JP5446048B2 - 表面被覆切削工具 - Google Patents
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Description
しかし、従来の切削工具では、cBN層に残留する内部応力が大きいために、WC基超硬合金製の工具基体の表面からcBN層が剥離しやすく、工具寿命が短いという問題があった。
そこで、特許文献1〜3に示すように、WC基超硬合金基体とcBN層との間に、中間層を形成することによりcBN層の剥離を防止することが試みられており、例えば、特許文献1では、TiNを、また、特許文献2では、六方晶窒化ほう素(以下、hBNで示す)を、さらに、特許文献3では、ほう化アルミニウム、ほう窒化アルミニウムを中間層として形成することにより、cBN層の剥離を防止し、工具の長寿命化を図っているが、WC基超硬合金基体とcBN層との付着強度は未だ十分であるとは言えない。
AD法については、非特許文献1に紹介されているが、図1に示されるAD装置において、サブミクロンオーダーの原料超微粒子をエアロゾル発生器に装填し、高圧ガスと混合、エアロゾル化し、中〜低真空に排気された成膜チャンバー内の基板に高速で吹き付けることで金属、セラミックス層を成膜するコーティング手法である。
AD法の成膜の原理は、「常温衝撃固化現象」と命名されており、特にセラミックスの成膜においては、特定範囲のサイズを持つ微細な粒子がノズルからガスと共に送られた際に得る一定範囲の運動エネルギーを持って基板に衝突する際に、微細結晶に破砕し、この粒子同士が緻密に結合しながら膜を形成するというものである。
このAD法による成膜の特徴としては、
(イ)金属やセラミックス(酸化物、非酸化物)の成膜が可能である。
(ロ)高温の熱処理が不要なため、通常の焼結プロセスでは得られない原料粉組成を維持した熱非平衡なセラミックス組織が得られる。
(ハ)高速(条件によってはPVD、CVDの30倍以上)かつ大面積で緻密な微結晶組織を持つコーティングが可能である。
(ニ)基板は、硬度や弾性率などの機械特性に配慮すれば、Si,SUS304,樹脂,ガラスなど広く選択可能である。
等が挙げられる。
そこで、本発明では、WC基超硬合金製の工具基体表面工具基体との付着強度にすぐれる複合中間層を介するとともに、内部応力の緩和された複合硬質層を形成することにより、焼入鋼等の高硬度鋼の高速切削加工において、耐チッピング性、耐摩耗性にすぐれ、長期の使用にわたってすぐれた切削性能を発揮する表面被覆切削工具を提供することを目的とする。
まず、WC基超硬合金基体と複合硬質層との間に、cBNと炭化タングステン(WC)との混合相からなる複合中間層を介在形成すると、該複合中間層は、WC基超硬合金基体に対してすぐれた付着強度を有するとともに、複合中間層中に含有されているcBN粒子から複合硬質層のcBN相がエピタキシャル成長するため、複合中間層は、複合硬質層に対してもすぐれた付着強度を有し、その結果、WC基超硬合金基体と複合硬質層との間にcBNとWCとの複合中間層を介在形成することにより、複合硬質層のWC基超硬合金基体に対する付着強度は大幅に向上することを見出した。
さらに、該複合中間層におけるcBNとWCの含有比率を層厚方向に沿って組成傾斜構造とした場合(cBNについては、WC基超硬合金基体側から複合硬質層側へ向かうにしたがって次第に大きくなり、一方、WCについては、WC基超硬合金基体側から複合硬質層側へ向かうにしたがって次第に小さくなる)には、WC基超硬合金基体−複合中間層−複合硬質層間における熱膨張差が縮小し、熱膨張差に起因する複合硬質層の剥離を防止することができる。
次に、複合硬質層をcBNの単一相ではなく、cBN相とhBN相とアモルファスBN(以下、aBNで示す)の複合硬質層として構成した場合には、複合硬質層内で発生した内部応力をhBN相、aBN相が緩和するため、複合硬質層内の内部応力を低減することができ、さらに、hBN相、aBN相は潤滑性を有するため、高硬度鋼の高速切削において、溶着発生を抑制し切削抵抗を低減できることを見出したのである。
「(1) 炭化タングステン基超硬合金からなる工具基体(WC基超硬合金基体)の表面に、膜厚0.5〜10μmの立方晶窒化ほう素(cBN)相、六方晶窒化ほう素(hBN)相およびアモルファス窒化ほう素(aBN)相の混合相からなる複合硬質層が形成された表面被覆切削工具において、
上記工具基体と上記複合硬質層との間に、膜厚0.5〜5μmの立方晶窒化ほう素(cBN)と炭化タングステン(WC)の混合相からなる複合中間層が形成されていることを特徴とする表面被覆切削工具。
(2) 上記複合中間層を構成する立方晶窒化ほう素(cBN)と炭化タングステン(WC)の含有比率は、立方晶窒化ほう素(cBN)については、工具基体側から複合硬質層側へ向かうにしたがって次第に大きくなり、一方、炭化タングステン(WC)については、工具基体側から複合硬質層側へ向かうにしたがって次第に小さくなる組成傾斜構造を備えていることを特徴とする前記(1)に記載の表面被覆切削工具。」
を特徴とするものである。
まず、本発明の複合中間層のAD法による成膜の概要を図1により説明する。
図1において、例えば、粒径が0.1〜1.0μmのcBN粉末、粒径が0.1〜1.0μmのWC粉末を、それぞれエアロゾル発生器内に充填し、これを高圧ガス(He,Ar,N2あるいは空気)と混合し、エアロゾル化し、中、低真空圧の成膜チャンバー内のWC基超硬合金基体に高速で吹き付けることで、WC基超硬合金基体上にcBNとWCとの所望の含有比率からなる複合中間層を成膜することができる。
複合中間層に上記組成傾斜構造を形成した場合、WC基超硬合金基体側ではWC含有比率が高く、cBN含有比率が低くなっているため、WC基超硬合金基体との密着性に優れ、一方、複合中間層の表層(複合硬質層)側では、cBN含有比率が高く、WC含有比率が低くなっているため、硬質であって耐摩耗性に優れ、さらに、複合硬質層のcBN相は、複合中間層に含有されるcBN粒子からエピタキシャル成長しやすいことから、複合中間層と複合硬質層の付着強度も高められる。
図2に、マグネトロンスパッタ装置の概略を示す。
例えば、図2において、hBNをターゲットとしたマグネトロンスパッタ装置と高周波バイアス装置からなる反応容器を所定真空度に排気し、その後、ArとN2の混合ガスを導入し、所定作動圧に制御し、その表面に複合中間層が形成されているWC基超硬合金基体を所定温度(約450℃)に保持しながら、ターゲット側に500W、WC基超硬合金基体側に60W(自己バイアス電位=−150V)の同周波数の高周波を印加し、プラズマ放電を発生させることにより、複合中間層上に、cBN相、hBN相およびaBN相の混合相からなる複合硬質層を成膜する。
図3に、WC基超硬合金基体、複合中間層および複合硬質層からなる本発明の表面被覆切削工具の断面概略模式図を示す。
さらに、複合硬質層はcBN単一相ではなく、cBN相、hBN相とaBN相の混合相からなるため、複合硬質層内で発生した内部応力をhBN相、aBN相が緩和・低減する作用を有し、また、hBN相、aBN相は潤滑性を有するため、切削抵抗を低減するとともに溶着発生を抑制できる。
まず、粒径が0.1〜1.0μmのcBN粉末と、粒径が0.1〜1.0μmのWC粉末を、それぞれ、エアロゾル発生器に装入し、粉末の凝集を防ぐため、エアロゾル発生器の下の振動機を振動させながらエアロゾル発生器にガスを流し、(かつ、組成傾斜構造を形成する場合には、cBNおよびWC粉末が入ったエアロゾル容器内のガス圧を調整しつつ、)Arガスを用いて、ガス圧力80〜200Pa、ガス搬入速度2〜15L/minで原料粉末を混合し、成膜チャンバー内の超硬合金基体に所定時間ノズルから吹きつけ、また、ノズルを1〜5mm/secで移動させることにより、WC基超硬合金基体表面に、表2に示す所定膜厚、所定組成、所定組成傾斜構造を有する本発明の複合中間層を成膜した。
また、さらに比較のため、実施例で使用したWC基超硬合金基体6〜10に対して、マグネトロンスパッタ法により、所定膜厚、所定相割合のcBN相、hBN相およびaBN相の混合相からなる複合硬質層のみを成膜した表3に示す比較例表面被覆切削工具6〜10(比較例工具6〜10という)を作製した。
また上記本発明工具1〜10を切断し、断面の複合硬質層を透過型電子顕微鏡により観察し、柱状のcBNを確認し、複合硬質層に占めるcBN相の割合を算出し、それをcBNの面積割合とした。
また、上記本発明工具1〜10および上記比較例工具1〜10の各層の膜厚については、走査型電子顕微鏡を用いて断面測定し、5ヶ所の測定値の平均値として求めた。
これらの測定値を、表2、表3に示す。
《切削条件1》
被削材: JIS・SUJ2(硬さHRC:60)の丸棒、
切削速度: 250 m/min、
送り: 0.15 mm/rev、
切込み: 0.20mm、
切削時間: 5分
の条件での、焼入れ軸受鋼の乾式連続切削加工試験、
《切削条件2》
被削材: JIS・SCr420 硬さHRA:62)のの丸棒、
切削速度: 230 m/min、
送り: 0.10 mm/rev、
切込み: 0.20 mm、
切削時間: 5分
の条件での、高硬度クロム鋼の乾式高速断続切削加工試験、
を行い、切刃の逃げ面摩耗幅を測定するとともに、チッピング、剥離の有無を観察した。
上記切削条件1,2による切削加工試験の測定結果を表4に示した。
これに対して、比較例工具1〜10においては、チッピング、剥離の発生あるいは耐摩耗性不足等により、比較的短時間で使用寿命に至ることが明らかである。
Claims (2)
- 炭化タングステン基超硬合金からなる工具基体の表面に、膜厚0.5〜10μmの立方晶窒化ほう素相、六方晶窒化ほう素相およびアモルファス窒化ほう素相の混合相からなる複合硬質層が形成された表面被覆切削工具において、
上記工具基体と上記複合硬質層との間に、膜厚0.5〜5μmの立方晶窒化ほう素と炭化タングステンの混合相からなる複合中間層が形成されていることを特徴とする表面被覆切削工具。 - 上記複合中間層を構成する立方晶窒化ほう素と炭化タングステンの含有比率は、立方晶窒化ほう素については、工具基体側から複合硬質層側へ向かうにしたがって次第に大きくなり、一方、炭化タングステンについては、工具基体側から複合硬質層側へ向かうにしたがって次第に小さくなる組成傾斜構造を備えていることを特徴とする請求項1に記載の表面被覆切削工具。
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JP2010063831A JP5446048B2 (ja) | 2010-03-19 | 2010-03-19 | 表面被覆切削工具 |
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