JP5978541B2 - スタッド係止具 - Google Patents

Description

本発明は、ねじスタッド等のスタッドが固着された自動車のパネル等の被取付部材に、アンダーカバー等のシート状の取付部材を取付けるのに用いる固定具に関する。より詳しくは、取付部材を保持した係止具をスタッドに係止することによって、被取付部材に取付部材を取付けるのに用いるスタッド係止具に関する。

一般に、自動車のパネル等の被取付部材にアンダーカバー等のシート状の取付部材を取付けるのに固定具を用いている。アンダーカバーのような幅広のシート状取付部材をパネルに取付けるには、パネルの複数の所定位置にねじスタッドを溶接等により固着しておき、アンダーカバーにはそれらのスタッドを受入れる取付孔を所定位置に形成しておく。取付部材の取付孔に対応するスタッドを挿通するように、取付部材をパネルに添えて位置決めするとともに、取付部材から突出したねじスタッドにナットを工具等によって係合させることによって取付部材を自動車のパネル等の被取付部材に取付けている。

取付部材の取付作業を容易にするため、第１クリップと第２クリップとにより、取付部材を両側から挟持した状態で、スタッド受入孔にスタッドを受け入れて取付部材を取付けるスタッド係止具が知られている。
特許文献１は、このような第１クリップと第２クリップとからなる固定具（スタッド係止具）を開示する。第１クリップは、内筒部と、取付部材の一方の面に接するフランジと、内筒部内側の係止爪とを有し、第２クリップは、外筒部と、取付部材の他方の面に接するフランジとを有する。特許文献１の固定具は、シート状の取付部材を第１クリップと第２クリップとで挟持するように取付け、自動車のパネル等の被取付部材に固着された複数のスタッドに固定具を係止することによって、取付部材を被取付部材に取付ける。

図１に、特許文献１の固定具1'を示す。固定具1'は、硬質の合成樹脂製の第１クリップ2と、一体成形された硬質の合成樹脂製の第２クリップ3とからなる。第１クリップ2は、内筒部2bと、内筒部2bの一端部に形成されたフランジ2aとを有する。第２クリップ3は、外筒部3bと、外筒部3bの一端部に形成されたフランジ3aとを有する。
第１クリップ2の内筒部2bをシート状の取付部材5の取付孔9に挿入し、第２クリップ3の外筒部3bの中に第１クリップ2の内筒部2bを挿入する。第１クリップ2のフランジ2aと、第２クリップ3のフランジ3aとの間に、取付部材5が挟持された状態で、第１クリップ2と第２クリップ3とが連結される。固定具1'のスタッド受入孔に、自動車のパネル等の被取付部材6に固着されたスタッド7を挿入すると、第１クリップ2の係止爪4がスタッド7のねじ山に係合して係止され、取付部材5が被取付部材6に取付けられる。
第１クリップ2のフランジの中央に、六角孔8が形成され、その六角孔8に六角レンチを係合させて回転させることにより、スタッド7に固定具1'を更にきつく締め、又は取外すことができる。

特許文献１の係止具は、第１クリップ2の中央部に六角レンチを挿入して回転させるための六角孔が形成されている。六角孔は六角レンチに係合するように細長いので、六角孔の上方から見ても、スタッドに対して第１クリップがどこまで挿入されているか目視確認しにくかった。第１クリップが完全に挿入されていないと、引き抜き荷重が低下する恐れがある。
また、特許文献１の係止具は、スタッドを第１クリップのスタッド受入孔に受入れるための底面のテーパ部がなかった。そのため、スタッドをスタッド受入孔に挿入するとき、スタッドはスタッド受入孔に案内されにくく、挿入しにくい場合があった。

特許文献２は、自動車の車体パネル等に立設されるスタッドボルトに固定することが出来るスタッドボルト用クリップを開示する。スタッドボルト用クリップは、１つの部品である。スタッドボルト用クリップは、各側壁部の内側面のボルト挿入口側の端部角部から一対の第１係止部材が互いに対向するように形成され、各側壁部の内側面の軸方向略中央部から一対の第２係止部材が互いに対向するように形成されている。各第１係止部材の内側面には、ねじピッチの小さい第１スタッドボルトのねじ溝に噛み合う各３つの第１係止リブが形成され、各第２係止部材の内側面には、ねじピッチの大きい第２スタッドボルトのねじ溝に噛み合う各３つの第２係止リブが形成されている。

ねじピッチの小さい第１スタッドボルトに固定するときは、３つの第１係止リブが第１スタッドボルトのねじ溝に噛み合い、３つの第２係止リブのいずれかが第１スタッドボルトのねじ溝に係合する。ねじピッチの大きい第２スタッドボルトに固定するときは、３つの第１係止リブのいずれかが第２スタッドボルトのねじ溝に係合し、３つの第２係止リブが第２スタッドボルトのねじ溝に噛み合う。

特許文献２のスタッドボルト用クリップは、異なるピッチの２つのスタッドボルトに固定することが出来る。しかし、スタッドボルト用クリップを第１スタッドボルトに固定するときは、３つの第２係止リブの一部しかスタッドボルトのねじ溝に噛み合わない。スタッドボルト用クリップを第２スタッドボルトに固定するときは、３つの第１係止リブの一部しかスタッドボルトのねじ溝に噛み合わない。そのため、スタッドボルト用クリップを確実に取付けられない恐れがある。
また、スタッドボルト用クリップを取付部材に取付けるには、挟持リブを取付部材の部材通し溝に挿入し、クリップを９０度回転させて、挟持リブとフランジ部とにより、取付部材を挟持する。そのため、取付部材に、四角形の部材通し溝を形成した取付孔を形成しておく必要があり、取付部材の加工の手間がかかる。

そのため、自動車のパネル等の被取付部材にアンダーカバー等の取付部材を簡単に確実に取付けることの出来るスタッド係止具が求められていた。
また、スタッドに対してクリップが完全に取付けられているか簡単に確認することの出来るスタッド係止具が求められていた。

特開２００７−２９２１４６号公報 特開２００９−１６２３５８号公報

従って、本発明の目的は、自動車のパネル等の被取付部材にアンダーカバー等の取付部材を簡単に確実に取付けることの出来るスタッド係止具を提供することである。
本発明の別の目的は、スタッドに対してクリップが完全に取付けられているか簡単に確認することの出来るスタッド係止具を提供することである。

この目的を達成するため、本発明の１態様は、第１クリップと第２クリップとを備え、第１クリップと第２クリップとは、取付部材を両側から挟持した状態で相互に連結され、被取付部材に固着されたスタッドをスタッド受入れ空間に受入れて前記スタッドに係止されることにより被取付部材に固定され、前記取付部材を前記被取付部材に取付けるスタッド係止具であって、
前記第１クリップは、取付部材の取付孔に挿入される中空の内筒部と、前記内筒部の一端に設けられたフランジと、前記内筒部の内側に形成され、前記スタッドのねじ山に係合する係止爪と、前記第２クリップに連結するための連結手段とを有し、
前記第２クリップは、前記第１クリップの内筒部を収容する中空の外筒部と、前記外筒部の一端に設けられたフランジと、前記第１クリップに連結するための連結手段とを有し、
前記第１クリップの前記フランジの上面から軸心に沿って前記内筒部に向かって狭くなるテーパ部が形成され、前記フランジの上面から前記テーパ部を通して、前記スタッドの先端部分を見ることが出来ることを特徴とするスタッド係止具である。

上記構成により、第１クリップと第２クリップとにより、取付部材を両側から挟持し、被取付部材に固着されたスタッドのねじ山に第１クリップの係止爪を係合させることにより、被取付部材に取付部材を簡単に確実に取付けることが出来る。
また、フランジの上面からテーパ部を通して、スタッドの先端部分を見ることが出来るので、スタッドに対してクリップが完全に取付けられているか簡単に確認することが出来る。

前記第１クリップの前記フランジは、前記第１クリップの前記内筒部を前記取付部材の前記取付孔に挿入した状態で、前記取付部材の一方の面に接し、
前記第２クリップの前記フランジは、前記第１クリップの前記内筒部を前記第２クリップの前記外筒部に収容した状態で、前記取付部材の他方の面に接することが好ましい。
これにより、取付部材を確実に挟持することが出来る。

前記スタッドの先端部をスタッド受入空間に案内するため、前記内筒部の底部には、前記フランジに向かって狭くなるテーパが付いたガイド部が形成されていることが好ましい。
前記ガイド部の角度は115〜135°であることが好ましい。
これにより、スタッドの先端部をスタッド受入空間に容易に案内することが出来る。

前記第２クリップの前記フランジは、前記第１クリップの前記フランジに向かって、前記取付部材を弾性的に押圧する弾性縁部を有することが好ましい。
これにより、取付部材をがたつかないように挟持することが出来る。

前記第２クリップのフランジには、円周方向に細長い対向する２つのフランジ孔が形成され、前記フランジ孔に隣接する部分の前記弾性縁部は、より撓みやすくなっていることが好ましい。
これにより、取付部材を弾性的に押圧することが出来る。

前記内筒部は軸心方向に沿って２対の対向する係止爪を有し、
前記内筒部は軸心方向に沿って延びる対向するリブを有し、
前記係止爪と前記リブとにより、前記スタッド受入れ空間を形成することが好ましい。
これにより、スタッドをスタッド受入れ空間内に位置決めすることが出来る。

各々の前記係止爪は、異なるねじピッチを有する２つのスタッドに係合することが出来、異なるねじピッチを有する２つのスタッドのねじ溝に入る複数の第１の爪先端と、一方のスタッドのねじ溝に入る第２の爪先端とを有することが好ましい。
これにより、異なるねじピッチを有する２つのスタッドに確実に係合することが出来る。

本発明によれば、自動車のパネル等の被取付部材にアンダーカバー等の取付部材を簡単に確実に取付けることの出来るスタッド係止具を得ることが出来る。
また、スタッドに対してクリップが完全に取付けられているか簡単に確認することの出来るスタッド係止具を得ることが出来る。

従来のスタッド係止具を用いて、取付部材をスタッド付きの被取付部材に取付けた状態を示す断面図である。 本発明の１実施形態のスタッド係止具の第１クリップの平面図である。 図２の第１クリップの正面図である。 図２の第１クリップの右側面図である。 図２の第１クリップの図２のＡ−Ａ線断面図である。 図２の第１クリップの図３のＤ−Ｄ線断面図である。 図２の第１クリップの図２のＨ−Ｈ線断面図である。 図２の第１クリップの図３のＢ−Ｂ線断面図である。 図２の第１クリップの図４のＣ−Ｃ線断面図である。 図２の第１クリップの図３のＦ−Ｆ線断面図である。 図３のＧ部分の拡大図である。 本発明の１実施形態のスタッド係止具の第２クリップの斜視図である。 図１２の第２クリップの平面図である。 図１２の第２クリップの正面図である。 図１２の第２クリップの底面図である。 図１２の第２クリップの右側面図である。 図１２の第２クリップの図１３のＡ−Ａ線断面図である。 図１２の第２クリップの図１３のＤ−Ｄ線断面図である。 図１２の第２クリップの図１３のＨ−Ｈ線断面図である。 図１２の第２クリップの図１７のＣ部分の拡大図である。 本発明の１実施形態のスタッド係止具を用いて、取付部材をスタッド付きの被取付部材に取付けた状態を示す断面図である。 図２１のＪ部分の拡大図である。 図２１のスタッド係止具を不完全ねじ部を有するスタッドに取付けた状態を示す断面図である。

以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。本発明の１実施形態に係るスタッド係止具1は、図２〜図１１に示す一体成形された硬質の合成樹脂製の第１クリップ10と、図１２〜図２０に示す一体成形された硬質の合成樹脂製の第２クリップ30とからなる。
第１クリップ10及び第２クリップ30のそれぞれの構成を説明する前に、スタッド係止具1の構成の概略を説明する。図２１は、本発明の１実施形態のスタッド係止具1を用いて、取付部材51をスタッド70付きの被取付部材52に取付けた状態を示す断面図である。スタッド係止具1の第１クリップ10と第２クリップ30とが、アンダーカバー等のシート状の取付部材51を挟持した状態で連結される。スタッド係止具1のスタッド受入空間24に、自動車のパネル等の被取付部材52に固着されたスタッド70を挿入すると、係止爪13がスタッド70のねじ山に係止され、取付部材51が被取付部材52に取付けられる。

スタッド係止具1の第１クリップ10は、中空の内筒部12と、内筒部12の一端に設けられたフランジ11と、内筒部12の内側に形成されてスタッド70に係合する係止爪13とを有する。内筒部12は、取付部材51の取付孔53に挿入される。フランジ11は、内筒部12を取付孔に挿入した状態で取付部材の一方の面に接する。
スタッド係止具1の第２クリップ30は、第１クリップ10の内筒部12を収容する中空の外筒部32と、外筒部32の一端に設けられたフランジ31とを有する。フランジ31は、内筒部12を外筒部32に収容した状態で取付部材51の他方の面に接する。第１クリップ10の内筒部12の上の首部17には、係止肩18が形成される。第２クリップ30の外筒部32の内側に係止部39が形成される。係止肩18と係止部39とは、第１クリップ10と第２クリップ30とを相互に連結するための連結手段となる。

なお、被取付部材52には、複数のスタッド70が所定の間隔及び配置のレイアウトで溶接等によって固着され、アンダーカバーのような幅広のシート状の取付部材を複数の場所で保持するようになっている。１実施形態では、スタッド70は、側面にねじが形成されたねじスタッドが用いられる。スタッド70は、側面に周溝が形成された周溝スタッドであってもよいが、取付部材を被取付部材から取り外すのに便利な点でねじスタッドは好ましい。アンダーカバー等のシート状の取付部材51には、複数のスタッド70の位置に合わせてスタッド70を挿通するように対応位置に取付孔53が形成されている。

（第１クリップ）
図２〜図１１を参照して、第１クリップ10について説明する。図２は本発明の１実施形態のスタッド係止具の第１クリップの平面図である。図３は第１クリップの正面図、図４は右側面図、図５は図２のＡ−Ａ線断面図である。
図３に示すように、第１クリップ10は、中空の内筒部12と、内筒部12の一端に形成されたフランジ11とを有する。内筒部12は、第２クリップ30の外筒部32に挿入される。内筒部12は、スタッド70を受入れるように中空の円筒体に形成され、その内側には、スタッド70に係合する弾性の係止爪13が複数対（図示の例では２対）設けられている。内筒部12は、スタッド70を受入れることの出来る内径を有し、第２クリップ30の外筒部32に挿入できる外径を有する。内筒部12が取付部材51の取付孔に挿入されると、フランジ11は、取付部材51の一方の面（上面）に接面する。

図３、４に示すように、内筒部12は、下部のリング状のベース部12aと、上部のリング状の頂部12bと、ベース部12aと頂部12bとの間に軸方向に延びる側壁部12cとからなる。
ベース部12aと頂部12bとの間には、軸線方向に延びる複数個（図示の例では２個）のリブ21が形成される。図３のＢ−Ｂ線断面図である図８に示すように、対向するリブ21の間の間隔は、スタッド70の外径より少し大きい。リブ21と係止爪13とにより、スタッド70を受入れるスタッド受入空間24を形成し、受入れたスタッド70を第１クリップ10の軸心に一致するように規制する。

図３のＤ−Ｄ線断面図である図６に示すように、リブ21の外側は、上下の中間部分で軸心に近くなり、凹状になっている。
図３のＦ−Ｆ線断面図である図１０に示すように、内筒部12のベース部12aは、リブ21の下側に凹み部19が形成されている。

側壁部12cの基部から、対向する１対のアーム16bがスタッド受入空間24の内側に斜め上方に向かって延びる。それぞれのアーム16bには、下側係止爪13bが支持されている。側壁部12cの中間部分から、別の対向する１対のアーム16aがスタッド受入空間24の内側に斜め上方に向かって延びる。それぞれのアーム16aには、上側係止爪13aが支持されている。
スタッド受入空間24にスタッド70が挿入されると、アーム16a,bが弾性的に撓んでスタッド70を受入れる。係止爪13a,bの爪先端は、スタッド70のねじ山の間のねじ溝に入り込んで係合し、第１クリップ10をスタッド70に固定する。アーム16a,bが弾性的に撓むので、第１クリップ10を適度の力でスタッド70へ押込むことができる。係止爪13a,bが係合すると、抜けにくく強固に固定できる。対向する係止爪13a,bは、スタッド70のねじのピッチに合わせて相互に高さ位置がずれている。

本発明の係止爪13a,bは、異なるねじピッチを有する２種類のスタッドに係止することが出来るようになっている。本実施形態では、ねじピッチ1.0ｍｍのM6スタッドボルトと、ねじピッチ1.6ｍｍのT6スタッドボルトとに係止することが出来る。
図３のＧ部分の拡大図である図１１は、下側係止爪13bを示す。上側係止爪13aも同じ形状である。各々の下側係止爪13bは、上端部の爪先端61bと、中間の爪先端62bと、下端部の爪先端63bとを有する。爪先端61bと爪先端62bとの間は、谷部64bである。爪先端62bと爪先端63bとの間は、谷部64bより平坦部が長い谷部65bである。各々の上側係止爪13aも同様に、爪先端と谷部とを有する。

上端部の爪先端61bと下端部の爪先端63bとは、M6スタッドボルトと、T6スタッドボルトとの両方のねじ溝に入ることが出来る。中間の爪先端62bは、M6スタッドボルトのねじ溝に入ることが出来、T6スタッドボルトのねじ山の間の部分に入ることが出来る。
このように、本実施形態の係止爪13a,bは、M6スタッドボルトとT6スタッドボルトとの両方に係合することが出来る。

図３に戻って、内筒部12と、フランジ11との間には、内筒部12より小径の首部17が設けられる。図４のＣ−Ｃ線断面図である図９に示すように、首部17の内側には、リブ21の上の対向する位置に２対の凸部17bが形成され、係止爪13の上の対向する位置に１対の凸部17aが形成される。対向する凸部17aと凸部17bとにより、スタッド70がスタッド受入空間24に位置するように規制する。
首部17に隣接する内筒部12の頂部12bの端部は、係止肩18であり、第１クリップ10を第２クリップ30に連結するための連結手段として作用する。図３、４に示すように、係止肩18は、外周のほぼ全周に渡って形成され、内筒部12を第２クリップ30の外筒部32に挿入すると、外筒部32の係止部39が係止肩18に係合して、第２クリップ30と第１クリップ10とが相互に連結される。

図２のＡ−Ａ線断面図である図５に示すように、フランジ11上面から軸心に沿って首部17まで、下の方が狭くなるテーパ状のテーパ部14が形成されている。テーパ部14は、内筒部12の頂部12bのスタッド通し孔15の部分に続く。スタッド通し孔15は、スタッド70の直径より少し大きい内径を有し、スタッド70が第１クリップ10の軸心に位置するように規制するが、ねじには係合しない。フランジ11の上面には、六角レンチ用の孔は形成されていない。
テーパ部14が形成されているので、フランジ11上面からテーパ部14を見ると、スタッド70の先端部分を肉眼で確認することが出来る。第１クリップ10がスタッド70に十分係合していないと、スタッド70の先端部分を十分に見ることができないので、係合が不十分であると直ぐに確認することが出来る。

図５、６、７に示すように、凸部17a、17bは、フランジ11の上面からスタッド通し孔まで伸びている。マイナスドライバー等の工具をテーパ部14に挿入し工具の先端を凸部17b又は凸部17aに引っ掛け、内筒部12を含む第１クリップ10の全体をスタッド70の軸回りに回転させることができる。工具により、内筒部12を含む第１クリップ10の全体をスタッド70の軸回りに回転させ、係止爪13を更に強くスタッド70へ係合させることが出来る。又、工具により、第１クリップ10を逆回転させて締め付けを解除させることが出来る。更に、後述するように、工具により、第１クリップ10を回転させて、フランジ11の下面の溝部を取付部材の突起に収容させることが出来る。

図２１は、スタッド係止具1を用いて、取付部材51をスタッド70付きの被取付部材52に取付けた状態を示す断面図である。図２２は、図２１のＪ部分の拡大図である。
フランジ11の下面には、複数個の溝部27が直線状に平行に並んで形成されている。溝部27は、取付部材51の上面に形成された突起56を受入れる。溝部27の両側には凸部29が形成されている。取付部材の突起56は、溝部27に係合して、第１クリップ10が内筒部12の軸線回りに回転するのを防止する。第１クリップ10を第２クリップ30に押込んで連結した後、第１クリップ10を小さな角度だけ回転させると、いずれかの溝部27に突起56が収容され、スタッド係止具1が使用中に緩まないように維持することができる。なお、溝部27には取付部材の突起56が係合しているが、作業者が取付部材を取外す場合には第１クリップ10を回転させることができ、第１クリップ10をスタッド70の軸線回りに回転させて係止爪13をスタッド70のねじ山から外し、第１クリップ10をスタッド70から取外すことができる。

図５に示すように、内筒部12のベース部12aには、上方へ向かって狭くなるテーパが付いたガイド部23が形成されている。ガイド部23は、スタッド受入空間24に連続している。第１クリップ10のガイド部23により、スタッド70の先端部はスタッド受入空間24に案内され、第１クリップ10の係止爪13をスタッド70のねじ山に係合させることが出来る。ガイド部23の角度が大きすぎると、第１クリップ10のベース部12aからアーム16までの距離を多くとる必要が有り第１クリップ10が大きくなる。ガイド部23の角度が小さすぎると、スタッドの先端部が、ガイド部23の入口に入りにくくなる。ここに、ガイド部23の角度とは、図５において、軸心に対して対向するガイド部23の表面がなす角度である。ガイド部23の角度は115〜135°が好ましい。１実施例では、ガイド部23の角度は124°である。

（第２クリップ）
図１２〜図２０を参照して、第２クリップ30について説明する。図１２は第２クリップ30の斜視図、図１３は平面図、図１４は正面図、図１５は底面図、図１６は右側面図である。
第２クリップ30は、中空の外筒部32と、外筒部32の一端に形成されたフランジ31とを備える。外筒部32は、第１クリップ10の内筒部12を収容する。フランジ31の上面は、取付部材51の他方の面（下面）に接面する。フランジ31の外縁部には、斜め上方に向かって延びる弾性縁部38が形成されている。弾性縁部38は、取付部材51の下面を第１クリップ10のフランジ11に向けて弾性的に押圧する。フランジ31の弾性縁部38は、取付部材51に圧接するようにフランジ31の縁部に張出して形成されているのが好ましい。
図１３、図１３のＤ−Ｄ線断面図である図１８に示すように、フランジ31の第２クリップ30の軸心を中心にして対向し、円周方向に細長い２つのフランジ孔41が形成されている。フランジ孔41は、弾性縁部38が弾性的に撓むのを助ける。

外筒部32は、第１クリップ10の内筒部12を受入れるように、内筒部12より大きい内径を持つ中空円筒に形成される。
外筒部32は係止部39を有する。係止部39は、第１クリップ10に第２クリップ30を連結するための第２クリップ側の連結手段として作用する。図１６に示すように、係止部39は、外筒部32の軸線方向に延びる一対の側部スリット34により、外筒部32から分離されている。また、図１３のＡ−Ａ線断面図である図１７、図１７のＣ部分の拡大図である図２０に示すように、係止部39は、上面スリット35によって外筒部32の本体から分離されている。そのため、係止部39は、弾性的に撓みやすい。また、係止部39の係止肩との係合面は、図２０に示すように、角度（実施例では14°）をもって成形されており、第１クリップが外れ難くなっている。

第１クリップ10の内筒部12が外筒部32に挿入され、係止部39が首部17の外周部に来ると、係止部39は、第１クリップ10の連結手段としての係止肩18に容易に弾性的に係合する。係止部39は、第１クリップ10への連結を確実に維持するため、複数個（図示の実施形態では２個）設けられる。

図１３のＨ−Ｈ線断面図である図１９に示すように、第２クリップ30の軸心に対してフランジ孔41、上面スリット35がない方向では、フランジ31と外筒部32とは、連続している。
図１４、１５に示すように、外筒部32の外側面には、外筒部32の強度を高くするための軸線方向に延びるリブ37が複数本（図示の実施形態では４本）形成されている。図１９はリブ37の部分の断面を示す。

再度、スタッド係止具1により、取付部材51をスタッド70付きの被取付部材52に取付けた状態を示す図２１を参照する。スタッド係止具1は、第２クリップ30と第１クリップ10とを備える。スタッド係止具1は、第２クリップ30と第１クリップ10とが取付部材51を間に挟んで相互に連結され、取付部材51を一定の挟持力で挟持する。その挟持力により、第２クリップ30のフランジ31と第１クリップ10のフランジ11とが取付部材51をスタッド70の軸線方向にはがたつかないように挟持する。この挟持力により、取付部材51の突起56が第１クリップ10のフランジ11の下面の溝部27から外れないように押圧される。フランジ31の弾性縁部38によって、取付部材51のがたつきが防止され、第１クリップ10と第２クリップ30の、軸線周りの相対回転が防止される。取付部材51が被取付部材52から外れるのが防止される。温度変化により取付部材51が膨張又は収縮した場合、取付部材51は、面方向へは移動することができる。

（スタッド係止具の取付）
図２１を参照して、このような構成の第１クリップ10と第２クリップ30とからなるスタッド係止具1を取付部材51を挟持するように取付け、次に、スタッド係止具1付きの取付部材51をスタッド70が固着された被取付部材52に取付ける動作を説明する。
スタッド係止具1を取付部材51に取付けるには、第１クリップ10の内筒部12を取付部材51の取付孔53に挿入できるように位置決めし、第２クリップ30の外筒部32を、取付孔53に挿入される内筒部12を受入れるように位置決めする。第１クリップ10を、取付孔53に内筒部12を挿入するように押込む。次に、第２クリップ30を、外筒部32が第１クリップ10の内筒部12を収容するように押込む。

この動作により、第１クリップ10のフランジ11と第２クリップ30のフランジ31との間に取付部材51が挟まれる。更に、第１クリップ10と第２クリップ30を相互に押圧するように押込むと、第１クリップ10の内筒部12の首部17の係止肩18に第２クリップ30の係止部39が係止される。第１クリップ10の係止肩18と第２クリップ30の係止部39とが係止されると、第１クリップ10と第２クリップ30とが相互に連結され、第１クリップ10のフランジ11と第２クリップ30のフランジ31とによって、取付部材51が挟持される。このとき、第２クリップ30のフランジ31の外縁部の弾性縁部38が取付部材51を圧接して、取付部材51を所定の挟持力で挟持する。

図２２は、図２１のＪ部分の拡大図である。第１クリップ10のフランジ11と第２クリップ30のフランジ31との間に取付部材51が挟持されるとき、第１クリップ10のフランジ11の下面の溝部27に、取付部材51に形成された突起56が収容される。溝部27の断面形状は、突起56の形状に合わせて形成されるのが好ましい。
これらの溝部27に突起56が収容されることにより、第１クリップ10と第２クリップ30の軸線周りの相対回転が防止され、スタッド係止具1の使用中に緩むのを防止できる。

溝部27の縁部には、凸部29が形成されている。作業者が取付部材51を取外す場合には第１クリップ10のテーパ部14にマイナスドライバー等の工具を挿入し、第１クリップ10をスタッド70の軸線回りに回転させて、係止爪13をスタッド70から外すことが出来る。
取付部材51に複数の所定位置に取付孔53が形成されている場合には、対応する取付孔53に、第１クリップ10と第２クリップ30とを備えるスタッド係止具1が取付けられる。

被取付部材52が例えば自動車のパネルの場合には、その後、このようにスタッド係止具1が取付けられた取付部材51は、自動車の組立てライン等に搬入される。
組立作業者は、スタッド係止具1が取付けられた取付部材51を、自動車のパネル等の被取付部材52の所定位置に位置決めする。被取付部材52に固着した複数のスタッド70のそれぞれが、スタッド係止具1の第１クリップ10の内筒部12の中空部分に受入れられるように、取付部材51を位置決めする。スタッド係止具1が取付部材51に先付けされているので、作業者は、スタッド係止具1を持つ作業がなく、取付部材51のスタッド係止具1をスタッド70に位置決めする作業に専念することができる。この位置決めのときには、第１クリップ10のガイド部23を利用して、スタッド70の先端を第１クリップ10のスタッド受入空間24に容易に案内することができる。

位置決め作業の後、第１クリップ10の内筒部12の内側のスタッド受入空間24にスタッド70を受入れるように、取付部材51を被取付部材52に押付ける。この動作により、スタッド70がスタッド受入空間24に挿入され、内筒部12の内側に形成された係止爪13が外側に撓んでスタッド70を受入れる。更に押付けると、係止爪13はスタッド70の側面のねじ上をスライドする。第2クリップ30の外筒部32の下面が被取付部材52に当接すると、係止爪13はスライドを停止してスタッド70のねじ山に係合して、取付部材51が被取付部材52に固定される。

取付部材51を被取付部材52に取付けた後、更に、第１クリップ10のフランジ11のテーパ部14にマイナスドライバーを挿入して、第１クリップ10をスタッド70の軸回りに回転させ、第１クリップ10の係止爪13を更にきつく係合させることができる。又、第１クリップ10のテーパ部14にマイナスドライバーを挿入して、第１クリップ10を逆転させてその締め付けを解除し、取付部材51を被取付部材52から取外すこともできる。

（係止爪のピッチ）
図２３は、図２１のスタッド係止具を不完全ねじ部を有するスタッドに取付けた状態を示す断面図である。スタッド70は、基部に近い部分に、不完全ねじ部71が形成されている。不完全ねじ部71は、ねじ山を少し潰したような形状である。スタッド70に取付部材51を取付けるとき、スタッド係止具ではなく、ナットで取付部材51をスタッド70に取付ける場合がある。ナットが緩まないようにするため、不完全ねじ部71を設けている。
また、スタッド70の先端部近くにも、不完全ねじ部72がある。不完全ねじ部72は、スタッド70のねじ山を成形するときに出来る。
本実施形態のスタッド係止具1を用いる場合、係止爪13a,bが不完全ねじ部71,72と係合すると、不完全ねじ部71,72と係止爪13a,bとの接触は不安定となる。

本実施形態では、スタッド70に係止する係止爪13は上下に２段設けられている。不完全ねじ部71はスタッド70の基部にあり、不完全ねじ部72はスタッド70の先端近くにある。従来は、対を成す上側係止爪13aと下側係止爪13bとを上下方向に大きくずらしていた為、上側係止爪13aの爪先端は、不完全ねじ部72のねじ山に当接する箇所があり、下側係止爪13bの爪先端は、不完全ねじ部71のねじ山に当接する箇所があった。
対を成す上側係止爪13aと下側係止爪13bとの上下方向のずらしを小さくすれば、上側係止爪13aの爪先端は、不完全ねじ部72のねじ山に当接しにくく、下側係止爪13bの爪先端は、不完全ねじ部71のねじ山に当接しにくくなる。

本実施形態の第１クリップ10の実施例では、一対の下側係止爪13bのうち低い方（図２３の右側）の係止爪13bの上側の爪先端61bまでの高さlbは、被取付部材の上面から9.6ｍｍ（従来は8.6ｍｍ）である。そのため、下側係止爪13bは下側の不完全ねじ部71に当接し難くなる。
また、一対の上側係止爪13aのうち高い方（図２３の左側）の係止爪13aの上側の爪先端61aの、被取付部材52の上面からの高さlaは15.1ｍｍ（従来は16.1ｍｍ）である。そのため、上側係止爪13aは、上側の不完全ねじ部72に当接し難くなる。
低い方の下側係止爪13bの上側の爪先端61bから、高い方の上側係止爪13aの上側の爪先端61aまでの距離la-lbは5.5ｍｍ（従来は7.5ｍｍ）であり、爪先端61,62,63は不完全ねじ部71,72に当接し難くなっている。

本実施形態によれば、第１クリップのフランジ11と、第２クリップのフランジ31とで取付部材51を挟持し、第１クリップ10の内筒部12の内側のスタッド受入空間24に、スタッド70を挿入し、係止爪13をスタッド70のねじ山に係合させることによって、被取付部材52に取付部材51を簡単に確実に取付けることが出来る。
また、テーパ部14からスタッド70の頭部を見ることが出来るので、スタッド70に対して第１クリップ10が完全に取付けられているか簡単に確認することが出来る。

1 スタッド係止具
2 第１クリップ
3 第２クリップ
4 係止爪
5 取付部材
6 被取付部材
7 スタッド
8 六角孔
9 取付孔
10 第１クリップ
11 第１クリップのフランジ
11a 凹部
12 内筒部
12a ベース部
12b 頂部
12c 側壁部
13 係止爪
13a 上側係止爪
13b 下側係止爪
14 テーパ部
15 スタッド通し孔
16a,16b アーム
17 首部
17a,17b 凸部
18 係止肩
19 凹み部
21 リブ
22 十字型リブ
23 ガイド部
24 スタッド受入空間
27 溝部
29 凸部
30 第２クリップ
31 第２クリップのフランジ
32 外筒部
34 側部スリット
35 上面スリット
37 リブ
38 弾性縁部
39 係止部
41 フランジ孔
51 取付部材
52 被取付部材
53 取付孔
56 突起
61a,b, 62a,b, 63a,b 爪先端
64a,b, 65a,b 谷部
70 スタッド
71,72 不完全ねじ部

Claims (8)

1. 第１クリップと第２クリップとを備え、第１クリップと第２クリップとは、取付部材を両側から挟持した状態で相互に連結され、被取付部材に固着されたスタッドをスタッド受入れ空間に受入れて前記スタッドに係止されることにより被取付部材に固定され、前記取付部材を前記被取付部材に取付けるスタッド係止具であって、
   前記第１クリップは、取付部材の取付孔に挿入される中空の内筒部と、前記内筒部の一端に設けられたフランジと、前記内筒部の内側に形成され、前記スタッドのねじ山に係合する係止爪と、前記第２クリップに連結するための連結手段とを有し、
   前記第２クリップは、前記第１クリップの内筒部を収容する中空の外筒部と、前記外筒部の一端に設けられたフランジと、前記第１クリップに連結するための連結手段とを有し、
   前記第１クリップの前記フランジの上面から軸心に沿って前記内筒部に向かって狭くなるテーパ部が形成され、前記フランジの上面から前記テーパ部を通して、前記スタッドの先端部分を見ることが出来、前記テーパ部には前記フランジの上面から前記テーパ部に延びる凸部が形成されていることを特徴とするスタッド係止具。
2. 請求項１に記載のスタッド係止具であって、
   前記第１クリップの前記フランジは、前記第１クリップの前記内筒部を前記取付部材の前記取付孔に挿入した状態で、前記取付部材の一方の面に接し、
   前記第２クリップの前記フランジは、前記第１クリップの前記内筒部を前記第２クリップの前記外筒部に収容した状態で、前記取付部材の他方の面に接するスタッド係止具。
3. 請求項１又は２に記載のスタッド係止具であって、前記スタッドの先端部をスタッド受入空間に案内するため、前記内筒部の底部には、前記フランジに向かって狭くなるテーパが付いたガイド部が形成されているスタッド係止具。
4. 請求項３に記載のスタッド係止具であって、前記ガイド部の角度は115〜135°であるスタッド係止具。
5. 請求項１乃至４の何れか１項に記載のスタッド係止具であって、前記第２クリップの前記フランジは、前記第１クリップの前記フランジに向かって、前記取付部材を弾性的に押圧する弾性縁部を有するスタッド係止具。
6. 請求項５に記載のスタッド係止具であって、前記第２クリップのフランジには、円周方向に細長い対向する２つのフランジ孔が形成され、前記フランジ孔に隣接する部分の前記弾性縁部は、より撓みやすくなったスタッド係止具。
7. 請求項１乃至６の何れか１項に記載のスタッド係止具であって、
   前記内筒部は軸心方向に沿って２対の対向する係止爪を有し、
   前記内筒部は軸心方向に沿って延びる対向するリブを有し、
   前記係止爪と前記リブとにより、前記スタッド受入れ空間を形成するスタッド係止具。
8. 請求項１乃至７の何れか１項に記載のスタッド係止具であって、
   各々の前記係止爪は、異なるねじピッチを有する２つのスタッドに係合することが出来、異なるねじピッチを有する２つのスタッドのねじ溝に入る複数の第１の爪先端と、一方のスタッドのねじ溝に入る第２の爪先端とを有するスタッド係止具。

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