以下、本発明に係る各実施形態について図面を参照して説明する。
「第1実施形態」
本発明に係る第1実施形態を図1〜図6に基づいて説明する。以下の説明では理解を助けるために、図の下側を一方側とし、逆に図の上側を他方側として定義する。
第1実施形態の緩衝器は、図1に示すように、いわゆるモノチューブ式の油圧緩衝器で、作動流体としての油液が封入される有底円筒状のシリンダ10を有している。シリンダ10内には、ピストン11が摺動可能に嵌装され、このピストン11により、シリンダ10内が上室12および下室13の2室に区画されている。ピストン11は、ピストン本体14と、その外周面に装着される円環状の摺動部材15とによって構成されている。
ピストン11は、ピストンロッド16の一端部に連結されており、ピストンロッド16の他端側は、シリンダ10の開口側に装着されたロッドガイド17およびオイルシール18等に挿通されてシリンダ10の外部へ延出されている。シリンダ10の開口側は内側に加締められており、これによりオイルシール18およびロッドガイド17を係止している。
ピストンロッド16は、シリンダ10内への挿入先端側に、ピストン11が取り付けられる取付軸部20が形成されており、他の部分が取付軸部20よりも大径の主軸部21となっている。取付軸部20には、主軸部21とは反対側の外周側にオネジ19が形成されている。主軸部21の取付軸部20近傍の位置には、係止溝22が形成されており、この係止溝22には、主軸部21よりも径方向外側に広がるリテーナ23の内周部が加締めにより固定されている。
リテーナ23のピストン11とは反対には円環状のバネ受24が配置されており、バネ受24のリテーナ23とは反対にコイルスプリングからなる補助スプリング26が配置されている。また、補助スプリング26のバネ受24とは反対には円環状の中間ストッパ28が配置されており、中間ストッパ28の補助スプリング26とは反対にコイルスプリングからなるリバウンドスプリング本体29が配置されている。さらに、リバウンドスプリング本体29の中間ストッパ28とは反対には円環状のバネ受30が配置されており、このバネ受30のリバウンドスプリング本体29とは反対に円環状の弾性材料からなる緩衝体31が設けられている。なお、バネ受24、補助スプリング26、中間ストッパ28、リバウンドスプリング本体29、バネ受30および緩衝体31は、ピストンロッド16に対して軸方向移動可能に設けられている。
ここで、ピストンロッド16がシリンダ10から突出する方向に移動すると、ピストンロッド16に固定されたリテーナ23とともにバネ受24、補助スプリング26、中間ストッパ28、リバウンドスプリング本体29、バネ受30および緩衝体31がロッドガイド17側に移動することになり、所定位置で緩衝体31がロッドガイド17に当接する。さらにピストンロッド16が突出方向に移動すると、緩衝体31およびバネ受30が、シリンダ10に対して停止状態となり、その結果、移動するリテーナ23とバネ受30とが近接する。これにより、バネ受30と中間ストッパ28とがこれらの間のリバウンドスプリング本体29を縮長させることになり、中間ストッパ28とバネ受24とがこれらの間の補助スプリング26を縮長させることになる。このようにして、シリンダ10内に設けられたリバウンドスプリング本体29および補助スプリング26が、ピストンロッド16に弾性的に作用してピストンロッド16の伸び切りを抑制することになり、これらがピストンロッド16の伸び切りを抑制するリバウンドスプリング(弾性部材)32を構成している。なお、このようにリバウンドスプリング32がピストンロッド16の伸び切りの抵抗となることで、車両旋回時の内周側の車輪の浮き上がりを抑制して車体のロール量を抑えることになる。中間ストッパ28は最大限リテーナ23側に移動すると、リテーナ23に係止されたバネ受24に当接し、あるいは補助スプリング26を密着させてピストンロッド16に対して停止することになる。
ピストン11よりもシリンダ10の底部側には、下室13を画成するための区画体33がシリンダ10内を摺動可能に設けられている。シリンダ10内の上室12および下室13内には、油液が封入されており、区画体33により下室13と画成された室34には高圧(20〜30気圧程度)のガスが封入されている。
上述の緩衝器の例えば一方側は車体により支持され、上記緩衝器の他方側に車輪側が固定される。具体的には、ピストンロッド16にて車体側に連結され、シリンダ10のピストンロッド16の突出側とは反対側の底部に取り付けられた取付アイ36にて車輪側に連結される。その際に、シリンダ10のピストンロッド16の突出側に固定されたバネ受37には車体との間に図示略の懸架スプリングが介装される。また、上記とは逆に緩衝器の他方側が車体により支持され緩衝器の一方側に車輪側が固定されるようにしても良い。
車輪が走行に伴って振動すると該振動に伴ってシリンダ10とピストンロッド16との位置が相対的に変化するが、上記変化はピストン11に形成された流路の流体抵抗により抑制される。以下で詳述するごとくピストン11に形成された流路の流体抵抗は振動の速度や振幅により異なるように作られており、振動を抑制することにより、乗り心地が改善される。上記シリンダ10とピストンロッド16との間には、車輪が発生する振動の他に、車両の走行に伴って車体に発生する慣性力や遠心力も作用する。例えばハンドル操作により走行方向が変化することにより車体に遠心力が発生し、この遠心力に基づく力が上記シリンダ10とピストンロッド16との間に作用する。以下で説明するとおり、本実施形態の緩衝器は車両の走行に伴って車体に発生する力に基づく振動に対して良好な特性を有しており、車両走行における高い安定性が得られる。
図2に示すように、バネ受24は、略円筒形状の円筒状部40と、円筒状部40の軸方向一端側から径方向外方に突出する円環状のフランジ部41とを有している。また、円筒状部40の内周面には軸方向に伸びる溝43が周方向に間隔をあけて複数形成されている。バネ受24は、フランジ部41をリテーナ23側に配置しており、円筒状部40の内周側にピストンロッド16の主軸部21が挿入される。これにより、バネ受24は、ピストンロッド16の主軸部21に摺動可能に支持される。また、バネ受24は、フランジ部41および円筒状部40においてリテーナ23に当接する一方、補助スプリング26の一端部をフランジ部41のリテーナ23とは反対側に当接させる。
中間ストッパ28は、略円筒形状の円筒状部46と、円筒状部46の軸方向の中央位置から径方向外方に突出する円環状のフランジ部47とを有している。また、円筒状部46の内周面には、軸方向の中央位置に環状溝48が、径方向外方に凹んで円環状に形成されている。環状溝48内にはシールリング49が配置されており、中間ストッパ28の円筒状部46およびシールリング49の内周側にピストンロッド16の主軸部21が挿入される。これにより、中間ストッパ28は、ピストンロッド16の主軸部21に摺動可能に支持される。中間ストッパ28は、補助スプリング26の他端部をフランジ部47の軸方向の一端面に当接させる。また、中間ストッパ28は、リバウンドスプリング本体29の一端部をフランジ部47の軸方向の他端面に当接させる。
ここで、ピストンロッド16の主軸部21の中間所定位置には、係止溝50が形成されており、この係止溝50には、中間ストッパ28のバネ受24とは反対側への移動を規制するストッパリング51が係止されている。
図1に示すように、バネ受30は、テーパ状の筒状部52と、筒状部52の大径側から径方向外方に突出する円環状のフランジ部53とを有している。バネ受30は、フランジ部53をリバウンドスプリング本体29とは反対側にして配置され、筒状部52の内側にピストンロッド16の主軸部21が挿入される。これにより、バネ受30は、ピストンロッド16の主軸部21に摺動可能に支持される。バネ受30は、リバウンドスプリング本体29の他端部をフランジ部53に当接させる。
図2に示すように、ピストン本体14には、上室12と下室13とを連通させ、ピストン11の上室12側への移動つまり伸び行程において上室12から下室13に向けて油液が流れ出す複数(図2では断面とした関係上一カ所のみ図示)の通路(第1通路)60と、ピストン11の下室13側への移動、つまり縮み行程において下室13から上室12に向けて油液が流れ出す複数(図2では断面とした関係上一カ所のみ図示)の通路61とが設けられている。これらのうち半数を構成する通路60は、円周方向において、それぞれ間に一カ所の通路61を挟んで等ピッチで形成されており、ピストン11の軸方向一側(図1の上側)が径方向外側に軸方向他側(図1の下側)が径方向内側に開口している。
そして、これら半数の通路60に対して、減衰力を発生する減衰力発生機構62が設けられている。減衰力発生機構62は、ピストン11の軸方向の一端側である下室13側に配置されている。通路60は、ピストンロッド16がシリンダ10外に伸び出る伸び側にピストン11が移動するときに油液が通過する伸び側の通路を構成しており、これらに対して設けられた減衰力発生機構62は、伸び側の通路60の油液の流動を規制して減衰力を発生させる伸び側の減衰力発生機構となっている。
また、残りの半数を構成する通路61は、円周方向において、それぞれ間に一カ所の通路60を挟んで等ピッチで形成されており、ピストン11の軸線方向他側(図1の下側)が径方向外側に軸線方向一側(図1の上側)が径方向内側に開口している。
そして、これら残り半数の通路61に、減衰力を発生する減衰バルブ63が設けられている。減衰バルブ63は、ピストン11の軸方向の他端側である軸線方向の上室12側に配置されている。通路61は、ピストンロッド16がシリンダ10内に入る縮み側にピストン11が移動するときに油液が通過する縮み側の通路を構成しており、これらに対して設けられた減衰バルブ63は、縮み側の通路61の油液の流動を規制して減衰力を発生させる縮み側の減衰バルブとなっている。
ピストン本体14は、略円板形状をなしており、その中央には、軸方向に貫通して、上記したピストンロッド16の取付軸部20を挿通させるための挿通穴68が形成されている。
ピストン本体14の下室13側の端部には、伸び側の通路60の一端開口位置の外側に、減衰力発生機構62を構成するシート部70が、円環状に形成されている。ピストン本体14の上室12側の端部には、縮み側の通路61の一端開口位置の外側に、減衰バルブ63を構成するシート部71が、円環状に形成されている。
ピストン本体14において、シート部70の挿通穴68とは反対側は、シート部70よりも軸線方向高さが低い段差状をなしており、この段差状の部分に縮み側の通路61の他端が開口している。また、同様に、ピストン本体14において、シート部71の挿通穴68とは反対側は、シート部71よりも軸線方向高さが低い段差状をなしており、この段差状の部分に伸び側の通路60の他端が開口している。
伸び側の減衰力発生機構62は、圧力制御型のバルブ機構であり、軸方向の上室12側つまりピストン11側から順に、複数枚のディスク80と、減衰バルブ本体81と、バルブ規制部材82と、シート部材83と、小径バルブ本体84と、大径バルブ本体85と、バルブ規制部材86とを有している。
シート部材83は、軸直交方向に沿う有孔円板状の底部90と、底部90の内周側に形成された軸方向に沿う円筒状の内側円筒状部91と、底部90の外周側に形成された軸方向に沿う円筒状の外側円筒状部92とを有している。底部90には軸方向に貫通する複数の貫通孔93が形成されている。シート部材83の内側円筒状部91と外側円筒状部92との間の減衰バルブ本体81側の空間は、減衰バルブ本体81にピストン11の方向に圧力を加える背圧室94となっている。ディスク80と、減衰バルブ本体81には、背圧室94に上室12から油液を導入する図示せぬ背圧室流入油路が形成されている。この背圧室94とシート部材83の貫通孔93とは、ピストン11の通路60に連通することで、上室12と下室13とを連通可能であり、ピストン11の上室12側への移動によって上室12から下室13に向けて油液が流れ出す通路(第1通路)95を構成している。内側円筒状部91には、径方向に貫通する通路溝96が複数カ所形成されている。
外側円筒状部92には、そのピストン11とは反対側に、環状の外側シート部98が形成されており、この外側シート部98に大径バルブ本体85が着座する。また、底部90には、そのピストン11とは反対側に、外側シート部98よりも小径かつ軸方向高さが低い環状の内側シート部99が形成されており、この内側シート部99に小径バルブ本体84が着座する。内側シート部99と外側シート部98との間には室100が形成されている。なお、貫通孔93は、シート部材83の内側シート部99よりも径方向内側に形成されている。
ディスク80は、ピストン11のシート部70よりも小径の外径を有する有孔円板状をなしている。
減衰バルブ本体81は、ピストン11のシート部70に着座可能な有孔円板状のディスク102と、ディスク102のピストン11とは反対の外周側に固着されたゴム材料からなる円環状のシール部材103とからなっている。減衰バルブ本体81とピストン11のシート部70とが、ピストン11に設けられた通路60とシート部材83に設けられた通路95との間に設けられてピストン11の摺動によって生じる油液の流れを規制して減衰力を発生させる減衰バルブ104を構成している。この減衰バルブ104はディスクバルブとなっている。
ディスク102には、図示は略すが、シール部材103よりも径方向内側に軸方向に貫通する貫通孔が形成されている。シール部材103はシート部材83の外側円筒状部92の内周面に接触して、減衰バルブ本体81とシート部材83の外側円筒状部92との隙間をシールする。よって、減衰バルブ本体81とシート部材83の間の上記した背圧室94は、減衰バルブ104の減衰バルブ本体81に、ピストン11の方向つまりシート部70に当接する閉弁方向に内圧を作用させる。減衰バルブ104は、減衰バルブ本体81がピストン11のシート部70から離座して開くと、通路60からの油液をピストン11とシート部材83との間の径方向の流路105を介して下室13に流す。
バルブ規制部材82は、ディスク102よりも小径となっており、減衰バルブ本体81のシート部70とは反対方向つまり開方向への規定以上の変形を規制する。
小径バルブ本体84は、シート部材83の内側シート部99に着座可能な環状をなしており、複数枚の環状のディスクが重ね合わせられることで構成されている。小径バルブ本体84と内側シート部99とが、シート部材83に設けられた通路95と、シート部材83と大径バルブ本体85との間の室100との間の油液の流れを規制する小径ディスクバルブ107を構成している。小径ディスクバルブ107には、小径バルブ本体84と内側シート部99とが当接状態にあっても通路95を室100に連通させる固定オリフィス108が、内側シート部99に形成された溝あるいは小径バルブ本体84に形成された開口によって形成されている。小径ディスクバルブ107は、小径バルブ本体84が内側シート部99から離座することで固定オリフィス108よりも広い流路面積で通路95を室100に連通させる。
大径バルブ本体85は、シート部材83の外側シート部98に着座可能な環状をなしており、複数枚の環状のディスクが重ね合わせられることで構成されている。大径バルブ本体85と外側シート部98とが、シート部材83と大径バルブ本体85との間の室100と下室13との間の油液の流れを規制する大径ディスクバルブ110を構成している。大径ディスクバルブ110には、大径バルブ本体85と外側シート部98とが当接状態にあっても室100を下室13に連通させる固定オリフィス111が、外側シート部98に形成された溝あるいは大径バルブ本体85に形成された開口によって形成されている。大径ディスクバルブ110は、大径バルブ本体85が外側シート部98から離座することで固定オリフィス111よりも広い流路面積で室100を下室13に連通させる。
バルブ規制部材86は、大径バルブ本体85よりも小径となっており、大径バルブ本体85の開方向への規定以上の変形を規制する。
縮み側の減衰バルブ63は、上記したシート部71と、シート部71の全体に同時に着座可能な環状の減衰バルブ本体115とからなっており、ディスクバルブとなっている。減衰バルブ本体115も複数枚の環状の単体ディスクが重ね合わせられることで構成されている。なお、減衰バルブ本体115とピストン11との間には減衰バルブ本体115よりも小径のディスク117が配置されている。また、減衰バルブ本体115のピストン11とは反対側には、減衰バルブ本体115よりも小径の環状のバルブ規制部材116が配置されている。バルブ規制部材116は減衰バルブ本体115の開方向への規定以上の変形を規制する。バルブ規制部材116は、ピストンロッド16の主軸部21の取付軸部20側の端部の軸段部118に当接している。
減衰バルブ63には、シート部71と減衰バルブ本体115とが当接状態にあっても通路61を上室12に連通させる固定オリフィス120が、シート部71に形成された溝あるいは減衰バルブ本体115に形成された開口によって形成されている。減衰バルブ本体115は、シート部71から離座することで固定オリフィス120よりも広い流路面積で通路61を上室12に連通させる。バルブ規制部材116は減衰バルブ本体115の開方向への規定以上の変形を規制する。以上により、減衰バルブ63は、通路61に設けられ、ピストン11の摺動によって生じる油液の流れを抑制して減衰力を発生させる。
ピストンロッド16の先端部のオネジ19には、ナット121が螺合されており、このナット121がバルブ規制部材86に当接して、バルブ規制部材86、大径バルブ本体85、小径バルブ本体84、シート部材83、バルブ規制部材82、減衰バルブ本体81、ディスク80、ピストン11、ディスク117、減衰バルブ本体115およびバルブ規制部材116を軸段部118との間に挟持する。
なお、ここでは、減衰バルブ104および減衰バルブ63が内周クランプのディスクバルブである例を示したが、これに限らず、減衰力を発生する機構であればよく、例えば、ディスクバルブをコイルバネで付勢するリフトタイプのバルブとしてもよく、また、ポペット弁であってもよい。
中間ストッパ28は、セット状態にある補助スプリング26の付勢力により、リテーナ23に当接するバネ受24に対し所定距離離間してストッパリング51に当接することになり、ピストンロッド16の主軸部21には、この状態の中間ストッパ28で閉塞される位置に、径方向に沿う通路穴125が形成されている。通路穴125は、ストッパリング51に当接する中間ストッパ28のシールリング49とストッパリング51との間位置に形成されている。また、ピストンロッド16の取付軸部20には、径方向に沿う通路穴126が、シート部材83の通路溝96と軸方向における位置を合わせて形成されている。さらに、ピストンロッド16には、取付軸部20から主軸部21にかけて、通路穴125および通路穴126の両方に連通する通路穴127が軸方向に沿って形成されている。なお、通路穴125と通路穴126とは略同径であり、通路穴127は、これら通路穴125および通路穴126よりも大径となっている。
通路穴127の開口部には、これを閉塞するプラグ130が螺合固定されている。このプラグ130は、軸部131とフランジ部132とを有しており、軸部131のフランジ部132側にオネジ133が、軸部131の軸方向の中間位置にシール溝134が、それぞれ形成されている。シール溝134にはOリング136が嵌合されている。通路穴127の開口部にはオネジ133を螺合させるメネジ137が形成されている。プラグ130は、軸部131において通路穴127に嵌合しオネジ133においてメネジ137に螺合してフランジ部132において取付軸部20の端面に当接する。この状態で、Oリング136が軸部131と通路穴127との隙間をシールする。このように開口部がプラグ130およびOリング136で閉塞された通路穴127と、通路穴125および通路穴126とが、ピストンロッド16に形成されたロッド内通路(第2通路)140となっており、このロッド内通路140が、通路穴125が開口することでシリンダ10内の一方の上室12から通路溝96を介して背圧室94に油液を導入する。
中間ストッパ28は、補助スプリング26を伸縮させながらピストンロッド16上を、バネ受24に対し近接・離間するように移動可能となっている。中間ストッパ28は、バネ受24に近接することで通路穴125を、バネ受24側に近づくほど開口量を大きくするように開口させる。中間ストッパ28は、図3に示すように、バネ受24側に移動することで、通路穴125を全開可能となっている。中間ストッパ28はバネ受24に最も近づくとバネ受24に当接し、その結果、ピストンロッド16に対して停止状態となる。中間ストッパ28と通路穴125とが、ロッド内通路140に設けられ、ピストンロッド16が伸び方向に移動したときリバウンドスプリング32によって通路面積が調整される可変オリフィス142を構成している。
ここで、ピストンロッド16が伸び側に移動する伸び行程で、リバウンドスプリング32が縮長しない状態では、中間ストッパ28が通路穴125つまりロッド内通路140を閉塞しており、ロッド内通路140を介して上室12と背圧室94とを連通させることはない。
この状態では、ピストン速度が遅い時、上室12からの油液は、通路60と、減衰バルブ本体81の図示略の貫通孔と、背圧室94を含む通路95と、小径ディスクバルブ107の内側シート部99と小径バルブ本体84との間に形成された固定オリフィス108と、室100と、大径ディスクバルブ110の外側シート部98と大径バルブ本体85との間に形成された固定オリフィス111とを介して下室13に流れ、オリフィス特性(減衰力がピストン速度の2乗にほぼ比例する)の減衰力が発生する。このため、ピストン速度に対する減衰力の特性は、ピストン速度の上昇に対して比較的減衰力の上昇率が高くなる。
また、ピストン速度が速くなると、上室12からの油液は、通路60と通路95とを介して、小径ディスクバルブ107の小径バルブ本体84および大径ディスクバルブ110の大径バルブ本体85を開きながら、内側シート部99と小径バルブ本体84との間、および外側シート部98と大径バルブ本体85との間を通って、下室13に流れることになり、バルブ特性(減衰力がピストン速度にほぼ比例する)の減衰力が発生する。このため、ピストン速度に対する減衰力の特性は、ピストン速度の上昇に対して減衰力の上昇率はやや下がることになる。
また、ピストン速度がさらに高速の領域になると、減衰バルブ104の減衰バルブ本体81に作用する力(油圧)の関係は、通路60から加わる開方向の力が背圧室94から加わる閉方向の力よりも大きくなる。よって、この領域では、ピストン速度の増加に伴い減衰バルブ104が開いて減衰バルブ本体81がシート部70から離れることになり、小径ディスクバルブ107の内側シート部99と小径バルブ本体84との間、および大径ディスクバルブ110の外側シート部98と大径バルブ本体85との間を通る下室13への流れに加え、ピストン11とシート部材83との間の流路105を介して下室13に油液を流すため、減衰力の上昇を抑えることになる。このときのピストン速度に対する減衰力の特性は、ピストン速度の上昇に対して減衰力の上昇率がほとんどないことになる。よって、ピストン速度が速く周波数が比較的高い、路面の段差等により生じるインパクトショック発生時等において、上記のようにピストン速度の増加に対する減衰力の上昇を抑えることで、ショックを十分に吸収する。
また、インパクトショックの発生後には、発生時と同等の周波数で、振幅が小さくなりピストン速度が遅くなり、減衰バルブ104の減衰バルブ本体81に作用する力の関係は、通路60から加わる開方向の力が背圧室94から加わる閉方向の力よりも小さくなり、減衰バルブ本体81が閉弁方向に移動することになる。よって、減衰バルブ104の減衰バルブ本体81が開弁することによる上室12から下室13への流れが減少し、小径ディスクバルブ107の内側シート部99と小径バルブ本体84との間、および大径ディスクバルブ110の外側シート部98と大径バルブ本体85との間を通る下室13への流れが主体となるため、ピストン速度の上昇に対する減衰力の上昇率が上がることになる。これにより、インパクトショック発生後のバネ下のバラツキを抑える。
リバウンドスプリング32が縮長しない状態で、ピストンロッド16が縮み側に移動する縮み行程では、ピストン速度が遅い時、下室13からの油液は、通路61と、減衰バルブ63の減衰バルブ本体115とシート部71との間に形成された固定オリフィス120とを介して上室12に流れオリフィス特性(減衰力がピストン速度の2乗にほぼ比例する)の減衰力が発生することになる。このため、ピストン速度に対する減衰力の特性は、ピストン速度の上昇に対して比較的減衰力の上昇率が高くなる。
また、ピストン速度が速くなると、下室13から通路61に導入された油液が、基本的に減衰バルブ63の減衰バルブ本体115を開きながら減衰バルブ本体115とシート部71との間を通って上室12に流れることになり、バルブ特性(減衰力がピストン速度にほぼ比例する)の減衰力が発生する。このため、ピストン速度に対する減衰力の特性は、ピストン速度の上昇に対して減衰力の上昇率はやや下がることになる。
ここで、上記したように、リバウンドスプリング32は、車両旋回時の内周側の車輪の浮き上がりを抑制して車体のロール量を抑えることができる効果がある。図4は、リバウンドスプリングを有する緩衝器のストローク位置に対する、バネ受37と車体との間に介装された図示略の懸架スプリングおよびリバウンドスプリングのスプリング反力の関係を示すものである。図4に示すように、スプリング反力は、縮み側の限界位置であるフルボトムの位置Pfbで最も高く、このフルボトムPfbの位置から1Gの位置(車体を水平とする位置)P0までのバウンドストロークSbと、1Gの位置P0から縮み側のリバウンドストロークSrのうちのリバウンドスプリングが作用し始める伸び側の所定位置P1までのバッファクリアランスBCとについては、バネ受37と車体との間に介装された図示略の懸架スプリングのバネ定数Ksに基づく比例関係となる。
また、リバウンドストロークSrのうち、リバウンドスプリングが作用する、伸び側の所定位置P1から伸び側の限界位置であるフルリバウンドの位置Pfrまでのリバウンドスプリング作動範囲Rは、懸架スプリングとリバウンドスプリングとが並列で作用することになるため、懸架スプリングのバネ定数Ksとリバウンドスプリングのバネ定数Krとを加算したバネ定数Ks+Krによる比例関係となる。このため、リバウンドスプリング作動範囲Rにおいては、車体のロール量を小さく抑えることができるものの、リバウンドスプリングの分だけバネ定数が大きくなり、これにより、緩衝器における減衰力が低下してしまう。その結果、車両のバネ上の制振性が不足することになり、リバウンドスプリング作動範囲Rにおける操舵時の乗り心地性能が低下してしまう。
これに対し、本実施形態では、ピストンロッド16におけるロッド内通路140の通路穴125の上室12への開口部が、補助スプリング26によってストッパリング51に当接させられた状態にある中間ストッパ28で閉塞されており、この通路穴125が中間ストッパ28とでロッド内通路140の通路面積を可変とする可変オリフィス142を構成している。これにより、例えば車両の旋回走行時の車体のロールにより旋回内側のサスペンションに含まれる緩衝器のピストンロッド16が伸び側に移動し、しかも、この伸び行程において、ピストンロッド16が伸び側に所定量以上移動して、緩衝体31をロッドガイド17に当接させて、リバウンドスプリング作動範囲Rに入ると、バネ受30がピストンロッド16上を摺動しつつリバウンドスプリング本体29を中間ストッパ28との間で、補助スプリング26を中間ストッパ28、バネ受24およびリテーナ23との間で縮長させることになり、中間ストッパ28を、バネ受24の方向に移動させて、通路穴125つまりロッド内通路140を開く。
このとき、リバウンドスプリング32を構成するリバウンドスプリング本体29と補助スプリング26とは同時進行で弾性変形することになり、中間ストッパ28を、リバウンドスプリング本体29および補助スプリング26の縮み量(ピストンロッド16のシリンダ10からの突出量)が大きくなるほど、通路穴125の開口量を大きくし、しかもフルリバウンド近傍の所定位置からフルリバウンドの位置までの範囲では通路穴125を全部開放するように移動させる。つまり、可変オリフィス142は、ピストンロッド16が伸び方向に移動したとき、リバウンドスプリング本体29および補助スプリング26からなるリバウンドスプリング32によって開口面積(流路面積)が調整される。具体的には、ピストンロッド16が伸び方向に移動したときリバウンドスプリング32によって開口面積が増大するように調整される。
これにより、ピストンロッド16が、伸び行程にてフルリバウンドに向けて伸び出ると、上室12からロッド内通路140を介して伸び側の減衰力発生機構62の背圧室94に向けて流れる油液が、中間ストッパ28によってピストンロッド16のシリンダ10からの伸び出し量に応じて増大することになり、減衰力発生機構62の減衰バルブ104の開弁圧が高くなり、減衰バルブ本体81がシート部70から離座する圧力が高くなる。その結果、上室12からピストン11の通路60を介して下室13に流れる油液が、ピストンロッド16のシリンダ10からの伸び出し量に応じて流れにくくなる。よって、緩衝器は、リバウンドスプリング作動範囲Rにおいて、ピストンロッド16のシリンダ10からの伸び出し量に応じて減衰力が高くなる。
以上の構成の第1実施形態の油圧回路図は図5に示すようになっている。つまり、上室12および下室13の間に並列に、伸び側の減衰力発生機構62および縮み側の減衰バルブ63が設けられており、減衰力発生機構62の背圧室94が、リバウンドスプリング32で制御される可変オリフィス142を介して上室12側に繋がっている。
このような第1実施形態によれば、シリンダ10内の上室12から油液が流れ出す通路60に設けられた減衰バルブ104に対して閉弁方向に内圧を作用させる背圧室94に、シリンダ11内の上室12から油液を導入するロッド内通路140を設け、このロッド内通路140に、ピストンロッド16が伸び方向に移動したときリバウンドスプリング32によって面積が調整される可変オリフィス142を設けた。このため、リバウンドスプリング作動範囲Rにおいて背圧室94の圧力をロッド内通路140を介して高め減衰バルブ104の開弁を抑制することで、減衰バルブ104による減衰力を高めることができる。
つまり、可変オリフィス142が閉じられロッド内通路140を介しては背圧室94の圧力を高めることができない、図6に破線で示す伸び側のバウンドストロークSbおよびバッファクリアランスBCにおける減衰力に比べて、可変オリフィス142を開きロッド内通路140を介して背圧室94の圧力を高めることで、図6に実線で示す伸び側のリバウンドスプリング作動範囲Rにおける減衰力を高めることができる。なお、図6の一点鎖線は、背圧室および可変オリフィスのない縮み側の減衰バルブ63による一定の減衰力特性を示している。
以上により、リバウンドスプリング32が作動しない搭載車両の直進時は減衰力を低くして乗り心地を向上する一方、リバウンドスプリング32が作動する操舵時は、減衰力を上昇させることによって、減衰力立ち上がりの応答性を向上するとともに、路面または操舵からの大入力に対するバネ上制振性を向上して操縦安定性を向上し、さらにバネ定数の増加によるバネ上制振性の悪化を防ぐことができる。したがって、ピストンロッド16の伸び切りを抑制するリバウンドスプリング32を用いた場合であっても、所望の減衰力を発生可能となる。加えて、リバウンドスプリング32に減衰力が高まることにより、伸び切り時に、リバウンドスプリング32の密着あるいは中間ストッパ28とバネ受24との当接により生じる打音を抑制できる。
「第2実施形態」
次に、第2実施形態を主に図7〜図10に基づいて第1実施形態との相違部分を中心に説明する。なお、第1実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
図7に示すように、第2実施形態においては、バネ受24が、リテーナ23と中間ストッパ28との間ではなく、リテーナ23とピストン11との間に設けられており、中間ストッパ28が直接リテーナ23に当接するようになっている。また、バネ受24にはフランジ部41の外周縁部からピストン11の方向に突出する円環状のバルブ押圧部150が形成されている。バネ受24は、縮み側の減衰バルブ63(第2の減衰バルブ)の減衰バルブ本体115に、ピストン11とは反対側から当接することになり、減衰バルブ本体115は、このバネ受24を介してリバウンドスプリング32等を押しながら開くことになる。よって、バネ受24は、ピストンロッド16が伸び切り状態のときを含むリバウンドスプリング32の縮長時に、リバウンドスプリング32の付勢力で、減衰バルブ63を押圧する。
以上の構成の第2実施形態では、ピストンロッド16が縮み側に移動する縮み行程において、減衰バルブ63が開弁する際に、バネ受24のバルブ押圧部150に当接する減衰バルブ本体115が、バネ受24を押圧しこれをピストンロッド16に対して移動させる必要がある。リバウンドスプリング作動範囲R以外では、リバウンドスプリング32が縮長していないため、バネ受24は、リバウンドスプリング32の付勢力は基本的に受けず、減衰バルブ63の減衰バルブ本体115を開きながら通路61を介して下室13から上室12に流れる油液は、流れやすく、よって、減衰力は下がることになる。
これに対して、リバウンドスプリング作動範囲Rでは、ピストンロッド16が縮み側に移動する縮み行程において、図8に示すように、中間ストッパ28をリテーナ23に近接させながら、リバウンドスプリング32を構成するリバウンドスプリング本体29および補助スプリング26が縮むことになり、これらの付勢力が、バネ受24のバルブ押圧部150から減衰バルブ63の減衰バルブ本体115に加わることになる。このため、減衰バルブ63の減衰バルブ本体115を開きながら通路61を介して下室13から上室12に流れる油液は、流れにくく、よって、減衰力は高くなる。しかも、ピストンロッド16が伸び切り側に位置するほど、リバウンドスプリング本体29および補助スプリング26による減衰バルブ63の減衰バルブ本体115への付勢力が高まることになり、よって、減衰力が高くなる。
以上の構成の第2実施形態の油圧回路図は、図9に示すようになっており、リバウンドスプリング32が、可変オリフィス142に加えて、縮み側の減衰バルブ63を制御する。
以上により、第2実施形態によれば、ピストン11の他端側に配された減衰バルブ63が、ピストンロッド16が伸び切り状態のとき、リバウンドスプリング32により押圧されるように構成されているため、リバウンドスプリング作動範囲Rにおいて、第1実施形態と同様に、伸び側の減衰力発生機構62の背圧室94に上室12の液圧を導入して伸び行程の減衰力を高めることに加えて、図10に二点鎖線で示すように、縮み側の減衰バルブ63の減衰力を、図10に一点鎖線で示すリバウンドスプリング作動範囲R以外の減衰力と比べて、高めることができる。よって、第2実施形態よりもさらに効果的にバネ上制振性を上げることが可能となり、さらなる操縦安定性および乗り心地の改善ができる。
なお、第2実施形態において、縮み側のシート部71と通路61との間に、シート部71よりも軸方向高さの低いシート部を設け、バルブ押圧部150で減衰バルブ本体115の径方向のこのシート部の位置を押圧するようにしても良い。このシート部と減衰バルブ本体115とは、リバウンドスプリング32が縮長してしない状態では十分な通路面積を確保する連通路となり、リバウンドスプリング32が縮長すると、その付勢力で減衰バルブ本体115をシート部に押し付けるようにして連通路を閉じ、あるいは流路面積を狭めるようになる。これにより、縮み側の減衰力をさらに高めることができる。
「第3実施形態」
次に、第3実施形態を主に図11〜図14に基づいて第1,第2実施形態との相違部分を中心に説明する。なお、第1,第2実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
第3実施形態では、ピストンロッド16に、第1,第2実施形態の係止溝22,50は形成されておらず、第1,第2実施形態のリテーナ23、中間ストッパ28およびストッパリング51は設けられていない。そして、一本のコイルスプリングからなるリバウンドスプリング155が、バネ受30(図1参照)とバネ受24との間に介装されている。
第3実施形態のバネ受24には、フランジ部41の軸方向の円筒状部40とは反対側に、フランジ部41よりも小径の円筒状係止部156が形成されている。
また、第3実施形態では、ピストン11の軸線方向の上室12側に、第1,第2実施形態の減衰バルブ63にかえて、縮み側の通路61の油液の流動を規制して減衰力を発生させる縮み側の減衰力発生機構160が設けられている。
この縮み側の減衰力発生機構160は、圧力制御型のバルブ機構であり、複数枚のディスク117とバルブ規制部材116との間に、軸方向の下室13側つまりピストン11側から順に、減衰バルブ本体162と、バルブ規制部材163と、シート部材164と、バルブ本体165と、プレッシャリング166および通路部材167と、ディスク168とを有している。
シート部材164は、軸直交方向に沿う有孔円板状の底部175と、底部175の内周側に形成された軸方向に沿う円筒状の内側円筒状部176と、底部175の外周側に形成された軸方向に沿う円筒状の外側円筒状部177とを有している。底部175には軸方向に貫通する複数の貫通孔178が形成されている。シート部材164の内側円筒状部176と外側円筒状部177との間の空間は、減衰バルブ本体162にピストン11の方向に圧力を加える背圧室179となっている。この背圧室179とシート部材164の貫通孔178とは、ピストン11の通路61に連通することで、下室13と上室12とを連通可能であり、ピストン11の下室13側への移動によって下室13から上室12に向けて油液が流れ出す連通路180を構成している。
外側円筒状部177には、そのピストン11とは反対側に、環状の外側シート部184が形成されており、この外側シート部184にバルブ本体165が着座する。また、底部175には、そのピストン11とは反対側に、外側シート部184よりも小径で軸方向高さが低い環状の内側シート部185が形成されており、この内側シート部185にもバルブ本体165が着座可能となっている。なお、貫通孔178は、シート部材164の内側シート部185よりも径方向内側に形成されている。
減衰バルブ本体162は、ピストン11のシート部71に着座可能な有孔円板状のディスク188と、ディスク188のピストン11とは反対の外周側に固着されたゴム材料からなる円環状のシール部材189とからなっている。減衰バルブ本体162とピストン11のシート部71とが、シート部材164に設けられた通路61に設けられてピストン11の摺動によって生じる油液の流れを規制して減衰力を発生させる減衰バルブ190を構成している。この減衰バルブ190はディスクバルブとなっている。
ディスク188には、図示は略すが、シール部材189よりも径方向内側に軸方向に貫通する貫通孔が形成されている。シール部材189はシート部材164の外側円筒状部177の内周面に接触して、減衰バルブ本体162とシート部材164の外側円筒状部177との隙間をシールする。よって、減衰バルブ本体162とシート部材164の間の上記した背圧室179は、減衰バルブ190の減衰バルブ本体162に、ピストン11の方向つまりシート部71に当接する閉弁方向に内圧を作用させる。減衰バルブ190は、減衰バルブ本体162がピストン11のシート部71から離座して開くと、通路61からの油液をピストン11とシート部材164との間の径方向の流路192を介して上室12に流す。
バルブ規制部材163は、ディスク188よりも小径となっており、減衰バルブ本体162のシート部71とは反対方向つまり開方向への規定以上の変形を規制する。
バルブ本体165は、シート部材164の外側シート部184および内側シート部185に着座可能な環状をなしており、複数枚の環状のディスクが重ね合わせられることで構成されている。バルブ本体165と内側シート部185とが、シート部材164に設けられた連通路180の油液の流れを規制する開閉バルブ194を構成している。開閉バルブ194は、バルブ本体165が変形していない通常状態では、連通路180の開閉バルブ194を構成する部分の通路面積を十分な通路面積としている。開閉バルブ194は、バルブ本体165がシート部材164側に変形することで、内側シート部185に近接しあるいは当接して連通路180の連通を制限しあるいは遮断する。
また、バルブ本体165は、外側シート部184とで、バルブ本体165とシート部材164との間の連通路180と、上室12との間の油液の流れを規制するディスクバルブ195を構成している。ディスクバルブ195には、バルブ本体165と外側シート部184とが当接状態にあっても連通路180を上室12に連通させる固定オリフィス196が、外側シート部184に形成された溝あるいはバルブ本体165に形成された開口によって形成されている。ディスクバルブ195は、バルブ本体165が外側シート部184から離座することで固定オリフィス196よりも広い流路面積で連通路180を上室12に連通させる。
プレッシャリング166は、有孔円板状のベース部200と、ベース部200の外周側から軸方向一側に突出する略円筒状の筒状部201と、ベース部200の内周側から筒状部201と同側に突出する円環状のシート部202と、ベース部200の径方向の中間位置から筒状部201およびシート部202とは反対側に突出する円環状の押圧部203とからなっている。筒状部201には径方向に貫通する通路溝204が円周方向に間隔をあけて複数形成されている。プレッシャリング166は、筒状部201の内側に円筒状係止部156を嵌合させ筒状部201の先端面にフランジ部41を当接させるようにして、バネ受24に一体化されている。押圧部203は、開閉バルブ194のバルブ本体165の径方向における内側シート部185と略同位置に、内側シート部185の軸方向の反対側から当接している。
通路部材167は円環状をなしており、そのピストン11とは反対側に径方向に貫通する通路溝208が形成されている。通路溝208は、通路穴125にピストンロッド16の軸方向の位置を合わせている。
ディスク168は、プレッシャリング166のシート部202に着座可能な環状をなしており、このディスク168とシート部202とが、開口面積が調整される可変オリフィス211を構成している。可変オリフィス211は、ロッド内通路140に連通する通路部材167の通路溝208、プレッシャリング166の通路溝204およびこれらの間部分で形成される通路(第2通路)210に設けられている。可変オリフィス211は、プレッシャリング166がピストン11側に移動していない通常状態では閉じており、プレッシャリング166がピストン11側に移動すると移動量に応じて流路面積が増大するように開く。バルブ規制部材116は、ディスク168の開方向への規定以上の変形を規制する。
ピストンロッド16のオネジ19に螺合されるナット121が、バルブ規制部材86に当接して、バルブ規制部材86、大径バルブ本体85、小径バルブ本体84、シート部材83、バルブ規制部材82、減衰バルブ本体81、ディスク80、ピストン11、ディスク117、減衰バルブ本体162、バルブ規制部材163、シート部材164、バルブ本体165、通路部材167、ディスク168およびバルブ規制部材116を軸段部118との間に挟持する。
第3実施形態においては、シリンダ10内の上室12から油液が流れ出す通路60に設けられた減衰バルブ104に対して閉弁方向に内圧を作用させる背圧室94に、シリンダ11内の上室12から油液を導入する通路210およびロッド内通路140を設け、通路210に、ピストンロッド16が伸び方向に移動したときリバウンドスプリング32によって面積が調整される可変オリフィス211を設けた。そして、リバウンドスプリング155が縮長せずセット状態にあるとき、可変オリフィス211がディスク168をシート部202に当接させて通路210を閉じており、ロッド内通路140を介して背圧室94に上室12からの油液が導入されることはない。
他方、リバウンドスプリング155が縮長すると、リバウンドスプリング155の付勢力でバネ受24およびプレッシャリング166がピストン11に近接することになり、可変オリフィス211がシート部202をディスク168から離間させて通路210を開くことになり、ロッド内通路140を介して背圧室94に上室12からの油液が導入されることになる。よって、伸び行程については、リバウンドスプリング作動範囲およびそれ以外の両方において、第1実施形態とほぼ同様に作動することになる。なお、第3実施形態では、図13に実線で示すように、リバウンドスプリング作動範囲Rの微低速域での減衰力の立ち上がり速度が第1実施形態と比べて速くなり、減衰力がリニアに近い形で上昇する。
また、ピストンロッド16が縮み側に移動する縮み行程で、リバウンドスプリング155が縮長していない状態では、ピストン速度が遅い時、下室13からの油液は、通路61と、減衰バルブ本体162の図示略の貫通孔と、背圧室179を含む連通路180と、ディスクバルブ195の外側シート部184とバルブ本体165との間に形成された固定オリフィス196とを介して上室12に流れ、オリフィス特性(減衰力がピストン速度の2乗にほぼ比例する)の減衰力が発生する。このため、ピストン速度に対する減衰力の特性は、ピストン速度の上昇に対して比較的減衰力の上昇率が高くなる。
また、ピストン速度が速くなると、下室13からの油液は、通路61と連通路180とを介して、ディスクバルブ195のバルブ本体165を開きながら、外側シート部184とバルブ本体165との間を通って、上室12に流れることになり、バルブ特性(減衰力がピストン速度にほぼ比例する)の減衰力が発生する。このため、ピストン速度に対する減衰力の特性は、ピストン速度の上昇に対して減衰力の上昇率はやや下がることになる。
また、ピストン速度がさらに高速の領域になると、減衰バルブ190の減衰バルブ本体162に作用する力(油圧)の関係は、通路61から加わる開方向の力が背圧室179から加わる閉方向の力よりも大きくなる。よって、この領域では、ピストン速度の増加に伴い減衰バルブ190の減衰バルブ本体162がシート部71から離間して開くことになり、ディスクバルブ195のバルブ本体165と外側シート部184との間を通る上室12への流れに加え、ピストン11とシート部材164との間の流路192を介して上室12に油液を流すため、減衰力の上昇を抑えることになる。このときのピストン速度に対する減衰力の特性は、ピストン速度の上昇に対して減衰力の上昇率がほとんどないことになる。
ピストンロッド16が縮み側に移動する縮み行程で、リバウンドスプリング155が縮長していると、リバウンドスプリング155の付勢力でバネ受24およびプレッシャリング166がピストン11に近接することになり、押圧部203が開閉バルブ194のバルブ本体165を押圧して内側シート部185に近接あるいは当接させることになり、閉バルブ194によってディスクバルブ195への連通路180を制限あるいは遮断することになる。これにより、図13の一点鎖線で示すリバウンドスプリング155が縮長していないときと比べて、図13に二点鎖線で示すように減衰力が高くなる。しかも、リバウンドスプリング作動範囲Rの微低速域での減衰力の立ち上がり速度が第2実施形態に対し速くなり、減衰力がリニアに近い形で上昇する。
以上の構成の第3実施形態の油圧回路図は図14に示すようになっている。つまり、上室12および下室13の間に並列に、伸び側の減衰力発生機構62、縮み側の減衰力発生機構160が設けられており、リバウンドスプリング155が、伸び側の減衰力発生機構62の背圧室94に対し設けられた可変オリフィス142に加えて、縮み側の減衰力発生機構160のディスクバルブ195および可変オリフィス211を制御する。
上記各実施形態は、モノチューブ式の油圧緩衝器に本発明を用いた例を示したが、これに限らず、シリンダの外周に外筒を設け、外筒とシリンダの間にリザーバを設けた複筒式油圧緩衝器に用いてもよく、あらゆる緩衝器に用いることができる。
なお、上記実施形態では、油圧緩衝器を例に示したが、流体として水や空気を用いることもできる。
また、上記実施形態では、弾性部材としてコイルスプリングを用いた例を示したが、ゴム等の他の弾性部材を用いてもよい。