以下、本発明の好ましい形態を説明する。
<有機光電変換素子>
本発明の一形態は、下記一般式1で表される部分構造を有する共役系高分子化合物を光電変換層に含む有機光電変換素子に関する。すなわち、本形態に係る有機光電変換素子は、第一の電極と、第二の電極と、前記第一の電極および前記第二の電極の間に存在する、n型有機半導体およびp型有機半導体を含む光電変換層とを有し、前記p型有機半導体は、下記一般式1で表される部分構造を有する共役系高分子化合物を含む。
また、本発明の他の一形態によれば、下記一般式1で表される部分構造を有する共役系高分子化合物が提供される。なお、本発明の共役系高分子化合物は一般式1で表される部分構造を1または2以上含むが、当該部分構造が2以上存在する場合には、各部分構造における、X1、X2、R1、R2、およびA1は、互いに同一であってもよいし、異なってもよい。
本発明は、チアゾール基やオキサゾール基のような、塩基性の窒素原子を含む5員の複素芳香族環を含むユニットが、塩基性窒素原子を2つ以上有する含窒素複素芳香族環(A1)を介して結合された構造を有する点を特徴とする。かかる構造を有することで、高い移動度と深いHOMO準位に由来する高い開放電圧を有する共役系高分子化合物を提供することが可能となり、当該共役系高分子化合物を用いた有機光電変換素子は、十分な光電変換効率を発揮できる。ここで、本願発明の共役系高分子化合物および有機光電変換素子が上記効果を奏するメカニズムは明らかではないが、以下のように推測される。ただし、本願発明は下記推測に限定されるものではない。
上記非特許文献4や特許文献2〜4に記載されるような、従来のチアゾールユニットを有する共役系ポリマーは移動度が不十分であり、高い光電変換効率を達成することができなかった。本発明者らはこの理由について検討し、これらの共役ポリマーは多数の芳香族環が連結した構造を有するが、これらの連結部位が常に同じ向きでパッキングするとは限らず、主鎖の一部でも異なる向きとなってねじれた場合には結晶性が低下し、移動度が低下してしまうと推定している。
他方、Hirokazu Tada et al.,Chem.Commun.,2005,p3183には、ベンゾチアジアゾール基とチアゾール基とを連結した低分子蒸着型の有機薄膜トランジスタ材料の例において、チアゾールの硫黄原子がベンゾチアジアゾール基のチアジアゾール側を向いた結晶構造が開示されている。当該文献では、窒素原子とチアゾール基の硫黄原子との間に相互作用があるためにこのような結晶構造となるのではないかという推論がなされている。本発明者らは、検討の結果、窒素原子と硫黄原子との間の相互作用に加えて、不対電子を有する窒素原子同士が反発しあうことにより、窒素原子同士がanti配位の構造を好み、その結果、高分子主鎖のコンフォメーションがそろいやすいと推定している。
このような推定に基づき、本発明者らは、塩基性の窒素原子を含むチアゾール基やオキサゾール基中の塩基性窒素原子がチアゾール基の硫黄原子および不対電子を有する窒素原子と相互作用しうるようにチアゾールの2位で連結されることがp型有機半導体としての共役系高分子化合物の結晶性向上において重要であり、これによりp型有機半導体としての共役系高分子化合物の移動度が向上し、その結果、高い光電変換効率の有機光電変換素子、ひいては有機薄膜太陽電池を得られると推定している。
さらに、チアゾール基やオキサゾール基等はチオフェン基に比して適度に極性が高いため、本発明に係るp型有機半導体としての共役系高分子化合物とn型有機半導体としてのフラーレン類とを混合して得たバルクヘテロジャンクション層が安定化される。したがって、本発明の共役系高分子化合物を用いた有機光電変換素子は、優れた耐久性を達成しうる。
上記一般式1中、R1およびR2は、水素原子(H)、ハロゲン原子(F、Cl、Br、もしくはI)、置換されたもしくは非置換の、炭素原子数1〜24のアルキル基、炭素原子数1〜24のフッ化アルキル基、炭素原子数2〜24のアルケニル基、炭素原子数2〜24のアルキニル基、炭素原子数3〜20のシクロアルキル基、炭素原子数3〜20のフッ化シクロアルキル基、炭素原子数1〜24のアルコキシ基、炭素原子数1〜24のフッ化アルコキシ基、炭素原子数1〜24のアルキルチオ基、炭素原子数1〜24のフッ化アルキルチオ基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数6〜30のフッ化アリール基、炭素原子数1〜20のヘテロアリール基、または炭素原子数1〜20のフッ化ヘテロアリール基を表す。R1およびR2は同一であってもよいし、異なっていてもよいが、結晶性を高め、高い移動度の材料を得やすい点で同一であることが好ましい。
中でも好ましくは、R1およびR2は、溶解性と結晶性を両立しやすい点で、水素原子、炭素原子数1〜24のアルキル基、フッ化アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基である。
上記ハロゲン原子としては、特に制限はなく、フッ素原子(F)、塩素原子(Cl)、臭素原子(Br)、ヨウ素原子(I)のいずれであってもよい。このうち、重合時に副反応を起こしにくい(Br,Iはスズと反応する可能性がある)という観点からフッ素原子(F)または塩素原子であることが好ましく、フッ素原子(F)であることがより好ましい。
上記炭素原子数1〜24のアルキル基としては、特に制限はないが、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、2−テトラオクチル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、2−ヘキシルデシル基、n−ヘプタデシル基、1−オクチルノニル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−イコシル基、2−デシルテトラデシル基などの直鎖または分岐鎖のアルキル基が挙げられる。このうち、溶解性を向上させるという観点から、炭素原子数8〜16のアルキル基であることが好ましい。
上記炭素原子数1〜24のフッ化アルキル基としては、特に制限はないが、例えば、上記で例示したアルキル基に含まれる水素原子の少なくとも1つがフッ素原子で置換された基が挙げられる。このうち、より高いVoc(深いHOMO準位)を達成する観点から、環(X1またはX2を含む環(すなわち、チアゾール環、オキサゾール環、セレナゾール環))との結合部位に最も近い炭素原子(すなわちアルキル基中の1位の炭素原子)のみがフッ素原子で置換された基であることが好ましい。具体的には、フルオロメチル基、1−フルオロエチル基、1−フルオロプロピル基、1−フルオロブチル基、1−フルオロオクチル基、1−フルオロデシル基、1−フルオロヘキサデシル基、1−フルオロ−2−エチルヘキシル基、1−フルオロ−2−ヘキシルデシル基などのモノフルオロアルキル基;ジフルオロメチル基、1,1−ジフルオロエチル基、1,1−ジフルオロプロピル基、1,1−ジフルオロブチル基、1,1−ジフルオロオクチル基、1,1−ジフルオロデシル基、1,1−ジフルオロヘキサデシル基、1,1−ジフルオロ−2−エチルヘキシル基、1,1−ジフルオロ−2−ヘキシルデシル基などのジフルオロアルキル基;トリフルオロメチル基等のトリフルオロアルキル基などが挙げられる。また、上層の塗布性を維持するという観点から、炭素原子数1〜3のフッ化アルキル基であることが好ましい。このような炭素原子数であれば、他の溶解性基に比して十分短く(溶解性を付与するための置換基は、一般にC6以上を用いる)、上層塗布性に対する影響が少ないためである。中でも、炭素原子数が1であるトリフルオロメチル基であることがより好ましい。
上記炭素原子数2〜24のアルケニル基としては、特に制限はないが、例えば、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基(アリル基)、イソプロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、3−ヘキセニル基、1−ヘプテニル基、2−ヘプテニル基、5−ヘプテニル基、1−オクテニル基、3−オクテニル基、5−オクテニル基などが挙げられる。好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、さらに好ましくは炭素数2〜8のアルケニル基であり、特に好ましくは、ビニル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ペンテニル基等が挙げられる。
上記炭素原子数2〜24のアルキニル基としては、特に制限はないが、例えば、アセチレニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基(プロパルギル基)、1−ブチニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、1−ペンチニル基、2−ペンチニル基、3−ペンチニル基、1−ヘキシニル基、2−ヘキシニル基、3−ヘキシニル基、1−ヘプチニル基、2−ヘプチニル基、5−ヘプチニル基、1−オクチニル基、3−オクチニル基、5−オクチニル基などが挙げられる。好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、さらに好ましくは炭素数2〜8のアルキニル基であり、特に好ましくは、プロパルギル、3−ペンチニル等が挙げられる。
上記炭素原子数3〜20のシクロアルキル基としては、特に制限はないが、例えば、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基などが挙げられる。このうち、溶解性を向上させるという観点から、炭素原子数4〜8のシクロアルキル基であることが好ましい。
上記炭素原子数3〜20のフッ化シクロアルキル基としては、特に制限はないが、例えば、上記で例示したシクロアルキル基に含まれる水素原子の少なくとも1つがフッ素原子で置換された基が挙げられる。このうち、より高いVoc(深いHOMO準位)を達成する観点から、上記で例示したシクロアルキル基に含まれる全ての水素原子がフッ素原子で置換された基であることが好ましいが、塗布性との兼ね合いからフッ素原子の個数・位置は適切に調節されることが好ましい。また、溶解性を向上させるという観点から、炭素原子数4〜8のフッ化シクロアルキル基であることが好ましい。
上記炭素原子数1〜24のアルコキシ基としては、特に制限はないが、例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、tert−ブトキシ基、n−オクチルオキシ基、n−デシルオキシ基、n−ドデシルオキシ基、n−ヘキサデシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、2−ヘキシルデシルオキシ基、2−デシルテトラデシルオキシ基などが挙げられる。
上記炭素数1〜24のフッ化アルコキシ基(フッ化アルキルオキシ基)としては、特に制限はないが、例えば、上記で例示したフッ化アルキル基の根元に酸素原子が結合されてなる基が挙げられる。このうち、より高いVoc(深いHOMO準位)達成の観点から、上記で例示したアルキル鎖中に含まれる全ての水素原子がフッ素原子で置換された基であることが好ましいが、塗布性との兼ね合いから適切な個数・位置に調節されることもまた好ましい。溶解性と深いHOMO準位の両立をしやすいのは、置換部位の炭素原子近傍のみがフッ素原子であるフッ化アルキル鎖を有するフッ化アルコキシ基である。また、上層の塗布性を維持するという観点から、炭素原子数1〜3のフッ化アルキル基の根元に酸素原子が結合されてなる基が好ましく、特に好ましくは、炭素原子数が1であるトリフルオロメトキシ基である。
上記炭素原子数1〜24のアルキルチオ基としては、特に制限はないが、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、n−ブチルチオ基、sec−ブチルチオ基、tert−ブチルチオ基及びiso−プロピルチオ基、n−ドデシルチオ基等が挙げられる。このうち、溶解性と結晶性の両立の観点から、炭素原子数1〜16のアルキルチオ基が好ましく、炭素原子数6〜12のアルキルチオ基がより好ましい。
上記炭素原子数1〜24のフッ化アルキルチオ基としては特に制限はないが、例えば、上記で例示したフッ化アルキル基の根元に硫黄原子が結合されてなる基が挙げられる。このうち、より高いVoc(深いHOMO準位)達成の観点の観点から、上記で例示したアルキル鎖中に含まれる全ての水素原子がフッ素原子で置換された基であることが好ましいが、塗布性との兼ね合いから適切な個数・位置に調節されることもまた好ましい。また、上層の塗布性を維持するという観点からは、炭素原子数1〜12のフッ化アルキル基の根元に硫黄原子が結合されてなる基が好ましく、特に好ましくは、炭素原子数が1であるトリフルオロメチルチオ基である。
上記炭素原子数6〜30のアリール基としては、特に制限はないが、例えば、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基などの非縮合炭化水素基;ペンタレニル基、インデニル基、ナフチル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、ビフェニレニル基、フルオレニル基、アセナフチレニル基、プレイアデニル基、アセナフテニル基、フェナレニル基、フェナントリル基、アントリル基、フルオランテニル基、アセフェナントリレニル基、アセアントリレニル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、クリセニル基、ナフタセニル基などの縮合多環炭化水素基が挙げられる。
上記炭素原子数6〜30のフッ化アリール基としては、特に制限はないが、例えば、上記で例示したアリール基に含まれる水素原子の少なくとも1つがフッ素原子で置換された基が挙げられる。このうち、より高いVoc(深いHOMO準位)を達成する観点から、上記で例示したアリール基に含まれる全ての水素原子がフッ素原子で置換された基であることが好ましいが、塗布性との兼ね合いからフッ素原子の個数・位置は適切調節されることが好ましい。
上記炭素原子数1〜20のヘテロアリール基としては、特に制限はないが、例えば、ピリジル基、ピリミジル基、ピラジニル基、トリアジニル基、フラニル基、ピロリル基、チオフェニル基(チエニル基)、キノリル基、フリル基、ピペリジル基、クマリニル基、シラフルオレニル基、ベンゾフラニル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズオキサゾリル基、ベンズチアゾリル基、ジベンゾフラニル基、ベンゾチオフェニル基、ジベンゾチオフェニル基、インドリル基、カルバゾリル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、インダゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ピリダジニル基、シンノリル基、キナゾリル基、キノキサリル基、フタラジニル基、フタラジンジオニル基、フタルアミジル基、クロモニル基、ナフトラクタミル基、キノロニル基、ナフタリジニル基、ベンズイミダゾロニル基、ベンズオキサゾロニル基、ベンゾチアゾロニル基、ベンゾチアゾチオニル基、キナゾロニル基、キノキサロニル基、フタラゾニル基、ジオキソピリミジニル基、ピリドニル基、イソキノロニル基、イソキノリニル基、イソチアゾリル基、ベンズイソキサゾリル基、ベンズイソチアゾリル基、インダジロニル基、アクリジニル基、アクリドニル基、キナゾリンジオニル基、キノキサリンジオニル基、ベンゾオキサジンジオニル基、ベンゾキサジノニル基、ナフタルイミジル基、ジチエノシクロペンタジエニル基、ジチエノシラシクロペンタジエニル基、ジチエノピロリル基、ベンゾジチオフェニル基などが挙げられる。
上記炭素原子数1〜20のフッ化ヘテロアリール基としては、特に制限はないが、例えば、上記で例示したヘテロアリール基に含まれる水素原子の少なくとも1つがフッ素原子で置換された基が挙げられる。このうち、より高いVoc(深いHOMO準位)を達成する観点から、上記で例示したヘテロアリール基に含まれる全ての水素原子がフッ素原子で置換された基であることが好ましいが、塗布性との兼ね合いからフッ素原子の個数・位置は適切に調節されることが好ましい。
上記R1およびR2に場合によって存在する置換基は、特に制限はないが、例えば、置換または非置換の、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、アルコキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、シリル基、スルホニル基、スルフィニル基、ウレイド基、リン酸アミド基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、メルカプト基、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基などを挙げることができる。なお、上記において、同一の置換基で置換されることはない。すなわち、置換のアルキル基は、アルキル基で置換されることはない。
上記一般式1中、X1およびX2は、酸素原子(−O−)、硫黄原子(−S−)、またはセレン原子(−Se−)を表わす。X1およびX2は同一であってもよいし、異なっていてもよいが、結晶性を高め、高い移動度の材料を得やすい点で同一であることが好ましい。
中でも、X1またはX2は、硫黄原子(−S−)である、すなわち、X1またはX2を有する5員の複素芳香族環がチアゾール環であることが好ましい。前記文献(Hirokazu Tada et al.,Chem.Commun.,2005,p3183)に記載されるように、X1およびX2が硫黄原子である場合には、該硫黄原子とA1環に含まれる窒素原子の不対電子との相互作用が期待され、一般式1で表される部分構造を有する高分子主鎖のコンフォメーションを一意的に決定しやすいという効果が期待できる。
上記一般式1中、A1は塩基性窒素原子を2つ以上有する含窒素複素芳香族環由来の2価の基を表わす。ここで、「塩基性窒素原子」とは、非局在化していない不対電子を有する窒素原子を指し、窒素原子を含む複素芳香族環において、窒素原子の不対電子がπ共役系に組み込まれていない窒素原子を有している構造であることを表わす。すなわち、ピロールのような−NR−で表わされる窒素原子ではなく、ピリジンのような−N=で表わされる窒素原子であることを示す。上記一般式1で表される部分構造を有する共役系高分子化合物においては、A1中に含まれる塩基性窒素原子の不対電子が、A1環と結合している左右のチアゾール環、オキサゾール環、セレナゾール環の窒素原子の不対電子と反発することにより、高分子主鎖中のコンフォメーションが揃いやすくなり、その結果、p型有機半導体材料の移動度の向上が期待される。
このような塩基性窒素原子を2つ以上有するA1で表わされるような環としては、以下のような構造を挙げることができる。
上記A−1〜A−41のユニットにおいて、Rは、それぞれ独立して、水素原子(H)、または、置換もしくは非置換の、炭素原子数1〜24のアルキル基、炭素原子数1〜24のフッ化アルキル基、炭素原子数3〜24のシクロアルキル基、炭素原子数3〜20のフッ化シクロアルキル基、炭素原子数1〜24のアルコキシ基、炭素原子数1〜24のフッ化アルコキシ基、炭素原子数1〜24のアルキルチオ基、炭素原子数1〜24のフッ化アルキルチオ基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数6〜30のフッ化アリール基、炭素原子数1〜20のヘテロアリール基、または炭素原子数1〜20のフッ化ヘテロアリール基を表す。ユニット中に複数のRが含まれる場合、複数のRは互いに結合して置換基を有してもよい環を形成してもよく、または、複数のRが縮環していてもよい。
中でも好ましくは、Rは、溶解性と結晶性を両立しやすい点で、水素原子、炭素原子数1〜24のアルキル基、フッ化アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基である。Rの具体的な基、および、Rに場合によって存在する置換基は、上記一般式1におけるR1およびR2で説明したのと同様である。
これらA−1〜A−41のユニットの中でも、A1は2環以上が縮環した複素芳香族縮合多環(複素芳香族縮合多環)由来の2価の基であることが好ましい。すなわち、A−1〜A−25、A−32〜A−40であることが好ましい。このような化合物とすることで、p型有機半導体材料の長波長化による短絡電流の向上、およびπ平面面積の向上による移動度の向上が期待されるためである。さらに好ましくは、A1は前記A−1〜A−24、A−40で表わされるような構造、すなわち下記一般式2〜4のいずれかで表わされる構造であることが好ましい。
上記一般式2〜4中、Y1〜Y3は、それぞれ独立して、−O−、−NR5−、−S−、−C(R6)=C(R7)−、−N=C(R8)−、または−CR9R10−を表す。一般式3または一般式4において、各Y2、各Y3は同一であってもよいし、異なっていてもよいが、結晶性を高め、高い移動度の材料を得やすい点で同一であることが好ましい。
中でも、より好ましくは、Y1〜Y3は、それぞれ独立して、−S−である。これらの化合物では、深いHOMO準位と高い移動度の両立が期待される。
上記式中、R3〜R10は、それぞれ独立して、水素原子(H)、ハロゲン原子(F、Cl、Br、もしくはI)、置換されたもしくは非置換の、炭素原子数1〜24のアルキル基、炭素原子数1〜24のフッ化アルキル基、炭素原子数3〜20のシクロアルキル基、炭素原子数3〜20のフッ化シクロアルキル基、炭素原子数1〜24のアルコキシ基、炭素原子数1〜24のフッ化アルコキシ基、炭素原子数1〜24のアルキルチオ基、炭素原子数1〜24のフッ化アルキルチオ基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数6〜30のフッ化アリール基、炭素原子数1〜20のヘテロアリール基、または炭素原子数1〜20のフッ化ヘテロアリール基を表す。一般式2または一般式3において、各R3、各R4は同一であってもよいし、異なっていてもよいが、結晶性を高め、高い移動度の材料を得やすい点で同一であることが好ましい。一般式2における各R3または一般式2〜4におけるR6およびR7もしくはR9およびR10はそれぞれ、互いに結合して置換基を有してもよい環を形成してもよく、または、縮環していてもよい。
R3またはR4は、好ましくは、共役高分子主鎖の平面性(移動度向上)の点から、水素原子(H)、ハロゲン原子(F、Cl、Br、もしくはI)、炭素原子数1〜24のアルキル基、フッ化アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基であり、より好ましくは、より深いHOMOの共役ポリマーを得る(開放電圧向上)の点から、水素原子(H)、ハロゲン原子(F、Cl、Br、もしくはI)であることが好ましい。
R5〜R10は、好ましくは、共役高分子の溶解性の点から、水素原子(H)、ハロゲン原子(F、Cl、Br、もしくはI)、溶解性と結晶性を両立しやすい点で、水素原子、炭素原子数1〜24のアルキル基、フッ化アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基であり、より好ましくは、合成の容易性の点から、水素原子(H)、炭素原子数1〜24のアルキル基である。
上記R3〜R10の具体的な基、および、R3〜R10に場合によって存在する置換基は、上記一般式1におけるR1およびR2で説明したのと同様である。
本形態の共役系高分子化合物は、上記一般式1で表される部分構造を少なくとも1種有する限りにおいて、(1)上記一般式1で表される部分構造のみからなる共重合体であってもよいし、(2)上記一般式1で表される部分構造と、他の部分構造1つ以上とを含む共重合体であってもよい。
前記一般式1の部分構造は、一般的にアクセプター性ユニットと呼ばれる部分構造であり、ドナーとして機能するユニット(ドナー性ユニット)と結合させることで狭いバンドギャップの材料、すなわち太陽光を長波長まで効率良く吸収できる材料となる。このため、本発明に係る共役系高分子化合物は、上記一般式1で現れる部分構造だけを繰り返し単位として有する共役系高分子化合物であってもよいが、さらなる吸収の長波長化を得るには、いわゆるドナー性ユニットをさらに有することが好ましい。
なお、本明細書において、「ドナー性ユニット」とは、同じπ電子数を有する炭化水素芳香環(ベンゼン、ナフタレン、アントラセンなど)よりもLUMO準位またはHOMO準位が浅くなるような部分構造(ユニット)をいう。一方、本明細書において、「アクセプター性ユニット」とは、一般に、同じπ電子数を有する炭化水素芳香環(ベンゼン、ナフタレン、アントラセンなど)よりもLUMO準位またはHOMO準位が深くなるような部分構造(ユニット)をいう。また、「ユニット群」とは、それぞれ、2以上のユニットが連結されてなる部分構造を意味する。
好ましくは、本形態の共役系高分子化合物は、ドナー性ユニット(群)と、アクセプター性ユニット(群)とが交互に配列した構造を有する共重合体(以下、「D−Aポリマー」とも称する)である。D−Aポリマーとすることにより、吸収域を長波長域に拡大することができる。したがって、このような共役系高分子化合物は、従来のp型有機半導体の吸収域(例えば、400〜700nm)に加え、長波長域(例えば、700〜1000nm)の光も吸収することが可能となる。これにより、光電変換素子として広い範囲のスペクトルを吸収し、一層高い短絡電流密度を得ることが可能となる。
すなわち、好ましくは、本形態の共役系高分子化合物は、下記一般式5で表される部分構造を有する。前記一般式1で表わされる構造が、さらにD1−A2−D2で表わされる構造で連結されたポリマーとすることで、長波長まで太陽光を吸収することが可能となる。本実施形態の共役系高分子化合物には、一般式5で表される部分構造が1または2以上含まれるが、当該部分構造が2以上存在する場合には、各部分構造におけるX1、X2、R1、R2、A1、A2、D1、D2、p、qおよびrは、互いに同一であってもよいし、異なってもよい。
上記一般式5中、A1は塩基性窒素原子を2つ以上有する含窒素複素芳香族環由来の2価の基を表わす。A1の好ましい形態に関しては、上記一般式1で説明したのと同様である。
上記一般式5中、X1およびX2は、それぞれ独立して、−O−、−S−、または−Se−を表わす。X1およびX2の好ましい形態に関しては、上記一般式1で説明したのと同様である。
上記一般式5中、R1およびR2は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換または非置換の、炭素原子数1〜24のアルキル基、炭素原子数1〜24のフッ化アルキル基、炭素原子数3〜20のシクロアルキル基、炭素原子数3〜20のフッ化シクロアルキル基、炭素原子数1〜24のアルコキシ基、炭素原子数1〜24のフッ化アルコキシ基、炭素原子数1〜24のアルキルチオ基、炭素原子数1〜24のフッ化アルキルチオ基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数6〜30のフッ化アリール基、炭素原子数1〜20のヘテロアリール基、または炭素原子数1〜20のフッ化ヘテロアリール基を表す。R1およびR2の好ましい形態に関しては、上記一般式1で説明したのと同様である。
上記一般式5中、p、qおよびrは、それぞれ独立して、0〜4の整数を表し、この際、p、qおよびrのいずれか一つは1〜4の整数を表す。
上記一般式5中、A2は、窒素原子(N)を含む複素芳香族環からなるアクセプター性ユニット(群)(より詳しくは、アクセプター性複素芳香族環基および/またはアクセプター性複素縮合芳香族環基)を表す。なお、アクセプターユニットA2は1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、Aが一つの部分構造中に複数個存在する(q=2〜4)場合には、Aは、同じであってもあるいは異なるものであってもよい。
A2の具体例としては、上記一般式(1)におけるA1として例示した含窒素複素芳香族環由来の2価の基(例えば、A−1〜A−41)に加えて、下記ユニット(A−42〜A−47)が挙げられる。
上記A−42〜A−47のアクセプター性ユニット(群)において、Rは、それぞれ独立して、水素原子(H)、または、置換されたもしくは非置換の、炭素原子数1〜24のアルキル基、炭素原子数1〜24のフッ化アルキル基、炭素原子数3〜24のシクロアルキル基、炭素原子数3〜20のフッ化シクロアルキル基、炭素原子数1〜24のアルコキシ基、炭素原子数1〜24のフッ化アルコキシ基、炭素原子数1〜24のアルキルチオ基、炭素原子数1〜24のフッ化アルキルチオ基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数6〜30のフッ化アリール基、炭素原子数1〜20のヘテロアリール基、または炭素原子数1〜20のフッ化ヘテロアリール基を表す。中でも好ましくは、Rは、溶解性と結晶性を両立しやすい点で、水素原子、炭素原子数1〜24のアルキル基、フッ化アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基である。Rの具体的な基、および、Rに場合によって存在する置換基は、上記一般式1におけるR1およびR2で説明したのと同様である。
中でも、A2は、高い移動度の材料を得る観点から、前記一般式4で表わされることが好ましい。具体的には、A−19〜A−24で表わされるような構造であることが好ましい。さらに好ましくは、移動度を一層向上させる面から、一般式4におけるY3が−S−であるチアゾロチアゾール基(A―19)である。
上記一般式5中、D1およびD2は、それぞれ独立して、複素芳香族環からなるドナー性ユニット(群)(より詳しくは、ドナー性複素芳香族環基および/またはドナー性複素縮合芳香族環基)を表す。ここで、ドナー性ユニットD1およびD2は1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、D1とD2とは同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、D1およびD2が一つの部分構造中に複数個存在する(p=2〜4またはr=2〜4)場合には、D1およびD2は、それぞれ、同じであってもあるいは異なるものであってもよい。
以下に、ドナー性ユニットの好ましい具体例を示す。
上記D1〜20のドナー性ユニット(群)において、Rは、それぞれ独立して、水素原子(H)、または、それぞれ独立して、置換されたもしくは非置換の、炭素原子数1〜24のアルキル基、炭素原子数1〜24のフッ化アルキル基、炭素原子数3〜24のシクロアルキル基、炭素原子数3〜20のフッ化シクロアルキル基、炭素原子数1〜24のアルコキシ基、炭素原子数1〜24のフッ化アルコキシ基、炭素原子数1〜24のアルキルチオ基、炭素原子数1〜24のフッ化アルキルチオ基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数6〜30のフッ化アリール基、炭素原子数1〜20のヘテロアリール基、または炭素原子数1〜20のフッ化ヘテロアリール基を表す。これの基の好ましい形態は、上記一般式1で説明したのと同様である。
これらのドナー性ユニット(D)うち、共役高分子主鎖の平面性の点から、D1、D3、D4、D5、D6、D8、D9、D10、D11、D16、D18、D20で表されるドナー性ユニット、すなわち5員環で隣接基と連結するドナー性ユニットであることが好ましく、D1、D5、D6、D8、D18で表されるドナー性ユニットであることがより好ましい。一般にこれらの共役系高分子材料は、分子量が大きいほど分子間の粒界が少なくなり、ホール移動度が増大する傾向がある(J. Am. Chem. Soc. 2011, 133, p2605 参照)。一方、一般に共役系高分子の溶解性は低いうえ、分子量の増大とともに溶解度がさらに低下する傾向がある。かかる観点から、ホール移動度を向上させつつ十分な溶解性を確保するためには、高い溶解性を有するモノマーを用いて分子量を増大させることが好ましい。このように溶解性の高いモノマーとするには、分岐鎖を有する側鎖を導入することが有効であり、さらには主鎖の共役平面から分岐するような構造が好ましいため、より好ましくはD5、D8、D18で表わされるユニットである。
以下、本形態の共役系高分子化合物の好ましい形態(例示化合物1〜59)を例示するが、本発明が以下の形態のみに限定されるわけではない。
また、本形態の共役系高分子化合物の分子量は特に制限はないが、共役系高分子化合物に良好なモルフォロジーを与えるためには、適度に大きい分子量を有することが好ましい。他方で分子量が高すぎると溶解性が低くなることがある。かような観点から、共役系高分子化合物の数平均分子量(Mn)が10,000〜100,000であることが好ましく、15,000〜70,000であることがより好ましく、20,000〜50,000であることがさらに好ましい。特に、本形態の共役系高分子化合物をp型有機半導体として用いてバルクヘテロジャンクション型の光電変換層を構成する場合、n型有機半導体として低分子化合物(例えば、フラーレン誘導体)が広く用いられているが、p型有機半導体として用いられる共役系高分子化合物の分子量が上記範囲内であると、ミクロ相分離構造が良好に形成されるため、pn接合界面で発生した正孔と電子とを運ぶキャリアパスが形成されやすくなるという利点もある。本明細書における数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC;標準物質ポリスチレン)で測定することができる。
上述の本形態の共役系高分子化合物を光電変換層のp型有機半導体として用いることにより、優れた耐久性を有するとともに、十分な光電変換効率を発揮する素子とすることができる。すなわち、本発明の一形態に係る有機光電変換素子は、第一の電極と、第二の電極と、前記第一の電極および前記第二の電極の間に存在する、n型有機半導体およびp型有機半導体を含む光電変換層とを有し、前記p型有機半導体は、上述の共役系高分子化合物を含む。
以下、添付した図面を参照しながら本形態を説明するが、本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲の記載により定められるべきものであり、以下の形態のみに制限されない。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
図1は、本発明の一実施形態に係る、順層型の有機光電変換素子を模式的に表した断面概略図である。具体的には、図1の有機光電変換素子10は、基板25上に、陽極(透明電極)11、正孔輸送層26、光電変換層14、電子輸送層27、および陰極(対電極)12がこの順に積層されてなる構成を有する。なお、基板25は、主に、その上の陽極(透明電極)11を塗布方式で形成するのを容易にするために任意に設けられる部材である。
図1に示す有機光電変換素子10の作動時において、光は基板25側から照射される。本実施形態において、陽極(透明電極)11は、照射された光が光電変換層14へと届くようにするため、透明な電極材料(例えば、ITO)で構成される。基板25側から照射された光は、透明な陽極(透明電極)11および正孔輸送層26を経て光電変換層14へと届く。
なお、正孔輸送層26は、正孔の移動度が高い材料で形成されており、光電変換層14のpn接合界面で生成した正孔を効率よく陽極(透明電極)11へと輸送する機能を担っている。一方、電子輸送層27は、電子の移動度が高い材料で形成されており、光電変換層14のpn接合界面で生成した電子を効率よく陰極(対電極)12へと輸送する機能を担っている。
図2は、本発明の他の一実施形態に係る、逆層型の有機光電変換素子を模式的に表した断面概略図である。図2の有機光電変換素子20は、図1の有機光電変換素子10と比較して、陽極11と陰極12とが逆の位置に配置され、また、正孔輸送層26と電子輸送層27とが逆の位置に配置されている点が異なる。すなわち、逆層型の有機光電変換素子は、第一の電極が陰極(透明電極)12であり、第二の電極が陽極(対電極)11であり、第二の電極および光電変換層14の間に正孔輸送層26が含まれる点に特徴を有する。図2の有機光電変換素子20は、基板25上に、陰極(透明電極)12、電子輸送層27、光電変換層14、正孔輸送層26、および陽極(対電極)11がこの順に積層されてなる構成を有している。このような構成を有することにより、光電変換層14のpn接合界面で生成される電子は電子輸送層27を経て陰極(透明電極)12へと輸送され、正孔は正孔輸送層26を経て陽極(対電極)11へと輸送される。
図3は、本発明の他の一実施形態に係る、タンデム型(多接合型)の光電変換層を備えた有機光電変換素子を模式的に表した断面概略図である。図3の有機光電変換素子30は、図1の有機光電変換素子10と比較して、光電変換層14に代えて、第1の光電変換層14aと、第2の光電変換層14bと、これら2つの光電変換層の間に介在する電荷再結合層38と、の積層体が配置されている点が異なる。図3に示すタンデム型の有機光電変換素子30では、第1の光電変換層14aおよび第2の光電変換層14bに、それぞれ吸収波長の異なる光電変換材料(p型有機半導体およびn型有機半導体)を用いることにより、より広い波長域の光を効率よく電気に変換することが可能となる。
以下、本発明に係る有機光電変換素子の各構成について詳細に説明する。
[電極]
本形態の有機光電変換素子は、第一の電極および第二の電極を必須に含む。第一の電極および第二の電極は、各々、陽極または陰極として機能する。本明細書において、「第一の」および「第二の」とは、陽極または陰極としての機能を区別するための用語である。したがって、第一の電極が陽極として機能し、第二の電極が陰極として機能する場合もあるし、逆に、第一の電極が陰極として機能し、第二の電極が陽極として機能する場合もある。上述したように、光電変換層14で生成されるキャリア(正孔・電子)は、電極間を移動し、正孔は陽極11へ、電子は陰極12へと到達する。なお、本発明においては主に正孔が流れる電極を陽極と呼び、主に電子が流れる電極を陰極と呼ぶ。また、タンデム構成をとる場合には電荷再結合層(中間電極)を用いることでタンデム構成を達成することができる。さらに、電極が透光性を有するものであるか否かという機能面から、透光性を有する電極を透明電極と呼び、透光性のない電極を対電極と呼び分ける場合もある。順層構成の場合、通常、陽極は透光性のある透明電極であり、陰極は透光性のない対電極である。
本形態の電極に使用される材料は、光電変換素子として駆動する限りにおいては特に制限はなく、本技術分野で使用されうる電極材料を適宜採用することができる。中でも、陽極は陰極と比較して相対的に仕事関数が大きい材料から構成されることが好ましく、逆に陰極は陽極と比較して相対的に仕事関数が小さい材料から構成から構成されることが好ましい。
上述の図1に示す順層型の有機光電変換素子10における陽極11は、相対的に仕事関数が大きく、透明な(380〜800nmの光を透過可能な)電極材料から構成されることが好ましい。一方、陰極12は、相対的に仕事関数が小さく(例えば、4eV以下)、通常、透光性の低い電極材料から構成されうる。
このような、順層型の有機光電変換素子10において、陽極(透明電極)に使用される電極材料としては、例えば、金、銀、白金などの金属;インジウムスズ酸化物(ITO)、SnO2、ZnOなどの透明な導電性金属酸化物;金属ナノワイヤー、カーボンナノチューブなどの炭素材料などが挙げられる。また、陽極の電極材料として導電性高分子を用いることも可能である。陽極に使用されうる導電性高分子としては、例えば、PEDOT:PSS、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリチエニレンビニレン、ポリアズレン、ポリイソチアナフテン、ポリカルバゾール、ポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアセン、ポリフェニルアセチレン、ポリジアセチレン、ポリナフタレンおよびこれらの誘導体などが挙げられる。これらの電極材料は、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上の材料を混合して使用してもよい。また、各材料からなる層を2種以上積層させて電極を構成することも可能である。なお、陽極(透明電極)の厚さは特に制限はないが、通常10nm〜10μm、好ましくは100nm〜1000nmである。
一方、順層型の有機光電変換素子において、陰極(対電極)に使用される電極材料としては、金属、合金、電子電導性化合物、およびこれらの混合物が使用されうる。具体的には、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al2O3)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属、金、銀、白金などの金属などが挙げられる。このうち、電子の取り出し性能や、酸化などに対する耐久性の観点から、仕事関数が低い第一の金属と、第一の金属よりも仕事関数が大きく安定な金属である第二の金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al2O3)混合物、リチウム/アルミニウム混合物や、安定な金属であるアルミニウムなどを用いることが好ましい。また、これらの材料のうち金属を用いることも好ましく、これにより、第一の電極側から入射し光電変換層で吸収されずに透過した光を、第二の電極で反射させて光電変換に再利用することができ、光電変換効率を向上させることが可能である。これらの電極材料は、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上の材料を混合して使用してもよい。また、各材料からなる層を2種以上積層させて電極を構成することも可能である。なお、陰極(対電極)の厚さは特に制限はないが、通常10nm〜5μm、好ましくは100〜1000nmである。
図2に示す逆層型の有機光電変換素子では、光が入射する基板25側に陰極12が位置し、反対側に陽極11が位置する。したがって、図2に示す逆層型の形態における陽極11は、相対的に仕事関数が大きく、通常、透光性の低い電極材料から構成されることが好ましい。一方、陰極12は、相対的に仕事関数が小さく、透明な電極材料から構成される。
逆層型の有機光電変換素子において、陰極(透明電極)に使用される電極材料としては、例えば、金、銀、銅、白金、ロジウム、ルテニウム、アルミニウム、マグネシウム、インジウムなどの金属、金属化合物、および合金;カーボンナノ粒子、カーボンナノワイヤー、カーボンナノ構造体などの炭素材料;が挙げられる。このうち、インジウムスズ酸化物(ITO)などの透明な導電性金属酸化物を用いることが好ましい。これらの電極材料は、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上の材料を混合して使用してもよい。また、各材料からなる層を2種以上積層させて電極を構成することも可能である。このうち、カーボンナノワイヤーを用いることにより、透明で導電性の高い陰極を塗布法により形成できるため好ましい。また、金属系の材料を使用する場合、陽極(対電極)と対向する側に、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銀、銀化合物などを用いて、1〜20nm程度の厚さの補助電極を作製した後、上述の順層型の有機光電変換素子の陽極(透明電極)材料として例示した導電性高分子の膜を設けることで、陰極(透明電極)とすることができる。なお、陰極(透明電極)の厚さは特に制限はないが、通常10nm〜10μm、好ましくは100nm〜1μmである。
一方、逆層型の有機光電変換素子において、陽極(対電極)に使用される電極材料は、上記陰極(透明電極)よりも相対的に仕事関数が大きい電極材料であることが好ましい。一例を挙げると、銀、ニッケル、モリブデン、金、白金、タングステン、および銅などの金属材料を用いて陽極(対電極)が形成されうる。なお、陽極(対電極)の厚さは特に制限はないが、通常10nm〜5μm、好ましくは100〜1000nmである。
前述のとおり、本発明においては、酸素や水分等で劣化しにくい材料を陽極・陰極の双方に用いることができる、図2の逆層構成の有機光電変換素子であることが好ましい。逆層構成において好ましい陽極・陰極の組合せの例としては、たとえば
1) 第1電極(陰極)ITO, 第2電極(陽極)銀
2) 第1電極(陰極)PEDOT:PSS, 第2電極(陽極)銀
3) 第1電極(陰極)ITO, 第2電極(陽極)銅
4) 第1電極(陰極)PEDOT:PSS, 第2電極(陽極)金
5) 第1電極(陰極)ITO, 第2電極(陽極)PEDOT:PSS
等を挙げることができる。
[光電変換層]
光電変換層は、光起電力効果を利用して光エネルギーを電気エネルギーに変換する機能を有する。本形態の有機光電変換素子は、光電変換層に、n型有機半導体および上述の本発明の共役系高分子化合物をp型有機半導体として必須に含む点に特徴を有する。これらの光電変換材料に光が吸収されると、励起子が発生し、これがpn接合界面において、正孔と電子とに電荷分離される。
本形態の光電変換層は、上述の本発明の共役系高分子化合物を必須に含み、必要に応じて、他のp型有機半導体材料を含みうる。他のp型有機半導体材料の一例を以下に示す。
縮合多環芳香族低分子化合物としては、例えば、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、ヘキサセン、へプタセン、クリセン、ピセン、フルミネン、ピレン、ペロピレン、ペリレン、テリレン、クオテリレン、コロネン、オバレン、サーカムアントラセン、ビスアンテン、ゼスレン、ヘプタゼスレン、ピランスレン、ビオランテン、イソビオランテン、サーコビフェニル、アントラジチオフェン等の化合物、ポルフィリンや銅フタロシアニン、テトラチアフルバレン(TTF)−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)錯体、ビスエチレンジチオテトラチアフルバレン(BEDTTTF)−過塩素酸錯体、およびこれらの誘導体や前駆体が挙げられる。
また上記の縮合多環を有する誘導体の例としては、国際公開第03/16599号、国際公開第03/28125号、米国特許第6,690,029号明細書、特開2004−107216号公報等に記載の置換基をもったペンタセン誘導体、米国特許出願公開第2003/136964号明細書等に記載のペンタセンプレカーサ、J.Amer.Chem.Soc.,vol127.No14.4986、J.Amer.Chem.Soc.,vol.123、p9482、J.Amer.Chem.Soc.,vol.130(2008)、No.9、2706等に記載のトリアルキルシリルエチニル基で置換されたアセン系化合物等が挙げられる。
共役系ポリマーとしては、例えば、ポリ3−ヘキシルチオフェン(P3HT)等のポリチオフェンおよびそのオリゴマー、またはTechnical Digest of the International PVSEC−17,Fukuoka,Japan,2007,P1225に記載の重合性基を有するようなポリチオフェン、Nature Material,(2006)vol.5,p328に記載のポリチオフェン−チエノチオフェン共重合体、国際公開第2008/000664号に記載のポリチオフェン−ジケトピロロピロール共重合体、Adv Mater,2007,p4160に記載のポリチオフェン−チアゾロチアゾール共重合体、Nature Mat.vol.6(2007),p497に記載のPCPDTBT等のようなポリチオフェン共重合体、ポリピロールおよびそのオリゴマー、ポリアニリン、ポリフェニレンおよびそのオリゴマー、ポリフェニレンビニレンおよびそのオリゴマー、ポリチエニレンビニレンおよびそのオリゴマー、ポリアセチレン、ポリジアセチレン、ポリシラン、ポリゲルマン等のσ共役系ポリマー、等のポリマー材料が挙げられる。
また、ポリマー材料ではなくオリゴマー材料としては、チオフェン6量体であるα−セクシチオフェンα,ω−ジヘキシル−α−セクシチオフェン、α,ω−ジヘキシル−α−キンケチオフェン、α,ω−ビス(3−ブトキシプロピル)−α−セクシチオフェン、等のオリゴマーが好適に用いることができる。
これらの化合物の中でも、溶液プロセスが可能な程度に有機溶剤への溶解性が高く、かつ乾燥後は結晶性薄膜を形成し、高い移動度を達成することが可能な化合物が好ましい。より好ましくは、本発明のn型有機半導体材料であるフラーレン誘導体と適度な相溶性を有するような化合物(適度な相分離構造形成し得る化合物)であることが好ましい。
またバルクへテロジャンクション層上にさらに溶液プロセスで電子輸送層や正孔ブロック層を形成する際には、一度塗布した層の上にさらに塗布することができれば、容易に積層することができるが、通常溶解性のよい材料からなる層の上にさらに層を溶液プロセスによって積層使用とすると、下地の層を溶かしてしまうために積層することができないという課題を有していた。したがって、溶液プロセスで塗布した後に不溶化できるような材料が好ましい。
このような材料としては、Technical Digest of the International PVSEC−17,Fukuoka,Japan,2007,P1225に記載の重合性基を有するようなポリチオフェンのような、塗布後に塗布膜を重合架橋して不溶化できる材料、または米国特許出願公開第2003/136964号、および特開2008−16834等に記載されているような、熱等のエネルギーを加えることによって可溶性置換基が反応して不溶化する(顔料化する)材料などを挙げることができる。
なお、本形態の光電変換層に含まれるp型有機半導体は、上述の共役系高分子化合物を含む限りにおいては、上記他のp型有機半導体材料の含有量は特に制限はない。ただし、より高い光電変換効率を達成するためには、光電変換層に含まれるp型有機半導体の総量(光電変換層が2層以上含まれる場合には、全ての層における総量)に対して、上述の共役系高分子化合物の割合が多いほど好ましい。具体的には、p型有機半導体の総量に対する共役系高分子化合物の割合が、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、95質量%以上であることが特に好ましく、100質量%であることが最も好ましい。
本形態の光電変換層に使用されるn型有機半導体は、前記p型有機半導体に対してアクセプター性(電子受容性)である有機化合物であれば特に制限はなく、本技術分野で使用されうる材料を適宜採用することができる。このような化合物としては、前記p型有機半導体のLUMO準位に対して0.2〜0.5eV以上深い化合物であればよく、例えば、フラーレン、カーボンナノチューブ、オクタアザポルフィリン、上記p型有機半導体の水素原子をフッ素原子に置換したパーフルオロ体(例えば、パーフルオロペンタセンやパーフルオロフタロシアニンなど)、ナフタレンテトラカルボン酸無水物、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボン酸ジイミドなどの芳香族カルボン酸無水物やそのイミド化物を骨格として含む高分子化合物などが挙げられる。
このうち、p型有機半導体と高速(〜50fs)かつ効率的に電荷分離を行うことができるという観点から、フラーレンもしくはカーボンナノチューブまたはこれらの誘導体を用いることが好ましい。より具体的には、フラーレンC60、フラーレンC70、フラーレンC76、フラーレンC78、フラーレンC84、フラーレンC240、フラーレンC540、ミックスドフラーレン、フラーレンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、単層カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン(円錐型)など、およびこれらの一部が水素原子、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、置換されたまたは非置換の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルキル基、シリル基、エーテル基、チオエーテル基、アミノ基などによって置換されたフラーレン誘導体が挙げられる。
特に、[6,6]−フェニル−C61−ブチリックアシッドメチルエステル(略称PC60BM,PC61BM)、[6,6]−フェニル−C61−ブチリックアシッド−nブチルエステル(PCBnB)、[6,6]−フェニル−C61−ブチリックアシッド−イソブチルエステル(PCBiB)、[6,6]−フェニル−C61−ブチリックアシッド−nヘキシルエステル(PCBH)、[6,6]−フェニル−C71−ブチリックアシッドメチルエステル(略称PC70BM)、Adv.Mater.,vol.20(2008),p2116に記載のbis−PCBM、特開2006−199674号公報に記載のアミノ化フラーレン、特開2008−130889号公報に記載のメタロセン化フラーレン、米国特許第7,329,709号明細書に記載の環状エーテル基を有するフラーレンなどのような、置換基により溶解性が向上されてなるフラーレン誘導体を用いることが好ましい。なお、本形態において、n型有機半導体は、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を併用しても構わない。
本形態の光電変換層における、p型有機半導体およびn型有機半導体の接合形態は、特に制限はなく、平面へテロ接合であってもよいし、バルクへテロ接合(バルクヘテロジャンクション)であってもよい。平面ヘテロ接合とは、p型有機半導体を含むp型有機半導体層と、n型有機半導体を含むn型有機半導体層とが積層され、これら2つの層が接触する面がpn接合界面となる接合形態である。一方、バルクヘテロジャンクションとは、p型有機半導体とn型有機半導体との混合物を塗布することにより形成され、この単一の層中において、p型有機半導体のドメインとn型有機半導体のドメインとがミクロ相分離構造をとっている。したがって、バルクヘテロジャンクションでは、平面へテロ接合と比較して、pn接合界面が層全体にわたって数多く存在することになる。よって、光吸収により生成した励起子の多くがpn接合界面に到達できることになり、電荷分離に至る効率を高めることができる。このような理由から、本形態の光電変換層における、p型有機半導体とn型有機半導体との接合は、バルクヘテロジャンクションであることが好ましい。
また、バルクヘテロジャンクション層は、通常の、p型有機半導体材料とn型有機半導体層が混合されてなる単一の層(i層)からなる場合の他に、当該i層がp型有機半導体からなるp層およびn型有機半導体からなるn層により挟持されてなる3層構造(p−i−n構造)を有する場合がある。このようなp−i−n構造は、正孔および電子の整流性がより高くなり、電荷分離した正孔・電子の再結合等によるロスが低減され、一層高い光電変換効率を得ることができる。
本発明において、光電変換層に含まれるp型有機半導体とn型有機半導体との混合比は、質量比で2:8〜8:2の範囲が好ましく、より好ましくは3.3:6.7〜5:5の範囲である。また、光電変換層1層の膜厚は、好ましくは50〜400nmであり、より好ましくは80〜300nmであり、特に好ましくは100〜200nmである。一般に、より多くの光を吸収させる観点から、光電変換層の膜厚は大きい方が好ましいが、膜厚が大きくなるとキャリア(正孔・電子)の取り出し効率が低下するために光電変換効率が低下する傾向がある。しかしながら、上述の本形態の共役系高分子化合物をp型有機半導体材料として用いて光電変換層を形成すると、従来のp型有機半導体材料を用いた光電変換層と比較して、100nm以上の膜厚とした場合であってもキャリア(正孔・電子)の取り出し効率が低下しにくいため、高い光電変換効率を維持することができる。よって、逆層型の光電変換素子において、光電変換層の膜厚を大きくした場合であっても十分な光電変換効率を達成することが可能となる。
(基板)
本発明の有機光電変換素子は、必要に応じて基板を含みうる。基板は、電極を塗布方式で形成する場合における、塗布液の被塗布部材としての役割を有する。
基板側から光電変換される光が入射する場合、基板はこの光電変換される光を透過させることが可能な、即ちこの光電変換すべき光の波長に対して透明な部材であることが好ましい。基板は、例えば、ガラス基板や樹脂基板等が好適に挙げられるが、軽量性と柔軟性の観点から透明樹脂フィルムを用いることが望ましい。
本発明で透明基板として好ましく用いることができる透明樹脂フィルムには特に制限がなく、その材料、形状、構造、厚み等については公知のものの中から適宜選択することができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、変性ポリエステル等のポリエステル系樹脂フィルム、ポリエチレン(PE)樹脂フィルム、ポリプロピレン(PP)樹脂フィルム、ポリスチレン樹脂フィルム、環状オレフィン系樹脂等のポリオレフィン類樹脂フィルム、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂フィルム、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂フィルム、ポリサルホン(PSF)樹脂フィルム、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂フィルム、ポリカーボネート(PC)樹脂フィルム、ポリアミド樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、アクリル樹脂フィルム、トリアセチルセルロース(TAC)樹脂フィルム等を挙げることができるが、可視域の波長(380〜800nm)における透過率が80%以上である樹脂フィルムであれば、本発明に係る透明樹脂フィルムに好ましく適用することができる。なかでも透明性、耐熱性、取り扱いやすさ、強度およびコストの点から、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエーテルサルホンフィルム、ポリカーボネートフィルムであることが好ましく、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルムであることがより好ましい。
本発明に用いられる透明基板には、塗布液の濡れ性や接着性を確保するために、表面処理を施すことや易接着層を設けることができる。表面処理や易接着層については従来公知の技術を使用できる。例えば、表面処理としては、コロナ放電処理、火炎処理、紫外線処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理等の表面活性化処理を挙げることができる。また、易接着層としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ビニル系共重合体、ブタジエン系共重合体、アクリル系共重合体、ビニリデン系共重合体、エポキシ系共重合体等を挙げることができる。
また、酸素および水蒸気の透過を抑制する目的で、透明基板にはバリアコート層が予め形成されていてもよいし、透明導電層を転写する反対側にはハードコート層が予め形成されていてもよい。
(正孔輸送層)
本形態の有機光電変換素子は、必要に応じて正孔輸送層を含みうる。正孔輸送層は、正孔を輸送する機能を有し、かつ電子を輸送する能力が著しく小さい(例えば、正孔の移動度の10分の1以下)という性質を有する。正孔輸送層は、光電変換層と陽極との間に設けられ、正孔を陽極へと輸送しつつ、電子の移動を阻止することで、電子と正孔とが再結合するのを防ぐことができる。
正孔輸送層に用いられる正孔輸送材料は、特に制限はなく、本技術分野で使用されうる材料を適宜採用することができる。一例を挙げると、例えば、Clevios社製、商品名BaytronP等のPEDOT:PSS、欧州特許第1647566号等に記載のポリチエノチオフェン類、特開2010−206146号に記載のスルホン化ポリチオフェン類、ポリアニリンおよびそのドープ材料、国際公開第2006/019270号等に記載のシアン化合物などが挙げられる。
また、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、およびピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、また導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマーなどもまた、用いられうる。
また、これら以外にも、ポルフィリン化合物、芳香族第3級アミン化合物、およびスチリルアミン化合物などが使用可能であり、これらのうちでは、芳香族第3級アミン化合物を用いることが好ましい。なお、場合によっては、モリブデン、バナジウム、タングステンなどの金属酸化物やその混合物などの無機化合物を用いて正孔輸送層を形成してもよい。
さらに上記化合物に含まれる構造単位を高分子鎖に導入した、あるいは、上記化合物を高分子の主鎖とした高分子材料を正孔輸送材料として用いることもできる。また、特開平11−251067号公報、J.Huang et.al.,Applied Physics Letters,80(2002),p.139に記載されているような、p型正孔輸送材料を用いることもできる。さらに、不純物をドープしたp性の高い正孔輸送材料を用いることもできる。一例を挙げると、特開平4−297076号公報、特開2000−196140号公報、特開2001−102175号公報、J.Appl.Phys.,95,5773(2004)などに記載された材料が挙げられる。なお、これらの正孔輸送材料は、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、各材料からなる層を2種以上積層させて正孔輸送層を構成することも可能である。
正孔輸送層の厚さは、特に制限はないが、通常1〜2000nmである。リーク防止効果をより高める観点からは、厚さは5nm以上であることが好ましい。また、高い透過率と低い抵抗を維持する観点からは、厚さは1000nm以下であることが好ましく、200nm以下であることがより好ましい。
正孔輸送層の導電率は、一般的に高い方が好ましいが、高くなりすぎると電子が移動するのを阻止する能力が低下し、整流性が低くなりうる。したがって、正孔輸送層の導電率は、10−5〜1S/cmであることが好ましく、10−4〜10−2S/cmであることがより好ましい。
(電子輸送層)
本形態の有機光電変換素子は、必要に応じて電子輸送層を含みうる。電子輸送層は、電子を輸送する機能を有し、かつ正孔を輸送する能力が著しく小さいという性質を有する。電子輸送層は、光電変換層と陰極との間に設けられ、電子を陰極へと輸送しつつ、正孔の移動を阻止することで、電子と正孔とが再結合するのを防ぐことができる。
電子輸送層に用いられる電子輸送材料は、特に制限はなく、本技術分野で使用されうる材料を適宜採用することができる。例えば、オクタアザポルフィリン、p型有機半導体のパーフルオロ体(パーフルオロペンタセンやパーフルオロフタロシアニン等)を用いることができるが、同様に、光電変換層に用いられるp型有機半導体のHOMO準位よりも深いHOMO準位を有する電子輸送層には、光電変換層で生成した正孔を陰極側には流さないような整流効果を有する、正孔ブロック機能が付与される。よって、より好ましくは、n型有機半導体のHOMO準位よりも深い材料が電子輸送材料として用いられる。このような電子輸送材料としては、バソキュプロイン等のフェナントレン系化合物、ナフタレンテトラカルボン酸無水物、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド等のn型有機半導体、および酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ガリウム等のn型無機酸化物およびフッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化セシウム等のアルカリ金属化合物等が用いられうる。また、光電変換層に用いたn型有機半導体単体からなる層を用いることもできる。なお、これらの電子輸送材料は、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、各材料からなる層を2種以上積層させて電子輸送層を構成することも可能である。
なお、前述のように耐久性の観点で有利な逆層型の素子とする場合には、第一の電極上に電子輸送層を形成した後に光電変換層が形成されるため、光電変換材料を含む塗布液に対して不溶である化合物が電子輸送材料として好ましい。そのような観点から、電子輸送材料は、酸化チタンや酸化亜鉛といった無機物、および国際公開2008−134492号に記載のポリエチレンイミンやアミノシランカップリング剤のような架橋可能な有機物であることが好ましい。中でもアミノシランカップリング剤(一例を挙げると、3−(2−アミノエチル)−アミノプロピルトリメトキシシラン)を用いることが好ましい。
また、光電変換層を塗布する際に使用する溶剤に対して不溶な材料としては、アルコール類に可溶なπ共役高分子等を挙げることができ、APPLIED PHYSICS LETTERS 95(2009),p043301、Adv.Funct.Mat.,2010,p.1977、Adv.Mater.,2011,23,3086、J.Am.Chem.Soc.,2011,p.8416、Advanced Materials,2011(Vol 23,no.40),p4636−4643等に記載のポリフルオレン類、ポリチオフェン類等、および下記のポリフルオレン類を用いてもよい。これらのポリマーの場合、上記のシランカップリング剤等と異なり、順層構成、すなわち光電変換層上にも形成することができるために好ましい。また、ITO等の金属酸化物だけでなく、金、銀、銅などの金属電極に対しても電子輸送層・正孔ブロック層として機能させることができるため、順層構成においても酸化に安定な金属を陰極に用いることが可能となり、好ましい。
電子輸送層の厚さは、特に制限はないが、通常1〜2000nmである。リーク防止効果をより高める観点からは、厚さは2nm以上であることが好ましく、より好ましくは5nm以上である。また、高い透過率と低い抵抗を維持する観点からは、厚さは100nm以下であることが好ましく、20nm以下であることがより好ましい。
(電荷再結合層;中間電極)
図3で示すような、2以上の光電変換層を有するタンデム型(多接合型)の有機光電変換素子において、光電変換層間には、電荷再結合層(中間電極)が配置される。
電荷再結合層(中間電極)に用いられる材料は、導電性および透光性を併せ持つ材料であれば、特に制限はなく、上述の電極材料として例示した、ITO、AZO、FTO、酸化チタンなどの透明金属酸化物、Ag、Al、Auなどの金属、およびカーボンナノ粒子、カーボンナノワイヤーなどの炭素材料、PEDOT:PSS、ポリアニリンなどの導電性高分子などが用いられうる。これらの材料は、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、各材料からなる層を2種以上積層させて電荷再結合層を構成することも可能である。
電荷再結合層の導電率は、高い変換効率を得る観点から、高いことが好ましく、具体的には、5〜50000S/cmであることが好ましく、100〜10,000S/cmであることがより好ましい。また、電荷再結合層の厚さは、特に制限はないが、1〜1000nmであることが好ましく、5〜50nmであることが好ましい。厚さが1nm以上とすることにより、膜面を平滑化することができる。一方、厚さが50nm以下とすることにより、短絡電流密度Jsc(mA/cm2)の低下を軽減することができる。
(その他の層)
本形態の有機光電変換素子は、上記の各部材(各層)の他に、光電変換効率の向上や、素子の寿命の向上のために、他の部材(他の層)をさらに設けてもよい。その他の部材としては、例えば、正孔注入層、電子注入層、励起子ブロック層、UV吸収層、光反射層、波長変換層などが挙げられる。また、上層に偏在した金属酸化物微粒子をより安定にするため等にシランカップリング剤等の層を設けてもよい。さらに本発明の光電変換層に隣接して金属酸化物の層を積層してもよい。
また、本発明の有機光電変換素子は、太陽光のより効率的な受光を目的として、各種の光学機能層を有していてもよい。光学機能層としては、例えば、反射防止膜、マイクロレンズアレイ等の集光層、陰極で反射した光を散乱させて再度発電層に入射させることができるような光拡散層等が挙げられる。
反射防止層としては、各種公知の反射防止層を設けることができるが、例えば、透明樹脂フィルムが二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムである場合は、フィルムに隣接する易接着層の屈折率を1.57〜1.63とすることで、フィルム基板と易接着層との界面反射を低減して透過率を向上させることができるのでより好ましい。屈折率を調整する方法としては、酸化スズゾルや酸化セリウムゾル等の比較的屈折率の高い酸化物ゾルとバインダー樹脂との比率を適宜調整して塗設することで実施できる。易接着層は単層でもよいが、接着性を向上させるためには2層以上の構成にしてもよい。
集光層としては、例えば、支持基板の太陽光受光側にマイクロレンズアレイ上の構造を設けるように加工したり、あるいは所謂集光シートと組み合わせたりすることにより特定方向からの受光量を高めたり、逆に太陽光の入射角度依存性を低減することができる。
マイクロレンズアレイの例としては、基板の光取り出し側に一辺が30μmでその頂角が90度となるような四角錐を2次元に配列する。一辺は10〜100μmが好ましい。これより小さくなると回折の効果が発生して色付き、大きすぎると厚みが厚くなり好ましくない。
また光散乱層としては、各種のアンチグレア層、金属または各種無機酸化物等のナノ粒子・ナノワイヤー等を無色透明なポリマーに分散した層等を挙げることができる。
<有機光電変換素子の製造方法>
上述の本形態の有機光電変換素子の製造方法は特に制限はなく、従来公知の手法を適宜参照することにより製造することができる。以下、図2に示すような逆層型の有機光電変換素子の製造方法を例に挙げて、本形態の有機光電変換素子の好ましい製造方法を説明する。ただし、当該製造方法における各工程は、逆層型の有機光電変換素子のみならず、図1に示すような順層型の有機光電変換素子や、図3に示すようなタンデム型の製造に適用可能である。
本形態の有機光電変換素子の製造方法は、陰極を形成する工程と、前記陰極の上に、p型有機半導体材料およびn型有機半導体材料を含む光電変換層を形成する工程と、前記光電変換層の上に、陽極を形成する工程とを含む。以下、本形態の有機光電変換素子の製造方法の各工程について、詳細に説明する。
本形態の製造方法では、まず、陰極を形成する。陰極を形成する方法は、特に制限はないが、操作の容易性や、ダイコータなどの装置を用いてロール・ツー・ロールで生産可能なことから、基板の上に、陰極の構成材料を含む液体を塗布し、乾燥させる方法であることが好ましい。またこれ以外にも、市販の薄膜状の電極材料をそのまま使用しても構わない。
上記で陰極を形成した後、必要に応じて、この陰極上に、電子輸送層を形成してもよい。電子輸送層を形成する手段としては、蒸着法、溶液塗布法のいずれであってもよいが、好ましくは溶液塗布法である。溶液塗布法を用いて電子輸送層を形成する場合には、上述した電子輸送材料を適当な溶剤に溶解・分散させた溶液を、適当な塗布法を用いて陰極上に塗布し、乾燥させればよい。
溶液塗布法に用いられる塗布法としては、キャスト法、スピンコート法、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、グラビアコート法、スプレーコーティング法、ディッピング(浸漬)コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法、インクジェット法、スクリーン印刷法、凸版印刷法、凹版印刷法、オフセット印刷法、フレキソ印刷法等の印刷法、Langmuir−Blodgett(LB)法等の通常の方法を用いることができる。なかでも、ブレードコーティング法を用いることが特に好ましい。
なお、塗布法に使用する溶液の固形分濃度は、塗布方法や膜厚によっても変動しうるが、0.01〜15質量%が好ましく、より好ましくは0.05〜10質量%である。また、塗布の際の塗布液および/または塗布面の温度は、特に制限はないが、塗布・乾燥時の温度変動による析出、ムラを防ぐといった観点から、好ましくは30〜120℃であり、より好ましくは50〜110℃である。さらに、乾燥の具体的な形態についても特に制限はなく、従来公知の知見が適宜参照されうる。乾燥条件の一例を挙げると80〜140℃程度の温度で、数十秒間〜数十分間程度といった条件が例示される。乾燥に使用する装置としては、ホットプレート、温風乾燥、赤外線ヒーター、マイクロウエーブ、真空乾燥機などが挙げられるが、これ以外の乾燥装置を用いることも勿論可能である。
続いて、上記で形成した陰極または電子輸送層上に、p型有機半導体およびn型有機半導体を含む光電変換層を形成する。ここで、本形態の製造方法は、p型有機半導体として、上述の本発明の共役系高分子化合物を必須に含む。光電変換層を形成するための具体的な手法について特に制限はないが、好ましくは、p型有機半導体およびn型有機半導体をそれぞれ、または一括して、適当な溶剤に溶解・分散させた溶液を、適当な塗布法(具体的な形態については、上述した通りである)を用いて陰極または電子輸送層上に塗布し、乾燥させればよい。なお、p型有機半導体およびn型有機半導体を一括して溶剤に溶解・分散させた溶液を、塗布法により塗布する。その後、残留溶媒および水分、ガスの除去、および半導体材料の結晶化による移動度向上・吸収長波化を引き起こすために加熱を行うことが好ましい。製造工程中において所定の温度でアニール処理されると、微視的に一部が凝集または結晶化が促進され、光電変換層を適切な相分離構造とすることができる。その結果、光電変換層の正孔と電子(キャリア)の移動度が向上し、高い効率を得ることができるようになる。このようにして、p型有機半導体およびn型有機半導体が一様に混合され、バルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子とすることができる。
一方、p型有機半導体とn型有機半導体の混合比の異なる複数層からなる光電変換層(例えば、p−i−n構造)を形成する場合には、一の層を塗布後に、当該層を不溶化(顔料化)し、その後、他の層を塗布することにより形成することが可能である。
なお、当該光電変換層を形成する工程以降は、酸素や水分に曝さないようにするために窒素雰囲気下のグローブボックス内で行うことが好ましい。このように、窒素雰囲気下で行うことにより、大気中の酸素または水分によりp型有機半導体が劣化するのを防ぎ、素子の耐久性を高めることができる。具体的には、前記グローブボックスの酸素および水分の濃度が1000ppm以下であることが好ましく、より好ましくは100ppm以下であることが好ましい。最も好ましくは10ppm以下である。
次に、上記で形成した光電変換層上に、陽極を形成する。陽極を形成するための手段についても特に制限はなく、蒸着法、溶液塗布法のいずれであってもよいが、好ましくは蒸着法(例えば、真空蒸着法)が用いられる。
なお、光電変換層と陽極との間に正孔輸送層を設ける場合には、蒸着法または溶液塗布法、好ましくは溶液塗布法を用いて、正孔輸送層が形成される。なお、当該正孔輸送層を形成する工程は、上記光電変換層を形成する工程と同様、窒素雰囲気下のグローブボックス内で行うことが好ましい。このように、窒素雰囲気下で行うことにより、大気中の酸素または水分により光電変換層が劣化するのを防ぎ、素子の耐久性を高めることができる。
さらに、上述した各種の層以外の層が含まれる場合には、これらの層を形成するための工程を、溶液塗布法や蒸着法などを用いることで適宜追加して行うことができる。
上記電極(陰極・陽極)、光電変換層、正孔輸送層、電子輸送層等は、必要に応じてパターニングされうる。パターニングの方法は特に制限はなく、公知の手法を適宜適用することができる。例えば、バルクへテロジャンクション型の光電変換層や正孔輸送層・電子輸送層などで使用される可溶性の材料をパターニングする場合には、ダイコート、ディップコート等の全面塗布後に不要部だけ拭き取ってもよいし、インクジェット法やスクリーン印刷等の方法を使用して塗布時に直接パターニングしてもよい。一方、電極などで使用される不溶性の材料の場合は、真空蒸着法による堆積時にマスク蒸着を行ったり、エッチングまたはリフトオフなどの公知の方法によってパターニングすることができる。また、別の基板上に形成したパターンを転写することによってパターンを形成してもよい。
また、本形態の有機光電変換素子は、環境中の酸素、水分などによる劣化を防止するために、必要に応じて封止されうる。封止の方法は特に制限はなく、有機光電変換素子や有機エレクトロルミネッセンス素子などで用いられる公知の手法によって行われうる。例えば、(1)アルミニウムまたはガラスなどでできたキャップを接着剤によって接着することによって封止する手法;(2)アルミニウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウムなどのガスバリア層が形成されたプラスチックフィルムと有機光電変換素子上を接着剤で貼合する手法;(3)ガスバリア性の高い有機高分子材料(ポリビニルアルコールなど)をスピンコートする方法;(4)ガスバリア性の高い無機薄膜(酸化ケイ素、酸化アルミニウムなど)または有機膜(パリレン等)を真空下で堆積する方法;ならびに(5)これらを複合的用いて積層する方法などが挙げられる。
<有機光電変換素子の用途>
本発明の他の形態によれば、上述の有機光電変換素子を有する太陽電池が提供される。本形態の有機光電変換素子は、優れた耐久性を有し、十分な光電変換効率を達成することができるため、これを発電素子とする太陽電池に好適に使用されうる。
また、本発明のさらに他の形態によれば、上述した有機光電変換素子がアレイ状に配列されてなる光センサアレイが提供される。すなわち、本形態の有機光電変換素子は、その光電変換機能を利用して、光センサアレイ上に投影された画像を電気的な信号に変換する光センサアレイとして利用することもできる。
本発明の作用効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
<共役系高分子化合物の合成>
[例示化合物2の合成]
欧州特許第2128146号を参考として合成した3.3g(10mmol)の化合物2−1を窒素下で脱水テトラヒドロフラン(THF)50mlに溶解させ、−78℃で1.6M n−ブチルリチウム ヘキサン溶液を7.0ml(11.2mmol)滴下して30分間撹拌を行った後、塩化トリブチルスズ4.07g(12.5MMOL)を加え、さらに30分間撹拌を行った後、室温まで昇温させて一昼夜撹拌を行った。反応終了後、酢酸エチルと水とを加えて水洗し、有機相を抽出後に硫酸マグネシウムを加えて乾燥し、溶媒を留去した。この粗製物を、事前にトリエチルアミンで処理を行ったシリカゲルによってカラムクロマトグラフィーを行う(ヘプタン:酢酸エチル=10:0〜9:1(体積比))ことにより、化合物2−2を4.34g(8.0mmol)得た(収率80%)。
次いで化合物2−2を4.34g(8.0mmol)と、ジブロモチアジアゾールを980mgと、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウムを925mg(0.8MMOL)とを脱水トルエン50mlに溶解させ、110℃で16時間反応させた。反応終了後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘプタン:トルエン=10:0〜7:3(体積比))で精製し、化合物2−3を2.6g(4.4mmol)得た(収率55%)。
ついで化合物2−3を2.6g(4.4mmol)と、Nブロモスクシンイミド(NBS)を1.77g(10mmol)を塩化メチレン30mlおよび酢酸30mlの混合溶媒に加えて室温で一昼夜撹拌した。反応終了後、食塩水を加えて水洗し、有機相を抽出して硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去した。ついでシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘプタン:トルエン=10:0〜8:2(体積比))で精製し、化合物2−4を2.76g(3.7mmol)得た(収率84%)。
ついで、上記化合物2−4 187mg(0.25mmol)と、2,6−ビス(トリメチルスズ)−4,8−ジ(2−エチルヘキシルオキシ)ベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェンを193mg(Journal of the American Chemical Society,2009,vol.131,p.7792を参考に合成、0.25mmol)とを20mlの無水トルエンに溶解させた。この溶液をアルゴンでパージした後、6.3mg(0.007mmol)のトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)と、16.7mg(0.055mmol)のトリス(o−トリル)ホスフィンとを加えた。この溶液をさらに15分間、アルゴンでパージした。その後、110〜120℃まで溶液を加熱し、72時間反応させた。さらにエンドキャップを行うため、2−トリブチルスズチオフェン(11mg、0.03mmol)を添加し、10時間還流した。さらに2−ブロモチオフェン(10mg、0.06mmol)を添加し、10時間還流した。反応完了後、メタノール(500ml)に再沈殿し、ろ取したポリマー生成物をソックスレー抽出により精製し、メタノールに再沈殿を行うことで80mgの純粋なポリマー(Mn=49,000)(例示化合物2)を得た。
[例示化合物7の合成]
化合物7−1(Macromolecules,2010 ,vol.43,p.697を参考として合成) 520mg(1mmol)、2−トリブチルスタンニル−チアゾール 1.50g(4mmol)、およびテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム 116mg(0.1mmol)を脱水トルエン20mlに溶解させ、110℃で12時間反応を行った。反応終了後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘプタン:トルエン=10:0〜8:2(体積比))で精製し、化合物7−2を400mg(0.76mmol)得た(収率76%)。
ついで化合物7−2を400mg(0.76mmol)と、Nブロモスクシンイミド(NBS)を300mg(1.7mmol)とを塩化メチレン30mlおよび酢酸30mlの混合溶媒に加えて室温で一昼夜撹拌した。反応終了後、食塩水を加えて水洗し、有機相を抽出して硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去した。ついでシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘプタン:トルエン=10:0〜8:2(体積比))で精製し、化合物7−3を400mg(0.59mmol)得た(収率77%)。
ついで、上記化合物7−3 171mg(0.25mmol)と、2,6−ビス(トリメチルスズ)−4,8−ジ(2−エチルヘキシルオキシ)ベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェンを193mg(Journal of the American Chemical Society,2009 ,vol.131,p.7792を参考に合成、0.25mmol)とを20mlの無水トルエンに溶解させた。この溶液をアルゴンでパージした後、6.3mg(0.007mmol)のトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)と、16.7mg(0.055mmol)のトリス(o−トリル)ホスフィンとを加えた。この溶液をさらに15分間、アルゴンでパージした。その後、110〜120℃まで溶液を加熱し、72時間反応させた。さらにエンドキャップを行うため、2−トリブチルスズチオフェン(11mg、0.03mmol)を添加し、10時間還流した。さらに2−ブロモチオフェン(10mg、0.06mmol)を添加し、10時間還流した。反応完了後、メタノール(500ml)に再沈殿し、ろ取したポリマー生成物をソックスレー抽出により精製し、メタノールに再沈殿を行うことで110mgの純粋なポリマー(Mn=28,000)(例示化合物7)を得た。
[例示化合物13の合成]
化合物13−1(Synthesis(2008)p.2221を参考として合成)を2.81g(10mmol)と、ルべアン酸を600mg(5mmol)とをDMF50mlに溶解させ、160℃で12時間反応を行った。反応終了後、水に投入して沈殿物をろ取し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘプタン:トルエン=9:1〜8:2(体積比))で精製し、化合物13−2を710mg得た(1.1mmol,収率22%)。
次いで化合物13−2を710mg(1.1mmol)と、Nブロモスクシンイミド(NBS)を430mg(2.4mmol)とを塩化メチレン20mlおよび酢酸20mlの混合溶媒に加えて室温で一昼夜撹拌した。反応終了後、食塩水を加えて水洗し、有機相を抽出して硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去した。ついでシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘプタン:トルエン=10:0〜8:2)で精製し、化合物13−3を800mg(1.0mmol)得た(収率90%)。
ついで、上記化合物13−3 200mg(0.25mmol)と、化合物13−4(米国特許出願第2011−28656号を参考として合成)を186mg(0.25mmol)とを20mlの無水トルエンに溶解させた。この溶液をアルゴンでパージした後、6.3mg(0.007mmol)のトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)と、16.7mg(0.055mmol)のトリス(o−トリル)ホスフィンとを加えた。この溶液をさらに15分間、アルゴンでパージした。その後、110〜120℃まで溶液を加熱し、72時間反応させた。さらにエンドキャップを行うため、2−トリブチルスズチオフェン(11mg、0.03mmol)を添加し、10時間還流した。さらに2−ブロモチオフェン(10mg、0.06mmol)を添加し、10時間還流した。反応完了後、メタノール(500ml)に再沈殿し、ろ取したポリマー生成物をソックスレー抽出により精製し、メタノールに再沈殿を行うことで145mgの純粋なポリマー(Mn=22,000)(例示化合物13)を得た。
[例示化合物18の合成]
ジブロモベンゾチアジアゾール 294mg(1mmol)、化合物2−2 1.50g(4mmol)、およびテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム 116mg(0.1mmol)を脱水トルエン20mlに溶解させ、110℃で8時間反応を行った。反応終了後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘプタン:トルエン=10:0〜8:2(体積比))で精製し、化合物18−1を525mg(0.82mmol)得た(収率82%)。
ついで化合物18−1を525mg(0.82mmol)と、Nブロモスクシンイミド(NBS)を320mg(1.8mmol)とを塩化メチレン30mlおよび酢酸30mlの混合溶媒に加えて室温で一昼夜撹拌した。反応終了後、食塩水を加えて水洗し、有機相を抽出して硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去した。ついでシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘプタン:トルエン=10:0〜8:2(体積比))で精製し、化合物18−2を425mg(0.53mmol)得た(収率65%)。
ついで、上記化合物18−2 200mg(0.25mmol)と、2,6−ビス(トリメチルスズ)−4,8−ジドデシルオキシベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェン 221mg(Journal of the American Chemical Society,2009,vol.131,p.7792を参考に合成、0.25mmol)とを20mlの無水トルエンに溶解させた。この溶液をアルゴンでパージした後、6.3mg(0.007mmol)のトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)と、16.7mg(0.055mmol)のトリス(o−トリル)ホスフィンとを加えた。この溶液をさらに15分間、アルゴンでパージした。その後、110〜120℃まで溶液を加熱し、72時間反応させた。さらにエンドキャップを行うため、2−トリブチルスズチオフェン(11mg、0.03mmol)を添加し、10時間還流した。さらに2−ブロモチオフェン(10mg、0.06mmol)を添加し、10時間還流した。反応完了後、メタノール(500ml)に再沈殿し、ろ取したポリマー生成物をソックスレー抽出により精製し、メタノールに再沈殿を行うことで110mgの純粋なポリマー(Mn=18,000)(例示化合物18)を得た。
[例示化合物19の合成]
ジブロモベンゾオキサジアゾール 278mg(1mmol)、化合物2−2 1.50g(4mmol)、およびテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム 116mg(0.1mmol)を脱水トルエン20mlに溶解させ、110℃で8時間反応を行った。反応終了後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘプタン:トルエン=10:0〜8:2(体積比))で精製し、化合物19−1を485mg(0.78mmol)得た(収率78%)。
ついで化合物19−1を485mg(0.78mmol)と、Nブロモスクシンイミド(NBS)を300mg(1.7mmol)とを塩化メチレン30mlおよび酢酸30mlの混合溶媒に加えて室温で一昼夜撹拌した。反応終了後、食塩水を加えて水洗し、有機相を抽出して硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去した。ついでシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘプタン:トルエン=10:0〜8:2(体積比))で精製し、化合物19−2を350mg(0.45mmol)得た(収率57%)。
ついで、上記化合物19−2 195mg(0.25mmol)と、2,6−ビス(トリメチルスズ)−4,8−ジドデシルオキシベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェンを221mg(Journal of the American Chemical Society,2009,vol.131,p.7792を参考に合成、0.25mmol)とを20mlの無水トルエンに溶解させた。この溶液をアルゴンでパージした後、6.3mg(0.007mmol)のトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)と、16.7mg(0.055mmol)のトリス(o−トリル)ホスフィンとを加えた。この溶液をさらに15分間、アルゴンでパージした。その後、110〜120℃まで溶液を加熱し、72時間反応させた。さらにエンドキャップを行うため、2−トリブチルスズチオフェン(11mg、0.03mmol)を添加し、10時間還流した。さらに2−ブロモチオフェン(10mg、0.06mmol)を添加し、10時間還流した。反応完了後、メタノール(500ml)に再沈殿し、ろ取したポリマー生成物をソックスレー抽出により精製し、メタノールに再沈殿を行うことで110mgの純粋なポリマー(Mn=15,000)(例示化合物19)を得た。
[例示化合物31の合成]
化合物31−1を(J.Org.Chem.,2011,76(8),pp2426を参考として合成)195mg(0.25mmol)と、化合物13−3を200mg(0.25mmol)とをTHF 20mlおよびトルエン 20mlに溶解させた。さらに炭酸水素ナトリウム 360mgを純水 20mlに溶解させた溶液を加え、アルゴンで5分間の脱気を行ったのち、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムを4.0mg加え、110℃で3日間の還流を行った。さらにエンドキャップを行うため、フェニルボロン酸を10mg添加し、10時間還流した。次いで、ブロモベンゼン 10mgを添加し、さらに10時間還流した。反応完了後、メタノール(500ml)に再沈殿し、ろ取したポリマー生成物を、ソックスレー抽出により可溶成分を抽出し、メタノールに再沈殿を行うことで130mgの純粋なポリマー(Mn=50,000)(例示化合物31)を得た。
[例示化合物35の合成]
欧州特許第2128146号を参考として合成した2.5g(5mmol)の化合物35−1を窒素下で脱水テトラヒドロフラン(THF)50mlに溶解させ、−78℃で1.6M n−ブチルリチウム ヘキサン溶液を3.5ml(5.6mmol)滴下して30分間撹拌を行った後、塩化トリブチルスズ2.1g(6.5mmol)を加え、さらに30分間撹拌を行った後、室温まで昇温させて一昼夜撹拌を行った。反応終了後、酢酸エチルと水を加えて水洗し、有機相を抽出後に硫酸マグネシウムを加えて乾燥し、溶媒を留去した。この粗製物を、事前にトリエチルアミンで処理を行ったシリカゲルによってカラムクロマトグラフィーを行う(ヘプタン:酢酸エチル=10:0〜9:1(体積比))ことにより、化合物35−2を2.7g(3.8mmol)得た(収率76%)。
次いで例示化合物35−2を2.7g(3.8mmol)と、ジブロモ−ナフト [1,2−c:5,6−c]ビス[1,2,5]チアジアゾールを400mg(Journal of the American Chemical Society,2011,vol.133,p.9638を参考として合成、1.0mmol)と、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウムを116mg(0.1mmol)とを脱水トルエン20mlに溶解させ、110℃で8時間反応を行った。反応終了後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘプタン:トルエン=10:0〜8:2(体積比))で精製し、化合物35−3を360mg(0.33mmol)得た(収率33%)。
ついで化合物35−3を360mg(0.33mmol)と、Nブロモスクシンイミド(NBS)を133mg(0.75mmol)を塩化メチレン30mlおよび酢酸30mlの混合溶媒に加えて室温で一昼夜撹拌した。反応終了後、食塩水を加えて水洗し、有機相を抽出して硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去した。ついでシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘプタン:トルエン=10:0〜8:2(体積比))で精製し、化合物35−3を350mg(0.28mmol)得た(収率85%)。
ついで、上記化合物35−3 310mg(0.25mmol)と、2,6−ビス(トリメチルスズ)−ビチオフェンを123mg0.25mmol)とを20mlの無水トルエンに溶解させた。この溶液をアルゴンでパージした後、6.3mg(0.007mmol)のトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)と、16.7mg(0.055mmol)のトリス(o−トリル)ホスフィンとを加えた。この溶液をさらに15分間、アルゴンでパージした。その後、110〜120℃まで溶液を加熱し、72時間反応させた。さらにエンドキャップを行うため、2−トリブチルスズチオフェン(11mg、0.03mmol)を添加し、10時間還流した。さらに2−ブロモチオフェン(10mg、0.06mmol)を添加し、10時間還流した。反応完了後、メタノール(500ml)に再沈殿し、ろ取したポリマー生成物をソックスレー抽出により精製し、メタノールに再沈殿を行うことで210mgの純粋なポリマー(Mn=31,000)(例示化合物35)を得た。
[例示化合物37の合成]
上記化合物35−4 310mg(0.25mmol)と、化合物37−1 255mg(国際公開第2011/085004号を参考として合成、0.25mmol)とを20mlの無水トルエンに溶解させた。この溶液をアルゴンでパージした後、6.3mg(0.007mmol)のトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)と、16.7mg(0.055mmol)のトリス(o−トリル)ホスフィンとを加えた。この溶液をさらに15分間、アルゴンでパージした。その後、110〜120℃まで溶液を加熱し、72時間反応させた。さらにエンドキャップを行うため、2−トリブチルスズチオフェン(11mg、0.03mmol)を添加し、10時間還流した。さらに2−ブロモチオフェン(10mg、0.06mmol)を添加し、10時間還流した。反応完了後、メタノール(500ml)に再沈殿し、ろ取したポリマー生成物をソックスレー抽出により精製し、メタノールに再沈殿を行うことで300mgの純粋なポリマー(Mn=25,000)(例示化合物37)を得た。
[例示化合物45の合成]
化合物45−1を480mg(Journal of the American Chemical Society,2011,vol.133,p.4625を参考に合成、1mmol)と、アルドリッチ社製2−トリブチルスタンニルオキサゾールを1.43g(4mmol)と、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウムを116mg(0.1mmol)とを脱水トルエン20mlに溶解させ、110℃で10時間反応を行った。反応終了後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘプタン:トルエン=10:0〜8:2(体積比))で精製し、化合物45−2を335mg(0.73mmol)得た(収率73%)。
ついで化合物45−2を335mg(0.73mmol)と、Nブロモスクシンイミド(NBS)を300mg(1.7mmol)とを塩化メチレン30mlおよび酢酸30mlの混合溶媒に加えて室温で一昼夜撹拌した。反応終了後、食塩水を加えて水洗し、有機相を抽出して硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去した。ついでシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘプタン:トルエン=10:0〜8:2(体積比))で精製し、化合物45−3を385mg(0.63mmol)得た(収率86%)。
ついで、上記化合物7−3 155mg(0.25mmol)と、2,6−ビス(トリメチルスズ)−4,8−ジ(2−ブチルオクチルオキシ)ベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェンを220mg(Journal of the American Chemical Society,2009,vol.131,p.7792を参考に合成、0.25mmol)とを20mlの無水トルエンに溶解させた。この溶液をアルゴンでパージした後、6.3mg(0.007mmol)のトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)と、16.7mg(0.055mmol)のトリス(o−トリル)ホスフィンとを加えた。この溶液をさらに15分間、アルゴンでパージした。その後、110〜120℃まで溶液を加熱し、72時間反応させた。さらにエンドキャップを行うため、2−トリブチルスズチオフェン(11mg、0.03mmol)を添加し、10時間還流した。さらに2−ブロモチオフェン(10mg、0.06mmol)を添加し、10時間還流した。反応完了後、メタノール(500ml)に再沈殿し、ろ取したポリマー生成物をソックスレー抽出により精製し、メタノールに再沈殿を行うことで140mgの純粋なポリマー(Mn=18,000)(例示化合物45)を得た。
<逆層型の有機光電変換素子の作製>
国際公開2008−134492号パンフットの記載を参考に、以下のようにして逆層型の有機光電変換素子を作製した。
[比較例1]
PET基板上に、第一の電極(陰極)としてインジウムスズ酸化物(ITO)透明導電膜150nm堆積したもの(シート抵抗12Ω/square cm2)を、通常のフォトリソグラフィ技術と湿式エッチングとを用いて10mm幅にパターニングし、第一の電極を形成した。パターン形成した第一の電極を、界面活性剤と超純水による超音波洗浄、超純水による超音波洗浄の順で洗浄後、窒素ブローで乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行った。これ以降は基板をグローブボックス中に持ち込み、窒素雰囲気下で作業した。
この第一の電極上に、Aldrich社製3−(2−アミノエチル)−アミノプロピルトリメトキシシランの0.05質量%メトキシエタノール溶液を、乾燥膜厚が約5nmになるようにブレードコーターを用いて塗布乾燥した。その後、ホットプレート上で120℃1分間の加熱処理をして、電子輸送層を製膜した。
次いで、o−ジクロロベンゼンに、p型有機半導体材料である比較化合物1(特許文献2:米国特許出願公開第2011/0209762号明細書に基づいて合成)を0.8質量%、n型有機半導体材料であるPC60BM(フロンティアカーボン製nanom spectra E100H)を1.6質量%で混合した溶液を調製し(p型有機半導体材料:n型有機半導体材料=33:67(質量比))、オーブンで110℃に加熱しながら一昼夜撹拌して溶解した後、乾燥膜厚が約200nmになるように基板温度を80℃に保持したブレードコーターを用いて塗布し、そのまま80℃で2分間乾燥して、光電変換層を製膜した。
光電変換層の乾燥完了後、再び大気(air)下に取り出し、次いで正孔輸送層として、導電性高分子及びポリアニオンからなるPEDOT−PSS(CLEVIOS(登録商標) P VP AI 4083、ヘレオス株式会社製、導電率:1×10−3S/cm)を等量のイソプロパノールで希釈した液を調製し、乾燥膜厚が約30nmになるようにブレードコーターを用いて塗布乾燥した。その後、90℃の温風で20秒間加熱処理して、有機物からなる正孔輸送層(有機材料層)を形成した。なお塗布時の大気の温度・湿度は23℃65%であった。
次に、10mm幅のシャドウマスクが透明電極と直交するように素子をセットし、1×10−3Pa以下にまで真空蒸着装置内を減圧した後、蒸着速度0.5nm/秒でAgメタルを200nm積層して、第二の電極(陽極)を形成した。
得られた積層体を窒素チャンバーに移動し、住友3M社製のUBF−9L(水蒸気透過率5.0×10−4g/m2/d)の間に挟みこみ、接着剤としてのUV硬化樹脂(ナガセケムテックス株式会社製、UV RESIN XNR5570−B1)を用いて封止を行った後に大気下に取り出し、受光部が約10×10mmサイズの有機光電変換素子1を得た。
また、光電変換層を作成後、窒素雰囲気下のグローブボックス(N2)(酸素濃度10ppm、露点温度−80℃)から取り出すことなく、そのままグローブボックス内で正孔輸送層の形成を形成したことを除いては、同様の方法で逆層型の有機光電変換素子の作製を行った。
[比較例2、3]
光電変換層の形成において、p型有機半導体として比較化合物2(特許文献3:米国特許出願公開第2011/0215313号明細書に基づいて合成)または比較化合物3(特許文献4:米国特許出願公開第2010/0252112号明細書に基づいて合成)をそれぞれ用いたことを除いては、上記比較例1と同様の方法で、逆層型の有機光電変換素子を作製した。
[実施例1〜9]
光電変換層の形成において、p型有機半導体として下記表1に記載の化合物をそれぞれ用いたことを除いては、上記比較例1と同様の方法で、逆層型の有機光電変換素子を作製した。
<順層型の有機光電変換素子の作製>
[化合物P(電子輸送材料)の合成]
下記反応により、化合物Pを合成した。
Adv.Mater.2007,19,2010を参考として、ポリ(9,9−ビス(6−ブロモヘキシル)−4,7−フルオレン)を合成した。この化合物の重量平均分子量は4400であった。この化合物1.0gおよび3,3’−イミノビス(N,N−ジメチルプロピルアミン)(アルドリッチ社製)9.0gを、テトラヒドロフラン100mlおよびN,N−ジメチルホルムアミド100mlの混合溶媒に溶解し、室温(25℃)で48時間撹拌して、反応を行った。反応終了後、溶媒を減圧留去し、さらに水に再沈殿を行うことで、化合物Pを1.3g得た(収率90%)。得られた化合物について、H−NMRによって構造を特定した。結果を下記に示す。7.6〜8.0ppm(br),2.88ppm(br),2.18ppm(m),2.08ppm(s),1.50ppm(m),1.05ppm(br)。
[実施例10]
PET基板上に、第一の電極(陽極)としてインジウムスズ酸化物(ITO)透明導電膜150nm堆積したもの(シート抵抗12Ω/square)を、通常のフォトリソグラフィ技術と湿式エッチングとを用いて10mm幅にパターニングし、第一の電極を形成した。パターン形成した第一の電極を、界面活性剤と超純水による超音波洗浄、超純水による超音波洗浄の順で洗浄後、窒素ブローで乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行った。次いで、正孔輸送層として、導電性高分子及びポリアニオンからなるPEDOT−PSS(CLEVIOS(登録商標) P VP AI 4083、ヘレオス株式会社製、導電率:1×10−3S/cm)を2.0質量%で含むイソプロパノール溶液を調製し、乾燥膜厚が約30nmになるように、基板を65℃に調温したブレードコーターを用いて塗布乾燥した。その後、120℃の温風で20秒間加熱処理して、正孔輸送層を上記第一の電極上に製膜した。これ以降は基板をグローブボックス中に持ち込み、窒素雰囲気下で作業した。
まず、窒素雰囲気下で上記基板を120℃で3分間加熱処理した。
次いで、o−ジクロロベンゼンに、p型有機半導体材料として前記例示化合物37を0.8質量%、n型有機半導体材料であるPC60BM(フロンティアカーボン製nanom spectra E100H)を1.6質量%混合した有機光電変換材料組成物溶液を調製し(p型有機半導体材料:n型有機半導体材料=33:67(質量比))、ホットプレートで100℃に加熱しながら撹拌(60分間)して完全に溶解した後、乾燥膜厚が約170nmになるように、基板を40℃に調温したブレードコーターを用いて塗布し、120℃で2分間乾燥して、光電変換層を上記正孔輸送層上に製膜した。
続いて、前記化合物Pを、それぞれ、0.02質量%になるように1−ブタノール:ヘキサフルオロイソプロパノール=1:1の混合溶媒に溶解して溶液を調製した。この溶液を、乾燥膜厚が約5nmになるように、基板を65℃に調温したブレードコーターを用いて塗布乾燥した。その後、100℃の温風で2分間加熱処理して、電子輸送層を上記光電変換層上に製膜した。
次に、上記電子輸送層を製膜した基板を真空蒸着装置内に設置した。そして、10mm幅のシャドウマスクが透明電極と直交するように素子をセットし、10−3Pa以下にまでに真空蒸着機内を減圧した後、蒸着速度で2nm/秒で銀を、それぞれ、100nm蒸着して、第二の電極(陰極)を上記電子輸送層上に形成した。
得られた有機光電変換素子を窒素チャンバーに移動し、2枚の3M製Ultra Barrier Solar Film UBL−9L(水蒸気透過率<5×10−4g/m2/d)の間に挟みこみ、接着剤としてのUV硬化樹脂(ナガセケムテックス株式会社製、UV RESIN XNR5570−B1)を用いて封止を行った後、大気下に取り出し、受光部が約10×10mmサイズの有機光電変換素子13を作製した。
<有機光電変換素子の評価>
(移動度の評価)
<正孔移動度の測定>
熱酸化によって形成された厚さ230nmの酸化珪素膜を有する、比抵抗0.02Ω・cmのn型Siウェハー上に、厚さ100nmのAuから形成される、W=1000μm、L=10μmの形状のトソース・ドレイン電極パターンを形成した。
上記のソース・ドレイン電極パターンを有する基板を、アセトン・イソプロパノールで洗浄した後、SAMCO製UVオゾンクリーナーUV−1を使用し、70℃10分間のドライ洗浄を行った。
ついでソース・ドレイン電極上にペンタフルオロベンゼンチオール(以下、「PFBT」と略すこともある)からなる単分子膜を、PFBTの0.1Mエタノール溶液に2分間浸漬したのち、エタノールで数回洗浄を行うことで形成した。
次いで、上記の基板上に、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)を4000rpmで30秒間スピンコートし、90℃で90秒間乾燥した後、トルエンで洗浄を行い、酸化ケイ素膜表面にHMDSからなる単分子膜を形成した。
次に、比較化合物および本発明の例示化合物(有機半導体材料)を、それぞれ、ジクロロベンゼンに0.5質量%の濃度で溶解し、この溶液を、上記で形成された単分子膜上に、1000rpmで30秒間スピンコートし、有機半導体層を形成した。
各有機半導体材料について、各有機薄膜トランジスタを用いて、アジレントテクノロジーズ製半導体パラメータ測定装置B1500を使用して、ドレインバイアスを−80V、ゲートバイアスを0Vから−80Vまで掃引したときのI−V特性から正孔移動度を算出し、4個の素子についての平均値を算出し、有機半導体材料のキャリア移動度とした。
(開放電圧、曲線因子、および光電変換効率の評価)
上記実施例1〜10および比較例1〜3で得た有機光電変換素子を、それぞれエポキシ樹脂とガラスキャップとで封止した。これにソーラーシミュレーター(AM1.5Gフィルタ)を用いて100mW/cm2の強度の光を照射し、有効面積を1cm2にしたマスクを受光部に重ね、IV特性を評価することで、短絡電流密度Jsc(mA/cm2)、開放電圧Voc(V)、および曲線因子FF測定した。得られたJsc、Voc、およびFFの値から、下記式1に従って光電変換効率η[%]を算出した。結果を表1に示す。
(耐久性評価)
上記実施例1〜10および比較例1〜3で得た各有機光電変換素子を、温度80℃、湿度80%に保持した容器内に保存し、定期的に取り出してIV特性を測定し、初期の光電変換効率を100として、初期の効率の80%まで低下した時間をLT80[時間]として評価した。LT80の値が大きいほど、耐久性が良好であることを意味する。結果を表1に示す。
表1の結果より、本発明の共役系高分子化合物を用いた実施例は、比較例と比べてp型有機半導体層の移動度が良好であり、かつ高い光電変換効率ηが得られることが示された。また、素子の耐久性評価については、いずれの実施例も、比較例よりも著しく耐久性が向上した。
さらに、逆層構成の有機光電変換素子に置いて、本発明の化合物はより耐久性が高い有機薄膜太陽電池が得られることもことが示された。