本発明の第1実施例による半導体装置及びその製造方法について説明する。図1A〜図1Uは、第1実施例による半導体装置の製造方法の主要工程を示す概略断面図である。
図1Aを参照する。半導体基板10に、例えばシャロー・トレンチ・アイソレーション(STI)により、素子領域を画定する素子分離領域12を形成する。半導体基板10としては、例えばn型またはp型のシリコン基板を用いる。なお、素子分離領域12の形成方法はSTIに限定されるものではない。例えばシリコン局所酸化(LOCOS)により素子分離領域12を形成してもよい。
次に、イオン注入により、ドーパント不純物を導入することにより、ウェル14を形成する。ドーパント不純物としては、例えばp型のドーパント不純物を用いる。p型のドーパント不純物としては、例えばボロン(B)を用いる。ドーパント不純物としてp型のドーパント不純物を用いた場合には、p型のウェル14が形成される。
次に、例えば熱酸化により、素子領域上にゲート絶縁膜16を形成する。次に、例えば化学気相堆積(CVD)により、ポリシリコン膜18を形成する。ポリシリコン膜18は、ゲート電極(ワード線)となるものである。
なお、ここでは、ゲート電極となる膜としてポリシリコン膜18を形成する場合を例に説明したが、ゲート電極となる膜は、ポリシリコン膜に限定されるものではない。例えば、ゲート電極となる膜として、アモルファスシリコン膜とタングステンシリサイド膜との積層膜等を形成してもよい。
次に、フォトリソグラフィ及びエッチングにより、ポリシリコン膜18をパターニングして、ゲート電極(ワード線)18を形成する。次に、ゲート電極18をマスクとし、例えばイオン注入により、ゲート電極18の両側の半導体基板10内にドーパント不純物を導入する。ドーパント不純物としては、例えばn型のドーパント不純物を用いる。n型のドーパント不純物としては、例えばリン(P)を用いる。これにより、エクステンションソース/ドレインの浅い領域を形成するエクステンション領域が形成される。
次に、全面に、例えばCVDにより、絶縁膜を形成する。絶縁膜としては、例えばシリコン酸化膜を形成する。次に、この絶縁膜を異方性エッチングする。こうして、ゲート電極18の側壁部分に、絶縁膜によりサイドウォール絶縁膜20が形成される。
次に、サイドウォール絶縁膜20が形成されたゲート電極18をマスクとし、例えばイオン注入により、ゲート電極18の両側の半導体基板10内にドーパント不純物を導入する。ドーパント不純物としては、例えばn型のドーパント不純物を用いる。n型のドーパント不純物としては、例えば砒素(As)を用いる。これにより、エクステンションソース/ドレインの深い領域を形成する不純物拡散層が形成される。エクステンション領域と深い不純物拡散層とによりソース/ドレイン拡散層22が形成される。
次に、全面に、例えばスパッタリングにより、高融点金属膜を形成する。高融点金属膜としては、例えばコバルト膜を形成する。次に、熱処理を行うことにより、半導体基板10の表層部と高融点金属膜とを反応させるとともに、ゲート電極18の上部と高融点金属膜とを反応させる。次に、例えばウエットエッチングにより、未反応の高融点金属膜を除去する。
こうして、ソース/ドレイン拡散層22上に、例えばコバルトシリサイドのシリサイド層24bが形成される。また、ゲート電極18の上部に、例えばコバルトシリサイドのシリサイド層24aが形成される。このようにして、ゲート電極18とソース/ドレイン拡散層22とを有するトランジスタ26が形成される。
図1Bを参照する。全面に、例えばプラズマCVDにより、絶縁膜(酸化防止膜)28を形成する。絶縁膜28としては、例えばシリコン窒化酸化膜を形成する。次に、絶縁膜28上に、層間絶縁膜30を形成する。層間絶縁膜30の膜厚は、例えば1μmとする。次に、例えば化学機械研磨(CMP)により、層間絶縁膜30の表面を平坦化する。
図1Cを参照する。フォトリソグラフィ及びエッチングにより、ソース/ドレイン拡散層22上のシリサイド層24bに達するコンタクトホール32を形成する。
図1Dを参照する。コンタクトホール32の内面を覆って層間絶縁膜30上に、例えばスパッタリングにより、Ti膜を形成する。このTi膜上に、例えばスパッタリングにより、TiN膜を形成する。こうして、Ti膜とTiN膜とにより密着膜34が形成される。
密着膜34上に、例えばCVDにより、導電膜36を形成する。導電膜36として、例えばタングステン膜を形成する。次に、例えばCMPにより、層間絶縁膜30の表面が露出するまで導電膜36及び密着膜34を研磨する。こうして、コンタクトホール32内に、例えばタングステンの導体プラグ36が埋め込まれる。
図1Eを参照する。導体プラグ36を覆って層間絶縁膜30上に、例えばプラズマCVDにより、シリコン窒化酸化膜38を形成する。シリコン窒化酸化膜38上に、例えば、テトラエトキシシラン(TEOS)を原料としたプラズマCVD(プラズマTEOSCVD)により、シリコン酸化膜40を形成する。
シリコン窒化酸化膜38とシリコン酸化膜40とにより層間絶縁膜42が形成される。層間絶縁膜42は、層間絶縁膜30に導体プラグ36を埋め込んだ後に、導体プラグ36の上面が酸化されるのを防止するためのものである。なお、ここでは、層間絶縁膜42として、シリコン窒化酸化膜38とシリコン酸化膜40との積層膜を形成する場合を例に説明したが、かかる層間絶縁膜42はシリコン窒化酸化膜38とシリコン酸化膜40との積層膜に限定されるものではない。例えば、酸化防止膜42として、シリコン窒化膜や酸化アルミニウム膜を形成してもよい。次に、例えば窒素雰囲気中にて、熱処理を行う。かかる熱処理は、層間絶縁膜42中に含まれているガスを層間絶縁膜42中から放出するためのものである(脱ガス)。
次に、層間絶縁膜42上に、例えばスパッタリングにより密着膜43を形成する。密着膜43は、後述するキャパシタ下部電極48の下地に対する密着性を確保するためのものである。密着膜43としては、例えば酸化アルミニウム膜を形成する。
図1Fを参照する。密着層43上に、例えばスパッタリングにより、貴金属膜(導電膜)44を形成する。導電膜44は、キャパシタ下部電極48の一部となるものである(図1Nも参照)。導電膜44としては、例えばプラチナ膜を形成する。次に、導電膜44の結晶性をより向上させるために、ラピッド・サーマル・アニール(RTA)により、不活性ガス雰囲気中(例えば、Arガスの雰囲気中)にて熱処理を行う。
導電膜44上に、例えば、スパッタリングにより、非晶質(アモルファス)の貴金属酸化物膜45を形成する。貴金属酸化物膜45に含まれる貴金属と導電膜44に含まれる貴金属とは、同じ元素とすることが好ましい。貴金属酸化物膜45は、後工程において還元され、例えば貴金属膜46となるものである。貴金属酸化物膜45が還元されることにより形成される貴金属膜46は、キャパシタ下部電極48の一部となる。非晶質の貴金属酸化物膜45としては、例えば酸化プラチナ膜(PtOx膜)を形成する。
図1Gを参照する。貴金属酸化物膜45上に、強誘電体膜50を形成する。強誘電体膜50は、例えばチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)で形成される。なお、必要に応じて、Ca、Sr、Laのいずれか1つ以上の元素を添加したPZTを用いることもできる。
本実施例では、強誘電体膜50をPZTで形成する。必要に応じて、La等の添加されたPZTを用いることができる。強誘電体膜50の成膜方法として、例えばスパッタリングを用いる。より具体的には、例えば、PZTのターゲットを用いた高周波スパッタリングにより、強誘電体膜50を形成する。強誘電体膜50の膜厚は、例えば70nmである。
強誘電体膜50の成膜温度は、例えば30℃以上、100℃以下とすることが好ましい。ここでは、強誘電体膜50の成膜温度を、例えば50℃とする。スパッタリングにより強誘電体膜50を成膜した段階においては、強誘電体膜50は結晶化しておらず、アモルファスとなっている。
強誘電体膜50の成膜温度を30℃より低く設定した場合には、ウェハ面内において膜厚が不均一となってしまう場合がある。また、強誘電体膜50の成膜温度を30℃より低く設定した場合には、(100)配向のばらつきが大きくなり、結晶性が不均一になってしまう場合がある。
一方、強誘電体膜50の成膜温度を100℃より高く設定した場合には、強誘電体膜50において、(101)配向及び(100)配向が多くなり、(111)配向が少なくなるため、良好な電気的特性のキャパシタを得ることが困難となる場合がある。
次に、例えばRTAにより、酸素を含む雰囲気中にて、強誘電体膜50を結晶化する。より具体的には、不活性ガスと酸素ガスとを含む混合ガスの雰囲気中にて、強誘電体膜50を熱処理する。不活性ガスとしては、例えばアルゴンガスを用いる。
熱処理条件は以下の通りとする。熱処理温度を、例えば600℃とする。熱処理時間は、例えば90秒とする。ウェハ面内における強誘電体膜50の結晶性を均一化すべく、熱処理を行う際におけるアルゴンガスの流量は、1500sccm以上とすることが好ましい。
図1Hを参照する。非晶質の貴金属酸化物膜45上に強誘電体膜50を形成し、かかる強誘電体膜50を熱処理により結晶化するため、貴金属膜44の結晶性が十分に均一でない場合であっても、均一な結晶性を有する強誘電体膜50が得られる。また、この熱処理により非晶質の貴金属酸化物膜45が還元され、貴金属膜46となる。
また、この熱処理の際には、貴金属酸化物膜45中から酸素が放出される。貴金属酸化物膜45から放出された酸素は、強誘電体膜50における酸素欠損を補償する。このため、結晶性の良好な強誘電体膜50が得られる。貴金属酸化物膜45を形成する段階で酸化プラチナ膜を形成した場合には、プラチナ膜である貴金属膜(導電膜)46が形成される。
アモルファスのPZT膜50を結晶化させる熱処理に伴い、プラチナ膜46とPZT膜50との界面の平坦化が図られる。プラチナ膜46は、立方晶構造で(111)配向している。プラチナ膜46上のPZT膜50は、ペロブスカイト構造で(111)配向している。
なお、ここでは、導電膜44として、プラチナ膜を形成する場合を例に説明したが、導電膜44はプラチナ膜に限定されるものではない。導電膜44として、イリジウム膜、ルテニウム膜、酸化ルテニウム(RuO2)膜、SrRuO3膜等を形成してもよい。また、これらの積層膜により導電膜44を形成してもよい。
なお、非晶質の貴金属酸化物膜45として、例えば酸化イリジウム膜を形成してもよい。この場合、酸化イリジウムの貴金属酸化物膜45は、後工程において還元され、イリジウム膜となる。
また、金属酸化物膜45として、SrRuO3膜やLaSrCoO3膜等を形成してもよい。金属酸化物膜45として、SrRuO3膜やLaSrCoO3膜を形成した場合には、SrRuO3やLaSrCoO3の金属酸化物膜45は後工程における熱処理において還元されない。
非晶質の貴金属酸化物膜45として酸化プラチナ膜を形成する場合を例に説明したが、非晶質の貴金属酸化物膜45は酸化プラチナ膜に限定されるものではない。例えば、非晶質の貴金属酸化物膜45として、非晶質の酸化イリジウム(IrOx)膜、非晶質の酸化ルテニウム(RuOx)膜、非晶質の酸化パラジウム(PdOx)膜、非晶質のSrRuO3膜、非晶質のLaSrCoO3膜等を形成してもよい。
また、ここでは、スパッタリングにより貴金属酸化物膜45を形成する場合を例に説明したが、貴金属酸化物膜45の成膜方法は、スパッタリングに限定されるものではない。例えば、貴金属膜44を形成した後、熱処理を行い、この後、大気中に例えば6時間以上放置することにより、貴金属膜44の表面を自然酸化させ、これにより貴金属膜44の表面に貴金属酸化物膜45を形成してもよい。
なお、強誘電体膜50をスパッタリングにより形成する場合を例に説明したが、強誘電体膜50の成膜方法はスパッタリングに限定されるものではない。例えば、MOCVD、ゾル・ゲル法、有機金属分解(Metal‐Organic Decomposition:MOD)、化学溶液堆積(Chemical Solution Deposition:CSD)、CVD、エピタキシャル成長により、強誘電体膜50を形成してもよい。
なお、強誘電体膜50をMOCVDにより成膜した場合には、強誘電体膜50を成膜した段階で強誘電体膜50が結晶化されているため、強誘電体膜50を結晶化するための熱処理は不要である。
しかし、強誘電体膜50をMOCVDにより成膜した場合には、強誘電体膜50の表面に炭素や有機物が存在する場合がある。従って、このような炭素や有機物等を強誘電体膜50の表面から十分に除去ための熱処理を行うことが好ましい。熱処理温度は、スパッタリング法により強誘電体膜50を形成した場合の熱処理温度と同様に、例えば、550℃〜650℃とする。熱処理を行う際の雰囲気は、スパッタリングにより強誘電体膜50を形成した場合の熱処理の雰囲気と同様に、酸素を含む雰囲気とする。より具体的には、酸素とアルゴンガスとの混合ガスの雰囲気とする。
図1Iを参照する。強誘電体膜50上に、例えば、スパッタリング、より具体的には高周波スパッタリングにより、強誘電体膜52を形成して、強誘電体膜50及び52の積層構造のキャパシタ誘電体膜54を形成する。
強誘電体膜52は、例えば強誘電体膜50と同一の材料、例えばPZTで形成される。必要に応じて、La等の添加されたPZTを用いることができる。なお、強誘電体膜52の組成は、強誘電体膜50と同一のものに限定されず、強誘電体膜50の結晶性を引き継いで結晶化できるようなものであればよい。例えば、PZTを用いた強誘電体膜50に対して、Ca、Sr、Laの添加量を変えたPZTにより強誘電体膜52を形成することができる。
キャパシタの電気的特性を良好にし、低電圧動作を容易にする観点から、キャパシタ誘電体膜54において、強誘電体膜50の膜厚は、例えば30nm〜150nm程度、より好ましくは、例えば50nm〜120nm程度とし、また、強誘電体膜52の膜厚は、例えば5nm〜20nm程度とする。
強誘電体膜52の形成方法としてスパッタリングを例示しているが、強誘電体膜52の形成方法はスパッタリングに限定されない。例えば、MOCVD、ゾル・ゲル法、有機金属分解(MOD)、化学溶液堆積(CSD)、CVD、エピタキシャル成長等を用いることもできる。
図1Jを参照する。強誘電体膜52上に、導電膜56、57、及び58の積層構造を有するキャパシタ上部電極60が形成される(図1Kも参照)。まず、強誘電体膜52上に、例えば酸化イリジウム(IrOx)により、上部電極第1層となる導電膜56を形成する。
導電膜56の膜厚は、後工程の熱処理において、導電膜56を介して強誘電体膜52に酸素が十分に供給されるように、比較的薄く設定することが好ましい。具体的には、導電膜56の膜厚を、10nm〜70nm程度とすることが好ましい。より好ましくは、導電膜56の膜厚を、20nm〜50nm程度とする。ここでは、導電膜56の膜厚を例えば25nm程度とする。
導電膜56は、例えば、イリジウムのターゲットを用いた反応性スパッタリングで、イリジウムを酸化して形成される。例えば以下のような成膜条件で、導電膜56が形成される。基板温度は、例えば150℃〜350℃、より好ましくは200℃〜350℃とする。ここでは、基板温度を300℃とする。
成膜室内に導入するガスは、例えばアルゴンガスと酸素ガスとの混合ガスとする。アルゴンガスの流量は、例えば140sccm程度とする。酸素ガスの流量は、60sccm程度とする。Ar流量に対してO2流量の割合が小さいことが好ましい。
導電膜56の成膜温度は、150℃以上350℃以下が好ましい。150℃〜350℃の比較的高温で導電膜56を形成することにより、結晶粒子の均一性が高く、成膜した時点で結晶化されている導電膜56を形成することができる。
150℃より低温で成膜すると、アモルファスまたはアモルファスと結晶とが混在している導電膜56となりやすい。その後の熱処理により導電膜56が再結晶化することにより、結晶粒子が不均一となり、キャパシタ誘電体膜54との相互拡散が生じやすく、キャパシタ誘電体膜54と導電膜56との界面に常誘電体層が生じやすい。一方、350℃より高温で成膜すると、導電膜56の異常成長が生じやすくなり、キャパシタ誘電体膜54と導電膜56との界面において欠陥が生じ、良好な電気的特性のキャパシタを得るのが困難となる。
導電膜(IrOx膜)56における酸素組成比xは、例えば1.3<x<1.98と、比較的小さくすることが好ましい(化学量論的組成はx=2)。酸素組成xを小さくすることにより、導電膜56とキャパシタ誘電体膜54との界面を平坦化しやすくなる。
次に、例えばRTAにより、酸素を含む雰囲気中で熱処理を行う。熱処理条件は、例えば以下の通りとする。基板温度を、例えば725℃程度とする。熱処理時間は、例えば120秒とする。チャンバ内の雰囲気は、例えば不活性ガスと酸素ガスとの混合ガスの雰囲気とする。不活性ガスとしては、例えばアルゴンガスを用いる。
この熱処理により、成膜時にアモルファス状態であった強誘電体膜52が、強誘電体膜50の結晶性を引き継いで結晶化される。それと同時に、キャパシタ誘電体膜54と導電膜56との界面が平坦化される。また、キャパシタ誘電体膜54と導電膜56との密着性が向上する。成膜時点で結晶化された導電膜56が形成されていることにより、キャパシタ誘電体膜54と導電膜56との相互拡散を抑制して、界面の常誘電体層を薄くすることができる。
なお、熱処理温度が低すぎる場合には、キャパシタ誘電体膜54と導電膜56との界面の状態及び拡散状態がウェハ面内において不均一となり、キャパシタ62のリーク電流のばらつきが大きくなり、キャパシタ62の反転電荷量のばらつきも大きくなる。このため、熱処理を行う際における基板温度は、例えば700℃〜750℃程度とすることが好ましい。
次に、上部電極第1層である導電膜56上に、上部電極第2層として、ABOx型酸化物(AとBは金属元素、Oは酸素元素、x>0)膜57を形成する。
ABOx型酸化物膜57として、ペロブスカイト構造あるいはビスマス層状構造のABOx型酸化物強誘電体膜を形成することができる。例えば、ペロブスカイト構造の、Pb(Zr,Ti)O3、PbTiO3、Pb1−xLaxTiO3、Pb1−xLax(Zr,Ti)O3や、ビスマス層状構造の、(Bi1−xRx)Ti3O12(Rは希土類元素、0<x<1)、SrBi2Ta2O9(SBT)、SrBi4Ti4O15、等を用いることができる。このような強誘電体のABOx型酸化物膜57は、成膜時は絶縁性であるが、後の工程でIr等を添加することにより、導電性に変えることができる。
本実施例では、ABOx型酸化物膜57として、例えば、PZT膜をスパッタリングで形成する。より具体的には、例えば、PZTのターゲットを用いた高周波スパッタリングにより、ABOx型酸化物膜57を、アモルファス状態で形成する。ABOx型酸化物膜57の膜厚は、例えば0.5nm〜30nm程度(例えば10nm)が望ましい。ABOx型酸化物膜57は、セラミックス酸化物ABOx(AとBは金属元素、Oは酸素元素、x>0)のターゲットを用いた高周波スパッタリングにより形成することが好ましい。ABOx型酸化物膜57の成膜条件は、例えば以下の通りとする。基板温度20℃〜100℃(より好ましくは50℃〜60℃)、アルゴンガス雰囲気中でRFマグネトロンスパッタを行う。
次に、上部電極第2層であるABOx型酸化物膜57上に、例えば酸化イリジウム(IrOy)により、上部電極第3層となる導電膜58を形成する。導電膜58の膜厚は、上部電極60の、水素等に対するバリア性を向上させるために、比較的厚く(導電膜56に比べて厚く)設定することが好ましい。具体的には、導電膜58の膜厚を、例えば70nm〜200nm程度とすることが好ましい。ここでは、導電膜58の膜厚を、例えば150nm程度とする。
導電膜58は、例えば、イリジウムのターゲットを用いた反応性スパッタリングで、イリジウムを酸化して形成される。例えば以下のような成膜条件で、導電膜58が形成される。基板温度は、例えば10℃〜100℃(より好ましくは50℃〜75℃)とする。ここでは、基板温度を60℃とする。10℃〜100℃の比較的低温で導電膜58を形成することにより、アモルファスまたは微結晶の導電膜58を形成することができる。
導電膜(IrOy膜)58における酸素組成比yは、導電膜(IrOx膜)56における酸素組成比xより大きいことが好ましい。導電膜58における酸素の組成比yは、例えば1.8<y≦2とすることが好ましく、化学量論的組成である2とすることがより好ましい。酸素組成比yを大きくすることにより、導電膜58の水素バリア性が向上し、キャパシタ誘電体膜54の水素による還元を防止しやすい。
次に、熱処理を行う。熱処理条件は、例えば以下の通りとする。例えば700℃〜750℃程度とする。ここでは、基板温度を、例えば725℃程度とする。熱処理時間は、例えば120秒とする。チャンバ内の雰囲気は、例えば不活性ガスと酸素ガスとの混合ガスの雰囲気とする。不活性ガスとしては、例えばアルゴンガスを用いる。
導電膜(IrOx膜)56は、既に結晶化されている。ABOx型酸化物膜(PZT膜)57及び導電膜(IrOy膜)58は、成膜時にアモルファスである。この熱処理により、ABOx型酸化物膜(PZT膜)57が結晶化するとともに、導電膜(IrOy膜)58も結晶化する。
導電膜(IrOx膜)56及び導電膜(IrOy膜)58は、ルチル構造(正方晶の一つ)で、(101)配向または(200)配向である。導電膜(IrOx膜)56と導電膜(IrOy膜)58との間に配置されたABOx型酸化物膜(PZT膜)57は、ペロブスカイト構造で、ランダム配向している。
この熱処理でまた、導電膜(IrOx膜)56及び導電膜(IrOy膜)58から、ABOx型酸化物膜(PZT膜)57に、Irが拡散されることにより、ABOx型酸化物膜(PZT膜)57が導電性となる。Irの拡散量は、すでに結晶化された導電膜(IrOx膜)56よりも、アモルファスまたは微結晶である導電膜(IrOy膜)58からの方が多い。ある程度多くのIrが、ABOx型酸化物膜(PZT膜)57のグレインバウンダリーに入り込んで拡散することにより、Irの添加された導電性のABOx型酸化物膜(PZT膜)57が形成される。
図10は、Ir添加PZT膜(PZTI膜)中のIr含量と、Ir添加PZT膜の抵抗率との関係を示すグラフである。PZTは、イリジウム含量が0.8mol%以下では、絶縁体である。イリジウム含量が1mol%以上になると、導電性酸化物になる。導電性酸化物の抵抗をより低くするために、イリジウム含量は2mol%以上とすることが望ましい。
なお、変形例のABOx型酸化物膜57として、ペロブスカイト構造のABOx型酸化物導電膜を形成することもできる。例えば、CaRuO3、SrRuO3(SRO)、BaRuO3、La4Ru2O10、LaSrCoRuO3、LaSrRuO3、LaSrMnRuO3、等を用いることができる。また例えば、上記ABOx型酸化物強誘電体(ペロブスカイト構造の、Pb(Zr,Ti)O3、PbTiO3、Pb1−xLaxTiO3、Pb1−xLax(Zr,Ti)O3や、ビスマス層状構造の、(Bi1−xRx)Ti3O12(Rは希土類元素、0<x<1)、SrBi2Ta2O9(SBT)、SrBi4Ti4O15、等)に、Ir、Ru等を添加し導電性としたABOx型酸化物導電膜を形成することもできる。
例えば、SROセラミックターゲットを用いて、SRO膜57を成膜することができる。また例えば、イリジウムを添加したPZTターゲットを用いて、Ir添加PZT膜57を成膜することができる。
なお、このような場合、ABOx型酸化物膜57は既に導電性であるので、導電膜(IrOy膜)58形成後の熱処理は、ABOx型酸化物膜57を結晶化させる処理となる。
なお、ABOx型酸化物膜57は、後に導電性に変えられる絶縁膜である場合でも、成膜時から導電性である導電膜である場合でも、成膜時に結晶となるように高温で形成することもできる。なお、成膜時に結晶でABOx型酸化物強誘電体膜57を形成する場合、すでに結晶化しているので、導電膜(IrOy膜)58形成後の熱処理は、Ir拡散によりABOx型酸化物膜57を導電性に変える処理となる。
以上説明したように、本実施例(変形例含む)では、導電膜(IrOx膜)56と導電膜(IrOy膜)58との間に、導電膜56、58と結晶構造及び配向の異なる導電膜(例えば、Ir添加PZT膜あるいはSRO膜)57が挟まれた構造を有するキャパシタ上部電極が形成される。
導電膜(例えば、Ir添加PZT膜あるいはSRO膜)57を介さずに導電膜(IrOx膜)56と導電膜(IrOy膜)58とが直接積層された構造を有する上部電極を比較例とする。実施例の上部電極は、比較例の上部電極に比べて、上方の層間絶縁膜から浸入する水や水素に対するバリア性が向上し、浸入パスが長くなる。これにより、キャパシタ誘電体膜の強誘電体が侵食されにくくなり、キャパシタの性能劣化が抑制される。
なお、導電膜57は、ペロブスカイト構造の材料に限らず、ビスマス層状構造の材料を用いることもできる。
次に、半導体基板10の下面(裏面)を洗浄する(背面洗浄)。この背面洗浄は、一般のウェハ洗浄とは異なるものであり、ウェハの裏面に付着したキャパシタ誘電体膜材料を除去するためのものである。
次に、導電膜58上に、保護膜92を形成する。保護膜92として、例えば、スパッタリングにより、厚さ30nmのTiN膜を形成する。保護膜92は、上部電極60をパターニングする際のハードマスクとして機能する。
なお、保護膜92としてTiN膜を例示したが、その他、例えば、TaN膜、TiON膜、TiOx膜、TaOx膜、TaON膜、TiAlOx膜、TaAlOx膜、TiAlON膜、TaAlON膜、TiSiON膜、TaSiON膜、TiSiOx膜、TaSiOx膜、AlOx膜、ZrOx膜等を用いることもできる。
図1Kを参照する。保護膜92上に、例えばスピンコートにより、フォトレジスト膜94を形成する。フォトリソグラフィにより、キャパシタ上部電極60の形状を有するレジストパターン94を形成する。レジストパターン94をマスクとして、保護膜92、導電膜58、導電膜57、及び導電膜56をエッチングする。これにより、導電膜56、57、及び58の積層構造のキャパシタ上部電極60がパターニングされる。この後、レジストパターン94を剥離する。この後、例えばドライエッチングにより保護膜92を除去する。
次に、酸素を含む雰囲気中で熱処理を行う。この熱処理は、キャパシタ誘電体膜54に加わったダメージを回復するためのものである(回復アニール)。熱処理温度は、例えば600℃〜700℃とする。ここでは、熱処理温度は、600℃とする。熱処理時間は、例えば40分とする。この熱処理により、さらに、導電膜(IrOy膜)58中のIrが導電性酸化膜57へ拡散されるので、導電性酸化膜57の抵抗率がより改善する。
図1Lを参照する。全面に、例えばスピンコートにより、フォトレジスト膜96を形成する。フォトリソグラフィにより、キャパシタ誘電体膜54の形状を有するレジストパターン96を形成する。レジストパターン96をマスクとしたエッチングにより、キャパシタ誘電体膜54をパターニングする。この後、レジストパターン96を剥離する。次に、酸素雰囲気中にて熱処理を行う。熱処理条件は、例えば300℃〜650℃とする。熱処理時間は、例えば30分〜120分とする。
図1Mを参照する。例えばスパッタリングまたはCVDにより、保護膜64を形成する。保護膜64としては、例えば酸化アルミニウム膜を形成する。次に、酸素雰囲気中にて熱処理を行う。熱処理条件は、例えば400℃〜600℃とする。熱処理時間は、例えば30分〜120分とする。
図1Nを参照する。全面に、例えばスピンコートにより、フォトレジスト膜98を形成する。フォトリソグラフィによりキャパシタ下部電極48の形状を有するレジストパターン98を形成する。レジストパターン98をマスクとし、保護膜64、導電膜46、導電膜44、及び密着膜43をエッチングして、導電膜44及び46の積層構造のキャパシタ下部電極48をパターニングする。
このようにして、下部電極48とキャパシタ誘電体膜54と上部電極60とを有するキャパシタ62が形成される。保護膜64は、上部電極60及びキャパシタ誘電体膜54を覆うように残存する。この後、レジストパターン98を剥離する。次に、酸素雰囲気中にて熱処理を行う。熱処理温度は、例えば300〜400℃とする。熱処理時間は、例えば30〜120分間とする。
図1Oを参照する。例えばスパッタリングまたはCVDにより、保護膜66を形成する。保護膜66として、例えば酸化アルミニウム膜を形成する。次に、酸素雰囲気中にて熱処理を行う。この熱処理は、キャパシタ誘電体膜54に酸素を供給し、キャパシタ62の電気的特性を向上するためのものである。熱処理条件は、例えば500℃〜700℃とする。熱処理時間は、例えば30分〜120分とする。
図1Pを参照する。例えばプラズマTEOSCVDにより、層間絶縁膜68を形成する。層間絶縁膜68として、例えばシリコン酸化膜を形成する。次に、例えばCMPにより、層間絶縁膜68の表面を平坦化する。
図1Qを参照する。例えばスパッタリングまたはCVDにより、保護膜70を形成する。保護膜70として、例えば酸化アルミニウム膜を形成する。次に、例えばプラズマTEOSCVDにより、層間絶縁膜72を形成する。層間絶縁膜72として、例えばシリコン酸化膜を形成する。
図1Rを参照する。フォトリソグラフィ及びエッチングにより、層間絶縁膜72、保護膜70、層間絶縁膜68、保護膜66、及び保護膜64に、下部電極48に達するコンタクトホール74aと、上部電極60に達するコンタクトホール76bとを形成する。
次に、酸素雰囲気中にて熱処理を行う。この熱処理は、キャパシタ誘電体膜54に酸素を供給し、キャパシタ62の電気的特性を向上させるためのものである。熱処理条件は、例えば400℃〜600℃とする。熱処理時間は、例えば30分〜120分とする。
なお、ここでは、酸素雰囲気中にて熱処理を行う場合を例に説明したが、オゾン雰囲気中にて熱処理を行ってもよい。オゾン雰囲気中にて熱処理を行った場合にも、キャパシタ誘電体膜54に酸素が供給され、キャパシタ62の電気的特性を向上させることができる。
図1Sを参照する。フォトリソグラフィ及びエッチングにより、層間絶縁膜72、保護膜70、層間絶縁膜68、保護膜66、及び層間絶縁膜42に、導体プラグ36に達するコンタクトホール76を形成する。次に、不活性ガス雰囲気中または真空中にて熱処理を行う。この熱処理は、層間絶縁膜72、68、及び42中からガスを放出するためのものである(脱ガス)。次に、高周波エッチングにより、コンタクトホール74a、74b、及び76の内壁面に対して表面処理を行う。
図1Tを参照する。全面に、例えばスパッタリングにより、密着膜78を形成する。密着膜78として、例えばTiN膜を形成する。次に、全面に、例えばCVDにより、導電膜を形成する。導電膜としては、例えばタングステン膜を形成する。
次に、例えばCMPにより、層間絶縁膜72の表面が露出するまで、導電膜及び密着膜78を研磨する。こうして、導電膜により導体プラグ80a〜80cが形成される。次に、プラズマ洗浄を行う。プラズマ洗浄を行う際に用いるガスは、例えばArガスとする。これにより、導体プラグ80a〜80cの表面に存在する自然酸化膜等が除去される。
図1Uを参照する。例えばスパッタリングにより、例えばTiN膜82と、AlCu合金膜84と、Ti膜86と、TiN膜88とを順次積層することにより、積層膜を形成する。次に、フォトリソグラフィ及びエッチングにより、この積層膜をパターニングして、配線90を形成する。この後、必要に応じてさらに、上方に多層配線構造を形成する。このようにして、第1実施例による半導体装置が製造される。
図2A及び図2Bに、第1実施例及びその変形例による強誘電体キャパシタ形成の主なプロセスのフローを示す。
図2Aは、上部電極第2層(ABOx型酸化物膜57)として強誘電体膜を形成する場合(実施例)のプロセスフローである。下部電極膜(導電膜44、46)を形成し、非結晶(アモルファス)で第1強誘電体膜(強誘電体膜50)を形成する。熱処理により、第1強誘電体膜を結晶化する。結晶化した第1強誘電体膜の上に、非結晶で第2強誘電体膜(強誘電体膜52)を形成する。第2強誘電体膜上に、上部電極第1層(IrOx膜56)を形成する。熱処理により、第2強誘電体膜を、第1強誘電体膜の結晶性を引き継ぐように結晶化させる。
上部電極第1層上に、上部電極第2層として第3強誘電体膜(ABOx型酸化物強誘電体膜57)を非晶質で形成する。上部電極第2層/第3強誘電体膜上に、上部電極第3層(IrOy膜58)を形成する。熱処理により、上部電極第2層/第3強誘電体膜を結晶化させると同時に、上部電極第1層及び第3層から上部電極第2層/第3強誘電体膜にIrを拡散させて、上部電極第2層/第3強誘電体膜を導電膜に変換する。
図2Bは、上部電極第2層(ABOx型酸化物膜57)として導電膜を形成する場合(変形例)のプロセスフローである。第2強誘電体膜の結晶化までは図2Aの実施例と同様である。
上部電極第1層上に、上部電極第2層(ABOx型酸化物導電膜57)を非晶質で形成する。上部電極第2層上に、上部電極第3層(IrOy膜58)を形成する。熱処理により、上部電極第2層を結晶化させる。
なお、図2Aの実施例及び図2Bの変形例の場合とも、上部電極第2層の結晶化の熱処理で、上部電極第3層も結晶化させている。
次に、第2実施例による半導体装置及びその製造方法について説明する。第1実施例ではプレーナ型構造のメモリセルを形成したのに対し、第2実施例ではスタック型構造のメモリセルを形成する。
図3は、第2実施例による半導体装置の概略断面図である。半導体基板10にトランジスタ26を形成し、トランジスタ26を覆う層間絶縁膜30及び絶縁膜28にコンタクトホール32を形成し、コンタクトホール32に導体プラグ36を形成する工程までは、第1実施例と同様である。説明の煩雑さを避けるため、第1実施例と対応する部材、構造等には同一の参照符号を付している。なお、各部材の膜厚等は、必要に応じて第1実施例から変更することができる。
次に、導体プラグ36を覆って層間絶縁膜30上に、例えばプラズマCVDにより、シリコン窒化酸化膜100を形成する。なお、ここではシリコン窒化酸化膜100を形成したが、シリコン窒化酸化膜100の代わりに、シリコン窒化膜や酸化アルミニウム膜等を形成してもよい。次に、全面に、例えばプラズマTEOSCVDにより、シリコン酸化膜102を形成する。シリコン窒化酸化膜100とシリコン酸化膜102とにより層間絶縁膜104が形成される。
次に、フォトリソグラフィ及びエッチングにより、層間絶縁膜104に導体プラグ36に達するコンタクトホール106を形成する。次に、全面に、例えばスパッタリングにより、Ti膜を形成する。次に、全面に、例えばスパッタリングにより、TiN膜を形成する。こうして、Ti膜とTiN膜とにより密着膜108が形成される。次に、全面に、例えばCVDにより、導電膜110を形成する。導電膜110としては、例えばタングステン膜を形成する。次に、例えばCMPにより、層間絶縁膜104の表面が露出するまで導電膜110及び密着膜108を研磨する。
次に、例えばNH3ガスを用いて発生させたプラズマ雰囲気に層間絶縁膜104の表面を暴露することにより、層間絶縁膜104の表面を処理する(プラズマ処理)。次に、全面に、例えばスパッタリングにより、Ti膜を形成する。層間絶縁膜104の表面が上記のように処理されているため、層間絶縁膜104上に堆積されたTi原子は酸素原子により捕捉されることなく、層間絶縁膜104の表面を自在に移動することができる。このため、(002)の方向に自己配向された良質なTi膜が層間絶縁膜104上に形成される。
次に、例えばRTAにより、窒素雰囲気中にて熱処理を行う。熱処理温度は、例えば650℃とする。熱処理時間は、例えば60秒とする。この熱処理により、上述したTi膜がTiN膜114となる。こうして、(111)配向のTiN膜である下地膜114が得られる。なお、ここでは、下地膜114としてTiN膜を用いる場合を例に説明したが、かかる下地膜114はTiN膜に限定されるものではない。例えば、タングステン膜、シリコン膜、銅膜等により下地膜114を形成してもよい。
次に、CMPにより、下地膜114の表面を研磨する。こうして、表面が平坦化された平坦化層114が形成される。本実施形態において、下地膜114の表面を平坦化するのは、平坦化された下地膜114上には、配向性の良好な下部電極48a、キャパシタ誘電体膜54a及び上部電極60aを形成することが可能なためである。
次に、例えばNH3ガスを用いて発生させたプラズマ雰囲気に下地膜(平坦化層)114の表面を暴露することにより、下地膜114の表面を処理する(プラズマ処理)。次に、全面に、例えばスパッタリングにより、Ti膜を形成する。プラズマ処理が行われた下地膜114上にTi膜を形成するため、良質なTi膜が形成される。
次に、例えばRTAにより、窒素雰囲気中にて熱処理を行う。熱処理温度は、例えば650℃とする。熱処理時間は、例えば60秒とする。この熱処理により、下地膜114上に形成されたTi膜がTiN膜となる。こうして、(111)配向のTiN膜により密着膜116が形成される。かかる密着膜116は、後工程で形成される酸素バリア膜118の結晶性を向上させるとともに、かかる酸素バリア膜118と下地膜114との密着性を向上させるためのものである。
なお、ここでは、TiN膜より成る密着膜116を形成する場合を例に説明したが、かかる密着膜116はTiN膜に限定されるものではない。酸素バリア膜118の結晶性を向上させるとともに、かかる酸素バリア膜118と下地膜114との密着性を向上させ得る材料を、密着膜116の材料として適宜用いることができる。例えば、Ir膜、Pt膜等により密着膜116を形成してもよい。
次に、全面に、例えば反応性スパッタリングにより、酸素バリア膜(酸素拡散防止膜)118を形成する。酸素バリア膜118の膜厚は、例えば100nm程度とする。酸素バリア膜118としては、例えばTiAlN膜を形成する。かかる酸素バリア膜118は、層間絶縁膜104に導体プラグ110を埋め込んだ後に、導体プラグ110の上面が酸化されるのを防止するためのものである。
なお、ここでは、酸素バリア膜118の材料としてTiAlNを用いる場合を例に説明したが、酸素バリア膜118の材料はTiAlNに限定されるものではない。酸素の拡散を防止し得る導電体を酸素バリア膜118の材料として適宜用いることができる。例えば、TiAlON、TaAlN又はTaAlON等を酸素バリア膜118の材料として用いてもよい。
次に、全面に、例えばスパッタリングにより、貴金属膜(導電膜)44aを形成する。導電膜44aとしては、例えばイリジウム膜を形成する。次に、例えばRTAにより、アルゴン雰囲気中にて熱処理を行う。熱処理温度は、例えば650℃とする。熱処理時間は、例えば60秒とする。この熱処理は、貴金属膜44a中の結晶粒を成長させるとともに、貴金属膜44a中の結晶粒のサイズを均一化するためのものである。
次に、全面に、例えばスパッタリングにより、アモルファスの貴金属酸化物膜を形成する。貴金属酸化物膜としては、例えば酸化イリジウム膜(IrOx膜)を形成する。
次に、全面に、例えばMOCVDにより、強誘電体膜50aを形成する。強誘電体膜50aとしては、例えばPZT膜を形成する。強誘電体膜50aの膜厚は、例えば70nmとする。
MOCVDで形成する場合、成膜時に結晶化された強誘電体膜50aが形成される。強誘電体膜50aをMOCVDにより形成する際には、還元性の比較的強い雰囲気に非晶質の貴金属酸化物膜が曝されるため、非晶質の貴金属酸化物膜が還元され、貴金属膜46aとなる。貴金属酸化物膜から放出された酸素は、強誘電体膜50aにおける酸素欠損を補償する。貴金属酸化物膜を形成する段階で酸化イリジウム膜を形成した場合には、イリジウム膜である貴金属膜(導電膜)46aが形成される。なお、強誘電体膜50aの成膜方法は、MOCVDに限定されず、例えば第1実施例と同様に、スパッタリングを用いることもできる。
次に、強誘電体膜50a上に、例えばスパッタリングにより、強誘電体膜52を形成する。より具体的には、例えば、高周波スパッタリングにより、強誘電体膜52を形成する。強誘電体膜52の膜厚は、例えば5nm〜20nm程度とする。強誘電体膜50a及び52の積層構造でキャパシタ誘電体膜54aが形成される。
その後、第1実施例と同様な方法で、導電膜56、57、及び58の積層構造を含むキャパシタ上部電極を形成することができる。つまり、まず、強誘電体膜52上に、例えば酸化イリジウムで導電膜56を形成する。次に、熱処理により、強誘電体膜52を結晶化する。次に、導電膜56上に、例えばPZTでABOx型酸化膜57を形成する。次に、ABOx型酸化膜57上に、例えば酸化イリジウムで導電膜58を形成する。次に、熱処理により、導電膜(酸化イリジウム膜)56、58から、ABOx型酸化物膜(PZT膜)57にIrを拡散することにより、ABOx型酸化膜57を導電膜に変える。なお、第1実施例で説明したように、成膜時に導電性のABOx型酸化膜57を用いることもできる。導電膜56、57、及び58の積層構造を含むキャパシタ上部電極により、第1実施例と同様に、水や水素に対するバリア性が向上する。
次に、導電膜58上に、例えばスパッタリングにより、導電膜120を形成する。導電膜120は、上部電極60aの一部となるものである。導電膜120の膜厚は、例えば50nm程度とする。導電膜120としては、例えばイリジウム膜を形成する。導電膜120は、キャパシタ誘電体膜54aが水素により還元されるのを防止するためのものである。導電膜120の成膜条件は、例えば以下の通りとする。成膜室内に導入するガスは、例えばArガスとする。成膜室内の圧力は、例えば1Pa程度とする。スパッタパワーは、例えば1.0W程度とする。
なお、ここでは、導電膜120としてイリジウム膜を用いる場合を例に説明したが、導電膜120はイリジウム膜に限定されるものではない。例えば、Pt膜、SrRuO3膜等を水素バリア膜120として用いてもよい。
次に、半導体基板10の下面(裏面)を洗浄する(背面洗浄)。次に、全面に、スパッタリングにより、第1保護膜を形成する。第1保護膜は、ハードマスクの一部として機能するものである。第1保護膜としては、例えばTiN膜を形成する。ここでは、第1保護膜としてTiN膜を形成する場合を例に説明したが、第1保護膜はTiN膜に限定されるものではない。第1保護膜として、例えば、TiAlN膜、TaAlN膜、TaN膜等を用いてもよい。また、これらの積層膜により第1保護膜を形成してもよい。次に、全面に、例えばプラズマTEOSCVDにより、第2保護膜を形成する。第2保護膜は、第1保護膜と相俟ってハードマスクとして機能するものである。
次に、全面に、例えばスピンコートにより、フォトレジスト膜を形成する。次に、フォトリソグラフィにより、キャパシタ62aの平面形状を有するレジストパターンを形成する。次に、このレジストパターンをマスクとして、第2保護膜をエッチングする。次に、エッチングされた第2保護膜をマスクとして、第1保護膜をエッチングする。こうして、エッチングされた第1、第2保護膜によりハードマスクが形成される。
次に、第1、第2保護膜をマスクとして、例えばプラズマエッチングにより、導電膜120、導電膜58、導電膜57、導電膜56、強誘電体膜54a、導電膜46a、及び導電膜44aをエッチングする。エッチングガスとしては、例えばHBrガスとO2ガスとArガスとC4F8ガスとの混合ガスを用いる。
こうして、導電膜44aと導電膜46aとにより下部電極48aが形成される。また、強誘電体膜50aと強誘電体膜52aとによりキャパシタ誘電体膜54aが形成される。また、導電膜56、導電酸化膜57、導電膜58と導電膜120とにより上部電極60aが形成される。下部電極48aと強誘電体膜54aと上部電極60aとによりキャパシタ62aが形成される。
次に、例えばドライエッチングまたはウエットエッチングにより、第2保護膜を除去する。次に、例えばドライエッチングにより、酸化防止膜118、密着膜116及び下地膜114をエッチングする。この際、第1保護膜もエッチング除去される。エッチングを行う際には、例えばダウンフロー型のプラズマエッチング装置を用いる。チャンバ内に導入するガスは、例えばCF4ガスとO2ガスとの混合ガスとする。
次に、全面に、例えばスパッタリングにより、保護膜122を形成する。保護膜122は、水素や水分等によりキャパシタ誘電体膜54aが還元されるのを防止するためのものである。保護膜122としては、例えば酸化アルミニウム膜を形成する。
なお、ここでは、スパッタリングにより保護膜122を形成する場合を例に説明したが、保護膜122の成膜方法はスパッタリングに限定されるものではない。例えば、MOCVDにより保護膜122を形成してもよい。
次に、酸素雰囲気中にて熱処理を行う。この熱処理は、キャパシタ誘電体膜54aに酸素を供給し、キャパシタ62aの電気的特性を向上するためのものである。熱処理条件は、例えば500℃〜700℃とする。キャパシタ誘電体膜54aがPZT膜の場合には、基板温度を例えば600℃とし、熱処理時間を例えば60分とする。
次に、全面に、例えばCVDにより、保護膜124を形成する。保護膜124は、水素や水分等によりキャパシタ誘電体膜54aが還元されるのを防止するためのものである。保護膜124としては、例えば酸化アルミニウム膜を形成する。
また、ここでは、保護膜124として酸化アルミニウム膜を形成する場合を例に説明したが、保護膜124は酸化アルミニウム膜に限定されるものではない。保護膜124として、例えば、チタン酸化膜、タンタル酸化膜、ジルコニウム酸化膜、アルミニウム窒化膜、タンタル窒化膜又はアルミニウム酸窒化膜等を形成してもよい。
次に、例えばプラズマTEOSCVDにより、層間絶縁膜68を形成する。層間絶縁膜68としては、例えばシリコン酸化膜を形成する。なお、ここでは、層間絶縁膜68としてシリコン酸化膜を形成する場合を例に説明したが、層間絶縁膜68はシリコン酸化膜に限定されるものではない。例えば、絶縁性を有する無機膜等を適宜用いることが可能である。次に、例えばCMPにより、層間絶縁膜68の表面を平坦化する。
次に、例えばスパッタリングまたはCVDにより、保護膜70を形成する。保護膜70としては、例えば酸化アルミニウム膜を形成する。保護膜70は、水素や水分等によりキャパシタ誘電体膜54aが還元されるのを防止するためのものである。表面が平坦な層間絶縁膜68上に保護膜70が形成されるため、保護膜70は平坦となる。
次に、例えばプラズマTEOSCVDにより、層間絶縁膜72を形成する。層間絶縁膜72としては、例えばシリコン酸化膜を形成する。なお、ここでは、層間絶縁膜72としてシリコン酸化膜を形成する場合を例に説明したが、層間絶縁膜72はシリコン酸化膜に限定されるものではない。例えば、シリコン窒化酸化膜又はシリコン窒化膜を層間絶縁膜72として用いてもよい。次に、例えばCMPにより、層間絶縁膜72の表面を平坦化する。
次に、フォトリソグラフィ及びエッチングにより、層間絶縁膜72、保護膜70、層間絶縁膜68、保護膜124、保護膜122、及び層間絶縁膜104に、導体プラグ36に達するコンタクトホール126aを形成する。また、フォトリソグラフィ及びエッチングにより、層間絶縁膜72、保護膜70、層間絶縁膜68、保護膜124、及び保護膜122に、上部電極60aに達するコンタクトホール126bを形成する。
次に、酸素雰囲気中にて熱処理を行う。この熱処理は、キャパシタ誘電体膜54aに酸素を供給し、キャパシタ誘電体膜54aにおける酸素欠損を補償し、キャパシタ62aの電気的特性を回復するためのものである。熱処理を行う際の基板温度は、例えば450℃とする。次に、高周波エッチングにより、コンタクトホール126a、126bの内壁面に対して表面処理を行う。
次に、全面に、例えばスパッタリングにより、密着膜128を形成する。密着膜128としては、例えばTiN膜を形成する。密着膜128の膜厚は、例えば125nm程度とする。次に、全面に、例えばCVDにより、導電膜を形成する。導電膜としては、例えばタングステン膜を形成する。次に、例えばCMPにより、層間絶縁膜72の表面が露出するまで、導電膜及び密着膜128を研磨する。こうして、導電膜により導体プラグ130a、130bが形成される。次に、プラズマ洗浄を行う。プラズマ洗浄を行う際に用いるガスは、例えばArガスとする。これにより、導体プラグ130a、130bの表面に存在する自然酸化膜等が除去される。
次に、例えばスパッタリングにより、例えばTiN膜82と、AlCu合金膜84と、Ti膜86と、TiN膜88とを順次積層することにより、積層膜を形成する。次に、フォトリソグラフィ及びエッチングにより、この積層膜をパターニングして、配線90を形成する。この後、必要に応じてさらに、上方に多層配線構造を形成する。このようにして、第2実施例による半導体装置が製造される。
次に、第3実施例による半導体装置及びその製造方法について説明する。第3実施例では、第1実施例による強誘電体キャパシタ形成方法を応用して、強誘電体メモリ素子に用いるメモリ用キャパシタと、電源配線の平滑容量素子に用いる平滑用キャパシタとを、同時形成する。図4A〜図4Kは、第3実施例による半導体装置の製造方法の主要工程を示す概略断面図である。
半導体基板10に、MOSトランジスタ26を形成し、酸化防止膜42を形成する工程までは、第1実施例と同様である。図4A〜図4Kは、特に、酸化防止膜42上方に、メモリ用キャパシタと平滑用キャパシタを作り分ける工程を示す。
図4Aを参照する。(酸化防止膜42上の)全面に、下部電極密着層43、下部電極膜44、強誘電体膜50、強誘電体膜52、導電膜56を積層する。次に、RTAにより、酸素を含む雰囲気中で熱処理し、強誘電体膜50の結晶性を引き継ぐように、強誘電体膜52を結晶化させる。
第1実施例と同様に、強誘電体膜50及び52は、例えばPZT膜で形成されており、導電膜56は、例えば酸化イリジウムで形成されている。導電膜(IrOx膜)56の膜厚、成膜条件、酸素組成xは、第1実施例と同様である。
図4Bを参照する。導電膜56は、メモリ用キャパシタにおいて上部電極の一部として用いられる。導電膜56上に、レジストパターンRPを形成し、レジストパターンRPをマスクとして、導電膜56をパターニングする。メモリ用キャパシタの外側では、導電膜56が除去されて、強誘電体膜52が露出する。なお、強誘電体膜上にレジストパターンを形成しない工程であるので、フォトレジストとの接触に起因する強誘電体膜へのダメージが抑制されている。その後、レジストパターンRPを剥離する。
図4Cを参照する。パターニングされた導電膜56を覆って強誘電体膜52上に、ABOx型酸化物(AとBは金属元素、Oは酸素元素、x>0)膜53を形成する。ABOx型酸化物膜53は、最終的に、メモリ用キャパシタにおいては上部電極の一部として用いられ、平滑用キャパシタにおいてはキャパシタ誘電体膜の一部として用いられる。ABOx型酸化物膜53として、強誘電体膜52の結晶性を引き継いで結晶化できるような強誘電体膜が形成される。ABOx型酸化物膜53として、例えば、第1実施例のABOx型酸化物膜57と同様にして、例えば厚さ10nmのPZT膜を形成することができる。
図4Dを参照する。次に、例えばRTAにより、酸素を含む雰囲気中で熱処理を行う。この熱処理により、ABOx型酸化物膜53を結晶化させる。導電膜(IrOx膜)56の外側で強誘電体膜(PZT膜)52上にABOx型酸化物膜(PZT膜)53が形成されている領域、つまり、平滑用キャパシタ形成部では、強誘電体膜(PZT膜)52の結晶性を引き継いで、ABOx型酸化物膜(PZT膜)53が結晶化される。
導電膜(IrOx膜)56上、つまり、メモリ用キャパシタ形成部では、ABOx型酸化物膜(PZT膜)53がランダム配向で結晶化する。なお、この熱処理により、導電膜(IrOx膜)56から、ABOx型酸化物膜(PZT膜)53の、導電膜(IrOx膜)56近傍に形成された部分57pへ、ある程度Irが拡散する。
メモリ用キャパシタ形成部では、強誘電体膜50及び52が積層された構造のキャパシタ誘電体膜が形成される。一方、平滑用キャパシタ形成部では、強誘電体膜50及び52上に、さらに強誘電体膜53が積層された構造のキャパシタ誘電体膜が形成される。
図4Eを参照する。ABOx型酸化物膜53を覆って、全面に、例えばスパッタリングにより、導電膜58を形成する。導電膜58は、メモリ用キャパシタ形成部では、導電膜56、57、及び58が積層された構造の上部電極を形成するとともに、平滑用キャパシタ形成部では、導電膜58単層で上部電極を形成する。第1実施例と同様に、導電膜58は、例えば酸化イリジウム(IrOy)で形成される。導電膜(IrOy膜)58の膜厚、成膜条件、酸素組成yは、第1実施例と同様である。
次に、熱処理を行う。熱処理条件は、例えば以下の通りとする。基板温度を、例えば700℃〜750℃程度とする。熱処理時間は、例えば120秒とする。チャンバ内の雰囲気は、例えば不活性ガスと酸素ガスとの混合ガスの雰囲気とする。
この熱処理により、導電膜(IrOy膜)58が結晶化される。また、この熱処理により、メモリ用キャパシタ形成部では、導電膜(IrOx膜)56及び導電膜(IrOy膜)58から、導電膜(IrOx膜)56及び導電膜(IrOy膜)58に挟まれた部分のABOx型酸化物膜(PZT膜)57pにIrが拡散されることにより、Irが添加されたPZTによる導電膜57が形成される。
なお、平滑用キャパシタ形成部でも、導電膜(IrOy膜)58からABOx型酸化物膜(PZT膜)53へ、Irが拡散する。ただし、平滑用キャパシタ形成部では、強誘電体膜50、52、及び53が積層された厚いキャパシタ誘電体膜の全体へ、Irが拡散する。このため、平滑用キャパシタのキャパシタ誘電体膜が導電性になってしまうことは抑制される。
図4Fを参照する。第1実施例と同様にして、半導体基板10の下面(裏面)を洗浄する(背面洗浄)。そして、保護膜92、フォトレジスト膜94を形成する。フォトリソグラフィにより、メモリ用キャパシタの上部電極、及び平滑用キャパシタの上部電極の形状のレジストパターン94を形成する。
レジストパターン94をマスクとしたエッチングにより、保護膜92及び導電膜58をパターニングする。この後、レジストパターン94を剥離する。また、例えばドライエッチングにより保護膜92を除去する。
次に、酸素を含む雰囲気中で熱処理を行う。この熱処理は、強誘電体膜50、52、及び53に加わったダメージを回復するためのものである(回復アニール)。熱処理温度は、例えば600℃〜700℃とする。ここでは、熱処理温度は、600℃とする。熱処理時間は、例えば40分とする。
この熱処理は、酸化イリジウム膜56及び58からさらにIrを拡散させて、メモリ用キャパシタの上部電極におけるABOx型酸化物膜(Ir添加PZT膜)57の抵抗率を改善させる。
図4Gを参照する。全面に、例えばスピンコートにより、フォトレジスト膜96を形成する。フォトリソグラフィにより、メモリ用キャパシタのキャパシタ誘電体膜、及び、平滑用キャパシタのキャパシタ誘電体膜の形状のレジストパターン96を形成する。レジストパターン96をマスクとし、強誘電体膜53、52、及び50をエッチングする。この後、レジストパターン96を剥離する。
図4Hを参照する。例えばスパッタリングまたはCVDにより、全面に保護膜64を形成する。保護膜64としては、例えば酸化アルミニウム膜を形成する。次に、全面に、例えばスピンコートにより、フォトレジスト膜98を形成する。次に、フォトリソグラフィにより、下部電極48の形状を有するレジストパターン98を形成する。
図4Iを参照する。レジストパターン98をマスクとして、保護膜64、下部電極膜44をエッチングする。導電膜44により下部電極48が形成される。
このようにして、導電膜44による下部電極と、強誘電体膜50及び52の積層されたキャパシタ誘電体膜と、導電膜56、57、及び58の積層された上部電極とを有するキャパシタとして、メモリ用キャパシタが形成される。
また、導電膜44による下部電極と、強誘電体膜50、52、及び53の積層されたキャパシタ誘電体膜と、導電膜58による上部電極とを有するキャパシタとして、平滑用キャパシタが形成される。
キャパシタ保護膜64は、これらの上部電極及びキャパシタ誘電体膜を覆うように残存する。この後、レジストパターン98を剥離する。
メモリ用キャパシタのキャパシタ誘電体膜は、強誘電体膜50及び52の厚さを調整することによって、所望の薄さに形成できる。これにより、低電圧動作に適したメモリ用キャパシタを形成することができる。
一方、平滑用キャパシタのキャパシタ誘電体膜は、強誘電体膜53を有し、メモリ用キャパシタのキャパシタ誘電体膜よりも厚く形成される。これにより、リーク電流の抑制された平滑用キャパシタを形成することができる。
メモリ用キャパシタの上部電極は、導電膜(IrOx膜)56、導電膜(Ir添加PZT膜)57、導電膜(IrOy膜)58の積層構造を含み、第1実施例で説明したように、水や水素に対するバリア性が高められている。
一方、平滑用キャパシタの上部電極は、単層の導電膜(IrOy膜)58で形成されており、メモリ用キャパシタの上部電極に比べれば、水や水素に対するバリア性は低くなる。しかし、平滑用キャパシタは、単にキャパシタとして機能すればよいので、メモリ用キャパシタに比べて、強誘電体の侵食は問題になりにくい。
なお、第1実施例では、導電膜(IrOy膜)58の積層後の熱処理を、ABOx型酸化物膜(PZT膜)57がアモルファスの状態で行った。一方、第3実施例では、導電膜(IrOy膜)58の積層前に、ABOx型酸化物膜(PZT膜)53が熱処理されて結晶化されている。つまり、導電膜(IrOy膜)58の積層後の熱処理を、ABOx型酸化物膜(PZT膜)53が結晶化された状態で行っている。
結晶化されたPZT膜は上面が粗くなっているので、結晶化されたPZT膜上に電極膜を積層して熱処理を行う場合、電極膜とPZT膜との界面は粗く形成される。
一方、アモルファスのPZT膜上に電極膜を積層して熱処理を行う場合、電極膜とPZT膜との界面は平坦化される。なお、酸化イリジウム電極膜が結晶化されている方が、電極膜とPZT膜との界面が平坦化されやすい。また、酸化イリジウム電極膜の酸素組成が小さい方が、電極膜とPZT膜との界面が平坦化されやすい。
第3実施例では、導電膜(IrOy膜)58とABOx型酸化物膜(PZT膜)53との界面、すなわち、平滑用キャパシタにおける上部電極とキャパシタ誘電体膜との界面が、粗く形成されている。これは、平滑用キャパシタのリーク電流低減の観点から好ましい。
一方、導電膜(IrOx膜)56と強誘電体膜52との界面、すなわち、メモリ用キャパシタの上部電極とキャパシタ誘電体膜との界面は、第1実施例と同様に、平坦に形成されている。上部電極とキャパシタ誘電体膜との界面が平坦な方が、界面が粗い場合に比べて、常誘電体層が薄くなり、キャパシタの反転電荷量を大きくすることができる。メモリ用キャパシタでは、反転電荷量を大きくすることが好ましい。
なお、変形例として、図4Dを参照して説明したような導電膜58形成前の熱処理を省略し、図4Eを参照して説明したような導電膜58形成後の熱処理により、メモリ用キャパシタ形成部でABOx型酸化物膜(PZT膜)53を導電膜に変換するとともに、ABOx型酸化物膜(PZT膜)53を結晶化させるようにすることもできる。
図4Jを参照する。例えばスパッタリングまたはCVDにより、保護膜66を形成する。保護膜66としては、例えば酸化アルミニウム膜を形成する。次に、酸素雰囲気中にて熱処理を行う。この熱処理は、メモリ用キャパシタ及び平滑用キャパシタのキャパシタ誘電体膜に酸素を供給し、キャパシタの電気的特性を向上するためのものである。熱処理条件は、例えば500℃〜700℃とする。熱処理時間は、例えば30分〜120分とする。
図4Kに示すように、保護膜66上を覆うように、ステップカバレッジが良好な酸化アルミニウム膜67を形成する。本実施形態では、バッチ式の成膜装置を用いた原子層堆積(Atomic Layer Deposition:ALD)により、酸化アルミニウム膜67を形成する。
図5を参照して、その後の工程について説明する。図5は、第3実施例による半導体装置の全体構造を示す概略断面図である。酸化アルミニウム膜67上に、例えばプラズマTEOSCVDにより、例えば、シリコン酸化膜を堆積して、層間絶縁膜68を形成する。次に、例えばCMPにより、層間絶縁膜68の表面を平坦化する。
次に、フォトリソグラフィ及びエッチングにより、層間絶縁膜68、保護膜67、66、及び保護膜64に、キャパシタ下部電極に達するコンタクトホールと、キャパシタ上部電極に達するコンタクトホールとを形成する。次に、酸素雰囲気中にて熱処理を行う。次に、フォトリソグラフィ及びエッチングにより、層間絶縁膜68、保護膜67、66、密着膜43、及び層間絶縁膜42に、導体プラグ36に達するコンタクトホールを形成する。
全面に、例えばスパッタリングにより、密着膜78を形成する。密着膜78としては、例えばTiN膜を形成する。次に、全面に、例えばCVDにより、例えばタングステン膜を形成する。次に、例えばCMPにより、層間絶縁膜68の表面が露出するまで、導電膜及び密着膜78を研磨する。こうして、導電膜により導体プラグ80が形成される。
次に、プラズマ洗浄を行い、スパッタリングにより、例えばTiN膜と、AlCu合金膜と、Ti膜と、TiN膜とを順次積層することにより、積層膜を形成する。次に、フォトリソグラフィ及びエッチングにより、積層膜をパターニングして、配線90を形成する。この後、必要に応じてさらに、上方に多層配線構造を形成する。このようにして、第3実施例による半導体装置が製造される。
図6A及び図6Bは、それぞれ、第3実施例によるメモリ用キャパシタ及び平滑用キャパシタの概略断面図である。
メモリ用キャパシタと平滑用キャパシタとは、下部電極膜(Pt膜)44から強誘電体膜(PZT膜)52までの積層構造は、共通である。下部電極膜(Pt膜)44は、立方晶構造で(111)配向した柱状の結晶である。強誘電体膜(PZT膜)50は、下部電極膜(Pt膜)44の柱状結晶の間に(横方向位置をずらして)、引き続き柱状で成長し、ペロブスカイト構造で(111)配向している。強誘電体膜(PZT膜)52は、強誘電体膜(PZT膜)50の結晶性を引き継いで柱状に成長し、ペロブスカイト構造で(111)配向している。
図6Aに示すように、メモリ用キャパシタでは、強誘電体膜(PZT膜)52上に、上部電極の第1層である導電膜(IrOx膜)56、上部電極の第2層である導電膜(Ir添加PZT膜)57、及び上部電極の第3層である導電膜(IrOy膜)58が積層されている。
導電膜(IrOx膜)56及び導電膜(IrOy膜)58は、ルチル構造で、(101)配向または(200)配向である。導電膜(IrOx膜)56は、成膜時にすでに柱状結晶として形成されている。導電膜(Ir添加PZT膜)57は、ペロブスカイト構造で、ランダム配向している。
導電膜(IrOx膜)56と導電膜(IrOy膜)58との間に、結晶構造及び配向の異なる導電膜(Ir添加PZT膜)57が挟まれていることにより、上部電極の水や水素に対するバリア性が向上しており、強誘電体膜50、52の侵食が抑制されている。
図6Bに示すように、平滑用キャパシタでは、強誘電体膜(PZT膜)52上に、さらに、強誘電体膜(PZT膜)53が積層され、強誘電体膜(PZT膜)53上に、上部電極である導電膜(IrOy膜)58が積層されている。
強誘電体膜(PZT膜)53は、強誘電体膜(PZT膜)52の結晶性を引き継いで成長し、平滑用キャパシタでは、強誘電体膜(PZT膜)50、52、及び53が、厚いキャパシタ誘電体膜を形成している。
以上説明したように、第3実施例の方法によれば、メモリ用キャパシタ及び平滑用キャパシタを、同時形成することができる。
メモリ用キャパシタは、キャパシタ誘電体膜が薄く形成されて低電圧動作に適し、キャパシタ誘電体膜と上部電極との界面が平坦に形成され反転電荷量が大きく、上述のような積層構造の上部電極により、水や水素に対するバリア性が高められている。
一方、平滑用キャパシタは、キャパシタ誘電体膜が厚く形成されて、リーク電流が抑制され、絶縁破壊耐圧が高められている。
図7に、第3実施例によるメモリ用キャパシタ及び平滑用キャパシタ形成の主なプロセスのフローを示す。第2強誘電体膜(強誘電体膜52)の結晶化までは、第1実施例における図2Aのフローと同様である。第2強誘電体膜の結晶化の後、上部電極第1層(IrOx膜56)をパターニングして、メモリ用キャパシタ形成部で残す。
メモリ用キャパシタ形成部の上部電極第1層を覆って第2強誘電体膜上に、上部電極第2層/第3強誘電体膜(ABOx型酸化物強誘電体膜57)を非晶質で形成する。熱処理により、上部電極第2層/第3強誘電体膜を結晶化させる。
上部電極第2層/第3強誘電体膜上に、上部電極第3層(IrOy膜58)を形成する。熱処理により、メモリ用キャパシタ形成部で、上部電極第1層及び第3層から上部電極第2層/第3強誘電体膜にIrを拡散させて、上部電極第2層/第3強誘電体膜を導電膜に変換する。なお、この熱処理で、上部電極第3層も結晶化させている。
その後、上部電極第3層、及びその他の層をパターニングして、メモリ用キャパシタと平滑用キャパシタとを分離する。
次に、第4実施例による半導体装置及びその製造方法について説明する。第4実施例では、第2実施例によるスタック型構造のメモリセル形成技術と、第3実施例によるメモリ用キャパシタと平滑用キャパシタとの作り分け技術とを組み合わせて、スタック型構造のメモリセルを形成する。
図8は、第4実施例による半導体装置の概略断面図である。キャパシタ下部電極膜48の形成工程までは、第2実施例と同様である。キャパシタ下部電極膜48上の全面上に、強誘電体膜50、強誘電体膜52、導電膜56を積層する。
次に、第3実施例で、図4Bを参照して説明した工程と同様にして、メモリ用キャパシタ形成部に導電膜56を残す。
次に、第3実施例で、図4C、図4Dを参照して説明した工程と同様にして、ABOx型酸化物膜53を形成し、熱処理を行う。
次に、第3実施例で、図4Eを参照して説明した工程と同様にして、ABOx型酸化物膜53上に、導電膜58を形成する。さらに、熱処理を行い、メモリ用キャパシタでは、ABOx型酸化物膜53を導電膜57に変え、平滑用キャパシタでは、ABOx型酸化物膜53を、強誘電体膜52の結晶性を引き継いで結晶化した強誘電体膜53とする。
次に、導電膜58上に、第2実施例と同様に、導電膜120を形成する。導電膜120の形成後、第2実施例と同様にして、一括エッチングにより各キャパシタのパターニングを行い、保護膜を形成し、回復熱処理を行い、配線形成を行う。このようにして、メモリ用キャパシタと平滑用キャパシタとが同時形成された、スタック型構造のメモリセルを有する、第4実施例による半導体装置が形成される。
次に、図9A及び図9Bを参照して、強誘電体キャパシタの特性を調べた実験結果について説明する。図9A及び図9Bに示すA−Capacitor及びB−Capacitorは、以下のようなものである。
A−Capacitorは、厚さ75nmの強誘電体膜50と、厚さ10nmの強誘電体膜52とが積層されたキャパシタ誘電体膜を有し、第1実施例と同様な上部電極構造を持つキャパシタである。
B−Capacitorは、厚さ75nmの強誘電体膜50と、厚さ10nmの強誘電体膜52と、厚さ10nmの強誘電体膜53とが積層されたキャパシタ誘電体膜を有し、60℃で形成されたIrO2膜を上部電極としたキャパシタである。
A−CapacitorとB−Capacitorとは同時形成され、A−Capacitorが、メモリ用キャパシタに対応し、B−Capacitorが、平滑用キャパシタに対応する。
図9Aは、キャパシタの反転電荷量Qswと読み出し電圧との関係を示すグラフである。A−Capacitorの反転電荷量Qswは、読み出し電圧に対して、立ち上がりが非常に急峻となっている。飽和反転電荷量も非常に大きい。これに対し、B−Capacitorの反転電荷量Qswは、立ち上がりが緩やかであり、飽和反転電荷量もA−Capacitorの半分程度である。
A−Capacitorでは、上部電極と強誘電体膜の界面が平坦に形成されていることにより、界面の常誘電体層が薄く、大きな反転電荷量が得られているものと考えられる。なお、B−Capacitorでは、上部電極と強誘電体膜の界面が粗く形成されていることに起因して、界面の常誘電体層が厚く、A−Capacitorに比べて反転電荷量が小さくなっているものと考えられる。なお、メモリ用キャパシタに対し、平滑用キャパシタでは、容量を使用するため、反転電荷量は大きくなくても特に問題とはならない。
図9Bは、キャパシタのリーク電流と印加電圧との関係を示すグラフである。B−Capacitorのリーク電流は、A−Capacitorのそれより2桁以上小さくなっている。
B−Capacitorでは、強誘電体膜が3層積層された厚いキャパシタ誘電体膜により、上部電極からある程度イリジウムの拡散があっても、リーク電流が抑制されているものと考えられる。なお、A−Capacitorでは、強誘電体膜が2層積層された薄いキャパシタ絶縁膜に、上部電極からイリジウムが拡散していることに起因して、B−Capacitorに比べてリーク電流が大きくなっているものと考えられる。なお、平滑用キャパシタに対し、メモリ用キャパシタでは、ある程度リーク電流が大きくても特に問題とはならない。
なお、上述の第1実施例〜第4実施例では、キャパシタ強誘電体膜50、52としてPZT(La等が添加されたものも含む)を用いる場合を例示したが、強誘電体材料は、PZTに限定されない。例えば、ペロブスカイト構造を有する他の強誘電体材料を用いることもできる。また、ビスマス層状構造の強誘電体材料を用いてもよい。
ビスマス層状構造の強誘電体材料として、(Bi1−xRx)Ti3O12(Rは希土類元素、0<x<1)、SrBi2Ta2O9(SBT)、SrBi4Ti4O15や、これらにCa、Sr、Laのいずれか一つ以上の元素を添加したものや、Laが添加されたBiFeO3、Laが添加されたBiTiO3等を用いることができる。
なお、Laが添加されたSrBi4Ti4O15やLaが添加されたBiTiO3の結晶化温度は、Laが添加されたPZTの結晶化温度より高い。Laが添加されたSrBi4Ti4O15やLaが添加されたBiTiO3を用いる場合には、熱処理温度を例えば600℃〜650℃程度とすることが好ましい。
なお、上述の第1〜第4実施例では、上部電極第1層の導電膜56、上部電極第3層の58としてイリジウム酸化物を用いる場合を例示したが、導電膜56または58の材料は、イリジウム酸化物に限定されるものではない。例えば、ルテニウム(Ru)の酸化物を用いることもできる。例えば、ルテニウムのターゲットを用いた反応性スパッタリングで、酸化ルテニウム膜56、58を形成することができる。
なお、酸化ルテニウムも酸化イリジウムと同様に正方体構造(ルチル構造)である。上部電極第1層の導電膜56として酸化ルテニウムを用いる場合も、例えば、十分に高い成膜温度のスパッタリングで形成することにより、成膜時に柱状結晶となった導電膜56を形成することができる。なお、導電膜56、58を酸化イリジウムで形成する場合について説明した好ましい膜厚の関係や、好ましい酸素組成比の関係は、導電膜56、58を酸化ルテニウムで形成する場合についても同様である。
上部電極第2層のABOx型酸化物膜57に強誘電体膜を形成し、上部電極第1層、第3層の導電膜56、58に酸化ルテニウム膜を形成した場合は、強誘電体膜57にルテニウムを拡散させることにより、導電膜に変換することができる。なお、組み合わせとしては、上部電極第1層、第3層の導電膜56、58の一方が酸化イリジウム膜、他方が酸化ルテニウム膜、という構造もあり得る。
以上説明したように、強誘電体キャパシタの上部電極において、酸化イリジウム膜または酸化ルテニウム膜の間に、ペロブスカイト構造あるいはビスマス層状構造を持つABOx型酸化物導電膜を挟んだ構造を採用することにより、水や水素等に対するバリア性向上が図られる。
ペロブスカイト構造あるいはビスマス層状構造を持つABOx型酸化物導電膜は、例えば、キャパシタ誘電体膜に用いる強誘電体材料に、上部電極を形成する導電膜からイリジウムまたはルテニウムを拡散させることで形成できる。
メモリ用キャパシタでは、ABOx型酸化物強誘電体膜を導電性に変換して上部電極の一部として用いることができ、平滑用キャパシタでは、ABOx型酸化物強誘電体膜をキャパシタ誘電体膜の一部として用いることができる。これにより、メモリ用キャパシタでは、相対的に、薄い強誘電体膜で厚い上部電極を持つキャパシタ構造が得られる。一方、平滑用キャパシタでは、相対的に、厚い強誘電体膜で薄い上部電極を持つキャパシタ構造が得られる。例えば、メモリ用キャパシタの薄い強誘電体膜は、動作電圧低減に好ましく、平滑用キャパシタの厚い強誘電体膜は、リーク電流低減に好ましい。
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
以上説明した第1実施例〜第4実施例を含む実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)
半導体基板と、
前記半導体基板の第1領域上方に形成された下部電極と、
前記下部電極上に形成された強誘電体膜と、
前記強誘電体膜上に形成された上部電極と
を有し、
前記上部電極は、
酸化イリジウムまたは酸化ルテニウムで形成された第1導電膜と、
前記第1導電膜上方に形成され、ペロブスカイト構造あるいはビスマス層状結晶構造を持つABOx型酸化物で形成された第2導電膜と、
前記第2導電膜上方に形成され、酸化イリジウムまたは酸化ルテニウムで形成された第3導電膜と
を有する半導体装置。
(付記2)
前記第2導電膜は、強誘電体材料にイリジウムまたはルテニウムが添加されて導電性となった材料で形成されている付記1に記載の半導体装置。
(付記3)
前記第2導電膜の厚さは、0.5nm〜30nmである付記1または2に記載の半導体装置。
(付記4)
さらに、
前記半導体基板の第2領域上方に形成された他の下部電極と、
前記他の下部電極上に形成された他の強誘電体膜と、
前記他の強誘電体膜上に形成された他の上部電極と
を有し、
前記他の強誘電体膜は、前記強誘電体膜よりも厚く、
前記上部電極の前記第2導電膜は、前記他の強誘電体膜の上層部分と共通な強誘電体材料に、イリジウムまたはルテニウムが添加されて導電性となった材料で形成されている付記1〜3のいずれか1つに記載の半導体装置。
(付記5)
前記他の強誘電体膜のうち前記上層部分より下方の下層部分は、前記強誘電体膜と共通な強誘電体材料で形成されている付記4に記載の半導体装置。
(付記6)
前記他の上部電極は、前記上部電極の前記第3導電膜と共通な導電材料で形成されている付記4または5に記載の半導体装置。
(付記7)
前記上部電極は、前記他の上部電極よりも厚い付記4〜6のいずれか1つに記載の半導体装置。
(付記8)
前記上部電極と前記強誘電体膜との界面は、前記他の上部電極と前記他の強誘電体膜との界面に比べて平坦性が高い付記4〜7のいずれか1つに記載の半導体装置。
(付記9)
前記下部電極、前記強誘電体膜、及び前記上部電極を有する強誘電体キャパシタは、メモリ素子の一部を形成し、前記他の下部電極、前記他の強誘電体膜、及び前記他の上部電極を有する強誘電体キャパシタは、平滑容量素子の一部を形成する付記4〜8のいずれか1つに記載の半導体装置。
(付記10)
前記第3導電膜の膜厚は、前記第1導電膜の膜厚よりも厚い付記1〜9のいずれか1つに記載の半導体装置。
(付記11)
前記第3導電膜の材料の酸素組成比は、前記第1導電膜の材料の酸素組成比よりも大きい付記1〜10のいずれか1つに記載の半導体装置。
(付記12)
半導体基板上方に、下部電極膜を形成する工程と、
前記下部電極上に、強誘電体膜を形成する工程と、
前記強誘電体膜上に、酸化イリジウムまたは酸化ルテニウムで第1導電膜を形成する工程と、
前記第1導電膜上方に、ペロブスカイト構造あるいはビスマス層状結晶構造を持つABOx型酸化物で第2導電膜を形成する工程と、
前記第2導電膜上方に、酸化イリジウムまたは酸化ルテニウムで第3導電膜を形成する工程と
を有する半導体装置の製造方法。
(付記13)
前記第2導電膜を形成する工程は、
前記第1導電膜上方に、ペロブスカイト構造あるいはビスマス層状結晶構造を持つABOx型酸化物強誘電体膜を形成する工程と、
前記第3導電膜の形成後、熱処理により、前記第1導電膜及び前記第3導電膜から、前記ABOx型酸化物強誘電体膜へイリジウムまたはルテニウムを拡散させて、前記ABOx型酸化物強誘電体膜を、導電性の前記第2導電膜に変換する工程と
を有する付記12に記載の半導体装置の製造方法。
(付記14)
さらに、前記第1導電膜を、第1領域で残すようにパターニングする工程を有し、
前記ABOx型酸化物強誘電体膜を形成する工程は、前記第1領域では前記第1導電膜上に、前記第1領域の外側では前記強誘電体膜上に、前記ABOx型酸化物強誘電体膜を形成し、
前記ABOx型酸化物強誘電体膜を、導電性の前記第2導電膜に変換する工程は、前記第1導電膜の近傍で、前記ABOx型酸化物強誘電体膜を前記第2導電膜に変換し、前記第2導電膜の外側では、前記ABOx型酸化物強誘電体膜を強誘電体のまま残し、
前記第2導電膜上方に、前記第3導電膜を形成する工程は、前記第2導電膜の外側では、強誘電体のまま残される前記ABOx型酸化物強誘電体膜上に、前記第3導電膜を形成する、付記13に記載の半導体装置の製造方法。
(付記15)
さらに、前記第3導電膜を形成する工程の前に、熱処理を行なって、前記ABOx型酸化物強誘電体膜を結晶化させる工程を有する付記14に記載の半導体装置の製造方法。
(付記16)
さらに、パターニングにより、
前記下部電極膜、前記強誘電体膜、及び、前記第1導電膜と前記第2導電膜と前記第3導電膜との積層を有する上部電極膜、を含む強誘電体キャパシタと、
前記下部電極膜、前記強誘電体膜と前記ABOx型酸化物強誘電体膜との積層を有する積層強誘電体膜、及び、前記第3導電膜を有する上部電極膜、を含む強誘電体キャパシタと
を形成する工程を有する付記14または15に記載の半導体装置の製造方法。
(付記17)
前記ABOx型酸化物強誘電体膜を形成する工程は、高周波スパッタリングで、前記ABOx型酸化物強誘電体膜を形成する付記13〜16のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。
(付記18)
前記第1導電膜を形成する工程は、成膜時に柱状に結晶化されているように、前記第1導電膜を形成する付記12〜17のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。
(付記19)
前記第3導電膜を形成する工程は、成膜時にアモルファスまたは微結晶であるように、前記第3導電膜を形成する付記12〜18のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。