することができる。
なお、電源制御回路2において、パルス入力端31としての第1抵抗22の他端に印加されるパルスは、クロックパルスSclkの立ち上がりに同期して、LレベルからHレベルに移行し、トリガパルスSp3に同期して、HレベルからLレベルに移行するパルスであれば、制御パルスSp1以外のパルスであってもよい。つまり、この電源制御回路2では、制御パルスSp1がHレベルのときにHレベルになり、制御パルスSp1がLレベルのときにLレベルになるパルスを、制御パルスSp1の代わりに用いてもよい。なお、この制御パルスSp1の代わりに用いるパルスがHレベルのときの電圧値は、定常状態での出力電圧Voutよりも高い電圧値であれば、制御パルスSp1がHレベルのときの電圧値と異なる電圧値であってもよい。
また、セット入力端子に入力されるパルスの立ち下がりに同期してセットされるようにパルス生成回路28が構成されている場合は、クロックパルスSclkを反転したパルスをパルス生成回路28のセット入力端子に入力するようにすればよい。また、リセット入力端子に入力されるパルスの立ち下がりに同期してリセットされるようにパルス生成回路28が構成されている場合は、コンパレータ27の非反転入力端子に指令電圧Vorが入力され、反転入力端子に比較電圧Vcmpが入力されるようにすればよい。
図2は、メインスイッチ素子12とインダクタ14の接続点に生じる電圧Vpを制御パルスSp1の代わりに用いた電源制御回路2Aを示している。電圧Vpは、DCDCコンバータ1のスイッチング動作によって生じる電圧であって、メインスイッチ素子12がオン状態のときに、入力電圧Vinとほぼ等しくなり、メインスイッチ素子13がオン状態のときに、基準電位(グランドG)と等しくなるパルス電圧である(以下、パルス電圧Vpともいう)。また、メインスイッチ素子12は、制御パルスSp1がHレベルのときにオンし、メインスイッチ素子13は、制御パルスSp1がLレベルのときにオンする。したがって、パルス電圧Vpは、制御パルスSp1と同じタイミングでHレベルとLレベルとの間で交互に切り替る。このように、パルス電圧Vpは制御パルスSp1と同じタイミングでレベルが変化するので、パルス電圧Vpを制御パルスSp1の代わりに用いて、パルス入力端31としての第1抵抗22の他端に入力するようにした電源制御回路2Aは、図1の電源制御回路2と同様に動作する。
なお、電源制御回路2Aでは、パルス電圧VpがHレベルのときの電圧が入力電圧Vinに基づいて変化するため、入力電圧の変動に対する応答性が向上する。例えば、入力電圧Vinが低下したときには、電圧Vtrが上昇していくときの傾きが小さくなるため、メインスイッチ素子12がオン状態に維持されている期間が長くなる。一方、入力電圧Vinが上昇したときには、電圧Vtrが上昇していくときの傾きが大きくなるため、メインスイッチ素子12がオン状態に維持されている期間が短くなる。
また、降圧型コンバーターを例に挙げて説明したが、昇圧型コンバータに対してPWM制御を行う電源制御回路としても使用することができる。