[第1の実施形態]
≪フレキシブルプリント配線板(FPC)およびフレキシブル回路板の構成≫
第1の実施形態にかかるフレキシブル回路板1は、TAB(Tape Automated Bonding)用のFPC2(フレキシブルプリント配線板:Flexible Print Circuit)に、半導体デバイスや受動素子などの電子部品11が実装されるという構成を有する。フレキシブル回路板1は、FPC2に電子部品11が実装された状態で、FPC2の曲げ加工によって形成された立体形状を保持することができる。または、フレキシブル回路板1は、照明装置(後述)などの他の電子装置に組み込まれて使用される。なお、第1の実施形態において、フレキシブル回路板1に適用されるFPC2のベースフィルム21は、実装される電子部品11などの放熱の機能も有する。
FPC2とこのFPC2が適用されたフレキシブル回路板1の構成について、図1と図2を参照して説明する。図1は、FPC2が適用されたフレキシブル回路板1の構成の例を示す平面模式図である。図2は、フレキシブル回路板1の構成の例を示す断面模式図であって、図1のII−II線断面図である。なお、図1と図2は、フレキシブル回路板1が立体形状に形成される前の平板状の状態を示す。また、図1は、ロール・トゥ・ロール(roll to roll)工法によって製造された直後の状態を示す。製造後、切断線A−A,B−B,C−C,D−D,E−Eで切断することによって、フレキシブル回路板1はピース(小片)に分離される。
フレキシブル回路板1は、例えばTAB用のFPC2と、このFPC2の表面に実装される半導体デバイスや受動素子などの電子部品11と、FPC2の一方の表面に貼り付けられているカバー層の例であるカバーフィルム12とで構成される。
FPC2は、ベースフィルム21と、ベースフィルム21の一方の表面に積層して形成される第1接着剤層22と、第1接着剤層22によって接着される導体パターン23とを有する。このため、FPC2は、ベースフィルム21と、第1接着剤層22と、導体パターン23との三層積層構造を有する。
ベースフィルム21は、第1金属シート211と、第1金属シート211の両面を被覆する絶縁膜212とを有する。絶縁膜212は、電気的な絶縁性の他に、第1接着剤層22との易接着や、導体パターン23を形成する際の薬品から第1金属シートを保護するなどの目的としている。ベースフィルム21には、TAB用のスプロケットホール202が形成されるとともに、ベースフィルム21の曲げ位置242(後述)にはFPC2を立体形状に形成するためのスリット孔201(後述)が形成される。さらに、ベースフィルム21には、固定のためのネジなどを挿通する固定孔204が形成される。このほか、ベースフィルム21には、電子部品11の例である半導体デバイスや受動・能動素子を実装するためのデバイスホールなどが形成されていてもよい。これらのスプロケットホール202やスリット孔201や固定孔204やデバイスホールは、ベースフィルム21を厚さ方向に貫通する開口部(貫通孔)である。このように、ベースフィルム21には、第1金属シート211とその両面を被覆する2層の絶縁膜212とを厚さ方向に一連に貫通する開口部が形成される。
第1金属シート211は、塑性変形を利用して立体形状に曲げ加工された場合に、形成された立体形状(曲げ加工された立体形状)を保持できる剛性を有する。たとえば、第1金属シート211には、厚さが約80μmのアルミニウム箔が適用できる。なお、第1金属シート211としてのアルミニウム箔の厚さは、80μmに限定されるものではない。第1金属シート211としてのアルミニウム箔は、FPC2が立体形状に曲げ加工された場合に、曲げ加工された立体形状を保持できる剛性を有する厚さであればよい。曲げ加工された立体形状を保持するためのアルミニウム箔の厚さは、10μm以上であることが好ましく、30μm以上であることがより好ましい。
ただし、立体形状を保持するために好ましい厚さは、フレキシブル回路板1の寸法や形状、実装される電子部品11の配置位置などの条件にも依存する。したがって、アルミニウム箔の厚さは、これらの条件に応じて適宜設定される。例えば、フレキシブル回路板1の製造にロール・トゥ・ロール(roll to roll)法を適用する場合には、アルミニウム箔の厚さは、約20〜150μmの範囲であることが好ましい。また、フレキシブル回路板1の製造にパネル加工法(FPC2を所定のサイズのパネルごとに加工する方法)を適用する場合には、第1金属シート211としてのアルミニウム箔の厚さは、30〜400μmの範囲であることが好ましい。
このように、第1金属シート211は、FPC2(フレキシブル回路板1)が曲げ加工された立体形状を保持するための強度部材としての機能を有する。さらに、第1金属シート211は、FPC2に実装される電子部品11の熱を放熱する機能や、電磁シールドとしての機能を有する。すなわち、第1金属シート211は、樹脂材料からなるシートに比較して熱伝導率が高いため、優れた放熱の機能を有する。また、第1金属シート211は電磁波を遮断するため、導体パターンや電子部品11が外部にノイズを放射することや、外部からのノイズの影響を受けることを防止または抑制できる。
絶縁膜212には、樹脂材料からなる有機絶縁膜が適用される。例えば、第1金属シート211をキズや腐蝕から保護するために、耐熱性・耐薬品性に優れたポリイミド樹脂やポリアミドイミド樹脂が好ましい。第1の実施形態では、厚さが約4μmのポリイミド樹脂の膜(有機絶縁膜)が適用できる。このような薄い有機絶縁膜によれば、FPC2に実装された電子部品11の発する熱を、絶縁膜212を経由して第1金属シート211に伝達させやすくなり、かつ第1金属シート211の熱をフレキシブル回路板1の外部に放散させやすくなる。したがって、電子部品11の冷却の効果を高めることができる。
第1接着剤層22には、例えば、東レ株式会社製で厚さが12μm程度の商品名「TAB用接着剤#8200」が適用できる。このTAB用接着剤は、エポキシ樹脂を主体にしたシートであり、電気絶縁性が高く、熱伝導率が1W/(m・K)程度である。なお、熱伝導性の向上を図るためには、第1接着剤層22はできるだけ薄いことが熱伝導の点で好ましい。
導体パターン23は、導体箔24(図5C参照)から形成される。導体箔24は、第1接着剤層22によって、ベースフィルム21の一方の絶縁膜212の表面に加熱圧着式のラミネータを用いて接着される。導体箔24には、たとえば厚さが35μmの電解銅箔(規格市販品)が適用できる。なお、導体パターン23の具体的な構成は、フレキシブル回路板1の用途や機能などに応じて適宜設定されるものであり、限定されるものではない。
導体パターン23の一部は、カバー層の例であるカバーフィルム12によって被覆される。カバーフィルム12には、たとえば、厚さが約5μmのアラミド樹脂フィルム121と、厚さが約30μmのエポキシ樹脂からなるカバー接着剤層122との積層構造を有するフィルムが適用できる。また、導体パターン23のうち、カバーフィルム12に被覆されずに露出する部分には、メッキ層13が形成される。
電子部品11は、フレキシブル回路板1(FPC2)の用途などに応じて適宜実装されるものであり、種類などは限定されるものではない。第1の実施形態においては、フレキシブル回路板1が照明装置に適用される例を示す。このため、電子部品11として、発光素子であるLED111と、LED111に流す電流を制御する定電流レギュレーター112とが実装される例を示す。図1と図2においては、2個のLED111と1つの定電流レギュレーター112とが直列接続に並ぶように実装される例を示す。
ここで、曲げ位置242に形成されるスリット孔201について説明する。曲げ位置242は、FPC2(フレキシブル回路板1)を山折りまたは谷折りに屈曲させる位置をいうものとする。スリット孔201は、ベースフィルム21を厚さ方向に貫通する開口部であり、FPC2(フレキシブル回路板1)を所望の立体形状に曲げ加工するために形成される。たとえば、図1に示すように、スリット孔201はFPC2の短手の方向に細長い形状を有する。そして、曲げ位置242には、複数のスリット孔201が、ミシン目のように直列に並べて形成される。換言すると、スリット孔201の列によって曲げ位置242を特定する。図1では、曲げ位置242を一点鎖線で示す。また、図1では、3つのスリット孔201が直列に形成される構成を示すが、スリット孔201の数は限定されない。さらに、図1においては、スリット孔201が細長い形状に形成される構成を示すが、スリット孔201はこのような形状に限定されない。たとえば、スリット孔201が円形や多角形に形成され、複数のスリット孔201がミシン目状に直列に並ぶように形成される構成であってもよい。また、スリット孔201の幅は、第1金属シート211であるアルミニウム箔の厚さなどに応じて適宜設定される。たとえば、スリット孔201の幅は、0.7mm以上であることが好ましい。なお、曲げ位置242以外の部分、例えば、曲げ位置242どうしの間の部分は、曲げ加工されずに平板状の形状を保持する平板部241となる。このため、換言すると、平板部241どうしの境界に曲げ位置242が設けられることになる。
図3は、FPC2(フレキシブル回路板1)が立体形状に曲げ加工された状態の例を示す断面模式図である。曲げ位置242は、ミシン目状にスリット孔201の列が形成されるため、他の部分に比較して剛性が低い。このため、FPC2は、ミシン目状にスリット孔201が形成される領域を折り目として曲がりやすい(塑性変形しやすい)。そこで、図3に示すように、曲げ位置242上にミシン目状のスリット孔201の列を形成することによって、FPC2を所望の立体形状に形成することが容易となる。勿論、スリット孔201の形状は、細長孔の形状に限定されるものではなく、ミシン目状に丸孔の列を形成しても良い。なお、曲げ位置242は、FPC2をどのような立体形状に形成したいかに応じて適宜線状に設定されるものであり、特に限定されるものではない。
このように、曲げ位置242に複数のスリット孔201がミシン目状に設けられる構成であると、フレキシブル回路板1(FPC2)の立体形状の形成が容易となる。特に、フレキシブル回路板1の曲げ形状や曲げ位置242の精度の向上を図ることができるという効果を奏する。そして第1金属シート211にアルミニウム箔が適用される場合には、第1金属シート211の厚さが50μm以上であると、この効果が顕著に現れるようになる。
ここで、上述のフレキシブル回路板1(FPC2)のもう一つの追加例について、図4を参照して説明する。図4は、フレキシブル回路板1の追加例を示す平面模式図である。なお、図1と共通の構成については同じ符号を付し、説明を省略する。図4に示す追加例に係るフレキシブル回路板1(FPC2)において、曲げ位置242に設けられるスリット孔201は、平面視において導体パターン23と重畳する位置には設けられない。これは、フレキシブル回路板1の曲げ加工による変形によって、導体パターン23がダメージを受けることを防止または抑制するためである。このような構成によれば、平面視においてスリット孔201が導体パターン23に重畳する位置に設けられる構成に比較して、導体パターン23が曲げ加工において受けるダメージを格段に低減させることができる。
また、カバーフィルム12には、スリット孔201に対応する位置に、対応するスリット孔201よりも大きい開口部123が形成される。すなわち、スリット孔201の周縁部が、カバーフィルム12に被覆されずにこの開口部123から露出している。このような構成によれば、カバーフィルム12のカバー接着剤層122がスリット孔201の内部に回り込んで付着することが防止される。さらに、フレキシブル回路板1の曲げ位置242(ここでは、スリット孔201の周囲を含む領域)におけるカバーフィルム12の面積が小さくなる。このため、フレキシブル回路板1の曲げ変形は、主にベースフィルム21の塑性変形の支配を受けることになり、カバーフィルム12の弾性力などの影響が小さくなる。したがって、フレキシブル回路板1は、曲げられた形状に保持されやすくなる。
なお、スリット孔201が丸孔に形成されてミシン目のように配列される構成であっても、前述の追加例にかかる構成の効果が得られる。さらに、前述の追加例にかかる構成は、カバーフィルム12が、有機材料を含む絶縁性の保護膜であるソルダーレジストに代替えされた場合であっても、前述の効果を奏することができる。
≪フレキシブル回路板の製造方法≫
次に、フレキシブル回路板1の製造方法について、図5A〜図5Gを参照して説明する。図5A〜図5Gは、フレキシブル回路板1の製造方法の各工程を示す断面模式図である。なお、図5A〜図5Gにおいては、図1に示すフレキシブル回路板1の製造方法の各工程を示すが、図4に示す追加例に係るフレキシブル回路板1も、これらの図5A〜図5Gに示す工程を同じ工程で製造される。
第1の実施形態においては、フレキシブル回路板1の製造方法として、ロール・トゥ・ロール工法が適用できる。ロール・トゥ・ロール工法では、フレキシブル回路板1は、ロールに巻かれた長尺のベースフィルム21を開始材料として、他方のロールに巻き取りながら連続的に製造される。
まず、図5Aに示すように、第1金属シート211と2つの絶縁膜212とからなるベースフィルム21の一方の表面に、第1接着剤層22が積層される。第1金属シート211には、約80μmの厚さのアルミニウム箔が適用される。絶縁膜212には、たとえば、厚さが約4μmのポリイミド樹脂の膜(有機絶縁膜)が適用される。なお、ロール・トゥ・ロール工法によってフレキシブル回路板1を製造するためには、第1金属シート211であるアルミニウム箔の厚さは、20〜150μmの範囲にあることが好ましい。第1接着剤層22には、前記のとおり、商品名「TAB用接着剤#8200」が適用できる。この場合には、第1接着剤層22がベースフィルム21の絶縁膜212の表面にラミネートされる。
次いで、図5Bに示すように、第1接着剤層22が積層されたベースフィルム21に、スプロケットホール202やスリット孔201や固定孔204などの開口部(貫通孔)が形成される。これらの開口部の形成には、プレス型を用いた打ち抜き加工が適用できる。スプロケットホール202やスリット孔201や固定孔204は、ベースフィルム21と第1接着剤層22とを一連に貫通する開口部である。なお、スリット孔201は、曲げ位置242上にミシン目状に直列に配列されることが好ましい。スリット孔201の幅は特に限定されるものではないが、たとえば0.7mm以上の幅が好適である。特に、この幅が0.7mm以上であると、他の孔(デバイスホールやスプロケットホール202)の加工同様に型抜き加工が容易に出来ることから、生産性に優れる。
次いで、図5Cに示すように、第1接着剤層22の表面に、導体箔24が加熱・加圧されて貼り付けられる。第1の実施形態では、導体箔24として、市販の厚さが35μmの電解銅箔が適用できる。以上のように、第1の実施形態では、第1接着剤層22がベースフィルム21にラミネートされた段階で、スプロケットホール202やスリット孔201が形成される。そしてその後、導体箔24が第1接着剤層22の表面に貼り付けられる。
次いで、図5Dに示すように、導体箔24から導体パターン23が形成される。導体パターン23の形成には、公知の写真蝕刻法(フォトリソグラフィ法)が適用できる。導体パターン23の形成の際に、導体箔24のスリット孔201から露出している部分がエッチングされないように、当該露出している部分を裏止め剤と呼ばれるエッチングレズストによりコーティングしておく。
次いで、図5Eに示すように、導体パターン23を保護するカバー層の例であるカバーフィルム12が貼り付けられる。カバーフィルム12には、たとえば、厚さが約5μmのアラミド樹脂フィルム121と、厚さが約30μmのエポキシ樹脂からなるカバー接着剤層122との積層構造を有するフィルムが適用できる。また、カバーフィルム12は、あらかじめ、完成後のフレキシブル回路板1に応じた外形に形成されるとともに、電子部品11を接続するための部品端子などに相当する位置に開口部(貫通孔)が形成される。そして、カバーフィルム12は、外形と開口部の加工がされてから、第1接着剤層22と導体パターン23を覆うように貼り付けられ、加熱圧着される。
次いで、図5Fに示すように、導体パターン23のうち、カバーフィルム12に覆われていない部分にメッキ層13が形成される。メッキ層13は、下地となるニッケルメッキ層131と、ニッケルメッキ層131を覆う金メッキ層132の積層構造が適用できる。以上の工程を経て、カバーフィルム12が貼り付けられたFPC2が製造される。
次いで、図5Gに示すように、カバーフィルム12が貼り付けられたFPC2に電子部品11が実装される。電子部品11の実装には、たとえば、導体パターン23に含まれる部品端子にソルダーペーストを印刷して実装するリフローソルダリング法が適用できる。電子部品11が実装されたフレキシブル回路板1は、図1に示す切断線A−A,B−B,C−C,D−D,E−Eで切断されて個別のピース(小片)に分離される。以上の工程を経て、フレキシブル回路板1が製造される。
FPC2(フレキシブル回路板1)は、第1金属シート211の塑性変形を利用して立体形状に形成することができる。この際に、曲げ位置242にミシン目状のスリット孔201の列が形成される構成であると、FPC2を設計された立体形状に形成することが容易となる。そして、FPC2は、第1金属シート211の剛性によって、形成された立体形状を保持することができる。つまり、FPC2は、山折りまたは谷折りに屈曲する曲げ位置242と、中央にLED実装され2つの曲げ位置242に挟まれた平板部241とで立体形状を形成したフレキシブル回路板1に製作される。
このように、第1の実施形態(前述の追加例を含む)によれば、従来技術のような、銅箔と樹脂のベースフィルムとが積層するように接合されたフレキシブル銅張板や、板状基材母材とフレキシブル銅張板とを接合する絶縁樹脂層として用いられる熱可塑性フィルムが不要である。そして、これらを接合して積層する工程も不要である。しがって、FPC2(フレキシブル回路板1)の製造のために、材料や工程の増加を防止または抑制することができる。
さらに、第1の実施形態によれば、FPC2の曲げ位置242にスリット孔201に形成されることによって、FPC2(フレキシブル回路板1)を所望の立体形状に形成することが容易となる。そして、スリット孔201の形成は、スプロケットホール202などの形成と同じ工程で同時にできるから、工程数の増加を招かない。
≪電子装置(第1の例)≫
フレキシブル回路板1が適用される電子装置の第1の例について説明する。電子装置の第1の例として、照明装置5を示す。図6は、電子装置の第1の例である照明装置5の構成を示す断面模式図である。この例に示す照明装置5は、発光素子として複数のLED111を有し、拡散するような光を発することができる。照明装置5は、フレキシブル回路板1と、このフレキシブル回路板1が取り付けられる支持部材51とを含む。照明装置5は、このほかに筺体などの部材を有してもよいが、ここでは図示および説明を省略する。
FPC2(フレキシブル回路板1)の曲げ位置242には、スリット孔201の列が、ミシン目状に短手方向に直列に並ぶ方に形成される。そして、このようなスリット孔201の列が、長手方向に所定の間隔をおいて形成される。スリット孔201の列どうしの間には、電子部品11として、複数(図6の例では2つ)のLED111およびこれらのLED111に流す電流を調整する定電流レギュレーター112とが実装される。さらに、フレキシブル回路板1には、外部の電源から電力の供給を受けるための給電ケーブル53が接続される。説明の便宜上、ミシン目状のスリット孔201の列どうしの間の領域であって、複数のLED111と定電流レギュレーター112とが実装される1つの領域を、1つの「ブロック」と記す。
支持部材51の支持面511(フレキシブル回路板1が取り付けられる面をいう)は、所定の立体形状に形成される。本実施例では、支持面511は、法線方向が互いに異なる複数の平面によって形成され、全体として曲面状に張り出す凸状の構成を有する。フレキシブル回路板1のFPC2は、ミシン目状のスリット孔201の列が形成される曲げ位置242において曲げ加工され、支持部材51の支持面511に沿った立体形状に形成される。そして、フレキシブル回路板1は、立体形状に形成された状態で支持部材51に固定される。たとえばフレキシブル回路板1の1つのブロックが、支持部材51の支持面511を構成する1つの平面上に位置する。このような構成により、フレキシブル回路板1に実装されるLED111の光軸の方向をブロックごとに異ならせ、LED111が発する光が広がるようにできる。このように、本実施例では、フレキシブル回路板1のFPC2を曲げ加工することによって、複数のLED111の光軸の向きを互いに異ならせる。これにより、所望の方向に光を照射する照明装置5を製造することができる。なお、スリット孔201の列の位置は、支持部材51の支持面511の構成に応じてあらかじめ設定されている。
また、フレキシブル回路板1のFPC2は、各ブロックのLED111の近傍においてネジ52により支持部材51に固定される。たとえば、1つのブロックに2つのLED111が実装される構成であれば、2つのLED111の間に固定孔204が形成され、この固定孔204に固定用のネジ52を挿通することにより、各ブロックが支持部材51の支持面511に固定される。このような構成によれば、各ブロックのLED111の近傍において、FPC2が支持部材51に接触する。このため、LED111の発する熱が支持部材51に伝達しやすくなる。また、金属のネジ52を用いる構成であれば、LED111の発する熱をネジ52によっても支持部材51に伝達できる。したがって、LED111の冷却の効果を高めることができる。
なお、フレキシブル回路板1のFPC2を支持部材51に固定する方法は、ネジ52よる固定に限定されるものではない。たとえば、各ブロックのLED111の近傍において、FPC2を熱伝導率の高い接着剤によって支持部材51に接着する構成であってもよい。このような構成であっても、LED111の発する熱を支持部材51に伝達しやすくできる。
≪電子装置(第2の例)≫
フレキシブル回路板1が適用される電子装置の第2の例について説明する。第2の例は、フレキシブル回路板1を立体形状に形成することにより、FPC2に電子装置の筐体としての機能を持たせる例である。ここでは、電子装置の第2の例として、カプセル内視鏡に組み込まれる撮像装置6(デジタルカメラ)を示す。図7は、撮像装置6の構成の例を示す斜視図である。図7に示すように、FPC2(フレキシブル回路板1)は、立体形状の一例として、有底の四角筒状に形成される。図7においては、手前側が四角筒の開放側であり、奥側が四角筒の底側である。そして、四角筒の内側に、カメラモジュール61や発光素子としてのLED111などの所望の電子部品11が配置される。このような構成においては、FPC2が撮像装置6の筐体としての機能を有する。そして、電子部品11は、筺体としてのFPC2に支持される。
図8は、FPC2(フレキシブル回路板1)が立体形状の筐体に形成される前の状態を示す平面模式図である。図8に示すように、FPC2は、曲げ加工される前においては、有底の四角筒の展開図のような構成を有する。そして、FPC2の曲げ位置242には、ミシン目状のスリット孔201の列が形成される。曲げ位置242にミシン目状のスリット孔201の列が形成される構成であると、フレキシブル回路板1を有底の四角筒状の構成に曲げ加工することが容易となる。なお、本実施例においては、フレキシブル回路板1は、電子部品11が実装される側の面から見て谷折りになるように折り曲げされる。
そして、四角筒の4つの側面の内周側の面に対応する領域には、電子部品11として、それぞれ、カメラモジュール61と、制御用IC62と、画像データ処理IC63と、インターフェースIC64とが実装される。また、四角筒の4つの側面の内周側の面に対応する領域のそれぞれには、LED111が実装される。さらに、四角筒の4つ側面のうちの1つに対応する領域には、プリントコンタクト部65が形成される。
カメラモジュール61は、レンズとCCDユニットとを含んで構成される。制御用IC62は、カメラモジュール61を制御する。画像データ処理IC63は、カメラモジュール61が生成した画像データから、撮像装置6の外部に送信するための送信用データを生成する。インターフェースIC64は、撮像装置6と外部の機器との信号やデータの送受信を制御する。プリントコンタクト部65は、撮像装置6が外部と信号などの送受信を行うための信号線や、電力の供給を受けるための給電ケーブル53を接続するための部分である。このほか、フレキシブル回路板1には、キャパシタや抵抗などといった撮像装置6を構成するための素子が実装されることがあるが、ここでは図示と説明を省略する。
カメラモジュール61は、平面視において三方をU字形状の貫通孔203に囲まれ、残りの一方(四角筒の開放側)を曲げ位置242(スリット孔201の列)に囲まれる。そして、曲げ位置242において三方をU字形状の貫通孔203に囲まれる部分を曲げ起こす。これにより、カメラモジュール61のレンズおよびCCDユニットの光軸を四角筒の開放側に向け、かつ、四角筒の軸線と平行にすることができる。LED111も、カメラモジュール61と同様に、平面視における三方をU字形状の貫通孔203に囲まれ、残りの一方を曲げ位置242(スリット孔201の列)に囲まれる。そして、曲げ位置242においてU字形状の貫通孔203に囲まれる部分を曲げ起こすことにより、LED111の発する光を被写体に向けて照射することができる。このような構成によれば、FPC2の曲げ位置242にスリット孔201の列を形成し、曲げ位置242においてFPC2を曲げ起こすことにより、カメラモジュール61やLED111などの電子部品11を所定の位置に配置することができる。したがって、このような構成によれば、必要な電子部品11の配置が容易となる。
本実施例では、カメラモジュール61やLED111などがFPC2に実装され、その後、カメラモジュール61が実装される領域とLED111が実装される領域が曲げ起こされ、さらにその後、フレキシブル回路板1がスリット孔201の列が形成される曲げ位置242で折り曲げられて底面が塞がれた四角筒状の筺体に形成される。このような構成によれば、FPC2は撮像装置6の筐体として機能し、カメラモジュール61やLED111などの電子部品11を支持する。このように曲げたFPC2によってレンズの光軸方向やLEDの照射方向を調整し固定することが出来る。また、FPC2の実装面(電子部品11が実装される側の面)が、四角筒の内周側に位置するように曲げられる。このような構成によれば、FPC2に実装される電子部品11は、ベースフィルム21の第1金属シート211に囲まれることになる。したがって、FPC2に実装される電子部品11が発するノイズを遮断できるとともに、外部からのノイズの影響(たとえば、周囲に存在する高周波回路から受けるEMIの影響)を防止または低減できる。なお、カメラモジュール61とLED111の三方を囲むU字状の貫通孔203は、ベースフィルム21にスプロケットホール202やスリット孔201を形成する工程において、同時に形成される。
以上説明したように、この例によれば、FPC2(フレキシブル回路板1)を立体的な形状に形成することにより、FPC2に電子装置(撮像装置6)の筐体としての機能を持たせることができる。また、このような構成によれば、カメラモジュール61やLED111などの電子部品11が発する熱を、ベースフィルム21の第1金属シート211を介して放散することが容易となる。この場合、FPC2にヒートシンクなどを取り付けてもよい。
≪電子装置(第3の例)≫
フレキシブル回路板1が適用される電子装置の第3の例について説明する。第3の例は、第1金属シート211が塑性変形を利用して曲げ加工された構成において、曲げ加工された形状によって、LED111(発光素子)の光軸の方向が決定される例である。近年、四輪自動車のヘッドランプ(車両用灯具)には、歩行者や対向車に対して注意を促すため、DRL(Daytime Running Lamp)と呼ばれる常時点灯する照明装置が収容されているものがある(特開2012−48896号公報参照)。第3の例は、フレキシブル回路板1が適用される例として、四輪自動車のヘッドランプのDRLを示す。
図9は、DRLを有する四輪自動車に用いる左側前方用の車両用灯具7(ヘッドランプ)の正面模式図である。車両用灯具7は、前面レンズ71と、ハウジング72と、第1の照明装置73と、第2の照明装置74と、第3の照明装置75とを有する。第3の照明装置75に、本実施形態に係るフレキシブル回路板1が適用される。そして、ハウジング72の前側に前面レンズ71が設けられ、ハウジング72と前面レンズ71とによって、収容室が形成される。第1の照明装置73と、第2の照明装置74と、第3の照明装置75とは、収容室の内部に設けられる。
第1の照明装置73は、ロービームを構成する。第2の照明装置74は、ハイビームを構成する。第3の照明装置75は、DRLとしての機能を有する。前面レンズ71は、第1の照明装置73と第2の照明装置74と第3の照明装置75とが発する光を、前方に向かって照射するレンズとしての機能を有する。さらに、前面レンズ71は、第1の照明装置73と第2の照明装置74と第3の照明装置75とを保護するカバーとしての機能を有する。本実施例では、前面レンズ71は、平面形状ではなく、湾曲した曲面形状に形成されるものとする。第1の照明装置73と第2の照明装置74は、それぞれ、ハロゲンランプと、ハロゲンランプの周囲を囲むリフレクタとを有する。なお、前面レンズ71とハウジング72と第1の照明装置73と第2の照明装置74とは、従来公知の構成が適用できる。このため、説明は省略する。
図10は、第3の照明装置75の構成を模式的に示す斜視図である。図11は、第3の照明装置75の構成と、フレキシブル回路板1(FPC2)と前面レンズ71との関係を示す断面模式図である。第3の照明装置75は、フレキシブル回路板1と、このフレキシブル回路板1を支持する支持部材751とを有する。フレキシブル回路板1は、FPC2と、このFPC2に実装される電子部品11として、定電流レギュレーター112および複数のLED111とを含む。そして、フレキシブル回路板1は、支持部材751の支持面752にネジ753等の取付機構によって取り付けられる。フレキシブル回路板1に用いられるFPC2は、正面視において帯状に形成される。FPC2の曲げ位置242には、スリット孔201の列が形成される。そして、このような曲げ位置242(スリット孔201の列)が、長手方向に所定の間隔をおいて複数形成される。それぞれの曲げ位置242に形成されるスリット孔201の列は、複数のスリット孔201が、FPC2の長手方向に対して直角な方向に、ミシン目状に直列に並ぶという構成を有する。そして、FPC2は、スリット孔201の列(すなわち複数の曲げ位置242)において、山折りと谷折りに交互に折り曲げられる。また、スリット孔201の列どうしの間は平板状に形成される。平板状に形成される部分を、平板部241と記す。このように、FPC2には、複数の平板部241が長手方向に配列され、平板部241どうし境界に曲げ位置242が設定される。そして、FPC2は、長手方向に山折りと谷折りが繰り返されることにより、全体として階段状に形成される。そして、複数の平板部241が長手方向に直列的に並ぶ。
また、図11に示すように、FPC2は、全体として、前面レンズ71の内周面の形状に等しい形状か、または相似な形状に形成される。すなわち、前面レンズ71の内周面が曲面に形成される構成であれば、FPC2も、全体として前面レンズ71の曲面と等しいか、または相似な曲面に形成される。
そして、1つおきの平板部241に1つのLED111が実装される。1つおきの平板部241に実装されるLED111と前面レンズ71までの距離は、すべて同じである。また、1つおきの平板部241に実装されるLED111の光軸Lも全て平行である。そして、LED111の光軸Lを平行にするため、LED111が実装される平板部241の法線はすべて平行である。なおLED111は、表面実装型LEDを用いることが良い。このような構成を実現するため、曲げ位置242(スリット孔201の列)どうしの距離(換言すると、それぞれの平板部241の長手方向距離)と、曲げ位置242におけるFPC2の折り曲げの角度は等しくなくてもよい。曲げ位置242(スリット孔201の列)どうしの距離や曲げ位置242におけるFPC2の折り曲げの角度は、前面レンズ71の内周面の形状に応じて適宜設定される。たとえば、前面レンズ71が湾曲しており、FPC2を全体的に湾曲した形状に形成する場合には、湾曲の曲率半径の小さい部分については曲げ位置242どうしの距離を小さくするとともに曲げ量を大きくする。
以上のように、曲げ位置242(スリット孔201の列)どうしの距離と折り曲げ角度を適宜設定することによって、LED111と前面レンズ71との距離と、LED111の光の照射方向を、すべて同じにできる。したがって、このような構成によれば、照明装置75の正面視において、DRL光源としての照明装置75の光の強度の分布が不均一になることを防止または抑制できる。
このように、第1の実施形態によれば、FPC2の曲げ位置242にスリット孔201の列を形成し、この曲げ位置242において折り曲げることにより、LED111の光軸Lを全て同じ向きにすることができる。そして、曲げ位置242(スリット孔201の列)どうしの距離(平板部241の長手方向寸法)を適宜設定することにより、LED111と前面レンズ71までの距離をすべて同じにできる。したがって、光の強度分布が均一な照明装置75が得られる。さらに、LED111の発する熱をFPC2に含まれる第1金属シート211を介して放散することができる。このため、LED111の冷却の効率を高めることができる。なお、LED111と前面レンズ71までの距離は、ほぼ同一であればよく、厳密に同一でなくてもよい。同様に、LED111の光軸の方向もほぼ平行であればよく、厳密に平行でなくてもよい。
図11に示す構成においては、フレキシブル回路板1の長手方向の両端が、取り付け部材の一例であるネジ753により、支持部材751に取り付けられて固定されている。それらの間の階段状(立体形状)に形成される部分(ネジ753により固定される部分以外の部分)は、第1金属シート211の塑性変形後の剛性により、曲げられた階段状に保持される。そして、実装されたLED111の光照射方向が固定されて保持される。したがって、フレキシブルであるフレキシブル回路板1の裏面(LED111が実装される面の反対面)は、LED111が実装される位置を含めて支持部材751と密着して支持されていなくてもよい。ただし、フレキシブル回路板1の階段状の裏面が、支持部材751の支持面752に当接するように、フレキシブル回路板1の折り曲げ後の形状に嵌め合うよう設計されてもよい。このように、照明装置75(電子装置)に第1の実施形態にかかるFPC2が含まれる構成であると、支持部材751の支持面752の形状をフレキシブル回路板1の階段状の形状に倣った形状に形成しなくてもよい。
更に、このような構成によれば、曲げ加工されたFPC2(フレキシブル回路板1)の平板部241に搭載または実装されたLED111の光軸の方向を、支持部材751の支持面752に対して所望の向きに決定して固定することができる。この向きは、それぞれの平板部241の寸法、各スリットの位置、各山折りや谷折りの角度を適宜設定することによって決定できる。これらが適宜設定されると、実装される電子部品の機能を適正に発揮することができるようになり、照明装置75(電子装置)が適正な機能を有することができるようになる。なおLED111の接続は、並列接続も本件発明の範囲である。
上述の第1〜第3の電子装置の例を含めて、電子部品としてLEDが適用される構成を示した。このように、第1の実施形態にかかるFPC2(フレキシブル回路板1)は、実装される電子部品の機能が指向性を有する場合に、スリット孔201の列で特定される曲げ位置242で折り曲げることによって、この機能が効果的に発揮される方向を向くように形状を保持することができる電子装置を製作できる。
なお、機能に指向性を有する電子部品としては、前述のような指向性を有する光を発する表面実装型LEDや、受光角度に指向性を有する実装型カメラモジュールに限定されるものではない。たとえば、赤外線受光モジュールや、小型マイクロフォンや、小型スピーカや、チップ型アンテナなども、機能に指向性を有する電子部品である。そして、これらを実装するFPCとして、第1の実施形態にかかるFPC2が好適に用いることができる。
[第2の実施形態]
次いで、第2の実施形態について説明する。なお、第1の実施形態と共通の構成には同じ符号を付して示し、説明を省略する。また、第2の実施形態においても、電子装置の例として照明装置を示す。
≪フレキシブル回路板と車両灯具用の照明装置≫
第2の実施形態に係るFPC602a(フレキシブルプリント配線板)は、導体パターン23を保護するカバー層として、金属支持カバーフィルム614aを用いることに特徴がある。第2の実施形態に係るFPC602aとこのFPC602aが適用されるフレキシブル回路板601の構成例について、図12と図13を参照して説明する。図12は、FPC602aが適用されたフレキシブル回路板601の構成例を示す平面模式図である。図13は、FPC602aが適用されたフレキシブル回路板601の構成例を示す断面模式図であって、図12のXIII−XIII線断面図である。なお、図12と図13は、FPC602a(フレキシブル回路板601)が立体形状に形成される前の平板状の状態を示す。また、図12は、ロール・トゥ・ロール(roll to roll)工法によって製造されたFPC602aにLED111や定電流レギュレーター112などの所望の電子部品11が実装された状態のフレキシブル回路板601を示す。
図12と図13に示すように、FPC602aには、複数のLED実装平板部651と複数の接続平板部652とが、金属支持カバーフィルム614aにより形成される。LED実装平板部651は、LED111が実装される部分である。接続平板部652は、LED111が実装されない部分である。そして、LED実装平板部651と接続平板部652とは、FPC602aの長手方向に交互に配列される。さらに、LED実装平板部651とこれに隣接する接続平板部652との間には、曲げ加工部642が設けられる。曲げ加工部642は、FPC602aの短手方向に延伸する細長い帯状に形成される。説明の便宜上、LED実装平板部651と接続平板部652を、まとめて平板部650と称することがある。平板部650は、第1の実施形態における平板部241に相当する部分であり、FPC602a(フレキシブル回路板601)が立体形状に形成された状態において、平板状に保持される部分である。曲げ加工部642は、第1の実施形態における曲げ位置242に相当する部分であり、FPC602a(フレキシブル回路板601)を立体形状に形成する際に折り曲げられる部分である。このように、平板部650どうしの境界に曲げ加工部642が設けられる。
FPC602aの給電端子141には、外部から給電するための給電ケーブル53(図12と図13では省略。図17と図18を参照)が接続される。FPC602aの給電端子141に連なる導体パターン23には、定電流レギュレーター112が接続されるとともに、複数のLED111が直列に接続される。導体パターン23は、実装される全てのLED111(図12では6個のLED111)が直列接続されるように、LED実装平板部651と、接続平板部652と、その間に設けられる曲げ加工部642とを縦断して配線されている。そして、フレキシブル回路板601は、切断線A−A,B−B,C−C,D−Dで切断することによって、ピース(小片)に分離される。
図13に示すように、FPC602aは、第1の実施形態のFPC2(図2参照)と同様に、ベースフィルム21と第1接着剤層22と導体パターン23との積層構造を有する。そして、第2の実施形態に係るFPC602aは、導体パターン23を被覆するカバー層として、金属支持カバーフィルム614aと樹脂製カバーコート(ここではソルダーレジスト615)を用いることを特徴としている。金属支持カバーフィルム614aの構成は、ベースフィルム21と類似している。具体的には、例えば、金属支持カバーフィルム614aは、金属支持フィルム613と、その一方の面に設けられる第2接着剤層622との積層構造を有する。金属支持フィルム613は、第2金属シート611とその両面を被覆する絶縁膜612との積層構造を有する。第2金属シート611には、例えば厚さが15〜50μmのアルミニウム箔が適用される。なお、第2金属シート611は、第1金属シート211と同種の金属が適用される構成であることが好ましい。絶縁膜612には、例えば、厚さが約4μmのポリイミド樹脂の膜(有機絶縁膜)が適用される。金属支持カバーフィルム614aの製造方法は、例えば次のとおりである。まず、第2金属シート611の例であるアルミニウム箔の両面を、厚さが約4μmのポリイミド樹脂からなる絶縁膜612で被覆することにより、金属支持フィルム613を製作する。次いで、金属支持フィルム613の一方の面に、FPC602aに接着するための第2接着剤層622を塗布し、塗布した第2接着剤層622をベーキングして半硬化状態に形成する。これにより、金属支持カバーフィルム614aが製造される。
第2実施形態においては、金属支持カバーフィルム614aは、それぞれの平板部650(LED実装平板部651と接続平板部652)に対応した寸法に予め型抜きされ、導体パターン23の上面を覆うようにFPC602aに熱圧着法で貼り付けられる。なお、金属支持カバーフィルム614aには、電子部品11(LED111や定電流レギュレーター112など)や給電端子141等が実装される位置に、導体パターン23を露出させるための開口が形成されている。その後、金属支持カバーフィルム614aが貼られていない曲げ加工部642における導体パターン23は、樹脂製カバーコートである、柔軟性と絶縁性を有するソルダーレジスト615で被覆しておくことが好ましい。このような構成によれば、導体パターン23を、曲げ加工におけるダメージから保護できる。なお、図12に示すように、カバー層の樹脂製カバーコートの例であるソルダーレジスト615は、曲げ加工部642の両側に設けられるLED実装平板部651と接続平板部652とに跨るように(すなわち、ソルダーレジスト615の一部がLED実装平板部651と接続平板部652における金属支持カバーフィルム614aの一部に重畳するように)形成されることが望ましい。
上記のように形成された曲げ加工部642は、LED実装平板部651と接続平板部652に比較すると、剛性が低く曲げ加工しやすい。そして、フレキシブル回路板601は、曲げ加工部642において谷折りまたは山折りに曲げ加工が施されることにより、階段状の立体形状に形成される。この曲げ加工部642における曲げ代の幅寸法や谷折り・山折りの曲率半径は、第2金属シート611の物性や曲げ角度などを考慮して決定することが好ましい。
また、FPC602aの曲げ加工部642において、2つの接着剤層(第1接着剤層22と第2接着剤層622)と絶縁膜212は、できるだけ薄いことが好ましい。このような構成であると、ベースフィルム21の第1金属シート211の曲げ加工に応じて塑性変形しやすくなる。第2の実施形態では、ベースフィルム21の第1金属シート211として、厚さが30〜400μmのアルミニウム箔が適用され、金属支持フィルム613の第2金属シート611として、厚さが15〜50μmのアルミニウム箔が適用される。また、金属支持カバーフィルム614aのうち、それぞれの平板部650(LED実装平板部651と接続平板部652)に対応する部分の位置および寸法や、曲げ加工部642の位置等は、後述する照明装置605の構成に応じて予め設計されている。なお、第2の実施形態に係るFPC602aには、曲げ加工部642に、曲げ抵抗を下げて曲げ加工を援助するスリット孔201を形成しなくてもよい。
導体パターン23を形成するための導体箔24には、厚さが12〜35μmの銅箔が適用される。ベースフィルム21に塗布される第1接着剤層22の厚さは約25μmとし、第2接着剤層622の厚さは約40μmであることが好ましい。なお第2接着剤層622は、高熱伝導性の接着剤(例えば 東レ株式会社製 #TSAシリーズ)が適用できる。また曲げ加工を施す曲げ加工部642の導体パターン23を保護するためのカバー層の樹脂製カバーコートの例であるソルダーレジスト615には、たとえば、FPC用の感光性ソルダーレジストで、日本ポリテック株式会社製の品名「NPR80 ID60」が適用できる。
このFPC602aに表面実装型LEDであるLED111や定電流レギュレーターを実装することにより、フレキシブル回路板601が製造される(図12、図13参照)。フレキシブル回路板601は、それぞれの曲げ加工部642において谷折りまたは山折りに折り曲げる曲げ加工が施されることにより、階段状の立体形状に形成される。
図14は、曲げ加工されたフレキシブル回路板601を、LED111を直列に接続する導体パターン23が設けられる部分で切断した断面図である。曲げ加工が施される曲げ加工部642における金属層は、ベースフィルム21の第1金属シート211とLED111を直列接続する2ラインの導体パターン23だけである。このため、曲げ加工部642の曲げ加工性は、専ら、ベースフィルム21の第1金属シート211自体の曲げ加工性に依存する。すなわち、FPC602a(フレキシブル回路板601)の曲げ加工後の形状は、ベースフィルム21の第1金属シート211自体の特性に支配される。したがって、第1金属シート211自体の特性を設定することにより、容易に、FPC602a(フレキシブル回路板601)の曲げ加工が可能となる。
一方、平板部650においては、ベースフィルム21に含まれる第1金属シート211と金属支持カバーフィルム614aに含まれる第2金属シート611が、導体パターン23を挟んで第1接着剤層22と第2接着剤層622とにより接合されて積層体を構成している。2枚の金属シートが接合したこのような積層構造は、曲げ応力に対して強い抵抗力を持っているため、LED実装平板部651と接続平板部652との平板形状が強固に保持される。このように、FPC602a(フレキシブル回路板601)がこのような積層構造を有することにより、曲げ加工により形成された立体形状(第2の実施形態では階段形状)が保持される。従って、金属シートがベースフィルム21にのみ含まれるFPCや、有機基板のみから構成されるFPCを用いるフレキシブル回路板と比較して、第2の実施形態によるLED実装平板部651と接続平板部652は、平板状に保持する効果が高い。
次に、第2実施形態の別例について、図15と図16を参照して説明する。図15は、第2の実施形態の別例に係るFPC602b(フレキシブルプリント配線板)の構成例を示す平面模式図である。図16は、第2の実施形態の別例に係るFPC602bの構成例を示す断面模式図である。別例に係るFPC602bは、図12と図13に示すFPC602aと比較すると、金属支持カバーフィルム614bが、曲げ加工部642において途切れておらず、LED実装平板部651と接続平板部652と曲げ加工部642に一体に連なるように設けられる。ただし、FPC602aと同様に、金属支持カバーフィルム614bには、後に実装される電子部品11(LED111や定電流レギュレーター112など)や給電端子141等の位置に、導体パターン23を露出させるための開口が形成されている。なお、別例に係るFPC602bにおいては、LED実装平板部651と接続平板部652と曲げ加工部642等の位置は、設計上の概念位置となる。このため、曲げ加工部642の位置は、別例のFPC602aにおいては他の方法で把握することになる。なお、図15においては、LED実装平板部651と接続平板部652と曲げ加工部642が、一体に連なる金属支持カバーフィルム614bにより被覆される構成を示す。
この別例においては、ベースフィルム21と金属支持カバーフィルム614bのそれぞれを構成する2枚の金属シートが、導体パターン23を挟んで第1接着剤層22および第2接着剤層622とで密着して積層体を形成する。そしてこの積層体が、例えば図15のA-A,B-B,C-C,D−Dで囲まれたFPC602bのピース(小片)全体の平板形状を保持する機能を有することになる。特に、FPC602aとは異なり、金属支持カバーフィルム614bは、ピース(小片)に設けられる複数のLED実装平板部651と接続平板部652とを一体に連なるように設けられる。したがって、階段状の立体形状を形成するためには、曲げ加工部642における曲げの曲率半径を大きくするとともに、第1の実施形態と同様(図3〜図5参照)に、ベースフィルム21を貫通する開口部(スリット孔201)を曲げ加工部642に形成することが好ましい。なお、第2金属シート611は、曲率半径を小さくするためには薄いことが望ましいが、機械的強度や加工性の観点から10〜35μmの厚みのアルミニウム箔が好適である。
第2の実施形態によれば、FPC602a,602b(フレキシブル回路板601)を立体形状に保持するための他の部材を追加しなくてよい。したがって、部品点数の増加と組み立て工数の増加を抑制できる。なお、曲げ加工部642は、繰返し屈曲に対する耐性が求められるものではなく、FPC602a,602bの製造後において曲げ加工が容易でかつ曲げ加工による立体形状を保持できる構成を有する。また、第2の実施形態に係るFPC602a,602bは、第1金属シート211含むベースフィルム21と、第2金属シート611を含む金属支持カバーフィルム614a,614bとは、容易に製作可能である。また、第2の実施形態に係る照明装置605においては、昇温しやすい導体パターン23を支持するベースフィルム21と、導体パターン23を覆う金属支持カバーフィルム614a,614bとが金属シートで構成される。このため、放熱性に優れている。なお、図12と図13では、複数のLED111が長手方向に一列に並ぶように実装される構成を例示したが、勿論、LED111が複数列配置される構成であってもよい。また、1つのLED実装平板部651に複数のLED111が実装される構成であってもよい。LED111の列の数や1つのLED実装平板部651に実装されるLED111の数は、容易に変更可能である。さらに、第2の実施形態に係るFPC602a,602bのベースフィルム21には可撓性を有する部材が用いられるが、LED実装平板部651は、弾性伸縮が少ない2枚の金属シート(第1金属シート211と第2金属シート611)と絶縁膜の積層構造を有しており、可撓性が抑制されて剛性が高い。
前述のとおり、第2実施形態に係るFPC602aのベースフィルム621の曲げ加工部642には、第1実施形態と同様のスリット孔201が形成されなくてもよい。ただし、第2実施形態のFPC602a,602bのベースフィルム21の曲げ加工部642にスリット孔201を設けることは、曲げ加工を容易にする点で好ましい。特に、ベースフィルム21の第1金属シート211に適用されるアルミニウム箔の厚みが150μm以上の場合に有効である。そして、曲げ加工部642の谷折り、山折りの稜線に沿って細長いスリット孔または複数の並んだスリット孔を設けることによって、曲げ加工による曲率半径を小さくでき、かつ、容易に曲げ加工が出来ることとなる。なおスリット孔201は、必ずしも第1金属シート211を貫通しなくてもよく、一方の面からの切削で形成する溝形状であっても有効である。
次に、第2の実施形態に係る電子装置の例である照明装置605について、図17と図18を参照して説明する。図17は、照明装置605とその適用例である車両用灯具7(ヘッドランプ)の構成例を示す正面模式図である。図18は、図17のXVIII−XVIII線断面図である。ここでは、照明装置605が、車両用灯具7の昼間走行ランプ(DRL:daytime Running Lamp)に適用される構成を例に示す。なお、車両用灯具7に搭載された照明装置605の機能や特性は、第1の実施形態での第3の照明装置75と同じである。また、LED111の光軸方向や前面レンズ71との位置関係についても、第1の実施形態と同じである。
照明装置605は、長尺帯状のFPC602a,602bに複数のLED111が実装されたフレキシブル回路板601により構成される。複数のLED111のそれぞれは、FPC602a,602bに設けられるLED実装平板部651に実装される。前述のとおり、FPC602a,602bには、その長手方向に複数のLED実装平板部651が設けられることから、複数のLED111はFPC602a,602bの長手方向に配列されることになる。そして、LED111が実装される複数のLED実装平板部651と、LED111が実装されない複数の接続平板部652とが、長手方向に交互に配列され、LED実装平板部651と接続平板部652との間の曲げ加工部642において、山折りと谷折りに交互に曲げ加工される。これにより、FPC602a,602bは、全体として階段形状に形成される。すなわち、LED111が実装されるLED実装平板部651どうしが、それらの間に設けられる接続平板部652によって、互いに平行になるように階段状に接続されている。
図17において照明装置605は、FPC602a,602bが左右方向に延伸する向きで、車両用灯具7(ヘッドランプ)に配設される。第1の実施形態と同様に、LED111と前面レンズ71との距離はすべて同じであり、かつ、LED111の光軸Lは全て平行である(図11参照)。車両用灯具7の前面レンズ71は、車体形状などに合わせて例えば傾斜面または曲面に形成される。このため、照明装置605のFPC602a,602bは、全体として前面レンズ71の形状に倣った形状に湾曲した形状となるように、曲げ加工部642において山折りまたは谷折りに曲げ加工される。
給電端子141には給電ケーブル53が取り付けられる。そして、FPC602a,602bの長手方向の両端が、ネジ753等の取付機構を用いて車両用灯具7の所定の位置に固定される。この状態で外部から給電されると、フレキシブル回路板601は、照明装置605として機能する。このような構成によれば、立体形状の形成が容易で且つ放熱性が良好なFPC602a,602b、フレキシブル回路板601、このフレキシブル回路板が適用されたデザイン性の良い照明装置605などから構成される電子装置を提供できる。
以上、本発明の各種の実施形態を、図面を参照して詳細に説明したが、前記各実施形態は、本発明の実施にあたっての具体例を示したに過ぎない。本発明の技術的範囲は、前記各実施形態に限定されるものではない。本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更が可能であり、それらも本発明の技術的範囲に含まれる。
たとえば、実施形態で示したベースフィルムの材質や寸法は一例であり、前記材質や寸法に限定されるものではない。また、前記実施形態では、TAB方式で半導体素子などの実装を行うことができるFPCを示したが、半導体素子の実装方式は限定されるものではない。TAB方式のほか、COF方式であってもよい。また、前記各実施形態では、照明装置として、左側用の車両用灯具(ヘッドランプ)を示したが、右側用の車両用灯具も、対称の構成とすることにより製作できる。