以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
図1は一実施形態に係る塗布材押出容器の初期状態を示す縦断面図であり、図2は図1の塗布材押出容器におけるパイプ部材の前進限の状態を示す縦断面図であり、図3は図1の塗布材押出容器におけるピストン前進限の状態を示す縦断面図である。図1に示すように、本実施形態の塗布材押出容器200は、塗布材Mを収容すると共に適宜使用者の操作により押し出し及び引き戻し可能とするものである。
この塗布材Mとしては、例えば、リップスティック、リップグロス、アイライナー、アイカラー、アイブロー、リップライナー、チークカラー、コンシーラー、美容スティック、ヘアーカラー等を始めとした種々の棒状化粧料、筆記用具等の棒状の芯等を用いることが可能であり、特に、非常に軟らかい(半固体状、軟固形状、軟質状、ゼリー状、ムース状、及びこれらを含む練り状等の)棒状物を用いるのが好適である。また、外径が1mm以下の細径棒状物や10mm以上の太めの棒状物が使用可能である。
また、塗布材Mとしては、硬度が比較的低い半固形状のものを用いるのが好適であり、特に好ましいとして0.4N〜0.9N程度の硬度を有する塗布材Mを用いることが可能である。この塗布材Mの硬度は、化粧品において硬度を計るために使用される一般的な測定方法により求められる。ここでは、例えばFUDOH RHEO METER[RTC-2002D.D](株式会社レオテック社製)を測定器として用い、雰囲気温度25℃条件下にてφ2mmの鋼棒(アダプタ一)を6cm/minの速度で塗布材Mに深さ10mm程度挿入したときに当該塗布材Mに生じるピーク時の力(強度)を硬度(針入度)としている。
塗布材押出容器200は、内部に塗布材Mが充填され吐出口(開口部)201aを先端に有する先筒201と、その前半部に先筒201を内挿して該先筒201を軸線方向及び軸線回り回転方向(以下、単に「回転方向」ともいう)に係合し一体となるように連結する本体筒202と、この本体筒202の後端部に相対回転可能にして軸線方向に連結された操作筒203と、を外形構成として具備し、先筒201及び本体筒202により容器前部が構成されると共に、操作筒203により容器後部が構成されている。
なお、「軸線」とは、塗布材押出容器200の前後に延びる中心線を意味し、「軸線方向」とは、前後方向であって軸線に沿った方向を意味する(以下、同じ)。また、塗布材Mの繰出し方向を前方(前進する方向)とし、塗布材Mの繰戻し方向を後方(後退する方向)としている。
この塗布材押出容器200は、その内部に、移動螺子筒205、移動体206及びピストン207を備えている。移動螺子筒205は、先筒201に第1螺合部70を介して螺合する。移動体206は、操作筒203に同期回転可能且つ軸線方向移動可能に係合すると共に、移動螺子筒205に第2螺合部80を介して螺合する。ピストン207は、移動体206の前端(先端)部に装着される押出部であり、後述のパイプ部材208に密接するように内挿されて充填領域Xの後端を構成(形成)する。
また、本実施形態において塗布材押出容器200は、先筒201に対し軸線方向に摺動可能に内挿されたパイプ部材208と、移動螺子筒205及び操作筒203の相対回転を一方向のみ許容するラチェット機構209と、を備えている。
この塗布材押出容器200では、本体筒202(先筒201でも可)及び操作筒203が一方向に相対回転されると、第1螺合部70の螺合作用によって移動螺子筒205が前進して、先筒201に対しパイプ部材208が移動体206及びピストン207とともに前進し、さらに一方向に相対回転されると、第2螺合部80の螺合作用によって先筒201及びパイプ部材208に対し移動体206及びピストン207が前進する。また、本体筒202及び操作筒203が一方向とは反対の他方向に相対回転されると、第1螺合部70の螺合作用によって移動螺子筒205が後退して、先筒201に対しパイプ部材208が移動体206及びピストン207とともに後退する。
本体筒202は、例えばABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレンの共重合合成樹脂)で成形され、円筒状に構成されている。本体筒202は、その軸線方向中央部の内周面に、先筒201を回転方向に係合するものとして、周方向に多数の凹凸部が並設されて当該凹凸部が軸線方向に所定長延びてなるローレット202aを有している。また、本体筒202の前端部の内周面には、先筒201を軸線方向に係合するための環状凹凸部(凹凸部が軸線方向に並ぶもの)202bが設けられている。この本体筒202の後部側の内周面でローレット202aの後側には、操作筒203を軸線方向に係合するものとして、内周面に沿って周方向に延在する凸部202cが形成されている。
図4は図1の塗布材押出容器の操作筒を一部断面化して示す側面図であり、図5は図4のA−A線に沿う断面図であり、図6は図4の操作筒を示す正面図である。図4〜図6に示すように、操作筒203は、例えばABS樹脂で成形され、前方に開口する有底円筒状を呈している。操作筒203の前端側は、本体筒202が外挿されるものとして、その外径が段差203bを介して小径とされた前端筒部203aを備えている。
前端筒部203aの外周面の前部には、本体筒202に軸線方向に係合する環状凸部213が設けられている。また、前端筒部203aの内周面223には、ラチェット機構209のラチェット歯を構成する一方の突部209aが複数設けられている。これら一方の突部209aは、径方向内側に突出するように、前端筒部203aの内周面223において周方向十二等配の位置にて突設されている。ここでの一方の突部209aは、周方向に鋸歯形状となるように設けられている。一方の突部209aは、移動螺子筒205の進退時において後述の他方の突部209bと常に当接するように、軸線方向に沿って延在している。
これら一方の突部209aにおける周方向の一方側(本体筒202と操作筒203とを一方向に相対回転したときに後述の他方の突部209bと当接する側)の側面209a1は、山型になるように内周面223の正接平面に対し傾斜している。一方の突部209aにおける周方向の他方側(本体筒202と操作筒203とを他方向に相対回転したときに後述の他方の突部209bと当接する側)の側面209a2は、内周面223の正接平面に対し略垂直となるように構成されている。
この操作筒203の底部中央には、移動体206に回転方向に係合する軸体233が立設されている。軸体233は、非円形の外形を有する構成とされている。具体的には、軸体233は、円柱体の外周面に、周方向六等配の位置に径方向外側に突出するよう配置されて軸線方向に延びる突条243を備える横断面非円形形状とされている。
図1及び図4に示すように、操作筒203は、その前端筒部203aが本体筒202に内挿され、その段差203bが本体筒202の後端面に突き当てられると共に、その環状凸部213が本体筒202の凸部202cに軸線方向に係合することで、本体筒202に相対回転可能にして軸線方向に連結され装着されている。
図7は図1の塗布材押出容器の移動螺子筒を示す側面図であり、図8は図7の移動螺子筒を示す断面図である。図7及び図8に示すように、移動螺子筒205は、例えばPOM(ポリアセタール樹脂)で成形され、円筒状に構成されている。この移動螺子筒205は、前端側の前端部205aと、該前端部205aの後側に連なる大径部205bと、該大径部205bの後側に連なる本体部205cと、を有している。
前端部205aは、その内周面において前端から所定長後方に亘る領域に、第2螺合部80を構成する雌螺子81が設けられている。なお、第2螺合部80のピッチは、第1螺合部70のピッチより細かいものとされており、第1螺合部70のリード(本体筒202と操作筒203との相対回転一回転当たりの推進量)が第2螺合部80のリードよりも大きく設定されている。
また、前端部205aの外周面における中央部には、パイプ部材208の後端面に軸線方向に当接する環状の鍔部215が設けられている。前端部205aの外周面における前側には、パイプ部材208に軸線方向に係合する環状凸部225が設けられている。この前端部205aは、前端から軸線方向に所定長延在し対向するよう一対形成されたスリット235によって、径方向外側に拡開可能に構成されている。スリット235の後端側は、側方から見て(図7参照)周方向に長尺の長円形状となるように拡がっており、これにより、成形時の金型からの離型や移動体206の組立を容易にするため、前端部205aが拡開し易く構成されている。
大径部205bは、前端部205aよりも大径の外形を有し、移動螺子筒205において軸線方向中央部の前寄りに設けられている。この大径部205bは、その外周面において後端から所定長前方に亘る領域に、第1螺合部70を構成する雄螺子72が設けられている。
本体部205cは、大径部205bよりも小径の外形を有し、移動螺子筒205において軸線方向中央部から後端部に亘る部分に設けられている。この本体部205cは、その外周面275において対向する一対の位置に、ラチェット機構209のラチェット歯を構成する他方の突部209bが設けられている。他方の突部209bは、一方の突部209a(図6参照)に回転方向に係合するものであり、径方向外側に突出するように設けられている。この本体部205cにおいて他方の突部209bの周囲には、移動螺子筒205内外を連通する断面コの字状の切欠き245が形成されており、この切欠き245によって他方の突部209bは径方向に弾性を有している。
具体的には、切欠き245は、本体部205cにおける他方の突部209bの軸線方向両脇に穿設され周方向に沿って延びる一対のスリット245a,245bと、本体部205cにおける他方の突部209bの周方向一方側に穿設されスリット245a,245bに連続するように軸線方向に沿って延びるスリット245cと、を含んでいる。本体部205cにおいて切欠き44に囲まれた壁部は、径方向に可撓性を有するアーム255を成し、これにより、当該アーム255の先端部に配置された他方の突部209bは、径方向に所定の弾性力(付勢力)を有することになる。
これら他方の突部209bにおける周方向の他方側(本体筒202と操作筒203とを一方向に相対回転したときに一方の突部209aと当接する側)の側面209b1は、山型になるように外周面275の正接平面に対し傾斜している。他方の突部209bにおける周方向の一方側(本体筒202と操作筒203とを他方向に相対回転したときに一方の突部209aと当接する側)の側面209b2は、外周面275の正接平面に対し略垂直となるように構成されている。
また、本体部205cにおける他方の突部209bよりも後方部には、バネ部265が設けられている。バネ部265は、軸線方向に伸縮可能とされている所謂樹脂バネであり、第1螺合部70が螺合復帰するように雄螺子72を付勢する。バネ部265は、外周面に沿って螺旋状に延び且つ内外を連通するスリット265aを本体部205cに形成することで設けられている。
図1及び図7に示すように、この移動螺子筒205は、本体筒202及び操作筒203に内挿されると共に、その他方の突部209bが操作筒203の一方の突部209aに回転方向に係合し、ラチェット機構209が形成されている。
図9は、図1の塗布材押出容器の移動体を示す斜視図である。図9に示すように、移動体206は、例えばPOMで成形され、先端側に鍔部206aを有する円筒状に構成されている。移動体206は、その鍔部206aより後側から後端部に亘る外周面に、第2螺合部80の雄螺子82を備えている。この移動体206の内周面において周方向六等配の位置には、操作筒203に回転方向に係合するものとして、放射状に突出し軸線方向に延びる突条206cが設けられている。
図1及び図9に示すように、この移動体206は、その後端側から、操作筒203の軸体233と移動螺子筒205との間に外挿されている。このとき、移動体206は、その雄螺子82が移動螺子筒205の雌螺子81と螺合すると共に、その突条206cが軸体233の突条243,243間に進入し回転方向に係合することで、操作筒203に対し同期回転可能且つ軸線方向移動可能に装着されている。
図10(a)は図1の塗布材押出容器のピストンを示す側面図であり、図10(b)は図10(a)のピストンを示す断面図である。図1及び図10に示すように、ピストン207は、例えばPP(ポリプロピレン)、HDPE(高密度ポリエチレン)、LLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)等で成形されている。ピストン207における後端面に凹設された凹部207aの内周面には、移動体206に対し軸線方向に所定長だけ移動可能にして係合する環状突部207bが設けられている。
また、ピストン207の外周面において周方向四等配の位置には、パイプ部材208に密着する領域として、凸部207cが設けられている。凸部207cは、パイプ部材208に対し当接(密接)し抵抗をもって摺動可能とするものであり、軸線方向中央部から後端まで延設されている。そして、周方向における凸部207cと凸部207cとの間、及び、凸部207cとパイプ部材208の後述の筒孔208sとの間にわずかな隙間(エアートラップ)を形成することにより、温度変化等の環境変化で塗布材Mが自然に移動することを防止できる。このピストン207は、移動体206の前端部に外挿され、その環状突部207bが移動体206に軸線方向に係合することで、移動体206に対し同期回転可能且つ軸線方向移動可能(所定の範囲内を移動可能)に装着されている。
図11は図1の塗布材押出容器の先筒を示す底面図であり、図12は図11のB−B線に沿う断面図である。図11及び図12に示すように、先筒201は、円筒形状を成し、その前端の開口が塗布材Mを出現させるための吐出口201aとされている。この先筒201は、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂やABS樹脂等で成形されている。吐出口201aは、軸線方向に対し所定角度で傾斜する傾斜角度面により形成されている。なお、吐出口201aは、軸線方向の垂直面で形成するフラット形状とする場合や山形形状とする場合もある。
また、先筒201の外周面には、本体筒202の環状凹凸部202bに軸線方向に係合するための環状凸凹部201bが設けられている。また、先筒201の外周面において環状凸凹部201bより後側の周方向四等配位置には、軸線方向に延びる突条201gが、本体筒202のローレット202aに回転方向に係合するものとして設けられている。
また、先筒201の内周面において軸線中央部の後方寄りには、パイプ部材208に回転方向に係合するものとして、軸線方向に延在する溝部201cが複数設けられている。ここでの溝部201cは、先筒201の内周面における周方向四等配の位置に延設されている。先筒201の内周面において溝部201cよりも後側は、段差201xを介して拡径されており、溝部201cの底面と連続する内径を有している。
また、先筒201の外周面において突条201gよりも後側には、先筒201内外を連通する貫通孔としての開口部211が、互いに対向するように一対形成されている。開口部211は、その対向する方向から見て(図11参照)概略矩形状に穿設されており、具体的には、開口部211は、周方向に沿って延びる前縁と、周方向に対する螺旋方向に沿って延びる後縁と、軸線方向に沿って延びる両側縁と、を含んでいる。
この先筒201の内周面において開口部211の後側には、第1螺合部70の雌螺子71が連設されている。雌螺子71は、先筒201の内周面にて螺旋状に延びる突条であって、開口部211の周方向位置に軸線を中心に180°回転複写されるように一対配されている。詳説すると、雌螺子71は、その前方にて開口部211に連続すると共に、当該開口部211の一側縁から他側縁に亘る周方向範囲において形成されている。そして、雌螺子71としての突条が延びる螺旋方向は、開口部211の後縁の上記螺旋方向に対応している。
このような雌螺子71を有する先筒201については、開口部211を利用して容易且つ好適に樹脂成形することができる。例えば、上型、下型及びコアピンを互いに組み付けた際、上型における径方向内側の凸部分と、下型における径方向内側の凸部分と、コアピンと、によって雌螺子71に対応する所定空間を一対画設することができる。そして、成形後(つまり、所定空間に溶融樹脂が充填・固化されて雌螺子71が形成された後)においては、一方の開口部211から上型の凸部分が引き抜かれるようにして該上型を径方向外側に外すと共に、他方の開口部211から下型の凸部分が引き抜かれるようにして該下型を径方向外側に外した後、コアピンを軸線方向に真っ直ぐスライドさせて引き抜くことができる。
図1及び図12に示すように、この先筒201は、その後側から本体筒202に内挿され、その環状凸凹部201bに本体筒202の環状凹凸部202bが軸線方向に係合すると共に、その突条201gに本体筒202のローレット202aが回転方向に係合することで、本体筒202に軸線方向及び回転方向に係合されて装着され、当該本体筒202と一体化されている。また、先筒201は、その後側から移動螺子筒205に外挿され、その雌螺子71が移動螺子筒205の雄螺子72と螺合されている。
図13は図1の塗布材押出容器のパイプ部材を一部断面化して示す底面図であり、図14は図13のC−C線に沿う断面図である。図13及び図14に示すように、パイプ部材208は、円筒形状を成し、その前端の開口は、吐出口201a(図1参照)と同様に、上記所定角度で傾斜する傾斜角度面により形成されている。また、パイプ部材208は例えばPP等で形成されている。パイプ部材208の筒孔208sを形成する肉厚は、一定で最小化することが好ましく、例えば0.2〜0.5mmで成形されている。
パイプ部材208の外周面において軸線方向中央部の後側には、先筒201に回転方向に係合するものとして、軸線方向に延びる突条218が複数設けられている。突条218は、組立時に円周方向の位置合わせを容易にするため、周方向不均等の四箇所の位置(ここでは、周方向四等配の位置のうち二箇所が周方向にずれた位置)に設けられている。また、パイプ部材208の外周面における後端部は、段差208xを介して拡径されている。パイプ部材208の内周面における後端部には、移動螺子筒205に軸線方向に係合するものとして、径方向内側に突出する突部228が対向するように一対設けられている。
図1及び図14に示すように、このパイプ部材208は、先筒201に内挿され、該先筒201に対して軸線方向に摺動可能とされている。このとき、その突条218に先筒201の溝部201cが回転方向に係合され、これにより、先筒201に対するパイプ部材208の相対回転が規制されている。パイプ部材208の前端は、初期状態において先筒201の前端よりも一定量後方に位置し、また、前進限において先筒201の前端と略同一位置に位置するように構成されている(図2参照)。
また、パイプ部材208は、移動螺子筒205の前側に外挿され、その後端面が移動螺子筒205の鍔部206aに突き当てられると共に、その突部228が移動螺子筒205の環状凸部225に軸線方向に係合され、これにより、移動螺子筒205に対して軸線方向に連結されている。そして、パイプ部材208内には、ピストン207が摺接するようにして内挿されている。
ここで、本実施形態では、塗布材Mは、初期状態においてパイプ部材208の筒孔208s内から先筒201の筒孔201s内に亘って満たされるように充填(隙間なく収容)されており、すなわち、塗布材Mが充填される充填領域Xは、先筒201の内周面と、パイプ部材208の内周面と、ピストン207の前面と、で構成されている。
そして、先筒201の筒孔201sにおいて、少なくとも塗布材Mが充填される領域の内面である内周面は、軸線方向に沿って真っ直ぐ延びている。具体的には、筒孔201sを構成する内周面にあっては、パイプ部材208の後退限(初期状態)においてのパイプ部材208の前端位置から前側領域が、段差や角部、凹部及び窪み等(以下、単に「段差等」という)を有しておらず、且つ、軸線方向に対し傾斜しておらず、さらに、軸線方向に平行に真っ直ぐ延在している。ここでは、筒孔201sは、塗布材Mが充填される領域にて、軸線方向から見て一定の断面円形とされると共に、側方から見て両縁が軸線方向に平行となっている。
また、本実施形態では、図6及び図7に示すように、操作筒203の前端筒部203aが移動螺子筒205の本体部205cに外挿される前の状態(組立て前の状態)では、本体部205cの他方の突部209bにおける先端部の外径R3は、前端筒部203aの内周面223の内径R4よりも大きい径を有している。例えば、外径R3が内径R4よりも所定長大きくされており、外径R3がφ9.4mm、内径R4が9.0mmとされている。そして、図1〜図3に示すように、前端筒部203aが本体部205cに内挿された状態(組立て後の状態)において、他方の突部209bは、前端筒部203aの内周面223に常時当接されている。
次に、塗布材押出容器200の動作の一例について説明する。
例えば図1に示す初期状態の塗布材押出容器200にあっては、パイプ部材208の前端が先筒201の前端よりも一定量後方に位置し、この状態において、塗布材Mがパイプ部材208の筒孔208sと先筒201の筒孔201sとピストン207とに密着して充填された状態にある。そして、パイプ部材208の突条218の前面及び段差208xが先筒201の溝部201cの前面及び段差201xよりも後側に離れて位置し、パイプ部材208が先筒201に対し一定量前進可能な状態とされている。
この初期状態の塗布材押出容器200において、使用者によりキャップCが取り外されて本体筒202と操作筒203とが繰出し方向である一方向に相対回転されると、移動螺子筒205の他方の突部209bの側面209b1(図7参照)が操作筒203の一方の突部209aの側面209a1(図6参照)に当接して回転方向に係合され、操作筒203と移動螺子筒205とが同期回転する。これにより、移動螺子筒205と先筒201とが相対回転し、移動螺子筒205の雄螺子72及び先筒201の雌螺子71により構成された第1螺合部70の螺合作用が働き、先筒201に対し移動螺子筒205が前進する。
その結果、移動螺子筒205の当該前進に伴われて、先筒201に対しパイプ部材208が移動体206及びピストン207とともに前進し、塗布材Mが先筒201に対して繰り出され(つまり、先筒201に対しパイプ部材208が塗布材Mとともに前進され)、塗布材Mが吐出口201aから出現する。
続いて、図2に示すように、一方向の相対回転が続けられ、パイプ部材208の前端が先筒201の前端と略同一位置に位置したとき、パイプ部材208の突条218の前面及び段差208xが先筒201の溝部201cの前面及び段差201xに当接し、パイプ部材208及び移動螺子筒205の前進が停止され、第1螺合部70の螺合作用が停止され、これにより、パイプ部材208及び移動螺子筒205が前進限に達する。
そして、一方向の相対回転がさらに続けられると、当該停止前よりも大きい回転力が操作筒203及び移動螺子筒205に加わり、他方の突部209bが一方の突部209aを駆け上がるように摺動して乗り越え、操作筒203及び移動螺子筒205がラチェット回転(いわゆる「空回転」)される。その結果、移動体206の雄螺子82及び移動螺子筒205の雌螺子81により構成された第2螺合部80の螺合作用のみが作用し、停止したパイプ部材208内においてピストン207により塗布材Mが押し出されて前進(つまり、先筒201及びパイプ部材208に対し塗布材Mが前進)する。その後、移動体206及びピストン207が前進限に達する(図3参照)。
他方、例えば、使用後の塗布材押出容器200において、本体筒202と操作筒203とが繰戻し方向である他方向へ相対回転されると、移動螺子筒205の他方の突部209bの側面209b2(図7参照)が操作筒203の一方の突部209aの側面209a2(図6参照)に当接して回転方向に係止(強固に係合)され、操作筒203と移動螺子筒205とが同期回転する。これにより、移動螺子筒205と先筒201とが相対回転し、第1螺合部70の螺合作用が働き、先筒201に対し移動螺子筒205が後退する。
その結果、移動螺子筒205の当該後退に伴われて、先筒201に対しパイプ部材208が移動体206及びピストン207とともに後退し、塗布材Mが先筒201に対して繰り戻され(つまり、先筒201に対しパイプ部材208が塗布材Mとともに後退され)、塗布材Mが吐出口201a内へ埋入される。
そして、他方向の相対回転が続けられると、移動螺子筒205の雄螺子72が先筒201の雌螺子71から外れ、第1螺合部70の螺合作用が解除され、移動螺子筒205ひいてはパイプ部材208、移動体206及びピストン207が後退限に達する。この状態では、バネ部265(図7参照)の縮小の弾性力により雄螺子72が前方側へ付勢されることから、他方向の相対回転がさらに続けられた場合、雌螺子71及び雄螺子72の係合及び係合解除によるクリックが付与され、移動螺子筒205の後退限が使用者に感知されると共に、一方向へ相対回転された場合には、第1螺合部70が直ちに螺合復帰する。
ここで、本実施形態の塗布材押出容器200では、上述したように、塗布材Mがパイプ部材208の筒孔208s内から先筒201の筒孔201s内に亘って充填されており、この先筒201の筒孔201sの内周面にあっては、その少なくとも塗布材Mが充填される領域が軸線方向に沿って真っ直ぐ延びている。
そのため、先筒201に対しパイプ部材208が前進する際、充填された塗布材Mは、筒孔201sの内周面形状に起因して崩されることなく、例えば、内周面に段差等が形成される場合に、当該段差等に塗布材Mが入り込んだり扱かれたりして崩されるのを防ぐことができる。また、出現させた塗布材Mが膨張したとしても、先筒201に対しパイプ部材208が後退する際、段差等に塗布材Mが入り込んだり扱かれたりして崩されるのを防ぐことができる。
従って、本実施形態によれば、先筒201に対しパイプ部材208が前進及び後退するに際して、塗布材Mの形状が崩れるのを抑制することが可能となる。つまり、柔らかい塗布材Mについても、確実に一定量押し出し及び引き戻すことができ、且つ、保護することが可能となる。
また、通常、使用時において、パイプ部材208から押し出された塗布材Mに対しては、パイプ部材208の前端を支点にするような力や曲げが作用する。よって、塗布材Mの折損等の崩れを抑制するためには、パイプ部材208の前端は前方(使用者側)に位置するほど好ましい。一方で、パイプ部材208の前端が先筒201の前端よりも前方に突出すると、パイプ部材208の先端が使用者に接触しやすくなってしまい、使用性が悪化することが懸念される。
これに対し、本実施形態では、上述したように、パイプ部材208の前端は、その前進限で先筒201の前端と略同一位置に位置している。よって、パイプ部材208の前端を、使用者に接触しにくい範囲で最も前方へ位置させることが可能となり、その結果、使用性を高めつつ、塗布材Mの折損等を抑制して形状が崩れるのを一層抑制することが可能となる。
なお、上述したように、操作筒203の前端筒部203aが移動螺子筒205の本体部205cに外挿される前の状態では、本体部205cの他方の突部209bにおける先端部の外径R3は、前端筒部203aの内周面223の内径R4よりも大きい径を有している(図6及び図7参照)。そして、前端筒部203aが本体部205cに内挿された状態では、移動螺子筒205が進退する間においても常に、径方向に弾性力を有する他方の突部209bは、一方の突部209aと回転方向に係合するようにして前端筒部203aの内周面223に常時当接されている。
従って、部品点数を増やすことなく、前端筒部203a(操作筒203)で本体部205c(移動螺子筒205)をホールドするようにして、これらの間で回転方向に抵抗を常時発生させることができ、その結果、塗布材押出容器200のガタつきを抑制することが可能となる。
また、本実施形態では、上述したように、本体筒202と操作筒203とを一方向にさらに相対回転した際、切欠き245による径方向の弾性力で他方の突部209bが径方向内側に付勢されることから、他方の突部209bの側面209b1が一方の突部209aの側面209a1に回転方向に係合し駆け上がるように摺動し、乗り越えて当該係合が解除された後、再び回転方向に係合する。その結果、一方の突部209a及び他方の突部209bの係合及び係合解除の度に、使用者にクリック感が付与できる。これにより、一方の突部209a及び他方の突部209bを、塗布材Mのさらなる前進を感知させるクリック機構として利用することが可能となる。
さらにまた、本実施形態では、上述したように、一方の突部209a及び他方の突部209bを、本体筒202と操作筒203との一方向の相対回転のみを許容するラチェット機構209として利用することができる。
ちなみに、本実施形態では、上述したように、本体部205cの他方の突部209bの周囲に切欠き245を形成して他方の突部209bに弾性力を付与したが、これに代えて若しくは加えて、前端筒部203aの一方の突部209aの周囲に切欠きを形成して一方の突部209aに弾性力を付与してもよい。
また、本実施形態では、前端筒部203aが本体部205cに外挿される前の状態において一方の突部209aにおける先端部の内径が本体部205cの外周面275の外径よりも小さい径を有し、前端筒部203aが本体部205cに外挿された状態において一方の突部209aが外周面275に常時当接されていてもよい。
図15は図11の先筒における図12に対応する断面図を一部拡大化して示す拡大断面図であり、図16は図15のD−D線に沿う拡大断面図である。図11、図15及び図16に示すように、先筒201は、筒状の筒状部材であって、上述したように、その内周面201dに延設された突状としての雌螺子71を有している。雌螺子71は、先筒201の周壁を径方向に貫通する上記開口部211と連続するように設けられている。
開口部211を臨む側方視(図11及び図16参照)において、開口部211は四角形であり、開口部211の後縁(後側の辺縁)を構成する一辺211aは、雌螺子71が描く軌跡に沿って延びている。つまり、一辺211aは、雌螺子71の描く軌跡と略同一の線であり、雌螺子71と略同一の傾斜角を有して延びている。換言すると、開口部211と対向する方向から見て、開口部211は、雌螺子71の延在方向についての傾斜と略同一の傾斜を一辺211aに有している。開口部211の後側の開口面211xは、雌螺子71の前端面71xと連なるように(同一平面となるように)設けられている。
また、開口部211を臨む側方視において、開口部211の辺縁を構成し且つ一辺211aの両端に接続された一対の側辺211b,211bは、軸線方向に沿って延びている。先筒201の内周面においては、開口部211の辺縁を構成し且つ一辺211aと向かい合う前縁(前側の辺縁)としての対向辺211cに対応する位置に、雌螺子71の高さ以上の段差部201kが周方向に沿って設けられている。先筒201の内径は、軸船方向における前側に行くに従って(一辺211a側から対向辺211c側に向かう方向において)、段差部201kを介して縮径されている。
次に、このような構成を有する先筒201の製造方法の一例について図17を参照しながら説明する。
図17は、図11の先筒の製造方法について説明するための図である。なお、図17中では、説明の便宜上、先筒201の前側テーパ部分の外形を形成する外型を省略している。図17に示すように、まず、外面に所定の型形状を有するコアピン50を用意する。また、内面に所定の型形状を有する金型(成形外型)として、上割型であるスライド61と、下割型であるスライド62と、を用意する。そして、コアピン50が所定に囲繞されるようにスライド61,62を組み合わせて配置し、コアピン50とスライド61,62との間の隙間に溶融樹脂を射出する。これにより、当該隙間に溶融樹脂が流れ込み、その後、溶融樹脂が固化することで、先筒201が成形される。
ここで、コアピン50は、段付き円柱状に形成され、先筒201の段差部201kを成形するためのものとして、周方向に沿って設けられた段差部51を有している。コアピン50は、段差部51よりも前側が後側に対して縮径されている。コアピン50の外周面において周方向に180°回転転写された2箇所には、雌螺子71及び開口部211を成形するための開口凹部52が形成されている。開口凹部52は、段差部51の後側に連設され、径方向外側及び軸線方向前側に開口している。
開口凹部52は、その対向する方向(図示上方向又は下方向)視において概略矩形状とされている。開口凹部52は、周方向に対する螺旋方向に沿って延びる後縁と、軸線方向に沿って延びる両側縁と、を含んでいる。開口凹部52の後縁は、開口凹部52を臨む方向から見て、雌螺子71が描く軌跡に沿って延びている。開口凹部52の後壁面は、雌螺子71の後端面71y(図15参照)に対応する。この開口凹部52の深さ(径方向の寸法)は、段差部51の高さよりも小さくされており、換言すると、段差部51の高さは、開口凹部52の深さ以上とされている。
他方、スライド61,62は、互いに同様な形状とされ、開口部211を成形するための凸部分63をそれぞれ有している。凸部分63は、概略矩形状で径方向内側に突出する形状とされている。具体的には、凸部分63は、開口部211の対向辺211cに対応するものとして周方向に沿って延びる前縁と、開口部211の後縁の一辺211aに対応するものとして周方向に対する螺旋方向に沿って延びる後縁と、開口部211の側辺211bに対応するものとして軸線方向に沿って延びる両側縁と、を含んでいる。凸部分63の後縁は、雌螺子71が描く軌跡に沿って延びている。凸部分63の先端面(径方向内側の面)は、開口凹部52の底面と同じ曲面状とされている。
このような凸部分63は、コアピン50にスライド61,62を組み合わせた際、その前縁がコアピン50の段差部51の縁に位置する状態で、コアピン50の開口凹部52内に配置されると共に、その先端面が開口凹部52の底面に当接する。これにより、開口凹部52内において凸部分63との間に、雌螺子71の形状に相当する所定空間が画設されることとなる。
そして、成形後(つまり、所定空間に溶融樹脂が充填・固化されて雌螺子が形成された後)においては、スライド61の凸部分63が径方向外側へ引き抜かれるようにして当該スライド61を上側に開くと共に、スライド62の凸部分63が径方向外側へ引き抜かれるようにして当該スライド62を下側に開く。また、コアピン50を軸船方向に沿って後方に真っ直ぐスライドさせ、先筒201内から引き抜く。これにより、先筒201の成形が完了される。
以上、本実施形態では、先筒201の開口部211を利用することにより、1つのコアピン50を用い且つ当該コアピン50を回転して抜くことなく、且つ、コアピン50を無理抜きすることなく、第1螺合部70の雌螺子71を成形することができる。したがって塗布材押出容器200の製造の容易化が可能となる。
本実施形態では、開口部211を臨む側方視において一対の側辺211bは、軸線方向に沿って延びている。これにより、例えばアンダーカット形状の雌螺子71を成形するに際して、無理抜きならずに容易に離型することができる。
本実施形態において先筒201の内周面には、対向辺211cに対応する位置に、雌螺子71の高さ以上の段差部201kが周方向に沿って設けられている。そして、先筒201の内径は、段差部201kを介して前側が縮径されている。この場合、例えばアンダーカット形状の雌螺子71を成形するに際して、無理抜きならずに容易に離型することが一層可能となる。
本実施形態では、開口部211は、先筒201において周方向に180°回転転写された2箇所に形成されている。これにより、先筒201の成形の際、スライド61,62を用いて上下2方向に開く、いわゆる2方向割りを実施することができる。
なお、本実施形態において、開口部211の一対の側辺211bは、前側に行くに従って外側に拡がるように延びていてもよい。この場合でも、例えばアンダーカット形状の雌螺子71を成形するに際して、無理抜きならずに容易に離型できる。ちなみに、コアピン50を前方に引き抜くようにして雌螺子71を形成できる場合には、開口部211の前側の内面が雌螺子71の後端面と連なるように設けられていてもよい。
また、本実施形態では、雌螺子71の後端面71y(図16参照)は、その周方向の一端側(本体筒202と操作筒203とを一方向に相対回転したときに雄螺子72と先に係合する側)が、当該一端側に行くに連れて雌螺子71の軸線方向の幅が小さくなるように傾斜してもよい。換言すると、周方向の一端側が先細りとなるように、雌螺子71の後端面71yにおいて周方向一端側がテーパ状となっていてもよい。これにより、例えば雌螺子71と雄螺子72とを容易に螺合させることができる。
次に、他の実施形態に係る塗布材押出容器について、図18〜図21を参照して説明する。なお、以下の説明では、上記塗布材押出容器200と同様な説明を省略し、異なる点について主に説明する。
図18は他の実施形態に係る塗布材押出容器の操作筒を断面化して示す斜視図であり、図19は他の実施形態に係る塗布材押出容器の移動螺子筒を示す斜視図であり、図20は他の実施形態に係る塗布材押出容器のラチェット機構を説明する横断面図であり、図21は他の実施形態に係る塗布材押出容器のラチェット機構を説明する他の横断面図である。図18に示すように、他の実施形態に係る塗布材押出容器300は、操作筒203に代えて操作筒303を備えている。図19に示すように、塗布材押出容器300は、移動螺子筒205に代えて移動螺子筒305を備えている。
図18に示すように、操作筒303は、移動螺子筒305及び操作筒303の相対回転を一方向のみ許容するラチェット機構209の一方を構成する第1ラチェット歯として、一方の突部309aを複数有している。一方の突部309aは、前端筒部203aの内周面223において周方向十二等配の位置に、径方向内側に突出するように設けられている。一方の突部309aは、本体筒202と操作筒303とを一方向に相対回転したときに後述の他方の突部309bと当接する当接面11を含んでいる。一方の突部309aにおいて当接面11の前側部分としての側面12xは、当接面11の後側部分としての側面13xよりも周方向に傾斜している。つまり、側面12xの周方向の傾斜度合が、側面13xの周方向の傾斜度合よりも大きくなっている。
具体的には、一方の突部309aにおける軸線方向中央部の後寄りから前端に亘る前部14は、軸線方向視で山型断面を有している。前部14において周方向の一方側(本体筒202と操作筒303とを一方向に相対回転したときに他方の突部309bと当接する側)の側面12xは、山型になるように内周面223の正接平面に対し傾斜していると共に、周方向の他方側(本体筒202と操作筒303とを他方向に相対回転したときに他方の突部309bと当接する側)の側面12yは、内周面223の正接平面に対し略垂直となるように構成されている。一方の突部309aにおける軸線方向中央部の後寄りから後端に亘る後部15は、軸線方向視で矩形断面を有している。後部15において周方向の一方側の側面13x及び他方側の側面13yは、内周面223の正接平面に対し略垂直となるように構成されている。
図19に示すように、移動螺子筒305は、ラチェット機構209の他方を構成する第2ラチェット歯として、他方の突部309bを有している。この他方の突部309bは、切欠き245によって径方向に弾性を有している。他方の突部309bは、軸線方向視において矩形断面とされている。具体的には、他方の突部309bにおける周方向の一方側及び他方側の側面16は、外周面275の正接平面に対し略垂直となるように構成されている。
このような塗布材押出容器300では、本体筒202と操作筒303とが一方向に相対回転されると、図20に示すように、移動螺子筒305の他方の突部309bの側面16が、操作筒303の一方の突部309aにおける後部15の側面13xに当接して回転方向に係止(強固に係合)される。これにより、操作筒303と移動螺子筒305とが同期回転し、移動螺子筒305と先筒201とが相対回転し、第1螺合部70の螺合作用が働いて先筒201(及び操作筒303)に対し移動螺子筒305が前進する。
一方向の相対回転が続けられると、図21に示すように、他方の突部309bの側面16が一方の突部309aにおける前部14の側面12xに当接して回転方向に係合され、引き続き操作筒303と移動螺子筒305とが同期回転し、第1螺合部70の螺合作用で移動螺子筒305がさらに前進する。その後、移動螺子筒305の前進が停止され、第1螺合部70の螺合作用が停止され、移動螺子筒305が前進限に達する。
この状態において一方向の相対回転がさらに続けられると、当該停止前よりも大きい回転力が操作筒303及び移動螺子筒305に加わり、他方の突部309bが一方の突部309aの側面12xを駆け上がるように摺動して乗り越え、操作筒303と移動螺子筒305とが相対回転(空回転)されることとなる。
他方、本体筒202と操作筒303とが他方向へ相対回転されると、他方の突部309bの側面16が一方の突部309aの側面12y又は側面13yに当接して回転方向に係止され、操作筒303と移動螺子筒305とが同期回転する。これにより、移動螺子筒305と先筒201とが相対回転し、第1螺合部70の螺合作用が働いて先筒201(及び操作筒303)に対し移動螺子筒305が後退することとなる。
以上、本実施形態の塗布材押出容器300では、本体筒202と操作筒303とを一方向に相対回転した際、まず、当接面11において周方向の傾斜度合が小さい後側部分の側面13xを介して突部309a,309bが互いに当接する。よって、突部309a,309bを互いに係止させて移動螺子筒305及び操作筒303を同期回転させ、移動螺子筒305を前進可能となる。そして、一方向にさらに相対回転した際、当接面11において周方向の傾斜度合が小さい前側部分の側面12xを介して突部309a,309bが互いに当接する。よって、他方の突部309bを側面12x上にて駆け上がるように摺動させ、移動螺子筒305及び操作筒303を相対回転でき、例えば第1螺合部70の破損等を防止可能となる。このように本実施形態によれば、移動螺子筒305及び操作筒303の同期回転及び相対回転を確実に制御できる。
ところで、近年の塗布材押出容器として、容器前部と容器後部とを含む容器内に螺合部を有する移動螺子を具備し、容器前部と容器後部とを一方向に相対回転すると、螺合部の螺合作用で移動螺子筒が容器後部に対して前進して停止するものが開発されている。このような塗布材押出容器では、例えば移動螺子筒の動作を確実に制御することや、螺合部の破損を防止すること等のため、一方向に相対回転した際に、移動螺子筒及び容器後部の同期回転及び相対回転(空回転)を確実に制御することが望まれる。すなわち、移動螺子筒及び容器後部の同期回転及び相対回転を確実に制御できる塗布材押出容器を提供することが求められている。
そこで、塗布材押出容器は、容器前部と容器後部とを含む容器内に螺合部を有する移動螺子筒を具備し、前記容器前部と前記容器後部とを一方向に相対回転すると、前記螺合部の螺合作用で前記移動螺子筒が前記容器後部に対して前進して停止する塗布材押出容器であって、前記移動螺子筒及び前記容器後部の相対回転を一方向のみ許容するラチェット機構を備え、前記移動螺子筒は、前記ラチェット機構の一方を構成する第1ラチェット歯を有し、前記容器後部は、前記ラチェット機構の他方を構成する第2ラチェット歯を有し、前記第2ラチェット歯は、前記容器前部と前記容器後部とを一方向に相対回転した際に前記第1ラチェット歯と周方向に当接する当接面を含んでおり、前記当接面における前側部分は、前記当接面における後側部分よりも周方向に傾斜する、ことを特徴としてもよい。
この塗布材押出容器では、容器前部と容器後部とを一方向に相対回転した際、まず、当接面において周方向の傾斜度合が小さい後側部分で第1及び第2ラチェット歯が当接することから、これらを係止させて移動螺子筒及び容器後部を同期回転させることができる。その結果、移動螺子筒を前進させることが可能となる。そして、一方向にさらに相対回転した際、当接面において傾斜度合が小さい前側部分で第1及び第2ラチェット歯が係合することから、第2ラチェット歯が第1ラチェット歯を駆け上がるように摺動させることができる。よって、移動螺子筒及び容器後部を相対回転させることができる。したがって、塗布材押出容器によれば、移動螺子筒及び容器後部の同期回転及び相対回転を確実に制御できる。
前記第2ラチェット歯の後側部分は、軸線方向視において矩形断面を有し、前記第2ラチェット歯の前側部分は、軸線方向視において、周方向一方側の側面が前記容器後部の内周面の正接平面に対し傾斜し且つ周方向他方側の側面が前記正接平面に対し略垂直となる山型断面を有してもよい。また、前記第1ラチェット歯は、径方向に弾性を有し且つ軸線方向視において矩形断面を有してもよい。これらの場合、移動螺子筒及び容器後部の同期回転及び相対回転を確実に制御する上記効果が好適に奏される。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。
例えば、塗布材Mとしては、例えば、リップグロス、リップ、アイカラー、アイライナー、美容液、洗浄液、ネールエナメル、ネールケア溶液、ネールリムーバー、マスカラ、アンチエイジング、ヘアーカラー、頭髪用化粧料、オーラルケア、マッサージオイル、角栓ゆるめ液、ファンデーション、コンシーラー、スキンクリーム、マーキングペン等の筆記用具等のインク、液状の医薬品、泥状物等を始めとした液状の塗布材を用いた塗布材押出容器に対しても勿論適用可能である。
また、上記実施形態では、本体筒202及び操作筒203が一方向に相対回転されると、第1及び第2螺合部70,80の螺合作用の協働によって先筒201に対しパイプ部材208が塗布材Mとともに前進してもよいし、同様に、他方向に相対回転されると、第1及び第2螺合部70,80の螺合作用の協働によって先筒201に対しパイプ部材208が塗布材Mとともに後退してもよい。また、上記実施形態では、第1及び第2螺合部70,80を備えているが、1つの螺合部のみを備え当該1つの螺合部によって塗布材Mを押し出し/引き戻してもよい。
なお、上記において、「螺合作用の解除」とは、雄螺子と雌螺子との螺子山同士の係合が外れ、螺合作用が働かなくなることを意味し、「螺合作用の停止」とは、雄螺子と雌螺子との螺子山同士が係合し噛み合った状態で当接して螺合が働かなくなることを意味している。「螺合復帰」とは、雄螺子が雌螺子の螺子山の側面に当接するまで戻る段階を意味している。
また、パイプ部材208の前端と先筒201の前端とにおける「略同一位置」とは、完全に等しい位置に加え、略等しい位置を含んでおり、設計上、製造上や組付け上の誤差を含むものである。例えば、パイプ部材208の前端が、先筒201の前端に対して多少前方又は後方に位置していてもよい。同様に、「略同一の線又は傾斜角」とは、完全に等しい線又は傾斜角に加え、略等しい線又は傾斜角を含んでおり、設計上、製造上や組付け上の誤差を含んでいる。また、一辺211a、側辺211b及び対向辺211cの少なくとも何れかは、直線以外に曲線又は自由曲線も含んで構成されていてもよい。
また、上述した雄螺子及び雌螺子は、螺子山や螺子溝だけでなく、間欠的に配される突起群、又は螺旋状且つ間欠的に配される突起群のように螺子山や螺子溝と同様な働きをするものであってもよい。塗布材Mの断面形状については、先筒201の筒孔201sやパイプ部材208の筒孔208sの断面内径形状となるが、円形断面に加え、楕円形、トラック型、並びに、頂点を丸めた多角形及びしずく型等の種々の非円形断面形状も選択できる。また、本発明は、塗布材押出容器200を製造(成形)するための製造方法として捉えることもできる。