以下、本発明についてさらに詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の説明により限定されない。
本発明の靱帯再建術用具において、前記リーマー装着部が、前記錐のほぼ中央に位置することが好ましい。
本発明の靱帯再建術用具において、前記錐先端部に目盛が付され、前記目盛により、前記錐先端部の、前記骨からの突出長さを測定可能であることが好ましい。
本発明の靱帯再建術用具は、前記錐先端部及び後端部の少なくとも一方において、前記リーマー装着部に近接する位置に、リーマー先端又は後端からの距離を示すマーカーが設けられていることが好ましい。
本発明の靱帯再建術用具において、前記リーマーが、糸を通すための孔を有することが好ましい。
本発明の靱帯再建術用具は、膝関節の靱帯再建術に用いることが好ましく、前記靱帯が、前十字靱帯であることがより好ましい。
本発明の靱帯再建術用具は、前記リーマーを前記関節内部で把持する把持鉗子をさらに含み、前記把持鉗子の把持部は、前記リーマーの形状に合わせて前記リーマーを把持可能に形成されていることが好ましい。また、本発明の把持鉗子は、そのような本発明の靱帯再建術用具に用いる把持鉗子である。
前記本発明の把持鉗子は、前記リーマーを装着した前記錐が前記複数の骨及び前記関節を貫通し、前記リーマーが前記関節内部に位置する状態で、前記リーマーを把持可能であることが好ましい。
本発明の靱帯再建術用具は、デプスゲージをさらに含み、前記デプスゲージは、前記錐先端部が貫通可能な筒と、前記筒の先端に接続され、前記錐先端部を挿入可能な目盛部とを含み、前記目盛部に設けられた目盛により、前記錐先端部における前記デプスゲージに挿入された部分の長さを測定可能であることが好ましい。また、本発明のデプスゲージは、そのような本発明の靱帯再建術用具に用いるデプスゲージである。
[錐]
つぎに、本発明の靱帯再建術用具に用いる錐について説明する。なお、本発明において、前記本発明の靱帯再建術用具に用いる錐を、「ドリル」「ドリルピン」又は「ドリルガイドピン」などということがある。「ドリル」は、錐の一種(例えば、鋼の丸棒にねじれ溝を彫り、先端に刃をつけ、これを回転させて孔をあける)をいう場合があるが、本発明において、「ドリル」は、特に限定されず、「錐」と同義である。「ドリルピン」及び「ドリルガイドピン」も、「ドリル」又は「錐」と同義である。
図1に、本発明の靱帯再建術用具に用いる錐(又はドリル、ドリルピン若しくはドリルガイドピン)の一例を示す。図1(a)は、左側面図であり、(b)は、正面図であり、(c)は、右側面図であり、(d)は、平面図である。なお、図示の明瞭化のために、図1(a)及び(c)の縮尺は、図1(b)及び(d)よりも大きく表している。また、図1(a)において、先端部11の先端11a以外は図示を省略し、図1(c)において、後端部13の接続部13a以外は図示を省略している。後述する図6(a)及び(c)、図7(a)及び(c)、図8(a)及び(c)においても、図1(a)及び(c)と同様である。
図1に示すとおり、この錐10は、先端部11と、後端部13と、先端部11及び後端部13の間に設けられリーマーを装着可能なリーマー装着部12とを含む。また、図示のとおり、この錐10は、その後端から先端に至るまで真っ直ぐな、棒状の形状をしている。その横断面形状は、先端部11の先端11a及び後端部13の接続部13a以外の部分では、ほぼ円形である。先端部11の先端11aは、図1(b)〜(d)に示すとおり、尖った三つ目錐状であり、これにより、骨に孔を穿つことができる。また、先端部11には、目盛14が付され、目盛14により、錐先端部11の、前記骨からの突出長さを測定可能である。後端部13の後端には、接続部13aが設けられている。接続部13aは、図1(a)に示すように、長い辺と短い辺とが交互に配置された六角柱の形状である。接続部13aの最後端は、扁平であり、ピン又はネジ等を通すことが可能な微小な孔が設けられている。このような接続部13aにより、錐10を、柄(図示せず)に接続することができる。前記柄は、特に限定されない。例えば、前記柄が、さらに、前記柄を錐10ごと回転させるためのモーターに接続されていても良い。リーマー装着部12には、ネジ溝が切られており、これにより、後述するリーマーを装着して固定することができる。
また、リーマー装着部12及び後端部13は、内部が中空で、その内径が、先端部11の外径と同じか、又は若干大きく、後端部13の中に、先端部11の一部又は全部を格納することができる。図1は、先端部11の一部を、リーマー装着部12及び後端部13の中に格納した状態を表す。リーマー装着部12又は後端部13におけるその近傍には、その内壁に凹凸が設けられている。一方、先端部11の後端には、その外壁に凹凸が設けられている。前記内壁の凹凸と前記外壁の凹凸とを嵌合させることにより、先端部11の大部分をリーマー装着部12及び後端部13から引き出した状態で固定することができる。その状態では、例えば、図7(b)又は図8(b)に示すように、先端部11と後端部13との長さが、ほぼ等しい。すなわち、リーマー装着部12は、錐10のほぼ中央に位置する。この状態で、錐10は、複数の骨が靱帯により互いに結合された関節において、前記複数の骨及び前記関節を貫通する孔を穿つことが可能である。
また、図6〜8に、本発明の靱帯再建術用具に用いる錐の別の例を示す。図6(a)は、前記錐の一例の左側面図であり、(b)は、その正面図であり、(c)は、その右側面図である。図7(a)は、前記錐のさらに別の一例の左側面図であり、(b)は、その正面図であり、(c)は、その右側面図である。図8(a)は、前記錐のさらに別の一例の左側面図であり、(b)は、その正面図であり、(c)は、その右側面図である。
図6の錐10は、図示のとおり、目盛14の位置がさらに先端寄りであることと、各部の寸法等が若干異なること以外は、図1の錐と同様である。また、図6は、図1と同様、先端部11をリーマー装着部12及び後端部13の内部に格納した状態を表す。
図7の錐10は、図示のとおり、先端部11及び後端部13において、リーマー装着部12に近接する位置に、前記リーマー装着部先端又は後端からの距離を示すマーカー15が設けられている。このことと、各部の寸法が若干異なること以外は、図7の錐10は、図1の錐と同様である。また、図7は、前述のとおり、先端部11の大部分をリーマー装着部12及び後端部13から引き出して固定した状態を表す。なお、図7(d)は、リーマー装着部12にリーマー20を装着した状態を表す。リーマーについては後述する。
図8の錐10は、図7と同様、先端部11及び後端部13において、リーマー装着部12に近接する位置に、前記リーマー装着部先端又は後端からの距離を示すマーカー15が設けられている。図8の錐10は、各部の寸法が若干異なる以外は、図7の錐と同様である。また、図8は、前述のとおり、先端部11の大部分をリーマー装着部12及び後端部13から引き出して固定した状態を表す。
本発明において、錐先端部の目盛14は、なくても良いが、目盛14により、錐先端部11の、骨からの突出長さを測定可能であることが好ましい。また、マーカー15は、なくても良いが、これがあると、例えば、手術中に、内視鏡観察等により、リーマーの位置又は骨孔においてリーマーにより直径を拡大した部分の長さ(深さ)等を確認しやすいため好ましい。マーカー15は、先端部11及び後端部13のいずれか一方のみに設けられていても良いが、図8(b)のように両方に設けられていることが、より好ましい。また、マーカー15は、先端部11又は後端部13において、それぞれ、1つでも複数でも良いが、複数設けられていることがより好ましい。
図1及び6〜8において、各部分の寸法は、特に限定されないが、例えば、以下のとおりである。すなわち、まず、錐10の全長(最後端から最先端までの長さ)は、先端部11をリーマー装着部12及び後端部13内部に格納した状態(図1(b)又は図6(b))では、例えば100〜300mm、好ましくは150〜250mm、より好ましくは160〜180mmであり、具体的には、例えば、図1に示すように173mm、又は図6に示すように165mm等である。錐10の全長は、先端部11をリーマー装着部12及び後端部13から引き出して固定した状態(図7(b)又は図8(b))では、例えば150〜500mm、好ましくは250〜450mm、より好ましくは300〜400mmであり、具体的には、例えば、300mm、350mm、400mm等である。先端部11の直径(外径)は、例えば1.0〜3.0mm、好ましくは1.5〜2.7mm、より好ましくは2.0〜2.7mmであり、具体的には、例えば、図1、6若しくは7に示すように2.0mm、図8に示すように2.4mm、又は2.7mm等である。リーマー装着部12及び後端部13の外径は、例えば2.0〜5.0mm、好ましくは2.5〜4.5mm、より好ましくは3.0〜4.0mmであり、具体的には、例えば、図1、6若しくは7に示すように3.0mm、図8に示すように3.5mm、又は4.0mm等である。リーマー装着部12及び後端部13の内径は、前述のとおり、先端部11の直径(外径)と等しいか、又は若干大きい。なお、リーマー装着部12及び後端部13の外径は、同じでも良いし異なっていても良いが、骨への穿孔の容易性の観点から、あまり大きく異ならないことが好ましい。リーマー装着部12の長さは、例えば2.0〜10.0mm、好ましくは2.0〜5.0mm、より好ましくは2.5〜3.5mmであり、具体的には、例えば、図7に示すように2.5mm、又は3.0mm等である。また、リーマー装着部12に設けられたネジ溝は、例えば、JIS規格でM1.5〜5.0、好ましくはM2.0〜4.0、より好ましくはM2.5〜3.5であり、具体的には、例えば、図7に示すようにM2.5、又はM3.0、M3.5等である。目盛14から錐10の最先端(すなわち11aの最先端)までの距離は、例えば1〜70mm、好ましくは5〜50mm、より好ましくは10〜50mmである。先端部11に設けられたマーカー15からリーマー後端までの距離は、例えば5〜50mm、好ましくは10〜40mm、より好ましくは20〜30mmであり、具体的には、例えば、図7及び8に示すように、20mm、25mm、30mm等である。後端部13に設けられたマーカー15からリーマー先端までの距離は、例えば5〜50mm、好ましくは10〜40mm、より好ましくは20〜30mmであり、具体的には、例えば、図7及び8に示すように、20mm、25mm、30mm等である。接続部13aに設けられた、ピン又はネジ等を通すことが可能な微小な孔の直径は、例えば0.5〜4.0mm、好ましくは1.0〜3.0mm、より好ましくは1.0〜2.0mmであり、具体的には、例えば、図1及び7に示すように1.2mm、図6及び8に示すように1.5mm、又は、2.0mm等である。
なお、本発明の靱帯再建術用具に用いる錐の構造は、図1及び6〜8に限定されない。例えば、錐の先端は、三つ目錐に限定されず、四つ目錐等でも良いし、ねじれ溝が形成された形状等でも良い。また、先端部は、リーマー装着部及び後端部の中に格納可能でなくても良い。
[リーマー]
つぎに、本発明の靱帯再建術用具に用いるリーマーについて説明する。
図2に、本発明の靱帯再建術用具に用いるリーマーの一例を示す。図2(a)は、左側面図であり、(b)は、正面図であり、(c)は、右側面図である。なお、図2(a)及び(c)において、見易くするために、一部の図示を省略している。後述の図3(a)及び(c)、図4(a)及び(c)、図5(a)及び(c)においても同様である。
図示のとおり、このリーマー20は、短い円筒状である。円筒の中心には、孔21が設けられている。孔21の内壁には、ネジ溝が設けられ、これを、錐10におけるリーマー装着部12のネジ溝と嵌合させることで、リーマー20をリーマー装着部12に固定することができる。円筒の外周には、刃22が三枚設けられ、それぞれの刃22の間には、ねじれ溝状の隙間が形成されている。刃22の前端及び後端(円筒の両端)には、斜面23が設けられている。斜面23は、円筒の端に向かって先細りになる半円錐の側面の一部を形成する。リーマー20を、錐10のリーマー装着部12に装着した状態を、図7(d)に示す。図示のとおり、リーマーの外径が錐の外径よりも大きく、リーマー先端及び後端から、リーマー中心部に向かって、前記斜面により、外径が拡大している。この構造により、リーマー20は、リーマー装着部12に装着された状態で、関節内部から、錐10により骨に穿たれた孔の直径を拡大可能である。
また、図3〜5に、本発明の靱帯再建術用具に用いるリーマーの別の例を示す。図3(a)は、図2とは別のリーマー20aの左側面図であり、図3(b)は、その正面図であり、図3(c)は、その右側面図である。図3において、孔21aは、図2の孔21と同様であり、刃22aは、図2の刃22と同様であり、斜面23aは、図2の斜面23と同様である。図4(a)は、さらに別のリーマー20bの左側面図であり、図4(b)は、その正面図であり、図4(c)は、その右側面図である。図4において、孔21bは、図2の孔21と同様であり、刃22bは、図2の刃22と同様であり、斜面23bは、図2の斜面23と同様である。図5(a)は、さらに別のリーマー20cの左側面図であり、図5(b)は、その正面図であり、図5(c)は、その右側面図である。図5において、孔21cは、図2の孔21と同様であり、刃22cは、図2の刃22と同様であり、斜面23cは、図2の斜面23と同様である。図示のとおり、図3〜5のリーマーは、その外径が異なる以外は、図2のリーマーと同様である。
本発明の靱帯再建術用具に用いるリーマーの各部の寸法等は、特に限定されないが、例えば、以下のとおりである。すなわち、まず、リーマーの全長(先端から後端までの長さ)は、例えば3.0〜15mm、好ましくは4.0〜12mm、より好ましくは5.0〜10mmであり、具体的には、例えば、7mm、8mm、9mm、10mm等である。なお、図2〜5及び7は、全て、リーマーの全長が8mmの例を示している。また、図8の錐は、リーマーを装着していない状態を示しているが、全長7mmのリーマーの装着を想定している。リーマーの外径は、例えば3〜15mm、好ましくは4〜12mm、より好ましくは5〜11mmであり、具体的には、例えば、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm等である。なお、図2〜5は、図示のとおり、それぞれ、リーマーの直径が、8mm、9mm、5mm及び7mmの例を示している。リーマーの刃と刃の間隙(溝)の深さ(図2(a)における「A」)は、例えば0.5〜6.0mm、好ましくは1.0〜5.0mm、より好ましくは1.5〜4.0mmであり、具体的には、例えば、2.0mm、2.5mm、3.0mm等である。なお、図2〜5は、全て、前記溝の深さが2mm(2.0mm)の例を示している。前記斜面(図2(b)においては23)の傾斜角度は、リーマーの円筒の軸方向に対し、例えば30〜80°、好ましくは45〜70°、より好ましくは50〜70°であり、具体的には、例えば、50°、60°、70°等である。なお、図2〜5に示すリーマーでは、いずれも、前記斜面の傾斜角度が、リーマーの円筒の軸方向に対し、60°である。リーマー装着部に装着するための孔(図2においては21)の内径は、前記リーマー装着部の外径と同じか、又は若干大きく、例えば、リーマー装着部の外径が2mmの場合は2.1mm等である。
なお、本発明の靱帯再建術用具に用いるリーマーは、前述のように、糸を通すための孔を有することが好ましい。これにより、例えば、前記リーマーの孔に縫合糸を通し、その糸を手術創から外に出しておくことで、前記リーマーが関節内部で脱落することを防止できる。糸を通すための孔は、リーマーの任意の箇所に設けることができるが、例えば、刃の少なくとも一つ等に設けても良い。
[デプスゲージ]
つぎに、本発明の靱帯再建術用具に用いるデプスゲージについて説明する。
図9に、本発明の靱帯再建術用具に用いるデプスゲージの一例を示す。図9(a)は、左側面図であり、(b)は、正面図である。図示のとおり、このデプスゲージ90は、前記錐先端部が貫通可能な筒92と、筒92の先端に接続され、前記錐先端部を挿入可能な目盛部93とを含み、目盛部93に設けられた目盛により、前記錐先端部における、デプスゲージ90に挿入された部分の長さを測定可能である。筒92は、その内部の孔91に、前記錐先端部を貫通させることが可能である。なお、図9(a)において、簡略化のために、筒92以外の部分は図示を省略している。
図10に、図9のデプスゲージに前記錐先端部を挿入した状態を例示する。図示のとおり、錐10の先端部11を、筒92に貫通させ、さらに目盛部93に挿入し、先端部11に設けられた目盛14の位置において、目盛部93に設けられた目盛94を読むことで、錐先端部11における、デプスゲージ90に挿入された部分の長さを測定可能である。錐先端部11に目盛14が設けられていない場合において(又は、目盛14が設けられている場合であっても)、例えば、錐先端部11の最先端において、目盛部93に設けられた目盛94を読むことで、錐先端部11における、デプスゲージ90に挿入された部分の長さを測定しても良い。例えば、後述の靱帯再建術の説明においても述べるが、図13Aの工程(d)に示す通り、リーマー20の後端(最後端)を孔125の最後端(開口部)に合わせた状態で、大腿骨121から突出した錐10の先端部をデプスゲージ90に挿入し、目盛を読むことで、前記突出した部分の長さを測定する。この長さを、リーマー20最後端から錐10先端部の最先端までの長さから差し引くことで、大腿骨に穿った孔の全長(すなわち、孔124及び125の長さの合計)を算出できる。リーマー20の最後端と孔125の最後端(開口部)との位置合わせは、例えば、内視鏡で観察しながら行うことができる。
なお、錐先端部11における、デプスゲージ90に挿入された部分の長さは、その絶対値が測定可能でなくても、相対値が測定可能であればよい。これにより、例えば、前記錐により骨に穿たれた孔における、前記リーマーにより直径が拡大された部分の長さ(深さ)を測定することができる。この測定は、リーマー及び錐を前後に動かして、錐先端部11における、デプスゲージ90に挿入された部分の長さの相対値の差を読み取ることで行うことができる。より詳しくは、後述する。
図9のデプスゲージにおいて、各部の寸法等は、特に限定されないが、例えば、以下のとおりである。筒92の長さは、例えば30〜70mm、好ましくは35〜60mm、より好ましくは40〜60mmであり、具体的には、例えば、40mm、50mm、60mm等である。筒92における孔91の内径は、錐先端部11の外径と同じか、若干大きく、例えば、錐先端部11の外径が2.0mmの場合において、図9(a)に示すように2.3mm等である。筒92の外径も特に限定されないが、例えば、図9(a)に示すように、筒92の内径が2.3mmに対し外径が3.2mm等である。目盛94の長さは、例えば10〜100mm、好ましくは15〜80mm、より好ましくは20〜70mmであり、具体的には、例えば、40mm、60mm、70mm等である。目盛部93の長さは、例えば10〜120mm、好ましくは20〜100mm、より好ましくは30〜90mmであり、具体的には、例えば、70mm、80mm、90mm等である。デプスゲージ90の全長(筒92の先端から目盛部93の後端までの長さ)は、例えば40〜200mm、好ましくは50〜190mm、より好ましくは100〜180mmであり、具体的には、例えば、図9に示すように150mm、又は、160mm、170mm等である。
[把持鉗子]
つぎに、本発明の靱帯再建術用具に用いる把持鉗子について説明する。
図11に、本発明の靱帯再建術用具に用いる把持鉗子の一例を示す。同図(a)は、平面図であり、(b)は、把持部の正面図である。図示のとおり、この把持鉗子110は、柄111と、把持部112とを含む。把持部112の先端113は、リーマーの刃に嵌合する形状であり、これにより、例えば、図12に示すように、リーマーを把持可能である。また、把持部112の先端113は、図示のとおり、角度が形成され、後述する靱帯再建術の際にリーマーを把持しやすくなっている。先端113の形状以外は、例えば、通常の鉗子と同様であっても良い。
なお、本発明の靱帯再建術用具に用いる錐、リーマー、デプスゲージ、把持鉗子等の材質は特に限定されず、強度、人体に対する安全性等を考慮して適宜選択可能である。前記材質は、例えば、一般的な靱帯再建術用具又は他の手術用具と同様でも良い。
[靱帯再建術]
つぎに、本発明の靱帯再建術用具を用いた靱帯再建術の例について説明する。
図13A及び図13Bの工程図に、本発明の靱帯再建術用具を用いた靱帯再建術の一例を、模式的に示す。前記両図は、膝の前十字靱帯の再建術の工程の一部を例示する図である。図13Aに、工程(a)〜(d)を示し、図13Bに、それに続く工程(e)〜(h)を示す。なお、前記両図において、図示の簡略化のために、皮膚、筋肉、軟骨等は図示を省略している。また、本発明の靱帯再建術用具及びその他の手術器具は、大腿骨121及び脛骨122に隠れて見えない場合であっても、図示の明確化のために実線で示している。
まず、工程(a)に示す通り、錐10の回転及び前進により、脛骨122に、関節の外側から内部(大腿骨121と脛骨122のとの間隙)に向かって(順行性に)孔123を穿ち、脛骨122を貫通させる。孔123を穿つ位置決めの方法は、特に限定されないが、例えば、関節内部において、レーザー(図示せず)により、孔123を穿つべき方向にレーザー光線を照射し、そのレーザー光線の方向に沿って孔123を穿っても良い。
また、工程(a)で、錐10の先端が大腿骨121の表面にちょうど到達した状態において、錐10の先端部と脛骨122表面とが交わる部分の目盛を読むことで、錐10先端部の、脛骨122からの突出長さ(すなわち、脛骨122と大腿骨121との距離)を測定可能である。この長さは、再建すべき靱帯の、関節内部(大腿骨と脛骨との間隙)における長さに等しいとみなすことができる。
つぎに、工程(b)に示す通り、把持鉗子110により把持したリーマー20を、皮膚の切開により作製した穴1001から、大腿骨121と脛骨122のとの間隙(関節内部)に入れる。そして、リーマー20の中心の孔(図2においては21)に、錐10の先端部を挿入する。このとき、リーマー20を関節内部に入れるに先立ち、リーマー20に別途設けた、糸を通すための孔に、あらかじめ縫合糸130を通しておく。そして、縫合糸130を関節内部に入れたとき、縫合糸130を、皮膚の穴1001から外に出しておくことで、リーマー20が関節内部で脱落することを防ぐ。これらの操作は、例えば、皮膚に開けた、1001とは別の孔1002から入れた内視鏡(関節鏡)1100により、大腿骨121と脛骨122との間隙(関節内部)を観察しながら行うことができる。なお、工程(b)に限定されず、図13A及び図13Bの全ての工程は、内視鏡1100で観察しながら行うことができるが、図示の簡略化のために、工程(b)以外では、内視鏡1100の図示を省略する。また、内視鏡1100を用いずに図13A及び図13Bの各工程を行うこともできるが、操作の正確及び迅速のために、内視鏡1100を用いることが好ましい。特に、関節内部において、錐10に付された目盛を読む場合等は、通常、内視鏡が必要である。
つぎに、工程(c)に示す通り、錐10をさらに回転させながら前進させ、大腿骨121を貫通する孔124を穿つ。このとき、リーマー20を把持鉗子110で把持していても良い。また、縫合糸130は、リーマー20に通したままにしておくことが好ましい。リーマー装着部(図1及び6〜8では、12)が、大腿骨121と脛骨122のとの間隙まで来たら、リーマー20をリーマー装着部に固定する。把持鉗子110及び縫合糸130は、次の工程に先立ち、リーマー20から外し、皮膚の孔1001から外へ出す。縫合糸130は、他の器具等に絡まらないように、リーマー20のリーマー装着部への固定前にリーマー20から外し、皮膚の孔1001から外へ出すことが好ましい。把持鉗子110をリーマー20から外すのは、リーマー20のリーマー装着部への固定後でも良いが、錐10からのリーマー20の脱落が起こらないのであれば、固定前でも良い。
つぎに、工程(d)に示す通り、錐10を、リーマー20ごと回転させながらさらに前進させ、大腿骨121に穿った孔124において、関節内部側の直径をリーマー20により拡大し、孔125とする。このとき、図示のように、大腿骨121から突出した錐10の先端部をデプスゲージ90に挿入することで、前記突出した部分の長さの絶対値又は相対値を測定できる。例えば、図示の通り、リーマー20の後端(最後端)を孔125の最後端(開口部)に合わせた状態で、大腿骨121から突出した錐10の先端部をデプスゲージ90に挿入し、目盛を読むことで、前記突出した部分の長さを測定する。この長さを、リーマー20最後端から錐10先端部の最先端までの長さから差し引くことで、大腿骨に穿った孔の全長(すなわち、孔124及び125の長さの合計)を算出できる。リーマー20の最後端と孔125の最後端(開口部)との位置合わせは、例えば、内視鏡1100で観察しながら行うことができる。
さらに、工程(e)に示す通り、錐10及びリーマー20を回転させながらさらに前進させ、孔125を適切な深さまで穿つ。なお、孔125の正確な又はおおよその長さ(深さ)の測定は、例えば、錐10後端部においてリーマー20の近傍に付されたマーカーの位置を、内視鏡1100で読み取ることによって可能である。具体的には、例えば、リーマー20最先端と孔125の最先端(最も奥)とを一致させた状態で、前記マーカーの位置と孔125の最後端(開口部)の位置との関係を、内視鏡1100で読み取ることによって、孔125の正確な又はおおよその長さ(深さ)を確認できる。また、孔125の長さ(深さ)については、例えば、前記突出した錐10の先端部の長さにおいて、リーマー20の先端が孔125の最先端(最も奥)に位置するときの長さから最後端(開口部)に位置するときの長さを差し引くことによって算出することもできる。
つぎに、工程(f)に示す通り、錐10を、リーマー20ごと回転させながら後退させ、脛骨122に穿った孔123において、関節内部側の直径をリーマー20により拡大し、孔126とする。このとき、工程(d)と同様に、デプスゲージ90を用いて、又は、錐10先端部においてリーマー20の近傍に付されたマーカーの位置を内視鏡1100で読み取ることにより、孔126の長さ(深さ)を測定できる。具体的には、例えば、錐10先端部においてリーマー20の近傍に付されたマーカーの位置を、内視鏡1100で読み取ることによって、孔126の正確な又はおおよその長さ(深さ)を測定可能である。より具体的には、例えば、リーマー20最後端と孔126の最後端(最も奥)とを一致させた状態で、前記マーカーの位置と孔126の最先端(開口部)の位置との関係を、内視鏡1100で読み取ることによって、孔126の正確な又はおおよその長さ(深さ)を確認できる。また、例えば、前記突出した錐10の先端部の長さにおいて、リーマー20の最後端が孔126の最先端(開口部)に位置するときの長さから最後端(最も奥)に位置するときの長さを差し引くことによっても、孔126の長さ(深さ)を算出することができる。
なお、図13Bでは、工程(e)と(f)とで錐10及びリーマー20の回転方向が同じであるが、これは、そのようにリーマーの刃の形状を設定しているためである。このように、工程(e)と(f)とで回転方向を同じにすることが、錐10のリーマー装着部に固定されたリーマー20の安定の観点から好ましい。また、前記リーマー装着部外壁及びリーマーの孔に切ったネジ溝の方向も、同様の観点から適切に設定することが好ましい。
孔126を適切な長さ(深さ)まで穿ったら、工程(g)に示す通り、皮膚の穴1001から把持鉗子110を挿入し、リーマー20を把持して固定した後に、錐10を、工程(e)及び(f)とは逆方向に回転させ、リーマー20をリーマー装着部から外す。そして、錐10を、大腿骨121、リーマー20及び脛骨122から引き抜いて体外に取り出し、その後、リーマー20を、把持鉗子110ごと体外に取り出す。
このようにして、工程(h)に示す通り、適切な長さ(深さ)及び太さの孔123、124、125及び126を、大腿骨121及び脛骨122に穿つことができる。この後、図14に示すように、孔123、124、125及び126の中に、図16と同様に移植用靱帯を挿入して固定するが、この工程は、例えば、一般的な靱帯再建術と同様に行うことができる。例えば、それぞれの人工靱帯142の端にループ糸を縛り付け、関節内部に移植用靱帯140を挿入した後、人工靱帯142の端を、前記ループ糸ごと、孔123又は124から引き出しても良い。その後、それぞれの人工靱帯142の端に、孔123又は124の直径よりも大きい直径のボタン143を取り付け、移植用靱帯140を孔123、124、125及び126の中に固定することができる。また、移植用靱帯の作製も、一般的な靱帯再建術と同様に行うことができる。
以上のようにして、本発明の靱帯再建術用具を用いた靱帯再建術を行うことができるが、本発明はこれに限定されない。例えば、図13A及び13Bでは、靱帯移植用の孔123、124、125及び126をそれぞれ1本のみ穿ったが、同様の孔をもう1本穿ち、それぞれの孔に1本ずつ(すなわち、合計2本)の移植用靱帯を移植しても良い。大腿骨及び脛骨に穿つ孔の位置は、例えば、一般的な靱帯再建術と同様にして適宜決定することができる。前十字靱帯の再建術の場合、移植用靱帯が1本よりも2本の方が、術後の膝関節の安定性(例えば、回旋安定性)等の観点から、より好ましい。
なお、孔123、124、125及び126の直径及び長さ(深さ)は、特に限定されないが、例えば、以下のとおりである。すなわち、前十字靱帯再建術において、移植用靱帯が1本(すなわち、穿つ孔が1つ)の場合、脛骨外側の孔123の直径は、例えば2.0〜7.0mm、好ましくは2.2〜5.0mm、より好ましくは2.4〜4.5mmであり、具体的には、例えば、2.4mm、3mm、4.5mm等である。大腿骨外側の孔124の直径は、例えば2.0〜7.0mm、好ましくは2.2〜5.0mm、より好ましくは2.4〜4.5mmであり、具体的には、例えば、2.4mm、3mm、4.5mm等である。大腿骨内側の孔125の直径は、例えば4.0〜12.0mm、好ましくは5.0〜10.0mm、より好ましくは6.0〜10.0mmであり、具体的には、例えば、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、10mm等である。脛骨内側の孔126の直径は、例えば4.0〜12.0mm、好ましくは5.0〜10.0mm、より好ましくは6.0〜10.0mmであり、具体的には、例えば、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、10mm等である。大腿骨内側の孔125の長さ(深さ)は、例えば10〜40mm、好ましくは15〜30mm、より好ましくは20〜25mmであり、具体的には、例えば、20mm、25mm等である。また、大腿骨に穿った孔の全長(すなわち、孔124及び125の長さの合計)は、例えば25〜80mm、好ましくは30〜60mm、より好ましくは30〜50mmであり、具体的には、例えば、30mm、40mm等である。脛骨内側の孔126の長さ(深さ)は、例えば10〜40mm、好ましくは15〜30mm、より好ましくは20〜25mmであり、具体的には、例えば、20mm、25mm等である。また、脛骨に穿った孔の全長(すなわち、孔123及び126の長さの合計)は、例えば25〜80mm、好ましくは30〜60mm、より好ましくは30〜50mmであり、具体的には、例えば、30mm、40mm等である。
また、前十字靱帯再建術において、移植用靱帯が2本(すなわち、穿つ孔が2つ)の場合、脛骨外側の孔123の直径は、例えば2.0〜6.0mm、好ましくは2.4〜5.0mm、より好ましくは2.4〜4.5mmであり、具体的には、例えば、2.4mm、3mm、4.5mm等である。大腿骨外側の孔124の直径は、例えば2.0〜6.0mm、好ましくは2.4〜5.0mm、より好ましくは2.4〜4.5mmであり、具体的には、例えば、2.4mm、3mm、4.5mm等である。大腿骨内側の孔125の直径は、例えば3〜8mm、好ましくは4〜7mm、より好ましくは5〜6mmであり、具体的には、例えば、5mm、6mm、7mm、8mm等である。脛骨内側の孔126の直径は、例えば3〜8mm、好ましくは4〜7mm、より好ましくは5〜6mmであり、具体的には、例えば、5mm、6mm、7mm、8mm等である。大腿骨内側の孔125の長さ(深さ)は、例えば10〜40mm、好ましくは15〜30mm、より好ましくは20〜25mmであり、具体的には、例えば、20mm、25mm等である。また、大腿骨に穿った孔の全長(すなわち、孔124及び125の長さの合計)は、例えば25〜80mm、好ましくは30〜60mm、より好ましくは30〜50mmであり、具体的には、例えば、30mm、40mm等である。脛骨内側の孔126の長さ(深さ)は、例えば10〜40mm、好ましくは15〜30mm、より好ましくは20〜25mmであり、具体的には、例えば、20mm、25mm等である。また、脛骨に穿った孔の全長(すなわち、孔123及び126の長さの合計)は、例えば25〜80mm、好ましくは30〜60mm、より好ましくは30〜50mmであり、具体的には、例えば、30mm、40mm等である。移植用靱帯が2本の場合、移植用靱帯が1本の場合と比較して移植腱が若干細くても良いため、それに対応して、孔125及び126の直径が若干小さくても良い。
なお、本発明の靱帯再建術用具、特に、錐及びリーマーは、複数回使いまわすことも可能であるが、衛生面等の観点から、1回の使用のみで使い捨てることが好ましい。
また、本発明の靱帯再建術用具は、前述のとおり、膝の靱帯再建術に用いることが好ましく、前十字靱帯の再建術に用いることが好ましいが、これに限定されず、任意の関節において、任意の靱帯の再建術に用いることができる。
従来法による前十字靱帯再建術では、前述のとおり、骨に穿たれる孔(骨孔)が大きい。このため、運動競技等に復帰するためには、例えば、6カ月から9カ月等の長期のリハビリテーションが必要となる。また、再建靱帯(膝に移植した、移植用靱帯)の縦方向及び横方向の動きにより、骨孔の拡大が生じ、膝関節が不安定となるおそれがある。
これに対し、本発明の靱帯再建術用具によれば、低侵襲な靱帯再建術を行うことが可能であり、これにより、例えば、関節の安定性向上、リハビリテーション期間の短縮等が可能である。
以下、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明は、以下の実施例により何ら限定されない。
13例の症例に対し、本発明の靱帯再建術用具を用いた靱帯再建術を行った。これらのうち11例は、前十字靱帯全体の再建術であり、2重束再建(すなわち、穿つ孔が2つで、移植用靱帯が2本)を行った。前記11例は、16歳〜44歳(平均31歳)で、男性5例、女性6例であった。なお、2重束再建における2本の移植用靱帯を、前内側線維束(AM束)及び後外側線維束(PL束)という。前記11例以外の2例は、19歳男性及び16歳女性であり、AM束の靱帯補強のみを行った。
図17の写真に、本実施例の靱帯再建術に用いた錐(以下、「ドリルピン」又は「ドリルガイドピン」ともいうことがある)を示す。同図(写真)のドリルガイドピン(ドリルピン)は、図7に示す錐(ドリルピン)10に相当する。図7に示したとおり、後端部13の外径は3mmであり、先端部11の外径は2mmである。図17の右側が先端部11であり、左側が後端部13であり、それらの間にはリーマー装着部12が設けられている。また、同図中に矢印で示した拡大写真は、それぞれ、このドリルピンの先端部11、後端部13及びリーマー装着部12の拡大写真である。このドリルピンにより、骨に孔を穿つこと(ドリリング)が可能である。また、リーマー装着部12には、前述のとおり、ネジ溝が切られており、リーマーを装着することで、リーマーによる骨孔の拡大ができる。なお、図13A及び図13Bの工程において、脛骨の孔123又は大腿骨の孔124を穿つことを、「プレドリリング」又は単に「ドリリング」ということがある。また、脛骨の孔123又は大腿骨の孔124の直径を拡大して脛骨の孔126又は大腿骨の孔125を作製することを、「プレドリリング」に対して「ドリリング」ということがある。なお、本実施例において、ドリリング及びプレドリリングは、特に断らない限り、ドリルピンに取り付けたモーターにより、ドリルピンを回転させて行った。
前記リーマーには、関節内部への脱落防止のために、糸を通す孔(ホール)が設けられており、図18の写真に示すように、糸を通し、かつ把持鉗子により把持された状態で、関節内部に挿入することができる。また、図19に、本実施例で用いた把持鉗子の全体の写真を示し、図20に、図19の把持鉗子の先端部(把持部)の写真を示す。
つぎに、本実施例による靱帯再建術の術式について説明する。本実施例では、前内側線維束(AM束)及び後外側線維束(PL束)用の骨孔を、それぞれ、図13A及び図13Bの工程に従って作製した。なお、以下において、図21〜27の写真は、全て、右膝の術式を示す。また、図21〜23及び25〜26は、関節内部(大腿骨と脛骨との間隙)を、内視鏡を用いて撮影した写真である。
すなわち、まず、前内側線維束(AM束)用の骨孔を、図13A及び図13Bの工程に従って作製した。まず、骨孔作製に先立ち、膝関節部の皮膚に開けた穴から、図21の写真に示すように関節内部に蒸散装置を挿入した。そして、再建(移植用)前十字靱帯の付着部を固定するため、残存している前十字靱帯を前記蒸散装置により郭清(除去)した。つぎに、図22の写真に示すように、関節内部にレーザーを挿入し、孔123を穿つべき方向に、ガイド用のレーザー光を照射した。なお、図22において、白抜きの矢印で示した2箇所に見える光が、照射したレーザー光である。つぎに、図13Aの工程(a)に示す通り、脛骨の外側から関節内部まで、ドリルピン10を貫通させて孔123を穿った。このとき、ドリル10の先端部と脛骨122表面とが交わる部分の目盛を読むことで、ドリル10先端部の、脛骨122からの突出長さ(すなわち、脛骨122と大腿骨121との距離)を測定した。この長さを、再建すべき靱帯(再建靱帯、又は移植用靱帯ともいう)の、関節内部(大腿骨と脛骨との間隙)における長さに等しいとみなした。
つぎに、図23の写真に示すように、把持鉗子により把持したリーマーを、皮膚の穴から関節内部に入れ、リーマーの中心の孔に、ドリルピンの先端部を挿入した。この工程は、図13Aの工程(b)に相当する。なお、本実施例では、リーマーの直径は、6mmとした。
さらに、図13Aの工程(c)に示す通り、ドリルピン10をさらに回転(順回転)させながら前進させ、大腿骨121及び大腿の皮膚を貫通する孔124を穿った。このとき、ドリルピン10がリーマー20の中心の孔を貫通し、さらに、ドリルピン10の先端が大腿骨121に挿入されたところで、縫合糸130及び把持鉗子110をリーマー20から外し、皮膚の孔1001から外へ出した。その後、ドリルピン10をさらに回転(順回転)させながら前進させ、リーマー装着部が、大腿骨121と脛骨122のとの間隙まで来たところで、リーマー20をリーマー装着部に固定した。なお、本実施例では、脛骨の孔123の内径は、3mm又は4.5mmとし、大腿骨の孔124の内径も、同様に、3mm又は4.5mmとした。
つぎに、図13Aの工程(d)に示す通り、ドリルピン10を、リーマー20ごと回転させながらさらに前進させ、大腿骨121に穿った孔124において、関節内部側の直径をリーマー20により拡大し、孔125とした。そして、図示のように、リーマー20の後端(最後端)を孔125の最後端(開口部)に合わせた状態で、大腿骨121及び大腿の皮膚から突出したドリルピン10の先端部を(経皮的に)デプスゲージ90に挿入し、目盛を読むことで、前記突出した部分の長さを測定した。この長さを、リーマー20最後端からドリルピン10先端部の最先端までの長さから差し引くことで、大腿骨に穿った孔の全長(すなわち、孔124及び125の長さの合計)を算出した。図24の写真に、大腿骨121及び大腿の皮膚から突出したドリルピン10の先端部を(経皮的に)デプスゲージ90に挿入した状態を示す。なお、同図(写真)には、膝関節部の皮膚から突出した内視鏡も示されている。
さらに、図13Bの工程(e)に示す通り、ドリルピン10及びリーマー20を回転(順回転)させながらさらに前進させ、孔125を長さ(深さ)25mmまで穿った。なお、孔125の長さ(深さ)が25mmであることは、リーマー20最先端と孔125の最先端(最も奥)とを一致させた状態で、ドリルピン10後端部におけるリーマー20の近傍に付された25mmのマーカー(すなわち、リーマー20最先端からの距離が25mmであることを示すマーカー)の位置が孔125の最後端(開口部)と一致することを、内視鏡1100で読み取ることによって確認した。図25の写真に、その状態を示す。なお、図25は、後外側線維束(PL束)用の大腿骨骨孔125の長さ(深さ)を測定中の写真である。
さらに、図13Bの工程(f)に示す通り、ドリルピン10を、リーマー20ごと回転(順回転)させながら後退させ、脛骨122に穿った孔123において、関節内部側の直径をリーマー20により拡大し、孔126とした。このとき、リーマー20最後端と孔126の最後端(最も奥)とを一致させた状態で、ドリルピン10先端部におけるリーマー20の近傍に付された10〜40mmのマーカーのいずれかの位置を内視鏡1100で読み取ることによって、孔126の長さ(深さ)を確認した。なお、再建靱帯(移植用靱帯、図15における140)の一部である移植腱(図14及び15における141)の長さは、移植腱141の、関節内部(大腿骨121と脛骨122との間隙)における長さ(前記図13Aの工程(a)で測定した長さ)と、孔125内における長さと、孔126内における長さとの総和に等しい。本実施例では、孔125の長さ(深さ)は、移植腱141の、孔125内における長さと等しいか、又はそれよりもわずかに大きくなるようにした。同様に、孔126の長さ(深さ)は、移植腱141の、孔126内における長さと等しいか、又はそれよりもわずかに大きくなるようにした。また、本実施例では、孔125及び126の直径は、6mm(リーマーの直径に等しい)とした。
さらに、図13Bの工程(g)に示す通り、皮膚の穴1001から把持鉗子110を挿入し、リーマー20を把持して固定した後に、ドリルピン10を、手動で、工程(e)及び(f)とは逆方向に回転(逆回転)させ、リーマー20をリーマー装着部から外した。そして、ドリルピン10を、大腿骨121、リーマー20及び脛骨122から引き抜いて体外に取り出し、その後、リーマー20を、把持鉗子110ごと体外に取り出した。そして、工程(h)に示す通り、適切な長さ(深さ)及び太さの孔123、124、125及び126を、大腿骨121及び脛骨122に穿った。
以上のようにして、前内側線維束(AM束)用の骨孔を作製した。同様にして、後外側線維束(PL束)用の骨孔も作製した。なお、本実施例では、後外側線維束(PL束)用の孔123、124、125及び126の太さ、並びに、孔125及び126の長さは、前内側線維束(AM束)用の骨孔と同様とするか、又は、移植腱(図14及び15の141)及び人工靱帯(図14及び15の142)の長さ、太さ等に応じて適宜設定した。
このようにして、前内側線維束(AM束)用及び後外側線維束(PL束)用の骨孔を穿った(作製した)後、図14に示すように、孔123、124、125及び126の中に移植用靱帯140を挿入して固定した。すなわち、まず、図15に示す移植用靱帯140において、それぞれの人工靱帯142の端にループ糸を縛り付け、関節内部に移植用靱帯(再建靱帯)140を挿入した後、人工靱帯142の端を、前記ループ糸ごと、孔123又は124から引き出した。その後、それぞれの人工靱帯142の端に、孔123又は124の直径よりも大きい直径のボタン(エンドボタン)143を取り付け、移植用靱帯140を孔123、124、125及び126の中に固定した。なお、大腿骨側の人工靱帯142としては、CL-BTB(bone-tendon-bone)を用い、そのCL-BTBの端を、大腿骨側のボタン(エンドボタン)143に結びつけた。また、脛骨側においては、縫合糸を人工靱帯142として用い、その縫合糸の端を、脛骨側のボタン(エンドボタン)143に結びつけた。
以上のようにして、本実施例の前十字靱帯再建術を行った。図26の写真に、再建した2ルートの前十字靭帯(すなわち、前内側線維束(AM束)及び後外側線維束(PL束)の2本)を示す。また、図27に、この前十字靱帯再建術後の膝のX線写真を示す。図示のとおり、再建した2ルートの前十字靭帯を、それぞれ、エンドボタンにより安定して固定することができた。全症例ともに術後安定性は良好であった。
以上のとおり、本実施例によれば、脛骨及び大腿骨に、正確な長さ(深さ)及び直径の骨孔を簡便に作成することが可能であり、術後安定性も良好であった。このように、本発明によれば、低侵襲な靱帯再建術を簡便に行うことが可能であり、これにより、例えば、関節の安定性向上、リハビリテーション期間の短縮等が可能である。