以下、本発明を実施するための形態について説明する。本発明のスパッタリングターゲットは、Alを5〜50原子%の範囲で含有するTi−Al合金からなり、例えば耐酸化性に優れる拡散防止層(バリア層)として用いられるTi−Al−N(Ti1-xAlxN(0.05≦x≦0.5))膜の形成などに適用されるものである。
上述したTi−Al合金からなるスパッタリングターゲット(Ti−Al合金ターゲット)中のAl組成が5原子%未満であると、耐酸化性の向上効果を十分に得ることができない。例えば、Al組成が5原子%未満のTi−Al合金ターゲットを用いて形成したTi−Al−N膜は酸化が進行しやすく、その上に形成した膜、例えば薄膜キャパシタの下部電極との付着力が低下して剥がれなどが生じやすくなる。Al組成が増加するほど高温域での耐酸化性が向上するため、Al組成は25原子%以上であることが好ましい。
ただし、Al組成を高く設定しすぎると逆に耐酸化性が劣化し、酸素やその他の可動イオンなどが拡散防止層としてのTi−Al−N膜を容易に通り抜けてしまうようになるため、Ti−Al合金ターゲット中のAl組成は50原子%以下とする。また、Al組成が50原子%を超えると、Ti−Al−N膜の抵抗率なども増加して、素子特性の低下などを招くことになる。このような点からもAl組成は50原子%以下とする。
Ti−Al−N膜中のAlはそれ自体の耐酸化性を高めるだけでなく、酸素のトラップ材などとしても機能する。例えば、Ti−Al−N膜上にSrRuO3(SRO)などの導電性酸化物からなる電極膜を形成した場合、この導電性酸化物中の酸素が半導体基板などの成膜基板中に拡散することを抑制することが可能となる。Ti−Al合金ターゲット中のAl組成(Al含有量)は、拡散防止層の耐酸化性、耐熱性、バリア性などを高める上で、特に25〜50原子%の範囲とすることが好ましい。
本発明における第1のスパッタリングターゲットは、上述したようなAl組成を有するTi−Al合金ターゲットにおいて、酸素含有量を500ppm以下、窒素含有量を50ppm以下、炭素含有量を100ppm以下とすると共に、ターゲット全体としての酸素含有量、窒素含有量および炭素含有量のばらつきをそれぞれ20%以下としたものである。このような第1のTi−Al合金ターゲットは、Ti−Al合金の焼結材を具備する焼結ターゲットに対して特に効果を発揮するものである。
すなわち、焼結Ti−Al合金ターゲットは、溶解ターゲットのように熱間加工を施すことなく、所望サイズおよび所望形状のターゲットを容易に得ることができると共に、結晶粒径の微細化を図ることができる反面、従来のTi−Al合金粉末を用いた焼結ターゲットでは不純物量、特に酸素、窒素、炭素などのガス成分量を十分に低減することが難しいという欠点が存在していた。これに対して、後に詳述する本発明の製造方法を適用することによって、酸素、窒素および炭素の含有量を十分に低減したTi−Al合金ターゲット、特に焼結ターゲットを得ることが可能となる。
Ti−Al合金ターゲット中に不純物として存在する酸素、窒素および炭素は、いずれもスパッタ時に異常放電の発生原因となり、これによりダスト量などが増加する。このようなことから、第1のTi−Al合金ターゲットにおいては酸素含有量を500ppm以下、窒素含有量を50ppm以下、炭素含有量を100ppm以下としている。酸素、窒素および炭素の含有量が上記した範囲を超えると、ダストの発生量が大幅に増加する。
Ti−Al合金ターゲット中に存在する酸素は、当該ターゲットをスパッタすることで得られるTi−Al−N膜の酸化を促進し、その上に形成される例えば薄膜キャパシタの下部電極の付着力などを低下させる。また、Ti−Al−N膜自体の耐酸化特性の低下原因となる。このような点からも、Ti−Al合金ターゲットの酸素含有量は500ppm以下とする。ターゲットの酸素含有量は300ppm以下とすることがさらに好ましい。ただし、Ti−Al合金ターゲットから完全に酸素を除去してしまうと、得られるTi−Al−N膜の拡散防止性能が低下するおそれがあることから、微量の酸素を含んでいることが好ましい。具体的には、Ti−Al合金ターゲットの酸素含有量は10〜500ppmの範囲、さらには10〜300ppmの範囲とすることが好ましい。
また、Ti−Al合金ターゲット中に存在する窒素は、得られるTi−Al−N膜などの特性低下原因、特に比抵抗のばらつきの原因となる。このようなことからも、Ti−Al合金ターゲットの窒素含有量は50ppm以下とする。ターゲットの窒素含有量は30ppm以下とすることがさらに好ましい。同様に、Ti−Al合金ターゲット中に存在する炭素は、ターゲットの焼結性に悪影響を及ぼす原因となることから、ターゲットの炭素含有量は100ppm以下とする。炭素含有量は60ppm以下とすることがさらに好ましい。
Ti−Al合金ターゲット中の酸素、窒素および炭素の存在形態に関しては、ターゲット全体としての酸素含有量、窒素含有量および炭素含有量にばらつきが生じていると、得られる薄膜(Ti−Al−N膜など)の特性、例えば比抵抗の面内均一性が低下する。さらに、Ti−Al−N膜の拡散防止性能などにもばらつきが生じやすくなる。このため、ターゲット全体としての酸素含有量、窒素含有量および炭素含有量のばらつきはそれぞれ20%以下とする。これらガス成分の含有量のばらつきはそれぞれ10%以下とすることがさらに好ましい。
さらに、第1のTi−Al合金ターゲットは、Mg含有量が50ppm以下、Mn含有量が50ppm以下、およびSi含有量が100ppm以下で、かつターゲット全体としてのMg含有量、Mn含有量およびSi含有量のばらつきがそれぞれ20%以下であることが好ましい。Mg、MnおよびSiの各元素はTi−Al合金ターゲット中のガス成分、すなわち酸素、窒素および炭素を安定的に吸着して脱ガスを妨げるため、これら各元素の含有量はそれぞれ上記した範囲内とすることが好ましい。Mg、MnおよびSiの各元素のより好ましい含有量は、それぞれMgは30ppm以下、Mnは30ppm以下、Siは50ppm以下である。
また、ターゲット全体としてのMg、MnおよびSiの各含有量のばらつきが大きいと、脱ガスを妨げると共に、得られる薄膜の特性の均一性などが低下することから、各元素の含有量のターゲット全体としてのばらつきは20%以下とすることが好ましい。Mg含有量、Mn含有量およびSi含有量のばらつきはそれぞれ10%以下とすることがより好ましい。
ここで、Ti−Al合金ターゲットの酸素含有量、窒素含有量、炭素含有量、またMg含有量、Mn含有量、Si含有量、さらにこれら各元素の含有量のばらつきは、以下のようにして求めた値を指すものである。すなわち、例えばターゲットが円盤状の場合、ターゲットの中心部と、中心部を通り円周を均等に分割した4本の直線上の中心部から50%の距離の各位置(計8個所)、および中心部から90%の距離の各位置(計8個所)の合計17個所からそれぞれ試験片を採取し、これら17個の試験片の各元素の含有量をそれぞれ測定し、これらの測定値の平均値をTi−Al合金ターゲットの酸素含有量、窒素含有量、炭素含有量、さらにMg含有量、Mn含有量、Si含有量とする。
さらに、酸素、窒素および炭素の各含有量のばらつき、さらにMg、MnおよびSiの各含有量のばらつきは、各試験片の各元素の含有量(各測定値)の最大値と最小値から、{(最大値−最小値)/(最大値+最小値)}×100(%)に基づいて求めるものとする。なお、酸素および窒素の各含有量は不活性ガス−熱伝導度法により測定した値とし、炭素の含有量は高周波燃焼−赤外線吸収法により測定した値とする。また、Mg、MnおよびSiの各含有量はICP−発光分光分析法により測定した値とする。
上述した第1のTi−Al合金ターゲットにおいて、Ti−Al合金の平均結晶粒径は10mm以下、さらには5mm以下であることが好ましく、さらにターゲット全体としての平均結晶粒径のばらつきが20%以下であることが好ましい。このように、Ti−Al合金の結晶粒が比較的微細で、かつターゲット全体としての平均結晶粒径のばらつきが少ない場合に、スパッタ成膜時におけるダストの発生を抑制することができる。
Ti−Al合金の結晶粒が粗大化すると、面方位の違いによりエロージョンに差が生じるため、結晶粒が隣り合う粒界部に凹凸が生じ、凸部に集中してスパッタ粒子の再付着が起こる。このようにして堆積した付着物が剥離したり、また異常放電を引き起こすなどによって、突発的に多量のダストが発生してしまう。Ti−Al合金の平均結晶粒径が10mmを超えると、上記した凹凸の高低差が非常に大きくなり、多数のダストが発生しやすくなり、素子歩留りを低下させることになる。また、ターゲット全体としての結晶粒径にばらつきが生じている場合にも、同様に粒界部に凹凸が生じやすいことから、ダストの発生量が増加すると共に、得られる薄膜の膜厚の面内均一性などが低下する。
このようなことから、第1のTi−Al合金ターゲットにおいては、Ti−Al合金の平均結晶粒径を10mm以下とすることが好ましく、さらには突発的なダストの抑制に有効な5mm以下とすることが望ましい。また、ターゲット全体としての平均結晶粒径のばらつきについては、薄膜の膜厚などの面内均一性を高めることが可能であると共に、ダストの低減にも有効な20%以下とすることが好ましい。平均結晶粒径のばらつきは10%以下とすることがより好ましい。これらによって、Ti−Al−N膜などの製造歩留り、ひいてはそれを用いた素子歩留りを向上させることが可能となる。
なお、Ti−Al合金ターゲットの平均結晶粒径およびそのばらつきについては、後述する第2および第3のTi−Al合金ターゲットにおいても同様な値を満足させることが好ましい。
ここで、Ti−Al合金の平均結晶粒径は、以下のようにして求めた値を示すものとする。まず、不純物含有量の測定と同様に、ターゲットの17個所の位置からそれぞれ試験片を採取し、各試験片の表面をHF:HNO3:H2O=1:1:1のエッチング液でエッチングした後、光学顕微鏡で組織観察を行う。この光学顕微鏡写真上に既知の面積の円を描き、円内に完全に含まれる結晶粒の個数(個数A)と、円周により切断される結晶粒の個数(個数B)とを数える。測定倍率は円の中に完全に含まれる結晶粒の個数が30個以上となるように設定することが好ましい。円内の結晶粒の総数Nは、個数A+個数B/2とする。この円内の結晶粒の総数Nと円の面積Aから、A/Nにより結晶粒1個当りの平均面積を求め、この平均面積の直径を平均粒径とする。
このようにして各試験片(計17個)の平均粒径を求め、これらの値の平均値を本発明のスパッタリングターゲットの平均結晶粒径とする。さらに、平均結晶粒径のばらつきについては、上記した各試験片(計17個)の平均粒径の最大値と最小値から、{(最大値−最小値)/(最大値+最小値)}×100(%)に基づいて求めるものとする。
上述した第1のTi−Al合金ターゲットは、例えば以下に示す製造方法を適用することにより再現性よく得ることができる。まず、3N以上の高純度Ti材と4N以上の高純度Al材とを用意し、これらを所望の組成比となるように秤量した後、例えば1×10-2Pa以下の真空下で溶解し、所望組成のTi−Al母合金(Ti1-xAlx(x=0.05〜0.5))を作製する。Ti原料およびAl原料の溶解には、真空アーク溶解法、EB溶解法、コールドクルーシブ溶解法などを適用することが好ましく、これら真空溶解時の雰囲気を1×10-2Pa以下とすることによって、酸素、窒素、炭素などのガス成分量を十分に低減することができる。
次いで、上述したTi−Al母合金を回転電極法により粉体化する。言い換えると、回転電極法を適用して所望組成のTi−Al合金粉末を作製する。回転電極法によれば、真空溶解により得たガス成分量(酸素、窒素および炭素の各含有量)が少ないTi−Al母合金の特性を維持しつつ、所望粒径のTi−Al合金粉末を得ることができる。回転電極法によるTi−Al合金粉末の粒子径は500μm以下とすることが好ましい。Ti−Al合金粉末の粒子径が500μmを超えると、その後の焼結工程において十分に高密度化できないおそれがある。
次に、このようなTi−Al合金粉末をホットプレス、HIP、プラズマ放電焼結などを適用して焼結して、ターゲット素材としてのTi−Al合金の焼結体を作製する。Ti−Al合金粉末の焼結は、真空中にて1000〜1500℃の温度で3時間以上行うことが好ましい。焼結温度が1000℃未満であったり、また焼結時間が3時間未満であると、十分に高密度な焼結体を得ることができず、また焼結体中のガス成分量も増加するおそれがある。一方、焼結温度が1500℃を超えるとTi−Al合金の結晶が異常成長し、焼結体の平均結晶粒径が粗大化したり、また平均結晶粒径のばらつきも大きくなる。さらに、ガス成分やMg、Mn、Siなどの含有量のばらつきにも悪影響を及ぼす。
そして、上述したようなターゲット素材(Ti−Al合金の焼結材)を所望のターゲット形状に機械加工し、Al、Cu、もしくはこれらの合金などからなるバッキングプレートと接合することによって、目的とするスパッタリングターゲット(Ti−Al合金ターゲット)が得られる。すなわち、焼結体からなるターゲット素材を用いた上で、酸素、窒素および炭素の各ガス成分量を十分に低減すると共に、それらの含有量のばらつきを抑制したTi−Al合金ターゲットを再現性よく得ることが可能となる。
なお、ターゲットとバッキングプレートとの接合には拡散接合やろう付け接合などが採用される。ろう付け接合は、公知のIn系やSn系の接合材(ろう材)を用いて実施することが好ましい。また、Al系のバッキングプレートを用いる場合には、ろう付け温度は600℃以下とする。これはAlの融点が660℃であり、600℃を超えると塑性変形が生じやすくなるためである。また、別個のバッキングプレートを使用するのではなく、ターゲットの作製時にバッキングプレート形状を同時に形成した一体型のスパッタリングターゲットであってもよい。
本発明における第2のスパッタリングターゲットは、前述したAl組成を有するTi−Al合金ターゲットにおいて、Zr含有量およびHf含有量をそれぞれ100ppb以下としたものである。このような第2のTi−Al合金ターゲットにおいては、ターゲット全体としてのZr含有量およびHf含有量のばらつきをそれぞれ20%以下とすることが好ましい。第2のTi−Al合金ターゲットは、Ti−Al合金の溶解材を具備する溶解ターゲットに対して特に効果を発揮するものである。
すなわち、従来のTi−Al合金の溶解インゴットに熱間加工を施した際にワレやカケなどが発生した部分について、EPMAやSIMS、さらにGDMSなどの種々の手法を用いて正常部と比較したところ、ワレやカケなどが発生した部分は正常部と比較してZrおよびHfの含有量が大きく異なることを見出した。ZrおよびHfはTiと同じ4A族元素であり、Tiと親和性を有することから、Ti材中に不純物として存在しやすい。このようなZrやHfがTi−Al合金の溶解インゴット中に比較的高濃度に存在していると、これらが粒界部に集中して析出することから、熱間加工時にワレやカケなどが発生しやすくなる。
そこで、第2のTi−Al合金ターゲットにおいては、例えば熱間加工を施すTi−Al合金の溶解インゴット中のZr含有量およびHf含有量、ひいてはTi−Al合金ターゲット中のZr含有量およびHf含有量をそれぞれ100ppb以下としている。ZrおよびHfの含有量をそれぞれ100ppb以下としたTi−Al合金材を使用することによって、熱間加工時のワレやカケなどの発生を抑制することが可能となる。言い換えると、Ti−Al合金材中のZrやHfの含有量が100ppbを超えると、熱間加工時にワレやカケが多数発生し、Ti−Al合金ターゲットの製造歩留りが大幅に低下する。ZrおよびHfの含有量はそれぞれ50ppb以下とすることがさらに好ましい。
また、Ti−Al合金材中のZrおよびHfの含有量にばらつきが生じている場合にも、熱間加工時にワレやカケなどが発生しやすく、特にTi−Al合金材の外周部に局所的にワレが生じやすくなる。このような現象はターゲット全体としてのばらつきが20%を超えると顕著になるため、第2のTi−Al合金ターゲットではZrおよびHfの含有量のばらつきをそれぞれ20%以下とすることが好ましい。これらZrやHfの含有量のばらつきはそれぞれ10%以下とすることがより好ましい。なお、第2のTi−Al合金ターゲットにおいて、ZrやHfの含有量とそれらのばらつきは、第1のTi−Al合金ターゲットにおけるガス成分量とそのばらつきと同様にして求めるものとする。
さらに、第2のTi−Al合金ターゲットにおいても、ガス成分量(酸素、窒素、炭素)とそのばらつき、またTi−Al合金の平均結晶粒径とそのばらつきを、第1のTi−Al合金ターゲットと同様に制御することが好ましい。これらによって、ダストの発生を抑制することが可能となると共に、得られる薄膜の特性や膜厚の面内均一性などを高めることができる。
本発明における第3のスパッタリングターゲットは、前述したAl組成を有するTi−Al合金ターゲットにおいて、Cu含有量を10ppm以下およびAg含有量を1ppm以下としたものである。このような第3のTi−Al合金ターゲットにおいては、ターゲット全体としてのCu含有量およびAg含有量のばらつきをそれぞれ30%以下とすることが好ましい。第3のTi−Al合金ターゲットは、Ti−Al合金の溶解材および焼結材のいずれを具備するターゲットに対しても効果を発揮するものである。
すなわち、CuおよびAgは周期律表の中でも最も高いイオン化率を示す元素である。このような元素がTi−Al合金ターゲット中に比較的高濃度に存在していると、スパッタ成膜時にこれらの元素(CuおよびAg)自体がイオン化してターゲットに戻り、自己維持放電を引き起こすことになる。このような自己維持放電が起こると、長時間成膜時にプラズマが不安定な状態となったり、また異常放電を誘発してダストの発生量などを増加させる。
そこで、第3のTi−Al合金ターゲットにおいては、Cu含有量を10ppm以下およびAg含有量を1ppm以下としている。このようなTi−Al合金ターゲットを用いることによって、長時間連続成膜時のプラズマ状態を安定化させることができると共に、異常放電によるダストの発生などを抑制することが可能となる。言い換えると、Ti−Al合金ターゲット中のCu含有量が10ppmを超えると、連続放電に悪影響を及ぼし、異常放電が増加して突発ダストが多数発生する。Ag含有量が1ppmを超える場合も同様である。Ti−Al合金ターゲット中のCu含有量は5ppm以下とすることがさらに好ましく、またAg含有量は500ppb以下とすることがさらに好ましい。
また、Ti−Al合金ターゲット中のCuおよびAgの含有量にばらつきが生じている場合には、得られる薄膜の膜厚や比抵抗などの特性の均一性が損なわれるおそれが大きくなるため、第3のTi−Al合金ターゲットにおいてはCuおよびAgの含有量のばらつきをそれぞれ30%以下とすることが好ましい。これら元素の含有量のばらつきはそれぞれ15%以下とすることがより好ましい。なお、第3のTi−Al合金ターゲットにおいて、CuやAgの含有量とそれらのばらつきは、第1のTi−Al合金ターゲットにおけるガス成分量とそのばらつきと同様にして求めるものとする。
さらに、第3のTi−Al合金ターゲットにおいても、ガス成分量(酸素、窒素、炭素)とそのばらつき、またTi−Al合金の平均結晶粒径とそのばらつきを、第1のTi−Al合金ターゲットと同様に制御することが好ましい。これらによって、ダストの抑制効果や薄膜の特性の均一性などをより一層高めることが可能となる。加えて、第3のTi−Al合金ターゲットに溶解材を適用する場合には、ZrおよびHfの各含有量とそのばらつきを、第2のTi−Al合金ターゲットと同様に制御することが好ましい。これらによって、ターゲットの製造歩留りを高めることができる。
上述した第2および第3のTi−Al合金ターゲットは、例えば以下に示す製造方法を適用することにより再現性よく得ることができる。ここでは、溶解ターゲットについて主として説明する。
まず、4N以上の高純度Ti材(例えば針状Ti)を用意し、これを例えばEB溶解する。この際、EB溶解の真空チャンバ内を1×10-5Pa以下の真空雰囲気とすることが好ましく、さらにEB溶解は3回以上繰り返し行うことが好ましい。このような条件下でEB溶解を行うことで、Ti材中のZrやHf、またCuやAgの含有量を所定値以下とすることができる。特に、ZrやHfはTiからの分離が難しいことから、例えばEB溶解の繰り返し回数を5回以上とすることが好ましい。
一方、Al材についてはZrやHfの含有量のみを低減する場合には市販の4N以上のAl材をそのまま用いてもよいが、CuやAgの含有量を低減する場合には4N以上のAl材を例えばゾーンリファイニング法を用いて3回以上処理することが好ましい。このような処理を適用することにより、CuやAgの含有量を所定値以下とすることができる。
次いで、上述したような処理を施したTi材とAl材を所望の組成比となるように秤量した後、例えば真空アーク溶解法、EB溶解法、コールドクルーシブ溶解法などを適用して溶解し、所望組成のTi−Al母合金(Ti1-xAlx(x=0.05〜0.5))のインゴットを作製する。インゴットのサイズは直径100〜300mmの範囲とすることが好ましい。ここで、真空溶解に用いられるるつぼはCuが主流であるが、Cuるつぼを用いると溶解された鋳塊が凝固していく過程で、鋳塊の表面にCuるつぼからわずかにCuが拡散するおそれがある。このようなCuの拡散を防ぐためには、Auるつぼを使用することが好ましい。
なお、第3のTi−Al合金ターゲットに焼結ターゲットを適用する場合には、上述したようなTi−Al合金インゴットを回転電極法により粉末化し、このTi−Al合金粉末を前述したような方法で焼結することによって、焼結材からなる第3のTi−Al合金ターゲットを得ることができる。
次に、得られたTi−Al合金インゴットに対して、熱間鍛造や圧延などの塑性加工を施す。ZrやHfの含有量を低減したTi−Al合金インゴットを使用することによって、熱間加工時のワレやカケの発生を抑制することが可能となる。また、この際の加工率は50〜98%の範囲とすることが好ましい。さらに、ZrやHfの含有量、またCuやAgの含有量のばらつきを制御する上で、熱間加工時の熱処理温度と保持時間が重要となる。具体的には、熱処理温度は1100〜1500℃の範囲とすることが好ましく、またそのような温度での保持時間は3時間以上とすることが好ましい。
すなわち、熱間加工時の熱処理温度が1100℃未満であると、塑性加工の最中にワレやカケなどが生じやすくなってしまう。一方、熱処理温度が1500℃を超えると、Ti−Al合金の結晶粒径が粗大化してしまい、ターゲットに要求される特性として重要な平均結晶粒径を十分に制御することができなくなる。さらに、拡散係数が高いCuやAgが素材表面部に積極的に現れるようになるため、これらの含有量のばらつきが大きくなりやすくなる。
このようにして作製したターゲット素材としてのTi−Al合金材(溶解・加工材)に1000〜1500℃の温度で2時間以上の熱処理を施し、Ti−Al合金を再結晶化させる。再結晶化のための熱処理温度は、結晶粒の粗大化を抑制する上で1000〜1500℃の範囲とすることが好ましい。そして、熱処理後のTi−Al合金材を所望のターゲット形状に機械加工した後、Al、Cu、もしくはこれらの合金などからなるバッキングプレートと接合することによって、目的とするスパッタリングターゲット(Ti−Al合金ターゲット)が得られる。
すなわち、溶解・加工材からなるターゲット素材を用いた上で、熱間加工時のワレやカケなどの発生を抑制することができるため、Ti−Al合金ターゲットの製造歩留りを大幅に高めることが可能となる。さらには、CuやAgの含有量を十分に低減すると共に、それらの含有量のばらつきを抑制したTi−Al合金ターゲットを再現性よく得ることができる。バッキングプレートとの接合には、前述した方法が適用される。
なお、本発明のスパッタリングターゲット(Ti−Al合金ターゲット)中の上述した各元素以外の不純物元素については、一般的な高純度金属材のレベル程度であれは多少含んでいてもよい。Ti−Al合金ターゲットの純度は、[100−(Fe,Ni,Cr,Na,K,U,Thの合計含有量)]×100(%)で表される純度が99.9%以上であることが好ましい。
本発明のスパッタリングターゲット(Ti−Al合金ターゲット)は、例えばTi−Al−N膜(Ti1-xAlxN膜(0.05≦x≦0.5))の成膜に用いられるものである。このようなTi−Al−N膜は、本発明のTi−Al合金ターゲットを用いて、例えばArとN2の混合ガス中で反応性スパッタを行うことで得ることができる。得られるTi−Al−N膜は拡散防止層としての特性に優れると共に、ダストの混入数も大幅に低減されたものとなる。すなわち、本発明のTi−Al合金ターゲットを用いることによって、特性および品質に優れる拡散防止層(Ti−Al−N膜)を歩留りよく得ることができる。
上述したTi−Al−N膜は、酸素をはじめとする各種元素に対するバリア特性、特に高温下でのバリア特性に優れ、かつ抵抗率が200μΩ・cm以下というような低抵抗を有する。従って、このようなTi−Al−N膜を半導体基板と各種素子との間の拡散防止層として用いることによって、例えば高温アニール(例えば600℃以上)による酸素や他の元素の相互拡散を防ぐことができる。また、Ti−Al−N膜自体の酸化も防ぐことができるため、素子構成層との界面での付着力の低下を抑えることが可能となる。すなわち、素子構成層の剥がれなどを抑制することができる。
上述したTi−Al−N膜は、半導体基板に対する拡散防止層として好適である。具体的には、スイッチ用トランジスタを形成した半導体基板とペロブスカイト型酸化物からなる誘電体薄膜を用いた薄膜キャパシタ(メモリセル)とを組合せた、FeRAMやDRAMなどの半導体メモリに対して特に有効である。
図1は本発明のTi−Al合金ターゲットを用いて成膜したTi−Al−N膜を拡散防止層として具備する電子部品(FeRAMやDRAMなどの半導体メモリ)の一構成例を示す断面図である。同図において、1は図示を省略したスイッチ用トランジスタが形成された半導体基板(Si基板)であり、図示しないスイッチ用トランジスタに電気的に接続されたWプラグ2を有している。この半導体基板1上には拡散防止層として、上述した本発明のスパッタリングターゲットを用いて形成したTi−Al−N膜3が形成されており、さらにその上に薄膜キャパシタ4が形成されている。
薄膜キャパシタ4は、Ti−Al−N膜3上に順に形成された下部電極5、誘電体薄膜6および上部電極7を有している。下部電極5には、Pt、Au、Pd、Ir、Rh、Re、Ruなどの貴金属、およびそれらの合金(Pt−RhやPt−Ruなど)、あるいはSrRuO3、CaRuO3、BaRuO3およびこれらの固溶系(例えば(Ba,Sr)RuO3や(Sr,Ca)RuO3)などの導電性ペロブスカイト型酸化物が使用される。上部電極7の構成材料は特に限定されるものではないが、下部電極5と同様に貴金属(合金を含む)や導電性ペロブスカイト型酸化物などを使用することが好ましい。
誘電体薄膜6としては、ペロブスカイト型結晶構造を有する誘電性材料が好適である。このような誘電性材料としては、ABO3で表されるペロブスカイト型酸化物が挙げられる。特に、チタン酸バリウム(BaTiO3(BTO))や、このBTOのAサイト元素(Ba)の一部をSrやCaなどの元素で置換したり、またBサイト元素(Ti)の一部をZr、Hf、Snなどの元素で置換したペロブスカイト型酸化物(BSTOなど)が好ましく用いられる。
なお、誘電体薄膜6にはBTOやBSTO以外のペロブスカイト型酸化物、例えばSrTiO3、CaTiO3、BaSnO3、BaZrO3などの単純ぺロブスカイト型酸化物、Ba(Mg1/3Nb2/3)O3、Ba(Mg1/3Ta2/3)O3などの複合ぺロブスカイト型酸化物、およびこれらの固溶系などを適用することも可能である。ぺロブスカイト型酸化物の組成については、化学量論比からの多少のずれは許容されることは言うまでもない。
このような半導体メモリにおいては、バリア特性および耐酸化性に優れるTi−Al−N膜3からなる拡散防止層によって、半導体基板1上にその特性を低下させることなく薄膜キャパシタ4を良好に形成することができる。特に、薄膜キャパシタ4の下部電極5とTi−Al−N膜3との間の剥離、またTi−Al−N膜3とWプラグ2との間の剥離などを良好に抑制することができる。Ti−Al−N膜3の膜厚は、拡散防止効果が得られる範囲内で薄い方がよく、具体的には10〜50nmの範囲とすることが好ましい。
次に、本発明の具体的な実施例およびその評価結果について説明する。
実施例1
まず、4N5のTi材と4NのAl材を用意し、これらをTi−30原子%Al組成の配合となるように秤量した。次いで、これらを1×10-2Pa以下の真空中で真空アーク溶解法により溶解し、直径80mmのTi−Al合金インゴットを作製した。このTi−Al合金インゴットを直径70mm×長さ100mmの電極材に加工した後、この電極材を用いて回転電極法(回転数:8000rpm以上)によって、平均粒子径が300μmのTi−Al合金粉末を作製した。
次に、上記したTi−Al合金粉末を内径130mmのカーボンモールドに充填し、ホットプレス装置を用いて焼結した。ホットプレス焼結は、真空中にて1200℃×5時間、昇温速度10℃/min、圧力25MPaの条件下で実施した。このようにして得たTi−Al合金の焼結体を機械加工した後、Al製バッキングプレートとろう付け接合し、さらに機械加工を施すことによって、直径127mm×厚さ5mmのTi−Al合金ターゲットを得た。
このようにして得たTi−Al合金ターゲットの酸素、窒素、炭素の各含有量とそれらのばらつき、Mg、Mn、Siの各含有量とそれらのばらつきを測定した。測定方法は前述した通りである。測定装置は、酸素および窒素についてはLECO社製TC−436、炭素についてはLECO社製CS444、Mg、MnおよびSiについてはセイコー電子工業社製SPS−1200Aを用いた。さらに、Ti−Al合金ターゲットの平均結晶粒径とそのばらつきを測定、評価した。測定方法は前述した通りである。これらの結果を表1および表2に示す。そして、このTi−Al合金ターゲットを後述する特性評価に供した。
実施例2
まず、3N5のTi材と4NのAl材を用意し、これらをTi−45原子%Al組成の配合となるように秤量した。次いで、これらを1×10-2Pa以下の真空中でコールドクルーシブ法により溶解し、直径80mmのTi−Al合金インゴットを作製した。このTi−Al合金インゴットを直径70mm×長さ100mmの電極材に加工した後、この電極材を用いて回転電極法(回転数:10000rpm以上)によって、平均粒子径が150μmのTi−Al合金粉末を作製した。
次に、上記したTi−Al合金粉末を内径130mmのカーボンモールドに充填し、ホットプレス装置を用いて焼結した。ホットプレス焼結は、真空中にて1400℃×5時間、昇温速度10℃/min、圧力30MPaの条件下で実施した。このようにして得たTi−Al合金の焼結体を機械加工した後、Al製バッキングプレートとろう付け接合し、さらに機械加工を施すことによって、直径127mm×厚さ5mmのTi−Al合金ターゲットを得た。
このようにして得たTi−Al合金ターゲットの酸素、窒素、炭素の各含有量とそれらのばらつき、Mg、Mn、Siの各含有量とそれらのばらつきを測定した。測定方法は前述した通りである。さらに、Ti−Al合金ターゲットの平均結晶粒径とそのばらつきを測定、評価した。測定方法は前述した通りである。これらの結果を表1および表2に示す。そして、このTi−Al合金ターゲットを後述する特性評価に供した。
実施例3
まず、2N5のTi材と3NのAl材を用意し、これらをTi−35原子%Al組成の配合となるように秤量した。次いで、これらを1×10-2Pa以下の真空中で真空アーク溶解法により溶解し、直径80mmのTi−Al合金インゴットを作製した。このTi−Al合金インゴットを直径70mm×長さ100mmの電極材に加工した後、この電極材を用いて回転電極法(回転数:5000rpm以上)によって、平均粒径が450μmのTi−Al合金粉末を作製した。
次に、上記したTi−Al合金粉末を内径130mmのカーボンモールドに充填し、ホットプレス装置を用いて焼結した。ホットプレス焼結は、真空中にて1700℃×5時間、昇温速度10℃/min、圧力25MPaの条件下で実施した。このようにして得たTi−Al合金の焼結体を機械加工した後、Al製バッキングプレートとろう付け接合し、さらに機械加工を施すことによって、直径127mm×厚さ5mmのTi−Al合金ターゲットを得た。
このようにして得たTi−Al合金ターゲットの酸素、窒素、炭素の各含有量とそれらのばらつき、Mg、Mn、Siの各含有量とそれらのばらつきを測定した。測定方法は前述した通りである。さらに、Ti−Al合金ターゲットの平均結晶粒径とそのばらつきを測定、評価した。測定方法は前述した通りである。これらの結果を表1および表2に示す。そして、このTi−Al合金ターゲットを後述する特性評価に供した。
比較例1
まず、粉末冶金法によりTi−30原子%Al組成のTi−Al合金材を作製した。このTi−Al合金材を機械加工した後、Al製バッキングプレートとろう付け接合し、さらに機械加工を施すことによって、直径127mm×厚さ5mmのTi−Al合金ターゲットを得た。
このようにして得たTi−Al合金ターゲットの酸素、窒素、炭素の各含有量とそれらのばらつき、Mg、Mn、Siの各含有量とそれらのばらつきを測定した。測定方法は前述した通りである。さらに、Ti−Al合金ターゲットの平均結晶粒径とそのばらつきを測定、評価した。測定方法は前述した通りである。これらの結果を表1および表2に示す。そして、このTi−Al合金ターゲットを後述する特性評価に供した。
上述した実施例1〜3および比較例1による各Ti−Al合金ターゲットをそれぞれ用いて、4インチのSi基板上に反応性スパッタによりTi−Al−N膜を100nmの厚さで成膜した。スパッタガスにはAr10sccmとN220sccmの混合ガスを用い、またスパッタ条件は基板−ターゲット間距離:150mm、背圧:1×10-5Pa、DC出力:2kW、スパッタ時間:10minとした。このような条件下でスパッタ成膜した際のアーク発生回数、および得られた各Ti−Al−N膜の膜厚均一性とダスト数を測定、評価した。
アーク発生回数はマイクロアークカウンタを使用して測定した。ダスト数はダスト測定器WM3を用いて測定した。また、Ti−Al−N膜の膜厚均一性については、基板直径に対して端部から5mm間隔で膜厚を被覆段差計を用いて測定し、これらの値の最大値と最小値とから、[(最大膜厚−最小膜厚)/(最大膜厚+最小膜厚)×100(%)]の式に基づいて膜厚均一性を求めた。これらの結果を表3に示す。なお、各測定値は3枚のSi基板にスパッタ成膜した際の平均値である。
表3から明らかなように、実施例1〜3によるTi−Al合金ターゲットは、いずれもアーク発生回数が少なく、またダストの発生数も比較例1に比べて大幅に低減されていることが分かる。また、実施例1〜3によるTi−Al合金ターゲットを用いて成膜したTi−Al−N膜は、いずれも膜厚の面内均一性に優れていることが分かる。
実施例4、比較例2
まず、Fe、Ni、Cr、CuおよびAgの各含有量を変化させた7種類のTi−Al合金インゴット(Ti−10原子%Al組成)を用意した。これらのTi−Al合金インゴットは、Ti材のEB溶解の回数やAl材のゾーンリファイニングの回数などを変化させることにより調整したものである。
次に、これらTi−Al合金インゴットに対して1100℃×3hrの熱処理を施した後、連続して熱間鍛造を行った。この後、再結晶化のために1100℃×2hrの条件で熱処理を施して、それぞれターゲット素材としてのTi−Al合金材を作製した。これら各ターゲット素材を機械加工した後、Al製バッキングプレートとろう付け接合し、さらに機械加工を施すことによって、直径300mm×厚さ5mmのTi−Al合金ターゲットをそれぞれ得た。
このようにして得た各Ti−Al合金ターゲットを用いて、実施例1と同一条件下でTi−Al−N膜をスパッタ成膜した。そして、このスパッタ成膜時におけるアーク発生回数と得られた各Ti−Al−N膜のダスト数を、実施例1と同様にして測定、評価した。これらの結果を表4に併せて示す。なお、各測定値は10枚のSi基板にスパッタ成膜した際の平均値である。
表4から明らかなように、Cu含有量およびAg含有量が共に少ないTi−Al合金ターゲット(試料1〜5)は、いずれもアーク発生回数が少なく、またダストの発生数もCu含有量やAg含有量が多いTi−Al合金ターゲット(試料6〜7)に比べて大幅に低減されていることが分かる。
実施例5、比較例3
まず、CuおよびAgの含有量が異なる6種類のTi−Al合金インゴット(Ti−20原子%Al組成)を用意した。これらのTi−Al合金インゴットは、Ti材のEB溶解の回数やAl材のゾーンリファイニングの回数、さらにるつぼの材質などを変化させることにより調整したものである。また、必要に応じてCuやAgを添加して含有量やばらつきを調整した。
次に、これらTi−Al合金インゴットに対して1100℃×3hrの熱処理を施した後、連続して熱間鍛造を行った。この後、再結晶化のために1100℃×2hrの条件で熱処理を施して、それぞれターゲット素材としてのTi−Al合金材を作製した。これら各ターゲット素材を機械加工した後、Al製バッキングプレートとろう付け接合し、さらに機械加工を施すことによって、直径300mm×厚さ5mmのTi−Al合金ターゲットをそれぞれ得た。
このようにして得た各Ti−Al合金ターゲットのCu、Agの各含有量とそれらのばらつきを測定した。測定方法は前述した通りである。次に、各Ti−Al合金ターゲットを用いて、実施例1と同一条件下でTi−Al−N膜をスパッタ成膜した。そして、スパッタ成膜時におけるアーク発生回数と得られた各Ti−Al−N膜のダスト数および膜厚の面内均一性を、実施例1と同様にして測定、評価した。これらの測定、評価結果を表5に示す。なお、各評価結果は10枚のSi基板にスパッタ成膜した際の平均値である。
表5から明らかなように、Cu含有量およびAg含有量が共に少ないと共に、それらのばらつきが小さいTi−Al合金ターゲットによれば、ダストの発生数を低減することが可能であると共に、膜厚の面内均一性に優れるTi−Al−N膜が再現性よく得られることが分かる。
実施例6、比較例4
まず、数種の純度が異なる針状Ti(3N材、3N5材、4N材)と4NのAl材を用意した。Ti材については、用意した針状TiのEB溶解の回数を変化させ、数種類のTi鋳塊を作製した。このようなTi材とAl材をTi−10原子%Al組成の配合となるように秤量した。次いで、これらを1×10-2Pa以下の真空中でコールドクルーシブ法により溶解し、Ti−Al合金インゴットを作製した。
次に、これらTi−Al合金インゴットに対して1100℃×3hrの熱処理を施した後、連続して熱間鍛造を行った。熱間鍛造後に、合金材のワレおよびカケの状態を目視で確認、評価した。ワレおよびカケの評価結果は、10〜30mmのワレやカケがあるものを×、1〜10mmのワレやカケがあるものを△、ワレやカケが1mm以下のものを○として表6に示した。さらに、熱間鍛造後のTi−Al合金素材の重量測定を行った。
外観を確認したTi−Al合金材に1100℃×2hrの条件で熱処理(再結晶化熱処理)を施した後、機械加工を行うことによって、直径300mm×厚さ10mmのTi−Al合金ターゲットをそれぞれ得た。このようにして得た各Ti−Al合金ターゲットの重量を測定した。そして、ターゲット重量とインゴット重量から、ターゲット歩留り(ターゲット重量/インゴット重量×100%)をそれぞれ求めた。これらの結果を表6に示す。
表6から明らかなように、Zr含有量およびHf含有量を本発明の範囲内としたTi−Al合金ターゲットは、いずれも熱間加工時にワレやカケの発生が少なく、その結果としてターゲット歩留りが高いことが分かる。