以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。尚、図面は模式的なものであり、各部材の厚みと幅との関係、それぞれの部材の厚みの比率などは現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面の相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
本発明の内視鏡リプロセッサは、内視鏡に対して、再生処理を施す装置である。ここでいう再生処理とは特に限定されるものではなく、水によるすすぎ処理、有機物等の汚れを落とす洗浄処理、所定の微生物を無効化する消毒処理、全ての微生物を排除もしくは死滅させる滅菌処理、またはこれらの組み合わせ、のいずれであってもよい。尚、以下に示す実施の形態においては、内視鏡リプロセッサは、内視鏡洗浄消毒装置を例に挙げて説明する。また、内視鏡洗浄消毒装置における内視鏡の薬液処理に用いる薬液は、消毒液を例に挙げて説明する。
(第1実施の形態)
図1は、本実施の形態の内視鏡洗浄消毒装置の構成を概略的に示す図、図2は、図1の内視鏡洗浄消毒装置の記憶部に格納された消毒パラメータを示す図表である。
図1に示すように、内視鏡洗浄消毒装置1は、内視鏡収容部4と、薬液タンク58と、薬液移送部65と、第1調整部73と、濃度検出部74と、比較部75を具備する制御部70と、記憶部79とを具備して主要部が構成されている。
内視鏡収容部4は、消毒液処理される内視鏡100が収容されるものであり、消毒工程において、内視鏡収容部4に貯留された消毒液Mにより内視鏡100が浸漬される。
尚、消毒液Mとしては、例えば過酢酸と緩衝剤とが混合された混合液が、水により所定の初期濃度Appmに希釈されたものが挙げられる。
また、過酢酸以外の公知の消毒液を適用可能であり。例えば、消毒液Mとしては、緩衝剤を用いずに原液そのものが水により所定の初期濃度Appmに希釈されたもの、例えばグルタラールアルデヒドが水により所定の初期濃度Appmに希釈されたものでも構わない。
さらに、消毒液Mは、複数の有効濃度下限値を有しており、有効濃度下限値毎に消毒効果が確認されている消毒パラメータを有している。
具体的には、消毒液Mは、図2に示すように、初期濃度Appmよりも低い第1基準濃度(有効濃度下限値)Bppm(B<A)、消毒液温度D℃、浸漬時間Fminを有する第1の効果パラメータと、有効濃度下限値Bppmよりも低い第2基準濃度(有効濃度下限値)Cppm(C<B)、消毒液温度E℃(E>D)、浸漬時間Fminを有するとともに第1の効果パラメータと同等の消毒液効果(薬効)を発揮する第2の効果パラメータを有している。
尚、第1基準濃度Bppmは、従来の有効濃度下限値とされていた消毒液Mの濃度である。
また、消毒液Mは、上述したように、使用に伴い、あるいは自然劣化により、濃度が低下する。
薬液タンク58は、薬液回収管路61、薬液管路64を介して内視鏡収容部4に連通されるとともに、消毒液Mが貯留される。
具体的には、後述する消毒液トレー12に載置された薬液ボトル12a、12b(いずれも図15参照)から、薬液供給管路62(いずれも図16参照)を介して供給され、水により初期濃度Appmに希釈された消毒液Mや、内視鏡収容部4から薬液回収管路61を介して回収された初期濃度Appm〜第2基準濃度Cppmまでの濃度を有する消毒液Mが貯留される。
薬液回収管路61は、内視鏡収容部4に設けられた排出口55の弁体155が制御部70の駆動制御によって開放されることにより、内視鏡収容部4の薬液を薬液タンク58に回収する管路である。
尚、内視鏡収容部4にて内視鏡100が消毒液Mに浸漬される消毒工程が行われている際は、弁体155は、制御部70の駆動制御によって閉じている。
薬液管路64は、薬液タンク58内の消毒液Mを、薬液移送部65の駆動により内視鏡収容部4に移送する管路である。
薬液移送部65は、制御部70の駆動制御により、消毒液Mを薬液タンク58から内視鏡収容部4に移送するものであり、例えばポンプから構成されている。
第1調整部73は、薬液タンク58に設けられており、制御部70の駆動制御により消毒液Mの反応速度を上昇させるものから構成されている。例えば、第1調整部73は、消毒液の温度を所定温度上昇させることにより消毒液Mの薬効を向上させる加温部から構成されている。
尚、第1調整部73は、薬液タンク58に限らず、内視鏡収容部4や、薬液回収管路61、薬液管路64等に設けられていても構わない。また、以下、本実施の形態においては、加温部にも符号73を付す。
濃度検出部74は、薬液タンク58に設けられているとともに比較部75に接続されており、消毒液Mの濃度を検知する、例えばセンサから構成されている。尚、濃度検出部74も、薬液タンク58に限らず、内視鏡収容部4や、薬液回収管路61、薬液管路64等に設けられていても構わない。
また、濃度検出部74に、消毒液Mの温度を測定する温度計77が設けられている。尚、温度計77は、濃度検出部74とは別途に設けられていても構わない。
比較部75は、濃度検出部74を介して消毒液Mの濃度が入力されるものであり、濃度検出部74によって検知された消毒液Mの濃度と、図2に示す第1基準濃度B、第2基準濃度Cとを比較するものである。尚、比較部75は、制御部70とは別途に設けられていても構わない。
制御部70は、排出口55に設けられた弁体155の開閉制御、薬液移送部65の駆動制御、加温部73の駆動制御、報知部78の駆動制御を行うものであり、薬液移送部65、加温部73、比較部75、報知部78、記憶部79が接続されている。
また、制御部70は、比較部75により、消毒液Mの濃度が第1基準濃度Bよりも低いと判定された場合に、加温部73を駆動制御する。
さらに、制御部70は、比較部75により、消毒液Mの濃度が第2基準濃度Cよりも低いと判定された場合に、報知部78を駆動制御する。
報知部78は、警告を報知するものである。尚、警告としては、音や、後述するメイン操作パネル25(図14参照)を用いた表示等が挙げられる。
記憶部79には、図2に示すような、上述した消毒パラメータが格納されている。
次に、本実施の形態の作用について、図3を用いて説明する。図3は、図1の内視鏡洗浄消毒装置における消毒液の濃度検出の際の制御部の各種駆動制御を示すフローチャートである。
先ず、内視鏡収容部4に収容された内視鏡100の消毒処理を行う際は、図3に示すように、制御部70は、ステップS1において、濃度検出部74を用いて薬液タンク58中の消毒液Mの濃度を検出する。
次いで、制御部70は、ステップS2において、記憶部79から消毒パラメータを呼び出し、ステップS3において、比較部75を用いて検出した消毒液Mの濃度が第1基準濃度Bppm以上であるかを比較、判定する。
第1基準濃度Bppm以上であれば、ステップS8にジャンプして、薬液移送部65を駆動制御して、薬液タンク58内の消毒液Mを、薬液管路64を介して内視鏡収容部4に供給し、内視鏡収容部4にて内視鏡100を消毒液MにFmin浸漬させる消毒工程を開始する。
尚、この際、消毒液Mの温度が加温部73により所定温度D℃を有していることは云うまでもない。
第1基準濃度Bppmを下回っていれば、ステップS4に移行し、制御部70は、再度、記憶部79から消毒パラメータを呼び出す。
その後、ステップS5において、制御部70は、比較部75を用いて検出した消毒液Mの濃度が、第2基準濃度Cppm以上であるかを比較、判定する。
第2基準濃度Cを下回っていれば、ステップS9に分岐し、消毒液Mは薬効が無いとして、消毒液Mの交換を操作者に促すため、報知部78を駆動制御する。
尚、この際、制御部70は、内視鏡洗浄消毒装置1の動作を停止させる制御を行っても良い。
第2基準濃度C以上であれば、ステップS6に移行し、加温部73を駆動制御して、消毒液Mを加温する。
尚、消毒液Mの加温は、ステップS7に示すように、消毒液Mが第2の効果パラメータに達するまで、即ち、消毒液Mの温度がE℃に達するまで行われる。また、消毒液Mの温度は、濃度検出部74の温度計77によって測定される。
最後に、ステップS7において、消毒液Mの濃度が第2基準濃度Cppm以上であって、消毒液Mの温度がE℃に達する第2の効果パラメータに達していれば、制御部70は、消毒液Mは、第1の効果パラメータと同等の薬効を有しているものと判定して、ステップS8に移行し、上述した消毒工程を開始する。
尚、上述した図3の制御部70による消毒液Mの濃度チェックは、内視鏡100の消毒工程毎に行われる。
このように、本実施の形態においては、内視鏡洗浄消毒装置1は、消毒液Mの温度を所定温度上昇させる加温部73を有しており、制御部70は、比較部75により消毒液Mの濃度が第1の効果パラメータの第1基準濃度(有効濃度下限値)Bppmよりも低いと判定された場合に、加温部73を駆動制御して、消毒液Mを、第1の効果パラメータの温度D℃よりも高い温度E℃まで加温すると示した。
このことによれば、従来であれば、消毒液Mの濃度がBppmを下回った場合は、消毒液Mの交換作業を行わなければならなかったが、本実施の形態によれば、制御部70は、消毒液MをE℃まで加温し第2の効果パラメータを満たすことにより、消毒液Mの薬効を第1の効果パラメータから低下させることなく、消毒液Mの濃度を、Bppmよりも低いCppmまで延命して一時的に使用することができるため、操作者は、作業効率の良いタイミングにて消毒液Mの交換作業を行うことができる。
また、従来であれば作業効率を優先して薬液が有効濃度以上であっても所定の時間に薬液の廃棄を行う場合もあったが、本発明はこの様な無駄を抑えることもできる。
以上から、消毒液の濃度が第1基準濃度を下回った場合でも薬効を低下させることなく内視鏡100の薬液処理に一時的に使用することができる構成を具備する内視鏡洗浄消毒装置1を提供することができる。
尚、以下、変形例を、図4、図5を用いて示す。図4は、消毒液の濃度検出を外部装置により行い、外部装置から検出濃度が比較部に入力される内視鏡洗浄消毒装置の構成の変形例を概略的に示す図、図5は、図4の外部装置の一例を、内視鏡洗浄消毒装置の受信部とともに示す図である。
上述した本実施の形態においては、薬液タンク58に、比較部75に接続された消毒液Mの濃度を検知する濃度検出部74が設けられており、比較部75は、濃度検出部74を介して消毒液Mの濃度が入力されると示した。
これに限らず、図4に示すように、内視鏡洗浄消毒装置1に濃度検出部74を設けずに、外部装置200によって、内視鏡収容部4、薬液回収管路61、薬液管路64、薬液タンク58のいずれかから採取した消毒液Mの濃度を測定し、消毒液Mの濃度が外部装置200から比較部75に入力される構成を有していても構わない。
尚、外部装置200としては、図5に示すような吸光度計等が挙げられる。また、外部装置200から比較部75への濃度の入力は、図5に示すように、内視鏡洗浄消毒装置1に設けられた、例えばRFIDから構成された受信部99に、外部装置200を近接させることにより無線で行っても構わない。また、外部装置200を内視鏡洗浄消毒装置1に有線で接続する場合、有線の接続先が受信部99となる。さらには、受信部99が図14に示されるメイン操作パネル25またはサブ操作パネル13である場合、操作者が外部装置200によって測定された消毒液Mの濃度の数値を比較部75に手入力することにより行っても構わない。
また、図4に示す構成における消毒液Mの濃度検出の際の制御部70の各種駆動制御は、図3のフローチャートにおいて、ステップS1の濃度検出部74による消毒液Mの濃度検出が、外部装置200による濃度インプットに代わるだけであり、その他のステップS2〜ステップS9は同じである。
尚、その他の構成は、上述した本実施の形態と同じである。また、このような外部装置200によって比較部75に消毒液Mの濃度が入力される構成によっても、上述した本実施の形態と同様の効果を得ることができる。
また、以下、別の変形例を図6、図7を用いて示す。図6は、図1の内視鏡洗浄消毒装置において、薬液管路に内圧調整弁が設けられた変形例を概略的に示す図、図7は、図6の内視鏡洗浄消毒装置の記憶部に格納された消毒パラメータを示す図表である。
また、図8は、図6の排出口の弁体を閉じるとともに内圧調整弁を開き、薬液移送部を駆動して内視鏡収容部に薬液を第1の水位まで供給した状態を概略的に示す図、図9は、図8の排出口の弁体を開くとともに内圧調整弁を閉じ薬液移送部を駆動して、内視鏡収容部の薬液を第2の水位まで下げ内視鏡収容部内を減圧した状態を概略的に示す図である。
上述した本実施の形態においては、消毒液の反応速度を上昇させる第1調整部は、消毒液の温度を所定温度上昇させる加温部73であると示した。
これに限らず、図6に示すように、第1調整部は、内視鏡洗浄消毒装置1の後述する装置本体2にトップカバー3が閉じられることにより気密に封止された気密状態の内視鏡収容部4内の内圧を減圧させる内圧調整部110から構成されていても構わない。
また、内圧調整部110は、制御部70に接続されており、制御部70の駆動制御によって内視鏡収容部4内を減圧する。
具体的には、図6に示すように、内圧調整部110は、弁体155と、薬液移送部65と、薬液管路64に設けられた内圧調整弁156とを具備している。
また、本構成においては、記憶部79内には、図7に示す消毒液Mの消毒パラメータが格納されている。
具体的には、図7に示すように、消毒パラメータは、第1基準濃度(有効濃度下限値)Bppm、内視鏡収容部4内の気圧が常圧、温度D℃、浸漬時間Fminの第1の効果パラメータと、第2基準濃度(有効濃度下限値)Cppm(C<B)、内視鏡収容部4内が常圧からHhpだけ減圧された気圧、温度D℃、浸漬時間Fminの第2の効果パラメータを有している。
尚、その他の内視鏡洗浄消毒装置1の構成は、本実施の形態と同じである。
このような構成においては、図3に示すように、制御部70は、ステップS5において消毒液Mの検出濃度がC以上であると判定した場合には、ステップS6において内圧調整部110を駆動制御する。
具体的には、図8に示すように、内視鏡洗浄消毒装置1の装置本体2に対して、内視鏡収容部4が密閉されるようトップカバー3が水密気密部材3pを介して閉じられている状態において、制御部70は、先ず、弁体155を閉じる制御を行うとともに、内圧調整弁156を開ける制御を行い、その後、薬液移送部65を駆動する制御を行って、薬液タンク58内の薬液Mを、内視鏡収容部4に対し第1の水位Y1まで供給する。
その後、図9に示すように、制御部70は、内圧調整弁156を閉じる制御を行うとともに、弁体155を開ける制御を行い、薬液移送部65を駆動する制御を行うと、内視鏡収容部4内の薬液Mの水位が、第1の水位Y1よりも低い第2の水位Y2に下がる(Y2<Y1)。
尚、第2の水位Y2においても、内視鏡100全体が薬液Mに浸漬したままである。その結果、内視鏡収容部4は減圧される。
このことにより、ステップS8の消毒工程において、消毒液分子の動きが活発になることから内視鏡収容部4に浸漬されている内視鏡100の隅々まで消毒液Mが浸透し消毒液Mの薬効が向上するため、第1の効果パラメータと同等の薬効を確保することができる。
よって、本実施の形態と同様に、消毒液Mの濃度を、Bppmよりも低いCppmまで延命して一時的に使用することができる。尚、その他の効果は、上述した本実施の形態と同様である。
さらに、以下、別の変形例を、図10、図11を用いて示す。図10は、図1の内視鏡洗浄消毒装置において、第1調整部を振動部から構成した変形例を概略的に示す図、図11は、図10の内視鏡洗浄消毒装置の記憶部に格納された消毒パラメータを示す図表である。
上述した本実施の形態においては、消毒液の反応速度を上昇させる第1調整部は、消毒液の温度を所定温度上昇させる加温部73であると示した。
これに限らず、図10に示すように、第1調整部は、内視鏡収容部4内の消毒液を振動させる振動部52から構成されていても構わない。尚、振動部52は、内視鏡収容部4に設けられた、例えば超音波振動子から構成されている。
また、振動部52は、制御部70に接続されており、制御部70の駆動制御によって振動することにより、内視鏡収容部4内の消毒液を振動させる。
また、本構成においては、記憶部79内には、図11に示す消毒液Mの消毒パラメータが格納されている。
具体的には、図11に示すように、消毒パラメータは、第1基準濃度(有効濃度下限値)Bppm、消毒液Mへの振動が無し、温度D℃、浸漬時間Fminの第1の効果パラメータと、第2基準濃度(有効濃度下限値)Cppm(C<B)、消毒液Mへ振動部52から振動を付与、温度D℃、浸漬時間Fminの第2の効果パラメータを有している。
尚、その他の内視鏡洗浄消毒装置1の構成は、本実施の形態と同じである。
このような構成においては、図3に示すように、制御部70は、ステップS5において消毒液Mの検出濃度がC以上であると判定した場合には、ステップS6において振動部52を駆動制御する。
このことにより、ステップS8の消毒工程において、消毒液Mを内視鏡収容部4に供給した際、消毒液分子の動きが活発になることから内視鏡収容部4に浸漬されている内視鏡100の隅々まで消毒液Mが浸透し消毒液Mの薬効が向上するため、第1の効果パラメータと同等の薬効を確保することができる。
よって、本実施の形態と同様に、消毒液Mの濃度を、Bppmよりも低いCppmまで延命して一時的に使用することができる。尚、その他の効果は、上述した本実施の形態と同様である。
また、以下、別の変形例を示す。上述したように、消毒液Mは自然劣化してしまうものがある。この際、濃度だけでなく、PH値が初期状態から変化してしまう。
この場合、消毒液Mに対してPH調整剤を投入しても良い。このことによれば、消毒液Mを内視鏡100の消毒に最適なPH値まで戻すことができる。
(第2実施の形態)
図12は、本実施の形態の内視鏡洗浄消毒装置の記憶部に格納された消毒パラメータを示す図表である。
この第2実施の形態の内視鏡洗浄消毒装置の構成は、図1、図2に示した第1実施の形態の内視鏡洗浄消毒装置の構成と比して、比較部により薬液の濃度が第1基準濃度よりも低いと判定された場合の制御部による駆動制御が異なる。
よって、第1実施の形態と同様の構成には同じ符号を付し、その説明は省略する。
本実施の形態の内視鏡洗浄消毒装置1においては、図1に示すように、排出口55の弁体155は、内視鏡収容部4における内視鏡100に対する消毒液Mの接触時間を調整する第2調整部を構成している。
また、記憶部79には、図12に示す消毒液Mの消毒パラメータが格納されている。
具体的には、図12に示すように、消毒パラメータは、第1基準濃度(有効濃度下限値)Bppm、浸漬時間がFmin、温度D℃である第1の効果パラメータと、第2基準濃度(有効濃度下限値)Cppm(C<B)、消毒液Mの浸漬時間がFminよりも長いGmin(G>F)、温度D℃である第2の効果パラメータを有している。
さらに、制御部70は、比較部75により消毒液Mの濃度が第1基準濃度Bppmよりも低いと判定された場合に、弁体155を駆動して、即ち、弁体155を閉じている時間を調整して、言い換えれば、閉じた状態の弁体155を開放する時間を調整して、内視鏡100に対する消毒液Mの接触時間を、所定時間、具体的には、FminからGminに延長する制御を行う。
尚、その他の内視鏡洗浄消毒装置1の構成は、上述した第1実施の形態と同じである。
次に、本実施の形態の作用について、図13を用いて説明する。図13は、本実施の形態の内視鏡洗浄消毒装置における消毒液の濃度検出の際の制御部の各種駆動制御を示すフローチャートである。
先ず、内視鏡収容部4に収容された内視鏡100の消毒処理を行う際は、図13に示すように、制御部70は、ステップS1において、濃度検出部74を用いて消毒液Mの濃度を検出する。
次いで、制御部70は、ステップS2において、記憶部79から消毒パラメータを呼び出し、ステップS3において、比較部75を用いて検出した消毒液Mの濃度が、第1基準濃度Bppm以上であるかを比較、判定する。
第1基準濃度Bppm以上であれば、ステップS21に分岐して、上述したステップS8と同様に消毒工程を開始する。尚、内視鏡収容部4にて内視鏡100を消毒液Mに浸漬する消毒工程は、ステップS22に示すように、第1の効果パラメータ、即ち、時間Fminに達するまでD℃にて行われる。
ステップS22において、第1の効果パラメータに達すれば、ステップS26に移行して、制御部70は、弁体151を開放する制御を行い、排出口55、薬液回収管路61を介して、内視鏡収容部4の消毒液Mを薬液タンク58に回収する。
ステップS3に戻って、第1基準濃度Bppmを下回っていれば、ステップS4に移行し、制御部70は、再度、記憶部79から消毒パラメータを呼び出す。
その後、ステップS5において、制御部70は、比較部75を用いて検出した消毒液Mの濃度が、第2基準濃度Cppm以上であるかを比較、判定する。
第2基準濃度Cを下回っていれば、ステップS9に分岐し、消毒液Mは薬効が無いとして、消毒液Mの交換を操作者に促すため、報知部78を駆動制御する。尚、この際、制御部70は、内視鏡洗浄消毒装置1の動作を停止させる制御を行っても良い。
第2基準濃度C以上であれば、ステップS23に移行し、上述したステップS8、S20と同様に消毒工程を開始し、その後、ステップS24において、制御部70は、第2調整部を駆動する制御、具体的には、弁体151を第2効果パラメータまで閉じる制御を行う。
尚、弁体151を閉じる制御、即ち、内視鏡収容部4にて内視鏡100を消毒液Mに浸漬するステップS23の消毒工程は、ステップS25に示すように、第2の効果パラメータ、即ち、時間Gminに達するまで、D℃にて行われる。
ステップS25において、第2の効果パラメータに達すれば、ステップS26に移行して、制御部70は、弁体151を開放する制御を行い、排出口55、薬液回収管路61を介して、内視鏡収容部4の消毒液Mを薬液タンク58に回収する。
尚、上述した図13の制御部70による消毒液Mの濃度チェックは、内視鏡100の消毒工程毎に行われる。
このように、本実施の形態においては、制御部70は、比較部75により消毒液Mの濃度が第1基準濃度Bppmよりも低いと判定された場合に、弁体155を閉じている時間を調整して、言い換えれば、閉じた状態の弁体155を開放する時間を調整して、内視鏡100に対する消毒液Mの接触時間を、所定時間、具体的には、FminからGminに延長する制御を行うと示した。
このことによれば、従来であれば、消毒液Mの濃度がBppmを下回った場合は、消毒液Mの交換作業を行わなければならなかったが、本実施の形態によれば、制御部70は、内視鏡収容部4における内視鏡100への消毒液Mの接触時間をGminまで延長し第2の効果パラメータを満たすことにより、消毒液Mの薬効を低下させることなく、消毒液Mの濃度を、Bppmよりも低いCppmまで延命して一時的に使用することができるため、操作者は、作業効率の良いタイミングにて消毒液Mの交換作業を行うことができる。
よって、本実施の形態においては、消毒液への内視鏡100の浸漬時間を調整することにより、上述した第1実施の形態と同様の効果を得ることができる。
尚、本実施の形態においても、上述した図4に示すように、内視鏡洗浄消毒装置1に濃度検出部74を設けずに、外部装置200によって、内視鏡収容部4、薬液回収管路61、薬液管路64、薬液タンク58のいずれかから採取した消毒液Mの濃度を測定し、消毒液Mの濃度が外部装置200から比較部75に入力される構成を有していても構わない。
次に、上述した第1、第2実施の形態における内視鏡洗浄消毒装置1の構成の一例を、図14、図15を用いて説明する。
図14は、図1の内視鏡洗浄消毒装置の一例を、トップカバーが開放され、洗浄消毒槽に内視鏡が収納自在な状態において示す内視鏡洗浄消毒装置の斜視図、図15は、図14の消毒液トレーが引き出され、薬液ボトルがセットされる状態を示す部分斜視図である。
図14に示すように、内視鏡洗浄消毒装置1は、使用済みの内視鏡100を洗浄、消毒するための装置であり、装置本体2と、その上部に、例えば図示しない蝶番を介して開閉自在に接続されたトップカバー3とにより、主要部が構成されている。
トップカバー3が、装置本体2に閉じられている状態では、装置本体2とトップカバー3とは、装置本体2及びトップカバー3の互いに対向する位置に配設された、例えばラッチ8により固定される構成となっている。
装置本体2の操作者が近接する図中前面であって、例えば左半部の上部に、洗剤/アルコールトレー11が、装置本体2の前方へ引き出し自在に配設されている。
洗剤/アルコールトレー11には、内視鏡100を洗浄する際に用いられる洗浄剤が貯留された洗剤タンク11aと、洗浄消毒後の内視鏡100を乾燥する際に用いられるアルコールが貯留されたアルコールタンク11bとが収納されており、洗剤/アルコールトレー11が引き出し自在なことにより、各タンク11a、11bがセットできるようになっている。
尚、洗剤/アルコールトレー11には、2つの窓部11mが設けられており、該窓部11mにより、各タンク11a、11bに注入されている洗浄剤及びアルコールの残量が操作者によって確認できるようになっている。
また、装置本体2の前面であって、例えば右半部の上部に、図15に示すように、消毒液トレー12が、装置本体2の前方へ引き出し自在に配設されている。消毒液トレー12には、内視鏡100を消毒する際に用いる、例えば過酢酸等の消毒液が注入された薬液ボトル12aと、緩衝剤が注入された薬液ボトル12bとが収納されており、消毒液トレー12が、引き出し自在なことにより2つの薬液ボトル12a、12bを所定にセットできるようになっている。
尚、消毒液トレー12には、2つの窓部12mが設けられており、該窓部12mにより、各薬液ボトル12a、12bに注入されている消毒液、緩衝剤の残量が操作者によって確認できるようになっている。
さらに、図14に示すように、装置本体2の前面であって、消毒液トレー12の上部に、洗浄消毒時間の表示や、消毒液を加温するための指示釦等が配設されたサブ操作パネル13が配設されている。
また、装置本体2の図中前面の下部に、装置本体2の上部に閉じられているトップカバー3を、操作者の踏み込み操作により装置本体2の上方に開くためのペダルスイッチ104が配設されている。
また、装置本体2の上面の、例えば操作者が近接する前面側の右端寄りに、装置本体2の洗浄、消毒動作スタートスイッチ、及び洗浄、消毒モード選択スイッチ等の設定スイッチ類が配設されたメイン操作パネル25が設けられているとともに、操作者が近接する前面側の左端寄りに、近付けられた内視鏡100から情報を受け取る、例えばRFIDか構成された受信部99が設けられている。
また、装置本体2の上面であって、操作者が近接する前面に対向する背面側に、装置本体2に水道水を供給するための水道蛇口に接続された図示しない給水ホースが接続される給水ホース接続口31が配設されている。尚、給水ホース接続口31に、水道水を濾過するメッシュフィルタが配設されていてもよい。
さらに、装置本体2の上面の略中央部に、内視鏡収納口をトップカバー3によって開閉される、内視鏡100が収納自在な内視鏡収容部4が設けられている。
内視鏡収容部4は、操作者が近接する前面側に位置する第1の槽本体4tと、第1の槽本体4tよりも底面が低く位置しているとともに第1の槽本体4tよりも背面側に位置する第2の槽本体4dと、第1の槽本体4t及び第2の槽本体4dの内視鏡収納口の外周縁に連続して周設されたテラス部4rとにより構成されている。
第1の槽本体4t及び第2の槽本体4dは、使用後の内視鏡100が洗浄消毒される際、該内視鏡100が収納自在である。
第2の槽本体4dの底面には、内視鏡収容部4に供給された洗浄液、水、アルコール、消毒液等を内視鏡収容部4から排水するための排出口55が設けられているともに、内視鏡収容部4に供給された洗浄液、水、消毒液等を、内視鏡100の内部に具備された各管路に供給する、またはメッシュフィルタ等を介し、後述する給水循環ノズル24から内視鏡収容部4に再度上記液体を供給するための循環口56が設けられている。尚、循環口には、洗浄液等を濾過するメッシュフィルタが設けられていても良い。
第2の槽本体4dの側面の任意の位置に、内視鏡収容部4に供給された洗浄液、水、消毒液等の水位を検出するカバー付き水位センサ32が設けられている。
テラス部4rに、内視鏡収容部4に対し、洗剤タンク11aから水道水により所定の濃度に希釈される洗浄剤を供給するための洗剤ノズル22及び消毒液を供給するための消毒液ノズル23が設けられている。
また、テラス部4rに、内視鏡収容部4に対し給水するための、または循環口56から吸引した洗浄液、水、消毒液等を、再度内視鏡収容部4に供給するための給水循環ノズル24と、内視鏡収容部4に供給された洗浄液、水、消毒液等の異常水位を検知するフロートスイッチ91とが設けられている。
さらに、テラス部4rに、内視鏡100の内部に具備された送気送水管路及び吸引管路に、洗浄液、水、アルコール、消毒液、またはエア等を供給するための複数、ここでは2つの送気送水/鉗子口用コネクタ33と、内視鏡100の内部に具備された副送水管路に、洗浄液、水、アルコール、消毒液、またはエア等を供給するための複数、ここでは2つの副送水/鉗子起上用コネクタ34と、内視鏡100の漏水検知用コネクタ35とが設けられている。
次に、図14の内視鏡洗浄消毒装置の内部構成の一例を、図16を用いて示す。図16は、内視鏡洗浄消毒装置の内部構成の一例を示す図である。
図16に示すように、内視鏡洗浄消毒装置1において、水道栓5がチューブ31aを介して接続された給水ホース接続口31は、給水管路9の一端と連通している。この給水管路9は、他端が三方電磁弁10に接続されており、管路の中途において、給水ホース接続口31側から順に、給水電磁弁15と、逆止弁16と、給水フィルタ17とが介装されている。
尚、給水フィルタ17は、定期的に交換できるように、カートリッジタイプの濾過フィルタとして構成されている。給水フィルタ17は、通過する水道水の異物、雑菌等を除去する。
三方電磁弁10は、流液管路18の一端と接続されており、給水循環ノズル24に対する給水管路9と流液管路18との連通を内部の弁によって切り替える。つまり、給水循環ノズル24は、三方電磁弁10の切り替え動作により、給水管路9と流液管路18とのいずれか一方と連通する。また、流液管路18の他端側には、液体のみを移送することができる、液体の移送能力に優れた非自吸式のポンプである流液ポンプ19が介装されている。
内視鏡収容部4に配設された循環口56は、循環管路20の一端に接続されている。循環管路20の他端は、流液管路18の他端及びチャンネル管路21の一端と連通するように、2つに分岐している。チャンネル管路21の他端は、各コネクタ33、34、35(コネクタ35は図16には図示されず)に連通している。
チャンネル管路21は、管路の中途において、一端側から順に、チャンネルポンプ26、チャンネルブロック27、チャンネル電磁弁28がそれぞれ介装されている。チャンネルブロック27とチャンネル電磁弁28の間におけるチャンネル管路21には、洗浄ケース6と一端が接続しているケース用管路30の他端が接続されている。このケース用管路30には、リリーフ弁36が介装されている。尚、チャンネルポンプ26は、液体と気体とをどちらも、非自吸式ポンプよりも高圧で移送することができる自吸式のポンプから構成されている。
洗剤ノズル22は、洗浄剤管路39の一端と接続されており、洗浄剤管路39の他端は、洗剤タンク11aに接続されている。この洗浄剤管路39には、その中途に、洗浄剤を洗剤タンク11aから内視鏡収容部4まで持ち上げるため高圧の自吸式のポンプから構成された洗剤用ポンプ40が介装されている。
アルコールタンク11bは、アルコール管路41の一端と接続されており、このアルコール管路41はチャンネル管路21と所定に連通するように、チャンネルブロック27に接続されている。
このアルコール管路41には、アルコールをアルコールタンク11bから内視鏡収容部4まで持ち上げるため高圧の自吸式のポンプから構成されたアルコール供給ポンプ42と、電磁弁43とが介装されている。
また、チャンネルブロック27には、気体を移送することができる自吸式ポンプから構成されたエアポンプ45からの空気を供給するためのエア管路44の一端が所定にチャンネル管路21と連通するように接続されている。このエア管路44は、他端がエアポンプ45に接続されており、エア管路44の中途位置には、逆止弁47と、定期的に交換されるエアフィルタ46とが介装されている。
排出口55内には、弁の切り替え動作により、外部へ洗浄液等を排出したり、薬液タンク58に消毒液を回収したりするための開閉自在な図示しない上述した弁体155(図16には図示されず)が設けられている。
排出口55は、外部排液口へ接続される不図示の排水ホースと一端が接続されて連通する排液管路59の他端と接続されており、この排液管路59には、非自吸式のポンプから構成された排水ポンプ60が介装されている。また、排出口55は、薬液回収管路61の一端と接続され、この薬液回収管路61の他端は薬液タンク58に接続されている。
薬液タンク58は、薬液ボトル12a、12bから消毒液が供給されるように、薬液供給管路62の一端とも接続されている。
また、薬液タンク58内には、一端に吸引フィルタ63が設けられた薬液管路64の前記一端部分が所定に収容されている。この薬液管路64は、他端が消毒液ノズル23に接続されており、中途位置に、消毒液を薬液タンク58から内視鏡収容部4まで持ち上げるため高圧の自吸式のポンプから構成された薬液移送部65が介装されている。
さらに、薬液タンク58には、上述したように、加温部73や、濃度検出部74が設けられている。
尚、内視鏡収容部4の底面の下部には、例えば2つの振動部52と、ヒータ53とが配設されている。また、ヒータ53の温度調節のため、内視鏡収容部4の底面の略中央には、温度検知センサ53aが設けられている。
また、内視鏡洗浄消毒装置1の内部には、外部のACコンセントから電力が供給される電源71と、この電源71と電気的に接続される制御部70が設けられている。
この制御部70は、内視鏡洗浄消毒装置1に設けられたメイン操作パネル25及びサブ操作パネル13(図14参照)からの各種信号が供給され、上述した各ポンプ、各電磁弁、加温部73、報知部78などを駆動制御する。
尚、図14〜図16において上述した内視鏡洗浄消毒装置の構成は、あくまでも一例であり、この限りではない。また、内視鏡リプロセッサは、内視鏡洗浄消毒装置に限定されず、薬液を用いた滅菌装置等にも適用可能である。さらに、薬液も例えば、滅菌剤などの消毒液以外の薬効を有するものにも適用可能である。
本出願は、2014年11月17日に日本国に出願された特願2014−232937号を優先権主張の基礎として出願するものであり、上記の内容は、本願明細書、請求の範囲、図面に引用されたものである。