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JP5653069B2 - 酸化アルミニウム前駆体ゾルの製造法、及び光学用部材の製造方法 - Google Patents

酸化アルミニウム前駆体ゾルの製造法、及び光学用部材の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、塗布性が良好で、かつ可視領域を含む広い領域で高い反射防止性能を低温で作製可能な酸化アルミニウム前駆体ゾルと酸化アルミニウム前駆体ゾルの製造方法、それを用いた光学用部材の製造方法に関する。
可視光領域の波長以下の微細構造を用いた反射防止構造体は、適切なピッチ、高さの微細構造を形成することにより、広い波長領域ですぐれた反射防止性能を示すことが知られている。微細構造を形成する方法としては、波長以下の粒径の微粒子を分散した膜の塗布などが知られている。
また、微細加工装置(電子線描画装置やレーザー干渉露光装置,半導体露光装置,エッチング装置など)によるパターン形成によって微細構造を形成する方法は、ピッチ、高さの制御が可能である。また、すぐれた反射防止性を持つ微細構造を形成することが出来ることが知られている(特許文献1)。
それ以外の方法として、アルミニウムの水酸化酸化物であるベーマイトを基材上に成長させて反射防止効果を得ることも知られている。これらの方法では、真空成膜法あるいは液相法(ゾルゲル法)により成膜した酸化アルミニウム(アルミナ)の膜を水蒸気処理あるいは温水浸漬処理により、表層をベーマイト化して微細構造を形成し、反射防止膜を得ている(特許文献2)。
ベーマイトの微細構造を用いて反射防止膜を形成する方法では垂直入射および斜入射による反射率が極めて低く、優れた反射防止性能が得られることが知られている。
液相法(ゾルゲル法)のようなウエットプロセスを用いる場合は通常、成膜時の焼成温度が200℃以上と高温である(特許文献2)。そのため光学部品の面精度や周辺部材への悪影響や、樹脂基材の様な高温に耐えることのできない基材には成膜できないという問題が生じる。
また、液相法(ゾルゲル法)によって酸化アルミニウム膜を形成するゾルには空気中の水分や水の添加によりアルミニウムアルコキシドが急激に加水分解され白濁することを防止する目的で安定化剤が添加されている。安定化剤としては、一般的にβ−ケトエステル化合物類、β−ジケトン化合物類、アルカノ−ルアミン類のような化合物が用いられる。
安定化剤はアルミニウムとキレートを形成し、有機アルミニウム化合物を生成する。有機アルミニウム化合物は150℃以上の昇華点を有することもある。よって、200℃より低い焼成温度においては、焼成により酸化アルミニウム膜中から有機アルミニウム化合物のような有機成分が完全に除去しきれず、アルミニウムアルコキシドを加水分解して得られる粒子間の結合形成が不十分になることが推測される。粒子間の結合形成が不十分であると酸化アルミニウムベーマイトの凹凸構造が十分に形成されず、反射防止性能が悪化する。
加えて、少なくともアルミニウムを含有する金属アルコキシドと安定化剤を原料に使用したゾルを光学部品上に塗布し膜を形成すると、有機アルミニウム化合物の凝集が起こるため膜の均一性が低下し、膜ムラなどの外観不良を招く場合がある。
そのため、酸化アルミニウム前駆体ゾルから有機アルミニウム化合物を除去し、膜中に残存させないことが好ましい。
そこで、焼成前に膜を水含有溶液に浸漬させることにより、膜中の有機成分を溶出・除去し、膜中に水分を含んだ状態で焼成を行う方法が知られている(特許文献3)。
特開昭50−70040号公報 特開平9−202649号公報 特開2009−015310号公報
しかしながら、上記の様な酸化アルミニウム前駆体ゾルを用いて反射防止膜を形成する液相法(ゾルゲル法)において、使用する安定化剤によっては疎水性の高い有機アルミニウム化合物が生成し、膜中から除去することができないという問題があった。膜中に疎水性の高い有機アルミニウム化合物が残存してしまうと、有機アルミニウム化合物の凝集により、外観不良を抑制した高い反射防止性能を有する光学膜を得ることは困難であった。
本発明は、この様な背景技術に鑑みてなされたものであり、光学用部材の外観が損なわれず、より低温で高性能な反射防止膜が作製可能な酸化アルミニウム前駆体ゾルと酸化アルミニウム前駆体ゾルの製造方法および光学用部材の製造方法を提供するものである。
上記の課題を解決する酸化アルミニウム前駆体ゾルの製造方法は、(1)β−ケトエステル化合物またはβ−ジケトン化合物と、溶媒との混合物にアルミニウムアルコキシドまたはアルミニウム塩化合物を含むアルミニウム化合物を溶解する工程と、
(2)前記(1)の工程で得られた溶液に、水、または触媒を含む水、を混合し、加水分解することで、前記アルミニウムアルコキシドまたはアルミニウム塩化合物の縮合物及び一般式(1)で表される有機アルミニウム化合物の沈殿物を形成する工程と、
(3)前記(2)の工程で得られた溶液から、前記有機アルミニウム化合物の沈殿物を除去する工程とを有することを特徴とする。
R1、R2はそれぞれ独立して炭素数1以上6以下のアルキル基、パーフルオロアルキル基、アルコキシル基またはアリル基であり、R3は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上6以下のアルキル基、パーフルオロアルキル基、アリル基、またはアリール基であり、nは1〜3の整数である。
上記の課題を解決する光学用部材の製造方法は、基材の少なくとも一方の面上に請求項乃至のいずれかに記載の酸化アルミニウム前駆体ゾルの製造方法によって製造された酸化アルミニウム前駆体ゾルを供給する工程、前記酸化アルミニウム前駆体ゾルを基材上に広げる工程、基材を乾燥および/または焼成を行うことにより酸化アルミニウム膜を形成する工程、前記酸化アルミニウム膜を60℃以上100℃以下の温水中に浸漬して酸化アルミニウムベーマイトの凹凸構造を形成する工程を有することを特徴とする。
本発明によれば、有機アルミニウム化合物を酸化アルミニウム前駆体ゾル調製時に沈殿・除去することで、製膜時の有機アルミニウム化合物の凝集による外観不良を抑制することができる。また、低温で反射防止性能を有する表面凹凸構造を作製可能な酸化アルミニウム前駆体ゾルと酸化アルミニウム前駆体ゾルの製造法および、それを用いた光学用部材の製造方法を提供することができる。
本発明の光学用部材の製造方法の一実施形態を示す工程図である。 本発明の光学用部材の一実施態様を示す概略図である。 本発明の光学用部材の一実施態様を示す概略図である。 本発明の光学用部材の一実施態様を示す概略図である。 本発明の光学用部材の一実施態様を示す概略図である。 本発明の実施例1および比較例1の光の波長(nm)に対する絶対反射率(%)の関係を示す図である。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明に係る酸化アルミニウム前駆体ゾルの製造方法は、
(1)β−ケトエステル化合物またはβ−ジケトン化合物と、溶媒との混合物にアルミニウムアルコキシドまたはアルミニウム塩化合物を含むアルミニウム化合物を溶解する工程
(2)前記(1)の工程で得られた溶液に、水、または触媒を含む水、を混合し、加水分解することで、前記アルミニウムアルコキシドまたはアルミニウム塩化合物の縮合物及び有機アルミニウム化合物の沈殿物を形成する工程
(3)前記(2)の工程で得られた溶液から、前記有機アルミニウム化合物の沈殿物を除去する工程を有することを特徴とする。
上記(1)から(3)の工程を順に含む。一般式(1)で表される有機アルミニウム化合物を沈殿させ、沈殿させた有機アルミニウム化合物をろ過によって除去する。
R1、R2は炭素数1以上6以下のアルキル基、パーフルオロアルキル基、アルコキシル基またはアリル基であり、R3は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上6以下のアルキル基、パーフルオロアルキル基、アリル基、またはアリール基であり、nは1〜3の整数である。
以下、一般式(1)で表される化合物を有機アルミニウム化合物と称し、沈殿させた有機アルミニウム化合物を、有機アルミニウム化合物の沈殿物と称することとする。
前記有機アルミニウム化合物の沈殿物を除去する。これにより、酸化アルミニウム前駆体ゾルの中に含まれるアルミニウム原子を100モル%とした時、前記酸化アルミニウム前駆体ゾルの中に含まれる有機アルミニウム化合物は、7.5モル%以上15.5モル%以下とすることができる。この範囲内であれば酸化アルミニウム前駆体ゾルの安定性と塗布性の均整がとれる。これより少ないと空気中の水分により溶液の白濁、沈殿、ゲル化を生じるなど、酸化アルミニウム前駆体ゾルの安定性が低下する。これより多いと酸化アルミニウム前駆体ゾルを基材に塗布した際に有機アルミニウム化合物が凝集し、外観不良の要因となる。
また、酸化アルミニウム前駆体ゾル中の有機アルミニウム化合物をより多く沈殿させるため、酸化アルミニウム前駆体ゾルを冷却しても良い。
本発明の酸化アルミニウム前駆体ゾルは、アルミニウム化合物を溶媒中で水と接触させて得られるアルミニウム化合物の加水分解物および/またはその縮合物を主成分として含んでいる。ここでは、アルミニウム化合物とは、Al−X(Xはアルコキシル基、アシロキシル基、ハロゲン基、硝酸イオンを表す)のことを称することとする。また、アルミニウム化合物の加水分解物とはAl−X(OH)、Al−X(OH)、あるいはAl−(OH)で表される化合物のことを称することとする。前記加水分解物はその−OH基同士あるいは−X基と−OH基が反応してHOあるいはXHの脱離を伴いながらAl−O−Al結合を形成する。その結果得られる1個以上のAl−O−Al結合を有し、直鎖構造または枝分かれ構造を持った化合物をアルミニウム化合物の縮合物と称することとする。なお、前記粒子は非晶質であることが好ましい。
酸化アルミニウム前駆体ゾルには、アルミニウム化合物とともに少量のZr、Si、Ti、Zn、Mgの各々の化合物の少なくとも1種からなる金属化合物とを用いることができる。これらの金属化合物としては各々の金属アルコキシドや塩化物や硝酸塩などの金属塩化合物を用いることができる。ゾルを調製時の副生成物がコーティングの際の製膜性に与える影響が小さいなどの理由から、特に金属アルコキシドを用いるのが好ましい。また、金属化合物の総量100モル%中のアルミニウム化合物の含まれる量は90モル%以上が好ましい。
本発明の酸化アルミニウム前駆体ゾルに含有されるアルミニウム化合物の加水分解物および/またはその縮合物を成分として含有する粒子の含有量は、金属酸化物に換算して1重量%以上7重量%以下、好ましくは2.5重量%以上6重量%以下が望ましい。
アルミニウム化合物などの金属化合物の具体例は以下に例示する。
アルミニウム化合物としては、例えば、アルミニウムアルコキシドとして、アルミニウムエトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウム−n−ブトキシド、アルミニウム−sec−ブトキシド、アルミニウム−tert−ブトキシド、アルミニウムアセチルアセトナート、またこれらのオリゴマー、アルミニウム塩化合物として、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム、酢酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、水酸化アルミニウムなどが挙げられる。
ジルコニウムアルコキシドの具体例として、ジルコニウムテトラメトキシド、ジルコニウムテトラエトキシド、ジルコニウムテトラn−プロポキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド、ジルコニウムテトラn−ブトキシド、ジルコニウムテトラt−ブトキシド等などが挙げられる。
シリコンアルコキシドとしては、一般式Si(OR)で表される各種のものを使用することができる。Rはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基等の同一または別異の低級アルキル基が挙げられる。
チタニウムアルコキシドとしては、例えば、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラn−プロポキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラn−ブトキシチタン、テトライソブトキシチタン等が挙げられる。
亜鉛化合物としては、例えば酢酸亜鉛、塩化亜鉛、硝酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、オレイン酸亜鉛、サリチル酸亜鉛などが挙げられ、特に酢酸亜鉛、塩化亜鉛が好ましい。
マグネシウム化合物としてはジメトキシマグネシウム、ジエトキシマグネシウム、ジプロポキシマグネシウム、ジブトキシマグネシウム等のマグネシウムアルコキシド、マグネシウムアセチルアセトネート、塩化マグネシウム等が挙げられる。
上記の金属化合物の中でもアルミニウム−n−ブトキシド、アルミニウム−sec−ブトキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド、ジルコニウムテトラn−ブトキシド、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシチタン、テトラn−ブトキシチタン、ジプロポキシマグネシウム、ジブトキシマグネシウムなどの金属アルコキシドを原材料に用いることが好ましい。
前記金属化合物の内、特にアルミニウム、ジルコニウム、チタニウムのアルコキシドは水に対する反応性が高く、空気中の水分や水の添加により急激に加水分解され溶液の白濁、沈殿を生じる。また、アルミニウム塩化合物、亜鉛塩化合物、マグネシウム塩化合物は有機溶媒のみでは溶解が困難で、溶液の安定性が低い。これらを防止するために安定化剤を添加し、溶液の安定化を図ることが好ましい。
安定化剤にはβ−ケトエステル化合物および/またはβ−ジケトン化合物を用いる。安定化剤は溶媒中でケト−エノール相変異性によりエノラートとなる。エノラートは金属アルコキシドのアルコール脱離を伴ってアルミニウム原子に配位し、有機金属化合物を生成する。数量体になっている金属アルコキシドに安定化剤が配位することで金属アルコキシドの急激な加水分解を抑制する。金属アルコキシドが加水分解され粒子が成長すると、遊離したエノラートはすでにエノラートが配位している金属アルコキシドにさらに配位する。
このようにして安定化剤はアルミニウムアルコシキドともキレートを形成し、有機アルミニウム化合物を生成する。有機アルミニウム化合物は150℃以上の昇華点を有することもある。よって、200℃以下の低温焼成においては、焼成により酸化アルミニウム膜中から有機アルミニウム化合物のような有機成分が完全に除去しきれず、アルミニウムアルコキシドを加水分解して得られる粒子間の結合形成が不十分になることが推測される。粒子間の結合形成が不十分であると酸化アルミニウムベーマイトの凹凸構造が十分に形成されず、反射防止性能が悪化する。
加えて、少なくともアルミニウムを含有する金属アルコキシドまたは金属塩化合物と安定化剤を原料に使用したゾルを光学部品上に塗布し膜を形成すると、有機アルミニウム化合物の凝集が起こるため、膜ムラなどの外観不良を招く場合がある。そのため、酸化アルミニウム前駆体ゾルから可能な限り有機アルミニウム化合物を除去し、膜中にできるだけ残存させないことが好ましい。
本発明の酸化アルミニウム前駆体ゾルはアルミニウムアルコキシドを加水分解して得られた縮合物、溶媒を含む。さらに有機アルミニウム化合物を前記酸化アルミニウム前駆体ゾル中のアルミニウム原子100モル%に対して7.5モル%以上15.5モル%以下含むことを特徴とする。この範囲内であれば酸化アルミニウム前駆体ゾルの安定性と塗布性の均整がとれる。これより少ないと空気中の水分により溶液の白濁、沈殿、ゲル化を生じるなど、酸化アルミニウム前駆体ゾルの安定性が低下する。これより多いと酸化アルミニウム前駆体ゾルを基材に塗布した際に有機アルミニウム化合物が凝集し、外観不良の要因となる。
酸化アルミニウム前駆体ゾルに含有される有機アルミニウム化合物の量を測定する方法の一つとして、以下の方法がある。酸化アルミニウム前駆体ゾルの溶媒を真空乾燥によって除去した後、有機アルミニウム化合物をクロロホルムなどの抽出溶媒で抽出する。抽出溶媒を真空乾燥によって除去した後、有機アルミニウム化合物の重量を測定し物質量を求める。酸化アルミニウム前駆体ゾルに含まれるアルミニウム原子の量を誘導結合高周波プラズマ分光分析(ICP)などで測定し、酸化アルミニウム前駆体ゾル中のアルミニウム原子1モルに対する有機アルミニウム化合物を求めることができる。
安定化剤としては、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸アリル、アセト酢酸イソプロピル、アセト酢酸−tert−ブチル、アセト酢酸イソブチル、アセト酢酸−2−メトキシエチル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アリルマロン酸ジエチル、メチルマロン酸ジエチル、エチルマロン酸ジエチル、マロン酸ジイソプロピル、イソプロピルマロン酸ジエチル、マロン酸ジ−tert−ブチルなどのβ−ケトエステル化合物類。アセチルアセトン、3−メチル−2,4−ペンタンジオン、3−エチル−2,4−ペンタンジオン、3−ブチル−2,4−ペンタンジオン、3−ペンチル−2,4−ペンタンジオン、3−ヘキシル−2,4−ペンタンジオン、3−イソプロピル−2,4−ペンタンジオン、3−イソブチル−2,4−ペンタンジオン、3−イソペンチル−2,4−ペンタンジオン、3−イソヘキシル−2,4−ペンタンジオン、3−フェニル−2,4−ペンタンジオン、3−クロロアセチルアセトン、トリフルオロアセチルアセトン、ヘキサフルオロアセチルアセトン、2,6−ジメチル−3,5−ヘプタンジオン、2,6−ジメチル−3,5−ヘプタンジオン、ジピバロイルメタンなどのβ−ジケトン化合物類を挙げることができる。
酸化アルミニウム前駆体ゾルから有機アルミニウム化合物を沈殿・除去するためには、有機アルミニウム化合物の結晶性を高めるために、対称構造をもつβ−ジケトン化合物類を用いることが好ましい
安定化剤の添加量は金属化合物の種類によって異なるが、アルミニウムアルコキシド1モルに対して0.5モル以上2モル以下が好ましい。酸化アルミニウム前駆体ゾルの有機アルミニウム化合物含有量は安定化剤の添加量によって減らすことができるが、アルミニウムアルコキシド1モルに対して0.5モルより少ない場合は安定した酸化アルミニウム前駆体ゾルを調製することが困難になる。また、安定化剤は水を加える前に、一定時間アルコキシドと混合することによって効果を発揮する。
加水分解を引き起こすためには、水を適量添加する必要がある。水の添加量は溶媒や濃度によって適量が変化する。水の添加量は、アルミニウム化合物1モルに対し0.5モル以上2モル未満であることが好ましい。
また、加水分解反応の一部を促進する目的で水を加えることができる。触媒として塩酸、リン酸などの酸または塩基触媒を0.1mol/L以下の濃度で用いることが好ましい。
溶媒としては、アルミニウム化合物などの原料が均一に溶解し、かつ粒子が凝集などしない有機溶媒であれば良い。例えばメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチルプロパノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、シクロペンタノール、2−メチルブタノール、3−メチルブタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−メチル−1−ペンタノール、2−エチルブタノール、2,4−ジメチル−3−ペンタノール、3−エチルブタノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、1−オクタノール、2−オクタノールなどの1価のアルコール類:エチレングリコール、トリエチレングリコールなどの2価以上のアルコール類:メトキシエタノール、エトキシエタノール、プロポキシエタノール、イソプロポキシエタノール、ブトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1―エトキシ−2−プロパノール、1−プロポキシ−2−プロパノールなどのエーテルアルコール類:ジメトキシエタン、ジグライム、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジイソプロピルエーテル、シクロペンチルメチルエーテルのようなエーテル類:ギ酸エチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類:n−ヘキサン、n−オクタン、シクロヘキサン、シクロペンタン、シクロオクタンのような各種の脂肪族系ないしは脂環族系の炭化水素類:トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの各種の芳香族炭化水素類:アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどの各種のケトン類:クロロホルム、メチレンクロライド、四塩化炭素、テトラクロロエタンのような、各種の塩素化炭化水素類:N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルフォルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、エチレンカーボネートのような非プロトン性極性溶媒等が挙げられる。
上記溶媒の中でもアルミニウム化合物の溶解性が高く、吸湿し難い点で炭素数5以上8以下の一価のアルコールが好ましい。溶媒の吸湿によりアルミニウム化合物の加水分解が進行すると粒子の凝集を招き酸化アルミニウム前駆体ゾルの安定性が低くなる。また塗工時の吸湿は粒子の凝集により光学特性の安定性を損なう。さらに、一方、前記炭素数5以上8以下の一価のアルコールは疎水性が高く、加水分解に必要な水を均一に混合できず粒径を一定にすることが困難である。そのため炭素数5以上8以下の一価のアルコールに対し水溶性溶媒を併用することが好ましい。ここで述べる水溶性溶媒とは23℃の溶媒に対する水の溶解度が80重量%以上である溶媒を指す。
本発明の酸化アルミニウム前駆体ゾルに含有される溶媒の含有量は、50重量%以上98重量%以下、好ましくは60重量%以上93重量%以下が望ましい。 前記溶媒の混合比としては、炭素数5以上8以下の一価のアルコールを50重量%以上90重量%以下、沸点110℃以上170℃以下の水溶性溶媒を10重量%以上50重量%以下の割合で含有することが好ましい。水溶性溶媒は110℃以上170℃以下の沸点を有する水溶性溶媒である。沸点110℃未満の水溶性溶媒を用いると、揮発による吸湿や白化が起こり易い。沸点170℃を超える水溶性溶媒を用いると、乾燥後も酸化アルミニウム膜中に残存して反射率のばらつきを生じる。前記水溶性溶媒がグリコールエーテルであることが好ましい。
本発明の酸化アルミニウム前駆体ゾルを調製するにあたり、アルミニウムアルコキシドの加水分解と縮合反応を促進するために加熱することができる。加熱温度は溶媒の沸点にも依るが60℃以上150℃以下が好ましく、加熱することによって粒子が成長し粒子性が向上する。
本発明の酸化アルミニウム前駆体ゾルは、基材上に塗布、乾燥してから温水中に浸漬すると酸化アルミニウムベーマイトの凹凸構造を形成することができ、後述する本発明の光学用部材の製造方法に用いるのに適している。
本発明の光学用部材の製造方法について詳細を説明する。
本発明に係る光学用部材の製造方法は、(a)基材の少なくとも一方の面上に前記の酸化アルミニウム前駆体ゾルを供給する工程、(b)前記酸化アルミニウム前駆体ゾルを基材上に広げる工程、(c)基材を乾燥および/または焼成を行うことにより酸化アルミニウム膜を形成する工程、(d)前記酸化アルミニウム膜を60℃以上100℃以下の温水中に浸漬して酸化アルミニウムベーマイトの凹凸構造を形成する工程を有することを特徴とする。
前記光学用部材が、基材の少なくとも一方の面上に酸化アルミニウムベーマイトを成分として含有する板状結晶から形成される板状結晶層からなる反射防止膜を有することが好ましい。
図1は本発明の光学用部材の製造方法の一実施形態を示す工程図である。
図1(a)は、工程(1)において、基材1に前述の酸化アルミニウム前駆体ゾル2が供給された状態を表す。酸化アルミニウム前駆体ゾル2を供給する方法には、細管や一個または複数の細孔から酸化アルミニウム前駆体ゾル2を滴下するなどによって供給する方法、スリットを介して基材1上に酸化アルミニウム前駆体ゾル2を付着させる方法がある。あるいは版に一旦酸化アルミニウム前駆体ゾル2を付着させてから基材1に転写させる方法なども挙げられる。また、基材1を酸化アルミニウム前駆体ゾル2に浸漬することで、基材1にゾル2を供給することができる。
図1(b)は、工程(2)において、工程(1)で供給された酸化アルミニウム前駆体ゾル2が基材1上に広げられた状態を表す。酸化アルミニウム前駆体ゾル2を基材1上に広げる方法としては、基材1を回転することによって滴下したゾル2を広げるスピンコート法、基材1上をブレードやロールを移動させて滴下したゾル2を広げるブレードコート法やロールコート法などが挙げられる。また、酸化アルミニウム前駆体ゾル2を供給しながら広げることも可能である。スリットから酸化アルミニウム前駆体ゾル2を供給しながらスリットまたは基材1を移動させてゾル2を広げるスリットコート法や、一旦版に付着させたゾル2を版または基材1を移動させながら転写する印刷法などである。
基材1を酸化アルミニウム前駆体ゾル2に一旦浸漬してから基材1を等速で引き上げるディップコート法なども一例である。凹面などの立体的に複雑な形状を有する光学用部材を製造する場合、酸化アルミニウム前駆体ゾル2の供給源を接近することが困難であるためスピンコート法が好ましい。
図1(c)は、工程(3)において、基材1を乾燥および/または焼成を行うことにより酸化アルミニウム膜3を形成した状態を表す。基材1の加熱乾燥を行うと,工程(2)で基材1上に広げた酸化アルミニウム前駆体ゾル2は溶媒が揮発して、ゾル2中の粒子が堆積した酸化アルミニウム膜3が形成される。さらに加熱すると未反応のアルコキシドや水酸基の縮合反応が進行する。加熱温度は溶媒の揮散に必要な140℃以上が好ましく、基材やその他の周辺部材への影響を考慮に入れると200℃以下が好ましい。加熱方法としては熱風循環オーブン、マッフル炉、IH炉中で加熱する方法、IRランプで加熱する方法などが挙げられる。
図1(d)は、工程(4)において、基材1上に酸化アルミニウムベーマイトの凹凸構造5を有する層4が形成された状態を表す。凹凸構造5は工程(3)で得られた酸化アルミニウム膜3を60℃以上100℃以下の温水に接触し形成される。形成される酸化アルミニウムベーマイトの凹凸構造を有する層4は、アルミニウムの酸化物または水酸化物またはそれらの水和物の結晶からなり、主な結晶としてはベーマイトである。酸化アルミニウム膜3を温水に接触する方法は、基材1を温水に浸漬する方法、温水を流水もしくは霧状にして酸化アルミニウム膜3に接触させる方法などが挙げられる。以下、酸化アルミニウム膜を温水に接触し形成される結晶を、酸化アルミニウムベーマイトと称することにする。
酸化アルミニウムベーマイトの凹凸構造5を有する層4は、酸化アルミニウムベーマイトを主成分とする板状結晶から形成されている板状結晶層であることが好ましい。その場合の本実施形態に係る光学用部材を示す模式的な概略断面図を図2に示す。
図2において、本発明の製造方法によって得られる光学用部材は、基材1上に、酸化アルミニウムベーマイトを主成分とする板状結晶から形成されている板状結晶層6が積層されている。酸化アルミニウムベーマイトを主成分とする板状結晶層6は、アルミニウムの酸化物または水酸化物またはそれらの水和物の結晶から形成され、主な結晶としてはベーマイトである。
また、これらの板状結晶を配することで、その端部が微細な凹凸形状7を形成するので、微細な凹凸の高さを大きくし、その間隔を狭めるために板状結晶は選択的に基材の表面に対して特定の角度で配置される。
基材1の表面が平板、フィルムないしシートなどの平面の場合には、図3に示すように、板状結晶は基材の表面に対して、すなわち板状結晶の傾斜方向8と基材表面との間の角度θ1の平均角度が45°以上90°以下となるように配置されることが望ましい。さらに好ましくは60°以上90°以下となるように配置されることが望ましい。
また、基材1の表面が二次元あるいは三次元の曲面を有する場合には、図4で示すように、板状結晶は基材の表面に対して、すなわち板状結晶の傾斜方向8と基材表面の接線9との間の角度θ2の平均角度が45°以上90°以下となるように配置されることが望ましい。さらに好ましくは60°以上90°以下となるように配置されることが望ましい。
板状結晶層6の層厚は、好ましくは20nm以上1000nm以下であり、より好ましくは50nm以上1000nm以下である。凹凸を形成する層厚が20nm以上1000nm以下では、微細な凹凸構造による反射防止性能が効果的であり、また凹凸の機械的強度が損なわれる恐れが無くなり、微細な凹凸構造の製造コストも有利になる。また、層厚が50nm以上1000nm以下とすることにより、反射防止性能をさらに高めることとなり、より好ましい。
本発明の微細凹凸の面密度も重要であり、これに対応する中心線平均粗さを面拡張した平均面粗さRa’値が5nm以上、より好ましく10nm以上、さらに好ましくは15nm以上100nm以下、また表面積比Srが1.1以上である。より好ましくは1.15以上、さらに好ましくは1.2以上3.5以下である。
得られた微細凹凸組織の評価方法の一つとして、走査型プローブ顕微鏡による微細凹凸組織表面の観察があり、該観察により該膜の中心線平均粗さRaを面拡張した平均面粗さRa’値と表面積比Srが求められる。すなわち、平均面粗さRa’値(nm)は、JIS B 0601で定義されている中心線平均粗さRaを、測定面に対し適用し三次元に拡張したもので、「基準面から指定面までの偏差の絶対値を平均した値」と表現し、次の式(1)で与えられる。
Ra’:平均面粗さ値(nm)、
:測定面が理想的にフラットであるとした時の面積、|X−X|×|Y−Y|、F(X,Y):測定点(X,Y)における高さ、XはX座標、YはY座標、
からX:測定面のX座標の範囲、
からY:測定面のY座標の範囲、
:測定面内の平均の高さ。
また、表面積比Srは、Sr=S/S〔S:測定面が理想的にフラットであるときの面積。S:実際の測定面の表面積。〕で求められる。なお、実際の測定面の表面積は次のようにして求める。先ず、最も近接した3つのデータ点(A,B,C)より成る微小三角形に分割し、次いで各微小三角形の面積△Sを、ベクトル積を用いて求める。△S(△ABC)=[s(s−AB)(s−BC)(s−AC)]0.5〔但し、AB、BCおよびACは各辺の長さで、s≡0.5(AB+BC+AC)〕となり、この△Sの総和が求める表面積Sになる。微細凹凸の面密度がRa’が5nm以上で、Srが1.1以上になると、凹凸構造による反射防止を発現することができる。また、Ra’が10nm以上で、Srが1.15以上であると、その反射防止効果は前者に比べ高いものとなる。そしてRa’が15nm以上で、Srが1.2以上になると実際の使用に耐えうる性能となる。しかしRa’が100nm以上で、Srが3.5以上になると反射防止効果よりも凹凸構造による散乱の効果が勝り十分な反射防止性能を得ることが出来ない。
基材1と酸化アルミニウムベーマイトの凹凸構造5を有する層4との間に酸化アルミニウム以外を主成分とする層を設けることができる。図5は基材1上に酸化アルミニウム以外を主成分とする層10、さらにその上に酸化アルミニウムベーマイトの凹凸構造5を有する層4が形成された光学用部材の例である。
酸化アルミニウム以外を主成分とする層10は、主に基材1と酸化アルミニウムベーマイトの凹凸構造5を有する層4との屈折率差を調整する目的で設けられる。そのため酸化アルミニウム以外を主成分とする層6は無機材料もしくは有機材料からなる透明膜であることが好ましい。
酸化アルミニウム以外を主成分とする層10に用いられる無機材料の例としては、SiO、TiO、ZrO、ZnO、Taなどの金属酸化物が挙げられる。無機材料からなる酸化アルミニウム以外を主成分とする層10を形成する方法は蒸着やスパッタなどの真空製膜法、金属酸化物前駆体ゾルの塗布によるゾルゲル法などが挙げられる。
一方、酸化アルミニウム以外を主成分とする層10に用いられる有機材料の例としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、マレイミド樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、フェノール樹脂、レゾール樹脂、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアリレート、ポリエーテル、ポリウレア、ポリウレタン、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリケトン、ポリスルホン、ポリフェニレン、ポリキシリレン、ポリシクロオレフィンなどの有機ポリマーが挙げられる。有機材料からなる酸化アルミニウム以外を主成分とする層10を形成する方法は、主にその溶液を塗布により形成するウェットコート法などが挙げられる。
その他、酸化アルミニウムベーマイトの凹凸構造5の表面に、反射防止性を損なわない程度に処理を施すことができる。耐擦傷性や防汚性を付与するためにSiO薄膜、FAS(フッ素化アルキルシラン)やフッ素樹脂の極めて薄い層を設ける例を挙げることができる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。ただし本発明はかかる実施例に限定されるものではない。各実施例、比較例で得られた、表面に微細な凹凸を有する光学膜について、下記の方法で評価を行った。
酸化アルミニウム前駆体ゾルの調製において、有機アルミニウム化合物は安定化剤の添加量によって変化するため、アルミニウムアルコキシドに対する安定化剤の添加量は好ましい添加量の下限値である0.5モル当量を用いた。有機アルミニウム化合物が沈殿する酸化アルミニウム前駆体ゾルに関してはろ過を行った。
(1)酸化アルミニウム前駆体ゾル1から6の調製
14.8gのアルミニウム−sec−ブトキシド(ASBD、川研ファインケミカル製)と、アルミニウム−sec−ブトキシドに対して0.5モル当量の安定化剤と、2−エチルブタノールとを均一になるまで混合攪拌した。0.01M希塩酸を2−エチルブタノール/1−エトキシ−2−プロパノールの混合溶媒に溶解してから、前記アルミニウム−sec−ブトキシドの溶液にゆっくり加え、暫く攪拌した。溶媒は最終的に2−エチルブタノールと1−エトキシ−2−プロパノールの混合比が7/3の混合溶媒になるように調整した。さらに120℃のオイルバス中で2から3時間以上攪拌することによって酸化アルミニウム前駆体ゾル1から6を調製した。調製に用いた安定化剤と各原料の使用量と酸化アルミニウム前駆体ゾルの有機アルミニウム化合物含有量は表1に示した。酸化アルミニウム前駆体ゾル1から3については、有機アルミニウム化合物の沈殿物が酸化アルミニウム前駆体ゾル中に形成された。形成された有機アルミニウム化合物の沈殿物についてはろ過を行ない除去した。
(2)SiO−TiOゾル液7の調製
14.6gのケイ酸エチルに3.15gの0.01M希塩酸〔HClaq.〕と17.2gの2−プロパノールの混合溶媒をゆっくり加えてから、室温で攪拌した。6時間攪拌した後、91.5gの4−メチル−2−ペンタノールと46.4gの2−エチルブタノールの混合溶媒で希釈してA液とした。6.7gのテトラn−ブトキシチタンを2.6gの3−オキソブタン酸エチルと16.8gの4−メチル−2−ペンタノールの混合溶液に溶解した。この溶液を室温で3時間攪拌しB液とした。A液を攪拌しながらB液をゆっくり加え、さらに室温で3時間攪拌することでSi/Tiモル比が78/22のSiO−TiOゾル液9を調製した。
(3)基材の洗浄
片面だけ研磨され、もう一方の面がスリガラス状の大きさ約φ30mm、厚さ約1mmの円盤状ガラス基板をアルカリ洗剤中で超音波洗浄した後、オーブン中で乾燥した。
(4)反射率測定
絶対反射率測定装置(USPM−RU、オリンパス製)を用い、400nmから700nmの範囲の入射角0°時の反射率測定を行った。測定範囲の反射率の平均値をもって評価した。
(5)基板の表面観察
基板表面を目視によって観察を行った。膜ムラが見られる場合は、以下のように分類した。
膜ムラ1:基材周辺部にみられる環状の膜ムラ
膜ムラ2:基材周辺部に向け中心から筋状に延びる膜ムラ
(注1)*安定化剤量(モル当量)は、アルミニウム−sec−ブトキシドに対する安定化剤のモル当量を示す。
(注2)*アルミニウム−sec−ブトキシド量(重量%)は、酸化アルミニウム前駆体ゾルに対する原料のアルミニウム−sec−ブトキシドの重量%を示す。
(注3)*触媒水(モル当量)は、アルミニウム−sec−ブトキシドに対する触媒水のモル当量を示す。
(注4)*有機アルミニウム化合物量(モル%)は、酸化アルミニウム前駆体ゾル中のアルミニウム原子に対する有機アルミニウム化合物のモル%を示す。
実施例1
前記の方法で洗浄したS−LAH55(n550nm=1.83)平板ガラスにSiO−TiOゾル液9を適量滴下し、3000rpmで20秒間スピンコートを行った。この基板を200℃の熱風循環オーブンで12時間焼成することでレンズ凹面にSiO−TiO層付きレンズを作製した。
SiO−TiO層付き平板ガラスに酸化アルミニウム前駆体ゾル1を適量滴下し、3500rpmで20秒間スピンコートを行った後、140℃の熱風循環オーブンで2時間焼成し、非晶性酸化アルミニウム膜を被膜した。
次に、75℃の熱水中に20分間浸漬したのち、60℃で20分間乾燥させた。
実施例2
酸化アルミニウム前駆体ゾル1の代わりに酸化アルミニウム前駆体ゾル2を用い、非晶性酸化アルミニウム膜を形成した以外は実施例1と同様の操作を行った。
実施例3
酸化アルミニウム前駆体ゾル1の代わりに酸化アルミニウム前駆体ゾル3を用い、非晶性酸化アルミニウム膜を形成した以外は実施例1と同様の操作を行った。
反射率の測定を行ったところ、有機アルミニウム化合物含有量が少ない酸化アルミニウム前駆体ゾルからなる光学膜の平均反射率が低くなることが確認された。また、凝集による膜ムラはみられなかった。
実施例4
焼成条件を160℃の熱風循環オーブンで2時間焼成に変えた以外は実施例3と同様の操作を行った。
反射率の測定を行ったところ、焼成温度が高いことで結合形成が促進され、反射防止性能が向上することが確認された。また、凝集による膜ムラはみられなかった。
比較例1
酸化アルミニウム前駆体ゾル1の代わりに酸化アルミニウム前駆体ゾル4を用い、非晶性酸化アルミニウム膜を形成した以外は実施例1と同様の操作を行った。
比較例2
酸化アルミニウム前駆体ゾル1の代わりに酸化アルミニウム前駆体ゾル5を用い、非晶性酸化アルミニウム膜を形成した以外は実施例1と同様の操作を行った。
比較例3
酸化アルミニウム前駆体ゾル1の代わりに酸化アルミニウム前駆体ゾル6を用い、非晶性酸化アルミニウム膜を形成した以外は実施例1と同様の操作を行った。
反射率の測定を行ったところ、平均反射率は本件に係る酸化アルミニウム前駆体ゾルからなる光学膜にくらべ劣っていることが確認された。また、酸化アルミニウム前駆体ゾルをスピンコートした時点で比較例1および2では膜ムラ1が、比較例2では膜ムラ2がみられた。
比較例4
焼成条件を160℃の熱風循環オーブンで2時間焼成に変えた以外は比較例1と同様の操作を行った。
反射率の測定を行ったところ、焼成温度が高いことで結合形成が促進され、反射防止性能が向上するが、本件に係る酸化アルミニウム前駆体ゾルからなる光学膜と同等の高い反射防止性能を同焼成条件で実現することが困難であることが確認された。また、膜ムラ1がみられた。
(注5)*有機アルミニウム化合物量(モル%)は、酸化アルミニウムゾル中のアルミニウム原子に対する有機アルミニウム化合物のモル%を示す。
(注6)*平均反射率(%)は、光の波長400nmから700nmの範囲の入射角0°時の反射率の平均値を示す。
〔性能評価〕
実施例1から4の結果と図6の結果から、実施例は比較例に比べて同じ低温の焼成条件下においても高い反射防止性能を有することがわかった。また、本発明の有機アルミニウム化合物を沈殿・除去して、有機アルミニウム化合物の含有量を酸化アルミニウム前駆体ゾル中のアルミニウム原子100モル%に対して7.5モル%以上15.5モル%以下とした。このことが、反射率防止性能の高い膜を得る上で重要であることがわかった。また、凝集物による膜ムラもみられなかった。一方、比較例1から4ではスピンコート後において凝集による膜ムラがみられ、平均反射率に関しても悪化した光学膜が得られた。
本発明により製造される光学用部材は、任意の屈折率を有する透明基材に対応でき、可視光に対して優れた反射防止効果を示すとともに、長期的な耐候性を有する。よって、ワープロ、コンピュータ、テレビ、プラズマディスプレイパネル等の各種ディスプレイ:液晶表示装置に用いる偏光板、各種光学硝材及び透明プラスチック類からなるサングラスレンズ、度付メガネレンズ、カメラ用ファインダーレンズ、プリズム、フライアイレンズ、トーリックレンズ、各種光学フィルター、センサーなどの光学部材:さらにはそれらを用いた撮影光学系、双眼鏡などの観察光学系、液晶プロジェクタなどに用いる投射光学系:レーザービームプリンターなどに用いる走査光学系等の各種光学レンズ:各種計器のカバー、自動車、電車等の窓ガラスなどの光学部材に利用することができる。
1 基材
2 酸化アルミニウム前駆体ゾル
3 酸化アルミニウム膜
4 酸化アルミニウムベーマイトの凹凸構造を有する層
5 酸化アルミニウムベーマイトの凹凸構造
6 酸化アルミニウムベーマイトを主成分とする板状結晶から形成されている板状結晶層
7 凹凸形状
8 傾斜方向
9 基材表面の接線
10 酸化アルミニウム以外を主成分とする層

Claims (4)

  1. (1)β−ケトエステル化合物またはβ−ジケトン化合物と、溶媒との混合物にアルミニウムアルコキシドまたはアルミニウム塩化合物を含むアルミニウム化合物を溶解する工程と、
    (2)前記(1)の工程で得られた溶液に、水、または触媒を含む水、を混合し、加水分解することで、前記アルミニウムアルコキシドまたはアルミニウム塩化合物の縮合物及び一般式(1)で表される有機アルミニウム化合物の沈殿物を形成する工程と、
    (3)前記(2)の工程で得られた溶液から、前記有機アルミニウム化合物の沈殿物を除去する工程とを有することを特徴とする酸化アルミニウム前駆体ゾルの製造方法。

    R1、R2は炭素数1以上6以下のアルキル基、パーフルオロアルキル基、アルコキシル基またはアリル基であり、R3は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上6以下のアルキル基、パーフルオロアルキル基、アリル基、またはアリール基であり、nは1〜3の整数である。
  2. 前記溶媒は、炭素数5以上8以下の一価のアルコールを用いることを特徴とする請求項1記載の酸化アルミニウム前駆体ゾルの製造方法。
  3. 前記触媒は、酸または塩基触媒を用いることを特徴とする請求項1または2記載の酸化アルミニウム前駆体ゾルの製造方法。
  4. 光学用部材の製造方法であって、(a)基材の少なくとも一方の面上に請求項乃至のいずれかに記載の酸化アルミニウム前駆体ゾルの製造方法によって製造された酸化アルミニウム前駆体ゾルを供給する工程、(b)前記酸化アルミニウム前駆体ゾルを基材上に広げる工程、(c)基材を乾燥および/または焼成を行うことにより酸化アルミニウム膜を形成する工程、(d)前記酸化アルミニウム膜を60℃以上100℃以下の温水中に浸漬して酸化アルミニウムベーマイトの凹凸構造を形成する工程を有することを特徴とする光学用部材の製造方法。
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