JP5900287B2 - 車両用シートにおける回動部材の付勢装置 - Google Patents

Description

本発明は、固定部材に対して回動自在にヒンジ結合された回動部材を、スパイラルスプリングによって一方向に付勢する車両用シートにおける回動部材の付勢装置に関する。

車両用シートにおいて、シートバックを、シートクッションに対して、その相対角度を小さくする方向にスパイラルスプリングによって付勢し、その付勢力を相対角度が所定角度より小さい側ではキャンセルするものがある（下記特許文献１参照）。具体的には、内端をシートバックのヒンジ中心部に掛合させた付勢用スパイラルスプリングの外端を、シートバックの角度が所定角度より大きい側ではシートクッション側部材に掛合させ、角度が小さい側ではシートクッション側部材への掛合を解除してシートバック側部材に掛合させている。こうすることにより、シートクッションに対するシートバックの相対角度が、所定角度より大きいときにはスパイラルスプリングの付勢力がシートバックに働き、所定角度より小さくなると、スパイラルスプリングの付勢力がシートバックに働かないようにされている。

特開２０１０−２４６７１７号公報

上述のように、上記所定角度付近で、スパイラルスプリングの外端にシートバック側とシートクッション側の２つの部材が同時に掛合する場合、特に、スパイラルスプリングの外端の内径側に一方の部材が掛合した状態で、外径側に他方の部材が掛合する場合に、製造上のばらつきやスパイラルスプリングの外端の位置の変化により、他方の部材が掛合できないことがある。例えば、内径側にシートバック側部材、外径側にシートクッション側部材が掛合する構成の場合、スパイラルスプリングの外端に外径側のシートクッション側部材が掛合できないと、シートバックのシートクッションに対する相対角度が所定角度より大きくなってもスパイラルスプリングの付勢力がシートバックに加えられないことになる。
このような問題に鑑み本発明の課題は、スパイラルスプリングの外端に一方の部材が掛合したとき、一方の部材が、他方の部材が掛合するスペース側へ移動しないようにすることにより、他方の部材がスパイラルスプリングの外端に掛合できなくなることを抑制することにある。

本発明の第１発明は、固定部材に対して回動部材が回動自在にヒンジ結合され、固定部材に対する回動部材の相対角度を変化させるようにヒンジ部にスパイラルスプリングが設けられ、該スパイラルスプリングの内端は固定部材又は回動部材のいずれか一方に固定され、前記スパイラルスプリングの外端は、前記相対角度が所定角度より大きいか小さいかいずれか一方側では、固定部材又は回動部材のいずれか他方に掛合され、前記相対角度が所定角度より大きいか小さいかいずれか他方側では、固定部材又は回動部材のいずれか他方との掛合が解除されて、固定部材又は回動部材のいずれか一方に掛合され、しかも、スパイラルスプリングの外端における固定部材及び回動部材との各掛合位置は、スパイラルスプリングの径方向に沿って並置される車両用シートにおける回動部材の付勢装置において、スパイラルスプリングの外端における固定部材及び回動部材との掛合部のうち、スパイラルスプリングの径方向の内側の掛合部は、当該掛合部に掛合された部材が、スパイラルスプリングの径方向の外側の掛合部へ向けて移動するのを抑制するように径方向に角度が設定されていることを特徴とする。
第１発明によれば、スパイラルスプリングの径方向の内側の掛合部に掛合された部材が、スパイラルスプリングの径方向の外側の掛合部へ向けて移動するのを抑制されるため、径方向の外側に掛合する部材の掛合時、径方向の内側に掛合した部材に掛合スペースを侵されることはなく、正常に掛合が行われる。そのため、径方向の外側に掛合する部材の掛合が阻害されることに伴う弊害を抑制することができる。

本発明の第２発明は、上記第１発明において、スパイラルスプリングの外端における固定部材及び回動部材との掛合部のうち、スパイラルスプリングの径方向の外側の掛合部は、当該掛合部に掛合された部材が、スパイラルスプリングの径方向の内側の掛合部へ向けて移動するのを抑制するように径方向に角度が設定されていることを特徴とする。
スパイラルスプリングの径方向の外側に掛合する部材が内側へ移動すると、径方向の内側に掛合する部材の掛合時、径方向の内側に掛合する部材によってスパイラルスプリングの外端が径方向の内側へ強制的に移動されるため、スパイラルスプリングの外端と掛合部材との間の摩擦に伴う異音が発生する恐れがある。第２発明によれば、スパイラルスプリングの径方向の外側の掛合部に掛合された部材が、スパイラルスプリングの径方向の内側の掛合部へ向けて移動するのを抑制されるため、径方向の内側に掛合する部材の掛合時、スパイラルスプリングの外端を径方向の内側へ強制的に移動させる必要もなく、正常に掛合が行われ、スパイラルスプリングの外端が径方向の内側へ強制的に移動されることに伴う異音の発生もない。

本発明の一実施形態の側面図である。 図１と同様の側面図であり、シートバックがシートクッションに対して所定角度まで前倒れした状態を示す。 図１と同様の側面図であり、シートバックがシートクッションに対して最大角度まで前倒れした状態を示す。 上記実施形態の分解斜視図である。 上記実施形態の作用説明図であり、シートバックがシートクッションに対して前倒れする前の状態を示す。 上記実施形態の作用説明図であり、シートバックがシートクッションに対して所定角度まで前倒れした状態を示す。

図１〜４は、本発明の一実施形態を示す。この実施形態は、シート後方に荷物スペースを備えた車両の後方シートに本発明を適用した場合を示す。各図において、矢印で示す各方向のうち、Ｆは車両前方、Ｕは上方、ＩＮＳＩＤＥは車室内側を、それぞれ示す。
クッションヒンジ１０は、シートクッションフレーム（不図示）に固定され、このクッションヒンジ１０に対してリクライニング機構１８を介してシートバックフレーム１２が車両前後方向に回動自在に固定されている。シートバックフレーム１２の車室内側面にはバックヒンジ１４が固定され、更にバックヒンジ１４の車室内側面にはスプリングホルダ２０が固定されている。スプリングホルダ２０は車室内側にドラム状に突出してスプリングサポート２０Ｂが形成されており、このドラム状のスプリングサポート２０Ｂには、スパイラルスプリング２２が装着されている。スパイラルスプリング２２の内端２２Ａはスプリングサポート２０Ｂの端部に掛合され、スパイラルスプリング２２の外端２２Ｂはスプリングホルダ２０に形成されたバック側ブラケット２０Ａに掛合されている。

クッションヒンジ１０の車室外側面には、クッション側ブラケット１６が固定され、このクッション側ブラケット１６には、スパイラルスプリング２２の外端２２Ｂが掛合可能とされている。従って、スパイラルスプリング２２の外端２２Ｂには、バック側ブラケット２０Ａとクッション側ブラケット１６とが共に掛合される。スパイラルスプリング２２の外端２２Ｂの内径側にはバック側ブラケット２０Ａ、外径側にはクッション側ブラケット１６が掛合されている。

リクライニング機構１８のヒンジピン１８Ａの端部には操作アーム１８Ｂが固着され、図示しないリクライニング操作レバーが操作されると、操作アーム１８Ｂを介してヒンジピン１８Ａが回動され、リクライニング機構１８のロック状態が解除されるように構成されている。リクライニング機構１８と操作アーム１８Ｂに挟まれてカバー１８Ｃが設けられ、このカバー１８Ｃによってリクライニング機構１８のスプリングを含むヒンジピン１８Ａ付近にゴミが入るのを防止している。

シートバックフレーム１２の車室外側で、リクライニング機構１８の固定部の上部には、係合片２４が突設して固定されており、また、クッションヒンジ１０の車両進行方向の前方側と後方側には、前傾用ストッパ１０Ａと後傾用ストッパ１０Ｂとが突設して形成され、シートバックフレーム１２（シートバック）が、アップライト位置（シートバックが前倒しされている状態から引上げられて最初にリクライニング機構１８がロックされる位置）から予め決められた第１角度だけ前傾したとき、係合片２４は前傾用ストッパ１０Ａに係合して、その位置でシートバックフレーム１２（シートバック）の前傾動作を停止させる。また、シートバックフレーム１２（シートバック）が、アップライト位置から予め決められた第２角度だけ後傾したとき、係合片２４は後傾用ストッパ１０Ｂに係合して、その位置でシートバックフレーム１２（シートバック）の後傾動作を停止させる。
以上の実施形態において、シートクッションフレーム（不図示）、クッションヒンジ１０、及びクッション側ブラケット１６は、本発明の固定部材に相当し、シートバックフレーム１２、バックヒンジ１４、及びバック側ブラケット２０Ａは、本発明の回動部材に相当し、リクライニング機構１８は本発明のヒンジ部に相当する。

図１は、シートバックフレーム１２がアップライト位置にあるときの状態を示しており、スパイラルスプリング２２の外端２２Ｂには、クッション側ブラケット１６が掛合されている。このとき、バック側ブラケット２０Ａはスパイラルスプリング２２の外端２２Ｂから離れた位置にある。
図２は、シートバックフレーム１２がアップライト位置から所定角度前倒しされた位置にあるときの状態を示しており、スパイラルスプリング２２の外端２２Ｂには、クッション側ブラケット１６とバック側ブラケット２０Ａとが共に掛合されている。
図３は、シートバックフレーム１２がアップライト位置から上記所定角度を超えて前倒しされ、係合片２４が前傾用ストッパ１０Ａに掛合された位置にあるときの状態を示しており、スパイラルスプリング２２の外端２２Ｂには、バック側ブラケット２０Ａが掛合され、クッション側ブラケット１６はスパイラルスプリング２２の外端２２Ｂから離れた位置にある。

図５は、図１の状態におけるスパイラルスプリング２２の廻りを拡大して示しており、上述のようにスパイラルスプリング２２の外端２２Ｂは、クッション側ブラケット１６と掛合され、バック側ブラケット２０Ａからは離れている。このとき、クッション側ブラケット１６はスパイラルスプリング２２の外端２２Ｂの外径側に当接しており、スパイラルスプリング２２の外端２２Ｂの内径側はバック側ブラケット２０Ａの掛合位置として空けられている。
このようにスパイラルスプリング２２の外端２２Ｂの外径側に位置されたクッション側ブラケット１６の位置を保持するため、スパイラルスプリング２２の外端２２Ｂは、クッション側ブラケット１６が当接する位置よりも外径側で屈曲され、且つクッション側ブラケット１６が当接する部分の外端２２Ｂは、クッション側ブラケット１６の当接端面に対して、スパイラルスプリング２２の内径側が外径側より離間する側に８．５度傾けて設定されている。この傾斜角度は、外端２２Ｂに当接したクッション側ブラケット１６が、スパイラルスプリング２２の内径側へ滑って移動しない圧力角とされている。

スパイラルスプリング２２の外端２２Ｂが、このように構成されているため、スパイラルスプリング２２の外端２２Ｂに当接したクッション側ブラケット１６は、スパイラルスプリング２２の内径側にも外径側にも移動しないで、当接位置に保持される。そのため、図２のように、シートバックフレーム１２がアップライト位置から所定角度まで前倒しされ、スパイラルスプリング２２の外端２２Ｂの内径側にバック側ブラケット２０Ａが掛合されるとき、バック側ブラケット２０Ａが当接するスパイラルスプリング２２の外端２２Ｂの内径側のスペースにクッション側ブラケット１６が侵入していることはなく、そのスペースにバック側ブラケット２０Ａはスムースに進入することができ、そのスペースにクッション側ブラケット１６が侵入している場合に生じる異音の発生を防止することができる。

図６は、図２の状態におけるスパイラルスプリング２２の廻りを拡大して示しており、上述のようにスパイラルスプリング２２の外端２２Ｂは、クッション側ブラケット１６とバック側ブラケット２０Ａとに掛合されている。このとき、バック側ブラケット２０Ａはスパイラルスプリング２２の外端２２Ｂの内径側に当接しており、この当接位置を保持するため、スパイラルスプリング２２の外端２２Ｂは、バック側ブラケット２０Ａが当接する位置よりも内径側で屈曲され、且つバック側ブラケット２０Ａが当接する部分の外端２２Ｂは、バック側ブラケット２０Ａの当接端面に対して、スパイラルスプリング２２の内径側が外径側より離間する側に９．６度傾けて設定されている。

スパイラルスプリング２２の外端２２Ｂが、このように構成されているため、スパイラルスプリング２２の外端２２Ｂに当接したバック側ブラケット２０Ａは、スパイラルスプリング２２の内径側にも外径側にも移動しないで、当接位置に保持される。そのため、図３のように、シートバックフレーム１２がアップライト位置から所定角度を超えて前倒しされ、その後、シートバックフレーム１２が引上げられて図２（図６）の状態に戻されるとき、クッション側ブラケット１６がスパイラルスプリング２２の外端２２Ｂの外径側から一旦離れ、その後再び同位置に戻ってくることになるが、クッション側ブラケット１６が当接すべきスパイラルスプリング２２の外端２２Ｂの外径側のスペースは、バック側ブラケット２０Ａに侵害されることなく維持されるため、クッション側ブラケット１６はスパイラルスプリング２２の外端２２Ｂから外れることはなく、スパイラルスプリング２２の外端２２Ｂの外径側に正常に掛合される。クッション側ブラケット１６がスパイラルスプリング２２の外端２２Ｂから外れてしまうと、シートバックフレーム１２に対して本来付与されるべきスパイラルスプリング２２の付勢力が付与されなくなってしまうが、上記実施形態によれば、係る問題を生じないようにすることができる。

以上、特定の実施形態について説明したが、本発明は、それらの外観、構成に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。例えば、
１．上記実施形態では、固定部材はシートクッション、回動部材はシートバックとしたリクライニング角度調整機構の場合を示したが、本発明は、固定部材を車体、回動部材をシートバックとしたチルトダウン機構（シートバックをシートクッションと共に車両フロアに沿って前方下部に沈めるように格納する機構）に適用しても良い。また、本発明は、固定部材を車体、回動部材をシートクッションとしたスペースアップシート機構（車両側壁下部をヒンジ中心としてシート全体を車両側壁に向けて回動し、シート全体を車両側壁に沿って格納する機構）に適用しても良い。更に、本発明は、固定部材を車体、回動部材をシートクッションとしたタンブル機構（シートバックをシートクッション上に畳んだ状態で、シートクッションの前方下部をヒンジ中心としてシート全体を前方回転して格納する機構）に適用しても良い。
２．上記実施形態では、スパイラルスプリングの外端の径方向の外側にクッション側ブラケットを掛合させ、径方向の内側にバック側ブラケットを掛合させるように構成したが、径方向の外側にバック側ブラケットを掛合させ、径方向の内側にクッション側ブラケットを掛合させるように構成しても良い。
３．上記実施形態では、スパイラルスプリングの内端をバック側ブラケットに固定し、スパイラルスプリングの外端を、シートクッションとシートバックとの相対角度が所定角度より大きい側ではクッション側ブラケットに掛合させ、所定角度より小さい側ではクッション側ブラケットとの掛合を解除してバック側ブラケットに掛合させる構成としたが、スパイラルスプリングの内端をクッション側ブラケットに固定し、スパイラルスプリングの外端を、シートクッションとシートバックとの相対角度が所定角度より大きい側ではバック側ブラケットに掛合させ、所定角度より小さい側ではバック側ブラケットとの掛合を解除してクッション側ブラケットに掛合させる構成としても良い。

１０ クッションヒンジ（固定部材）
１０Ａ 前傾用ストッパ
１０Ｂ 後傾用ストッパ
１２ シートバックフレーム（回動部材）
１４ バックヒンジ（回動部材）
１６ クッション側ブラケット（固定部材）
１８ リクライニング機構（ヒンジ部）
１８Ａ ヒンジピン
１８Ｂ 操作アーム
１８Ｃ カバー
２０ スプリングホルダ
２０Ａ バック側ブラケット（回動部材）
２０Ｂ スプリングサポート
２２ スパイラルスプリング
２２Ａ 内端
２２Ｂ 外端
２４ 係合片

Claims (1)

1. 固定部材に対して回動部材が回動自在にヒンジ結合され、
   固定部材に対する回動部材の相対角度を変化させるようにヒンジ部にスパイラルスプリングが設けられ、
   該スパイラルスプリングの内端は固定部材又は回動部材のいずれか一方に固定され、前記スパイラルスプリングの外端は、前記相対角度が所定角度より大きいか小さいかいずれか一方側では、固定部材又は回動部材のいずれか他方に掛合され、前記相対角度が所定角度より大きいか小さいかいずれか他方側では、固定部材又は回動部材のいずれか他方との掛合が解除されて、固定部材又は回動部材のいずれか一方に掛合され、
   しかも、スパイラルスプリングの外端における固定部材及び回動部材との各掛合位置は、スパイラルスプリングの径方向に沿って並置される車両用シートにおける回動部材の付勢装置において、
   スパイラルスプリングの外端は、スパイラルスプリングの外径側に向けて屈曲されて、固定部材及び回動部材との掛合部が形成されており、
   且つスパイラルスプリングの外端における固定部材及び回動部材との掛合部は、該掛合部のうちスパイラルスプリングの径方向の内側の掛合部に掛合された部材が、スパイラルスプリングの径方向の外側の掛合部に向けて移動するのを抑制するように径方向に角度が設定されており、その角度は、前記内側の掛合部よりも前記外側の掛合部の方が小さくされて、前記外側の掛合部における前記角度は、前記外側の掛合部に掛合された部材が、前記内側の掛合部へ向けて移動するのを抑制する圧力角に設定されていることを特徴とする車両用シートにおける回動部材の付勢装置。
   

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