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JP5792108B2 - 熱処理方法 - Google Patents

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JP5792108B2
JP5792108B2 JP2012083108A JP2012083108A JP5792108B2 JP 5792108 B2 JP5792108 B2 JP 5792108B2 JP 2012083108 A JP2012083108 A JP 2012083108A JP 2012083108 A JP2012083108 A JP 2012083108A JP 5792108 B2 JP5792108 B2 JP 5792108B2
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Description

本発明は、鋼材の熱処理方法に関し、より詳細には、鋼材の強度と靭性とを両立させる鋼材の熱処理方法に関するものである。
一般に調質と呼ばれる金属の焼入れ焼き戻し法では、鋼を850℃から900℃程度に加熱し、オーステナイト化した後、急冷し、マルテンサイトに変態させることで処理物の強度や硬さを高めることができる。ところがこの場合、処理材の硬さを高めると同時に脆くなり、耐衝撃性が悪化する。
一方、マルテンサイトよりも硬さは劣るものの、高い靭性を有するベイナイト組織を発生させる処理方法として、オーステンパー処理がある。オーステンパー処理とは、オーステナイト状態から、マルテンサイト変態温度(以下、「Ms温度」と称する場合がある)よりも高い温度に焼入れし、その温度で保持することで、ベイナイト組織を発生させ、靭性の向上を図る処理方法である。ただし、ベイナイトは靭性に優れるものの硬さ、強度はマルテンサイトに及ばない。なお、一般にオーステンパー処理は、焼入れ・保持温度が300℃から400℃ぐらいの高温であるために、冷却媒体にはソルト(塩浴)が用いられる。
そこで、上記ベイナイト及びマルテンサイトそれぞれの短所を補うために、両者の混合組織(マルテンサイト・ベイナイト混合組織)が得られることが望ましい。マルテンサイト・ベイナイト混合組織を得る方法としては、いくつか提案されている。
例えば、寸法安定化のためにマルテンサイトとベイナイトを混合させる方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この方法は、Ms温度以上に焼き入れて、一部をベイナイト変態させた後、冷却してマルテンサイトを得るものである。
また、前記一般的なオーステンパー処理において、ソルトの代わりにガスを用いてオーステンパーする方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
さらに、ソルトの代わりに鉱油を用いてオーステンパー処理する方法も提案されている(例えば、特許文献3参照)。
特開2000−129361号公報 国際公開第2003/080876号パンフレット 特開2000−234124号公報
しかし、一般的なオーステンパー処理に冷却媒体として用いられるソルトは、毒性を有するデメリットがある上に、ソルト炉から取り出すと、製品表面に多量のソルトが付着しているために、洗浄除去する必要があり、ソルト消費量の増大によるコストデメリット、さらに洗浄後の廃液処理が煩雑でコストがかかる、治具が腐食するなどという問題がある。
また、前記特許文献1に記載の熱処理方法では、ベイナイト変態後の冷却でマルテンサイトを生成させると、マルテンサイトが脆くなると同時に、残留オーステナイトが多くなり、寸法の経時変化や疲労特性の劣化を招く。さらに、ベイナイトへの部分変態後に急速冷却し、またその後瞬間焼戻しすることが必須であり、工程が煩雑となる。
また、前記特許文献2に記載の熱処理では、ガスを用いた場合には、低温保持ができたとしても、高温からの冷却速度が十分でなく、焼入れ性の低い材料の熱処理においては、パーライトを生成し靭性劣化を招く。
さらに、前記特許文献3に記載の処理方法では、処理材料が鋳鉄で加熱が高周波焼入れのため、表面付近のみの組織がベイナイト化するものであり、さらにこのオーステンパー処理では、別途加熱炉が必要なため処理が煩雑となるという問題があった。
本発明は、このような状況下でなされたもので、従来のオーステンパー処理に用いられていたソルトを使用しないで、強度と靭性とを両立できるマルテンサイト及びベイナイトの混合組織を発生させることが可能であり、特に、従来のオーステンパー処理に比べ、ベイナイト組織の靭性が同程度でありながら強度に優れる混合組織を得ることができ、また、工程が極めて簡素な鋼材の熱処理方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記目的を達成するために、鋭意研究を重ねた結果、特定の熱処理油を用いて、所定の焼入れ条件により鋼材を熱処理することにより、前記課題を解決し得ることを見出した。本発明はかかる知見に基づいて完成されたものである。
すなわち、本発明は、
〔1〕 質量%基準で、C:0.25以上1.0以下、Si:1.0以下、Mn:0.3以上2.0以下、P:0.03以下、S:0.01以下、sol.Al:0.3以下、及びN:0.01以下を含有し、残部Feを含む化学組成を有する鋼材をオーステナイト化温度以上に加熱し、オーステナイト化する工程と、
前記鋼材の上部臨界冷却速度よりも速い冷却速度を有する熱処理油を用い、下記式(1)で表される温度Ms(℃)から(Ms−80)(℃)の範囲の油温に保持した前記熱処理油中に前記オーステナイト化した鋼材を投入して、該鋼材の温度を前記油温まで急冷して焼入れする工程と、
前記急冷された鋼材を、前記油温のまま所定時間保持する工程と、を有する鋼材の熱処理方法、
Ms(℃)=550−361×[C]−39×[Mn]+30×[Al] ・・・ (1)
(上記式において、[C]、[Mn]及び[Al]は、各々鋼材中のC、Mn及びsol.Al含有量(質量%)を表す。)
〔2〕 前記化学組成において、前記残部Feの一部が、質量%基準で、B:0.005以下、Ti:0.1以下、Cr:3.0以下、Nb:0.1以下、V:0.1以下、Ni:1.0以下、Cu:1.0以下、Mo:1.0%以下及びCo:1.0以下からなる群から選ばれた1種以上であり、前記温度Ms(℃)が下記式(2)で表される〔1〕に記載の熱処理方法、
Ms(℃)=550−361×[C]−39×[Mn]+30×[Al]−20×[Cr]−35×[V]−17×[Ni]−10×[Cu]−5×[Mo]+15×[Co] ・・・ (2)
(上記式において、[C]、[Mn]、[Al]、[Cr]、[V]、[Ni]、[Cu]、[Mo]及び[Co]は、各々鋼材中のC、Mn、sol.Al、Cr、V、Ni、Cu、Mo及びCo含有量(質量%)を表す。)
〔3〕 前記熱処理油の油温が、140℃以上300℃以下である〔1〕または〔2〕に記載の熱処理方法、及び
〔4〕 前記熱処理油の100℃動粘度が、10mm2/s以上50mm2/s以下である〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の熱処理方法、
を提供するものである。
本発明によれば、従来のオーステンパー処理に用いられていたソルトを使用しないで、強度と靭性とを両立できるマルテンサイト及びベイナイトの混合組織を発生させることが可能であり、特に、従来のオーステンパー処理に比べ、ベイナイト組織の靭性が同程度でありながら強度に優れる混合組織を得ることができ、また、工程が極めて簡素な鋼材の熱処理方法を提供することができる。
本発明の熱処理方法を模式的に示す時間及び温度の焼入れ線図である。
以下、本発明を実施形態により説明する。
本実施形態の熱処理方法は、質量%基準で、C:0.25以上1.0以下、Si:1.0以下、Mn:0.3以上2.0以下、P:0.03以下、S:0.01以下、sol.Al:0.3以下、及びN:0.01以下を含有し、残部Feを含む化学組成を有する鋼材をオーステナイト化温度以上に加熱し、オーステナイト化する工程と、前記鋼材の上部臨界冷却速度よりも速い冷却速度を有する熱処理油を用い、後述の式(1)で表される温度Ms(℃)から(Ms−80)(℃)の範囲の油温に保持した前記熱処理油中に前記オーステナイト化した鋼材を投入して、該鋼材の温度を前記油温まで急冷して焼入れする工程と、前記急冷された鋼材を、前記油温のまま所定時間保持する工程とを有することを特徴とする。
炭素鋼を、例えば従来のオーステンパー処理によりベイナイト変態後、マルテンサイト変態させると、ベイナイト変態中にオーステナイトにCが濃縮し、残留オーステナイトを安定化させ、最終的に残留オーステナイト量が増加するだけではなく、生成するマルテンサイトが硬質となる。それに対し、本実施形態では、Ms温度以下で先にマルテンサイト変態させることで、素材組成同等のマルテンサイトが生成し、かつ、その後の一定温度での保持中に残留オーステナイトの変態によりベイナイトを生ずることにより、ベイナイトが混合した軟質でかつ靭性の優れるマルテンサイト(マルテンサイト・ベイナイト混合組織)となる。
また、上記保持中に残部オーステナイトがベイナイト変態するが、このベイナイトは通常の従来オーステンパー処理で生成するベイナイトより、より低温で生成するため、靭性に優れる。このため、得られるマルテンサイト・ベイナイト混合組織は寸法変化や疲労特性に優れ、強度と靭性とを両立できるものとなる。
(鋼材)
まず、本実施形態の熱処理方法に用いられる鋼材について説明する。
本実施形態に用いられる鋼材は、質量%基準で、C:0.25以上1.0以下、Si:1.0以下、Mn:0.3以上2.0以下、P:0.03以下、S:0.01以下、sol.Al:0.3以下、及びN:0.01以下を含有し、残部Feを含む化学組成を有する。
−C(炭素)−
Cは、熱処理後の鋼材の強度を主に決定する重要な元素である。C含有量が0.25質量%以下では熱処理後において十分な強度が得られない。したがって、C含有量は0.25質量%以上とする。一方、C含有量が1.0質量%超では、熱処理後の鋼材の靱性の劣化が著しくなる。また、熱処理前の鋼材における炭化物が著しく増加するため、強度が上昇し、成形性の劣化が著しくなる。したがって、Cの含有量は1.0質量%以下とする。
C含有量は、質量%基準で0.3以上0.9以下であることが好ましく、0.4以上0.8以下であることがより好ましい。
−Si(ケイ素)−
Siは、一般に脱酸剤として含有されるが、鋼材の焼入れ性を高める作用を有するので、本実施形態に用いられる鋼材には積極的に含有させてもよい。しかしながら、Si含有量が1.0質量%超では、Ac3点(加熱時、フェライト、パーライトがオーステナイトへの変態を完了する温度)の上昇が著しくなり、炭化物の固溶が遅延して焼入れ性の低下を招く。また、熱間圧延時の表面疵を誘発する。したがって、Si含有量は1.0質量%以下とする。好ましくは0.5質量%以下であり、より好ましくは0.35質量%以下である。
なお、焼入れ性を高める効果の発現の観点から、含有量の下限は0.01質量%である。
−Mn(マンガン)−
Mnは、Ac3点を低下させ、鋼の焼入れ性を高める作用を有する。Mn含有量が0.3質量%未満では上記作用による効果を得ることが困難である。したがって、Mn含有量は0.3質量%以上とする。一方、Mn含有量が2.0質量%超では、熱処理用鋼材が硬質化して熱処理前において優れた加工性を確保することが困難となる。また、Mnの偏析に起因するバンド状組織を生じやすくなり靭性を劣化させる。したがって、Mn含有量は2.0質量%以下とする。Mn含有量は好ましくは1.5%以下である。
−P(リン)−
Pは、一般に不可避的不純物として含有され、熱処理用鋼材の成形性及び熱処理後の鋼材の靱性を劣化させる作用を有する。P含有量が0.03質量%超では、上記作用による弊害が著しくなる。したがって、P含有量は0.03質量%以下とする。P含有量は好ましくは0.015%以下であり、より好ましくは0.01質量%以下である。
−S(硫黄)−
Sは、一般に不可避的不純物として含有され、熱処理用鋼材の成形性および熱処理後の鋼材の靱性を劣化させる作用を有する。S含有量が0.01質量%超では、上記作用による弊害が著しくなる。したがって、S含有量は0.01質量%以下とする。S含有量は好ましくは0.005質量%以下である。
−sol.Al(soluble Aluminium)−
Alは、脱酸により鋼を健全化する作用を有するので、本実施形態に用いられる鋼材には積極的に含有させてもよい。しかしながら、sol.Al含有量が0.3質量%超では、Ac3点の上昇が著しくなり、炭化物の固溶が遅延するため、焼入れ性の低下を招く。したがって、sol.Al含有量は0.3質量%以下とする。sol.Al含有量は好ましく0.1質量%以下であり、より好ましくは0.08質量%以下である。
上記作用による効果をより確実に得るには、sol.Al含有量を0.005質量%以上とすることが好ましい。なお、soluble Aluminiumとは、鋼材中の全Al量(total Aluminium)から酸素と結合する分のAl量を引いた値として示されるものである。
−N(窒素)−
Nは、一般に不可避的不純物として含有され、熱処理用鋼材の成形性を劣化させる作用を有する。また、鋼中にBを添加した際には、固溶Bと結合してBNを形成することにより、鋼中の固溶Bの量を減じてしまい、後述するBの作用を阻害する作用を有する。N含有量が0.01質量%超では、上記作用による弊害が著しくなる。したがって、N含有量は0.01質量%以下とする。
−その他の任意元素−
本実施形態における鋼材には、上記必須元素以外に、下記に好適な含有量とともに示す元素群から選ばれる1種以上が含まれることが好ましい。
・B(ホウ素)
任意元素であるBは、鋼中に固溶状態で存在することにより、熱処理中において焼入れ性を高めるとともに、熱処理後において靭性を向上させる作用を有する。しかしながら、B含有量が0.005質量%超では、BがFe等と化合物を形成してしまい、Bによる上記作用効果が減殺されてしまう場合がある。したがって、B含有量は0.005質量%以下であることが好ましく、0.003質量%以下であることがより好ましい。なお、上記作用による効果をより確実に得るには、B含有量を0.0001質量%以上とすることが好ましい。
・Ti(チタン)
任意元素であるTiは、焼入れ性を高める作用を有するとともに、鋼中の固溶Nと結合してTiNを形成することにより、鋼中の固溶Nの量を減じて、熱処理用鋼材の成形性を向上させる作用を有する。また、TiはBに比して優先的に鋼中の固溶Nと結合するため、BNの形成による固溶Bの量の低下を抑制し、上述したBの作用をより確実に発揮させる作用を有する。したがって、B添加時にはTiを含有させることが好ましい。しかしながら、Ti含有量が0.1質量%超では、鋼中のCと結合してTiCを多量に形成してしまう場合がある。ここで、熱処理によって鋼材の強度上昇に寄与するCは、熱処理の加熱工程において固溶状態で存在するCである。したがって、鋼中にTiCが多量に形成されると熱処理により鋼材の強度上昇に寄与するCの量を減じてしまい、熱処理後の鋼材において目的とする強度が得られない場合がある。したがって、Ti含有量は0.1質量%以下とすることが好ましく、0.05質量%以下とすることがより好ましい。なお、上記作用による効果をより確実に得るには、Ti含有量を0.005質量%以上とすることが好ましい。
・Cr(クロム)、Nb(ニオブ)、V(バナジウム)、Ni(ニッケル)、Cu(銅)、Mo(モリブデン)及びCo(コバルト)
任意元素であるCr、Nb、V、Ni、Cu、Mo及びCoは、いずれも鋼の焼入れ性を高める作用を有する。また、Nbは、熱処理後の鋼材の靭性を向上させる作用も有する。したがって、本実施形態における鋼材には、Cr、Nb、V、Ni、Cu、Mo及びCoのうちの1種以上を含有させることが好ましい。しかしながら、いずれの元素も過剰に含有させると熱処理前の鋼材の成形性の低下が著しくなる場合がある。また、Cr及びMoは、鋼中の炭化物に濃化して、熱処理の加熱工程における炭化物の固溶を遅延させ、焼入れ性を低下させる場合がある。さらに、Cuの添加は熱間圧延時に赤熱脆性を起こす可能性があり、赤熱脆性を回避するためにはNiを同時添加することが好ましい。
したがって、各元素の含有量の上限は各々以下とすることが好ましい。
Cr:好適には3.0質量%以下、より好適には1.0質量%以下。
Nb:好適には0.1質量%以下、より好適には0.05質量%以下。
V:好適には0.1質量%以下、より好適には0.05質量%以下。
Ni:好適には1.0質量%以下、より好適には0.5質量%以下。
Cu:好適には1.0質量%以下、より好適には0.5質量%以下。
Mo:好適には1.0質量%以下、より好適には0.5質量%以下。
Co:好適には1.0質量%以下、より好適には0.5質量%以下。
また、前記作用による効果をより確実に得るには、Cr:0.02質量%以上、Nb:0.005質量%以上、V:0.005質量%以上、Ni:0.02質量%以上、Cu:0.02質量%以上、Mo:0.02質量%以上及びCo:0.02質量%以上のいずれかを満足させることが好ましい。
なお、以上述べた鋼材中に含まれる元素含有量の測定は、JIS G1253−2002に準じて行われる。
本実施形態において、鋼材の化学組成には、以上の各元素以外の残りのFe(残部Fe)が含まれる。また、前記任意元素は残部Feの一部を占めることとなるため、該任意元素の含有量が増えるほど残部Fe量は減ることとなる。さらに上記鋼材には、P、S、Nの不可避的不純物の他に、例えばCa、Mg、Bi、希土類元素(REM:Rare Earth Metal)などの不純物元素、酸化物、窒化物等が含まれていてもよい。
なお、本実施形態における残部Feとは、鋼材中に前記特定の元素が含有されたFe部以外に存在するFe単独の部分を意味するのではなく、鋼材全体中に均一に含まれる前記特定元素以外のFe元素を意味することは言うまでもない。
次に、前記本実施形態の熱処理方法を、図を用いて説明する。
図1は、本実施形態の熱処理方法を模式的に示す時間及び温度の焼入れ線図である。図において、太い実線(矢印)は本実施形態の熱処理の一例を示す冷却曲線であり、細い実線は連続冷却変態曲線(図において「C.C.T.」と略す)である。また、太い点線はMs温度のラインを、細い点線はオーステナイト化温度のラインを各々示す。
−オーステナイト化工程−
本実施形態の熱処理方法では、まず前述の化学組成を有する鋼材を、図のY軸上のオーステナイト化温度以上に加熱して、鋼材をオーステナイト化する(オーステナイト化工程)。ここで、オーステナイト化温度(Ac3点)は、鋼材の組成によっても若干異なるが、800℃以上950℃以下とすることが好ましく、850℃以上950℃以下とすることがより好ましい。
−焼入れ工程−
そして、上記オーステナイト化工程終了後、オーステナイト状態の鋼材を下記式(1)で表される温度Ms(℃)から(Ms−80)(℃)の範囲の油温に保持した前記熱処理油中に投入し、鋼材の温度を前記油温まで急冷する(焼入れ工程、図1における(a)の曲線)。
Ms(℃)=550−361×[C]−39×[Mn]+30×[Al] ・・・ (1)
(上記式において、[C]、[Mn]及び[Al]は、各々鋼材中のC、Mn及びsol.Al含有量(質量%)を表す。)
また、温度Ms(℃)は、鋼材が前記その他の任意元素を含む場合には、下記式(2)で表される。
Ms(℃)=550−361×[C]−39×[Mn]+30×[Al]−20×[Cr]−35×[V]−17×[Ni]−10×[Cu]−5×[Mo]+15×[Co] ・・・ (2)
(上記式において、[C]、[Mn]、[Al]、[Cr]、[V]、[Ni]、[Cu]、[Mo]及び[Co]は、各々鋼材中のC、Mn、sol.Al、Cr、V、Ni、Cu、Mo及びCo含有量(質量%)を表す。)
前記のように、本実施形態では焼入れ処理において、ベイナイト変態より先にマルテンサイト変態させる必要がある。そして、ベイナイト変態に先んじて冷却中にマルテンサイト変態を起こさせるために、熱処理油温度(すなわち、オーステナイト状態から急冷により到達させる温度)はMs温度以下とする必要がある。また、全てマルテンサイト変態させてしまうと、マルテンサイト及びベイナイトの混合組織効果が発揮されないため、熱処理油温度の下限は(Ms−80)℃とする。
熱処理油温度は、(Ms−20)℃から(Ms−80)℃の範囲とすることがより好ましい。
より具体的には、熱処理油温度は140℃以上300℃以下であることが好ましい。熱処理油温度をこの範囲とすることにより、Ms温度が高い炭素鋼などを鋼材として用いた場合でも、効率的に前記マルテンサイト・ベイナイト混合組織を得ることができる。
熱処理油温度は200℃以上250℃以下であることがより好ましい。
なお、上記焼入れ工程においては、オーステナイトからパーライトなどの組織を生じる変態を避ける必要があり、図1の(a)に示すように、冷却曲線が連続冷却変態曲線(C.C.T.)の鼻を回避するように焼入れを行う。またこの場合、急冷により鋼材が到達する温度T1(℃)の温度降下比に応じて、オーステナイトからマルテンサイトに変態する量比が決定される。そして、鋼材が到達した温度T1(℃)が次工程におけるベイナイト変態の開始温度となる。
本実施形態では、前記熱処理に熱処理油を用いる。Ms温度が高く、焼入れ性の低いS55Cなどの炭素鋼を用いる場合には、ガスでは冷却速度が低く、熱処理は困難である。また、ソルトは環境的に問題があるため、それらの代わりに熱処理油を用いることで、環境に優しく冷却能に優れる熱処理を実現することができる。またその際、従来より高温に対応する熱処理油を用いることが重要である。
上記熱処理油としては、前記鋼材の上部臨界冷却速度よりも速い冷却速度を有する熱処理油を用いる。ここで、該上記臨界冷却速度とは、組織が全てマルテンサイトだけになる最小の冷却速度をいい、焼入れ工程における冷却速度をこれ以上とすることにより、冷却曲線が連続冷却変態曲線(C.C.T.)の鼻を回避するように焼入れを行うことができる(図1)。
本実施形態に用いられる鋼材としては、上部臨界冷却速度が10℃/秒以上のものを用いることが好ましい。
なお、本実施形態において、上部臨界冷却速度は以下の試験方法により求める。すなわち、所定成分を有する鋼材を機械加工して直径3mm×長さ10mmの試験片を複数本作製する。この試験片を高周波誘導加熱炉で10℃/minの加熱速度で所定温度まで昇温した後、0.1〜10℃/minの範囲の一定冷却速度で制御冷却する。この冷却の際における試験片の膨張・収縮を作動トランスを用いて検出し、試験片の時間に対する温度変化および長さ変化(膨張・収縮)から、相変態温度を求める。この操作を冷却速度を順次変更して繰り返し、各冷却速度における相変態温度を求める。これをプロットすることによりC.C.T.(連続冷却変態曲線)図を作成し、この図より上部臨界冷却速度を求めた。
本実施形態における熱処理油としては、基油に必要に応じて各種成分を配合したものが用いられる。
上記基油としては、特に限定されるものではなく、パラフィン基系原油、中間基系原油、又はナフテン基系原油を常圧蒸留した残渣油、又は常圧蒸留の残渣油を減圧蒸留して得られる留出油、さらにはこれらを常法に従って精製することによって得られる精製油、例えば溶剤精製油、水添精製油、脱ロウ処理油、白土処理油などを挙げることができる。
また、合成油としては、例えばα−オレフィンオリゴマー(炭素数6〜16のα−オレフィンをオリゴマー化したもの、及びそれを水素添加したもの)、炭素数2〜16のオレフィンの(共)重合物、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、ポリフェニル系炭化水素、各種エステル類、例えばネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどの多価アルコールの脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレングリコール誘導体などを用いることができる。
これらの中では、溶剤精製油、水添精製油などが特に好ましく用いられる。
上記基油としては、100℃における動粘度が1mm2/s以上50mm2/s以下のものが好ましく使用される。動粘度が1mm2/sより低いと引火しやすく危険な場合があり、また50mm2/sを超えると粘稠すぎて取扱が不便となる場合がある。このような点から、上記動粘度は1.5mm2/s以上45mm2/s以下のものがより好ましく、2mm2/s以上40mm2/s以下のものがさらに好ましく、10mm2/s以上25mm2/s以下のものが特に好ましい。
また基油は、引火点が150℃以上であることが好ましく、170℃以上がより好ましく、230℃以上320℃以下がさらに好ましい。150℃以上であれば、引火等の危険性が低く、同時に熱処理加工時における油煙の発生を抑制することができる。さらに基油は、粘度指数が85以上であることが好ましく、95以上がより好ましい。また、芳香族分(%CA)が10以下が好ましく、7以下がより好ましく、さらには3以下、特に1以下のものが好ましい。粘度指数が85以上であり、芳香族分(%CA)が10以下であれば、熱処理油組成物の酸化安定性を良好に維持することができる。
上記の鉱油及び合成油は、一種のみを単独で用いることもできるが、二種以上を任意の割合で混合して用いることもできる。
本実施形態における熱処理油には、さらに蒸気膜破断剤を配合することができる。この蒸気膜破断剤を配合することにより、蒸気膜段階を短くすることができる。該蒸気膜破断剤としては、例えば高分子ポリマー、具体的にはエチレン−α−オレフィン共重合体、ポリオレフィン、ポリメタクリレート類などや、アスファルタムなどの高分子量有機化合物、油分散型の無機物などを挙げることができる。これらの蒸気膜破断剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、その熱処理油中の含有量は、1質量%以上10質量%以下が好ましく、3質量%以上6質量%以下がより好ましい。この含有量が1質量%以上であると蒸気膜破断剤を加えた効果が充分に発揮され、一方、10質量%以下であると熱処理油組成物の粘度が高くなりすぎず、適度であって、熱処理油組成物としての性能が低下することがない。
本実施形態の熱処理油には、必要に応じ、従来熱処理油に慣用されている添加剤、例えば界面活性剤、劣化酸中和剤、酸化防止剤、光輝性向上剤などを配合することができる。
界面活性剤としては、アルカリ土類金属あるいはアルカリ金属のサリチレート、スルホネート、硫化フィネートなどが挙げられる。アルカリ土類金属としてはカルシウム、バリウム及びマグネシウムが好ましい。またアルカリ金属としてはカリウム、ナトリウムが好ましい。界面活性剤の含有量としては、熱処理油全量基準で、0.1質量%以上10質量%以下が好ましく、0.2質量%以上7質量%以下がより好ましい。
また、劣化酸中和剤としては、例えばアルカリ土類金属のサリチレート、硫化フィネート、スルホネートなどが挙げられる。アルカリ土類金属としては、カルシウム、バリウム及びマグネシウムが好ましい。また、酸化防止剤としては、従来公知のアミン系酸化防止剤やヒンダードフェノール系酸化防止剤などが挙げられる。さらに、光輝性向上剤としては、従来公知の油脂や油脂脂肪酸、アルケニルコハク酸イミド、置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸エステル誘導体などが挙げられる。
本実施形態における熱処理油は、100℃における動粘度が10mm2/s以上50mm2/s以下であることが好ましい。100℃における動粘度が10mm2/s以上であると、高油温での油煙が激しくなることがなく、また蒸気膜段階が長くならないため冷却性の低下をまねくこともない。一方、100℃における動粘度が50mm2/s以下であると、冷却性の低下もなく、作業性も良好である。
また、以上の点から、100℃における動粘度は12mm2/s以上30mm2/s以下であることがさらに好ましい。
また、本実施形態における熱処理油は、その性状については特に制限はないが、引火点が180℃以上であるものが好ましく、190℃以上であるものがより好ましい。また、引火点が、さらに200℃以上、220℃以上、240℃以上、260℃以上など一層高いものがさらに好ましい。このように引火点が高ければ、高油温熱処理に用いるホット油、セミホット油として好適に用いることができる。
また、熱処理油の引火点が200℃以上であれば、消防法の危険物の分類で第四石油類に該当することから、指定数量の規制による制約を緩和でき、さらに、熱処理油の引火点が250℃以上であれば、指定可燃物(非危険物)として取り扱われ、消防法の制約をさらに緩和できる効果がある。
さらに、本実施形態における熱処理油としては、優れた冷却性能を有することが好ましい。ここでいう冷却性能は、具体的には、JIS K 2242における銀試片の冷却曲線の800℃から400℃までの冷却時間(秒数)(以下、「400℃秒数」と称することがある)で表すことができ、その冷却時間が短いものほど冷却性能が良好であり、焼入れ加工によって充分な硬さを有する焼入れ加工物を得ることができることを示している。
本実施形態における熱処理油は、前記のように、鋼材の上部臨界冷却速度より速い冷却速度を有する必要があるが、このために、熱処理油の400℃秒数は4.5秒以下であることが好ましい。400℃秒数がこの範囲であれば、十分な硬度を維持しつつ、他の変態を生ずることなく鋼材をベイナイト変態の開始温度T1(℃)に急冷させることができる。さらに望ましくは、400℃秒数は3.5秒以下であることがより好ましい。
−保持工程−
次に、前記急冷された鋼材を、図1の(b)に示すように油温T1(℃)のまま所定時間保持し、残りのオーステナイトのベイナイトへの変態を開始させ、マルテンサイト・ベイナイト混合組織を生じさせる。最終的な混合組織は、マルテンサイトとベイナイトとがそれぞれ混合した硬くて靭性のある組織となる。また、鋼材はMs温度以下の温度で維持すると、表面と芯部とが同じ温度になるため、熱による内部応力は少なくなり変形が防止できる。
この温度に保持する時間が長くなればなるほど、ベイナイト組織の分量(占有率)が増大する。その場合、発生するベイナイトの量は変態範囲における保持時間に比例しない。この保持時間を変更することにより、組織内における占有率(ベイナイト、マルテンサイト、残留オーステナイト)が変化し、これによって製品特性が変化する。
ベイナイト変態完了までの保持時間は、各素材成分及び熱処理油温により変化するが、熱処理条件を模擬したヒートパターン中の熱膨張を測定し、保持中に膨張が飽和する時間より求めることができる。保持時間は特に制限されないが、10分以上2時間以下とすることが好ましい。
その後、図1の(c)に示すように、鋼材は室温まで冷却される。冷却は空冷で行ってもよいし、その他の冷却手段を用いてもよい。また、等温変態の完了を待たずに、硬さ調整のために別の熱処理手段により焼戻し処理を施してもよい。
以上詳述した、本実施形態の熱処理方法により鋼材の熱処理を行えば、ソルトを使用しないで、強度と靭性とを両立できるマルテンサイト及びベイナイトの混合組織を発生させることができる。特に、鋳鉄などに比べるとMs温度が高い炭素鋼を用いた場合でも、寸法変化や疲労特性に優れる組織を得ることができる。また、オーステナイト化温度から熱処理油に焼入れしたのち、一定時間保持するのみで、目的の組織を得ることができるので、処理方法が極めて簡素である。さらに、焼入れを特定の熱処理油を用いて行うため、冷却をガスで行う場合に比べ、量産性及び冷却能に優れた熱処理が可能となる。
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。なお、以下の実施例における分析値、物性値等の測定、使用鋼材、熱処理油等は、下記の通りである。
<分析、物性測定法>
(1)鋼材中の元素含有量
鋼材中に含まれる元素含有量の測定は、JIS G1253−2002に準じて、発光分光分析法により行った。
(2)ビッカース硬さ
ビッカース硬度計を用い、直径3.75mmの被測定物の半径の1/2位置で測定を行った。
(3)シャルピー衝撃値
幅2.5mm、高さ10mm、長さ55mmのUノッチ試験片(ノッチ深さ:2mm)を用い、JIS Z 2202に準じてシャルピー衝撃値を測定した、なお、測定は室温(20℃)にて行った。
(4)熱処理油の冷却性能
JIS K 2242に規定される冷却性能試験に準拠して、810℃に加熱した規定の銀試片を試料(熱処理油)に投入し、銀試片の冷却曲線を測定した。この冷却曲線の800℃から400℃までに冷却されるのに要する冷却時間(400℃秒数)を冷却性能として測定した。この秒数が小さい程冷却性能が高いことを示す。
(5)熱処理油の100℃における動粘度
JIS K 2283に準拠して測定した。
(6)熱処理油の引火点
JIS K 2265(C.O.C法)に準拠して測定した。
<使用鋼材、熱処理油>
(1)鋼材
炭素鋼である下記第1表の化学組成を有するS55C及びS60Cを用いた。
また、このような組成を有するMs温度は、S55Cで315℃、S60Cで300℃である。また、これらの上部臨界冷却速度は、S55Cで30℃/秒、S60Cで30℃/秒である。
Figure 0005792108

なお、上記第1表に示すように、S55C及びS60Cには検出限度内でCr以外のその他の任意元素は含まれない。
(2)熱処理油
熱処理油としては、高油温焼入ホット油「ダフニーハイテンプオイルAS」(出光興産(株)製、基油:水添精製油、添加剤:酸化防止剤としてアルカリ土類金属のサリシレート、スルホネートを含有)を用いた。なお、上記熱処理油の特性は以下の通りである。
・引火点:276℃
・動粘度(40℃:182.8mm2/s、100℃:17.93mm2/s)
・酸価:0.48mmKOH/g
・塩基価:5.4
・400℃秒数:3.2秒
<実施例1>
(1)熱処理
下記の実験条件で熱処理を行った。
・被処理材(試験片):S55C、幅2.5mm×高さ10mm×長さ55mm
・加熱条件:840℃×50分
・焼入れ条件:油温250℃、強攪拌
・保持時間:30分(冷却時間を含む)
(2)評価
焼入れ処理物について、前記条件にしたがってビッカース硬さ及びシャルピー衝撃値を測定した。結果を第2表に示す。
<実施例2及び比較例1〜5>
各々第2表に示すように、鋼材種、油温等を変更した以外は、実施例1と同様にして鋼材の熱処理を行い、得られた処理材について同様の評価を行った。なお、比較例4及び5については、冷却剤をソルトとし、また比較例2及び3については、焼戻し処理を行った。結果をまとめて第2表に示す。
Figure 0005792108
第2表の結果に関し、まず鋼材としてS55Cを用いた場合には、材料のMs温度が315℃であるので、315℃〜235℃((Ms−80)℃)の油温に焼き入れることが望ましい。そして、油温を250℃とした実施例1では、硬さと耐衝撃値との両方が高い結果となっており、良質なマルテンサイト・ベイナイト混合組織が得られている。
一方、油温を各々210℃、120℃とした比較例1、2では、硬さは十分得られるが耐衝撃値が低い。これは、組織がマルテンサイト主体となり、ベイナイトがほとんど発生していないためである。また、耐衝撃値を上げるには焼戻し処理が効果的であるが、比較例2において、油温120℃のテストピースについては、230℃×2時間の焼戻し処理を行ったが、耐衝撃値は低かった。
また、鋼材としてS60Cを用いた場合には、材料のMs温度が300℃であるので、300℃〜220℃((Ms−80)℃)の油温に焼き入れるのが望ましい。そして、油温を250℃とした実施例2では、硬さと耐衝撃値の両方が高い結果となっており、良質なマルテンサイト・ベイナイト混合組織が得られている。
一方、油温を70℃とした比較例3では、硬さは十分得られるが耐衝撃値が低い。これは、組織がマルテンサイト主体となり、ベイナイトがほとんど発生していないためである。また、耐衝撃値を上げるには焼き戻しが効果的であるが、比較例3において、油温70℃のテストピースについては、230℃×2時間の焼き戻しを行ったが、耐衝撃値は低かった。
さらに、冷却剤としてソルトを用い、ソルト温度を各々330℃、340℃とした比較例4、5では、いわゆるオーステンパー処理となるため処理後は全てベイナイト組織となり、シャルピー衝撃値は高いが、硬さに劣る結果となった。
本発明の熱処理方法では、従来のオーステンパー処理に用いられていたソルトを使用しないで、強度と靭性とを両立できるマルテンサイト及びベイナイトの混合組織を発生させることが可能であり、特に、従来のオーステンパー処理に比べ、ベイナイト組織の靭性が同程度でありながら強度に優れる混合組織を得ることができる。また、工程が極めて簡素な鋼材の熱処理方法を提供することができる。

Claims (6)

  1. 質量%基準で、C:0.25以上1.0以下、Si:1.0以下、Mn:0.3以上2.0以下、P:0.03以下、S:0.01以下、sol.Al:0.3以下、及びN:0.01以下を含有し、残部Feを含む化学組成を有する鋼材をオーステナイト化温度以上に加熱し、オーステナイト化する工程と、
    前記鋼材の上部臨界冷却速度よりも速い冷却速度を有する熱処理油を用い、下記式(1)で表される温度Ms(℃)から(Ms−80)(℃)の範囲の油温に保持した前記熱処理油中に前記オーステナイト化した鋼材を投入して、該鋼材の温度を前記油温まで急冷して焼入れする工程と、
    前記急冷された鋼材を、前記油温のまま10分以上2時間以下保持し残留オーステナイトをベイナイトに変態させる工程と、を有する鋼材の熱処理方法。
    Ms(℃)=550−361×[C]−39×[Mn]+30×[Al] ・・・ (1)
    (上記式において、[C]、[Mn]及び[Al]は、各々鋼材中のC、Mn及びsol.Al含有量(質量%)を表す。)
  2. 前記化学組成において、前記残部Feの一部が、質量%基準で、B:0.005以下、Ti:0.1以下、Cr:3.0以下、Nb:0.1以下、V:0.1以下、Ni:1.0以下、Cu:1.0以下、Mo:1.0%以下及びCo:1.0以下からなる群から選ばれた1種以上であり、前記温度Ms(℃)が下記式(2)で表される請求項1に記載の熱処理方法。
    Ms(℃)=550−361×[C]−39×[Mn]+30×[Al]−20×[Cr]−35×[V]−17×[Ni]−10×[Cu]−5×[Mo]+15×[Co] ・・・ (2)
    (上記式において、[C]、[Mn]、[Al]、[Cr]、[V]、[Ni]、[Cu]、[Mo]及び[Co]は、各々鋼材中のC、Mn、sol.Al、Cr、V、Ni、Cu、Mo及びCo含有量(質量%)を表す。)
  3. 前記熱処理油の油温が、140℃以上300℃以下である請求項1または2に記載の熱処理方法。
  4. 前記熱処理油の100℃動粘度が、10mm/s以上50mm/s以下である請求項1〜3のいずれかに記載の熱処理方法。
  5. 前記上部臨界冷却速度が、10℃/秒以上である請求項1〜4のいずれかに記載の熱処理方法。
  6. 前記熱処理油の400℃秒数が、4.5秒以下である請求項1〜5のいずれかに記載の熱処理方法。
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