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JP5603582B2 - 表面修飾ジルコニアナノ結晶粒子およびその製造方法 - Google Patents

表面修飾ジルコニアナノ結晶粒子およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、表面修飾ジルコニアナノ結晶粒子およびその製造方法に関する。さらに詳しくは、平均粒径1〜20nm程度の高屈折率・高強度のジルコニアナノ粒子表面に、所望の溶媒に安定に分散可能とする役割を有する表面修飾子を具備したジルコニアナノ粒子であって、所望の表面修飾子に簡単な方法で置換可能な構造を有する、溶媒分散性の表面修飾ジルコニアナノ結晶粒子に関するものである。
従来、チタニアナノ結晶は、高屈折率という特性に着目して、様々な分野において、開発・使用されている。
例えば、LED封止材として用いられているシリコーン樹脂は、耐熱性・耐光性に優れているが、屈折率が低く、LEDからの光取り出し効率が低いという問題点がある。これを解決するために、表面修飾により親油性としたチタニアナノ結晶を合成し、シリコーン樹脂とのコンポジットを作製することで屈折率向上を目指している(特許文献1)。
また、ジルコニアナノ結晶は、高屈折率・高強度という特性に着目して、メガネレンズのハードコート剤、研磨剤など、様々な用途目的として開発・使用されている。
例えば、有機溶媒に高い分散性を示すジルコニアナノ結晶の合成手法が知られている(非特許文献1、非特許文献2)。
WO2008/075784号パンフレット
Mizuno,M.et al.,Langmuir2006,22,7137−7140 Joo,J.et al.,J.Am.Chem.Soc.2003,125,6553−6557 Shuxue Zhou et al.,Langmuir2007,23,9178−9187
特許文献1に記載のナノ粒子は、ナノ粒子表面を被覆する被覆部と、溶媒分散性のための表面修飾子は、同一の原料に起因していることから、一体化した構造となっている。そのため、様々な用途目的に適用しようとした場合、チタニアナノ結晶表面の表面修飾子の選択の幅が狭いという問題がある。
また、チタニアナノ結晶は、青色から紫外光の照射によって青色に着色するフォトクロミズムを示すため、可視光透過率が著しく変化してしまう。このため、チタニアナノ結晶を用いたコンポジットは、LED封止材としては不適切であることが判明した。このような問題から、高屈折率・高強度材料として、ジルコニアナノ結晶がチタニアナノ結晶の代替とされ得る。
ジルコニアナノ粒子をバインダーに分散させて光学材料に用いる場合には、分散させた状態(コンポジット)での透明性が必要である。「透明性」は、光の散乱が少ないことを意味する。本発明者は、「光の散乱」について考察した結果、「コンポジット中でのジルコニアナノ粒子の1次粒子が小さいこと」および「コンポジット中での2次粒子の生成の抑制」を満たす必要があると考えた。後者は、1次粒子の凝集を抑制(均一分散)することで満たされ、これは、ジルコニアナノ粒子の表面を、バインダー材料との親和性の高い表面修飾子で被覆することが有効である。すなわち、「透明性の高いコンポジット」は、「小さいサイズのナノ粒子」を「凝集しないように表面修飾」することで実現可能である、と推察した。「透明性の高いコンポジット」を実現するためのナノ粒子表面の表面修飾子の種類は、バインダー材料との間で決定される。
また、ジルコニアナノ粒子を基板等の表面に堆積・固定化等させる場合、ナノ粒子表面の表面修飾子として、末端に結合用の官能基を有する表面修飾子を選定し、これと結合する官能基を有する表面修飾子を予め基板表面に修飾することで、基板−ナノ粒子間を化学結合により固定化させることが可能である。この方法は、基板表面にナノ粒子を1層のみ堆積させることが可能であり、多分野において注目されている。
いずれの場合においても、従来、特定の表面修飾子を有するジルコニアナノ粒子は個別に合成していたため、必要な表面修飾子の種類が変更となった際に、その都度合成法を検討(原料の選定・条件の選定など)する必要があった。表面修飾子の種類によっては、原料選定の段階で制約を受けることもあった。また、目的とする表面修飾子を有するジルコニアナノ粒子を合成できたとしても、得られたものの安定性が低いこともあり、実用的でないことも多い。
非特許文献1には、ジルコニウムアルコキシドをオレイン酸共存下で塩基性水溶液中で加水分解し、Zr−O−Zr結合を有する前駆体を作製した後、これを280℃で加熱することによって、粒径2nm程度のジルコニアナノ結晶を作製する方法が記載されている。
非特許文献1の方法では、前駆体作製時に100℃、その後のナノ結晶作製時に280℃という高温で加熱するため、これらの条件下で反応・分解しないオレイン酸などのカルボン酸のみが適用可能であり、選択の制約が大きい。特に、ナノ結晶表面に特定の表面修飾子、例えば反応性官能基を有する分子を導入したい場合には不適な方法である。また、得られたナノ結晶が立方晶構造を有すると記載されているが、掲載されているXRDパターンからは、ナノ結晶の結晶性は低いと考えられ、材料特性(高屈折率・高強度等)は期待できない。
非特許文献2には、ジルコニウムテトライソプロポキシドと四塩化ジルコニウムを原料に用い、無水ゾルゲル反応によりジルコニアナノ結晶を作製する方法が記載されている。溶媒に用いたTOPO(トリオクチルホスフィンオキシド)がジルコニアナノ結晶の表面修飾子となり、トルエン等の無極性溶媒に分散可能である、と記載されている。
非特許文献2の方法で得られたジルコニアナノ結晶は、表面修飾子TOPOからジルコニアへの電子供与により濃い緑色を呈しており、光学用途としては不適格である。また、340℃、2時間という反応条件が必要であり、安全性や製造コストの面から好ましい方法とは言えない。さらに、非特許文献2の無水ゾルゲル反応では、オゾン層破壊物質として指摘されている2−クロロプロパンの発生を伴うものであり、製造方法として採用しにくい。
非特許文献3には、溶媒非分散性のジルコニアナノ結晶を合成した後に、ナノ結晶表面に表面修飾を施して溶媒分散性のジルコニアナノ結晶を作製する方法が記載されている。著者らが開発したベンジルアルコール分解法により得られた非分散性ジルコニアナノ結晶に対し、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒として、ビニル基を有する4種類の表面修飾子3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート(MPS)、エチル3,4−ジヒドロキシシンナメート(EDHC)、アリルマロン酸(AMA)、トリメチロールプロパンモノアリルエーテル(TMPMA)をそれぞれ用いて表面修飾子の濃度を最適化することにより、溶媒分散性ジルコニアナノ結晶が得られた、と記載されている。非特許文献3では、無水系であるベンジルアルコール分解法に特徴があり、生成したジルコニアナノ結晶の表面はベンジルアルコール由来の分子により覆われている点が特徴的であり(通常のゾルゲル法は水酸基で覆われている)、これが表面修飾子による修飾を可能としている。
しかしながら、非特許文献3のベンジルアルコール分解法は、200℃近い沸点を有するベンジルアルコールを大量に使用する点、原料であるジルコニウムアルコキシドが高価である点が問題であり、量産化には適していない。
さらに、非特許文献3では、THF溶媒中のジルコニアナノ結晶濃度が約1質量%と非常に低く、溶媒分散性が得られたと報告されているものの、ポリマー等への混合を目的としたナノ結晶としては、十分な機能を有しているとは言えない。また、ナノ結晶分散液が得られたという報告はあるが、表面修飾子を単に加えただけであることから、分散液中にナノ結晶表面と結合していない遊離の修飾分子が含まれていると考えられる。様々な用途(例えばコンポジット作製)に用いるにはこの分散液からナノ結晶を単離する必要があるが、単離操作の際に表面修飾子がナノ結晶表面から脱離してしまい、分散性を喪失してしまう可能性が高い。実際、本発明者が実験した結果、単離したナノ結晶を再び溶媒に分散させようとしても、均一に分散できなかった。すなわち、非特許文献3のジルコニアナノ結晶では、安定した溶媒分散性が確保されていない。
本発明はこのような問題を解決すべくなされたものであり、簡単な方法で製造可能であり、安定性の高い溶媒分散性を有する表面修飾ジルコニアナノ結晶粒子を提供するものである。また、本発明は、ジルコニアナノ粒子表面の表面修飾子を、用途目的に則した官能基に容易に置換可能な構造を有する表面修飾ジルコニアナノ結晶粒子を提供するものである。
本発明者は、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、下記の知見を得た。
従来、金属酸化物ナノ結晶は凝集しやすい性質を有している。そして凝集状態は−OH基同士が結合している状態であり、このような状態では置換したい修飾子が立体的に入り込むことができず、ジルコニアナノ結晶表面の修飾子を他の修飾子に置換することが困難である。すなわち、修飾子置換のためには、溶媒分散性に優れたジルコニアナノ結晶であることが必要である。
また、ジルコニアナノ結晶表面の修飾子が、結晶表面に強固に結合している場合も、他の修飾子への置換が困難である。ジルコニア表面は酸・塩基いずれの性質も有しうるが、本発明では、ジルコニア表面が弱い塩基性を有しうることに着目した。ジルコニアナノ結晶表面が「弱塩基」の性質を有しているため、これとイオン結合性の結合が可能な修飾子を選定することで、他の修飾子に置換容易であると考え、種々研究を重ね、修飾子として有機スルホニルオキシ基、特に(芳香環上に置換基を有していてもよい)アリールスルホニルオキシ基が有効であることを見出した。
また、上述のように、ジルコニアナノ結晶と表面修飾子は、「強酸−弱塩基」のイオン結合と解釈できる。したがって、「スルホン酸よりも弱い酸」と強塩基の塩を用いることで、塩交換反応によって容易に置換可能であることに着目し、さらに研究を重ね、有機スルホニルオキシ基修飾子は、容易にカルボニルオキシ基へ置換可能であることを見出した。「スルホン酸よりも弱い酸」と強塩基の塩を用いることによって、表面修飾子を「有機スルホニルオキシ基」から弱酸残基(「弱酸強塩基の塩」における弱酸部分に由来する基であり、ジルコニアナノ結晶表面とイオン結合をする基)に容易に置換可能である。例えば、「スルホン酸より弱い酸」として、カルボン酸、リン酸エステル(モノエステル・ジエステル)、有機ホスホン酸・ホスフィン酸、フェノール類が挙げられる。これらの弱酸の特徴として、カルボン酸は取り扱いが容易であり、手に入りやすいために修飾子の選択の幅が広く、ホスホン酸やホスフィン酸、リン酸エステルは熱的に安定であり、フェノール類は取り扱いが容易であることなどが挙げられる。
本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、
) スルホン酸よりも弱酸の残基により表面修飾されたジルコニアナノ結晶粒子の製造方法であって、
有機スルホニルオキシ基が化学結合によりジルコニアナノ粒子の表面に表面修飾されてなるスルホニルオキシ基表面修飾ジルコニアナノ結晶粒子を前記弱酸と強塩基とで構成される塩と反応させて、有機スルホニルオキシ基を前記弱酸の残基で置換することを特徴とする弱酸の残基表面修飾ジルコニアナノ結晶粒子の製造方法、
) 弱酸の残基がカルボニルオキシ基であることを特徴とする上記()項に記載の弱酸の残基表面修飾ジルコニアナノ結晶粒子の製造方法、
) 弱酸の残基が有機ホスホリルオキシ基であることを特徴とする上記()項に記載の弱酸の残基表面修飾ジルコニアナノ結晶粒子の製造方法、
) 弱酸が有機ホスホン酸または有機ホスフィン酸であることを特徴とする上記()項に記載の弱酸の残基表面修飾ジルコニアナノ結晶粒子の製造方法、
)弱酸がリン酸エステルであることを特徴とする上記()項に記載のジルコニアナノ結晶粒子の製造方法、
)弱酸の残基がアリールオキシ基であることを特徴とする上記()項に記載の弱酸の残基表面修飾ジルコニアナノ結晶粒子の製造方法、
)強塩基が炭酸ナトリウムまたは水酸化ナトリウムであることを特徴とする上記()〜()項のいずれか1項に記載の弱酸の残基表面修飾ジルコニアナノ結晶粒子の製造方法、
)スルホニルオキシ基表面修飾ジルコニアナノ結晶粒子と前記塩とを反応させる前に、前記スルホニルオキシ基表面修飾ジルコニアナノ結晶粒子と、前記弱酸と、前記強塩基とを混合する工程をさらに含むことを特徴とする上記()〜()項のいずれか1項に記載の弱酸の残基表面修飾ジルコニアナノ結晶粒子の製造方法、
)出発材料である前記スルホニルオキシ基表面修飾ジルコニアナノ結晶粒子は、ジルコニア前駆体と、有機スルホン酸とを混合し、加熱、加圧の条件下、それらを反応させることにより得られることを特徴とする上記()〜()項のいずれか1項に記載のジルコニアナノ結晶粒子の製造方法、
を提供するものである。
本発明によれば、簡単な方法で、安定性の高い表面修飾ジルコニアナノ結晶粒子を製造可能である。また、本発明の表面修飾ジルコニアナノ結晶粒子は、所望の官能基に容易に置換可能な構造を有する表面修飾子を表面に具備しているため、用途目的に応じて必要な表面修飾子が異なる場合、表面修飾子ごとに表面修飾ジルコニアナノ結晶粒子をそれぞれ製造する必要がなく、官能基の置換という簡単な方法で得ることが可能となる。
まず、本発明の表面修飾ジルコニアナノ結晶粒子について説明する。
[表面修飾ジルコニアナノ結晶粒子]
本発明の表面修飾ジルコニアナノ結晶粒子は、有機スルホニルオキシ基により、ジルコニアナノ粒子が表面修飾されてなることを特徴とする。
前記有機スルホニルオキシ基としては、芳香環上に置換基を有してもよいアリールスルホニルオキシ基が好ましく、例えばベンゼンスルホニルオキシ基やp−トルエンスルホニルオキシ基などを挙げることができるが、p−トルエンスルホン酸の残基であるp−トルエンスルホニルオキシ基(PTSHと略記することがある。)が化学的に安定であること、固体粉末であるため取扱いが容易であることから、特に好ましい。
PTSH修飾ジルコニアナノ結晶粒子は、下記式(1)で表される構造を有している。
Figure 0005603582
(製造方法)
前述した本発明の表面修飾ジルコニアナノ結晶粒子は、本発明の方法によれば、有機溶媒中において、ジルコニア前駆体と有機スルホン酸とを、100〜240℃という低温度で反応させることにより製造することができる。
具体的には、適当な有機溶媒中において、ジルコニア前駆体と、有機スルホン酸、好ましくはベンゼンスルホン酸やp−トルエンスルホン酸などのアリールスルホン酸、特に好ましくはp−トルエンスルホン酸とを反応させて、有機スルホニルオキシ修飾ジルコニアナノ結晶粒子、特に好ましくはPTSH修飾ジルコニアナノ結晶粒子を形成させる。
この際用いるジルコニア前駆体としては、塩化ジルコニルやテトラアルコキシジルコニウムなどを用いることができるが、化学的に安定で取扱いが容易であること、安価であること、および反応性の観点から、塩化ジルコニルが好ましく、特に塩化ジルコニル8水和物(ZrOCl・8HO)が好適である。
有機スルホニルオキシ基の原料としてp−トルエンスルホン酸を使用する場合には、前記ジルコニア前駆体におけるZrとp−トルエンスルホン酸のモル比は8:1〜1:2が好ましい。p−トルエンスルホン酸の割合が上記範囲より少ないと、PTSH修飾ジルコニアナノ結晶粒子の分散性が低下するおそれがある。Zrとp−トルエンスルホン酸のより好ましいモル比は4:1〜1:1の範囲である。
有機溶媒としては、PTSH修飾ジルコニアナノ結晶粒子が効果的に形成される溶媒であればよく、特に制限はないが、例えばエタノールとオルトギ酸トリエチルとの混合溶媒などを好ましく用いることができる。
有機溶媒として、前記のエタノールとオルトギ酸トリエチルとの混合溶媒を、ジルコニア前駆体として、前記塩化ジルコニル8水和物を、有機スルホニルオキシ基の原料(有機スルホン酸)として前記のp−トルエンスルホン酸を用いる場合、反応は、加圧容器中において、好ましくは100〜240℃、より好ましくは120〜200℃の温度にて行われる。反応時間は、反応温度や有機スルホン酸の量などに左右され、一概に決めることはできないが、通常8〜120時間程度、好ましくは12〜60時間である。なお、反応時間によって生成するジルコニアナノ結晶の結晶構造を選択できる。原料濃度やジルコニア前駆体と有機スルホン酸のモル比率、反応温度によって最適な反応時間は変化するが、反応温度を短くすると正方晶ジルコニアナノ結晶が生成し、長くすると単斜晶ジルコニアナノ結晶が生成する傾向にある。正方晶ジルコニアナノ結晶は単斜晶ジルコニアナノ結晶より高い屈折率を有しており、単斜晶ジルコニアナノ結晶は正方晶ジルコニアナノ結晶より化学的に安定であると思われる。使用用途に応じてそれぞれを作り分けることが可能である。
反応終了後、反応液中の溶媒を、好ましくは減圧下に留去させることにより、前記式(1)で表される構造を有するPTSH修飾ジルコニアナノ結晶粒子が得られる。
このPTSH修飾ジルコニアナノ結晶粒子は、白色粉末として得られ、メタノールや塩化メチレンなどの有機溶媒に再分散可能であり、無色透明なジルコニアナノ結晶粒子分散液を得ることができる。
このようにして得られた有機スルホニルオキシ修飾ジルコニアナノ結晶粒子においては、ジルコニアナノ結晶と表面修飾子は、「強酸−弱塩基」のイオン結合と解釈できる。よって、「スルホン酸よりも弱い酸」と強塩基の塩を用いることで、塩交換反応によって容易に置換可能である。「スルホン酸より弱い酸」としてはカルボン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸、リン酸エステル、フェノール類の弱酸が好ましい。修飾子を置換する場合、前記弱酸のナトリウム塩、カリウム塩などを使用することで置換可能である。また、酸のまま使用する場合には、炭酸ナトリウムや水酸化ナトリウムなどのアルカリを加える(修飾子置換反応系中に塩が生成)と、弱酸塩を用いたときと同様の反応が行われる。
[カルボニルオキシ表面修飾ジルコニアナノ結晶粒子の製造]
前述した有機スルホニルオキシ表面修飾ジルコニアナノ結晶粒子における表面修飾子(有機スルホニルオキシ基)を、カルボニルオキシ基へ置換することにより、カルボニルオキシ表面修飾ジルコニアナノ結晶粒子を製造することができる。
具体的には、まず、適当な有機溶媒、例えばメタノールと塩化メチレンとの容量比9:1〜1:9程度、好ましくは7:3〜5:5(カルボン酸の種類に大きく依存するが、一般的なカルボン酸アルカリ塩は極性の小さな溶媒には不溶であるため)の混合溶媒中に、有機スルホニルオキシ表面修飾ジルコニアナノ結晶粒子を分散させてなる分散液を調製する。この際、上記結晶粒子の濃度としは、Zrとして0.5〜15mmol/10ml程度、好ましくは2〜8mmol/10mlである。
次いで、この分散液に、ジルコニアナノ結晶の合成に使用した有機スルホン酸(例えばp−トルエンスルホン酸)1モル当たり、カルボン酸を0.5〜4モル程度、好ましくは1〜2モルの割合で溶解させ、さらに炭酸ナトリウムを0.25〜2モル程度、好ましくは0.5〜1モルの割合で加え、通常室温で8〜48時間程度、好ましくは12〜48時間攪拌する。その後、反応液中の溶媒を留去したのち、修飾子置換ナノ結晶の貧溶媒(メタノールなど)を添加し、遠心分離などの固液分離手段を施し、得られた沈殿物をトルエンなどの良溶媒に再分散させ、さらに前記と同様のメタノール洗浄を数回繰り返す。次いで、このトルエン分散液をろ過して炭酸ナトリウムを除去することにより、カルボニルオキシ表面修飾ジルコニアナノ結晶粒子が得られる。
前記カルボン酸としては、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸などは勿論のこと、さまざまな官能基を有するカルボン酸を用いることが可能である。本発明の表面修飾子の置換反応は室温でも進行するため、ジルコニアナノ結晶粒子表面へ反応性の高いカルボニルオキシ基を導入するのに特に有効である。すなわち本発明は、ナノ粒子表面の表面修飾子を、反応活性である官能基を有するカルボニルオキシ基へ置換する場合に特に有効である。例えば熱的に安定な脂肪族カルボン酸以外にも重合性のアルケニル基、アルキニル基を有するカルボン酸を用いることも可能である。また、水酸基、アミノ基、チオール基、カルボニル基、ニトリル基、エステル基、アミド基などの反応性の官能基を有するカルボン酸を用いることも可能である。このうち特に極性の低い官能基のみを有するカルボン酸を用いれば、これに表面修飾子を置換したジルコニアナノ結晶がメタノールなどの高極性溶媒に均一分散しないため、精製工程が簡便となり好適である。
一方、水酸基など極性の高い官能基を有するカルボン酸を用いる場合、表面修飾子を置換したジルコニアナノ粒子と塩交換反応によって生じる有機スルホン酸塩の溶媒への分散性が同等である場合があり、精製が困難となる。この場合、極性の低い官能基のみを有するカルボニルオキシ基で置換し精製によってスルホン酸塩を除去し、極性の高い官能基を有するカルボニルオキシ基で置換するといった多段階手法を用いることで、問題が回避できる。
具体的には、まず前記の方法により極性の低い官能基のみを有するカルボン酸を用いて修飾子置換を行う。この場合、粒子表面への結合数が少なく、かつ高い分散安定性を示すようなカルボン酸が好ましく、分岐した構造を有するカルボン酸、特に2−エチルヘキサン酸が好ましい。得られた表面修飾ナノ結晶は前記と同様メタノール洗浄を数回繰り返すことにより副生成物である有機スルホン酸塩を除去し、トルエンに分散させる。次に極性の高い官能基を有するカルボニルオキシ基に置換する場合、無極性溶液と極性溶液の混合溶媒、例えばトルエンとブタノールとの容量比1:1の混合溶媒中に、極性の高い官能基を有するカルボン酸を大過剰(2−エチルヘキサン酸の5倍等量程度)加え1時間程度加熱還流を行う。極性の高い官能基を有するカルボニルオキシ基が置換したジルコニアナノ結晶粒子は高極性溶媒に分散可能であるが、無極性溶媒には分散困難である。一方、副生成物である2−エチルヘキサン酸や余剰カルボン酸は無極性溶媒に可溶である。ここでは、有機スルホン酸塩は一段階目の置換反応での精製によって除去されているため、問題とならない。ヘキサンを添加・遠心分離、エタノールに再分散という精製工程を数回繰り返し、最終的にエタノールなど高極性溶媒に分散させることで、極性の高い官能基を有するカルボニルオキシ修飾ジルコニアナノ結晶粒子が得られる。
また、反応性の置換基としては、例えばポリオルガノシロキサン(以下、POSと略記することがある。)鎖などを有する置換基を挙げることができる。
前記の修飾子置換反応は、有機スルホニルオキシ表面修飾ジルコニアナノ結晶粒子がPTSH表面修飾ジルコニアナノ結晶粒子である場合、下記の反応式(a)で表すことができる。
Figure 0005603582
(式中、Rは置換基を有しても良い炭化水素基である。なお、化学式で示す線種(破線、二重線など)は結合の種類を厳密に表している訳ではなく、例えば式(3)では粒子表面と結合を作る二つの酸素原子と粒子表面との結合が互いに等価であってもよい。以下の化学式においても同様である。)
すなわち、式(1)で示されるPTSH表面修飾ジルコニアナノ結晶粒子に、式(2)で示されるカルボン酸と炭酸ナトリウムを反応させることにより、式(3)で示されるカルボニルオキシ表面修飾ジルコニアナノ結晶粒子が生成すると共に、式(4)で示されるp−トルエンスルホン酸ナトリウムが副生する。
式(2)で示されるカルボン酸のRが、ポリオルガノシロキサン鎖を有する場合、式(3)で示されるカルボニルオキシ表面修飾ジルコニアナノ結晶粒子としては、例えば下記式(3−a)
Figure 0005603582
(式中、nはジメチルシロキサン単位の数を示し、mは脂肪族モノカルボニルオキシ基における脂肪族基の炭素数を示す。)
で表されるポリジメチルシロキサン鎖を有する脂肪族モノカルボニルオキシ基(以下、PDMS−カルボニルオキシ基と略記することがある。)で表面修飾されたジルコニアナノ結晶粒子を挙げることができる。
前記式(3−a)におけるnは、通常4〜100程度であり、mは、通常2〜18程度である。
前記式(3−a)で表れる、PDMS−カルボニルオキシ基で表面修飾されたジルコニアナノ結晶粒子は、LED(発光ダイオード)の封止材などとして有用なシリコーン系複合材料の一成分として好適に用いられる。
[有機ホスホリルオキシ表面修飾ジルコニアナノ結晶粒子の製造]
前述した有機スルホニルオキシ表面修飾ジルコニアナノ結晶粒子における表面修飾子(有機スルホニルオキシ基)を、有機ホスホリルオキシ基へ置換することにより、有機ホスホニルオキシ表面修飾ジルコニアナノ結晶粒子を製造することができる。
有機ホスホン酸またはホスフィン酸を用いた場合、カルボン酸と同様の手法を用いることができるが、酸のまま使用する場合は、炭酸ナトリウムでは塩基性が十分でないため、炭酸ナトリウムよりも塩基性が強い水酸化ナトリウムを加える方が好適である。
有機ホスホン酸としては、フェニルホスホン酸などアルキル基やフェニル基などを有するものは勿論、水酸基やアミノ基、チオール基、ニトリル基など様々な官能基を有する有機ホスホン酸を用いることができる。
このように、有機ホスホン酸またはホスフィン酸を用いた場合、下記の式(5)または式(6)で示される有機ホスホリルオキシ表面修飾ジルコニアナノ結晶粒子を得ることができる。
Figure 0005603582
(式中、Rは置換基を有してもよい炭化水素基、Rは置換基を有してもよい炭化水素基または水酸基を示す。)
また、リン酸エステルを用いた場合、前述したカルボン酸を用いる場合と同様の手法を採用することができる。リン酸エステルとしては、リン酸モノエステル及びリン酸ジエステルが好ましく、リン酸モノドデシルやフェニルリン酸、リン酸ジフェニルなどアルキル基やフェニル基を有するリン酸エステルは勿論、水酸基やアミノ基、チオール基、ニトリル基など様々な官能基を有するリン酸エステルを用いることができる。
このように、リン酸エステルを用いた場合、下記の式(7)または式(8)で示される有機ホスホリルオキシ表面修飾ジルコニアナノ結晶粒子を得ることができる。
Figure 0005603582
(式中、Rは置換基を有してもよい炭化水素基、Rは置換基を有してもよい炭化水素基または水素原子を示す。)
[アリールオキシ表面修飾ジルコニアナノ結晶粒子]
前述した有機スルホニルオキシ表面修飾ジルコニアナノ結晶粒子における表面修飾子(有機スルホニルオキシ基)を、アリールオキシ基へ置換することにより、アリールオキシ表面修飾ジルコニアナノ結晶粒子を製造することができる。
フェノール類を用いた場合もカルボン酸を用いる場合と同様の方法を採用することができるが、酸のまま使用する場合は、炭酸ナトリウムでは塩基性が十分でないため、炭酸ナトリウムよりも塩基性が強い水酸化ナトリウムを加える方が好適である。
フェノール類としては、フェノールは勿論のこと2価のカテコール、レゾルシン、ヒドロキノン、オルシン、ウルシオールや3価のピロガロール、フロログルシン、ヒドロキシヒドロキノンといった多価フェノールを用いることも可能であり、さまざまな官能基を有するフェノール類を用いることも可能である。
このようにして,フェノール類を用いた場合、下記の式(9)または式(10)で示されるアリールオキシ表面修飾ジルコニアナノ結晶粒子を得ることができる。
Figure 0005603582
(式中、Rは置換基を有してもよい炭化水素基、水酸基または水素原子を示す。)
このように作製した表面修飾ジリコニアナノ結晶粒子はポリマーに分散し易く、例えば、光学用樹脂であるシクロオレフィンポリマーにジルコニアナノ結晶粒子を分散させると、シクロオレフィンポリマーとジルコニアナノ結晶粒子は温度による屈折率の変化が逆の挙動を示すため、温度上昇によるシクロオレフィンポリマーの屈折率低下をジルコニアナノ結晶粒子の屈折率向上によって相殺する効果が期待できる。
[シリコーン系複合材料]
LEDの封止材などに用いられるシリコーン系複合材料は、屈折率を確保するために、架橋硬化したシリコーン樹脂マトリックス中に、高屈折率を有するジルコニアナノ結晶粒子を高分散状態で含むものが好ましく用いられる。
前記の架橋硬化したシリコーン樹脂マトリックス中に、ジルコニアナノ結晶粒子を高分散させるために、前述したポリオルガノシロキサン鎖を有する脂肪族モノカルボニルオキシ基(以下、POS−カルボニルオキシ基と略記することがある。)で表面修飾されたジルコニアナノ結晶粒子を用いることができる。
前記のPOS−カルボニルオキシ基、好ましくはPDMS−カルボニルオキシ基で表面修飾されたジルコニアナノ結晶粒子は、修飾子中にシロキサン単位を有することから、架橋硬化してなる熱硬化性シリコーン樹脂中に、極めて良好に、かつ安定して分散する。
当該シリコーン系複合材料においては、屈折率の向上及び分散性の観点から、表面修飾ジルコニアナノ結晶粒子の含有量は、ZrOとして5〜80質量%が好ましく、10〜50質量%がより好ましい。
当該シリコーン系複合材料は、以下に示す方法により、効率よく製造することができる。
例えば、(a)熱硬化性シリコーン樹脂と、前記のPOS−カルボニルオキシ基、好ましくはPDMS−カルボニルオキシ基で表面修飾されたジルコニアナノ結晶粒子の有機溶媒分散液と、硬化触媒とを含む混合液を調製する工程、(b)前記混合液中の溶媒を留去させる工程、および(c)溶媒留去後の混合物を加熱処理して、熱硬化性シリコーン樹脂を架橋硬化させる工程を施すことにより、当該シリコーン系複合材料を効率よく得ることができる。
前記(a)工程で用いられる熱硬化性シリコーン樹脂としては、付加反応型シリコーン樹脂とシリコーン系架橋剤との混合物を用いることができる。付加反応型シリコーン樹脂としては、例えば分子中に官能基としてアルケニル基を有するポリオルガノシロキサンの中から選ばれる少なくとも1種を挙げることができる。上記の分子中に官能基としてアルケニル基を有するポリオルガノシロキサンの好ましいものとしては、ビニル基を官能基とするポリジメチルシロキサン、ヘキセニル基を官能基とするポリジメチルシロキサン及びこれらの混合物などが挙げられる。
シリコーン系架橋剤としては、例えば一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するポリオルガノシロキサン、具体的には、ジメチルハイドロジェンシロキシ基末端封鎖ジメチルシロキサン−メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、トリメチルシロキシ基末端封鎖ジメチルシロキサン−メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、トリメチルシロキサン基末端封鎖ポリ(メチルハイドロジェンシロキサン)、ポリ(ハイドロジェンシルセスキオキサン)などが挙げられる。
また、硬化触媒としては、通常白金系化合物が用いられる。この白金系化合物の例としては、微粒子状白金、炭素粉末担体上に吸着された微粒子状白金、塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、塩化白金酸のオレフィン錯体、パラジウム、ロジウム触媒などが挙げられる。
前記(a)工程において、前記熱硬化性シリコーン樹脂と、前述のPOS−カルボニルオキシ基、好ましくはPDMS−カルボニルオキシ基で表面修飾されたジルコニアナノ結晶粒子の有機溶媒分散液と、前記硬化触媒とを含む混合液を調製したのち、(b)工程において、上記混合液中の溶媒を留去させることにより、粘性の高い無色透明のジルコニアナノ結晶粒子含有シリコーン樹脂分散液を得る。次に、(c)工程において、該シリコーン樹脂分散液を、例えば100〜200℃の温度で、1〜12時間程度加熱処理することにより、前記熱硬化性シリコーン樹脂を架橋硬化させて、当該シリコーン系複合材料を得る。
このようにして得られたシリコーン系複合材料は透明であって、屈折率はジルコニアナノ結晶粒子の含有量に左右されるが、通常1.4〜1.6程度である。
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
実施例1 PTSH表面修飾ジルコニアナノ結晶粒子の製造
酸化塩化ジルコニウム8水和物(ZrOCl・8HO、関東化学製)1.29g(4mmol)とp−トルエンスルホン酸1水和物(関東化学製)190mg(1mmol)を、エタノール(和光純薬工業製)20mlとオルトギ酸トリエチル(関東化学製)5mlとの混合溶媒に溶解させた。
この溶液を加圧容器(50mlテフロン(登録商標)内筒付のステンレススチール製)に充填し、オーブン中で170℃で40時間加熱したのち、室温に放冷後、加圧容器を解放した。このとき反応溶液は無色透明であり、かつ沈殿は見られなかった。
反応溶液をエバポレーターで減圧にて溶媒除去後、白色の粉末のジルコニアナノ結晶670mgが得られた。これにメタノール(関東化学製)3mlと塩化メチレン(和光純薬工業製)3mlを加えると、均一に再分散可能であり、無色透明なジルコニアナノ粒子分散溶液が得られた。
前記白色粉末を粉末X線回折(XRD)により分析した結果、結晶形は正方晶酸化ジルコニウム結晶であることが確認された。また、前記白色粉末であるPTSH表面修飾ジルコニアナノ結晶粒子は、赤外分光法(IR)による観察の結果、PTSHがジルコニアナノ粒子表面と化学結合していることが確認された。また、透過型電子顕微鏡(TEM)による観察の結果、直径2〜3nmの微結晶であることが確認された。また、誘導結合プラズマ原子発光(ICP−AES)を用いた元素分析により生成物の組成比を測定したところ、Zr/S=4.06[mol比]であった。
実施例2 エタンスルホニルオキシ表面修飾ジルコニアナノ結晶粒子の製造
p−トルエンスルホン酸1水和物の代わりにエタンスルホン酸(東京化成工業製)82μl(1mmol)を用いた以外は実施例1と同様の操作を行うことにより、ジルコニアナノ結晶の白色〜微黄色粉末600mgが得られた。得られた粉末にメタノール5mlを加えると均一に再分散し、ジルコニアナノ結晶の均一分散溶液が得られた。IR、XRD、およびTEMの観察により、生成物は実施例1と同等(エタンスルホニルオキシ基がナノ結晶表面と化学結合していること、結晶形が正方晶酸化ジルコニウム結晶であること、直径2〜3nmの微結晶であること)を確認した。また、ICP−AESを用いた元素分析により生成物の組成比はZr/S=4.02[mol比]であった。
実施例3 PTSH表面修飾ジルコニアナノ結晶粒子の製造
酸化塩化ジルコニウム8水和物の代わりにジルコニウムテトライソプロポキシド(関東化学製)1.31g(4mmol)を用い、溶媒としてエタノール25mlのみ(オルトギ酸トリエチル不使用)を使用する以外は実施例1と同様の操作を行うことにより、ジルコニアナノ結晶の白色粉末669mgが得られた。得られた粉末はメタノール・塩化メチレン混合溶媒(体積比1:1)6mlに均一に再分散し、ジルコニアナノ結晶の均一分散溶液が得られた。IR、XRD、およびTEMの観察により、生成物は実施例1と同等(PTSHがナノ結晶表面と化学結合していること、結晶形が正方晶酸化ジルコニウム結晶であること、直径2〜3nmの微結晶であること)を確認した。また、誘導結合プラズマ原子発光(ICP−AES)を用いた元素分析により生成物の組成比を測定したところ、Zr/S=4.04[mol比]であった。
実施例4 PTSH表面修飾単斜晶ジルコニアナノ結晶粒子の製造
加熱時間を120時間にすること以外は実施例1と同様の操作を行うことにより、塩化メチレンとメタノールの混合溶媒に均一分散可能な微黄色粉末670mgが得られた。IRによる観察の結果、PTSHがジルコニアナノ粒子表面と化学結合していることが確認された。XRDおよびTEMの観察により、生成物は粒子サイズ3〜4nmの単斜晶ジルコニア微結晶であることが確認された。また、誘導結合プラズマ原子発光(ICP−AES)を用いた元素分析により生成物の組成比を測定したところ、Zr/S=4.00[mol比]であった。単斜晶ジルコニアナノ結晶は、化学的安定性の面では優れているが、屈折率の点では正方晶に劣る特性を有する。
実施例5 表面修飾ジルコニアナノ結晶粒子の修飾子置換(PTSH→ラウリン酸残基の例)
実施例1で得られたPTSH表面修飾ジルコニアナノ結晶粒子670mgを、メタノールと塩化メチレンとの容量比10:3の混合溶媒13mlに再分散させ、均一分散溶液を作成した。
この溶液に、ラウリン酸(C1123COOH、和光純薬工業製)200mg(1mmol)を溶解させ、さらに炭酸ナトリウム(高純度化学製)58mg(0.55mmol)を添加し、室温で一晩攪拌することにより、白色沈殿物を有する白濁溶液が得られた。これをエバポレータにかけて溶媒を除去した後、メタノールを過剰(25ml)に添加し、遠心分離を行い、沈殿物を回収した。沈殿にトルエン(関東化学製)を加えたところ、無色透明の分散溶液となり、トルエンに良好に分散することが確認された。同様のメタノール洗浄による精製(メタノール添加・遠心分離による固形物分取・トルエン分散)を3回繰り返した。
得られたトルエン分散液を濾過して固形物(炭酸ナトリウム)を除去すると、ラウリン酸残基(C1123COO−基:ラウロイルオキシ基)により表面修飾されたジルコニアナノ結晶粒子分散液が得られた。
前記ジルコニアナノ結晶粒子について、ICP−AESを用いた元素分析によりZr/Sの組成比を測定したところ、原料はZr/S=4.06[mol比]、生成物はZr/S=100[mol比]であった。硫黄がほぼ消失していることから、ジルコニアナノ結晶粒子表面の表面修飾子がPTSHからラウリン酸残基に置換されたことが確認された。また、C1123COO−基がナノ結晶粒子表面を表面修飾していることは、IR測定により確認した。さらに、XRD、およびTEMの観察により、ジルコニアナノ結晶の部分が実施例1で得られたナノ結晶から変化していない(結晶形が正方晶酸化ジルコニウム結晶であること、直径2〜3nmの微結晶であること)を確認した。
なお、本実施例によれば、余剰のラウリン酸を回収することが可能である。メタノール洗浄における遠心分離の際の上澄み液をエバポレータにかけると、白色のペースト状固体物が得られる。これに塩酸水を加えて酸性(pH3程度)にし、さらにエーテルを加え、完全に溶解するまで攪拌した。
得られた溶液からエーテル層を分取したのち、さらに水層をエーテルで2回抽出した。全エーテル抽出層を純水で2回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、エバポレータにてエーテルを留去することにより、ラウリン酸が回収できた。
実施例6 表面修飾ジルコニアナノ結晶粒子の修飾子置換(PTSH→4−ビニル安息香酸残基の例)
ラウリン酸の代わりに4−ビニル安息香酸148mg(1mmol)を用いる以外は実施例5と同様の操作を行うことによって、ビニルフェニル基を表面に導入したカルボニルオキシ基により表面修飾されたジルコニアナノ結晶を作製した。ICP−AESを用いた元素分析によりZr/Sの組成比を測定したところ、原料はZr/S=4.06[mol比]、生成物はZr/S=154[mol比]であった。硫黄がほぼ消失していることから、ジルコニアナノ結晶粒子表面の表面修飾子がPTSHから4−ビニル安息香酸残基(CCOO−基:4−ビニルベンゾイルオキシ基)に置換されたことが確認された。IR測定により、ビニルフェニル基が分解されることなくジルコニアナノ結晶表面に導入されていることを確認した。さらに、XRD、およびTEMの観察により、ジルコニアナノ結晶の部分はは実施例1で得られたナノ結晶から変化していない(結晶形が正方晶酸化ジルコニウム結晶であること、直径2〜3nmの微結晶であること)を確認した。
本発明によれば、本実施例のように反応活性である官能基を有するカルボン酸を用いても、容易にカルボニルオキシ基をナノ粒子表面へ導入可能である。
実施例7 表面修飾ジルコニアナノ結晶粒子の修飾子置換(エタンスルホニルオキシ基→ラウリン酸残基の例)
実施例1で得られたジルコニアナノ結晶の代わりに実施例2で得られたジルコニアナノ結晶を用いること、反応溶媒としてメタノール10mlを用いること以外は実施例5と同様の操作を行うことによって、ラウリン酸残基(C1123COO−基)により表面修飾されたジルコニアナノ結晶粒子を得た。ICP−AESを用いた元素分析によりZr/Sの組成比を測定したところ、原料はZr/S=4.06[mol比]、生成物はZr/S=215[mol比]であった。硫黄がほぼ消失していることから、ジルコニアナノ結晶粒子表面の表面修飾子がPTSHからラウリン酸残基(C1123COO−基:ラウロイルオキシ基)に置換されたことが確認された。また、ラウリン酸残基(C1123COO−基)がナノ結晶粒子表面を表面修飾していることは、IR測定により確認した。さらに、XRD、およびTEMの観察により、ジルコニアナノ結晶の部分が実施例2で得られたナノ結晶から変化していない(結晶形が正方晶酸化ジルコニウム結晶であること、直径2〜3nmの微結晶であること)を確認した。
実施例8 表面修飾ジルコニアナノ結晶粒子の修飾子置換(PTSH→ラウリン酸残基の例)
ラウリン酸と炭酸ナトリウムの代わりにラウリン酸ナトリウム(関東化学製)222mg(1mmol)を用いる以外は実施例5と同様の操作を行うことによって、ラウリン酸残基修飾ジルコニアナノ結晶を合成した。ICP−AESを用いた元素分析によりZr/Sの組成比を測定したところ、原料はZr/S=4.06[mol比]、生成物はZr/S=164[mol比]であった。硫黄がほぼ消失していることから、ジルコニアナノ結晶粒子表面の表面修飾子がPTSHからラウリン酸残基(C1123COO−基:ラウロイルオキシ基)に置換されたことが確認された。また、ラウリン酸残基(C1123COO−基)がナノ結晶粒子表面を表面修飾していることは、IR測定により確認した。さらに、XRD、およびTEMの観察により、ジルコニアナノ結晶の部分が実施例1で得られたナノ結晶から変化していない(結晶形が正方晶酸化ジルコニウム結晶であること、直径2〜3nmの微結晶であること)を確認した。
実施例9 表面修飾単斜晶ジルコニアナノ結晶粒子の修飾子置換(PTSH→ラウリン酸残基の例)
実施例1で得られたジルコニアナノ結晶の代わりに実施例4で得られた単斜晶ジルコニアナノ結晶を用いる以外は実施例5と同様の操作を行うことによって、ラウリン酸残基(C1123COO−基:ラウロイルオキシ基)で表面修飾された単斜晶ジルコニアナノ結晶を合成した。生成物はトルエンに良好に均一分散した。ICP−AESを用いた元素分析によりZr/Sの組成比を測定したところ、原料はZr/S=4.00[mol比]、生成物はZr/S=133[mol比]であった。硫黄がほぼ消失していることから、ジルコニアナノ結晶粒子表面の表面修飾子がPTSHからラウリン酸残基(C1123COO−基)に置換されたことが確認された。また、ラウリン酸残基(C1123COO−基)がナノ結晶粒子表面を表面修飾していることは、IR測定により確認した。さらに、XRD、およびTEMの観察により、ジルコニアナノ結晶の部分が実施例4で得られたナノ結晶から変化していない(結晶形が単斜晶酸化ジルコニウム結晶であること、直径3〜4nmの微結晶であること)を確認した。
実施例10 表面修飾ジルコニアナノ結晶粒子の多段階修飾子置換(PTSH→2−エチルヘキサン酸残基→4−ヒドロキシフェニル酢酸残基の例)
ラウリン酸の代わりに2−エチルヘキサン酸(CH(CHCH(C)COOH、関東化学製)144mg(1mmol)を用いる以外は実施例5(ラウリン酸への変換手法)と同様の操作を行うことによって、2−エチルヘキサン酸残基で修飾されたジルコニアナノ結晶を合成した。ICP−AESを用いた元素分析により硫黄がほぼ消失していることから、ジルコニアナノ結晶粒子表面の表面修飾子がPTSHから2−エチルヘキサン酸残基に置換されたことが確認された。また、2−エチルヘキサン酸残基(CH(CHCH(C)COO−基)がナノ結晶粒子表面を表面修飾していることはIR測定により確認した。さらに、XRD、およびTEMの観察により、ジルコニアナノ結晶の部分は実施例1で得られたナノ結晶から変化していない(結晶形が正方晶酸化ジルコニウム結晶であること、直径2〜3nmの微結晶であること)を確認した。
得られた生成物を50mlなす型フラスコに入れ、トルエン5mlと1−ブタノール(関東化学製)5mlを加えて均一分散溶液を調製した。この分散液に4−ヒドロキシフェニル酢酸(OH(C)CHCOOH、東京化成工業製)761mg(5mmol)加え、ジムロー冷却管を装着後、油浴を用いて1時間加熱還流することで2−エチルヘキサン酸残基(CH(CHCH(C)COO−基)から4−ヒドロキシフェニル酢酸残基(OH(C)CHCOO−基)に表面修飾子が入れ替わったジルコニアナノ結晶の白色の沈殿物が発生した。溶媒をエバポレータにて乾涸し、ヘキサン25ml加えて遠心分離にて固形物を分取した。固形物にエタノール2mlを加えると無色透明の分散溶液が得られた。ヘキサン添加・遠心分離による固形物分取・エタノール分散を3回繰り返すことで、4−ヒドロキシフェニル酢酸残基修飾ジルコニアナノ結晶の精製を行った。4−ヒドロキシフェニル酢酸がナノ結晶粒子表面を表面修飾していることは、IR測定により確認した。さらに、XRD、およびTEMの観察により、ジルコニアナノ結晶の部分は原料2−エチルヘキサン酸残基修飾ジルコニアナノ結晶から変化していない(結晶形が正方晶酸化ジルコニウム結晶であること、直径2〜3nmの微結晶であること)を確認した。
本発明によれば、本実施例のように極性の高い官能基を有する弱酸残基を用いても、ナノ粒子表面へ導入可能であり、塩交換反応を多段階で行うことで精製工程を簡便化することができる。
実施例11 表面修飾ジルコニアナノ結晶粒子の修飾子置換(PTSH→2−ドデシルりん酸残基の例)
ラウリン酸の代わりにドデシルりん酸(C1225PO(OH)、ワコーケミカル製)266mg(1mmol)を用い、炭酸ナトリウムの代わりに水酸化ナトリウム(和光純薬製)の1モル/Lメタノール溶液2mlを用いる以外は実施例5(ラウリン酸への変換手法)と同様の操作を行うことによって、ドデシルりん酸修飾ジルコニアナノ結晶を合成した。ICP−AESを用いた元素分析によりZr/Sの組成比を測定したところ、原料はZr/S=4.06[mol比]、生成物はZr/S=215[mol比]であった。硫黄がほぼ消失していることから、ジルコニアナノ結晶粒子表面の表面修飾子がPTSHからドデシルりん酸残基(C1225PO(OH)O−基)に置換されたことが確認された。また、ドデシルりん酸がナノ結晶粒子表面を表面修飾していることは、IR測定により確認した。さらに、XRD、およびTEMの観察により、ジルコニアナノ結晶の部分はは実施例1で得られたナノ結晶から変化していない(結晶形が正方晶酸化ジルコニウム結晶であること、直径2〜3nmの微結晶であること)を確認した。
実施例12 表面修飾ジルコニアナノ結晶粒子の修飾子置換(PTSH→リン酸モノドデシル残基の例)
ラウリン酸と炭酸ナトリウムの代わりにリン酸モノドデシルナトリウム(CH(CH11OPO(OH)ONa、東京化成製)288mg(約1mmol)を用いる以外は実施例5と同様の操作を行うことによって、リン酸モノドデシル修飾ジルコニアナノ結晶を合成した。ICP−AESを用いた元素分析により硫黄がほぼ消失していることから、ジルコニアナノ結晶粒子表面の表面修飾子がPTSHからリン酸モノドデシル残基に置換されたことが確認された。また、リン酸モノドデシル残基(CH(CH11OPO(OH)O−基)がナノ結晶粒子表面を表面修飾していることはIR測定により確認した。さらに、XRD、およびTEMの観察により、ジルコニアナノ結晶の部分は実施例1で得られたナノ結晶から変化していない(結晶形が正方晶酸化ジルコニウム結晶であること、直径2〜3nmの微結晶であること)を確認した。
実施例13 表面修飾ジルコニアナノ結晶粒子の修飾子置換(PTSH→リン酸ビス(2−エチルヘキシル)残基の例)
ラウリン酸の代わりにリン酸水素ビス(2−エチルヘキシル)((C172POOH、東京化成製)329μl(1mmol)を用いる以外は実施例5と同様の操作を行うことによって、リン酸ビス(2−エチルヘキシル)修飾ジルコニアナノ結晶を合成した。ICP−AESを用いた元素分析により硫黄がほぼ消失していることから、ジルコニアナノ結晶粒子表面の表面修飾子がPTSHからリン酸ビス(2−エチルヘキシル)残基に置換されたことが確認された。また、リン酸ビス(2−エチルヘキシル)残基((C172POO−基)がナノ結晶粒子表面を表面修飾していることはIR測定により確認した。さらに、XRD、およびTEMの観察により、ジルコニアナノ結晶の部分は実施例1で得られたナノ結晶から変化していない(結晶形が正方晶酸化ジルコニウム結晶であること、直径2〜3nmの微結晶であること)を確認した。
実施例14 表面修飾ジルコニアナノ結晶粒子の修飾子置換(PTSH→4−ブチルフェノール残基の例)
ドデシルりん酸の代わりに4−ブチルフェノール(C1013OH、東京化成製)150mg(1mmol)を用いる以外は実施例11(ドデシルりん酸の例)と同様の操作を行うことによって、4−ブチルフェノール修飾ジルコニアナノ結晶を合成した。ICP−AESを用いた元素分析によりZr/Sの組成比を測定したところ、原料はZr/S=4.06[mol比]、生成物はZr/S=184[mol比]であった。硫黄がほぼ消失していることから、ジルコニアナノ結晶粒子表面の表面修飾子がPTSHから4−ブチルフェノール残基に置換されたことが確認された。また、4−ブチルフェノール残基(C1013O−基)がナノ結晶粒子表面を表面修飾していることは、IR測定により確認した。さらに、XRD、およびTEMの観察により、ジルコニアナノ結晶の部分はは実施例1で得られたナノ結晶から変化していない(結晶形が正方晶酸化ジルコニウム結晶であること、直径2〜3nmの微結晶であること)を確認した。
実施例15 シリコーン系複合材料の作製
(1)PTSH修飾ジルコニアナノ結晶粒子の表面修飾子置換
実施例1で得たPTSH修飾ジルコニアナノ結晶粒子を、メタノールと塩化メチレン体積比10:3の混合溶媒に再分散させた。この際Zr4mmol当たり、溶媒約10mlとなるように再分散させた。
この再分散液10mlに、ポリジメチルシロキサン単位の平均数が12のポリジメチルシロキサン鎖を有するカルボン酸([化3]式の表面修飾分子で、nの平均が12、m=10の分子を用いた。この分子を、以下「PDMS−カルボン酸」と表記する)を1mmolと、炭酸ナトリウム0.55mmolを加え、室温で一晩攪拌して白濁の反応液を得た。
次いで、この反応液をエバポレーターにかけた後、メタノールを過剰に添加し、遠心分離を行い、沈殿物を回収した。沈殿はトルエンに良好に分散することが確認された。同様のメタノール洗浄を数回繰り返した。
得られたトルエン分散液を濾過し、炭酸ナトリウムを除去すると、PDMS−カルボニルオキシ基により表面修飾されたジルコニアナノ結晶粒子分散液が得られた。ICP−AESを用いた元素分析によりZr/Sの組成比を測定したところ、原料はZr/S=4.06[mol比]、生成物はZr/S=431[mol比]であった。硫黄がほぼ消失していることから、ジルコニアナノ結晶粒子表面の表面修飾子がPTSHからPDMS−カルボニルオキシ基に置換されたことが確認された。また、PDMS−カルボニルオキシ基がナノ結晶粒子表面を表面修飾していることは、IR測定により確認した。さらに、XRD、およびTEMの観察により、ジルコニアナノ結晶の部分が実施例1で得られたナノ結晶から変化していない(結晶形が正方晶酸化ジルコニウム結晶であること、直径2〜3nmの微結晶であること)を確認した。
また、実施例5に記載の手法により、余剰のポリジメチルシロキサン鎖を有するカルボン酸の回収が可能であった。
(2)シリコーン系複合材料の作製
モメンティブ社製「IVS4312」(LEDエンキャップ材)A、B両成分を等量混合したもの2gに、上記(1)で得られたPDMS−カルボニルオキシ基で表面修飾されたジルコニアナノ結晶粒子のトルエン分散液を、ZrOとして1g加え、よくかき混ぜて混合液を調製した。
次いで、この混合液中の溶媒をエバポレーターによって留去させることにより、粘ちょうな無色透明のZrOナノ結晶粒子含有シリコーン樹脂分散液を得た。次に、このシリコーン樹脂分散液を、オーブン中160℃で12時間加熱処理して硬化させることにより、透明なZrO・シリコーン系複合材料が得られた。この複合材料中のZrO含有量は50質量%であり、該複合材料の屈折率は1.51であった。ジルコニアナノ結晶を加えないで作製したシリコーン樹脂の屈折率は1.41であり、ジルコニアナノ結晶との混合が樹脂屈折率の向上に有効であることが示された。
本発明の表面修飾ジルコニアナノ結晶粒子は、所望の官能基に容易に置換可能な構造を有する表面修飾子を表面に具備しているため、用途目的に応じて必要な表面修飾子が異なる場合、表面修飾子ごとに表面修飾ジルコニアナノ結晶粒子をそれぞれ製造する必要がなく、官能基の置換という簡単な方法で得ることが可能となる。

Claims (9)

  1. スルホン酸よりも弱酸の残基により表面修飾されたジルコニアナノ結晶粒子の製造方法であって、
    有機スルホニルオキシ基が化学結合によりジルコニアナノ粒子の表面に表面修飾されてなるスルホニルオキシ基表面修飾ジルコニアナノ結晶粒子を前記弱酸と強塩基とで構成される塩と反応させて、有機スルホニルオキシ基を前記弱酸の残基で置換することを特徴とする弱酸の残基表面修飾ジルコニアナノ結晶粒子の製造方法。
  2. 弱酸の残基がカルボニルオキシ基であることを特徴とする請求項に記載の弱酸の残基表面修飾ジルコニアナノ結晶粒子の製造方法。
  3. 弱酸の残基が有機ホスホリルオキシ基であることを特徴とする請求項に記載の弱酸の残基表面修飾ジルコニアナノ結晶粒子の製造方法。
  4. 弱酸が有機ホスホン酸または有機ホスフィン酸であることを特徴とする請求項に記載の弱酸の残基表面修飾ジルコニアナノ結晶粒子の製造方法。
  5. 弱酸がリン酸エステルであることを特徴とする請求項に記載のジルコニアナノ結晶粒子の製造方法。
  6. 弱酸の残基がアリールオキシ基であることを特徴とする請求項に記載の弱酸の残基表面修飾ジルコニアナノ結晶粒子の製造方法。
  7. 強塩基が炭酸ナトリウムまたは水酸化ナトリウムであることを特徴とする請求項のいずれか1項に記載の弱酸の残基表面修飾ジルコニアナノ結晶粒子の製造方法。
  8. スルホニルオキシ基表面修飾ジルコニアナノ結晶粒子と前記塩とを反応させる前に、前記スルホニルオキシ基表面修飾ジルコニアナノ結晶粒子と、前記弱酸と、前記強塩基とを混合する工程をさらに含むことを特徴とする請求項のいずれか1項に記載の弱酸の残基表面修飾ジルコニアナノ結晶粒子の製造方法。
  9. 出発材料である前記スルホニルオキシ基表面修飾ジルコニアナノ結晶粒子は、ジルコニア前駆体と、有機スルホン酸とを混合し、加熱、加圧の条件下、それらを反応させることにより得られることを特徴とする請求項のいずれか1項に記載のジルコニアナノ結晶粒子の製造方法。
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