以下、本発明に係る回転電機用ロータR(以下「ロータR」とする)に関して説明する。詳細は後述するが、本ロータRは、冷却液(本発明に係る「冷媒」に相当)をロータコアRCの内周面の周方向全域に亘って接する状態とすることにより、ロータコアRCの内周面を直接冷却することが可能なように構成されている。なお、この冷却液は一般的な冷却オイルを用いると好適であるが、これに限定されるものではない。
図1は、本実施形態に係るロータRが配設される回転電機Mの側方断面図である。図2は、図1のII−II線における断面を示した図である。図1に示されるように、回転電機Mはケース本体MC1と当該ケース本体MC1の開口部を覆うカバーMC2とで形成される空間内に、ステータSとロータRとが収納されるように構成され、ステータSはケース本体MC1に固定される。なお、ケース本体MC1及びカバーMC2は、回転電機Mを収納するケースに相当するため、以降の説明においては、ケース本体MC1及びカバーMC2のいずれかを区別をする必要がない場合には、共にケースMC1、MC2として説明する。
回転電機Mは、当該回転電機Mが発生する駆動力(回転動力)を回転電機Mの外部に出力することが可能である。このような場合には回転電機Mは電動機として機能する。また、回転電機Mに外部から駆動力(回転動力)を伝達することにより、当該回転電機Mが発電を行う発電機として機能することも可能である。本実施形態では回転電機Mが電動機として機能している場合の例を用いて説明する。
電動機として機能する回転電機Mは、コイルCと永久磁石PM(図2参照)との電磁作用により回転動力を取得する。この回転動力の取得は公知技術であるため説明は省略する。本実施形態においては、コイルCはステータSに備えられ、永久磁石PMはロータRに備えられるものとして説明する。
ロータRは、複数の円環板状の部材を積層して形成された円筒状のロータコアRCと、当該ロータコアRCと一体回転するように固定されたロータ軸体10と、を有して構成される。円環板状とはその外周が円形であり、且つその中心部が前記円形と同じ軸心とする前記円形よりも小さい円形の開口でくり抜かれたリング状(ドーナツ状)の板が相当する。円環板状の部材は所定の厚さ(例えば数mm)のコア材(鋼板)をこのようなリング状で打ち抜いて(打ち抜き加工により)形成される。円筒状のロータコアRCは、打ち抜き加工により形成された同一形状の複数の円環板状の部材を積層して形成される。円環板状の部材を積層する際には、夫々の部材の軸心が一致するように積層される。したがって、ロータコアRCは、その径方向中心部にロータ軸方向に沿った貫通孔20(図2参照)を有する円筒状で形成される。
ロータコアRCのロータ軸方向両端には、当該ロータコアRCと一体回転するロータ軸体10が配設される。このロータ軸体10は、第一軸体10aと第二軸体10bとからなる。第一軸体10aはロータコアRCに対してロータ軸方向一方側に取り付けられる。ロータ軸方向一方側とは、ロータコアRCのロータ軸方向における2つの端部のうちの一方の端部の側である。また、第二軸体10bはロータコアRCに対してロータ軸方向他方側に取り付けられる。ロータ軸方向他方側とは、ロータコアRCのロータ軸方向における2つの端部のうちの他方の端部の側、すなわち第一軸体10aが取り付けられていない側である。
第一軸体10aは、円筒状部10cとフランジ部10dとを含んで形成される。円筒状部10cは、図1に示される第一軸体10aにおいてロータ軸心と同心の円筒状の部分が相当する。円筒状部10cの内径及び外径は、ロータ軸方向に亘って同じ内径及び外径で形成される。また、円筒状部10cの径方向内側には、ロータ軸心と同心の円柱状空間10eが形成され、その軸方向両端は開口状態で形成される。
フランジ部10dは、円筒状部10cの外周面からロータ径方向に所定の高さを有すると共に、軸方向に一定の厚さを有して突出形成された円環板状の部分が相当する。したがって、フランジ部10dは、当該フランジ部10dの外径が少なくとも円筒状部10cの外径よりも大きくなるように形成される。本実施形態におけるフランジ部10dは、当該フランジ部10dのロータ軸方向両側に円筒状部10cが突出する位置に形成される。これにより、フランジ部10dに対して軸方向一方側の円筒状部10cが前記貫通孔20に挿入され、第一軸体10aをロータコアRCに対して径方向に位置決めすることができると共に、フランジ部10dに対して軸方向他方側の円筒状部10cをロータコアRCから軸方向外側に突出させることができる。これにより、フランジ部10dの他方側の円筒状部10cに後述する冷媒排出口12を形成することができる。また、フランジ部10dのロータ軸方向一方側の面が、ロータコアRCの軸方向端面に当接するように形成される。
第二軸体10bも、円筒状部10fとフランジ部10gとを含んで形成される。円筒状部10f及びフランジ部10gは、夫々第一軸体10aの円筒状部10c及びフランジ部10dと同様に形成される。ただし、第一軸体10aの円筒状部10cは、上述のように軸方向両端が開口状態で形成されていたが、第二軸体10bの円筒状部10fは一方の端部(後述する回転軸Abの側の端部)が開口状態とならないように、即ち閉じた状態(蓋をされた状態)で形成される。その他の構成については、上述の第一軸体10aの円筒状部10c及びフランジ部10dと同様であるため、説明は省略する。なお、第二軸体10bの円筒状部10fの径方向内側には、ロータ軸心と同心の円柱状空間10hが形成される。
このようなロータコアRCとロータ軸体10とを有するロータRは、冷媒流通空間R1、冷媒排出口12、冷却内周面CPを備えて構成される。冷媒流通空間R1は、ロータコアRCの径方向内側に設けられ、冷却液が供給され流通される。上述のようにロータコアRCは径方向中心部にロータ軸方向に沿った貫通孔20を有する円筒状で形成される。本実施形態では、この貫通孔20によって冷媒流通空間R1の一部が形成されている。この冷媒流通空間R1は、後述する回転軸Aの軸中心部に形成された冷媒流通路A1から冷却液が供給される。
冷媒排出口12は、冷媒流通空間R1からロータ径方向の外側に向けて冷却液を排出する。図1及び図2に示されるように、冷媒排出口12は、冷媒流通空間R1の内部(本実施形態においては円柱状空間10e及び10h)と外部とを連通する孔とされている。この冷媒排出口12はロータ軸方向視において周方向に沿って複数形成される。図2においては、ロータ軸方向視において周方向に45度毎に形成しているが、もちろん、他の角度毎に形成することも当然に可能である。回転軸Aの軸中心部に形成された冷媒流通路A1から供給された冷媒流通空間R1内の冷却液は、ロータRの回転により生じる遠心力によって円柱状空間10e及び10hから冷媒排出口12を介して径方向外側に向けて排出される。このように排出される冷却液が、図1及び図2において破線60で示される。
冷却内周面CPは、ロータ軸方向における少なくとも一部の領域に設けられ、ロータ周方向全域に亘って冷媒流通空間R1に対してロータコアRCの内周面を露出してなる面である。上述のように、ロータコアRCのロータ軸方向端部には、第一軸体10a及び第二軸体10bが備えられる。この第一軸体10a及び第二軸体10bは、図1に示されるように、ロータコアRCのロータ軸方向端部に挿入して配設される。より詳しくは、第一軸体10aの円筒状部10c及び第二軸体10bの円筒状部10fが貫通孔20の両端開口部に夫々挿入される。また、ロータコアRCの内周面とは、ロータコアRCの径方向内側の面、即ち貫通孔20の内周面である。したがって、ロータコアRCの径方向内側の面は、ロータコアRCのロータ軸方向端部に第一軸体10a及び第二軸体10bが挿入されることにより、露出される領域と露出されない領域とが形成される。冷却内周面CPは、このような領域のうちロータコアRCの径方向内側の内周面が露出される領域のロータコアRCの内周面(貫通孔20の内周面)が相当する。
特に、本実施形態に係る冷却内周面CPは、図1に示されるようにロータ周方向の全域に亘ってロータコアRCの内周面を露出させる。このため、冷媒流通空間R1内の冷却液がロータRに対して周方向に相対移動し易くなるので、ロータRの回転速度が変化する際の慣性により当該ロータRが冷却液から受ける回転反力を軽減することができる。したがって、回転電機が冷却液を回転させるために用いられる運動エネルギーを少なく抑えることができるので、回転電機のエネルギー効率を高めることが可能となっている。
冷媒流通空間R1は、冷却空間部91と小径部90とを有して形成される。冷却空間部91は、上述の冷却内周面CPにより囲まれた領域であり、小径部90は、冷却空間部91に対してロータ軸方向の両端に夫々設けられた領域である。したがって、図1に示されるように、冷却空間部91は、ロータ軸方向に沿って両側に形成された2つの小径部90に挟まれた領域が相当する。小径部90は、ロータコアRCの内周面に接するようにロータコアRC内に挿入されたロータ軸体10の一部、即ち第一軸体10aの円筒状部10cの内周面に囲まれた円柱状空間10e及び第二軸体10bの円筒状部10fの内周面に囲まれた円柱状空間10hにより形成される。このため、小径部90は、冷却空間部91よりも内径が小さく形成される。本実施形態における小径部90の内径は、ロータコアRCのロータ軸方向端部に挿入された第一軸体10aの円筒状部10c及び第二軸体10bの円筒状部10fの内径に相当する。また、冷却空間部91の内径は、円筒状のロータコアRCの内径に相当する。このように、小径部90の内径は冷却空間部91の内径よりも小さく形成される。
回転軸Aは、ロータコアRCと一体回転可能に支持ベアリングBRGを介して、ケース本体MC1及びケースMC2に対して回転可能に支持される。図1において、回転軸Aは回転電機Mの両端に備えられている例を示している。この回転軸Aは、特に区別が必要な場合には一方の回転軸を符号Aaを付して説明し、他方の回転軸を符号Abを付して説明する。一方の回転軸Aaは、当該回転軸Aaの軸心が第一軸体10aの軸心と一致するように、その外周面が第一軸体10aの内周面に例えばスプライン嵌合により固定される。また、他方の回転軸Abは、当該回転軸Abの軸心が第二軸体10bの軸心と一致するように例えばスプライン嵌合により固定される。本実施形態では、このように回転軸Aと一対のロータ軸体10とが嵌合により固定されるとして説明するが、特に限定されるものではない。他の方法により固定することも当然に可能である。
回転軸Aaの軸中心部には、冷媒流通路A1が形成される。そして、冷媒流通路A1には、当該冷媒流通路A1から冷媒流通空間R1に冷却液を供給する冷媒供給口A2が形成される。冷媒供給口A2は、その内径が冷媒流通路A1の内径よりも小さくなるように、円板状の返し部A3が形成される。返し部A3は、当該返し部A3の軸心が冷媒供給口A2の軸心と一致するように備えられる。これにより、一旦、冷媒流通路A1から冷媒流通空間R1に供給された冷却液が、冷媒流通路A1へ戻ること(冷媒流通路A1への逆流)を適切に防止することができる。なお、本実施形態では、冷媒流通路A1は一方の回転軸Aaにのみ形成されている場合の例を示しているが、回転軸Abにも冷媒流通路A1を形成することも当然に可能である。係る場合には、回転軸Ab側の冷媒流通路A1の冷媒供給口A2にも上述の返し部A3を形成すると好適である。
上述のように、ロータRには、冷媒流通空間R1から冷却液を排出する冷媒排出口12が備えられる。本実施形態では、冷媒排出口12は小径部90の内周面に開口部を有して形成される。上述のように小径部90は、第一軸体10aの円柱状空間10e及び第二軸体10bの円柱状空間10hにより形成される。冷媒排出口12は、この第一軸体10aの円柱状空間10e及び第二軸体10bの円柱状空間10hのそれぞれと外部とを連通可能に、第一軸体10aの円筒状部10c及び第二軸体10bの円筒状部10fの内周面に開口部を有して形成される。第一軸体10aの円筒状部10c及び第二軸体10bの円筒状部10fの内周面とは、夫々のロータ軸方向中心側を向く面である。このような冷媒排出口12は上述のように周方向に沿って所定の間隔で複数形成される。
図3は図1のIII−III線における断面図である。特に図3(a)ではロータRが回転していない状態を示し、ケース本体MC1やステータS等は省略されている。図3(a)に示されるように、ロータRには複数の永久磁石PMが配設されている。また、上述のようにロータRの径方向内側、即ちロータコアRCの貫通孔20の一部は、冷却液が流通される冷媒流通路R1の冷却空間部91に相当する。冷媒流通路R1のロータ軸方向端面にはロータ軸体10(10a、10b)が配設される。これにより、冷却空間部91の軸方向両側に冷却空間部91の内径よりも小径の小径部90が配置される。このため、本ロータRは、冷却空間部91における小径部90よりも径方向外側の空間に冷却液を溜めておくことができる。したがって、ロータRが回転していない状態や低速回転時は図3(a)のように冷媒流通空間R1内に残存する冷却液は、符号Wを付して示されるように、冷却空間部91の側に優先的に溜まることになる。
図3(b)にはロータRの回転状態(特に高速回転時)における図1のIII−III線の断面図が示される。このようなロータRの高速回転時にあっては、ロータRの回転によって生じる遠心力により冷却液は冷却内周面CPに接する状態になる。このときも、本ロータRは、冷却空間部91における小径部90よりも径方向外側の空間に冷却液を溜めておくことができる。このような冷却液は、図3(b)において符号Wを付して示される。このように、冷却液は、ロータコアRCの内周面に直接接することになるのでロータコアRCを介して永久磁石PMを効率良く冷却することが可能となる。
また、冷却内周面CPは、ロータ周方向の全域に亘って滑らかな円筒面として形成される。これにより、冷却液はロータRの回転に対して滑らかに冷却内周面CPに沿って相対移動することができるので、ロータRが冷却液から受ける回転反力を小さくすることができる。したがって、回転反力に起因するエネルギー損失を小さくできるので回転電機Mのエネルギー効率を高くすることができる。
ここで、本実施形態に係る回転電機Mが有するロータコアRCは、図4に示されるように、第一軸体10a及び第二軸体10bを介して回転軸Aに支持されるよう形成される。上述のように、第一軸体10aは回転軸Aaと結合され、第二軸体10bは回転軸Abと結合される。これに対して、ロータコアRCと第一軸体10aと第二軸体10bとは、ロータコアRCをロータ軸方向に貫通する貫通部材30により結合される。このため、円環板状の部材を打ち抜いて形成する際に、貫通部材30を挿入する貫通孔31(図3参照)も合わせて形成すると好適である。
このような貫通部材30は、図2に示されるように、ロータRの軸心方向に沿って複数、挿入される。本実施形態では貫通部材30は円柱状のピンで構成される。図2においては、8本の貫通部材30が挿入されている例を示している。貫通部材30は第一軸体10a側から挿入され、第二軸体10bと圧入することにより固定される。このような構成とすることにより、ロータコアRCと第一軸体10aと第二軸体10bとの結合を強固なものとすることができる。
ステータSはロータコアRCの径方向外側に配設され、ケース本体MC1に固定されるステータコアSCを備えて構成される。このステータコアSCに巻かれるコイルCのコイルエンドCEが、ステータコアSCの軸方向両端外側に位置される構成となっている。ステータコアSCは、円板状の鋼板を多数枚、ロータコアRCの軸心方向に沿って積層して構成される。
コイルCはステータコアSCに導線を巻くことにより形成される。このようなコイルCは、ステータコアSCの内周側に設けられ複数のスロット内に挿入されると共に、2つのスロット間をつなぐコイルCの部分がステータコアSCから軸方向両端に突出して形成される。このようなステータコアSCから軸方向両端に突出する突出部がコイルエンドCEとなる。
上述のように、回転軸Aの軸中心部に形成された冷媒流通路A1から冷媒流通空間R1に供給された冷却液は、ロータRの回転によって生じる遠心力によって冷却内周面CPに接する状態とされることにより適切に永久磁石PMを冷却することが可能となる。このようにロータRが回転している状態においても、上述のように冷却液は冷却空間部91における小径部90より径方向外側の空間に溜められる。この状態から冷媒流通空間R1に供給する冷却液の量が増えると、冷却空間部91における小径部90より径方向外側の空間からあふれた冷却液が、第一軸体10aの円筒状部10c及び第二軸体10bの円筒状部10fに形成された冷媒排出口12から排出される。このような冷媒排出口12により、ロータRを冷却する冷却液の量を適切に調整することが可能となる。
この冷媒排出口12は、ステータSのコイルエンドCEに向けて冷却液を噴射する噴射孔として用いられる。すなわち、コイルエンドCEに対して、ロータRの回転によって生じる遠心力により冷媒排出口12から径方向外側へ向けて冷却液が噴射される。したがって、回転電機Mの回転に応じて発熱するコイルCを適切に冷却することが可能となる。冷媒排出口12から噴射される冷却液が、図1及び図2において破線60で示される。このようにコイルエンドCEに冷却液を噴射することにより、ロータR(ロータRが備える永久磁石PM)を冷却した冷却液を利用して、更にステータSのコイルエンドCEを介してコイルCを適切に冷却することが可能となる。
このように本ロータRによれば、冷却液の回転反力を低減しつつ均一にロータRを冷却し、更にはステータSを冷却することが可能となる。
〔その他の実施形態〕
(1)上記実施形態では、ロータRの回転により生じた遠心力によって冷却空間部91に接する状態とされ、冷却空間部91における小径部90より径方向外側の空間からあふれた冷却液が冷媒排出口12から排出されるとして説明した。例えば、冷却内周面CPに接して流れる冷却液を冷媒排出口12の側、即ちロータRの軸心方向端部の側へ移動し易くするために、流れ方向規制部材50を備えることも可能である。
このような流れ方向規制部材50は図5に示されるようにロータコアRCの内周面、特に冷却内周面CPに沿って、当該冷却内周面CPから立ち上がる流れ方向規制面51を備えて構成される。流れ方向規制部材50は、ロータコアRCの内周面に沿って湾曲すると共に、一定高さで径方向内側に突出するように設けられる。これにより、流れ方向規制部材50はロータコアRCと一体的に回転することが可能となる。図示の例では、流れ方向規制面50は、2つのV字の一方を反転してつないだ菱形の傾斜面を有して形成される。流れ方向規制面51は、ロータコアRCの回転によって発生する、冷却内周面CPに沿った冷却液の流れに対してロータ軸方向へ向かう成分を付与するように流れ方向を規制する。このような流れ方向規制部材50は、ロータ周方向に離れるにしたがってロータ軸方向両側へ向かって広がるV字状の傾斜面を有する流れ方向規制面51を有すると好適である。もちろん、流れ方向規制部材50はV字状に限定されることはなく、他の形状(例えば、ロータ周方向に離れるにしたがってロータ軸方向両側へ向かって曲線)で構成することも当然に可能である。
(2)上記実施形態では、ロータコアRCと第一軸体10aと第二軸体10bとが、ロータコアRCをロータ軸方向に貫通する貫通部材30を用いて圧入により固定されるとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。例えば、ロータコアRCをロータ軸方向に沿って貫通する貫通ボルト80を用いて固定することも可能である。更に、ロータコアRCの内周面にロータ軸方向に沿ってスプラインを設けることも可能である。図6には、このような貫通ボルト80とスプラインとを設けた例について示している。
スプラインは、ロータコアRCの内周面にロータ軸方向に沿って形成される凹凸部70と、第一軸体10a及び第二軸体10bがロータコアRCに挿入される円筒状部10c及び10fの外周面(挿入部外周面)に形成される凹凸部71により実現される。この場合には、これらの凹凸部70及び凹凸部71を互いに係合させてスプライン嵌合することにより、ロータRの回転方向の結合を強固なものにすることが可能となる。即ち、ロータコアRCと、第一軸体10A及び第二軸体10bとが、ロータコアRCの内周面と、当該ロータコアRC内に挿入される第一軸体10aの円筒状部10c及び第二軸体10bの円筒状部10fの夫々の挿入部外周面との双方に形成されたスプラインにより相対回転が規制される。ロータコアRCの内周面に形成される凹凸部70は、円環板状の部材を打ち抜く時に合わせて形成すると好適である。また、スプライン嵌合に用いられる凹凸部70により冷却内周面CPの表面積を大きくすることができるので、冷却効果を高めることが可能である。
また、図6においてはロータ軸方向に沿ってロータコアRCの内周面の全領域に凹凸部70が形成されるように図示した。例えば、凹凸部70をロータコアRCのロータ軸方向両端側のみに形成することも可能である。即ち、ロータコアRCのロータ軸方向両端側は内周面に凹凸部70を有する円環板状の部材を用い、ロータコアRCのロータ軸方向中央側は内周面に凹凸部70が形成されていない円環板状の部材を用いることも当然に可能である。係る場合には、2種類の円環板状の部材を用いてロータコアRCが構成される。また、上述のような圧入固定に適した円柱状のピンからなる貫通部材30とスプライン嵌合とを用いて構成することも当然に可能である。なお、貫通部材30や貫通ボルト80は、ロータコアRCを貫通させていなくても良い。更に、このように貫通部材30や貫通ボルト80がロータコアRCを貫通しない構成において、スプライン嵌合を用いても良いし、スプライン嵌合を用いなくても良い。このような構成であっても、本発明に係るロータRを構成することは当然に可能である。
(3)上記実施形態では、ロータ軸体10が軸方向一方の側の第一軸体10a及び軸方向他方の側の第二軸体10bの2つに分かれている場合について説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。例えば、図7に示されるように、ロータ軸体10がロータコアRC内を貫通するように構成することも当然に可能である。このような場合においては、ロータコアRC内を貫通する貫通部分10cに連通路100を形成し、貫通部分10cの外周面と、冷却内周面CPとの間に空間を形成すると好適である。この連通路100によりロータコアRCの径方向内側から前記空間(貫通部分10cの外周面とロータコアRCの内周面(即ち、冷却内周面CP)との間の空間)に冷却液を供給することが可能となる。このような構成とすることにより、ロータRの回転速度に拘らず冷却液を冷却内周面CPに供給することが可能となる。
また、上記実施形態では冷却排出口12は第一軸体10aの円柱状部10c及び第二軸体10bの円柱状部10fに形成されるとして説明したが、図7に示されるように夫々のフランジ部10d及び10gとロータコアRCの径方向端面とで形成することも当然に可能である。このように形成することにより、ロータコアRCの径方向端面も冷却することができるので、冷却効率を高くすることができる。また、図示はしないが前記空間(貫通部分10cの外周面とロータコアRCの内周面との間の空間)に上述の図5に示すような流れ方向規制部材50を設けることも可能である。このように流れ方向規制部材50を設けることにより、連通路100から供給された冷却液を積極的に冷媒排出口12の側に流通させることができる。
(4)上記実施形態では、ロータRの両端に回転軸Aa及び回転軸Abが備えられるとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。ロータRの一方の端部にのみ回転軸Aaを備える構成であっても、本発明の適用範囲である。また、第一軸体10a及び第二軸体10bのみで回転軸Aを構成することも当然に可能である。係る場合には、第一軸体10a及び第二軸体10b自体を支持ベアリングBRGを介してケースMC1、MC2に回転可能に支持すると好適である。
(5)上記実施形態では、永久磁石PMの数や貫通部材30の数を例示して説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。他の数のものを用いて構成することも当然に可能である。
(6)上記実施形態では、回転電機Mが電動機として用いられた場合の例を示して説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。回転電機Mを発電機として用いる場合であっても本発明を適用することは当然に可能である。
(7)上記実施形態では、冷媒流通空間R1は、冷却空間部91と、当該冷却空間部91よりも内径が小さく形成された小径部90と、を有して形成されるとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。冷媒流通空間R1は小径部90を設けることなく、冷却空間部91のみで形成することは当然に可能である。
(8)上記実施形態では、小径部90が第一軸体10aの円柱状空間10e及び第二軸体10bの円柱状空間10hで構成されている例について説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。例えば内径が異なる2種類の円環板状の部材を用いてロータコアRCを形成することにより、小径部90及び冷却空間部91を形成することが可能である。即ち、ロータコアRCのロータ軸方向両端側は内径の小さい円環板状の部材を積層して形成し、ロータコアRCのロータ軸方向中央側は内径の大きい円環板状の部材を積層して形成すると好適である。このような構成とすることで第一軸体10a及び第二軸体10bを用いることなく、小径部90及び冷却空間部91を有するロータコアRCを形成することが可能である。
(9)上記実施形態では、冷媒排出口12が、小径部90を構成する円筒状部10c及び10fの内周面に開口部を有して形成されているとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。冷媒排出口12を他の位置に設けることも当然に可能である。
(10)上記実施形態では、冷媒排出口12が、ロータコアRCの径方向外側に配設されるステータSのコイルエンド部CEに向けて冷却液を噴射する噴射孔とされているとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。冷媒排出口12をコイルエンド部CEに冷却液を噴射する噴射孔として用いずに構成することも当然に可能である。
(11)上記実施形態では、冷却内周面CPは、ロータ周方向の全域に亘って滑らかな円筒面とされているとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。冷却内周面CPに凹凸があっても本発明に係るロータRを構成することは当然に可能である。
(12)上記実施形態では、ロータコアRCの内周面のうち、ロータ軸方向両側の第一軸体10aの円筒状部10c及び第二軸体10bの円筒状部10fが挿入されている部分以外を露出して冷却内周面CPが形成されているとして説明した。しかしながら、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。例えば、第一軸体10a及び第二軸体10bがロータコアRCに挿入されずに、ロータコアRCの軸方向全域を冷却内周面CPとすることも当然に可能である。また、第一軸体10a及び第二軸体10b以外の構成により軸方向の一部が覆われており、それ以外の部分が冷却内周面CPとされても良い。いずれにしても、冷却内周面CPはロータコアRCのロータ軸方向における少なくとも一部の領域に設けられ、当該領域では周方向全域で内周面を露出するように構成される。