以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
第1図は、実施の形態に係る浴室排水装置を備えた浴室の概略斜視図であり、第2図は排水トラップ付近の斜視図、第3図は排水トラップ及び排水枡の縦断面図、第4図は第3図のIV−IV線断面図である。
第1図の通り、浴室1の洗い場パン2の浴槽3側に排水枡4が一体形成されている。この排水枡4の下側に排水トラップ10が連結されている。排水トラップ10の側面の流入口11と浴槽3の底面の排水口3aとが、配管5を介して接続されている。
また、排水トラップ10の上面部には、洗い場2側からの排水が排水枡4を通り流入する洗い場排水受入口A(第2図)が設けられている。排水トラップ10の流入口11とほぼ反対側の側面の流出口12には、排水管6が接続されている。
なお、この実施の形態では、排水トラップ10の上部の側周面の導入口13には、浴槽3の側壁に設けられている追焚循環口から漏れる水を受け止める追焚循環口受けトレー7からの排水が配管8を介して流入する。ただし、配管8及び導入口13は省略され、浴槽排水と洗い場排水のみを受け入れるよう構成してもよい。
第3図に示すように、排水枡4は洗い場パン2と一体状に凹み状に形成されており、その上面には排水目皿9が覆設されている。
排水枡6の底側にはフランジ部材15がパッキン16を介して取り付けられ、このフランジ部材15にネジ込み方式により、排水トラップ10の上端が取り付けられている。フランジ部材15を通して排水トラップ10内に上方から着脱可能にヘアキャッチャー17が差し込まれている。このヘアキャッチャー17は、上面が開いたカゴ(篭)状である。
この実施の形態では、ヘアキャッチャー17は下方側へ向かって縮径する略逆円錐台形状を有する。ヘアキャッチャー17は、その下端が排水トラップ10内の封水面Wよりも若干(例えば10mm以下程度)上方に位置するようにフランジ部材15に支持されている。なお、ヘアキャッチャー17は、排水トラップ10内に形成される旋回流によって上方に押されても浮き上がらないようにフランジ部材15に係止部(符号略)によって係止されている。符号17aは、ヘアキャッチャー17の着脱時に指等で摘むための摘み部を示している。
排水トラップ10の下部のうち前記浴槽排水の流入口11と反対側は、側方へ膨出した膨出部20となっている。この膨出部20と、ヘアキャッチャー17の下側領域とは円弧状に湾曲した縦板状の遮蔽部材21によって区画されている。これにより、ヘアキャッチャー17を囲む部分及びその下方は、略円筒状の受入室22となっている。遮蔽部材21の下端は、排水トラップ10の底面から若干(例えば5〜30mm)上方に離隔しており、この遮蔽部材21の下側に開口23が形成されている。受入室22内の水は、この開口23を通って膨出部20へ流出可能となっている。
なお、この実施の形態では、遮蔽部材21が排水トラップ10の本体部分とは別体の板状体を取り付けた構成となっているが、遮蔽部材21は排水トラップ10と一体に、排水トラップ10の天井側から垂設されるよう成形されてもよい。
上記流入口11は、この受入室22の底面からヘアキャッチャー17の下端よりも高い位置まで縦方向に延びる縦長状に形成されている。なお、浴槽排水流入口11は、受入室22の内周面の接線方向を指向している。
この浴槽排水流入口11は、排水トラップ10の外側へ突出しており、この突出した部分に前記配管5が接続されている。
受入室22内には、筒軸心方向を上下方向とした円筒体24が設置されている。この円筒体24の外周面と受入室22の内周面との間が環状水路25となっている。円筒体24の下端からは複数個の脚部24aが突設され、各脚部24aが受入室22の底面に当接している。なお、図示は省略するが、受入室22の底面には、この脚部24aの下端が嵌合する凸条などの保持部が設けられている。これにより、円筒体24は受入室22内に受入室22と略同軸状に、位置ズレしないように、且つ着脱可能に据え付けられる。この円筒体24の下端と受入室22の底面との間には、脚部24aの高さ分だけ間隙があいている。
排水トラップ10の前記膨出部20の膨出方向の先端側に前記流出口12が設けられている。膨出部20内の底面のうち、遮蔽部材21と流出口12との中間付近から封水壁27が立設されており、この封水壁27の上端が封水面Wとされている。
このように構成された浴室排水装置の作動について次に説明する。
水を張った浴槽3の排水口3aの排水栓を抜くと、浴槽3内の浴槽水の一部が配管5及び流入口11から排水トラップ10の受入室22内に流入し、環状水路25内で旋回流を形成する。受入室22内の水位は次第に上昇し、ヘアキャッチャー17あるいはさらに排水枡4が旋回流に浸水した状態となる。これにより、排水枡4の内面やヘアキャッチャー17に付着しているゴミや毛髪がこすり落とされて、ゴミや髪の毛は渦の中心に集められ、渦の中心から下方へ落下し、ヘアキャッチャー17の下端の底面中央部に良好に集められる。
受入室22内で旋回している水の一部は、遠心力の助勢を得て遮蔽部材21の下側の開口23を通って膨出部20内に流出する。また、受入室22内で旋回している水の一部は、渦の中心側に集まり、円筒体24の内側を通って受入室22内の底部に到り、膨出部20へ流出する。膨出部20内に流入した水は、封水壁27を乗り越え、排水管6へ流出する。
この実施の形態では、このように受入室22内に流入した水が環状水路25を旋回することにより、円筒体24を設けない場合に比べて受入室22の内周面に沿う旋回流速が大きくなると共に、受入室22の内周面に沿って水位が素早く上昇するようになる。従って、浴槽3からの排水流量が少ない場合でも、ヘアキャッチャー17や排水枡4の内面の掃除効果が良いものとなる。さらに、この実施の形態では、渦を形成した水がヘアキャッチャー17及び円筒体24の軸心付近を通ることにより、ヘアキャッチャー17内のゴミがヘアキャッチャー17の中心付近に効率よく集められる。
浴槽3からすべての水が流出すると、旋回流は停止し、排水トラップ10内には封水壁27の上端のレベルの封水が残る。これにより、排水管6側と洗い場2及び浴槽3側とはいずれも封水によって隔絶されることになり、排水管6の臭気が洗い場2や浴槽3へ逆流することが防止される。
[円柱体を受入室22内に設置した実施の形態]
第5,6図は、円筒体24の代わりに円柱体28を受入室22内に設置した実施の形態に係る排水トラップ10Aを示すものであり、第5図は前記第3図と同様部分の縦断面図、第6図は第5図のVI−VI線断面図である。
円柱体28は、円柱軸心方向を上下方向として、受入室22内の下部中央に受入室22と同軸状に設置されている。円柱体28は、受入室22の底部に設けられた係合部(図示略)に係合することにより、位置ズレしないように、また着脱可能に据え付けられている。
円柱体28の外周面と受入室22の内周面との間に環状水路25が形成されている。
円柱体28の上端面は封水面Wよりも下位となっている。
この排水トラップ10Aのその他の構成は、第1〜3図の排水トラップ10と同一であり、同一符号は同一部分を示している。
この排水トラップ10Aにおいても、水を張った浴槽3の排水口3aの排水栓を抜くと、浴槽3内の浴槽水の一部が配管5及び流入口11から排水トラップ10Aの受入室22内に流入し、環状水路25内で旋回流を形成する。受入室22内の水位は次第に上昇し、ヘアキャッチャー17あるいはさらに排水枡4が旋回流に浸水した状態となる。これにより、排水枡4の内面やヘアキャッチャーに付着しているゴミや毛髪がこすり落とされて、ゴミや髪の毛は渦の中心に集められ、渦の中心から下方へ落下し、ヘアキャッチャー17の下端の底面中央部に良好に集められる。
受入室22内で旋回している水の一部は、遠心力の助勢を得て遮蔽部材21の下側の開口23を通って膨出部20内に流出し、次いで封水壁27を乗り越え、排水管6へ流出する。
このように受入室22内に流入した水が環状水路25を旋回することにより、円柱体28を設けない場合に比べて受入室22の内周面に沿う旋回流速が大きくなると共に、受入室22の内周面に沿って水位が素早く上昇するようになる。従って、浴槽3からの排水流量が少ない場合でも、ヘアキャッチャー17や排水枡4の内面の掃除効果が良いものとなる。
[椀形円筒体を受入室内に設置した実施の形態]
第7図は椀形円筒体を受入室内に設置した排水トラップ30の縦断面図、第8図はこの排水トラップの斜視図である。
図示は省略するが、この排水トラップ30を備えた浴室1においても、洗い場パン2の浴槽3側に排水枡4が一体形成されている。この排水枡4に対し下側から排水トラップ30が連結されている。
第8図に示すように、排水トラップ30の側面の流入口31と浴槽3の底面の排水口3a(図示略)とが配管5を介して接続されている。
また、排水トラップ30の上面部には、洗い場2側からの排水が排水枡4を通り流入する洗い場排水受入口が設けられている。排水トラップ30の流入口31とほぼ反対側の側面の流出口32には排水管6が接続されている。
排水枡の底側にはフランジ部材15がパッキン(図示略)を介して取り付けられ、このフランジ部材15にネジ込み方式により、排水トラップ30の上端が取り付けられている。フランジ部材15を通して排水トラップ30内に上方から着脱可能にヘアキャッチャー17が差し込まれている。
この実施の形態でも、ヘアキャッチャー17は、その下端が排水トラップ30内の封水面よりも若干上方に位置するようにフランジ部材15に支持されている。なお、ヘアキャッチャー17は、排水トラップ10内に形成される旋回流によって上方に押されても浮き上がらないようにフランジ部材15に係止部(符号略)によって係止されている。
排水トラップ30の構成について次に詳細に説明する。
この排水トラップ30は、筒軸心方向を上下方向とした円筒形のアッパーハウジング33を備えており、このアッパーハウジング33内が受入室34となっている。
アッパーハウジング33の底部に、円板状の底板35が設けられ、この底板35の中央に開口36が設けられている。この開口36の上縁から円筒形のトラップ筒37が立設されている。このトラップ筒37の上端レベルが封水レベルである。
トラップ筒37に上方から被さるように円筒体38が設置されている。円筒体38の外周面とアッパーハウジング33の内周面との間に所定の間隔があいており、両者の間が環状水路39となっている。
円筒体38は、下部が開放し、上部が天蓋部38aで封じられた有蓋無底形の椀形である。この天蓋部38aとトラップ筒37の上端との間には、所定の通水間隔があいている。円筒体38の内周面とトラップ筒37の外周面との間にも、所定の通水間隔があいている。
円筒体38の下端からは脚体(図示略)が立設され、この脚体が底板34に当接している。これにより、円筒体38の下端と底板34との間には所定のスペースがあいている。なお、図示は省略するが、底板35には、円筒体38の横ズレを防止するための凸条等の位置決め部が突設されている。
アッパーハウジング33の下側にロワーハウジング40が一体的に設けられており、このロワーハウジング40内が流出室41となっている。この流出室41は開口36を介して受入室34内と連通している。
ロワーハウジング40は、アッパーハウジング33の下側から側方へ延出しており、この延出方向の先端側が開放して前記流出口32となっている。
水を張った浴槽3の排水口3aの排水栓を抜くと、浴槽3内の浴槽水の一部が配管5及び流入口31から排水トラップ30の受入室34内に流入し、環状水路39内で旋回流を形成する。受入室34内の水位は次第に上昇し、ヘアキャッチャー17あるいはさらに排水枡4が旋回流に浸水した状態となる。これにより、排水枡4の内面やヘアキャッチャーに付着しているゴミや毛髪がこすり落とされて、ゴミや髪の毛は渦の中心に集められ、渦の中心から下方へ落下し、ヘアキャッチャー17の下端の底面中央部に良好に集められる。
環状水路39内で旋回している水は、円筒体38の下端を回り込み、円筒体38とトラップ筒37との間を上昇し、トラップ筒37の上端を回り込み、トラップ筒37内から開口36を通って流出室41に流入し、流出口32から排水管6へ流出する。
このように受入室34内に流入した水が環状水路39を旋回することにより、受入室34の内周面に沿う旋回流速が大きくなると共に、受入室34の内周面に沿って水位が素早く上昇するようになる。従って、浴槽3からの排水流量が少ない場合でも、ヘアキャッチャー17や排水枡4の内面の掃除効果が良いものとなる。
浴槽からすべての水が流出すると、旋回流は停止し、排水トラップ30内にはトラップ筒37の上端のレベルの封水が残る。これにより、排水管6側と洗い場2及び浴槽3側とはいずれも封水によって隔絶されることになり、排水管6の臭気が洗い場2や浴槽3へ逆流することが防止される。
第9図は異なる実施の形態に係る排水トラップの縦断面斜視図、第10図は第9図において円筒体38及びヘアキャッチャー17を取り外した状態を示す図、第11図は第9図のXI−XI線断面図である。
この実施の形態にあっては、アッパーハウジング33の内周面に沿ってガイド板33aが設けられている。本実施の形態では、このガイド板33aは、流入口31付近からアッパーハウジング33の内周面を旋回方向下流側に向ってアッパーハウジング33の内周面を約半周するように延設されている。このガイド板33aの旋回方向先端側(流入口31側)のレベルは、流入口31の下縁付近以下で且つ円筒体38の下端のレベル以上となっている。ガイド板33aは、旋回方向下流側に向って上り勾配となるように設けられている。ガイド板33aの旋回方向末端側のレベルは、流入口31の上縁付近となっている。ガイド板33aが旋回流を乱さないようにするために、ガイド板33aの旋回方向先端側と末端側のレベルの差が流入口31の口径の0.5〜3倍、特に1〜2倍となるようにするのが好ましい。
ガイド板33aの幅(アッパーハウジング33の半径方向の幅員)は、アッパーハウジング33の内周面と円筒体38の外周面との間隔の70%以下、特に30〜70%程度が好ましい。
この排水トラップ30Aのその他の構成は第7図及び第8図の排水トラップと同様であり、同一符号は同一部分を示している。
このようにガイド板33aを設けた排水トラップ30Aにあっては、流入口31からアッパーハウジング33内に接線方向に流入した水が、アッパーハウジング33の内周面に沿って主に上方へ広がるようにして流れるようになる。即ち、流入口31からアッパーハウジング33内に流入した水がアッパーハウジング33の内周面に沿って下方へ広がることが防止ないし抑制され、流入口31からの流入水が短絡的に円筒体38の下端をくぐり抜けることが防止される。これにより、アッパーハウジング33内の旋回流速が増大する。
なお、この実施の形態では、ガイド板33aは、アッパーハウジング33の内周面を約半周するように延在しているが、ガイド板33aの周方向の長さはアッパーハウジング33の周長の20〜100%程度であればよい。この場合のガイド板33aの旋回方向における上り勾配は、第9図〜第11図の場合と同程度とするのが好ましい。
[円筒体をヘアキャッチャーに設けた実施の形態]
前述の第1〜4図及び第5,6図の各実施の形態では、円筒体24及び円柱体28は、それぞれ、受入室22の底面に載置されているが、本発明においては、円筒体又は円柱体は、ヘアキャッチャーに連なったものであってもよい。
第12図は、このように構成された排水トラップ10’の縦断面図である。
この排水トラップ10’は、前述の第1〜4図の実施の形態において、円筒体24を受入室22に底面に戴置する代わりに、該円筒体24をヘアキャッチャー17の下に吊り下げ状に連結した構成となっている。
即ち、この実施の形態では、円筒体24は、ヘアキャッチャー17の下側に、その筒軸心方向を上下方向として設置され、その上端が該ヘアキャッチャー17の底面に連結されている。なお、円筒体24の上端縁は、その全周にわたってヘアキャッチャー17の底面に連なっている。このヘアキャッチャー17内と円筒体24内とは、該ヘアキャッチャー17の底面の透孔(符号略)を介して連通している。円筒体24の下端側は開放している。この円筒体24の下端は、受入室22内において、排水トラップ10’内の封水面Wよりも下位に位置しており、且つ該受入室22の底面から若干(5〜50mm)離隔している。
この実施の形態では、円筒体24の下端に、該円筒体24を受入室22の底面に支持するための脚部24aは設けられていない。
なお、この実施の形態では、円筒体24はヘアキャッチャー17と一体成形されたものとなっているが、円筒体24とヘアキャッチャー17とを別々に成形し、接着や溶着等の結合手段によりこれらを結合した構成であってもよい。また、円筒体24は、ヘアキャッチャー17に対し着脱可能に連結されてもよい。
この排水トラップ10’のその他の構成は、第1〜4図の排水トラップ10と同様であり、第12図において第1〜4図と同一符号は同一部分を示している。
この排水トラップ10’の作動も第1〜4図の排水トラップ10と同様である。この排水トラップ10’によっても、第1〜4図の排水トラップ10と同様の作用効果が奏される。
この排水トラップ10’にあっては、円筒体24がヘアキャッチャー17に連結されているので、ヘアキャッチャー17を受入室22の上部からを取り外すと、これと一緒に円筒体24も受入室22から引き出される。また、ヘアキャッチャー17を受入室22の上部に装着すると、これと一緒に円筒体24も受入室22内に配置される。即ち、この排水トラップ10’にあっては、ヘアキャッチャー17と円筒体24とを一体に取り扱うことができ、これらの着脱作業や清掃作業などを容易に行うことができる。
また、この排水トラップ10’にあっては、円筒体24の上端がヘアキャッチャー17の底面に連なっているので、ヘアキャッチャー17内で旋回流が形成され、その渦の中心から水が円筒体24に流れ落ちる際に、この水は、ヘアキャッチャー17から円筒体24と受入室22の内周面との間の環状流路25には殆ど又は全く拡散せず、ほぼ全量が円筒体24内に流入するようになる。そのため、円筒体24内に強力な旋回流が形成され、排水流量が増大する。
第13図は、別の実施の形態に係る排水トラップ10Bの縦断面斜視図、第14図はこの排水トラップ10Bのヘアキャッチャー17Aの斜視図、第15図は第14図のXV−XV線に沿う断面斜視図である。なお、以下の説明において、上下方向は、ヘアキャッチャー17Aが排水トラップ10Bに装着された状態における上下方向と合致する。
この実施の形態でも、ヘアキャッチャー17Aは、上面が開いており、且つその側周面及び底面に多数の透孔(符号略)が設けられたカゴ(籠)状のものである。また、この実施の形態でも、該ヘアキャッチャー17Aは、下端側に向って縮径した略逆円錐台形状の外形を有している。
この実施の形態でも、ヘアキャッチャー17Aの底面から下方に向って円筒体50が立設されている。この円筒体50は、その筒軸方向を上下方向として該ヘアキャッチャー17Aと略同軸状に配置されている。第13,15図の通り、この円筒体50は、その内周径がヘアキャッチャー17Aの底面の直径と略等しい大きさとなっており、その上縁が全周にわたって該ヘアキャッチャー17Aの底面の外周縁に連なっている。ヘアキャッチャー17A内は、その底面の透孔を介して円筒体50内と連通している。この円筒体50は、下端側が開放したものとなっている。
この実施の形態でも、ヘアキャッチャー17Aは、受入室22内の軸心部付近に位置し、且つその底面が排水トラップ10B内の封水面Wよりも若干(例えば10mm以下程度)上方に位置するようにフランジ部材15に支持されている。また、これにより、円筒体50が受入室22内に該受入室22と同軸状に配置され、この円筒体50の外周面と受入室22の内周面との間に環状流路25が形成されている。この円筒体50の下端は、受入室22内において、排水トラップ10B内の封水面Wよりも下方に位置し、且つ該受入室22の底面から所定距離(例えば5〜50mm)上方へ離隔している。
なお、この実施の形態でも、円筒体50はヘアキャッチャー17Aと一体成形されたものとなっているが、円筒体50とヘアキャッチャー17Aとを別々に成形し、接着や溶着等の結合手段によりこれらを結合した構成であってもよい。また、円筒体50は、ヘアキャッチャー17Aに対し着脱可能に連結されてもよい。
この実施の形態では、排水トラップ10Bは、膨出部20内が負圧となったときに封水切れが生じることを防止するために、該膨出部20内と排水トラップ10B外とを連通した連通部材60を備えている。
詳しくは、この実施の形態では、排水トラップ10B内を受入室22と膨出部20とに区画した遮蔽部材21の上下方向の途中部に、該遮蔽部材21を貫通した配管接続口21aが設けられている。連通部材60は、膨出部20内に配置され、一端側が配管接続口21aの該膨出部20a側に接続された第1配管61と、受入室22内に配置され、一端側が配管接続口21aの該受入室22側に接続された第2配管62と、該第1配管61の他端側に設けられた散気部材63とを有している。
第13図に示すように、該第1配管61及び第2配管62は、それぞれL字管よりなる。即ち、該第1配管61は、その長手方向の途中から下方へ折れ曲がり、その下端側が膨出部20内の封水面Wよりも下位に位置している。この第1配管61の下端側は、下方に向って開いた椀形の膨大部61aとなっており、この膨大部61aの下面を覆うように散気部材63が装着されている。この散気部材63には、多数の小孔状の散気口63aが穿設されている。この散気部材63は、膨出部20内の底面から若干(例えば2〜30mm)上方へ離隔している。
第2配管62は、配管接続口21aに接続された前記一端付近から上方へ折れ曲がり、受入室22の内周面に沿って上方へ延在している。第13図に示すように、この第2配管62の上端は、フランジ部材15の上面よりも上位に位置している。即ち、この第2配管62の上端側は、洗い場の排水枡4(図示略)内に延出している。
この実施の形態では、ヘアキャッチャー17Aに、この第2配管62が挿通される筒部17bが設けられている。この筒部17bは、筒軸心方向を略鉛直方向として、ヘアキャッチャー17Aの内周面に沿って形成されている。なお、ヘアキャッチャー17Aの外周面は、下端側ほど縮径するテーパ面となっているので、筒部17bは、そのヘアキャッチャー17A外周側がこのテーパ面に沿って斜めにカットされた如き形状となっている。そのため、この筒部17bは、その下端からヘアキャッチャー17A外周側の側面の上端付近にかけて大きく開放したものとなっている。
この実施の形態では、該筒部17bの上端側は、ヘアキャッチャー17Aの上面から上方へ突出している。第13図の通り、このヘアキャッチャー17Aの上面からの筒部17bの突出高さは、フランジ部材15の上面からの第2配管62の突出高さよりも若干(例えば5〜50mm)高いものとなっている。
この筒部17bの上端面は、覆蓋部17c(第14,15図)によって覆蓋されている。この覆蓋部17cをヘアキャッチャー17A中心側と反対側へ延長するようにして、清掃作業者が指などで摘むための舌片状の摘み部17dが形成されている。また、該覆蓋部17cの上面には、清掃作業者が指などを引っ掛けるためのリング部17eが形成されている。
この実施の形態では、該摘み部17dの下面に沿って筒部17bの側面を切り欠くようにして、該筒部17bの内外を連通する通気口17fが形成されている。
ヘアキャッチャー17Aを装着する場合には、第2配管62を筒部17bに差し込みつつ、ヘアキャッチャー17Aをフランジ部材15の内側に嵌め込む。
このヘアキャッチャー17Aの通気孔17f及び筒部17b、並びに連通部材60の第1配管61、配管接続口21a、第2配管62及び散気口63aを介して膨出部20内と排水トラップ10B外(排水枡4内)とが連通している。
この実施の形態では、第13図の通り、受入室22の側面に、浴槽3(図示略)以外からの排水を該受入室22に流入させるための流入口70が設けられている。この流入口70には、該流入口70から受入室22内へ水が流れ込むことは許容するが、受入室22から該流入口70に水が流れ込むことは阻止する逆止弁機能付きのキャップ(図示略)が装着されている。なお、この流入口70は省略されてもよい。
この排水トラップ10Bのその他の構成は、第1〜4図の排水トラップ10と同様であり、第13〜15図において第1〜4図と同一符号は同一部分を示している。
この排水トラップ10Bにあっても、水を張った浴槽3の排水口3aの排水栓を抜くと、浴槽3内の浴槽水の一部が配管5及び流入口11から排水トラップ10Bの受入室22内に流入し、環状水路25内で旋回流を形成する。受入室22内の水位は次第に上昇し、ヘアキャッチャー17Aあるいはさらに排水枡4が旋回流に浸水した状態となる。これにより、排水枡4の内面やヘアキャッチャー17Aに付着しているゴミや毛髪がこすり落とされて、ゴミや髪の毛は渦の中心に集められ、渦の中心から下方へ落下し、ヘアキャッチャー17Aの下端の底面中央部に良好に集められる。
受入室22内で旋回している水の一部は、遠心力の助勢を得て遮蔽部材21の下側の開口23を通って膨出部20内に流出する。また、受入室22内で旋回している水の一部は、渦の中心側に集まり、円筒体50の内側を通って受入室22内の底部に到り、膨出部20へ流出する。膨出部20内に流入した水は、封水壁27を乗り越え、排水管6へ流出する。
この実施の形態では、このように受入室22内に流入した水が環状水路25を旋回することにより、円筒体50を設けない場合に比べて受入室22の内周面に沿う旋回流速が大きくなると共に、受入室22の内周面に沿って水位が素早く上昇するようになる。従って、浴槽3からの排水流量が少ない場合でも、ヘアキャッチャー17Aや排水枡4の内面の掃除効果が良いものとなる。さらに、この実施の形態では、渦を形成した水がヘアキャッチャー17A及び円筒体50の軸心付近を通ることにより、ヘアキャッチャー17A内のゴミがヘアキャッチャー17Aの中心付近に効率よく集められる。
浴槽3からすべての水が流出すると、旋回流は停止し、排水トラップ10B内には封水壁27の上端のレベルの封水が残る。これにより、排水管6側と洗い場2及び浴槽3側とはいずれも封水によって隔絶されることになり、排水管6の臭気が洗い場2や浴槽3へ逆流することが防止される。
この排水トラップ10Bにあっても、円筒体50がヘアキャッチャー17Aに連結されているので、前述の第12図の排水トラップ10’と同様に、ヘアキャッチャー17Aと円筒体50とを一体に取り扱うことができ、これらの着脱作業や清掃作業などを容易に行うことができる。
また、この排水トラップ10Bにあっても、第12図の排水トラップ10’と同様、円筒体50の上端がヘアキャッチャー17Aの底面に連なっているので、ヘアキャッチャー17A内で旋回流が形成され、その渦の中心から水が円筒体50に流れ落ちる際に、この水は、ヘアキャッチャー17Aから円筒体50と受入室22の内周面との間の環状流路25には殆ど又は全く拡散せず、ほぼ全量が円筒体50内に流入するようになる。そのため、円筒体50内に強力な旋回流が形成され、排水流量が増大する。
この実施の形態では、膨出部20内と排水トラップ10B外とを連通する連通部材60が設けられているので、該膨出部20内に負圧が生じても、封水切れすることが防止される。
第16図はさらに別の実施の形態に係る排水トラップ10Cの断面斜視図である。
この実施の形態の排水トラップ10Cも、前述の第13図の排水トラップ10Bと同様、底面に円筒体50の上端が連結されたヘアキャッチャー17A’を備えている。
なお、この実施の形態では、該ヘアキャッチャー17A’のうち、連通部材60の第2配管62が挿通された筒部17bは、該ヘアキャッチャー17A’の上面から突出しておらず、その上端面はヘアキャッチャー17A’の上面と面一状となっている。即ち、この実施の形態では、筒部17bの上端側に摘み部17dやリング部17e等は設けられていない。この筒部17bに挿通された第2配管62の上端側は、該筒部17bを突き抜けてヘアキャッチャー17A’の上面から上方へ突出し、排水枡4内に露呈している。
この実施の形態では、円筒体50は、ヘアキャッチャー17A’と別々に成形され、接着や溶着等の結合手段により該ヘアキャッチャー17A’に結合された構成となっている。なお、この実施の形態でも、円筒体50とヘアキャッチャー17A’とは一体成形された構成であってもよい。また、円筒体50は、ヘアキャッチャー17A’に対し着脱可能に連結されてもよい。
なお、この排水トラップ10Cにおいても、前述の排水トラップ10Bと同様のヘアキャッチャー17Aを用いてもよい。
この実施の形態では、排水トラップ10Cと、浴槽排水用配管5と、該配管5を浴槽3(図示略)の排水口3aに連結する連結部材80とがユニット化された構成となっている。
なお、第1図では図示を省略したが、浴室の床は浴槽パンと洗い場パン2とによって構成され、該浴槽パン上に浴槽3が設置されている。浴槽パンには、浴槽3の排水口3aよりも大径の浴槽パン排水口が設けられている。浴槽3の排水口3aは、この浴槽パン排水口の内側に露呈するように配置されている。
連結部材80は、浴槽パンの下側からこの浴槽パン排水口に重なる底面部81と、該底面部81の外周縁から上方へ立設された周壁部82とを有した皿形のものとなっている。該周壁部82の上縁外周には、浴槽パンの下面に重なるフランジ83が周設されている。
この連結部材80の底面部81から浴槽3の排水口3aに向って円筒状の浴槽連結部84が立設されている。浴槽連結部84の上縁には、浴槽3の下面に重なるフランジ(符号略)が周設されている。
該底面部81の下側には、配管接続用ハウジング85が連結部材80と一体的に設けられており、浴槽連結部84の内孔は底面部81を貫通してこの配管接続用ハウジング85内に連通している。この配管接続用ハウジング85は、底面部81の下面に沿って排水トラップ10C側へ向って延在しており、その延在方向先端側に、浴槽排水用配管5の一端側が接続されている。なお、この浴槽排水用配管5の他端側は、前述の各実施の形態と同様、排水トラップ10Cの浴槽排水流入口11に接続されている。
底面部81のうち、該浴槽連結部84と周壁部82との間には、浴槽パン排水流出口86が設けられている。この実施の形態では、浴槽排水用配管5に隣接して浴槽パン排水用配管90が配設されており、この浴槽パン排水用配管90の一端側が継手管87を介して底面部81の下側からこの浴槽パン排水流出口86に接続されている。この浴槽パン排水用配管90の他端側は、排水トラップ10Cの受入室22の側面に設けられた浴槽パン排水流入口91に接続されている。
浴槽排水用配管5及び浴槽パン排水用配管90は、それぞれ途中でクランク状に湾曲し、その排水トラップ10C側が連結部材80側よりも上方に位置するように配設されている。
前記浴槽パン排水口と浴槽排水口3aとには、それぞれ、排水枡4に取り付けられたフランジ部材15と同様の、環状のフランジ部材(図示略)がパッキン(図示略)を介して取り付けられている。浴槽パンの下側から浴槽パン排水口の周縁部にパッキン(図示略)を介して連結部材80のフランジ83が当接され、その内側の周壁部82に該浴槽パン排水口のフランジ部材がネジ込まれることにより、連結部材80が浴槽パン排水口の周縁部に連結されている。また、この浴槽パン排水口の内側において、浴槽3の下側から浴槽排水口3aの周縁部にパッキン(図示略)を介して浴槽連結部84のフランジが当接され、この浴槽連結部84の内側に該浴槽排水口3aのフランジ部材がネジ込まれることにより、浴槽連結部84が浴槽排水口34の周縁部に連結されている。
この実施の形態では、受入室22内に、浴槽パン排水流入口91を開閉するためのドア92が設置されている。このドア92は、受入室22の内周面に沿って湾曲している。このドア92のうち、受入室22内において形成される旋回流の上流側の端縁がヒンジ(図示略)を介して受入室22の内周面に連結されている。ドア92は、このヒンジを回動中心として受入室22の内周面に対し接離方向に回動可能となっている。このヒンジには、ドア92を受入室22の内周面に接近させるように付勢するスプリング(図示略)が設けられている。
このドア92は、受入室22内に旋回流が形成されていない状態において、浴槽パン排水用配管90に浴槽パン排水が流入したときには、この浴槽パン排水の水圧により押し開けられて浴槽パン排水流入口91を開放させる。また、受入室22内に旋回流が形成されているときには、その水流圧により受入室22の内周面に押し付けられて浴槽パン排水流入口91を閉鎖し、受入室22内の旋回流が浴槽パン排水流入口91に流れ込むことを阻止する。
この実施の形態では、受入室22の底面に円板状の底板93が設けられ、この底板93の中央に開口93aが設けられている。この底板93の下側は流出室94となっており、受入室22から該開口93aを通って流出室94に流出した水は、この流出室94を通って膨出部20内に流れ込む。
この実施の形態では、排水トラップ10Cの流出口12の底面は、その根元側(即ち膨出部20側)ほど上位となるように傾斜しており、該流出口12と膨出部20との境界部付近が最上位部27’となっている。この実施の形態では、排水トラップ10C内には、この最上位部27’のレベルまで封水が貯留される。
この排水トラップ10Cのその他の構成は、前述の第13〜15図の排水トラップ10Bと同様であり、第16図において第13〜15図と同一符号は同一部分を示している。
この排水トラップ10Cの作動も、受入室22からその底部の開口93aを通って流出室94に流出した水がこの流出室94を通って膨出部20内に流れ込むこと以外は、第13〜15図の排水トラップ10Bと同様である。
この排水トラップ10Cにあっても、円筒体50がヘアキャッチャー17A’に連結されているので、前述の排水トラップ10’,10Bと同様に、ヘアキャッチャー17A’と円筒体50とを一体に取り扱うことができ、これらの着脱作業や清掃作業などを容易に行うことができる。
また、この排水トラップ10Cにあっても、前述の排水トラップ10’,10Bと同様、円筒体50の上端がヘアキャッチャー17A’の底面に連なっているので、ヘアキャッチャー17A’内で旋回流が形成され、その渦の中心から水が円筒体50に流れ落ちる際に、この水は、ヘアキャッチャー17A’から円筒体50と受入室22の内周面との間の環状流路25には殆ど又は全く拡散せず、ほぼ全量が円筒体50内に流入するようになる。そのため、円筒体50内に強力な旋回流が形成され、排水流量が増大する。
上記実施の形態は本発明の一例であり、本発明は図示以外の態様をもとりうる。
例えば、第1図〜第4図の排水トラップ10や第5図及び第6図の排水トラップ10Aにおいて、受入室22の側面(遮断部材21の内周面)に、上記のガイド板33aを設置してもよい。