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JP5402529B2 - 金型用鋼 - Google Patents

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JP5402529B2 JP2009246628A JP2009246628A JP5402529B2 JP 5402529 B2 JP5402529 B2 JP 5402529B2 JP 2009246628 A JP2009246628 A JP 2009246628A JP 2009246628 A JP2009246628 A JP 2009246628A JP 5402529 B2 JP5402529 B2 JP 5402529B2
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Description

この発明はプラスチックやゴムの射出成形,低圧鋳造,鍛造等の金型、特にダイカスト用の金型に適用して好適な金型用鋼に関する。
近年、プラスチックやゴムの射出成形品,ダイカスト品,低圧鋳造品,鍛造品等の製品コストの低廉化のニーズが高まっている。
そのための手段として最も端的で有効なのは製品の製造効率を高め、また不良率を低減することである。
例えばダイカストを例にとると、製品成形のハイサイクル化を図ること、即ち1サイクルの製品成形に要する時間を短縮し、単位時間あたりに製造可能な個数を多くすることである。
ダイカストとは、金型に形成されたキャビティ(成形空間)内に金属溶湯を充填し、凝固させて取り出す鋳造方法であり、キャビティの形状によって鋳造品の形状を自由に制御でき、生産性が高い特長を有する。特にAl合金のダイカストは自動車産業の発展に呼応して大きく成長してきた。
このダイカストの製造工程は、給湯→射出→凝固→型開き→製品取出し→離型剤塗布→型締め→給湯の順で行われる。
このようなダイカストにおけるハイサイクル化は、金型の冷却速度(冷却に対する応答性)を高めることによって実現することができる。
金型の冷却速度を高めることなく単純にダイカスト製品の製造をハイサイクル化した場合、金型の冷却時間が十分に確保されないまま(型の温度が下がりきらないうちに)、次の鋳造サイクルを迎えることとなり、必然的に金型の表面温度が高くなる。
金型表面の高温度化は、鋳造品の凝固速度の低下を招くため、鋳造品質の劣化に直結する重大な問題である。
またより高温で金型から取り出された鋳造品は、その後の冷却による熱収縮が大きく、寸法精度に悪影響が及ぶ。更に高温で取り出された製品はその後の冷却中に変形を生じ易い。
このような問題に対し、金型の冷却速度を速くできれば、1回の鋳造サイクルを終えた段階で金型の表面温度を低くでき、上記の不具合を是正することができる。
金型の冷却速度を速くすること即ち急速冷却は、鋳造品の急速凝固も可能とする。
而して鋳造品を急速凝固することができれば、鋳巣の発生を抑制できて鋳造製品の品質を高め、また不良率を低減できて歩留りを高めることができ、ハイサイクル化の効果と相俟って製品コスト低減に大きく寄与する。
鋳造製品のコストを低減する上で金型寿命も大きな要因である。
金型寿命が長ければ1つの金型にて製造できる製品の個数が多くなり、製品1個あたりのコストを低減することができる。
逆に金型寿命が短ければ製品1個あたりに占める金型コストの比率が大となり、製品コストを上昇せしめる。
ところで、製品製造のハイサイクル化は金型に負荷される引張りの熱応力を増大させ、金型表面のヒートチェックを助長する結果をもたらしかねない。
ヒートチェックは摩耗,溶損,腐食等によって発生した表面の微小な切欠部に熱応力(特に溶湯充填により高温度化した金型表面に対するその後の強制冷却による引張応力)が作用して亀裂が発生及び進展する現象で、加熱・冷却に伴う熱疲労現象であり、製品製造のハイサイクル化の下では、こうした現象が助長される傾向となる。
このようなヒートチェックが生ずると、製品表面にこれが転写されてしまい、製品によっては品質が著しく損なわれるか又はゼロとなってしまう。
この意味において金型表面に生ずるヒートチェックは金型寿命を決する大きな要因となる。
従って金型には、このようなハイサイクル化の下でもヒートチェックの発生が抑制されるものであることが求められる。
その他に、金型としては鋳造の際に金型への鋳造製品の焼付きを抑制できるものであることが求められる。
このような焼付きが生じると製品の取出しが困難となり、またメンテナンスも必要となって、生産性を低下させる要因となる。
以上の諸問題は、金型の熱伝導率を高くすることで解決することが可能である。
即ち、金型の熱伝導率を高くすることで金型の急速冷却を可能とし得、製品製造のハイサイクル化を実現することができるとともに、ハイサイクル化を行った場合においても金型の表面温度を低くでき、更に鋳造製品の急速凝固を可能とし得、またそのことによって製品の鋳巣の発生を抑制し得て製品の品質を高め、また不良率を少なくし得て歩留りを高め、製品製造のコストを低減することができる。
更に金型の熱伝導率を高くすることで、加熱・冷却に伴う熱応力を低減し得てヒートチェックを抑制でき、また製品の焼付きの現象も抑制することができる。
一方、金型を低廉化する上で被削性を確保することも重要である。
特にダイカスト用の金型は構造が複雑であり、削り難ければ金型製造に手間と時間がかかり、金型作製のための所要コストが高くなってしまう。
また金型としては必要な強度,靭性(衝撃値),高温強度も確保することが必要であり、しかも金型用の素材(金型用鋼)コストを低廉に維持するために希少金属の添加量も少なく抑えることが必要である。
尚、説明は省略したが上記の状況はプラスチック,ゴムの射出成形,低圧鋳造や鍛造の分野においても同様である。
本発明に対する先行技術として、下記特許文献1には、熱疲労特性及び軟化抵抗を高めることによってヒートチェック,水冷孔割れを抑制し、金型寿命を高寿命化することのできる金型用鋼を提供することを目的として、鋼の組成を「質量%でC:0.1〜0.6,Si:0.01〜0.8,Mn:0.1〜2.5,Cu:0.01〜2.0,Ni:0.01〜2.0,Cr:0.1〜2.0,Mo:0.01〜2.0,V,W,Nb及びTaのうち1種類若しくは2種以上を合計で:0.01〜2.0,Al:0.002〜0.04,N:0.002〜0.04,O:0.005以下残部Fe及び不可避的不純物」の組成を有するものとした点が開示されている。
この特許文献1に開示のものでは、熱伝導率への着眼がなされているものの、各添加成分と熱伝導率との関係及び熱伝導率に対する添加量の影響について具体的に開示されておらず、更にCrの含有量が本発明とは異なっており、本発明とは別異のものである。
また下記特許文献2には、焼入れ性が良好で所要の衝撃値が得られ、金型寿命を高寿命化し得るとともに、球状化焼鈍性も良好で切削加工が容易な質量500kg以上の大型の金型に適用される金型用鋼を提供することを目的として、金型用鋼を「質量%で、C:0.2〜0.6%,Si:0.01〜1.5%,Mn:0.1〜2.0%,Cu:0.01〜2.0%,Ni:0.01〜2.0%,Cr:0.1〜8.0%,Mo:0.01〜5.0%,VとWとNbとTaのうち1種若しくは2種以上の合計:0.01〜2.0%,Al:0.002〜0.04%,N:0.002〜0.04%,残部Fe及び不可避的不純物」の組成を有するものとした点が開示されている。
この特許文献2に開示のものにおいては、特許請求の範囲におけるMn,Crの添加量範囲が本発明と重複しているものの、本発明で規定する範囲内のMn,Crを含有したものが実施例中で開示されておらず、加えてこの特許文献2に記載のものにおいては、添加成分と熱伝導率との関係については言及されておらず、本発明と別異のものである。
更に下記特許文献3には、希少金属の含有量が少ないにも拘らず軟化抵抗が高く、熱疲労特性や耐摩耗性に優れた型材用鋼を提供することを目的として、型材用鋼の組成を、「C:0.15〜0.55質量%、Si:0.01〜2.0質量%、Mn:0.01〜2.5質量%、Cu:0.01〜2.0質量%、Ni:0.01〜2.0質量%、Cr:0.01〜2.5質量%、Mo:0.01〜3.0質量%、及び、V及びWからなる群から選ばれる少なくとも1種の総量:0.01〜1.0質量%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物」の組成とした点が開示されている。
しかしながらこの特許文献3に記載のものには、本発明で規定する範囲内のMn,Moを含有した実施例が開示されておらず、またこの特許文献3に記載のものにおいても、添加成分と熱伝導率との関係について何等開示されておらず、この特許文献3に記載のものも本発明とは別異のものである。
特開2008−56982号公報 特開2008−121032号公報 特開2008−169411号公報
本発明は以上のような事情を背景とし、金型の熱伝導率を高くし得て金型の急速冷却を可能とし、製品製造のハイサイクル化を実現可能とするとともに、ハイサイクル化の下でも製品の品質を高め、不良率を低減することができ、更に金型の熱応力を低減し得て金型寿命を延長でき、しかも希少元素の添加量を少なく抑えつつ、金型として必要な強度,靭性,高温特性を得ることのできる金型用鋼を提供することを目的としてなされたものである。
而して請求項1のものは、質量%で0.35 < C ≦ 0.50,0.01 ≦ Si < 0.19,1.50 < Mn < 1.78,2.00 < Cr < 3.05,0.51 < Mo < 1.25,0.30 < V < 0.80,0.004 ≦ N ≦ 0.040,残部Fe及び不可避的不純物の組成を有することを特徴とする。
請求項2のものは、請求項1において、質量%で0.30 ≦ W ≦ 4.00を更に含有して成ることを特徴とする。
請求項3のものは、請求項1,2の何れかにおいて、質量%で0.30 ≦ Co ≦ 3.00を更に含有して成ることを特徴とする。
請求項4のものは、請求項1〜3の何れかにおいて、質量%で0.004 ≦ Nb ≦ 0.100,0.004 ≦ Ta ≦ 0.100,0.004 ≦ Ti ≦ 0.100,0.004 ≦ Zr ≦ 0.100,0.004 ≦ Al ≦ 0.050のうち少なくとも1種以上を更に含有して成ることを特徴とする。
請求項5のものは、請求項1〜4の何れかにおいて、質量%で0.15 ≦ Cu ≦ 1.50,0.15 ≦ Ni ≦ 1.50,0.0010 ≦ B ≦ 0.0100のうち少なくとも1種以上を更に含有して成ることを特徴とする。
請求項6のものは、請求項1〜5の何れかにおいて、質量%で0.010 ≦ S ≦ 0.50,0.0005 ≦ Ca ≦ 0.2000,0.03 ≦ Se ≦ 0.50,0.005 ≦ Te ≦ 0.100,0.01 ≦ Bi ≦ 0.30,0.03 ≦ Pb ≦ 0.50のうち少なくとも1種以上を更に含有して成ることを特徴とする。
請求項7のものは、請求項1〜6の何れかに記載のダイカスト用の金型用鋼であることを特徴とする。
発明の作用・効果
本発明者は、金型用鋼に対し各種添加成分の熱伝導率に及ぼす影響を調べたところ、Si,Mn,Crが添加量の増大とともに熱伝導率を低くすること、特にSiの場合ある値を超えると急激に熱伝導率を低下させることを見出した。
一方Siは鋼の被削性を高める有用な成分であり、被削性に与える効果はSiの添加量が多くなるにつれて増大する。
またMn,Crは添加量の増大によって焼入れ性を高め、鋼の衝撃値を高める働きを有する。
従って単にSi,Mn,Crの添加量を少なくするだけであると、それら被削性,衝撃値の特性が悪化してしまう。
そこでSi,Mn,Crの熱伝導率に及ぼす影響の度合い(程度)と、Siの被削性に及ぼす影響の程度、及びMn,Crの衝撃値に及ぼす影響の程度を勘案し、それらの添加量を適正にバランスさせることで、即ちSi,Mn,Crの添加量をそれぞれ一定の上限値以下に規制することで、それら全体の効果として鋼の熱伝導率を効果的に所望の値以上確保できること、併せてSiの添加量を設定した上限値以下の範囲内で多く添加することで被削性を十分に確保できること、またMn,Crの添加量を設定した上限値以下の範囲内で一定量多く添加することで衝撃値を十分に確保できること等の知見を得た。
本発明はこのような知見に基づいてなされたものである。
本発明では、Vを必須の添加成分として鋼に添加する。
添加したVは、鋼の凝固時に炭窒化物となって(ピン止め粒子となって)微細に分散し、そのピンニング効果によって結晶粒を微細化し、鋼の靭性を高める働きをなす。
但し、Vは希少元素であってコストも高く、また多く添加すると粗大な晶出物を生じ、これが異物となって鋼の靭性を却って劣化させる。
そこで本発明では、Vの添加量を0.80%未満の少ない量に規制する。
但しVを少なくしただけであるとピン止め効果を発揮する微細なVの炭窒化物が十分に生成せず、衝撃値を十分に高めることができない。
そこで本発明では、V添加量の少量化と併せてNを積極的に0.040%以下の量で添加している。
そしてこのNの積極的な添加を行うことによって、Vの添加量を少量とした場合であってもピン止め粒子として有効な微細なVの炭窒化物を十分に生成させることができ、鋼の靭性を高めることができる。
ここで添加したVのうち凝固に際して1次炭化物を生じない余剰のVは焼入れ時に鋼に固溶し、そして焼戻しの際に炭化物を析出して鋼を2次硬化させる働きをなし、金型の強度を高める働きをなす。
以上のような本発明によれば、例えばダイカスト品製造に際して製品製造をハイサイクル化することができ、製品製造の効率を高めることができるとともに、その際に急速凝固を可能として製品の品質を高めることができ、不良品の発生を低減し得て歩留りを高めることができ、製品製造コストを低減することができる。
また金型の加熱・冷却に伴う熱応力を低減して、金型のヒートチェックの発生を抑制でき、更に金型への製品焼付きを抑制することができる。
更に金型作製の際の被削性,金型の強度,靭性等の特性も良好に確保することができ、また希少元素の添加量を少量とすることで素材コストも低減できる効果を奏する。
次に本発明における各化学成分及びその限定理由等について以下に詳述する。
0.35 < C ≦ 0.50
0.35%以下では、所望の硬さ43HRC以上を焼入れ速度が低下した場合に得にくい。0.50%を越えると、炭窒化物の量が過度となり、衝撃値を劣化させる。好適な範囲は、硬さと衝撃値のバランスに優れた0.37 ≦ C ≦ 0.43である。
0.01 ≦ Si < 0.19
0.01%未満では被削性の劣化が著しく、金型形状への加工が非常に難しくなる。0.19%以上になると、熱伝導率の低下が大きい。好適な範囲は、高い熱伝導率が得られ、かつ工業的な被削性が確保できるSi≦0.15である。特に高い熱伝導率が必要な場合は、Si<0.10がさらに好ましい範囲となる。
これらの様子を示したものが図1と図2である。
図1は0.40C-1.67Mn-2.02Cr-1.08Mo-0.59V-0.021N-Si鋼を切削した場合に、切削工具が寿命となるまでに削った距離をSi量に対して示す。試験片は55mm×55mm×200mmの角材であり、長さ200mmの方向に切削を繰り返し、切削工具の横逃げ面最大磨耗量が300μmとなった時点(累積切削距離)を寿命と判定した。切削距離が大きいほど、良く削れて好ましい。
Siが0.01%未満では、切削距離が極端に小さくなっている。Siの増加によって切削距離は大きくなる。しかしSiが0.19%を越えると、依然としてSiが多いほど良く削れる傾向はあるものの、低Si側に比べれば改善効果は顕著でない。
なお、被削性評価用の素材は以下の手順で作成した。まず、真空中で溶解・精錬した溶鋼を2tonのインゴットに鋳込んだ。このインゴットに、1250℃で18Hr加熱する均質化熱処理を施した。その後、横断面が250mm×250mmのブロックを、このインゴットの熱間鍛造によって製造した。鍛造後の高温状態にあるブロックは室温まで放冷し、670℃における6Hrの加熱後に820℃へ再加熱し、4Hrの保持後に10℃/Hrでゆっくりと冷却した。ブロックが620℃になった時点でゆっくりとした冷却を中止し、ブロックを炉から出して室温まで放冷した。このような一連の処理によって、硬さが95HRB程度と軟質で組織の均一な状態のブロックを製造した。このブロックを素材として、55mm×55mm×200mmの試験片を作成し、被削性を調査した結果を示したのが図1である。
図1の試験に用いたと同じ素材の同じ部位から削りだしたφ11mm×50mmの丸棒を1030℃に加熱して急冷し、焼戻して43HRCに調質した。さらに、この丸棒からφ10mm×2mmの熱伝導率測定用試験片を作成した。レーザーフラッシュ法によって室温で測定した熱伝導率を、Si量に対して示せば図2の通りである。熱伝導率が大きいほど、金型となった場合の冷却能に優れるため好ましい。
JIS SKD61(熱伝導率24W/m/K)と比較して、冷却能が劇的に改善する33W/m/K以上の熱伝導率を得るため、本発明ではSi量を0.19%未満とする。
1.50 < Mn < 1.78
1.50%以下では焼き入れ性が不足し、金型が大きくなった(焼入れ速度が小さくなった)場合の硬さや衝撃値の確保が困難である。1.78%以上では高い熱伝導率の維持が困難となる。
これらの様子を示したものが図3と図4である。
0.40C-0.10Si-2.55Cr-1.11Mo-0.60V-0.020N-Mn鋼から作成した100mm×100mm×60mmのブロックを1030℃に加熱して急冷,焼戻して43HRCに調質した。さらに、このブロックの中央部から10mm×10mm×55mmのJIS 3号衝撃試験片を作成し、衝撃値を室温で測定した。
図3は,衝撃値をMn量に対してプロットしている。衝撃値が大きいほど、金型となった場合に割れにくいため好ましい。Mn含有量が少ない鋼は,ブロック中央部まで焼きが入り難い(焼入れ性が悪い)ため、粗大な組織となりやすく、低衝撃値である。Mn量の増加によって焼入れ性が改善されるため、衝撃値は上昇する。そして、Mn量が1.50%を越えると衝撃値は高位安定となっている。
なお、衝撃値評価用の素材は以下の手順で作成した。まず、真空中で溶解・精錬した溶鋼を2tonのインゴットに鋳込んだ。このインゴットに、1250℃で18Hr加熱する均質化熱処理を施した。その後、横断面が250mm×250mmのブロックを、このインゴットの熱間鍛造によって製造した。鍛造後の高温状態にあるブロックは室温まで放冷し、670℃における6Hrの加熱後に820℃へ再加熱し、4Hrの保持後に10℃/Hrでゆっくりと冷却した。ブロックが620℃になった時点でゆっくりとした冷却を中止し、ブロックを炉から出して室温まで放冷した。このような一連の処理によって、硬さが95HRB程度と軟質で組織の均一な状態のブロックを製造した。このブロックを素材として、その横断面中央付近から11mm×11mm×60mmの角棒を作成し、この角棒を1030℃に加熱して急冷し、焼戻して43HRCに調質した。さらに、この角棒から10mm×10mm×55mmのJIS 3号衝撃試験片を作成し、JIS Z 2242に準拠してシャルピー衝撃値を調査した。調査した結果を示したのが図3である。
図3の試験に用いたと同じ素材の同じ部位から削りだしたφ11mm×50mmの丸棒を1030℃に加熱して急冷し、焼戻して43HRCに調質した。さらに、この丸棒からφ10mm×2mmの熱伝導率測定用試験片を作成した。レーザーフラッシュ法によって室温で測定した熱伝導率を、Mn量に対して示せば図4の通りである。
JIS SKD61(熱伝導率24W/m/K)と比較して,冷却能が劇的に改善する33W/m/K以上の熱伝導率を得るため、本発明ではMn量を1.78%未満とする。
2.00 < Cr < 3.05
2.00%以下では焼き入れ性が不足し、金型が大きくなった(焼入れ速度が小さくなった)場合の硬さと衝撃値が充分に得られない。一方で、Cr量が3.05%以上では、高い熱伝導率の維持が困難となる。好適な範囲は、硬さと衝撃値と熱伝導率のバランスに優れた2.00 < Cr ≦ 2.70である。
これらの様子を示したものが図5と図6である。
0.40C-0.08Si-1.51Mn-1.10Mo-0.60V-0.019N-Cr鋼から作成した100mm×100mm×60mmのブロックを1030℃に加熱して急冷,焼戻して43HRCに調質した。さらに、このブロックの中央部から10mm×10mm×55mmのJIS 3号衝撃試験片を作成し、衝撃値を室温で測定した。
図5は、室温における衝撃値を、Cr量に対してプロットしている。Cr含有量が少ない鋼は、ブロック中央部まで焼きが入り難い(焼入れ性が悪い)ため、粗大な組織となりやすく、低衝撃値である。特に、Crが2.00%以下では衝撃値の低下が顕著である。
なお、衝撃値評価用の素材は上述したMnの影響を調べた場合と同様の手順で作成した。
図5の試験に用いたと同じ素材の同じ部位から削りだしたφ11mm×50mmの丸棒を1030℃に加熱して急冷し、焼戻して43HRCに調質した。さらに、この丸棒からφ10mm×2mmの熱伝導率測定用試験片を作成した。レーザーフラッシュ法によって室温で測定した熱伝導率を、Cr量に対して示せば図6の通りである。
JIS SKD61(熱伝導率24W/m/K)と比較して,冷却能が劇的に改善する33W/m/K以上の熱伝導率を得るため、本発明ではCr量を3.05%未満とする。なお、JIS SKD61のCr量は4.5〜5.5である。
0.51 < Mo < 1.25
0.51%以下では、充分な高温強度が得られない。1.25%以上では、脆化して衝撃値が低下する。好適な範囲は、0.75 ≦ Mo ≦ 1.15である。
この様子を示したものが図7と図8である。
0.40C-0.08Si-1.53Mn-2.01Cr-0.59V-0.022N-Mo鋼から作成したφ15mm×50mmの丸棒を1030℃に加熱して急冷し、焼戻して43HRCに調質した。さらに、この丸棒からφ14mm×21mmの変形抵抗測定用試験片を作成し、試験片を5℃/sで600℃に加熱して100sの保持後、ひずみ速度10s−1で加工して変形抵抗(高温強度)を測定した。この時の変形抵抗をMo量に対して示せば、図7の通りである。
高変形抵抗であるほど強度が高いため、磨耗しにくく好ましい。変形抵抗(高温強度)は、Mo量が0.51%以下では急減しており、この範囲を避けることが耐磨耗性の確保には必須と考えられる。
なお、変形抵抗評価用の素材は以下の手順で作成した。まず、真空中で溶解・精錬した溶鋼を2tonのインゴットに鋳込んだ。このインゴットに、1250℃で18Hr加熱する均質化熱処理を施した。その後、横断面が250mm×250mmのブロックを、このインゴットの熱間鍛造によって製造した。鍛造後の高温状態にあるブロックは室温まで放冷し、670℃における6Hrの加熱後に820℃へ再加熱し、4Hrの保持後に10℃/Hrでゆっくりと冷却した。ブロックが620℃になった時点でゆっくりとした冷却を中止し、ブロックを炉から出して室温まで放冷した。このような一連の処理によって、硬さが95HRB程度と軟質で組織の均一な状態のブロックを製造した。このブロックを素材として、その横断面中央付近からφ15mm×50mmの丸棒を削りだし、この丸棒を1030℃に加熱して急冷し、焼戻して43HRCに調質した。さらに、この丸棒からφ14mm×21mmの試験片を作成し、変形抵抗を調査した結果を示したのが図7である。
図7の試験に用いたと同じ素材の同じ部位から11mm×11mm×60mmの角棒を作成し、この角棒を1030℃に加熱して急冷し、焼戻して43HRCに調質した。さらに、この角棒から10mm×10mm×55mmのJIS 3号衝撃試験片を作成して衝撃値を調査した。図8は衝撃値をMo量に対してプロットしている。
Mo量が0.4%程度までは、高Mo材の方が高衝撃値であるが、Mo量が1.25%以上では脆化が無視できない。また、汎用鋼として考えると、Mo量が1.25%以上ではコスト増が工業的な問題となる。なお、JIS SKD61のMo量は1.0〜1.5である。
0.30 < V < 0.80
0.30%以下では、焼入れ時の結晶粒が粗大化して衝撃値を低下させる。一方、0.80%以上では粗大な炭窒化物の量が過度となって衝撃値を低下させる。また、V量が0.80%以上ではコスト増が工業的な問題となる。好適な範囲は、0.50 ≦ V ≦ 0.70である。
この様子を示したものが図9である。
0.40C-0.09Si-1.52Mn-2.02Cr-1.09Mo-0.021N-V鋼から作成した100mm×100mm×60mmのブロックを1030℃に加熱して急冷,焼戻して43HRCに調質した。さらに、このブロックの中央部から10mm×10mm×55mmのJIS 3号衝撃試験片を作成し、衝撃値を室温で測定した。図9は、室温における衝撃値を、V量に対してプロットしている。V≦0.30における衝撃値の低下は結晶粒の粗大化が原因であり、0.80≦Vにおける衝撃値低下の原因は粗大な炭窒化物の増加である。なお、JIS SKD61のV量は0.8〜1.2である。
なお、衝撃値評価用の素材は上述したMnの影響を調べた場合と同様の手順で作成した。
0.004 ≦ N ≦ 0.040
0.004%未満では、焼入れ時の結晶粒が粗大化しやすく、衝撃値は低下する。0.040%を越えると、粗大な炭窒化物が増えることによって衝撃値は低下する。好適な範囲は、0.007≦N≦0.028である。
これらの様子を示したものが図10である。
0.40C-0.08Si-1.53Mn-2.01Cr-1.10Mo-0.64V-N鋼から作成した11mm×11mm×60mmの角棒を1030℃に加熱し、60minの保持後に急冷した。さらに、610℃で焼戻して43HRCに調質した。この角棒から10mm×10mm×55mmの衝撃試験片(JIS 3号)を作成し、室温で測定した衝撃値をN量に対してプロットすれば、図10の通りである。
Nが0.004%未満の場合に衝撃値が低い理由は、結晶粒が粗大となるためである。Nが0.040%を越えると衝撃値が減少する理由は、粗大なVCNを起点とした亀裂が発生しやすくなるためである。
なお、衝撃値評価用の素材は上述したMnの影響を調べた場合と同様の手順で作成した。
本発明では、不純物成分について以下のように規制することができる。尚数値は質量%である。
W < 0.30
Co < 0.30
Nb < 0.004
Ta < 0.004
Ti < 0.004
Zr < 0.004
Al < 0.004
Cu < 0.15
Ni < 0.15
B < 0.0010
S < 0.010
Ca < 0.0005
Se < 0.03
Te < 0.005
Bi < 0.01
Pb < 0.03
Mg < 0.005
O < 0.0080
本発明では、炭化物の析出によって強度を上げるため、必要に応じて下記範囲でWを添加することができる。
0.30 ≦ W ≦ 4.00
0.30%未満では高強度化の効果が小さく、4.00%を越えると効果の飽和と著しいコスト増を招く。
本発明ではまた、母材への固溶によって強度を上げるため、必要に応じて下記範囲でCoを添加することができる。
0.30 ≦ Co ≦ 3.00
0.30%未満では高強度化の効果が小さく、3.00%を越えると効果の飽和とコストの著しい増加を招く。
本発明では更に、VCNによる結晶粒微細化の効果が充分でない場合、更なる細粒化を目的として,必要に応じ以下のうち少なくとも1種を添加することができる。
0.004 ≦ Nb ≦ 0.100
0.004 ≦ Ta ≦ 0.100
0.004 ≦ Ti ≦ 0.100
0.004 ≦ Zr ≦ 0.100
0.004 ≦ Al ≦ 0.050
いずれの元素も、所定量未満では強度と靭性の改善効果が小さい。また所定量を越えると炭化物や窒化物や酸化物が過度に生成し、かえって靭性の低下を招く。
本発明では、焼入れ性を向上させるため、必要に応じ以下のうち少なくとも1種を添加することができる。
0.15 ≦ Cu ≦ 1.50
0.15 ≦ Ni ≦ 1.50
0.0010 ≦ B ≦ 0.0100
いずれの元素も、所定量未満では焼入れ性の改善効果が小さい。また、所定量を越えると効果が飽和して実益に乏しい。さらに、CuとNiについては,過度の添加は熱伝導率を低下させる。
本発明では、被削性を向上するため、必要に応じ以下のうち少なくとも1種を添加することができる。
0.010 ≦ S ≦ 0.500
0.0005 ≦ Ca ≦ 0.2000
0.03 ≦ Se ≦ 0.50
0.005 ≦ Te ≦ 0.100
0.01 ≦ Bi ≦ 0.30
0.03 ≦ Pb ≦ 0.50
いずれの元素も、所定量未満では被削性の改善効果が小さい。また、所定量を越えると熱間加工性が著しく劣化するため、塑性加工における割れが多発して生産性と歩留まりを低下させる。
Si含有量と切削性との関係を示した図である。 Si含有量と熱伝導率との関係を示した図である。 Mn含有量と衝撃値との関係を示した図である。 Mn含有量と熱伝導率との関係を示した図である。 Cr含有量と衝撃値との関係を示した図である。 Cr含有量と熱伝導率との関係を示した図である。 Mo含有量と600℃での強度との関係を示した図である。 Mo含有量と衝撃値との関係を示した図である。 V含有量と衝撃値との関係を示した図である。 N含有量と衝撃値との関係示した図である。 鍛造組織の代表的な顕微鏡写真の図である。
次に本発明の実施形態を以下に詳しく説明する。
表1および表2に示す45鋼種を真空中で溶解し、それぞれ6tのインゴットに鋳込んだ。これらのインゴットに対して1260℃×24Hrの均質化処理を施した後、熱間鍛造によって横断面が260mm×320mmのブロックを製造した。鍛造完了後の高温状態にあるブロックを室温まで放冷し、引き続き670℃で焼戻した後、更に820℃へ再加熱して4Hr保持し、そこから10℃/Hrで徐冷することによって95HRB程度に軟化させた。
このブロックから概略形状が255mm×305mm×60mmのダイカスト金型(荒加工品)を削りだした。
この金型を真空炉中で1030℃に加熱して1Hr保持した後、炉内に導入した窒素ガスを強制対流させることによって金型を冷却し、金型に焼きを入れた。
この金型を580℃×4Hrで焼戻し、さらに580℃〜620℃×4Hr〜8Hrの焼戻しを施して43HRCに調質した。焼戻しの温度と時間は成分によって適正な条件を選択し、43HRCが得られるようにした。なお、比較鋼A01は炭素量が少ないうえ、金型の焼入れ速度の問題から焼きが十分に入らず,硬さは40HRCに留まった。
調質された金型の一部(あらかじめ設けてあった余肉部)から、各種特性を評価するための試験片を切出すと同時に、精加工によってダイカスト金型を完成させた。
<基礎特性>
ダイカスト金型から切出した試験片の特性調査結果を表3および表4に示す。衝撃値・熱伝導率・高温強度の評価方法は先述の通りである。なお、比較鋼A15はJIS SKD61に相当する。衝撃値に関しては20J/cm以上を「○」と判断する。熱伝導率については、JIS SKD61(比較鋼A15,熱伝導率24W/m/K)と比較して冷却能が劇的に改善する33W/m/K以上を「○」と判断する。高温強度は、940MPa以上を「◎」,920MPa以下を「×」,それ以外を「○」とする。
<基礎特性の判定>
発明鋼30種は全項目において良好な特性を示し、評価は「○」である。これは、化学成分のバランスが適正であることの証明である。比較鋼においては、A03以外は、いずれかの特性に問題がある。
Vが0.9%を越える比較鋼A12とA15、さらにNが0.04%を越える比較鋼A14は、亀裂発生の起点となる炭窒化物が多いため衝撃値は低い。Cが0.50%を越えており、Vが比較的高い比較鋼A02についても同様である。
Vの低い比較鋼A11及びNの低い比較鋼A13の場合には、結晶粒界の移動(粒成長)を抑制する炭窒化物が少ないため組織が粗大となり、衝撃値が低下している。
また、焼入れ速度があまり大きくなかったため、CrやMnが少なく焼入れ性が低い比較鋼A05と比較鋼A07も低衝撃値である。
比較鋼A10は、Mo量が適正な範囲を外れているため衝撃値が低い。
熱伝導率は、Si,Mn,Crが過多の比較鋼A04,A06,A08で低い値となっている。
また高温強度は、所定の硬さが得られなかった比較鋼A01と、所定硬さには到達したがMo含有量の少ない比較鋼A09で低くなっている。
製造したダイカスト型は、より大きな金型に嵌めこんで使う構造になっている。すなわち、製造したダイカスト型は入子として使われる。この入子は、鋳造製品中で凝固が最も遅い部位と接している。そして、凝固を早めるための強い冷却能が入子には要求される。そこで、ここでは入子として水冷孔を設けたものを使用し、そしてこの金型(入子)を他の金型とともにダイカストマシンに組み付け、10000ショットの鋳造をおこなった。
鋳造したアルミ合金はADC12,溶解保持炉の温度は680℃である。ダイカスト品の重量は約8kg,1サイクルは55sである。
入子の損傷状況,入子と接触していた部位の鋳造品組織,鋳造サイクル短縮の可否を表5および表6に示す。
<入子の損傷状況>
ヒートチェックは、目視観察と亀裂の最大深さによって評価する。まず、目視観察によって,ヒートチェックが最も顕著な部位を選定する。次に、その部位を、型表面から内部にかけての領域が観察できるように切出す。そして、切断面に観察された亀裂(型内部へ進展したヒートチェック)のうちで最も深いものに着目し、開口部(型表面)から先亀裂端までの距離を測定する。これを亀裂の最大深さとする。亀裂の最大深さが0.3mm以下であれば、亀裂の開口部も狭く、したがってアルミが差し込みにくいため、この製品であれば表面品質が問題になることは無い。そこで、評価は「○」とする。最大の亀裂深さが1mm以上になると、亀裂の開口部が広く、したがってアルミが差し込みやすいため、製品の表面品質が問題となって不良品になる。さらに、この深い亀裂は型の大割れを助長する危険性が高い。そこで,評価は「×」とする。亀裂の最大深さが0.3mmを越え1mm未満の場合は評価を「△」とする。
射出されたAlによる磨耗は、製品の寸法規格への影響度で判定する。磨耗が顕著でなく製品が寸法規格を外れなければ「○」、型の形状が局部的に変わるほど磨耗して製品が寸法規格を外れていれば「×」とした。
さらに、10000ショットの鋳造が完了するまでの間、顕著な焼付きが発生したかどうかも評価した。
焼付きが軽度で金型のメンテナンスも数回以下と散発的であれば「○」、鋳造を中断して焼付きを除去しなければならない状態が200〜2000ショットごとにと頻繁であれば「×」とした。
<入子と接触していた部位の鋳造品組織>
鋳造組織は、様々なサイズの鋳巣が多く、組織も粗い場合を「×」とする。このような製品は、強度や延性に乏しく不良率も高い。一方、鋳巣があるものの小さく、その数も少ない場合を「○」とする。このような製品は組織も微細で、適正な機械的性質を具備しており、不良率も低い。さらに、鋳巣のサイズや数が非常に少なく、組織も極めて微細な場合を「◎」とする。このような製品は理想的と言え、機械的性質や不良率が問題になることも稀である。
上記の「×○◎」の評価に対応する代表的な組織(鋳造品の表面付近)を図11に例示した。発明鋼の場合には熱伝導率が高く、また水冷孔を設けているため金型が冷え易く、これにより鋳造品組織は微細であり、鋳造製品の機械的性質が向上する効果が得られる。
尚本発明は、最も冷却が必要とされる部分に用いられる、重量が50kg以下で冷却用の水冷回路(水冷孔)を有する金型ないし金型部品、例えばスプールコア(分流子),プランジャーチップ,入子,鋳抜きピン等に好適に適用することができる。
<鋳造サイクル短縮の可否>
通常は1サイクルが55秒であるが、そのうち、射出から型開きまでの凝固時間を短縮できるか否かを検証した。凝固時間を短縮した時の鋳造組織が、短縮前と同等であれば合格(○◎)、短縮前より悪ければ不合格(×)である。短縮可能な時間が1秒未満の場合は「×」とした。事実上、鋳造サイクル短縮は難しい。
一方、短縮可能な時間が1秒以上で2秒以下の場合を「○」とした。さらに、短縮可能な時間が2秒を越えて3秒以下の場合を「◎」とする。短縮時間が大きいほど、生産性が改善するため好ましい。
<被削性>
被削性の評価は、実際にダイカスト金型を切削した時の作業効率と切削工具の損耗状態から判断した。被削性が悪い鋼を切削すると、切削工具には局部的な異常磨耗や欠けを生じやすいため、切削工具の頻繁な交換による作業効率の低下と、多量の切削工具を使うことによるコストの増加を余儀なくされる。今回はダイカスト金型として最も良く使われるJIS SKD61を削った場合との比較によって被削性を評価した。
切削工具の損耗状態や加工効率がJIS SKD61と同等であれば「○」、切削工具の交換が頻繁で加工効率がJIS SKD61の半分以下となった場合は「×」、JIS SKD61よりは被削性(切削効率)は下がるが実用上の問題がほとんどなければ「△」とした。
<実用性能の判定>
発明鋼30種には大きな問題が無く、被削性を除いた全項目が「○」の評価である。また、被削性についても、実用上は問題にならないと判断された。すなわち、発明鋼30種が型性能とコストの両面に優れた金型用鋼であることは明らかである。
発明鋼を用いた金型は熱伝導率が高いため、過熱が抑制されてアルミの焼付は激減した。またヒートチェックが発生しにくい理由は、熱伝導率が高いことから熱応力が小さくなるためである。高速で射出されたアルミによる磨耗も極めて僅かであり、高温強度の高さに対応している。CrやVなどの希少元素量は少ないが、発明鋼は優れた型性能を発揮した。
また鋳造品の組織を調査した結果、従来よりも微細化していることが確認された。これは金型温度が低下したため、凝固速度が大きくなったことによる。さらに、凝固が早くなるため。鋳造のサイクルを2〜3sec短縮できることも明らかとなった。
一方、比較鋼15種は何らかの問題を抱えている。全体的な傾向としては、熱伝導率の低い鋼種は焼付とヒートチェックが顕著である。また、衝撃値が低い鋼種は、ヒートチェックが助長されている。
比較鋼A01と比較鋼A09は、高温強度が低いためヒートチェックと磨耗に問題がある。比較鋼A02・比較鋼A04・比較鋼A06・比較鋼A08・比較鋼A14・比較鋼A15は、熱伝導率が低いためヒートチェックと焼付が顕著である。比較鋼A05・比較鋼A07・比較鋼A11・比較鋼A12・比較鋼A13は、衝撃値が低いためヒートチェックが顕著である。比較鋼A03は、極低Siのため被削性が悪く、金型製造コストの増大を招いた。比較鋼A10は高温強度と熱伝導率が高いものの、耐ヒートチェック性が充分でなく、素材コストの観点からも推奨できない。
以上本発明をダイカスト金型に適用した場合の実施形態について詳述したが、これはあくまで一例示であり、本発明は金型表面の加熱・冷却が繰返し行われ、金型表面が熱負荷にさらされる低圧鋳造,プラスチックやゴムの射出成形,鋳造の金型用鋼にも適用可能である等、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた態様で実施可能である。

Claims (7)

  1. 質量%で
    0.35 < C ≦ 0.50
    0.01 ≦ Si < 0.19
    1.50 < Mn < 1.78
    2.00 < Cr < 3.05
    0.51 < Mo < 1.25
    0.30 < V < 0.80
    0.004 ≦ N ≦ 0.040
    残部Fe及び不可避的不純物の組成を有する金型用鋼。
  2. 請求項1において、質量%で
    0.30 ≦ W ≦ 4.00
    を更に含有して成る金型用鋼。
  3. 請求項1,2の何れかにおいて、質量%で
    0.30 ≦ Co ≦ 3.00
    を更に含有して成る金型用鋼。
  4. 請求項1〜3の何れかにおいて、質量%で
    0.004 ≦ Nb ≦ 0.100
    0.004 ≦ Ta ≦ 0.100
    0.004 ≦ Ti ≦ 0.100
    0.004 ≦ Zr ≦ 0.100
    0.004 ≦ Al ≦ 0.050
    のうち少なくとも1種以上を更に含有して成る金型用鋼。
  5. 請求項1〜4の何れかにおいて、質量%で
    0.15 ≦ Cu ≦ 1.50
    0.15 ≦ Ni ≦ 1.50
    0.0010 ≦ B ≦ 0.0100
    のうち少なくとも1種以上を更に含有して成る金型用鋼。
  6. 請求項1〜5の何れかにおいて、質量%で
    0.010 ≦ S ≦ 0.50
    0.0005 ≦ Ca ≦ 0.2000
    0.03 ≦ Se ≦ 0.50
    0.005 ≦ Te ≦ 0.100
    0.01 ≦ Bi ≦ 0.30
    0.03 ≦ Pb ≦ 0.50
    のうち少なくとも1種以上を更に含有して成る金型用鋼。
  7. 請求項1〜6の何れかに記載のダイカスト用の金型用鋼。
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