[go: up one dir, main page]

JP5520041B2 - トラクション制御装置、及びトラクション制御方法 - Google Patents

トラクション制御装置、及びトラクション制御方法 Download PDF

Info

Publication number
JP5520041B2
JP5520041B2 JP2009297975A JP2009297975A JP5520041B2 JP 5520041 B2 JP5520041 B2 JP 5520041B2 JP 2009297975 A JP2009297975 A JP 2009297975A JP 2009297975 A JP2009297975 A JP 2009297975A JP 5520041 B2 JP5520041 B2 JP 5520041B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
control
traction control
idling
ignition
cylinder
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2009297975A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2011137417A (ja
Inventor
義基 松田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kawasaki Motors Ltd
Original Assignee
Kawasaki Jukogyo KK
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kawasaki Jukogyo KK filed Critical Kawasaki Jukogyo KK
Priority to JP2009297975A priority Critical patent/JP5520041B2/ja
Priority to US12/980,265 priority patent/US8689920B2/en
Publication of JP2011137417A publication Critical patent/JP2011137417A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5520041B2 publication Critical patent/JP5520041B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • Y02T10/18

Landscapes

  • Electrical Control Of Ignition Timing (AREA)
  • Output Control And Ontrol Of Special Type Engine (AREA)
  • Control Of Vehicle Engines Or Engines For Specific Uses (AREA)
  • Electrical Control Of Air Or Fuel Supplied To Internal-Combustion Engine (AREA)

Description

本発明は、駆動輪の空転量に応じて駆動輪の駆動力を制御するトラクション制御装置に関するものである。
従来、車両の駆動輪の路面に対するスリップ量が所定値を超えたときにエンジンの駆動力を減少させて駆動輪の路面に対するグリップ力を回復させるトラクション制御装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このトラクション制御装置によれば、エンジン回転数の上昇率が所定値を超えたときに、点火時期を遅角させて駆動力を減少させるトラクション制御が実行される。
特開平7−103009号公報
このようにエンジンの点火時期を遅角させると、不完全燃焼が生じて燃料ガスが気筒内に残ってしまう。残った燃料ガスは、その他の排気ガスと共に排気管を通って触媒に達し、触媒にて燃焼する。触媒に向けて排出される燃料ガスの濃度分布に偏りがあると、その偏った領域にて温度が過剰に上昇し、触媒を劣化させてしまう。
そこで本発明は、触媒の劣化を抑制することができるトラクション制御装置を提供することを目的としている。
本発明のトラクション制御装置は、駆動輪の空転量に応じた空転監視値を検出する検出手段と、前記検出手段により検出された前記空転監視値が空転条件を充足するかを判定する判定手段と、前記判定手段が前記空転条件を充足すると判定すると、所定の順序で点火される複数の気筒の点火状態を夫々制御して前記駆動輪の駆動力を減少させるトラクション制御を実行する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記トラクション制御において前記点火状態を制御する前記気筒を予め定められる制御規則に基づいて決定し、前記判定手段が前記空転条件を充足すると判定してから1番目に点火する予定の前記気筒から前記制御規則に基づいて前記トラクション制御を実行し、前記制御規則は、同じ前記気筒において、所定回数以上連続して前記点火状態が制御されることがないように設定されているものである。
本発明に従えば、点火状態を制御することで気筒内に残る燃料ガスが同じ気筒から連続して排出されることを防ぐことができ、触媒へと排出される燃料ガスを分散させることができる。これにより、燃料ガスの濃度分布の偏りが抑えられ、触媒局所の過剰発熱による劣化を防ぐことができる。また、本発明では、空転条件を充足すると判定した直後から駆動輪の駆動力が減少するので、予め定められた気筒に対して点火制御する場合に比べて速応性が高く、素早く駆動輪の空転を抑えることできる。
上記発明において、前記制御手段は、前記気筒内の混合気に点火する点火装置によって前記点火状態を制御ことが好ましい。
上記発明において、前記制御規則では、時系列的に連続し、且つ前記気筒の総数より1つ以上少ない又は多い数の燃焼行程に対して前記点火状態を制御すべきか否かが決められたパターンを繰り返すように設定され、前記燃焼行程の総数Xは、前記気筒の総数Nの約数且つ倍数でないことが好ましい。
上記構成に従えば、1つのサイクルにおける燃焼行程のと気筒の総数とが約数且つ倍数でないことで、点火状態を制御する気筒が変わっていく。これにより、1つの気筒において、所定回数以上連続して点火状態が制御されることを防ぐことができる。
上記発明において、前記判定手段は、更に予め定められる複数の抑制条件を空転監視値が夫々充足するか否かを判定するようになっており、前記制御手段は、夫々異なる複数の前記制御規則を有しており、前記判定手段の判定結果に応じて基づく前記制御規則を変えるようになっているが好ましい。
上記構成に従えば、複数の抑制条件の充足の有無に応じて制御規則を変えて駆動力の減少量を変えることができる。例えば、空転監視値が大きくなるにつれて点火状態を制御する気筒の数を多くするように抑制条件及び制御規則を設定すると、駆動輪の空転量が大きくなるにつれて駆動力の減少量が大きくなり、空転量に係わらず駆動輪の空転を迅速に制止することができる。
上記発明において、前記制御手段は、燃料噴射手段から燃料が噴射された気筒に対して前記トラクション制御により点火状態制御すべく失火制御した場合、当該気筒に対して次に噴射する燃料噴射量を少なくするようになっていることが好ましい。
上記構成に従えば、トラクション制御により点火状態が制御された気筒内に残留する燃料により気筒内の空燃比が一時的に過剰なリッチ状態になることを防ぐことができる。これにより不所望な駆動力の変動が発生することを抑えることができる。
上記発明において、前記点火状態には、点火時期が含まれ、前記トラクション制御は、前記気筒の点火時期をずらして前記駆動輪の駆動力を減少させる制御であり、前記制御手段は、前記トラクション制御の開始後、前記点火時期のズレ量を増加させながら所定量へと遷移させ、更に前記点火時期のズレ量を前記所定量から減少させてから前記トラクション制御を終了させるようになっていることが好ましい。
上記構成に従えば、トラクション制御の開始時及び終了時に急な駆動力の変動が生じることを抑えることができる。これにより、トラクション制御が実行されても、滑らかに加速又は減速することができる。
上記発明において、前記検出手段は、エンジンの状態に応じたエンジン監視値を検出し、前記制御手段は、前記エンジン監視値に応じて前記点火時期のズレ量を増減させるようになっていることが好ましい。
上記構成に従えば、エンジンの状態、例えばエンジン回転数及びスロットルバルブの開度に応じて点火時期のズレ量の制御の開始及び終了の駆動力の変動による運転フィーリングへの影響が変化する。例えば、エンジン回転数及びスロットルバルブの開度が小さいと、駆動力の変動による影響が大きく、逆にエンジン回転数及びスロットルバルブの開度が大きいと、駆動力の変動による影響が小さい。例えば、駆動力に対するズレ量の変化の影響が大きいところにおいて、ズレ量を徐々に増減させることで、駆動力の変動を抑えて運転者が受けるショックを小さくすることができる。
上記発明において、前記制御装置は、前記トラクション制御を開始後に切換え条件を充足すると、前記各気筒の吸気状態を制御して前記駆動輪の駆動力を減少させるトラクション制御に切換えるようになっていることが好ましい。
上記構成に従えば、記各気筒の吸気状態を制御して前記駆動輪の駆動力を減少させるトラクション制御に切換えることで、駆動力の減少量を維持又は大きくすることができるので、気筒内から触媒へと排出される燃料ガスを低減することができる。これにより、触媒の劣化を抑えることができる。
上記発明において、前記検出手段は、前記複数の気筒の吸気量を調整するスロットルバルブの開度に対応する値である開度監視値を検出し、前記制御手段は、切換えた後、前記トラクション制御において、前記空転監視値及び前記開度監視値に応じて前記スロットルバルブの閉じる量を変更して前記各気筒の吸気状態を制御することが好ましい。
上記構成に従えば、スロットルバルブの開度に応じて駆動力の減少時の開度が決められるので、スロットルバルブの開度を閉じすぎて駆動力が減少しすぎたり、逆に前記開度があまり閉じられずに駆動力の減少量が足りなかったりすることを防ぐことができる。これにより、駆動力の減少量が多かったり、足りなかったりというように、駆動力の減少量が前記開度に左右されることを抑えることができる。
本発明のトラクション制御方法は、複数の気筒を備えるエンジンを有する車両において駆動輪が空転する際に、該駆動輪にかかる駆動力を抑制する方法であって、前記駆動輪の空転量に応じた空転監視値を検出する検出工程と、前記検出工程における検出結果が、予め定められる空転条件を充足するか否かを判定する判定工程と、前記判定工程において空転条件を充足すると判定されると、判定された直後に1番目に点火する予定の前記気筒から予め定められた制御規則に基づいて前記複数の気筒を点火制御して駆動輪にかかる駆動力を抑制するトラクション制御工程とを有し、前記トラクション制御工程では、前記複数の気筒を予め定められた制御規則に基づいて点火制御し、前記制御規則は、駆動力を抑制する駆動力抑制点火制御を1回以上行う動作と、駆動力抑制点火制御より駆動力を大きくさせる駆動力維持点火制御を1回以上行う動作を交互に行う制御パターンを繰り返すように設定されて、前記制御パターンに含まれる制御回数は、前記気筒の総数と異なる数として設定される方法である。
本発明に従えば、点火状態を制御することで燃えずに残った燃料ガスが同じ気筒から連続して排出されることを防ぐことができ、触媒へと排出される燃料ガスを分散させることができる。これにより、燃料ガスの濃度分布の偏りが抑えられる。濃度分布の偏りが抑えられることで、触媒の局所が過剰に発熱してダメージを受け、劣化することを防ぐことができる。また、本発明では、空転条件を充足すると判定した直後から駆動輪の駆動力が減少するので、予め定められた気筒に対して点火制御する場合に比べて速応性が高く、素早く駆動輪の空転を抑えることできる。

本発明によれば、触媒の劣化を抑制することができる。
本発明の実施形態に係るトラクション制御装置を備える自動二輪車の左側面図である。 図1に示す自動二輪車に搭載されたトラクション制御装置の全体を示すブロック図である。 図2に示すトクラクション制御装置のうち、主な構成を示した要部ブロック図である。 トラクション制御装置が実行するメイン処理の手順を示すフローチャートである。 トラクション制御装置が実行する点火系トラクション制御処理の手順を示すフローチャートである。 トラクション制御装置が実行する燃料制御処理の手順を示すフローチャートである。 燃料制御処理を実行した時の各気筒に噴射される燃料量を示す図である。 トラクション制御装置が有する係数Kに関するマップを示す表である。 第2実施形態のトラクション制御装置が実行するメイン処理の手順を示すフローチャートである。 第3実施形態及び第4実施形態のトラクション制御装置が実行するメイン処理の手順を示すフローチャートである。 第5実施形態のトラクション制御装置が実行するメイン処理の手順を示すフローチャートである。 (a)は、係数Aとエンジン回転数との関係を示すグラフであり、(b)は、係数Bとスロットルバルブの開度との関係を示すグラフである。
以下、本発明に係る第1乃至第5実施形態のトラクション制御装置18〜18Dを備える自動二輪車1について図面を参照して説明する。なお、以下の説明で用いる方向の概念は、自動二輪車に騎乗した運転者から見た方向を基準とする。また、以下に説明するトラクション制御装置は、本発明の一実施形態に過ぎず、本発明は実施の形態に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲で追加、削除、変更が可能である。
<第1実施形態>
[自動二輪車]
図1は、本発明に係る第1実施形態のトラクション制御装置18を自動二輪車1の左側面図である。図1に示すように、自動二輪車1(車両)は、路面R上を転動する前輪2及び後輪3を備えており、後輪3は駆動輪であり、前輪2は従動輪である。前輪2は略上下方向に延びるフロントフォーク4の下端部にて回転自在に支持され、該フロントフォーク4は、その上端部に設けられたアッパーブラケット(図示せず)と該アッパーブラケットの下方に設けられたアンダーブラケット(図示せず)とを介してステアリングシャフト(図示せず)に支持されている。該ステアリングシャフトはヘッドパイプ5によって回転自在に支持されている。該アッパーブラケットには左右へ延びるバー型のハンドル6が取り付けられている。
ハンドル6の運転者の右手により把持されるスロットルグリップ7(図2参照)は、回転させることで後述するスロットル装置16を操作するためのスロットル入力手段である。ハンドル6の運転者の左手により把持されるグリップの前方には、クラッチレバー8(クラッチ入力手段)が設けられている。また、その反対側のグリップの前方には、ブレーキレバー(図示せず)が設けられている。運転者はハンドル6を回動操作することにより、前記ステアリングシャフトを回転軸として前輪2を所望の方向へ転向させることができる。
ヘッドパイプ5からは、左右一対のメインフレーム9が若干下方に傾斜しながら後方へ延びており、このメインフレーム9の後部に左右一対のピボットフレーム10が接続されている。このピボットフレーム10には略前後方向に延びるスイングアーム11の前端部が枢支されており、このスイングアーム11の後端部に後輪3が回転自在に軸支されている。ハンドル6の後方には燃料タンク12が設けられており、この燃料タンク12の後方に運転者騎乗用のシート13が設けられている。
前輪2と後輪3の間では、並列四気筒のエンジンEがメインフレーム9及びピボットフレーム10に支持された状態で搭載されている。エンジンEには、変速装置14が接続されており、この変速装置14から出力される駆動力がチェーン15を介して後輪3に伝達される。エンジンEの吸気ポート(図示せず)には、メインフレーム9の内側に配置されたスロットル装置16が接続されている。スロットル装置16の上流側には、燃料タンク12の下方に配置されたエアクリーナ19が接続されており、前方からの走行風圧を利用して外気を取り込む構成となっている。また、エンジンEの排気ポート(図示せず)には、エンジンEの前側から出てエンジンEの下側を通り後輪3の右側へと延びる排気管36が接続されている。排気管36の末端には、マフラー37(図2参照)が設けられており、マフラー37には、触媒が内蔵されている。シート13の下方の内部空間には、スロットル装置16、点火装置26(図2参照)やインジェクタ31などを制御するエンジン制御装置であるECU17(電子制御ユニット)が収容されている。
[トラクション制御装置]
図2は、図1に示す自動二輪車1に搭載されたトラクション制御装置18を示す全体ブロック図である。図2に示すように、トラクション制御装置18は、エアクリーナ19とエンジンEとの間に設けられたスロットル装置16を有している。スロットル装置16は、吸気管20と、吸気管20の下流側に配置されたメインスロットルバルブ21と、吸気管20の上流側に配置されたサブスロットルバルブ22とを有している。メインスロットルバルブ21は、スロットルグリップ7とスロットルワイヤー23を介して接続されており、運転者によるスロットルグリップ7の操作に連動して開閉するよう構成されている。メインスロットルバルブ21には、メインスロットルバルブ21の開度を検出するスロットルポジションセンサ25(スロットル開度センサ)が設けられている。メインスロットルバルブ21は、スロットルグリップ7に機械的に連動している。それ故、スロットルポジションセンサ25は、スロットルグリップ7の開度を間接的に検出可能なスロットル操作量検出手段の役目も果たす。
サブスロットルバルブ22は、ECU17で制御されるモータからなるバルブアクチュエータ24に接続されており、そのバルブアクチュエータ24により開閉されるようになっている。また、スロットル装置16には、その吸気通路に燃料を噴射するためのインジェクタ31が設けられている。エンジンEには、その4つの気筒内の混合気にそれぞれ点火を行う点火装置26が設けられている。エンジンEには、その回転数を検出するエンジン回転数センサ30が設けられ、その動力を変速して後輪3に伝達する変速装置14が接続されている。変速装置14には、動力伝達を遮断/接続するためのクラッチ27が設けられている。クラッチ27は、運転者によりクラッチレバー8が把持されることにより、動力伝達が遮断されるよう構成されている。また、変速装置14には、その変速段を検出するためのギヤポジションセンサ29が設けられている。また、ブレーキレバーは、前輪2を制動するブレーキ機構(図示せず)に接続されており、ブレーキ機構は、運転者によりブレーキレバーが把持されることで前輪2を制動するように構成されている。このブレーキレバーには、運転者によりブレーキレバーが把持されたか否かを検出するブレーキスイッチ28が設けられている。
また、トラクション制御装置18は、前輪2の回転数から車速を検出する前輪車速センサ34と、後輪3の回転数から車速を検出する後輪車速センサ35とを有している。これら前輪車速センサ34及び後輪車速センサ35は、スロットルポジションセンサ25、ギヤポジションセンサ29、エンジン回転数センサ30、及び車体の傾斜角を検出する傾斜角センサ32と共にECU17に接続されている。ECU17は、トラクション制御機能部41と、点火制御部42と、燃料制御部48と、スロットル制御部43とを有している。後述するように、トラクション制御機能部41は、各センサ25,29,30,32,34,35から入力される信号に基づいてトラクション制御に関する演算及び条件判定を行う。点火制御部42は、トラクション制御機能部41での判定結果に基づいて点火装置26を制御する。燃料制御部48は、トラクション制御機能部41での判定結果に基づいてインジェクタ31を制御する。スロットル制御部43は、トラクション制御機能部41での判定結果に基づいてバルブアクチュエータ24を駆動し、サブスロットルバルブ22の開度を制御する。
図3は、図2に示すトラクション制御装置18の主にECU17を説明する要部ブロック図である。図3に示すように、ECU17は、前述したように、トラクション制御機能部41、点火制御部42、燃料制御部48及びスロットル制御部43を備えている。トラクション制御機能部41は、監視値演算部45、条件判定部46及びトラクション制御部47を有している。監視値演算部45は、前輪車速センサ34及び後輪車速センサ35から受信した情報に基づいて、駆動輪である後輪3の空転量に応じた空転監視値Mを逐次演算するようになっている。空転監視値Mは、例えば、以下の数式1で算出される。
M=(V−V)/V …(1)
ここで、Vは、前輪車速センサ34により前輪回転数から得られた前輪車速(周速度)であり、Vは、後輪車速センサ35により後輪回転数から得られた後輪車速(周速度)であり、数式1は、いわゆるスリップ率を演算する式である。このように、前輪車速センサ34、後輪車速センサ35及び監視値演算部45は、空転監視値Mを検出する検出手段を構成している。
本実施形態では、前後輪2,3の回転数の差に対応する値であるスリップ率が空転監視値Mとして逐次演算されている。この空転監視値Mは、前記数式1で演算される値に限定されるものではなく、駆動輪である後輪3の空転量によって変化する値であればよい。例えば、空転監視値Mは、別の計算式で計算されるスリップ率、例えば、前後輪の車速差(V−V)、この車速差を前輪の車速VFで割った値(V−V)/V、前輪2の回転数Rと後輪3の回転数Rの差(R−R)、やそれに応じた値(R−R)/Rであってもよい。また、空転監視値Mは、車速差の変動率Δ(V−V)、回転数の差の変動率Δ(R−R)、後輪Rと車速Vとの差(R−V)、エンジン回転数Neの変動率ΔNe、駆動輪の回転数の変動率ΔR、や駆動輪とエンジンEとを繋ぐ駆動系統(例えば、後述するドライブスプロケット、やドリブンスプロケット)の回転数の変動率等であってもよい。また、前記値を複合的に用いたもの、条件に応じて使い分けたものであってもよいここで、変動率は、所定時間に計測される2つの値の差分をとり、その差分を前記所定時間で割った値である。
条件判定部46(判定手段)は、空転条件を充足するか否かを判定し、空転条件を充足すると、後輪3が路面Rに対して不所望な空転を生じており、後輪3にかかる駆動力を抑制すべきと判定するようになっている。本実施形態では、空転条件は、空転監視値Mが予め定められた定数である制御開始判定値α以上であることであり、条件判定部46は、空転監視値Mが制御開始判定値α以上であるか否かを判定している。この制御開始判定値αは、ギヤポジションセンサ29から得られる変速段に応じて段階的に変化するようになっている。制御開始判定値αは、例えば、変速段が1段上がる毎に大きくなるように設定されており、1速に比べて6速の方が大きく設定されている。なお、空転条件において、制御開始判定値αは、必ずしも定数に限定されず、エンジン回転数、スロットルバルブの開度、及びそれらの変動率等の走行状態及びエンジンの運転状態に応じて変化する変数であってもよい。また、制御開始判定値αは、変速段が1段上がる毎に小さくなるように設定してもよい。
更に、条件判定部46は、切換え条件を充足しているか否かを判定している。条件判定部46は、切換え条件を充足していると判定すると、後輪3が路面Rに対して大きく空転する可能性があり、駆動力をより大きく減少させるべきと判定するようになっている。切換え条件は、空転監視値Mが制御開始判定値αよりも大きい制御切換値βを超えることである。なお、本実施形態において、制御切換値βは、定数であるが、制御開始判定値αと同様に変動率に応じて変化する変数であってもよい。
トラクション制御部47(制御手段)は、後述するように、条件判定部46における判定結果に基づいて、後輪3の駆動力を減少させるトラクション制御を実行する。このトラクション制御では、判定結果に応じて減少させる駆動力を変えるようになっており、減少させる駆動力に応じて点火系トラクション制御及び流量系トラクション制御の何れかのトラクション制御が実行される。点火系トラクション制御は、点火状態(点火間引き及び点火時期の遅角量の少なくとも1つ)を制御して駆動力を減少させるトラクション制御であり、空転条件を充足したときに実行される。流量系トラクション制御は、サブスロットルバルブ22の開度を制御して駆動力を減少させるトラクション制御であり、切換え条件を充足したときに実行される。
トラクション制御部47は、条件判定部46における判定結果に基づいて点火時期の遅角量、燃料噴射量及びサブスロットルバルブ22の開度を決定し、それらの値を指令として点火制御部42、トラクション制御部47、燃料制御部48、及びスロットル制御部43に夫々与える。点火制御部42は、トラクション制御部47からの指令に応じて点火装置26を制御し、燃料制御部48は、トラクション制御部47からの指令に応じてインジェクタ31を制御し、スロットル制御部43は、トラクション制御部47からの指令に応じてバルブアクチュエータ24を制御するようになっている。以下では、トラクション制御装置18が実行するメイン処理等について、図4に示すフローチャートを参照しながら更に具体的に説明する。
[トラクション制御装置の動作]
図4に示すように、自動二輪車1の主電源(図示せず)がオンされると、空転条件を充足するか否かを条件判定部46が判定する(ステップS1)。空転監視値Mが制御開始判定値αよりも小さい場合、条件判定部46は、空転条件を充足せずトラクション制御を実行する必要がないと判定する。そうすると、空転監視値Mが制御開始判定値αよりも大きくなるまで、条件判定部46は、空転条件の充足の可否を逐次判定し続ける。
空転監視値Mが制御開始判定値αよりも大きくなると、条件判定部46は、次に切換え条件を充足しているか否かを判定する(ステップS2)。空転監視値Mが制御切換値βより小さく、条件判定部46が切換条件を充足しないと判定した場合、トラクション制御部47は、点火系トラクション制御を実施すべく、点火系トラクション制御処理を実行し(ステップS3)、実行後、ステップS1へ戻る。また、空転監視値Mが制御切換値βより大きく、条件判定部46が切換条件を充足していると判定すると、トラクション制御部47は、流量系トラクション制御を実施すべく、流量系トラクション制御処理を実行し(ステップS4)、実行後、ステップS1へ戻る。以下では、点火系トラクション制御処理及び流量系トラクション制御処理について詳述する。
まず、点火系トラクション制御処理について、図5を参照しながら説明する。点火系トラクション制御処理が実行されると、トラクション制御部47は、点火制御部42を介して点火装置26に指令し、間引き制御を実施する(ステップS11)。間引き制御は、4つの気筒を予め定められた制御規則に基づいて点火及び失火(非点火)させてエンジン出力を低下させ、後輪3の駆動力を減少させる制御である。制御規則は、例えば、以下の表1に示すような間引きパターンを繰り返すように設定されている。なお、表1の間引きパターンにおいて、「○」が点火、「×」が失火を示している。
Figure 0005520041
表1に示す間引きパターンは、時系列的に連続し、且つエンジンEに備わる気筒数よりも1つ多い燃焼行程に対して点火及び失火の何れをすべきかを規定したものである。具体的に説明すると、間引きパターンは、ステップS11に移行後、その直後に点火される予定の気筒を失火させ、その後、2番目〜5番目に点火される予定の気筒を4回連続して点火するように設定されている。このように空転条件充足直後の気筒を失火させることで所定の気筒を失火させる場合に比べて速応性が高く、素早く駆動輪の空転を抑えることができる。前記間引きパターンに基づいて点火及び失火を行うと、条件判定部46は、再び空転条件及び切換え条件を充足するか否かを判定する(ステップS12)。
空転条件を充足し、且つ切換え条件を充足しない場合、ステップS11へ戻り、トラクション制御部47は、表1に示す間引きパターンでの点火及び失火を繰り返す。つまり、トラクション制御部47は、空転条件及び切換え条件を充足しなくなるまで、表1に示す間引きパターンを繰り返すように4つの気筒を点火及び失火させる。更に具体的に説明すると、トラクション制御部47は、間引きパターンの5番目まで実行すると、間引き制御開始後の6番目に点火時期に達する気筒を間引きパターンの1番目に基づいて失火する。トラクション制御部47は、11番目、16番目、21番目、・・・の気筒に対しても同様の動作を繰り返し実施するようになっており、その結果、間引き制御開始後5n+1番目(n=0,1,2,3,・・・)に点火時期に達する気筒を失火させるようになっている。
このような間引きパターンで間引き制御を行うと、1サイクル毎に失火する気筒が1つずつずらされ、同じ気筒で連続して失火することがなくなる。これにより、失火により気筒内に残る燃料ガスが同じ気筒から連続して排出されることを防ぐことができ、マフラー37へと排出される燃料ガスを分散させることができる。これにより、マフラー37における燃料ガスの濃度分布の偏りを抑えることができる。濃度分布の偏りが抑えられることで、マフラー37内の触媒の局所が過剰に発熱してダメージを受け、劣化することを防ぐことができる。なお、間引きパターンは、表1の間引きパターンのような順及び数に限定されない。例えば、後述するような間引きパターン1又は間引きパターン2であってもよい。
ステップS12において、空転条件及び切換え条件の両方を充足する場合、トラクション制御部47は、後述する流量系トラクション制御処理を実施する(ステップS13)。逆に、空転条件及び切換え条件の両方を充足しない場合、トラクション制御部47は、間引き制御を終了し、点火系トラクション制御処理が終了する。点火系トラクション制御処理が終了すると、メイン処理のステップS1へ戻る。
また、トラクション制御部47は、点火系トラクション制御処理において、間引き制御(ステップS1)に並行して燃料制御処理を実行する(ステップS14)。燃料制御処理は、間引き制御において失火させた気筒に対して次に供給する燃料噴射量を規定量よりも減少させる制御である。規定量とは、トラクション制御が実行されていない状態において、スロットルポジションセンサ25、及びエンジン回転数センサ30等から得られる情報に基づいて設定される量である。以下では、燃料制御処理について、図6を参照しながら説明する。
燃料制御処理は、気筒毎に実施されるようになっており、以下では、燃料制御処理が実施される気筒を「対象気筒」ともいう。燃料制御処理が開始されると、トラクション制御部47は、対象気筒が前回の燃焼行程において失火されたか否かを制御規則に基づいて判定する(ステップS21)。失火されている場合、前回の燃焼行程前における燃料噴射が停止されていたか否かを判定する(ステップS22)。燃料噴射を停止していない場合、トラクション制御部47は、次に、対象気筒が次回の燃焼行程においても失火されるか否かを、制御規則に基づいて判定する(ステップS23)。本実施形態では、2回以上連続して失火されることがないので、トラクション制御部47は、失火されないと判定される。失火されないと判定すると、トラクション制御部47は、燃料制御部48を介してインジェクタ31に指令し、対象気筒に対して次に供給する燃料噴射量を規定量よりも減少させる(ステップS24)。
なお、本実施形態では、同じ気筒で2回以上連続して失火されることがないが、後述する別の実施形態では、同じ気筒で2回連続して失火される場合があるので、ステップS23にて失火されると判定される場合についても説明する。失火されると判定されると、トラクション制御部47は、燃料制御部48を介してインジェクタ31に指令し、対象気筒に対する燃料噴射を停止させる(ステップS25)。このように燃料噴射量が減少される、又は燃料噴射が停止されると、燃料制御処理が終了する。
また、ステップS21にて、トラクション制御部47が前回の燃焼行程において失火していないと判定した場合、及びステップS22にて、トラクション制御部47が前回の燃焼行程前の燃料噴射が停止されていたと判定した場合、トラクション制御部47は、次に、対象気筒が次回の燃焼行程においても失火されるか否かを制御規則に基づいて判定する(ステップS26)。失火される場合、トラクション制御部47は、燃料制御部48を介してインジェクタ31に指令し、対象気筒に対する燃料噴射を停止させる(ステップS25)。失火されない場合、トラクション制御部47は、燃料制御部48を介してインジェクタ31に指令し、対象気筒に対して規定量の燃料を噴射させる(ステップS27)。燃料噴射を停止させる、又は規定量の燃料を噴射させると、燃料制御処理が終了する。燃料制御処理終了後、空転条件を充足し且つ切換え条件を充足しない場合、ステップS12からステップS14に戻り、再び燃料制御処理が実行され、トラクション制御部47は、再び対象気筒が前回の燃焼行程において失火されたか否かを判定する。
以下では、図7を参照しながら燃焼制御処理を更に具体的に説明する。なお、図7において、白抜きの星は、気筒で点火されたこと、「×」は、気筒で失火されたことを示す。また、本実施例では、対象気筒に対して、燃料噴射期間は、点火時期に達するよりも前に設定される。また、網掛けの四角は、そのときに噴射する燃料量を示し、二点鎖線は、噴射すべき規定量を示している。規定量の燃料が噴射される場合、図7では、網掛けの四角しか示されていない。本実施形態において、燃料制御処理は空転条件を充足すると同時に開始するが、空転条件充足直後に失火させる気筒に供給する燃料は既に噴射されているため、その燃料噴射量を低下することができない(図7のZ1参照)。つまり、図7に示すようにトラクション制御開始後に1番目に点火時期に達する気筒(以下では、「第1気筒」ともいう)では、失火するにも係わらず、規定量の燃料が噴射されてしまう。そこで、トラクション制御部47は、第1気筒に関して次回の燃焼行程について燃料制御処理を実行する。トラクション制御部47は、第1気筒に関して、制御規則に基づいて前回の燃焼行程(1番目)で失火され、燃料噴射が停止されておらず、且つ次回の燃焼行程(5番目)では点火されると判定する(ステップS21、S22、S23)。そうすると、トラクション制御部47は、燃料制御部48を介してインジェクタ31に指令し、第1気筒に対して供給される燃料量を規定量よりも減少させる(図7のZ2参照)。
次に、トラクション制御開始から2番目に点火時期に達する気筒(以下では、「第2気筒」ともいう)に関して、トラクション制御部47は、制御規則に基づいて前回の燃焼行程(2番目)で点火され、次回の燃焼行程(6番目)で失火されると判定する(ステップS21、S26)。そうすると、トラクション制御部47は、燃料制御部48を介してインジェクタ31に指令し、第2気筒に対する燃料噴射を停止させる(図7のZ3参照)。更に、第2気筒ではその次の燃焼行程(11番目)にて点火されるので、6番目の燃焼行程の後、第2気筒に関して、トラクション制御部47は、前回の燃焼行程で失火され、且つ燃料噴射が停止され、更に次回の燃焼行程で点火されると判定する(ステップS22、S22、S26)。そうすると、トラクション制御部47は、燃料制御部48を介してインジェクタ31に指令し、第2気筒に規定量の燃料を噴射させる(図7のZ4参照)。
トラクション制御開始から3番目に点火時期に達する気筒(「第3気筒」ともいう)、及び4番目に点火時期に達する気筒(「第4気筒」ともいう)に関して、制御規則に基づいて前回の燃焼行程(3,4番目)及び次回の燃焼行程(7,8番目)が点火であるので、トラクション制御部47は、燃料制御部48を介してインジェクタ31に指令し、規定量の燃料を噴射させる(例えば、図7のZ5,Z6)。
このように失火させた気筒に対して燃料噴射量を減少させることで、失火時において燃料ガスが燃焼及び排気されずに気筒内に残り、気筒内が一時的にリッチ状態になることを防ぐことができる。これにより、失火後に一時的に不所望な駆動力が発生することを抑えることができる。また、失火することが予測できる場合、燃料の噴射を停止するようになっているので、マフラー37へと排気される燃料ガスを少なくすることができ、マフラー37内の触媒のダメージを抑えることができる。
点火系トラクション制御は、前述のような間引き制御に代えて遅角制御(又は、進角制御)を実施して駆動力を減少させるような制御であってもよい。遅角制御は、所定の角度だけ点火時期を非トラクション制御で設定される最適時期よりずらして、駆動力を減少させる制御である。遅角制御(又は、進角制御)は、4つの気筒のうち予め定められた制御規則に基づいて決められた気筒を遅角(又は、進角)させる制御である。遅角制御において制御規則は、例えば、以下の表2に示すような遅角パターンを繰り返すように設定されている。なお、表2の遅角パターンにおいて、数字は遅角角度(deg)を示している。
Figure 0005520041
表2に示す遅角パターンは、時系列的に連続し、且つエンジンEの気筒の総数よりも1つ多い燃焼行程に対して遅角量を規定したものである。
なお、遅角パターンは、表2の間引きパターンのような順及び数に限定されない。例えば、後述するような遅角パターン1又は遅角パターン2を用いることができる。また、間引き制御の場合と同様に、遅角に合わせて燃料噴射量を減少するようにしてもよい。更に、2番目〜5番目の燃焼行程では、必ずしも遅角を0degにする必要はなく、1番目の燃焼行程の遅角量よりも小さい遅角量で遅角させてもよい。2番目〜5番目の燃焼行程における遅角させることで、駆動力の減少量を更に大きくすることができ、且つ0degの場合程ではないが触媒の劣化を抑えることができる。なお、このような全ての燃焼行程で遅角させても、最も遅角量が小さい燃焼行程における遅角が出力維持点火制御となり、前述する実施形態と同様の作用効果が得られる。また、進角制御の場合、遅角量が進角量に代わる以外遅角制御と略同一であるので、その説明は省略する。
このような遅角パターンに基づく遅角制御が実行されると、トラクション制御部47は、点火装置26に指令し、トラクション制御開始から1番目に点火時期に達する気筒の点火時期を30度だけ遅角し(出力抑制点火制御)、2番目〜5番目に点火時期に夫々達する気筒を予め定められた点火時期で点火する(出力維持点火制御)。それ以降は、間引き制御の場合と同様に、空転条件を充足しない、又は切換え条件を充足するまで、点火遅角が繰り返し実施される。これにより、遅角制御開始後、5n+1番目(n=0,1,2,3,・・・)に点火時期に達する気筒の点火時期が遅角させられる。
このような遅角パターンで遅角制御を行うと、点火遅角される気筒が1つずつずらされ、同じ気筒で連続して点火遅角することを防ぐことができる。これにより、燃料ガスが同じ気筒から連続して排出されることを防ぐことができ、マフラー37へと排出される燃料ガスを分散させて、マフラー37における燃料ガスの濃度分布の偏りを抑えることができる。濃度分布の偏りが抑えられることで、マフラー37の触媒の局所が過剰に発熱してダメージを受け、劣化することを防ぐことができる。また、遅角制御を採用した場合、間引きパターンに比べて駆動力の減少量を若干少なくすることができる。
次に、流量系トラクション制御について説明する。流量系トラクション制御処理が実行されると、トラクション制御部47は、流量制御を実施する。流量制御は、バルブアクチュエータ24を駆動してサブスロットルバルブ22を閉じてエンジン出力を低下させ、後輪3の駆動力を減少させる制御である。
流量制御では、トラクション制御部47がサブスロットルバルブ22の開度Tsubを空転監視値Mとメインスロットルバルブ21の開度Thに応じて変化する係数Kにより演算する。そして、トラクション制御部47は、サブスロットルバルブ22の開度を求めた開度Tsubに制御し、各気筒の吸気量を調整するようになっている。演算される開度Tsubは、以下の数式2で求められる。
sub=K×Th …(3)
ここで、係数Kは、現在のスリップ率である空転監視値Mから許容スリップ率Sを引いた変数Sとメインスロットルバルブ21の開度Thとに応じて決まる数であり、係数Kは、トラクション制御部47に図8に示すようなマップとして記憶されている。許容スリップ率Sは、変速装置14の変速段に応じて設定される値であり、変速段が大きくなればなるほど大きくなるように設定されている。
マップは、図8に示すように変数Sが大きくなると係数Kが小さくなり、開度Thが大きくなると係数Kが小さくなるように設定されている。つまり、係数Kは、変数Sが大きく且つ開度Thが大きくなるほど小さく設定され、逆に変数Sが小さく且つ開度Thが小さくなるほど大きく設定されている。トラクション制御部47は、監視値演算部45から空転監視値Mを取得して変数Sを演算し、更に条件判定部46を介してメインスロットルバルブ21の開度Thを取得する。その後、トラクション制御部47は、図8に示すマップを利用し、演算した変数Sと開度Thとに基づいて係数Kを決める。
このようにメインスロットルバルブ21の開度Thに応じて係数Kを決定することで、開度Thが大きいときにサブスロットルバルブ22が大きく閉じられ、逆に開度Thが小さいときにサブスロットルバルブ22が小さく閉じられることで、駆動力の減少量が不所望に増減することを抑制できる。具体的には、開度Thが大きいときにサブスロットルバルブ22の閉じが小さいため十分に駆動力が抑制されなかったり、逆に開度Thが小さいときにサブスロットルバルブ22の閉じが大きいため駆動力が想定以上に減少したりすることを防ぐことができる。
このような流量制御は、切換え条件が充足しなくなるまで継続して行なわれ、切換え条件が充足しなくなると、トラクション制御部47は、流量制御を終了し、流量系トラクション制御処理が終了する。流量系トラクション制御処理が終了すると、メイン処理のステップS1へ戻る(図4参照)。
このように、トラクション制御装置18では、まず速応性が高い点火系トラクション制御を実施し、駆動輪である後輪3にかかる駆動力を迅速に減少させ、後輪3の空転量を迅速に減少させることができる。そして、点火系トラクション制御では減少量が足りないような場合に、点火系トラクション制御から流量系トラクション制御に切換えて後輪3にかかる駆動力をより減少させるようになっている。このように切換えることで、各気筒で失火又は点火遅角させることなく駆動力の減少させることができるので、気筒内からマフラー37へと排出される燃料ガスを低減することができる。これにより、触媒の劣化を抑えることができる。
本実施形態において、流量系トラクション制御処理では、サブスルットルバルブ22の開度Thsubを制御することで駆動力が減少しているが、メインスロットルバルブ21にアクチュエータを設けてメインスロットルバルブ21の開度Thを制御するようにトラクション制御装置18を構成してもよい。その場合、サブスロットルバルブ22は、設けられていなくてもよい。
<第2実施形態>
第2実施形態のトラクション制御装置18Aは、それが実行するメイン処理の内容が第1実施形態のトラクション制御装置18のメイン処理の内容と異なるようになっているが、その構成は、第1実施形態トラクション制御装置18の構成と同じである。以下では、第2実施形態のトラクション制御装置18Aが実行するメイン処理についてだけを説明し、構成については、同一の符合を付して説明を省略する。以下の第3乃至第5実施形態のトラクション制御装置18B〜18Eについても同様である。
第2実施形態のトラクション制御装置18Aが実行するメイン処理では、図9に示すように、自動二輪車1の主電源(図示せず)がオンされると、空転条件を充足するか否かを条件判定部46が判定する(ステップS31)。空転監視値Mが制御開始判定値αよりも小さい場合、条件判定部46は、空転条件を充足せずトラクション制御を実行する必要がないと判定する。そして、空転監視値Mが制御開始判定値αよりも大きくなるまで、空転条件の充足の可否を逐次判定し続ける。
空転監視値Mが制御開始判定値αよりも大きくなると、条件判定部46は、更にスロットルポジションセンサ25からメインスロットルバルブ21の開度を取得し、この開度Thが所定の開度範囲(Th1≦Th≦Th2,Th1,Th2:予め定められる定数)内にあるか否かを判定する(ステップ32)。開度Thが所定の開度範囲内にある場合、条件判定部46は、トラクション制御を実行する必要がないと判定し、ステップS31へ戻る。
開度Thが所定の開度範囲外にある場合、条件判定部46は、更にエンジン回転数センサ30から得られるエンジン回転数Neを取得し、このエンジン回転数Neが所定の回転範囲(Ne1≦Ne≦Ne2,Ne1,Ne2:予め定められる定数)内にあるか否かを判定する(ステップS33)。エンジン回転数Neが所定の回転範囲内にある場合、条件判定部46は、トラクション制御を実行する必要がないと判定し、ステップS31へ戻る。そして、エンジン回転数Neが所定の開度範囲外にある場合、トラクション制御部47は、点火系トラクション制御を実施し(ステップS34)、点火系トラクション制御実施後、ステップS31に戻る。
このようにトラクション制御を実施するトラクション制御装置18Aは、例えば、Th1及びTh2を大きな値に設定し、且つNe1及びNe2も大きな値に設定することで、開度Th及びNeが共に大きくなる加速時等、空転量が上昇するが自動二輪車1の姿勢が安定しているようなときにトラクション制御が実行されることを抑制できる。これにより、後輪3にかかる不所望な駆動力の抑制を防ぐことができる。なお、開度範囲及び回転範囲は、TH1≦Th及びNe1≦Neとしてもよい。
<第3実施形態>
第3実施形態のトラクション制御装置18Bが実行するメイン処理では、図10に示すように、自動二輪車1の主電源(図示せず)がオンされると、空転条件を充足するか否かを条件判定部46が判定する(ステップS41)。空転監視値Mが制御開始判定値αよりも小さい場合、条件判定部46は、空転条件を充足せずトラクション制御を実行する必要がないと判定する。そして、空転監視値Mが制御開始判定値αよりも大きくなるまで、空転条件の充足の可否を逐次判定し続ける。
空転監視値Mが制御開始判定値αよりも大きくなると、条件判定部46は、次に駆動力の減少量を決定すべく、空転監視値Mが第1抑制条件を充足しているか否かを判定する(ステップS42)。第1抑制条件は、例えば空転監視値Mが予め定められた定数である第1空転量判定値γ以上であることである。第1空転量判定値γは、制御開始判定値α及び後述する第2空転量判定値δより大きい値に設定されている。また、第1空転量判定値γは、制御開始判定値αと同様にギヤポジションセンサ29から得られる変速段に応じて段階的に変化するようになっている。このように規定される第1抑制条件を充足している場合、トラクション制御部47は、第1トラクション制御処理を実行する(ステップS43)。第1トラクション制御処理については、後述する。
第1抑制条件を充足していない場合、条件判定部46は、更に第2抑制条件を充足するか否かを判定する(ステップS44)。第2抑制条件は、例えば空転監視値Mが予め定められた定数である第2空転量判定値δ以上であることである。第2空転量判定値δは、制御開始判定値αより大きく、第1空転量判定値γより大きい値(つまり、α<δ<γ)に設定されている。また、第2空転量判定値δは、制御開始判定値αと同様にギヤポジションセンサ29から得られる変速段に応じて段階的に変化するようになっている。このように規定される第2抑制条件を充足している場合、トラクション制御部47は、第2トラクション制御処理を実行する(ステップS45)。第2抑制条件を充足していない場合、第3トラクション制御処理を実行する(ステップS46)。
以下では、第1乃至第3トラクション制御処理について説明する。第1乃至第3トラクション制御処理は、点火系トラクション制御が実施するための処理であり、それらのフローは、第1実施形態の点火系トラクション制御処理のフローと同じである。但し、第1乃至第3トラクション制御処理は、点火及び失火を制御するための制御規則が異なっている。以下では、第1乃至第3トラクション制御処理が夫々基づく制御規則だけを説明し、それらのフローについては、説明を省略する。
第1トラクション制御処理では、トラクション制御部47が第1制御規則に基づいて各気筒を点火又は失火させてエンジン出力を低下させ、第2トラクション制御処理では、トラクション制御部47が第2制御規則に基づいて各気筒を点火又は失火させてエンジン出力を低下させ、第3トラクション制御処理では、トラクション制御部47が第3制御規則に基づいて各気筒を点火又は失火させてエンジン出力を低下させるようになっている。第1制御規則は、以下の表3の間引きパターン1を繰り返すように設定され、第2制御規則は、以下の表3の間引きパターン2を繰り返すように設定され、第3制御規則は、以下の表3の間引きパターン3を繰り返すように設定されている。なお、表3において、「○」が点火、「×」が失火を示している。
Figure 0005520041
表3に示す各間引きパターン1〜3は、表1と同様に時系列的に連続し、且つエンジンEに備わる気筒数よりも1つ多い燃焼行程に対して点火及び失火の何れをすべきかを規定したものである。なお、間引きパターン3は、表1に示す間引きパターンと同じである。
例えば、第1トラクション制御処理の場合、トラクション制御部47は、処理開始直後、間引きパターン1に基づいて1番目に点火時期に達する気筒と2番目に点火時期に達する気筒を連続して失火させ、その次の3番目に点火時期に達する気筒を点火する。そして、4番目に点火時期に達する予定の気筒を再び失火させ、5番目に点火時期に達する気筒を再び点火する。その後も間引きパターン1に基づいて4つの気筒が点火又は失火される。その結果、5n+1番目、5n+2番目、及び5n+4番目(n=0,1,2,3、・・・)に点火される予定の気筒が失火され、同じ気筒が3回以上連続して失火することがないようにできる。
また、第2トラクション制御処理の場合、トラクション制御部47は、処理開始直後、間引きパターン2に基づいて1番目と2番目とに点火時期に夫々達する気筒を連続で失火させ、3番目〜5番目に点火時期に夫々達する気筒を連続して点火する。その後も間引きパターン2に基づいて4つの気筒が点火又は失火される。その結果、5n+1番目、5n+2番目(n=0,1,2,3、・・・)に点火時期に達する予定の気筒が失火され、同じ気筒が3回以上連続して失火することがないようにできる。
トラクション制御装置18Bは、制御規則1〜3のようにパターン内で失火させる気筒の数を変えることで制御規則1〜3毎にエンジン出力の減少量を変化させることができる、つまり後輪3にかかる駆動力の減少量を変化させることができる。そして、制御規則1〜3を空転量に応じて変えることで、空転量に応じた駆動力の減少を実現することができる。これにより、トラクション制御装置18Bは、所望に駆動力を減少することを防ぐことができ、また空転量に係わらず後輪3の空転を迅速に制止することができる。また、制御規則1〜3では、3回以上連続して失火することがないので、マフラー37に排出される燃料ガスの濃度分布の偏りを抑えることができる。これにより、濃度分布の偏りに起因するマフラー37内の触媒の局所の過剰な発熱を防ぎ、発熱による触媒のダメージを防ぐことができる。
なお、第1実施形態と同様に、間引き制御に代えて遅角制御を実施することもできる。その場合、第1トラクション制御処理における第1制御規則は、以下の表4の遅角パターン1を繰り返すように設定され、第2トラクション制御処理における第2制御規則は、以下の表4の遅角パターン2を繰り返すように設定され、第3トラクション制御処理における第3制御規則は、以下の表4の遅角パターン3を繰り返すように設定されている。なお、表4において、数字は遅角角度(deg)を示している。
Figure 0005520041
表4に示す遅角パターンは、時系列的に連続し、且つエンジンEの気筒の総数よりも1つ多い燃焼行程に対して遅角量を規定したものである。なお、制御規則1〜3に基づく遅角制御と制御規則1〜3に基づく間引き制御とは、エンジン出力を低下させる方法が点火時期の遅角か点火間引きかの違いだけであり、遅角及び間引きする気筒は同じであるので、具体的な説明については省略する。
このように、空転量に応じて基づく制御規則1〜3を変化させる遅角制御は、駆動力を減少させる量が小さいこと以外、空転量に応じて基づく制御規則1〜3を変化させる間引き制御と略同様の作用効果を奏する。
<第4実施形態>
第4実施形態のトラクション制御装置18Cは、第1乃至第3トラクション制御処理の内容が異なるだけで、第3実施形態のトラクション制御装置18Bと同じメイン処理を実行する。そこで、メイン処理は、メイン処理についての説明は省略し、第1乃至第3トラクション制御処理についてだけ説明する。
第1トラクション制御処理では、トラクション制御部47が第4制御規則に基づいて間引き制御と遅角制御を同時に実施してエンジン出力低下させるようになっている。第4制御規則とは、以下の表5の間引き・遅角パターンを繰り返すように設定されている。なお、表5において、「×」が失火を示し、数字が点火時の遅角角度(deg)を示している。
Figure 0005520041
表5に示す間引き・遅角パターンは、時系列的に連続し、且つエンジンEに備わる気筒数よりも1つ多い燃焼行程に対して点火及び失火の何れをすべきか、及び点火時期の遅角量を規定したものである。具体的に説明すると、トラクション制御部47は、1番目に点火時期に達する気筒を失火させ、その後2番目〜5番目に点火時期に夫々達する気筒を4回連続して点火する。但し、2番目に点火時期に達する気筒は、点火時期が30degだけ遅角される。このように間引き制御と遅角制御とを組み合わせることで、トラクション制御部47は、駆動力の減少量を微調整することができる。なお、失火させる気筒の数やそれらの間隔、及び遅角させる気筒の数は、駆動力の減少量に応じて変えることができる。失火させる気筒の間隔を変えることは、例えば1番目及び2番目に点火時期に夫々達する気筒を失火する表4の遅角パターン2において、失火させる気筒を2番目に点火時期に達する気筒から3番目に点火時期に達する気筒に変えることである。このように間隔を変えることで、駆動力の減少量を変化させることができる。
第2トラクション制御処理では、制御規則1に基づいて間引き制御が実施される、つまり間引きパターン1を繰り返す間引き制御が実施される。また、第3トラクション制御処理では、制御規則1に基づいて遅角制御が実施される、つまり遅角パターン1を繰り返す遅角制御が実施される。
このように空転量に応じて第1乃至第3トラクション制御処理で制御方法を変えることで、後輪3にかかる駆動力の減少量を空転量に応じて変えることができる。また、制御規則1及び4に基づいて遅角制御、及び間引き制御が実施されるので、触媒のダメージも抑制でき、触媒の劣化を防ぐことができる。
第4実施形態のトラクション制御装置18Cでは、第1乃至第3トラクション制御処理の各々において、予め定められた1つの制御規則に基づいて遅角制御及び間引き制御が実施されているが、第1乃至第3トラクション制御処理の各々にいても、空転監視値Mの値に応じて制御規則を変化させるようにしてもよい。例えば、第3トラクション制御処理において、予め定められた第1閾値δ1と第2閾値δ2(δ2≦δ1)を設定する。δ1≦空転監視値Mの場合、制御規則1(表4の遅角パターン1参照)に基づいて遅角制御を実施し、δ2≦空転監視値M≦δ1の場合、制御規則2(表4の遅角パターン2参照)に基づいて遅角制御を実施し、空転監視値M≦δ2の場合、制御規則3(表4の遅角パターン3参照)に基づいて遅角制御を実施するようにトラクション制御部47が構成される。同様に、第1及び第2トラクション制御処理において、空転監視値Mの値に応じて制御規則を変化させるようにトラクション制御部47が構成される。
なお、第1トラクション制御処理では、空転監視値Mの値に応じて基づく制御規則4〜6を変化させるようになっている。制御規則4は、以下の表6の間引き・遅角パターン1を繰り返すように設定され、制御規則5は、以下の表6の間引き・遅角パターン2を繰り返すように設定され、制御規則6は、以下の表6の間引き・遅角パターン3を繰り返すように設定されている。なお、表6において、「×」が失火を示し、数字が点火時の遅角角度(deg)を示している。
Figure 0005520041
このように各トラクション制御処理において、空転監視値Mの値に応じて制御規則を変化させることで駆動力の減少量を細かく調整することができる。
なお、空転監視値Mの値に応じて変化させる複数の制御規則は、前述するような点火状態を制御する前記気筒の数が夫々異なるもののほか、出力規制制御すべき点火時期の間隔が夫々異なるものであってもよい。また、点火状態が点火遅角量である場合、点火遅角量が夫々異なるものであってもよい。更に、点火制御する気筒数、気筒間隔、点火遅角量などが複合的に異なるものであってもよい。このようにして、制御前に比べて駆動力の減少量が夫々異なるものに設定されることで、空転量に応じた適切な駆動力減少量を与えることができる。
また、トラクション制御装置18Cは、空転監視値Mの値に応じて採用する制御規則を選択するほか、車速、スロットル開度、ギア比など、走行条件・エンジン運転条件に応じて、採用する制御規則を選択するように構成されていてもよい。
<第5実施系形態>
第5実施形態のトラクション制御装置18Dが実行するメイン処理では、図11に示すように、自動二輪車1の主電源(図示せず)がオンされると、空転条件を充足するか否かを条件判定部46が判定する(ステップS51)。空転監視値Mが制御開始判定値αよりも小さい場合、条件判定部46は、空転条件を充足せずトラクション制御を実行する必要がないと判定する。そして、条件判定部46は、空転監視値Mが制御開始判定値αよりも大きくなるまで、空転条件の充足の可否を逐次判定し続ける。
空転監視値Mが制御開始判定値αよりも大きくなると、トラクション制御部47は、遅角パターンを繰り返すように設定される制御規則に基づいて遅角制御を開始する(ステップS52)。遅角制御が始まると、トラクション制御部47は、まず条件判定部46を介してエンジン回転数Ne(エンジン監視値)を取得し、この取得したエンジン回転数Neに基づいて係数Aを算出する(ステップS53)。ここで係数Aは、図12(a)に示すようにエンジン回転数Neに応じて変化し、その変化について表7に示す。
Figure 0005520041
ここで、Ne3〜Ne6は、予め定められたエンジン回転数であり、Ne3<Ne4<Ne5<Ne6を満たす値である。
係数Aを算出すると、トラクション制御部47は、次に条件判定部46を介してメインスロットルバルブ21の開度Th(エンジン監視値)を取得し、この取得した開度Thに基づいて係数Bを算出する(ステップS54)。ここで係数Bは、図12(b)に示すように開度Thに応じて変化し、その変化について表8に示す。
Figure 0005520041
ここで、Th3〜Th6は、予め定められたエンジン回転数であり、Th3<Th4<Th5<Th6を満たす値である。
係数Bを演算すると、トラクション制御部47は、補正遅角量Xdegを決定すべく、以下の数式3を演算する(ステップS55)。
X=A×B×θ …(3)
ここで、遅角量θは、制御規則の遅角パターンにて規定される遅角量であり、本実施形態の遅角量θは、表2に示すように30degである。具体例を挙げて説明すると、エンジン回転数Ne及び開度Thに応じて係数A及び係数Bが夫々0.5と演算されると、補正遅角量Xは、0.5×0.5×30=7.5degとなる。また、係数A及び係数Bの何れか一方が0の場合、補正遅角量Xは、0degとなり、係数A及び係数Bが共に1の場合、補正遅角量Xは、30degとなる。このように補正遅角量Xを演算することで、マップで記憶する場合に比べて記憶容量を少なくすることができ、ECU17に備わる図示しないメモリの負担を低減することができる。補正遅角量Xが演算されると、トラクション制御部47は、制御規則における遅角パターンの遅角量を補正遅角量Xに変更して遅角制御を実施する(ステップS56)。
このように遅角制御している間、条件判定部46は、再び空転条件を充足するか否かを判定する(ステップS57)。充足している場合、ステップS53へ戻り、空転条件を充足しなくなるまで遅角制御が繰り返される。空転条件を充足しなくなると、ステップS51へ戻り、空転監視値Mが制御開始判定値αよりも大きくなるまで、条件判定部46が空転条件の充足の可否を逐次判定し続ける。
このような遅角制御を行なうことで、トラクション制御の開始時及び終了時に急な駆動力の変動が生じることを抑えることができる。これにより、トラクション制御が実行されても、滑らかに加速又は減速することができる。また、エンジン回転数Ne及び開度Thが小さく遅角による影響が大きいところにおいて遅角量を徐々に増減させることで、駆動力の変動を抑えて運転者が受けるショックを小さくすることができる。
なお、本実施形態では、係数A及び係数Bの乗算した値を更に遅角量θに乗算して補正遅角量Xを演算しているが、係数A及び係数Bのどちらか一方を遅角量θに乗算した値を補正遅角量Xとしてもよい。また、係数A及び係数Bは、必ずしもエンジン回転数Ne及び開度Thに応じて決定される値でなくてもよい。例えば、係数Aをトラクション制御開始からの経過時間に応じて変化し、係数Bが空転条件を充足しなくなってからの経過時間に応じて変化するように設定してもよい。この場合、係数Aは、トラクション制御開始からある一定時間経過する迄、経過時間に比例して増加し、前記ある一定時間以降は、A=1になるように設定される。また、係数Bは、B=1に設定され、所定の条件を充足してから空転条件を充足する迄、経過時間に比例して減少し、空転条件充足後は、B=0になるように設定される。このように設定することによっても、トラクション制御の開始時及び終了時に急な駆動力の変動が生じることを抑えることができる。これにより、トラクション制御が実行されても、滑らかに加速又は減速することができる。
また、本実施形態では、係数A及び係数Bの値を1から徐々に減少させる閾値としてエンジン回転数Ne4及び開度Th4が用いられているが、ブレーキの把持が解除されたときや自動二輪車1の傾斜角が小さくなっていくとき等、自動二輪車の加速前に行なわれる動作をトリガーとして係数A及び係数Bの値を徐々に減少させるようにしてもよい。そうすることで、運転者が加速しようとするときまでにトラクション制御を止めることができる。これにより、加速時にトラクション制御が実施されて不所望な駆動力の減少が生じることを防ぐことができる。
なお、ブレーキの把持が解除されたか否かは、ブレーキスイッチ28からの情報に基づき条件判定部46が判定し、また自動二輪車の傾斜角は、傾斜角センサ32に基づき条件判定部46が検出する。
[その他の実施形態について]
第1乃至第5実施形態において、空転監視値Mを演算する時等、エンジン回転数Neに代えてエンジンEに繋がるドライブスプロケットや、ドリブンスプロケット等の駆動系統の回転数を用いてもよい。また、変速装置14と後輪3とを繋ぐチェーン15に代えてドライブシャフトを用い、エンジン回転数Neに代えてドライブシャフトの回転数を用いてもよい。これらの何れの回転数も後輪3が空転すると急激に変化する値である、つまり駆動輪3の空転量に応じて変化する値である。
また、このように制御開始判断後に、Y番目(Yは任意の値)に点火時期に達する気筒に対して、出力規制制御するか否かを予め定められる制御規則(パターンの繰り返し)に基づいて決定する。このときのパターンに含まれる燃焼行程の総数Xは、必ずしも5つに限定されず、3つ以下及び6つ以上であってもよい。つまり、エンジンEの気筒の総数をNとすると、各パターンに含まれる燃焼行程の総数Xは、X≠Nを満たすような数であればよい。更に詳細に説明すると、XがNの約数でなく(即ち、X/N≠自然数)、且つ倍数でない(即ち、N/X≠自然数)ことが好ましい。このようにXを設定することで、同じ気筒に対して頻繁に失火又は近くが繰り返されることをさらに防ぐことがでる。
また、パターンにおいて、少なくとも出力抑制する点火制御を1回行えばよい。つまり、出力抑制制御を1回以上行う動作と、出力維持制御を1回以上行う動作とが含まれることとなる。さらにパターンにおいて、トラクション制御開始判断後に最初に点火時期に達する気筒に対して出力抑制制御することが好ましい。
また、本実施形態では、空転監視値Mに応じて制御規則を切換えるようになっているが、トラクション制御開始すると駆動力の減少量を所望の量まで徐々に増加させ、またトラクション制御終了直前に駆動力の減少量が0になるまで徐々に減少するように制御開始及び終了直前を閾として切換えるようにしてもよい。
更に、本実施形態では、マフラー37内に触媒が配置されるとしたが、これに限定されず、排気管36内に触媒が配置される場合に好適に適用することができる。また、排気管36の触媒前後の部分についても局所的な温度上昇を防ぐことができ、排気管36の触媒前後の部分及び、その周辺に配置される周辺機器の温度上昇を抑えることができる。
本発明では、流量系トラクション制御処理などの点火系以外のエンジン制御処理よりも優先的に点火系トラクション制御処理を行う構成であることが好ましい。なお、流量系トラクション制御処理を実行しない場合についても、本発明の範囲内である。またステップS4,S13において、流量系トラクション制御処理のみを実行するとしたが、ステップS4において、流量系トラクション制御処理とともに点火系トラクション制御処理を併用して行ってもよい。
また本実施形態では、1回の間引きパターンに基づいて点火制御を行うと、再び条件判定するとしたが、それ以外の条件を満足すると、ステップS12へ戻り、再び条件判定してもよい。例えば、2回以上の所定回数の間引きパターンを繰返したり、制御開始後に所定時間経過したり、所定距離走行したりすると、ステップS12へ戻ってもよい。
第1乃至第5実施形態では、トラクション制御装置18〜18Dが自動二輪車1に備わっている場合について説明したが、自動二輪車1に限定されない。例えば、全地形対応車(ATV)や4輪車等の車両にトラクション制御装置18〜18Dを適用してもよい。なお、トラクション制御装置18〜18Dは、気筒毎に個別に点火制御できる車両であれば適用することができ、スロットル弁アクチュエータを具備していない車両等、吸気制御しない車両についても適用することができる。更に、燃料噴射制御しない車両についてもトラクション制御装置18〜18Dを適用することができる。
本発明は、自動二輪車等の車両に搭載され、駆動輪の空転量に応じて駆動輪の駆動力を制御するトラクション制御装置に適用することができる。
2 前輪
3 後輪
18 トラクション制御装置
21 メインスロットルバルブ
22 サブスロットルバルブ
25 スロットルバルブセンサ
30 エンジン回転数センサ
34 前輪車速センサ
35 後輪車速センサ
46 条件判定部
47 トラクション制御部

Claims (10)

  1. 駆動輪の空転量に応じた空転監視値を検出する検出手段と、
    前記検出手段により検出された前記空転監視値が空転条件を充足するかを判定する判定手段と、
    前記判定手段が前記空転条件を充足すると判定すると、所定の順序で点火される複数の気筒の点火状態を夫々制御して前記駆動輪の駆動力を減少させるトラクション制御を実行する制御手段とを備え、
    前記制御手段は、前記トラクション制御において前記点火状態を制御する前記気筒を予め定められる制御規則に基づいて決定し、前記判定手段が前記空転条件を充足すると判定してから1番目に点火する予定の前記気筒から前記制御規則に基づいて前記トラクション制御を実行し、
    前記制御規則は、同じ前記気筒において、所定回数以上連続して前記点火状態が制御されることがないように設定されていることを特徴とするトラクション制御装置。
  2. 前記制御手段は、前記気筒内の混合気に点火する点火装置によって前記点火状態を制御するようになっていることを特徴とする請求項1に記載のトラクション制御装置。
  3. 前記制御規則では、時系列的に連続し、且つ前記気筒の総数より1つ以上少ない又は多い数の燃焼行程に対して前記点火状態を制御すべきか否かが決められたパターンを繰り返すように設定され、
    前記燃焼行程の総数Xは、前記気筒の総数Nの約数且つ倍数でないことを特徴とする請求項1又は2に記載のトラクション制御装置。
  4. 前記判定手段は、更に予め定められる複数の抑制条件を空転監視値が夫々充足するか否かを判定するようになっており、
    前記制御手段は、異なる複数の前記制御規則を有しており、前記判定手段の判定結果に応じて基づく前記制御規則を変えるようになっていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1つに記載のトラクション制御装置。
  5. 前記制御手段は、燃料噴射手段から燃料が噴射された気筒に対して前記トラクション制御により点火状態制御すべく失火制御した場合、当該気筒に対して次に噴射する燃料噴射量を少なくするようになっていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1つに記載のトラクション制御装置。
  6. 前記点火状態には、点火時期が含まれ、
    前記トラクション制御は、前記気筒の点火時期をずらして前記駆動輪の駆動力を減少させる制御であり、
    前記制御手段は、前記トラクション制御の開始後、前記点火時期のズレ量を増加させながら所定量へと遷移させ、更に前記点火時期のズレ量を前記所定量から減少させてから前記トラクション制御を終了させるようになっていることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1つに記載のトラクション制御装置。
  7. 前記検出手段は、エンジンの状態に応じたエンジン監視値を検出し、
    前記制御手段は、前記エンジン監視値に応じて前記点火時期のズレ量を増減させるようになっていることを特徴とすることを特徴とする請求項6に記載のトラクション制御装置。
  8. 前記制御装置は、前記トラクション制御を開始後に切換え条件を充足すると、前記各気筒の吸気状態を制御して前記駆動輪の駆動力を減少させるトラクション制御に切換えるようになっていることを特徴とする請求項1乃至7の何れか1つに記載のトラクション制御装置。
  9. 前記検出手段は、前記複数の気筒の吸気量を調整するスロットルバルブの開度に対応する値である開度監視値を検出し、
    前記制御手段は、切換えた後、前記トラクション制御において、前記空転監視値及び前記開度監視値に応じて前記スロットルバルブの閉じる量を変更して前記各気筒の吸気状態を制御することを特徴とする請求項8に記載のトラクション制御装置。
  10. 複数の気筒を備えるエンジンを有する車両において駆動輪が空転する際に、該駆動輪にかかる駆動力を抑制する方法であって、
    前記駆動輪の空転量に応じた空転監視値を検出する検出工程と、
    前記検出工程における検出結果が、予め定められる空転条件を充足するか否かを判定する判定工程と、
    前記判定工程において空転条件を充足すると判定されると、判定された直後に1番目に点火する予定の前記気筒から予め定められた制御規則に基づいて前記複数の気筒を点火制御して駆動輪にかかる駆動力を抑制するトラクション制御工程とを有し
    記制御規則は、駆動力を抑制する駆動力抑制点火制御を1回以上行う動作と、駆動力抑制点火制御より駆動力を大きくさせる駆動力維持点火制御を1回以上行う動作を交互に行う制御パターンを繰り返すように設定されて、
    前記制御パターンに含まれる制御回数は、前記気筒の総数と異なる数として設定されることを特徴とするトラクション制御方法。
JP2009297975A 2009-12-28 2009-12-28 トラクション制御装置、及びトラクション制御方法 Active JP5520041B2 (ja)

Priority Applications (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2009297975A JP5520041B2 (ja) 2009-12-28 2009-12-28 トラクション制御装置、及びトラクション制御方法
US12/980,265 US8689920B2 (en) 2009-12-28 2010-12-28 Traction control system and method of suppressing driving power

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2009297975A JP5520041B2 (ja) 2009-12-28 2009-12-28 トラクション制御装置、及びトラクション制御方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2011137417A JP2011137417A (ja) 2011-07-14
JP5520041B2 true JP5520041B2 (ja) 2014-06-11

Family

ID=44349061

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2009297975A Active JP5520041B2 (ja) 2009-12-28 2009-12-28 トラクション制御装置、及びトラクション制御方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5520041B2 (ja)

Family Cites Families (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2727714B2 (ja) * 1989-12-28 1998-03-18 三菱自動車工業株式会社 エンジンの出力制御方法
JP2924374B2 (ja) * 1991-11-28 1999-07-26 日産自動車株式会社 車両用駆動力制御装置
JPH06159109A (ja) * 1992-11-27 1994-06-07 Nippondenso Co Ltd 車両用駆動力制御装置
JP2002047968A (ja) * 2000-07-28 2002-02-15 Denso Corp 筒内噴射式内燃機関のトラクション制御装置
JP2006132385A (ja) * 2004-11-04 2006-05-25 Toyota Motor Corp 可変気筒内燃機関の制御装置

Also Published As

Publication number Publication date
JP2011137417A (ja) 2011-07-14

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5926095B2 (ja) 自動二輪車用トラクション制御装置
US8689920B2 (en) Traction control system and method of suppressing driving power
JP5749902B2 (ja) 車両用トラクション制御装置
JP5422376B2 (ja) 車両の制御システム、ウィリー判定方法及び出力抑制方法
CN102536485B (zh) 内燃机的空燃比控制装置及空燃比控制方法
JP5285512B2 (ja) 車両用エンジン制御装置
JP5737243B2 (ja) 車両の制御装置
JP5075021B2 (ja) 乗物
JP6340903B2 (ja) エンジン制御装置
WO2019013330A1 (ja) 車両
JP6224845B2 (ja) 鞍乗型乗り物
US8826885B2 (en) Fuel injection control system
JP6352790B2 (ja) 乗物およびスロットル弁の駆動方法
JP6405866B2 (ja) エンジン制御装置
JP5525256B2 (ja) トラクション制御装置、及び駆動力抑制方法
JP5798387B2 (ja) 騎乗型車両の発進制御装置
JP6593734B2 (ja) 車両の制御装置
JP5520041B2 (ja) トラクション制御装置、及びトラクション制御方法
JP5915173B2 (ja) 加速ショック低減制御装置、加速ショック低減制御方法およびプログラム
JP2006274998A (ja) 内燃機関およびそれを備えた車両
JP5011246B2 (ja) 車両及び燃料カット制御方法
JP6702358B2 (ja) 回転数制御装置
JP5364571B2 (ja) 乗り物及びエンジン制御方法
JP2011058456A (ja) 鞍乗型車両
JP5227862B2 (ja) 内燃機関の制御装置

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20120619

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20130723

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20130725

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20130919

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20140401

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20140404

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5520041

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313111

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250