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JP5835079B2 - フェライト系耐熱鋼の製造方法 - Google Patents

フェライト系耐熱鋼の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、フェライト系耐熱鋼の製造方法に関し、詳しくは、高温強度に優れたCr含有量が8〜10%のフェライト系耐熱鋼の製造方法に関する。なお、本発明における「フェライト系耐熱鋼」とは、金属組織がいわゆる「焼戻しマルテンサイト組織」を主体とする、すなわち、「焼戻しマルテンサイト」が面積割合で金属組織の80%以上である耐熱鋼を指す。本発明において、「フェライト鋼」という場合の金属組織も同様である。
近年、火力発電プラント等において、蒸気の温度と圧力をより高めた運転が増加する状況にあり、こうした蒸気の高温・高圧化によって、ボイラ管等の構成素材である耐熱鋼に対しても、より高い性能が求められている。
ボイラ管等に用いられる耐熱鋼としては、例えば、2.25%Cr−1%Mo鋼等の低合金鋼、Cr含有量が5〜13%のフェライト系耐熱鋼およびオーステナイト系耐熱鋼等が知られている。
上記のうちで、2.25%Cr−1%Mo鋼は、Cr含有量が5〜13%のフェライト系耐熱鋼やオーステナイト系耐熱鋼に比べて高温強度およびクリープ破断強度が低く、耐水蒸気酸化特性も550℃を超える環境では不十分である。
オーステナイト系耐熱鋼は、600℃以上の高温においても優れた高温強度およびクリープ破断強度を有し、耐水蒸気酸化性も比較的良好である。しかしながら、熱膨張率が大きいことや応力腐食割れを生じる虞があることに加えて、高価でもある。
一方、Cr含有量が5〜13%のフェライト系耐熱鋼(以下、単に「Cr系フェライト鋼」ということがある。)は、固溶強化や析出強化を利用して高温特性を確保するものであり、例えば、9%Cr−1%Mo鋼、改良9%Cr−1%Mo鋼および12%Cr鋼は、600℃以上の温度においてもオーステナイト系耐熱鋼に匹敵する高温強度とクリープ破断強度を有することが知られており、蒸気条件が600℃前後の超超臨界圧ボイラにも用いられている。
しかしながら、地球環境問題から、さらなる高温・高圧化の環境で使用できる耐熱鋼が求められている。そして、上記のCr系フェライト鋼を、蒸気温度が600℃を超える超超臨界圧ボイラに適用できるように改良する動きもある。さらに、ボイラだけではなく、原子力プラント、化学工業プラント等における耐熱材料として用いるためにも、Cr系フェライト鋼の高性能化に対する期待は大きい。
Cr系フェライト鋼の耐熱特性を高める技術としては、B、W、Mo等の添加もしくはNbとVの複合添加等の合金組成に着眼したもの、または結晶粒度に着眼したもの等が知られており、例えば、特許文献1には、W、Mo、V、NbおよびBを含むフェライト系耐熱鋼が開示されている。WおよびMoには固溶強化作用が、NbおよびVには析出強化作用が、Bにはクリープ強度向上作用がある。
他方、Cr系フェライト鋼の加工熱処理も検討され、例えば、特許文献2および特許文献3には、5〜13%のCrを含有する鋼の最終熱間加工において、鋼材を900〜1300℃に特定時間保持した後、熱間加工し、急冷する工程を含む加工熱処理方法が開示されている。ただし、これらの特許文献で開示された加工熱処理技術は、当時の「従来の技術」である熱間加工後の再加熱による焼準を行う方法の工程合理化とコスト低減を意図したものでしかない。特許文献4にも、特許文献2および特許文献3と類似の目的を有する技術が開示されている。
一方、オーステナイト系ステンレス鋼あるいはオーステナイト系合金に関しては、従来、加工熱処理を用いて強度等の特性の向上を図ることが行われている。
例えば、特許文献5に、NおよびNbを含有する低Cの18Cr−8Ni型オーステナイトステンレス鋼に加工熱処理を施し、微細結晶組織でかつ降伏強さの高いオーステナイトステンレス鋼を得る技術が開示されている。
特許文献6には、オーステナイトステンレス鋼のオーステナイト組織安定化および高温強度安定化のために、熱間加工あるいは固溶化熱処理後、50℃を超え、600℃以下の温度域で仕上げ加工を行なう、オーステナイトステンレス鋼の加工熱処理法が開示されている。
さらに、オーステナイト系ステンレス鋼あるいはオーステナイト系合金に関しては、加工熱処理によって粒界構造を制御し、より望ましい特性を達成しようとする技術も提案されている。
例えば、特許文献7には、双晶発生頻度(変形双晶の発生した結晶粒の割合)が70%以上の組織とすることによって、耐応力腐食割れ性耐および耐水素脆化割れ性に優れた高Ni基合金を得る技術が開示されている。
また、特許文献8には、加工度5〜30%の冷間加工工程および900〜1050℃の温度で2〜10分のアニール(焼なまし)工程を繰り返すことにより、“特殊”粒界フラクション(“特殊”粒界割合)を60%以上に増加させることで、オーステナイトステンレス合金に良好な耐粒界劣化性を具備させる技術が開示されている。
特開平4−354856号公報 特開昭64―39323公報 特開平1―139717号公報 特開平2―138417号公報 特開昭54−51923号公報 特開昭61−270332号公報 特開平7−3368号公報 国際公開第94/14986号
上述のとおり、オーステナイト系ステンレス鋼あるいはオーステナイト系合金の場合には、粒界構造の制御も含め、より優れた特性を得ることを意図して、積極的に加工熱処理を適用することが提案されている。
これに対して、Cr系フェライト鋼の場合には、加工熱処理の目的は、単なる工程合理化とコスト低減であり、より優れた特性を得るために積極的に加工熱処理を適用するというものではない。
本発明は、上記現状に鑑みてなされたもので、その目的は、Cr系フェライト鋼、なかでもCr含有量が8〜10%のフェライト系耐熱鋼に、より優れた高温強度を具備させることができる製造方法を提供することである。
フェライト鋼は、高温域でオーステナイトに変態する。そこで、本発明者らは、Cr含有量が8〜10%のフェライト系耐熱鋼により優れた高温強度を具備させるために、オーステナイト温度領域において、熱処理と熱間加工を組み合わせて種々の条件で加工熱処理を行った。その結果、下記(a)〜(c)の知見を得た。
(a)Cr含有量が8〜10%のフェライト系耐熱鋼に対して、焼戻しの前に、次に述べる一連の工程を連続して実施すると、従来の製品に比べて高温強度が改善する。
・上記フェライト系耐熱鋼をオーステナイト温度域に加熱する。
・オーステナイト温度域で特定の範囲の圧下率で熱間加工を施す。
・上記熱間加工を施した後、直ちに、再び適切な熱処理および冷却を実施する。
(b)上記熱間加工の圧下率が15〜30%のときに、高温強度の増加が最も著しくなる。
(c)Cr含有量が8〜10%のフェライト系耐熱鋼においては、上記(b)の熱間加工を施した際に、粒界移動のための駆動力が蓄積されるものと推定される。そして、(b)の熱間加工後、直ちに加熱を行いその後冷却を行う場合には、対応粒界よりも安定性が高いと推定される低角粒界の頻度が顕著に増加しており、これが高温強度の向上に寄与していると考えられる。
本発明は、上記の知見に基づいて完成されたものであり、その要旨は、下記(1)〜(3)に示すフェライト系耐熱鋼の製造方法にある。
(1)質量%で、C:0.05〜0.35%、Si:0.05〜0.60%、Mn:0.10〜0.80%、Cr:8〜10%、Mo:0.60〜1.50%、W:0.01〜2.5%、V:0.10〜0.30%、Nb:0.01〜0.12%、Al:0.02%以下、N:0.015〜0.080%およびCu:0.20%以下を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、不純物中のP、SおよびNiがそれぞれ、P:0.020%以下、S:0.010%以下およびNi:0.40%以下であるフェライト系耐熱鋼を、950〜1200℃に加熱し、オーステナイト温度域で1〜30%の圧下率で熱間加工した後、直ちに、900〜1200℃の温度域で20分以上保持して冷却し、その後、Ac1点以下の温度で焼戻しを行うことを特徴とする、フェライト系耐熱鋼の製造方法。
(2)オーステナイト温度域での熱間加工前に、鋼を950〜1200℃の温度範囲で保持する工程を含む上記(1)に記載のフェライト系耐熱鋼の製造方法。
(3)熱間加工における圧下率が15〜30%の範囲である上記(1)または(2)に記載のフェライト系耐熱鋼の製造方法。
本発明の製造方法によれば、Cr含有量が8〜10%の、優れた高温強度を備えるフェライト系耐熱鋼を得ることができる。
以下、本発明の各要件について詳しく説明する。なお、以下の説明における各元素の含有量の「%」表示は「質量%」を意味する。
(A)鋼の化学組成:
Cr:8〜10%
本発明の製造方法においては、Crを8〜10%含有するフェライト鋼を、焼戻しの前に行う一連の加工熱処理の素材鋼として用いる必要がある。すなわち、Crは、高温における耐食性や耐酸化性、特に、耐水蒸気酸化特性を確保するために不可欠な元素である。さらに、Crは、炭化物を形成してクリープ強度の向上にも寄与する。これらの効果は、Cr含有量が8%以上で安定して得られる。しかしながら、Cr含有量が過剰になるとδフェライトを形成して靱性を低下させるとともに、M236型炭化物の析出とその粗大化により、クリープ強度の低下を招く場合がある。このため、上限を設けて、Crの含有量を8〜10%とする。好ましいCr含有量は、8.3〜9.7%であり、さらに好ましくは8.6〜9.5%である。
本発明の製造方法で素材鋼として用いる鋼は、Crを8〜10%含有するフェライト鋼でありさえすればよい。すなわち、本発明の製造方法で素材鋼として用いる鋼は、Cr含有量が8〜10%のフェライト鋼であることを除き、その化学組成は必ずしも限定されるものではない。
なお、ボイラ等の耐熱鋼用途を想定した場合の好ましいフェライト鋼としては、上記の量のCrの他に、例えば、C:0.05〜0.35%、Si:0.05〜0.60%、Mn:0.10〜0.80%、Mo:0.60〜1.50%、W:0.01〜2.5%、V:0.10〜0.30%、Nb:0.01〜0.12%、Al:0.02%以下、N:0.015〜0.080%およびCu:0.20%以下を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、不純物中のP、SおよびNiがそれぞれ、P:0.020%以下、S:0.010%以下およびNi:0.40%以下であるフェライト鋼が挙げられる。
以下、ボイラ等の耐熱鋼用途を想定した場合の好ましいフェライト鋼における上記CからNiまでの元素について説明する。
C:0.05〜0.35%
Cは、焼入れ性を向上し、強度を確保する作用を有し、その含有量が0.05%以上で上記の作用が安定して得られる。一方、Cの含有量が0.35%を超えると、靱性が低下する傾向がみられる。したがって、Cの含有量は、0.05〜0.35%とすることが好ましい。なお、溶接性を重視する場合は、Cの含有量は0.20%以下にすることが好ましい。より好ましいCの含有量は0.07〜0.20%であり、さらに好ましくは0.08〜0.13%である。
Si:0.05〜0.60%
Siは、脱酸効果を有する元素であり、その含有量が0.05%以上で上記の効果が安定して得られる。一方、Si含有量が過剰になって、0.60を超えると靱性の低下を招く場合がある。したがって、脱酸作用および靱性の確保の点から、Siの含有量は0.05〜0.60%とすることが好ましい。より好ましいSiの含有量は、0.15〜0.50%である。
Mn:0.10〜0.80%
Mnは、脱酸作用および焼入性を確保する作用を有し、その含有量が0.10%以上で上記の作用が安定して得られる。一方、Mnの含有量量が0.80%を超えると、靱性、クリープ強度等の低下を引き起す場合がある。したがって、Mnの含有量は0.10〜0.80%とすることが好ましい。より好ましいMnの含有量は0.15〜0.75%であり、さらに好ましくは0.25〜0.65%である。
Mo:0.60〜1.50%
Moは、固溶強化元素としてクリープ強度の向上に寄与するとともに、Cr炭化物中に一部固溶して、炭化物の凝集と粗大化を抑制してクリープ強度の向上に寄与する。さらに、Moは、焼戻し脆化防止の効果も有する。これらの効果は、Moの含有量が0.60%以上で安定して得られる。一方、Moの含有量が1.50%を超えると、δフェライトが生成して、クリープ強度が低下する場合がある。したがって、Moの含有量は0.60〜1.50%とすることが好ましい。Moの含有量は、より好ましくは0.75〜1.20%であり、さらに好ましくは0.85〜1.15%である。
W:0.01〜2.5%
Wは、Moと同様に、高温強度向上および焼戻し脆化防止の効果を有する。これらの効果は、Wの含有量が0.01%以上で安定して得られる。一方、2.5%を超える多量のWを含有すると、靱性が低下したり、δフェライトの生成によるクリープ強度の低下が生じたりする場合がある。したがって、Wの含有量は0.01〜2.5%とすることが好ましい。
なお、δフェライトの生成を抑制するために、MoとWの含有量は、「Mo+0.5W」で1.5%以下にすることが望ましい。
V:0.10〜0.30%
Vは、焼戻しの工程で結晶粒内に微細な炭化物を析出させ、高温強度と靱性を確保するのに有効な元素であり、その含有量が0.10%以上で上記の作用が安定して得られる。一方、Vを0.30%を超えて含有させても効果が飽和してコストが嵩んでしまう場合がある。したがって、Vの含有量は、0.10〜0.30%とすることが好ましい。Vの含有量は、より好ましくは0.15〜0.28%であり、さらに好ましくは0.18〜0.27%である。
Nb:0.01〜0.12%
Nbは、炭窒化物として析出し、強度を高めるのに有効な元素であり、その含有量が0.01%以上で上記の作用が安定して得られる。一方、0.12%を超える量のNbを含有すると、δフェライトの生成を促進し、長時間クリープ強度の低下を招くことがある。したがって、Nbの含有量は0.01〜0.12%とすることが好ましい。より好ましいNbの含有量は0.03〜0.08%である。
Al:0.02%以下
Alは、脱酸作用を有するが、その含有量が、0.02%を超えると、クリープ強度の低下を生じやすくなる場合がある。したがって、Alの含有量は0.02%以下とすることが好ましい。Alの含有量が0.005%以上であると、脱酸作用が安定して得られるので、Alの含有量は0.005〜0.02%とすることがより好ましい。なお、本発明における上記のAl含有量は、sol.Al(酸可溶Al)の量である。
N:0.015〜0.080%
Nは、クリープ破断強度を確保し、δフェライトの生成を防止する上で効果があり、その含有量が0.015%以上で上記の効果が安定して得られる。しかしながら、Nの含有量が0.080%を超えると、靱性の低下あるいはクリープ破断強度の低下を生じる場合がある。したがって、Nの含有量は0.015〜0.080%とすることが好ましい。Nの含有量は、より好ましくは0.020〜0.070%であり、さらに好ましくは0.025〜0.060%である。
Cu:0.20%以下
Cuは、耐酸化性を改善する作用を有するが、その含有量が0.20%を超えると、靱性および熱間加工性が損なわれる場合がある。したがって、Cuの含有量は0.20%以下とすることが好ましい。なお、Cuの含有量が0.05%以上であると、耐酸化性の改善作用が安定して得られるので、Cuの含有量は0.005〜0.20%とすることがより好ましい。
P:0.020%以下
Pは、不可避的不純物であり、良好な、熱間加工性、溶接性、クリープ強度、クリープ疲労強度等の確保の観点から、その含有量は0.02%以下とすることが好ましい。不純物中のPの含有量は、さらに好ましくは0.015%以下である。
S:0.010%以下
Sも不純物であり、良好な、熱間加工性、溶接性、クリープ強度、クリープ疲労強度等の確保の観点から、その含有量は0.010%以下とすることが好ましい。不純物中のSの含有量は、より好ましくは0.005%以下である。
Ni:0.4%以下
Niも、溶解原料からの混入を避けられない不純物であり、良好なクリープ強度確保の観点から、その含有量は0.4%以下とすることが好ましい。不純物中のNiの含有量は、より好ましくは0.2%以下であり、さらに好ましくは0.1%以下である。
(B)製造条件
本発明の製造方法においては、(A)項で述べたCrを8〜10%含有するフェライト鋼を、950〜1200℃に加熱し、オーステナイト温度域で30%以下の圧下率で熱間加工した後、直ちに、900〜1200℃の温度域で20分以上保持して冷却し、その後、焼戻しを行う必要がある。なお、「圧下率」とは断面減少率を指す。
以下、便宜のために、上述の本発明の製造方法において、オーステナイト温度域での熱間加工前の加熱を「1次加熱」、熱間加工後、直ちに行う900〜1200℃での20分以上の保持を「2次加熱」と称することがある。
本発明者らは、上記本発明の製造方法において、焼戻しの前に、1次加熱、熱間加工、2次加熱の一連の工程を連続して実施することで、粒界の移動が生じ、特に、低角粒界の頻度が増加するものと推定する。
ここで、「低角粒界」は、後述の「対応粒界」等とともに、結晶粒界の性格を示す用語である。
結晶粒界は、粒界をはさんで隣接する2つの結晶粒の結晶方位差によって、その角度が15°以下の「低角粒界(「小角粒界」とも称される。)」と、15°より大きい「大角粒界」に分けられる。
また、粒界での原子配列の規則性を示すために、粒界をはさんで隣接する2つの結晶粒の結晶格子が作る対応格子点の密度の逆数で定義される「Σ値」が用いられている。一般に、Σ値が小さいほど粒界での規則性の乱れが小さく、粒界エネルギーが低いと考えられている。一般に、大角粒界のうちで、上記のΣ値が29以下の粒界を「対応粒界」と称する。なお、上記大角粒界のうちの「対応粒界」と「低角粒界」とを除いた粒界は、「ランダム粒界」といわれる。
本発明の製造方法で素材鋼として用いるフェライト鋼は、通常の方法によって準備すれればよく、特段の制約はない。例えば、溶製後の鋳塊または鋳片を、分塊圧延あるいは鍛造等の熱間加工によって所定形状寸法とし、これを用いることができる。
本発明において、フェライト鋼の1次加熱は、炭化物等を固溶させる固溶化処理および素材鋼における前工程履歴による歪を除去する意義も有する。したがって、前記1次加熱前のフェライト鋼の製造工程上の履歴に関しては特段の制限はない。
ただし、1次加熱温度が950℃を下回ると、炭化物等の固溶化が十分に進行しない。一方、1次加熱温度が1200℃を超えると、δフェライトが生成して熱間での機械的特性が低下する。したがって、熱間加工前にフェライト鋼を、950〜1200℃に加熱することとした。なお、熱間加工前の1次加熱温度は、1000〜1150℃であることが好ましい。
さらに、炭化物等の固溶化処理の目的を安定して達成するために、950〜1200に加熱する熱間加工前の1次加熱においては、上記950〜1200℃の温度範囲で保持することが望ましい。上記の保持温度範囲は、1000〜1150℃であることがより好ましい。
そして、特に、加熱速度が大きい場合には、950〜1200℃の温度範囲一定の保持時間を確保することが望ましい。950〜1200℃の温度範囲で保持する時間は、20〜60分であることが望ましい。
上述のように、950〜1200℃に加熱され、好ましくは、さらに950〜1200℃で保持されたフェライト鋼を、オーステナイト温度域で熱間加工するが、その際の圧下率は30%以下とする必要がある。
これは、熱間加工の圧下率が30%を超えると、再結晶が起こりやすくなり、高温強度が向上しないからである。この原因は、熱間加工の圧下率が30%を超えると、低角粒界の頻度が減少するためと推定される。なお、上記の圧下率は1%以上であることが望ましく、15〜25%であればさらに望ましい。
本発明の製造方法においては、上記の950〜1200℃に加熱され、好ましくは、さらに950〜1200℃で保持され、オーステナイト温度域で30%以下の圧下率で熱間加工されたフェライト鋼は、低角粒界の頻度を増やすために、上記の熱間加工後、直ちに2次加熱、すなわち、900〜1200℃の温度域で20分以上の保持を施される。
2次加熱の温度が900℃を下回っても、あるいは1200℃を上回っても、低角粒界の頻度が増加しないので、高温強度が向上しない。また、たとえ2次加熱の温度が900〜1200℃であっても、保持時間が20分を下回ると、低角粒界の頻度が増加しないので、高温強度が向上しない。
上記の2次加熱を終えたフェライト鋼は、一旦冷却された後、焼戻しを施される。2次加熱後の冷却は、金属組織をマルテンサイトを主体とした組織、具体的には、マルテンサイトが面積割合で80%以上である組織にするために、800〜500℃の範囲を8℃/分以上の冷却速度で行うことが望ましい。冷却速度が小さい場合は、フェライトが生じて高温強度が低下する場合がある。
なお、マルテンサイトは転位密度が高く、高温で組織安定性に欠けるので、焼戻しを行う。焼戻し温度がAc1点を超えると、オーステナイトへの逆変態が生じるので、焼戻しはAc1点以下の温度で行う。
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
表1に示す化学組成を有する鋼を溶製後、通常の方法で熱間鍛造し、次いで、1000℃で45分の固溶化処理をした鋼板から、100mm×100mm×200mmのブロックを採取して供試材として用いた。なお、上記鋼のAc1点はおよそ820℃であり、また、オーステナイトへの逆変態が完了する温度(Ac3点)はおよそ920℃である。
Figure 0005835079
上記100mm×100mm×200mmのブロックを、表2に示す加熱温度にて45分加熱した後、直ちに、オーステナイト温度域にて1〜35%の圧下率の熱間圧延を施し、引き続いて、2次加熱として表2に示す温度で20〜60分保持する一連の工程からなる加工熱処理を行い、さらに770℃で60分焼戻しして鋼板を得た(試験番号2〜19)。
なお、特性調査の基準として、上記サイズのブロックに加工熱処理を施すことなく770℃で焼戻ししたものを用いた(試験番号1)。
このようにして得た各鋼板およびブロックの長手方向から、直径が6mmで標点間距離が60mmの試験片を採取して、歪速度が、0.001/秒および0.00001/秒の2条件で、600℃での引張試験を行い、高温強度特性を調査した。
なお、焼戻しによって、供試材の粒界構造が変わることはないと考えられるので、加工熱処理を行わなかった試験番号1ならびに、加工熱処理を行ったうちで試験番号2、4、7、10、15および18の合計7条件については、上記770℃での焼戻しを行う前の状態で、走査電子顕微鏡(以下「SEM」という。)で電子線後方散乱回折(以下、「EBSD」という。)を用いて、粒界構造の解析を行った。
具体的には、Hitachi FEG−SEM(S−4200)を用いて、加速電圧30kV、ビーム電流8μA、0.25μmのステップ条件で実施した。
なお、EBSD観察のための試料は、酢酸と過塩素酸を77:23の比率で混合した溶液を用いて電解研磨し、予め試料表面の歪を除去した。
また、解析に当たっては結晶解析ソフトウエア“TSL OIM analysis 5.2”を用いた。
表2に、上記の引張試験の結果を併せて示す。なお、表2において高温強度特性は、0.2%耐力(σ0.2)を600℃のヤング率(以下、「E」で表す。)で除した数値を[a](歪速度が0.001/秒の場合)および[b](歪速度が0.00001/秒の場合)として示した。また、各試験番号についての[a]と[b]をそれぞれ、試験番号1の[a]と[b]で除した数値も示した。ここで、600℃のEは、常温から550℃における測定から外挿して求めた値の「1400GPa」を用いた。
また、表3に、上記粒界構造の解析結果を、加工熱処理および焼戻しの条件とともに示す。
Figure 0005835079
Figure 0005835079
表2から、本発明の製造方法で規定する条件から外れた試験番号17〜19の場合、加工熱処理を行わないで焼戻しした基準の試験番号1に比べて、高強度の向上は認められない。
これに対して、本発明の製造方法で規定する条件を満たす試験番号2〜16の場合には、優れた高温強度が得られることが明らかである。なお、本発明例の場合には、歪速度が小さい場合に、より一層顕著な高温強度の向上が認められる。
本発明の製造方法によれば、Cr含有量が8〜10%の、優れた高温強度を備えるフェライト系耐熱鋼を得ることができる。

Claims (3)

  1. 質量%で、C:0.05〜0.35%、Si:0.05〜0.60%、Mn:0.10〜0.80%、Cr:8〜10%、Mo:0.60〜1.50%、W:0.01〜2.5%、V:0.10〜0.30%、Nb:0.01〜0.12%、Al:0.02%以下、N:0.015〜0.080%およびCu:0.20%以下を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、不純物中のP、SおよびNiがそれぞれ、P:0.020%以下、S:0.010%以下およびNi:0.40%以下であるフェライト系耐熱鋼を、950〜1200℃に加熱し、オーステナイト温度域で1〜30%の圧下率で熱間加工した後、直ちに、900〜1200℃の温度域で20分以上保持して冷却し、その後、Ac1点以下の温度で焼戻しを行うことを特徴とする、フェライト系耐熱鋼の製造方法。
  2. オーステナイト温度域での熱間加工前に、鋼を950〜1200℃の温度範囲で保持する工程を含む請求項1に記載のフェライト系耐熱鋼の製造方法。
  3. 熱間加工における圧下率が15〜30%の範囲である請求項1または2に記載のフェライト系耐熱鋼の製造方法。
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