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JP5374193B2 - 曲げ加工性および疲労強度に優れた溶融亜鉛めっき鋼板または合金化溶融亜鉛めっき鋼板 - Google Patents

曲げ加工性および疲労強度に優れた溶融亜鉛めっき鋼板または合金化溶融亜鉛めっき鋼板 Download PDF

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Description

本発明は、曲げ加工性および疲労強度に優れた引張強さが780MPa以上の溶融亜鉛めっき鋼板または合金化溶融亜鉛めっき鋼板に関するものである。本発明のめっき鋼板は、例えば、自動車用構造部材(例えば、ピラー、メンバー、リインフォース類などのボディ骨格部材;バンパー、ドアガードバー、シート部品、足回り部品などの強度部材)などに好適に用いられる。
近年、自動車などの車体重量の軽量化による燃費の軽減や、衝突時の安全性確保などを目的として、溶融亜鉛めっきや合金化溶融亜鉛めっきが施された高強度めっき鋼板の需要はますます増大している。それに伴って、鋼板の引張強度に対する要望も増大しており、590MPa級の低強度めっき鋼板から780MPa級以上の高強度めっき鋼板が求められる様になっている。しかし、引張強度が780MPa級以上になると成形性の低下が避けられず、特に、曲げ加工性の低下が問題になる。曲げ加工は、曲げ方向により、圧延方向(L方向)曲げ[曲げ軸が圧延方向に直角な方向である曲げ]および板幅方向(C方向)曲げ[曲げ軸が圧延方向に平行である曲げ]に大別される。590MPa級の低強度鋼板では、いずれの曲げ加工も比較的容易に実施できるが、引張強度が高くなるにつれ、C方向の曲げ加工は困難になり、C方向に比べて曲げ加工を実施し易いといわれているL方向の曲げ加工も困難になる傾向がある。
また、高強度鋼板では、せん断加工によって素地鋼板が露出したせん断端面(せん断加工縁)の曲げ加工性に劣るという問題もある。せん断加工縁が曲げ加工を受けると、せん断加工を受けない未加工部が曲げ加工される場合に比べ、せん断加工時のボイドや加工硬化等の影響により、曲げ半径が同じであっても亀裂が発生し易くなるからである。
曲げ加工性に優れた高強度鋼板として、フェライト相と、マルテンサイトやベイナイトなどの低温変態相とを共存させた複合組織鋼板が用いられている。複合組織鋼板は、軟質なフェライト地に硬質な低温変態相を分散させることによって強度と加工性の向上を同時に図るものであり、例えば、特許文献1〜特許文献5の方法が提案されている。
特許文献1は本願出願人によって提案されたものであり、破面に存在する酸化物系介在物の個数を制御することによって曲げ加工性の改善を図る方法が記載されている。特許文献2は、炭化物を含むベイナイト及び/又は炭化物を含むマルテンサイトを生成させることによって曲げ加工時の割れを防止する方法が記載されている。特許文献3には、フェライト粒径、低温変態生成相の分率および硬さを最適化することによって伸びおよび伸びフランジ性のほか、圧延方向(L方向)に曲げた場合の曲げ加工性が改善される旨記載されている。特許文献4には、ベイナイトまたはマルテンサイト主体の高強度鋼板において、表層の硬度を内部より低くし、内部のビッカース硬さのばらつきを抑制することによって曲げ加工性を確保する方法が記載されている。特許文献5には、特定の化学組成を有する鋼を加熱し、熱延条件(特に熱間仕上圧延温度、その後の冷却速度、および巻取温度)および焼鈍条件(焼鈍温度およびその後の冷却速度)を適切に制御することによって、圧延方向曲げ、幅方向曲げ、および45°方向曲げ(曲げ軸が圧延方向に対して45°傾斜した方向である曲げ)のいずれの方向にも曲げ加工性に優れた高張力鋼板が開示されている。
一方、上記の高強度鋼板を自動車用部品などに適用して薄肉化するためには、疲労強度に優れていることが必要である。薄肉化によって自動車走行時の応力は増加するため、疲労強度が低いと疲労破壊を起こす危険が高くなるからである。しかしながら、上記の特許文献では、疲労強度について考慮されていない。
特開2002−363694号公報 特開2004−68050号公報 特開2005−171321号公報 特開2006−70328号公報 特開2001−335890号公報
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、曲げ加工性と疲労強度の両方に優れた引張強さ780MPa級の高強度めっき鋼板を提供することにある。詳細には本発明の目的は、せん断加工を受けない未加工部のL方向曲げおよびC方向曲げの曲げ加工性に優れると共に、せん断加工を受けたせん断加工縁の曲げ加工性にも優れており、且つ、疲労強度に優れた引張強さ780MPa級の高強度めっき鋼板を提供することにある。
上記課題を解決することのできた本発明に係る引張強さ780MPa以上の高強度溶融亜鉛めっき鋼板は、
(1)鋼中成分は、
C :0.05〜0.20%(化学成分の場合は質量%を表す、以下同じ)、
Si:0.01〜0.6%未満、
Mn:1.6〜3.5%、
P :0.05%以下、
S :0.01%以下、
sol.Al:1.5%以下、
N :0.01%以下
を含有し、残部が鉄および不可避不純物からなる鋼板であって、
(2)組織は、ポリゴナルフェライト組織および低温変態生成組織を有し、前記低温変態生成組織は少なくともベイナイトを含み、マルテンサイトを更に含んでいても良く、
鋼板の表面から0.1mm深さの板面について、板幅方向位置を変えて合計20視野を顕微鏡で観察し、各視野における50μm×50μmの領域について画像解析を行ったとき、下記(a)〜(d)の要件をすべて満足するところに要旨を有するものである。
(a)ポリゴナルフェライト面積率の最大値(Fmax)≦80%
(b)ポリゴナルフェライト面積率の最小値(Fmin)≧10%
(c)Fmax−Fmin≦40%
(d)低温変態生成組織中に占めるマルテンサイト面積率の最大値(Mmax)≦50%
好ましい実施形態において、上記の溶融亜鉛めっき鋼板は、更に下記(e)の要件を満足するものである。
(e)低温変態生成組織中に占めるマルテンサイト面積率の最小値(Mmin)≧5%
好ましい実施形態において、上記めっき鋼板の鋼中成分は、更にCr:1.0%以下、Mo:0.5%以下、およびB:0.005%以下よりなる群から選択される少なくとも一種を含有する。
好ましい実施形態において、上記めっき鋼板の鋼中成分は、更にNb:0.1%以下、Ti:0.2%以下、およびV:0.2%以下よりなる群から選択される少なくとも一種を含有する。
好ましい実施形態において、上記めっき鋼板の鋼中成分は、更にCa:0.003%以下、および/またはREM:0.003%以下を含有する。
好ましい実施形態において、上記めっき鋼板は更に合金化処理が施されたものである。すなわち、本発明には、溶融亜鉛めっき鋼板および合金化溶融亜鉛めっき鋼板の両方が包含される。
本発明によれば、せん断加工を受けない未加工部のL方向曲げおよびC方向曲げの曲げ加工性に優れているだけでなく、せん断加工端面(せん断加工縁)の曲げ加工性にも優れており、且つ、疲労強度も高い780MPa級の溶融亜鉛めっき鋼板または合金化溶融亜鉛めっき鋼板を提供することができた。
図1は、複合組織鋼板の板面におけるミクロ組織の分布状態を模式的に示す図である。 図2は、焼鈍工程の熱処理パターンを示す摸式図である。 図3は、せん断加工を受けない未加工部を曲げ加工するのに用いた曲げ試験片の圧延方向および曲げ稜線を説明する図である。 図4は、せん断加工縁を曲げ加工するのに用いた曲げ試験片の圧延方向および曲げ稜線を説明する図である。 図5は、曲げ加工性試験の方法を模式的に示す図である。 図6は、疲労強度の測定に用いた平面曲げ試験片を示す図である。
本発明者は、特に、自動車構造部品として好適に用いられる引張強さ780MPa級の高強度めっき鋼板において、曲げ加工性と疲労強度が共に優れためっき鋼板を提供するため、検討を行なった。詳細には、せん断加工を受けない未加工部は勿論のこと、せん断加工縁の曲げ加工性(L方向およびC方向の両方を含む)にも優れており、且つ、疲労強度も良好な高強度めっき鋼板を提供するため、検討を重ねてきた。その結果、(ア)ポリゴナルフェライトと低温変態生成組織を有する複合組織鋼板において、特に、板面の所定領域に観察されるポリゴナルフェライト面積率の最大値および最小値、並びに最大値と最小値の差(バラツキ)と、低温変態生成組織中に占めるマルテンサイト面積率の最大値(好ましくは更に最小値)とを適切に制御すれば、所期の目的が達成されること、(イ)このような高強度めっき鋼板を製造するためには、特に、熱間圧延後の焼鈍工程を冷却速度の異なる所定の三段冷却法(急冷→徐冷→急冷)で行うことが有効であること、を見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の特徴部分は、板面におけるミクロ組織の面積率を細かく制御して、曲げ加工性と疲労強度の両立を図ったところにある。従来は、例えば、前述した特許文献に代表されるように、板厚方向断面に存在するミクロ組織の面積率などを規定して曲げ加工性などの特性向上を図っており、本発明のように板面に存在するミクロ組織については全く着目していなかった。しかしながら、本発明者の検討結果によれば、板面におけるミクロ組織は板幅方向に大きくばらついており、当該ミクロ組織の面積率が曲げ加工性や疲労強度の向上に大きな影響を及ぼしていることが明らかになったため、上記要件を特定した次第である。
この点について、もう少し詳しく説明する。
本発明者は、まず、ポリゴナルフェライトと低温変態生成組織(硬質相)からなる780MPa級以上の複合組織鋼板において、曲げ加工時の亀裂(割れ)や疲労亀裂が発生するメカニズムを明らかにするため、板面の表層付近(鋼板の最表層面から深さ方向に約0.1mm研磨を行った板面、板厚方向に垂直な面)に着目し、ミクロ組織を詳細に観察した。
図1は、板面表層付近におけるミクロ組織の分布状態を示す模式図である。この模式図によれば、ポリゴナルフェライトは白色、ベイナイトやマルテンサイトなどの低温変態生成組織は黒色(グレー)で表される。ポリゴナルフェライトおよび低温変態生成組織の大きさは、おおむね、10μm以下である。
図1(a)より、板面には、全体に灰色っぽく見える領域Aと、全体に白っぽく見える領域Bとが、おおむね、数10μm〜数100μm間隔で板幅方向に交互に並んでいることが分かる。このうち領域Aを拡大したのが図1(b)であり、領域Aは、マルテンサイトなどの低温変態生成相が多く分布し、ポリゴナルフェライトは少ない。一方、領域Bを拡大したのが図1(c)であり、領域Bは、ポリゴナルフェライトが多く分布し、マルテンサイトなどの低温変態生成相は少ない。このように、板面表層付近のミクロ組織は板幅方向に大きくばらついており、ポリゴナルフェライトおよび低温変態生成相の面積率が異なる領域が板面内に広く存在していることが分かる。
また、図には示していないが、低温変態生成組織としてマルテンサイトおよびベイナイトを含む場合は、上記のようにポリゴナルフェライトの面積率が板幅方向に大きくばらついているだけでなく、マルテンサイトとベイナイトの比率も板幅方向に大きくばらついていることも判明した。
このような板面ミクロ組織を有する複合組織鋼板に対し、L方向曲げやC方向曲げなどの曲げ加工を施すと、ひずみは、表層付近のポリゴナルフェライトが多い部分に集中し、低温変態生成相主体の領域の変形は非常に少なくなる。その結果、ポリゴナルフェライトと低温変態生成相の境界付近やポリゴナルフェライトの内部では、ひずみ差が大きくなり、亀裂の発生が起こり易くなる。
また、上記の複合組織鋼板に対し、せん断加工縁の曲げ加工を施すと、せん断加工時に発生するボイドにより、その後の曲げ加工における亀裂の発生が促進される。そのため、この場合は、せん断加工時および曲げ加工時のボイド発生だけでなく、その後の曲げ加工時の亀裂の進展も同時に抑制する必要があるが、これらの抑制には、特に低温変態生成組織を構成するベイナイトやマルテンサイトの面積率が大きく影響することが判明した。
また、繰り返し荷重による疲労亀裂は、フェライトの多い領域で発生するが、共存する硬質の低温変態生成相によって初期亀裂の伝播を抑えることができる。しかし、硬質相が少ないと上記作用は不十分になり、疲労強度にも悪影響を及ぼすようになる。
以上の結果から、以下のことが導き出される。
第一に、板面表層部におけるポリゴナルフェライトの面積率(最大面積率および最小面積率)を一定範囲内に制御しないと、曲げ加工性と疲労強度の向上を両立できないことが分かった。また、ポリゴナルフェライト面積率の差(最大値と最小値の差)はできるだけ小さい方が良く、これにより、ポリゴナルフェライトと低温変態生成相の境界付近に生じるひずみを抑えられ、特にC方向曲げ加工性が向上することも明らかになった。
第二に、曲げ加工性と疲労強度の両方の向上には、母相であるポリゴナルフェライト以外に、第2相の低温変態生成組織の構成も深く関与していることが明らかになった。詳細には、低温変態生成組織を構成するベイナイトおよびマルテンサイトの比率によって、せん断加工縁を含めた曲げ加工性や疲労強度が大きく変化することが判明した。例えば、せん断加工縁を含む曲げ加工性の向上にはベイナイトが有効に作用しており、低温変態生成組織中に占めるマルテンサイトの比率を小さくしてベイナイト主体の組織(マルテンサイトは含まれていなくても良い)に制御すると、特にせん断加工縁の曲げ加工性が向上する傾向にあることが分かった。一方、疲労強度の向上には、ベイナイトよりもマルテンサイトが有用であり、低温変態生成組織中に占めるマルテンサイトの比率を大きくしてベイナイトとマルテンサイトの混合組織にすれば疲労強度が一層高められることが判明した。
これらの結果に基づき、本発明では上記要件を特定した次第である。
本明細書において「曲げ加工性に優れる」とは、せん断加工を受けない未加工部におけるL方向(圧延方向=試験片長手方向)およびC方向(圧延方向と垂直な方向)の90°曲げ加工性に優れると共に、せん断加工を受けた破断端面(せん断加工縁)をC方向に曲げ加工したときのせん断加工縁の曲げ加工性にも優れることを意味する。
これらの曲げ加工性の評価は、L方向およびC方向の90°曲げ加工を行なって得られた最小曲げ半径(Rmin)を鋼板の板厚(t)で除した値(Rmin/t)を指標とし、鋼板の強度クラスに応じて「Rmin/t」の合格基準を設定して行なった。曲げ加工性は、鋼板の板厚や強度クラスによって変化するためである。詳細は、後記する実施例の欄に記載したとおりである。
本明細書において、「疲労強度に優れた」とは、後記する実施例の欄に記載の方法で平面曲げ疲労試験を行ったとき、疲労限度比(疲労強度/引張強度の比)が、おおむね、0.40以上(好ましくは0.45超)のものを意味する。
本明細書において、「板面」とは、鋼板の表面(最表面)ではなく、表面から約0.1mm深さの板面(板厚方向に垂直な面)を意味する。最表層部板面のミクロ組織の面積率は変化し易いのに対し、最表面から約0.1mmの深さ位置の板面であれば、当該板面に存在するミクロ組織の面積率は、殆ど変化しないためである。なお、「0.1mm深さ」は厳密に規定されるものではなく、本発明のように厚さがおおむね、0.8〜2.3mm程度の薄鋼板の場合、板厚に対して約1/20〜1/8位置の板面も許容可能である。上記範囲内であれば、板面のミクロ組織の面積率は、殆ど変化しないためである。
本発明には、溶融亜鉛めっき鋼板および合金化溶融亜鉛めっき鋼板の両方が含まれる。これらのめっき鋼板はいずれも、ポリゴナルフェライト(母相)と低温変態生成組織(第2相)を有することから、これらをまとめて「複合組織鋼板」と呼ぶ場合があり、単に「めっき鋼板」または「鋼板」と略記する場合がある。
本発明の鋼板は、実質的に、軟質のポリゴナルフェライトと硬質の低温変態生成組織からなる。ポリゴナルフェライトは、伸びや曲げ加工性の確保に有用な組織であり、低温変態生成組織との共存によって強度と伸びを両方高めることができる。一方、低温変態生成組織は強度の確保に有用な組織であり、且つ、せん断加工縁を含む曲げ加工性や疲労特性の向上にも寄与している(詳細は後述する。)。
ここで「実質的に」とは、全組織中に占める、ポリゴナルフェライトと低温変態生成組織の比率が合計で95%(面積%の意味、以下、組織について「%」は「面積%」を意味する。)以上のものを意味し、残部は、鋼板の製造過程で不可避的に生成する組織(パーライト、残留オーステナイトなど)である。ポリゴナルフェライトと低温変態生成組織の合計面積は多いほど良く、ポリゴナルフェライトおよび低温変態生成組織のみ(合計で100%)から構成されていることが最も好ましい。
上記「低温変態生成組織」には、ベイナイト、マルテンサイト(焼戻しマルテンサイトを含む)、ベイニティックフェライトなどが挙げられる。本発明では、低温変態生成組織としてベイナイトを少なくとも含んでおり、マルテンサイトを更に含んでいてもよい。「マルテンサイトを含む」の意味は、後に詳述する。本発明者らの検討結果によれば、ベイナイトは、せん断加工縁などの曲げ加工性向上に有用な組織であり、マルテンサイトを含まず実質的にベイナイトからなる低温変態生成組織であっても、ポリゴナルフェライトが適切に制御された複合組織とすれば、曲げ加工性と疲労強度が共に優れためっき鋼板が得られることが判明した(後記する実施例の表3のNo.1を参照)。一方、マルテンサイトは疲労特性の向上に極めて有用な組織であり、低温変態生成組織をベイナイトとマルテンサイトの混合組織とすれば、低温変態生成組織が実質的にベイナイトからなる鋼板に比べ、疲労強度が一層向上することが判明した(後記する実施例の表3のNo.2〜12を参照)。
本明細書において、「低温変態生成相組織はベイナイトを含む」または「低温変態生成相組織はマルテンサイトを含む」とは、低温変態生成相組織中に占めるベイナイトまたはマルテンサイトの比率が、それぞれ、ベイナイト≧5%以上、またはマルテンサイト≧5%以上を意味する。裏返せば、低温変態生成相組織中に占めるベイナイトの比率が5%未満(0を含む)のものは「低温変態生成組織はベイナイトを含まない」と判断される。同様に、低温変態生成組織中に占めるマルテンサイトの比率が5%未満(0を含む)のものは「低温変態生成組織はマルテンサイトを含まない」と判断される。
本発明のめっき鋼板は、所定の鋼中成分を含有し、ポリゴナルフェライト組織および低温変態生成組織を有する複合組織鋼板であって、特に、鋼板の表面から0.1mm深さの板面(以下では、単に「板面」と呼ぶ場合がある。)について、板幅方向位置を変えて合計20視野(1視野:約60μm×約80μm)を顕微鏡(SEMまたは光学顕微鏡)を用いて倍率1000〜2000倍で観察し、各視野における50μm×50μmの領域について画像解析を行ったとき、下記(a)〜(d)の要件をすべて満足することを特徴とするものである。
(a)ポリゴナルフェライト面積率の最大値(Fmax)≦80%
(b)ポリゴナルフェライト面積率の最小値(Fmin)≧10%
(c)Fmax−Fmin≦40%
(d)低温変態生成組織中に占めるマルテンサイト面積率の最大値(Mmax)≦50%
好ましくは、本発明の鋼板は、上記の画像解析を行ったとき、更に下記(e)の要件を満足するものである。
(e)低温変態生成組織中に占めるマルテンサイト面積率の最小値(Mmin)≧5%
以下、上記(a)〜(e)の各要件について詳しく説明する。本明細書において、Fmax、Fmin、(Fmax−Fmin)、Mmax、Mminの単位はすべて面積%であり、以下では「%」と略記する。
まず、ポリゴナルフェライトに関する要件(a)〜(c)について説明する。
(a)ポリゴナルフェライト面積率の最小値Fmin≧10%
ポリゴナルフェライト面積率の最小値(Fmin)は、良好な曲げ加工性を確保し、更に優れた伸び特性を得るのに重要な要件である。後記する実施例に示すように、Fminが10%を下回ると、曲げ加工性が低下し、伸びも低下する傾向が見られた(表3のNo.13、19、21を参照)。Fminは、15%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましい。
(b)ポリゴナルフェライト面積率の最大値Fmax≦80%
ポリゴナルフェライト面積率の最大値(Fmax)は、引張強さ780MPa以上の高強度を確保し、且つ、表層の疲労亀裂の伝播を抑制する硬質相を所定量確保して優れた疲労強度を確保するのに重要なパラメータである。後記する実施例に示すように、Fmaxが80%を超えると、引張強さおよび疲労強度が低下する(表3のNo.15、16、19を参照)。Fmaxは、75%以下であることが好ましく、70%以下であることがより好ましい。
(c)ポリゴナルフェライト面積率の最大値(Fmax)と最小値(Fmin)の差≦40%
ポリゴナルフェライト面積率の最大値(Fmax)と最小値(Fmin)の差(バラツキ)は、所望の曲げ加工性を確保するのに重要なパラメータであり、上記のバラツキが40%を超えると、曲げ成形時にフェライト面積率が大きい領域に変形が集中し、曲げ加工性(特に、C方向の曲げ加工性)が低下する(後記する実施例の表3のNo.18、19、21を参照)。上記のバラツキは少ない程良く、例えば、30%以下であることが好ましく、0%であることが最も好ましい。
次に、低温変態生成組織の構成比率に関する要件(d)、更に(e)について説明する。
(d)低温変態生成組織中に占めるマルテンサイト面積率の最大値(Mmax)≦50%
これは、低温変態生成組織中に占めるマルテンサイトの比率が多くなってベイナイトの比率が少なくなると、曲げ加工性(特にせん断加工縁の曲げ加工性)が低下するという本発明者らの実験結果に基づき、設定されたものである。本発明には、マルテンサイトを含むもの(低温変態生成組織中に占めるマルテンサイトの比率が5%以上)と、マルテンサイトを含まないもの(低温変態生成組織中に占めるマルテンサイトの面積率が5%未満であり、0を含む)の両方が包含されるが、いずれの場合であっても、以下に詳述する画像解析を行ってMmaxを算出したとき、少なくともMmaxを50%以下にして、良好な曲げ加工性を確保するというものである。後記する実施例に示すように、Mmaxが50%を超えるものは、曲げ加工性に劣っている(表3のNo.14、17〜19を参照)。
その理由は詳細には不明であるが、以下のように推察される。すなわち、硬質の低温変態生成組織(本発明では主にベイナイトおよびマルテンサイト)中に占めるマルテンサイトの比率が多いと、強加工時にマルテンサイトとフェライトとの境界からボイドが発生し易くなる。引き続き、曲げ加工を更に行うと、曲げ外側表層近くのボイドが、表層のひずみ集中部まで、主にマルテンサイトとマルテンサイト以外の硬質相を伝播して亀裂を発生させる。その結果、せん断加工端面の曲げ加工性が顕著に低下するようになる。これに対し、低温変態生成組織がベイナイト主体の領域では、ボイドの発生が少なく、ボイドが存在していても表層のひずみ集中部との亀裂の連結も生じ難い。このように本発明では、マルテンサイトが多い領域では、ボイドが多く発生して容易に伝播するとの観点から、低温変態生成組織中に占めるマルテンサイトの最大面積率Mmaxを特に抑制し、良好な曲げ加工性を確保した次第である。
曲げ加工性(特にせん断加工縁の曲げ加工性)の向上という観点からすれば、Mmaxはできるだけ少ない方が良い。好ましいMmaxは約45%以下であり、より好ましくは約40%以下である。本発明にはMmaxが0の場合も含まれる。
(e)低温変態生成組織中に占めるマルテンサイト面積率の最小値(Mmin)≧5%
これは、マルテンサイトによる疲労特性向上作用を有効に発揮させるための要件を規定したものであり、これにより、めっき鋼板の疲労強度が一層高められる(後記する実施例の表3のNo.2〜12を参照)。本発明者らの検討結果によれば、フェライトに発生した疲労亀裂の伝播を停止させて疲労特性を向上させる効果は、ベイナイトよりもマルテンサイトの方が高いことが判明した。このようなマルテンサイトの作用を有効に発揮させるには、Mminは多いほど良く、より好ましいMminは10%以上であり、更に好ましくは15%以上である。
前述したポリゴナルフェライト面積率の最大値および最小値、並びに低温変態生成組織中に占めるマルテンサイト面積率の最大値および最小値の測定方法は、以下のとおりである。
まず、ミクロ組織測定用の鋼板(サイズは、おおむね、縦20mm×横20mm×厚さ1.6mm)を用意し、鋼板の表面から板厚方向に約0.1mm深さまで研磨する。次いで、上記位置の板面(板幅方向)に存在するポリゴナルフェライト、ベイナイト、およびマルテンサイトを、走査型電子顕微鏡(SEM)または光学顕微鏡を用いて倍率1000〜2000倍で観察し、これらを判別する。詳細には、板幅方向に0.1mmピッチで合計20視野(1視野:約60μm×約80μm)のミクロ組織を観察し、倍率1000倍〜2000倍で写真撮影する。
ここで、顕微鏡観察は、上記のようにSEM観察または光学顕微鏡観察のいずれであっても良い。鋼板によっては、ベイナイトとマルテンサイトの判別が困難なものがあるが、その場合であっても、SEMおよび光学顕微鏡のいずれか一方または両方で観察を行なえばこれらを判別することができ、後記するMminおよびMmaxを算出できるからである。後記する実施例では、SEM観察によりフェライトを判別し、ベイナイトとマルテンサイトは光学顕微鏡観察により判別した。なお、光学顕微鏡観察を行なうときは、レペラー腐食を行った試験片を光学顕微鏡で観察することが好ましい。レペラー腐食後に光学顕微鏡観察を行なうと、ベイナイトは黒、マルテンサイトは白、ポリゴナルフェライトは灰色と、各組織が色分けして観察されるため、ベイナイトとマルテンサイトの判別を容易に行うことができるからである。
次に、写真内に50μm×50μmの領域を指定し、ニレコ製「LUZEX F」の画像解析装置を用いて画像解析を行い、ポリゴナルフェライト、ベイナイト、およびマルテンサイトの面積率を求める。合計20箇所の視野について、上記と同様に画像解析を行ってポリゴナルフェライト面積率を測定し、これらの最小値をFmin、最大値をFmaxとした。同様に、合計20箇所の視野について、上記と同様に画像解析を行ってマルテンサイト面積率を測定し、これらの最小値をMmin、最大値をMmaxとした。
上記では、曲げ加工性や疲労強度に大きな及ぼすポリゴナルフェライト面積率の最大値と最小値、および低温変態生成組織中に占めるマルテンサイト面積率の最大値と最小値を詳しく説明したが、本発明鋼板では、これらの要件を満足する限り、全組織中に含まれるポリゴナルフェライトと低温変態生成組織の比率(全組織中の平均値)は特に限定されない。好ましい比率は、ポリゴナルフェライト:約20〜70%、低温変態生成組織:約30〜80%であり、より好ましい比率は、ポリゴナルフェライト:約35〜75%、低温変態生成組織:約25〜75%である。
以上、本発明を最も特徴付ける組織について説明した。
次に、本発明の鋼中成分を説明する。
C:0.05〜0.20%
Cは、所定量の低温変態生成相を確保し、780MPa以上の高強度を得るのに必要な元素であり、そのために、C量を0.05%以上とする。ただし、過剰に添加すると、ポリゴナルフェライトの生成が不足してポリゴナルフェライト面積率の最小値が小さくなる。また、マルテンサイト面積率の最大値が大きくなって、せん断加工縁を含む曲げ加工性や延性が低下する(後記する実施例を参照)ほか、スポット溶接性が低下するため、C量の上限を0.20%とする。C量は、0.07%以上0.17%以下であることが好ましい。
Si:0.01〜0.6%未満
Siは、フェライトを固溶強化し、疲労亀裂の発生を抑制するため、疲労強度向上に有効な元素である。また、ベイナイト中の炭化物を微細にして伸びフランジ性を向上させる効果もある。このような効果を有効に発揮させるためには、Siを0.01%以上含有する。好ましいSi量は0.05%以上である。ただし、Si量が多くなるとフェライト変態が促進され、未変態γへのC濃縮が進み、低温変態生成組織に占めるマルテンサイト面積率の最大値が大きくなり、特にせん断加工縁の曲げ成形性が低下する。また、溶融亜鉛めっき用途に用いるためには、酸化還元炉、プレFeめっき等の専用の設備が必要になり、コストの増加を招く。よって、本発明ではSi量を0.6%未満とする。好ましいSi量は0.5%以下であり、より好ましくは0.3%以下である。
Mn:1.6〜3.5%
Mnは、ポリゴナルフェライトの過剰生成を抑制して所定の低温変態生成相を確保し、且つ、780MPa以上の高強度を確保するのに必要な元素である。また、Mnは、Siと同様、フェライトを固溶強化して疲労亀裂の発生を抑制し、疲労強度の向上にも寄与する元素である。これらの作用を有効に発揮させるため、Mn量の下限を1.6%とする。ただし、過剰に添加すると、所定のフェライト量を確保するのが困難となり、加工性が低下するほか、スポット溶接性や耐遅れ破壊性も低下するため、Mn量の上限を3.5%とした。好ましいMn量は1.8%以上3.0%以下であり、より好ましくは2.0%以上3.0%以下である。
P:0.05%以下
Pは、加工性やスポット溶接性を劣化させる元素であるため、上限を0.05%とする。P量は少ない程好ましい。
S:0.01%以下
Sは、伸びフランジ性や曲げ成形性を低下させる元素であるため、上限を0.01%とする。S量は少ない程好ましい。
sol.Al:1.5%以下
sol.Al(可溶性Al)は、脱酸作用のほか、フェライトの生成作用も有している。このような作用を有効に発揮させるため、sol.Alを0.005%以上添加することが好ましい。ただし、sol.Alを過剰に添加すると介在物が増加し、伸びフランジ性や曲げ加工性が低下するため、上限を1.5%とする。好ましいsol.Al量の上限は0.8%である。
N:0.01%以下
Nが過剰に存在すると、延性の劣化を引き起こす恐れがあるため、上限を0.01%とする。N量は少ない方が良く、0.006%以下であることが好ましい。N量の下限は、実操業レベルでコストとのバランスを考慮すれば、おおむね、0.001%程度である。
本発明の鋼中成分は、上記元素を含み、残部:鉄および不可避不純物である。ただし、本発明の作用を損なわない範囲で、他の特性付与を目的として、下記元素を積極的に添加することもできる。
Cr:1.0%以下、Mo:0.5%以下、およびB:0.005%以下よりなる群から選択される少なくとも一種
これらは、強度の向上に有効な元素であるが、過剰になると、所定量のポリゴナルフェライトを確保することが困難になるほか、耐遅れ破壊性やスポット溶接性が低下するため、上限をそれぞれ、Cr:1.0%、Mo:0.5%、B:0.005%とすることが好ましい。より好ましくは、Cr:0.05%以上0.8%以下、Mo:0.01%以上0.4%以下、B:0.0005%以上0.003%以下ある。これらの元素は単独で添加しても良いし、2種以上を併用しても構わない。
Nb:0.1%以下、Ti:0.2%以下、およびV:0.2%以下よりなる群から選択される少なくとも一種
これらは、析出または組織の微細化を通じて強度の上昇に有用な元素である。ただし、過剰に添加すると、伸びや伸びフランジ性が低下するため、その上限をNb:0.1%、Ti:0.2%、V:0.2%とすることが好ましい。より好ましくは、Nb:0.005%以上0.08%以下、Ti:0.005%以上0.16%以下、V:0.005%以上0.15%以下である。これらの元素は単独で添加しても良いし、2種以上を併用しても構わない。
Ca:0.003%以下、及び/又はREM:0.003%以下
これらの元素は、伸びフランジ性の向上に寄与する元素であるが、過剰に添加しても効果が飽和するだけで経済的に無駄であるため、上限をそれぞれ、Ca:0.003%、REM:0.003%とすることが好ましい。より好ましくは、Ca:0.0005%以上0.0025%以下、REM:0.0005%以上0.0025%以下である。これらの元素は単独で添加しても良いし、2種以上を併用しても構わない。
本明細書において、REMは、ランタノイド元素(周期表において、LaからLuまでの合計15元素)を意味する。これらの元素のなかでも、Laおよび/またはCeを含有することが好ましい。また、溶鋼へ添加するREMの形態は特に限定されず、例えば、REMとして、純Laや純Ceなど、或いはFe−Si−La合金,Fe−Si−Ce合金,Fe−Si−La−Ce合金などを添加すればよい。また、溶鋼へミッシュメタルを添加してもよい。ミッシュメタルとは、セリウム族希土類元素の混合物であり、具体的には、Ceを40〜50%程度,Laを20〜40%程度含有している。
上記元素のほか、例えば、耐遅れ破壊性の向上を目的として、Cu、Ni、Mgを添加しても良い。これらの元素の上限は、おおむね、Cu:1.0%、Ni:1.0%、Mg:0.001%とすることが好ましく、これにより、本発明の作用を損なうことなしに上記作用を向上させることができる。また、耐食性や耐遅れ破壊性の向上を目的として、Sn、Zn、Zr、W、As、Pb、Biを添加しても良い。これらの元素の合計量は、おおむね、0.01%以下であることが好ましく、これにより、本発明の作用を損なうことなしに上記作用を向上させることができる。
次に、本発明鋼板を製造する方法について説明する。
板面に存在するポリゴナルフェライトの面積率(Fmax、Fmin、バラツキ)および低温変態生成組織中に占めるマルテンサイトの面積率(Mmax、更にはMmin)が上記の要件をすべて満足する本発明鋼板を得るためには、特に、熱延・冷延後の焼鈍工程(溶融亜鉛めっきラインを用いる場合は溶融亜鉛めっき工程)における焼鈍後の冷却条件を厳しく制御する必要があり、本発明では、図2に示すような急冷(図中、CR1)→徐冷(図中、CR2)→急冷(図中、CR3)の三段冷却パターンを採用している。上記の三段冷却を行なわないものは、板面のミクロ組織が本発明の要件を満足しないため、曲げ加工性(せん断縁の曲げ加工性を含む)および疲労強度の少なくとも一方が低下する(後記する実施例を参照)。
また、前述した特許文献を参酌しても、本発明のような三段冷却法は開示されていない。例えば、特許文献2の実施例では、焼鈍工程を、「720〜900℃の温度範囲で5秒以上保持→4〜7℃/sの平均冷却速度(第1段冷却速度)で550〜760℃まで冷却→60〜90℃/sの平均冷却速度(第2段冷却速度)で200〜420℃まで冷却」するという、徐冷→急冷の冷却方法が開示されているが、実際に、当該方法を模擬した冷却パターンを行なっても本発明鋼板は得られず、特に、C方向の曲げ加工性が低下した(後記する実施例を参照)。また、特許文献3の実施例では、650〜450℃までの温度を60℃/秒の平均冷却速度で冷却した後、200〜450℃の冷却停止温度域まで冷却することは記載されているが、当該冷却停止温度域までの平均冷却速度は、具体的に記載されていない。
本発明に係る高強度めっき鋼板の製造方法は、上記のように、焼鈍工程の冷却条件を適切に制御したところに特徴があり、上記以外の工程は、本発明で対象とする複合組織鋼板を製造するための一般的な方法を採用することができる。本発明のめっき鋼板は、例えば、連続鋳造→熱間圧延→酸洗→冷間圧延→溶融亜鉛めっきラインによって製造され、溶融亜鉛めっきラインにて上記の焼鈍工程が行なわれる。溶融亜鉛めっきラインでは、上記のように焼鈍後の冷却条件を厳しく制御する必要はあるが、それ以外の、溶融亜鉛めっきの各工程や焼鈍工程における冷却条件以外の条件(例えば昇温速度や焼鈍温度など)も特に制限されない。また、本発明には、合金化溶融亜鉛めっき鋼板も含まれるが、合金化条件も特に限定されず、上記の溶融亜鉛めっきラインにて、通常用いられる方法を適宜適切に選択して合金化を行なうことができる。
以下、図2に示す連続焼鈍の熱処理パターンを参照しながら、本発明の好ましい製造条件を詳しく説明する。
まず、本発明の組成を満足する溶鋼を転炉や電気炉などの公知の溶製方法で溶製し、連続鋳造や鋳造−分塊圧延によってスラブなどの鋼片とする。
次に、上記の鋼片を熱間圧延する。詳細には、連続鋳造後に直接、熱間圧延を行なってもよいし、あるいは、連続鋳造や鋳造−分塊圧延によって製造する場合には、適当な温度まで一旦冷却した後に加熱炉で加熱した後、熱間圧延を行なってもよい。
熱間圧延工程では、約1200℃以上の温度に加熱した後、約Ac点以上の温度で熱間圧延を終了し、650℃以下(より好ましくは600℃以下)で巻き取ることが好ましい。上記のように熱間圧延を行うことにより、特に、板面のポリゴナルフェライト面積率のバラツキが抑えられる。
次いで、常法に従い、冷間圧延および酸洗を行った後、連続溶融亜鉛めっきラインで、焼鈍→冷却→めっき(→必要に応じて合金化)を行う。
焼鈍工程では、まず、焼鈍温度(均熱温度、図中T1)をAc点以上とし、当該温度で約5秒以上保持(焼鈍)することが好ましい。T1がAc点を下回ったり、焼鈍時間が5秒未満になると、特に、板面のポリゴナルフェライト面積率のバラツキが大きくなる。好ましい焼鈍条件は、T1:Ac点+20℃以上、焼鈍時間:10秒以上である。なお、これらの上限は特に限定されないが、設備の負荷を考慮すると、T1≦950℃、焼鈍時間≦5分とすることが好ましい。
本明細書において、Ac点は下記式に基づいて算出される。
Ac点(℃)
=910−203√[C]−15.2[Ni]+44.7[Si]
+104[V]+31.5[Mo]−30[Mn]−11[Cr]
−20[Cu]+700[P]+400[Al]+400[Ti]
[式中、[ ]は各元素の含有量(%)を意味する]。
焼鈍後冷却する。本発明では、図2に示すように、焼鈍(図中、T1)の後約460℃以上約700℃以下の温度(図中、T3)の範囲(T1〜T3)について、T2の温度を境にして、急冷(CR1)→徐冷(CR2)→急冷(CR3)の三段冷却を行う、すなわち、CR1>CR2、CR3>CR2の関係を満足するように冷却することが極めて重要である。ここで、T2およびT3は、いずれも冷却速度変更温度と位置づけられる。具体的には、焼鈍(T1)の後、T1からT2までの温度範囲を約10℃/s以上の平均冷却速度(CR1)で急冷した後、T2からT3までの温度範囲を約10℃/s以下の平均冷却速度(CR2)で徐冷する。このように焼鈍後T1からT2までの温度域を、フェライト変態抑制可能な冷却速度で急冷し、次いで、T2からT3までの温度域(フェライトノーズ付近の温度範囲)を、約2〜30秒間かけて徐冷することにより、板面のポリゴナルフェライト面積率をすべて適切に制御することができ、均一なミクロ組織が得られる。また、低温変態生成組織中のマルテンサイト面積率(特にMmax)を適切に制御することができる。T2は、T1とT3の温度範囲内で、おおむね、500〜700℃の範囲とすることが好ましい。
後記する実施例に示すように、CR1が小さいとポリゴナルフェライト面積率の最大値(Fmax)およびバラツキが大きくなって、疲労強度および曲げ加工性が低下し、CR2が大きいとポリゴナルフェライト面積率の最小値が小さくなって、曲げ加工性および伸び(EL)が低下するようになる。
曲げ加工性および疲労強度に優れた高強度めっき鋼板を得るためには、CR1は大きい程良く、例えば、約10℃/s以上であることが好ましく、約15℃/s以上であることがより好ましく、約20℃/s以上であることが更に好ましい。一方、CR2は小さい程良く、「CR2<CR1」の関係を満足する範囲において、例えば、約10℃/s以下であることが好ましく、約5℃/s以下であることがより好ましい。CR1の上限は特に限定されないが、実操業レベルの設備の冷却能力などを考慮すると、おおむね、100℃/sであることが好ましい。また、CR2の下限も特に限定されないが、CR2が極端に低くなると保温設備などが別途必要になることなどを考慮すると、おおむね、1℃/sであることが好ましい。
また、本発明ではT3の温度も重要であり、後記する実施例に示すように、T3が低くなり過ぎるとポリゴナルフェライト面積率の最大値(Fmax)が大きくなって疲労強度は低下する。好ましいT3は、成分によっても相違するが、おおむね、480〜680℃である。
上記のように冷却を行なった後、冷却速度CR3でT4まで冷却する。CR3が小さいと、フェライト変態が過度に進行し、Fmaxが大きくなる。また、ベイナイト変態温度域に到達するまでに長時間要するため、製造設備を長くする必要がある。そうしないと、硬質相に占めるベイナイト面積率が不足し、マルテンサイト最大値が上限を超えるからである。CR3は大きい程良く、「CR2<CR3」の関係を満足する範囲において、例えば、約10℃/s以上が好ましく、約15℃/s以上がより好ましく、約20℃/s以上が更に好ましい。
次いで、ベイナイト変態を進行させるため、保持温度(図中、T4)で一定時間(t)以上保持する。T4は、ベイナイト変態ノーズに相当する温度域である。具体的な保持条件は、鋼中成分の種類などによって相違するが、概ね、T4を約350〜500℃の範囲内で、tを30秒以上に制御することが好ましい。保持温度T4が約500℃を超えるとMmaxが大きくなり、約350℃を下回るとMminが小さくなる。また、保持時間tが30秒未満では、Mmaxが大きくなる。なお、保持時間tの間、T4は一定温度(等温)であっても良いし、上記温度範囲内において、約5℃/s以下の範囲で徐々に変化しても構わない。具体的には、例えばベイナイト主体の硬質相を得るためには、概ね、350〜450℃の保持温度で約30秒以上保持することが好ましい。一方、例えばベイナイトとマルテンサイトの混合組織の硬質相を得るためには、概ね、450〜550℃の保持温度で約20秒以上保持することが好ましい。このようにして溶融亜鉛めっき鋼板が得られる。
なお、合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造する場合は、例えば、上記条件で焼鈍処理および冷却を行なった後、めっき浴に浸漬をし、400〜750℃(好ましくは500〜600℃程度)の温度域に加熱して合金化を行えばよい。後記する実施例では、図2に示すように550℃の温度で合金化を行なった。
本発明のめっき鋼板は、更にフィルムラミネートなどの有機皮膜や、リン酸塩処理などの化成処理や、塗装処理を施しても良い。特に塗装前の下地処理として、化成処理が施されためっき鋼板が好適に用いられる。
上記塗装処理に用いられる塗料には、公知の樹脂、例えばエポキシ樹脂、フッ素樹脂、シリコンアクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、メラミン樹脂などを使用できる。耐食性の観点から、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、シリコンアクリル樹脂が好ましい。前記樹脂とともに、硬化剤を使用しても良い。また塗料は、公知の添加剤、例えば着色用顔料、カップリング剤、レベリング剤、増感剤、酸化防止剤、紫外線安定剤、難燃剤などを含有していても良い。
本発明において塗料形態に特に限定はなく、あらゆる形態の塗料、例えば溶剤系塗料、水系塗料、水分散型塗料、粉体塗料、電着塗料などを使用できる。また塗装方法にも特に限定にはなく、ディッピング法、ロールコーター法、スプレー法、カーテンフローコーター法、電着塗装法などを使用できる。被覆層(めっき層、有機皮膜、化成処理皮膜、塗膜など)の厚みは、用途に応じて適宜設定すれば良い。
本発明のめっき鋼板は、自動車用強度部品、例えばフロントやリア部のサイドメンバやクラッシュボックスなどの衝突部品をはじめ、センターピラーレインフォースなどのピラー類、ルーフレールレインフォース、サイドシル、フロアメンバー、キック部などの車体構成部品に使用できる。本発明の高強度めっき鋼板を形成加工して得られるこれらの部品は、充分な材質特性(強度等)を有し、且つ優れた疲労特性を発揮する。
以下、実験例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実験例によって制限を受けず、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適切に変更を加えて実施することも可能であり、それらは何れも本発明の技術的範囲に含まれる。
実施例1
(めっき鋼板の製造方法)
表1に示す種々の成分組成の鋼(単位は質量%、残部:鉄および不可避不純物)を溶製し、連続鋳造を行なってから、以下の条件で熱間圧延を行なった(仕上げ厚2.6mm)後、酸洗し、板厚1.2mmまで冷間圧延を行なった。
加熱温度:1250℃で30分、仕上温度:880℃、巻取温度:550℃
次に、表2に示す熱処理条件で焼鈍を行なった後、図2に示すように550℃の温度に再加熱して合金化を行い、合金化溶融亜鉛めっき鋼板を得た。詳細には、所定の温度(図2中、T1)に加熱して180秒間保持した後、表2に示す種々の冷却パターンでガス冷却を行なった。
(ミクロ組織の観察)
このようにして得られた鋼板のミクロ組織を前述した方法に基づいて観察し、ポリゴナルフェライト面積率の最大値(Fmax)および最小値(Fmin)を測定すると共に、最大値と最小値の差(バラツキ)を算出し、且つ、低温変態生成組織中に占めるマルテンサイトの最大面積率(Mmax)およびマルテンサイトの最小面積率(Mmin)を測定した。ここでは、フェライトをSEMで観察し、ベイナイトとマルテンサイトは光学顕微鏡で観察した。また、全組織中のポリゴナルフェライトおよび低温変態生成組織の比率(平均値)は、上記のようにして画像解析を行い、合計20箇所の視野の平均値を算出することによって求めた。
(特性の評価)
上記鋼板の引張強さ、曲げ加工性、および疲労強度を以下のようにして測定した。
(引張強さの測定)
引張強さ(TS)は、鋼板の圧延方向に垂直な方向からJIS5号引張試験片を採取し、JIS Z 2241に従って測定した。本実施例では、引張強度が780MPa以上のものを○(合格)とした。参考のため、伸び(El)および降伏応力(YP)も測定した。
(曲げ加工性の評価)
(1)未加工部の曲げ加工性
未加工部の曲げ加工性は、図3に示すとおり、亀裂が発生しないように端面を機械研削してから、L方向(圧延方向=試験片長手方向)およびC方向(圧延方向と垂直な方向)の90°曲げ加工を行なって最小曲げ半径を算出し、得られた最小曲げ半径(Rmin)を鋼板の板厚(t)で除した値(Rmin/t)で評価した。
具体的には、JIS Z 2204に規定の1号試験片(板厚1.2mm)および図5に示す工具を用い、ダイ肩半径Dpを0.5mm単位で変えてL方向およびC方向の90°曲げ加工を行なった。詳細には、図5に示すように、ダイ1で試験片2を固定した後、パンチ3を下方(図5中、Aの方向)へ動かすことによって試験片2をダイ1の肩になじませた。図5中、クリアランス4はダイ1とパンチ3との間の距離(隙間)であり、試験片の板厚+0.1mmとした。本実施例では、板厚1.2mmの試験片を用いているため、クリアランス4は1.3mmとなる。上記のようにして90°曲げ加工を行なった後、亀裂が発生せずに曲げることができる最小曲げ半径(ダイ肩半径Dpの最小値、mm)を求めた。なお、亀裂の有無はルーペを用いて観察し、ヘアークラック発生なしを基準として判定した。
前述したように、曲げ加工性は、鋼板の強度や板厚によって相違する。そのため、本実施例では、L方向およびC方向の両方について、最小曲げ半径Rmin(mm)/鋼板の板厚t(mm)(本実施例では板厚t=1.2mm)を算出し、鋼板の強度レベルに応じ、下記基準に従って曲げ加工性を評価した。
780MPaレベル:Rmin/t≦0.3を合格
(780MPa以上980MPa未満)
980MPaレベル:Rmin/t≦0.5を合格
(980MPa以上1180MPa未満)
(2)せん断加工縁の曲げ加工性
せん断加工縁の曲げ加工性は、以下のようにして評価した。まず、C方向を試験片長手方向とした曲げ試験片の端面にせん断加工(クリアランス10%)を施した後、図4に示すように、せん断加工ままの状態で、バリの有る面を曲げの外側として90°曲げ加工を行い、バリ部での亀裂が発生しない最小曲げ半径(Rmin)を求めた。このようにして得られた最小曲げ半径(Rmin)を鋼板の板厚(本実施例では板厚t=1.2mm)で除した値(Rmin/t)を算出し、鋼板の強度レベルに応じ、下記基準に従ってせん断加工縁の曲げ加工性を評価した。
780MPaレベル:Rmin/t≦0.5を合格
(780MPa以上980MPa未満)
980MPaレベル:Rmin/t≦1.5を合格
(980MPa以上1180MPa未満)
本実施例では、未加工部の曲げ加工性(L方向およびC方向)、並びにせん断加工縁の曲げ加工性(C方向)のすべてが合格のものを「曲げ加工性に優れる」と評価し、いずれか一方が不合格のものを「曲げ加工性に劣る」と評価した。
(疲労強度の測定)
疲労強度は、図6に示す平面曲げ試験片を用い、JIS Z 2275に記載の方法で平面曲げ試験を行って算出した。ここで、繰返し速度は1500回/分(周波数25Hz)、応力比(R)は−1とした。このようにして得られた疲労強度と、引張強度との比を疲労限度比として求め、下記基準に従って疲労強度を評価した。
疲労限度比0.45超:○
疲労限度比0.40超0.45以下:△
疲労限度比0.40以下:×
本実施例では、疲労限度比が○または△を合格とし、×を不合格とした。
これらの結果を表3に記載する。表3中、「曲げ加工性」の欄には「総合評価」の欄を設け、すべての曲げ加工性が合格のものに「○」を、いずれかが不合格のものに「×」を付けた。なお、「−」は、TSが本発明の合格基準(780MPa以上を)に達しないために曲げ加工性の評価を行なわなかったものである。表3中、PFはポリゴナルフェライトを、Mはマルテンサイトを意味する。
これらの表より、以下のように考察することができる。
表3のNo.1は、本発明の組成を満足する表1の鋼種Aを用い、表2のNo.1に示す本発明の要件を満足する方法で製造した本発明例であり、本発明で規定する(a)〜(d)の要件をすべて満足している。また、表3のNo.2〜12は、本発明の組成を満足する表1の鋼種B〜Lを用い、表2のNo.2〜12に示す本発明の要件を満足する方法で製造した本発明例であり、本発明で規定する(a)〜(e)の要件をすべて満足している。これらは、表3に示すようにすべての曲げ加工性に優れていると共に、疲労強度も良好な高強度めっき鋼板が得られた。また、疲労強度を比較すると、低温変態生成組織中に占めるマルテンサイト面積率の最小値Mmin[本発明で規定する(e)]が本発明の好ましい範囲を満足する表3のNo.2〜12は、上記要件(e)を満足しない表3のNo.1に比べて、疲労強度が向上した。
これに対し、本発明のいずれかの要件を満足しない下記の例は、以下の不具合を有している。
表3のNo.13はC量が多い表1の鋼種Mを用いた例であり、ポリゴナルフェライトの生成が不足してポリゴナルフェライト面積率の最小値(Fmin)が小さくなり、すべての曲げ加工性が低下した。
表3のNo.14は、C量およびSi量が多い表1の鋼種Nを用いた例であり、低温変態生成組織中に占めるマルテンサイト面積率の最小値(Mmin)が大きくなって疲労強度は良好であるが、マルテンサイト面積率の最大値(Mmax)も大きくなるため、せん断加工縁の曲げ加工性が低下した。
表3のNo.15は、Si量が多くMn量が少ない表1の鋼種Oを用いた例であり、表3のNo.16は、C量およびMn量が少ない表1の鋼種Pを用いた例である。これらはいずれも、ポリゴナルフェライトの最大値Fmaxが大きくなり、且つ、マルテンサイトが生成しない(MminおよびMmaxがいずれも0)ため、強度が不足するほか、疲労強度も低下した。
表3のNo.17は、Si量が多い表1の鋼種Qを用いた例であり、低温変態生成組織中に占めるマルテンサイト面積率の最大値(Mmax)が大きくなり、疲労強度は良好であるが、せん断加工縁の曲げ加工性が低下した。
表3のNo.18〜21は、いずれも本発明の成分組成を満足する鋼種を用いた例である。
このうち表3のNo.18は、表1の鋼種Aを用い、CR1をCR2と同じ速度で冷却し、保持温度T4の保持時間を短くした例である。その結果、ポリゴナルフェライト面積率のバラツキだけでなく、低温変態生成組織を構成するマルテンサイト面積率の最大値Mmaxも大きくなり、疲労強度に優れるものの、未加工部のC方向曲げ加工性およびせん断加工縁の曲げ加工性が低下した。
表3のNo.19およびNo.21は、前述した特許文献2に記載の焼鈍工程(徐冷→急冷の二段冷却)を模擬した例である。
詳細には、表3のNo.19は、表1の鋼種Lを用い、焼鈍温度T1が750℃と、鋼種LのAc点(796℃、表1を参照)よりも低くし、且つ、保持時間tを短くした例である。その結果、ポリゴナルフェライト面積率の要件が全て本発明の範囲を外れ、且つ、低温変態生成組織を構成するマルテンサイト面積率の最大値Mmaxも大きくなり、未加工部のC方向曲げ加工性およびせん断加工縁曲げ加工性が低下すると共に、疲労強度も低下した。
一方、表3のNo.20は、表1の鋼種Bを用い、保持温度T4を高く保持時間tを短くしたため、低温変態生成組織を構成するマルテンサイト面積率の最大値Mmaxが大きくなり、疲労強度は良好であるが、せん断加工縁の曲げ加工性が低下した。
表3のNo.21は、表1の鋼種Iを用い、焼鈍工程におけるT2を高くした例であり、ポリゴナルフェライト面積率の最小値およびバラツキが本発明の範囲を外れ、すべての曲げ加工性が低下した。
なお、本実施例では合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造したが、合金化を行なわない溶融亜鉛めっき鋼板においても、上記と同様の傾向が認められ、本発明の要件を満足するものは、曲げ加工性と疲労強度の両方に優れていることを確認している。
1 ダイ
2 試験片
3 パンチ
4 クリアランス
A 試験力の方向

Claims (6)

  1. (1)鋼中成分は、
    C :0.05〜0.20%(化学成分の場合は質量%を表す、以下同じ)、
    Si:0.01〜0.6%未満、
    Mn:1.6〜3.5%、
    P :0.05%以下、
    S :0.01%以下、
    sol.Al:0.060%以下、
    N :0.01%以下
    を含有し、残部が鉄および不可避不純物からなる鋼板であって、
    (2)組織は、ポリゴナルフェライト組織および低温変態生成組織を有し、前記低温変態生成組織は少なくともベイナイトを含み、マルテンサイトを更に含んでいても良く、
    鋼板の表面から0.1mm深さの板面について、板幅方向位置を変えて合計20視野を顕微鏡で観察し、各視野における50μm×50μmの領域について画像解析を行ったとき、下記(a)〜(d)の要件をすべて満足することを特徴とする曲げ加工性および疲労強度に優れた引張強さ780MPa以上の溶融亜鉛めっき鋼板。
    (a)ポリゴナルフェライト面積率の最大値(Fmax)≦80%
    (b)ポリゴナルフェライト面積率の最小値(Fmin)≧10%
    (c)Fmax−Fmin≦40%
    (d)低温変態生成組織中に占めるマルテンサイト面積率の最大値(Mmax)≦50%
  2. 更に、下記(e)の要件を満足するものである請求項1に記載の溶融亜鉛めっき鋼板。
    (e)低温変態生成組織中に占めるマルテンサイト面積率の最小値(Mmin)≧5%
  3. 更に、Cr:1.0%以下、Mo:0.5%以下、およびB:0.005%以下よりなる群から選択される少なくとも一種を含有する請求項1または2に記載の溶融亜鉛めっき鋼板。
  4. 更に、Nb:0.1%以下、Ti:0.2%以下、およびV:0.2%以下よりなる群から選択される少なくとも一種を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の溶融亜鉛めっき鋼板。
  5. 更に、Ca:0.003%以下、および/またはREM:0.003%以下を含有する請求項1〜4のいずれかに記載の溶融亜鉛めっき鋼板。
  6. 更に合金化処理が施されたものである請求項1〜5のいずれかに記載の溶融亜鉛めっき鋼板。
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