以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1は、画像形成装置の概略構成図である。
図1に示す画像形成装置100は、感光体の表面に静電潜像を形成し、その静電潜像をトナーで現像してトナー像を形成し、さらにそのトナー像を最終的に用紙上に転写および定着することによりその用紙上に定着トナー像からなる画像を形成する装置である。なお、この画像形成装置100は、用紙すなわち紙の記録媒体のみならず、OHPシートに代表される樹脂の記録媒体にも対応した装置であるが、以下の説明では、特に断らない限り、用紙で記録媒体を代表させて説明しているものとする。
また、画像形成装置100は、互いに異なる色の画像形成を担う6つの画像形成部10A、10B、10C、10D、10E、10Fが並列に配置されたタンデム型のカラープリンタであり、単色モードにおいて単色の画像もプリントすることができるほか、フルカラーモードでは複数色のトナー像からなるカラーの画像をプリントすることができる。例えば、6つの画像形成部10A〜10Fのうち、4つの画像形成部10C、10D、10E、10Fは、それぞれ、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)および、ブラック(K)の各色に対応し、残り2つの画像形成部10A,10Bは、上記YMCK以外の特色に対応する。特色には、例えば特定の企業のコーポレートカラーを表わす色や、パステルカラー、光沢用の透明色といった、上記YMCKによる合成では正確に表現することが容易でない色が含まれる。画像形成装置100には、画像形成部10A〜10Fにそれぞれ対応した色のトナーを収容する6つのトナーカートリッジ18A、18B、18C、18D、18E、18Fが備えられている。さらに、画像形成装置100には、デフォルト設定である片面印刷モードのほかに両面印刷モードも備えられている。画像形成装置100は、本発明の画像形成装置の一実施形態である。
6つの画像形成部10A〜10Fは同様の構成を有しているため、以下ではこれらを代表してブラックに対応する画像形成部10Fを取り上げて説明する。
画像形成部10Fは、感光体110と、感光体110表面を帯電させる帯電器120と、外部から供給される画像信号に基づく露光光を感光体110に照射する露光器130と、感光体110表面をトナーで現像する現像器140と、トナー像を中間転写ベルトに転写する一次転写器150とを備えている。感光体110は円筒状の表面を有しており、円筒の軸周りである矢印a方向に回転する。
また、画像形成装置100には、画像形成部10A〜10Fの感光体110からトナー像が転写される中間転写ベルト200と、中間転写ベルト200からトナー像を用紙に転写する二次転写器300と、トナーを用紙に定着する定着器400と、用紙のカールを矯正するデカーラ装置1と、用紙を搬送する用紙搬送部600とが備えられている。さらに、画像形成装置100には、用紙を収容する用紙収容器710、720と、画像形成前に用紙のバリを除去するバリ取り装置800と、用紙の姿勢を修正する姿勢修正部730と、トナー定着後の用紙を冷却する冷却器740と、画像形成装置100による画像の形成が終了した用紙を受ける排出用紙収容部690と、画像形成装置100の各部を制御する本体制御部101とが備えられている。尚、画像形成装置100には、搬送中の用紙表面に画像形成が行われる搬送経路R1と、片面にトナー像が定着された用紙の表裏反転が行われる表裏反転経路R2が備えられている。
中間転写ベルト200は、ベルト支持ロール210、220、230によって支持された無端の帯状部材であり、画像形成部10A〜10F、および二次転写器300をこの順に経由する矢印bの方向に循環移動する。
用紙搬送部600は、用紙収容器710、720から用紙を取り出す取出ロール610、620と、二次転写器300がトナー像を転写するタイミングに合わせて二次転写器300に用紙を送り込むレジストレーションロール640と、用紙を搬送ベルト651の外周面に吸着させながら二次転写器300から定着器400まで搬送する吸着搬送器650と、用紙を画像形成装置100の外に排出する排出ロール660と、搬送経路R1および表裏反転経路R2に沿って配置された、用紙を搬送する搬送ロール680とを備えている。
用紙搬送部600は、用紙を、用紙収容器710、720からバリ取り装置800、姿勢修正部730、二次転写器300、定着器400、冷却器740、およびデカーラ装置1を順に経る搬送経路R1に沿って搬送する。また、両面印刷が実行される場合、用紙搬送部600は、搬送経路R1から分岐して搬送経路R1に戻る表裏反転経路R2に沿って用紙を搬送させる。これにより、搬送経路R1を通過中に片面にトナー像が定着された用紙は、表裏反転経路R2を通過中に表裏面が反転させられ、表裏面が反転された用紙は搬送経路R1に戻り、再びバリ取り装置800および姿勢修正部730を経て、二次転写器300で裏面すなわちトナー像が未転写の面にトナー像が転写される。
図1に示された画像形成装置100の基本動作を説明する。単色モードとして、例えばブラック(K)の画像を、対応する画像形成部10Fで形成する場合について説明すると、感光体110が矢印a方向に回転駆動され、感光体110の表面に帯電器120によって電荷が付与される。露光器130は、外部から供給される画像信号に基づく露光光を感光体110に照射することで感光体110の表面に静電潜像を形成する。より詳細には、露光器130は、画像信号中のブラックに対応するデータに応じた露光光を照射することで、感光体110の表面に静電潜像を形成する。現像器140は、静電潜像をブラックのトナーで現像することで感光体110の表面にトナー像を形成する。画像形成部10Fの現像器140には、トナーカートリッジ18Fからトナーが供給される。感光体110は、トナー像の形成を受けてこのトナー像を保持する。感光体110の表面に形成されたトナー像は、一次転写器150によって中間転写ベルト200に転写される。
一方、用紙収容器710、720内の用紙は、取出ロール610、620によって取り出され、搬送ロール680、およびレジストレーションロール640によって搬送経路R1を矢印c方向に搬送されて二次転写器300に向かう。二次転写器300に向かう用紙は、搬送経路R1の途中に配置されたバリ取り装置800によって、用紙の端に存在するバリが除去される。バリ取り装置800によるバリ取りがなされた用紙は、姿勢修正部730によって用紙の姿勢および位置が修正される。
二次転写器300は、中間転写ベルト200と用紙との間に転写用の電位差を発生させることによって中間転写ベルト200のトナー像を用紙に転写させる。トナー像が転写された用紙は、搬送ベルト651によって矢印d方向に搬送され、定着器400でトナー像が用紙表面に定着される。このようにして、用紙上に画像が形成される。定着器400は、熱容量を高めるために加熱ベルトを有している。表面に画像が形成された用紙は、冷却器740によって冷却され、デカーラ装置1によって巻き癖が矯正された後、排出ロール660によって排出されて排出用紙収容部690に積載される。
フルカラーモードの場合には、ブラック以外の色に対応する5つの画像形成部10A〜10Eでもブラックに対応する画像形成部10Fと同様に動作して、対応する色のトナー像が形成される。画像形成部10A〜10Fでは、各感光体表面に形成したトナー像が中間転写ベルト200に転写された際に重畳される様に画像形成および転写タイミングが調整されている。
また、両面印刷モードでは、用紙搬送部600は、搬送経路R1に沿って搬送して片面への画像の定着および巻き癖の矯正を終えた用紙を表裏反転経路R2に沿って搬送し、その用紙の表裏面を反転してから、再度、搬送経路R1に沿って搬送しながらもう片面への画像の定着および巻き癖の矯正が行われる。以上が、画像形成装置100における画像形成動作の概略である。
次に、デカーラ装置1について説明する。
図2は、デカーラ装置の、側面からの透視図である。
図2に示されるデカーラ装置1は、冷却器740を経た用紙を受け入れる受入シュート2、用紙の巻き癖を矯正するロールデカーラ部3、ロールデカーラ部3よりも用紙搬送方向下流側に配置されたベルトデカーラ部4、巻き癖が矯正された用紙を搬送する搬送ロール部5、および、用紙をデカーラ装置1から排出する排出シュート部6を備えている。
ロールデカーラ部3は、受入シュート2を経て送りこまれてきた用紙を自ら回転駆動して搬送する搬送駆動軸31と、この搬送駆動軸31の上方に配置され、搬送駆動軸31との間に用紙を挟み込んで用紙の巻き癖を矯正する矯正ロール32と、矯正ロール32の中心軸の両端を矯正ロール32が回転自在となるように保持した第1保持部材33と、第1保持部材33の一端331と接触する第1偏芯カム34と、この第1偏芯カム34が固定され、画像形成装置100の本体側に備えられたステッピングモータの回転軸に連結される第1回転軸35とを有している。第1保持部材33は、予め決められた範囲内で姿勢の変化が許容されている。このデカーラ装置1は、媒体矯正装置の一実施形態である。
また、ロールデカーラ部3は、第1回転軸35に取り付けられた錘36と、第1保持部材33の予め決められた範囲内での姿勢の変化を許容しながらこの第1保持部材33を支持する第1支持部材37とを有している。ロールデカーラ部3では、これら第1保持部材33、第1偏芯カム34、および第1支持部材37がそれぞれ1対ずつ備えられている。
矯正ロール32は、搬送駆動軸31に従動して回転する、搬送駆動軸31よりも表面が柔らかいロールである。第1保持部材33の姿勢変化に伴い、矯正ロール32に対する搬送駆動軸31の食い込み量が変化する。
第1保持部材33は、厚みが5mm程度の樹脂成形部材であり、一端には第1偏芯カム24と接触する接触部331と、他端には矯正ロール32が延びる方向に沿って設けられた貫通孔332とを有している。また、第1保持部材33は、中央部で、矯正ロール32の中心軸321の両端を矯正ロール32が回転自在となるように保持している。
第1回転軸35は、上部筐体11のうちの、図2に示される手前側と奥側の筐体部分それぞれで、第1回転軸35が回転自在に各筐体部分に支持されており、筐体部分に支持されている両箇所の内側で、かつ、第1保持部材33の接触部331に対応した位置に第1偏芯カム34が偏芯して固定されている。また、この第1回転軸35は、図2に示される上部筐体11の奥側の筐体部分よりも外側に固定されたカップラを介して、画像形成装置100の本体側に備えられたステッピングモータに連結されている。尚、第1回転軸35に取り付けられた錘36については後述する。
第1支持部材37は、詳しくは後述するが、第1保持部材33が有する貫通孔332を貫通する貫通軸371を一端に有する金属部材であり、他端が上部筐体11にネジ38によって固定されている。貫通孔332を貫通した貫通軸371の先端は、上部筐体11のうちの、図2に示される手前側と奥側の筐体部分に設けられている孔にそれぞれ挿通される。
本体側に備えられたステッピングモータが指定されたステップ数だけ駆動すると、このステッピングモータに連結されている第1回転軸35は指定されたステップ数に応じた回転角度だけ回転する。これにより、この第1回転軸35に偏芯して固定されている第1偏芯カム24の姿勢が変化する。
第1保持部材33の接触部331は、第1偏芯カム34と接触していることから、第1保持部材33は、第1偏芯カム34の姿勢の変化により、貫通孔332を貫通する貫通軸371を中心に回転する。第1保持部材33の、貫通軸371を中心とした姿勢の変化に伴い、第1保持部材33に保持された矯正ロール32に対する搬送駆動軸31の食い込み量は変化する。矯正ロール32に対する搬送駆動軸31の食い込み量が変化すると、これら矯正ロール32と搬送駆動軸31との間を通過する用紙に対する矯正力も変化する。
このロールデカーラ部3では、搬送経路R1を搬送中の用紙の姿勢でいえば両端が跳ね上がる巻き癖が付いた用紙の矯正を担当しており、これら矯正ロール32と搬送駆動軸31との間を通過する用紙の巻き癖の矯正度合いは、矯正ロール32に対する搬送駆動軸31の食い込み量を多くすれば強くなり、少なくすれば弱くなる。このロールデカーラ部が矯正部の一例であり、搬送駆動軸31と矯正ロール32とがそれぞれ棒状回転体の一例である。また、矯正ロール32は、周動体の一例でもある。
ベルトデカーラ部4は、用紙を搬送するベルトユニット41、このベルトユニット41に用紙を押し付ける押圧部材42、用紙の搬送をガイドする用紙搬送ガイド45、押圧部材42によるベルトユニット41に対する用紙の押圧を調整する第2偏芯カム46、この第2偏芯カム46が固定されていると共に、端部が、画像形成装置100の本体側に備えられたステッピングモータの回転軸に連結される第2回転軸43、および、第2偏芯カム46と押圧部材42との双方に接触する中間部材44で構成されている。
ベルトユニット41は、回転駆動する回転駆動ロール411と、回転自在の懸架ロール412と、これら回転駆動ロール411および懸架ロール412に掛け回された無端ベルト413と、この無端ベルト413にテンションを与えるテンションロール414とで構成されている。回転駆動ロール411は、中心に中心軸4111を有しており、この中心軸4111は、上部筐体11のうちの、図2に示される手前側と奥側の筐体部分それぞれで、中心軸4111が回転自在に各筐体部分に支持されている。また、この中心軸4111には、奥側の筐体部分に支持された箇所よりもさらに奥側の箇所でカップラが取り付けられており、この中心軸4111は、このカップラを介して、画像形成装置100の本体側に備えられた回転モータに連結されている。
第2回転軸43は、第1回転軸35と同様に上部筐体11のうちの、図2に示される手前側と奥側の筐体部分に回転自在に支持され、手前側と奥側の筐体部分に支持されている箇所よりも僅かに内側に第2偏芯カム46が固定されており、奥側の筐体部分よりも外側に固定されたカップラを介して、画像形成装置100の本体側に備えられたステッピングモータに連結されている。
中間部材44は、第2偏芯カム46に接触した円板部材441と、この円板部材441の中心を貫通してこの円板部材441が両端部に固定された第1移動軸442とで構成されている。第2偏芯カム46と円板部材441が接触していることから、第2偏芯カム46の姿勢の変化に応じて第1移動軸442は予め決められた範囲を上下動する。
押圧部材42は、両端部が円板部材441と接触した第2移動軸422と、この第2移動軸422を中心軸として無端ベルト413に接触した押圧ロール421とで構成されている。この中間部材44の円板部材441と第2移動軸422は接触していることから、中間部材44の上下動に伴って押圧部材42は予め決められた範囲を上下動する。
用紙搬送ガイド45は、両端部が第2移動軸422の両端縁に連結されており、第2移動軸422が上下動するに伴って用紙搬送ガイド45の姿勢は変化する。第2移動軸422の位置に応じて用紙搬送ガイド45が姿勢を変えることで、用紙のスムーズな搬送が確保されている。
本体側に備えられたステッピングモータが指定されたステップ数だけ駆動すると、このステッピングモータに連結されている第2回転軸43は指定されたステップ数に応じた回転角度だけ回転する。これにより、この第2回転軸43に偏芯して固定されている第2偏芯カム46の姿勢が変化する。
中間部材44は、第2偏芯カム46の姿勢に応じて第1移動軸442が上下に移動する。この第1移動軸442の上下動に伴い第2移動軸422も上下に移動し、無端ベルト413に対する押圧ロール421の食い込み量は変化する。これにより、無端ベルト413に対する第2移動軸422の食い込み量が変化すると、これら無端ベルト413と第2移動軸422との間を通過する用紙に対する矯正力も変化する。
このベルトデカーラ部4では、搬送経路R1を搬送中の用紙の姿勢でいえば両端が下向きの巻き癖が付いた用紙の矯正を担当しており、これら無端ベルト413と押圧ロール421との間を通過する用紙の巻き癖の矯正度合いは、無端ベルト413に対する押圧ロール421の食い込み量を多くすれば強くなり、少なくすれば弱くなる。このベルトデカーラ部4は、矯正部の一例である。ベルトユニット41は、周動体の一例であり、複数の周面を有した周動体の一例であり、さらには、帯部材を有する周動体の一例である。各無端ベルト413は、帯部材の一例である。また、各無端ベルト413の各外周面が、いずれも、周回移動する周面の一例である。
搬送部5は、上部回転ロール51と下部回転ロール52とを有しており、巻き癖の矯正を終えた用紙を間に挟んで回転することで用紙を排出部6に送り出す。
排出部6は、上部シュート61と下部シュート62を有しており、搬送部5から送り出されてきた用紙をデカーラ装置1から外部に排出する。上部シュート61は上部筐体11に取り付けられており、下部シュート62は下部筐体12に取り付けられている。
尚、詳しくは後述するが、このデカーラ装置1は、用紙の搬送路を境に上部と下部とに分割されていて、かつ、下部に対して上部の開閉が自在となるように上部の端部と下部の端部とが連結されている。
図3は、デカーラ装置の動力系統を示す図である。
図3には、大きく分けて、画像形成装置100の本体側に備えられているメインモータM1を駆動源とするメイン駆動系統L1と、デカーラ装置1に備えられているローカルモータM2を駆動源とするローカル駆動系統L2との2系統が示されている。
メイン駆動系統L1は、図3の上段に示されたメインモータM1、伝達ギア群G11、および、ベルトユニット41の回転駆動ロール411の中心軸4111で構成されている。
ローカル駆動系統L2は、図3の下段に示されたローカルモータM2の回転駆動力をロールデカーラ部3の搬送駆動軸31に伝達する第1ローカル駆動系統L21と、排出部5の下部回転ロール52に伝達する第2ローカル駆動系統L22とからなる。
第1ローカル駆動系統L21は、ローカルモータM2、伝達ギア群G21、および搬送駆動軸31で構成され、第2ローカル駆動系統L22は、ローカルモータM2、伝達ギア群G22、および下部回転ロール52で構成されている。ローカルモータM2とメインモータM1は、それぞれが駆動源の一例である。
また、図3には、ロールデカーラ部3の第1回転軸35に回転駆動力を供給する、画像形成装置100の本体側に備えられている第1ステッピングモータSM1と、ベルトデカーラ部4の第2回転軸に回転駆動力を供給する、画像形成装置100の本体側に備えられている第2ステッピングモータSM2とが示されている。
図4は、デカーラ装置の斜め上方からの外観斜視図である。
図4には、デカーラ装置1の、図2に示される側の反対側も示されている。
図4に示される、図2に示される側の反対側には、上から順に、ロールデカーラ部3の第1回転軸35の端縁、ベルトデカーラ部4の第2回転軸43の端縁、および、ベルトデカーラ部4の回転駆動ロール411の中心軸4111の端縁にそれぞれ取り付けられたスクリュー状のカップラ13が示されている。
前述したように、このデカーラ装置1は、ジャム発生時の用紙の除去のため、あるいは、消耗部品の交換のために画像形成装置100の本体筐体から引き出し自在のものである。そのため、デカーラ装置1では、画像形成装置100の本体側に備えられているメインモータM1や第1ステッピングモータSM1、および第2ステッピングモータSM2などから回転駆動力が伝達される第1回転軸35、第2回転軸43、および中心軸4111には、スクリュー状のカップラ13が取り付けられ、本体側の各モータの回転軸や伝達ギアの軸には、これらのカップラ13と噛み合うカップラが取り付けられている。この様にすることで、本体筐体から引き出し自在のデカーラ装置1に対する、本体側に備えられた駆動源からの駆動力の伝達が可能にされている。
ここで、デカーラ装置1では、ロールデカーラ部3の搬送駆動軸31の駆動源とベルトデカーラ部4の回転駆動ロール411の駆動源とが別系統にされている。以下では、ロールデカーラ部3とベルトデカーラ部4とで駆動源が別系統にされている理由について説明する。
図5は、ロールデカーラ部およびベルトデカーラ部の概略構成図である。
図5には、ロールデカーラ部3の矯正ロール32とベルトデカーラ部4の押圧部材42がそれぞれ矢印方向に移動自在である様子が示されている。図5には、ロールデカーラ部3による巻き癖の矯正の様子、すなわち両端が跳ね上がる巻き癖がついた用紙に、その癖を柔ら得る矯正が行われている様子が実線で示されている。また、ベルトデカーラ部4による巻き癖の矯正の様子、すなわち両端が下を向く巻き癖がついた用紙に、その癖を和らげる矯正が行われている様子が点線で示されている。
図6は、ロールデカーラ部における食い込み量と用紙搬送速度の関係を示すグラフ図である。
図6には、矯正ロール32への搬送駆動軸31の食い込み量を変化させた場合の用紙搬送速度に与える影響が、ロールデカーラ部3の搬送駆動軸31の回転速度を266.5mm/sec、310.0mm/sec、400.0mm/sec、445.0mm/sec、500.0mm/secに設定した場合についてそれぞれ示されている。
図6からは、搬送駆動軸31の回転速度の高低に関わらず、食い込み量が増加すれば、用紙の搬送速度はリニアに増加する点が確認できる。同じ軸回転速度であっても、食い込み量が多い場合の方が少ない場合よりも用紙搬送速度が速くなるのは、食い込み量の増加で用紙に対する搬送駆動軸31のグリップ力が増加し、用紙に対して搬送駆動軸31がスリップしなくなるためと考えられる。
一方、図7は、ベルトデカーラ部における食い込み量と用紙搬送速度の関係を示すグラフ図である。
図7には、無端ベルト413への押圧ロール421の食い込み量を変化させた場合の用紙搬送速度に与える影響が、ベルトユニット41の回転駆動ロール411の回転速度を266.5mm/sec、310.0mm/sec、400.0mm/sec、450.0mm/sec、480.0mm/sec、510.0mm/secに設定した場合についてそれぞれ示されている。
図7からは、回転駆動ロール411の回転速度の高低に関わらず、食い込み量が増加すれば、用紙搬送速度はリニアに低下する点が確認できる。同じ軸回転速度であっても、食い込み量が多い場合の方が少ない場合よりも用紙搬送速度が遅くなるのは、無端ベルト413に対する押圧ロール421の食い込み量の増加により、無端ベルト413に対して回転駆動ロール411がスリップするためと考えられる。
図8および図9は、図6および図7にはグラフで表されている内容を表に纏めたものである。
図8には、図6に示されるグラフの元となるデータが示されている。尚、このロールデカーラ部3では、搬送駆動軸31の矯正ロール32への食い込み量が0.1mmから2.2mmまでの間で変化するように矯正ロール32の移動が許容されている。また、ここでは、0.1mmから2.2mmまでの5つの食い込み量(♯1〜♯5)が代表的に選択されている。
また、図8には、右端に「調整後の軸速度設定値A’」の欄が設けられ、♯1については軸速度設定値Aと同じ値を意味する「A」が記載されており、♯2については軸速度設定値Aの0.9974倍の値を意味する「0.9974A」が記載されている。この「調整後の軸速度設定値A’」とは、食い込み量が♯1の時に各軸速度設定値Aに実現される用紙搬送速度を食い込み量の変化に関わらず維持するために、食い込み量毎に設定される軸速度設定値である。例えば、軸速度設定値Aが500mm/secの場合、食い込み量が♯1の時の用紙搬送速度は501.8mm/secであるが、軸速度設定値Aを500mm/secのままで食い込み量を♯2に変更すると、用紙搬送速度は501.8mm/secから503.3mm/secへ上昇してしまう。そこで、食い込み量を♯2に変更しても用紙搬送速度を501.8mm/secsに維持するには、軸速度設定値を「調整後の軸速度設定値A’」の欄に示されるように、現在の軸速度設定値Aである500mm/secの0.9974倍の498.7mm/secとすればよい。
図9には、図7に示されるグラフの元となるデータが示されている。尚、このベルトデカーラ部4では、無端ベルト413への押圧ロール421の食い込み量が2.2mmから7.3mmまでの間で変化するように押圧部材42の移動が許容されている。また、ここでは、2.2mmから7.3mmまでの3つの食い込み量(♯1〜♯3)が代表的に選択されている。
また、図9には、右端に「調整後の軸速度設定値B’」の欄が設けられ、♯1については軸速度設定値Bと同じ値を意味する「B」が記載されており、♯2については軸速度設定値Bの1.0392倍の値を意味する「1.0392B」が記載されている。この「調整後の軸速度設定値B’」も、食い込み量が♯1の時に各軸速度設定値Bに実現される用紙搬送速度を食い込み量の変化に関わらず維持するために、食い込み量毎に設定される軸速度設定値である。
画像形成装置1に備えられた本体制御部101では、オペレータによる操作から得られた、使用する用紙に関する情報などからロールデカーラ部3における食い込み量を決定する。また、本体制御部101では、決定した食い込み量と、オペレータによる操作から得られた、用紙搬送速度に関する情報と、図8の右端のデータに基づいて作成されたテーブルとに基づいて、ロールデカーラ部3の搬送駆動軸31の軸速度設定値A’を決定する。本体制御部101では、決定した軸速度設定値A’をデカーラ装置1に送信する。デカーラ装置1では、搬送駆動軸31に回転駆動力を与えるローカルモータM2を通じて、受信した軸速度設定値A’で搬送駆動軸31を回転させる。また、本体制御部101は、ロールデカーラ部3における食い込み量が、決定した食い込み量となるように第1ステッピングモータSM1の回転角度を調節する。
さらに、本体制御部101では、用紙に関する情報などからベルトデカーラ部4における食い込み量を決定し、決定した食い込み量と、用紙搬送速度に関する情報と、図9の右端のデータに基づいて作成されたテーブルとに基づいて、ベルトデカーラ部4の回転駆動ロール411の軸速度設定値B’を決定する。本体制御部101では、回転駆動ロール411に回転駆動力を与えるメインモータM1を通じて、決定した軸速度設定値B’で回転駆動ロール411を回転させる。また、本体制御部101は、ベルトデカーラ部4における食い込み量が、決定した食い込み量となるように第2ステッピングモータSM2の回転角度を調節する。
図10は、ロールデカーラ部およびベルトデカーラ部それぞれにおける食い込み量と軸速度設定値との関係を示す図である。
図10には、例として、ロールデカーラ部3とベルトデカーラ部4それぞれにおけるあらゆる食い込み量の組み合わせに対しても用紙の搬送速度448.5mm/secをロールデカーラ部3とベルトデカーラ部4との双方で維持するための軸速度設定値A’と軸速度設定値B’とが示されている。
デカーラ装置1では、ロールデカーラ部3における用紙搬送はデカーラ装置1に備えられたローカルモータM2の駆動系統を使用して制御され、ベルトデカーラ部4における用紙搬送は本体側に備えられたメインモータM1の駆動系統が使用して制御されている。例えば、ロールデカーラ部3における用紙搬送とベルトデカーラ部4における用紙搬送とが同一の駆動系統の下で行われると、ロールデカーラ部3における用紙搬送速度とベルトデカーラ部4における用紙搬送速度との間に差が生じるおそれがある。そこで、デカーラ装置1では、ロールデカーラ部3における用紙搬送とベルトデカーラ部4における用紙搬送速度の調整がデカーラ部毎に別々の駆動系統を使用して行われ、用紙搬送速度を高精度に一致させている。これにより、デカーラ装置1では、例えば、ロールデカーラ部3における用紙搬送速度が速く、ベルトデカーラ部4における用紙搬送速度が遅いことによるZ折れなどの発生が防止される。以上が、ロールデカーラ部3とベルトデカーラ部4とで駆動源が別系統にされている理由についての説明である。
ここで、一旦、デカーラ装置1の説明を中断し、画像形成装置100に備えられている定着器400について説明する。
図11は、定着器周辺の概略構成図である。
図11に示された定着器400は、加熱部401と加圧ロール402と冷却ファン403とで構成されている。
加熱部401は、加熱ベルト4013、第1加熱ロール4011、第2加熱ロール4012、および、テンションロール4014で構成されている。第1加熱ロール4011は、加熱ベルト4013の内側から加熱ベルト4013を加熱し、第2加熱ロール4012は、加熱ベルト4013の外側から加熱ベルト4013を加熱する。
冷却ファン403は、加圧ロール402の下方に配置され、エアーを加圧ロール402の下方から吹き上げることで加圧ロール402の過熱を防止している。
図11には、定着器400を挟み用紙の搬送経路上の上流側と下流側とのそれぞれに配置された吸着搬送器650が示されており、定着器400よりも下流側の吸着搬送器650よりもさらに下流側には冷却装置740が示されている。
吸着搬送器650は、搬送ベルト651、駆動ロール653、テンションロール654、および排気ファン652を有している。
搬送ベルト651には、表と裏を貫通する微小径の孔が空けられており、搬送ベルト651と駆動ロール653とテンションロール654とで囲まれた空間のエアーを排気ファン652によって排出することによりこの空間内を負圧にし、用紙を搬送ベルト651の表面に吸着する。
また、図11には、加熱部401と加圧ロール402とにより形成されたニップ部に先端が到達する直前の用紙が示されており、ここには、両端が下を向く癖が付いた用紙Pは実線で示され、両端が跳ね上がる癖がついた用紙P’は点線で示されている。
点線で示される用紙P’がニップ部に突入する際には、用紙P’の先端が加熱ベルト4013に衝突して、所謂ドッグイヤーと呼ばれる用紙の角部の折れが発生したり、用紙P’の先端がスムーズにニップ部に入り込めない場合にはジャムが発生するおそれがある。
そこで、排気ファン652を強力にして先端を吸着ベルト651に吸着することで、その跳ね上がりを抑えることが考えられる。しかしながら、排気ファン652を強力に動作させると、加熱ベルト4013の温度を下げる空気流を生じさせることとなる。このため、この画像形成装置100では、排気ファン652は必要最低限で動作しているに過ぎず、跳ね上がりを抑えるために利用することはできない。
ところで、図11に示される用紙P’の様な巻き癖は、片面にのみトナー像が定着された用紙に付いていると考えられ、ドッグイヤーやジャムは、片面づつ2回に分けてトナー像の定着が行われる両面印刷モードの、2回目の定着の際に多く発生する可能性が高い。例えば、両面印刷モードにおいて、片面にトナー像が定着された、図5に示される搬送経路上を搬送される用紙に、ロールデカーラ部3およびベルトデカーラ部4を経た時点で中央部分が上方に突出した巻き癖が付いている場合には、その後、表裏反転経路R2を搬送され、もう片面にトナー像の転写を受けて定着器400に搬送されてきたその用紙の状態は、図11に示される用紙P’と同じ状態となる。そこで、このデカーラ装置1では、両面印刷モードが選択されている場合であって、片面へのトナー像の定着を終えた用紙に中央部分が上方に突出した巻き癖が付いている場合には、中央部分が僅かに下方に突出した巻き癖が付くような矯正が行なわれ、片面へのトナー像の定着を終えた用紙に元々、中央部分が下方に突出した巻き癖が付いている場合には、その巻き癖が中央部分が上方に突出した巻き癖にならない程度に、中央部分が下方に突出した巻き癖を弱める矯正が行われる。また、このデカーラ装置1では、両面印刷モードが選択されている場合であって、片面へのトナー像の定着を終えた用紙に、中央部分が下方に僅かに突出した巻き癖が付いている場合には矯正は行われない。このデカーラ装置1では、オペレータに選択された紙種の他、温湿度および画像密度などの諸条件に基づいて、定着後の用紙の巻き癖を推定し、用紙の巻き癖を上述したように矯正している。また、このデカーラ装置1では、温湿度および画像密度などの条件が変化してもトナー像の定着を終えた後の巻き癖が、必ず中央部分が下方に僅かに突出したものとなる紙種を把握しており、オペレータによって選択された紙種が、把握している紙種に該当する場合には矯正は行われない。また、このデカーラ装置1では、片面印刷モードが選択されている場合には、片面へのトナー像の定着を終えた用紙に、中央部分が上方に突出した巻き癖と中央部分が下方に突出した巻き癖とのいずれの巻き癖が付いている場合でもそれぞれの巻き癖を弱める矯正が行われる。ここで、一旦、実施形態の説明を中断し、実施例について説明する。
この実施例は、富士ゼロックス製のプリンタの定着器の、用紙搬送方向における上流側直近に配置された吸着搬送装置の吸着ファンを、ON(出力lowでの使用)とOFFの切り換えが可能なものに変更し、動作環境として高温(35℃)高湿(70%)と常温(20℃)常湿(40%)を用意して行ったものである。また、搬送する用紙については、大きさは同じSRA3であるが表面処理がなされておらず坪量が異なる普通紙と、大きさは同じSRA3であるが表面処理がなされている坪量が異なるコート紙とを用意した。
この実施例では、上述の各種用紙についてその片面にトナー像の転写および定着を行った後、ロールデカーラ部およびベルトデカーラ部それぞれにおける食い込み量の組み合わせを45枚単位で変えると共に、一部用紙については45枚単位で吸着ファンをオンにした場合とオフにした場合とのそれぞれで巻き癖補正をし、もう片面へのトナー像の転写を終えて定着のために再び定着器に向けて搬送されてきた用紙の、定着器のニップ部への突入直前の用紙先端の挙動の傾向、最大の跳ね上がり量、ジャムの発生タイミング、およびドッグイヤーの発生枚数を観察し、評価した。一部用紙以外の用紙については、吸着ファンをオンにしたままで巻き癖補正をし、もう片面へのトナー像の転写を終えて定着のために再び定着器に向けて搬送されてきた用紙の、定着器のニップ部への突入直前の用紙先端の挙動の傾向、最大の跳ね上がり量、ジャムの発生タイミング、およびドッグイヤーの発生枚数を観察し、評価した。尚、ロールデカーラ部における食い込み量としては、多(R3)、中(R2)、少(R1)の3段階を用意し、ベルトデカーラ部における食い込み量としては多(B3)、中(B2)、少(B1)の3段階を用意した。食い込み量が多いほど矯正力は強まり、また、食い込み量が同じ段階であれば用紙の矯正力も等しくしている。
まず最初に、常温常湿環境下で行った実験について説明する。
比較例1は、常温常湿の環境下で、用紙として坪量が64gsmの普通紙であるP紙に対し、吸着ファンがオフの状態でロールデカーラ部の食い込み量をR3、ベルトデカーラ部の食い込み量をB1にして巻き癖を矯正した場合である。
比較例2は、吸着ファンをオンにした以外は比較例1と同じである。
比較例3は、用紙として坪量が82gsmの普通紙であるJ紙を使用した以外は比較例2と同じである。
比較例4は、ロールデカーラ部の食い込み量をR2とした以外は比較例1と同じである。
比較例5は、ロールデカーラ部の食い込み量をR2とした以外は比較例2と同じである。
比較例6は、ロールデカーラ部の食い込み量をR2とした以外は比較例3と同じである。
比較例7は、ロールデカーラ部の食い込み量をR1とした以外は比較例1と同じである。
比較例8は、ロールデカーラ部の食い込み量をR1とした以外は比較例2と同じである。
比較例9は、ロールデカーラ部の食い込み量をR1とした以外は比較例3と同じである。
実施例1は、ベルトデカーラ部の食い込み量をB2とした以外は比較例7と同じである。
実施例2は、ベルトデカーラ部の食い込み量をB2とした以外は比較例8と同じである。
実施例3は、ベルトデカーラ部の食い込み量をB2とした以外は比較例9と同じである。
比較例10は、用紙として坪量が73gsmのコート紙であるOKT紙に対し、吸着ファンがオフの状態でロールデカーラ部の食い込み量をR3、ベルトデカーラ部の食い込み量をB1にして巻き癖矯正した場合である。
実施例4は、吸着ファンをオンにした以外は比較例10と同じである。
実施例5は、用紙として坪量が104gsmのコート紙であるJD紙を使用した以外は実施例4と同じである。
比較例11は、ロールデカーラ部の食い込み量をR2とした以外は比較例10と同じである。
実施例6は、吸着ファンをオンにした以外は比較例11と同じである。
実施例7は、用紙として坪量が104gsmのコート紙であるJD紙を使用した以外は実施例6と同じである。
実施例8は、ロールデカーラ部の食い込み量をR1とした以外は比較例11と同じである。
実施例9は、吸着ファンをオンにした以外は実施例8と同じである。
実施例10は、ロールデカーラ部の食い込み量をR1とした以外は実施例7と同じである。
実施例11は、ベルトデカーラ部の食い込み量をB2とした以外は実施例8と同じである。
実施例12は、吸着ファンをオンにした以外は実施例11と同じである。
実施例13は、ベルトデカーラ部の食い込み量をB2とした以外は実施例10と同じである。
各評価項目のうち、挙動については、いつジャムになってもおかしくない場合は‘×’、用紙先端がややばたついている場合は‘△’、安定している場合は‘○’とした。また、最大跳ね上がり量については用紙先端の跳ね上がり高さを光学センサで検出した値を、ジャムの発生については45枚のうちの何枚目でジャムが発生したかを、ドッグイヤーについては45枚中何枚に発生したかを示している。総合判定については、矯正態様に問題有りは‘×’、矯正態様は許容範囲内は‘△’、矯正態様に問題なしは‘○’とした。
表1には、常温常湿環境下で行われた実施例1〜13、比較例1〜11までの内容等が示されている。
比較例1では、挙動が‘×’、最大跳ね上がり量が8mm、ジャムの発生無し、ドッグイヤーが45枚中1枚発生したために、総合判定は‘×’とした。
比較例2では、ジャムもドッグイヤーの発生もないが、挙動が‘△’、最大跳ね上がり量が8mmのため、総合判定は‘×’とした。
比較例3では、ジャムの発生はないものの、挙動が‘×’、最大跳ね上がり量が14mm、ドッグイヤーが45枚中1枚発生したために、総合判定は‘×’とした。
比較例4では、ジャムもドッグイヤーの発生もないが、挙動が‘△’、最大跳ね上がり量が8mmのため、総合判定は‘×’とした。
比較例5では、ジャムもドッグイヤーの発生もないが、挙動が‘△’、最大跳ね上がり量が9mmのため、総合判定は‘×’とした。
比較例6では、ジャムの発生は無いものの、挙動が‘×’、最大跳ね上がり量が9mm、ドッグイヤーが45枚中1枚発生したために、総合判定は‘×’とした。
比較例7では、ジャムもドッグイヤーの発生もないものの、挙動が‘△’、最大跳ね上がり量が8mmのため、総合判定は‘×’とした。
比較例8では、ジャムもドッグイヤーの発生もなく、挙動は‘○’であるものの、最大跳ね上がり量が9mmのため、総合判定は‘×’とした。
比較例9では、ジャムもドッグイヤーの発生もないが、挙動が‘△’、最大跳ね上がり量が9mmのため、総合判定は‘×’とした。
実施例1では、ジャムもドッグイヤーの発生もなく、挙動は‘○’、最大跳ね上がり量は3mmのため、総合判定は‘△’とした。
実施例2では、ジャムもドッグイヤーの発生もなく、挙動は‘○’、最大跳ね上がり量も4mmのため、総合判定は‘△’とした。
実施例3では、ジャムもドッグイヤーの発生もなく、挙動は‘○’、最大跳ね上がり量も5mmのため、総合判定は‘△’とした。
比較例10では、挙動が‘△’、最大跳ね上がり量が6mm、ジャムが45枚中1枚目に発生したために、総合判定は‘×’とした。
実施例4では、ジャムもドッグイヤーの発生もなく、挙動は‘△’、最大跳ね上がり量も5mmのため、総合判定は‘△’とした。
実施例5では、ジャムもドッグイヤーの発生もなく、挙動は‘○’、最大跳ね上がり量も6mmのため、総合判定は‘△’とした。
比較例11では、挙動が‘△’、最大跳ね上がり量が4mm、ジャムが45枚中1枚目に発生したために、総合判定は‘×’とした。
実施例6では、ジャムもドッグイヤーの発生もなく、挙動は‘○’、最大跳ね上がり量は3mmのため、総合判定は‘△’とした。
実施例7では、ジャムもドッグイヤーの発生もなく、挙動は‘○’、最大跳ね上がり量は4mmのため、総合判定は‘△’とした。
実施例8では、ジャムもドッグイヤーの発生もなく、挙動は‘○’、最大跳ね上がり量は1mmのため、総合判定は‘○’とした。
実施例9では、ジャムもドッグイヤーの発生もなく、挙動は‘○’、最大跳ね上がり量は2mmのため、総合判定は‘○’とした。
実施例10では、ジャムもドッグイヤーの発生もなく、挙動は‘○’、最大跳ね上がり量は1mmのため、総合判定は‘○’とした。
実施例11では、ジャムもドッグイヤーの発生もなく、挙動は‘○’、最大跳ね上がり量は0mmのため、総合判定は‘○’とした。
実施例12では、ジャムもドッグイヤーの発生もなく、挙動は‘○’、最大跳ね上がり量は2mmのため、総合判定は‘○’とした。
実施例13では、ジャムもドッグイヤーの発生もなく、挙動は‘○’、最大跳ね上がり量は0mmのため、総合判定は‘○’とした。
比較例1〜9と実施例1〜3とからは、常温常湿環境下では、片面のみにトナー像が定着された坪量64gsm以上の普通紙に対し、そのトナー像が定着された面を凹ませて両端を跳ね上がらせるベルトデカーラ部による矯正を強くすることで、もう片面に転写されたトナー像の定着がファンのオンオフに拘わらずほぼ良好に行なえる点が確認できた。
比較例10、11と実施例4〜7とからは、常温常湿環境下では、片面のみにトナー像が定着された坪量73gsm以上のコート紙に対して、そのトナー像が定着された面を突出させるロールデカーラ部による矯正が強くても、もう片面に転写されたトナー像の定着がファンがオンであれば辛うじて行なえる点が確認できた。
さらに、実施例8〜13からは、常温常湿環境下では、片面のみにトナー像が定着された坪量73gsm以上のコート紙に対して、ロールデカーラ部とベルトデカーラ部の矯正力が同等であれば、もう片面に転写されたトナー像の定着が、ファンのオンオフに拘わらず良好に行なえる点が確認できた。
以上から、普通紙に比べコート紙の方は、片面へのトナー像の定着により、中央部分が下方に突出した巻き癖がつきやすく、両面印刷モードにおけるベルトデカーラ部による矯正力をロールデカーラ部による矯正力をそれほど上回る必要がない点が確認できた。
次に、高温高湿環境下において行った実験について説明する。
比較例12は、高温高湿の環境下で、用紙として坪量が64gsmの普通紙であるP紙に対し、吸着ファンがオフの状態でロールデカーラ部の食い込み量をR3、ベルトデカーラ部の食い込み量をB1にして巻き癖を矯正した場合である。
比較例13は、吸着ファンをオンにした以外は比較例12と同じである。
比較例14は、用紙として坪量が82gsmの普通紙であるJ紙を使用した以外は比較例13と同じである。
比較例15は、ロールデカーラ部の食い込み量をR2とした以外は比較例12と同じである。
比較例16は、ロールデカーラ部の食い込み量をR2とした以外は比較例13と同じである。
比較例17は、ロールデカーラ部の食い込み量をR2とした以外は比較例14と同じである。
比較例18は、ロールデカーラ部の食い込み量をR1とした以外は比較例12と同じである。
比較例19は、ロールデカーラ部の食い込み量をR1とした以外は比較例13と同じである。
比較例20は、ロールデカーラ部の食い込み量をR1とした以外は比較例14と同じである。
比較例21は、ベルトデカーラ部の食い込み量をB2とした以外は比較例18と同じである。
比較例22は、ベルトデカーラ部の食い込み量をB2とした以外は比較例19と同じである。
比較例23は、ベルトデカーラ部の食い込み量をB2とした以外は比較例20と同じである。
実施例14は、ベルトデカーラ部の食い込み量をB3とした以外は比較例18と同じである。
実施例15は、ベルトデカーラ部の食い込み量をB3とした以外は比較例19と同じである。
実施例16は、ベルトデカーラ部の食い込み量をB3とした以外は比較例20と同じである。
比較例24は、用紙として坪量が73gsmのコート紙であるOKT紙に対し、吸着ファンがオフの状態でロールデカーラ部の食い込み量をR3、ベルトデカーラ部の食い込み量をB1にして巻き癖を矯正した場合である。
実施例17は、吸着ファンをオンにした以外は比較例24と同じである。
比較例25は、用紙として坪量が104gsmのコート紙であるJD紙を使用した以外は実施例17と同じである。
実施例18は、ロールデカーラ部の食い込み量をR2とした以外は比較例24と同じである。
実施例19は、ロールデカーラ部の食い込み量をR2とした以外は実施例17と同じである。
比較例26は、ロールデカーラ部の食い込み量をR2とした以外は比較例25と同じである。
実施例20は、ロールデカーラ部の食い込み量をR1とした以外は比較例24と同じである。
実施例21は、ロールデカーラ部の食い込み量をR1とした以外は実施例17と同じである。
実施例22は、ロールデカーラ部の食い込み量をR1とした以外は比較例25と同じである。
表2には、高温高湿環境下で行われた実施例14〜22、比較例12〜26までの内容等が示されている。
比較例12では、挙動が‘×’、最大跳ね上がり量が14mm、ジャムが45枚中5枚目に発生し、ドッグイヤーがジャム発生時までに4枚発生していたために、総合判定は‘×’とした。
比較例13では、挙動が‘×’、最大跳ね上がり量が14mm、ジャムが45枚中15枚目に発生し、ドッグイヤーがジャム発生時までに2枚発生していたために、総合判定は‘×’とした。
比較例14では、挙動が‘×’、最大跳ね上がり量が16mm、ジャムが45枚中10枚目に発生し、ドッグイヤーがジャム発生時までに5枚発生していたために、総合判定は‘×’とした。
比較例15では、挙動が‘×’、最大跳ね上がり量が9mm、ジャムが45枚中20枚目に発生し、ドッグイヤーがジャム発生時までに3枚発生していたために、総合判定は‘×’とした。
比較例16では、ジャムの発生は無いものの、挙動が‘×’、最大跳ね上がり量が12mm、ドッグイヤーが45枚中6枚に発生していたために、総合判定は‘×’とした。
比較例17では、挙動が‘×’、最大跳ね上がり量が12mm、ジャムが45枚中15枚目に発生し、ドッグイヤーがジャム発生時までに3枚発生していたために、総合判定は‘×’とした。
比較例18では、ジャムの発生は無いものの、挙動が‘×’、最大跳ね上がり量が8mm、ドッグイヤーが45枚中1枚に発生していたために、総合判定は‘×’とした。
比較例19では、ジャムの発生は無いものの、挙動が‘×’、最大跳ね上がり量が11mm、ドッグイヤーが45枚中8枚に発生していたために、総合判定は‘×’とした。
比較例20では、ジャムの発生は無いものの、挙動が‘×’、最大跳ね上がり量が8mm、ドッグイヤーが45枚中3枚に発生していたために、総合判定は‘×’とした。
比較例21では、挙動が‘×’、最大跳ね上がり量が7mm、ジャムが45枚中31枚目に発生し、ドッグイヤーがジャム発生時までに1枚発生していたために、総合判定は‘×’とした。
比較例22では、挙動が‘○’であり、ジャムおよびドッグイヤーの発生はないものの、最大跳ね上がり量が8mmのために総合判定は‘×’とした。
比較例23では、ジャムおよびドッグイヤーの発生はないものの、挙動が‘△’であり、最大跳ね上がり量が6mmのために総合判定は‘×’とした。
実施例14では、ジャムもドッグイヤーの発生もなく、挙動は‘△’、最大跳ね上がり量は2mmのため、総合判定は‘△’とした。
実施例15および実施例16では、ジャムもドッグイヤーの発生もなく、挙動は‘○’、最大跳ね上がり量は2mmのため、総合判定は‘○’とした。
比較例24では、挙動が‘△’、最大跳ね上がり量が5mm、ジャムが45枚中20枚目に発生し、ドッグイヤーがジャム発生時までに1枚に発生していたために、総合判定は‘×’とした。
実施例17では、ジャムもドッグイヤーの発生もなく、挙動は‘○’、最大跳ね上がり量は5mmのため、総合判定は‘△’とした。
比較例25では、挙動が‘△’であり、ジャムおよびドッグイヤーの発生はないものの、最大跳ね上がり量が9mmのために総合判定は‘×’とした。
実施例18では、ジャムもドッグイヤーの発生もなく、挙動は‘△’、最大跳ね上がり量は5mmのため、総合判定は‘△’とした。
実施例19では、ジャムもドッグイヤーの発生もなく、挙動は‘○’、最大跳ね上がり量は4mmのため、総合判定は‘△’とした。
比較例26では、挙動が‘△’であり、ジャムおよびドッグイヤーの発生はないものの、最大跳ね上がり量が8mmのために総合判定は‘×’とした。
実施例20では、ジャムもドッグイヤーの発生もなく、挙動は‘○’、最大跳ね上がり量は3mmのため、総合判定は‘△’とした。
実施例21では、ジャムもドッグイヤーの発生もなく、挙動は‘○’、最大跳ね上がり量は4mmのため、総合判定は‘△’とした。
実施例22では、ジャムもドッグイヤーの発生もなく、挙動は‘○’、最大跳ね上がり量は2mmのため、総合判定は‘○’とした。
比較例12〜23と実施例14〜16とからは、高温高湿環境下では、片面のみにトナー像が定着された坪量64gsm以上の普通紙に対し、そのトナー像が定着された面を凹ませるベルトデカーラ部による矯正を強力に行わないと、もう片面に転写されたトナー像の定着が良好に行なえない点が確認できた。
比較例24、25と実施例17とからは、高温高湿環境下では、片面のみにトナー像が定着された坪量73gsmのコート紙に対して、ロールデカーラ部による矯正力がベルトデカーラ部より遙かに強いと、もう片面に転写されたトナー像の定着がファンがオンであれば辛うじて良好に行なえるものの、坪量104gsmのコート紙についてはファンがオンであっても良好には行えなくなる点が確認できた。
また、実施例18、19と比較例26とからは、高温高湿環境下では、片面のみにトナー像が定着された坪量73gsmのコート紙に対して、ロールデカーラ部による矯正力がベルトデカーラ部より強いと、もう片面に転写されたトナー像の定着がファンがオンオフに関わらず良好に行なえるものの、坪量104gsmのコート紙についてはファンがオンであっても良好には行えなくなる点が確認できた。
さらに、実施例20〜22からは、高温高湿環境下では、片面のみにトナー像が定着された坪量73gsm以上のコート紙に対して、ロールデカーラ部とベルトデカーラ部の矯正力が同等であれば、もう片面に転写されたトナー像の定着が、ファンのオンオフに拘わらず良好に行なえる点が確認できた。
以上から、高温高湿環境下でも、普通紙に比べコート紙の方は、片面へのトナー像の定着により、中央部分が下方に突出した巻き癖がつきやすく、両面印刷モードにおけるベルトデカーラ部による矯正力をロールデカーラ部による矯正力をそれほど上回る必要がない点が確認できた。さらには、高温高湿環境下では、ベルトデカーラ部による矯正力がロールデカーラ部による矯正力よりも上回る度合いを、常温常湿環境下よりも大きくする必要が有る点が確認できた。以上が、両面モードにおけるジャムの発生を抑制する工夫についての説明である。以上が、実施例の説明である。
以下、デカーラ装置1についてさらに詳細に説明する。
デカーラ装置1は、画像形成装置100の本体筐体から、図1に示される冷却器740と共に引き出しが自在な装置であり、画像形成装置100の規定の位置に収容されたデカーラ装置1のさらに奥側には、このデカーラ装置1に対し駆動力を供給する各種モータが配置されている。
図12は、本体筐体から引き出されたデカーラ装置の外観斜視図である。
図12には、冷却装置740とともに引出プレート102上に固定されたデカーラ装置1が示されている。尚、図12では、説明の便宜上、デカーラ装置1を引出プレート102の上面に固定する固定部材の図示は省略されている。
これら冷却装置740およびデカーラ装置1と、これら双方が上面に固定された引出プレート102とを併せた総重量は百kg単位のものである。このため、本体筐体内に戻す際にオペレータがこの引出プレート102を本体側に押したときにデカーラ装置1が本体筐体内の他の部材と衝突しないように、この引出プレート102の上面にはガイド部材103が設けられている。
また、図12には、デカーラ装置1の下部筐体12の底部側面121に第1切欠121aと第2切欠121bが備えられている様子が示されている。
また、図12には、本体筐体の奥側に備えられた突出部材900が示されている。
突出部材900は、引出プレート102の移動に伴ってガイド部材103の内側に入り込む下部901と、引出プレート102の移動に伴ってデカーラ装置1の底部側面121に接触する上部902とで構成されている。上部902には、内部に備えられたバネの付勢によって突出しているものの、一定以上の力が掛かると押し込まれて上部902の内部に沈み込む第1凸部9021および第2凸部9022が設けられている。引出プレート102の移動に伴ってデカーラ装置1の底部側面121に沿って突出部材900が移動し、第1凸部9021が第1切欠121aと対向する瞬間と、第1凸部9021が第2切欠121bと対向する瞬間に、第1凸部9021は第1切欠121aと第2切欠121bとにそれぞれ嵌り込む。また、第2凸部9022が第2切欠121bと対向する瞬間に、第2凸部9022は第2切欠121bに嵌り込む。尚、図12では、説明の便宜上、突出部材900が、完全にガイド部材103から抜け出た状態が示されているが、実際には、引出プレート102が本体筐体から最大限引き出されたとしても、第2切欠121bに第1凸部9021がはまり込んだ状態となり、また、下部901のテーパー部9011は、ガイド部材103の内側から抜け出てしまうことはない。一方、引出プレート102が本体筐体内に完全に収められた状態では、第1凸部9021が第1切欠121aにはまり込んだ状態となり、第2凸部9022が第2切欠121bにはまり込んだ状態になる。
この様な構成により、引出プレート102を本体筐体内から着脱する際の、デカーラ装置1を載せた引出プレート102の軌道は安定していることから、デカーラ装置1と本体内で隣り合う部材とデカーラ装置1との衝突は避けられる。
次に、用紙の搬送路を境に上部と下部に分割されたデカーラ装置1の開閉機構について説明する。
図13は、デカーラ装置の下部に対し上部をロックするためのロック機構の外観斜視図である。
図13には、このロック機構7により、デカーラ装置1の装置上部が装置下部にロックされている状態が示されている。
図13に示されるロック機構7は、操作レバー70、操作レバー70が取り付けられた上部プレート71、上部プレート71の、操作レバー70が取り付けられた面とは反対側の面に取り付けられた押圧プレート72、トーションスプリング73、トーションスプリング73が巻き付けられた状態の貫通軸74、上部筐体11に固定され、この貫通軸74を回転自在に支持する上部フレーム75、貫通軸74の両端に固定されたロック部材76、ロック部材76が引っかけられるロック軸78、および、このロック軸78が備えられ、下部筐体12に取り付けられた下部フレーム77を備えている。トーションスプリング73の一端は貫通軸74に固定されており、他端は上部フレーム75に支持されている。このロック機構7では、操作レバー70を上方に持ち上げてロック部材76をロック棒78から外すとロックが解除され、解除後は、操作レバー70を勢いよく下向きに押すと装置上部が装置下部にロックされる。
図14は、図13に示されたロック機構の側面からの透視図である。
図14には、操作レバー70の操作に応じた、これら押圧プレート72、トーションスプリング73、貫通軸74、およびロック部材76の動作が示されている。尚、貫通軸74は、上部フレーム75の外側に露出している部分は、半円柱形状を有しているが、上部フレーム75の内側には、この半円柱形状に、上方に位置する押圧プレート72から押圧力を受ける板状部分741が、軸方向に沿った一部に空けられた隙間を挟んで張り出した形状を有している。トーションバネ73は、この隙間を通って、貫通軸74の半円柱形状部分に巻き付いた状態になっている。
図14のパート(a)には、図13にも示される、操作レバー70が未操作の際のこれら部材の状態が示されており、ここには、トーションバネ73の他端731が上部フレーム75の底面に支持されていると共に、ロック部材76が、図14のパート(a)に示される矢印の向きの付勢力で以ってロック軸78に引っかけられている様子が示されている。
また、図14のパート(a)には、貫通軸74の板状部分741と押圧プレート72の間に角度αの隙間が設けられている様子が示されている。この隙間により、押圧プレート72は、水平状態から反時計回りに角度αだけ傾いた状態との間で自由、所謂‘遊び’を有している。
ここで、図14のパート(b)には、実際には設けられているロック軸78が設けられていない場合の、これら部材の状態が示されている。ここには、図14のパート(a)に示された矢印の向きの付勢力を相殺するために図14のパート(a)に示される状態よりも時計回りに回転した貫通軸74とロック部材76とが示されている。
図14のパート(c)には、操作レバー70が反時計回りに角度αだけ持ち上げられたことで押圧プレート72が角度αだけ反時計回りに傾いた様子が示されている。しかし。これは、上述した‘遊び’の範囲内であるので、図14のパート(a)に示された貫通軸74との間に何ら変化は見られない。
図14のパート(d)には、操作レバー70が図14のパート(a)に湿された矢印の向きの付勢力に抗して反時計回りに角度B(β>α)まで持ち上げられたことで押圧プレート72が角度βだけ反時計回りに傾き、板状部材741は押圧プレート72からの押圧力を受ける。そして、貫通軸74は反時計回りに角度(β−α)だけ回転する。これにより、ロック部材76がロック軸78から離れ始めた様子が示されている。
図14のパート(e)には、操作レバー70がさらに反時計回りに角度γ(γ>β)まで持ち上げられたことで押圧プレート72が角度γだけ反時計回りに傾き、板状部材741は押圧プレート72からの押圧力を受ける。そして、貫通軸74は反時計回りに角度(γ−α)だけ回転する。これにより、ロック部材76がロック軸78から遠く離れた様子が示されている。尚、操作レバー70が固定されている上部プレート71の底部にはストッパ711が備えられており、操作レバー70の操作によって押圧プレート72は、水平状態よりも時計回りには回転せず、反時計回りの回転のみが許容されている。
図15から図18は、このデカーラ装置のロック解除の流れを示す図である。
図15および図16には、ロック状態のデカーラ装置1の側面図が示されており、図15には、操作レバー70が未操作の状態が示され、図16には、僅かに操作レバー70が持ち上げられた様子が示されている。図16の状態では、未だ押圧プレート72は水平に対し角度α未満しか反時計回りに回転されていない。したがって、図15および図16に示された範囲で操作レバー70が操作されても、図14で説明した‘あそび’の存在により、ロックの解除動作に結びつかない。
図17には、図16よりもさらに操作レバー70が持ち上げられ、図14のパート(d)に示された状態、すなわち、押圧プレート72が水平に対し角度α以上に反時計回りに回転したことで、操作レバー70の操作がロック解除に結びついた様子が示されている。
図18には、図14のパート(d)に示されるように、ロック部材76をロック軸78から遠く離し、さらに操作レバー70が持ち上げた後に操作レバー70を離した様子が示されている。尚、図示は省略したが、図18に示された状態のまま、操作レバー70を押し下げると、貫通軸74の姿勢は、図14のパート(b)に示された状態のまま下がってくる。そうなると、ロック部材76の先端部分はロック軸材78と一瞬衝突するが、その後は、先端部分に備えられているテーパー761をロック軸78が滑り初める。そして、ロック軸78がテーパー761を滑りきると、再び、図14のパート(a)に示される状態になる。
図19は、デカーラ装置がロックされた状態で、本体筐体内に収容された様子を示す図である。
図19には、デカーラ装置1の操作レバー70の上面に、本体筐体の前面フレーム500に向かって立設された凸部701が備えられている様子が示されている。
この凸部701は、ロックされた状態で本体筐体内に収容されたデカーラ装置1の操作レバー70が、前述した‘あそび’以上に誤って持ち上げられ、本体筐体内でロックが解除されてしまう事態を防止するためのストッパである。すなわち、ロック状態が解除されるほど操作レバー70が持ち上げられる前にこの凸部701が本体筐体の前面フレーム500にぶつかることで本体筐体内でのロック解除が防止される。操作レバー70が、操作部材の一例である。尚、ロック機構7には、カバー700がかぶせられている。
図20は、下部に対し上部が解放されたデカーラ装置の外観斜視図である。
図20には、下部の左側から順に、ロールデカーラ部3の搬送駆動軸31、ベルトデカーラ部4の、用紙搬送方向と交わる方向に複数並べられた無端ベルト413、下部排出ガイド54、下部回転ロール52、および下部シュート62が示され、上部の左側から順に、矯正ロール32、用紙ガイド45、押圧ロール421、上部排出ガイド53、上部回転ロール51、および上部シュート61が示されている。尚、このデカーラ装置1には、ロックが解除されると、上部を持ち上げる方向に付勢力を生じるトーションバネが備えられている。
デカーラ装置1では、搬送されてくる用紙を1対のロールで挟み込むロールデカーラ部3が搬送搬送方向上流側に配置され、用紙搬送方向に交わる方向に間欠的に並べられた複数の無端ベルト413を有するベルトデカーラ部4が下流側に配置されている。これは以下の理由によるものである。冷却器740を経た用紙がデカーラ装置1に送りこまれてきた直後は用紙の表面は未だ冷め切っていない。そのため、未だ冷め切っていない用紙を、ベルトデカーラ部4のような、用紙表面に接触する部分と非接触の部分とが混在する部材で挟み込んで搬送すると、用紙表面に光沢差が生じてしまう。そこで、このデカーラ装置1では、搬送されてくる用紙の表面が未だ冷め切っていない、冷却装置74に近い側には、用紙表面に万遍なく接触する1対のロールからなるロールデカーラ部3が配置されている。
図21は、下部排出ガイドの組み付け方法を示す図である。
図21には、下部排出ガイド54の一端に設けられた突状部541が、下部筐体12の奥側に備えられた背面プレート122に設けられた孔122aに嵌め込まれ、下部排出ガイド54の他端に設けられたネジ孔541aにネジ留めされている様子が示されている。
下部排出ガイド54をこの様な構成とすることで、デカーラ装置1では、下部排出ガイド54の取り付けの際の手間が省かれている。
また、図21には、図20に示されるデカーラ装置1から上部シュート61および下部シュート62が取り外された状態が示されている。これら上部シュート61および下部シュート62は金属製のものと樹脂製のものとの2種類が用意されており、使用する用紙に応じて交換自在の部材である。
しかしながら、金属製のシュートの方が、樹脂製のシュートよりも重量が重い。このため、ロックが解除されると、上部を持ち上げる方向に付勢力を生じるトーションバネを、金属製のシュートに合わせて採用した場合、のちに樹脂製のシュートに交換されると、上部を開放する力が強すぎて、装置上部と装置下部とを連結する部分に負担がかかる。一方、樹脂製のシュートに合わせてこのトーションバネを採用した場合、のちに金属製のシュートに交換されると、上部を開放する力が足りずに不便になるおそれがある。そこで、このデカーラ装置1では、いずれのシュートが使用されても、安定した付勢力を確保する工夫が図られている。
図22は、デカーラ装置の上部と下部の連結部分を示す図である。
図22には、デカーラ装置1の装置上部と装置下部の連結部分が示されており、ここには、上部筐体11に取り付けられた上部軸受部112、下部筐体12に取り付けられた下部軸受部123、これら上部軸受部112と下部軸受部123とを貫通しこれらを連結する連結軸80、および、この連結軸80に貫通されたトーションバネ81が示されている。このトーションバネ81の一端811は上部筐体11に連結され、他端812は下部軸受部123に空けられた第1係合孔123aと第2係合孔123bとのいずれかに引っかけられる。この下部軸受部123が、取付部の一例であり、トーションバネ81が、弾性部材の一例でもあり、トグルバネの一例でもある。
このトーションバネ81の一端811が上部筐体11に連結され、他端812が下部筐体12の第1係合孔123aあるいは第2係合孔123bに引っかけられることで、トーションバネ81には、上部を閉じようとする動作に対して反発する付勢力が発生する。デカーラ装置1では、この付勢力を利用して、ロック状態でトーションバネ81に発生する上記付勢力をロック解除時に上部をある程度持ち上げさせる。
図22には、トーションバネ81の他端812が、図22における右側の第2係合孔123bに引っかけられる様子が示されている。この場合、この他端812が第1係合孔123aに係合する場合よりも、上部を閉じようとする動作に対して発生する付勢力は大きい。したがって、樹脂製のシュートを使用する場合は、この他端812を第1係合孔123aに引っかけ、金属製のシュートを使用する場合は、この他端812を第2係合孔123bに引っかけることでシュートがいずれに交換されても、ロック解除時に上部をある程度持ち上げさせる力を発生させることができる。
図23は、上部と下部を繋ぐハーネスのカバーを示す図である。
デカーラ装置1では、図22にも示した装置上部と装置下部を連結する連結軸側に、装置上部に配備されている各種センサーからの信号を装置下部に送信するためのハーネス910が這わされている。図23には、この連結軸側に這わされたハーネス910の束をカバーするハーネカバー920がネジ留めされている。
この様に、上部と下部を繋ぐハーネス910が上部と下部を連結する連結軸側でハーネスカバー920に収容されていることから、ハーネス910の長さは最低限で済むと共にハーネス910がバラけることもない。
ところで、デカーラ装置1は、装置上部と装置下部とがロックされたのちに本体筐体内に収容されるが、このデカーラ装置1には、上部を閉じる際に、矯正ロール32と搬送駆動軸31との接触により発生する抵抗を弱める工夫がなされている。
図24は、ロールデカーラ部の模式図である。
図4においても説明したように、デカーラ装置1が本体筐体内から引き出されると、ロールデカーラ部3の第1回転軸35の端部に取り付けられているカップラ13と、本体側に備えられたステッピングモータSM1の駆動軸との連結が解かれる。さらに、デカーラ装置1の上部が開放されると、何らの工夫もなされていなければ、図2および図3に示されている第1回転軸35は、その両端に固定された第1偏芯カム34によって生じるトルクにより回転し、第1偏芯カム34は、第1回転軸35の軸中心を通る鉛直方向の下方に第1偏芯カム34の重心が位置する姿勢となる。
図24のパート(a)には、装置上部が開放された後の第1偏芯カム34の姿勢が示されている。図24のパート(b)には、ロールデカーラ部3において矯正ロール32に対する搬送駆動軸31の食い込み量が最も多い状態が示されている。図24のパート(c)には、ロールデカーラ部3において矯正ロール32に対する搬送駆動軸31の食い込み量が最も少ない状態が示されている。第1偏芯カム34が図24(a)に示されている姿勢は、図24のパート(b)に示された姿勢の場合と比べて矯正ロール32に対する搬送駆動軸31の食い込み量は少ないものの、図24のパート(c)に示された姿勢の場合と比べて矯正ロール32に対する搬送駆動軸31の食い込み量はやや多い。したがって、第1偏芯カム34が図24のパート(a)に示された姿勢のまま、装置上部を閉めてロックするには抵抗が強く不便である。
そこで、このデカーラ装置1では、以下に説明するように、第1回転軸35に錘36を取り付けることでこの抵抗を弱めている。
図25は、第1回転軸に取り付けられた錘を図24のパート(d)に示される矢視Zの向きに見た状態を示す図である。
図25には、第1回転軸35の周面の一部にネジ止めされた錘36が示されている。この錘36は、装置上部が開放された際に、第1偏芯カム34に図24のパート(c)に示されるような、矯正ロール32に対する搬送駆動軸31の食い込み量が最も少なくなる姿勢をとらせるように備えられたものであり、図24のパート(d)に示された錘36は、図24のパート(c)に示される姿勢の1偏芯カム34に発生するトルクを相殺するトルクを発生させるようにその取付位置および重量が決定されている。この様な工夫により、デカーラ装置1では、装置上部を閉じる際に、矯正ロール32と搬送駆動軸31との接触により発生する抵抗が弱められている。
図26は、図24に示される実施形態の別態様を示す図である。
図26のパート(a)には、図24に示される第1偏芯カム34の正面図と側面図とが示されている。また、図26のパート(a)には、第1偏芯カム34の回転中心が‘○’で示され、重心が‘×’で示されている。
図26のパート(b)には、図26のパート(a)に示された第1偏芯カム34に比べて、一部の厚みが厚くされた偏芯カム340の正面図と側面図とが示されている。これら第1偏芯カム34と偏芯カム340は、正面から見て、同じ大きさかつ同じ形状のものである。また、図26のパート(b)には、偏芯カム340の回転中心が‘○’で示され、重心が‘×’で示されている。
偏芯カム340は、図24のパート(c)に示されるような、矯正ロール32に対する搬送駆動軸31の食い込み量が最も少なくなる姿勢をとった際に重心が回転軸の鉛直方向下方に位置するように第1偏芯カム34の一部の厚みが厚くされている。
図24のパート(d)に示される錘36の代わりに偏芯カム340を使用することで、装置上部が開放された際に、矯正ロール32に対する搬送駆動軸31の食い込み量が最も少なくなる姿勢をとることから、デカーラ装置1では、装置上部を閉じる際に、矯正ロール32と搬送駆動軸31との接触により発生する抵抗が弱まる。以上が、上部を閉じる際に、矯正ロール32と搬送駆動軸31との接触により発生する抵抗を弱める工夫についての説明である。
ところで、デカーラ装置1のロールデカーラ部3に使用されている矯正ロール32は、搬送駆動軸35よりも柔らかい材料で形成された消耗品であり、交換が必要な部材である。
しかし、矯正ロール32は回転自在に支持される必要のある部材であり、また、上方には、上述の第1回転軸35などが配備されていることなどから、例えば、矯正ロール32の中心軸を上部筐体11のうちの、図2に示される手前側と奥側の筐体部分で支持してしまうと、交換には非常に手間がかかる。そこで、このデカーラ装置1では、以下に説明するような工夫により交換の手間が省かれている。
図27は、冷却器側から見たデカーラ装置の側面図である。
図27には、矯正ロール32と、矯正ロール32を回転自在に支持する第1保持部材33と、その第1保持部材33に空けられている前述の貫通孔332を貫通する貫通軸371を有する共に上部筐体11にネジ留めされている第1支持部材37とが示されている。
図28は、図27に示された第1支持部材の拡大図である。
図28には、矯正ロール32を支持した第1支持部材37に備えられ、第1保持部材33に備えられている貫通孔332を貫通した貫通軸371の先端が、上部筐体11に支持されている様子が示されている。尚、反対側の図示は省略したが、反対側でも同様に貫通軸371の先端が上部筐体11に支持されている。第1保持部材33が、軸受け部材の一例であり、第1支持部材37が保持部材の一例である。
図29は、第1支持部材に支持されている矯正ロールの外観斜視図である。
図29に示される構成によれば、矯正ロール32の回転軸321は直接的には上部筐体11に保持されてはおらず、第1部材33に空けられている貫通孔332を貫通する貫通軸371が直接的に上部筐体11によって保持されることとなる。
図30は、矯正ロールの交換方法を示す図である。
図30のパート(a)には、ネジ38が上部筐体11から外された様子が示されている。
図30のパート(b)には、貫通孔から貫通軸371が引き抜かれることで、これら矯正ロール32、第1保持部材33、および第1支持部材37と上部筐体11との間の繋がりが解かれて、矯正ロール32が矢印方向に引き出される様子が示されている。この様な構成とすることで、このデカーラ装置1では、矯正ロール32の交換が容易に行われる。
なお、上述した実施形態では、画像形成装置の例としてタンデム型のカラープリンタを示したが、画像形成装置はこれに限られず、例えば、中間転写ベルトを有しないモノクロ専用プリンタであってもよい。
また、上述した実施形態では、画像形成装置の例としてプリンタを示したが、画像形成装置はプリンタに限られず、例えば、複写機やファクシミリであってもよい。
また、上述した実施形態では、画像形成部の例として帯電器と露光器と現像器との組合せを示したが、画像形成部はこれに限られず、例えば、像保持体上の画像に対応する位置を狙ってトナーを直接に付着させるものであってもよい。