JP5526964B2 - 透明面状発熱積層体 - Google Patents
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Description
[2] 透明基材上に、金属と非金属バインダーを含む透明面状発熱層を積層した透明面状発熱積層体であって、該透明面状発熱層が多孔的金属膜である、透明面状発熱積層体。
[3] 可視光線反射率が10%以上、50%以下である[1]又は[2]に記載の透明面状発熱積層体。
また、透明面状発熱層の形成を湿式製膜法により行うことで、大型曲面を有する透明基材に対しても、面状発熱能及び熱線反射能を付与することができる。
このような機能は、自動車のグレージング、特にバックドアやルーフに好適に用いられる。その他の用途としては、コンビニエンスストアなどに使用される商品のディズプレイを必要とする保冷庫等において、結露により商品の視認性を悪くするなどの課題に対して、結露防止機能を有するショーウィンドウ部材として好適に用いられる。
本発明の透明面状発熱積層体は、通常、本発明の面状発熱層に電気を流すことにより発熱させることができる。
本発明の面状発熱層に通電する方法としては特に制限はないが、通常、本発明の面状発熱層の両端に設置される電極から電圧をかけることにより通電する。
図1は、本発明の透明面状発熱積層体を自動車用リヤウインドーに適用した場合の通電方法の一例を説明する模式的な平面図である。
これらバスバーやヒーター線に電圧を印加する場合、自動車用であれば、その印加電圧は通常12Vもしくは24Vであるが、電気自動車であれば、200Vを超える場合もある。
本発明の透明面状発熱積層体は、面状発熱機能と熱線反射機能とを兼ね備えていることを特徴とする。
以下に、本発明の透明面状発熱積層体の光学特性について説明するが、本発明の趣旨を逸脱しない限り、以下の説明に限定されるものではない。
本発明の透明面状発熱積層体は、可視光線透過率(TVIS)を1%以上透過することを必要とする。特に窓材に用いる場合、可視光線透過率が2%以上、好ましくは5%以上、さらに好ましくは10%以上、殊更好ましくは15%以上である。可視光線透過率がこの下限より低いと、窓材としての視認性に劣る傾向がある。また、可視光線透過率の上限に制限はないが、通常95%以下である。可視光線透過率がこの上限より高いと、実質的に遮熱特性が低くなる傾向がある。
本発明の透明面状発熱積層体の可視光線吸収率(AVIS)は好ましくは90%以下、より好ましくは80%以下、更に好ましくは60%以下である。上記上限よりAVISが高い場合、吸収された可視光により透明面状発熱積層体自体の温度が高くなり、透明基材上の面状発熱層等の膜劣化が促進される可能性がある。また、これらの膜が着色されてしまい、透明面状発熱積層体を構成する際に透明性が低下する傾向がある。
このAVISの下限には特に制限はないが、通常1%以上である。この下限を下回ると、遮熱特性が小さくなる傾向にある。
AVIS=100−TVIS−RVIS
ここでTVISは、分光光度計により測定された分光透過率から、JIS R3106の可視光透過率の算出方法を用いて求められる。
また、RVISは、JIS R3106に基づいて測定される。この場合、透明面状発熱積層体に対して、面状発熱層を含む側から測定光を入射させる。
本発明の透明面状発熱積層体において、上記可視光線反射率(RVIS)は好ましくは1%以上、より好ましくは5%以上、更に好ましくは10%以上、特に好ましくは15%以上、とりわけ好ましくは20%以上である。RVISが低すぎる場合、日射に含まれるエネルギー密度の高い可視光線の反射量が少なくなる。ただし、RVISが過度に大きいと外観がぎらつき好ましくなく、また、可視光線透過率も低下するため視認性が悪化する場合がある。従って、本発明の透明面状発熱積層体のRVISは好ましくは50%以下、より好ましくは45%以下である。
本発明の透明面状発熱積層体の日射吸収率(ASUN)は好ましくは90%以下であり、より好ましくは80%以下、更に好ましくは70%以下である。これよりASUNが高い場合、透明面状発熱積層体の温度が高くなり、劣化が促進される可能性がある。また、後述の樹脂層に対して熱疲労の要因となる可能性、あるいは、樹脂層と面状発熱層や透明基材との熱膨張率差から層間の剥離を起こしやすくなる可能性がある。ASUNの下限については特に制限はないが通常5%以上である。この下限を下回ると、遮熱特性が小さくなる傾向がある。
ASUN=100−TSUN−RSUN
ここでTSUNは、分光光度計により測定された分光透過率から、JIS R3106の日射透過率の算出方法を用いて求められる。
また、RSUNは、JIS R3106に準じて測定される。この場合、透明面状発熱積層体に対して、面状発熱層を含む側から測定光を入射させる。
本発明の透明面状発熱積層体において、上記の日射反射率(RSUN)は好ましくは15%以上、より好ましくは20%以上、更に好ましくは25%以上、特に好ましくは30%以上、とりわけ好ましくは35%以上である。これよりRSUNが低い場合、日射遮蔽性が不十分となる傾向がある。RSUNは、可視光線反射率として50%以下が好ましいことから、通常70%以下である。
本発明の透明面状発熱積層体において、上記の日射透過率(TSUN)は好ましくは70%以下、より好ましくは60%以下、更に好ましくは50%以下、特に好ましくは40%以下である。TSUNが高すぎると熱線遮蔽性が不十分となる場合があり、用途が限定される恐れがある。TSUNの下限については、透明性を高くするため、通常5%以上である。
本発明の透明面状発熱積層体は、相対的に高い熱線反射性を有する。その選択反射性は次式で表される。
選択反射性=RSUN/RVIS
ここで、RSUN及びRVISは既出の日射反射率及び可視光線反射率である。
本発明の透明面状発熱積層体の前記選択反射性は、好ましくは0.9〜3.0、より好ましくは1.0〜2.5、さらに好ましくは1.05以上、さらに好ましくは1.1〜2.0である。選択反射性が小さすぎる場合、可視光線反射率が高くなり、ぎらつきが大きくなる傾向がある。また、大きすぎる場合、可視光線反射の割合が小さくなりすぎ、熱線遮蔽能が小さくなる恐れがある。
<構成材料>
本発明の透明熱線面状発熱積層体に使用することができる透明基材の材料としては、各種樹脂やガラス等を用いることができる。透明基材に使用可能な材料の例としては、ソーダガラスや強化ガラスなどの無機ガラスがコストパフォーマンス、透明性、耐薬品性、擦傷性の観点から窓材に好ましい。
樹脂の種類は熱可塑性樹脂であっても熱硬化性樹脂であってもよいが、リサイクルの観点か特に熱可塑性樹脂よりなることが好ましい。
また、透明基材は、面状発熱層に含まれる金属との密着性の観点、及び後述する面状発熱層の多孔的金属膜を通してその上の樹脂層との密着性の観点から、カルボニル基を有する透明樹脂よりなることが好ましい。
このような特性を好ましく満たす観点から、透明基材の構成材料としては、ポリエステル系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、酢酸セルロース系樹脂が好ましく、とりわけポリカーボネート系樹脂は高い耐衝撃性と透明性を有しており好ましい。
透明基材を構成する上記構成材料には、熱安定剤、紫外吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防カビ剤等、面状発熱層の効果を持続させる目的で各種添加剤を加えてもよい。更に、特定の波長の可視光、近赤外線、赤外線を吸収する色素や顔料等の着色剤や無機酸化物微粒子など、更なる機能付与を目的として各種添加剤を加えてもよい。
透明基材の形態については特に制限は無く、板状、シート状、フィルム状など任意であり、平面状(平板状)であっても曲面を有していてもよい。
透明基材の厚みは、その形態に応じて適宜選択される。板状もしくはシート状の場合、透明基材の厚みは通常0.1mm〜2cmである。透明基材が薄過ぎると得られる積層体の機械的強度が低くなる傾向がある。また、透明基材が厚過ぎると透明性が低くなり、窓等に用いた際に視界が悪くなる場合がある。
透明基材の大きさに特に限定はなく、後述する本発明の透明面状発熱積層体の用途に応じた大きさに合わせて適宜選択される。
透明基材の吸水率は、好ましくは2.0重量%以下であって、より好ましくは1.0重量%以下、特に好ましくは0.5重量%以下である。透明基材の吸水率が高いと金属を含む面状発熱層が酸化もしくは劣化してしまったり、透明基板と金属を含む面状発熱層との層間に水がたまり、水泡を発生させたりする恐れがある。かかる吸水率は以下の方法で測定することができる。
後述する湿式製膜法における面状発熱層形成用塗布液の透明基材に対する接触角(静的接触角)は、透明基材がガラスの場合、好ましくは90°以下、より好ましくは80°以下、さらに好ましくは70°以下、特に好ましくは60゜以下、とりわけ好ましくは50°以下で、好ましくは1°以上、より好ましくは5°以上、更に好ましくは10°以上、とりわけ好ましくは20°以上である。
透明基材が樹脂の場合、該塗布液の基材に対する接触角(静的接触角)は、好ましくは90°以下、より好ましくは85°以下、更に好ましくは70°以下、とりわけ好ましくは60°以下で、好ましくは1°以上、より好ましくは5°以上、更に好ましくは10°以上、とりわけ好ましくは20°以上である。
本発明の透明面状発熱積層体を構成する面状発熱層は、金属と非金属バインダーを含む。
面状発熱層を構成する金属種はAu、Ag、Pd、Pt、Rh、Ru、Cu、Fe、Ni、Co、Sn、Ti、In、Al、Ta、Sbなどが挙げられる。好ましくはAu、Ag、Pd、Cu、より好ましくはAg及び/又はPdから、さらに好ましくはAg(銀)である。これらの金属を単独で用いても、2種以上組み合わせて使用してもよい。またこれらの金属を含む合金であってもよい。
面状発熱層の膜厚は好ましくは5nm以上であり、より好ましくは10nm以上、より好ましくは12nm以上、より好ましくは15nm以上、更に好ましくは20nm以上、とりわけ好ましくは25nm以上であり、また、好ましくは100nm以下、より好ましくは80nm以下、より好ましくは70nm以下、更に好ましくは65nm以下、とりわけ好ましくは60nm以下である。面状発熱層の膜厚が薄過ぎると、通電したときに、導電パスが切れてしまい、面状発熱層として十分に機能できないばかりでなく、十分な熱線反射性能を発揮することができない恐れがある。一方、面状発熱層の膜厚が厚過ぎると、透明性の低下及び/又は可視光線反射率の増加に起因する金属光沢感(いわゆるぎらつき)の増加の問題が生じる恐れがある。
本発明の面状発熱層は、金属と非金属バインダーとで形成される多孔的金属膜であることが好ましい。
即ち、面状発熱層は、電流が流れることにより、発熱するが、このときに多孔構造であることで適度な抵抗値を形成し、目的の発熱量を得ることができる。
面積重み付き平均面積=面積の二乗平均/面積の平均
上記導電パスの直接的指標として、表面抵抗値が挙げられる。本発明の面状発熱層の表面抵抗値は、好ましくは100Ω/□以下、より好ましくは80Ω/□以下、さらに好ましくは50Ω/□以下、特に好ましくは30Ω/□以下、とりわけ好ましくは20Ω/□以下であり、好ましくは0.1Ω/□以上、より好ましくは0.5Ω/□以上、更に好ましくは1Ω/□以上、とりわけ好ましくは2Ω/□以上である。面状発熱層の表面抵抗値が小さ過ぎる場合、十分な発熱が出来ない傾向があり、さらに可視〜赤外領域に渡って反射率が高くなり、ぎらつきの増加及び透明性の低下で、美観を損なう恐れがある。一方、表面抵抗値が大き過ぎると、発熱のために過剰な電圧が必要になるばかりでなく、熱線反射性が劣る場合がある。
本発明の面状発熱層には、耐久性・密着性の向上及び後述する湿式製膜法における塗布性能の観点から、非金属バインダーを含む。
本発明の面状発熱層の非金属バインダーとしては熱可塑性樹脂等のバインダー樹脂が使用できる。
ここでいう電離放射線硬化性樹脂とは、電子線、紫外線により硬化する樹脂のことである。電離放射線硬化樹脂として、分子内に重合性不飽和基を含む重合性モノマーが挙げられる。例えば、上記で示したモノマーを電離放射線硬化性樹脂として用いることができる。
、1,6−ヘキサメチレンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリプロピレンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらのモノマーは単独又は複数のモノマーを混合して用いてもよい。
面状発熱層の耐熱性、耐湿熱性を高める観点では、共有結合による化学的な架橋が形成されていることが好ましい。
また、熱線遮蔽性を高めるという観点では、バインダー樹脂は製膜時にモノマーあるいはオリゴマーを用い、製膜後に硬化させる熱硬化性樹脂又は電離放射線硬化性樹脂が好ましい。
本発明に係るバインダー樹脂は、通常、親水基を有する。
親水性基−CH3(親水基とメチル基を結合させた化合物)と粒子径1〜5μmの銀粒子を混合し、TPD−MS(Temperature Programmed Desorption (or Dicomposition)-MassSpectrometry)で、銀からの親水基−CH3の脱離温度のピークを測定する。
水酸基、アミノ基、アミド基、−NO2基、−CN基、モルホリニル基、エポキシ基、−SH基、オキシエチレン基等のオキシアルキレン基又はポリオキシアルキレン基、カルボキシル基、スルホン酸基、りん酸基、テトラアルキルアンモニウム基
親水性基としては、多くの金属と共有結合を形成するSH基および配位結合を形成するNH2基は、金属粒子を凝集させる恐れがあるので、SH基及びNH2基以外の基であることが好ましい。
また、酢酸ビニルを用いて、バインダー樹脂にアセチル基を導入し、その後、脱保護により、水酸基を導入しても良い。
金属との親和性が高く、均一な膜を作製するという観点から、バインダー樹脂として使用される熱可塑性樹脂、又は熱可塑性樹脂を構成する重合前のモノマーあるいはオリゴマー、電離放射線硬化性樹脂の場合には硬化前のモノマーあるいはオリゴマー、熱硬化性樹脂の場合には硬化前のモノマーあるいはオリゴマーは、水酸基を含有していることが好ましい。
バインダー樹脂は、疎水基を有することが好ましい。疎水基は、面状発熱層の耐久性を向上させる。
上述の、親水基及び疎水基は、直接バインダー樹脂の高分子主鎖に結合されていても良いが、主鎖にリンカー(linker)を介して、結合されていてもよい。
このようなリンカーには、以下の表1に例示したものが挙げられる。また、これらのリンカーは単独で用いても、組み合わせて用いてもかまわない。
バインダー樹脂として用いられる有機高分子の主鎖(骨格)は特に限定されないが、一般的には、炭化水素鎖、パーフルオロアルキル鎖、オキシエチレン鎖、オキシプロピレン鎖、または、ナイロンのようなアミド結合、ウレタン結合の繰り返し単位を主鎖とするものが挙げられ、好ましくは、炭化水素鎖である。
(親水基の割合)
バインダー樹脂を構成する全モノマー構成単位のうちの親水基を有するモノマー構成単位の割合(以下、「親水基含有率」と称す。)は、通常10mol%〜100mol%、好ましくは15mol%〜90mol%、特に好ましくは20mol%〜85mol%である。
バインダー樹脂を構成する全モノマー構成単位のうちの疎水基を有するモノマー構成単位の割合(以下、「疎水基含有率」と称す。)は、通常10mol%〜100mol%、好ましくは15mol%〜90mol%、特に好ましくは20mol%〜85mol%である。
バインダー樹脂中の親・疎水基比率(親水基数:疎水基数)は、通常95:5〜30:70、好ましくは90:10〜40:60、さらに好ましくは85:15〜50:50である。
このようなバインダー樹脂のうち、好適に用いられる市販のバインダー樹脂は、例えば、完全けん化ポリビニルアルコールPVA117(クラレ工業)、部分けん化ポリビニルアルコールPVA505(クラレ工業)、アルキルアセタールポリビニルアルコール エスレックKS−1、KS−10(積水化学工業)、部分ベンザール化ポリビニルアルコール エスレック KX−1(積水化学工業)などが挙げられる。
また、アルコキシシラン加水分解物の重合体の前駆体として、市販されているものとしては、例えば、MSEP2、MS51(三菱化学)などが挙げられる。
バインダー樹脂の高分子構造は、線状であっても、分岐状であっても構わない。さらにこれらを架橋した構造であっても構わない。またその形状は粒子状であっても構わない。
本発明の面状発熱層の金属の劣化を防止する目的で、紫外線吸収剤、酸化防止剤、表面処理剤、赤外線吸収剤、などの各種添加剤が面状発熱層内に含まれていても良いが、耐久性の観点から、金属に配位可能な複素環化合物が含まれていることが特に好ましい。
本発明の面状発熱層の各成分の組成を以下に示す。
本発明の面状発熱層に含まれる金属量は通常70.0〜99.95重量%、好ましくは80.0〜99.0重量%、より好ましくは90.0〜98.0重量%、さらに好ましくは90.0〜97.0重量%である。金属量が少なすぎる場合、導電パスが形成され難いため、発熱しにくく、また熱線反射性能が不十分となる傾向にある。ただし、金属量が多過ぎると、面状発熱層の透明性を高めるために膜厚を薄くせざるをえず、この結果、必要とされる多孔構造が形成せず、発熱しにくくなり、面状発熱層の面内の均一性が損なわれ、美観が損なわれる恐れがある場合がある。
本発明の面状発熱層に含まれる非金属バインダー量は通常0.05〜30.0重量%、好ましくは0.1〜20.0重量%、より好ましくは0.2〜10.0重量%、さらに好ましくは0.3〜5.0重量%である。非金属バインダー量が上記上限よりも多い場合、導電パスが形成され難いため、発熱しにくく、さらに熱線反射性能も低くなる恐れがある。ただし、非金属バインダー量が少な過ぎると、面状発熱層の透明性を高めるために膜厚を薄くしなくてはならない。この結果、必要とされる導電パスの形成がされにくくなり、発熱することが出来なくなる恐れがある。さらに面状発熱層の面内均一性が損なわれ、美観が損なわれる場合がある。
本発明の面状発熱層に含まれる金属に配位可能な複素環化合物の含有量は金属100重量部に対して、0.01〜10重量部であり、好ましくは0.02〜8重量部、より好ましくは0.05〜5重量部である。複素環化合物の含有量が少なすぎると、塗膜欠陥の抑制効果が得られず、多すぎると透明基材に塗布した後の焼成過程において金属の融着が進行し難くなり、導電パスが形成できず、十分な発熱が得られない傾向がある。
本発明の面状発熱層は、これが形成される透明基材表面の全面に連続して面状に製膜されていてもよく、その他、線状、帯状、円状、多角形状等のパターンを有する状態で製膜されてもよい。パターンを有する状態で製膜される場合、そのパターンのサイズは用途に応じ特に制約はないが、通常、可視光線の波長と同程度であるサブμmからmの範囲である。
また、後述の電極と連続していることが好ましい。
パターンを有する状態で製膜される場合の効果としては、可視光線透過率の向上などが挙げられる。
本発明の面状発熱層の製造方法には特に制限はなく、ドライプロセスによる製膜でも塗布液を塗布するなどの湿式製膜法によるものでもよい。本発明の面状発熱層の好適な多孔的金属膜はこのような製膜工程で自発的に形成されてもよく、空孔のテンプレートとなる材料を別途利用することにより形成されてもよい。
ドライプロセスによる面状発熱層の製造の場合、例えば、真空蒸着法ないしはスパッタリング法で形成した金属膜を、熱的に不安定化させて膜に所望の空孔を形成せしめ、該膜にバインダーを含む塗布液を塗布することで本発明の面状発熱層を作製することができる。あるいは、混和しない2種の金属で薄膜を形成し、選択的な溶媒で空孔となる金属部分を抽出し、該膜にバインダーを含む塗布液を塗布することで作製することができる。
好ましい空孔を容易に形成でき、バインダーをはじめとするさまざまな添加剤を加えることができるという観点、さらには高価な装置を必要とすることがなく簡便に製膜できること、曲面や大型の基材に容易かつ安価に面状発熱層を形成することができるという観点からは、本発明の面状発熱層の製膜法としては湿式製膜法が特に好ましい。
本発明の面状発熱層の好適な製造方法として、金属粒子、非金属化合物、及び溶媒を含み、固形分に対する非金属化合物の割合が0.1〜40重量%である組成物を基材上に塗布するなどして湿式製膜する膜化工程と、その後熱処理することにより好ましくは表面抵抗値100Ω/□以下の面状発熱層とする熱処理工程とを含む方法が挙げられる。
上記組成物としては、後述の面状発熱層形成用塗布液が挙げられる。
(湿式製膜方法)
上記の組成物を基材上に湿式製膜する方法としては、各種の塗布方法を採用することが可能であり、その塗布方法は特に限定されない。例えばフローコート法、スピンコート法、スプレーコート法、ディップコート法、ブレードコート法、グラビアロールコート法、カーテンロールコート法、リバースロールコート法、エヤナイフコート法、ロッドコート法、リップダイコート法、オフセット印刷法などが挙げられる。中でも、形成される膜の均質性の観点で、スピンコート法、スプレーコート法、ディップコート法、ロールコート法などが好ましい。生産性の観点からは、スプレーコート、フローコート法が好ましい。
組成物の塗布時の相対湿度は、通常20%以上、好ましくは25%以上、より好ましくは30%以上、さらに好ましくは50%以上、また、通常100%以下、好ましくは95%以下である。相対湿度を上記の範囲にすることにより、塗布欠陥が少ない面状発熱層が得られる。また、塗布時の雰囲気に制限は無い。例えば、空気雰囲気中で組成物の塗布を行なっても良く、例えばアルゴン等の不活性雰囲気中で組成物の塗布を行なってもよい。
この製造方法では、上述の膜化工程において、溶媒を除去することを目的として、乾燥過程を有することが好ましい。熱処理工程の前に乾燥を行なうことにより、形成される面状発熱層の構造を安定化させ、後の熱処理工程における加熱などをより効率的に施すことが可能となる。なお、膜化工程における加熱乾燥過程と、後の熱処理工程における熱処理とは一つの工程として同時に行うこともできる。
この製造方法においては、熱処理工程により好ましくは表面抵抗値100Ω/□以下の面状発熱層にする。
本発明に係る熱処理工程では、このような表面抵抗値を実現するために膜化工程で形成された膜に熱、マイクロ波、UVなどを加えることができる。中でも、生産性の観点から熱を加えることが好ましい。熱による処理の場合、IRヒーター、オーブン、ホットプレートなどにより加熱処理を施すことができる。
また、熱処理工程において、目的とする表面抵抗値を得るための熱処理条件は、組成物に含まれる金属粒子、非金属化合物、溶媒、用いる基材の種類、厚さ、サイズなどにより適宜、調整することができる。
<熱処理温度>
熱処理工程における熱処理温度は、通常50℃以上、好ましくは70℃以上、より好ましくは100℃以上、さらに好ましくは120℃以上である。熱処理温度が低過ぎると層中の残存する溶媒の影響により表面抵抗値が変化し、高い熱線遮蔽性が得られない恐れがあり、さらに、抵抗値が大きくなりすぎ、デフロスターとして機能させるには高い電圧が必要となる。一方、加熱の際に発生する基材からのアルカリ成分、若しくは可塑剤、安定剤などのブリードアウトにより、表面抗率変化を防ぐために、熱処理温度の上限値は、基材として樹脂製基材を用いた場合、そのガラス転移温度以下であることが好ましい。具体的には300℃以下、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下、さらに好ましくは150℃以下である。熱処理温度が高過ぎると基材や金属粒子の条件によって表面抵抗値が大きくなり、熱線遮蔽性が低下したり、デフロスターとして機能させるには、高い電圧が必要となったり、使用できる基材が制限されるといった恐れがある。
熱処理の加熱手段には、オーブン、ホットプレート、IRヒーター、電磁波加熱装置等が使用可能であり、本発明の効果を著しく損なわない限り、特に限定されるものではない。
以下に本発明に好適な面状発熱層形成用塗布液(以下、単に「塗布液」と称す場合がある。)について説明する。
[i] 平均粒子径が100nm以下である金属微粒子と、バインダー樹脂と、分散媒である極性溶媒を含む塗布液。
[ii] 平均粒子径100nm以下の金属微粒子、分散媒である極性溶媒、金属に対し配位結合を形成可能な複素環化合物、及びバインダー樹脂を含有する塗布液。
上記[i]の塗布液は、更に金属に配位可能な複素環化合物を含むことが好ましく、また、[i],[ii]の塗布液は金属微粒子の分散剤を含んでいてもよい。
金属微粒子とは複数の金属原子が結合して形成される塊状の構成物であり、その形状は球状、扁平状、棒状、板状、糸状、サイコロ状、その他の異形形状などが含まれる。
この分散剤については後述するが、電荷を持つ化合物がよい。電荷を持つ化合物が金属微粒子表面に配位することにより、金属微粒子が電荷で被覆され、クーロン反発による最良の分散安定性を得ることができる。
分散媒としては、極性溶媒が用いられる。極性溶媒としては通常、水、又は、水と水以外の極性溶媒の混合液が用いられる。
このような極性溶媒を塗布液の分散媒として用いることで、金属微粒子の分散安定性を向上させ、塗膜における凝集物の発生を抑制する効果や後述の複素環化合物及びバインダーの塗布液中における溶解性を向上させる効果が得られ、塗布液の保存安定性、透明基材への塗布性が向上する。
水溶性バインダーを用いる場合や、後述の複素環化合物を用いない場合は、分散媒は水のみでもかまわない。
バインダーとしては、本発明の面状発熱層に用いられる非金属バインダーとして例示したものの1種又は2種以上を用いることができる。
複素環化合物としては、本発明の面状発熱層に含まれる金属に配位可能な複素環化合物として前述したものの1種又は2種以上を用いることができる。
金属微粒子を面状発熱層形成用塗布液中で長期に安定に分散状態を保つため、該塗布液中に分散剤が含まれていることが好ましい。この分散剤とは、金属微粒子表面に親和性を持ち、かつ、金属微粒子の分散安定性を向上させる機能を持った化合物である。分散剤は塗布液に加えられているだけでなく、金属微粒子表面を被覆していてもよい。分散剤の種類としては低分子分散剤、高分子分散剤、前述の非金属バインダー以外の樹脂など適宜選択可能である。
このような効果を得る上で、分散剤の分解温度は、通常200℃以下、好ましくは150℃以下、さらに好ましくは120℃以下であり、また、通常40℃以上、好ましくは50℃以上、さらに好ましくは60℃以上である。分散剤の分解温度がこの温度より高いと、焼成時に分散剤が分解せず、分散剤が金属微粒子の融着を妨げるおそれがある。また、分散剤を分解させるために焼成温度を高くすると、面状発熱層の好ましい多孔構造を形成できない恐れがある。分解温度がこの温度より低いと、塗布液中での保存安定性に問題がある場合がある。
ここで、分散剤の分解温度は、TPD−MSにより求めることが出来る。尚、分散剤が分解したかどうかを確認する方法としては、例えば面状発熱層形成用塗布液を基板に塗布した後の熱処理(焼成)工程の前後で、TOF−SIMSによる測定から、多価カルボン酸等の分散剤の存在を確認する方法がある。
バインダーと分散剤の両方がイオン性基を有する場合、イオンの電荷による凝集を妨げるために、バインダーと分散剤はイオンの電荷の正負が同じ組み合わせを選ぶことが好ましい。特に、多価カルボン酸、特に好ましくはクエン酸を分散剤として、金属微粒子を分散させた場合には、用いるバインダーの親水基はノニオンもしくはアニオンが好ましく、その中でも特に−OH基やカルボキシル基が好ましい。
本発明の面状発熱層形成用塗布液には、上記の成分以外に本発明の趣旨に反しない限り、熱安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防カビ剤、難燃剤、結晶核剤、無機粒子、有機粒子、減粘剤、滑剤、表面処理剤、赤外線吸収剤、レベリング剤、色素等、面状発熱層の効果を持続させる目的で各種添加剤を加えてもよい。
また、特定波長の可視光、近赤外線、赤外線を吸収する色素や顔料等の着色剤や無機酸化物微粒子など、更なる機能付与を目的として各種添加剤を加えてもよい。
また、前述の如く、空孔を形成するテンプレートとなるコロイド粒子、ミセル、エマルション等を添加してもよい。
本発明の面状発熱層形成用塗布液における固形分(ここで、固形分とは、塗布液中の溶媒を除く、全成分の合計をさす。)の濃度は通常35重量%以下であり、好ましくは20重量%以下、より好ましくは15重量%以下である。固形分の濃度が高いと、塗布液中の各成分の相互作用が大きくなり、塗布液を長期保存する際に沈殿が生じる可能性が高くなる。固形分濃度は通常0.015重量%以上である。
本発明の塗布液の25℃における粘度は好ましくは0.1mPa・s〜30Pa・s、より好ましくは0.5mPa・s〜5.0Pa・sである。塗布液の粘度が高過ぎると塗りムラが生じやすくなる。塗布液の粘度が低過ぎると一定以上の膜厚を得ることが困難となる場合がある。従って、形成される面状発熱層の金属微粒子含有量やバインダー含有量が前述の好適範囲となり、また、塗布液の粘度が上記範囲となるように、塗布液の金属微粒子含有量、バインダー(及び/又はその前駆体)含有量、分散媒含有量、その他の添加剤量が決定される。なお、塗布液粘度が上記範囲内にあれば、バインダーとしての前述の熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂は無溶媒で塗布し、塗布後の乾燥工程を省略することも可能である。
本発明の塗布液の20℃における表面張力は好ましくは120mN/m以下、より好ましくは100mN/m以下、さらに好ましくは80mN/m以下である。表面張力が大きすぎると、基材への塗布性が低下する傾向がある。
本発明の塗布液は、上記各成分を固体もしくは溶液の状態で分散媒と混合することによって得られる。分散媒の沸騰、凍結や固体成分の昇華などによって最終的な塗布液の組成が著しく変化することがなければ、塗布液調製時の温度、圧力などは制限されない。
また、塗布液に超音波処理を行って、塗布液の分散性を向上させてもよい。
本発明の透明面状発熱積層体は少なくとも、透明基材の上に、本発明の面状発熱層が形成されたものであるが、更に、本発明の面状発熱層の上、あるいは、透明基材と面状発熱層との間、または、透明基材の面状発熱層形成面と反対側の面に、面状発熱層(発熱及び熱線反射能)以外の機能を有する層が形成されていても良い。ここで面状発熱層以外の機能を有する層として、例えば、耐電防止層、ガスバリア層、接着層、粘着層、防汚層、易滑層、硬化(ハードコート)層、反射防止層、紫外線吸収層、赤外線吸収層、印刷層、蛍光発光層、剥離層、着色層、色補正層、合わせガラスに利用される中間膜層等が挙げられる。
即ち、本発明の透明面状発熱積層体は、プロセス数を減らすという観点からは、面状発熱層の表面に直接硬化層を形成しても良いが、面状発熱層と硬化層の密着を高め、耐久性を向上させるためには、以下に述べる樹脂層上に更に硬化層を有することが好ましい。
以下に、樹脂層と硬化層とを含む、面状発熱層のオーバーコート層について説明する。
<樹脂層を構成するポリマー>
(炭素数8以上の側鎖アルキル基)
この樹脂層を構成するポリマーは、いかなるものでも適用可能であるが、好ましくは、側鎖に炭素数8以上、好ましくは10〜30のアルキル基を有するポリマーを含有することが好ましい。
このポリマーは、典型的には下記式(1)で表されるモノマー(以下、このモノマーを「モノマー(1)」と称す場合がある。)の1以上を含むモノマー成分を重合又は共重合することによって得られるポリマーであることが好ましい。
(式(1)において、R1は水素原子もしくはアルキル基、R2は炭素数8以上のアルキル基を表す。)
また、R2は、樹脂層への水の浸入を抑制するために、炭素数8以上のアルキル基であり、その炭素数は、好ましくは10以上、更に好ましくは12以上、特に好ましくは16以上であって、好ましくは30以下、より好ましくは25以下である。
透明基材及び樹脂層自体の紫外線からの劣化を抑制する目的で、樹脂層には、紫外線吸収基を有するポリマーを含むことが望ましい。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
式(3)中、R8は式(2)のR8と同義であり、R9は炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表す。R10は水素原子又は水酸基を表し、R11は水素原子、水酸基又は炭素数1〜6のアルコキシ基を表す。
式(4)中、R8は式(2)のR8と同義であり、R12は直接結合、−CH2CH2O−又はCH2CH(OH)−CH2O−を表し、mは1〜5の整数を表す。R13は各々孤立して水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、アルケニル基を表し、oは、0〜4の整数を表し、p,qは、各々独立に0〜5の整数を表す。
前述のモノマー(1)等の炭素数8以上のアルキル基を有する重合性モノマーと共重合可能なモノマー、上述の紫外線吸収基を有する重合性モノマーと共重合可能なモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、アルキルビニルエーテル、アルキルビニルエステル、スチレン又はこれらの誘導体を挙げることができる。
本発明に係る樹脂層を構成するポリマーの共重合成分としての好適なモノマー組成は、モノマー(1)等の炭素数8以上のアルキル基を有する重合性モノマー1〜70重量%、好ましくは5〜40重量%であって、紫外線吸収基を有する重合性モノマーが5〜70重量%であって、これらのモノマーと共重合可能なモノマーが1〜94重量%の範囲であることが好ましい。モノマー(1)等の炭素数8以上のアルキル基を有する重合性モノマーが多いと、樹脂層形成用塗布液を作製する場合において、溶媒が限定される恐れがあり、少ないと、樹脂層を形成した場合、水の浸透を許し、面状発熱層の環境耐久性が低くなる恐れがある。また、紫外線吸収基を有する重合性モノマーが少ないとこれを用いることによる上記効果を十分に得ることができず、多いと樹脂層の膜の強度が落ちる可能性がある。また、これらのモノマーと共重合可能なモノマーがこの範囲よりも多いと、炭素数8以上のアルキル基を有する重合性モノマーや紫外線吸収基を有する重合性モノマーを十分に入れることができない場合があり、本発明の透明面状発熱積層体の環境耐久性を上げることができない場合があり、また少ないと、塗布液にした時の溶媒選択性が狭くなる恐れがある。
樹脂層を構成するポリマーの数平均分子量は、通常1000以上、好ましくは3000以上、より好ましくは10000以上であり、100万以下、好ましくは70万以下、より好ましくは50万以下、さらに好ましくは30万以下である。分子量が小さすぎる場合には、本発明の透明面状発熱積層体の機械的強度及び環境耐久性が劣る恐れがあり、大きすぎる場合には、溶媒への溶解性が劣り、ポリマーの製造が困難になる傾向があるばかりでなく、該樹脂層を湿式製膜するときに、極低濃度にポリマーを溶媒で希釈しなくてはならず、この場合、塗布ムラや乾燥ムラを起こす原因となる場合がある。
樹脂層を構成するポリマーのガラス転移温度(Tg)は好ましくは40℃以上、より好60℃以上、さらに好ましくは70℃以上、特に好ましくは80℃以上である。Tgが低すぎると高温における透明面状発熱積層体の耐久性が低くなる場合がある。
このガラス転移温度は示差走査熱量測定装置(DSC)、動的粘弾性測定装置(DMA)、又は熱機械分析装置(TMA)により測定される。
本発明に係る樹脂層は、安定剤(例えば、ヒンダードアミン系安定剤)、酸化防止剤(例えば、フェノール系、硫黄系、リン系酸化防止剤)、ブロッキング防止剤、レベリング剤、シランカップリング剤等の樹脂組成物に配合される種々の添加剤を、樹脂層形成成分の重量に対し、それぞれ0.01〜10重量%の割合で含有することができる。
光安定剤としては、例えばビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)カーボネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)サクシネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−オクタノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ジフェニルメタン−p,p’−ジカーバメート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ベンゼン−1,3−ジスルホネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)フェニルホスファイト等のヒンダードアミン類、ニッケルビス(オクチルフェニルサルファイド、ニッケルコンプレクス−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルリン酸モノエチラート、ニッケルジブチルジチオカーバメート等のニッケル錯体が挙げられる。これらの剤は単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
シランカップリング剤としては、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン・塩酸塩、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、オクタデシルジメチル〔3−(トリメトキシシリル)プロピル〕アンモニウムクロライド、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等が挙げられ、また上記シランカップリング剤の部分加水分解縮合物も使用できる。
かかる剤を添加することにより、樹脂層が面状発熱層の孔を通して、透明基材、特にポリカーボネート基材と密着し、さらに硬化層との密着力が高められる。
これらは単独で使用しても2種以上を併用しても良い。
本発明に係る樹脂層の吸水率は、好ましくは2重量%以下、より好ましくは1.0%重量以下、特に好ましくは0.5重量%以下である。樹脂層の吸水率が高いと樹脂層が白濁してしまったり、面状発熱層を劣化させてしまう恐れがある。樹脂層の吸水率は、透明基材の吸水率と同様の方法により測定することができる。
これは、温湿度変化による各々の層の膨張や収縮による形状変化により、各層の剥がれや、面状発熱層や硬化層のクラックの発生が起こるため、Qの値が上述の範囲にあることが好ましいことによる。
本発明の透明面状発熱積層体の樹脂層の厚みは、面状発熱層の環境耐久性を向上させるために、通常0.5μm以上、好ましくは1μm以上、より好ましくは2μm以上、さらに好ましくは5μm以上である。一方、樹脂層を、溶媒を用いた塗布液を塗布乾燥して形成する際の乾燥性に優れるという理由から、通常100μm以下、好ましくは70μm以下、より好ましくは50μm以下、さらに好ましくは30μm以下である。
本発明の透明面状発熱積層体において、樹脂層の形成方法には特に制限はないが、大量生産が容易であるという利点から、樹脂層は、好ましくは、前述の樹脂層を形成する成分を溶媒に溶解又は分散させてなる塗布液、より好ましくは、炭素数8以上のアルキル基を有するモノマーを全共重合成分中に1〜70重量%含み、紫外線吸収基を1つ以上含み、かつ、数平均分子量1000以上1000000以下のポリマーを溶媒中に溶解ないし分散させてなる樹脂層形成用塗布液により、湿式製膜法で形成される。
本発明に係る樹脂層形成用塗布液に用いられる溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;2−メトキシエチルアセタート、2−エトキシエチルアセタート、2−メトキシプロピルアセテート、2−ブトキシエチルアセタート等のエーテルエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル類;等が挙げられ、更にこれらの溶媒の任意の比率での混合物であっても構わない。
これらの溶媒は、樹脂層を形成するポリマーを合成する際にも用いることができる。
樹脂層形成用塗布液の固形分濃度は、好ましくは1重量%以上、より好ましくは2重量%以上、さらに好ましくは3重量%以上、好ましくは80重量%以下、より好ましくは65重量%以下、さらに好ましくは50重量%以下である。固形分濃度が低すぎると、樹脂層の塗布ムラや乾燥ムラを引き起こす傾向があり、高すぎると塗布し難くなる傾向がある。
樹脂層形成用塗布液の湿式製膜法については特に制限されず、ディップコート法、フローコート法、スプレー法、スピンコート法、バーコート法、カーテンコート法、ダイコート法、グラビアコート法、ロールコート法、ブレードコート法、エアーナイフコート法等、従前知られるいずれの塗工方法によっても塗布することができる。
上述の溶媒を含む樹脂層形成用塗布液を塗布した後は、乾燥を行って溶媒を除去する。この乾燥条件は溶媒の沸点、基材の材質、塗布量等によって好ましい範囲が異なるが、一般的には30〜200℃で1〜60分間、好ましくは80〜150℃で1〜10分間行う。この範囲より乾燥温度が低く、また、乾燥時間が短いと、溶媒が残留してしまい、これが欠陥となる場合があり、この範囲より乾燥温度が高く、また乾燥時間が長いと、基材が変形したり、面状発熱層を破壊してしまうおそれがある。
本発明に係る硬化層は、ポリイソシアネート化合物やトリアルコキシシラン加水分解物に代表される架橋剤により、架橋硬化された樹脂からなる層であり、架橋硬化された樹脂からなる層であればどのような硬化層であってもかまわない。また、当該硬化層を架橋硬化させる方法としては、熱による硬化、活性エネルギー線の照射による硬化など、従前知られた如何なる架橋硬化方法を用いても構わない。ただし、透明基材に熱可塑性樹脂を採用した場合、基材の劣化や、軟化による変形などを起こす虞があることから、熱により硬化させる方法よりも、活性エネルギー線の照射により硬化することが好ましい。
(メタ)アクリレート基を有するモノマー及びオリゴマーは、活性エネルギー線の照射によりラジカル重合が可能である。従って、(メタ)アクリレート基を有するモノマー又はオリゴマーを含有している組成物であれば、活性エネルギー線を照射することによりラジカル重合により硬化させることが可能である。
本発明に係る硬化層に使用される多官能(メタ)アクリレートとしては、ウレタン結合を有さないものであって、通常用いられる多官能(メタ)アクリレートであれば、特に限定は無いが、例えば、次のようなものがあげられる。
本発明に係る硬化層に使用されるウレタン(メタ)アクリレートとしては、ポリオール
、イソシアネート化合物及び水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物をウレタン化することによって得られる通常のウレタンアクリレートを使用することができる。
ポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等が挙げられる。
本発明に係る硬化層に使用される紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ベンゾエート系、シアノアクリレート系の紫外線吸収剤が挙げられる。
本発明に係る硬化層を形成するための活性エネルギー線硬化性組成物には、光重合開始剤を含むことが好ましい。
本発明に係る硬化層に使用される光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなどのベンゾイン及びそのアルキルエーテル類;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタノンなどのアセトフェノン類;2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリーブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−アミルアントラキノンなどのアントラキノン類が挙げられる。
本発明に係る硬化層を形成するための活性エネルギー線硬化性組成物には、ラジカル捕捉剤として機能する光安定化剤が含まれていてもよい。
本発明に係る硬化層には、体積平均粒子径が1nm以上200nm以下のコロイダルシリカを含んでいても良く、これにより、硬化層の硬度を増すことができるという効果が奏される。従って、本発明に係る硬化層を形成するための活性エネルギー線硬化性組成物には、コロイダルシリカが含まれていてもよい。
本発明に係る硬化層に、体積平均粒子径が1nm以上200nm以下のコロイダルシリカが含有される場合、硬化層は、下記式(5)で表されるアルコキシシランの加水分解縮合物を含有していても良い。
本発明に係る硬化層に使用されるその他の成分としては、例えば、酸化防止剤、熱安定剤、光吸収剤等の安定剤類;ガラス繊維、ガラスビーズ、マイカ、タルク、カオリン、金属繊維、金属粉等のフィラー類;炭素繊維、カーボンブラック、黒鉛、カーボンナノチューブ、C60等のフラーレン類等の炭素材料;帯電防止剤、可塑剤、離型剤、消泡剤、レベリング剤、沈降防止剤、界面活性剤、チクソトロピー付与剤等の改質剤類;顔料、染料、色相調整剤等の着色剤;モノマー及び/又はそのオリゴマー又は無機成分の合成に必要な硬化剤(酸、アルカリ、水など)、触媒、硬化促進剤類なども挙げられる。
本発明の硬化層形成塗布液は、その取り扱い上の点から溶媒を含有することができる。 この溶媒としては、樹脂層の形成に用いられた溶媒と同種のものを使用することができるが、異なるものであっても良い。この溶媒としては例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;2−メトキシエチルアセテート、2−エトキシエチルアセテート、2−ブトキシエチルアセテート、3−メトキシプロピルアセタート等のエーテルエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル類;等が挙げられる。
<塗布・乾燥>
本発明に係る硬化層は、上述の活性エネルギー線硬化性組成物ないしは硬化層形成塗布液を樹脂層上に湿式製膜し、形成された塗膜に好ましくは活性エネルギー線を照射して硬化させることにより形成される。その塗布方法としては特に制限されず、ディップコート法、フローコート法、スプレー法、スピンコート法、バーコート法、カーテンコート法、ダイコート法、グラビアコート法、ロールコート法、ブレードコート法及びエアーナイフコート法等のいずれの塗工方法によって塗布することもできる。
また、塗布は1回で行なっても良く、2回以上に分けて行なってもよいが、通常は、1回で行なう方が経済的に有利であり、好ましい。
上記塗布層を硬化させて硬化層を形成する際の硬化方法には、特に制限は無いが、前述の如く、活性エネルギー線の照射によるのが好ましい。
活性エネルギー線により硬化させる際には、塗布層に活性エネルギー線を照射して塗布層中のモノマーやオリゴマーの重合反応を開始させる。
例えば、好ましく用いられる活性エネルギー線の一例としては、エネルギーと汎用光源を使用可能である点とから、紫外線、可視光線及び電子線が好ましく、より好ましくは紫外線及び電子線である。
このようにして形成される本発明の透明面状発熱積層体の硬化層は、その用途に応じた要求特性や、硬化層の構成材料等によっても異なるが、通常0.1〜50μm、好ましくは、0.5〜40μm、特に好ましくは、1〜30μmである。硬化層の厚さが厚すぎると硬化収縮による内部応力により、はがれやすくなり、薄いと硬化層を設けたことによる、耐擦傷性・耐候性の効果を十分に得ることができない場合がある。
{透明面状発熱積層体1の作製}
金属粒子として銀粒子(動的光散乱法で評価された平均粒径20nm/分散剤としてクエン酸を濃度2重量%で含む)の固形分濃度10.6重量%の銀粒子水分散液75gと、UV硬化型変性ポリビニルアルコール(親水基:疎水基=45:9(mol比))の1重量%水溶液25gとプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM,和光純薬)75gを混合して、面状発熱層形成用塗布液1を調製した。
その後、120℃で1時間の焼結作業を行った。さらに、UV照射装置(無電極ランプバルブ,Hバルブ,フュージョンUVシステムズ)によってUV照射(総照射エネルギーは2000J/cm2)を行い、ポリカーボネート基板上に多孔的銀膜よりなる面状発熱層が形成された透明面状発熱積層体1を得た。
得られた透明面状発熱積層体1の光学特性は、JIS R3106に準じて測定した結果、以下の通りであった。
可視光線透過率(TVIS):25.1%
可視光線反射率(RVIS):40.9%
可視光線吸収率(AVIS):34.0%
日射透過率(TSUN) :19.3%
日射反射率(RSUN) :55.3%
日射吸収率(ASUN) :25.4%
選択反射性 :1.35
<電極の形成>
得られた透明面状発熱積層体1の面状発熱層表面の向かい合った2辺に5mm幅で銀ペースト(藤倉化成「ドータイトD−500」)を塗付し、室温で3日間乾燥させて1対の電極を形成した。電極付着部を除いた面状発熱層の面積は20cm2であった。
電極の中央と定電圧発生装置(菊水電子工業「PMM24−1QU」)をリード線で接続し、1000W/m2の電力密度となるように電圧を印加した。電圧印加5分後の基板の面状発熱層が形成された面と反対側の面の表面温度は48℃になっており、デフロスターとしての昇温性能を有していることが確認された。
面状発熱層の表面抵抗値を、定電圧発生装置の電圧と電流の表示値から算出したところ、表面抵抗値は9Ω/□であった。
面状発熱層積層体1を庫内温度が50℃の送風恒温器内に設置し、昇温試験と同様の装置で2400W/m2の電力密度となるように電圧を印加し、面状発熱層の表面抵抗値の経時変化を測定した。試験時間に亙って面状発熱層は表面抵抗値の増大が見られず、70時間以上の通電が可能であった。
{蒸着面状発熱積層体の作製}
実施例1と同様のポリカーボネート基板を、真空蒸着装置(アルバック機工株式会社製「VPC−410」)内に設置した。また、モリブデン製抵抗加熱ボートに、銀(フルウチ化学製)を入れ、真空蒸着装置に取付けた。真空蒸着装置の粗排気を油回転ポンプにより行なった後、真空蒸着装置内の真空度が5×10−5Torr以下になるまで拡散ポンプを用いて排気した。その後、加熱ボートに通電して加熱し、蒸着速度1.0Å/secで200秒間、基板上に銀を○○nmの厚さに蒸着して、蒸着面状発熱積層体を作製した。
得られた蒸着面状発熱積層体の光学特性は、JIS R3106に準じて測定した結果、以下の通りであった。
可視光線透過率(TVIS):38.2%
可視光線反射率(RVIS):52.2%
可視光線吸収率(AVIS):9.6%
日射透過率(TSUN) :24.5%
日射反射率(RSUN) :62.3%
日射吸収率(ASUN) :13.2%
選択反射性 :1.19
<電極の形成>
得られた蒸着面状発熱積層体の蒸着膜に実施例1と同様に電極を作製した。電極付着部を除いた面状発熱層(蒸着層)の面積は14cm2であった。
実施例1と同様に、蒸着面状発熱積層体の昇温試験を行った。電圧印加5分後の基板の面状発熱層(蒸着層)が形成された面と反対側の面の表面温度は47℃になっており、デフロスターとしての昇温性能を有していることが確認された。実施例1と同様に測定した表面抵抗値は6Ω/□であった。
実施例1と同様に蒸着面状発熱積層体を庫内温度が50℃の送風恒温器内に設置し、昇温試験と同様の装置で2400W/m2の電力密度となるように電圧を印加し、面状発熱層(蒸着層)の表面抵抗値の経時変化を測定した。該面状発熱層の表面抵抗値は通電開始後30時間程度まで緩やかに上昇し、その後急速に増大して通電開始後34時間で通電不能となった。
<透明面状発熱積層体2の作製>
金属粒子として銀粒子(動的光散乱法で評価された平均粒径20nm/分散剤としてクエン酸を濃度2重量%で含む)の固形分濃度10.6重量%の銀粒子水分散液を75gと、UV硬化型変性ポリビニルアルコール((親水基:疎水基=45:9(mol比))の1重量%水溶液25gとPGM68gと、1,2,3−ベンゾトリアゾール(BTA:東京化成工業)の0.5重量%PGM溶液7gを混合し、面状発熱層形成用塗布液2を作製した。
得られた透明面状発熱積層体2の光学特性は、JIS R3106に準じて測定した結果、以下の通りであった。
可視光線透過率(TVIS):22.8%
可視光線反射率(RVIS):36.9%
可視光線吸収率(AVIS):40.3%
日射透過率(TSUN) :19.9%
日射反射率(RSUN) :45.5%
日射吸収率(ASUN) :34.6%
選択反射性 :1.23
得られた透明面状発熱積層体2に、実施例1と同様にして電極を形成し、同様に昇温試験を行ったところ、電圧印加5分後の基板の面状発熱層が形成された面と反対側の面の表面温度は52℃になっており、デフロスターとしての昇温性能を有していることが確認された。
<面状発熱層形成用塗布液3の作製>
金属粒子として銀粒子(動的光散乱法で評価された平均粒径23nm)、分散剤としてクエン酸を濃度2.1重量%含む、固形分濃度3.5重量%の金属粒子含有水溶液937gと、ポリビニルアルコール(PVA)(株式会社クラレ製「PVA117」、重合度1700、Tg=83℃)を含むPVA濃度3重量%PVA水溶液33gと、0.1重量%の硫酸ドデシルナトリウム水溶液(キシダ化学(株)製)102gと、脱塩水728gを混合して、面状発熱層形成用塗布液3を調製した。
さらに、銀ナノ粒子の融着のため、120℃で30分間加熱してポリカーボネート基板上に多孔的銀膜よりなる面状発熱層2が形成された透明面状発熱積層体3を得た。
得られた透明面状発熱積層体3の面状発熱層の表面低抗値を、低抵抗率計路レスターGP(株式会社三菱化学アナリテック社製)にPDPプローブを取り付けて測定した結果、13.5Ω/□であった。
得られた透明面状発熱積層体3の光学特性は、JIS R3106に準じて測定した結果、以下の通りであった。
可視光線透過率(TVIS):24.2%
可視光線反射率(RVIS):34.2%
可視光線吸収率(AVIS):41.6%
日射透過率(TSUN) :21.4%
日射反射率(RSUN) :45.8%
日射吸収率(ASUN) :32.8%
選択反射性 :1.34
透明面状発熱積層体3の面状発熱層に対する走査型電子顕微鏡(SEM)観察をS−4500(株式会社日立製作所)で行ったところ(加速電圧15kV、倍率6万倍)、図2に示すSEM画像のとおり、多孔構造であることが確認された。
得られた透明面状発熱積層体3の短軸の両端に、導電性銀ペースト(ドータイト:藤倉化成株式会社製)を用いて、電極を形成し、電源としてPMM24−1QU(KIKUSUI社製)を用いて、印加電圧18.9Vで通電したところ、0.75Aの出力を確認した。赤外線カメラ(サーモショットF30、NEC Avio社製)で測定すると、中心部分の温度は、印加前の17℃から、15分で40℃まで温められ、ほぼ平衡状態となった。81時間の通電テストで、電流電圧の変化はほとんどなく、外観上も何ら変化はなかった。
{樹脂層形成用塗布液の調製}
温度計、攪拌機及び還流冷却管を備えたフラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテル300g、メチルメタクリレート150g、ステアリルメタクリレート40g、(2,[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール(大塚化学社製RUVA93)10g、及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)2gを加え、65℃にて3時間反応させ、さらに2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1gを加え3時間反応させて、不揮発分40重量%、数平均分子量180000の共重合体を得た。この共重合体の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いてポリスチレン換算により求めた。
このようにして製造された共重合体100重量部に対して、光安定剤チヌビン765(チバスペシャリティーケミカルズ社製)を0.6重量部加え、全体の固形分濃度が35重量%になるように、プロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて樹脂層形成用塗布液を調製した。
以下の成分を混合して硬化層形成用塗布液を調製した。
多官能アクリレート(大阪有機化学社製「ビスコート300」ペンタエリスリトールトリアクリレート):50重量部
ウレタン系アクリレート(新中村化学社製「UA−122P」):50重量部
紫外線吸収剤(チバスペシャルティーケミカルズ社製「TINUVIN400」ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤):5重量部
光重合開始剤:(長瀬産業社製「Irgacure184」1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン):1重量部
光安定化剤(三共株式会社製「サノールLS765」ヒンダードアミン系光安定剤):1.5重量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル:161.25重量部
実施例3と同様の方法で、ポリカーボネート基板上に面状発熱層を形成した。次いで、面状発熱層上に樹脂層形成用塗布液をマイクロメーター付フィルムアプリケーター(Sheen製「SA−204」)により塗布した後、120℃で3分間乾燥させて膜厚10μmの樹脂層を形成した。
その後、硬化層形成用塗布液を、形成された樹脂層上に14番のバーを用いたバーコーターにより塗布し、80℃で2分間乾燥させ、紫外線照射装置(LH6/LC−6BUVコンベアシステム:フュージョンUVシステムズ社製 Hバルブ使用)を用いて積算照射量が4J/cm2となるように紫外線を照射して、膜厚10μmの硬化層を形成した。
この透明面状発熱積層体4の短軸の両端に、導電性銀ペースト(ドータイト:藤倉化成株式会社製)を用いて、電極を形成し、電源としてPMM24−1QU(KIKUSUI社製)を用いて、印加電圧5.5Vで通電したところ、0.21Aの出力を確認した。赤外線カメラ(サーモショットF30、NEC Avio社製)で測定すると、中心部分の温度は、印加前の17℃から、15分で40℃まで温められ、ほぼ平衡状態となった。81時間の通電テストで、電流電圧の変化はほとんどなく、外観上も何ら変化はなかった。
実施例1と比較例1との対比より、非金属バインダーを含有する面状発熱層を有する実施例1の透明面状発熱積層体の方が、蒸着で形成された面状発熱層を有する比較例1のものよりも耐久性に優れていることが分かった。
また、実施例2より、複素環化合物(BTA)入りの面状発熱層、さらに実施例3より、A4サイズの大判サイズの面状発熱層、加えて、実施例4より、オーバーコート層を形成した面状発熱層においても、通電試験により発熱することが分かり、デフロスターとして機能することが確認された。
2 面状発熱層
3 バスバー
4 ヒーター線
5 給電端子
Claims (9)
- 透明基材上に、金属と非金属バインダーを含む透明面状発熱層を積層した透明面状発熱積層体であって、該透明面状発熱層に複素環化合物を含有している、透明面状発熱積層体。
- 透明基材上に、金属と非金属バインダーを含む透明面状発熱層を積層した透明面状発熱積層体であって、該透明面状発熱層が多孔的金属膜である、透明面状発熱積層体。
- 可視光線反射率が10%以上、50%以下である請求項1又は2に記載の透明面状発熱積層体。
- 該透明面状発熱層の表面抵抗値が0.1Ω/□以上、100Ω/□以下であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の透明面状発熱積層体。
- JIS R3106に記載の方法で、該透明面状発熱層を含む側のから測定した日射反射率が15%以上であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の透明面状発熱積層体。
- 該非金属バインダーがバインダー樹脂であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の透明面状発熱積層体。
- 該透明基材が熱可塑性樹脂よりなることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の透明面状発熱積層体。
- 請求項1ないし7のいずれかに記載の透明面状発熱積層体を用いた窓材。
- 請求項8に記載の窓材を適用した自動車。
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