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JP5471837B2 - 焼付硬化性冷延鋼板およびその製造方法 - Google Patents

焼付硬化性冷延鋼板およびその製造方法 Download PDF

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JP5471837B2 JP2010121435A JP2010121435A JP5471837B2 JP 5471837 B2 JP5471837 B2 JP 5471837B2 JP 2010121435 A JP2010121435 A JP 2010121435A JP 2010121435 A JP2010121435 A JP 2010121435A JP 5471837 B2 JP5471837 B2 JP 5471837B2
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Description

本発明は、焼付硬化性冷延鋼板およびその製造方法に関する。
産業技術分野が高度に分業化した今日、各技術分野において用いられる材料には、特殊かつ高度な性能が要求されている。例えば、プレス成形して使用される鋼板については、プレス形状の多様化に伴い、より優れた成形性が必要とされている。特に、自動車用鋼板に関しては、地球環境への配慮から、車体を軽量化して燃費を向上させることが検討されており。これにより、薄肉高成形性鋼板の需要が著しく高まってきている。そして、プレス成形においては、使用される鋼板の厚さが薄いほど、割れやしわが発生しやすくなるため、より高い深絞り性やより低い降伏応力などの成形性に優れた鋼板が必要とされる。
これまでに、自動車のアウターパネル等の用途に適した深絞り用冷延鋼板として、極低炭素鋼にTiやNbを添加した、いわゆるIF鋼板について多くの提案がなされている。IF鋼板は、鋼中のCおよびNをTiCやTiN等として析出固定し、固溶状態のCやNが鋼中に存在しない状態としている。このため、再結晶焼鈍時に深絞り性に好ましい集合組織が形成され、優れた成形性を得ることができる。
一方、アウターパネルに供される鋼板には、プレス成形前における成形性のみならず、プレス成形後において外部から応力に対する凹みにくさを意味する耐デント性が要求される。耐デント性はアウターパネルに必須とされる性能である。耐デント性を高めるには、塑性変形が生じにくいようにすること、すなわち、降伏応力が高くすることが有効である。
このようなプレス成形前における成形性とプレス成形後における耐デント性という要求に応える鋼板として焼付硬化性鋼板(以下、「BH鋼板」ともいう。)が知られている。例えば、特許文献1に提案されている。
BH鋼板は、歪時効硬化現象を利用するものであり、鋼中に固溶状態のC(以下、「固溶C」ともいう。)を含有させることにより、プレス成形前においては良好なプレス成形性を確保し、プレス成形後においては、塗装焼付処理を施すことにより、プレス成形により導入した転位に上記固溶Cを固着させて降伏応力を高め、これにより良好な耐デント性を確保するものである。
特開平3−257124号公報
このようにBH鋼板は、プレス成形前における成形性とプレス成形後における耐デント性という要求に応える鋼板として広く使用されている。
しかし、近年のさらなる高強度化のニーズの高まりにより以下の問題が生じている。
すなわち、BH鋼板は、上述したように鋼中に固溶Cを含有させるものであるため、再結晶焼鈍における結晶粒の粒成長性が阻害されて結晶粒が細粒になる傾向にあり、その結果、降伏応力が高くなる傾向にある。降伏応力が高いと成型性が低下するので好ましくない。特に、ドアアウターパネル用途においては、降伏応力が高いと面歪が生じやすくなって外観性状を悪化させるため、降伏応力が低いことが要求される。
一方、近年のさらなる高強度化の要求に応えるには、MnやCr等の強化元素を含有させることにより鋼板強度を高めることが必要である。しかし、MnやCr等の強化元素を含有させると、降伏応力も増大してしまう。上述したように、BH鋼板は、元来降伏応力が高くなる傾向にあるため、降伏応力の上昇を抑制しつつBH鋼板の強度を高めることは困難である。
上述したように、特許文献1には焼付硬化性冷延鋼板が提案されているが、降伏応力の上昇による成形性の低下に関しては検討されておらず、成形性の良い鋼板を安定して得ることは困難である。
本発明は、上述した従来技術に鑑みてなされたものであり、プレス成形前においては降伏応力が低くプレス成形性に優れるとともに、プレス成形後においては塗装焼付処理等の熱処理が施されることにより降伏応力が高められて良好な耐デント性を発現しうる冷延鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った。
その結果、鋼中に固溶Cを含有させるものであるために、再結晶焼鈍における結晶粒の粒成長性が阻害されて結晶粒が細粒になる傾向にあり、その結果、降伏応力が高くなる傾向にあるBH鋼板について、降伏応力の上昇を抑制しつつ高強度化する方法を見出したのである。
以下に、上記検討の経過を説明する。
すなわち、プレス成形前の冷延鋼板段階における降伏応力を低下させるには、冷延鋼板の結晶粒径を粗大化させることが有効であり、冷間圧延後の再結晶焼鈍における粒成長を促進させることが有効である。
そして、冷間圧延後の再結晶焼鈍において粒成長を促進させるには、再結晶焼鈍において粒成長を阻害する固溶Cを存在させないように化学組成を調整することが有効である。例えば、TiやNbを含有させて、鋼中のCをTiCやNbCとして固定することが有効である。
しかし、プレス成形後において焼付硬化能を発現させるには、鋼中に固溶Cを存在させることが必要である。したがって、再結晶焼鈍において粒成長を阻害する固溶Cを存在させないように化学組成を調整する方法は採用できない。
そこで、鋼中に固溶Cが存在することを前提として、冷間圧延後の再結晶焼鈍における粒成長を促進させることを鋭意検討した。
その結果、熱間圧延に供するスラブの加熱条件が鋼中の析出物の形態に大きく影響を及ぼし、該熱間圧延により得られる熱延鋼板および該熱延鋼板に冷間圧延と再結晶焼鈍とを施すことにより得られる冷延鋼板の鋼組織に大きく影響を及ぼし、該冷延鋼板の機械的特性に大きく影響を及ぼすことを見出したのである。
すなわち、鋼中に既に析出していたMnSの大半が再固溶する程度の高温域までスラブを加熱すると、再固溶したMnSが熱間圧延中に微細に再析出し、この微細に再析出したMnSによるピンニング効果により熱延鋼板の結晶粒が微細化する。このような結晶粒が微細化した熱延鋼板に冷間圧延を施して再結晶焼鈍を施すと、熱延鋼板において結晶粒が微細化したことが再結晶焼鈍後の鋼組織にまで影響を及ぼし、さらに、焼付硬化性を得るための固溶Cの存在と相俟って、再結晶焼鈍による粒成長が抑制される。その結果、再結晶焼鈍後の冷延鋼板の結晶粒も微細化してしまい、冷延鋼板の降伏応力が上昇してしまうことが判明したのである。
一方、鋼中に既に析出していたMnSの大半が再固溶しない程度の低温域でスラブを加熱すると、再固溶したMnSが再固溶せずに残存したMnSを核として熱間圧延中に再析出する。このため、MnSは粗大となり、MnSによるピンニング効果は小さく、熱延鋼板の結晶粒は比較的粗大となる。このような結晶粒が比較的に粗大な熱延鋼板に冷間圧延を施して再結晶焼鈍を施すと、熱延鋼板において結晶粒が比較的粗大であったことが再結晶焼鈍後の鋼組織にまで影響を及ぼし、焼付硬化性を得るための固溶Cの存在があったとしても、再結晶焼鈍による粒成長が比較的促進される。その結果、再結晶焼鈍後の冷延鋼板の結晶粒も比較的粗大となり、冷延鋼板の降伏応力の上昇を抑制できることが判明したのである。
一例として、C:0.0020%、Si:0.01%、Mn:0.40%、S:0.004%の化学組成を有する鋼材のMnSの析出挙動を熱力学平衡計算によって推定した結果を図1に示す。すなわち、1000℃以上とすることにより、MnSの一部は再固溶する可能性があるものの1250℃未満までは大半のMnSは再固溶せずに残存し、1250℃以上とするとMnSの再固溶が急激に進行する可能性が高くなる。
以上のように、鋼中に固溶Cが存在していても、熱間圧延に供するスラブの加熱条件を適切にすることによりMnSの析出形態を制御でき、これにより再結晶焼鈍における粒成長を促進することができ、低い降伏応力を有するBH鋼板を得ることができるのである。
以上の知見に基づいて完成された本発明は次のとおりである。
(1)質量%で、C:0.0005%以上0.030%未満、Si:0.1%以下、Mn:0.05%以上2.0%以下、P:0.005%以上0.06%以下、S:0.020%以下、sol.Al:0.0005%以上0.08%以下およびN:0.005%以下を含有し、残部がFeおよび不純物からなる化学組成を有し、フェライト面積率が90%以上であり、鋼板断面を10000倍の倍率で観察して得られた粒径が0.20μm以下であるMnSの個数割合が10%以下であり、清浄度dが0.05%以下である鋼組織を有し、降伏比が75%以下である機械特性を有することを特徴とする焼付硬化性冷延鋼板。
(2)前記化学組成が、前記Feの一部に代えて、質量%で、Ti:0.080%以下を含有することを特徴とする上記(1)に記載の焼付硬化性冷延鋼板。
(3)前記化学組成が、前記Feの一部に代えて、質量%で、Nb:0.080%以下を含有することを特徴とする上記(1)または上記(2)に記載の焼付硬化性冷延鋼板。
(4)前記化学組成が、前記Feの一部に代えて、質量%で、Cr:0.50%以下を含有することを特徴とする上記(1)〜上記(3)のいずれかに記載の焼付硬化性冷延鋼板。
(5)前記化学組成が、前記Feの一部に代えて、質量%で、B:0.0030%以下を含有することを特徴とする上記(1)〜上記(4)のいずれかに記載の焼付硬化性冷延鋼板。
(6)前記化学組成が、前記Feの一部に代えて、質量%で、Mo:1%以下、Cu:1%以下およびNi:1%以下からなる群から選択された1種または2種以上を含有することを特徴とする上記(1)〜上記(5)のいずれかに記載の焼付硬化性冷延鋼板。
(7)前記化学組成が、前記Feの一部に代えて、質量%で、Ca:0.01%以下、Mg:0.01%以下、REM:0.01%以下およびZr:0.01%以下からなる群から選択された1種または2種以上を含有することを特徴とする上記(1)〜上記(6)のいずれかに記載の焼付硬化性冷延鋼板。
(8)前記化学組成が、前記Feの一部に代えて、質量%で、Bi:0.05%以下、Sb:0.05%以下およびSn:0.05%以下からなる群から選択された1種または2種以上を含有することを特徴とする上記(1)〜上記(7)のいずれかに記載の焼付硬化性冷延鋼板。
(9)フェライト結晶粒度番号が11.0未満である鋼組織を有することを特徴とする上記(1)〜上記(8)のいずれかに記載の焼付硬化性冷延鋼板。
(10)鋼板表面にめっき層を有することを特徴とする上記(1)〜上記(9)のいずれかに記載の焼付硬化性冷延鋼板。
(11)下記工程(A)〜(E)を含むことを特徴とする上記(1)〜上記(9)のいずれかに記載の焼付硬化性冷延鋼板の製造方法:
(A)上記(1)〜(8)のいずれかに記載の化学組成を有するスラブを1150℃超1250℃未満の温度域に100分間以上300分間以下保持して熱間圧延に供し、Ar点以上960℃以下の温度域で熱間圧延を完了し、400℃以上700℃未満の温度域で巻き取って熱延鋼板とする熱間圧延工程;
(B)前記熱延鋼板に酸洗を施して酸洗鋼板とする酸洗工程;
(C)前記酸洗鋼板に冷間圧延を施して冷延鋼板とする冷間圧延工程;
(D)前記冷延鋼板に再結晶温度以上Ac点以下の温度域で焼鈍を施す焼鈍工程;および
(E)前記焼鈍工程を経た鋼板を2%以下の伸び率で圧延するスキンパス圧延工程。
(12)下記工程(A)〜(F)を含むことを特徴とする上記(10)に記載の焼付硬化性冷延鋼板の製造方法:
(A)上記(1)〜(8)のいずれかに記載の化学組成を有するスラブを1150℃超1250℃未満の温度域に100分間以上300分間以下保持して熱間圧延に供し、Ar 点以上960℃以下の温度域で熱間圧延を完了し、400℃以上700℃未満の温度域で巻き取って熱延鋼板とする熱間圧延工程;
(B)前記熱延鋼板に酸洗を施して酸洗鋼板とする酸洗工程;
(C)前記酸洗鋼板に冷間圧延を施して冷延鋼板とする冷間圧延工程;
(D)前記冷延鋼板に再結晶温度以上Ac 点以下の温度域で焼鈍を施す焼鈍工程;
(E)前記焼鈍工程を経た鋼板を2%以下の伸び率で圧延するスキンパス圧延工程;および
(F)前記スキンパス圧延工程を経た鋼板にめっき処理を施してめっき層を形成するめっき工程。
本発明によれば、プレス成形前においては降伏応力が低く良好なプレス成形性を有し、プレス成形後においては塗装焼付処理等の熱処理が施されることにより降伏応力が効果的に高められ、良好な耐デント性を発現しうる焼付硬化性冷延鋼板およびその製造方法が提供される。本発明に係る焼付硬化性冷延鋼板は、自動車のアウターパネルに好適である。本発明に係る焼付硬化性冷延鋼板は、自動車の車体軽量化を通じて地球環境問題の解決に寄与できるなど産業の発展に寄与するところ大である。
熱力学平衡計算によるMnSの析出状況を示すグラフである。
以下、本発明に係る焼付硬化性冷延鋼板の化学組成および鋼組織ならびにその鋼板の好適な製造方法について詳述する。以下の説明において、化学組成を規定する「%」は特にことわりがない限り「質量%」である。
1.化学組成
(1)C:0.0005%以上0.030%未満
Cは、固溶状態で鋼中に存在することにより焼付硬化能を発揮する作用を有する。C含有量が0.0005%未満では、上記作用による効果を得ることが困難である。したがって、C含有量は0.005%以上とする。一方、C含有量が0.030%以上では、成形性の低下が著しくなる場合がある。したがって、C含有量は0.030%未満とする。好ましくは0.025%以下、さらに好ましくは0.010%以下である。
(2)Si:0.1%以下
Siは、一般に不純物として含有される元素であるが、延性の低下を抑制しつつ強度を高めるのに有効な元素でもある。また、溶融めっきを施す場合には、適度に含有させることによりめっき密着性を高める作用を有する。したがって、積極的に含有させてもよい。しかしながら、Siは易酸化元素であるため、Si含有量が0.1%超では、非めっき鋼板の場合には化成処理性の低下が著しくなる場合があり、溶融めっき鋼板の場合にはめっき濡れ性の低下により不めっきが生じる場合がある。したがって、Siの含有量は0.1%以下とする。好ましくは0.05%以下、さらに好ましくは0.02%以下である。
(3)Mn:0.05%以上2.0%以下
Mnは、鋼中のSと結合してMnSを形成し、固溶Sによる熱間脆性を防止する作用を有する。Mn含有量が0.05%未満では上記作用による効果を得ることが困難である。したがって、Mn含有量は0.05%以上とする。一方、Mn含有量が2.0%超では、降伏応力の上昇が著しくなる場合がある。したがって、Mn含有量は2.0%以下とする。好ましくは1.6%以下である。
(4)P:0.005%以上0.06%以下
Pは、r値の低下を抑制しつつ強度を高めるのに有効な元素である。P含有量が0.005%未満では上記作用による効果を得ることが困難である。したがって、P含有量は0.005%以上とする。一方、P含有量が0.06%超では、耐二次加工脆性の低下が著しくなる。また、鋼板表面に合金化溶融亜鉛めっきを施す場合には、合金化速度の低下が著しくなり、適正な合金化度を実現することが困難となる。したがって、Pの含有量は0.06%以下とする。好ましくは0.025%以下である。
(5)S:0.020%以下
Sは、不純物として含有され、粒界に偏析して鋼を脆化させる作用を有する。また、脆化を抑制するためにMnを含有させてMnSとして固定したとしても、MnSの絶対量が過剰であると、MnSが起点となってプレス成形時に割れを誘発する。したがって、S含有量は0.020%以下とする。好ましくは0.012%未満である。S含有量は少ないほど好ましいので下限を限定する必要はないが、コストの観点からは0.002%以上とすることが好ましい。
(6)sol.Al:0.0005以上0.08%以下
Alは、脱酸により鋼を健全化する作用を有する。また、鋼中のNをAlNとして固定することにより、固溶Nによる常温時効を抑制する作用を有する。sol.Al含有量が0.0005%未満では上記作用による効果を得ることが困難である。したがって、sol.Al含有量は0.0005%以上とする。好ましくは0.02%以上である。一方、sol.Al含有量を0.08%超としても上記作用による効果は飽和してしまいコスト的に不利になる。したがって、sol.Al含有量は0.08%以下とする。好ましくは0.06%以下である。
(7)N:0.005%以下
Nは、鋼中に不可避的に含有される元素であり、延性、深絞り性および耐常温時効性を劣化させる。このため、N含有量は0.005%以下とする。好ましくは0.0035%以下である。N含有量は少ないほど好ましいのでN含有量の下限を規定する必要はない。ただし、過度に極低窒素化することは、製鋼コストの著しい上昇を伴う。したがって、N含有量は0.001%以上とすることが好ましい。
(8)Ti:0.080%以下
Tiは、鋼中のNをTiNとして固定することにより、固溶Nによる常温時効を抑制するとともに、鋼板のr値を高める作用を有する。したがって、Tiを含有させてもよい。しかしながら、Ti含有量が0.080%超では、TiCの生成が著しくなり、再結晶焼鈍時の粒成長が阻害されてしまい、結晶粒が微細となって降伏比が上昇し、却って成形性を劣化させる場合がある。したがって、Ti含有量は0.080%以下とする。好ましくは0.040%以下、さらに好ましくは0.025%以下である。なお、上記作用による効果をより確実に得るには、Ti含有量を0.003%以上とすることが好ましい。さらに好ましくは0.005%以上である。
(9)Nb:0.080%以下
Nbは、鋼中のCを炭化物として固定して固溶C量を適度に調整することにより、常温時効を抑制しつつ焼付硬化能を確保することを容易にする作用を有する。したがって、Nbを含有させてもよい。しかしながら、Nb含有量が0.080%超では、再結晶焼鈍時の粒成長が著しく阻害されてしまい、結晶粒が微細化されて降伏比が上昇し、成形性を劣化させる場合がある。したがって、Nb含有量は0.080%以下とする。好ましくは0.040%以下、さらに好ましくは0.025%以下である。なお、上記作用による効果をより確実に得るには、Nb含有量を0.003%以上とすることが好ましい。
(10)Cr:0.50%以下
Crは、固溶強化により鋼板の強度を高める作用を有する。したがって、Crを含有させてもよい。しかしながら、Cr含有量が0.50%超では、再結晶焼鈍時に鋼板の表層部に濃化して、非めっき鋼板の場合には化成処理性の低下が著しくなる場合があり、溶融めっき鋼板の場合にはめっき濡れ性の低下により不めっきが生じる場合がある。したがって、Cr含有量は0.50%以下とする。好ましくは0.04%以下、さらに好ましくは0.03%以下である。なお、上記作用による効果をより確実に得るには、Cr含有量を0.005%以上とすることが好ましい。
(11)B:0.0030%以下
Bは、結晶粒界に偏析して粒界を強化し、耐二次加工脆性を向上させる作用を有する。したがって、Bを含有させてもよい。しかしながら、B含有量が0.0030%超では、再結晶温度の上昇により、深絞り性の劣化が著しくなる場合がある。したがって、B含有量は0.0030%以下とする。好ましくは0.0015%以下である。なお、上記作用による効果をより確実に得るには、B含有量を0.0003%以上とすることが好ましい。さらに好ましくは0.0005%以上である。
(12)Mo:1%以下、Cu:1%以下およびNi:1%以下からなる群から選択された1種または2種以上
Mo、CuおよびNiは、固溶強化により鋼板の強度を高める作用を有する。したがって、これらの元素の1種または2種以上を含有させてもよい。しかしながら、上記範囲を超えて含有させても上記作用による効果は飽和してしまいコスト的に不利となる。したがって、各元素の含有量は上記範囲とする。なお、上記作用による効果をより確実に得るには、Mo:0.003%以上、Cu:0.003%以上およびNi:0.003%以上のいずれかを満足させることが好ましい。
(13)Ca:0.01%以下、Mg:0.01%以下、REM:0.01%以下およびZr:0.01%以下からなる群から選択された1種または2種以上
Ca、Mg、REMおよびZrは、MnSの析出サイトとなる介在物を適度に分散させる作用を有し、該介在物を核としてMnSが析出・粗大化するので、冷延鋼板のフェライト結晶粒の粗大化が促され、冷延鋼板の降伏応力を低下させるのに有効な元素である。したがって、これらの元素の1種または2種以上を含有させてもよい。しかしながら、上記範囲を超えて含有させると表面性状の劣化が著しくなる場合がある。したがって、各元素の含有量は上記範囲とする。なお、上記作用による効果をより確実に得るには、いずれかの元素の含有量を0.0001%以上とすることが好ましい。ここで、REMとは、Sc、Y及びランタノイドの合計17元素を指し、ランタノイドの場合、工業的にはミッシュメタルの形で添加される。本発明におけるREMの含有量はこれらの元素の合計含有量を指す。
(14)Bi:0.05%以下、Sb:0.05%以下およびSn:0.05%以下からなる群から選択された1種または2種以上
Bi、SbおよびSnは、鋳造工程において凝固界面に濃化し、デンドライト間隔を狭くして凝固偏析を小さくするので、鋼板の成形性を高める作用を有する。また、鋼板表面に溶融亜鉛めっきを施す場合には、上記元素の融点が亜鉛よりも低いために、溶融亜鉛めっき工程において溶融亜鉛めっき浴に溶解する傾向にあり、これにより鋼板に対する溶融亜鉛めっきの濡れ性を向上させる作用を有する。したがって、これらの元素の1種または2種以上を含有させてもよい。しかしながら、上記範囲を超えて含有させると、結晶粒界に存在するBi、SbまたはSnが溶融することにより粒界脆化が著しくなる場合がある。したがって、Bi、SbおよびSnの含有量はそれぞれ0.05%以下とする。好ましくは0.01%以下、さらに好ましくは0.0050%以下である。なお、上記作用による効果をより確実に得るには、Bi、SbおよびSnのいずれかの含有量を0.0003%以上とすることが好ましい。
残部はFeおよび不純物である。
2.鋼組織
(1)フェライト面積率:90%以上
フェライトは、軟質で加工性に富む相であり、降伏比を低下させ、延性および成形性を高める作用を有する。フェライト面積率が90%未満では、上記作用が十分に得られない場合がある。したがって、フェライト面積率は90%以上とする。フェライト面積率は高いほど好ましく、100%であってもかまわない。
フェライト面積率が100%未満である場合、残部組織としては、マルテンサイト、ベイナイト、パーライト、残留γおよびセメンタイトが例示される。目的とする機械特性に応じて、これらの面積率を決定すればよい。例えば、降伏比を低下させつつ引張強度を高めるためにマルテンサイトやベイナイトの面積率を高めたり、延性を高めつつ引張強度を高めるために残留オーステナイトの面積率を高めたりしてもよい。ただし、上述したようにフェライト面積率を90%以上とするため、これらの相および組織の合計面積率は10%以下に抑える。
(2)粒径が0.20μm以下であるMnSの個数割合:10%以下
MnSを粗大化させて0.20μm超の粒径とすることにより、熱延鋼板の結晶粒径を粗大化させることができ、該熱延鋼板に冷間圧延および再結晶焼鈍を施すことにより得られる冷延鋼板の結晶粒径をも粗大化させることができ、これにより、冷延鋼板の降伏応力を低下させることができる。一方、粒径が0.20μm以下のMnSは、粒成長を阻害して冷延鋼板の結晶粒径の粗大化を困難にする。粒径が0.20μm以下であるMnSの全MnSに占める個数割合が10%超では、冷延鋼板の降伏応力を低下させることが困難である。したがって、粒径が0.20μm以下であるMnSの個数割合を10%以下とする。
(3)清浄度d:0.05%以下
上述したようにMnSの粗大化により冷延鋼板の結晶粒径の粗大化を促すことが可能となるが、MnSの絶対量が過剰であるとMnSが起点となってプレス成形時に割れを誘発する。JIS G 0555で規定される清浄度dが0.05%超では成形性の劣化が著しくなる場合がある。したがって、清浄度dは0.05%以下とする。好ましくは0.03以下である。なお、清浄度dはS含有量により制御することができる。
(4)フェライト結晶粒度番号:11.0以下
フェライト結晶粒が粗大であるほど降伏応力が低減するので好ましい。したがって、JIS G 0552で規定されるフェライト結晶粒度番号で11.0以下とすることが好ましい。下限は特に規定しないが、フェライト結晶粒を過度に粗大化すると、プレス成形時に肌荒れを生じる場合がある。このため、フェライト結晶粒度番号は7.8以上とすることが好ましい。
3.機械特性
(1)降伏比:75%以下
降伏比は75%以下とする。
降伏比が75%超では、プレス成形時にしわや破断が生じたり、寸法精度が悪化したりする場合がある。また、ドアアウター等のパネルでは、面歪が生じて外観が悪化する場合がある。したがって、降伏比は75%以下とする。好ましくは70%以下である。
降伏比の下限は特に規定する必要はないが、耐常温時効性の観点から塗装焼付硬化量(JIS G 3135で規定される塗装焼付硬化量試験方法により求められる圧延方向の値であり、以下、「BH量」ともいう。)の上限を制限することが好ましいことからすれば、プレス成形後において良好な耐デント性を得るには、プレス成形前の降伏応力はある程度必要である。このような観点から降伏比は50%以上とすることが好ましい。
なお、降伏応力は300MPa以下であることが好ましい。また、引張強さは600MPa以下であることが好ましい。
(2)塗装焼付硬化量(BH量):5MPa以上70MPa以下
BH量は5MPa以下70MPa以上であることが好ましい。
BH量が5MPa未満では、塗装焼付処理等の熱処理による降伏応力の増加が小さいため、熱処理後において良好な耐デント性を確保することが困難となる場合がある。したがって、BH量は5MPa以上とすることが好ましい。好ましくは15MPa超である。BH量を15MPa超とすると、固溶Cによる結晶粒界の強化がより確実になり、耐二次加工脆性が一層向上する。
一方、BH量が70MPa超では、常温時効が容易に進行するため、プレス成形時にストレッチャーストレインが発生しないように焼付硬化性冷延鋼板の保管期間や保管場所などを厳格に管理する必要が生じる。したがって、BH量は70MPa以下とすることが好ましい。さらに好ましくは60MPa以下である。
4.めっき層
上述した鋼板の表面には、耐食性の向上等を目的としてめっき層を備えさせてもよい。めっき層は電気めっき層であってもよく溶融めっき層であってもよい。電気めっき層としては、電気亜鉛めっき、電気Zn−Ni合金めっき等が例示される。溶融めっき層としては、溶融亜鉛めっき、合金化溶融亜鉛めっき、溶融アルミニウムめっき、溶融Zn−Al合金めっき、溶融Zn−Al−Mg合金めっき、溶融Zn−Al−Mg−Si合金めっき等が例示される。めっき付着量は特に制限されず、従来と同様でよい。また、めっき後に適当な化成処理(例えば、シリケート系のクロムフリー化成処理液の塗布と乾燥)を施して、耐食性をさらに高めることも可能である。
5.製造条件
本発明に係る冷延鋼板は、上記の化学組成および鋼組織を有し、上記の機械特性を満足する限り、いかなる方法により製造されてもよいが、次に説明する方法により製造すれば、安定的に製造することが実現される。
(1)熱間圧延工程
上記化学組成を有するスラブを1150℃超1250℃未満の温度域に300分間以下保持して熱間圧延に供し、Ar点以上960℃以下の温度域で熱間圧延を完了し、400℃以上700℃未満の温度域で巻き取って熱延鋼板とする。
熱間圧延に供するスラブを保持する温度が1150℃以下では、熱間圧延の圧延荷重が過大となり操業が困難となる場合がある。また、後述する熱間圧延完了温度を確保することが困難となる場合がある。したがって、熱間圧延に供するスラブを保持する温度は1150℃以上とする。好ましくは1180℃以上である。
一方、熱間圧延に供するスラブを保持する温度が1250℃以上では、鋼中に既に析出していたMnSの大半が再固溶してしまい、再固溶したMnSが熱間圧延中に微細に再析出し、この微細に再析出したMnSによるピンニング効果により熱延鋼板の結晶粒が微細化する。このような結晶粒が微細化した熱延鋼板に冷間圧延を施して再結晶焼鈍を施すと、熱延鋼板において結晶粒が微細化したことが再結晶焼鈍後の鋼組織にまで影響を及ぼし、さらに、焼付硬化性を得るための固溶Cの存在と相俟って、再結晶焼鈍による粒成長が抑制される。その結果、再結晶焼鈍後の冷延鋼板の結晶粒も微細化してしまい、冷延鋼板の降伏応力が上昇してしまう。したがって、熱間圧延に供するスラブを保持する温度は1250℃未満とする。好ましくは1230℃以下である。
また、上記温度域に保持する時間もMnSの再固溶挙動に影響を及ぼす。上記温度域に保持する時間が300分超では、熱間圧延に供するスラブを保持する温度が1250℃以上である場合と同様の現象が生じる。したがって、上記温度域に保持する時間は300分間以下とする。好ましくは200分間以下である。上記温度域に保持する時間の下限は特に規定する必要はないが、スラブの温度の均一化を図る観点からは100分間以上とすることが好ましい。
熱間圧延完了温度がAr点未満では、熱延鋼板の結晶粒が微細化して、冷延鋼板の結晶粒も微細化してしまう。このため、冷延鋼板の降伏応力が上昇して、プレス成形前において良好な成形性を確保することが困難となる。したがって、熱間圧延完了温度はAr点以上とする。
一方、熱間圧延完了温度が960℃超では、スケール疵が発生しやすくなる。したがって、熱間圧延完了温度は960℃以下とする。
巻取温度が700℃以上では、スケール生成が著しいために、後続する酸洗工程においてスケールの除去が困難となり、スケール疵が生じる場合がある。したがって、巻取温度は700℃未満とする。好ましくは680℃以下である。
一方、巻取温度が400℃未満では、熱延鋼板の結晶粒が微細化して、冷延鋼板の結晶粒も微細化してしまうため、冷延鋼板の降伏応力が上昇して、プレス成形前において良好な成形性を確保することが困難となる。したがって、巻取温度は400℃以上とする。好ましくは450℃以上である。
また、熱間圧延工程が粗熱間圧延工程と仕上熱間圧延工程とからなる場合には、粗熱間圧延工程により得られる粗バーを加熱または保温することが、材質の均質化を図る観点から好ましい。この場合、加熱手段としては加熱炉を用いてもよいが、短時間で加熱が可能な誘導加熱装置や通電加熱装置を用いることが好ましい。また、保温手段としては、保温カバーやコイルボックスが例示される。また、粗熱間圧延は圧延荷重の軽減および熱間圧延完了温度確保の観点から1000℃以上の温度域で行うことが好ましい。
(2)酸洗工程および冷間圧延工程
上記熱間圧延工程により得られた熱延鋼板には酸洗を施してスケール除去して酸洗鋼板とする。酸洗は常法にしたがって行えばよい。例えば、塩酸や硫酸を用いる。
(3)冷間圧延工程
上記酸洗工程により得られた酸洗鋼板に冷間圧延を施して冷延鋼板とする。
冷間圧延は常法にしたがって行えばよい。冷間圧延の圧下率は特に規定しないが、圧下率を高めることにより冷延鋼板の深絞り性が向上する傾向にあるので70%以上とすることが好ましく、80%以上とすることがさらに好ましい。一方、圧下率が高すぎると圧延荷重が過大となって操業が困難になる場合があるので90%以下とすることが好ましい。
(4)焼鈍工程
上記冷間圧延工程により得られた冷延鋼板に再結晶温度以上Ac点以下の温度域で焼鈍を施す。
焼鈍温度が再結晶温度未満では、鋼組織が未再結晶組織からなるため著しく成形性に劣る。したがって、焼鈍温度は再結晶温度以上とする。好ましくは750℃以上である。
一方、焼鈍温度がAc点超では、マルテンサイトやベイナイト等の硬質な低温変態生成相の面積率が増大し、降伏応力が増大して成形性が低下する。したがって、焼鈍温度はAc点以下とする。好ましくは850℃以下である。
(5)スキンパス圧延工程
上記焼鈍工程を経た鋼板、すなわち、上記焼鈍工程により得られた鋼板またはその鋼板に後述するめっき工程が施された鋼板に対して、通常、平坦矯正や表面粗さの調整のためにスキンパス圧延が施されるが、本発明では、ストレッチャーストレインの抑制の観点からスキンパス圧延を施す。しかしながら、スキンパス圧延の伸び率が2%を超えると、降伏応力の上昇が著しくなる。したがって、スキンパス圧延の伸び率は2%以下とする。好ましくは1.6%以下である。なお、ストレッチャーストレインの抑制の観点からは、0.4%以上とすることが好ましく、0.6%以上とすることがさらに好ましい。
(6)めっき工程
上述した鋼板の表面には、耐食性の向上等を目的としてめっき処理を施してめっき層を備えさせてもよい。めっき層は電気めっき層であってもよく溶融めっき層であってもよい。
溶融めっきを施す場合には、上記焼鈍工程後であって上記スキンパス圧延工程前に溶融めっきを施すことが好ましく、連続溶融めっき設備を用いて上記焼鈍工程と連続させることが好ましい。溶融めっきが合金化溶融亜鉛めっきである場合には溶融亜鉛めっきの後に合金化処理を施し、めっき層中のFe濃度が5質量%以上13質量%以下になるようにすることが好ましい。Fe濃度が5質量%未満では、めっき層が軟質すぎて摺動性に劣る場合があり、13%超では、めっき層が脆くなり剥離しやすいからである。また、合金化処理後に、めっき表層に潤滑処理やFeめっき処理などの後処理を施してよい。電気めっきを施す場合には、上記スキンパス圧延工程後に電気めっきを施すことが好ましい。各めっき処理は常法にしたがえばよい。
本発明を、実施例を参照しながらより具体的に説明する。
表1に示す化学組成の鋼を試験転炉で溶製し、連続鋳造試験機にて250mm厚のスラブを製造した。得られたスラブを加熱して熱間圧延試験機を用いて4.0mm厚まで熱間圧延した。スラブ加熱条件として、スラブを加熱炉から抽出した際の温度(加熱炉抽出温度)と加熱炉内において1150℃超の温度に保持した時間(1150℃超在炉時間)とを、熱間圧延条件として、熱間圧延完了温度と巻取温度とを、表2に示す。
Figure 0005471837
Figure 0005471837
得られた熱延鋼板を塩酸酸洗によりスケール除去した後に0.65mm厚まで冷間圧延した。
得られた冷延鋼板を表2に示すAc点以下の焼鈍温度で焼鈍し、表2に示す伸び率でスキンパス圧延した。
一部の鋼板については、焼鈍後の冷却途中で460℃の溶融亜鉛めっき浴に浸漬して溶融亜鉛めっきを施し、めっき後に加熱して合金化処理を行った。この際のめっき付着量は45g/mとし、めっき層中のFe濃度は9.5質量%とした。
また、一部の鋼板については、スキンパス圧延後の鋼板に電気めっきを施した。この際のめっき付着量は70g/mとした。
得られた鋼板の圧延方向断面を鏡面研磨し、エッチングせずに、鋼板表層部、板厚の1/4深さ位置および板厚中心位置を走査型電子顕微鏡により10000倍の倍率で観察した。各板厚位置について10視野ずつ観察し、各々のMnSの粒径を求め、0.20μm以下の個数比率を求めた。 ここで、粒径は、析出物を画像解析することでそれらの実面積を求め、この実面積を円に置き換え、その円の直径を算出することにより求めた。
また、清浄度dをJIS G 0555の規定に準拠して測定した。
また、得られた鋼板の圧延方向断面を鏡面研磨し、ナイタール腐食液を用いてエッチングしてフェライト結晶粒を現出させた後、鋼板表層部、板厚の1/4深さ位置および板厚中心位置を光学顕微鏡により1000倍の倍率で観察した。各板厚位置について10視野ずつ観察し、得られた画像をもとにフェライトの面積率とフェライト結晶粒度番号を求めた。フェライトの結晶粒度番号はJIS G 0552に準拠して求めた。
また、圧延方向からJIS5号引張試験片を採取し、引張試験を行うことにより、降伏応力(YS)、引張強さ(YS)および降伏比(YR)を求めた。
また、圧延方向からJIS5号引張試験片を採取し、JIS G 3135で規定される塗装焼付硬化量試験方法により、塗装焼付硬化量(BH量)を求めた。
さらに、得られた鋼板の表面を目視で観察し、その外観を評価した。
評価結果を表2に示す。なお、表1および2における、化学組成、製造条件、組織特性および機械特性を示す数値に下線が付されたものは、本発明の規定の範囲外であることを示している。
本発明に係る鋼板は、いずれも、降伏比、フェライト結晶粒度番号、BH量、MnSのサイズおよび比率、清浄度は規定範囲内であり自動車外板パネルの製品としての品質(外観)も良好で、成形性に優れた鋼板が得られた。
化学組成が本発明の規定を満足するにおいても、製造条件が本発明の規定から外れる場合には降伏比が過度に高くなり、成形性に優れる鋼板は得られなかった。
具体的には、No.5は熱間圧延完了温度がAr点未満であったため、熱延鋼板および冷延鋼板の結晶粒が微細となってしまい、降伏比が75%を超えた。
No.6は、熱間圧延に供するスラブの加熱温度が1250℃以上であった。このため、MnSの大半が再固溶してしまい、再固溶したMnSが熱間圧延中に微細に再析出して、粒径が0.20μm以下であるMnSの個数割合が10%超となった。この微細に再析出したMnSにより熱延鋼板の結晶粒が微細化し、冷延鋼板の結晶粒も微細となってしまい、降伏比が75%を超えた。
No.7は、スキンパス圧延の伸び率が2%を超えていたため、降伏比が75%を超えた。
No.9は、熱間圧延に供するスラブの1150℃超1250℃未満の温度域における保持時間が300分間を超えてしまった。このため、MnSの大半が再固溶してしまい、再固溶したMnSが熱間圧延中に微細に再析出して、粒径が0.20μm以下であるMnSの個数割合が10%超となった。この微細に再析出したMnSにより熱延鋼板の結晶粒が微細化し、冷延鋼板の結晶粒も微細となってしまい、降伏比が75%を超えた。
No.18は、S含有量が0.020%を超えていたため、粒径が0.20μm以下であるMnSの個数割合が10%超となった。この微細に再析出したMnSにより熱延鋼板の結晶粒が微細化し、冷延鋼板の結晶粒も微細となってしまい、降伏比が75%を超えた。さらに、清浄度dが0.05%を超えていた。
化学組成が本発明の規定を満足しない場合には、特定の成分の含有量が不適切であったことに基づき、品質や機械特性の劣化が認められた。
具体的には、No.19は、Cr含有量が0.50%を超えていたため、めっき濡れ性の低下により不めっきが生じた。
No.20は、Nb含有量が0.080%を超えていたため、再結晶焼鈍時の粒成長が著しく阻害されてしまい、結晶粒が微細化されて、降伏比が75%を超えた。
No.21は、Ti含有量が0.080%を超えていたため、TiCの生成が著しくなり、再結晶焼鈍時の粒成長が阻害されてしまい、結晶粒が微細となって降伏比が75%を超えた。
No.22は、Mn含有量が高いため、結晶粒が微細化され、鋼板強度が600MPa超となったのみならず、降伏応力も300MPaを超えた。このような鋼板は、プレス成形したときに面歪が発生することが懸念されるため、自動車アウターパネルへの適用は困難である。

Claims (12)

  1. 質量%で、C:0.0005%以上0.030%未満、Si:0.1%以下、Mn:0.05%以上2.0%以下、P:0.005%以上0.06%以下、S:0.020%以下、sol.Al:0.0005%以上0.08%以下およびN:0.005%以下を含有し、残部がFeおよび不純物からなる化学組成を有し、
    フェライト面積率が90%以上であり、鋼板断面を10000倍の倍率で観察して得られた粒径が0.20μm以下であるMnSの個数割合が10%以下であり、清浄度dが0.05%以下である鋼組織を有し、降伏比が75%以下である機械特性を有することを特徴とする焼付硬化性冷延鋼板。
  2. 前記化学組成が、前記Feの一部に代えて、質量%で、Ti:0.080%以下を含有することを特徴とする請求項1に記載の焼付硬化性冷延鋼板。
  3. 前記化学組成が、前記Feの一部に代えて、質量%で、Nb:0.080%以下を含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の焼付硬化性冷延鋼板。
  4. 前記化学組成が、前記Feの一部に代えて、質量%で、Cr:0.50%以下を含有することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の焼付硬化性冷延鋼板。
  5. 前記化学組成が、前記Feの一部に代えて、質量%で、B:0.0030%以下を含有することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の焼付硬化性冷延鋼板。
  6. 前記化学組成が、前記Feの一部に代えて、質量%で、Mo:1%以下、Cu:1%以下およびNi:1%以下からなる群から選択された1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の焼付硬化性冷延鋼板。
  7. 前記化学組成が、前記Feの一部に代えて、質量%で、Ca:0.01%以下、Mg:0.01%以下、REM:0.01%以下およびZr:0.01%以下からなる群から選択された1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の焼付硬化性冷延鋼板。
  8. 前記化学組成が、前記Feの一部に代えて、質量%で、Bi:0.05%以下、Sb:0.05%以下およびSn:0.05%以下からなる群から選択された1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれかに記載の焼付硬化性冷延鋼板。
  9. フェライト結晶粒度番号が11.0未満である鋼組織を有することを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれかに記載の焼付硬化性冷延鋼板。
  10. 鋼板表面にめっき層を有することを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれかに記載の焼付硬化性冷延鋼板。
  11. 下記工程(A)〜(E)を含むことを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれかに記載の焼付硬化性冷延鋼板の製造方法:
    (A)請求項1〜8のいずれかに記載の化学組成を有するスラブを1150℃超1250℃未満の温度域に100分間以上300分間以下保持して熱間圧延に供し、Ar点以上960℃以下の温度域で熱間圧延を完了し、400℃以上700℃未満の温度域で巻き取って熱延鋼板とする熱間圧延工程;
    (B)前記熱延鋼板に酸洗を施して酸洗鋼板とする酸洗工程;
    (C)前記酸洗鋼板に冷間圧延を施して冷延鋼板とする冷間圧延工程;
    (D)前記冷延鋼板に再結晶温度以上Ac点以下の温度域で焼鈍を施す焼鈍工程;および
    (E)前記焼鈍工程を経た鋼板を2%以下の伸び率で圧延するスキンパス圧延工程。
  12. 下記工程(A)〜(F)を含むことを特徴とする請求項10に記載の焼付硬化性冷延鋼板の製造方法:
    (A)請求項1〜8のいずれかに記載の化学組成を有するスラブを1150℃超1250℃未満の温度域に100分間以上300分間以下保持して熱間圧延に供し、Ar 点以上960℃以下の温度域で熱間圧延を完了し、400℃以上700℃未満の温度域で巻き取って熱延鋼板とする熱間圧延工程;
    (B)前記熱延鋼板に酸洗を施して酸洗鋼板とする酸洗工程;
    (C)前記酸洗鋼板に冷間圧延を施して冷延鋼板とする冷間圧延工程;
    (D)前記冷延鋼板に再結晶温度以上Ac 点以下の温度域で焼鈍を施す焼鈍工程;
    (E)前記焼鈍工程を経た鋼板を2%以下の伸び率で圧延するスキンパス圧延工程;および
    (F)前記スキンパス圧延工程を経た鋼板にめっき処理を施してめっき層を形成するめっき工程。
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