以下、本発明の第1の実施例による本発明の焦点検出装置をレンズ交換可能な一眼レフタイプのデジタルカメラに適用した例について説明する。
図1は、一眼レフカメラの中央断面図である。
図中、200は一眼レフカメラ本体、201は撮影レンズで、Lは撮影レンズ201の光軸である。撮影レンズ201の予定結像面付近には、光学ローパスフィルタや赤外カットフィルタ、さらには撮像素子を含む撮像素子ユニット204が配置される。撮影レンズ201と撮像素子ユニット204には、周知のクイックリターン機構により撮影時には撮影光束外へ退避するメインミラー202とサブミラー203が配置される。メインミラー202はハーフミラーで、撮影光束は上方のファインダ光学系に導かれる反射光とサブミラー203に入射する透過光に分離される。反射光は、マット面とフレネル面を備えるピント板205のマット面上に結像し、ペンタプリズム206、接眼レンズ群207を介して観察者の目に導かれる。また、ピント板205で拡散した光の一部は測光レンズ220を透過し、測光センサ221に到達する。測光センサ221は、複数の画素に分割されており、各画素には、RGBのカラーフィルタが配置され、被写体の分光強度を検出することができる。一方、透過光はサブミラー203により下方へ光路を変更し、焦点検出部208に導かれる。メインミラー202で反射した光の一部が測光センサ221に到達し、メインミラー202を通過した光の一部が焦点検出部208に導かれる。
次に、図1で説明したカメラが有する焦点検出部について説明する。図2は、焦点検出部208の斜視図で、測距原理としては位相差方式焦点検出を用いている。なお、実際の焦点検出部は反射ミラーなどにより光路を折りたたむことによりコンパクト化しているが、図の煩雑さをなくすためストレートに展開した図となっている。
210は視野マスクで、中央部とその左右に十字型の開口部210a、210b、210cを有している。この視野マスク210は、撮影レンズ201の予定結像面、撮像素子ユニット204の撮像面と等価な位置近傍に配置される。211はフィールドレンズで、視野マスク210の後方に配置している。このフィールドレンズ211は光学作用を異にする複数のレンズ部211a、211b、211cから成っており、各レンズ部は互いに異なるレンズ光軸を有している。また、レンズ部211a、211b、211cは視野マスク210の開口部210a、210b、210cにそれぞれ対応している。
212は複数の開口部を有する絞りで、213は絞り212の複数の開口部に対応するレンズ部を備える2次結像レンズユニット(結像レンズユニット)である。この2次結像レンズユニット213は撮影レンズ201によって結像された予定結像面上の物体像をその後方に配置された受光素子215の受光素子列上に再結像する。なお、絞り212の直前付近には焦点検出に不要な赤外波長成分を除去する赤外カットフィルタが配置されるが省略してある。
図3〜図5は、図2における斜視図中の各部材の平面図で、図3は絞り212を視野マスク210側から見た平面図である。図4(A)は2次結像レンズユニット213の入射面側を見た平面図、図4(B)は2次結像レンズユニット213の射出面側を見た平面図である。図5は受光素子215を視野マスク210側から見た平面図である。
図3において、絞り212は中央部に2組の対の開口部212a−1と212a−2、212a−3と212a−4を有する。そして、右側には2組の対の開口部212b−1と212b−2、212b−3と212b−4を、左側には2組の対の開口部212c−1と212c−2、212c−3と212c−4をそれぞれ有する。
図4(A)において、2次結像レンズユニット213の入射面側には図3の絞り開口部に対応するプリズム部が形成されている。したがって、絞り212と同様に、中央部には2組の対のプリズム部213a−1と213a−2、213a−3と213a−4が形成される。そして、右側には2組の対の開口部213b−1と213b−2、213b−3と213b−4が、左側には2組の対の開口部213c−1と213c−2、213c−3と213c−4がそれぞれ形成される。
図4(B)において、2次結像レンズユニット213の射出面側には図4(A)のプリズム部に対応して球面からなるレンズ部が形成されている。同様に、中央部には2組の対のレンズ部214a−1と214a−2、214a−3と214a−4が形成される。そして、左側には2組の対の開口部214b−1と214b−2、214b−3と214b−4が、右側には2組の対の開口部214c−1と214c−2、214c−3と214c−4がそれぞれ形成される。
図5において、受光素子215には図4(B)のレンズ部に対応した光電変換部としての受光素子列が形成されている。同様に、中央部には2組の対の受光素子列215a−1と215a−2、215a−3と215a−4が形成される。そして、右側には2組の対の開口部215b−1と215b−2、215b−3と215b−4が、左側には2組の対の開口部215c−1と215c−2、215c−3と215c−4がそれぞれ形成される。受光素子列は対の光学像の光量の分布を検出し、対の電気信号を後述するPRSに出力する。
なお、図3〜5の各部材の添え字a、b、cは視野マスク210の開口部とフィールドレンズ211のレンズ部にそれぞれ対応している。例えば視野マスク開口部210bを通過した光束はフィールドレンズ211bを通過し、2組の対の絞り開口部212b−1と212b−2、212b−3と212b−4を通過することで4つの光束に分離される。そして、4つの光束は、それぞれ2次結像レンズユニット213の2組の対のプリズム部213b−1と213b−2、213b−3と213b−4に入射して、2組の対のレンズ部214b−1と214b−2、214b−3と214b−4から射出する。そして、受光素子215の2組の対の受光素子列215b−1と215b−2、215b−3と215b−4上に視野マスク開口部210bに対応した4つの光学像が形成される。図5に点線で示す4つの十字形216−1、216−2、216−3、216−4はそれぞれの光学像を示し、光学像216−1と216−2、光学像216−3と216−4がそれぞれ対となる。これらの対の光学像は、撮影レンズ201の射出瞳の異なる領域を通過した対の光束により生成された光学像である。
以上説明したような構成の焦点検出部において、撮影レンズ201の予定結像面に対するデフォーカスに伴い、対の光学像が互いに近づくかあるいは遠ざかる方向に移動する。
例えば、対の光学像216−1と216−2内部の光学像は上下方向に移動し、図5に示すように受光素子列を上下方向に並べることによって、この移動を検出する。すなわち、この光学像に関する光量分布を受光素子列215b−1と215b−2の出力に基づいて検出する。そして、周知の相関演算手段を用いて演算することで、撮影レンズ201に伴う対の光学像間隔の合焦時に対する変化量を求める。ここで、受光素子列215b−1と215b−2の出力とは光学像光を受光して光電変換し出力した信号である。
対の光学像間隔の変化量(像ずれ量)を知ることができれば、この変化量と撮影レンズ201のデフォーカス量の関係をあらかじめ変化量を変数とした多項式などで近似しておくことで、撮影レンズ201のデフォーカス量を予測することができる。それにより、撮影レンズ201の焦点検出を行うことが可能となる。なお、受光素子列215b−3と215b−4の場合は、上記説明の上下方向が左右方向に変わるのみで、基本的な作用は同様である。
対の受光素子列215b−1と215b−2は上下方向に受光素子が並んでいるため上下方向にコントラスト成分を有する被写体の焦点検出に適している。一方、受光素子列215b−3と215b−4は左右方向に受光素子が並んでいるため左右方向にコントラスト成分を有する被写体の焦点検出に適している。そして、両者を合わせると被写体のコントラスト成分方向に左右されない、いわゆるクロス型の焦点検出を行うこととなる。
なお、上記説明は添え字bに関する部分のみを説明したが、添え字a、cについても同様である。
図6(A)は、受光素子215の各受光素子列を視野マスク210上に逆投影した図である。なお、視野マスク210は撮影レンズ201の予定結像面付近に配置されるので、図6(A)は予定結像面と考えても問題ない。図において、視野マスク210よりひと回り大きな点線で示す長方形217は、撮影レンズ201による撮影範囲である。また、3つの視野マスク開口部内には、十字形で示される受光素子列の逆投影像218a、218b、218c、219a、219b、219cが形成されている。対の受光素子列は予定結像面上では一致するため重ねて表示されている。そして、逆投影像218a、218b、218c、219a、219b、219cは受光素子列であるため、この十字領域において被写体の光量分布を検出することができる。すなわち、これら逆投影像がいわゆるクロス型の焦点検出領域となる。本実施例ではクロス型の焦点検出領域を図6のように撮影範囲217の中央部と周辺部2箇所の計3箇所を備え、この焦点検出領域にかかる被写体の焦点検出を行うことができる。そして、クロス型の焦点検出領域は、その広がり方向が直交する2方向であるため、被写体のコントラスト成分方向に左右されず、ほとんどの被写体での焦点検出を可能とする。
図6(B)は、図6(A)に対して、測光センサ221の検出範囲218を重ねて表示している。測光センサ221の検出範囲218は、縦に3分割、横に5分割され、計15個の領域を有している。各領域は、上述したRGBのカラーフィルタを備えた複数の画素から構成され、撮影範囲内の光量の分布を得ることができる。中央近傍の3箇所は、焦点検出領域210a〜cに対応した配置となっている。
図7に、図6(A)で示した撮影レンズ201の撮影範囲中に、被写体301が、存在する様子を示している。被写体301は、図中、上側が白部で、下側の斜線部は、黒部で構成される被写体である。図6で説明した受光素子列の逆投影像の中で、この被写体の光量分布を検出するのに適しているのは、218aである。図7では、逆投影像218aを、被写体301に重ねて図示している。図8(A)に、図7のような状態における逆投影像218aに対応した受光素子列215a−1、215a−2の出力信号を示している。被写体301に対してピントがずれた状態では、受光素子列215a−1の出力信号302−1と受光素子列215a−2の出力信号302−2は、図8(A)で示すように、対の光学像の波形の位置にずれが生じている。このような状態で、周知の相関演算手段により対の光学像の波形の位置合わせを行った状態を示したのが、図8(B)である。被写体から焦点検出部に到達する光束に迷光がない理想的な状態では、図8(B)に示すように、対の出力信号302−1、302−2は、ほぼ一致する。この場合、対の光学像の相関が非常に高いため、デフォーカス量の検出も高精度に行うことができる。
しかしながら、実際には、被写体からの光束が、撮影レンズを通過し焦点検出部の受光素子に至るまでに様々な迷光を発生しうる。レンズなどの光学部品の表面での微小な反射や、光学部品を保持する機構部品の表面反射などが主な要因となる。
図9(A)に、図7と同一の被写体からの光束により、撮影レンズを通過し焦点検出部の受光素子に至るまでの何処かで発生した迷光が含まれた場合の出力波形を示す。図8(A)と同様に、受光素子列215a−1の出力信号303−1と受光素子列215a−2の出力信号303−2が得られた様子を示している。図8(A)の迷光のない理想的な状態に対して、出力信号303−1は、迷光により304,306の出力が増えている状態を示しており、出力信号303−2は、迷光により305の出力が増えている状態を示している。迷光は、上述の通り様々な場所で発生しうるが、発生する箇所により、対の光学像の両方に発生するものや、片方の光学像のみに発生するものが存在する。図9(A)では、対の出力信号303−1、303−2の両方に、同一の位置に同一の光量の迷光304,305が発生し、迷光306は、出力信号303−1にのみ発生した状態を示している。
図9(B)には、図8(B)と同様に、周知の相関演算手段により対の光学像の波形の位置合わせを行った状態を示している。迷光により、対の出力波形の形状に差があるため、波形の位置のずれ量を算出する際の精度が悪化する。被写体301では、最もコントラストの高い白部と黒部の境界線部に対応する部分で、対の出力信号が一致するような相関演算部手段による波形の位置合わせ結果が得られることが理想であるが、図9(B)では、迷光の影響を受け、若干のずれが生じている。図中の307の矢印の間隔がずれを示している。このずれの主な原因は、出力信号303−1にのみ発生した迷光306によるもので、出力信号303−1、303−2の両方に、同じ位置、同じ光量で発生している迷光304、305の影響は少ない。これは、迷光306が存在しない場合には、出力信号303−1、303−2が完全に一致することからも明らかである。一般的に、迷光の影響は、空間周波数が低い被写体の方が受けやすく、非常に微小な迷光によっても、デフォーカス量の検出精度が悪化する。本実施例では、この迷光による対の光学像の形状の差を、出力信号の補正により低減することができる。補正の方法については、後ほど詳細に説明する。
以下に、迷光による対の光学像の形状の差に基づいて、出力信号の補正を行う方法について説明する。
図10は、カメラのブロック図である。
図中PRSはカメラの中央演算回路で、たとえばCPU,RAM,ROM,ADC(A/Dコンバータ)および入出力ポート等が配置された1チップマイクロコンピュータである。PRSは対の受光素子列の出力からデフォーカス量を算出する手段としての機能を有する。また、PRSは、後述するように対の受光素子列から出力される一方の電気信号を補正する機能も有する。また、ROM内にはAF制御を含む一連のカメラの制御用ソフトウエアおよびパラメータが格納されている。また、ROMは、後述する対の受光素子列から出力される一方の電気信号を補正するための補正情報も格納しており、該補正情報を記憶する機能を有する。
DBUSはデータバスである。MDRは中央演算回路PRSより制御信号CMTRが入力している間データバスDBUSを介して入力するデータを受け付け、そのデータに基づいて不図示のモータの制御を行うモータ制御回路である。SHTは中央演算回路PRSより制御信号CSHTが入力している間データバスDBUSを介して入力するデータを受け付け、そのデータに基づいて不図示のシャッタ先幕及び後幕の走行制御を行うシャッタ制御回路である。APRは制御信号CAPRが入力している間データバスDBUSを介して入力するデータを受け付け、該データに基づいて不図示の絞り制御機構を制御する絞り制御回路である。SWSはレリーズスイッチSW1,SW2、連写モードスイッチ並びに各種情報設定用のスイッチ等のスイッチ群である。LCOMは制御信号CLCOMが入力している間データバスDBUSを介して入力するデータを受け付け、該データに基づいてレンズ制御回路LNSUとシリアル通信を行うレンズ通信回路である。レンズ通信回路LCOMはクロック信号LCKに同期してレンズ駆動用データDCLをレンズ制御回路へ伝送し、それと同時にレンズ情報DLCがシリアル入力する。レンズ駆動用データDCLは、装着されたカメラの種別情報や、カメラの焦点検出部の種別、撮影時のレンズ駆動量の情報などを含む。
BSYは不図示の焦点調節用レンズが移動中であることをカメラ側に知らせる為の信号で、この信号が発生しているときは、シリアル通信は行われない。SPCは測光回路であり、中央演算回路PRSからの制御信号CSPCを受け取ると測光センサ221の測光出力SSPCを中央演算回路PRSへ送る。測光出力SSPCは中央演算回路PRS内部のADCでA/D変換され、前述のシャッタ制御回路SHT及び絞り制御回路APRを制御するためのデータとして用いられる。
400は焦点検出用の補助光を投射するための投光回路で中央演算回路PRSからの制御信号ACT及び同期クロックCKによりLEDを駆動し発光させる。
SNSは対の受光素子列215a−1/215a−2、215a−3/215a−4・・・215c−3/215c−4を複数有する測距用受光回路である。それぞれの測距用受光回路は図6(A)の逆投影像218、219に対応した位置の像を受光するように構成されている。SDRは中央演算回路PRSより入力する信号STR,CKに従って各受光回路を制御するセンサ駆動回路である。センサ駆動回路SDRは制御信号φ1,φ2,CL,SHにより各受光回路を制御し、選択信号SEL1〜SEL6により受光回路のいずれか1つを選択して、その選択した受光回路から得られる像信号SSNSを中央演算回路PRSに送信する。
図11は、レンズ制御回路LNSUがレンズの焦点距離情報、距離環情報を得る様子を示したものである。メモリ部401に、レンズ種別、距離環の位置、ズーム環の位置、デフォーカス量対焦点調節レンズ繰り出し量の係数などが記憶されている。これら記憶された情報は、信号に変換されてレンズ制御回路LNSU内の制御部403で演算され、レンズ情報DLCとしてレンズ通信回路LCOMを介して中央演算回路PRSに入力される。焦点距離を複数もつ撮影レンズ、いわゆるズームレンズの焦点距離情報は、連続的に変化する焦点距離を複数に分割した各範囲の代表値である。また、この場合の距離環の位置情報は直接合焦演算に使用するわけではないので、それほどの精度は必要としない。レンズ駆動部402は、撮影レンズ201を構成するレンズを移動させて焦点状態(フォーカス位置)を調整する。制御部403は撮影レンズ201全体の制御を司る。
以下に、被写体から焦点検出部の受光素子に到達する光束に含まれる迷光の位置と光量を算出する方法、すなわち迷光補正について説明する。
本実施例において、ROMは迷光の発生源となる光源の位置と該光源の光量に対応して発生する迷光の受光素子中の位置と光量の関係を補正情報として記憶している。一方で、受光素子215の受光素子列を用いて、迷光の発生源となる光源の位置と光量を検出する。本実施例において、受光素子215は、撮影レンズの被写界内における迷光の発生源となる光源の位置及び、光源の光量を検出する機能を有している。あらかじめ記憶している補正情報と、検出された迷光の発生源となる光源の位置と光量を用いて補正量の算出を行う。詳細を以下に説明する。
図12は、図10のROM内に記憶されている補正情報の例を示している。縦軸には、迷光の発生源となる光源の位置を受光素子列を構成する画素の番号(m)で示している。横軸には、同様に迷光の発生位置を受光素子列を構成する画素の番号(n)で示している。表中には、迷光により発生する対の光学像の光量差(差分)を割合(K(m,n))で示している。例えば、迷光の発生源となる光源が、受光素子列中の6画素目に存在した場合には、受光素子列中の5〜9画素目に迷光の影響で、対の光学像の出力に差が発生する。さらに、受光素子列中の6画素目の出力の3%(K(6,7))が、7画素目に対の光学像の出力の差分として発生することを示している。ここで記憶されている対の光学像の光量差の割合は、対の光学像の位置関係において位置ずれがない、すなわちデフォーカス量がほぼ0の際の光量差である。デフォーカスしていて、対の光学像の位置にずれがある場合には、対の受光素子列の出力中における迷光の発生源となる光源の位置が異なるため、デフォーカス状態での出力差の発生要因は、迷光だけに限られない。そのため、本実施例では、対の光学像の位置ずれがない状態の対の光学像の光量差に着目した補正情報を記憶している。このような補正情報を記憶することにより、対の光学像に対応してそれぞれに補正情報を持つ必要がなく、ROMに記憶しておくべき補正情報の容量を低減することができる。また、図9で説明した迷光304、305のように対の光学像の両方に、同じ位置で同じ光量の迷光が発生した場合には、対応した補正情報は0%となるため、上述した通り焦点検出の精度に悪影響を与えない迷光に関して、補正情報の容量の低減につながる。また、補正情報が対の光学像の光量の差分を用いることにより、片方の光学像の迷光を扱うより、より微量な光量の迷光を補正対象として扱うことができる。例えば、補正情報を作成するために、実測に基づいて迷光の位置と光量の測定を行う場合に、片方の光学像の測定だけを行うと、被写体の輝度ムラと迷光を切り分けるのが困難である。そのため、迷光として認識できる光量の閾値が大きくなり、微量な光量の迷光は補正の対象から外れてしまう。本実施例のように、対の光学像の差分を用いることにより、精度良く迷光を検出することができ、少ない情報容量で補正情報を構成することができる。
次に、上述した補正情報を用いた補正の方法について説明する。本実施例では、補正情報として記憶されている情報は、対の光学像の出力の差分であるため、対の出力信号のうち、片方の出力信号にのみ補正を行うことで、迷光に関する補正を行うことができる。図9(A)で説明した対の出力信号303−1、303−2の各画素ごとの出力をX(n),Y(n)とする。nは、画素の番号を示しており、図9(A)では、横軸で右に進むにつれ、画素番号が1から順に増えていくことを示している。本実施例では、補正をX(n)の出力波形に対して行うとし、補正後の信号をX2(n)とすると、補正後の信号をX2(n)は、以下のように記される。
Mは、迷光が発生しうる光源位置を示す画素番号である。図12中では、出力信号303−1を構成する画素数N(表中は15画素)と同数としたが、これに限らない。より広い範囲で、迷光が発生する可能性がある場合には、Mはより大きい値を持てばよい。
上述のように補正を行う場合には、補正情報K(m,n)は、X(n)‐Y(n)の情報を基に迷光の量を設定すればよい。補正を終えた後、X2(n)とY(n)を用いて周知の相関演算手段を用いて演算することで、デフォーカス量を算出することができる。
上記構成によるカメラの焦点検出動作について、図13のフローチャートに従って説明する。
カメラの撮影フローにおいて、カメラのレリーズスイッチの第1ストローク操作(いわゆる半押し操作)や、専用の焦点検出動作開始スイッチを検出すると焦点検出動作を開始する。
ステップ1(図では、「S」と略す)では、事前に指定された焦点検出領域に関する受光素子の露光を行う。受光素子215内に設けられた露光量調整手段により、受光する光量が飽和しないよう制御され、露光が終了する。その後、指定された焦点検出領域に対応した受光回路から得られる像信号SSNSを中央演算回路PRSに送信する。
ステップ2では、受光素子列からの像信号に基づいて、指定されている焦点検出領域の焦点検出結果、すなわちデフォーカス量を算出する。ここでは、対の受光素子列から得られた像信号を用いて、相関演算を用いた公知の手法、例えば特公平5−88445号公報に開示されている手法を用いて位相差を検出することにより、デフォーカスの方向を含めたデフォーカス量を算出することができる。また、像信号のコントラスト等から公知の手法によって、それぞれの焦点検出可能・不可能の判定を行う。
ステップ3では、中央演算回路PRSは、算出されたデフォーカス量が、所定の値以下であるかを判定する。上述した通り補正情報は、対の光学像の出力の差分から計算されたものであるため、デフォーカス量がある程度小さい、すなわち対の光学像の出力波形が、概ね重なっていることを前提としている。そのため、ステップ3では、補正が可能なデフォーカス量であるか否かを判定する。ステップ3でNOが選択された場合は、デフォーカス量が大きく、補正に適さないため、ステップ7に移行し、ステップ2で算出されたデフォーカス量に基づき撮影レンズを駆動し、再びステップ1から焦点検出動作を行う。
ステップ3でYESが選択された場合には、ステップ4に移行し、上述した方法で、迷光の影響を低減するため、対の光学像の出力波形の片方に補正を行う。
ステップ5では、ステップ4で算出された補正後の出力波形を用いてデフォーカス量を算出する。算出方法は、ステップ2と同様である。
ステップ6では、算出したデフォーカス量から、合焦状態であるかを判定する。ステップ6でNO、すなわち、合焦状態ではないと判定された場合、焦点検出処理結果から算出されたデフォーカス量に応じて、撮影レンズの駆動を開始し、再び、ステップ1から焦点検出動作を行う(ステップ7)。ステップ6でYES、すなわち合焦状態であると判定された場合、撮影動作を開始させるためのレリーズスイッチの第2ストローク操作(いわゆる全押し操作)を待つ状態となり、焦点検出処理を終了する。一定時間待機状態が続くと、焦点検出状況が変化した可能性があるため、再び焦点検出動作を開始する。
以上のように構成することにより、迷光の補正に関する情報の記憶容量を低減しながら、迷光に関して高精度に補正を行い、高精度に焦点検出を行うことができる。
上述した例では、迷光の発生源となる光源の位置を検出する光源検出手段として受光素子215を用いた例を示したが、光源検出手段はこれに限らない。例えば、測光センサ221を用いて、迷光の発生源となる光源の位置及び光量を検出することができる。その場合には、焦点検出領域外の迷光の発生源の影響を低減させることができ、より精度のよい迷光の補正を行うことができる。
また、上述した例では、算出されるデフォーカス量が所定値以下になると、必ず補正を行うよう構成されているが、焦点検出処理の方法はこれに限らない。すなわち、対の受光素子列から得られる光学像の空間周波数情報(被写体のコントラスト)により補正を行うか否かの判断を行うようにしてもよい。一般に迷光の光量は、本来の被写体から得られる光量に比べ微小であるため、被写体のコントラストが高い場合には、焦点検出結果に対する悪影響は小さい。そのため、例えば、図13中のステップ3の後に、被写体のコントラストが所定値に対して大きいか小さいかを判定し、大きい場合には、迷光の影響は小さいと判断し、迷光補正とデフォーカス量算出を省略することも可能である。換言すれば、被写体のコントラストが所定値以下の場合には受光素子列からの出力を補正すると判断し、被写体のコントラストが所定値より大きい場合には受光素子列からの出力を補正しないと判断する。その場合、無駄な補正処理が行われないため、焦点検出処理の高速化が図れる。
また、上述した例では、一度の露光(図13のステップ1)結果に基づいて、補正実行の判断、デフォーカス量の判定、迷光補正を行ったが、焦点検出処理の方法は、これに限らない。対の光学像の空間周波数情報(被写体のコントラスト)などの情報により補正を行うか否かの判断を行う場合には、ある程度デフォーカス量が大きい場合でも、判断可能である。そのため、例えば、デフォーカス量が所定の値以下か否かを判定する前の図13中のステップ1の後に、被写体のコントラストが所定値に対して大きいか小さいかを判定し、大きい場合には、迷光の影響は小さいと判断し、補正を省略することも可能である。つまり、迷光補正を行うか否かの判断は、補正を行う対の光電変換部の出力が得られる以前の対の光電変換部の出力から行われることとなる。その場合、焦点検出動作のより初期のステップで、補正処理の必要性を判断できるため、焦点検出処理の高速化が図れる。
本実施例では、焦点検出方法として、再結像を行う光学系を有する焦点検出部を用いて説明したが、焦点検出方法は、これに限って適用できるのではなく、他の様々な焦点検出方法においても応用可能である。例えば、特開2000−156823号公報に開示されているような撮影レンズの予定結像面210に配された対の画素により、撮影レンズ201の異なる部分を通る光束を用いて位相差方式焦点検出を行う場合も有効である。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。