JP5400721B2 - アルミニウム合金製ブレージングシート - Google Patents
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Description
ウム合金製ブレージングシートにおいて、前記第1ろう材のZnの含有量が1.0〜6.0質量%であることを特徴とする。
請求項8に係るアルミニウム合金製ブレージングシートは、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のアルミニウム合金製ブレージングシートにおいて、前記心材は、Cu:0.2〜1.0質量%を含有し、Si:1.5質量%以下、Mn:1.8質量%以下、Ti:0.35質量%以下、Mg:0.5質量%以下の少なくとも1種をさらに含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなることを特徴とする。
このように、心材が、所定の元素を所定量含有することによって、アルミニウム合金製ブレージングシートの強度、ろう付け性及び耐食性を向上させることができる。
本発明に係るアルミニウム合金製ブレージングシート(以下、「ブレージングシート」という)は、熱交換器のチューブ材、ヘッダープレート、ヘッダタンク、インサート材等に使用されるもので、特に、ヘッダープレート、ヘッダタンク、インサート材等の厚肉部材に使用されるものである。
《第1実施形態》
図1に本発明の第1実施形態に係るブレージングシートの概略構造を表した断面図を示す。ブレージングシート10Aは、心材11と、心材11の一方の面に設けられた第1ろう材12aとからなる2層構造を有している。
[心材11]
〔心材11のCu含有量:1.5質量%以下、好ましくは0.2〜1.0質量%〕
Cuは、ろう付け後強度を向上させる効果がある。また、電位を貴にする働きがあるため、耐食性を向上させる。Cu含有量が0.2質量%未満では、ろう付け後表面と板材中央部との間に十分な電位差を生じさせることができない。一方、Cu含有量が1.0質量%を超えると、心材11の局部溶融が発生する可能性がある。したがって、心材11におけるCu含有量は、0.2〜1.0質量%とし、好ましくは0.3〜0.5質量%とする。
Siは、ろう付け後強度を向上させる効果があり、特にMg,Mnと共存させた場合にはMg−Si系金属間化合物とAl−Mn−Si系金属間化合物の形成により、さらにろう付け後強度を高めることができる。しかし、Si含有量が1.5質量%を超えると、心材11の融点低下及び低融点相増加により、心材11の溶融が生じる。したがって、心材11におけるSi含有量は、1.5質量%以下とする。なお、Si含有量が少ないと前記効果が小さい。したがって、心材11におけるSi含有量は、好ましくは0.3〜1.2質量%とする。
Mnは、ろう付け後強度を向上させる効果があり、含有量増加によりろう付け後強度を高めることができる。また、電位を貴にする働きがあるため、耐食性を向上させる。Mn含有量が1.8質量%を超えると粗大なAl−Mn系金属間化合物が形成され、成形性と耐食性が低下する。したがって、心材11におけるMn含有量は1.8質量%以下とする。なお、Mn含有量が0.5質量%未満では前記効果が小さい。したがって、心材11におけるMn含有量は、好ましくは0.5〜1.8質量%とする。
Tiは、Al合金中でTi−Al系化合物を形成して層状に分散する。Ti−Al系化合物は電位が貴であるため、腐食形態が層状化し、深さ方向への腐食(孔食)に進展し難くなる効果がある。Ti含有量が0.35質量%を超えると粗大なAl−Ti系金属間化合物が形成され、成形性と耐食性が低下する。したがって、心材11におけるTi含有量は、0.35質量%以下とする。なお、Ti含有量が0.05質量%未満では腐食形態の層状化効果が小さい。したがって、心材11におけるTi含有量は、好ましくは0.05〜0.35質量%とする。
Mgは、ろう付け後強度を向上させる効果がある。一方、Mgはフラックスろう付け性を低下させる作用があるため、Mg含有量が0.5質量%を超えると、ろう付けの際にMgが第1ろう材12a(の表面)まで拡散してフラックスと反応し、ろう付け性が著しく低下する。したがって、心材11におけるMg含有量は、0.5質量%以下とする。なお、Mg含有量が0.05質量%未満ではろう付け後強度を向上させる効果が小さい。したがって、心材11におけるMg含有量は、好ましくは0.05〜0.5質量%とする。
心材11は、前記成分の他、不可避的不純物として、例えば、Fe,Cr,Pb等を含有してもよい。詳しくは、Fe:0.5質量%以下、Cr,Pb:各0.3質量%以下であり、かつこれらの成分の含有量の合計が1.0質量%以下であれば不可避的不純物とみなすことができる。
〔ろう付け温度における液相率X(%):30≦X<89〕
ろう付け温度における第1ろう材12aの液相率X(%)を制御することにより、ろう付け処理の際の第1ろう材12aの流動性を制御し、第1ろう材12aに起因してろう付け処理後に心材11の表面に残存するろう材(残存ろう材)の量を制御することができる。液相率Xが30%未満の場合には、ろう流動性が低いために、十分なろう付け性を確保することができない。一方、液相率Xが89%以上であると、ろう付け処理後の残存ろう材が少なくなるために、残存ろう材に起因する犠牲防食効果が小さくなる。したがって、ろう付け温度における液相率Xは、30%以上89%未満とし、好ましくは50%以上80%以下とする。なお、ろう付け温度での液相率X(%)は、ブレージングシート10Aの製造工程で使用するろう材の材料成分に基づいて、標準的な熱力学計算ソフト(例えば、サーモカルク(Thermo-Calc))により算出される値である。液相率Xの単位である“%”は、一般的に“質量%”である。
ブレージングシート10Aを用いた熱交換器等の製品製造の際のろう付け処理工程において、第1ろう材12aはその一部が融解して流動ろうとなる。そして、第1ろう材12aの厚さYが90μm未満では、第1ろう材12aのSi濃度が十分高く、液相率が上限値に近い場合であっても、十分な量の流動ろうが確保できず、ろう付け性が低下する。なお、薄肉材(チューブ材等)に比較して厚肉材(ヘッダ等)では、接合点が多いため、多量のろうが必要である。そして、心材12がCuを含有する場合にろう付け後表面でのCu濃縮を抑制できないため、ろう付け後表面から板材中央部に向って電位が十分に貴とならず、犠牲防食効果を発揮できない。なお、厚さYが600μmを超えると、液相率が高ければ過剰な流動ろうによる侵食が発生しやすく、局部腐食の原因となりやすい。一方、液相率が低ければ、共晶反応によって溶融しても、共晶Si密度が低く、流動に寄与しないろうが増加して、ろう付け性が低下しやすくなる。したがって、第1ろう材12aの厚さYは、600μm以下とすることが好ましい。
液相率Xとろう材厚さYとを制御することにより、ろう付け処理の際に生成する流動ろうの絶対量と、残存ろう材の絶対量を制御することができる。これにより、例えば、ろう付け処理においては、適切な絶対量の流動ろうの生成が確保され、十分なろう付け性を得ることができるとともに、適切な絶対量の残存ろう材が確保されて、残存ろう材に起因する犠牲防食効果が十分に発揮される。液相率Xとろう材厚さYの積が5400未満では、流動ろうの絶対量が少なくなるために、十分なろう付け性を確保することができない。例えば、フィレットの形成が不十分となって、接合強度が低下する。なお、液相率Xと厚さYの積が32000を超えると、流動ろうの絶対量が多くなるため、ろう付け処理の前後におけるブレージングシート10Aの板厚の変化が大きくなってコア割れが発生しやすく、また、過剰に生成した流動ろうによる心材11の浸食等が発生しやすく、耐食性が低下しやすくなる。したがって、液相率Xと厚さYの積(X×Y)は、5400以上とし、好ましくは、5400〜32000とする。
共晶Siの平均粒径Zを制御することにより、均一なα相の残存を制御することができる。粗大な共晶Siが存在する場合、その周囲では、ほぼ全てのα相がSiとの共晶反応を起こして残存ろう材が少量となり、場合によっては心材まで共晶反応によって溶融する。粗大な共晶Siが多数ある(平均粒径がある一定値以上になる)場合、十分な残存ろう材が確保できない部位が増加する。平均粒径Zがろう材厚さYの1/3を超えると、十分な残存ろう材が確保できない部位の増加および心材への侵食により耐食性が低下する。したがって、平均粒径Zは、ろう材厚さYの1/3以下、好ましくは1/4以下とする。なお、共晶Siの平均粒径の制御は、Na処理(鋳造時に10〜50ppmのNaを添加する)、P等の微量成分の制御といった従来の方法によって可能である。
Siは、第1ろう材12aたるAl合金の融点を低下させ、ろう付け温度での液相率及び流動性を高める作用がある。Si含有量が2.0質量%未満では、ろう付け処理の際に流動ろうの量が不足してろう付け性が低下する。一方、Si含有量が8.0質量%を超えると、流動ろうが過剰に生成し、板厚の減少によるコア割れや心材11の浸食等のろう付け不良が発生する。したがって、第1ろう材12aのSi含有量は、2.0〜8.0質量%とすることが好ましい。
Znは、第1ろう材12aたるAl合金の電位を卑にする作用があり、また融点の低下及び液相率を増加する作用がある。Zn含有量が1.0質量%未満では、ろう付け後表面に残留するZnは極少量となるため、耐食性の向上はほとんど認められない。一方、Zn含有量が6.0質量%を超えると、流動ろうに含有されるZn濃度が増大し、フィレット等が優先腐食する原因となる。したがって、第1ろう材12aにZnを含有させる場合には、Zn含有量は、1.0〜6.0質量%とすることが好ましく、1.5〜6.0質量%とすることがより好ましい。
第1ろう材12aはCuを含有してもよい。Cuは、前記したようにアルミニウム合金の電位を貴にする作用があるので、第1ろう材12aにおいてはZnの作用と相反する。ここで、本発明に係るブレージングシート10Aのろう付け処理において、第1ろう材12aは、ろう付け温度における液相率が89%未満であるので、固相のα相(Znが固溶したAl)と、液相の溶融Al−Si合金または溶融Al−Si−Zn合金との2相になる。その他の成分はその性質に応じてそれぞれの相に分配され、Cuについては、Al−Cu合金は共晶合金であるため、第1ろう材12aを形成するAl−Si系合金またはAl−Si−Zn系合金にCuが含有される場合、Cuはα相よりも液相に多く分配される。液相のほとんどは流動するので、ろう付け処理後のアルミニウム合金製ろう付け体(心材11)の表面に残存したα相で主に形成された残存ろう材は、Cu濃度が比較的低く、そのため電位の貴化は小さく、犠牲防食効果が大きく低下せずに耐食性が確保できる。一方、液相すなわち流動ろうで形成されたフィレットのCu濃度は増加するため、接合部の耐食性を高くして、腐食による接合部の剥離をいっそう抑制することができる。この効果を十分なものとするために、第1ろう材12aのCuの含有量は0.05質量%以上とすることが好ましく、0.1質量%以上がより好ましい。一方、Cuの含有量が0.7質量%を超えると、分配の少ないα相のCu濃度も高くなるため、残存ろう材のCu濃度が高くなって犠牲防食効果が低下する虞がある。したがって、第1ろう材12aにおけるCuの含有量は、0.7質量%以下が好ましく、0.4質量%以下がより好ましい。さらに心材11におけるCuの含有量以下であることが好ましく、心材11に対して0.2質量%以上の差で少ないことがより好ましく、0.3質量%以上の差で少ないことがもっとも好ましい。
以上、心材11と第1ろう材12aとを備えた2層構造のブレージングシート10Aについて説明したが、このような2層構造に限らず、用途に応じて、心材11の他方面(第1ろう材12aが設けられた面と反対の面)に、ろう材、内張材、犠牲陽極材等を設けた3層構造のブレージングシートとしてもよい。この場合には、以下の第2〜5実施形態に示すろう材、内張材、および、犠牲陽極材を適用することが好ましい。また、ろう材としてAl−Si系合金(例えばSi:7質量%以上13質量%未満)やAl−Si−Zn系合金等を適用することができ、犠牲陽極材として1000系アルミニウム(またはアルミニウム合金)や7000系アルミニウム合金等を適用することができる。そして、内張材として、Al合金層であって、ろう材として機能せず、また、Znを含有しない点で犠牲陽極材と区別されるものを適用することができる。また、心材11の他方面に、中間材を介してろう材を設けた四層構造のブレージングシートとしてもよく、この場合には、中間材として1000系アルミニウム(またはアルミニウム合金)や7000系アルミニウム合金等を適用することができる。
図2に本発明の第2実施形態に係るブレージングシートの概略構造を表した断面図を示す。ブレージングシート10Bは、心材11と、心材11の一方の面に設けられた第1ろう材12aと、心材11の他方の面に設けられた第2ろう材12bとからなる3層構造を有している。ここでは、ブレージングシート10Bの心材11の組成及び厚さはブレージングシート10Aの心材11の組成及び厚さと同じであるとする。また、ブレージングシート10Bの第1ろう材12aの組成及び厚さは、ブレージングシート10Aの第1ろう材12aの組成及び厚さと同じであるとする。そのため、心材11と第1ろう材12aについての説明は省略する。
図3(a)に本発明の第3実施形態に係るブレージングシートの概略構造を表した断面図を示し、図3(b)に第3実施形態に係るブレージングシートのろう付け処理後におけるZnとCuの濃度分布を模式的に示す。ブレージングシート10Cは、心材11と、心材11の一方の面に設けられた第1ろう材12aと、心材11の他方の面に設けられた内張材13からなる三層構造を有している。ブレージングシート10Cを構成する心材11及び第1ろう材12aは、前記したブレージングシート10A,10Bを構成する心材11及び第1ろう材12aと実質的に同じである。図3(b)に示す符号「12a1」はろう付け処理後に心材11の表面に残るろう材、すなわち、第1残存ろう材を示している。
〔内張材13のCu含有量:心材11のCu含有量以上1.0質量%以下〕
Cuは、ろう付け後強度を向上させる効果がある。また、電位を貴にする働きがあるため、耐食性を向上させる。しかし、Cu含有量が1.0質量%を超えると、局部溶融が発生する可能性がある。また、Cu含有量が心材11のCu含有量未満であると、内張材13に対して心材11側の電位が貴になるため、心材11以深で孔食進展が促進される。したがって、内張材13におけるCu含有量は、心材11のCu含有量以上1.0質量%以下とする。なお、Cu含有量が0.05質量%未満では前記した各種効果が小さい。内張材13のCu含有量は、0.9質量%以下かつ心材11のCu含有量以上とすることが好ましく、心材11のCu含有量+0.1質量%以上とすることがより好ましい。
Siは、ろう付け後強度を向上させる効果があり、特にMg,Mnと共存させた場合には、Mg−Si系金属間化合物、Al−Mn−Si系金属間化合物の形成により、さらにろう付け後強度を高めることができる。しかし、Si含有量が1.5質量%を超えると、内張材13の融点低下と低融点相の増加により、内張材13の溶融が生じる。したがって、内張材13におけるSi含有量は、1.5質量%以下とする。なお、Si含有量が0.03質量%未満では前記した効果が小さい。したがって、内張材13におけるSi含有量は、0.03〜1.5質量%とすることがより好ましい。
Mnは、ろう付け後強度を向上させる効果があり、含有量増加によりろう付け後強度を高めることができる。また、電位を貴にする働きがあるため、耐食性を向上させる。しかし、Mn含有量が0.5質量%未満では強度向上の効果は小さい。一方、Mn含有量が1.8質量%を超えると、粗大なAl−Mn系金属間化合物が形成され、成形性の低下や耐食性の低下が起こりやすい。したがって、内張材13におけるMn含有量は、0.5〜1.8質量%とする。
Tiは、Al合金中でTi−Al系化合物を形成して層状に分散する。Ti−Al系化合物は電位が貴であるため、腐食形態が層状化し、深さ方向への腐食(孔食)に進展し難くなる効果がある。しかし、Ti含有量が0.05質量%未満では腐食形態の層状化効果が小さい。一方、Ti含有量が0.35質量%を超えると粗大なAl−Ti系金属間化合物が形成され、成形性と耐食性が低下する。したがって、内張材13におけるTi含有量は、0.05〜0.35質量%とする。
内張材13側の電位貴化及び強度向上のために、Cr,Ni,Zr等から選ばれる1種または複数種をそれぞれ0.3質量%以下添加してもよい。
図4(a)に本発明の第4実施形態に係るブレージングシートの概略構造を表した断面図を示し、図4(b)に第4実施形態に係るブレージングシートのろう付け処理後におけるZnとCuの濃度分布を模式的に示す。ブレージングシート10Dは、心材11と、心材11の一方の面に設けられた第1ろう材12aと、心材11の他方の面に設けられた第2ろう材14からなる三層構造を有している。ブレージングシート10Dの心材11及び第1ろう材12aは、前記したブレージングシート10A〜10Cを構成する心材11及び第1ろう材12aと実質的に同じである。図4(b)に示す符号「12a1」は、図3(b)と同様に、ろう付け処理後に心材11の表面に残る第1ろう材12aの残存ろう材(第1残存ろう材)を示し、符号「14a」は第2ろう材14の残存ろう材(第2残存ろう材)を示している。
〔第2ろう材14のCu含有量:心材11のCu含有量以上3.0質量%以下〕
Cuは、ろう付け後強度を向上させる効果がある。また、電位を貴にする働きがあるため、耐食性を向上させる。Cu含有量が3.0質量%を超えると、多量のCuを含有するフィレットが形成され、フィレット周辺に優先腐食が発生する。また、心材11のCu含有量未満であると、製造及びろう付け処理の際に、心材11から第2ろう材14にCuが拡散する結果、心材11における第2ろう材14側の電位が卑になるため、心材11以深で孔食進展が促進される。したがって、第2ろう材14におけるCu含有量は、心材11のCu含有量以上3.0質量%以下とする。なお、Cu含有量が0.05質量%未満では前記した各種効果が小さい。第2ろう材14のCu含有量は、2.0質量%以下かつ心材11のCu含有量以上とすることが好ましく、心材11のCu含有量+0.3質量%以上とすることがより好ましい。
Siは、アルミニウム合金の融点低下、ろう付け温度での液相率及び流動性を高める作用がある。Si含有量が7質量%未満では、ろう付け処理の際に流動ろうの量が不足してろう付け性が低下する。一方、Si含有量が13質量%以上であると、過剰の流動ろうが生成し、板厚の減少によるコア割れの他、心材11の浸食等のろう付け不良が発生する。したがって、第2ろう材14におけるSi含有量は、7質量%以上13質量%未満とする。なお、第2ろう材14のSi含有量が、第1ろう材12aのSi含有量と異なるのは、第2ろう材14を厚くせず、ろう付け温度における液相率をほぼ100%として使用するためである。
ろう付け処理後における第2残存ろう材14a側の電位貴化のために、第2ろう材14には、Cr,Ni,Zr等から選ばれる1種または複数種をそれぞれ0.3質量%以下添加してもよい。
ブレージングシート10Dのろう付け温度における第2ろう材14の液相率をX2(%)とし、ろう材厚さをY2(μm)とすると、より好ましくは下記(1b)〜(3b)の関係が満たされることにより、ろう付け処理後における第2内側残存ろう材14aにおけるCu残存量を増加させ、フィレットにおけるCu含有量を低減させることができる。これにより、さらに心材11から第1ろう材12a及び第2ろう材14への元素拡散を低減させることができる。
(1b)30≦X2<89
(2b)90≦Y2
(3b)5400≦X2×Y2
図5に本発明の第5実施形態に係るブレージングシートの概略構造を表した断面図を示す。ブレージングシート10Eは、心材11と、心材11の一方の面に設けられた第1ろう材12aと、心材11の他方の面に設けられた犠牲陽極材15からなる三層構造を有している。ブレージングシート10Eの心材11及び第1ろう材12aは、前記したブレージングシート10A〜10Dを構成する心材11及び第1ろう材12aと実質的に同じである。犠牲陽極材15はAl−Zn系合金からなり、第1ろう材12aのろう付け温度では溶融せず、ろう材としては機能しない。このブレージングシート10Eは、第1ろう材12a側と犠牲陽極材15側の両面を腐食環境にさらして用いることができ、特に一方の面にのみろう材が必要である環境において好適に用いられ、良好な耐食性を得ることができる。
ブレージングシート10A〜10Eの製造方法の一例について説明する。例えば、ブレージングシート10A〜10Eのろう付け温度を決定し、そのろう付け温度での第1ろう材12aの液相率X(%)を30≦X≦89の範囲で決定するとともに、第1ろう材12aの組成を決定する。次いで第1ろう材12aの厚さY(μm)を、90≦Y、かつ、5400≦X×Y、かつ、共晶Siの平均粒径Z(μm)をZ≦Y/3となるように決定し、材料板厚や圧延条件を決定する。ブレージングシート10Bについては、必要に応じて、第1ろう材12aと同様の設計を第2ろう材12bについて行う。
表1に示す心材及び内張材と、表2に示す組成を有するろう材及び犠牲陽極材を周知の方法を用いて作製し、表3,4に示す組合せで重ね合わせ、450℃において熱間圧延してクラッドし、焼鈍を行うことなく冷間圧延にて板厚を2.5mmとした。その後、400℃で5時間の中間焼鈍を行い、さらに加工率;50%で冷間圧延を行う(中間焼鈍は適宜実施する)ことにより、所定の最終板厚とし、最後に仕上げ焼鈍を300℃で3時間行って、表3,4に示す供試材を作製した。
作製した各供試材の第1ろう材の表面に市販の非腐食性のフラックスを3g/m2で塗布し、治具を用いて吊り下げて、酸素濃度が200ppm以下の雰囲気において590〜600℃で2分間保持することにより、ろう付け加熱を行い、ろう付け熱処理材を作製した。その後、ろう付け熱処理材から所定の形状の試験材を切り出して、下記の腐食試験に供した。
腐食試験は、ろう付け熱処理材から60mm×50mmの試験材を切り出し、第1ろう材面が試験面となるように、第1ろう材面の反対の面及び端面をシールテープによりシールして、CASS試験(JIS Z 2371)を1000時間実施することにより、行った。試験後、最大腐食深さを測定し、最小残存板厚(=試験前の板厚−最大腐食深さ)を算出した。結果を表3,4に示す。この腐食試験の合格基準は、試験材の最小残存板厚が元板厚(ろう付け前厚さの)の60%(板厚1.0mmの場合は600μm)以上であることとした。
ろう付け性評価としては間隙充填試験を実施した。具体的には、図7に示すように、水平に置いた下板(供試材(厚さ1.0mm×縦幅20mm×横幅60mm))と、この下板に対して垂直に立てて配置した上板(3003Al合金板(厚さ1.0mm×縦幅15mm×横幅55mm))との間に、φ2mmのステンレス製スペーサを挟んで、一定のクリアランスを設定した。なお、下板の供試材は、ろう材面にフラックス(森田化学工業株製FL−7)を5g/m2塗布した。そして、窒素雰囲気下、600℃で3分間という条件の加熱処理を行った後、下板と上板のすき間が充填された長さ(すき間充填長さ)をノギスで測定してろう付性を数値化した。すき間充填長さ(間隙充填長)が20μm以上を合格とした。
接合部(フィレット)の耐食性を、ろう付け性評価を行った試験片を使用して実施した。試験片の端面(切断面)、裏面(フィレット形成面と逆の面)およびスペーサ部をマスクし、CASS試験(JIS Z 2371)を実施した。試験後、接合部の残存状況を確認し、残存率(腐食試験後フィレット長/腐食試験前フィレット長×100[%])を求めて、70%以上を合格とした。
実施例1〜38は本発明の構成要件を備えているために、最小残存板厚は最も薄い実施例8で605μmであり、また、接合部残存率は最も小さい実施例7で71%であり、良好な耐食性を示すことが確認された。
比較例44では、ろう材の厚さが小さいために、第1ろう材側の耐食性、フィレットの耐食性、ろう付け性が低下した。比較例45では、共晶Siの平均粒径が大きいため、第1ろう材側の耐食性が低下した。
11 心材
12a 第1ろう材
12a1 第1残存ろう材
12b 第2ろう材
13 内張材
14 第2ろう材
14a 第2残存ろう材
15 犠牲陽極材
Claims (9)
- 心材と、心材の一方の面に設けられる第1ろう材とを備えたアルミニウム合金製ブレージングシートであって、
前記ブレージングシートの板厚は、600μmを超えるものであり、
前記第1ろう材は、Si:2.0〜8.0質量%、Zn:0.5〜9.0質量%を含有するAl−Si−Zn系合金からなり、ろう付け温度における液相率X(%)と、ろう材厚さY(μm)と、共晶Siの平均粒径Z(μm)とが、
(1)30≦X<89、
(2)90≦Y、
(3)5400≦X×Y、
(4)Z≦5.7、の関係を満たすことを特徴とするアルミニウム合金製ブレージングシート。 - 前記第1ろう材のZnの含有量が1.0〜6.0質量%であることを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム合金製ブレージングシート。
- 心材と、心材の一方の面に設けられる第1ろう材とを備えたアルミニウム合金製ブレージングシートであって、
前記ブレージングシートの板厚は、600μmを超えるものであり、
前記第1ろう材は、Si:2.0〜8.0質量%、Zn:1.0〜6.0質量%、Cu:0.05〜0.7質量%を含有するAl−Si−Zn−Cu系合金からなり、ろう付け温度における液相率X(%)と、ろう材厚さY(μm)と、共晶Siの平均粒径Z(μm)とが、
(1)30≦X<89、
(2)90≦Y、
(3)5400≦X×Y、
(4)Z≦5.7、の関係を満たすことを特徴とするアルミニウム合金製ブレージングシート。 - 前記心材の他方の面に設けられる第2ろう材をさらに備え、
前記第2ろう材は、Si:2.0〜8.0質量%,Zn:1.0〜6.0質量%を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなり、かつ、ろう付け温度における液相率X1(%)と、ろう材厚さY1(μm)とが、
(1a)30≦X1<89、
(2a)90≦Y1、
(3a)5400≦X1×Y1、の関係を満たすことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のアルミニウム合金製ブレージングシート。 - 前記心材の他方の面に設けられる内張材をさらに備え、
前記内張材は、Cu:前記心材のCu含有量以上1.0質量%以下を含有し、Si:1.5質量%以下,Mn:0.5〜1.8質量%,Ti:0.05〜0.35質量%から選ばれた1種または2種以上を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のアルミニウム合金製ブレージングシート。 - 前記心材の他方の面に設けられる第2ろう材をさらに備え、
前記第2ろう材は、Cu:前記心材のCu含有量以上3.0質量%以下,Si:7質量%以上13質量%未満を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のアルミニウム合金製ブレージングシート。 - 前記心材の他方の面に設けられる犠牲陽極材をさらに備え、
前記犠牲陽極材は、Al−Zn系合金からなることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のアルミニウム合金製ブレージングシート。 - 前記心材は、Cu:0.2〜1.0質量%を含有し、Si:1.5質量%以下、Mn:1.8質量%以下、Ti:0.35質量%以下、Mg:0.5質量%以下の少なくとも1種をさらに含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のアルミニウム合金製ブレージングシート。
- 前記心材がSi,Mn,Ti,Mgを含有する場合の各含有量は、Si:0.3〜1.2質量%,Mn:0.5〜1.8質量%,Ti:0.05〜0.35質量%,Mg:0.05〜0.5質量%であることを特徴とする請求項8に記載のアルミニウム合金製ブレージングシート。
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