以下、本発明に係る放射線画像撮影装置の実施の形態について、図面を参照して説明する。
なお、以下では、放射線画像撮影装置が、シンチレータ等を備え、照射された放射線を可視光等の他の波長の電磁波に変換して電気信号を得るいわゆる間接型の放射線画像撮影装置である場合について説明するが、本発明は、シンチレータ等を介さずに放射線を放射線検出素子で直接検出する、直接型の放射線画像撮影装置に対しても適用することが可能である。
また、放射線画像撮影装置が可搬型である場合について説明するが、支持台等と一体的に形成された放射線画像撮影装置(すなわちいわゆる専用機)に対して適用することも可能である。
[放射線画像撮影装置の基本的な構成について]
図1は、各実施形態に係る放射線画像撮影装置の外観斜視図であり、図2は、放射線画像撮影装置を反対側から見た外観斜視図である。また、図3は、図1のX−X線に沿う断面図である。放射線画像撮影装置1は、図1〜図3に示すように、筐体状のハウジング2内にシンチレータ3や基板4等で構成されるセンサパネルSPが収納されている。
図1や図2に示すように、本実施形態では、筐体2のうち、放射線入射面Rを有する中空の角筒状のハウジング本体部2Aは、放射線を透過するカーボン板やプラスチック等の材料で形成されており、ハウジング本体部2Aの両側の開口部を蓋部材2B、2Cで閉塞することで筐体2が形成されている。なお、筐体2をこのようないわゆるモノコック型として形成する代わりに、例えば、フロント板とバック板とで形成された、いわゆる弁当箱型とすることも可能である。
図1に示すように、筐体2の一方側の蓋部材2Bには、電源スイッチ37や切替スイッチ38、コネクタ39、バッテリ状態や放射線画像撮影装置1の作動状態等を表示するLED等で構成されたインジケータ40等が配置されている。
本実施形態では、コネクタ39は、例えば図示しないケーブル等が接続されることにより、ケーブル等を介して外部装置に画像データD等を送信したり、放射線画像撮影装置1と外部装置との間で情報や信号等のやり取りを行う場合の通信手段として機能するようになっている。なお、コネクタ39の設置位置は蓋部材2Bに限定されず、放射線画像撮影装置1の適宜の位置に設置することが可能である。
また、図2に示すように、例えば放射線画像撮影装置1と外部装置との間で無線方式で情報や信号等のやり取りを行うためのアンテナ装置41が、例えば筐体2の反対側の蓋部材2C等に埋め込まれる等して設けられている。なお、アンテナ装置41の設置位置は蓋部材2Cに限定されず、放射線画像撮影装置1の任意の位置にアンテナ装置41を設置することが可能である。また、設置するアンテナ装置41は1個に限らず、複数設けることも可能である。
図3に示すように、筐体2の内部には、基板4の下方側に図示しない鉛の薄板等を介して基台31が配置され、基台31には、電子部品32等が配設されたPCB基板33や緩衝部材34等が取り付けられている。また、基板4やシンチレータ3の放射線入射面Rには、それらを保護するためのガラス基板35が配設されている。また、本実施形態では、センサパネルSPと筐体2の側面との間に、それらがぶつかり合うことを防止するための緩衝材36が設けられている。
シンチレータ3は、基板4の後述する検出部Pに対向する位置に設けられるようになっている。本実施形態では、シンチレータ3は、例えば、蛍光体を主成分とし、放射線の入射を受けると300〜800nmの波長の電磁波、すなわち可視光を中心とした電磁波に変換して出力するものが用いられる。
基板4は、本実施形態では、ガラス基板で構成されており、図4に示すように、基板4のシンチレータ3に対向する側の面4a上には、複数の走査線5と複数の信号線6とが互いに交差するように配設されている。基板4の面4a上の複数の走査線5と複数の信号線6により区画された各小領域rには、放射線検出素子7がそれぞれ設けられている。
このように、走査線5と信号線6で区画された各小領域rに二次元状に配列された複数の放射線検出素子7が設けられた領域r全体、すなわち図4に一点鎖線で示される領域が検出部Pとされている。なお、図4中のプローブポイントpについては、後で説明する。また、プローブポイントpが実機に設けられる必要はない。
本実施形態では、放射線検出素子7としてフォトダイオードが用いられているが、この他にも例えばフォトトランジスタ等を用いることも可能である。各放射線検出素子7は、図4の拡大図である図5に示すように、スイッチ手段であるTFT8のソース電極8sに接続されている。また、TFT8のドレイン電極8dは信号線6に接続されている。
そして、TFT8は、後述する走査駆動手段15から走査線5を介してゲート電極8gにオン電圧が印加されるとオン状態となり、ソース電極8sやドレイン電極8dを介して放射線検出素子7内に蓄積されている電荷を信号線6に放出させるようになっている。また、TFT8は、接続された走査線5を介してゲート電極8gにオフ電圧が印加されるとオフ状態となり、放射線検出素子7から信号線6への電荷の放出を停止して、放射線検出素子7内に電荷を蓄積させるようになっている。
ここで、本実施形態における放射線検出素子7やTFT8の構造について、図6に示す断面図を用いて簡単に説明する。図6は、図5におけるY−Y線に沿う断面図である。
基板4の面4a上に、AlやCr等からなるTFT8のゲート電極8gが図示しない走査線5と一体的に積層されて形成されており、ゲート電極8g上および面4a上に積層された窒化シリコン(SiNx)等からなるゲート絶縁層81上のゲート電極8gの上方部分に、水素化アモルファスシリコン(a−Si)等からなる半導体層82を介して、放射線検出素子7の第1電極73と接続されたソース電極8sと、信号線6と一体的に形成されるドレイン電極8dとが積層されて形成されている。
ソース電極8sとドレイン電極8dとは、窒化シリコン(SiNx)等からなる第1パッシベーション層83によって分割されており、さらに第1パッシベーション層83は両電極8s、8dを上側から被覆している。また、半導体層82とソース電極8sやドレイン電極8dとの間には、水素化アモルファスシリコンにVI族元素をドープしてn型に形成されたオーミックコンタクト層84a、84bがそれぞれ積層されている。以上のようにしてTFT8が形成されている。
また、放射線検出素子7の部分では、基板4の面4a上に前記ゲート絶縁層81と一体的に形成される絶縁層71の上に、前記第1パッシベーション層83と一体的に形成される絶縁層72が積層されており、絶縁層72上にAlやCr、Mo等からなる第1電極73が積層されている。第1電極73は、第1パッシベーション層83に形成されたホールHを介してTFT8のソース電極8sに接続されている。
第1電極73の上には、水素化アモルファスシリコンにVI族元素をドープしてn型に形成されたn層74、水素化アモルファスシリコンで形成された変換層であるi層75、水素化アモルファスシリコンにIII族元素をドープしてp型に形成されたp層76が下方から順に積層されて形成されている。
放射線画像撮影装置1の筐体2の放射線入射面Rから放射線が入射し、シンチレータ3で可視光等の電磁波に変換され、変換された電磁波が図中上方から照射されると、電磁波は放射線検出素子7のi層75に到達して、i層75内で電子正孔対が発生する。放射線検出素子7は、このようにして、シンチレータ3から照射された電磁波を電荷に変換するようになっている。
また、p層76の上には、ITO等の透明電極とされた第2電極77が積層されて形成されており、照射された電磁波がi層75等に到達するように構成されている。本実施形態では、以上のようにして放射線検出素子7が形成されている。なお、p層76、i層75、n層74の積層の順番は上下逆であってもよい。また、本実施形態では、放射線検出素子7として、上記のようにp層76、i層75、n層74の順に積層されて形成されたいわゆるpin型の放射線検出素子を用いる場合が説明されているが、これに限定されない。
放射線検出素子7の第2電極77の上面には、第2電極77を介して放射線検出素子7にバイアス電圧を印加するバイアス線9が接続されている。なお、放射線検出素子7の第2電極77やバイアス線9、TFT8側に延出された第1電極73、TFT8の第1パッシベーション層83等、すなわち放射線検出素子7とTFT8の上面部分は、その上方側から窒化シリコン(SiNx)等からなる第2パッシベーション層78で被覆されている。
本実施形態では、図5に示すように、それぞれ列状に配置された複数の放射線検出素子7に1本のバイアス線9が接続されており、図4や図5に示すように、各バイアス線9はそれぞれ信号線6に平行に配設されている。また、各バイアス線9は、基板4の検出部Pの外側の位置で結線10に結束されている。
なお、図4や後述する図8等では、各バイアス線9が1本の結線10に結束されている場合が示されているが、これはあくまで基本的な構成を説明するためであり、本実施形態では、実際には、後述する図18に示すように、結線10が複数の部分に分割されており、各バイアス線9が所定の本数ずつ複数の結線10a、10b、…、10zのうちのいずれかの結線に接続されている。この点については後で説明する。
本実施形態では、図4に示すように、各走査線5や各信号線6、バイアス線9の結線10は、それぞれ基板4の端縁部付近に設けられた入出力端子(パッドともいう。)11に接続されている。各入出力端子11には、図7に示すように、後述する走査駆動手段15のゲートドライバ15bを構成するゲートIC15c等のICチップがフィルム上に組み込まれたフレキシブル回路基板(Chip On Film等ともいう。)12が異方性導電接着フィルム(Anisotropic Conductive Film)や異方性導電ペースト(Anisotropic Conductive Paste)等の異方性導電性接着材料13を介して接続されている。
また、フレキシブル回路基板12は、基板4の裏面4b側に引き回され、裏面4b側で前述したPCB基板33に接続されるようになっている。このようにして、放射線画像撮影装置1のセンサパネルSPが形成されている。なお、図7では、電子部品32等の図示が省略されている。
ここで、放射線画像撮影装置1の回路構成について説明する。図8は本実施形態に係る放射線画像撮影装置1の等価回路を表すブロック図であり、図9は検出部Pを構成する1画素分についての等価回路を表すブロック図である。
前述したように、基板4の検出部Pの各放射線検出素子7は、その第2電極77にそれぞれバイアス線9が接続されており、各バイアス線9は結線10に結束されてバイアス電源14に接続されている。バイアス電源14は、結線10および各バイアス線9を介して各放射線検出素子7の第2電極77にそれぞれバイアス電圧を印加するようになっている。
また、バイアス電源14は、後述する制御手段22に接続されており、制御手段22により、バイアス電源14から各放射線検出素子7に印加するバイアス電圧を可変させることができるようになっている。
図8や図9に示すように、本実施形態では、バイアス電源14からは、放射線検出素子7の第2電極77にバイアス線9を介してバイアス電圧として放射線検出素子7の第1電極73側にかかる電圧以下の例えば−5[V]の電圧(すなわちいわゆる逆バイアス電圧)が印加されるようになっている。
各放射線検出素子7の第1電極73はTFT8のソース電極8s(図8、図9中ではSと表記されている。)に接続されており、各TFT8のゲート電極8g(図8、図9中ではGと表記されている。)は、後述する走査駆動手段15のゲートドライバ15bから延びる走査線5の各ラインL1〜Lxにそれぞれ接続されている。また、各TFT8のドレイン電極8d(図8、図9中ではDと表記されている。)は各信号線6にそれぞれ接続されている。
走査駆動手段15は、配線15dを介してゲートドライバ15bにオン電圧とオフ電圧を供給する電源回路15aと、走査線5の各ラインL1〜Lxに印加する電圧をオン電圧とオフ電圧の間で切り替えて各TFT8のオン状態とオフ状態とを切り替えるゲートドライバ15bとを備えている。
また、スイッチ手段であるTFT8は、走査駆動手段15のゲートドライバ15bから走査線5を介してそのゲート電極8gにオン電圧が印加されると、放射線検出素子7に蓄積された電荷を信号線6に放出させ、ゲート電極8gにオフ電圧が印加されると、放射線検出素子7からの電荷の放出を停止させて、発生した電荷を放射線検出素子7内に蓄積させるようになっている。
図8や図9に示すように、各信号線6は、読み出しIC16内に形成された各読み出し回路17にそれぞれ接続されており、本実施形態では、読み出しIC16が複数並設されていて、各信号線6がいずれかの読み出しIC16に接続されるようになっている。
読み出し回路17は、オペアンプ18aと、オペアンプ18aにそれぞれ並列にコンデンサ18bおよび電荷リセット用スイッチ18cが接続されて構成され、電源供給部18dから電力が供給されるチャージアンプ回路からなる増幅回路18と、相関二重サンプリング回路19等で構成されている。また、オペアンプ18aと相関二重サンプリング回路19との間には、電荷リセット用スイッチ18cのオン/オフ動作と連動してオフ/オン動作するスイッチ18eが設けられている。
読み出しIC16内には、さらに、アナログマルチプレクサ21と、A/D変換器20とが設けられている。なお、図8や図9中では、相関二重サンプリング回路19はCDSと表記されている。また、図9中では、アナログマルチプレクサ21は省略されている。
増幅回路18のオペアンプ18aの入力側の反転入力端子には信号線6が接続されており、増幅回路18の入力側の非反転入力端子には基準電位V0が印加されるようになっている。なお、基準電位V0は適宜の値に設定される。以下では、基準電位V0として0[V]が印加される場合について説明するが、0[V]以外の正の電位や負の電位に設定することも可能である。
また、この基準電位V0がオペアンプ18aを介して各信号線6や各TFT8のドレイン電極8dに印加されるように構成されている。そのため、本実施形態では、各TFT8のドレイン電極8dの電位は、基本的にこの基準電位V0すなわち0[V](或いは上記のように設定された値の電位)になっている。
なお、本実施形態では、増幅回路18は、電荷リセット用スイッチ18cをオフした状態でコンデンサ18bに蓄積された電荷量に応じた電圧値がオペアンプ18aの出力側から出力されるようになっているが、蓄積された電荷量に応じて電流を出力するように構成することも可能である。
相関二重サンプリング回路19はサンプルホールド機能を有しており、各放射線検出素子7からの画像データDの読み出し処理時に、図10に示すように、増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18cがオフ状態とされた状態で、制御手段22からのパルス信号Sp1を受信すると、その時点で増幅回路18から出力されている電圧値Vinを保持する。
そして、その後、TFT8がオン/オフされて放射線検出素子7から流出した電荷が増幅回路18のコンデンサ18dに蓄積された時点で制御手段22から送信された2回目のパルス信号Sp2を受信すると、その時点で増幅回路18から出力されている電圧値Vfiを保持して、電圧値の差分Vfi−Vinをアナログ値の画像データDとして下流側に出力するようになっている。
相関二重サンプリング回路19から出力された各放射線検出素子7の画像データDは、アナログマルチプレクサ21に送信され、アナログマルチプレクサ21から順次A/D変換器20に送信される。そして、A/D変換器20で順次デジタル値の画像データDに変換されて記録手段23に出力されて順次保存されるようになっている。
制御手段22は、図示しないCPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力インターフェース等がバスに接続されたコンピュータや、FPGA(Field Programmable Gate Array)等により構成されている。専用の制御回路で構成されていてもよい。そして、制御手段22は、放射線画像撮影装置1の各部材の動作等を制御するようになっている。また、図8等に示すように、制御手段22には、DRAM(Dynamic RAM)等で構成される記録手段23が接続されている。
また、本実施形態では、制御手段22には、前述したアンテナ装置41が接続されており、さらに、検出部Pや走査駆動手段15、読み出し回路17、記録手段23、バイアス電源14等の各部材に電力を供給するためのバッテリ24が接続されている。また、バッテリ24には、図示しない充電装置からバッテリ24に電力を供給してバッテリ24を充電する際の接続端子25が取り付けられている。
前述したように、制御手段22は、バイアス電源14を制御してバイアス電源14から各放射線検出素子7に所定の電圧値のバイアス電圧を印加させたり、走査駆動手段15のゲートドライバ15bを作動させる信号を送信したり、或いは、相関二重サンプリング回路19にパルス信号Sp1、Sp2を送信する等して、放射線画像撮影装置1の各機能部の動作を制御するようになっている。
[放射線画像撮影における処理について]
次に、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1の実際の構成について説明する前に、放射線画像撮影装置1を用いて放射線画像撮影を行う場合の通常の処理の仕方について説明する。なお、後述する本実施形態に係る放射線画像撮影装置1の構成においても、放射線画像撮影における処理は、以下の通常の処理と同様にして行われる。
放射線画像撮影における処理の仕方は、放射線画像撮影装置1が、図示しない放射線発生装置との間で信号等のやり取りを行うか否かで変わる。
以下、放射線発生装置との間で信号等のやり取りを行って撮影を行う場合(以下、連携方式という。)と、放射線発生装置との間で信号等のやり取りを行わず、放射線画像撮影装置1自体で放射線の照射開始を検出する場合(以下、非連携方式という。)のそれぞれについて、放射線画像撮影における処理の仕方の概要をそれぞれ説明する。
[連携方式の場合]
放射線画像撮影装置1が放射線発生装置との間で信号等のやり取りを行って撮影を行う連携方式の場合、図11に示すように、通常、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射(図中の斜線部分参照)が行われる前に、走査駆動手段15のゲートドライバ15bから走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧が順次印加されて、各放射線検出素子7のリセット処理が行われる。
そして、放射線検出素子7のリセット処理を行っている最中に、放射線発生装置から放射線の照射を開始する旨を表す照射開始信号が送信されてくると、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、その時点で行っているリセット処理が走査線5の最終ラインLxまで終了した時点で、走査線5の全てのラインL1〜Lxにオフ電圧を印加させ、全TFT8をオフ状態として、放射線の照射により各放射線検出素子7内で発生した電荷を各放射線検出素子7内に蓄積させる電荷蓄積状態に移行させる。
また、制御手段22は、それと同時に、放射線発生装置にインターロック解除信号を送信する。そして、放射線発生装置は、放射線画像撮影装置1から送信されたインターロック解除信号を受信すると、放射線画像撮影装置1に対して放射線を照射する。
そして、制御手段22は、放射線発生装置にインターロック解除信号を送信した後、例えば所定時間が経過した時点で、走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を順次印加させて、各放射線検出素子7から画像データDをそれぞれ読み出す画像データDの読み出し処理を行うように構成される。
なお、図11に示したように、電荷蓄積状態では各TFT8がオフ状態とされており、その間に各放射線検出素子7内で発生した暗電荷が各放射線検出素子7内に蓄積される。そのため、その後の読み出し処理で読み出された画像データDには、放射線の照射により各放射線検出素子7内で発生した有用な電荷のほか、各TFT8がオフ状態とされている間に各放射線検出素子7内に蓄積された暗電荷も読み出される。
そのため、図示を省略するが、通常、画像データDの読み出し処理後や図11に示した放射線画像撮影における一連の処理の前に、図11に示した手順と同様の手順で、各放射線検出素子7のリセット処理を行い、電荷蓄積状態に移行させた後、画像データDの読み出し処理と同様にして、画像データDに含まれる暗電荷に起因するオフセット分に相当するオフセットデータOの読み出し処理が行われる。なお、オフセットデータOの読み出し処理の際には、放射線画像撮影装置1に放射線は照射されない。
[非連携方式の場合]
一方、非連携方式の場合には、放射線画像撮影装置1と放射線発生装置との間で信号等のやり取りを行わないため、放射線画像撮影装置1が自ら放射線が照射されたことを検出しなければならない。
放射線画像撮影装置1自体で放射線が照射されたことを検出する手法としては、種々の手法を採用し得るが、以下では、放射線画像撮影前に画像データの読み出し処理を行い、読み出した画像データに基づいて放射線の照射開始を検出する場合を例に挙げて説明する。なお、電荷蓄積状態の後で読み出される本画像としての画像データDと区別するために、以下では、放射線画像撮影前に読み出す画像データを画像データdと表す。
この場合、図12に示すように、放射線画像撮影前に、ゲートドライバ15bから走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧が順次印加されて、各放射線検出素子7からの画像データdの読み出し処理が行われる。なお、図12中において、1フレームとは、検出部P(図4や図8参照)上に二次元状に配列された1面分の各放射線検出素子7から画像データdの読み出し処理を行う期間をいう。
そして、図13に示すように、放射線画像撮影前の画像データdの読み出し処理で、例えば走査線5のラインLnにオン電圧を印加した時点或いはその直前に放射線の照射が開始されると、読み出された画像データdには放射線の照射により放射線検出素子7内で発生した電荷が含まれるようになるため、画像データdの値が、それ以前に読み出された画像データdよりも格段に大きな値になる。
そこで、例えば制御手段22で放射線画像撮影前の読み出し処理で読み出された画像データdを監視するように構成し、読み出された画像データdが、例えば予め設定された閾値dthを越えた時点で、放射線の照射が開始されたことを検出するように構成することができる。このようにして、連携方式の場合のように放射線画像撮影装置1が放射線発生装置側から照射開始信号等の情報をもらえない非連携方式の場合にも、放射線画像撮影装置1自体で放射線が照射されたことを検出して、的確に放射線画像撮影を行うことが可能となる。
そして、制御手段22は、放射線の照射が開始されたことを検出すると、その時点で即座に画像データdの読み出し処理を終了して、ゲートドライバ15bから走査線5の全てのラインL1〜Lxにオフ電圧を印加させ、各TFT8をオフ状態にして、電荷蓄積状態に移行させる。
そして、例えば放射線の照射開始を検出してから所定時間が経過した後、制御手段22は、ゲートドライバ15bから走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を順次印加して、本画像としての画像データDの読み出し処理を行う。
なお、この場合、図13に示したように、放射線画像撮影前の画像データdの読み出し処理で放射線の照射が開始されたことを検出した時点またはその直前にオン電圧が印加された走査線5(図13の場合は走査線5のラインLn)の次にオン電圧を印加すべき走査線5(図13の場合は走査線5のラインLn+1)からオン電圧の印加を開始して画像データDの読み出し処理を行うように構成してもよく、また、走査線5の最初のラインL1からオン電圧を順次印加して画像データDの読み出し処理を行うように構成してもよい。
また、非連携方式の場合も、放射線画像撮影の前や後に、放射線画像撮影装置1に放射線を照射しない状態で図13に示した放射線画像撮影における一連の処理のシーケンスを繰り返して、オフセットデータOの読み出し処理が行われる。
[走査線方向のクロストークが生じる原因について]
ここで、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1の実際の構成について説明する前に、図22(A)や図24(A)に示したように放射線を照射した場合に、図22(B)や図24(B)に示したような走査線方向のクロストークが生じる原因について説明する。
本発明者らは、例えば図22(A)に示したように、上記のような構成の放射線画像撮影装置1に照射野を絞った状態で放射線を照射した後、図14に示すように、放射線を照射した部分Aやその走査線方向の部分B(図22(B)参照)に位置する各放射線検出素子7のTFT8に接続されている走査線5aにオン電圧(図10参照)を印加して、それらの放射線検出素子7から画像データDを読み出す際に、バイアス線9の結線10に接続されたプローブポイントp(図4参照)における電圧Vがどのように変化するかを観察する実験を行った。
すなわち、この場合、結線10に印加されているバイアス電圧のプローブポイントp側端部における変動を観察することになる(以下、このプローブポイントpにおけるバイアス電圧を仮にVbias(p)という。)。また、それと同時に、対照実験として、バイアス電源14(図8参照)から結線10にバイアス電圧を印加するポイントとなる、結線10が接続されている入出力端子11におけるバイアス電圧(以下、このバイアス電圧を仮にVbias(11)という。)の変動も観察した。
その結果、図15に示すように、走査線5aにオン電圧が印加されて各放射線検出素子7から信号線6に電子が放出される間、入出力端子11におけるバイアス電圧Vbias(11)はバイアス電圧14から供給されている−5[V]のままであるが、結線10の反対側端部であるプローブポイントpにおけるバイアス電圧Vbias(p)は、走査線5aにオン電圧が印加され、TFT8がオン状態とされた直後に−5[V]から一旦100[mV]程度上昇することが分かった。
しかも、バイアス電圧Vbias(p)は、走査線5aに印加される電圧がオン電圧からオフ電圧に切り替えられる直前の時点で当初の−5[V]まで下がり切らずに、−5[V]よりも若干高い電圧を示した。
なお、上記の実験結果は、約1000本のバイアス線9(図4参照)を1本の結線10で結束した場合の結果である。そこで、今度は、より小規模なセンサパネルSPを形成し、約400本のバイアス線9を1本の結線10で結束するように構成して、上記と同様に放射線画像撮影装置1に照射野を絞った状態で放射線を照射して、走査線5aにオン電圧を印加して画像データDを読み出す実験を行った。
その結果、図16に示すように、結線10のプローブポイントpにおけるバイアス電圧Vbias(p)は、走査線5aにオン電圧が印加され、TFT8がオン状態とされた直後に−5[V]から一旦上昇するが、比較的速やかに減衰し、走査線5aに印加される電圧がオン電圧からオフ電圧に切り替えられる時点より以前に、当初の−5[V]まで低下した。
そして、この場合、走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を順次印加して画像データDの読み出し処理を行うと、図22(B)に示したような走査線方向のクロストーク、すなわち、放射線を照射した部分Aの各放射線検出素子7と同じ各走査線5に接続されている各放射線検出素子7の部分Bの画像データDがそれ以外の部分Cの各放射線検出素子7の画像データDよりも小さくなる現象は発生せず、放射線が照射されなかった部分Bや部分Cの各放射線検出素子7から読み出された画像データDが、ほぼ同じ値になるといった結果が得られた。
これらの実験結果から、例えば図22(A)に示したように放射線を照射した場合に、図22(B)に示したような走査線方向のクロストークが生じる原因は、以下のように考えられている。
すなわち、図4に示した放射線画像撮影装置1の構成において、二次元状に配列された各放射線検出素子7のうちの一部に放射線が照射されると(本実施形態では照射された放射線がシンチレータで電磁波に変換され、その電磁波が各放射線検出素子7のうちの一部に照射されると)、放射線(または電磁波。以下同じ)が照射された各放射線検出素子7のi層75(図6参照)内で電子正孔対が発生し、i層75内に形成された電位勾配に従って、電子は第1電極73側に移動し、正孔は第2電極77側に移動する。
そして、画像データDの読み出し処理で、走査線5にオン電圧が印加されてTFT8がオン状態とされると、放射線検出素子7の第1電極73側に蓄積された電子がTFT8を介して信号線6に放出されて、読み出し回路17で画像データDとして読み出される。また、それと同時に、放射線検出素子7の第2電極77側に蓄積された正孔は、バイアス線9に流出し、結線10中を通って、バイアス電源14(図8参照)に流れ込む。
その際、放射線が照射された各放射線検出素子7から各バイアス線9に流出した正孔が結線10に集中するため、結線10中を多くの正孔が流れる。そして、AlやCr等からなる結線10は抵抗を有しているため、結線10内で電圧上昇が生じ、プローブポイントp側のバイアス電圧Vbias(p))が入出力端子11側のバイアス電圧Vbias(11)(すなわち−5[V]のバイアス電圧)よりも高くなる。
そのため、図15や図16に示したように、TFT8をオン状態にすると、結線10のプローブポイントpにおけるバイアス電圧Vbias(p)が一時的に上昇すると考えられる。
そして、約1000本のバイアス線9が1本の結線10に接続されている場合、約400本のバイアス線9が1本の結線10に接続されている場合に比べて、結線10の長さが長くなる。そのため、前者の場合と後者の場合とで結線10の単位長さあたりの抵抗値は同じであるとしても、前者の方が結線10の長さが長くなる分だけ、結線10全体の抵抗値が後者の場合よりも大きくなる。
そのため、約400本のバイアス線9が1本の結線10に接続されている場合には、結線10内で生じる電圧上昇が小さくなり、一時的に上昇したバイアス電圧Vbias(p)が比較的速やかに元の−5[V]に戻るのに対し、約1000本のバイアス線9が1本の結線10に接続されている場合には、結線10内で生じる電圧上昇が大きくなり、一時的に上昇したバイアス電圧Vbias(p)が、走査線5aに印加される電圧がオン電圧からオフ電圧に切り替えられるまでに元の−5[V]まで戻り切らずに、−5[V]よりも若干高い電圧になると考えられる。
次に、上記の約1000本のバイアス線9が1本の結線10に接続されている場合のように、走査線5aに印加される電圧がオン電圧からオフ電圧に切り替えられる直前の時点でバイアス電圧Vbias(p)が元のバイアス電圧Vbias(すなわち上記の例では−5[V])まで下がり切らない場合、図14に示した部分Bの位置の各放射線検出素子7では、以下のような現象が生じる。
なお、以下の図17では、放射線が照射された部分A(図14参照)の位置の各放射線検出素子7が7a、部分Aの放射線検出素子7と同じ走査線5aに接続されているが放射線が照射されなかった部分Bの各放射線検出素子7が7bとして、簡略化されて示されている。
この場合、読み出し動作が開始される前に走査線5aにオフ電圧が印加されている状態では、各放射線検出素子7bの第2電極77には、当初の−5[V]のバイアス電圧Vbiasが印加されている。そして、各放射線検出素子7bには放射線が照射されていないが、電荷蓄積状態(図11や図13参照)においてTFT8がオフ状態とされている間に暗電荷が発生して蓄積されており、例えば各放射線検出素子7b内に0.5[V]分の暗電荷が蓄積されているものとする。
そのため、読み出し動作が開始される前の時点では、各放射線検出素子7bの第2電極77の電圧は−5[V](すなわちバイアス電圧Vbias)であり、第1電極73の電圧は−0.5[V]になっている。なお、この場合、各放射線検出素子7bに接続されているTFT8のソース電極8sの電圧は、放射線検出素子7bの第1電極73の電圧と同じ−0.5[V]であり、ドレイン電極8dの電圧は、信号線6の電圧と同じ0[V]になっている。
そして、読み出し動作が開始されて走査線5aにオン電圧が印加され、上記のように結線10やバイアス線9の電圧が一時的に上昇して低下するが、図17に示すように、走査線5aに印加される電圧がオン電圧からオフ電圧に切り替えられる直前のバイアス電圧Vbiasが元の−5[V]まで戻り切らず、−5[V]よりも若干高い電圧になったとする。例えば−4.8[V]になったとする。
すると、各放射線検出素子7bでは、第2電極77に印加されるバイアス電圧Vbiasが当初の−5[V]から−4.8[V]に電圧が0.2[V]上昇したことにより、第1電極73側の電圧が、上記のように−0.5[V]ではなく−0.3[V]にしかならない。そして、各放射線検出素子7bに接続されているTFT8のソース電極8sの電圧は、放射線検出素子7bの第1電極73の電圧と同じ−0.3[V]になり、ドレイン電極8dの電圧が0[V]であるため、0.3[V]分の暗電荷(電子)しか信号線6に流出しない。
すなわち、各放射線検出素子7bから画像データDとして読み出されるべき暗電荷が、本来の0.5[V]分ではなく0.3[V]分しか読み出されないため、結局、各放射線検出素子7bから読み出される画像データDの値が小さくなる。
一方、同じ走査線5に接続されている各放射線検出素子7の中に、図14に示した部分Aのように放射線が照射された放射線検出素子7がない場合、すなわち、図14に示した放射線が照射されなかった部分Cでは、上記のようなバイアス電圧Vbiasの変動が起こらない。そのため、部分Cの各放射線検出素子7では、上記のような画像データDとして読み出されるべき0.5[V]分の暗電荷が信号線6に流出する。
従って、部分Cの各放射線検出素子7からは、蓄積された0.5[V]分の暗電荷に相当する画像データDが、本来の値として読み出される。
このようにして、図22(B)に示したように、放射線を照射した部分Aの各放射線検出素子7と同じ各走査線5に接続されている各放射線検出素子7の部分Bの画像データDが、それ以外の部分Cの各放射線検出素子7の画像データDよりも小さくなる現象、すなわち走査線方向のクロストークが生じると考えられている。
なお、上記の約400本のバイアス線9を1本の結線10に接続した場合には、画像データDの読み出し処理で走査線5aにオン電圧を印加した後、走査線5に印加される電圧がオン電圧からオフ電圧に切り替えられる直前のバイアス電圧Vbiasが元の−5[V]まで戻る。
そのため、放射線検出素子7bで、上記のようなバイアス電圧Vbiasの変動が生じず、結果的に本来の0.5[V]分の暗電荷が読み出されるため、図14の部分Bの各放射線検出素子7と部分Cの各放射線検出素子7とで、画像データDとして読み出される暗電荷の量が同程度になる。そのため、上記のような走査線方向のクロストークが発生しないと考えられる。
また、図24(A)に示したように放射線を照射した場合に、図24(B)に示したような走査線方向のクロストークが生じる原因も、上記と同様にして捉えることができる。
すなわち、同じ走査線5に接続されている全ての放射線検出素子7に放射線が照射された部分(すなわち図24(B)の部分γ)では、画像データDの読み出し処理の際、全放射線検出素子7から多量の正孔がバイアス線9を介して結線10に流れ込む。そのため、バイアス電圧Vbiasが大きく上昇し、走査線5に印加される電圧がオン電圧からオフ電圧に切り替えられる直前のバイアス電圧Vbiasが元の−5[V]まで戻り切らずに、−5[V]から比較的大きく上昇した電圧になる。
そのため、バイアス電圧Vbiasの変動に伴って、読み出される画像データDの値が、本来の暗電荷に起因する大きさの画像データD(すなわち上記の例で言えば本来の0.5[V]分の暗電荷に起因する大きさの画像データD)よりも小さくなる。
それに対し、遮蔽板により放射線が遮蔽されて放射線が照射されなかった部分αやその走査線方向の部分βの各放射線検出素子7から画像データDを読み出す際には、放射線が照射されなかった部分αの各放射線検出素子7からバイアス線9に流出する正孔の量が少ないため、その分だけ、結線10における電圧上昇の程度が小さくなる。
そのため、少なくとも部分βの各放射線検出素子7では、各放射線検出素子7に印加されるバイアス電圧Vbiasが一旦上昇した後、走査線5に印加される電圧がオン電圧からオフ電圧に切り替えられる直前のバイアス電圧Vbiasが元の−5[V]まで戻り切らずに−5[V]から上昇する程度が、部分γの各放射線検出素子7の場合よりも小さくなる。
そのため、少なくとも部分βの各放射線検出素子7では、バイアス電圧Vbiasの変動に伴って、画像データDが本来の値よりも小さくなる度合いが、部分γの各放射線検出素子7よりも少なくなる。そのため、部分βの各放射線検出素子7から読み出される画像データDの値が、部分γの各放射線検出素子7から読み出される画像データDの値よりも大きくなると考えられる。
[本実施形態に係る放射線画像撮影装置1の構成]
上記のように、本発明者らの研究では、走査線方向のクロストークが生じる原因は、図4に示したように、バイアス線9の結線10が長いため、結線10の抵抗値が大きくなっていることが原因であると考えられている。
そして、上記のように、画像データDの読み出し処理の際に、放射線が照射された多数の各放射線検出素子7の第2電極77から流出した多量の正孔が、抵抗値が大きな結線10中を流れるために、一旦上昇したバイアス電圧Vbiasが、走査線5に印加された電圧がオン電圧からオフ電圧に切り替えられるまでの間に元のバイアス電圧Vbias(例えば−5[V])に戻り切らなくなるために、走査線方向のクロストークが生じると考えられる。
そこで、本実施形態では、図18に示すように、各バイアス線9が接続される結線10を複数の部分に分割し、各バイアス線9が、所定の本数ずつ、複数の結線10a、10b、…、10zのうちのいずれかの結線に接続されている状態になるように構成する。
そして、バイアス電源14から、例えば各結線10a〜10zが接続されている入出力端子11にバイアス電圧Vbiasを供給して各結線10a〜10zにバイアス電圧Vbiasをそれぞれ印加することにより、各結線10a〜10zにそれぞれ接続された各バイアス線9を介して各放射線検出素子7にバイアス電圧Vbiasをそれぞれ印加するように構成されている。なお、図18や後述する図19等では、実機仕様の基板4の場合が示されており、プローブポイントpは設けられていない。
このように構成すれば、各放射線検出素子7からの画像データDの読み出し処理の際に、1本の走査線5にオン電圧が印加されて、放射線が照射された各放射線検出素子7から多量の正孔が各バイアス線9に流出して各結線10a〜10zにそれぞれ流れ込んでも、各結線10a〜10zの抵抗値がそれぞれ小さいため、各結線10a〜10zを介して各バイアス線9に印加されるバイアス電圧Vbiasが一時的に上昇しても速やかに元のバイアス電圧Vbiasに戻る。
つまり、図18に示したように構成すると、例えば約1000本のバイアス線9が接続されている、いわば大パネルの検出部Pが、各結線10a〜10zごとの小パネルの部分に分割された状態になる。そして、各小パネルの部分では、それぞれ上記の約400本のバイアス線9が接続されている場合のように機能するため、図16に示したように、各結線10a〜10zに多量の正孔が流れ込んでも、走査線5に印加される電圧がオン電圧からオフ電圧に切り替えられる前に、バイアス電圧Vbiasが元のバイアス電圧Vbias(すなわち例えば−5[V])に戻る。
しかも、その際、1本の結線10a等に接続されているバイアス線9の本数が、全バイアス線9が結線10に接続されている場合よりも少なくなるため、放射線が照射された各放射線検出素子7から結線10a等に流れ込む正孔の量が少なくなる。
このように、上記のように構成した場合には、各結線10a〜10zの抵抗値が小さくなり、しかも、各結線10a〜10zに流れ込む正孔の量が少なくなるため、一時的に上昇するバイアス電圧Vbiasの上昇幅が小さくなり、一旦上昇したバイアス電圧Vbiasが、走査線5に印加された電圧がオン電圧からオフ電圧に切り替えられる前に、的確に元のバイアス電圧Vbiasに戻るようになる。
そのため、図18に示したように、各バイアス線9が接続される結線10を複数の部分に分割し、各バイアス線9を、所定の本数ずつ、いずれかの結線10a、10b、…、10zに接続するように構成し、バイアス電源14から、各結線10a〜10zにバイアス電圧Vbiasを印加するように構成することで、走査線方向のクロストークが生じることを防止することが可能となる。
なお、各結線10a〜10zの本数については(すなわち1本の結線10(図4参照)をいくつの部分に分割するかについては)、上記のように、走査線5に印加される電圧がオン電圧からオフ電圧に切り替えられる前に、一旦上昇したバイアス電圧Vbiasが元のバイアス電圧Vbiasに戻ることが確保される本数であれば、基板4の構成等を考慮して、適宜の本数に設定することが可能である。
また、各結線10a〜10zに接続するバイアス線9の所定の本数は、各結線10a〜10zで同数である必要はなく、上記の条件を満たす限り、各結線10a〜10zごとに適宜の本数に設定することが可能である。なお、図18では、便宜上、各結線10a〜10zに5本や3本のバイアス線9を接続するように構成する場合を示したが、一旦上昇したバイアス電圧Vbiasが元のバイアス電圧Vbiasに戻ることが確保されるのであれば、各結線10a〜10zに例えば100本オーダーのバイアス線9を接続するように構成することも可能である。
さらに、図18では、各結線10a〜10zが接続される入出力端子11を、各信号線6に接続された各入出力端子11とは反対側の基板4上の端部に設け、各信号線6に接続された各入出力端子11に接続されるフレキシブル回路基板12(図7参照)とは反対側の基板4の端部部分で図示しないフレキシブル回路基板を各結線10a〜10zの入出力端子11に接続して、フレキシブル回路基板を、バイアス電源14が設けられた基板4の裏面側のPCB基板33側に引き回すように構成される場合が示されている。
しかし、図示を省略するが、例えば、各結線10a〜10zを、各信号線6に接続された各入出力端子11側の基板4上に設け、各結線10a〜10zの各入出力端子11を各信号線6の各入出力端子11と同じ側に設けて、各結線10a〜10zの各入出力端子11とバイアス電源14とを接続するフレキシブル回路基板を、各信号線6の各入出力端子11に接続されるフレキシブル回路基板12(図7参照)と同じ側の基板4の端部部分に設けるように構成することも可能である。
また、信号線6の延在方向に延びる各バイアス線9を、例えばそれぞれ中央部分で図中の上下に分割し、各バイアス線9を、基板4の図中の上端部と下端部でそれぞれ各結線に接続するように構成し、基板4の両端部にそれぞれ各入出力端子を設けて、基板4の両端部分でそれぞれフレキシブル回路基板を接続するように構成することも可能である。
[本実施形態に係る放射線画像撮影装置1の別の構成]
一方、放射線画像撮影装置1における各バイアス線9が、図19やその拡大図である図20に示すように、各信号線6に平行にではなく、もともと各走査線9に平行に配設されるように構成されている場合もある。このように構成されている場合には、各バイアス線9が、それぞれ図4における結線10のように機能する。
すなわち、画像データDの読み出し処理の際に1本の走査線5にオン電圧が印加されると、各TFT8を介して当該走査線5に接続されている、放射線が照射された各放射線検出素子7からバイアス線9に多量の正孔が流出する。また、各バイアス線9は、検出部Pの一端側から他端側まで設けられていて長いため、1本のバイアス線9全体の抵抗値が大きくなる。
そのため、抵抗値が大きいバイアス線9に多量の正孔が流れ込むと、バイアス線9内で生じる電圧上昇が大きくなる。そのため、一時的に上昇したバイアス電圧Vbiasが、当該走査線5に印加される電圧がオン電圧からオフ電圧に切り替えられるまでに元のバイアス電圧Vbiasに戻り切らなくなり、元のバイアス電圧Vbiasよりも若干高い電圧になる。そのため、図19等に示したように各バイアス線9が走査線方向に延在するように設けられている場合においても、上記と同様に、走査線方向のクロストークが生じてしまう。
そこで、放射線画像撮影装置1における各バイアス線9が上記のように走査線方向に延在するように設けられている場合には、例えば図21に示すように、走査線方向(図中矢印Vで示される方向)に配列された一行分の各放射線検出素子7を複数の区分に区分した場合の各区分ごとに1本のバイアス線9が各放射線検出素子7にそれぞれ接続されるようにして、検出部P上の各放射線検出素子7に各バイアス線9をそれぞれ接続するように構成することが可能である。
すなわち、簡単に言えば、各放射線検出素子7に接続された、走査線方向に延在する各バイアス線9が、それぞれ走査線方向に複数の区分に分割されるように構成される。そして、各バイアス線9が、信号線方向(図中矢印Wで示される方向)に延在する結線10a〜10zにそれぞれ接続される。
このように構成し、図21では図示を省略したバイアス電源14から各結線10a〜10zを介して各バイアス線9にバイアス電圧Vbiasをそれぞれ印加することにより、各バイアス線9を介して各放射線検出素子7にバイアス電圧Vbiasをそれぞれ印加するように構成することが可能である。
このように構成すれば、各バイアス線9の長さが、図19に示したようにバイアス線9が検出部Pの一端側から他端側まで配設されている場合よりも短くなるため、各バイアス線9の抵抗値が小さくなる。そのため、各放射線検出素子7からの画像データDの読み出し処理の際に、放射線が照射された各放射線検出素子7から多量の正孔が各バイアス線9に流出しても、一時的に上昇するバイアス電圧Vbiasの上昇幅が小さくなる。
なお、上記のように各バイアス線9の長さは短くなっても、各バイアス線9が接続された各結線10a〜10zの長さが長くなって各結線10a〜10zの抵抗値が比較的大きくなる場合がある。このような場合には、例えば、各結線10a〜10zを、その信号線方向W(図21参照)の中間部分で図中上下に分断するように構成して、各結線10a〜10zの長さを短くするように構成することが可能である。
しかし、そもそも1本のバイアス線9に接続されている放射線検出素子7の数が少ないため、放射線が照射された各放射線検出素子7から各バイアス線9を介して各結線10a〜10zに流れ込む正孔の量は少なくなる。そのため、上記のように構成すれば、各結線10a〜10zの抵抗値が多少大きくても、一時的に上昇するバイアス電圧Vbiasの上昇幅は小さくなる。
そして、一時的に上昇するバイアス電圧Vbiasの上昇幅は小さくなるため、一旦上昇したバイアス電圧Vbiasが、走査線5に印加された電圧がオン電圧からオフ電圧に切り替えられる前に、的確に元のバイアス電圧Vbias(すなわち例えば−5[V])に戻るようになる。
そのため、図21に示したように、各放射線検出素子7に接続された、走査線方向に延在する各バイアス線9を、それぞれ走査線方向Vに複数の区分に分割するように構成し、バイアス電源14から、各バイアス線9にバイアス電圧Vbiasを印加するように構成することで、走査線方向のクロストークが生じることを防止することが可能となる。
なお、各バイアス線9を接続する放射線検出素子7の個数については、上記のように、走査線5に印加される電圧がオン電圧からオフ電圧に切り替えられる前に、一旦上昇したバイアス電圧Vbiasが元のバイアス電圧Vbiasに戻ることが確保される個数であれば、基板4の構成等を考慮して、適宜の個数に設定することが可能である。
また、各バイアス線9を接続する放射線検出素子7の個数は、各バイアス線9で同数である必要はなく、上記の条件を満たす限り、適宜の個数に設定することが可能である。なお、図18では、便宜上、各バイアス線9を5個や3個の放射線検出素子7に接続するように構成する場合を示したが、一旦上昇したバイアス電圧Vbiasが元のバイアス電圧Vbiasに戻ることが確保されるのであれば、各バイアス線9を例えば10個オーダーや100個オーダーの放射線検出素子7に接続するように構成することも可能である。
さらに、図21において、各結線10a〜10zが接続する入出力端子11(不図示)を図中の上方向に設けてもよく、下方向に設けてもよい。また、上記のように、各結線10a〜10zを、その信号線方向の中間部分で図中上下に分断するように構成する場合には、入出力端子11は図中の上下に設けられる。このように、入出力端子11を設ける位置等は適宜決められる。
以上のように、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1によれば、信号線方向に配列された各バイアス線9を、所定の本数ずつ、複数の結線10a〜10zのうちのいずれかの結線に接続したり(図18参照)、或いは、走査線方向に延在する各バイアス線9を、それぞれ走査線方向に複数の区分に分割する(図21参照)ように構成し、バイアス電源14から各結線10a〜10zおよび各バイアス9を介して各放射線検出素子7にバイアス電圧Vbiasをそれぞれ印加するように構成した。
そのため、走査線方向に延在する各結線10a〜10z(図18参照)や各バイアス線9(図21参照)の抵抗値が小さくなり、しかも、各結線10a〜10z(図18参照)や各バイアス線9(図21参照)に流れ込む正孔の量が少なくなるため、一時的に上昇するバイアス電圧Vbiasの上昇幅が小さくなる。
そして、一旦上昇したバイアス電圧Vbiasが、走査線5に印加された電圧がオン電圧からオフ電圧に切り替えられる前に、的確に元のバイアス電圧Vbiasに戻るようになるため、走査線方向のクロストークが生じることを的確に防止することが可能となる。
そのため、例えば、放射線画像撮影装置1を医療用の放射線画像撮影に用いて患者の病変部を撮影するような場合には、放射線が被写体である患者の身体を透過せずに放射線画像撮影装置1に直接照射された部分(すなわちいわゆる素抜け部)や、放射線が患者の身体を透過する際に身体に吸収されたり散乱されたりして放射線画像撮影装置1に到達する放射線の線量が小さくなる部分では、その走査線方向に、図22(B)や図24(B)に示したようなクロストークが生じ易くなる。
しかし、そのような場合でも、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1では、走査線方向のクロストークが生じることが的確に防止されるため、読み出された画像データDに基づいて生成された放射線画像上にはクロストークの影響が現れず、放射線画像が見易くなり、クロストークの部分を病変部と見誤ったりクロストークの影響で病変部が見づらくなって病変部を見落としてしまう等の不都合が生じることを的確に防止することが可能となる。
なお、各結線10a〜10z(図18参照)や各バイアス線9(図21参照)の材質や構造(特に断面積)等によって各結線10a〜10zや各バイアス線9の単位長さあたりの抵抗値が変わる。また、放射線検出素子7の性能やオン電圧として各TFT8に印加する電圧の電圧値等の種々の要因によって、各放射線検出素子7から各バイアス線9に流出する正孔の量が変わり、各結線10a〜10z中を流れる正孔の量が変わり得る。また、基板4上の構成による制約もある。
そのため、各結線10a〜10zに接続する各バイアス線9の本数(図18参照)や、各バイアス線9を接続する各放射線検出素子7の個数(図21参照)等は、前述したように、実機としての放射線画像撮影装置1の構成に応じて、本数や個数が適宜決められる。