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JP5544836B2 - 表面プラズモン共鳴チップ - Google Patents

表面プラズモン共鳴チップ Download PDF

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Description

本発明は、伝搬型表面プラズモン共鳴を発生させる表面プラズモン共鳴チップに関する。
人体における疾病と人体を構成するタンパク質の変異との間には、高い相関が認められる場合がある。例えば、癌、インフルエンザその他の病気では、病気の進行に伴って体内(血液中など)において特定のタンパク質が増加することが知られている。
従って、特定のタンパク質の状態(特定のタンパク質の有無、量など)を検査することによって疾病の罹患や進行具合についての知見を得ることができる。例えば、腫瘍(癌)の進行に伴って増加する生体分子は腫瘍マーカーと呼ばれ、腫瘍の発生部位に応じてそれぞれ異なる腫瘍マーカーが特定されている。
上記のような腫瘍マーカーを含め、特定のタンパク質の有無や量を簡便かつ高精度に測定する方法として、表面プラズモン共鳴が利用されている。表面プラズモン共鳴(SPR: Surface Plasmon Resonance)とは、金属表面の自由電子と電磁波(光)との相互作用によって生じる共鳴現象である。
図23には、表面プラズモン共鳴を利用して特定のタンパク質を検出するバイオセンサの概念図を示す。
ここで、ここに図23(a)における左下方向から入射光が金属層100に入射し右下方向に反射される場合について考える。図23(a)の金属層100には金属自由電子101が存在する。そうすると、入射光の波長に依存する電磁波が金属自由電子101に作用し、金属自由電子101は振動する。そして、特定の角度と波長において金属自由電子101の運動と入射光の電磁波とが共鳴し、入射光のエネルギーが金属自由電子101の振動運動に遷移し、結果として、図23(b)に実線で示すようにこの波長または角度における反射光強度が減少する。
上記した金属自由電子101の運動と光との共鳴現象において、金属層100の外側には数百nm程度の範囲で電界102が発生する。表面プラズモン共鳴を利用したバイオセンサにおいては、この電界102と、検出ターゲットであるタンパク質103との相互作用により、表面プラズモン共鳴の共鳴周波数が変化することを利用している。
検出のターゲット103を特異的に検出するためには、まず、特異的にターゲットと結合するプローブ104を測定領域に固定化する。その後に所定の速度でターゲットを含む試料の送液を行なってターゲット103を流す。そうすると、金属層100の表面に固定されたプローブ104にターゲット103が特異的に結合し、金属層100の近傍の屈折率が変化する。そして、金属層100の近傍の屈折率がターゲット103の結合により変化することに起因して、図23(b)に破線で示すように、表面プラズモン共鳴の共鳴周波数が変化する。すなわち、図23(b)に示すような反射率が低下する波長(若しくは、入射光の入射角でも同じ)の移動を検知することで、ターゲットの検出を行うことが可能となる。
このような、表面プラズモン共鳴を利用したセンサには、伝搬型表面プラズモン共鳴センサと局在型表面プラズモン共鳴センサとがある。伝搬型表面プラズモン共鳴センサの原
理を図24により簡単に説明する。伝搬型表面プラズモン共鳴センサ110は、図24(a)に示すように、ガラスプリズム111の表面に厚み50nm程度のAu、Ag等の金属膜112を形成したものである。この伝搬型表面プラズモン共鳴センサ110は、ガラスプリズム111側から光を照射し、ガラスプリズム111と金属膜112との界面において光を全反射させる。全反射した光を受光し、光の反射率を測定することによって生体分子等がセンシングされる。
すなわち、この光の入射角θもしくは入射光波長を変化させながら、反射率の測定を行うと、図23(b)に示したように、ある入射角(共鳴入射角)もしくは入射波長で反射率が大きく減衰する。ガラスプリズム111と金属膜112の界面に入射した光が当該界面で全反射するとき、図24(b)に示すように、当該界面で発生するエバネッセント光(近接場光)と金属膜112の表面プラズモン波が相互作用する。ある特定の波長や特定の入射角においては、入射光の波数と自由電子の振動とが共鳴することで、入射光のエネルギーが金属膜112中に吸収され、金属膜112中の自由電子の振動エネルギーに変化する。これにより、光の反射率が著しく低下するのである。
つぎに、図25を用いて、ナノギャップ構造を用いた局在型表面プラズモン共鳴センサについて説明する(特許文献1を参照)。局在型表面プラズモン共鳴センサは、光(電磁波)の交流電界によって図25(a)に示すような複数の溝状の金属ナノ溝構造120中の自由電子が振動し、ある振動数で入射光と自由電子が共鳴して自由電子が光エネルギーを吸収し、共鳴波長で吸光度がピークとなるものである。そして、表面プラズモン共鳴によって発生する自由電子振動は、図25(b)に示すような複数の溝状の金属ナノ溝構造120の局所領域に集中的に定在する。従って、そのセンシング領域は数十nmというように、伝搬型表面プラズモン共鳴センサに比べて非常に小さくなる。
局在型表面プラズモン共鳴センサにおいても、金属ナノ溝構造120の周囲の誘電率(屈折率)の影響を受けるので、金属ナノ溝構造120に予め分散させたプローブ121にターゲット122である何らかの誘電体物質(例えば、抗原)が付着すると、吸光度が変化する。例えば、金属ナノ溝構造120にターゲット122である誘電体物質が付着する前後における吸光度のピーク値における波長を読み取ることにより誘電体物質の付着の有無や付着量を検知できる。
なお、伝搬型表面プラズモン共鳴センサでは、前述のように、金属膜に光を導入するためにプリズムを用いているが、一般的には、金属膜が形成されたガラス基板にプリズムを貼り合わせることで作製することが多かった。そのため、センサの光学系が複雑かつ大型化するおそれがあった。図26には、このような伝搬型表面プラズモン共鳴センサの概略構成を示す。
図26(a)に示すのは、マッチングオイル方式で構成した場合であり、この場合には、ガラスプリズム131にマッチングオイル132を塗布し、その上から金属膜134が形成されたガラス基板133を貼り合わせる方式である。この方式では、マッチングオイル132を塗布したり拭き取ったりする作業が煩雑となり、また、ガラス基板133の貼り合わせの際に、気泡が混入してこの気泡が原因で測定精度が悪化する場合があった。
また、図26(b)に示すのはオプトゲル方式で構成した場合であり、この場合には、ガラスプリズム131にオプトゲル135を塗布しておき、その上から金属膜134が形成されたガラス基板133を貼り合わせて接着する方式である。この方式では、オプトゲル135の汚れや、気泡による測定精度の低下の他、オプトゲル135に対してガラス基板133を押しつける機構が必要となるという煩雑さがあった。
さらに、図26(c)に示すのはガラスプリズム一体方式で構成した場合である。この場合は、ガラスプリズムとガラス基板とを一体化してプリズム兼センサ基板136を構成し、このプリズム兼センサ基板136に金属膜134を形成する。しかしながら、この場合には、センサチップのコストが一般的に高くなってしまう。また、試料の流路等の微細加工を施すことが困難になるなどの不都合があった。
図26(c)に示したガラスプリズム一体方式のチップセットを改良してプラスチックプリズム一体方式のチップセットが考案されている。これが実現できれば、チップコストを格段に低減することができ、さらに、試料の流路などの微細加工を施すことも容易となる。しかしながら、プラスチックプリズム一体方式のチップセットにおいては、偏光性欠陥が生じるためにやはり測定精度が低下するという問題があった。
特開2008−216055号公報 特開2003−121350号公報 特開2009−168469号公報 特開2006−275535号公報 特開2009−85825号公報 特開2007−271597号公報
Kyujung. Kim et al. "Nanowire-based enhancement of localized surface plasmon resonance for highly sensitive detection: a theoretical study", Opt. Exp. vol.14, No.25, 12419(2006) 岡本 隆之、"金属ナノ粒子相互作用およびバイオセンサに関する調査研究"(図2)、プラズモニック研究会、平成14年度科学研究費補助金(基礎研究C)、研究成果報告書、http://www.plasmon.jp/index.html N. Felidj et al. "Controlling the optical response of regular arrays of gold particles for surface-enhanced Raman scattering", Phys. Rev. B 65, 075419(2002)
プラスチックプリズム一体方式のチップセットにおける偏光性欠陥につき、図27を用いて説明する。図27(a)には偏光性欠陥がない場合について、図27(b)には偏光性欠陥がある場合について示す。偏光性欠陥がない場合においては、金属膜142が形成されたプリズム一体型チップセット141への入射光として、金属膜142が形成された表面に垂直(入射面に平行)な偏光(P波)を有する光が入射した場合、当該入射光が金属膜142の形成部分で全反射する際に、最も効率的に金属膜142中の自由電子の運動と共鳴することができ、測定感度を上昇させることが可能である。
一方、図27(b)に示すように、偏光性欠陥がある場合には、例え、入射光としてP波のみを有する光を入射したとしても、プリズム一体型チップセット141の内部で偏光が乱れてしまい、金属膜142が形成された表面に平行(入射面に垂直)な偏光(S波)を含むようになる。このS波が金属膜142の形成部分で全反射をしたとしても、表面プラズモン共鳴を発生させることができない。従って、全体としては表面プラズモン共鳴の発生による反射率の変化の割合が低下し、結果として測定感度が低下してしまう。
本発明は、このような技術的課題に鑑みてなされたものであって、その目的とするとこ
ろは、表面プラズモン共鳴の発生に寄与しない偏光成分が混在している場合でも、より高いS/N比を得ることができる表面プラズモン共鳴チップを提供することにある。
本発明は、金属層が形成されたチップ表面に垂直な方向から見た際に、光の入射面と平行な複数の溝からなる溝構造をセンサ表面に設けることで、入射光のS波成分(光の入射面に対して垂直な電界成分)については、溝の側壁面において局在型表面プラズモン共鳴を発生させることで吸収することとし、また、入射光のP波成分(光の入射面に対して平行な電界成分)によってはナノ溝の影響を受けずに伝搬型表面プラズモン共鳴を発生させることとし、S波とP波が混在するような入射光に対して、センサ感度の低下(S/N比の低下)を防ぐことを最大の特徴とする。
より詳しくは、基板と、前記基板の表面の少なくとも一部を覆うように形成された金属層とを有し、
前記基板の前記金属層が形成された表面とは異なる面から入射され、前記基板を透過した入射光を前記基板における前記金属層が形成された表面で全反射させることで、前記金属中において伝搬型の表面プラズモン共鳴を発生させる、表面プラズモン共鳴チップであって、
前記基板の表面の前記金属層が形成されている部分には、前記表面を金属層側から見た際に、複数の溝からなり、各々の溝が前記入射光の入射面に平行方向に設けられた溝構造を有することを特徴とする。
これによれば、S波が混在するような入射光が入射した場合にも、溝構造においてS波によって表面プラズモン共鳴を発生させ、これによって入射光のS波成分を吸収させることができる。その結果、S波が混在するような入射光が入射した場合にも、センサとしての感度の低下(S/N比の低下)を抑制することができる。また、本発明における溝構造を備えない表面プラズモン共鳴チップにおいては、入射光のS波成分は表面プラズモン共鳴の発生に寄与せず受光部へと到達することにより感度低下の原因となるため、入射光の偏光を充分なP波を含むように調整する必要があったところ、本発明おける表面プラズモン共鳴チップにおいては、そのような偏光の調整が必要なくなり、より簡単な構成でより効率的に、表面プラズモン共鳴を発生させることができる。本発明においては、前記溝構造における各溝の側壁面は、該側壁面を覆う前記金属層による対向面を形成し、該金属層による対向面において局在型の表面プラズモン共鳴を発生させるようにするとよい。
また、本発明においては、前記基板は樹脂により形成されるようにしてもよい。これにより、前記基板上に前記溝構造や、その他の測定のための微細構造をより容易に形成することが可能となる。なお、前記基板を樹脂により形成した場合においては、樹脂中の偏光性欠陥によって入射光の偏光の状態が変化し、S波成分の増加によりS/N比が低下してしまうおそれがあった。これに対し、本発明における前記基板を樹脂にした場合は、S波成分はセンサ上に設けられた溝構造により局在型表面プラズモン共鳴を発生して吸収されるためS/N比の低下を抑制することができる。従って、従来の樹脂部品の欠点を抑えつつ、前記基板上に前記溝構造や、その他の測定のための微細構造をより容易に形成することができるという、樹脂を用いることの利点のみを享受することができる。
また、本発明においては、前記基板における前記金属層が形成された表面と反対側の面には、前記入射光が入射するプリズムが一体的に形成されるようにしてもよい。これにより、センサ全体のコストを低減することができるとともに、プリズムと基板とを貼り合わせる作業を省略でき、さらに、プリズムと基板との貼り合わせ作業の不良による測定精度の低下を抑制することができる。
また、本発明においては、前記基板には、試料を前記金属層上に導くとともに、該金属層上の試料を排出する試料用流路が設けられ、前記溝構造は前記試料用流路の底面に形成されるようにしてもよい。
そうすれば、表面プラズモン共鳴センサを、試料中の特定のタンパク質を検出するようなバイオセンサとして使用する際にも、実験装置を簡略化することができ、実験装置全体のコストを低減することができる。
また、本発明においては、前記溝構造における各々の溝のピッチPが、入射光の波長をλ、金属層を形成する金属の誘電率をεm、試料の誘電率をεsとした場合に、
Figure 0005544836
なる関係式を満たすようにしてもよい。ここで、前述したように、表面プラズモン共鳴は、金属と試料界面における表面プラズモンの波数と金属、試料の誘電率、入射光の波長が特定の分散関係を満たす場合に発生する。このことは、表面プラズモン共鳴の発生効率が、溝構造の溝の幅や深さなどの寸法に大きく影響されることを意味する。しかしながら、発明者の鋭意研究により、溝構造の溝のピッチが上記条件を満たす場合には、溝構造の幅や深さなどの寸法精度が現実的な精度であっても、充分効率よく表面プラズモン共鳴を発生可能であることが分かった。
従って、本発明によれば、表面プラズモン共鳴チップを大量に生産した場合にも、寸法公差の許容値を現実的な値にすることができ、生産性を向上させることができる。
また、本発明においては、前記溝構造における各々の溝のピッチPが、入射光の波長をλ、金属層を形成する金属の誘電率をεm、試料の誘電率をεsとした場合に、
Figure 0005544836

なる関係式を満たすようにしてもよい。
すなわち、発明者の鋭意研究によれば、溝構造の溝のピッチが上記の条件を満たす場合には、特に、溝構造の寸法公差に対する許容範囲が広くなることが分かった。従って、本発明によれば、表面プラズモン共鳴チップを大量に生産した場合にも、寸法公差の許容値をより広くすることができ、生産性をより確実に向上させることができる。
また、本発明においては、前記溝構造における溝の深さが50nm以下としてもよい。発明者の鋭意研究により、溝構造における溝の深さが50nm以下とした場合にも、前述したような、溝構造の寸法公差に対する許容範囲が広くなる領域が存在していることが分かった。従って、前記溝構造における溝の深さが50nm以下とすることで、より確実に、溝構造の寸法公差に対する許容範囲を広くすることができる。また、前記溝構造における溝の深さが50nm以下とすることで、溝構造の形成自体が容易となるので、表面プラ
ズモン共鳴チップの生産性をより確実に向上することができる。
また、本発明においては、前記溝構造における溝のピッチは、入射面に対して垂直な偏光方向の入射光を波長を変えて入射した場合に、反射率の低下ピークが二つ以上の波長において生じるように定めてもよい。
ここで従来は、表面プラズモン共鳴発生の一次モードと二次モードにおいては、バンドギャップが存在するために、一次モード及び二次モードの両方のモードによる表面プラズモン共鳴を発生させることは困難であった。しかしながら、発明者の鋭意研究により、溝構造のピッチを最適化することにより、入射光の波長において、一次モードと二次モードの両方のモードによる表面プラズモン共鳴を発生させることが可能であることが分かった。
なお、入射面に対して垂直な偏光方向の入射光を波長を変えて入射した場合には、一次モードの表面プラズモン共鳴発生による反射率の低下ピークと、二次モードの表面プラズモン共鳴発生による反射率の低下ピークとが別々に現れることがわかっているが、溝構造のピッチを最適化することで、上記二つのピークを入射光の波長付近に近づけることができ、結果として、よりブロードな範囲で表面プラズモン共鳴を発生させることが可能となる。その結果、より確実に、溝構造の寸法公差に対する許容範囲を広くすることができ、表面プラズモン共鳴チップの生産性をより確実に向上することができる。
また、本発明は、上記した表面プラズモン共鳴チップに対して、少なくとも2種類以上の偏光方向の光が混在する入射光を入射することを特徴とする表面プラズモン共鳴センサであってもよい。上記した表面プラズモン共鳴チップでは、入射光の偏光特性に拘らず、P波成分により伝搬型表面プラズモン共鳴を発生させるとともに、S波成分は局在型表面プラズモン共鳴の発生により吸収することができるので、従来は必要であった、偏光成分を一方向に統一するための手段を省略することができる。
また、本発明は、前記基板及び前記プリズムを、樹脂の射出成形によって一体的に成形する成形工程と、前記成形工程の後、前記金属層を形成する金属層形成工程と、を有することを特徴とする表面プラズモン共鳴チップの作製方法であってもよい。この作製方法によれば、より簡単に表面プラズモン共鳴チップを作製することが可能となり、表面プラズモン共鳴チップの生産性をより確実に向上することができる。
本発明によれば、表面プラズモン共鳴チップへの入射光のS波成分によるセンサとしての感度の低下を抑制することができ、よりS/N比の高い表面プラズモン共鳴チップを提供することが可能となる。
本発明の実施例1に係るセンサチップの概略構成について示す図である。 本発明の実施例1に係るナノ溝構造の断面図である。 本発明の実施例1に係るセンサチップの基本的な光学特性を示す図である。 本発明の実施例1に係るセンサチップの評価光学系の概略構成を示す図である。 本発明の実施例1に係るセンサチップの評価光学系で得られた投影板上の像について示す図である。 本発明の実施例1に係るセンサチップの評価光学系で得られた投影板上の像を輝度解析して得られたグラフである。 本発明の実施例1に係るセンサチップの評価光学系で得られた反射光強度を測定した結果である。 本発明の実施例2に係るナノ溝構造の断面図である。 本発明の実施例2に係るナノ溝構造で得られる反射スペクトル及び、特定の波長において溝の幅、深さと反射率との関係を示すマップである。 本発明の実施例2に係るナノ溝構造に関し、特定の入射光波長において溝の幅、深さと反射率との関係を示すマップの例である。 本発明の実施例2に係るナノ溝構造で得られる反射スペクトル及び、特定の波長において溝の幅、深さと反射率との関係を示すマップが、ロバスト性が高い場合にどのようになるかを示す図である。 本発明の実施例2に係るナノ溝構造のピッチを300nmとした場合の、表面プラズモン共鳴についての分散関係を示すグラフである。 本発明の実施例2に係るナノ溝構造のピッチを380nmとした場合の、表面プラズモン共鳴についての分散関係を示すグラフである。 本発明の実施例2に係るナノ溝構造のピッチを380nmとした場合の、反射スペクトルを示すグラフである。 本発明の実施例2に係るナノ溝構造のピッチを360nm、380nmとした場合の、反射スペクトルの測定結果である。 本発明の実施例2に係るナノ溝構造のピッチを300nm、360nm、380nmとした場合の、反射率のマップである。 本発明の実施例2に係るナノ溝構造のピッチを300nm、330nm、360nm、380nmとした場合の、反射スペクトルを示すグラフである。 本発明の実施例2における係数Aとセンサチップの許容作製誤差との関係を示すグラフである。 本発明の実施例3に係るセンサチップの概略図及び、外観写真である。 本発明の実施例3に係るセンサチップにおける試料流路と、試料流路の底面に作製されたナノ溝構造のSEM像である。 本発明の実施例3に係るセンサチップの作製手順を示す図である。 本発明の実施例3に係るセンサチップと従来のセンサチップとの信号品質の比較結果を示す図である。 表面プラズモン共鳴の発生を利用したバイオセンサの原理を説明する図である。 伝搬型表面プラズモン共鳴の発生源理を説明する図である。 局在型表面プラズモン共鳴の発生源理を説明する図である。 伝搬型表面プラズモン共鳴センサの概略構成の例を示す図である。 従来の表面プラズモン共鳴センサの偏光性欠陥の影響について説明する図である。
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を例示的に詳しく説明する。
<実施例1>
本実施例では、本発明の基本構成と原理確認について説明する。本実施例においては、図1に示すようなチップセット1によって原理の確認を行った。このチップセット1においては、基板であるベース2はスライドガラスで形成されている。そして、試料の流入と排出のための微細構造である試料流路3a及び3bをPDMSで形成した流路基板3をベース2に載せて流路を形成している。また、ベース2の流路基板3が載せられる面の反対側の面には、ガラスプリズム4がマッチングオイルを介して接合される。また、ベース2の流路基板3が載せられる面には、透明の樹脂を滴下してモールドでナノ溝構造5が転写されて形成されている。ここで樹脂はUV硬化型のアクリル系樹脂を使用した。また、樹脂上のナノ溝構造5は平行な溝形状であり、断面構造は図1の断面図に示されるとおりで
ある。本実施例ではナノ溝構造5の溝の上には金属膜が形成されている。
図2には、本実施例におけるナノ溝構造5の断面図の詳細を示す。ナノ溝構造5において、溝のピッチは約300nm、溝の幅は約100nm、溝の深さは約70nmとした。また、その上に厚み約40nmの金属膜6を金スパッタにより形成した。この構成において、入射光のうちのP波によって金属膜6において伝搬型表面プラズモン共鳴を発生させるとともに、S波成分をナノ溝構造5における金属膜6と相互作用させ、これにより局在型表面プラズモン共鳴を発生させる。
本実施例の構成によれば、入射光におけるP波の成分により伝搬型表面プラズモン共鳴を発生させるとともに、S波の成分によってナノ溝構造上に表面プラズモン共鳴を発生させることで、S波の成分を吸収することができる。従って、たとえチップセット1中に偏光性欠陥があったとしても、S波成分によるセンサ感度の低下(S/N比の低下)を抑制することができ、より効率よくターゲットの検出を行なうことが可能となる。
次に、上記したようなチップセットの基本的な光学特性を確認した。実際に全反射による表面プラズモン共鳴発生用のチップセットとして用いる場合には、ベース2の裏面側から光を入射するので、ベース2の裏面側から白色光を入射し、その反射スペクトルを分光器によって測定した。
この場合、ナノ溝構造5が形成された表面に垂直(入射面に平行)なP偏光成分はナノ溝構造5における溝の影響を受けないため、ナノ溝構造5が形成された表面に平行(入射面に垂直)なS偏光成分で検証を実施した。その結果を図3のグラフに示す。図3のグラフからも分かるように、570nm付近で反射率が大きく低下する傾向が観察された。これは、裏面側から見た場合のナノ溝構造5の各溝の側面における金属膜との間において局在型表面プラズモン共鳴が発生し、入射光のエネルギーが金属膜内の自由電子の振動へと変換されたことに起因する。
次に、実際に入射光を全反射させた場合について検証を行った。ここでは、上述の検証において比較的吸収の大きな波長に近い波長を有する光源を選択して使用した。図4には、全反射で入射光を入射した検証における評価光学系について示す。光源には594.1nmのレーザー(25LYR173、Melles Griot社)10を使用した。レーザー10から出射した光は、偏光板11を通した後、ビームエクスパンダ12でビーム径を広げて、f=60mmのレンズ14によって集光した。プリズム15上にセンサチップ16を保持し(隙間にはマッチングオイルを塗布した。)集光点がセンサチップ16の表面と一致するようにした。
センサチップ16については、(ア)金膜なし、ナノ溝構造なし、(イ)金膜あり、ナノ溝構造なし、(ウ)金膜あり、ナノ溝構造あり、の3種類のものを準備し、各々のセンサチップ16についての測定結果を比較した。ナノ溝構造ありのセンサチップ16において、ナノ溝は、全反射する入射光の入射面に対して、その長手方向が平行方向となるように設置した。センサチップ16の外側はこのとき空気であるため、センサチップ16で全反射が発生する。全反射後の光はレンズ17によって平行光に戻され、投影板18に照射される。このとき投影板18上の横方向の広がりはセンサチップ16に入射した光のθ方向の情報を意味する。さらに偏光性欠陥を模擬するため、レンズ17の前にアクリル板13を挿入した検証も併せて行った。
図5には、各々の条件で得られた投影板18上の像について示す。図5において一列目はP波のみ入射した場合の像、二列目はS波のみ入射した場合の像、三列目はP波成分とS波成分が入り混じったランダム偏光を入射した場合の像、四列目はランダム偏光を入射
し、且つアクリル板13を光路上に挿入して偏光性欠陥を付加した場合の像である。
図5の上段には、(ア)金膜なし、ナノ溝構造無しの場合の結果を示している。各像の水平方向である角度方向について見ると、四つの列の像の全てについて特に暗いポイントはなく、偏光方向に関係なく、入射した光が全反射して投影板に到達していることが分かる。このことは、P波、S波、ランダム偏光波のいずれを入射しても、さらに偏光性欠陥を付加しても表面プラズモン共鳴の発生がないことを示している。
次に、図5の中段について説明する。この段は、(イ)金膜あり、ナノ溝無しの場合の結果について示す。この場合には、P波を入射の場合に中央付近で一部暗くなるポイントが発生している。これは、この角度において伝搬型表面プラズモン共鳴が発生して反射率が低下していることを示している。S波に関しては、伝搬型表面プラズモン共鳴は発生しないため、暗い部分は無く、ほぼ全反射に近い形で投影されている。ランダム偏光に関しても、特に暗い部分は観察されなかった。この場合はP波+S波であるため伝搬型表面プラズモン共鳴の発生箇所は少しだけ暗くなる筈であるが、今回の評価法では、S波の光に埋もれてしまって観察できなかったと考えられる。このように、ナノ溝構造が無い場合はP波だけを選択して入射しないと伝搬型表面プラズモン共鳴の明確な観察は困難であった。このことは、ナノ溝構造が無い場合はS波の存在により測定のS/N比が低下することを意味している。
次に図5の下段について説明する。この(ウ)金膜あり、ナノ溝構造ありの場合は、まずP波のみを入射した場合は中段と同様に、伝搬型表面プラズモン共鳴の発生が起こっている。また、S波のみ入射した場合は、反射光が殆ど無くなっている。これは、ナノ溝構造によってナノ溝の側壁に対して垂直な成分でもあるS波によって基板の裏面側で局在型表面プラズモン共鳴が発生し、光のエネルギーが自由電子の振動へと移ったためである。このように、センサチップ表面から見て、入射光の入射面(進行方向)と平行なナノ溝構造を設けた場合には、ナノ溝の側壁に対して平行な成分でもあるP波はナノ溝の影響を受けずに通常の全反射による伝搬型表面プラズモン共鳴を発生させるとともに、ナノ溝の側壁に垂直な成分でもあるS波はナノ溝において局在型表面プラズモン共鳴を発生させることで吸収されることが確認された。
また、図5の下段においてランダム偏光の光を入射した場合でもS波だけが吸収されるため、P波による伝搬型表面プラズモン共鳴の発生を観察することができる。つまり本実施例のセンサチップ16を使用することで、偏光板が不要になる。また、図5の下段においてランダム偏光の光に偏光性欠陥を付加した光を入射した場合でもS波だけが吸収されるため、P波による伝搬型表面プラズモン共鳴の発生を観察することができる。従来P波に偏光成分を揃えたあとに光学経路内に偏光性欠陥が存在すると、入射光の一部がS波となってしまって伝搬型表面プラズモン共鳴の発生が阻害される(S/Nが低下する)という課題があったが、本実施例のチップセット16を使用することで、たとえ光学経路内に偏光性欠陥が存在しても通常どおり表面プラズモン共鳴を観察可能である。
上記の方法で取得した画像データを輝度解析してグラフ化したものが図6である。図6(a)は、(イ)金膜ありナノ溝構造なしの場合、図6(b)は、(ウ)金膜ありナノ溝構造ありの場合について示している。図6(c)は、Transfer Matrix Method で求めた
ナノ溝構造がない場合の伝播型表面プラズモン共鳴のシミュレーション結果である。図6(a)においては、P波を入射した場合のみ、伝搬型表面プラズモン共鳴が発生していることが分かる。この結果と図6(c)とを比較しても良好な一致が確認できる。さらに、図6(b)の場合は、S波のみ入射した場合は、全ての入射角度において殆ど反射光がなく、局在型表面プラズモン共鳴が発生していることが分かる。また、P波のみ入射した場合、ランダム光を入射した場合、ランダム光を入射するとともに偏光性欠陥を付加した場
合では伝搬型表面プラズモン共鳴の発生が確認できる。
次に、さらに定量的な解析を行うため、反射光を集光してパワーメータ(1830-C,Newport社製)で計測を行った。その結果を図7に示す。図7に示されるように、まず、(イ)金膜ありナノ溝構造なしの場合については、S波については殆どの光が全反射して検出器に到達している。これはS波では表面プラズモン共鳴が発生しないためである。一方、P波の反射率はS波に比べると約3分の1程度となっている。これはP波を入射した場合、特定の角度で伝搬型表面プラズモン共鳴が発生することで、光のエネルギーが自由電子の運動に遷移するためである。
一方、(ウ)金膜ありナノ溝構造ありの場合、P波の反射率は(イ)の場合と比較しても大差無い(約1.4分の1)が、S波のみを入射した場合については、(イ)の場合の約80分の1に減少している。これはナノ溝構造によってS波のみが選択的に吸収されたためである。このようにセンサチップ表面から見て全反射の入射面に対して平行なナノ溝構造をセンサチップ上に設けることで、S波を選択的に除去することが可能となった。その結果、入射光をP波に揃えるための偏光板が不要となり、例えプリズムや基板において偏光性欠陥があったしても表面プラズモン共鳴を発生可能なチップセットの実現が確認された。
<実施例2>
次に、本発明における実施例2について説明する。実施例1で説明したようなナノ溝構造を有するセンサチップを商品として使用する場合、センサチップのロット品質安定性のため、ナノ溝構造の作製誤差によってS波による表面プラズモン共鳴発生効率が大きく変化しないことが望ましい。つまり、ナノ溝構造の幅や深さが目標値から多少ずれてもS波を効率的に除去できるよう、充分効率的に表面プラズモン共鳴が発生することが望ましい。
これに関し、光学シミュレーションを用いて、ナノ溝構造の形状と反射率との相関を求めた。シミュレーションにはRCWA(Rigorous Coupled Wave Analysis)法を用いた。モデルは図8に示すようにn=1.53の樹脂20上に幅W、高さTの凸形状をピッチP間隔で作製し、その上に50nmの金21を積層したものを用いた。金の上側は水22を想定して屈折率1.33とした。このモデルに対して、樹脂側からS波の偏光を有する光を垂直に入射し、その反射率を求めた。
入射光の波長を変化させて各々の波長についての反射率を求めることで、図9(a)に示すような反射スペクトルを算出した。その後、光源に使用予定の波長(今回は650nm)における反射率を溝の幅W、深さTを変えた場合について各々求め、図9(b)に示すようにマップ化した。このマップにおいては、反射率の低いエリアが広いほど、ナノ溝構造の幅W及び、深さTの許容範囲が広いということになる。
図10には、ピッチを300nmとし、波長が650nmの場合の反射率を溝幅W、溝深さTをパラメータとしてマップ化した結果を示す。図10において縦軸は溝幅W、横軸は溝深さTを示す。図より、例えば、狙いの形状として反射率0.2以下のエリアの中心付近の溝幅Wを120nm、溝深さTを25nmとすると、幅の許容誤差範囲は27nm、深さの許容誤差範囲は3nmということになる。この場合は、特に深さT方向の許容誤差が狭く、原版の形状は少しずれると所望の光学特性が得られない可能性があるということが分かる。
これに対し、図11に示すように、センサチップの形状のロバスト性を高めるためには、反射スペクトルにおいて反射率が低下する領域(ディップ部)の幅をできるだけブロー
ドにすることで、マップにおける反射率の低いエリアが広がり、ナノ溝構造の深さT及び幅Wに関する許容エリアを広くすることができる。その結果、センサチップの形状誤差が生じても、より低い反射率を確保でき、より効率よく表面プラズモン共鳴を発生させることが可能となる。
ここで、表面プラズモン共鳴のモードについて解説する。金属と誘電体(試料)との界面における表面プラズモン共鳴の分散関係は、光の周波数をω、光速をc、金属の誘電率をεm、試料の誘電率をεsとすると、下記の式(3)のように表される。
Figure 0005544836
実際にナノ溝構造のピッチを300nmとした際の回折効果を考慮し、各パラメータに値を入力して計算すると、図12に示すグラフのようになる。ナノ溝構造によって表面プラズモン共鳴が発生しているときには、図12中SPR1次モードとSPR2次モードの折り返し部分でバンドギャップが発生している。そして、ピッチが300nmの場合は、その1次モード側が垂直入射した光と結合することで共鳴が励起される。このとき2次モードは、かなり短波長側にあるため、650nm付での共鳴の発生には寄与しない。
そこで、本実施例においては、ナノ溝構造の形状を適宜調整することで、従来充分に利用できていなかった表面プラズモン共鳴のSPR2次モードをナノ溝構造における表面プラズモン共鳴の発生に寄与させることとした。今回の例では、例えば、ピッチを380nmとすることで、図13に示すように、表面プラズモン共鳴の1次モードと2次モードの折り返しの周波数が入射光の周波数の付近となるようにした。これにより、表面プラズモン共鳴の1次モードと2次モードの間でバンドギャップが発生しても両方のモードが650nm付近に存在するため、ブロードなディップ部を確保することができる。
本実施例において得られる反射スペクトル上には、図14に示すように、二つ以上のディップ部が観測される。あるいは、2つのディップ部が結合してブロードなディップ部が観察される。さらに、この2つ以上のディップ部は、全反射させるべく単一の周波数の入射光を入射する際の光源波長に対して、長波長側と短波長側にそれぞれ一つ以上観察される。理論的には、光の波長をλ、金属の誘電率をεm、試料の誘電率をεsとすると、下記の式(4)が満たされるピッチPのときに、1次モードと2次モードの折り返しの波長が入射光の波長と一致する。
Figure 0005544836
図15には、ナノ溝構造のピッチを380nm及び、360nmとした場合についてシミュレーションを行った結果を示す。図15(a)にはナノ溝構造のピッチを380nmとした場合の結果である。ここでは想定通り、650nmの前後の波長で2つのピーク若しくは2つのピークの結合によるディップのブロード化が確認された。ブロード化したディップ部を見ると、若干650nmよりも長波長側に中心が来ていることが分かる。これは影響の大きい1次モードに引っ張られる形で長波長側にピークが少し偏ったためと考えられる。この影響を考慮して、少しモードの折り返しが650nmより短波長となるよう
に、図15(b)に示すように、ピッチを360nmでも検証した。そうすると、丁度ブロード化したときのディップ部の中心が650nm付近となっていることが分かる。
次に、ピッチ360nmの場合と380nmの場合についてもナノ溝の幅と深さを変えてシミュレーションを行い、波長650nmでの反射率をマップ化した。図16には、ピッチ300nm、360nm、380nmの3つの場合についての反射率のマップを示す。反射率0.2以下を実現するには、ピッチ300nmの場合は、前述のように幅27nm、深さ3nm程度の許容誤差範囲であったが、ピッチ360nmの場合は、幅32nm、深さ10nm程度の許容誤差範囲となった。さらにピッチ380nmの場合は、幅31nm、深さ7.5nm程度の許容誤差範囲であった。このように表面プラズモン共鳴の2次モードを利用してディップ部を複数個もしくはブロード化させることにより、センサチップにおいて許容される作成誤差の範囲が広がり、ロバスト性の高いセンサチップが実現されることが確認された。
各ピッチについて溝幅を変えて試作を行った。実施例1と同様にUV硬化樹脂でナノパターンを作成したあと、金スパッタ(50nm)を実施した。ピッチは300、330、360、380の4種類、ナノ溝深さは30nmと一定で、溝幅は条件を変えて作製した。
次に、実際に作製した各パターンの反射スペクトルを測定した。反射スペクトルの測定結果について図17に示す。図17においては、ピッチ300nm、ピッチ330nm、ピッチ360nm、ピッチ380nmの各パターンにおいて、溝深さは30nmに固定し、溝幅を変化させてスペクトルの変化を観察した。ピッチ300nm及びピッチ330nmの場合は、ディップ部は1つしか存在しないが、ピッチ360nm及びピッチ380nmの場合は、ディップ部は複数あったり、ブロード化していることが分かる。特にピッチ380nmの場合は、650nmの前後にピークが2つ存在しており、設計通りの結果が得られている。このように入射光の波長に合わせて表面プラズモン共鳴における1次、2次モードの両方を利用することにより、ディップ部のブロード化が可能であることが確認された。これによりロバスト性の高いセンサチップが実現可能である。
次に、ナノ溝構造のピッチのロバスト性について、より詳細な条件の検討を行った。表面プラズモン共鳴の1次モードと2次モードの交点となる波長に対する入射波長の係数をAと置き、Aの値とナノ溝構造の作製誤差の許容範囲との関係を求めた。係数Aはナノ溝構造のピッチをP、入射光の波長をλ、金属の誘電率をεm、試料の誘電率をεsとすると、以下の式(5)によって定義される。
Figure 0005544836
検討の結果を図18に示す。図18のグラフの横軸はピッチ及び他のパラメータから算出される係数Aの値、縦軸は許容作成誤差であり、反射率0.2以下を実現できる深さTの範囲ΔTと、溝幅Wの範囲ΔWとを乗じた数値である。この結果より、ピッチPの範囲が0.9≦A≦1.0の範囲であれば、特に許容誤差範囲が広くなることが分かった。これは、2次モードよりも1次モード(ωが低い側)の方の影響をより強く受けるため、あらかじめ少しωが大きい方に1次モードと2次モードの交点を持ってくるために、A=1.0よりも若干小さくしておいた方が良いためと考えられる。さらに0.6≦A≦1.1の範囲以外では作製誤差が非常にシビアになってしまうこともこの結果から明確になった。
<実施例3>
実施例1で示したとおり、ナノ構造を設けることでセンサチップに偏光性欠陥が存在してもS/N比が高い表面プラズモン共鳴測定が可能となった。本実施例では、この特徴を生かして、従来困難であったプリズムが一体化した樹脂の射出成形によるセンサチップの作製を行った。樹脂の射出成形を用いれば、試料の流路も一括で作製することができるために、更にデバイスのローコスト化が可能である。
図19には、試作したセンサチップの概略図及び写真を示す。このセンサチップ31においては、基板であるベース32とプリズム34とが樹脂で一体成形されている。また、ベース32におけるプリズム34と反対側の面には、試料の流入と排出のための微細構造である試料流路33a及び33bと、ナノ溝構造35がやはり一体成形で形成されている。また、ベース32におけるナノ溝構造35を含む領域について、金スパッタ(50nm)が施されている。ナノ溝構造35においては、ピッチ330nm、深さ50nmのナノ溝を試料流路33a、33bの底面に作製し、射出成形によって流路パターンとナノ構造を一括で転写している。図20には、試作したセンサチップにおける試料流路33bと、試料流路33bの底面に作製されたナノ溝構造35のSEM像を示す。図20においては、図20(a)から図20(e)にいくに従って倍率が高くなっている。
次に、図19に示したセンサチップ31の作製プロセスについて図21を用いて説明する。図21(a)は、センサチップ31を作製するためのスタンパ36である。試料流路33a、33bを作製するためのスタンパ36の凸部37の先端には、ナノ溝構造38が形成されている。このスタンパ36を用いて、図21(b)に示すような試料流路33a、33bの底部にナノ溝構造35が配置され、さらにプリズム34が一体化された成形品を一括で射出成形する。通常の射出成形であれば、10秒前後で一つのデバイスを作製でき、従来ガラス製のべース上に別途試料流路を樹脂成形で作製していた手法と比較すると、コストを大幅に低減することが可能である。なお、図21(a)のスタンパ36を用いて、図21(b)に示す成形品を一括で射出成形する工程は、本実施例において成形工程に相当する。
その後、図21(c)に示すように、金スパッタで、ナノ溝構造35及び試料流路33a、33bを含む成形品表面に30〜80nm程度の金属層37を形成することでセンサチップ31が完成する。この工程は本実施例において金属層形成工程に相当する。
次に、実際に作製したセンサチップ31を用いて、表面プラズモン共鳴を利用したバイオセンサとしての性能確認を行った。まず、純水(誘電率=1.33)を10μl/mi
nで送液し、約700sec経過後に100μlの10mMのPBSバッファをインジェクトにより供給した。図22には、本実施例によるセンサチップ31を用いた場合と、従来のナノ溝構造なしの射出成形によるセンサチップを用いた場合の測定結果を比較する。図22(a)は、PBSのバッファをインジェクトした際における共鳴角度を、図22(b)は、PBSのバッファをインジェクトする前の段階における取得信号を拡大した図である。また、図22(c)は、両方のセンサチップにおけるS/N比を比較した図である。
両方のセンサチップにおいて、試料の屈折率変化によって表面プラズモン共鳴が発生する共鳴角度が変化する点が観測されたが、本実施例による結果の方が、変化量が大きく且つノイズが少ないので、結果として高いS/N比が得られていること分かる。このことにより、本実施例によるセンサチップ31によれば、偏光性欠陥によるS/Nの低下が抑制され、より高い測定精度を得られることが明確になった。
1・・・センサチップ
2・・・ベース
3a、3b・・・試料流路
4・・・プリズム
5・・・ナノ溝構造
6・・・金属層
10・・・光源
11・・・偏光板
12・・・ビームエキスパンダ
13・・・アクリル板
14・・・集光レンズ
15・・・プリズム
16・・・センサチップ
17・・・集光レンズ
18・・・投影板

Claims (11)

  1. 基板と、前記基板の表面の少なくとも一部を覆うように形成された金属層とを有し、
    前記基板の前記金属層が形成された表面とは異なる面から入射され、前記基板を透過した入射光を前記基板における前記金属層が形成された表面で全反射させることで、前記金属中において伝搬型の表面プラズモン共鳴を発生させる、表面プラズモン共鳴チップであって、
    前記基板の表面の前記金属層が形成されている部分には、前記表面を金属層側から見た際に、複数の溝からなり、各々の溝が前記入射光の入射面に平行方向に設けられた溝構造を有することを特徴とする表面プラズモン共鳴チップ。
  2. 前記溝構造における各溝の側壁面は、該側壁面を覆う前記金属層による対向面を形成し、該金属層による対向面において局在型の表面プラズモン共鳴を発生させることを特徴とする請求項1に記載の表面プラズモン共鳴チップ。
  3. 前記基板は樹脂により形成されたことを特徴とする請求項1または2に記載の表面プラズモン共鳴チップ。
  4. 前記基板における前記金属層が形成された表面と反対側の面には、前記入射光が入射するプリズムが一体的に形成されたことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の表面プラズモン共鳴チップ。
  5. 前記基板には、
    試料を前記金属層上に導くとともに、該金属層上の試料を排出する試料用流路が設けられ、
    前記溝構造は前記試料用流路の底面に形成されることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の表面プラズモン共鳴チップ。
  6. 前記溝構造における各々の溝のピッチPが、入射光の波長をλ、金属層を形成する金属の誘電率をεm、試料の誘電率をεsとした場合に、
    Figure 0005544836
    なる関係式を満たすことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の表面プラズモン共鳴チップ。
  7. 前記溝構造における各々の溝のピッチPが、入射光の波長をλ、金属層を形成する金属の誘電率をεm、試料の誘電率をεsとした場合に、
    Figure 0005544836
    なる関係式を満たすことを特徴とする請求項6に記載の表面プラズモン共鳴チップ。
  8. 前記溝構造における溝の深さが50nm以下であることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の表面プラズモン共鳴チップ。
  9. 前記溝構造における溝のピッチは、入射面に対して垂直な偏光方向の入射光を波長を変えて入射した場合に、反射率の低下ピークが二つ以上の波長において生じるように定められたことを特徴とする請求項6または7に記載の表面プラズモン共鳴チップ。
  10. 請求項1から9のいずれか一項に記載の表面プラズモン共鳴チップに対して、少なくとも2種類以上の偏光方向の光が混在する入射光を入射することを特徴とする表面プラズモン共鳴センサ。
  11. 前記基板及び前記プリズムを、樹脂の射出成形によって一体的に成形する成形工程と、
    前記成形工程の後、前記金属層を形成する金属層形成工程と、を有することを特徴とする請求項4に記載の表面プラズモン共鳴チップの作製方法。
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