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JP5893241B2 - カルシウム解析方法 - Google Patents

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Description

本発明は、カルシウム解析方法および当該方法に使用されるタンパク質に関する。
多くのホルモンや神経伝達物質はGタンパク質共役型受容体と相互作用し、細胞内セカンドメッセンジャーを介して様々な細胞活動を引き起こしている。また、細胞活動の多様性は、細胞内のセカンドメッセンジャーの時間的および空間的な濃度分布によって制御されている。したがって、特定の細胞活動に関する細胞内情報伝達を解析するにあたって、セカンドメッセンジャーの時空間的な変化をリアルタイムに捉えることが必要である。
細胞内セカンドメッセンジャーの1つであるカルシウムは、生体内において、各種生化学反応過程のシグナル伝達分子として作用している。これまでに、筋細胞の弛緩、網膜における光受容−伝達、骨の成長、ニューロンの活性化、神経伝達物質やホルモンの受容体からの細胞内情報伝達等の様々な生理的プロセスがカルシウムによって制御されていることが明らかになっている。したがって、生細胞中でのカルシウム局在がリアルタイムにわかれば、細胞および組織レベルでの循環器系、消化器系、網膜、嗅覚、中枢神経等の作用機構が解明されるだけでなく、細胞内のカルシウム濃度を調節する薬剤に関する知見を得ることが期待される。
生細胞内でのカルシウム濃度をリアルタイムで観察するためには、カルシウムを分子イメージングすることが最も効果的であり、従来から、カルシウムに対する多くの分析技術が提案および開発されている。
例えば、非特許文献1には、カルシウム結合タンパク質であるカルモジュリンおよびカルシウムイオンと結合したカルモジュリンと結合するM13ペプチドに対し、シアン色蛍光タンパク質(ECFP)および黄色蛍光タンパク質(EYFP)を融合させた融合タンパク質を使用する、シアン色蛍光タンパク質(ECFP)と黄色蛍光タンパク質(EYFP)との蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)に基づくカルシウム解析方法が開示されている。この方法で使用する融合タンパク質は、中央にカルモジュリンおよびM13ペプチドが、両端にYFPおよびCFPが配置されている。カルシウムが存在しない状態では、YFPとCFPとが離れておりFRETが生じないため、CFPを励起してもYFPの蛍光は観察されない。このとき細胞内のカルシウムが増加すると、カルモジュリンがカルシウムと結合し、さらにそれらに対してM13が結合することで、融合タンパク質の立体構造が変化する。この状態においてCFPを励起すると、FRETが生じるため、アクセプターであるYFPの蛍光が観察される。このFRETシグナルを観察することで、カルシウムの濃度変化を観察できることが明らかにされている。
特許文献1には、カルシウム感受性発光タンパク質およびカルシウム非応答性レニラルシフェラーゼを利用して、細胞内のカルシウム濃度および遺伝子発現量を定量解析する方法が開示されている。この方法では、カルシウム感受性発光タンパク質であるイクオリンおよびカルシウム非応答性レニラルシフェラーゼ由来のレポーターを細胞内に発現させる。
細胞内のカルシウムが増加すると、イクオリンまたはカルシウム感受性発光タンパク質により検出でき、その後に新たな基質を添加することなくレポーターアッセイ法により遺伝子発現の増減を測定できることが明らかにされている。
非特許文献2には、カルモジュリン、M13ペプチド、および分割したレニラルシフェラーゼから成る融合タンパク質を利用して観察する方法が開示されている。この方法で使用する融合タンパク質は、中央にカルモジュリンおよびM13ペプチドが、両端にレニラルシフェラーゼの分割した断片が配置されている。カルシウムが存在しない状態では、レニラルシフェラーゼの分割した断片同士が離れており発光活性を有さないため発光を観察することができない。このとき細胞内のカルシウムが増加すると、カルモジュリンがカルシウムと結合し、さらにそれらに対してM13が結合することで、融合タンパク質の立体構造が変化する。この状態では、分割されたレニラルシフェラーゼが再構成されて発光活性が回復し、発光を観察することができる。この発光シグナルを観察することで、カルシウムの濃度変化を観察できることが明らかにされている。
特許文献2には、カルモジュリン、任意にM13ペプチド、および分割したガウシアルシフェラーゼから成る融合タンパク質を利用して観察する方法が開示されている。この方法で使用する融合タンパク質は、中央にカルモジュリンおよび任意にM13ペプチドが、両端にガウシアルシフェラーゼの分割した断片が配置されており、細胞内のカルシウムの増加に伴い、カルモジュリンおよび任意にM13ペプチドがカルシウム依存的に結合して立体構造が変化する。この変化によって、分割されたガウシアルシフェラーゼが解離または再構成されて発光の消失または増強を観察することができる。この発光シグナルを観察することで、カルシウムの濃度変化を観察できることが明らかにされている。
特許文献3には、カルモジュリンと分割したホタルルシフェラーゼとから成る融合タンパク質を利用した細胞内カルシウム濃度の定量解析する方法が開示されている。この方法で使用する融合タンパク質では、分割したホタルルシフェラーゼの断片は、本来のホタルルシフェラーゼにおける配置に対して円順列置換されている。この融合タンパク質を細胞内に発現させ、ルシフェラーゼの基質となるルシフェリンを添加すると細胞からの発光を計測できる。このとき細胞内のカルシウムが増加すると、カルモジュリンの立体構造が変化してルシフェラーゼの発光が消失または増強する。この発光シグナルを検出することで、カルシウムの濃度変化を検出できることが明らかにされている。
国際公開第2007/139080号 特開2009−153399号公報 特表2009−532063号公報
Miyawaki A,Llopis J,Heim R,McCaffery JM,Adams JA, Ikura M,Tsien RY. "Fluorescent indicators for Ca2+ based on green fluorescent proteins and calmodulin." Nature, vol.388(6645), pp.882−887, 1997 Kaihara A,Umezawa Y,Furukawa T. "Bioluminescent indicators for Ca2+ based on split renilla luciferase complementation in living cells." Analytical Sciences, Vol.24, pp.1405−1408, 2008
しかしながら、蛍光タンパク質を用いる従来技術は、細胞が自己蛍光を発するためシグナル/ノイズ比が低いという問題、ダイナミックレンジが狭いため利用可能な測定対象の範囲が狭いという問題等を有している。
また、従来のカルシウム感受性発光タンパク質を用いる従来技術は、ルミノメーターまたはフォトンカウンティングでのみ測定を行っているため、一細胞での測定に最適化されておらず、さらに、発光した後速やかに変性および分解されてしまうため、長時間の測定や多数回の刺激に応じた発光を観察することが困難であり、利用可能な測定方法の範囲が狭いという問題を有していた。
また、従来の分割されたレニラルシフェラーゼまたはガウシアルシフェラーゼ、カルシウム結合タンパク質であるカルモジュリンおよびカルシウムイオンと結合したカルモジュリンと結合するM13ペプチドを用いた従来技術は、ルミノメーターまたはフォトンカウンティングでのみ測定を行っているため、一細胞での測定に最適化されておらず、さらに、再構成したルシフェラーゼが解離しづらいため、発光シグナルとカルシウム濃度との相関が悪いという問題を有していた。
また、従来の円順列置換ルシフェラーゼとカルシウム結合タンパク質であるカルモジュリン遺伝子との融合タンパク質を用いる技術は、ルミノメーターまたはフォトンカウンティングでのみ測定を行っているため、一細胞での測定に最適化されておらず、利用可能な測定方法の範囲が狭いという問題を有していた。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、細胞内の情報伝達に影響を及ぼすことなく各細胞からの正確な定量的結果を得ることができ、その結果、個々の細胞においてカルシウム濃度の変化を再現性良く経時的に観察することができるカルシウム解析方法を提供することを目的とする。
本発明の実施形態によれば、発光酵素のN末端側断片、前記発光酵素のC末端側断片、カルシウム結合領域および前記カルシウム結合領域と可逆的に結合または解離できる相互作用領域を含むカルシウムセンサータンパク質であって、前記カルシウム結合領域および前記相互作用領域は前記C末端側断片と前記N末端側断片との間に配置されたカルシウムセンサータンパク質を含む細胞を作製する細胞作製工程と、前記細胞作製工程で作製した前記細胞に当該細胞外から所定の発光基質を添加する添加工程と、前記添加工程で前記所定の発光基質が与えられた前記細胞の発光画像を撮像する撮像工程と、前記撮像工程で撮像した前記発光画像に基づいて、前記細胞内における前記カルシウムの濃度を解析する解析工程とを含む細胞内カルシウム解析方法が提供される。
また、本発明の実施形態によれば、発光酵素のN末端側断片、前記発光酵素のC末端側断片、カルシウム結合領域および前記カルシウム結合領域と可逆的に結合または解離できる相互作用領域を含むカルシウムセンサータンパク質であって、前記カルシウム結合領域および前記相互作用領域は前記C末端側断片と前記N末端側断片との間に配置され、前記N末端断片および前記C末端断片は前記発酵酵素における本来の配置に対して円順列置換されているカルシウムセンサータンパク質が提供される。
本発明の実施形態によれば、細胞内のカルシウムに関する個々の細胞からの正確な定量的結果を得ることができ、その結果、個々の細胞において細胞内のカルシウム濃度を再現性良く観察することができるという効果が得られる。
また、本発明のカルシウム結合領域がカルモジュリン由来である実施形態によれば、カルシウム特異的に結合するという効果が得られる。
また、本発明の相互作用領域がM13ペプチドである実施形態によれば、カルシウム依存的にカルモジュリンに結合するという効果が得られる。
また、本発明の発光酵素がホタルルシフェラーゼであり、N末端側断片がホタルルシフェラーゼのアミノ酸番号1番目から416番目のアミノ酸配列を含み、C末端側断片がホタルルシフェラーゼのアミノ酸番号399番目から550番目のアミノ酸配列を含む実施形態によれば、発光酵素のN末端側断片とC末端側断片とが再構成した時にだけ発光するため、シグナル/ノイズ比が大きいという効果が得られる。
また、本発明の発光酵素がレニラルシフェラーゼであり、N末端側断片がレニラルシフェラーゼのアミノ酸番号1番目から91番目のアミノ酸配列を含み、C末端側断片がレニラルシフェラーゼのアミノ酸番号92番目から311番目のアミノ酸配列を含む実施形態によれば、発光酵素のN末端側断片とC末端側断片とが再構成した時にだけ発光するので、シグナル/ノイズ比が大きいという効果が得られる。
また、本発明のN末端断片およびC末端断片は、発酵酵素における本来の配置に対して円順列置換されている実施形態によれば、解離したときのバックグランドノイズが低いため、シグナル/ノイズ比が大きいという効果が得られる。
また、本発明の撮像工程が発光画像を繰り返し撮像することを含む実施形態によれば、撮像工程において、発光画像を繰り返し撮像するので、同一細胞における時空間的な測定ができるという効果が得られる。
また、本発明の撮像工程が複数の異なる細胞に対して同時に行われ、解析工程が細胞ごとに行われる実施形態によれば、撮像工程において、複数の異なる細胞について同時に実行し、解析工程において、複数の発光画像を細胞ごとに照合するため、個々の細胞におけるカルシウム濃度変化を時空間的に解析できるという効果が得られる。
発光観察システム100の全体構成の一例を示す図である。 発光観察システム100の発光画像撮像ユニット106の構成の一例を示す図である。 発光観察システム100の発光画像撮像ユニット106の構成の一例を示す図である。 発光観察システム100の画像解析装置110の構成の一例を示すブロック図である。 スプリットルシフェラーゼアッセイ法を用いたカルシウムの検出原理を示す図である。 5HT2A受容体およびcpGL4_C_CaM−M13_Nを導入したHEK293細胞において、5HT刺激前の発光画像を示す図である。 5HT2A受容体およびcpGL4_C_CaM−M13_Nを導入したHEK293細胞において、5HT刺激後の発光画像を示す図である。 選択した細胞での5HT刺激によるcpGL4_C_CaM−M13_Nの発光強度の経時変化を示した図である。 5HT2A受容体およびcphRL_C_CaM−M13_Nを導入したHEK293細胞において、5HT刺激前の発光画像を示す図である。 5HT2A受容体およびcphRL_C_CaM−M13_Nを導入したHEK293細胞において、5HT刺激後の発光画像を示す図である。 選択した細胞での5HT刺激によるcphRL_C_CaM−M13_Nの発光強度の経時変化を示した図である。
[方法]
以下に、本発明に係る方法について説明する。
本発明は、発光酵素のN末端側断片、前記発光酵素のC末端側断片、カルシウム結合領域および前記カルシウム結合領域と可逆的に結合または解離できる相互作用領域を含むカルシウムセンサータンパク質であって、前記カルシウム結合領域および前記相互作用領域は前記C末端側断片と前記N末端側断片との間に配置されたカルシウムセンサータンパク質を含む細胞を作製する細胞作製工程と、前記細胞作製工程で作製した前記細胞に当該細胞外から所定の発光基質を添加する添加工程と、前記添加工程で前記所定の発光基質が与えられた前記細胞の発光画像を撮像する撮像工程と、前記撮像工程で撮像した前記発光画像に基づいて、前記細胞内における前記カルシウムの濃度を解析する解析工程とを含む細胞内カルシウム解析方法に関する。
簡潔には、本発明は、対象とする細胞にカルシウムセンサータンパク質を導入し、発光基質を与えて発光を誘導し、その様子を撮像し、撮像した画像に基づいてカルシウム濃度を特定等する方法に関する。
本発明によれば、細胞内のカルシウムの状態を解析することができる。特に、細胞内のカルシウム濃度を定量的に測定することが可能である。また、測定はイメージングによって行うことができるため、細胞ごとに測定が可能であり、さらには細胞内の細胞小器官等の構造に絞って測定することもできる。さらに、一定間隔で同一の測定領域を測定することで、カルシウム濃度の刺激に対する変化および時間的変化を解析することができる。細胞ごとに測定することで、細胞間の差異を解析することもできる。
細胞作製工程では、カルシウムセンサータンパク質を含む細胞が作製される。カルシウムセンサータンパク質とは、発光酵素の2つのポリペプチド断片と、カルシウムに結合できるポリペプチド断片(カルシウム結合領域)と、カルシウム結合領域と可逆的に結合または解離できるポリペプチド断片(相互作用領域)と、任意にその他のポリペプチド断片とが融合したタンパク質であって、カルシウムの存在に応じて当該発光酵素の活性が消失または回復するタンパク質である。カルシウムセンサータンパク質の詳細については後述する。対象となる細胞の種類に限定はなく、細菌細胞、酵母細胞、植物細胞および動物細胞等を使用できる。動物細胞が使用される場合、特に哺乳細胞が使用され、例えばマウスの細胞、サルの細胞およびヒトの細胞が使用される。細胞は、生体組織の一部として培養された細胞集合体であってもよいし、生体組織が属している臓器等や生命個体の形態でもよい。細胞に対してカルシウムセンサータンパク質を導入する方法に特別な限定はなく、既知の導入方法が使用できる。1つの方法は、当該タンパク質をコードする塩基配列を含む核酸を細胞に導入し、その後細胞内で当該タンパク質を発現させる方法である。例えば、当該核酸を含む発現ベクターを、リン酸カルシウム法、リポフェクション法またはエレクトロポレーション法等によって細胞内に導入し、発現ベクターから当該タンパク質を発現させることができる。ベクターから発現させるのではなく、当該核酸がゲノムに組み込まれた細胞を作製した後、ゲノムから当該タンパク質を発現させることもできる。別の方法は、細胞外で精製した当該タンパク質を細胞内に直接導入する方法である。例えば、マイクロインジェクション法によって当該タンパク質を細胞内に直接注入することができる。または、当該タンパク質を含む培養液にて細胞をインキュベートさせて、エンドサイトーシスによって当該タンパク質を細胞に取り込ませることができる。
添加工程では、細胞作製工程にて作製された細胞に対し発光基質が添加される。本発明に係る方法は発光酵素による発光反応を利用するが、この発光反応を生じさせるためには発光基質が必要となる。発光基質は使用する発光酵素に応じて選択される。発光基質の詳細は後述する。発光基質を添加する方法に特別限定はなく、適宜選択できる。例えば、培養液に添加することで、培養液を介して細胞に発光基質を取り込ませることが出来る。また、マイクロインジェクション法によって、発光基質を細胞内に直接注入することもできる。発光基質の添加のタイミングも適宜選択できる。例えば、細胞へのカルシウムセンサータンパク質の導入の前に、それと同時に、またはその後に発光基質を添加することができる。例えば、一連の操作を通して、細胞を取り扱うための培養液中に発光基質を含めておくことができる。または、マイクロインジェクションにて当該タンパク質および発光基質を同時に細胞に注入することができる。好ましくは、発光基質は測定の直前に添加される。発光基質の添加量に特別な限定はないが、好ましくは、発光酵素が発光反応を生じるために十分な量で添加される。
撮像工程では、発光反応が生じている細胞の画像が取得される。撮像は任意のタイミングで行うことができるが、好ましくは、基質添加から一定時間後に行われる。特に複数の測定を繰り返す場合、測定結果のばらつきを抑えるために、複数の測定を通じて同一のタイミングで撮像することが好ましい。撮像時間は条件に応じて最良の時間が適宜選択される。発光強度が小さい場合、撮像時間(顕微鏡を使用する場合、露出時間)は長くされ、逆に発光強度が大きすぎる場合、撮像時間は短くされる。例えば、5から10秒間の露出時間とすることができる。撮像は、発光反応に係る波長の光のみを取得して行うこともできるが、それと同時に明視野画像または別の波長の光による画像を取得してもよい。例えば、細胞にカルシウムセンサータンパク質と同時にプローブ(例えば蛍光または発光タンパク質)を融合した特定のタンパク質を導入し、カルシウムセンサータンパク質に由来する光と同時に、当該特定のタンパク質からの光を検出してもよい。なお、撮像に使用される装置については後述する。
解析工程では、取得された画像に基づいて、細胞内のカルシウム濃度等の解析が行われる。解析は、コンピュータにて機能するソフトウェアを使用して、発光量を数値に変換してもよい。当該数値を利用して、スタンダードとの比の算出、試料間の比較等が適宜行われる。このような処理によって、細胞内のカルシウム濃度が特定される。また、濃度の特定とは、詳細な数値の特定でなくとも、カルシウムが試料中に存在するか否かの特定、または設定した濃度範囲にあるかどうか等の大まかな特定であってもよい。なお、解析に使用される装置については後述する。
また、本発明は、撮像工程が発光画像を繰り返し撮像することを含む上記の細胞内カルシウム解析方法に関する。当該方法では、一定の間隔で撮像を繰り返し、または特定の時間に撮像が行われる。このように経時的に撮像されることで、タイムラプスによる観察または動画による観察が可能となる。撮像の都度、発光基質を添加してもよい。当該方法によって、同一細胞における時空間的な測定ができる。すなわち、時間に応じた又は刺激に応じたカルシウム濃度の変化を測定することができる。また、明視野画像を同時に取得することで、カルシウムの濃度変化と細胞の形態変化等との関係を知ることが出来る。また、プローブを付したタンパク質を発現させ、当該プローブの様子を同時に観察することで、当該タンパク質とカルシウムとの関連性を知ることができる。
また、本発明は、撮像工程が複数の異なる細胞に対して同時に行われ、且つ解析工程が細胞ごとに行われる細胞内カルシウム解析方法に関する。当該方法では、一度の撮像において、複数の異なる細胞の画像が取得される。さらに、その後の解析が各々の細胞に対して行われる。撮像した1つの画像に含まれる複数の細胞について細胞ごとの解析を行うことが可能であり、または、撮像した複数の画像にそれぞれ含まれる複数の細胞について細胞ごとの解析を行うことが可能である。また、撮像を上述のような経時的な撮像にすることもできる。これらのような方法によって、個々の細胞におけるカルシウム濃度変化を時空間的に解析できる。例えば、同一条件下におかれた細胞同士のカルシウム濃度の比較に使用することができる。
[カルシウムセンサータンパク質]
次に、本発明に係るカルシウムセンサータンパク質について説明する。本発明は、カルシウムセンサータンパク質を利用する上記方法に関し、またカルシウムセンサータンパク質自体に関する。
本発明に係るカルシウムセンサータンパク質は、発光酵素のN末端側断片、発光酵素のC末端側断片、カルシウム結合領域およびカルシウム結合領域と可逆的に結合または解離できる相互作用領域を含み、且つ、カルシウム結合領域および相互作用領域はN末端側断片とC末端側断片との間に配置されている。当該タンパク質は、カルシウムの存在に応じて当該発光酵素の活性が消失または回復する。
カルシウム結合領域とは、細胞内にてカルシウムイオンと可逆的に結合および解離できるペプチドを意味する。カルシウム結合領域の具体例は、例えばカルモジュリン(CaM)またはその断片である。一方、相互作用領域とは、カルシウム結合領域と相互作用することができるペプチドを意味する。特に、相互作用領域は、カルシウムイオンと結合したカルシウム結合領域と結合することができ、カルシウムイオンが解離したカルシウム結合領域から解離することができる。相互作用領域の具体例は、例えばM13ペプチドである。
カルシウム結合領域および相互作用領域として、カルシウム結合タンパク質であるカルモジュリン(CaM)およびカルシウムイオンと結合したカルモジュリンと結合するM13とが一連に繋がったペプチドを使用することができる(非特許文献1)。非特許文献1では、この一連に繋がった連結化ペプチドを用いて、CaMおよびM13が2種の蛍光タンパク質に挟まれた構造を有するカルシウムセンサータンパク質を作製しており、この蛍光センサータンパクを「カメレオンタンパク(以下、カメレオンと称す)」と呼んでいる。特に、カルシウム結合領域および相互作用領域として、カメレオンの230番目から406番目のアミノ酸配列に対応するペプチド、230番目から396番目に対応するペプチド、230番目から401番目に対応するペプチド、230番目から411番目に対応するペプチドまたは230番目から416番目に対応するペプチドを使用することができる。これらの具体的な配列が示されたペプチドは、それらの機能を失わない限り、例えば感度の改良のための変異を含んだものであっても、本発明に係るカルシウムセンサータンパク質に使用することができる。
発光酵素とは発光を伴う反応を触媒する酵素を意味する。発光酵素は、カルシウムセンサータンパク質において、N末端側断片およびC末端側断片として含まれている。「N末端側断片」とは、C末端から複数のアミノ酸が欠失した発光酵素の断片であって、発光酵素活性を失った断片を意味する。「C末端側断片」とは、N末端から複数のアミノ酸が欠失した発光酵素の断片であって、発光酵素活性を失った断片を意味する。
発光酵素としては、例えばルシフェラーゼを使用できる。ルシフェラーゼには、ホタル由来のもの、ウミシイタケ由来のものおよびバクテリア由来のもの等が存在するが、特にホタル由来ルシフェラーゼまたはウミシイタケ(レニラ)由来ルシフェラーゼを使用することが好ましい。また、発光基質は発光酵素に応じて選択されるが、ホタルルシフェラーゼを発光酵素として使用する場合、発光基質としてはルシフェリンを使用することができる。また、レニラルシフェラーゼ発光酵素として使用する場合、発光基質としてはセレンテラジンを使用することができる。特に、N末端側断片としてホタルルシフェラーゼの1番目から416番目のアミノ酸配列に対応するペプチド断片を使用し、C末端側断片としてホタルルシフェラーゼの399番目から550番目のアミノ酸配列に対応するペプチド断片を使用することができる。あるいは、N末端側断片としてレニラルシフェラーゼの1番目から91番目のアミノ酸配列に対応するペプチド断片を使用し、C末端側断片としてレニラルシフェラーゼの92番目から311番目のアミノ酸配列に対応するペプチド断片を使用することができる。これらの具体的な配列が示されたペプチドは、それらの機能を失わない限り、例えば活性の改良のための変異を含んだものであっても、本発明に係るカルシウムセンサータンパク質に使用することができる。
カルシウムセンサータンパク質において、カルシウム結合領域および相互作用領域は、C末端側断片とN末端側断片との間に配置される。カルシウム結合領域および相互作用領域のどちらがカルシウムセンサータンパク質のN末端側に位置してもよいが、上述のカメレオンタンパク質由来のCaM−M13を使用する場合、カルシウムセンサータンパク質のN末端側にカルシウム結合領域であるCaMが位置し、C末端側に相互作用領域であるM13が位置する。一方、発光酵素のC末端側断片およびN末端側断片も、どちらがカルシウムセンサータンパク質のN末端側に位置してもよい。例えば、カルシウムセンサータンパク質のN末端側に発光酵素のN末端側断片を配置し、カルシウムセンサータンパク質のC末端側に発光酵素のC末端側断片を配置してもよい。これに対し、N末端断片およびC末端断片を、発酵酵素における本来の配置に対して円順列置換させてもよい。すなわち、カルシウムセンサータンパク質のN末端側に発光酵素のC末端側断片を配置し、カルシウムセンサータンパク質のC末端側に発光酵素のN末端側断片を配置してもよい。
したがって、カルシウムセンタータンパク質は、例えば、そのN末端側から、発光酵素のC末端側断片、カルシウム結合領域、相互作用領域および発光酵素のN末端側断片が順に並んだ構造を有する。この具体例として、カルシウムセンサータンパク質は配列番号21に示されるアミノ酸配列を有してよい。このタンパク質は、そのN末端側から、ホタルルシフェラーゼのC末端側断片(399番目から550番目)、カメレオンタンパク質のCaM−M13断片(230番目から406番目)およびホタルルシフェラーゼのN末端側断片(1番目から416番目)が配置された構造を有し、本願では「cpGL4_C_CaM−M13_N」と称される(図5a参照)。また、カルシウムセンサータンパク質は、配列番号22に示されるアミノ酸配列を有してよい。このタンパク質は、そのN末端側から、レニラルシフェラーゼのC末端側断片(92番目から311番目)、カメレオンタンパク質のCaM−M13断片(230番目から406番目)およびレニラルシフェラーゼのN末端側断片(1番目から91番目)が配置された構造を有し、本願では「cphRL_C_CaM−M13_N」と称される(図5b参照)。
カルシウムセンサータンパク質は、カルシウムの存在に応じて、発光酵素としての活性を取得または喪失することができる。カルシウムセンサータンパク質に含まれる発光酵素のC末端側断片およびN末端側断片は、それぞれ発光酵素としての活性を失っているものの、カルシウムセンサータンパク質の構造に応じてC末端側断片とN末端側断片とが接近して結合することで、発光活性を回復することができる。カルシウムセンサータンパク質の構造は、カルシウム結合領域と相互作用領域とによって調節される。例えば、図5aに示されるように、cpGL4_C_CaM−M13_Nでは、カルシウムイオンが存在していない場合、C末端側断片とN末端側断片とは適度に接近して結合し発光酵素としての活性を示すが、カルシウムイオンが存在すると、CaMにカルシウムイオンが結合し、さらにそこへM13が結合することで、センサータンパク質全体としての構造が変化し、発光酵素としての活性を失う。一方、図5bに示されるcphRL_C_CaM−M13_Nでは、カルシウムイオンが存在していない場合には、C末端側断片とN末端側断片とが結合できず発光酵素としての活性を示さないが、カルシウムイオンが存在するとCaMおよびM13との作用によりセンサータンパク質の構造が変化し、C末端側断片とN末端側断片とが適度に接近して結合するため発光酵素としての活性を示す。このような機構に基づいて、カルシウムセンサータンパク質を用いることで、カルシウムイオンの存在または非存在を、発光酵素による発光の有無として検出することができる。
なお、発光酵素のC末端側断片とN末端側断片との間の「結合」の態様に特別な限定はなく、共有結合または非共有結合等の化学的結合であってもよい。特に、N末端側断片とC末端側断片とが発光酵素の本来の機能を果たしうる程度に「接近」または「接触」している状態であることが好ましい。あるいは、N末端側断片とC末端側断片とが「会合」する状態であってもよい。すなわち、当該表現において使用される「結合」という用語は、「接近」、「接触」または「会合」という意味を含む。
上述のとおり、本発明に係るカルシウムセンサータンパク質は、カルシウムの存在に応じて、発光酵素の活性が消失または回復する。また、本発明に係る方法は、当該タンパク質のこのような特徴を利用する。従来の分子間のエネルギー共鳴(FRET、BRET等)を利用する技術では、エネルギー共鳴の効率の低さに起因してダイナミックレンジが狭く、また、検出される波長の違いによってカルシウムの存在/非存在が解析される。これに対し、本発明では、ルシフェラーゼといった発光酵素による単純な反応を利用するためダイナミックレンジが広く、イメージングも可能となり、また、カルシウムの存在/非存在は発光の発生/非発生に対応するため、シグナル/ノイズ比の高い検出結果が得られる。
[核酸]
次に、本発明に係るカルシウムセンサータンパク質をコードする遺伝子を含む核酸に関して説明する。
当該核酸は、本発明に係るカルシウムセンサータンパク質をコードする遺伝子を含む。特に、そのような遺伝子のORF領域を含む。この遺伝子のコドンは、対象とする細胞における発現に最適化されていてよい。また、Kozak配列等、発現量を上昇させるための配列を含んでよく、または付与されていてよい。
また、本発明は上記核酸を含むベクターに関する。当該ベクターは、対象とする細胞における発現のための発現ベクターであってよい。発現ベクターである場合、カルシウムセンサータンパク質をコードする遺伝子の配列のほかに、発現を制御するための配列、マーカー遺伝子の配列等、一般的な発現ベクターに含まれる配列を含んでよい。本発明に係る細胞内カルシウム解析方法の細胞作製工程において、当該発現ベクターを使用することができる。すなわち、当該発現ベクターを細胞に導入し、カルシウムセンサータンパク質を発現させて、カルシウムの検出に使用できる。
[装置]
次に、本発明に係るカルシウム解析方法(特に撮像工程および解析工程)にて使用される発光観察システム100について、図1から3を用いて説明する。図1は、発光観察システム100の全体構成の一例を示す図である。図2は、発光観察システム100の発光画像撮像ユニット106の構成の一例を示す図である。図3は、発光観察システム100の発光画像撮像ユニット106の構成の一例を示す図である。
まず、図1に示すように、発光観察システム100は、細胞102を収納した容器103(具体的にはシャーレ、スライドガラス、マイクロプレート、ゲル支持体、微粒子担体など)と、容器103を配置するステージ104と、発光画像撮像ユニット106と、画像解析装置110と、で構成されている。微弱な発光を測定するための発光画像撮像ユニット106をステージ104の下側に配置してもよい。これにより、カバー開閉によるサンプル上方からの外乱光を完全に遮断できて発光画像のシグナル/ノイズ比を増すことができる。発光画像撮像ユニット106は、レーザー走査式の光学系であってもよい。
ここで、細胞102は、例えば、カルシウム濃度に依存して発光するよう発光標識された生きた細胞である。また、カルシウム濃度に依存して発光するタンパク質として、発光酵素のC末端側断片とN末端側断片との間にカルシウム結合領域(カルモジュリン)およびカルシウム結合領域と可逆的に結合または解離できる相互作用領域(M13)を挿入した融合タンパク質の他に、例えば、特許文献2または特許文献3に開示されている融合タンパク質を用いてもよい。また、ここで、細胞102に、上記融合タンパク質が発現されるよう構成した、当該融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターを導入することにより、融合タンパク質が細胞102内で発現されるよう構成してもよい。なお、細胞102には、添加工程において、当該細胞外から所定の発光基質(例えばルシフェリンなど)および所定の刺激(例えば薬物刺激など)が与えられる。
また、発光画像撮像ユニット106は、具体的には、正立型の発光顕微鏡であり、細胞102の発光画像を撮像する。発光画像撮像ユニット106は、図示の如く、対物レンズ106aと、ダイクロイックミラー106bと、CCDカメラ106cと、結像レンズ106fと、で構成されている。対物レンズ106aは、具体的には、(開口数/倍率)の値が0.01以上のものである。ダイクロイックミラー106bは、細胞102から発せられた発光を色別に分離し、2色の発光を用いて発光量や発光強度を色別に測定する場合に用いる。CCDカメラ106cは、対物レンズ106a、ダイクロイックミラー106bおよび結像レンズ106fを介して当該CCDカメラ106cのチップ面に投影された細胞102の発光画像および明視野画像を撮る。また、CCDカメラ106cは、画像解析装置110と有線または無線で通信可能に接続される。ここで、細胞102が撮像範囲中に複数存在する場合、CCDカメラ106cは、当該撮像範囲中に含まれる複数の細胞102の発光画像および明視野画像を撮像してもよい。結像レンズ106fは、対物レンズ106aおよびダイクロイックミラー106bを介して当該結像レンズ106fに入射した像(具体的には細胞102を含む像)を結像する。なお、図1では、ダイクロイックミラー106bで分離した2つの発光に対応する発光画像を2台のCCDカメラ106cで別々に撮像する場合の一例を示しており、1つの発光を用いる場合には、発光画像撮像ユニット106は、対物レンズ106a、1台のCCDカメラ106cおよび結像レンズ106fで構成されてもよい。
ここで、2色の発光を用いて発光量や発光強度を色別に測定する場合、発光画像撮像ユニット106は、図2に示すように、対物レンズ106aと、CCDカメラ106cと、スプリットイメージユニット106dと、結像レンズ106fと、で構成されてもよい。そして、CCDカメラ106cは、スプリットイメージユニット106dおよび結像レンズ106fを介して当該CCDカメラ106cのチップ面に投影された細胞102の発光画像(スプリットイメージ)および明視野画像を撮像してもよい。スプリットイメージユニット106dは、細胞102から発せられた発光を色別に分離し、ダイクロイックミラー106bと同様、2色の発光を用いて発光量や発光強度を色別に測定する場合に用いる。
また、複数色の発光を用いて発光量や発光強度を色別に測定する場合(つまり、多色の発光を用いる場合)、発光画像撮像ユニット106は、図3に示すように、対物レンズ106aと、CCDカメラ106cと、フィルターホイール106eと、結像レンズ106fと、で構成されてもよい。そして、CCDカメラ106cは、フィルターホイール106eおよび結像レンズ106fを介して当該CCDカメラ106cのチップ面に投影された細胞102の発光画像および明視野画像を撮像してもよい。フィルターホイール106eは、細胞102から発せられた発光をフィルタ交換によって色別に分離し、複数色の発光を用いて発光量や発光強度を色別に測定する場合に用いる。
図1に戻り、画像解析装置110は、具体的にはパーソナルコンピュータである。そして、画像解析装置110は、図4に示すように、大別して、制御部112と、システムの時刻を計時するクロック発生部114と、記憶部116と、通信インターフェース部118と、入出力インターフェース部120と、入力装置122と、出力装置124と、で構成されており、これら各部はバスを介して接続されている。
記憶部116は、ストレージ手段であり、具体的には、RAMやROM等のメモリ装置、ハードディスクのような固定ディスク装置、フレキシブルディスク、光ディスク等を用いることができる。そして、記憶部116は制御部112の各部の処理により得られたデータなどを記憶する。通信インターフェース部118は、画像解析装置110と、CCDカメラ106cと、の間における通信を媒介する。すなわち、通信インターフェース部118は他の端末と有線または無線の通信回線を介してデータを通信する機能を有する。入出力インターフェース部120は、入力装置122や出力装置124に接続する。ここで、出力装置124には、モニタ(家庭用テレビを含む)の他、スピーカやプリンタを用いることができる(なお、以下で、出力装置124をモニターとして記載する場合がある)。また、入力装置122には、キーボードやマウスやマイクの他、マウスと協働してポインティングデバイス機能を実現するモニターを用いることができる。
また、制御部112は、OS(Operating System)等の制御プログラムや各種の処理手順等を規定したプログラムや所要データを格納するための内部メモリを有し、これらのプログラムに基づいて種々の処理を実行する。そして、制御部112は、大別して、発光画像撮像指示部112aと、発光画像取得部112bと、画像解析部112cと、解析結果出力部112dと、で構成されている。
また、発光画像撮像指示部112aは、通信インターフェース部118を介して、CCDカメラ106cへ発光画像および明視野画像の撮像を指示する。発光画像取得部112bは、CCDカメラ106cで撮像した発光画像および明視野画像を、通信インターフェース部118を介して取得する。ここで、発光画像撮像指示部112aは、発光画像および明視野画像を繰り返し撮像する指示を行ってもよく、複数の異なる細胞102について同時に撮像を実行してもよい。なお、発光画像取得部112bは、撮像した発光画像および明視野画像を、クロック発生部114による時間情報とともに記憶部116に格納してもよい。
また、画像解析部112cは、発光画像取得部112bで取得した発光画像に基づいて、細胞102から発せられる発光の発光強度に基づいてカルシウムの濃度を解析する。ここで、画像解析部112cは、発光画像取得部112bにより繰り返し撮像された複数の発光画像に基づいて、経時的なカルシウム濃度の変動を測定してもよく、複数の異なる細胞102について同時に発光画像が撮像された場合に、複数の発光画像を細胞102ごとに照合してカルシウムの濃度を解析してもよい。
解析結果出力部112dは、画像解析部112cでの解析結果を出力装置124に出力する。より具体的には、解析結果出力部112dは、画像解析部112cで得られた、細胞102から発せられる発光の発光強度に基づくカルシウム濃度の時系列データを、グラフ化して出力装置124に表示する。
ホタルルシフェラーゼを用いたカルシウムセンサータンパク質を作製し、その機能を調べた。
[前準備1]
前準備として、ホタルルシフェラーゼのN末端側断片遺伝子およびC末端側断片遺伝子のクローニング、CaMおよびM13遺伝子のクローニング並びにカルシウムセンサータンパク質発現プラスミドの作製を行った。
(手順1)
ホタルルシフェラーゼの各断片のクローニングのための、PCR(polymerase chain reaction)に用いる合成オリゴDNA(deoxyribonucleic acid)を以下に示す配列で調製した。調製したオリゴDNAは、本来の順序でセンサータンパク質内に配置するためのN末側断片(NLuc)遺伝子およびC末側断片(CLuc)遺伝子、並びに円順列置換してセンサータンパク質内に配置するためのN末側断片(cpNLuc)遺伝子およびC末側断片(cpCLuc)遺伝子である。
[NLuc遺伝子作製用合成オリゴDNA配列]
NLuc_Fw(配列番号1):5’−TGTGGATCCAGCCACCATGGAAGATGCCAA−3’
NLuc_Rv(配列番号2):5’−CAGCTCGAGGTCCTTGTCGATGAGAGCGTT−3’
[CLuc遺伝子作製用合成オリゴDNA配列]
CLuc_Fw(配列番号3):5’−ATCAGATCTGGCTACGTTAACAACCCCGAG−3’
CLuc_Rv(配列番号4):5’−CTAGAATTCTTACACGGCGATCTTGCCGCC−3’
[cpNLuc遺伝子作製用合成オリゴDNA配列]
cpNLuc_Fw(配列番号5):5’−ATCAGATCTGAAGATGCCAAAAACATTAAG−3’
cpNLuc_Rv(配列番号6):5’−CTAGAATTCTTAGTCCTTGTCGATGAGAGC−3’
[cpCLuc遺伝子作製用合成オリゴDNA配列]
cpCLuc_Fw(配列番号7):5’−TGTGGATCCAGCCACCATGAGCGGCTACGTTAACAACCCC−3’
cpCLuc_Rv(配列番号8):5’−CAGCTCGAGCACGGCGATCTTGCCGCCCTT−3’
また、カルモジュリンおよびM13のクローニングのための、PCRに用いる合成オリゴDNAを以下に示す配列で調製した。
[CaM−M13遺伝子作製用合成オリゴDNA配列]
CaM−M13_Fw(配列番号9):5’−GCCCTCGAGCATGACCAACTGACAGAAGAG−3’
CaM−M13_Rv(配列番号10):5’−CATGGATCCCAGTGCCCCGGAGCTGGAGAT−3’
CaM−M13d10_Rv(配列番号11):5’−CATGGATCCCCGGTTGGCAGCGCTGACGGC −3’
CaM−M13d05_Rv(配列番号12):5’−CATGGATCCGGAGATCTTCTTGAACCGGTT −3’
CaM−M13a05_Rv(配列番号13):5’−CATGGATCCGCTCACCATGAGCTCCAGTGC −3’
CaM−M13a10_Rv(配列番号14):5’−CATGGATCCCAGCTCCTCGCCCTTGCTCAC −3’
(手順2)
上記のオリゴDNAを用いて、ホタルルシフェラーゼの各断片をPCRによりクローニングした。鋳型としてpGL4.10(プロメガ(株)製)を用いた。配列番号1および2のオリゴDNAをプライマーとして用いてN末端側断片遺伝子(NLuc:GL4.10遺伝子の1番目から416番目のアミノ酸を含む)を増幅し、配列番号3および4のオリゴDNAを用いてC末端側断片遺伝子(CLuc:GL4.10遺伝子の399番目から550番目のアミノ酸を含む)を増幅し、配列番号5および6のオリゴDNAを用いて円順列置換センサータンパク質用のN末端側断片遺伝子(cpNLuc:GL4.10遺伝子の1番目から416番目のアミノ酸を含む)を増幅し、配列番号7および8のオリゴDNAを用いて円順列置換センサータンパク質用のC末端側断片遺伝子(cpCLuc:GL4.10遺伝子の399番目から550番目のアミノ酸を含む)を増幅した。
(手順3)
上記のオリゴDNAを用いて、CaMおよびM13をPCRによりクローニングした。鋳型としてカメレオン遺伝子(YC2.1)のcDNAを用いた(非特許文献1)。配列番号9および10のオリゴDNAをプライマーとして用いてCaM−M13遺伝子(カメレオン遺伝子の230番目から406番目のアミノ酸配列に対応する領域を含む)、配列番号9および11のオリゴDNAをプライマーとして用いてCaM−M13d10遺伝子(カメレオン遺伝子の230番目から396番目のアミノ酸配列に対応する領域を含む)、配列番号9および12のオリゴDNAをプライマーとして用いてCaM−M13d05遺伝子(カメレオン遺伝子の230番目から401番目のアミノ酸配列に対応する領域を含む)、配列番号9および13のオリゴDNAをプライマーとして用いてCaM−M13a05遺伝子(カメレオン遺伝子の230番目から411番目のアミノ酸配列に対応する領域を含む)並びに配列番号9および14のオリゴDNAをプライマーとして用いてCaM−M13a10遺伝子(カメレオン遺伝子の230番目から416番目のアミノ酸配列に対応する領域を含む)をそれぞれ増幅した。
(手順4)
上記の通り増幅した各遺伝子を発現用プラスミドに挿入することで、カルシウムセンサータンパク質発現用プラスミドを作製した。具体的には、動物細胞発現用プラスミドであるpcDNA3.1(インビトロジェン社製)のBamHI部位とEcoRI部位の間に、発光酵素の断片としてNLuc遺伝子およびCLuc遺伝子を、カルシウム結合領域および相互作用領域としてCaM−M13遺伝子、CaM−M13d10遺伝子、CaM−M13d05遺伝子、CaM−M13a05遺伝子またはCaM−M13a10遺伝子をそれぞれ挿入し、プラスミドpcDNA/GL4_N_CaM−M13_C、pcDNA/GL4_N_CaM−M13d10_C、pcDNA/GL4_N_CaM−M13d05_C、pcDNA/GL4_N_CaM−M13a05_CおよびpcDNA/GL4_N_CaM−M13a10_Cを作製した。また、pcDNA3.1(インビトロジェン社製)のBamHI部位とEcoRI部位の間に、発光酵素の断片としてcpNLuc遺伝子およびcpCLuc遺伝子を、カルシウム結合領域および相互作用領域としてCaM−M13遺伝子、CaM−M13d10遺伝子、CaM−M13d05遺伝子、CaM−M13a05遺伝子またはCaM−M13a10遺伝子をそれぞれ挿入し、プラスミドpcDNA/cpGL4_C_CaM−M13_N、pcDNA/cpGL4_C_CaM−M13d10_N、pcDNA/cpGL4_C_CaM−M13d05_N、pcDNA/cpGL4_C_CaM−M13a05_NおよびpcDNA/cpGL4_C_CaM−M13a10_Nを作製した。
[前準備2]
カルシウムセンサータンパク質の機能の測定のために、細胞をセロトニン刺激することでカルシウムイオンを流入させる実験系を使用する。そのためにセロトニン受容体である5HT2A受容体(配列番号23)の遺伝子をクローニングした。
(手順1)
PCRに用いる合成オリゴDNAを以下に示す配列で調製した。
[ヒト5HT2A受容体遺伝子作製用合成オリゴDNA配列]
HU_5HT2AR_Fw(配列番号15):5’−GCCACCATGGATATTCTTTGTGAAGAAAAT−3’
HU_5HT2AR_Rv(配列番号16):5’−TCACACACAGCTCACCTTTTCATTCACTCC−3’
(手順2)
プライマーとして上記オリゴDNAを用い、鋳型としてヒト脳cDNAライブラリ(タカラバイオ(株)製)を用いて、5HT2A受容体遺伝子(ヒトの5HT2A受容体遺伝子の全長に対応する領域を含む)をPCRにより増幅した。
(手順3)
PCRで増幅させた5HT2A受容体遺伝子をpBluescriptIIベクターにサブクローニングした後、作製したDNAの配列をDNAシーケンシングにより確認した。
(手順4)
手順2の通り増幅した5HT2A受容体遺伝子を、哺乳類細胞の発現ベクターpcDNA3.1(+)(インビトロジェン(株)製)に挿入し、ヒト5HT2A受容体発現用プラスミドpcDNA/5HT2ARを作製した。
[実験]
上記の通り作製したカルシウムセンサータンパク質発現用プラスミドおよびヒト5HT2A受容体発現用プラスミドを用いて、HEK293細胞におけるカルシウム濃度変動の発光イメージングを行った。
(手順1)
ATCC社より入手したHEK293細胞を、5%COインキュベーター内にて、10% Fetal Bovine Serumおよび1×Nonessential amino acidsを添加したEarle’s MEM/培地(GIBCO社製)中で培養した。
(手順2)
次の通り、細胞に各発現用プラスミドを導入した。細胞を、直径35mmガラスボトムディッシュに2x10/dishの細胞密度で播種し、5%COインキュベーター内で一晩培養した後、ヒト5HT2A受容体発現用プラスミドpcDNA/5HT2ARおよびカルシウムセンサータンパク質発現用プラスミドpcDNA/GL4_N_CaM−M13_C、pcDNA/GL4_N_CaM−M13d10_C、pcDNA/GL4_N_CaM−M13d05_C、pcDNA/GL4_N_CaM−M13a05_C、pcDNA/cpGL4_C_CaM−M13_N、pcDNA/cpGL4_C_CaM−M13d10_N、pcDNA/cpGL4_C_CaM−M13d05_NまたはpcDNA/cpGL4_C_CaM−M13a05_Nを、FuGENE HD(ロシュ社製)を用いてトランスフェクションを行い、5%COインキュベーター内で一晩培養した。
(手順3)
次の通り、発光画像の撮像を行った。培地中にルシフェリン2mM(プロメガ社製)を加えて1時間静置し、発光顕微鏡LV(LUMINOVIEW)−200(オリンパス社製)にセットし、12秒間隔で発光画像のタイムラプス撮影を行った。発光観察の条件として、対物レンズの倍率を40倍、露出時間を5〜10秒間、ビニングを1x1とし、EM−CCDカメラiXon(アンドール社製)を用いて、画像解析装置110として構成したパーソナルコンピュータに取り込んだ。
(手順4)
タイムラプス撮影開始から2分後、セロトニン5HT(最終濃度10μM)で刺激を行い、引き続き発光画像のタイムラプス撮影を行った。この刺激によって、細胞内にカルシウムイオンが流入する。
(手順5)
手順3で撮影した各々の発光画像に対して複数のROI(Region of Interest:関心領域)を指定し(図6)、手順4で撮影した各々の発光画像に対して複数のROIを指定した(図7)。さらに、指定した各ROIの発光強度を各々の発光画像に基づいて測定し、その発光強度の経時変化をグラフで表示した(図8)。なお、図6から8は、細胞内にcpGL4_C_CaM−M13d10_Nを発現させた場合の結果を示す。発光画像の解析は、画像解析部112cとして機能するMetaMorphソフトウェア(ユニバーサルイメージング社製)を用いて行った。
[結果]
図6−8に示されるように、円順列置換型のホタルルシフェラーゼ遺伝子を用いたカルシウムセンサータンパク質cpGL4_C_CaM−M13_N(配列番号21)を用いた場合、セロトニン5HT刺激の前後で発光強度の変化を検出することができた。すなわち、刺激前において観察された発光強度(図6)は、刺激後において低下した(図7)。グラフを見ると、5HT刺激直後(横軸2−3分)に蛍光強度が大きく下がることがわかる(図8)。なお、5分後以降、発光強度が上下する様子が観察されたが、これは細胞によるカルシウム濃度の調節を反映していると考えられる。このように、cpGL4_C_CaM−M13_Nを用いることによって、刺激に対するカルシウム応答を発光強度の減少としてシングルセル(単一細胞)レベルで検出できることがわかった。
一方、pcDNA/GL4_N_CaM−M13_C、pcDNA/GL4_N_CaM−M13d10_C、pcDNA/GL4_N_CaM−M13d05_CまたはpcDNA/GL4_N_CaM−M13a05_Cを用いた場合は、5HTで細胞を刺激したときに発光強度に変化が見られず、pcDNA/cpGL4_C_CaM−M13d10_N、pcDNA/cpGL4_C_CaM−M13d05_N、pcDNA/cpGL4_C_CaM−M13a05_Nを用いた場合は、発光が弱く画像取得ができなかった。
また、個々の細胞における発光強度の変化を見ると、5HT刺激において細胞間の応答に大きなばらつきのあることがわかった(図8)。これまでのカルシウムを介する細胞内情報伝達機構の研究から、カルシウム濃度変化の細胞内分布あるいは時間経過が異なると、シグナルの意味が異なることが明らかにされている。従来のルミノメーターを用いた発光量変化の解析では、細胞集団全体の観測に留まり、個々の細胞の応答までは解析できなかった。しかし、本発明に係るカルシウムセンサータンパク質を用いた方法の場合、生体内の変化を1細胞毎にリアルタイムに観察することができ、細胞内シグナルの働きを詳細に研究できることがわかった。
レニラルシフェラーゼを用いたカルシウムセンサータンパク質を作製し、その機能を調べた。
[前準備1]
前準備として、レニラルシフェラーゼのN末端側断片遺伝子およびC末端側断片遺伝子のクローニング、CaMおよびM13遺伝子のクローニング並びにカルシウムセンサータンパク質発現プラスミドの作製を行った。
(手順1)
円順列置換されたレニラルシフェラーゼのN末側断片(cpRNLuc)遺伝子およびC末側断片(cpRCLuc)遺伝子の作製のための、PCRに用いる合成オリゴDNAを以下に示す配列で調製した。
[cpRNLuc遺伝子作製用合成オリゴDNA配列]
cpRNLuc_Fw(配列番号17):5’−ATCAGATCTGCTTCCAAGGTGTACGACCCC−3’
cpRNLuc_Rv(配列番号18):5’−CTAGAATTCTTATGAGCCATTCCCGCTCTT−3’
[cpRCLuc遺伝子作製用合成オリゴDNA配列]
cpRCLuc_Fw(配列番号19):5’−TGTGGATCCAGCCACCATGTATCGCCTCCTGGATCACTAC−3’
cpRCLuc_Rv(配列番号20):5’−CAGCTCGAGCTGCTCGTTCTTCAGCACGCG−3’
なお、CaMおよびM13遺伝子のクローニングには、実施例1と同様のオリゴDNA(配列番号9−14)を用いる。
(手順2)
上記のオリゴDNAを用いて、レニラルシフェラーゼの各断片をPCRによりクローニングした。鋳型としてhRluc(プロメガ(株)製)を用いた。プライマーとして
配列番号17および18のオリゴDNAを用いて、円順列置換センサータンパク質用のN末端側断片遺伝子(cpRNLuc:hRluc遺伝子の1番目から91番目のアミノ酸を含む)を増幅し、配列番号19および20のオリゴDNAを用いて、末端側断片遺伝子(cpRCLuc:hRluc遺伝子の92番目から311番目のアミノ酸を含む)を増幅した。
また、CaMおよびM13を、実施例1と同様に、カメレオン遺伝子(YC2.1)からクローニングすることで、CaM−M13遺伝子、CaM−M13d10遺伝子、CaM−M13d05遺伝子、CaM−M13a05遺伝子およびCaM−M13a10遺伝子を増幅した。
(手順3)
上記の通り増幅した各遺伝子を発現用プラスミドに挿入することで、カルシウムセンサータンパク質発現用プラスミドを作製した。具体的には、動物細胞発現用プラスミドであるpcDNA3.1(インビトロジェン社製)のBamHI部位とEcoRI部位の間に、発光酵素の断片としてcpRNLuc遺伝子およびcpRCLuc遺伝子を、カルシウム結合領域および相互作用領域としてCaM−M13遺伝子、CaM−M13d10遺伝子、CaM−M13d05遺伝子、CaM−M13a05遺伝子またはCaM−M13a10遺伝子をそれぞれ挿入し、プラスミドpcDNA/cphRL_C_CaM−M13_N、pcDNA/cphRL_C_CaM−M13d10_N、pcDNA/cphRL_C_CaM−M13d05_N、pcDNA/cphRL_C_CaM−M13a05_NおよびpcDNA/cphRL_C_CaM−M13a10_Nを作製した。
[前準備2]
カルシウムセンサータンパク質の機能の測定のために、細胞をセロトニン刺激することでカルシウムイオンを流入させる実験系を使用する。そのためにセロトニン受容体である5HT2A受容体の遺伝子を、実施例1と同様にクローニングした。
[実験]
上記の通り作製したカルシウムセンサータンパク質発現用プラスミドおよびヒト5HT2A受容体発現用プラスミドを用いて、HEK293細胞におけるカルシウム濃度変動の発光イメージングを行った。
(手順1)
ATCC社より入手したHEK293細胞を、5%COインキュベーター内にて、10% Fetal Bovine Serumおよび1×Nonessential amino acidsを添加したEarle’s MEM/培地(GIBCO社製)中で培養した。
(手順2)
次の通り、細胞に各発現用プラスミドを導入した。細胞を、直径35mmガラスボトムディッシュに2x10/dishの細胞密度で播種し、5%COインキュベーター内で一晩培養した後、ヒト5HT2A受容体発現用プラスミドpcDNA/5HT2ARおよびカルシウムセンサータンパク質発現用プラスミドpcDNA/cphRL_C_CaM−M13_N、pcDNA/cphRL_C_CaM−M13d10_N、pcDNA/cphRL_C_CaM−M13d05_N、pcDNA/cphRL_C_CaM−M13a05_NおよびpcDNA/cphRL_C_CaM−M13a10_Nを、FuGENE HD(ロシュ社製)を用いてトランスフェクションを行い、5%COインキュベーター内で一晩培養した。
(手順3)
次の通り、発光画像の撮像を行った。培地中にセレンテラジン50μM(プロメガ社製)を加えて1時間静置し、発光顕微鏡LV(LUMINOVIEW)−200(オリンパス社製)にセットし、5秒間隔で発光画像のタイムラプス撮影を行った。発光観察の条件として、対物レンズの倍率を40倍、露出時間を5〜10秒間、ビニングを1x1とし、EM−CCDカメラiXon(アンドール社製)を用いて、画像解析装置110として構成したパーソナルコンピュータに取り込んだ。
(手順4)
タイムラプス撮影開始から2分後、セロトニン5HT(最終濃度10μM)で刺激を行い、引き続き発光画像のタイムラプス撮影を行った。この刺激によって、細胞内にカルシウムイオンが流入する。
(手順5)
手順3で撮影した各々の発光画像に対して複数のROI(Region of Interest:関心領域)を指定し(図9)、手順4で撮影した各々の発光画像に対して複数のROIを指定した(図10)。さらに、指定した各ROIの発光強度を各々の発光画像に基づいて測定し、その発光強度の経時変化をグラフで表示した(図11)。なお、図9から11は、細胞内にcphRL_C_CaM−M13_Nを発現させた場合の結果を示す。発光画像の解析は、画像解析部112cとして機能するMetamorphソフトウェア(ユニバーサルイメージング社製)を用いて行った。
[結果]
図9−11に示されるように、円順列置換型のレニラルシフェラーゼ遺伝子を用いたカルシウムセンサータンパク質cphRL_C_CaM−M13_N(配列番号22)を用いた場合、セロトニン5HT刺激の前後で発光強度の変化を検出することができた。すなわち、刺激前において観察された発光強度(図9)は、刺激後において増大した(図10)。グラフを見ると、5HT刺激直後(横軸2−3分および17−18分)に発光強度が大きく上がることがわかる(図11)。このように、cphRL_C_CaM−M13_Nを用いることによって、刺激に対するカルシウム応答を発光強度の増強としてシングルセル(単一細胞)レベルで検出できることがわかった。
一方、pcDNA/cphRL_C_CaM−M13d10_N、pcDNA/cphRL_C_CaM−M13d05_N、pcDNA/cphRL_C_CaM−M13a05_NおよびpcDNA/cphRL_C_CaM−M13a10_Nを用いた場合は、発光強度が弱く発光画像を取得できなかった。
また、個々の細胞における発光強度の変化を見ると、5HT刺激において細胞間の応答に大きなばらつきのあることがわかった(図11)。これまでのカルシウムを介する細胞内情報伝達機構の研究から、カルシウム濃度変化の細胞内分布あるいは時間経過が異なると、シグナルの意味が異なることが明らかにされている。従来のルミノメーターを用いた発光量変化の解析では、細胞集団全体の観測に留まり、個々の細胞の応答までは解析できなかった。ところが、本発明に係るカルシウムセンサータンパク質を用いた方法の場合、生体内の変化を1細胞毎にリアルタイムに観察することができ、細胞内シグナルの働きを詳細に研究できることがわかった。
以上、実施例1および2の実験によれば、本発明に係るカルシウムセンサータンパク質を用いた方法によって、細胞内の情報伝達に影響を及ぼすことなく、各細胞からの正確な定量的結果を得ることができ、その結果、個々の細胞においてカルシウム濃度の変化を再現性良く経時的に観察できることがわかる。
[その他の実施形態]
本発明は、上述した実施形態以外にも、特許請求の範囲に記載した技術的思想の範囲内において種々の異なる実施の形態にて実施されてもよい。
例えば、上述した実施形態においては、主に、互いに結合することにより発光酵素活性が回復するよう分割させた発光酵素のN末端側断片およびC末端側断片、カルシウム結合タンパク質であるカルモジュリン並びにカルシウム依存的にカルモジュリンと結合するペプチド(M13)からなる融合タンパク質をカルシウムセンサータンパク質として説明を行ったが、本発明はこれに限らず、発光酵素のN末端側断片およびC末端側断片、カルシウム結合タンパク質であるカルモジュリン並びにカルシウム依存的にカルモジュリンと結合するペプチド(M13)からなる融合タンパク質に替えて、特許文献2、特許文献3、非特許文献2等に開示されているカルシウムセンサータンパク質を用いてもよい。
また、上述した記載によれば、次の要旨に表現されるポリペプチドの態様も本発明に包含される。
[ポリペプチド態様1](機能:スプリットルシフェラーゼの相互作用)
前記発光酵素のN末端側断片およびC末端側断片、カルシウム結合タンパク質であるカルモジュリン並びにカルシウム依存的にカルモジュリンと結合するペプチド(M13)のアミノ酸配列を含むポリペプチドであって、前記発光酵素のN末端側断片およびC末端側断片は非共有結合的に相互作用し、前記非共有結合的相互作用は調整可能であることを特徴とするポリペプチド。
[ポリペプチド態様2](機能:CaM−M13の作用)
前記カルシウム結合タンパク質であるカルモジュリンおよびカルシウム依存的にカルモジュリンと結合するペプチド(M13)が、前記非共有結合的相互作用を検出可能に変化させることを特徴とする前記態様1に記載のポリペプチド。
[ポリペプチド態様3](機能:外因性因子の作用)
前記非共有結合的相互作用は外因性因子の存在下で強化されることを特徴とする前記態様1に記載のポリペプチド。
[ポリペプチド態様4](機能:カルシウムの作用)
前記外因性因子はカルシウムであることを特徴とする前記態様2に記載のポリペプチド。
[ポリペプチド態様5](機能:発光)
前記態様3に記載のポリペプチドであって、前記非共有的相互作用により発光することを特徴とするポリペプチド。
以上詳述に説明したように、本発明にかかるカルシウム解析方法は、バイオ、製薬、医療など様々な分野で好適に用いることができる。
[付記]以下に、出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[項1] 発光酵素のN末端側断片、前記発光酵素のC末端側断片、カルシウム結合領域および前記カルシウム結合領域と可逆的に結合または解離できる相互作用領域を含むカルシウムセンサータンパク質であって、前記カルシウム結合領域および前記相互作用領域は前記C末端側断片と前記N末端側断片との間に配置されたカルシウムセンサータンパク質を含む細胞を作製する細胞作製工程と、
前記細胞作製工程で作製した前記細胞に当該細胞外から所定の発光基質を添加する添加工程と、
前記添加工程で前記所定の発光基質が与えられた前記細胞の発光画像を撮像する撮像工程と、
前記撮像工程で撮像した前記発光画像に基づいて、前記細胞内における前記カルシウムの濃度を解析する解析工程と
を含む細胞内カルシウム解析方法。
[項2] 前記カルシウム結合領域がカルモジュリン由来である項1に記載の細胞内カルシウム解析方法。
[項3] 前記相互作用領域がM13ペプチドである項1または2に記載の細胞内カルシウム解析方法。
[項4] 前記発光酵素がホタルルシフェラーゼであり、
前記N末端側断片がホタルルシフェラーゼのアミノ酸番号1番目から416番目のアミノ酸配列を含み、
前記C末端側断片がホタルルシフェラーゼのアミノ酸番号399番目から550番目のアミノ酸配列を含む
項1から3の何れか1項に記載の細胞内カルシウム解析方法。
[項5] 前記発光酵素がレニラルシフェラーゼであり、
前記N末端側断片がレニラルシフェラーゼのアミノ酸番号1番目から91番目のアミノ酸配列を含み、
前記C末端側断片がレニラルシフェラーゼのアミノ酸番号92番目から311番目のアミノ酸配列を含む
項1から3の何れか1項に記載の細胞内カルシウム解析方法。
[項6] 前記N末端断片および前記C末端断片は、前記発酵酵素における本来の配置に対して円順列置換されている項1から5の何れか1項に記載の細胞内カルシウム解析方法。
[項7] 前記撮像工程が前記発光画像を繰り返し撮像することを含む項1から6の何れか1項に記載の細胞内カルシウム解析方法。
[項8] 前記撮像工程が複数の異なる細胞に対して同時に行われ、
前記解析工程が前記細胞ごとに行われる、
項1から7の何れか1項に記載の細胞内カルシウム解析方法。
[項9] 前記カルシウムセンサータンパク質が配列番号21または22に示されるアミノ酸配列を有する項1から8の何れか1項に記載の細胞内カルシウム解析方法。
[項10] 発光酵素のN末端側断片、前記発光酵素のC末端側断片、カルシウム結合領域および前記カルシウム結合領域と可逆的に結合または解離できる相互作用領域を含むカルシウムセンサータンパク質であって、前記カルシウム結合領域および前記相互作用領域は前記C末端側断片と前記N末端側断片との間に配置され、前記N末端断片および前記C末端断片は前記発酵酵素における本来の配置に対して円順列置換されているカルシウムセンサータンパク質。
[項11] 前記前記カルシウム結合領域がカルモジュリン由来である項10に記載のカルシウムセンサータンパク質。
[項12] 前記相互作用領域がM13ペプチドである項10または11に記載のカルシウムセンサータンパク質。
[項13] 前記発光酵素がホタルルシフェラーゼであり、
前記N末端側断片がホタルルシフェラーゼのアミノ酸番号1番目から416番目のアミノ酸配列を含み、
前記C末端側断片がホタルルシフェラーゼのアミノ酸番号399番目から550番目のアミノ酸配列を含む
項10から12の何れか1項に記載のカルシウムセンサータンパク質。
[項14] 前記発光酵素がレニラルシフェラーゼであり、
前記N末端側断片がレニラルシフェラーゼのアミノ酸番号1番目から91番目のアミノ酸配列を含み、
前記C末端側断片がレニラルシフェラーゼのアミノ酸番号92番目から311番目のアミノ酸配列を含む
項10から12の何れか1項に記載のカルシウムセンサータンパク質。
[項15] 配列番号21または22に示されるアミノ酸配列を有する項10から14の何れか1項に記載のカルシウムセンサータンパク質。
100 発光観察システム
102 細胞
103 容器(シャーレ)
104 ステージ
106 発光画像撮像ユニット
106a 対物レンズ(発光観察用)
106b ダイクロイックミラー
106c CCDカメラ
106d スプリットイメージユニット
106e フィルターホイール
106f 結像レンズ
110 画像解析装置
112 制御部
112a 発光画像撮像指示部
112b 発光画像取得部
112c 画像解析部
112d 解析結果出力部
114 クロック発生部
116 記憶部
118 通信インターフェース部
120 入出力インターフェース部
122 入力装置
124 出力装置

Claims (4)

  1. 発光酵素のN末端側断片、前記発光酵素のC末端側断片、カルシウム結合領域および前記カルシウム結合領域と可逆的に結合または解離できる相互作用領域を含むカルシウムセンサータンパク質であって、前記カルシウム結合領域および前記相互作用領域は前記C末端側断片と前記N末端側断片との間に配置されたカルシウムセンサータンパク質を含む細胞を作製する細胞作製工程と、
    前記細胞作製工程で作製した前記細胞に当該細胞外から所定の発光基質を添加する添加工程と、
    前記添加工程で前記所定の発光基質が与えられた前記細胞の発光画像を撮像する撮像工程と、
    前記撮像工程で撮像した前記発光画像に基づいて、前記細胞内における前記カルシウムの濃度を解析する解析工程と
    を含み、
    前記カルシウムセンサータンパク質が配列番号21または22に示されるアミノ酸配列を有する
    細胞内カルシウム解析方法。
  2. 前記撮像工程が前記発光画像を繰り返し撮像することを含む請求項1に記載の細胞内カルシウム解析方法。
  3. 前記撮像工程が複数の異なる細胞に対して同時に行われ、
    前記解析工程が前記細胞ごとに行われる、請求項1または2に記載の細胞内カルシウム解析方法。
  4. 発光酵素のN末端側断片、前記発光酵素のC末端側断片、カルシウム結合領域および前記カルシウム結合領域と可逆的に結合または解離できる相互作用領域を含むカルシウムセンサータンパク質であって、前記カルシウム結合領域および前記相互作用領域は前記C末端側断片と前記N末端側断片との間に配置され、前記N末端断片および前記C末端断片は前記発酵素における本来の配置に対して円順列置換されているカルシウムセンサータンパク質であって、
    前記発光酵素がホタルルシフェラーゼ及びレニラルシフェラーゼから選択される発光酵素であり、
    前記カルシウム結合領域がカルモジュリン由来であり、
    相互作用領域がM13ペプチドであり、
    配列番号21または22に示されるアミノ酸配列を有するカルシウムセンサータンパク質。
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