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JP5539700B2 - リコート方法及び複層塗膜 - Google Patents

リコート方法及び複層塗膜 Download PDF

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JP5539700B2 JP2009266084A JP2009266084A JP5539700B2 JP 5539700 B2 JP5539700 B2 JP 5539700B2 JP 2009266084 A JP2009266084 A JP 2009266084A JP 2009266084 A JP2009266084 A JP 2009266084A JP 5539700 B2 JP5539700 B2 JP 5539700B2
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Description

本発明はリコート方法及び複層塗膜に関する。
近年、建物外装に被覆することで、太陽光の照射により親水化して降雨によるセルフクリーニング機能を有する材料として光触媒材料が注目されている。また、光触媒材料は、NOx等の有害ガスを除去する環境上好ましい材料としても注目されている。
なかでも、作業環境、周辺への影響、臭いなどの観点から、最近では溶剤系塗料よりも水系塗料(水性塗料)を用いる傾向が高まりつつある。そのため、上記建物外装等に塗布するための光触媒の水性コート剤も提案されている。
光触媒とパーフルオロコポリマーをエマルジョンの状態で配合する塗料組成物が開示されており(特許文献1参照)、光触媒とフルオロ基が含有されているシリコーンエマルジョンのコーティング組成物が提案されている(特許文献2参照)。
しかしながら、特許文献1や特許文献2に記載の水性塗料は、屋外での使用を想定した場合、塗装直後の水との接触角が大きく、降雨によるセルフクリーニング機能を使用直後から享受することができなかった。特に、太陽光が当たり難い部分は十分なセルフクリーニング性が得られなかった。
そこで、塗装直後から水との接触角が小さく、降雨によるセルフクリーニング機能を使用直後から享受することができる例として、特許文献3が開示されている。
このような光触媒は、紫外線が当たると汚れ以外にほとんどすべての有機物を分解してしまう。そのため、プラスチックなどの有機基材や、有機塗料を塗装した基材の表面に光触媒塗料を塗装した場合、有機基材や基材表面の有機塗料を分解してしまい、その結果、光触媒塗料を用いた商品の寿命が非常に短くなるという問題があり、の問題を解消することが必須となっている。そのための代表的な方法として、光触媒塗料を塗装する前に、光触媒によって分解されない成分で構成される保護層を基材に形成し、その上に光触媒塗料を塗装する方法が知られている(特許文献4参照)。
特許文献4に開示されるような保護層を使用する方法においては、保護層及び光触媒塗膜が透明であるため、基材の意匠を損なうことなく光触媒機能を基材に付与できる利点が挙げられるが、この方法は保護層形成作業及びその材料に多くのコストと時間を必要とする。また、保護層の硬化の程度によって、光触媒層の性能(密着性、分解性等)が大きく左右されてしまうことがあり、塗装が難しいという問題点もある。特に、既存の建築物に現場で塗装しようとする場合においては、保護層を塗装した後に、光触媒塗料を塗装するまでに必要とする時間間隔が気温や湿度によって影響を受けやすいという問題がある。
さらに、これらの課題を解決することを意図した保護層を不要とする技術も検討されている(特許文献5参照)。
特開平10−195369号公報 特開平10−279886号公報 特開2003−170516号公報 特許第2756474号公報 国際公開第2007/069596号
ところで、一般的に経年により塗膜に外観不良が生じた場合、その上から塗料を塗り重ねること、すなわちリコートにより新たな塗膜を設けて外観を改善することが行われている。光触媒塗膜の上に塗料を塗布する場合、光を透過しない塗料を用いれば光触媒活性による新たな塗膜の劣化が起こらないと考えられている。ところが実際には、塗装不良その他の要因によるクラックの発生により、光触媒活性に起因する新たな塗膜の劣化が生じ外観不良が容易に発生するため、その解決が求められている。
本発明は、上記事情にかんがみてなされたものであり、優れた光触媒活性を有する光触媒塗膜上に塗料を塗布して新たな塗膜を設けた場合に、その新たな塗膜の劣化を抑制できるリコート方法及び複層塗膜を提供することを目的とする。
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は下記のとおりである。
[1]光触媒粒子としてのルチル型酸化チタン粒子とバインダーとを含む光触媒塗膜上に非透明塗料を塗布して非透明被膜を形成する工程を有するリコート方法。
[2]前記非透明被膜上に更に光触媒塗料を塗布する工程を有する、[1]記載のリコート方法。
[3]基材上に設けられた複層塗膜であって、光触媒粒子としてのルチル型酸化チタン粒子とバインダーとを含む光触媒塗膜と、その光触媒塗膜上に形成された非透明被膜と、を備える複層塗膜。
[4]前記非透明被膜上に形成された別の光触媒塗膜を更に備える、[3]記載の複層塗膜。
本発明によれば、優れた光触媒活性を有する光触媒塗膜の上から塗料を塗布して新たな塗膜を設けた場合に、その新たな塗膜の劣化を抑制できるリコート方法及び複層塗膜を提供することができる。
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。ただし、本発明は下記本実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。また、本明細書における「(メタ)アクリル」とは「アクリル」及びそれに対応する「メタクリル」を意味し、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート」及びそれに対応する「メタクリレート」を意味し、「(メタ)アクリロ」とは「アクリロ」及びそれに対応する「メタクリロ」を意味し、「(メタ)アクリロイル」とは「アクリロイル」及びそれに対応する「メタクリロイル」を意味する。
本実施形態のリコート方法は、光触媒粒子としてのルチル型酸化チタン粒子とバインダーとを含む光触媒塗膜(以下、この光触媒塗膜を「第1の光触媒塗膜」という場合もある。)上に非透明塗料を塗布して非透明被膜を形成する工程を有するものである。また、本実施形態の複層塗膜は、基材上に設けられた複層塗膜であって、光触媒粒子としてのルチル型酸化チタン粒子とバインダーとを含む光触媒塗膜と、その光触媒塗膜上に形成された非透明被膜とを備えるものである。
(光触媒塗膜)
光触媒塗膜は、光触媒粒子としてのルチル型酸化チタンとバインダーとを含有する。
<光触媒粒子>
光触媒粒子における光触媒の中で、TiO2(酸化チタン)は無害であり、化学的安定性にも優れるため一般的に用いられている化合物である。酸化チタンの中でもルチル型酸化チタンは、光触媒活性を制御することが特に容易であるため、光触媒塗膜上に形成された非透明被膜の劣化を抑制することが可能となる。かかる酸化チタンは、酸化チタンゾル(光触媒ゾル)の状態であってもよい。酸化チタンゾルは公知の方法で製造することができ、あるいは市販のものを入手してもよい。
光触媒粒子は、透明性の観点から、その数平均粒子径が1〜100nmであると好ましく、1〜50nmであるとより好ましい。数平均粒子径は、実施例に記載の方法に準じて測定される。
光触媒粒子は、その表面を膜で被覆することにより、更に光触媒活性を制御できる(以下、これにより得られるものを「被覆光触媒粒子」という。)。被覆に用いる膜を構成する材料としては、例えば、シリカ、アルミナ、アモルファスチタン、ジルコニア、カルシウム、マグネシウム等の光触媒活性を有しない無機物が挙げられ、これらが好適である。これらの中でも、シリカは、それを含む膜により光触媒粒子を被覆して得られる被覆光触媒粒子の安定性、安全性の面から好ましい。
被覆光触媒粒子は、被覆する膜の被覆量により光触媒活性の制御することが可能である。被覆光触媒粒子は、例えば、光触媒粒子を、ケイ酸ナトリウム、水酸化アルミニウム等と反応させることにより得られる。実用的には、光触媒粒子の質量100質量部に対して膜の被覆量を0.1質量部以上とすることが好ましく、その上限は50質量部であると好ましい。
光触媒塗膜における光触媒粒子(膜で被覆されている場合は被覆光触媒粒子)の配合量は、要求される光触媒活性の強さにより任意に調整することができるが、光触媒塗膜全体に対し、0.1質量%〜50質量%であることが好ましく、1質量%〜30質量%であることがより好ましい。光触媒塗膜は、光触媒粒子の配合量を多くすると、より高い光触媒活性を発現し、光触媒粒子の配合量を少なくすると、その上に形成される非透明被膜に対してより高い耐候性を付与し、その劣化をより抑制できる。
光触媒粒子の膜被覆による活性制御と、配合量の調整とを行うことにより、光触媒塗膜の活性を任意に制御することが可能となる。
<バインダー>
バインダーとしては、種々の公知のものを用いることが可能であるが、重合体エマルジョン粒子の分散体が好ましい。重合体エマルジョン粒子の分散体としては、種々公知のものを用いることが可能である。例えば、アクリルエマルジョン、スチレン−ブタジエンエマルジョン、アクリルシリコンエマルジョン、シリコーンエマルジョン、PTFEエマルジョン等の重合体エマルジョン粒子の分散体が挙げられる。
上記重合体エマルジョン粒子は、所定の単量体の乳化重合等の方法により得られる。
重合体エマルジョン粒子を構成するポリマーとしては、水性媒体中でのラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合などによって得られる従来公知のポリ(メタ)アクリレート系、ポリビニルアセテート系、酢酸ビニル−アクリル系、エチレン酢酸ビニル系、シリコーン系、ポリブタジエン系、スチレンブタジエン系、NBR系、ポリ塩化ビニル系、塩素化ポリプロピレン系、ポリエチレン系、ポリスチレン系、塩化ビニリデン系、ポリスチレン−(メタ)アクリレート系、スチレン−無水マレイン酸系に代表される単重合体又は共重合体、シリコーン変性アクリル系、フッ素−アクリル系、アクリル−シリコーン系、エポキシ−アクリル系に代表される変性共重合体が挙げられる。
これらは、水分散体の状態にあり、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。その好ましい例としては、アクリル樹脂エマルジョン、アクリル−シリコーン樹脂エマルジョンが挙げられる。
上記重合体エマルジョン粒子として、特に、水及び乳化剤の存在下で、加水分解性珪素化合物とビニル単量体とを重合して得られる、粒子径(数平均粒子径)が10〜800nmである重合体エマルジョン粒子を用いると、得られる光触媒塗膜は、耐候性、透明性、柔軟性が高くなり好ましい。
また、重合体エマルジョン粒子中の、加水分解性珪素化合物の配合量が、加水分解縮重合化合物として10質量%以上であると、光触媒塗膜の耐候性が向上するので好ましく、より好ましくは20質量%以上であり、更に好ましくは30質量%以上である。
上記重合体エマルジョン粒子を製造するために用いる上記加水分解性珪素化合物としては、下記一般式(1)で表される化合物やその縮合生成物、シランカップリング剤を例示することができる。
SiWxy ・・・(1)
ここで、式(1)中、Wは、炭素数1〜20のアルコキシ基、水酸基、炭素数1〜20のアセトキシ基、ハロゲン原子、水素原子、炭素数1〜20のオキシム基、エノキシ基、アミノキシ基、アミド基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を示す。また、Rは、直鎖状又は分岐状の炭素数が1〜30個のアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、及び置換されていないか又は炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基若しくはハロゲン原子で置換されている炭素数6〜20のアリール基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を示す。xは1以上4以下の整数であり、yは0以上3以下の整数である。また、x+y=4である。
上記シランカップリング剤とは、ビニル重合性基、エポキシ基、アミノ基、メタクリル基、メルカプト基、イソシアネート基等の有機物と反応性を有する官能基が分子内に存在する、加水分解性珪素化合物を表す。
上記加水分解性珪素化合物のうち、上記式(1)で表される化合物の一態様である珪素アルコキシド及びシランカップリング剤の具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン等のテトラアルコキシシラン類;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−ペンチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘプチルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフロロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフロロプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−ヒドロキシエチルトリメトキシシラン、2−ヒドロキシエチルトリエトキシシラン、2−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、2−ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアナートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナートプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリn−プロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリイソプロポキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のトリアルコキシシラン類;ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルジエトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジイソプロピルジエトキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジエトキシシラン、ジ−n−ペンチルジメトキシシラン、ジ−n−ペンチルジエトキシシラン、ジ−n−ヘキシルジメトキシシラン、ジ−n−ヘキシルジエトキシシラン、ジ−n−ヘプチルジメトキシシラン、ジ−n−ヘプチルジエトキシシラン、ジ−n−オクチルジメトキシシラン、ジ−n−オクチルジエトキシシラン、ジ−n−シクロヘキシルジメトキシシラン、ジ−n−シクロヘキシルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン等のジアルコキシシラン類;トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン等のモノアルコキシシラン類が挙げられる。
これらの珪素アルコキシドやシランカップリング剤は、1種を単独で又は2種以上を混合して用いられる。
上記珪素アルコキシドやシランカップリング剤が縮合生成物として使用されるとき、この縮合生成物のポリスチレン換算の重量平均分子量は、好ましくは200〜5000、より好ましくは300〜1000である。ポリスチレン換算重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定できる。
上記珪素アルコキシドの中では、フェニル基を有する珪素アルコキシド、例えばフェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン及びジフェニルジメトキシシランが、水及び乳化剤の存在下における重合安定性に優れているため好ましい。
上記加水分解性珪素化合物の中で、3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリn−プロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、2−トリメトキシシリルエチルビニルエーテル等のビニル重合性基を有するシランカップリング剤や、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のチオール基を有するシランカップリング剤は、ビニル単量体との共重合又は連鎖移動反応により化学結合を生成することが可能である。
このため、ビニル重合性基やチオール基を有するシランカップリング剤を、単独で又は上述した珪素アルコキシド、上記以外のシランカップリング剤、及びそれらの縮合生成物と混合若しくは複合化させて用い、更にビニル単量体の重合生成物を用いると、加水分解性珪素化合物の重合生成物とビニル単量体との重合生成物を化学結合により複合化できる。
バインダーとしてこのような重合体エマルジョン粒子を含有する光触媒塗膜は、耐候性、耐薬品性、光学特性、強度等に優れているため、非常に好ましい。
上記重合体エマルジョン粒子を製造するために用いる上記ビニル単量体としては、下記のようなものが挙げられる。すなわち、例えば、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル類の他、カルボキシル基含有ビニル単量体、水酸基含有ビニル系単量体、エポキシ基(グリシジル基)含有ビニル単量体、カルボニル基含有ビニル単量体、アニオン型ビニル単量体、2級及び/又は3級アミド基を有するビニル単量体のような官能基を含有する単量体が挙げられる。
上記(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、アルキル部分の炭素数が1〜50の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、エチレンオキシド基の数が1〜100個の(ポリ)オキシエチレンジ(メタ)アクリレートが挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ドデシルが挙げられる。(ポリ)オキシエチレンジ(メタ)アクリレートの具体例としては、ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコールが挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステルの使用量は、1種又は2種以上の混合物として、反応系内の全ビニル単量体の合計量に対し好ましくは0〜99.9質量%、より好ましくは1〜90質量%である。
上記カルボキシル基含有ビニル単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、無水マレイン酸、又はイタコン酸、マレイン酸、フマール酸等の2塩基酸のハーフエステルが挙げられる。カルボキシル基含有ビニル単量体を用いることによって、重合体エマルジョン粒子にカルボキシル基を導入することができ、エマルジョンとしての安定性を向上させ、外部からの分散破壊作用に抵抗力を持たせることが可能となる。この際、導入したカルボキシル基は、その一部又は全部を、アンモニアやトリエチルアミン、ジメチルエタノールアミン等のアミン類や、NaOH、KOH等の塩基で中和することもできる。
カルボキシル基含有ビニル単量体は、1種又は2種以上の混合物として用いることができ、その使用量(2種以上用いる場合はその合計)は、反応系内の全ビニル単量体の合計量に対して0〜50質量%であることが、光触媒塗膜の耐水性の観点から好ましい。
上記水酸基含有ビニル単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル、ジ−2−ヒドロキシエチルフマレート、モノ−2−ヒドロキシエチルモノブチルフマレート、アリルアルコール、エチレンオキシド基の数が1〜100個の(ポリ)オキシエチレンモノ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド基の数が1〜100個の(ポリ)オキシプロピレンモノ(メタ)アクリレート、さらには、「プラクセルFM、FAモノマー」(ダイセル化学(株)製カプロラクトン付加モノマーの商品名)や、その他のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステル類が挙げられる。
上記(ポリ)オキシエチレン(メタ)アクリレートとしては、例えば、(メタ)アクリル酸エチレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコールが挙げられる。また、(ポリ)オキシプロピレン(メタ)アクリレートとしては、例えば、(メタ)アクリル酸プロピレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸プロピレングリコール、(メタ)アクリル酸ジプロピレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸ジプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸テトラプロピレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸テトラプロピレングリコールが挙げられる。
上述した水酸基含有ビニル単量体は、1種又は2種以上の混合物として用いることができ、その使用量(2種以上用いる場合はその合計)は、反応系内の全ビニル単量体の合計量に対して、好ましくは0〜80質量%、より好ましくは0.1〜50質量%である。
また、上記エポキシ基含有ビニル単量体としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、アリルジメチルグリシジルエーテルが挙げられる。
エポキシ基含有ビニル単量体や、カルボニル基含有ビニル単量体を使用すると、重合体エマルジョン粒子が反応性を有し、ヒドラジン誘導体やカルボン酸誘導体、イソシアネート誘導体等により架橋させて耐溶剤性等の優れた光触媒塗膜の形成が可能となる。エポキシ基含有ビニル単量体や、カルボニル基含有ビニル単量体の使用量は、反応系内の全ビニル単量体の合計量に対して、好ましくは0〜50質量%である。
上記重合体エマルジョン粒子を製造するために用いる上記ビニル単量体として、2級及び/又は3級アミド基を有するビニル単量体を、少なくとも1種用いることが好ましい。2級及び/又は3級アミド基を有するビニル単量体としては、例えば、N−アルキル又はN−アルキレン置換(メタ)アクリルアミドが挙げられる。具体的には、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−メチル−N−エチルアクリルアミド、N−メチル−N−エチルメタクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−n−プロピルアクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド、N−n−プロピルメタクリルアミド、N−メチル−N−n−プロピルアクリルアミド、N−メチル−N−イソプロピルアクリルアミド、N−アクリロイルピロリジン、N−メタクリロイルピロリジン、N−アクリロイルピペリジン、N−メタクリロイルピペリジン、N−アクリロイルヘキサヒドロアゼピン、N−アクリロイルモルホリン、N−メタクリロイルモルホリン、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、N,N’−メチレンビスメタクリルアミド、N−ビニルアセトアミド、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミドが挙げられる。
上記重合体エマルジョン粒子を製造するために用いる上記ビニル単量体のうち、上述した各種ビニル単量体以外のビニル単量体としては、下記のものが挙げられる。すなわち、例えば、(メタ)アクリルアミド、エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン類;ブタジエン等のジエン類;塩化ビニル、塩化ビニリデンフッ化ビニル、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン等のハロオレフィン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、n−酪酸ビニル、安息香酸ビニル、p−t−ブチル安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニル、2−エチルヘキサン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ラウリン酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル類;酢酸イソプロペニル、プロピオン酸イソプロペニル等のカルボン酸イソプロペニルエステル類;エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等のビニルエーテル類;スチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物;酢酸アリル、安息香酸アリル等のアリルエステル類;アリルエチルエーテル、アリルフェニルエーテル等のアリルエーテル類;(メタ)アクリロニトリル等のシアン化ビニル類;4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、パーフルオロメチル(メタ)アクリレート、パーフルオロプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロプロピロメチル(メタ)アクリレート、ビニルピロリドン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アリルが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本実施形態においては、上記重合体エマルジョン粒子を製造するために用いる上記ビニル単量体の重合生成物の分子量を制御する目的で、連鎖移動剤を使用してもよい。連鎖移動剤としては、例えば、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタンのようなアルキルメルカプタン類;ベンジルメルカプタン、ドデシルベンジルメルカプタンのような芳香族メルカプタン類;チオリンゴ酸のようなチオカルボン酸又はそれらの塩若しくはそれらのアルキルエステル類、又はポリチオール類、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィド、ジ(メチレントリメチロールプロパン)キサントゲンジスルフィド及びチオグリコール、さらにはα−メチルスチレンのダイマー等のアリル化合物が挙げられる。
これら連鎖移動剤の使用量は、反応系内の全ビニル単量体の合計量に対して、好ましくは0.001〜30質量%、より好ましくは0.05〜10質量%である。
上記重合体エマルジョン粒子を製造するのに用いる上記加水分解性珪素化合物としては、ビニル重合性基を有するシランカップリング剤を用いることが耐候性の面から特に好ましい。その配合量は、加水分解性珪素化合物及びビニル単量体の合計量100質量部に対して、0.01質量部以上20質量部以下であることが重合安定性の面から好ましい。より好ましい配合量は、0.1質量部以上10質量部以下である。
上記重合体エマルジョン粒子を製造するのに用いる上記加水分解性珪素化合物として、上述したものに加えて、環状シロキサンオリゴマーを併用することができる。環状シロキサンオリゴマーを併用することにより、柔軟性に優れた光触媒塗膜が得られる。
上記環状シロキサンオリゴマーとしては、下記一般式(2)で表される化合物を例示することができる。
(R’2SiO)m ・・・(2)
ここで、式(2)中、R’は、水素原子、直鎖状又は分岐状の炭素数が1〜30個のアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、及び、置換されていないか又は炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基若しくはハロゲン原子で置換されている炭素数6〜20のアリール基からなる群より選ばれる少なくとも1種を示す。mは整数であり、2≦m≦20である。
上記環状シロキサンオリゴマーの中で、反応性等の点からオクタメチルシクロテトラシロキサン等の環状ジメチルシロキサンオリゴマーが好ましい。
また、上記重合体エマルジョン粒子を製造するのに用いる上記加水分解性珪素化合物と共に、チタンアルコキシド、ジルコニウムアルコキシド、及びそれらの縮合生成物、あるいは、それらのキレート化物を併用することができる。これらの化合物を併用することにより、耐水性、硬度等に優れた光触媒塗膜が得られる。
上記チタンアルコキシドとしては、例えば、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラ−i−プロポキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラ−sec−ブトキシチタン、テトラ−tert−ブトキシチタンが挙げられる。また、上記チタンアルコキシドが縮合生成物として用いられる場合、その縮合生成物のポリスチレン換算の重量平均分子量は、好ましくは200〜5000、より好ましくは300〜1000である。
上記ジルコニウムアルコキシドとしては、例えば、テトラメトキシジルコニウム、テトラエトキシジルコニウム、テトラ−i−プロポキシジルコニウム、テトラ−n−プロポキシジルコニウム、テトラ−n−ブトキシジルコニウム、テトラ−sec−ブトキシジルコニウム、テトラ−tert−ブトキシジルコニウムが挙げられる。また、上記ジルコニウムアルコキシドが縮合生成物として用いられる場合、その縮合生成物のポリスチレン換算の重量平均分子量は、好ましくは200〜5000、より好ましくは300〜1000である。
上述のチタンアルコキシド及びジルコニウムアルコキシドについて、遊離の金属化合物に配位してキレート化物を形成するキレート化剤を併用することもできる。好ましいキレート化剤としては、例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類;アセチルアセトン;アセト酢酸エチルが挙げられ、その好ましい分子量は1万以下である。かかるキレート化剤を用いることにより、加水分解性珪素化合物の重合速度を制御することができ、水及び乳化剤の存在下における重合安定性を更に優れたものにできるため非常に好ましい。この際、キレート化剤は、これを配位させる遊離の金属化合物の金属原子1モル当たり、0.1モル〜2モルの割合で用いると効果が大きく好ましい。
<重合体エマルジョン粒子の製造方法>
重合体エマルジョン粒子の製造方法としては、水及び乳化剤の存在下で、上述した加水分解性珪素化合物及び上述したビニル単量体を乳化重合する方法が好ましい方法として挙げられる。
この際、加水分解性珪素化合物に対するビニル単量体の質量比(ビニル単量体/加水分解性珪素化合物)は、5/95〜95/5であることが好ましく、より好ましくは10/90〜90/10である。
重合体エマルジョン粒子の合成に用いることができる乳化剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルスルホン酸、アルキルスルホコハク酸、ポリオキシエチレンアルキル硫酸、ポリオキシエチレンアルキルアリール硫酸、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテルスルホン酸等の酸性乳化剤;酸性乳化剤のアルカリ金属(Li、Na、K等)塩、酸性乳化剤のアンモニウム塩、脂肪酸石鹸等のアニオン性界面活性剤;例えばアルキルトリメチルアンモニウムブロミド、アルキルピリジニウムブロミド、イミダゾリニウムラウレート等の4級アンモニウム塩;ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩型のカチオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル等のノニオン型界面活性剤、ラジカル重合性の二重結合を有する反応性乳化剤が挙げられる。
上記乳化剤の中で、ラジカル重合性の二重結合を有する反応性乳化剤を選択すると、重合体エマルジョン粒子の水分散安定性が非常に良好になると共に、該重合体エマルジョン粒子を含有する光触媒塗膜が、耐水性、耐薬品性、光学特性、強度等により優れるため、非常に好ましい。
上記ラジカル重合性の二重結合を有する反応性乳化剤としては、例えば、スルホン酸基又はスルホネート基を有するビニル単量体、硫酸エステル基を有するビニル単量体やそれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、ポリオキシエチレン等のノニオン基を有するビニル単量体、4級アンモニウム塩を有するビニル単量体が挙げられる。
上記反応性乳化剤のうち、上記スルホン酸基又はスルホネート基を有するビニル単量体の塩は、例えば、ラジカル重合性の二重結合を有し、かつスルホン酸基のアンモニウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩である基により一部が置換された、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜4のアルキルエーテル基、炭素数2〜4のポリアルキルエーテル基、炭素数6又は10のアリール基及びコハク酸基からなる群より選ばれる置換基を有する化合物であるか、あるいは、スルホン酸基のアンモニウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩である基が結合しているビニル基を有するビニルスルホネート化合物である。
硫酸エステル基を有するビニル単量体としては、例えば、ラジカル重合性の二重結合を有し、かつ硫酸エステル基のアンモニウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩である基により一部が置換された、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜4のアルキルエーテル基、炭素数2〜4のポリアルキルエーテル基及び炭素数6又は10のアリール基からなる群より選ばれる置換基を有する化合物を使用できる。
上記スルホン酸基のアンモニウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩である基により一部が置換されたコハク酸基を有する化合物としては、例えば、アリルスルホコハク酸塩が挙げられる。その具体例として、例えば、エレミノールJS−2(商品名)(三洋化成(株)製)、ラテムルS−120、S−180A又はS−180(商品名)(花王(株)製)が挙げられる。
また、上記スルホン酸基のアンモニウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩である基により一部が置換された、炭素数2〜4のアルキルエーテル基又は炭素数2〜4のポリアルキルエーテル基を有する化合物の具体例としては、アクアロンHS−10又はKH−1025(商品名)(第一工業製薬(株)製)、アデカリアソープSE−1025N又はSR−1025(商品名)(旭電化工業(株)製)が挙げられる。
その他、スルホネート基により一部が置換されたアリール基を有する化合物も使用でき、具体例としては、p−スチレンスルホン酸のアンモニウム塩、ナトリウム塩及びカリウム塩が挙げられる。
上記スルホン酸基のアンモニウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩である基が結合しているビニル基を有するビニルスルホネート化合物としては、例えば、2−スルホエチルアクリレート等のアルキルスルホン酸(メタ)アクリレート、メチルプロパンスルホン酸(メタ)アクリルアミド、アリルスルホン酸等のアンモニウム塩、ナトリウム塩及びカリウム塩が挙げられる。
また、上記硫酸エステル基のアンモニウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩である基により一部が置換された、炭素数2〜4のアルキルエーテル基又は炭素数2〜4のポリアルキエーテル基を有する化合物としては、例えば、スルホネート基により一部が置換されたアルキルエーテル基を有する化合物が挙げられる。
ノニオン基を有するビニル単量体の具体例としては、α−〔1−〔(アリルオキシ)メチル〕−2−(ノニルフェノキシ)エチル〕−ω−ヒドロキシポリオキシエチレン(商品名:アデカリアソープNE−20、NE−30、NE−40等、旭電化工業(株)製)、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル(商品名:アクアロンRN−10、RN−20、RN−30、RN−50等、第一製薬工業(株)製)が挙げられる。
上述の各種乳化剤の使用量は、重合体エマルジョン粒子100質量部に対して、10質量部以下となる範囲が適切であり、0.001〜5質量部となる範囲が好ましい。
また、上記乳化剤以外に、重合体エマルジョン粒子の水分散安定性を向上させる目的で分散安定剤を使用することもできる。分散安定剤としては、例えば、ポリカルボン酸及びスルホン酸塩からなる群より選ばれる各種の水溶性オリゴマー類、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、澱粉、マレイン化ポリブタジエン、マレイン化アルキッド樹脂、ポリアクリル酸(塩)、ポリアクリルアミド、水溶性又は水分散性アクリル樹脂などの合成又は天然の水溶性又は水分散性の各種の水溶性高分子物質が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
上記分散安定剤を使用する場合、その配合量は、加水分解性珪素化合物及びビニル単量体の全量100質量部に対して、10質量部以下が好ましく、0.001〜5質量部の範囲がより好ましい。
加水分解性珪素化合物及びビニル単量体の重合は、重合触媒存在下で実施するのが好ましい。ここで、加水分解性珪素化合物の重合触媒としては、例えば、塩酸、フッ酸等のハロゲン化水素類、酢酸、トリクロル酢酸、トリフルオロ酢酸、乳酸等のカルボン酸類;硫酸、p−トルエンスルホン酸等のスルホン酸類;アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルスルホン酸、アルキルスルホコハク酸、ポリオキシエチレンアルキル硫酸、ポリオキシエチレンアルキルアリール硫酸、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテルスルホン酸等の酸性乳化剤類;酸性又は弱酸性の無機塩、フタル酸、リン酸、硝酸のような酸性化合物類;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラート、酢酸ナトリウム、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルアミン、ジアザビシクロウンデセン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、エタノールアミン類、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)−アミノプロピルトリメトキシシランのような塩基性化合物類;ジブチル錫オクチレート、ジブチル錫ジラウレートのような錫化合物が挙げられる。
上記の中で、加水分解性珪素化合物の重合触媒としては、重合触媒のみならず乳化剤としての作用を有する酸性乳化剤類、特に炭素数が5〜30のアルキルベンゼンスルホン酸(ドデシルベンゼンスルホン酸等)が好ましい。
一方、ビニル単量体の重合触媒としては、熱又は還元性物質などによってラジカル分解してビニル単量体の付加重合を起こさせるラジカル重合触媒が好適であり、例えば、水溶性又は油溶性の過硫酸塩、過酸化物、アゾビス化合物が使用される。より具体的には、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、t−ブチルヒドロパーオキシド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス(2−ジアミノプロパン)ヒドロクロリド、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)が挙げられる。その配合量は、全ビニル単量体100質量部に対して、0.001〜5質量部であると好ましい。
なお、重合速度の促進、及び70℃以下での低温の重合を望む場合、例えば、重亜硫酸ナトリウム、塩化第一鉄、アスコルビン酸塩、ロンガリット等の還元剤をラジカル重合触媒と組み合わせて用いると有利である。
加水分解性珪素化合物及びビニル単量体の重合は、別々に実施することも可能であるが、同時に実施することにより、確実に有機・無機複合化が達成できるので好ましい。
重合体エマルジョン粒子の粒子径(数平均粒子径)は、10〜800nmであることが、透明性の観点から好ましい。なお、重合体エマルジョン粒子の粒子径は、実施例に記載の方法に準じて測定される。
粒子径を上記数値範囲に調整した重合体エマルジョン粒子と、粒子径(数平均粒子径)が100nm以下の後述のコロイダルシリカと、光触媒粒子とを含有する光触媒塗膜は、耐候性、耐薬品性、光学特性、更には防汚性、防曇性、帯電防止性等に特に優れているので好ましい。また、重合体エマルジョン粒子の粒子径は、20〜300nmであると、得られる塗膜の透明性が向上し、より好ましい。
このような粒子径の重合体エマルジョン粒子を得る方法として、乳化剤がミセルを形成するのに十分な量の水の存在下で、加水分解性金属化合物及びビニル単量体を重合する、いわゆる乳化重合が最も適した方法である。
重合体エマルジョン粒子を製造する乳化重合の具体的な方法としては、例えば、加水分解性珪素化合物及びビニル単量体をそのまま、又は乳化した状態で、一括若しくは分割して、又は連続的に反応容器中に滴下し、重合触媒の存在下、好ましくは大気圧から必要により10MPaの圧力下で、約30〜150℃の反応温度で重合させればよい。場合によっては、10MPa以上の圧力で、又は150℃以下の温度条件で重合を行ってもよい。
重合体エマルジョン粒子を製造する際の加水分解性珪素化合物と全ビニル単量体との合計量と、水の量との比率は、最終的に生成する固形分量が0.1〜70質量%、好ましくは1〜55質量%の範囲になるように設定するのが好ましい。
また、乳化重合の際、重合体エマルジョン粒子の粒子径を成長又は制御するために、予め水相中にエマルジョン粒子を存在させて重合させるシード重合法を採用してもよい。重合反応を進行する際の系中のpHは、好ましくは1.0〜10.0、より好ましくは1.0〜6.0の範囲でよい。pHは、燐酸二ナトリウムやボラックス、又は、炭酸水素ナトリウム、アンモニアなどのpH緩衝剤を用いて調節することが可能である。
また、重合体エマルジョン粒子を得る方法として、加水分解性珪素化合物を重合させるのに必要な水及び乳化剤の存在下で、加水分解性珪素化合物及びビニル単量体を、必要により溶剤存在下で重合した後、重合生成物がエマルジョンとなるまで水を添加する手法も適用できる。
本実施形態において、重合体エマルジョン粒子が2層以上の層から形成されるコア/シェル構造を有すると、該重合体エマルジョン粒子を含有する光触媒塗膜が機械的物性(強度と柔軟性のバランス等)に優れるので好ましい。
上記コア/シェル構造の重合体エマルジョン粒子を製造する方法として、多段乳化重合が有用である。ここで、多段乳化重合とは、2種類以上の異なった組成の加水分解性珪素化合物やビニル単量体を調製し、これらを別々の段階に分けて重合することを意味する。
以下に、多段乳化重合の中で最も単純で有用な2段乳化重合による重合体エマルジョン粒子の合成を例に、多段乳化重合による重合体エマルジョン粒子の合成について説明する。2段乳化重合による重合体エマルジョン粒子の合成方法としては、例えば、水及び乳化剤の存在下で、ビニル単量体及び/又は加水分解性珪素化合物を重合して得られるシード粒子の存在下に、加水分解性珪素化合物及び/又はビニル単量体を重合する方法を例示できる。
上記2段乳化重合による重合体エマルジョン粒子の合成は、第1系列(ビニル単量体及び/又は加水分解性珪素化合物)を供給して乳化重合する第1段の重合と、当該第1段の重合に引き続き、第2系列(ビニル単量体及び/又は加水分解性珪素化合物)を供給し、水性媒体中において乳化重合する第2段の重合とからなる、2段階の重合工程を有する。
この際、第1系列中の固形分質量(M1)と第2系列中の固形分質量(M2)との質量比(M1)/(M2)は、好ましくは9/1〜1/9、より好ましくは8/2〜2/8である。
コア/シェル構造の重合体の好ましい特徴としては、第1段の重合で得られたシード粒子の粒子径が、粒径分布(体積平均粒子径/数平均粒子径)の大きな変化なしに(好ましくは単分散の状態で)、第2段の重合によって大きくなる(粒子径の増大)ことが挙げられる。
なお、コア/シェル構造の確認、及び粒径分布の測定は、例えば、透過型電子顕微鏡等による形態観察や粘弾性測定による解析により行うことができる。
3段以上の多段乳化重合を実施する場合は、上述の2段重合による重合体エマルジョン粒子の合成例を参考にして、重合する系列の数を増加させればよい。
重合体エマルジョン粒子の配合量は、成膜性、透明性等の要求物性により任意に変更できるが、光触媒塗膜の全体量に対して、0%超70%以下であることが好ましく、より好ましくは1〜60%であり、更に好ましくは5〜50%である。
<コロイダルシリカ>
光触媒塗膜を形成する光触媒塗料は、コロイダルシリカを含有することが好ましい。光触媒塗膜がコロイダルシリカを含有することにより、その塗膜中に空隙ができ塗膜の比表面積が大きくなるため、光触媒活性を高めることができ、好ましい。
コロイダルシリカは、特に制限はないが、透明性の面から、粒子径(数平均粒子径)が100nm以下であることが好ましく、より好ましくは50nm以下であり、更に好ましくは20nmである。特に粒子径が10nm以下のコロイダルシリカを用いると、得られる光触媒塗膜の透明性を非常に高くすることができ、特に好ましい。コロイダルシリカの粒子径は、透過型電子顕微鏡による観察により測定できる。
コロイダルシリカは、通常水に分散している形態となっているが、親水性有機溶媒に分散しているものも用いることができる。親水性有機溶媒としては、例えば、エチレングリコール、ブチルセロソルブ、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、エタノール、メタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド、ニトロベンゼンが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上の混合物として用いてもよい。
コロイダルシリカは、酸性、中性、アルカリ性のいずれのものであってもよいが、特に、pHが5以下の酸性タイプのものが、配合安定性の観点から好ましい。
コロイダルシリカの具体例として、日産化学工業(株)製のスノーテックスO、OS、OL、OXS、S、N、20、30、20L、OL、C(商品名)が挙げられる。
コロイダルシリカの配合量は、得られる光触媒塗膜の成膜性及び透明性を良好にする観点から、光触媒塗膜の全体量に対し、10〜90質量%であることが好ましく、20〜90質量%であることがより好ましく、30〜90質量%であることが更に好ましい。
<その他の材料>
また、光触媒塗膜は、その用途及び使用方法等に応じて、通常の塗料に添加配合される成分を含有することができる。そのような成分としては、例えば、増粘剤、レベリング剤、チクソ化剤、消泡剤、凍結安定剤、艶消し剤、架橋反応触媒、顔料、硬化触媒、架橋剤、充填剤、皮張り防止剤、分散剤、湿潤剤、光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、レオロジーコントロール剤、消泡剤、成膜助剤、防錆剤、染料、色素、可塑剤、潤滑剤、還元剤、防腐剤、防黴剤、消臭剤、黄変防止剤、静電防止剤又は帯電調整剤が挙げられる。これらの成分をそれぞれの目的に応じて選択し、組み合わせて光触媒塗料に含有させることができる。
また、光触媒塗膜の屈折率を制御する目的で、光触媒塗膜は、屈折率が1.8以上2.8以下の金属酸化物の粒子を含有することができる。このような金属酸化物としては、例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化クロム、酸化カドミウム、酸化鉄、酸化銅が挙げられる。これらのなかでは、特に、酸化ジルコニウムが好ましい。酸化ジルコニウムとしては、例えば、日産化学工業(株)製のナノユースZR−30BF、ZR−30BS、ZR−30BH、ZR−30AH、ZR−30AL、第一希土化学(株)製のZSL−10A、ZSL−10T、ZSL−20Nが挙げられる。これらのなかで、特に、ZR−30BF、ZR−30BSは、光触媒塗膜の透明性、配合安定性の観点から好ましい。
上記金属酸化物は、取り扱い上の観点から、水分散体であることが好ましい。また、上記金属酸化物の粒子径は、光触媒塗膜の透明性の観点から、100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることがより好ましく、30nm以下であることが更に好ましい。
(光触媒塗料及び光触媒塗膜の形成方法)
光触媒塗膜を形成するために用いる光触媒塗料は、上述の光触媒粒子、好ましくは重合体エマルジョン粒子の分散体であるバインダー、及び必要に応じてコロイダルシリカを混合することにより得られる。
このようにして得られた光触媒塗料を、光触媒塗膜を形成すべき基材の表面(例えば建物の壁面など)に塗布して乾燥することにより光触媒塗膜が得られる。本実施形態に係る光触媒塗膜は、下地である基材の意匠性を阻害することなく、しかも、優れた光触媒活性を発現する。
特に光触媒塗膜の光触媒活性は、湿式分解法(JIS R1703−2)による評価値として、5以上20以下であることが好ましい。この活性が5以上であることが、光触媒工業会の認定条件の1つであり、20以下であるとその上に形成される非透明被膜の劣化を抑制する良好な塗膜耐候性を発現するため好ましい。
(リコート方法(複層塗膜の形成方法))
本実施形態のリコート方法は、光触媒粒子としてのルチル型酸化チタン粒子とバインダーとを含む光触媒塗膜上に塗料を塗布して乾燥することにより非透明被膜を形成する工程を有する。これにより、基材上に設けられた複層塗膜であって、光触媒粒子としてのルチル型酸化チタン粒子とバインダーとを含む光触媒塗膜と、その光触媒塗膜上に形成された非透明被膜とを備える複層塗膜が得られる。
一般的に経年により塗膜に外観不良が生じた場合、その上から塗料を塗り重ねることで新たな塗膜(被膜)を設けて外観を改善することが行われている。光触媒塗膜の上に塗料を塗布する場合、光を透過しない塗料を用いれば光触媒活性による新たな塗膜の劣化が起こらないと考えられている。ところが実際には、塗装不良その他の要因によるクラックの発生により、光触媒活性に起因する新たな塗膜の劣化が生じ外観不良が容易に発生する。
一方、本実施形態のリコート方法では、ルチル型酸化チタンを採用したり、光触媒塗膜中の光触媒粒子の含有量を調整したり、光触媒粒子の表面を膜で被覆したりして光触媒活性を制御することにより、その上に形成した非透明被膜を光触媒活性により劣化させることを抑制できる。
光触媒塗膜上への塗布により非透明被膜を形成するのに用いる非透明塗料としては、種々公知のものを用いることが可能である。具体的には、シリコン塗料、アクリル塗料、アクリルシリコン塗料、フッ素系塗料、ウレタン塗料、アクリルウレタン塗料、エポキシ塗料、塩化ビニル塗料、酢酸ビニル塗料、フタル酸塗料、アルキド塗料、シリコンアルキド塗料が挙げられる。これらの中でシリコン塗料、アクリルシリコン塗料及びフッ素塗料は高耐候性であり好ましい。
非透明塗料は、油性及び水性のいずれであってもよく、通常、有機顔料及び/又は無機顔料などの着色成分、並びに溶媒(水、有機溶媒など)を含有しており、エマルジョンの状態であってもよい。非透明塗料を構成する材料としては、例えば、シリコン変性アクリルラテックス(例えば、旭化成ケミカルズ(株)製、商品名「G633」、「G620」)、フッ素塗料(例えば、旭硝子社製、商品名「ルミフロン」)が挙げられる。これら各成分の配合比は、下記濁度の条件を満足するように調整されればよい。
本発明における「非透明塗料」とは、その塗料から得られる塗膜の膜厚を100μmにした場合に、JIS−K7105に定める濁度計により測定した濁度が20%以上である塗料をいう。また、本発明における「非透明塗膜」とは、JIS−K7105に定める濁度計により測定した濁度が20%以上である塗膜をいう。すなわち、非透明被膜の膜厚は、上記濁度が20%以上となるような膜厚であればよく、複層塗膜の意匠性を良好にする観点から調整すればよい。具体的には、その膜厚は1μm以上であると好ましく、10μm以上であるとより好ましい。
本実施形態に係る非透明塗料は、水系、溶剤系及び粉体塗料等、特に制限はないが、臭気、環境負荷及び取り扱い性の面から、水系塗料が好ましい。
また、複層塗膜が光触媒活性を必要とする場合、本実施形態のリコート方法は、所望により、非透明被膜上に更に光触媒塗料を塗布し乾燥することにより上記とは別の光触媒塗膜(以下、この光触媒塗膜を「第2の光触媒塗膜」という場合もある。)を形成する工程を有することも可能である。これにより、複層塗膜は、第1及び第2の光触媒塗膜間に非透明被膜を挟んで備える構成を有する。上記第2の光触媒塗膜を形成する際に用いられる光触媒塗料及び塗布方法、並びに第2の光触媒塗膜の膜厚はそれぞれ、第1の光触媒塗膜と同一であってもよく、あるいは異なっていてもよい。
光触媒塗料及び非透明塗料の塗布方法としては、特に制限はないが、例えばスプレー吹き付け(コーティング)法、フローコーティング法、ロールコート法、刷毛塗り法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、スクリーン印刷法、キャスティング法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法が挙げられる。
上述から明らかなとおり、本実施形態のリコート方法は、上記複層塗膜の製造方法とも言える。
本実施形態のリコート方法は、優れた光触媒活性を有する光触媒塗膜上に塗料を塗布して新たな塗膜を設けた場合にその新たな塗膜の劣化を抑制できる、優れた耐候性、耐薬品性及び耐汚染性を、リコートにより形成した複層塗膜に付与することができる。
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、後述する実施例により制限されるものではない。なお、各種の物性は下記の方法により測定した。
〔数平均粒子径〕
試料中の固形分含有量が1〜20質量%となるよう適宜溶媒を加えて希釈し、湿式粒度分析計(日本国日機装製マイクロトラック、商品名「UPA−9230」)を用いて、数平均粒子径を測定した。
〔光沢〕
塗膜の60°光沢値を、BYK Gardrer製のマイクログロス(商品名)を用いて測定した。
〔耐候性〕
スガ試験器製サンシャインウェザーメーターを用いて、サンシャインカーボンアーク灯式(JIS K5400(1990)に準拠。)促進耐候性試験を行った。ブラックパネル温度を63℃、降雨サイクルを18分/2時間に設定した。
曝露2000時間の促進耐候性試験を行う前後の光沢値を上記〔光沢〕に記載の方法で測定し、試験前の光沢値に対する試験後の光沢値の比を保持率(光沢保持率)として評価した。
〔光触媒活性〕
JIS R1703−2に準拠して、光触媒活性を求めた。
(製造例1)
[重合体エマルジョン粒子の水分散体の合成]
還流冷却器、滴下槽、温度計及び撹拌装置を有する反応器に、イオン交換水500g、ドデシルベンゼンスルホン酸0.5gを投入した後、撹拌下で反応器中の温度が80℃になるまで加温した。
次いで、上記反応器に、アクリル酸ブチル45g、メタクリル酸メチル45g、メチルトリメトキシシラン105g、フェニルトリメトキシシラン85g及び3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン3gの混合液と、イオン交換水200g、反応性乳化剤(商品名「アデカリアソープSR−1025」、旭電化(株)製、固形分25%水溶液)2g、過硫酸アンモニウムの2質量%水溶液80g及びジエチルアクリルアミド10gの混合液とを、反応器中の温度を80℃に保った状態で約2時間かけて同時に滴下した。
続いて、反応器中の温度を80℃に維持した状態で約2時間撹拌を続行した後、室温まで冷却し、100メッシュの金網で反応器中の液を濾過した後、イオン交換水で固形分を10.0質量%に調整し、数平均粒子径130nmの重合体エマルジョン粒子の水分散体を得た。
(製造例2)
[非透明塗料の調製]
シリコン変性アクリルラテックス(商品名「G633」、旭化成ケミカルズ(株)製)250部、エチレングリコールモノブチルエーテル20部、エチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル40部及び酸化チタン(ルチル型、タイペークCR97)130部を配合し、室温で1時間攪拌することで非透明塗料であるアクリルシリコン塗料を得た。この非透明塗料を試料作製用基材の表面に塗布して、70℃で10分間加熱することにより、膜厚100μmの非透明被膜を得た。その非透明被膜について、JIS−K7105に定める濁度計により濁度の測定を試みたが、完全に不透明であるため測定不可能であった。
[実施例1]
固形分10.0質量%に調整したルチル型酸化チタンゾル(酸化チタンの数平均粒子径:12nm)60gに、製造例1で合成した重合体エマルジョン粒子水分散体100g、及び数平均粒子径12nmの水分散コロイダルシリカ(商品名「スノーテックスO」、日産化学工業(株)製、固形分20質量%)80gを混合して光触媒塗料を得た。この光触媒塗料を基材である黒色ガラス板上に、得られる光触媒塗膜の膜厚が1μmになるようにスプレーコーティングし、70℃で10分間加熱して乾燥することで光触媒塗膜を得た。この光触媒塗膜の光触媒活性を測定したところ、活性は5.4であった。
この光触媒塗膜上に、製造例2で調製した非透明塗料を、得られる非透明被膜の膜厚が100μmになるようにスプレーコーティングし、70℃で10分間加熱して乾燥することで非透明被膜を得た。こうして、黒色ガラス板上に光触媒塗膜と非透明被膜とをこの順で備える複層塗膜を得た。この複層塗膜の耐候性をサンシャインウェザーメーターにより評価したところ、光沢保持率は90%となり、良好な結果であった。
[実施例2]
水酸化ナトリウムによりpHを10に調整した1質量%のケイ酸ナトリウム水溶液120g(SiO2として1.2g)に対して、固形分5質量%のルチル型酸化チタンゾル(酸化チタンの数平均粒子径:12nm、TiO2として10g)200gを15分かけて滴下した。得られた分散液を80℃に昇温した後、1%塩酸でそのpHを8に調整し、80℃に維持した状態で120分間熟成した。これを20℃に冷却し、更に塩酸を加えてpHを3に調整した。得られた分散液を限外ろ過することで、その固形分を10質量%に調整した。こうして、被覆光触媒粒子を含むシリカ被覆酸化チタンゾル(酸化チタン100質量部に対するシリカの被覆量:12質量部、数平均粒子径:15nm)を得た。次いで、固形分10.0質量%に調整したそのシリカ被覆酸化チタンゾル60gに、製造例1で合成した重合体エマルジョン粒子水分散体100g、及び数平均粒子径12nmの水分散コロイダルシリカ(商品名「スノーテックスO」、日産化学工業(株)製、固形分20質量%)80gを混合して光触媒塗料を得た。この光触媒塗料を基材である黒色ガラス板上に、得られる光触媒塗膜の膜厚が1μmになるようにスプレーコーティングし、70℃で10分間加熱して乾燥することで光触媒塗膜(第1の光触媒塗膜)を得た。この光触媒塗膜の光触媒活性を測定したところ、活性は5.5であった。
この光触媒塗膜上に、製造例2で調製した非透明塗料を、得られる非透明被膜の膜厚が100μmになるようにスプレーコーティングし、70℃で10分間加熱して乾燥することで非透明被膜を得た。こうして、黒色ガラス板上に光触媒塗膜と非透明被膜とをこの順で備える複層塗膜を得た。この複層塗膜の耐候性をサンシャインウェザーメーターにより評価したところ、光沢保持率は96%となり、良好な結果であった。
[実施例3]
実施例2で得られた複層塗膜における非透明被膜上に、実施例2と同様にして調製した光触媒塗料を、得られる光触媒塗膜(第2の光触媒塗膜)の膜厚が1μmになるようにスプレーコーティングし、70℃で10分間加熱して乾燥することで第2の光触媒塗膜を得た。こうして、黒色ガラス板上に第1の光触媒塗膜と非透明被膜と第2の光触媒塗膜とをこの順で備える複層塗膜を得た。この複層塗膜の光触媒活性を測定したところ、活性は5.7であった。
この複層塗膜の耐候性をサンシャインウェザーメーターにより評価したところ、光沢保持率は92%となり、良好な結果であった。
[比較例1]
ルチル型酸化チタンゾルをアナターゼ型酸化チタンゾル(酸化チタンの数平均粒子径:12nm)に変更した以外は実施例1と同様にして、光触媒塗膜を得た。この光触媒塗膜の光触媒活性を測定したところ、活性は21と非常に高かった。
この光触媒塗膜上に、製造例2で調製した非透明塗料を、得られる非透明被膜の膜厚が100μmになるようにスプレーコーティングし、70℃で10分間加熱して乾燥することで非透明被膜を得た。こうして、黒色ガラス板上に光触媒塗膜と非透明被膜とをこの順で備える複層塗膜を得た。この複層塗膜の耐候性をサンシャインウェザーメーターにより評価したところ、光沢保持率は45%となり、つやびけが見られた。
本発明のリコート方法及び複層塗膜は特に建築外装の用途で利用可能性がある。

Claims (4)

  1. 光触媒粒子としてのルチル型酸化チタン粒子とバインダーとを含む光触媒塗膜上に非透明塗料を塗布して非透明被膜を形成する工程を有するリコート方法。
  2. 前記非透明被膜上に更に光触媒塗料を塗布する工程を有する、請求項1記載のリコート方法。
  3. 基材上に設けられた複層塗膜であって、光触媒粒子としてのルチル型酸化チタン粒子とバインダーとを含む光触媒塗膜と、その光触媒塗膜上に形成された非透明被膜と、を備える複層塗膜。
  4. 前記非透明被膜上に形成された別の光触媒塗膜を更に備える、請求項3記載の複層塗膜。
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