JP5685768B2 - スクリーニング方法 - Google Patents
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Description
(A) 霊長類動物多能性幹細胞を、幹細胞因子(SCF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、エリスロポエチン(EPO)、トロンボポエチン(TPO)、Flt3リガンド(FL)、インターロイキン(IL)、血管内皮成長因子(VEGF)、骨形成タンパク質(BMP)、オンコスタチンM、酸性および塩基性線維芽細胞増殖因子(acidic FGF、basic FGF)、アンギオポイエチンファミリー、及びアクチビンうちの少なくとも一つを含むサイトカインの存在下、血清もしくは血清代替物を含む培地または無血清培地で浮遊培養し、胚葉体または胚葉体類似細胞凝集塊を製造するステップ、
(B) ステップ(A)で得られた胚葉体または胚葉体類似細胞凝集塊を、血管内皮成長因子(VEGF)、幹細胞因子(SCF)、Flt3リガンド(FL)、インターロイキン(IL)、骨形成タンパク質、塩基性線維芽細胞増殖因子(basic FGF)、アンギオポイエチンファミリー、及びアクチビンうちの少なくとも一つを含むサイトカインの存在下、ゼラチンでコートした培養皿の上で接着培養して浮遊細胞と接着細胞とを含む特定前駆細胞を製造するステップ、
(C) ステップ(B)で得られた特定前駆細胞から浮遊細胞と接着細胞を分離するステップ、および
(D) ステップ(C)で分離された接着細胞をゼラチンでコートした培養皿の上で接着培養で継代する方法を用いて血管内皮細胞を産生させるステップ
により分化誘導された血管内皮細胞、もしくは霊長類動物の末梢血単核球または骨髄単核球に由来する血管内皮前駆細胞から作製された成熟血管内皮細胞を、ヒト初代培養血管内皮細胞と比較して有意な発現量の変化を認めた細胞膜蛋白コード遺伝子を抽出することからなる、血管平滑筋細胞増殖抑制効果を伝達する責任分子のスクリーニング方法を提供する。
(E) 霊長類動物多能性幹細胞から作製された血管内皮細胞、もしくは霊長類動物の末梢血単核球または骨髄単核球に由来する血管内皮前駆細胞から作製された成熟血管内皮細胞に対する細胞固定剤の影響を調べることで、血管平滑筋細胞増殖抑制因子の性格付けを行うステップ、
(F) 血管平滑筋細胞増殖抑制効果を持つ細胞群である霊長類動物多能性幹細胞から作製された血管内皮細胞、もしくは霊長類動物の末梢血単核球または骨髄単核球に由来する血管内皮前駆細胞から作製された成熟血管内皮細胞と、血管平滑筋細胞増殖抑制効果を持たない細胞群であるヒト初代培養血管内皮細胞について遺伝子発現に関する網羅的解析を行うことで血管平滑筋細胞増殖抑制因子の候補を絞るステップ、
および
(G) ステップ(F)で得られた候補分子の中からステップ(E)で得られたキャラクタリゼーションの結果に合うものを選別するステップ、
を含む。
第一群として、血管平滑筋細胞増殖抑制効果を持つ霊長類動物多能性幹細胞から作製された血管内皮細胞、もしくは霊長類動物の末梢血単核球または骨髄単核球に由来する血管内皮前駆細胞、ならびに
第二群として、血管平滑筋細胞増殖抑制効果を持たない臍帯静脈血管内皮細胞、大動脈血管内皮細胞、冠状動脈血管細胞または微小血管内皮細胞
から、それぞれ、RNAを調製し、遺伝子発現に関する網羅的解析をマイクロアレイで行い、第一群において第二群より発現量が高値であった遺伝子を抽出する
ことからなる。
(1) 霊長類動物胚性幹細胞を、細胞外マトリックスでコートされた容器中、無フィーダーおよび無サイトカイン下、蛋白成分を含有する培地で培養するステップ、
(2) ステップ(1)で形成された胚性幹細胞のコロニーを細胞剥離剤の存在下、剥離するステップ、および
(3) ステップ(2)で得られた胚性幹細胞のコロニーを細胞外マトリックスでコートされた容器中、無フィーダーおよび無サイトカイン下、蛋白成分を含有する培地に播種するステップで、未分化で継代維持するための培養および継代方法を用いたものであることが好ましい。
(A) 霊長類動物胚性幹細胞を、サイトカインの存在下、血清もしくは血清代替物を含む培地または無血清培地で浮遊培養し、胚葉体または胚葉体類似細胞凝集塊を製造するステップ、
(B) ステップ(A)で得られた胚葉体または胚葉体類似細胞凝集塊を、血管内皮細胞に分化させるための少なくとも一種のサイトカインの存在下、接着培養して浮遊細胞と接着細胞とを含む特定前駆細胞を製造するステップ、
(C) ステップ(B)で得られた特定前駆細胞から浮遊細胞と接着細胞を分離するステップ、および
(D) 分離された接着細胞を接着培養で継代する方法を用いて血管内皮細胞を産生させるステップ
を含む。
(A) 霊長類動物多能性幹細胞を、サイトカインの存在下、血清もしくは血清代替物を含む培地または無血清培地で浮遊培養し、胚葉体または胚葉体類似細胞凝集塊を製造するステップ、
(B) ステップ(A)で得られた胚葉体または胚葉体類似細胞凝集塊を、血管内皮細胞に分化させるための少なくとも一種のサイトカインの存在下、接着培養して浮遊細胞と接着細胞とを含む特定前駆細胞を製造するステップ、
(C) ステップ(B)で得られた特定前駆細胞から浮遊細胞と接着細胞を分離するステップ、および
(D) ステップ(C)で分離された接着細胞を接着培養で継代する方法を用いて血管内皮細胞を産生させるステップ
により分化誘導された血管内皮細胞、もしくは霊長類動物の末梢血単核球または骨髄単核球に由来する血管内皮前駆細胞から作製された成熟血管内皮細胞を、ヒト初代培養血管内皮細胞と比較して有意な発現量の変化を認めた細胞膜蛋白コード遺伝子を抽出することからなる、
血管平滑筋細胞増殖抑制効果を伝達する責任分子のスクリーニング方法を提供する。
(E) 霊長類動物多能性幹細胞から作製された血管内皮細胞、もしくは霊長類動物の末梢血単核球または骨髄単核球に由来する血管内皮前駆細胞から作製された成熟血管内皮細胞に対する、アルデヒト系細胞固定剤、アルコール系細胞固定剤、界面活性化剤等の各種細胞固定剤の影響を調べることで、血管平滑筋細胞増殖抑制因子の性格付け(キャラクタリゼーション)を行うステップ、
(F) 血管平滑筋細胞増殖抑制効果を持つ細胞群(即ち、霊長類動物多能性幹細胞から作製された血管内皮細胞、もしくは霊長類動物の末梢血単核球または骨髄単核球に由来する血管内皮前駆細胞から作製された成熟血管内皮細胞)と、持たない細胞群(即ち、血管平滑筋細胞増殖抑制効果を持たない臍帯静脈血管内皮細胞、大動脈血管内皮細胞、冠状動脈血管細胞または微小血管内皮細胞などのヒト初代培養血管内皮細胞)とについて、遺伝子発現に関する網羅的解析を行うことで血管平滑筋細胞増殖抑制因子の候補を絞るステップ、
(G) ステップ(F)で得られた候補分子の中からステップ(E)で得られたキャラクタリゼーションの結果に合うものを選別するステップ、を含む。ステップ(G)は、ステップ(E)の結果によってステップ(F)にかける候補を予め絞り込む操作を含む。
第一群として、「血管平滑筋増殖抑制効果を持つヒト血管内皮細胞」であるhESDECまたはhEPCDEC、あるいは継代数の少ない(例えば5〜15回)hESDECまたはhEPCDEC、ならびに
第二群として、「血管平滑筋増殖抑制効果のないヒト血管内皮細胞」であるHUVEC、HAEC、HCAECまたはHMVEC、もしくは継代数の多い(例えば16回以上)hESDECまたはhEPCDEC、
から、それぞれ、RNAを調製し、遺伝子発現に関する網羅的解析を、市販のマクロアレイ、例えばHuman Genome U133 Plus 2.0 Array (Affymetrix製)およびHuman Gene 1.0 ST Array(Affymetrix製)を用いて行う。そして、第一群において第二群より発現量が高値であった遺伝子を抽出する。
i) 第二群の血管内皮細胞に当該遺伝子の発現ベクターを導入した際に、「血管平滑筋増殖抑制効果」が発揮されるか、
ii) 第一群の血管内皮細胞に当該遺伝子のshRNAの発現ベクターを導入した際に、「血管平滑筋増殖抑制効果」が減弱/消失するか、
iii) 第一群の血管内皮細胞に当該分子に対するブロッキング抗体を反応した際に、「血管平滑筋増殖抑制効果」が減弱/消失するか、
iv) 第一群の血管内皮細胞に当該分子に対する阻害剤を投与した際に、「血管平滑筋増殖抑制効果」が減弱/消失するか、
等の試験を行うことは当業者には容易である。
(1)カニクイザルES細胞由来血管内皮細胞(cmESDEC)の作成
1)分化培地の調製
カニクイザル胚性幹細胞(田辺三菱製薬株式会社より入手)から、以下に示す組成の分化培地(サイトカイン添加)を用いて分化誘導を行った。
・イスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM、シグマケミカル製)、
・15重量% 牛胎児血清(PAA Laboratories GmbH、オーストリア)
・1mM β−メルカプトエタノール(シグマケミカル製)、
・2mM L−グルタミン(インビトロジェン製)、
・終濃度20ng/ml 血管内皮成長因子(VEGF)、
・終濃度20ng/ml 骨形成タンパク質-4(BMP-4)、
・終濃度20ng/ml 幹細胞因子(SCF)、
・終濃度10ng/ml Flt3-リガンド、
・終濃度20ng/ml インターロイキン-3(IL3)、
・終濃度10ng/ml インターロイキン-6(IL6)
ステップ(A)
分化培地(サイトカイン添加)を用いたハンギング・ドロップ法により、胚葉体類似の細胞凝集塊細胞を作成した。具体的には、カニクイザル胚性幹細胞を剥離液で回収した後、0.25%トリプシン液(インビトロジェン製)と37℃、5分間反応させることで1個の細胞レベルに分散させた。
3日後には肉眼的に細胞凝集塊の形成が確認できたので、培養皿の蓋面を洗うようにしてこれを回収し、0.1%ゼラチンでコートした培養皿(直径10cmまたは6cm)の上で、分化培地(サイトカイン添加)を用いて、CO2インキュベーターにおいて、37℃、5体積%CO2で接着培養を開始した。以後、3〜4日ごとに培地を交換した。カニクイザル胚性幹細胞の凝集塊は、平面上に広がりながら生長を続けた。
約2週間後に、嚢状構造物の形成、接着細胞の増殖、および浮遊細胞(球状細胞)の産生が確認された。培養上清を回収して遠心することで浮遊細胞(球状細胞)を沈降回収した。接着細胞は、トリプシン/EDTA液(インビトロジェン製)を用いて37℃、5分間反応させることで剥離回収した。
回収した接着細胞に関して、0.1%ゼラチンでコートした新しい培養皿で、分化培地(サイトカイン添加)を用いて接着培養を行った。以後、3〜4日ごとに細胞をトリプシン/EDTA液を用いて剥離しながら、1/2〜1/3程度の希釈で継代を行った。
温度感受性培養皿であるUpCell(登録商標、CellSeed株式会社製)にcmESDECを播種した。以後は、通常の継代増幅培養の際と同様に、37℃で、5%炭酸ガス培養装置内で培養した。3〜4日後に細胞がコンフルエント状態になったことを確認した後、培養皿を取出し室温にて45分程度放置した。この低温処理により細胞が部分的に剥離し始めた。
一昼夜の培養後に重しを静かに外すと、疎水性膜は培地中に浮遊して剥離した。一方、cmESDEC細胞シートはゼラチン・コート皿にしっかりと接着していた。細胞生存性は良好に保たれていたため、cmESDECはその後も順調に増殖した。図1は、cmESDEC細胞シートを回収したのちに、ゼラチン・コート皿に移して培養を続行した際の位相差顕微鏡写真である(スケールは100μmを表す)。
cmESDECを担持した基材が、ヒト大動脈平滑筋細胞(AoSMC)の増殖している血管狭窄部に直接挿入されてはじめて、AoSMC増殖抑制効果が発揮され、その結果、血管狭窄部の血行が再建されることを確かめるために、以下のシミュレーション実験を行った。それは、cmESDECとAoSMCとの共培養を、接触培養法(図2の(A)にモデル図)と非接触培養法(図3の(A)にモデル図)の二種類で行うものである。
あらかじめcmESDECに電離放射線(40Gy)を照射して細胞増殖を停止させた。この状態で一昼夜培養し、完全に細胞分裂を停止させた後、細胞をトリプシン処理により剥離回収した。
1)と同様に調製されたCSFE標識済みのcmESDEC、およびPKH-26標識済みのAoSMCを、それぞれ6穴のBoyden Chamber(ポアサイズは1μm)の上穴および下穴に播種した。
(1)ヒトES細胞由来血管内皮細胞(hESDEC)の作成
1)分化培地の調製
京都大学再生医科学研究所にて樹立されたヒト胚性幹細胞(khES-3株)から、以下に示す組成の分化培地(サイトカイン添加)を用いて分化誘導を行った。
・イスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM、シグマケミカル製)、
・15重量% 牛胎児血清(PAA Laboratories GmbH、オーストリア)
・1mM β−メルカプトエタノール(シグマケミカル製)、
・2mM L−グルタミン(インビトロジェン製)、
・終濃度20ng/ml 血管内皮成長因子(VEGF)、
・終濃度20ng/ml 骨形成タンパク質-4(BMP-4)、
・終濃度20ng/ml 幹細胞因子(SCF)、
・終濃度10ng/ml Flt3-リガンド、
・終濃度20ng/ml インターロイキン-3(IL3)、
・終濃度10ng/ml インターロイキン-6(IL6)
ステップ(A)
分化培地(サイトカイン添加)を用いた浮遊培養法により、胚葉体類似の細胞凝集塊細胞を作成した。具体的には、直径10cmの円形培養皿で維持中のヒト胚性幹細胞を専用剥離液(リプロセル製)で処理することで剥離回収し、さらにピペッティング操作により細胞集塊をできるだけ細かく分散させた。この際、完全に1個の細胞レベルにまで分散させると細胞生存性が著しく損なわれるため、数個-数十個程度の細胞からなる微小集塊に分散させることを目指してピペッティングを行った。
3日後には培養液中に多数の細胞凝集塊の形成が肉眼的に確認されたので、これらを回収して、0.1%ゼラチンでコートした培養皿(直径10cmまたは6cm)の上で、分化培地(サイトカイン添加)を用いて、CO2インキュベーターにおいて、37℃、5体積%CO2で接着培養を開始した。以後、3〜4日ごとに培地を交換した。ヒト胚性幹細胞の凝集塊は、平面上に広がりながら生長を続けた。
約2週間後に、嚢状構造物の形成、接着細胞の増殖、および浮遊細胞(球状細胞)の産生が確認された。培養上清を回収して遠心することで浮遊細胞(球状細胞)を沈降回収した。接着細胞は、トリプシン/EDTA液(インビトロジェン製)を用いて37℃、5分間反応させることで剥離回収した。
回収した接着細胞に関して、0.1%ゼラチンでコートした新しい培養皿で、分化培地(サイトカイン添加)を用いて接着培養を行った。以後、3〜4日ごとに細胞をトリプシン/EDTA液を用いて剥離しながら1/2〜1/3程度の希釈で継代を行ったところ、老化による細胞停止まで約10回の継代培養が可能であった。なお、実施例1のカニクイザルES細胞の場合と同様に、細胞表面マーカー発現および機能アッセイにより、全ての細胞が血管内皮細胞に分化していることが確認された。
実施例1の1)接触培養法による共培養および2)非接触法による共培養に記載した方法に従って、hESDECがAoSMCの増殖に与える影響を調べた。結果を図6に示す。
(1)ヒト末梢血由来血管内皮前駆細胞(EPC)を用いた成熟血管内皮細胞(hEPCDEC)の作成
大日本製薬(株)からヒト末梢血単核球に由来するEPCの2つの異なるロットを入手した。EPCは専用培地(大日本製薬製)を用いて、30倍希釈したMatrigel(商標)Matrix (BD Biosciences製)をコートした培養皿の上で、7回継代培養することで成熟化を促した。数回程度の継代後には、組織幹駆細胞(未熟細胞)のマーカーとして知られるCD133およびCD34の発現が消失するとともに、血管内皮細胞のマーカーであるVE-cadherinやPECAM1がほぼ全ての細胞で発現していることが確認された。
実施例1の1)接触培養法による共培養、および2)非接触法による共培養に記載した方法に従って、(1)で作製された「ヒトEPC由来成熟血管内皮細胞(hEPCDEC)」がAoSMCの増殖に与える影響を調べた。結果を図8に示す。
実施例3のロット2のhEPCDECに関して、「継代数」と「AoSMC増殖抑制効果」との関連を調べた。具体的には、9継代目、12継代目、および15継代目のhEPCDECに関してAoSMC増殖抑制効果を調べた(図8は7継代目のhEPCDECでのデータである)。結果を図9に示す。
(1)各種の細胞固定剤の影響
実施例1〜4に記載したように、cmESDEC、hESDEC、hEPCDEC等は、AoSMCに対する増殖抑制作用を直接的細胞間相互作用により発揮する。当該作用を伝達する責任分子に対するアルデヒト系、アルコール系、界面活性剤等の細胞固定剤の影響を調べることは、責任分子の分子機構を明らかにする有用な情報を与える。
一般的な蛋白架橋剤であるアルデヒト系細胞固定液の影響を調べるため、実施例3のhEPCDECを汎用の方法によりグルタールアルデヒト(2.5%)溶液で固定し、その上にPKH-26で染色したAoSMCを播種して培養した。4日後に、実施例1と同様にして、平均細胞分裂回数を算出した。結果を図10(左)に示す。グルタールアルデヒト固定を行っても、AoSMC増殖抑制効果が保持されることが判明した。なお、グルタールアルデヒト固定液の非特異的細胞毒性により増殖抑制効果が発揮されたのではないことは、Matrigel(商標)Matrixでコートした培養皿をグルタールアルデヒト処理した際には、AoSMC増殖抑制効果が発揮されなかったことから否定された。「AoSMC増殖抑制効果」を伝達する責任分子は、蛋白架橋剤であるアルデヒド含有液による処理後にもその機能を保持したことから、微細構造変化があっても機能が保持される安定な蛋白性分子、または脂質や多糖体等の非蛋白性分子であると結論された。
(I)で記載した実験と同様にして、汎用の方法でアセトン/メタノール(1:3)混合液でhEPCDECを固定し、その上にPKH-26で染色したAoSMCを播種した。4日間の培養後、平均細胞分裂回数を算出した。結果を、図10(中)に示す。AoSMC増殖抑制効果は完全に消失し、かつ顕著なAoSMC増殖促進効果が検出された。また、汎用の酢酸/エタノール固定でも同様の結果が得られた。この結果から、「AoSMC増殖抑制効果」を伝達する分子は、脱脂作用の強いアルコール含有固定液によりその機能を喪失したことから、脂質、糖脂質、または機能発現に脂質成分が重要である蛋白性分子(glycosylphosphatidylinositol (GPI)-アンカー蛋白等)であると結論された。
(I)で記載した実験と同様にして、汎用の方法によりデオキシコール酸溶液(0.1%−0.5%)でhEPCDECを固定し、その上にPKH-26で染色したAoSMCを播種した。4日間の培養後、平均細胞分裂回数を算出した。なおデオキシコール酸による固定では細胞は完全に剥離し、細胞外マトリックスのみが残存する。結果を、図10(右)に示す。AoSMC増殖抑制効果は完全に消失し、かつ顕著なAoSMC増殖促進効果が検出された。この結果から、「AoSMC増殖抑制効果」を伝達する責任分子は、細胞実質成分(細胞膜を含む)に由来するものであり、細胞外のマトリックス成分に由来するものではないと結論された。
(1)により、「AoSMC増殖抑制効果」を伝達する分子は、細胞実質に由来する脂質、糖脂質、または機能発現に脂質成分が重要な蛋白性分子であると結論された。ここではまず、当該分子が「機能発現に脂質成分が重要な蛋白性分子」である可能性に関して、マイクロアレイを用いた遺伝子発現に関する網羅的解析により、その候補を絞った。具体的には、
・ 第一群として「AoSMC増殖抑制効果を持つヒト血管内皮細胞」であるhESDEC、および継代数の少ないhEPCDEC、
・ 第二群として「AoSMC増殖抑制効果のないヒト血管内皮細胞」であるHUVEC, HAEC, HUVEC、および継代数の多いhEPCDEC
からRNAを調製し、遺伝子発現に関する網羅的解析をHuman Genome U133 Plus 2.0 Array(Affymetrix製)およびHuman Gene 1.0 ST Array(Affymetrix製)を用いて行った。そして、第一群において第二群より発現量が高値であった遺伝子11個を抽出することができた。結果を表1に示す。
2 培養液(EGM-2培地)
3 6穴6Boyden Chamber
4 上穴
5 下穴
AoSMC ヒト大動脈平滑筋細胞
cmESDEC カニクイザルES細胞由来血管内皮細胞
hESDEC ヒトES細胞由来血管内皮細胞
hEPCDEC ヒト血管内皮前駆細胞由来成熟血管内皮細胞
HUVEC ヒト臍帯静脈血管内皮細胞
HAEC ヒト大動脈血管内皮細胞
HCAEC ヒト冠状動脈内皮細胞
HMVEC ヒト皮膚微小管内皮細胞
Claims (4)
- (A) 霊長類動物多能性幹細胞を、幹細胞因子(SCF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、エリスロポエチン(EPO)、トロンボポエチン(TPO)、Flt3リガンド(FL)、インターロイキン(IL)、血管内皮成長因子(VEGF)、骨形成タンパク質(BMP)、オンコスタチンM、酸性および塩基性線維芽細胞増殖因子(acidic FGF、basic FGF)、アンギオポイエチンファミリー、及びアクチビンうちの少なくとも一つを含むサイトカインの存在下、血清もしくは血清代替物を含む培地または無血清培地で浮遊培養し、胚葉体または胚葉体類似細胞凝集塊を製造するステップ、
(B) ステップ(A)で得られた胚葉体または胚葉体類似細胞凝集塊を、血管内皮成長因子(VEGF)、幹細胞因子(SCF)、Flt3リガンド(FL)、インターロイキン(IL)、骨形成タンパク質、塩基性線維芽細胞増殖因子(basic FGF)、アンギオポイエチンファミリー、及びアクチビンうちの少なくとも一つを含むサイトカインの存在下、ゼラチンでコートした培養皿の上で接着培養して浮遊細胞と接着細胞とを含む特定前駆細胞を製造するステップ、
(C) ステップ(B)で得られた特定前駆細胞から浮遊細胞と接着細胞を分離するステップ、および
(D) ステップ(C)で分離された接着細胞をゼラチンでコートした培養皿の上で接着培養で継代する方法を用いて血管内皮細胞を産生させるステップ
により分化誘導された血管内皮細胞、もしくは霊長類動物の末梢血単核球または骨髄単核球に由来する血管内皮前駆細胞から作製された成熟血管内皮細胞を、ヒト初代培養血管内皮細胞と比較して有意な発現量の変化を認めた細胞膜蛋白コード遺伝子を抽出する
ことからなる、血管平滑筋細胞増殖抑制効果を伝達する責任分子のスクリーニング方法。 - (E) 霊長類動物多能性幹細胞から作製された血管内皮細胞、もしくは霊長類動物の末梢血単核球または骨髄単核球に由来する血管内皮前駆細胞から作製された成熟血管内皮細胞に対する細胞固定剤の影響を調べることで、血管平滑筋細胞増殖抑制因子の性格付けを行うステップ、
(F) 血管平滑筋細胞増殖抑制効果を持つ細胞群である霊長類動物多能性幹細胞から作製された血管内皮細胞、もしくは霊長類動物の末梢血単核球または骨髄単核球に由来する血管内皮前駆細胞から作製された成熟血管内皮細胞と、血管平滑筋細胞増殖抑制効果を持たない細胞群であるヒト初代培養血管内皮細胞について遺伝子発現に関する網羅的解析を行うことで血管平滑筋細胞増殖抑制因子の候補を絞るステップ、
および
(G) ステップ(F)で得られた候補分子の中からステップ(E)で得られたキャラクタリゼーションの結果に合うものを選別するステップ、
を含む、請求項1に記載の血管平滑筋細胞増殖抑制効果を伝達する責任分子のスクリーニング方法。 - ステップ(E)の細胞固定剤は、アルデヒト系細胞固定剤、アルコール系細胞固定剤および界面活性化剤からなる群から選ばれる少なくとも一種である、請求項2に記載の血管平滑筋細胞増殖抑制効果を伝達する責任分子のスクリーニング方法。
- ステップ(F)は、
第一群として、血管平滑筋細胞増殖抑制効果を持つ霊長類動物多能性幹細胞から作製された血管内皮細胞、もしくは霊長類動物の末梢血単核球または骨髄単核球に由来する血管内皮前駆細胞、ならびに
第二群として、血管平滑筋細胞増殖抑制効果を持たない臍帯静脈血管内皮細胞、大動脈血管内皮細胞、冠状動脈血管細胞または微小血管内皮細胞などのヒト初代培養血管内皮細胞から、それぞれ、RNAを調製し、遺伝子発現に関する網羅的解析をマイクロアレイで行い、第一群において第二群より発現量が高値であった遺伝子を抽出する
ことを特徴とする、請求項2または3に記載の血管平滑筋細胞増殖抑制効果を伝達する責任分子のスクリーニング方法。
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