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JP5889614B2 - ペースト練和装置 - Google Patents

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Description

本発明は、多糖類高分子電解質を含む基材ペーストと、ゲル化反応剤を含む硬化材ペーストとを練和する装置において、比較的長期間装置を使用しない場合でも、基材ペーストを送給するポンプ内で多糖類高分子電解質がゲル化しないペースト練和装置に関し、特に上記両ペーストの練和により歯科用印象材を調製するペースト練和装置に関する。
歯科用印象材として、弾性に優れ、操作が容易なアルギン酸塩印象材が広く使用されている。アルギン酸塩印象材は、多糖類高分子電解質の一種であるアルギン酸塩及び水を主成分とする基材ペーストと、硫酸カルシウム等のゲル化反応剤を主成分とする硬化材ペーストとを練和することにより得られる。
所望の粘度及び硬化時間を有するアルギン酸塩印象材を容易に調製するために、ペースト練和装置が多用されている。一般的にペースト練和装置は、基材ペースト送給用ポンプと、硬化材ペースト送給用ポンプと、両ポンプから吐出されたペーストを練和する手段とを具備する。ペースト練和装置を連続運転するには、ペースト送給用ポンプとして、ハウジングと、その中に回転可能に収容された少なくとも一つの回転子とを有する回転ポンプを用いるのが有利である。例えば、実開平6-18684号(特許文献1)は、アルギン酸塩印象材を連続的かつ安定的に調製することができる練和装置として、トロコイド歯車型ポンプを用いて両ペーストを送給する装置を提案している。
トロコイド歯車型ポンプは、ハウジングと、その中に回転可能に収容され、内歯を有するアウターロータと、アウターロータ内に収容され、アウターロータの内歯と噛合する外歯を有するインナーロータとを回転子として有し、アウターロータ及びインナーロータの歯間に形成される空隙のロータ回転に伴う容積変化によりペーストを吸入及び吐出するので、小型で、かつペーストを連続的に送給できるという利点を有する。ただし、回転ポンプとしては、内接又は外接することにより相互に噛み合う二個の歯車を回転子として有し、二個の歯車の少なくとも一方がハウジングに内接しており、これらが回転することにより、歯溝とハウジングの周壁との間に形成される空隙が移動してペーストを吸引及び吐出する歯車式ポンプも利用可能である。
ところで、上記のような回転子は、汎用的で加工が容易であること等から鉄鋼材料製であるのが一般的であり、これを収容するハウジングも鉄鋼材料製であることが多い。ただしハウジングについては、外面の腐食防止や損傷防止の観点から、耐腐食性に優れ高硬度なステンレス鋼製とする場合もある。しかし練和装置を、アルギン酸塩印象材の練和に用いた後、約2週間程度放置しておくと、トロコイド歯車型ポンプの場合、アウターロータの内歯とインナーロータの外歯とが形成する空隙にゲルが形成され、上記歯車式ポンプの場合、歯溝とハウジングの周壁との間に形成される空間にゲルが形成され、いずれも回転子が回転不能になり、ポンプがロックされた状態になるという問題がある。ただしこのような現象は、基材用回転ポンプの停止期間が2週間より短かければほぼ発生せず、硬化材ペースト用ポンプでも発生しない。しかし、アルギン酸塩以外の多糖類高分子電解質を用いた場合にも発生する可能性が高いと考えられる。
従来、上記のようなポンプのロックを防止するために、比較的長期間練和装置を使用しない場合、ポンプ内の基材ペーストを、流動パラフィンを主成分とする保管材で予め置換している。しかし、このような面倒な作業が不要な練和装置が望まれている。
実開平6-18684号公報
従って、本発明の目的は、多糖類高分子電解質を含む基材ペーストと、ゲル化反応剤を含む硬化材ペーストとを練和する装置において、比較的長期間装置を使用しない場合でも、基材ペーストを送給するポンプ内で多糖類高分子電解質がゲル化しないペースト練和装置を提供することである。
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者らは、多糖類高分子電解質を含むペーストを送給するポンプのハウジングをステンレス鋼で構成し、回転子を非金属化合物、又は表面を非金属化処理した金属で構成すると、ペースト練和装置のポンプ内で多糖類高分子電解質がゲル化しないことを見出し、本発明に想到した。
すなわち、本発明の第1のペースト練和装置は、多糖類高分子電解質及び水を主成分とする基材ペースト、並びにゲル化反応剤を主成分とする硬化材ペーストを練和する手段と、前記基材ペーストを前記練和手段に送給するポンプと、前記硬化材ペーストを前記練和手段に送給するポンプとを有し、少なくとも前記基材ペースト送給用ポンプが、ハウジング及びその中に回転可能に収容された少なくとも一つの回転子を有するものであって、前記ハウジングがステンレス鋼からなり、前記回転子が、前記ハウジングを構成するステンレス鋼との間に、前記基材ペーストを介した接触電位差を生じる金属の表面非金属化されている金属からなることを特徴とする。
前記ハウジングを構成するステンレス鋼は、オーステナイト系ステンレス鋼、オーステナイト−フェライト系ステンレス鋼、フェライト系ステンレス鋼、マルテンサイト系ステンレス鋼又は析出硬化型ステンレス鋼から選択されるのが好ましい。前記接触電位差を生じる金属は、ステンレス鋼、鉄鋼、アルミニウム合金、銅合金、チタン合金又はジルコニウム合金から選択されるのが好ましい。前記表面非金属化されている金属は、(1)前記接触電位差を生じる金属の表面に、変性層が形成されている金属、具体的には窒化処理、浸硫処理、浸ホウ処理又は水蒸気処理により変性層が形成されている金属、(2)前記接触電位差を生じる金属の表面非金属化合物で被覆されている金属、あるいは(3)前記接触電位差を生じる金属の表面に前記変性層が形成されているとともに、非金属化合物で被覆がされている金属から選択されるのが好ましい。
前記ハウジングを構成するステンレス鋼は、オーステナイト系溶製鋼、フェライト系溶製鋼、マルテンサイト系溶製鋼、析出硬化系溶製溶製鋼、オーステナイト−フェライト系溶製鋼、オーステナイト系粉末焼結鋼又はマルテンサイト系粉末焼結鋼から選択されるのがより好ましい。前記接触電位差を生じる金属は、鉄鋼、オーステナイト系粉末焼結鋼又はマルテンサイト系粉末焼結鋼から選択されるのがより好ましい。前記表面非金属化されている金属は、(1)前記接触電位差を生じる金属の表面に、変性層が形成されている金属、具体的には水蒸気処理により変性層が形成されている金属、(2)前記接触電位差を生じる金属の表面を、窒化ケイ素、炭化ケイ素、サイアロン(Si−Al−O−N)、ダイヤモンドライクカーボン、アルミナ、ポリアミド又は加硫した天然ゴムから選択された非金属化合物で被覆されている金属、あるいは(3)前記接触電位差を生じる金属の表面に、前記変性層が形成されているとともに、前記非金属化合物で被覆されている金属から選択されるのがより好ましい。
本発明の第2のペースト練和装置は、多糖類高分子電解質及び水を主成分とする基材ペースト、並びにゲル化反応剤を主成分とする硬化材ペーストを練和する手段と、前記基材ペーストを前記練和手段に送給するポンプと、前記硬化材ペーストを前記練和手段に送給するポンプとを有し、少なくとも前記基材ペースト送給用ポンプが、ハウジング及びその中に回転可能に収容された少なくとも一つの回転子を有するものであって、前記ハウジングがステンレス鋼からなり、前記回転子が非金属化合物からなり、前記ステンレス鋼が、オーステナイト系ステンレス鋼、オーステナイト−フェライト系ステンレス鋼、フェライト系ステンレス鋼、マルテンサイト系ステンレス鋼又は析出硬化型ステンレス鋼から選択されており、前記非金属化合物が、窒化ケイ素、炭化ケイ素、サイアロン(Si−Al−O−N)、アルミナ、ポリアミド又は加硫した天然ゴムから選択されていることを特徴とする。
本発明の好ましい実施例では、上記基材ペースト送給用ポンプは、(a) 上記ハウジング内に回転可能に収容され、内歯を有するアウターロータと、(b) アウターロータ内に収容され、アウターロータの内歯と噛合する外歯を有するインナーロータとを回転子として有し、アウターロータ及びインナーロータの歯間に形成される空隙のロータ回転に伴う容積変化により上記基材ペーストを吸入及び吐出するトロコイド歯車型ポンプである。より好ましくは、トロコイド歯車型ポンプのアウターロータ及びインナーロータは同材料で構成されている。
本発明の別の好ましい実施例では、上記多糖類高分子電解質はアルギン酸又はその塩である。
本発明のペースト練和装置は、歯科用印象材の調製装置として好適である。
本発明のペースト練和装置は、多糖類高分子電解質を含む基材ペーストと、ゲル化反応剤を含む硬化材ペーストとを練和するものであって、基材ペーストを送給するポンプのハウジングがステンレス鋼からなり、回転子が非金属化合物、又は表面を非金属化処理した金属からなるので、比較的長期間練和装置を使用しない場合でも、係るポンプのハウジング及び回転子を構成する材料から、ポンプ内に残留した基材ペースト中に、多糖類高分子電解質をゲル化させる多価金属が溶出せず、ポンプが回転不能にならないという利点を有する。
本発明のペースト練和装置を示すブロック図である。 本発明のペースト練和装置のトロコイド歯車型ポンプを示す斜視図である。 図2のトロコイド歯車型ポンプの蓋部を示す斜視図である。 図2のトロコイド歯車型ポンプ及びその蓋部を示す断面図である。 本発明のペースト練和装置の外接型歯車式ポンプの一例を示す断面図である。 本発明のペースト練和装置の内接型歯車式ポンプの一例を示す断面図である。 トロコイド歯車型ポンプ及びその蓋部において、金属イオン測定のためにゲル又はペーストを採取した部位を示す断面図である。 ゲルが形成したトロコイド歯車型ポンプを示す正面図である。 基材ポンプ内のゲル化機構を確認するための実験装置を示す断面図である。 基材ポンプ材料による接触電池化を確認するためのペースト浸漬実験装置を示す断面図である。
本発明のペースト練和装置は、歯科用印象材の調製装置として好適である。以下図面を参照して、本発明のペースト練和装置について説明する。まずペースト練和装置の構成の概略を説明した後、歯科用印象材を構成する基材ペースト及び硬化材ペースト、並びに基材ペースト送給用ポンプの構成及び材料について説明する。
[1] ペースト練和装置の構成
本発明のペースト練和装置の構成を、図1に概略的に示す。ペースト練和装置は、多糖類高分子電解質及び水を主成分とする基材ペースト用の収容部と、ゲル化反応剤を主成分とする硬化材ペースト用の収容部と、モータにより駆動され基材ペーストを送給するポンプと、モータにより駆動され硬化材ペーストを送給するポンプと、両ポンプから吐出された基材ペースト及び硬化材ペーストをそれぞれ練和手段に移送する管L1及びL2と、合流した基材ペースト及び硬化材ペーストを練和する手段とを有する。練和手段は、モータにより駆動され、基材ペースト及び硬化材ペーストを練和する攪拌部と、得られた混合ペーストを吐出する部位とを有する。
[2] 歯科用印象材
歯科用印象材は、基材ペースト及び硬化材ペーストからなる。基材ペーストは多糖類高分子電解質及び水を主成分とする。多糖類高分子電解質としては、アルギン酸又はその塩、サクラン、ムコ多糖タンパク(ヒアルロン酸等)、スルホン化アルキルセルロース、デキストラン、カラギーナン、ジェランガム等が挙げられるが、アルギン酸塩が好ましい。アルギン酸塩としては、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム等のアルギン酸アルカリ金属塩、アルギン酸アンモニウム、アルギン酸トリエタノールアミン等のアルギン酸アンモニウム塩等が挙げられるが、アルギン酸アルカリ金属塩がより好ましく、アルギン酸カリウムが最も好ましい。水は、硬化材からの多価金属イオンの溶出、及び多糖類高分子電解質との反応を促進する。基材ペーストは、その他に、セライト、殺菌・防腐剤、香料、微量調整材料等を含んでもよい。
基材ペーストをゲル化させるための硬化材ペーストは、ゲル化反応剤を主成分とする。ゲル化反応剤として、二価以上の多価金属化合物が好ましい。多価金属化合物は、解離して二価以上の多価金属イオンを生成することにより、多糖類高分子電解質の分子鎖内又は分子鎖間にイオン結合を有する三次元ネットワーク構造を形成するので、基材ペースト及び硬化材ペーストを混合し、攪拌すると、歯科用印象材として好適な練和物が得られる。ゲル化反応剤としては硫酸カルシウムがより好ましい。印象材の硬化性や、硬化後の弾性等の物性を良好なものとするため、硬化材ペーストとしては、硫酸カルシウムを主体とし、少量の酸化マグネシウム及び/又は酸化亜鉛を配合したものが好適である。硬化材ペーストは、ペースト性状を付与するために、さらに流動パラフィン等の難水溶性有機溶剤及び界面活性剤を含むのが好ましい。硬化材ペーストは、さらにフッ化チタン酸カリウム、セライト、微量調整材料等を含んでもよい。
なお基材ペースト及び硬化材ペーストの詳細は、例えば特開2008-222672号に記載されている。基材ペースト及び硬化材ペーストからなる市販の歯科用印象材として、「トクヤマAP-1」(商品名:株式会社トクヤマデンタル製アルギン酸塩印象材)が挙げられる。
[3] 基材ペースト送給用ポンプの構成
基材ペースト送給用ポンプは、ハウジング及びその中に回転可能に収容された少なくとも一つの回転子を有する。基材ペースト送給用ポンプとして、トロコイド歯車型ポンプが好ましい。
(1) トロコイド歯車型ポンプ
図2〜図4に示すように、トロコイド歯車型ポンプ本体1は、ハウジング11内に回転可能に収容され、内歯12aを有するアウターロータ12と、アウターロータ12内に収容され、アウターロータ12の内歯と噛合する外歯13aを有するインナーロータ13とを回転子として備えている。モータの駆動により回転軸14を介してインナーロータ13が回転すると、アウターロータ12も同方向に回転する。そのとき、アウターロータ12の内歯12aとインナーロータ13の外歯13aと間に形成される空隙15が容積変化することにより、基材ペーストを吸入及び吐出することができる。
トロコイド歯車型ポンプ本体1に設ける蓋部2は、ペーストパックポンプジョイント部21と、注入口22と、排出口23とを有する。排出口23から出たペーストは、移送口24から、移送管L1を介して練和手段の攪拌部(図1)に送給される。
(2) その他のポンプ
基材ペースト送給用ポンプは、トロコイド歯車型ポンプに限定されない。その他のポンプとして、内接又は外接することにより相互に噛み合う二個の歯車を回転子として有し、二個の歯車の少なくとも一方がハウジングに内接しており、これらが回転することにより、歯溝とハウジングの周壁との間に形成される空隙が移動して基材ペーストを吸引及び吐出する歯車式ポンプが挙げられる。
外接型歯車式ポンプの一例を図5に示す。この例では、ハウジング11aに、外接する2個の歯車16a,16bが内接している。歯車16a,16bが、それぞれ逆方向に回転させると、歯溝とハウジング11aの周壁との間にできる空隙160a,160bの移動を利用して基材ペーストを送給することができる。
内接型歯車式ポンプの一例を図6に示す。この例では、ハウジング11bに、環状の内歯歯車18と、その内側に嵌め込まれた外歯歯車17とを備えている。外歯歯車17と内歯歯車18が同方向に回転し、外歯歯車17及び内歯歯車18の各々の歯間の空隙170,180の移動を利用して基材ペーストを送給することができる。
[4] 基材ペースト送給用ポンプの材料
(1) ハウジング用材料
基材ペースト送給用ポンプのハウジングを構成する材料はステンレス鋼である。ステンレス鋼は、オーステナイト系ステンレス鋼、オーステナイト−フェライト系ステンレス鋼、フェライト系ステンレス鋼、マルテンサイト系ステンレス鋼又は析出硬化型ステンレス鋼から選択するのが好ましい。
フェライト系ステンレス鋼及びマルテンサイト系ステンレス鋼は、Fe及びCrを主要化学成分とし、さらにC、Si、Mn、P、S、Mo、Cu、N、Ti、Nb、Si、V及びWからなる群から選ばれた少なくとも一種を微量化学成分としている。その結晶構造は体心立方晶である。オーステナイト系ステンレス鋼、オーステナイト−フェライト系ステンレス鋼、及び析出硬化型ステンレス鋼は、Fe、Cr及びNiを主要化学成分とし、さらにC、Si、Mn、P、S、Mo、Cu、N、Ti、Nb、Si、V及びWからなる群から選ばれた少なくとも一種を微量化学成分としている。オーステナイト系ステンレス鋼の結晶構造は面心立方晶である。これらステンレス鋼のうち、オーステナイト系は、特に耐腐食性に優れている。
ステンレス鋼は、溶製鋼法及び粉末焼結法のいずれの製法によるものであってもよい。一般的には、溶製鋼法によるステンレス鋼の方が切削加工は容易である。ただし、トロコイド歯車型ポンプは、上述のように複雑で精妙な構造である。従って、その製造には,高度の精密加工技術とそれに適した材質が要求されるが、粉末焼結法で製造されたステンレス鋼は、イ:製造工程が簡単で、しかも量産に適する、ロ:寸法精度が±0.1 mm以内に納まる、ハ:歩留まりが高く、工程の簡易化ができる、ニ:機械的強度に相当な幅をもたせることができる、ホ:焼き入れ、焼き戻しの熱処理を行って、その機械的強度を高めることができる等の利点がある。
なお真空粉末焼結法は特段に限定されるものではなく、市販されている真空焼結炉の中から諸条件を勘案して適宜選択されるべきである。但し、その方法を概述すると下記の通りである。真空度は、通常の真空装置、たとえば、真空焼結炉、真空蒸着装置、真空浸炭装置、真空乾燥装置、真空注入装置、真空薄膜装置等で採用している真空度と同等で、2Pa(約1.5×10-2 Torr)〜1×10-4 Pa(約7.5×10-7 Torr)の範囲が好ましい。また、焼結温度は1,300〜2,000 Kの範囲が好ましい。真空粉末焼結法は、必ずしも単一工程で行う必要はなく、幾つかの工程に分割して、各工程で上述した範囲内で徐々に真空度及び焼結温度を上昇させていくこともできる。また、所望により、成形された粉末焼結体に各種の二次加工を施すことができる。二次加工としては、(イ)粉末焼結に使用した金型とは別の金型を使用して、金型内で再圧縮して焼結時のひずみで低下した寸法精度を高めるサイジング、(ロ)焼結体の密度をさらに高めるため各種の特性を改善するコイニング、(ハ)焼結体の機械的性質及び耐摩耗性を改善するための熱処理、(ニ)切削、研削、ドリル、タップ、リーマなどの機械加工等がある。
なお、粉末焼結法で製造したステンレス鋼は、大気中の酸素、窒素、水等の影響により、溶製鋼法で製造したステンレス鋼に比較して、その性質が若干変化することがある。しかし、この現象も、粉末焼結を真空雰囲気で実施することにより抑制できる。
(2) 回転子用材料
基材ペースト送給用ポンプの回転子を構成する材料は、非金属化合物、又は表面を非金属化処理した金属である。好ましくは、トロコイド歯車型ポンプのアウターロータ及びインナーロータを同材料で構成する。
(a) 非金属化合物
非金属化合物としては、セラミック、プラスチック又はゴムが好ましい。
(i) セラミック
セラミックとしてはエンジニアリングセラミックスが好ましい。エンジニアリングセラミックスとしては、窒化ケイ素(Si3N4)、炭化ケイ素(SiC)、窒化チタン、炭化チタン、窒化チタンカーバイド、Si-Al-O-N(サイアロン)、部分安定化ジルコニア(完全立方晶化ZrO2)、アルミナ(Al2O3)、シリカ(SiO2)、ムライト(3Al2O3・2SiO2〜2Al2O3・SiO2)、アルミナ・ジルコニア、ジルコニア・タングステンカーバイド、アルミナ・チタンカーバイド、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)等が例示されるが、これらに限定されない。いずれも、耐摩耗強度、耐摩擦強度、低発熱性、曲げ疲労強度、面圧疲労強度、寸法安定性等歯車に要求される性能を満足させるものである。セラミックを、圧縮成形、機械加工(切削等)等の公知の方法により成形することにより、回転子を製造することができる。
(ii) プラスチック
プラスチックとしてはエンジニアリングプラスチックが好ましい。エンジニアリングプラスチックとしては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体、パーフルオロエチレン・プロペン共重合体等のフッ素樹脂;ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレート等のポリエステル;ポリアミド[ナイロン(登録商標)];ポリフェニレンスルフィド等のポリアリレンスルフィド;ポリイミド;ポリアミドイミド;ポリエーテルイミド;ポリエーテルサルフォン;ポリエーテルエーテルケトン;ポリフェニレンエーテル;ポリカーボネート;ポリスルホン;ポリスチレン;ポリアセタール;ポリベンゾイミダゾール;超高分子量ポリエチレン等の超高分子量ポリオレフィン;及びこれらの変性物等が挙げられるが、これらに限定されない。中でも、高強度、耐摩耗性、高硬度、寸法安定性等力学的性質を要求される用途、たとえば歯車等構造機械部品として使用実績があるポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、及びフッ素樹脂が好ましい。
プラスチックとしては、上記エンジニアリングプラスチックの単独物、上記エンジニアリングプラスチック同士の混合物、及び上記エンジニアリングプラスチックとその他の樹脂との混合物のいずれでもよい。混合物として、ポリブチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレートとのブレンド、ポリカーボネートとポリエステル(ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート等)とのブレンド、ポリスルホンとポリエチレンテレフタレートとのブレンド、ポリアリレートとナイロンとのブレンド、ポリフェニレンエーテルとナイロンとのブレンド、ポリスルホンとアクリルニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂とのブレンド、ポリカーボネートとアクリルニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂とのブレンド、ポリカーボネートとスチレン・無水マレイン酸共重合体とのブレンド、ポリフェニレンエーテルとポリスチレンとのブレンド等が挙げられる。プラスチックを、射出成形、機械加工(切削等)等の公知の方法により成形することにより、回転子を製造することができる。
(iii) ゴム
ゴムとしては、シリコンゴム、フッ素ゴム、天然ゴム、アクリル系ゴム、ウレタン系ゴム、ニトリル系ゴム、クロロプレン系ゴム、ポリブタジエン系ゴム等が挙げられるが、これらに限定されない。ゴムは、必要に応じて加硫したものであってもよい。
(b) 表面を非金属化処理した金属
表面を非金属化処理した金属として、(b-1) 窒化処理、浸硫処理、浸ホウ処理又は水蒸気処理により変性層を形成した金属、(b-2) 上記非金属化合物で被覆処理した金属、及び(b-3) 上記変性層を形成し、かつ上記非金属化合物で被覆処理した金属が挙げられる。
窒化処理、浸硫処理、浸ホウ処理及び水蒸気処理には、公知の方法を用いればよい。窒化処理法としてはガス窒化法等が挙げられ、浸硫処理法及び浸ホウ処理法としては電解法等が挙げられ、水蒸気処理法としては過熱水蒸気法等が挙げられる。上記変性層を形成した金属としては、窒化処理、浸硫処理、浸ホウ処理又は水蒸気処理した鉄鋼が好ましい。鉄鋼を窒化処理した場合、表面に鉄の窒化物(Fe3N-Fe2N,Fe3N等)が形成され、鉄鋼を浸硫処理した場合、表面に鉄硫化物(FeS)が形成され、鉄鋼を浸ホウ処理した場合、表面に鉄ホウ素化物(FeB,Fe2B)が形成され、鉄鋼を水蒸気処理した場合、表面に鉄酸化物(Fe3O4)が形成される。窒化処理により鉄鋼の硬度を高めることもできる。高い窒化硬度を得るに最も有効な合金元素はAlであり、Cr、Moがこれに続く。従って、Al、Cr又はMoを含む鉄鋼に対しては窒化処理が有効である。限定的ではないが、上記変性層の厚さは、通常0.1μm〜1mmであり、好ましくは0.5〜100μmであり、より好ましくは1〜50μmである。
非金属化合物被覆処理金属として、金属の表面に、上記非金属化合物をコーティングしたものが挙げられる。限定的ではないが、被覆層(非金属化合物層)の厚さは、通常0.1μm〜1mmであり、好ましくは0.5〜500μmであり、より好ましくは1〜200μmである。非金属化合物層は通常単層でよいが、必要に応じて多層化(例えば異なる材料の層を組合せる)してもよい。
セラミックのコーティング方法としては、物理蒸着法(真空蒸着法、スパッタリング法、イオンビーム法、イオンプレーティング法等)、化学蒸着法(減圧CVD法、プラズマCVD法、レーザーCVD法等)、ゾルゲル法等の公知の方法が挙げられる。プラスチックのコーティング方法としては、ディップコーティング法、スプレーコーティング法、ディップスピンコーティング法、スピンフローコーティング法、静電粉体コーティング法、静電流動浸漬法、フィルム加熱圧着法等の公知の方法が挙げられる。ゴムのライニング方法としては、フィルム加熱圧着法等の公知の方法が挙げられる。必要に応じて、以上のような被覆処理の前に、金属表面に脱脂、エッチング、ブラスト、化成処理等の前処理を行ってもよく、被覆処理の後に、乾燥、溶融、焼成等の後処理を行ってもよい。
一般的には、金属を、粉末焼結法、機械加工法(切削等)等の公知の方法により、回転子の形状に成形した後、上記変性層形成処理、非金属化合物被覆処理及びこれらの両方を行う。表面を非金属化処理する金属として、上記ステンレス鋼、鉄鋼、非鉄金属等が挙げられる。
(i) ステンレス鋼
ステンレス鋼としては、粉末焼結法で製造したものが好ましい。粉末焼結法によるステンレス鋼としては、SUS303のオーステナイト系が好ましく、SUS304のオーステナイト系がより好ましく、SUS316のオーステナイト系が最も好ましい。これらは、小歯車、ギヤ、オイルポンプロータ等に実用実績がある焼結ステンレス鋼である。
(ii) 鉄鋼
鉄鋼としては炭素鋼及び合金鋼が好ましい。炭素鋼の組成は特に制限されない。ただし、耐摩耗強度、耐摩擦強度、低発熱性、曲げ疲労強度、面圧疲労強度、寸法安定性等回転子に要求される性能を満足させるという点から、C;0.05〜0.60質量%、Si;0.15〜0.40質量%、Mn;0.30〜0.80質量%、P;0.045質量%以下、S;0.045質量%以下、及びFe;残部の化学成分からなる機械構造用炭素鋼が適しており、特にC;0.40〜0.50質量%、Si;0.15〜0.40質量%、Mn;0.30〜0.80質量%、P;0.045質量%以下、S;0.045質量%以下、及びFe;残部の化学成分からなる炭素鋼が好ましい。いずれも、結晶組織を安定にし、硬度を高めるため、或いは結晶粒度を微細にし、粘性と同時に強靭性を高めるために焼きナラシ、焼き鈍し、焼入れ、焼き戻し等の熱処理を行ったものが望ましい。
合金鋼の組成は特に制限されない。ただし、耐摩耗強度、耐摩擦強度、低発熱性、曲げ疲労強度、面圧疲労強度、寸法安定性等歯車に要求される性能を満足させるという点から、C;0.20〜0.50質量%、Si;0.15〜0.50質量%、Mn;0.30〜0.85質量%、P;0.030質量%以下、S;0.030質量%以下、Ni;0.40〜3.50質量%、Cr;0.50〜3.50質量%、Mo;0.15〜0.60質量%、及びFe;残部の化学成分からなる機械構造用合金鋼、並びにC;0.13〜0.18質量%、Si;0.15〜0.35質量%、Mn;0.60〜0.90質量%、P;0.030質量%以下、S;0.030質量%以下、Ni;0.25質量%以下、Cr;0.90〜1.20質量%、Mo;0.15〜0.25質量%、及びFe;残部の化学成分からなる機械構造用合金鋼が、歯車用材料として好ましい。機械構造用合金鋼は、さらにCu;0.6質量%以下、Al;0.6質量%以下、W;0.3質量%以下、V;0.3質量%以下、Co;0.3質量%以下、及びZr;0.3質量%以下を添加したものでもよい。いずれも、結晶組織を安定にし、硬度を高めるため、或いは結晶粒度を微細にし、粘性と同時に強靭性を高めるために焼きナラシ、焼き鈍し、焼入れ、焼き戻し等の熱処理を行ったものが望ましい。
(iii) 非鉄金属材料
(iii-1) アルミニウム合金
アルミニウム合金としては、Al-Cu系合金、Al-Cu-Zn系合金、Al-Cu-Si系合金、Al-Si系合金、Al-Cu-Mg-Ni系合金、Al-Mg系合金、Al-Cu-Mg系合金、Al-Zn-Mg系合金、Al-Cu-Ni系合金、Al-Mn系合金等各種の実用アルミ合金を使用することができる。然しながら、耐摩耗強度、耐摩擦強度、低発熱性、曲げ疲労強度、面圧疲労強度、寸法安定性等歯車に要求される性能を満足させるという点から、Cu;30質量%、Zn;2〜5質量%及びAl;残部から成るAl-Cu-Zn系合金が好ましい。
(iii-2) 銅合金
銅合金としては、Cu-Al系合金、Cu-Sn系合金、Cu-Zn系合金、Cu-Al系合金、Cu-Ni系合金、Cu-Ni-Al系合金、Cu-Ni-Si系合金、Cu-Be系合金、Cu-Ni系合金等の実用銅合金の中から選択されるのが好ましい。特に、耐摩耗強度、耐摩擦強度、低発熱性、曲げ疲労強度、面圧疲労強度、寸法安定性等歯車に要求される性能を満足させるという点から、Cuを主成分とし、Alを5〜10質量%含むCu-Al系合金(アルミニウム青銅)、Cu;80〜70質量%及びSn;20〜30質量%からなるCu-Sn系合金、並びにCu;8質量%,Al;3〜4質量%,Fe;1.5質量%,Ni;1.5質量%,及びMn;残部から成るCu-Al系合金を使用するのが好ましい。アルミ青銅を鋳物として使用する場合は、鋳放し(徐冷)のままでは自己焼き鈍し、いわゆるself-annealingを起こして、非常に粗大な結晶粒となるので、Fe、Mn又はNiを添加して、Al;7.0〜12.0質量%、Fe;2.0〜5.0質量%、Ni;0.5〜2.0質量%、Mn;0.5〜2.0質量%、並びにCu及びその他の原子からなる残部(その他の原子の合計:1質量%以下)の化学成分を有するアルミニウム青銅が好ましく、特に、Al;8.0〜11.0質量%、Fe;3.0〜5.0質量%、Ni;0.5〜2.0質量%、Mn;0.5〜2.0質量%、及びCu;残部からなる化学成分を有するアルミニウム青銅が歯車用実用Cu-Al系合金として望ましい。
(iii-3) その他の合金
上述した合金の外に、Al-Cu合金(AC1A)、Al-Cu-Mg合金(AC1B)、Al-Cu-Mg-Ni合金(AC5A)、Al-Si合金(AC3A,ADC1)、Al-Cu-Si合金(AC2A,2B)、Al-Si-Cu合金(AC4B,ADC10,12)、Al-Si-Mg合金(AC4C,4CH,ADC3)、Al-Si-Cu-Ni合金(AC8A,8B,8C,9A,9B,ADC14)及びAl-Mg合金(AC7A,ADC5,6)から成る群から選択された鋳造用アルミニウム合金、チタン合金、ジルコニウム合金等を使用することができる。
以上基材ペースト送給用ポンプについて説明したが、硬化材ペースト送給用ポンプについても、材料が制限されない以外、基材ペースト送給用ポンプと同じでよい。
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
参考例1
I:[基材ペースト送給用ポンプの内部ゲル化の原因及びメカニズム解明のための実験]
I-1:[基材ペースト送給用ポンプの稼働時間とゲル発生の関係の確認]
基材ペースト送給用ポンプにおけるゲル発生の要因を調べるために、トロコイド歯車型ポンプを有するペースト練和装置(図1参照)において、株式会社トクヤマデンタル製アルギン酸塩印象材「トクヤマAP-1」の基材ペーストを用いて以下の実験を行った。ただしトロコイド歯車型ポンプの材料については、それぞれ図7に示すポンプハウジング本体1、ポンプハウジング蓋部2、ペーストパックポンプジョイント部21及びインナーロータ軸部14がいずれもSUS303製であり、アウターロータ12及びインナーロータ13がいずれも鉄−炭素−銅−ニッケル系合金[炭素(C);0.8質量%、銅(Cu);2質量%、ニッケル(Ni);5質量%、モリブデン(Mo);1質量%以下、及び鉄(Fe);残部を化学成分として粉末焼結法で製造した後、焼き入れ−焼き戻したもの]製であるものを用いた。
10日間連続稼働させ、2日間休止後、再稼働させたが、何らトラブルは発生しなかった。さらに10日間連続稼働させ、10日間休止後、再稼働させたが、何らトラブルは発生しなかった。さらに10日間連続稼働させ、2週間休止後、再稼働させようとしたところ、基材ペースト送給用ポンプが回転不能(ロック状態)になり、稼働不可能となった。そこで、ポンプ内の状態を調べたところ、ゲルが発生していたので、基材ペースト送給用ポンプ内で、アルギン酸塩をゲル化させる多価金属イオンが発生しているものと推断し、ポンプ内部のゲル化物中に存在する金属イオンの成分及び含有量を測定した。
I-2:[基材ペースト送給用ポンプ内部のペーストの状態と金属イオンの成分及び含有量の確認実験]
1. 金属イオン測定部位の設定
金属イオンを測定するためにゲル又はペーストを採取した部位を図7に示す。Aは基材ペーストの導入口内、Bは基材ペーストの貯留部内、Cはアウターロータとインナーロータとが形成する空隙15内、Dは基材ペースト排出口23内、及びEは基材ペースト排出流路配管24内をそれぞれ示す。
2. 基材ペースト送給用ポンプ内部のペーストの状態と金属イオンの成分及び含有量の測定
図7に示した部位A〜Eのゲル又はペーストをサンプリングし、それぞれ密封容器内で硫酸を使用して高周波加熱により加熱溶解し、原子吸光分析装置を用いてフレームレス法で定性及び定量した。測定波長:248 nmでFeの吸収ピークが明瞭に表れていた。Fe2+イオン以外の金属イオンは非検出であった。結果を表1に示す。
Figure 0005889614
ロックしたトロコイド歯車型ポンプ1のアウターロータ12及びインナーロータ13をポンプハウジング11から取り外したところ、ゲルが形成されているのが目視されたが、空気と接触した後、茶褐色に変色した。この変色は金属成分の酸化によるものと推断して、写真撮影した。図8は、その写真に基づいた模式図である。アウターロータ12の内歯12aとインナーロータ13の外歯13aが形成する空隙15に、点で示すようにゲルが隙間なく形成されていた。さらに図示していないが、アウターロータ12とインナーロータ13を分離して、アウターロータ12の内壁面を目視したところ、軸方向の全幅にわたって、ゲルが隙間なくこびりついているのが視認された。
II:考察
上記実験の結果、下記のこと起こっていると言える。
1. 基材ペースト送給用ポンプのポンプ内の各ロータ及び基材ペースト排出口付近でFe2+イオン濃度が高くなっていた。
2. Fe-C-Cu-Ni-Mo合金で製造したアウターロータ12及びインナーロータ13と、SUS303で製造したポンプハウジング本体1との間で、導電性水溶液である基材ペーストを介して、電位差が発生し、アウターロータ12及びインナーロータ13の材料であるFe-C-Cu-Ni-Mo合金の表面からFe2+イオンが溶出し、そのFe2+イオンが、基材ペーストの主要成分であるアルギン酸塩の分子鎖内又は分子鎖間にイオン結合を有する三次元ネットワーク構造を形成し、ゲル化している。
3. アルギン酸塩をゲル化させる2価金属イオンの傾向はBa<Pb<Cu<Sr<Cd<Ca<Zn<Ni<Co<Mn<Fe<Mgの順に増大していくことが検証されている(O. Smidsrod and A. Haug,Acta Chem.,Scand.,19,329,341 (1965))。この事実からも、アルギン酸塩をゲル化させる能力が極めて高い2価金属イオンであるFe2+の存在が、基材ペースト送給用ポンプ内でのゲル化形成の原因である。
4. アウターロータ12及びインナーロータ13の表面から下記の式に示すように、FeがFe2+イオンとなって放出され、同時に価電子を放出している。
Fe→Fe2+ + 2e-
またこの反応式が進行するためには、放出された電子を受け取る反応が同時に進行する必要があるので、基材ペースト溶液中で、下記の反応が進行していることが推断される。
2H + 2e-→H2
参考例2
[基材ペースト送給用ポンプ内部のゲル化発生に関する原因究明のための確認実験]
下記の手順で基材ペースト送給用ポンプ内部のゲル化発生に関する原因究明のための確認実験を行った。
I. 実験手順
図9は確認実験に使用した装置の概念図である。A及びBは、表2に材質を示す金属板である。Cは、前述したアルギン酸塩を主要成分とする基材ペーストである。電解槽の中に基材ペーストCを入れ、その中に、金属板A及びBを浸漬し、金属板AとBから電線を出し、6Vの定電圧装置と接続して、Aを陰極(マイナス)、Bを陽極(プラス)とし電気回路を作り強制的に電位差をつけた加速実験により電気分解をおこさせ、発生する金属イオンによって基材ペースト内でゲル化が発生するか否かの確認実験を行った。偶然性を排除するため、同じ金属、異なる金属の数種類の組み合わせを採用した。
II.結果
結果を表2に示す。
Figure 0005889614
注:*1)C;0.8質量%、Cu;2質量%、Ni;5質量%、Mo;1質量%、及びFe;残部を化学成分として、粉末焼結で製造した後、焼き入れ―焼き戻ししたFe-C-Cu-Ni-Mo粉末焼結合金。
*2)Cu;60質量% 及びZn;40質量%から製造した固溶体。
*3)Ni;65〜75質量%、Cu;26〜30質量%、少量のFe、Mnを含むNi-Cu系固溶体。
*4)C;0.08質量%、Si;1.00質量%、Mn;2.00質量%、P;0.045質量%、S;0.030質量%、Ni;9.00質量%、Cr;18.0質量%、及びFe;残部の組成を有し、溶製鋼法で製造したオーステナイト系ステンレス鋼。
*5)C;0.08質量%、Si;1.00質量%、Mn;1.00質量%、P;0.040質量%、S;0.030質量%、Cr;11.50質量%、Al;0.10質量%、及びFe;残部の組成を有し、溶製鋼法で製造したフェライト系ステンレス鋼。
III.考察
表2に示した結果から、下記のことが言える。
1. 基材ペーストのゲル化は、いずれも陽極側で発生しているので、陽極側で、2価の金属イオンであるCu2+、Zn2+、Ni2+又はFe2+が発生し、それらがアルギン酸塩とイオン結合して、三次元ネットワーク構造を形成し、ゲルを形成する。
2. 陰極側(A)では水素が発生していることを観察した。図9でAにおける小さな円は水素を表している。このことから、陽極(プラス)側で、たとえばFeが下記の式に示すようにFe2+イオンとなって放出され、同時に価電子を放出していて、
Fe→Fe2+ + 2e-
基材ペースト液中で、下記の反応が進行して、陰極(マイナス)側で水素が発生している。
2H + 2e-→H2
3. 上記1及び2の結果から、参考例1で述べた実験結果の原因が実証された。
参考例3
参考例1及び2の結果を踏まえて、基材ペースト送給用ポンプ部品の、基材ペーストを介した接触電池化を確認するための確認ペースト浸漬実験を行った。
I. 実験手順
図10は確認実験に使用した装置の概念図である。透明な実験槽の中に、アルギン酸塩を主要成分とした基材ペーストCを入れ、その中に表3に材質を記載する金属板A及びBを浸漬し、金属板AとBを電線Wで結線し、放置し、金属板A又はBにゲル化が発生しているか否か確認した。
II. 結果
結果を表3に示す。
Figure 0005889614
注:*1)炭素(C);0.8質量%、銅(Cu);2質量%、ニッケル(Ni);5質量%、モリブデン(Mo);1質量%以下、及び鉄(Fe);残部を化学成分として、粉末焼結法で製造した後、焼き入れ−焼き戻しした、いわゆるFe-C-Cu-Ni-Mo粉末焼結合金
*4)C;0.08質量%、Si;1.00質量%、Mn;2.00質量%、P;0.045質量%、S;0.030質量%、Ni;9.00質量%、Cr;18.0質量%、及びFe;残部からなり、溶製鋼法で製造したオーステナイト系ステンレス鋼。
III.考察
表3に示した結果から、下記のことが言える。
1. 基材ペースト送給用ポンプの本体をSUS303で製造し、基材ペースト送給用ポンプの各ロータをFe-C-Cu-Ni-Mo粉末焼結合金で製造すると、ロータ側に錆とゲル化が発生する。このことにより、ロータの材料の方が、ポンプ本体(ハウジング)の材料に比べて、基材ペーストを介した接触電位差が低いので、Fe-C-Cu-Ni-Mo粉末焼結合金からFe2+が溶出し、それがゲル化発生の原因になった。
2. 基材ペースト送給用ポンプの本体をFe-C-Cu-Ni-Mo粉末焼結合金で製造し、基材ペースト送給用ポンプのロータをSUS303で製造すると、ポンプ本体(ハウジング)側に錆とゲル化が発生するといえる。このことにより、ポンプ本体(ハウジング)の材料の方が、ロータの材料に比べて、基材ペーストを介した接触電位差が低いので、ポンプ本体(ハウジング)の材料であるFe-C-Cu-Ni-Mo粉末焼結合金からFe2+が溶出し、それがゲル化発生の原因になった。
3. 上記1及び2の結果から、ポンプ本体(ハウジング)の材料とロータの材料の間に、基材ペーストを介した接触電位差があると、基材ペーストを介して、ポンプ本体(ハウジング)の材料又はロータの材料から金属イオンが溶出し、ゲル化発生の原因となる。
実施例1〜12
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。基材ペースト送給用ポンプのハウジング、アウターロータ及びインナーロータで使用した材料の組成、結晶構造、及びその製造方法を以下に記載する。
I. ハウジング用材料
(溶製鋼ステンレス鋼)
オーステナイト系溶製鋼1:C;0.15質量%、Si;1.00質量%、Mn;2.00質量%、P;0.20質量%、S;0.15質量%、Ni;8.00質量%、Cr;18質量%、及びFe;残部からなり、溶製鋼法で製造したオーステナイト系ステンレス鋼。
オーステナイト系溶製鋼2:C;0.08質量%、Si;1.00質量%、Mn;2.00質量%、P;0.045質量%、S;0.03質量%、Ni;8.00質量%、Cr;18.00質量%、及びFe;残部からなり、溶製鋼法で製造したオーステナイト系ステンレス鋼。
フェライト系溶製鋼1:C;0.08質量%、Si;1.00質量%、Mn;1.00質量%、P;0.040質量%、S;0.030質量%、Cr;11.50質量%、Al;0.10質量%、及びFe;残部からなり、溶製鋼法で製造したフェライト系ステンレス鋼。
フェライト系溶製鋼2:C;0.030質量%、Si;1.00質量%、Mn;1.00質量%、P;0.040質量%、S;0.030質量%、Cr;12.00質量%、及びFe;残部からなり、溶製鋼法で製造したフェライト系ステンレス鋼。
マルテンサイト系溶製鋼1:C;0.15質量%、Si;0.50質量%、Mn;1.00質量%、P;0.040質量%、S;0.030質量%、Cr;12.00質量%、及びFe;残部からなり、溶製鋼法で製造したマルテンサイト系ステンレス鋼。
マルテンサイト系溶製鋼2:C;0.26質量%、Si;1.00質量%、Mn;2.00質量%、P;0.040質量%、S;0.15質量%、Cr;12.00質量%、及びFe;残部からなり、溶製鋼法で製造したマルテンサイト系ステンレス鋼。
析出硬化系溶製溶製鋼1:C;0.08質量%、Si;1.00質量%、Mn;2.00質量%、P;0.045質量%、S;0.03質量%以下、Ni;10.00質量%、Cr;16.00質量%、Mo;2.00質量%、及びFe;残部からなり、溶製鋼法で製造した析出硬化系ステンレス鋼。
オーステナイト−フェライト系溶製鋼1:C;0.02質量%、Si;0.60質量%、Mn;0.80質量%、P;0.04質量%、S;0.03質量%、Ni;5.50質量%、Cr;24.00質量%、Mo;1.50質量%、及びFe;残部からなり、溶製鋼法で製造したオーステナイト・フェライト系ステンレス鋼。
(粉末焼結法ステンレス鋼)
オーステナイト系粉末焼結鋼1:C;0.08質量%、Ni;8質量%、Cr;16.00質量%、Mo;2.00質量%、並びにFe及びその他の原子からなる残部(その他の原子の合計:3質量%以下)からなる原料粉末を所定の金型に充填し、空気雰囲気下1,370〜1,620 Kの温度で、60分間焼結して製造した粉末焼結オーステナイトステンレス鋼。これの引張強さは246 MPa、伸びは1.5%、密度は6.5 Mg・m-3であった。
オーステナイト系粉末焼結鋼2:C;0.08質量%、Ni;14質量%、Cr;20.00質量%、Mo;3.00質量%、並びにFe及びその他の原子からなる残部(その他の原子の合計:3質量%以下)からなる原料粉末を所定の金型に充填し、空気雰囲気下1,370〜1,620 Kの温度で、60分間焼結して製造した粉末焼結オーステナイトステンレス鋼。これの引張強さは345 MPa、伸びは3%、密度は7.2 Mg・m-3であった。
マルテンサイト系粉末焼結鋼1:C;0.2質量%、Cr;12.00質量%、並びにFe及びその他の原子からなる残部(その他の原子の合計:3質量%以下)からなる原料粉末を所定の金型に充填し、空気雰囲気下1,370〜1,620 Kの温度で、60分間焼結して製造した粉末焼結マルテンサイト系ステンレス鋼。これの引張強さは246 MPa、伸びは0.9%、密度は6.9 Mg・m-3であった。
マルテンサイト系粉末焼結鋼(真空)1’:C;0.2質量%、Cr;12.00質量%、並びにFe及びその他の原子からなる残部(その他の原子の合計:3質量%以下)からなる原料粉末を所定の金型に充填し、真空雰囲気で1,370〜1,620 Kで、60分間焼結して製造した粉末焼結マルテンサイト系ステンレス鋼。これの引張強さは247.2 MPa、伸びは6%、シャルピー衝撃値は10.9(104 J・m-2)、密度は7.0 Mg・m-3であった。即ち、真空雰囲気で焼結することにより、大気雰囲気分で焼結したマルテンサイト系粉末焼結鋼1に比べて機械的性質が向上していた。
II. アウターロータ及びインナーロータに用いた材料
(エンジニアリングプラスチック)
プラスチック1:ポリアミド6・6[Du Pont社製、特殊グレード「Zytel-HTN」(登録商標)]
プラスチック2:ポリテトラフルオロエチレン[Du Pont社製、テフロン(登録商標)]
(エンジニアリングセラミックス)
セラミックス1:アルミナ(Al2O3
セラミックス2:サイアロン(Si-Al-O-N)
(表面を非金属化処理した金属)
窒化処理金属1:ガス窒化法で表面を窒化処理した鉄鋼(窒化物層厚さ:40μm)。処理した鉄鋼は、化学成分がC;0.20質量%、Si;0.15質量%、Mn;0.30質量%、P;0.030質量%以下、S;0.030質量%以下、Ni;0.40質量%、Cr;0.50質量%、Mo;0.15質量%、及びFe;残部からなり、溶製鋼法で製造し、十分焼き入れ、焼き戻しした合金鋼である。
水蒸気処理金属1:500℃の過熱水蒸気で表面を水蒸気処理した鉄鋼(酸化物層厚さ:3μm)。処理した鉄鋼は上記合金鋼である。
ゴムライニング金属1:未加硫天然ゴムシートを貼着し、加熱・加硫することにより、表面を天然ゴムで外面ライニング処理した鉄鋼(ゴム層厚さ:100μm)。処理した鉄鋼は、化学成分がC;0.05質量%、Si;0.15質量%、Mn;0.30質量%、P;0.045質量%、S;0.045質量%及びFe;残部からなり、溶製鋼法で製造し、十分焼き入れ、焼き戻しした炭素鋼である。
アルミナコーティング金属1:真空蒸着法により表面をアルミナでコーティングした鉄鋼(アルミナ層厚さ:30μm)。処理した鉄鋼は上記炭素鋼である。
DLCコーティング金属1:アセチレンを原料としたプラズマ化学蒸着法により、表面をダイヤモンドライクカーボンでコーティングした鉄鋼(DLC層厚さ:3μm)。処理した鉄鋼は上記炭素鋼である。
窒化ケイ素コーティング金属1: 真空粉末焼結法で製造したマルテンサイト系粉末焼結鋼[上記マルテンサイト系粉末焼結鋼(真空)1’]の表面を、シラン及びアンモニアを原料とした化学蒸着法により窒化ケイ素でコーティングしたもの(窒化ケイ素層厚さ:30μm)。
炭化ケイ素コーティング金属1: 真空粉末焼結法で製造したマルテンサイト系粉末焼結鋼[上記マルテンサイト系粉末焼結鋼(真空)1’]の表面を、トリクロロメチルシランを原料とし、水素をキャリアガスとした化学蒸着法により炭化ケイ素でコーティングしたもの(炭化ケイ素層厚さ:50μm)。
DLCコーティング金属2: 真空粉末焼結法で製造したオーステナイト系粉末焼結鋼の表面を、アセチレンを原料としたプラズマ化学蒸着法によりダイヤモンドライクカーボンでコーティングしたもの(DLC層厚さ:3μm)。処理したオーステナイト系粉末焼結鋼は、化学成分が、C:0.08質量%、Ni:8質量%、Cr:16.00質量%、Mo:2.00質量%、並びにFe及びその他の原子からなる残部(その他の原子の合計:3質量%以下)からなる原料粉末を所定の金型に充填し、真空雰囲気下1,370〜1,620 Kの温度で、60分間焼結して製造したものである。
実験手順
表4に示す材料の組み合わせで基材ペースト送給用ポンプのハウジング及び両ロータ(アウターロータ及びインナーロータ)を試作した。ポンプ内に基材ペーストを充填し、ポンプ注入口にペーストパックを装着したまま、ポンプペースト吐出口配管を密封状態にして、37℃の恒温室に14日間、及び30日間放置した後、ポンプ起動テストを行って、ゲル発生の有無を判定した。ゲル発生の有無の判定は、アルギン酸塩練和装置(「APミキサーII」、商品名、株式会社トクヤマデンタル製)に、それぞれの基材ペースト送給用ポンプを設置し駆動した際に、ポンプにゲルが発生したことを検知するポンプロック表示ランプが点灯するか否かで確認した。結果を表4に示す。
Figure 0005889614
比較例1〜21
以下、比較例で用いた基材ペースト送給用ポンプのハウジング、アウターロータ及びインナーロータの材料を記載する。
(ステンレス鋼)
オーステナイト系溶製鋼1,オーステナイト−フェライト系溶製鋼1,フェライト系溶製鋼1,フェライト系溶製鋼2,マルテンサイト系溶製鋼1,マルテンサイト系溶製鋼2,析出硬化系溶製溶製鋼1,マルテンサイト系粉末焼結鋼1,マルテンサイト系粉末焼結鋼(真空)1’(いずれも実施例と同じ)。
(ステンレス鋼以外の金属)
鉄鋼1:C;0.8質量%、Cu;2質量%、Ni;5質量%、Mo;1質量%、及びFe;残部を化学成分として、粉末焼結法で製造した後、焼き入れ−焼き戻しした、いわゆるFe-C-Cu-Ni-Mo粉末焼結合金である。
鉄鋼2:化学成分がC;0.05質量%、Si;0.15質量%、Mn;0.30質量%、P;0.045質量%、S;0.045質量%及びFe;残部からなり、溶製鋼法で製造し、十分焼き入れ、焼き戻しした炭素鋼。
鉄鋼3:化学成分がC;0.20質量%、Si;0.15質量%、Mn;0.30質量%、P;0.030質量%以下、S;0.030質量%以下、Ni;0.40質量%、Cr;0.50質量%、Mo;0.15質量%、及びFe;残部からなり、溶製鋼法で製造し、十分焼き入れ、焼き戻しした合金鋼。
鉄鋼4:化学成分がC;0.20質量%、Si;0.15質量%、Mn;0.30質量%、P;0.030質量%以下、S;0.030質量% 以下、Ni;0.40質量%、Cr;0.50質量%、Mo;0.15質量%、Cu;0.6質量%以下、Al;0.6質量%以下、W;0.3質量%以下、V;0.3質量%以下、Co;0.3質量%以下、Zr;0.3、及びFe;残部からなり、溶製鋼法で製造し、十分焼き入れ、焼き戻しした合金鋼。
アルミニウム合金1:Al;7.0質量%、Fe;2.0質量%、Ni;0.5質量%、Mn;0.5質量%、及びCu;残部、及び不純物1質量%以下の化学成分を有するアルミニウム青銅。
アルミニウム合金2:Al;8.0質量%、Fe;3.0質量%、Ni;0.5質量%、Mn;0.5質量%、及びCu;残部の化学成分を有するアルミニウム青銅。
銅合金1:Cu;80質量%及びSn;20質量%のCu-Sn系合金。
実験手順
表5に示す材料の組み合わせで基材ペースト送給用ポンプのハウジング及び両ロータ(アウターロータ及びインナーロータ)を試作した以外実施例1〜12と同様にして、ゲル発生の有無を判定した。結果を表5に示す。
Figure 0005889614
Figure 0005889614
表4から明らかなように、実施例1〜12では、ハウジングをステンレス鋼で構成し、両ロータ(アウターロータ及びインナーロータ)を非金属化合物、又は表面を非金属化処理した金属で構成したので、ゲルが発生せず、ポンプがロックしなかった。これに対して、表5から明らかなように、比較例1〜21では、両ロータ(アウターロータ及びインナーロータ)を非金属化合物、又は表面を非金属化処理した金属で構成しなかったので、ゲルが発生した。
参考例4
ポンプ内に充填する基材ペーストとして、アルギン酸塩印象材の基材ペーストに代えて、シリコーンゴム系印象材[株式会社トクヤマデンタル製「インプリンシス」(登録商標)]の基材ペーストを用いた以外は、実施例と同様に実施した。結果を表6に示す。
Figure 0005889614
表6に示したように、ポンプに充填する基材ペーストがシリコーンゴム印象材の基材ペーストの場合、基材ペースト用ポンプの両ロータ(アウターロータ及びインナーロータ)の材料が、非金属化合物、又は表面を非金属化処理した金属でなくても、ゲル化の問題は何ら生じることはなかった。このことからゲル化の現象は、ポンプに、アルギン酸塩印象材の基材ペーストに代表される、多糖類高分子電解質を主要成分として含む導電性水溶物のペーストを充填した場合に特有に生じる問題であることが確認できた。
1・・・トロコイド歯車型ポンプ
11,11a,11b・・・ハウジング
12・・・アウターロータ
12a・・・内歯
13・・・インナーロータ
13a・・・外歯
14・・・回転軸
15・・・空隙
16a,16b,17,18・・・歯車
160a,160b,170,180・・・空隙
L1,L2・・・ペースト移送管
A,B,C,D,E・・・ゲル又はペーストを採取した部位
W・・・電線

Claims (8)

  1. 多糖類高分子電解質及び水を主成分とする基材ペースト、並びにゲル化反応剤を主成分とする硬化材ペーストを練和する手段と、前記基材ペーストを前記練和手段に送給するポンプと、前記硬化材ペーストを前記練和手段に送給するポンプとを有し、少なくとも前記基材ペースト送給用ポンプが、ハウジング及びその中に回転可能に収容された少なくとも一つの回転子を有するペースト練和装置において、前記ハウジングがステンレス鋼からなり、前記回転子が、前記ハウジングを構成するステンレス鋼との間に、前記基材ペーストを介した接触電位差を生じる金属の表面非金属化されている金属からなることを特徴とするペースト練和装置。
  2. 前記ハウジングを構成するステンレス鋼が、オーステナイト系ステンレス鋼、オーステナイト−フェライト系ステンレス鋼、フェライト系ステンレス鋼、マルテンサイト系ステンレス鋼又は析出硬化型ステンレス鋼から選択され、前記接触電位差を生じる金属が、ステンレス鋼、鉄鋼、アルミニウム合金、銅合金、チタン合金又はジルコニウム合金から選択され、前記表面非金属化されている金属が、(1)前記接触電位差を生じる金属の表面に、変性層が形成されている金属、(2)前記接触電位差を生じる金属の表面非金属化合物で被覆されている金属、あるいは(3)前記接触電位差を生じる金属の表面に前記変性層が形成されているとともに、非金属化合物で被覆されている金属から選択されていることを特徴とする請求項1に記載のペースト練和装置。
  3. 前記ハウジングを構成するステンレス鋼が、オーステナイト系溶製鋼、フェライト系溶製鋼、マルテンサイト系溶製鋼、析出硬化系溶製溶製鋼、オーステナイト−フェライト系溶製鋼、オーステナイト系粉末焼結鋼又はマルテンサイト系粉末焼結鋼から選択され、前記接触電位差を生じる金属が、鉄鋼、オーステナイト系粉末焼結鋼又はマルテンサイト系粉末焼結鋼から選択され、前記表面非金属化されている金属が、(1)前記接触電位差を生じる金属の表面に、変性層が形成されている金属、(2)前記接触電位差を生じる金属の表面を、窒化ケイ素、炭化ケイ素、サイアロン(Si−Al−O−N)、ダイヤモンドライクカーボン、アルミナ、ポリアミド又は加硫した天然ゴムから選択された非金属化合物で被覆されている金属、あるいは(3)前記接触電位差を生じる金属の表面に、前記変性層が形成されているとともに、前記非金属化合物で被覆されている金属から選択されていることを特徴とする請求項2に記載のペースト練和装置。
  4. 多糖類高分子電解質及び水を主成分とする基材ペースト、並びにゲル化反応剤を主成分とする硬化材ペーストを練和する手段と、前記基材ペーストを前記練和手段に送給するポンプと、前記硬化材ペーストを前記練和手段に送給するポンプとを有し、少なくとも前記基材ペースト送給用ポンプが、ハウジング及びその中に回転可能に収容された少なくとも一つの回転子を有するペースト練和装置において、前記ハウジングがステンレス鋼からなり、前記回転子が非金属化合物からなり、前記ステンレス鋼が、オーステナイト系ステンレス鋼、オーステナイト−フェライト系ステンレス鋼、フェライト系ステンレス鋼、マルテンサイト系ステンレス鋼又は析出硬化型ステンレス鋼から選択されており、前記非金属化合物が、窒化ケイ素、炭化ケイ素、サイアロン(Si−Al−O−N)、アルミナ、ポリアミド又は加硫した天然ゴムから選択されていることを特徴とするペースト練和装置。
  5. 前記基材ペースト送給用ポンプは、(a)前記ハウジング内に回転可能に収容され、内歯を有するアウターロータと、(b)前記アウターロータ内に収容され、前記アウターロータの内歯と噛合する外歯を有するインナーロータとを回転子として有し、前記アウターロータ及びインナーロータの歯間に形成される空隙のロータ回転に伴う容積変化により前記基材ペーストを吸入及び吐出するトロコイド歯車型ポンプであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のペースト練和装置。
  6. 前記アウターロータ及びインナーロータが同材料で構成されていることを特徴とする請求項5に記載のペースト練和装置。
  7. 前記多糖類高分子電解質がアルギン酸又はその塩であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のペースト練和装置。
  8. 請求項1〜7のいずれか一項に記載のペースト練和装置からなる歯科用印象材の調製装置。
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