以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態による光学ドライブ装置1の模式図である。
光学ドライブ装置1は、光ディスク11の再生及び記録の少なくとも一方を行う。光ディスク11としてはCD、DVD、BD等の各種光記録媒体を用いることができるが、本実施の形態では特に、多層膜によって多層化された記録面を有する円盤状の光ディスク(多層光ディスク)を用いる。
図1に示すように、光学ドライブ装置1は、レーザ光源2、光学系3、対物レンズ4、光検出器5、及び処理部6を備えて構成される。これらのうち、レーザ光源2、光学系3、対物レンズ4、及び光検出器5は光ピックアップを構成する。
光検出器5の受光面には、図1に示すように、ガラス30を挟んで偏光変換光学素子31が固着されている。これにより、偏光変換光学素子31は、センサレンズ25とその合焦点(後述)の間に配置される。これらは本発明の特徴をなす部分であるが、以下では、まず初めにその他の構成について説明することとし、ガラス30及び偏光変換光学素子31については、後ほど別途まとめて説明する。
光学系3は、回折格子21、ビームスプリッタ22、コリメータレンズ23、1/4波長板24、センサレンズ(非点収差光学素子。シリンドリカルレンズ)25を有している。光学系3は、レーザ光源2が発生した光ビームを光ディスク11に導く往路光学系として機能するとともに、光ディスク11で反射した光ビームである反射光ビームを光検出器5に導く復路光学系としても機能する。
往路光学系では、回折格子21は、レーザ光源2が発した光ビームを3ビーム(0次回折光及び±1次回折光)に分解しS偏光としてビームスプリッタ22に入射させる。ビームスプリッタ22は、入射されたS偏光を反射して、その進路を光ディスク11方向に折り曲げる。コリメータレンズ23は、ビームスプリッタ22から入射される光ビームを平行光とする。1/4波長板24は、コリメータレンズ23を通過した光ビームを円偏光とする。1/4波長板24を通過した光ビームは対物レンズ4に入射する。
対物レンズ4は、コリメータレンズ23とともに、レーザ光源2が発生した光ビームを、光ディスク11の複数の記録層のうちのアクセス対象層に集光させるとともに、光ディスク11で反射した反射光ビームを光検出器5に集光させるレンズ系を構成する。具体的には、対物レンズ4は、光学系3から入射される光ビーム(コリメータレンズ23を通過して平行光となった光ビーム)を光ディスク11上に集光させ、光ディスク11の記録面で反射してきた反射光ビームを平行光に戻す。平行光に戻された反射光ビームは、コリメータレンズ23を通過することによって、光検出器5に集光する。
ここで、反射光ビームは記録面のランド・グループで回折されており、0次回折光及び±1次回折光に分解されている。この0次回折光及び±1次回折光は、回折格子21により生ずる0次回折光及び±1次回折光とは異なるものである。、紛らわしいので、本明細書では、回折格子21により分解された0次回折光,+1次回折光,−1次回折光をそれぞれメインビームMB,サブビームSB1,サブビームSB2と称し、0次回折光及び±1次回折光という場合には記録面のランド・グループでの回折によって生じた回折光を指すことにする。メインビームMB,サブビームSB1,サブビームSB2は、それぞれ独立して反射光ビームを生ずる。
復路光学系では、対物レンズ4を通過し、1/4波長板24を往復することによりP偏光となった反射光ビームがコリメータレンズ23に入射する。コリメータレンズ23を通過した反射光ビームは、集光しつつビームスプリッタ22に入射する。ビームスプリッタ22は、入射してきた反射光ビームを透過してセンサレンズ25(シリンドリカルレンズ)に入射させる。センサレンズ25は、ビームスプリッタ22から入射された反射光ビームに非点収差を付与する。非点収差を付与された反射光ビームは光検出器5に入射する。
図2はセンサレンズ25によって付与される非点収差の説明図である。同図に示すように、センサレンズ25は一方方向(同図MY軸方向=子線方向。)にのみレンズ効果を有している。そのため、図1に示したコリメータレンズ23とセンサレンズ25によって構成される光学系の焦点の位置は、MY軸方向と、MY軸方向に垂直な方向であるMX軸方向(母線方向)とで異なっている。
MY軸方向の焦点が合う位置を、図2に示すように「前側焦線位置」という。この位置における反射光ビームの断面形状は、MX軸方向に細長い長方形状となる。同様に、MX軸方向の焦点が合う位置を「後側焦線位置」という。この位置における反射光ビームの断面形状は、MY軸方向に細長い長方形状となる。なお、MY軸方向とMX軸方向の反射光ビームの長さが等しい点を「合焦点」という。
光学ドライブ装置1では、焦点を合わせようとする層(アクセス対象層)で反射した反射光ビーム(信号光成分)の合焦点がちょうど光検出器5上に位置するようにするための、対物レンズ4の位置制御が行われる(フォーカスサーボ)。逆に言えば、アクセス対象層以外の記録層で反射した光ビーム(迷光成分)の合焦点は光検出器5上に位置しないこととなり、迷光成分が光検出器5上に形成するスポット(迷光スポット)は、信号光成分が光検出器5上に形成するスポット(信号光スポット)に比べ、大きく広がった形状を有することとなる。
図1に戻る。光検出器5は、光学系3から出射される反射光ビームの光路に交差する平面上に設置される。光検出器5は3つの受光面を備えており、各受光面はそれぞれ所定数の受光領域に分割されている。光検出器5は、この受光領域ごとに、光ビームの強度を受光面で面積分して得られる値(受光量)の振幅を有する信号を出力するよう構成される。
図3は、光検出器5の上面図である。同図には、各反射光ビームの信号光スポットも示している。同図に示すように、光検出器5は、いずれも正方形である受光面5a〜5cを有している。受光面5a〜5cは、それぞれメインビームMB、サブビームSB1、サブビームSB2を受光する目的で設けられているもので、それぞれ対応する反射光ビームの信号光スポットが形成される場所に配置されている。
受光面5a〜5cは、図3に示すように、それぞれいずれも正方形である4つの受光領域に分割されている。具体的には、それぞれ左上から反時計回りに、受光面5aは4つの受光領域A〜Dに、受光面5bは4つの受光領域E1〜E4に、受光面5cは4つの受光領域F1〜F4に、4分割されている。光学ドライブ装置1では、これらの受光領域を適宜組み合わせて用いることで、フォーカス誤差信号FE、全加算信号(プルイン信号PI、RF信号RF)、トラッキング誤差信号TEなどの各種信号を生成することが可能となっている。
図1に戻る。処理部6は、一例として多チャンネル分のアナログ信号をデジタルデータに変換するA/D変換機能を備えたDSP(Digital Signal Processor)で構成されており、光検出器5の出力信号を受け付けて、フォーカス誤差信号FE、全加算信号(プルイン信号PI、RF信号RF)、トラッキング誤差信号TEを生成する。
処理部6による各信号の具体的な生成方法について、簡単に説明しておく。以下の説明において、IXは受光領域Xの受光量を示す。
フォーカス誤差信号FEは、次の式(1)又は式(2)により生成することが好適である。ただし、kは定数である。式(1)は1ビーム法による非点収差法を表し、式(2)は3ビーム法による非点収差法(差動非点収差法)を表している。
トラッキング誤差信号TEは、次の式(3)乃至式(5)により生成することが好適である。ただし、kは定数である。式(3)乃至式(5)は、差動プッシュプル法を表している。他に、位相差検出法を用いてトラッキング誤差信号TEを生成してもよい。
ここで、信号光と迷光の干渉分は、各受光領域の受光量に影響する。したがって、信号光と迷光の干渉が発生すると、式(4)や式(5)の右辺各項が変化し、トラックキング誤差信号にオフセットが生ずる原因となる。本発明では、信号光と迷光の干渉の発生を抑制することで、トラックキング誤差信号に生ずるオフセットを低減する。
プルイン信号PI及びRF信号RFは、全加算信号であるので、次の式(6)のように受光面5aのすべての受光領域の受光量を加算することによって生成できる。
図1に戻る。CPU7はコンピュータやDVDレコーダー等に内臓される処理装置であり、図示しないインターフェイスを介し、処理部6に対して光ディスク11上のアクセス位置を特定するための指示信号を送信する。この指示信号を受信した処理部6は、フォーカスサーボ及びトラッキングサーボを行う。フォーカスサーボは、フォーカス誤差信号FEがゼロとなる位置まで対物レンズ4を光ディスク11の表面に垂直に移動させることにより、アクセス対象層の表面に焦点を合わせる処理である。トラッキングサーボは、トラッキング誤差信号TEがゼロとなる位置まで対物レンズ4を光ディスク11の表面に平行に移動させる(この移動を「レンズシフト」という)ことにより、トラックオン状態を実現する処理である。トラッキングサーボは、フォーカスサーボオンの状態(信号光成分の合焦点が光検出器5の受光面上にある状態)で実行される。トラックオン状態になると、CPU7は処理部6が生成するRF信号RFをデータ信号として取得する。
さて、ここからガラス30及び偏光変換光学素子31の構成及び機能について説明する。
図4(a)は、光検出器5の近傍を拡大して描いた図である。同図には、図1には明示していなかった基板40も記載している。
図4(a)にも示すように、光検出器5のおもて面(受光面5a〜5cが設けられる表面)にはガラス30を挟んで偏光変換光学素子31が固着され、これにより、これらは一体に構成される。ガラス30の厚みDは、ガラス30の屈折率を考慮して、フォーカスサーボオンのとき(信号光成分の合焦点が光検出器5の受光面上にあるとき)の信号光成分の合焦点と前側焦線位置の間の距離に等しくなるよう設定される。以下では、単に前側焦線位置という場合、フォーカスサーボオンのときの信号光成分の前側焦線位置を指すことにする。ガラス30の厚みDを上記のように設定することにより、偏光変換光学素子31は前側焦線位置に配置されることになる。
なお、偏光変換光学素子31は、上述のように前側焦線位置に配置することが好ましいが、必ずしも前側焦線位置と完全に一致していなければならないわけではない。偏光変換光学素子31の具体的な配置は、信号光と迷光の干渉を抑制するという本発明の目的が果たされる範囲で、任意に決定してよい。
受光面5a〜5cの各受光領域は、光検出器5を貫通する貫通電極THと、光検出器5のうら面に設けられたバンプBPを介して、基板40の表面に形成された配線パターン(不図示)に接続される。各受光領域の受光量を示す信号(光検出器5の出力信号)は、このルートを通じて基板40に伝達される。
参考として、背景技術による光学ドライブ装置の例を挙げておく。図4(b)は、背景技術による光学ドライブ装置の光検出器5の近傍を、図4(a)と同様に描いた図である。同図に示すように、背景技術では、ボンディングワイヤーWB及び基板40に設けられたボンディングパッドPを用いて、光検出器5の出力信号を基板40に伝達している。しかし、本実施の形態では、ガラス30が存在するためにこのようなボンディングワイヤーWBの利用ができないことから、上述したように、貫通電極THを用いて光検出器5の出力信号を基板40に伝達している。
偏光変換光学素子31は、通過する光ビームの偏光方向を変換する素子であり、具体的には、P偏光をS偏光に変換する機能又はS偏光をP偏光に変換する機能のいずれか少なくとも一方を有する。例えば、1/2波長板を偏光変換光学素子31として好適に用いることができる。本実施の形態では、光学系3から光検出器5に向けて射出される反射光ビームは、信号光成分、迷光成分ともにP偏光となっている。反射光ビームが偏光変換光学素子31を通過すると、通過した部分の偏光方向はS偏光に変化する。
図5(a)(b)はそれぞれ、本実施の形態による光学ドライブ装置における、前側焦線位置及び合焦点の平面図である。図5(a)には、メインビームMB、サブビームSB1,SB2それぞれの信号光成分と、メインビームMBの迷光成分(MMBと記す)とについて、前側焦線位置における断面形状を記載している。また、図5(b)には、メインビームMB、サブビームSB1,SB2それぞれの信号光成分が光検出器5上に形成するスポット(信号光スポット)と、メインビームMBの迷光成分MMBが光検出器5上に形成するスポット(迷光スポット)とを記載している。両図では、これら断面形状及びスポットにハッチングを施し、このハッチングにより各成分の偏光方向を表している。ハッチングと偏光方向の具体的な対応関係は、図中に示したとおりである。
図5(a)に示すように、前側焦線位置には偏光変換光学素子31が配置される。偏光変換光学素子31の具体的な位置及び形状は、信号光スポットの少なくとも一部の領域、好ましくは全部の領域に関して、信号光成分の偏光方向と迷光成分の偏光方向とが異なるよう設定される。こうすることで、信号光と迷光の干渉が抑制され、トラックキング誤差信号に生ずるオフセットを低減することが可能になるからである。
図5(a)には、信号光スポットの全部の領域で信号光成分の偏光方向と迷光成分の偏光方向とが異なるように設定した、偏光変換光学素子31の形状の具体的な例を開示している。なお、本実施の形態による偏光変換光学素子31は、図5(a)に示すように、メインビームMB、サブビームSB1,SB2それぞれに対応する1/2波長板31a,31b,31cからなる。1/2波長板31a,31b,31cは、それぞれ対応する反射光ビームが異なるだけで、対応する反射光ビームに対する配置の関係は同様であるので、以下では1/2波長板31aを例にとって説明する。
前側焦線位置でのメインビームMBの信号光成分の断面形状は、図5(a)に示すように、長方形状である。その短手方向の中心線Cを受光面5aに投影すると、正方形である受光面5aの一方対角線に一致する直線D(図5(b))となる。受光面5aの直線Dの一方側の領域を逆に前側焦線位置に投影すると、前側焦線位置に直角二等辺三角形の領域が得られる。1/2波長板31aは、この直角二等辺三角形の領域に形状及び位置がともに等しい直角二等辺三角形の1/2波長板である。
以上のような1/2波長板31aを用いると、前側焦線位置でのメインビームMBの信号光成分の断面形状のうち短手方向の半分(中心線Cを挟んで一方側の領域)が、図5(a)に示すように、1/2波長板31aを通過することになる。
信号光成分は、中心線C又は直線Dを挟んで、前側焦線位置と受光面とでは、領域が入れ替わるという性質を有している。つまり、前側焦線位置で中心線Cの一方側の領域(図面右上側の領域)を通過する信号光成分は、受光面5aでは、直線Dの他方側の領域(図面左下側の領域)に照射される。一方、前側焦線位置で中心線Cの他方側(図面左下側の領域)を通過する信号光成分は、受光面5aでは、直線Dの一方側の領域(図面右上側の領域)に照射される。したがって、1/2波長板31aを上記のように配置することで、図5(b)に示すように、信号光スポットのうち直線Dの他方側の領域(図面左下側の領域)がS偏光、直線Dの一方側の領域(図面右上側の領域)がP偏光となる。
これに対し、焦点の合っていない反射光ビームである迷光成分MMBでは、信号光成分のような領域の入れ替えが発生しない。また、迷光成分MMBはほぼ平行光であると考えてよいので、前側焦線位置での迷光成分MMBの断面形状と、光検出器5上に形成される迷光スポットの形状とは、ほぼ同一になる。したがって、迷光スポットのうちS偏光となるのは、受光面5aの直線Dの一方側の領域(図面右上側の領域)に照射される部分となる。
このように、信号光スポットは、直線Dを挟んで、受光面5aの一方側の領域でP偏光となり、他方側の領域でS偏光となる。一方、迷光スポットは、直線Dを挟んで、受光面5aの一方側の領域でS偏光となり、他方側の領域でP偏光となる。したがって、本実施の形態では、信号光スポットの全部の領域で信号光成分の偏光方向と迷光成分の偏光方向とが異なっており、信号光と迷光の干渉が抑制されている。
なお、ここでは、上述のように、1/2波長板31a,31b,31cの形状を直角二等辺三角形としているが、光学ビームと光検出器5の間の位置ずれやレンズシフトがある場合に信号光が受光面に対してシフトする範囲をカバーできる形状であれば、直角二等辺三角形以外の形状であっても採用できる。
以上説明したように、本実施の形態による光学ドライブ装置1によれば、信号光と迷光の干渉が抑制される。したがって、トラックキング誤差信号に生ずるオフセットを低減することが可能になる。
なお、例えば対物レンズ4の開口数が0.85、復路光学倍率が15倍であるとすると、前側焦線位置での各ビームの信号光成分の断面形状の幅(短手方向の長さ)は約5μmである。したがって、ガラス30上に偏光変換光学素子31を配置するにあたっては、半導体プロセス並みの高い精度で実施する必要がある。例えば、偏光変換光学素子31として薄膜1/2波長板を用い、図4(a)に示した基板40上に他の半導体部品を形成するのと同時に、蒸着法によってガラス30上に偏光変換光学素子31を形成することが好適である。
ここまでは、光学ビームと光検出器5の間の位置ずれがない理想的な場合について説明したが、実際には、製造時の組み付け精度誤差に起因する位置ずれや、トラッキングサーボに起因するレンズシフトなどによって、光学ビームと光検出器5の間に位置ずれが発生する。以下では、このような位置ずれが発生する場合の例を2つ挙げて、そのような場合であっても本発明の効果が得られることを説明する。
図6(a)(b)はそれぞれ、組み付け精度誤差に起因する位置ずれが発生している場合の前側焦線位置及び合焦点の平面図である。同図には、信号光成分が完全に偏光変換光学素子31を通過しなくなった例を示している。この例では、同図に示すように、光検出器5上に形成される信号光スポットの位置も、対応する受光面の中心からずれている。また、信号光スポットの偏光方向は、すべての領域でP偏光のままである。
光検出器5と偏光変換光学素子31の間で位置ずれが発生しているわけではないので、迷光スポットは、図5(a)(b)で説明したものと同様、受光面5aのうち直線Dの一方側の領域(図面右上側の領域)に照射される部分がS偏光、その他の部分がP偏光となっている。
この例においても、図6(b)に示すように、P偏光である信号光スポットと、迷光スポットのうちS偏光である部分との重なりが少しはあるので、少なくともこの部分においては、信号光と迷光の干渉を抑制できる。
このように、光学ドライブ装置1によれば、組み付け精度誤差に起因する位置ずれが発生している場合であっても、信号光と迷光の干渉を、少なくとも信号光スポット内の一部の領域では抑制できる。したがって、大きくはないものの、トラックキング誤差信号に生ずるオフセットの低減という効果を得ることが可能になっている。
次に、図7(a)(b)はそれぞれ、トラッキングサーボに起因してレンズシフトが発生している場合の前側焦線位置及び合焦点の平面図である。レンズシフトが発生している場合、前側焦線位置での信号光成分の断面形状は、その長手方向(図示した方向A)に移動する。移動の量はそれほど大きくはならないので、中心線Cを挟んで一方側の領域が偏光変換光学素子31を通過する、という状態はレンズシフト発生時にも維持される。
光検出器5上では、レンズシフトが発生している場合の信号光スポットの移動方向は、上下方向(図示した方向B)である。迷光スポットも移動するが、その移動方向は信号光スポットとは異なる。
図8は、受光面5aを拡大した図である。同図に示すように、この例では、信号光スポットがB方向に移動した結果、信号光スポットのS偏光となっている部分の一部が、迷光スポットがS偏光となっている領域に食い込んでしまっている(図示した部分X)。このため、この食い込み部分では信号光と迷光の干渉を抑制する効果は働かないが、その他の部分では上述した通りに抑制効果が得られる。
このように、光学ドライブ装置1によれば、トラッキングサーボに起因してレンズシフトが発生している場合であっても、信号光と迷光の干渉を、信号光スポット内のほとんどの領域で抑制できる。したがって、完全ではないものの、トラックキング誤差信号に生ずるオフセットの低減という効果を得ることが可能になっている。
なお、図7(b)から明らかなように、レンズシフトに伴う信号光と迷光の干渉はメインビームMB、サブビームSB1,SB2のそれぞれで発生するが、トラッキング誤差信号TEに及ぼす影響という観点からは、このうちサブビームSB1,SB2での干渉成分が支配的である。したがって、レンズシフトに伴ってトラックキング誤差信号に生ずるオフセットを低減するためには、サブビームSB1,SB2での干渉成分を低減することが特に重要である。この点、光学ドライブ装置1によれば、サブビームSB1,SB2についても信号光スポット内のほとんどの領域で信号光と迷光の干渉を抑制できるので、レンズシフトに伴ってトラックキング誤差信号に生ずるオフセットを効果的に低減することが可能になっている。以下、詳しく説明する。
まず、サブビームSB1,SB2での干渉成分は、レンズシフトの有無によらず、トラッキング誤差信号TEに対し、メインビームMBでの干渉成分に比べてk倍の影響を与えている。これは、式(3)に示したように、トラッキング誤差信号TEの算出の際にサブビームSB1,SB2の受光量をk倍(k>1)していることによるものである。
そして、レンズシフトが発生すると、サブビームSB1,SB2での干渉成分が増大する。これは、レンズシフトに伴って信号光スポットだけでなく迷光スポットも移動し、その結果、受光面5bと受光面5cとで干渉成分が非対称となることによるものである。したがって、レンズシフトが発生している場合、サブビームSB1,SB2での干渉成分がトラッキング誤差信号TEに対して与える影響は、さらに大きく支配的となる。光学ドライブ装置1によれば、このように支配的な影響を有するサブビームSB1,SB2での干渉成分を抑制できるので、トラックキング誤差信号に生ずるオフセットを効果的に低減することが可能になる。
図9(a)(b)はそれぞれ、本発明の第2の実施の形態による光学ドライブ装置1における、前側焦線位置及び合焦点の平面図である。図面に現れている各構成要素やハッチングの意味は図5(a)(b)と同様であるので、詳しい説明は割愛する。
本実施の形態による光学ドライブ装置1は、前側焦線位置に遮蔽板32を設けた点と、これに伴って偏光変換光学素子31の形状を変更した点で、第1の実施の形態による光学ドライブ装置1と異なっている。以下、相違点を中心に詳しく説明する。
遮蔽板32は、前側焦線位置での信号光成分の断面形状の短手方向の両外側を遮蔽するように設けられる。具体的には、図9(a)に示すように、受光面に対応する領域よりも十分に広い外周を有し、かつ信号光成分を通すための開口部32a〜32cを有する遮蔽板とすればよい。開口部32a〜32cは、信号光成分の断面形状より少し大きくすることが好ましい。
なお、図9(a)では、開口部32aの短手方向の幅を、開口部32b,32cに比べて大きくしているが、これは1ビーム法による非点収差法に対応する構成である。つまり、非点収差法によるフォーカスサーボを行うためには、合焦点だけでなく合焦点から少しずれた位置でも信号光成分を正しく受光できるようにする必要がある。そこで、合焦点から少しずれた位置で信号光成分をすべて通過させられるように、開口部32aの短手方向の幅を少し大き目に確保している。3ビーム法による非点収差法を行う場合には、開口部32b,32cの短手方向の幅も、同様に少し大き目に確保すればよい。
また、図9(a)では、開口部32a〜32cの長手方向の幅を、信号光成分の断面形状に比べて大きくしている。これは、上述したレンズシフトによる信号光成分の断面形状の移動に対応するものである。
さて、偏光変換光学素子31は、第1の実施の形態と同様、メインビームMB、サブビームSB1,SB2それぞれに対応する1/2波長板31a,31b,31cから構成される。本実施の形態でも、1/2波長板31a,31b,31cは、それぞれ対応する反射光ビームが異なるだけで、対応する反射光ビームに対する配置の関係は同様であるので、以下では1/2波長板31aを例にとって説明する。
1/2波長板31aは、第1の実施の形態と同様、前側焦線位置でのメインビームMBの信号光成分の断面形状のうち短手方向の半分(中心線Cを挟んで一方側の領域)が、当該偏光変換光学素子31を通過するように配置される。具体的には、中心線Cによって開口部32aを2つの領域に分けた場合の一方側の領域を占める1/2波長板によって、1/2波長板31aが構成される。
したがって、信号光スポットについては、第1の実施の形態と同様、図9(b)に示すように、直線Dの他方側の領域(図面では左下側の領域)がS偏光、直線Dの一方側の領域(図面では右上側の領域)がP偏光となる。
一方、迷光スポットについても、受光面5aの直線Dの一方側の領域(図面では右上側の領域)がS偏光となり、その他の部分がP偏光となるという点では第1の実施の形態と同様であるが、遮蔽板32によって大きく遮蔽されることから、図9(b)に示すように、迷光スポットが形成されない領域が多く発生する。このため、第1の実施の形態と同様に信号光と迷光の干渉が発生しなくなくなるのはもちろん、迷光の受光量そのものが減ることになる。したがって、本実施の形態では、トラックキング誤差信号に生ずるオフセットのさらなる低減が実現されている。また、第1の実施の形態と同様に、サブビームSB1,SB2についても信号光スポット内のほとんどの領域で信号光と迷光の干渉を抑制できるので、本実施の形態においても、レンズシフトに伴ってトラックキング誤差信号に生ずるオフセットが効果的に低減されている。
本実施の形態は、特に上述した「組み付け精度誤差に起因する位置ずれ」が発生している場合に、第1の実施の形態に比べて大きな効果を有する。以下、この点について説明する。
図10(a)(b)は、組み付け精度誤差に起因する位置ずれが発生している場合の前側焦線位置及び合焦点の平面図である。同図には、信号光成分が完全に偏光変換光学素子31を通過しなくなった例を示している。この例では、図6(b)に示した第1の実施の形態の場合と同様、光検出器5上に形成される信号光スポットの位置も、対応する受光面の中心からずれている。また、信号光スポットの偏光方向は、すべての領域でP偏光のままである。
迷光スポットに関しても、偏光方向の点では図6(b)に示した例と同様である。しかし一方で、遮蔽板32を設けたことにより、図10(b)に示すように、受光面の多くの部分で迷光スポットが形成されなくなっている。このため、図6(b)に示した例と比べると、明らかに信号光と迷光とが干渉する領域が減少している。すなわち、干渉領域である、迷光がP偏光となる領域は、開口部の半分の領域となるため、大幅に減少する。このことから、本実施の形態によれば、第1の実施の形態に比べ、トラックキング誤差信号に生ずるオフセットを低減することが可能になっていると言える。
図11(a)(b)はそれぞれ、本発明の第3の実施の形態による光学ドライブ装置1における、前側焦線位置及び合焦点の平面図である。図面に現れている各構成要素やハッチングの意味は図5(a)(b)と同様であるので、詳しい説明は割愛する。
本実施の形態による光学ドライブ装置1は、偏光変換光学素子31の形状及び配置を変更した点で、第1の実施の形態による光学ドライブ装置1と異なっている。以下、相違点を中心に詳しく説明する。
本実施の形態による偏光変換光学素子31は、図11(a)に示すように、前側焦線位置での信号光成分の断面形状のすべてが、当該偏光変換光学素子31と重なるよう配置される。なお、この場合の偏光変換光学素子31を構成する1/2波長板31a〜31cの具体的な位置は、第2の実施の形態で説明した開口部32a〜32cと同一のものとすることが好適である。一方、1/2波長板31a〜31cの具体的な大きさについては、図11(a)にも示すように、図9(a)に示した開口部32a〜32cより短手方向の幅を小さくすることができる。すなわち、遮蔽板32を用いる第2の実施の形態では、信号光をロスしないために、開口部32a〜32cの短手方向の幅を信号光の幅に対してある程度大きくする必要があった。これに対し、本実施の形態では信号光のロスが発生しないため、光学系と光検出器5の位置ずれを考慮しても、少なくとも遮蔽板32の開口部32a〜32cとの比較においては、偏光変換光学素子31の短手方向の幅を大幅に小さくできる。また、非点収差法にかかるメインビームMBの信号光ロスも考慮しなくてよいので、メインビームMBにかかる1/2波長板31aの短手方向の幅を、サブビームSB1,SB2にかかる1/2波長板31b,31cと同程度に小さくすることが可能になる。このように1/2波長板31a〜31cの短手方向の幅を小さくすることにより、受光面上で信号光と迷光が重なる領域を縮小できる。
偏光変換光学素子31を以上のように配置することで、図11(b)に示すように、信号光スポットはすべてS偏光となる。一方、迷光スポットは、図11(b)に示すように、偏光変換光学素子31を光検出器5上に投影した領域のみがS偏光となり、他はP偏光となる。
したがって、図11(b)に示すように、信号光スポットの中心付近では、受光面5a〜5cのいずれにおいても、信号光スポットと迷光スポットがともにS偏光となり、信号光と迷光とが干渉する。一方で、本実施の形態によれば、レンズシフト時においてもこの干渉領域の面積が変わらなくなる。つまり、第1及び第2の実施の形態に比べると、本実施の形態ではレンズシフトがある場合の干渉領域の面積をより小さくできるため、迷光の低減効果が大きくなる。
ここで、偏光変換光学素子31を構成する各1/2波長板31a〜31cの短手方向の幅は、上述したように、それほど大きくする必要はない。具体的には、5〜6μmで十分である。迷光スポットのS偏光領域の短手方向の幅もおおむねこの程度となる。
これに対し、信号光スポットの直径は約50μmである。信号光スポットの直径が50μm、迷光スポットのS偏光領域の短手方向の幅が5μmであると仮定して、干渉領域の面積(信号光スポットと迷光スポットのS偏光領域との重複領域の面積)を算出すると、約250μm2となる。信号光スポットの面積がπ×252≒1963μm2であることに鑑みると、本実施の形態では、偏光変換光学素子31を用いない背景技術に比べ、干渉領域の面積が(250/1963)×100≒13%に減少していることになる。これは、信号光と迷光の干渉も13%程度に減少していることを意味している。
本実施の形態によれば、第1及び第2の実施の形態に比べても、信号光と迷光の干渉を減少させることができる。以下、詳しく説明する。
干渉の大きさは、図8に示したXに相当するパラメータ(信号光と迷光の干渉が発生する領域の幅。以下、「干渉幅」と称する。)を用いて比較できる。レンズシフト時の信号光のシフト量が10μm程度である場合を例に取って説明すると、まず第1の実施の形態(図8)での干渉幅(=X)は、B方向の信号光スポットの移動量が10μmとなることから、10×(1/√2)=7μm程度となる。次に、第2の実施の形態(図9)での干渉幅は、対応する開口部の幅が14μm以下(対応する1/2波長板の幅が7μm以下)である場合には開口部の幅の半分に等しくなり、そうでない場合には7μmとなる。具体的な数値を挙げて説明すると、開口部32aの幅は50μm程度、開口部32b,32cの幅はそれぞれ15μm程度であるので、メインビームMB、サブビームSB1,SB2のいずれについても、干渉幅は7μm程度となる。
これらに対し、本実施の形態(図11)での干渉幅は、上述した「迷光スポットのS偏光領域の短手方向の幅」であり、約5〜6μmである。この約5〜6μmという値は、上述した第1及び第2の実施の形態いずれの場合の値よりも小さな値となっている。これは、本実施の形態では、第1及び第2の実施の形態に比べ、信号光と迷光の干渉が減少していることを意味している。
なお、第2の実施の形態に関して、例えば開口部32b,32cの幅をより小さく(14μm以下)することも考えられる。こうすれば干渉幅を小さくすることができるが、一方で信号光のロスが生じやすくなるため、光学ドライブ装置1の動作に問題が生じないよう、実際の使用環境において適宜調整を行うことが必要になる。本実施の形態では、このような信号光のロスはそもそも生じないことから、第2の実施の形態に比べて容易に、干渉幅を小さくすることが可能になっている。
このように信号光と迷光の干渉が減少していることから、本実施の形態では、第1及び第2の実施の形態に比べ、トラックキング誤差信号に生ずるオフセットをより低減することが可能になっている。また、第1及び第2の実施の形態と同様に、サブビームSB1,SB2についても信号光スポット内のほとんどの領域で信号光と迷光の干渉を抑制できることから、本実施の形態においても、レンズシフトに伴ってトラックキング誤差信号に生ずるオフセットが効果的に低減されている。
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、本発明が、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施され得ることは勿論である。