JP5471837B2 - 焼付硬化性冷延鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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Description
しかし、近年のさらなる高強度化のニーズの高まりにより以下の問題が生じている。
その結果、鋼中に固溶Cを含有させるものであるために、再結晶焼鈍における結晶粒の粒成長性が阻害されて結晶粒が細粒になる傾向にあり、その結果、降伏応力が高くなる傾向にあるBH鋼板について、降伏応力の上昇を抑制しつつ高強度化する方法を見出したのである。
すなわち、プレス成形前の冷延鋼板段階における降伏応力を低下させるには、冷延鋼板の結晶粒径を粗大化させることが有効であり、冷間圧延後の再結晶焼鈍における粒成長を促進させることが有効である。
その結果、熱間圧延に供するスラブの加熱条件が鋼中の析出物の形態に大きく影響を及ぼし、該熱間圧延により得られる熱延鋼板および該熱延鋼板に冷間圧延と再結晶焼鈍とを施すことにより得られる冷延鋼板の鋼組織に大きく影響を及ぼし、該冷延鋼板の機械的特性に大きく影響を及ぼすことを見出したのである。
(1)質量%で、C:0.0005%以上0.030%未満、Si:0.1%以下、Mn:0.05%以上2.0%以下、P:0.005%以上0.06%以下、S:0.020%以下、sol.Al:0.0005%以上0.08%以下およびN:0.005%以下を含有し、残部がFeおよび不純物からなる化学組成を有し、フェライト面積率が90%以上であり、鋼板断面を10000倍の倍率で観察して得られた粒径が0.20μm以下であるMnSの個数割合が10%以下であり、清浄度dが0.05%以下である鋼組織を有し、降伏比が75%以下である機械特性を有することを特徴とする焼付硬化性冷延鋼板。
(3)前記化学組成が、前記Feの一部に代えて、質量%で、Nb:0.080%以下を含有することを特徴とする上記(1)または上記(2)に記載の焼付硬化性冷延鋼板。
(10)鋼板表面にめっき層を有することを特徴とする上記(1)〜上記(9)のいずれかに記載の焼付硬化性冷延鋼板。
(A)上記(1)〜(8)のいずれかに記載の化学組成を有するスラブを1150℃超1250℃未満の温度域に100分間以上300分間以下保持して熱間圧延に供し、Ar3点以上960℃以下の温度域で熱間圧延を完了し、400℃以上700℃未満の温度域で巻き取って熱延鋼板とする熱間圧延工程;
(B)前記熱延鋼板に酸洗を施して酸洗鋼板とする酸洗工程;
(C)前記酸洗鋼板に冷間圧延を施して冷延鋼板とする冷間圧延工程;
(D)前記冷延鋼板に再結晶温度以上Ac3点以下の温度域で焼鈍を施す焼鈍工程;および
(E)前記焼鈍工程を経た鋼板を2%以下の伸び率で圧延するスキンパス圧延工程。
(12)下記工程(A)〜(F)を含むことを特徴とする上記(10)に記載の焼付硬化性冷延鋼板の製造方法:
(A)上記(1)〜(8)のいずれかに記載の化学組成を有するスラブを1150℃超1250℃未満の温度域に100分間以上300分間以下保持して熱間圧延に供し、Ar 3 点以上960℃以下の温度域で熱間圧延を完了し、400℃以上700℃未満の温度域で巻き取って熱延鋼板とする熱間圧延工程;
(B)前記熱延鋼板に酸洗を施して酸洗鋼板とする酸洗工程;
(C)前記酸洗鋼板に冷間圧延を施して冷延鋼板とする冷間圧延工程;
(D)前記冷延鋼板に再結晶温度以上Ac 3 点以下の温度域で焼鈍を施す焼鈍工程;
(E)前記焼鈍工程を経た鋼板を2%以下の伸び率で圧延するスキンパス圧延工程;および
(F)前記スキンパス圧延工程を経た鋼板にめっき処理を施してめっき層を形成するめっき工程。
(1)C:0.0005%以上0.030%未満
Cは、固溶状態で鋼中に存在することにより焼付硬化能を発揮する作用を有する。C含有量が0.0005%未満では、上記作用による効果を得ることが困難である。したがって、C含有量は0.005%以上とする。一方、C含有量が0.030%以上では、成形性の低下が著しくなる場合がある。したがって、C含有量は0.030%未満とする。好ましくは0.025%以下、さらに好ましくは0.010%以下である。
Siは、一般に不純物として含有される元素であるが、延性の低下を抑制しつつ強度を高めるのに有効な元素でもある。また、溶融めっきを施す場合には、適度に含有させることによりめっき密着性を高める作用を有する。したがって、積極的に含有させてもよい。しかしながら、Siは易酸化元素であるため、Si含有量が0.1%超では、非めっき鋼板の場合には化成処理性の低下が著しくなる場合があり、溶融めっき鋼板の場合にはめっき濡れ性の低下により不めっきが生じる場合がある。したがって、Siの含有量は0.1%以下とする。好ましくは0.05%以下、さらに好ましくは0.02%以下である。
Mnは、鋼中のSと結合してMnSを形成し、固溶Sによる熱間脆性を防止する作用を有する。Mn含有量が0.05%未満では上記作用による効果を得ることが困難である。したがって、Mn含有量は0.05%以上とする。一方、Mn含有量が2.0%超では、降伏応力の上昇が著しくなる場合がある。したがって、Mn含有量は2.0%以下とする。好ましくは1.6%以下である。
Pは、r値の低下を抑制しつつ強度を高めるのに有効な元素である。P含有量が0.005%未満では上記作用による効果を得ることが困難である。したがって、P含有量は0.005%以上とする。一方、P含有量が0.06%超では、耐二次加工脆性の低下が著しくなる。また、鋼板表面に合金化溶融亜鉛めっきを施す場合には、合金化速度の低下が著しくなり、適正な合金化度を実現することが困難となる。したがって、Pの含有量は0.06%以下とする。好ましくは0.025%以下である。
Sは、不純物として含有され、粒界に偏析して鋼を脆化させる作用を有する。また、脆化を抑制するためにMnを含有させてMnSとして固定したとしても、MnSの絶対量が過剰であると、MnSが起点となってプレス成形時に割れを誘発する。したがって、S含有量は0.020%以下とする。好ましくは0.012%未満である。S含有量は少ないほど好ましいので下限を限定する必要はないが、コストの観点からは0.002%以上とすることが好ましい。
Alは、脱酸により鋼を健全化する作用を有する。また、鋼中のNをAlNとして固定することにより、固溶Nによる常温時効を抑制する作用を有する。sol.Al含有量が0.0005%未満では上記作用による効果を得ることが困難である。したがって、sol.Al含有量は0.0005%以上とする。好ましくは0.02%以上である。一方、sol.Al含有量を0.08%超としても上記作用による効果は飽和してしまいコスト的に不利になる。したがって、sol.Al含有量は0.08%以下とする。好ましくは0.06%以下である。
Nは、鋼中に不可避的に含有される元素であり、延性、深絞り性および耐常温時効性を劣化させる。このため、N含有量は0.005%以下とする。好ましくは0.0035%以下である。N含有量は少ないほど好ましいのでN含有量の下限を規定する必要はない。ただし、過度に極低窒素化することは、製鋼コストの著しい上昇を伴う。したがって、N含有量は0.001%以上とすることが好ましい。
Tiは、鋼中のNをTiNとして固定することにより、固溶Nによる常温時効を抑制するとともに、鋼板のr値を高める作用を有する。したがって、Tiを含有させてもよい。しかしながら、Ti含有量が0.080%超では、TiCの生成が著しくなり、再結晶焼鈍時の粒成長が阻害されてしまい、結晶粒が微細となって降伏比が上昇し、却って成形性を劣化させる場合がある。したがって、Ti含有量は0.080%以下とする。好ましくは0.040%以下、さらに好ましくは0.025%以下である。なお、上記作用による効果をより確実に得るには、Ti含有量を0.003%以上とすることが好ましい。さらに好ましくは0.005%以上である。
Nbは、鋼中のCを炭化物として固定して固溶C量を適度に調整することにより、常温時効を抑制しつつ焼付硬化能を確保することを容易にする作用を有する。したがって、Nbを含有させてもよい。しかしながら、Nb含有量が0.080%超では、再結晶焼鈍時の粒成長が著しく阻害されてしまい、結晶粒が微細化されて降伏比が上昇し、成形性を劣化させる場合がある。したがって、Nb含有量は0.080%以下とする。好ましくは0.040%以下、さらに好ましくは0.025%以下である。なお、上記作用による効果をより確実に得るには、Nb含有量を0.003%以上とすることが好ましい。
Crは、固溶強化により鋼板の強度を高める作用を有する。したがって、Crを含有させてもよい。しかしながら、Cr含有量が0.50%超では、再結晶焼鈍時に鋼板の表層部に濃化して、非めっき鋼板の場合には化成処理性の低下が著しくなる場合があり、溶融めっき鋼板の場合にはめっき濡れ性の低下により不めっきが生じる場合がある。したがって、Cr含有量は0.50%以下とする。好ましくは0.04%以下、さらに好ましくは0.03%以下である。なお、上記作用による効果をより確実に得るには、Cr含有量を0.005%以上とすることが好ましい。
Bは、結晶粒界に偏析して粒界を強化し、耐二次加工脆性を向上させる作用を有する。したがって、Bを含有させてもよい。しかしながら、B含有量が0.0030%超では、再結晶温度の上昇により、深絞り性の劣化が著しくなる場合がある。したがって、B含有量は0.0030%以下とする。好ましくは0.0015%以下である。なお、上記作用による効果をより確実に得るには、B含有量を0.0003%以上とすることが好ましい。さらに好ましくは0.0005%以上である。
Mo、CuおよびNiは、固溶強化により鋼板の強度を高める作用を有する。したがって、これらの元素の1種または2種以上を含有させてもよい。しかしながら、上記範囲を超えて含有させても上記作用による効果は飽和してしまいコスト的に不利となる。したがって、各元素の含有量は上記範囲とする。なお、上記作用による効果をより確実に得るには、Mo:0.003%以上、Cu:0.003%以上およびNi:0.003%以上のいずれかを満足させることが好ましい。
Ca、Mg、REMおよびZrは、MnSの析出サイトとなる介在物を適度に分散させる作用を有し、該介在物を核としてMnSが析出・粗大化するので、冷延鋼板のフェライト結晶粒の粗大化が促され、冷延鋼板の降伏応力を低下させるのに有効な元素である。したがって、これらの元素の1種または2種以上を含有させてもよい。しかしながら、上記範囲を超えて含有させると表面性状の劣化が著しくなる場合がある。したがって、各元素の含有量は上記範囲とする。なお、上記作用による効果をより確実に得るには、いずれかの元素の含有量を0.0001%以上とすることが好ましい。ここで、REMとは、Sc、Y及びランタノイドの合計17元素を指し、ランタノイドの場合、工業的にはミッシュメタルの形で添加される。本発明におけるREMの含有量はこれらの元素の合計含有量を指す。
Bi、SbおよびSnは、鋳造工程において凝固界面に濃化し、デンドライト間隔を狭くして凝固偏析を小さくするので、鋼板の成形性を高める作用を有する。また、鋼板表面に溶融亜鉛めっきを施す場合には、上記元素の融点が亜鉛よりも低いために、溶融亜鉛めっき工程において溶融亜鉛めっき浴に溶解する傾向にあり、これにより鋼板に対する溶融亜鉛めっきの濡れ性を向上させる作用を有する。したがって、これらの元素の1種または2種以上を含有させてもよい。しかしながら、上記範囲を超えて含有させると、結晶粒界に存在するBi、SbまたはSnが溶融することにより粒界脆化が著しくなる場合がある。したがって、Bi、SbおよびSnの含有量はそれぞれ0.05%以下とする。好ましくは0.01%以下、さらに好ましくは0.0050%以下である。なお、上記作用による効果をより確実に得るには、Bi、SbおよびSnのいずれかの含有量を0.0003%以上とすることが好ましい。
2.鋼組織
(1)フェライト面積率:90%以上
フェライトは、軟質で加工性に富む相であり、降伏比を低下させ、延性および成形性を高める作用を有する。フェライト面積率が90%未満では、上記作用が十分に得られない場合がある。したがって、フェライト面積率は90%以上とする。フェライト面積率は高いほど好ましく、100%であってもかまわない。
MnSを粗大化させて0.20μm超の粒径とすることにより、熱延鋼板の結晶粒径を粗大化させることができ、該熱延鋼板に冷間圧延および再結晶焼鈍を施すことにより得られる冷延鋼板の結晶粒径をも粗大化させることができ、これにより、冷延鋼板の降伏応力を低下させることができる。一方、粒径が0.20μm以下のMnSは、粒成長を阻害して冷延鋼板の結晶粒径の粗大化を困難にする。粒径が0.20μm以下であるMnSの全MnSに占める個数割合が10%超では、冷延鋼板の降伏応力を低下させることが困難である。したがって、粒径が0.20μm以下であるMnSの個数割合を10%以下とする。
上述したようにMnSの粗大化により冷延鋼板の結晶粒径の粗大化を促すことが可能となるが、MnSの絶対量が過剰であるとMnSが起点となってプレス成形時に割れを誘発する。JIS G 0555で規定される清浄度dが0.05%超では成形性の劣化が著しくなる場合がある。したがって、清浄度dは0.05%以下とする。好ましくは0.03以下である。なお、清浄度dはS含有量により制御することができる。
フェライト結晶粒が粗大であるほど降伏応力が低減するので好ましい。したがって、JIS G 0552で規定されるフェライト結晶粒度番号で11.0以下とすることが好ましい。下限は特に規定しないが、フェライト結晶粒を過度に粗大化すると、プレス成形時に肌荒れを生じる場合がある。このため、フェライト結晶粒度番号は7.8以上とすることが好ましい。
(1)降伏比:75%以下
降伏比は75%以下とする。
なお、降伏応力は300MPa以下であることが好ましい。また、引張強さは600MPa以下であることが好ましい。
BH量は5MPa以下70MPa以上であることが好ましい。
上述した鋼板の表面には、耐食性の向上等を目的としてめっき層を備えさせてもよい。めっき層は電気めっき層であってもよく溶融めっき層であってもよい。電気めっき層としては、電気亜鉛めっき、電気Zn−Ni合金めっき等が例示される。溶融めっき層としては、溶融亜鉛めっき、合金化溶融亜鉛めっき、溶融アルミニウムめっき、溶融Zn−Al合金めっき、溶融Zn−Al−Mg合金めっき、溶融Zn−Al−Mg−Si合金めっき等が例示される。めっき付着量は特に制限されず、従来と同様でよい。また、めっき後に適当な化成処理(例えば、シリケート系のクロムフリー化成処理液の塗布と乾燥)を施して、耐食性をさらに高めることも可能である。
本発明に係る冷延鋼板は、上記の化学組成および鋼組織を有し、上記の機械特性を満足する限り、いかなる方法により製造されてもよいが、次に説明する方法により製造すれば、安定的に製造することが実現される。
上記化学組成を有するスラブを1150℃超1250℃未満の温度域に300分間以下保持して熱間圧延に供し、Ar3点以上960℃以下の温度域で熱間圧延を完了し、400℃以上700℃未満の温度域で巻き取って熱延鋼板とする。
巻取温度が700℃以上では、スケール生成が著しいために、後続する酸洗工程においてスケールの除去が困難となり、スケール疵が生じる場合がある。したがって、巻取温度は700℃未満とする。好ましくは680℃以下である。
上記熱間圧延工程により得られた熱延鋼板には酸洗を施してスケール除去して酸洗鋼板とする。酸洗は常法にしたがって行えばよい。例えば、塩酸や硫酸を用いる。
上記酸洗工程により得られた酸洗鋼板に冷間圧延を施して冷延鋼板とする。
冷間圧延は常法にしたがって行えばよい。冷間圧延の圧下率は特に規定しないが、圧下率を高めることにより冷延鋼板の深絞り性が向上する傾向にあるので70%以上とすることが好ましく、80%以上とすることがさらに好ましい。一方、圧下率が高すぎると圧延荷重が過大となって操業が困難になる場合があるので90%以下とすることが好ましい。
上記冷間圧延工程により得られた冷延鋼板に再結晶温度以上Ac3点以下の温度域で焼鈍を施す。
一方、焼鈍温度がAc3点超では、マルテンサイトやベイナイト等の硬質な低温変態生成相の面積率が増大し、降伏応力が増大して成形性が低下する。したがって、焼鈍温度はAc3点以下とする。好ましくは850℃以下である。
上記焼鈍工程を経た鋼板、すなわち、上記焼鈍工程により得られた鋼板またはその鋼板に後述するめっき工程が施された鋼板に対して、通常、平坦矯正や表面粗さの調整のためにスキンパス圧延が施されるが、本発明では、ストレッチャーストレインの抑制の観点からスキンパス圧延を施す。しかしながら、スキンパス圧延の伸び率が2%を超えると、降伏応力の上昇が著しくなる。したがって、スキンパス圧延の伸び率は2%以下とする。好ましくは1.6%以下である。なお、ストレッチャーストレインの抑制の観点からは、0.4%以上とすることが好ましく、0.6%以上とすることがさらに好ましい。
上述した鋼板の表面には、耐食性の向上等を目的としてめっき処理を施してめっき層を備えさせてもよい。めっき層は電気めっき層であってもよく溶融めっき層であってもよい。
表1に示す化学組成の鋼を試験転炉で溶製し、連続鋳造試験機にて250mm厚のスラブを製造した。得られたスラブを加熱して熱間圧延試験機を用いて4.0mm厚まで熱間圧延した。スラブ加熱条件として、スラブを加熱炉から抽出した際の温度(加熱炉抽出温度)と加熱炉内において1150℃超の温度に保持した時間(1150℃超在炉時間)とを、熱間圧延条件として、熱間圧延完了温度と巻取温度とを、表2に示す。
得られた冷延鋼板を表2に示すAc3点以下の焼鈍温度で焼鈍し、表2に示す伸び率でスキンパス圧延した。
得られた鋼板の圧延方向断面を鏡面研磨し、エッチングせずに、鋼板表層部、板厚の1/4深さ位置および板厚中心位置を走査型電子顕微鏡により10000倍の倍率で観察した。各板厚位置について10視野ずつ観察し、各々のMnSの粒径を求め、0.20μm以下の個数比率を求めた。 ここで、粒径は、析出物を画像解析することでそれらの実面積を求め、この実面積を円に置き換え、その円の直径を算出することにより求めた。
また、得られた鋼板の圧延方向断面を鏡面研磨し、ナイタール腐食液を用いてエッチングしてフェライト結晶粒を現出させた後、鋼板表層部、板厚の1/4深さ位置および板厚中心位置を光学顕微鏡により1000倍の倍率で観察した。各板厚位置について10視野ずつ観察し、得られた画像をもとにフェライトの面積率とフェライト結晶粒度番号を求めた。フェライトの結晶粒度番号はJIS G 0552に準拠して求めた。
また、圧延方向からJIS5号引張試験片を採取し、JIS G 3135で規定される塗装焼付硬化量試験方法により、塗装焼付硬化量(BH量)を求めた。
さらに、得られた鋼板の表面を目視で観察し、その外観を評価した。
具体的には、No.5は熱間圧延完了温度がAr3点未満であったため、熱延鋼板および冷延鋼板の結晶粒が微細となってしまい、降伏比が75%を超えた。
No.9は、熱間圧延に供するスラブの1150℃超1250℃未満の温度域における保持時間が300分間を超えてしまった。このため、MnSの大半が再固溶してしまい、再固溶したMnSが熱間圧延中に微細に再析出して、粒径が0.20μm以下であるMnSの個数割合が10%超となった。この微細に再析出したMnSにより熱延鋼板の結晶粒が微細化し、冷延鋼板の結晶粒も微細となってしまい、降伏比が75%を超えた。
具体的には、No.19は、Cr含有量が0.50%を超えていたため、めっき濡れ性の低下により不めっきが生じた。
No.21は、Ti含有量が0.080%を超えていたため、TiCの生成が著しくなり、再結晶焼鈍時の粒成長が阻害されてしまい、結晶粒が微細となって降伏比が75%を超えた。
Claims (12)
- 質量%で、C:0.0005%以上0.030%未満、Si:0.1%以下、Mn:0.05%以上2.0%以下、P:0.005%以上0.06%以下、S:0.020%以下、sol.Al:0.0005%以上0.08%以下およびN:0.005%以下を含有し、残部がFeおよび不純物からなる化学組成を有し、
フェライト面積率が90%以上であり、鋼板断面を10000倍の倍率で観察して得られた粒径が0.20μm以下であるMnSの個数割合が10%以下であり、清浄度dが0.05%以下である鋼組織を有し、降伏比が75%以下である機械特性を有することを特徴とする焼付硬化性冷延鋼板。 - 前記化学組成が、前記Feの一部に代えて、質量%で、Ti:0.080%以下を含有することを特徴とする請求項1に記載の焼付硬化性冷延鋼板。
- 前記化学組成が、前記Feの一部に代えて、質量%で、Nb:0.080%以下を含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の焼付硬化性冷延鋼板。
- 前記化学組成が、前記Feの一部に代えて、質量%で、Cr:0.50%以下を含有することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の焼付硬化性冷延鋼板。
- 前記化学組成が、前記Feの一部に代えて、質量%で、B:0.0030%以下を含有することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の焼付硬化性冷延鋼板。
- 前記化学組成が、前記Feの一部に代えて、質量%で、Mo:1%以下、Cu:1%以下およびNi:1%以下からなる群から選択された1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の焼付硬化性冷延鋼板。
- 前記化学組成が、前記Feの一部に代えて、質量%で、Ca:0.01%以下、Mg:0.01%以下、REM:0.01%以下およびZr:0.01%以下からなる群から選択された1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の焼付硬化性冷延鋼板。
- 前記化学組成が、前記Feの一部に代えて、質量%で、Bi:0.05%以下、Sb:0.05%以下およびSn:0.05%以下からなる群から選択された1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれかに記載の焼付硬化性冷延鋼板。
- フェライト結晶粒度番号が11.0未満である鋼組織を有することを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれかに記載の焼付硬化性冷延鋼板。
- 鋼板表面にめっき層を有することを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれかに記載の焼付硬化性冷延鋼板。
- 下記工程(A)〜(E)を含むことを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれかに記載の焼付硬化性冷延鋼板の製造方法:
(A)請求項1〜8のいずれかに記載の化学組成を有するスラブを1150℃超1250℃未満の温度域に100分間以上300分間以下保持して熱間圧延に供し、Ar3点以上960℃以下の温度域で熱間圧延を完了し、400℃以上700℃未満の温度域で巻き取って熱延鋼板とする熱間圧延工程;
(B)前記熱延鋼板に酸洗を施して酸洗鋼板とする酸洗工程;
(C)前記酸洗鋼板に冷間圧延を施して冷延鋼板とする冷間圧延工程;
(D)前記冷延鋼板に再結晶温度以上Ac3点以下の温度域で焼鈍を施す焼鈍工程;および
(E)前記焼鈍工程を経た鋼板を2%以下の伸び率で圧延するスキンパス圧延工程。 - 下記工程(A)〜(F)を含むことを特徴とする請求項10に記載の焼付硬化性冷延鋼板の製造方法:
(A)請求項1〜8のいずれかに記載の化学組成を有するスラブを1150℃超1250℃未満の温度域に100分間以上300分間以下保持して熱間圧延に供し、Ar 3 点以上960℃以下の温度域で熱間圧延を完了し、400℃以上700℃未満の温度域で巻き取って熱延鋼板とする熱間圧延工程;
(B)前記熱延鋼板に酸洗を施して酸洗鋼板とする酸洗工程;
(C)前記酸洗鋼板に冷間圧延を施して冷延鋼板とする冷間圧延工程;
(D)前記冷延鋼板に再結晶温度以上Ac 3 点以下の温度域で焼鈍を施す焼鈍工程;
(E)前記焼鈍工程を経た鋼板を2%以下の伸び率で圧延するスキンパス圧延工程;および
(F)前記スキンパス圧延工程を経た鋼板にめっき処理を施してめっき層を形成するめっき工程。
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